西武ライオンズバトルロワイアル 第二章

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52保管庫 ◆DTczIOdYo2 :2006/07/09(日) 21:16:58 ID:LQBKzVpn0
職人様方乙です。
54.The avenger まで保管しました
前スレを保管したのですが、この鯖、500KBまでしかファイルが置けないそうで…
広告少なくて気に入ってたんですが、引越し考えたほうが良さそうです…
53代打名無し@実況は実況板で:2006/07/10(月) 10:37:51 ID:bqndC2UuO
ほしゅ
54代打名無し@実況は実況板で:2006/07/11(火) 01:21:38 ID:j49bpCWy0
>>52
遅ればせながら、保管庫さまいつも乙です!
55代打名無し@実況は実況板で:2006/07/12(水) 02:03:19 ID:Q63s3YRbO
保守しますね
56代打名無し@実況は実況板で:2006/07/13(木) 02:10:58 ID:Lz8udkmGO
保守
57代打名無し@実況は実況板で:2006/07/13(木) 12:29:26 ID:8x6WSFkmO
>>52保管庫さま
いつもGJな仕事っぷり乙です。
これからも頑張ってください ノシ
58代打名無し@実況は実況板で:2006/07/13(木) 17:33:01 ID:L1KyhsdW0
age
59 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:31:52 ID:10da14uF0
55.昨日の友は今日の敵

上本は薄暗い街灯に照らされている彼の名前を呼んだ。
「ケースケ、無事?」
「ああ。」
近くによってみると中村と栗山も一緒にいるようだった。どこかで一緒に行動することにしたのだろうか?
「ケースケ、南西の港はどうだった?船とかなかった?何か手がかりになりそうな物、残ってなかった?」
興奮しているのか嬉しいのか、上本は早口でこの島から逃げ出すためにまず船を捜そうということをまくし立てる。水田はそれをどこか冷めた目で見つめた。どうしてこんなに必死になれるのだろう?どうせ、ここから出られるのは勝ち残った6人だけなのに。
どう痛めつけてやろうか、嗜虐性がのろのろと水田の中で目を覚ます。どのタイミングで爆弾を放り込むか。上本の言葉が途切れるのを待って、何気ない風を装って水田は一言目を放った。
「上本は放送聞いたよな?」
「あ、ああ。聞こえた。あいつら、ふざけやがって。」
「そっか。それだけ?」
「え?」
上本がきょとんとして水田の顔を正面から見つめる。水田は柔和な表情でもう一度上本に聞きなおす。
「ふざけるな、としか思わんかった?」
水田の言葉は単純だ。だが、何を意味しているのかわからない。
「俺はね、アホやなあって思った。」
「あ、うん。アホなことやと思うけど。」
くっくっと腹を押さえて大げさな仕草で笑う。上本にその笑い声はひどく耳障りに感じられた。
「はは、ホンマ上本はエエ奴やねえ。」
水田の言葉には不快な嘲りの響きがある。上本は当惑した。
「ケースケ?」
60 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:32:15 ID:10da14uF0
「上本、お前さ、死にたくないよなあ?俺もさ、死にたないし、人並みに出世願望もあるんよね。」
意味ありげに言葉を切ると水田はじっと上本を見つめた。上目遣いなのは二人の身長差のせいだと分かっているが、値踏みしているような視線に居心地の悪さを隠しきれない。
「勿体つけずにさっさと言えよ。」
せっかちな物言いで上本が水田にうながす。不安感に焦れているのを確認して水田は内心にやりと笑った。
「なあ上本、一口乗らへん?キャッチャーはあと3人、監督入れても4人。一番頑丈な細川さんはもうおらへんし、正捕手になるんに条件は楽になってる思うよ。まあ、嫌やって言うならしゃーないなあ。今やったらサービスで死に方選ばせたげるわ。」
「ケースケ、お前、何をした!」
何を言っているのかわからない。いや、わかりたくない。先程簡単に弔ったばかりの細川のひどい遺骸を思い出す。
声が裏返っているのに上本は気付いていただろうか?水田はそれに気がついていた。動揺している。そう、これくらい動揺してくれないと面白くない。嬉しそうに鼻にかかった笑い声をあげてから、水田は質問に答えた。
「クロは可哀想に脳挫傷で死んだよ。戦いを忘れた奴をやるのは簡単やった。」
水田の形のいい唇が幽かに笑いの形を取っているのが上本の目に焼きつく。
「違うだろ!」
あざけりを含んだ笑い顔を険のある表情に変え、上本の否定を否定する。
「違わんよ。誰かを叩き落さな、上には行けん。これはチャンスや。自分かて機会さえあれば、のし上がってやるって思うからまだ生きてるんやろ。そうでないんならそれこそ、今すぐここで自分の喉突いて死んで。ただ生きていたいだけの人間なんて、邪魔や。」
吐き捨てる言葉はあまりに攻撃的で理解がついていかない。それでもこれだけは嫌でも上本は理解してしまった。水田は危険だ。
「なあ上本、俺、お前のこと嫌いちゃうから、そんなことさせへんよなあ。自分が充分賢いこと、期待させてもろて、ええよなあ?」
余裕の表情で水田はハンマーを見せびらかす。おそらくそれが黒瀬の頭を割ったのだ。
