1 :
代打名無し@実況は実況板で :
2005/10/30(日) 22:17:19 ID:fPIKCoe80
バトロワSSリレーのガイドライン 第1条/キャラの死、扱いは皆平等 第2条/リアルタイムで書きながら投下しない 第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く 第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。 第5条/前後と矛盾した話をかかない 第6条/他人の名を騙らない 第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など 第8条/総ツッコミには耳をかたむける。 第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。 第10条/ガイドラインを悪用しないこと。 (第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
リアルタイム書き投下のデメリット 1.推敲ができない ⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任) ⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任) ⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任) 2.複数レスの場合時間がかかる ⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任) ⇒投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任) 3.バックアップがない ⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任) 4.上記のデメリットに気づいていない ⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。 文章を見直す(推敲)事は考える事につながる。過去の作品を読み込まず、自分が書ければ それでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
7 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/30(日) 22:22:04 ID:fPIKCoe80
以上です。 一旦ageます
8 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/30(日) 22:56:09 ID:fPIKCoe80
保守age
9 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/30(日) 22:58:13 ID:qeRcgWEr0
保守
おお、ついに立ったのか 期待age
11 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/30(日) 23:43:11 ID:fPIKCoe80
もう一回保守age
好きな選手達が殺されるシーン書いて喜ぶのってちょっとビョーキだよ
職人降臨期待保守
ほしゅ
このスレはどういう方向ですすむのかね? リレーオンリー?それとも虎バトみたいに、 色んな職人が入れ乱れる感じか?
16 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/31(月) 01:53:02 ID:tmre2l3Q0
虎バトみたいな感じでいいんじゃないかな リレーでも個人でも色んな職人さんがいていいと思うよ とりえあえず即死回避age
とうとう立ったんだな、
>>1 乙!
>>15 阪神のバトロワ見てきたがリレー以外にもたくさんの職人さんがいるみたいだね
ここもあんな風に幅広く展開するといいな、職人さん入り乱れ期待
ところで即死基準はどんな感じだっけ?
>>17 即死は無くなったんじゃないかな。
それより圧縮が怖い。
なにはともあれ職人さんщ(゚Д゚щ)カモォォォン
遂にかぷバトまで! 期待してます。ほしゅ
各球団のバトルロワイアルを見守るスレの301だが 個人で俺も参加していいか? 圧縮回避保守
21 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/31(月) 09:55:10 ID:rt9m7nHC0
