プロ野球、本当にあったような嘘の話。

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144代打名無し@実況は実況板で
「まぁ、こんなもんだ」
マウンドへ駆け寄った初芝が開口一番に発したこの言葉に、渡辺俊介は表情を和らげた
昨日「歴史的一勝」を新球団・楽天に献上してしまったロッテナインはリベンジに燃えていた
2ケタ得点を上げる大爆発の打線に呼応するように、渡辺も投球に力を込めていた
だが、ノーヒットで迎えた6回、無情にも楽天長坂の打球はセンター前へと落ちてしまった
「意識はしていなかった」そう試合後に語った渡辺ではあるが
初安打を許してしまった直後の表情は流石に悔しさが隠し切れない様子であった
そんな渡辺を気遣ってマウンドへ向かった初芝の一言が、渡辺の悔しさを一蹴したのだった

「よし、ゲッツーの練習をしよう、狙って取ってみな」
そう言い残して、初芝は自分の守備位置であるサードへと戻って行った
打席に平石を迎えた渡辺は、先程まで曇らせていた表情を再び変え、ボールを握り締めた

「‥ゲッツー、必ず取ってみせる」
145代打名無し@実況は実況板で:2006/05/13(土) 21:30:26 ID:HXTXimsc0
そして、渡辺の放った渾身の一球は、平石の振ったバットの芯を外れ、内野を転がって行った
その打球の先には、渡辺を気遣ってくれた初芝がグラブを構えている
サードゴロゲッツー
渡辺も、ロッテファンも、誰もが打ち取ったと確信した

はずだった


スコアボードのエラーのランプを朧気な表情で見つめる渡辺のもとへ
照れ臭そうに頭を掻きながら近寄った初芝は、開口一番こう言った

「‥まぁ、こんなもんだ」