「ケースケ、俺達、友達だったよな?」
61 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:32:39 ID:10da14uF0
「せやな、今でも友達やと思ってるよ。だから特別に一緒に行こって声かけてる。落ち着いて考えたら分かってくれるよな?」
だが水田はもう俺の知っている友達では無くなってしまったのだ。上本は悟らざるをえなかった。救いを求めるように周囲を見回し、高木浩と目があう。
(そうだ、せめて浩之さんだけでも逃がす時間を稼がないと。)
やや冷静さを取り戻し注意深く周りの状況を見ると、やや下がった位置で栗山が銃火器を構え、こちらを狙っている。中村は手ぶらでこちらの遣り取りを見ている。
「俺は、細川さんに会ったよ。死んでた。酷い有様だった。」
「だったらなおさら俺の言うてること、わかるよなあ?そんな死に方したくないって思うやろ。俺も友達にそんな残酷な死に方させたないしね。やから首を縦に振って欲しいわけ。」
先程の切り捨てるような言葉と今度はうってかわって懇願するような口調で話し出す。それは本当に心の底から上本を心配しているように聞こえた。もしここに高木浩がいなければ、上本も首を縦にふったかもしれない。
だが、上本の後ろには膝を痛めているうえに碌な武器を持っていない――上本はそう思っていた――高木浩がいた。
「ああ、そうだな。出来れば痛くない死に方がいい。」
話しながら上本は水田の左側に何気なく見えるように移動する。それを見て水田が上本のほうに向き直るように60度ほど左回転する。それを見ながら高木浩は何歩か後退する。水田と栗山の位置からは、その動きは目立たなかった。
「浩之さん、逃げてください!」
「――っく!」
革製の鞘を払い、抜き打ちした鉈の白い光が目の前を真一文字に切り裂く。反射的に避けたのは奇跡か、それとも上本に一刀のもとに斬り捨てるだけの覚悟が足りなかったのか。
高木浩は上本が叫ぶのとほぼ同時に身を翻し集落の奥の暗闇に逃げ出した。けたたましい音がしたのは、途中で何かバケツの類でもひっくり返したからだろうか。
「バカ!」
水田の心に怒りが湧く。良く考えれば分かる筈、自明の事なのだ。それをちんけな正義感か何かで上本は本気でこのゲームをつぶす方に組するらしい。
62 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:33:03 ID:10da14uF0
「ゲームつぶして自分が再就職先探すことになりました、じゃお話にならんやろ!」
「俺はそんな人殺しにはならねえよ!」
感情に任せた無茶な打ち込みが水田に放たれる。栗山が銃で上本を撃とうとするのが水田の目に止まった。
「構わん、逃げた浩之さん捕まえて!」
栗山は水田の指示に、二人の白兵戦を一度睨んでから中村と共に逃げた高木浩を追って集落の奥へ向かう。一瞬、上本の注意が目の前の水田から高木浩を追ってその場を離れる栗山と中村にそれた。
「ま…っ」
「人の事構うてる場合ちゃうやろ!」
横殴りのハンマーの一撃をとっさに上本は左腕で止める。ゴッと鈍い音がして痺れと痛みが左腕に走る。あるいはひびが入ったかもしれない。痛みに顔をゆがめ、それでも右手の鉈は離さず、牽制の突きを水田の正面に入れる。水田は後ろに下がってそれをかわす。
「図体ばっかでかくして、胴体の上についてる重いもんは飾りか!考え直せや。ここでうまく立ち回れば俺らかて、有名になれるんや!」
「いらん!人としてやっちゃいかんことだ!」
「どうせ人間死ぬねん、ほな今死んでもええやないか!」
「屁理屈ごねるな!」
「今ここで殺されたら、俺ら何やねん!何のためにプロ入ったんかわからんやないか。そんなええかっこしたって死んだら終わりなんやで?これだけ死によったのに、まだそんな綺麗事言うんかい!」
「うるさい!」
怒りをこめて振り払った鉈はそれを受け止めようとしたハンマーを横殴りに叩き、その重さに水田がよろめく。一瞬躊躇った後鉈を振り上げる。だが振り下ろした鉈は、上本の一瞬の躊躇いのうちに体勢を立て直した水田がハンマーで止める。
街灯の薄暗い明かりの下、呼吸を整え、もう一度離れて間合いを取り直す。
水田は苛立ちをこめて上本を睨みつける。何の犠牲も払わずして成功することはできない、何故こんな簡単なことがわからないのかと。
63 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:33:25 ID:10da14uF0
上本は苛立ちをこめて水田を睨みつける。人の命に代えられるほど価値のあるものはない、何故こんな簡単なことがわからないのかと。
睨みあいを続けた後、心の底にある何か絶望に似た物を言葉にしようと水田がようやく口を開く。
「山崎も岡本も、三井さんかて、死んでたよ。一分の疑いもなく、完璧な死体やった。荷物も掠奪済。これは『ゲーム』やと言ってたけど、ほんまにゲームみたいやね。武器を装備して、出会った敵を倒して、アイテムを拾って。」
「ゲームじゃないだろ。ゲームで人が死んでたまるか。」
水田のかなり正直な感想は、上本にはあまりな形容に聞こえた。
「そうやな。でも俺が西側で見たのは、最高にくそったれでリアルなゲーム、その結果やった。敵を倒した。敵はアイテムを落とした。そんなメッセージが見えるようやったね。」
「だから何だよ!」
あまりにも他人事のように話す水田に上本は怒りを叩きつける。しかし上本の怒りにも水田は表情を変えない。