なんか、嫌な予感がしてきたのう
ところで誰かリレーやる気のある椰子はいないか?
リレーなら自分も参加させて欲しい
>>20 頑張れ!職人さんщ(゚Д゚щ)カモォォォン
24 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/31(月) 18:26:10 ID:nhb7lomD0
自分も個人で参加してみたい。 大分先になるかもしれんが…。
正直リレーならやりたい。が、今事情によりパソ環境が無い…とりあえず見守っとく。
リレーなら参加したい…。
ミッキータンも出場すんの?
リレーはとりあえず誰かが投下しないと始まらんよな。
俺は書いた事がないから無理だけど。
>>27 職人にもよるなw
使い方は色々あると思う。
主役は誰かな。個人的には大竹あたり希望だが。サブには尾形、川田役は前田かなぁ。 今年引退の野村の使い方が難しいかも。
ちょっと書いてみる。 明日になると思うので、他に書く人いたら先にドゾー。 1さんとか書いてるのかな?それなら続きで参加したい。 バトルの導入としては、 「経営難→経費削減→人減らして球団再生」って感じの話になるのかな。 すると元が主催者、ピーコが坂持役でいいのか? 参加者が支配下選手全員だと随分な人数になるよな…。 個人的には、マリバトや億バトのように複数人生き残れる設定の方が、 話に色々な展開があって面白いような気がするのだが。
0.プロローグ ペナントレースが終了してから一週間近くがたったある日の早朝 選手たちを乗せた二台のバスは、とある場所へと向かっていた。 「新監督ってどんな人なんでしょう」 「お前に言われんでも会えばわかるじゃろ」 「それにしても昨日の夜いきなり連絡が来た時は焦ったな」 「『明日の朝6時、ユニフォームを持って市民球場前に集合、その他持ち物は特に制限無し』」 「本当は今度の秋季練習の日に初顔合わせのはずだったのに」 「監督も色々忙しいんだよ、しょうがないね」 期待と一抹の不安を抱えながらも選手たちの表情は思いのほか明るかった。 05年、広島東洋カープは最下位という不本意な成績のままシーズンを終えた それでも今回新たな監督を迎え、彼らは、前向きな気持ちを持って来季を見据えようとしていたからだ。 この道中の果てに、今車内に響いている笑い声や楽しそうに喋るその顔が 苦痛、絶望、恐怖、一筋の希望、裏切り、虚構の中の真実、狂気と正気の境界線 断末魔の悲鳴、届かない叫び、止め処ない憎悪、言い様のない悲しみを知って どう変わっていくのか、それはまだ誰にもわからない。 自分たちは広島東洋カープ新監督、マーティ・ブラウンに会いに行くのだと 自分たちは大野屋内総合練習所へ向かっているのだと そう信じて疑わない選手たちを乗せたバスは、無情にもその速度を早めた。 悪趣味極まりない殺戮ゲームのバトルフィールドへと…… 広島東洋カープの選手としての、最後の試合の舞台へと続く道をただひたすらに彼らを乗せたバスは進んでいた。 「いい人だといいな」 これから自分の身に降りかかる 身の毛のよだつ悪夢のような現実を、彼らはまだ知らない。彼らはまだ、知らない。
とりあえずプロローグ
>>31 職人さんキタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!!!!
乙です!続きが楽しみになるプロローグだ。
これからも楽しみに待ってます!
>>30 すみません。
>>1 ですが、何も書いてません。
自分も
>>31 さん同様個人参加を考えてるので。
リレー投下も楽しみにしてます。
34 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/10/31(月) 23:58:14 ID:GoD2vKNZ0
プロ野球もシーズンオフになり、しばらくゆっくりとした生活を楽しんでいた 新井貴浩(25)と黒田博樹(15)はテレビ局の取材を受けていた。 チームは低迷し最下位の苦汁を舐める結果となったが、 前述の二人はタイトルホルダーとして今季、経歴に華を咲かせた。 取材はそんな二人に今季の活躍について聞くという、何とも普通の企画であった。 タイトルホルダー達の取材は思いの外、淡々と進んだ。 インタビュアーの女性アナウンサーの質問には少々的外れの物もあったが、 大体はありふれた、聞かれ慣れた事柄であった。 「それでは新井選手は、『もしも』そのホームランが出ていなかったら今季どうなっていたんでしょうね?」
