初芝清―言わずと知れたミスターロッテ。
チームでも貴重な和製大砲、勝負強い打撃、軽快(?)な守備、
そして何よりもその愛されるべきキャラクターで千葉ロッテマリーンズを牽引してきた男。
そして、晩年の初芝の傍らにはこの男がいた。小坂誠―
小坂ゾーンと呼ばれているその広い守備範囲でパリーグ屈指のショートストップとして君臨する。
初芝、小坂の凸凹三遊間コンビは千葉ロッテマリーンズの象徴であった。
三遊間に打球が飛ぶ。
初芝は半歩動くが届かない。見送ると言ったほうが良いだろうか。
しかし、初芝の背後では小坂がキャッチして難なくさばく。
このような光景がたびたび見られたのであった。
そして、2005年―
バレンタイン監督がロッテに復帰して2年目。
快進撃を続け上位争いを繰り広げている。
初芝も出場機会が減りつつあったものの、貴重な右の代打として存在感を発揮していた。
もちろん、次のシーズンも、チームからいらないと言われない限りユニフォームを脱ぐつもりはなかった。
そんなある日・・・
久しぶりに先発出場でサードを守る初芝。ショートには小坂が控えている。
かつての凸凹コンビのそろい踏みである。
『カキーン』
三遊間に強い打球が飛んだ。
「よし」
初芝はいつものように半歩動いて打球を見送る。
小坂なら取れるいつもの打球だ、そう思った。しかし!
『バシッ』
小坂はぎりぎりグローブに収めたものの弾いてしまったのであった。
並のショートなら追いつくこともできない打球だ。
しかし、小坂が取ることができなかったことは初芝にとって大変ショックだった。
「小坂が取れなかった・・・衰えたんだな、小坂・・・」
そして、小坂の体力の衰えを悟った初芝は、
このシーズン限りでユニフォームを脱ぐことを決意した。