「だから、俺はそんな風に死ぬのは御免やってこと。」
「死にたくないから殺すのかよ。そんなんおかしいよ。」
「おかしい?」
意識的に軽い口調で水田は上本に問いかける。
「人にされたくないことは人にしちゃいけない、当たり前のことじゃないか。」
意識的に厳しい口調で上本は水田に答えた。
「そりゃそうだ。正しいお答えですねえ。」
何気なさそうに水田が一歩踏み出したように上本には見えた。一歩下がろうとした上本の動きを読んだ水田の二歩目の踏み込みが早い。ハンマーが届く位置に踏み込まれ、下段からすり上げるハンマーの動きに咄嗟に腰を落とし受け止めようとする。
だが、ハンマーは止まり、引かれる。フェイントだと気がつくのとほぼ同時にハンマーの先で胸を強く突かれる。衝撃で息が止まる。よろけて尻餅をつく。振り下ろされるハンマーをかわそうとしたが避けきれず、重い衝撃が右肩を砕いた。
「がっ、あああぁっ…」
肩を押さえて足元にうずくまり痛みにうめく。
64 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:33:49 ID:10da14uF0
「キャッチャーにはとても大事なその肩、もう使い物にならへんかもね。可哀想な上本、まともな人間って損するように世の中出来てるもんやから。」
どこか同情めいた響きをもった水田の声がする。
「だからこんなとこで死ななあかん。ええ人やめてまえば仲良うできたのになあ。」
「う、うう…」
右肩を押さえ苦痛に呻きながら水田を見上げる。見下ろす水田は迷子のように心細げな、今にも泣き出すのをこらえているような表情をしているように見えた。それは錯覚だったのだろう。もう一度睨んだときにはその優美な面には何の感情も浮かんでいなかった。
せめて、相打ちに持ち込めないか。鉈は右側に転がっている。右腕は動かないが、左腕なら動かせる。鉈を左手で拾い水田を刺す。あるいは体格差を生かせる殴りあいか。だが、動かぬ右腕と未だに痛みが抜けきらない左腕で殴りあいは、いかに体格に差があっても不利だろう。
左手で右肩を押さえ痛みに呻きながらも上本の頭は水田を倒すためにどうすればよいかを考えていた。
「痛い思いいつまでもするんも飽きたやろ。希望あらへんならクロとおんなじでええ?一瞬痛いと思うけど、後頭部きっちり叩けばすぐに意識とぶから楽になれるし。溺死よりは楽やと思うで。」
「…遺言を、預かってくれないか?」
水田は油断している。もう少し近寄ってくれればやれるかもしれない。
「遺言?まあええわ。何?」
ぼそぼそと、わざと聞こえにくい声を出す。
「聞こえんし。」
水田は上本の声を聞き取ろうとさらに一歩近付いた。
「――ッ!」
左手の掌底を勢いよく顎に叩き込む。予想外の反撃に水田がよろめき、膝をつく。左腕に走る痺れと痛覚を堪えて、素早い動作で左手で鉈を拾う。
「このッ!」
「うおおおォッ!」
ふらつきながら立ち上がった水田がハンマーを振り上げ、振り下ろす。単純だが体重の乗った正確な動きだ。だがそれより速く上本はタックルから足を取り地面に引き倒そうと躊躇無く懐に飛び込んだ。
65 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:34:16 ID:10da14uF0
これ以上ない素早いダッシュと83kgの体重を運動エネルギーに変えて水田に飛びつく。ハンマーの一撃が背中をしたたかに叩き上本の呼吸が一瞬詰まるが、勢いはそのままに水田の足をとり、地面に転がした。
「ぐっ…」
背中から強く地面に叩きつけられ、水田が傷みにうめいた。咄嗟に受身はとったものの、弾みでハンマーが右手から離れて地面に転がった。上本は倒した水田の体を踏みつけると、逆手に握った鉈を掲げる。躊躇いを断ち切り、ときの声を上げる
「殺せ!」
あ、死ぬな。水田は振り上げられた刃を見て悟る。抵抗することも出来る、そう思う反面、もういいや、という投げやりな感情も浮かび、結局振り上げられた切っ先を眺めて、目を閉じた。
覚悟した痛覚はなかった。代わりに響いたのはそろそろ聞き慣れはじめた銃声だ。音速で飛来する弾丸が大気を切り裂き大きな破裂音を立てた。
自分の上に崩れ落ちる大柄な体を自然、抱きとめる形になる。耳元で声がする。さらに銃声が3発響き、小さな声をかき消した。そして体重全てを水田に預けたまま、上本は動かなくなる。呆けたようにその一部始終に立ち会う。脳裏を去来する様々な感情がスパークする。
「うえもと…?」
現実感がない。広い背中に穿たれた傷口に左手を回すと、ぬるりと血が左手を朱に染める。流された血の温もりは外気にあてられ急速に冷めていく。何をすればいいのかわからない。わからない。上本の重い体を抱えてただ呆然と水田が見つめるのは冬の星座が彩る黒い夜空だ。
「放っておけば死にました。」
栗山の声にようやく判断力が戻ってくる。何か返事をしないと、と考えて実際に返事をするのに10秒ほどの時間がかかった。
「戻ってこいとは言ってへん…」
弱弱しい声で反論する。意味も無くその正しさに反発したかった。
「浩之さんを見失いました。深追いは無用と判断しました。」
「1人を逃がしたことで、全部おじゃんになるかもしれへんのやで?」
「それでも今、水田さんを失うわけにはいかないと判断しました。」
66 ◆rZmes0SmeE :2006/07/14(金) 03:34:52 ID:10da14uF0