(おいおい、何だよその質問は) 黒田の眉がぴくりと跳ねた。横では新井が「そうですね…」などと言い淀んでいる。 結果論だろ、そんなもん。黒田は思った。シーズン中にそんなこと考えてやっとらんわ。 …その『もしも』は今だからこそ言える『もしも』だ。 だから、その『もしも』を聞き始めたらきりがないだろう。 『もしも』によって勝つ奴がいるかもしれない。戦力外にならずにすむ奴がいるかもしれない。 (普通聞かんやろ、それは) 黒田はイラついていた。自分でも不思議に思うほどに。 (…今日の俺は虫の居所が悪いな) 隣の新井は何とか無難に答えたらしい。 …新井でもからかって気を紛らわすか。黒田は一息吐くと、思考を切り替えた。
黒田と新井がテレビ局の取材を受けた日から数日後。 突然選手達に召集がかかった。 予定には無い召集に選手達は戸惑ったが、どうやら定時に全員集まったらしい。 ぐるりと仲間達の顔を見渡して、黒田は少しの寂寞感を覚えた。 人数が少なくなった。チームリーダーがいない。 …引退してコーチや球団職員になる奴らは集められていないのか。 それから、二軍の奴らもいない、のか? 結構な人数を前にして正確には分からなかったが、黒田にはそう思えた。 一同が集められたのは大野練習場だったが、その後バスで移動し、現在はやけに広い無味乾燥な場所に彼らは居た。 それにしても。黒田は思考を再開した。 ここは大男たちが入る部屋じゃないだろうに。 天井は無駄に高いが、窓が小さく光が入ってこないため、薄暗くて息苦しい。 部屋の端にはテレビが備え付けられていたが、きっと誰一人見てはいないだろう。 まるで開放感のない体育館か、あるいは天井の高い事務所とでもいうような。
大体こんな…ん? そこまで考えて黒田はハッとした。 違和感。 慌てて辺りを見渡せば、何人もがぐったりとしている。 「何だよ、これ…」 自分自身も原因不明のだるさを自覚し始めた。 一体どうしたっていうんだ!そう呼び掛けたくても、口を動かすのも億劫になっていた。 足がふらつき始めて、壁に寄り掛かる。 ずるずると力が抜けて、重力に従って地に伏すと、意識までもが遠退く。 遠くなっていく意識の中で、黒田はテレビの音声を聞いた。 (ああ、この前の…) テレビの中では新井がインタビュアーの質問に答えていた。 「うーん、『もしも』あのホームランが無かったら…ですか」 「今季は無かったかもしれませんね…ちょっと分かんないですけど」 『もしも』これから仲間同士で殺し合うことになったら? まさか。黒田の意識はそこで途切れた。
携帯からでスマン。改行変だったらさらにスマン。 とりあえず続けられそうだったら誰か書いてみてくれ。俺も今設定練ってるから。
黒田主人公粗いヒロインかw? とりあえず続き期待。
俺も続きを期待。
「01. Reborn」 彼らはどこへ行ってしまったのだろう? かつて、そこには赤ヘル戦士と呼ばれた男たちがいた。 強い力と不屈の闘志を持ち、血に飢えた獣のような激しさと鋭さで勝利をもぎ取っていった男たちがいた。 いったいどこへ行ってしまったのだろう? 長年に渡るBクラス低迷。 勝利に対する欲望の欠落。 多発する怪我人、慢性的な戦力の不足。 これは決して広島東洋カープ本来の姿ではない。 あの赤ヘル戦士たちは、どこだ? ……もうすぐだ。 もうすぐそれは戻ってくる。 眠りについた本能が目を覚ます。
男は胸の高鳴りを抑えられずにいた。 部屋の前面にしつらえられた、大きなモニター。 そこにはまだ、何の光もない。 だが数刻の後には、数十の赤い点が映し出されることになっている。 それは初めは大きな密集を示し、すぐに弾けるように散るだろう。 だがすぐに、その赤はお互い 引かれ合うように近付き、そしてあるものは光を失い… そして最後には、もっとも強い力を持った赤だけがそこに残るのだ。 それこそが、彼の求める赤い光星。 血に飢えた獣のような激しさで勝利を奪い取る、プロ野球選手という名の戦士。 準備は整った。 さあ、プレーボールの声を響かせよう。 広島東洋カープを取り戻すための手続きが始まる。 そうだ、これはただの手続きでしかない。 「Reborn 赤ヘル再生」 今、カープは生まれ変わる
一応リレー用プロローグの続きのつもりで、 主催者側のプロローグを書いてみた。 続けられそうだったらもうちょい設定練ってみる。
45 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/01(火) 13:29:28 ID:qXGGdwug0
保守
たくさんキタ━━━━━━ヽ(゚∀゚)ノ━━━━━━ !! 個人職人さんもリレー職人さんも超ガンガレ!!