どう考えても栗山の判断のほうが正しいだろう。だが、助けてもらったにもかかわらず、この後味の悪さは何だろう?栗山が右手を差し出している。何故と思い、ああ立てってことかとようやく思い至る。左肩に乗ったままの上本の体を横にずらし、立ち上がる。
「いつから見てた?」
「上本さんが、肩を押さえて蹲っているあたりからです。いつでも撃てるように用意はしていました。」
スコーピオンのストックが伸ばされている。尾を振り上げ威嚇する蠍は尾を振り下ろし獲物を捕らえた姿勢で栗山の腕の中に収まっていた。
「サシの勝負に拘っているようでしたので、ぎりぎりまで様子見してましたが…」
「殺られそうやったから撃った、って訳ね。」
栗山がやや言いにくそうにした言葉を引き取る。そう、栗山が撃たなければ俺は間違いなく死んでいた。鉈を振り上げたあの瞬間に、上本の目に確かに殺意は宿っていた。
(それで、言い残す言葉が、あれかい。)
今際の際の小さな祈りにも似た声を水田だけが聞いた。
「…ありがとう。感謝してる。…でもちょっとだけ、ちょっとだけイラついてる。やっぱり、友達やったからかなあ。」
返り血で朱に染まった左手をじっと見つめる。そして朱色の人差し指をちろりと舐めた。鉄の味がする。水田が唇を動かし何事かを空に囁く。冬の星々だけがそれを聞き届けた。

【上本達之(49)× 残り41名】
67代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 04:24:39 ID:7nhoFuUJO
微妙になってきたな
68代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 04:44:39 ID:TC06SKOeO
職人さん、乙です。
上本.・゚・(ノД`)・゚・.
69代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 10:35:05 ID:O/e7oNZNO
職人さま、乙です。
水田…(>_<。)
上本…( T^T)
70代打名無し@実況は実況板で:2006/07/14(金) 22:34:42 ID:reBM7NT70
早く続きを読みたい!!職人さん頑張って下さい!!!
71代打名無し@実況は実況板で:2006/07/15(土) 12:11:30 ID:f8jl7nwk0
hoshu
72代打名無し@実況は実況板で:2006/07/15(土) 14:16:45 ID:5+9L7wPw0
1軍に上がったウエポンの後を追うようにミズタンも上がってきたね
73代打名無し@実況は実況板で:2006/07/16(日) 11:12:40 ID:LCr0ee0tO
ホシュ
74代打名無し@実況は実況板で:2006/07/16(日) 23:43:34 ID:BkDK48mZ0
捕手上本ぉぉぉぉ(つД`)・゜・。・゜・
75代打名無し@実況は実況板で:2006/07/17(月) 07:15:04 ID:WGIvmyrBO
水田のやろぉ!フィクションだと判ってても腹立つよ!
76 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:07:28 ID:hMr1GO0B0
56.逃げられないこの場所から(前)

田原に投げ込まれた言葉が思考の渦の中心から動こうとせず、ぐるぐると廻り続け、引きずり込まれそうだった。
そこから抜け出そうと足掻くように、高山は足を速めた。しかし、分かっていた。逃げ出す事など、出来はしないということは。
自分からは逃げられない。
きっと、田原にはそれが高山よりも明確に分かっていたのだろう。そしてそのことから高山が背を向けようとしていることも。
分かっている。分かってしまった。
田原の言葉が心の闇から呼び起こしたもの。自ら心の闇に覆い隠そうとしていた熱をともなう光。
赤田や田原の言葉を棘棘しい態度で振り払い、綺麗事だと切って捨てても、その答えは最初から自分の中にあった。分かってはいてもそうしなければ自分を守れなかったのだと、今は思える。
(それは俺だって、できることならなんとかしたい。でも……殺し合いだなんて、一体どうしろっていうんだよ。俺にはそれが出来るとでもいうのかよ)
買被りもいいとこだ。それでも、高山のことをそんな風に思っていてくれる仲間がいる。その事が心の闇に向き合う力に出来る気がした。
(でも、なんであんなやり方……)
田原は余裕があるとは言い難い様子だった。武器だって隠し持っていた。伊東と共にいる理由も、納得できるものではなかった。もしかしたら、今頃あの二人は殺し合いをしている可能性があるのではないか?
それなのに何故、自分にそこまでしてくれた?仲間だから?高山や赤田よりもずっと多くの経験を重ねた人だ。赤田のようにひたすら人が好いからというわけではないだろう。

銃声。さらに続けて三度――また、誰かが死んだ。

足を止め、振り返る。寺?いや、もう少し遠いか?
じくりと胸の内奥がうごめく。闇の色をした重苦しい痛み。この島には殺意が溢れ、ゲームは残酷なルールのままに確実に進んでいる。
いやでも田原から向けられた銃口を思い出す。
田原には高山を殺す気はなかった。あれは殺意ではなかったのか?今からでも田原の本心を確かめる事はできるだろうか?今度は逃げ出さず、確かめたい。そう心に決めた。
満天の星空に本堂の屋根が黒々と浮かんでいる。
まだ、あそこにいるだろうか?