リレー版の設定についてちょっと考えてみた。 ・支配下全員だと多すぎて大変なので1軍のみというのは賛成 →線引きはどうする?今年1軍の試合に出た選手? →面倒くさかったら主観で。40人くらい? ・会場は広島という球団の立地的に、普通に瀬戸内海の島でいいかも ・2005年引退・退団選手は含まない ・主催者は元、進行役はピーコで決まり? ・禁止区域制・6時間ごとに放送・24時間死者ゼロで全員爆破などは定番でいいと思う →爆弾は首輪でもチップ埋め込みでも。自分は盗聴器は無いほうが書きやすい… 細かいところは書きながら決めていくとして、大枠が漠然とあった方がいいな。特に参加メンバー。 あとは主催者側の生き残れる人数の条件。複数なら5人くらいかな。なんとなく。 やはり一人だけの方がという意見が多かったらそうしたい。 他の職人さん方の意見を激しくキボン。
連投スマソ。参考に。 今年一軍試合出場のあった選手。数字は背番号 小山田(12) 黒田(15) 森(16) 大竹(17) 佐々岡(18) 田中(19) 永川(20) 高橋(22) 横山(23) 広池(28) 仁部(34) 佐竹(36) 梅津(39) 長谷川(42) 大島(46) 天野(48) 玉山(52) 林(53) 小島(58) 木村一(27) 石原(31) 倉(40) 山崎(00) 東出(2) 尾形(4) 浅井(6) 比嘉(10) 新井(25) 福井(38) 福地(44) 松本高(45) 栗原(50) 甲斐(57) 木村拓(0) 前田(1) 緒方(9) 廣瀬(26) 森笠(41) 末永(51) 嶋(55) 井生(64) 天谷(69) 合計42名。しかしこれだと河内岡上鈴衛などが入らん。
>>47-48 乙。リレー用プロローグ(選手側)を投稿した者ですが
参加メンバーは大体そんな感じでいいと思われます。
が、リレーという形態である以上、書き手が書きたい人・話があると思うので
岡上とかキャラが立っている奴も、ある程度は入れてもいいと個人的には思う。
ただ人数増えすぎで伏線回収が困難になると、リレーは非常にやりづらくなる。
あとプロローグで引退した選手等は居ないと勝手に匂わせてしまったが、
そこら辺は後からの創意工夫次第なんで他の職人さんで書きたい人が居たらどうぞ。
自分は松本奉絡みや澤崎絡みのエピソードなんかはアリだと思う。もちろん野村も。
舞台設定は大体同意。
盗聴器のくだりは、あるという設定でも後からはったりだと分かる、等色々できる。
あとは生存者数だが、これも初めは一人という設定でも、後から変わる可能性もある。
本家バトロワもそうだったし。個人的にはやっぱり生存者は複数だろうなと思う。
1.通り過ぎる日常 窓から差し込む穏やかな陽光が微弱なバスの振動と相俟って ふとすると眠り込んでしまいそうになるくらいに、とても心地良かった。いや、むしろ心地よすぎて 「こうあったかいと眠くなるな…」 目をこすって尾形佳紀(背番号4)は思わず呟いた。 寝不足という訳では勿論無い、やはりこれは「さあ寝ろ」と言わんばかりのこの環境のせいだと思う。 尾形は欠伸をかみ殺しながら、外を眺める事にした。 小さな子供を連れた母親、笑顔の老夫婦、ランニングをしているおじさん 色々な人たちや色々な物が視界の中に入っては遠ざかっていく。 目まぐるしく変動する窓の外の光景を見ながら尾形は思った。 (そういう意味では野球と同じか) 広島東洋カープの成績は近年低迷中。 尾形は今年、シーズンを通して活躍してみせると意気込んでいたものの 人生三度目の膝の怪我によって今シーズン中の復帰は絶望と言われ、その後リハビリの毎日を送っていた。 治っても内野はもう無理かもしれないと言われたが、尾形もにそれはよくわかっていた。 確かに内野手としての自分にこだわりがあるが 今は内野でも外野でもいい、とにかく治して試合に出たい。それだけを胸に抱いて毎日を送っていた。 (『急がば回れ』…だな) 早急に事を運びすぎて人生四度目の怪我なんて事になったら元も子もない じっくり怪我と向き合ってから、あのグラウンドへと戻りたい。 「それにしても昨日の電話には本当に驚かされたっけ」 そう呟きながら尾形は右ひざをさすった。
秋季練習時に初めて顔を出す予定だったブラウン監督だが 事情があり今度の秋季練習に来る事が出来なくなったらしい。 だから日程を早め、顔合わせと自己紹介だけを先にする事になった 『明日の朝6時、ユニフォームを持って市民球場前に集合、その他持ち物は特に制限無し』 そして今に至る訳だが、何にせよ早く会えるのはいい事だと尾形は思っていた。 「でもわざわざ分ける意味はあるのか…?」 今年一軍出場機会が一度でもあった者は今日で 今年一度も一軍出場の無い者は明日、そう聞いた。 「…………まあいいか」 ふとそう思ったものの もしかしたら内容が違うのかもしれない、 それに人数的にも二日間に分けた方がメリットは大きいのかも…と勝手に納得する事にした。 「……………」 尾形は暇を持て余したかのように少しの間ぼんやりしていたが 突然何かを閃いたかのように言葉を発した。 「浅井さん、ブラウン監督がどういう方か知ってますか?」 新監督は以前うちに在籍していた事もあるいい選手だったらしい。 先程から読書に勤しんでいる隣席の人物は 確か新監督の現役時代一緒にプレーをしていた事がある筈。 もしかしたら新監督の人柄などもよく知っているかも知れない そう思い尾形は軽く浅井に問いかけたが、数十秒たっても期待した返事は返ってこなかった。