77代打名無し@実況は実況板で:2006/07/17(月) 23:08:31 ID:hMr1GO0B0
「休める場所を探しましょうか?」
栗山の提案に「そやね。流石にキツかったわ。働きすぎやね」と賛同しかけて、即座に水田はそれを否定する。
「いや――ヒロユキさん、ウエの様子見にここに戻ってくるかもしれへんよ」
死体となった友達を見下ろす。今なら呼び慣れた愛称で彼を呼べる。無意識のうちに避けていたのだろうか。頭の内側が少し痛む。痛みは微かに揺れかけた気持ちを閉じさせ、冷静にこのゲームを攻略する術を探る。
何の抵抗もなく、上本の死体を囮にすることを思いつき、冷静さを取り戻したことを自覚する。
利用できるものは何でも利用できないようではこのゲームを勝ち残ることはできない。
「ヒロユキさんやのうても、今の銃声でここに来るヤツおるかもしれんやろ――少し、張ってみよか?あそこの陰やったら、後、取られる事もないやろ」
上本の死体を照らす街灯の向かい側に建つ民家をハンマーで指し示す。生垣がぐるりと住居を囲い、玄関前に建つ二本の門柱が、外れかけた門扉をぶら下げている。
水田の指示に栗山が神妙な顔で頷く。首を伸ばし、栗山の後ろでぼんやりとしている中村にも指示を出す。
「自分は休める場所、探してきて――そやな……」
荒廃の空気を漂わせる集落。どこで休もうと大差はないだろう。
「寺、行ってみて」
上本と落ち合う約束をしていた場所。どんな場所なのか少し興味が湧いた。
「ダメそうやったら、適当に探しておいて。こっちも2、30分もしたらそっち行くし」
中村は顔中で不満を表し、上目遣いで水田をじっと見つめてくる。細い目で器用なことだ。少し、イラつく。
「自分おると緊迫感ちゅうもんが、削がれるんや――なんや、文句あるんなら、口でいいや」
水田と言葉を交わす事を避けようとしている中村の態度を揶揄する。水田から目を逸らし、栗山を見やる中村に硬い声が掛かる。
「さんぺー。頼むわ」
既にスコーピオンの残弾を確認する事に意識を集中させ、目を合わせようとしない栗山の横顔を見つめ、中村は表情を曇らせる。やがて不承不承うなずき、二人の元を離れていった。
78 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:11:49 ID:hMr1GO0B0
「またな」
走り去る高山の後ろ姿が完全に消えた頃。田原は届かぬであろう声を掛けた。
強く握り過ぎて、血液が通わず白くなった右手から小さな拳銃――グロック26という名前らしい――を左手を使って引き剥がし、呻く。
「失敗した……」
高山があそこまで驚いてくれるとは予想外だった。
高山は傷ついていた。仲間の死に傷つき、仲間を殺すかもしれない可能性に怯え、そんな自分を守ろうと頑なになるあまり、足元を見失いそうになっているように見えた。
なんとか気持ちを切りかえては貰えないかと、言葉をかけたいとおもったが、あの状態では聞く耳を持ちはしないだろうと、荒っぽく追い詰めるようなまねをした。
「どうして、俺って、こう――」
人の心配などしている余裕などないことは百も承知だった。
ホテルからここまでの道中を思い出す。
田原は伊東に黒岩から告げられた事――伊東から離れれば田原の首輪が爆発する事。田原の支給武器が使い捨てカイロだと分かると、まるでさっさと殺し合えと言わんばかりに、拳銃を手渡してきた事――をありのままに説明はした。
そうなるであろうとは予想はしていたが、案の定、伊東に疑われている。この上もなく疑われている。
伊東も同行者が付く事については何か含まされているのか、特に拒否される事はなかったが、運営側に与している――そんな事実はないが――田原を利用できないかと考えているのかもしれない。
薄氷を踏む思いで腹の探り合いに終始した。もっとも、田原には探られる腹など在りようもなかったため、一方的に痛くもない腹を探られることになったが。
その上、放送を聴くまで、お互いがお互いに付いて行っているつもりであったため、地図も見ていなかった。
放送の禁止エリアの発表を地図に書き込むついでに、そこから最短距離で休めそうな場所を探し、この寺を目指すことにした。田原の唯一の方策を実践するために。
伊東もまた高山と同じだと思う。ホテルを出て最初に顔を合わせた時に気付いた。
ひどく思いつめ、深い懊悩に苛まれ、今まで見た事がないほどやつれていた。ろくに睡眠や食事をとれていない事は明白だった。
訊ねたい事は沢山あるが、どう切り出したらいいか皆目見当もつかない。正面きって問い質しても無駄だろう。
79 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:14:09 ID:hMr1GO0B0
落ち着いて話し合うためにも、まずはしっかりと休んで貰おう――正直に言って、そのくらいの方策しか思いつかなかった。
夜の廃寺に好き好んで近付く人間はいないだろうと思っていたが、先客がいた。
追い出す結果となってしまったが、共にいるわけにはいかない。
田原としては避けたい事態ではあるが、いつ何時、伊東と殺し合いになってもおかしくないのだ。巻き添えにするわけにはいかない。
そうは言っても、乱暴な方法を採ってしまったものだ。
「柄やないし……なぁ……俺かて、ホンマ、イッパイイッパイなんよ」
言い訳じみた弱音が口をつく。自分でもうんざりするほど暗い声だった。
この半日で、許容量の限界をはるかに超える精神的打撃を立て続けに喰らっている。我ながら、そろそろ立ち直れなくなりそうで心配になり「序の口、序の口」と、ぼそぼそと口の中で唱えてみる。
独り言が止まらない時点で、すでに相当参っている事を自覚し、溜め息がもれた。
「似合わない真似をしているな」との言葉に振り返る。本堂の陰から伊東が姿を現した。「聞いておられたんですか?」と返す田原にライターを振ってみせる。
「途中からな。これ、返そうかと思ったんだが、出て行くタイミングを外した」
喫煙の効果なのか、伊東の口調も表情も幾分か和らいだようだ。
「驚いた拍子に腹が据わる――か?」
田原がやろうとした事を端的にまとめてみせる。どうにもお見通しだったらしい。
「ええ。本当は俺が余計な事をしなくても、高山は分かっているんですよ。なんせ、九州男児ですからね。たくましいんですよ」

銃声。さらに続けて三度――どこから?

咄嗟に銃声の発生源を探る。高山が駆け去った方向とは反対方向だ。そのことに僅かな安堵を覚えるが、そちらに向けた半身をなかなか元には戻せない。
身体の奥がざわりと騒ぐような、何故かいても立ってもいられなくなるような感覚。こうした虫の知らせとも言うべきものをただの気のせいですませることは、田原には出来なかった。
「行きたいのか?」
これまでのやり取りに常に付き纏った、こちらを試すような伊東の口調に、できるだけ身構えないように注意しがら、向き直る。
80 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:16:07 ID:hMr1GO0B0
「はい。先刻も言いましたが、監督にはまずしっかり休んで頂きたいと思っています。ですから、ここが安全な場所であるか確かめる必要があります」
言葉では説明しにくい感覚をあえて口にはせず、至極もっともな理由を告げる。
伊東もまた田原に向き直り、理由の説明もなく、ただ意思を伝える。
「休まなくていい。出来るだけ早く行きたい場所ができた」
「ですが――監督……」
何故なのかを訊く前に、行かせてはならない、引き止めなくてはならないと、田原の勘が告げる。妥協してはならないと。その意思を伝える言葉を探す。
田原の態度に何かを感じたのか、それ以上強く意思を通そうとはせず、黙り込んだ。伊東の逡巡を感じさせる黙り方だった。
やがて、煙草を取り出し、火をつける。目深に被った帽子の陰で、赤い光が明滅し、冷気に凍る呼気よりも濃い紫煙が立ち昇る。
言及される事を避けるように、田原から目を逸らせ、いまさらなタイミングで話題をずらす。少し、ほっとしてそれにつき合う。
「もう俺は監督じゃないと何度も言ったよな」
「……今更、伊東さんとも呼べませんと何度も言いましたよね。監督」
「頑固だな」
「監督には負けます」
再び会話は途切れる。紫煙の行方を目で追いながら、居心地は悪いが、終わらせる事を躊躇わせる時間が過ぎていくのを待ちながら、考えを巡らせる。
伊東が行きたい場所とは何処だろう?
伊東は田原――をふくめた他の選手達が――が知らない、知らされていないこのゲームの何かを知っているのだと思う。黒岩達にとって不都合な何かを。
そこに賭けることはできるだろうか?
どのみち田原には付き合うしか選択肢はないのだ。伊東が気を変えない限りではあるが。
日常から遠くかけ離れたこの状況も、伊東も――この異常な状況下でこの人が背負い込んだ部分を差し引いたとしても――田原の手に負えるものではない。
その自覚があるからこそ、やれることをやるしかないのだと、改めて腹を据える。
「自分の武器は銃とかではなく、監督なんだと思う事にしました」
使い方を間違えれば、自分の首を絞める事になる。まさに武器そのままだ。
81 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:17:03 ID:hMr1GO0B0
「ですから、今は無理にでも眠ってください。話はそれからです」
何かを言いかけた伊東の視線が田原から逸らされた。田原の目もその視線の先を追う。住居の陰から、こちらを窺う人影を見つけた。


寺に戻りはしたが、念の為、裏手に回り墓地から様子を窺う。本堂の裏側と住居部分の勝手口が見えるが、二人の姿は見えない。高山は本堂の陰に隠れながら、足音を忍ばせ、表へと進む。
話し声が聴こえる。伊東と田原の声だ。本堂の前にいるようだ。そっと聞き耳をたてる。話の内容までは分からないが、緊迫した空気が伝わる。覗き込もうと首を伸ばしかけた。
「そこにいるのは、誰だ?」
「そこにおるんは、誰や?」
張り上げずとも、よく響く異口同音の呼び掛け。自分の事かと、高山は伸ばしかけた首を竦めた。どうやって出て行こうかと逡巡するうちに、二人の声に応じる声は、高山がいる場所とは反対の方向で起こった。
「な、中村です」
「さんぺーやないか、どうしたん?元気やったか?」
消え入りそうな名乗りに、敵意がないことを伝えようとする田原の穏やかな声が返る。
こちらには注意が向いていないらしい。高山はまた、そろそろと首を伸ばし、様子を窺う。
「ここにおったら、危ないんです。今すぐ逃げてください」
「なんや、いきなり――先刻の銃声のことか?」
「お願いですから、早く」
「わけ、ゆうてくれるか?」
小走りで二人に近づく足音に続き、中村が早口に捲くし立てる。三人の距離が縮まり、声量が抑えられた。
話し声は続いているが、内容は切れ切れにしか伝わってこない。やがて、揃って寺の敷地を出て行く。どうやら銃声のもとへ向かうようだ。
好き好んで殺し合いの現場に向かうなど、物好きもいいところだ。危険を避ける行動をとることもこのゲームでは重要なことだと高山の冷静な部分は考える。
だが、それならば余計に、今後の安全のためにも、誰が殺人者かを確かめるだけでも悪くない筈だ。
それにもしかしたら、田原の本心を確かめられるかもしれない。高山の答えを確かめたい気持ちが、そう思い直させ、高山は三人を尾行する事にした。
82 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:18:08 ID:hMr1GO0B0
集落の奥へと、より遮蔽物の多い場所を求めて、高木浩は走っていた。
上本一人では三人を抑えておく事は出来ないだろう。一人もしくは二人が追ってくる筈だ。こちらが武器など持ってはいないと油断して。
暗がりを選んで進みながら、計画を練る。
追っ手が二人――おそらく栗山と中村――であると仮定する。武器と人数の有利。そして二人の性格から、挟撃策など採ろうとはしないだろう。それなら――。
思考は左の爪先が蹴り飛ばした何かが、撒き散らした軽薄で盛大な金属音に断ち切られた。
転倒するほどの衝撃ではなかったが、音の発生源を確かめようと、勢いのままに二、三歩進み、そこで立ち止まって目を凝らす。
星明りに鈍く光輝く金盥と、いくつかの空き缶。
何故、こんなものがここに?浮かんだ疑問符の追求を遮る追跡の足音が、耳に届く。
再び走り出そうとしたその時、左腕と襟首を掴まれ、暗がりの奥――民家と隣接している納屋とおぼしき建物の隙間――に引きずり込まれた。
反射的に声を上げそうになった口を塞ぐ何者かの掌。
「しっ!俺です。中島です」
顰めた声が名乗り、「なんもしませんから、もっとこっちに」と高木浩を引っ張っていき、二人分の身体を壁に押し付けた。
度胸のよさがウリのひとつである中島だが、流石に鼓動が速まっている。背中越しにそれが伝わる。
壁の反対側で二人分の足音が動き回り、やがて、
「この辺で音がした思たんやけど……」
「見失ってもうたね」
「うん。戻ろか」
と、短い遣り取りを残して二人は引き上げていった。
詰めていた息をゆっくりと吐き出し、僅かに中島の緊張が解け、囁き声で訊ねてくる。
「追われているんですね?」
高木浩は頷く。
「クリ、さんぺー、水田さんですか?」
この問いにも頷く。
この集落を探索していた中島は武器を手にした三人を見掛け、様子を探ろうとしていたことを説明する。
83 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:21:40 ID:hMr1GO0B0
「立ち止まったみたいやったから、回り込んで、あそこ塞いでおけば、後の守りはバッチリや、思ったんです」
金盥と空き缶を仕掛けた理由を説明しているらしい。
「よう聞こえへんかったんですけど、なんや、もう、めっちゃ、ただならぬ雰囲気になってきて……そしたら、『ヒロユキさん、逃げてください!』とか『ヒロユキさん、捕まえて』って聞こえて、マジ、俺ん事かと思たんですけど。
ああ、ちゃうなぁとか思て、でも、俺も逃げた方がエエ気ぃして――そしたら、ヒロユキさんが……」 
いまひとつ要領を得ない。こちらの口を塞いだままな事にも気付かないようだ。殺し合いの現場に立ち会う事が初めてなのだろう。それに栗山達とは仲がいい。中島なりに動揺しているらしい。
手を離すように中島の手を軽く叩く。「ああ、スイマセン」と手を離してくれたが、「そや、あっちからなら、もうちょっと様子がわかる思うんですよ」
と、気持ちの切り替えも人一倍早いうえにマイペースな中島らしく、こちらの返事も待たずに高木浩を誘い、またも左腕を掴まれ、引っ張られた。そして思い出したように訊ねてくる。
「ヒロユキさん、武器なんですか?」
右手でズボンのポケットからボールを取り出す。
「俺、アノ金盥なんです……」
情けなさそうな声が「お互い、めっちゃマズイですね」と溜め息をついた。
後藤武が一人で行くという中島の身を案じて、中島のカバンに自身の支給武器――コルトSAAピースメーカーとその弾45LC――を押し込んだ事を知っているのは、いまだ後藤武のみだった。

銃声。さらに続けて三度――やはりこうなったか。

動きを止めた中島の身体が強張り、高木浩の左腕を握る力が強くなる。
(逃げてもいいって、言ったのにな)
栗山達の話し声が風に乗り、途切れ途切れにここまで聞こえてくる。
彼らとの位置関係を探ろうと、視線を上げれば納屋の屋根の向こうに街灯の先端がのぞいている。その街灯があの邂逅の場所だと気付くのに、さほど時間は掛からなかった。
(会わせてやりたかったな……)
思考の隙間にどこからか滑り込んだ不可解な願い。それに何かが揺り動かされる本能的な恐怖に、それでどうなる?結局は同じ事だと、即座に否定を叩きつける。
葛藤とも呼べぬ、瞬時の攻防。その結果を中島に気付かれない程度に、自嘲の形に頬を動かす。
84 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:23:03 ID:hMr1GO0B0
(さて、どうしたものかな……?)
背番号3、中島裕之――ライオンズのショートストップ。まともな日常が続いていれば、今後も中心選手としてその活躍を期待された選手。
今はゲームの終盤まで――背番号3に賭けた何者かにとっては最後まで――生き残ることを望まれている選手。
お互い、自覚の有無は別にしても、求められる役割を演じてみせなければならない立場だ。共にいるわけにはいかない。いや、もしかしたら――。
どちらにしてもそろそろ手を離して貰おうと、口を開きかけるが、またも中島の手に阻まれた。
「まだ、人、いてます」
打って変わって落ち着いた声音。横目で中島の表情を窺う。バッターボックスで見せる研ぎ澄まされた横顔が、集中の密度を物語っている。
しんと冷えた静寂の中、持ち得る全ての感覚を総動員して周囲の気配を読み取ろうとしている。
やがて中島は無言のまま、あの街灯の後にあたる辺りを指差し、あそこまで行こうと身振りする。断ろうにも左腕が掴まれたままだ。
物音を立てないように移動し、五分、十分――どのくらい経ったのだろう。
ブロック塀の向こうから人の話し声が耳に届く。


光量の乏しい街灯に浮かび上がる上本の死体。少しでも生きているように見せかけようと、帽子を深く被らせ、街灯とその後のブロック塀の間に、背中を押し込むように支えさせ、座らせた。
真実を知らなければ、一見死んでいるとまでは気付かれない筈だ。上本の安否を確認しようと近付く相手の隙をつける。
ここまでやれる自分に、水田は冷笑を浴びせたくなる。ここまでやらせる原因は、上本の最後の言葉だ。
何故、あの場であんな言葉を吐ける?上本がこのゲームを甘くみていたからこその言葉だと思う。その結果がこの有様だ。言い返してやりたい言葉がいくつもいくつも脳内に浮かび、止まらない。
ぶつける相手を失った数々の言葉を視線に変えて、上本の死体にぶつけ続ける。分かりきったことであっても返答がない事に、少し、イラつく。
意識して大きく冷たい空気を吸い込み、温まった呼気を指先にかける。少し、かじかんでいる。そろそろ引き上げてもいいかもしれない。
肝心な時に身体が動かないようでは、勝機を逃す。
光に目が慣れすぎてもよくない。囮から引き剥がした視線を周囲に移す。
85 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:24:08 ID:hMr1GO0B0
二つ先の街灯の下に白い人影が浮かび上がった。栗山の腕を突付き、人影を見るように促す。人影は一つ。そのシルエットから中村ではない事は一目でわかる。武器を手にし、ゆっくりとした足取りでこちらに向かってくる。
「誰やろ?」
なんとなく推測はついたが、あえて栗山に振ってみる。
「監督……ですね」
「やりにくそうやなぁ……パスしとこか?なんや釘バット?持っとるし……」
「いえ、やります。誰であろうと関係ありません」
(そう言うとは思ったけど、ホンマ、融通のきかんヤツやな……)
きっぱりとした栗山の返事に、水田は内心で毒づく。
(この調子やと、そのうち、自滅やな)
柔軟性に欠けた動じなさに、遠からず訪れるであろう栗山の未来を予感し、今はそれを好都合とは思い切れない自分に舌打ちしたくなり、気持ちとは裏腹な科白を口にする。
「エエねぇ、その意気や。ほな、いこか」

【残り41名】
86 ◆NRzjVMYad2 :2006/07/17(月) 23:29:47 ID:hMr1GO0B0
>>77
トリも付けず、ageてしまいました。
失礼しました。
87代打名無し@実況は実況板で:2006/07/18(火) 09:00:16 ID:N/6w+D9YO
職人様、乙です。

中島が浩之と出会ってしまった‥‥‥トリハダガタッテシマイマシタ
88代打名無し@実況は実況板で:2006/07/19(水) 03:49:04 ID:7xzxouoD0
保守しときます。
89代打名無し@実況は実況板で:2006/07/20(木) 02:28:10 ID:i4tre17OO
保守します
90代打名無し@実況は実況板で:2006/07/21(金) 03:23:27 ID:+R4bwonWO
銀ちゃん1安打
91代打名無し@実況は実況板で:2006/07/21(金) 20:44:34 ID:9or2GmtI0
ズンドコ捕手
92代打名無し@実況は実況板で:2006/07/22(土) 02:34:54 ID:t4YuPh7qO
ユーティリティプレイヤー(!?)上本
93代打名無し@実況は実況板で:2006/07/22(土) 12:42:25 ID:+XsNmLYFO
保守
94代打名無し@実況は実況板で:2006/07/23(日) 13:02:09 ID:0UvFipSlO
椎木
95代打名無し@実況は実況板で:2006/07/23(日) 21:36:53 ID:sY19zEsa0
yosimi
96代打名無し@実況は実況板で:2006/07/23(日) 22:03:41 ID:YKxcWzi40
上本
97代打名無し@実況は実況板で:2006/07/24(月) 15:06:52 ID:XLWFEGKmO
野田
98代打名無し@実況は実況板で:2006/07/25(火) 01:01:49 ID:WNYeJ8Wg0
細川
99代打名無し@実況は実況板で:2006/07/26(水) 01:48:24 ID:QgaEF5/lO
保守
100代打名無し@実況は実況板で:2006/07/26(水) 19:41:44 ID:k0WPL2mCO
7月のカレンダー見るとなんか悲しい気持ちになる...(つд⊂;)
細川・宮越・貝塚...orz
101代打名無し@実況は実況板で
>>100
(ノ_;)涙を誘うメンバーですね・・・