「あの、浅井さん…?」 不審に思い顔を覗き込んでみると 浅井樹(背番号6)は本をひざの上で広げたまま静かに寝息を立てていた。 「ありゃ、寝てるよ」 (やっぱりこうあったかいと誰でも眠くなるよな) 尾形はうんうんと頷き、浮き上げた腰をおろした あと10分もしたら練習場に着くのだから、今起こそうかとも思ったが あまりにも浅井が気持ちよさそうに寝ているので無理に起こすのも気が引けた。 (着いた後に起こせばいいかな) 「あー……ってうわっ!」 「尾形も食べるか?」 通路を挟んだ左の座席から何かを掴んだ新井の腕が伸びてきた。 球団ロゴとカープぼうやの顔が印刷された赤いそれは、広島名物カープカツだった。 笑顔の新井の足元の方ををちらりと見ると、駄菓子屋にでもありそうな カープカツがぎっしり詰まった小さい透明な箱が置いてあるのが見えた。 確かに持ち物制限はなかったが――――果たしてこれはいいんだろうか。 「ありがとうございます」 少し疑問に思ったものの、新井からそれをありがたく受け取った。 包装紙を破り、かつをかじると香ばしいソースの風味とかつの旨味が口いっぱいに広がった。 久しぶりに食べたそれは、なんだか懐かしいような不思議な感じがした。 黙々と食べながらふと前を見ると。 左側の前方の席に座る野村の横顔が見えた、何やら隣の緒方と楽しそうに話をしている。 彼が広島東洋カープを勇退したのはまだ最近の事であるが 何故その彼が今ここにいるのか。
その旨を野村本人に聞いてみた所彼曰く『大人の事情』というものらしい。 今日はオーナーも直々にやって来るとの話なので 何となくではあるが尾形にもその『大人の事情』は理解できた。 新しい監督にこれから会いに行くと言うのに不謹慎かもしれないが 『野村監督』というのも楽しみな気がする スローガンは「カープ愛・野球愛」といった所だろうか 熱血的に選手を指導する野村の姿がありありと脳裏に浮かんできた 彼だったら持ち前のリーダーシップを発揮してきっといい監督になるんだろうな…… そこまで思考を運んだ所で 「あ、……あれ?」 尾形は視界と体ががぐらつくのを感じた。 言い方を変えれば一種奇妙な浮遊感とでもいったところであろうか。 (なんか、眠気が…もう少しで着くのに………………) 既に眠っていた他の者たちと同様に、尾形が深い眠りにつくまでには そう時間はかからなかった。 これから始まるゲームが、いつかは覚める悪夢ならばどれだけいいだろうか 悲しいかなこれら全ては『悪夢の様な現実』 彼らは何も知ることは無く、日常という不確かなものを奪い去られ ゆっくりと、そして確実に、悪意に満ちた地へと向かっていた。
>>48 河内・岡上・鈴衛を加えるなら、在籍年数もプラスするとかは?
年数だけはベテラン並なのに…と理由付けも出来るし。
あとは
>>49 さんにほぼ同意。
生存者も複数の方がやりやすそう。
301氏乙です! 野村が気になる…。
>>49 プロローグ通り、引退選手は参加なしでいいと思う。
野村、澤崎のあたりは外部から救援行動とかで動かしてもいい。
生存者は初めに一人という設定だと、
・行動を共にしていても、最終的に敵になる可能性を捨てきれない
(一緒に生き残るには、主催者に叛乱を起こすしかなくなる)
・マーダーは基本的に単独行動になる
と思う。
最初から複数人生き残る可能性があると
・誰かと組んだ時点で、そのまま最後まで一緒にいける可能性があるチームに成り得る
(上手く言えないのだが、一気に全幅の信頼をおいてしまえる)
・マーダーのグループ化が可能
(協力して他の選手を殺しにして俺達が生き残ろう、という発想もあり得る)
これは話の進め方として結構大きな違いになると思うので、
出来れば初めに決めておきたい気がする。
もちろん、この「主催者が最初に決めた人数」と「結末の生存者数」が揃う必要はないし。
>>48 >>54 基本は
>>48 のメンバーで、鈴衛その他は職人さんの裁量でいいかなと思う。
ちなみに鈴衛は試合には出てないが一軍登録はされているので、
その辺りの理由ででメンバーに入れてもいいかも。白濱も同条件だけど。
>>57 >プロローグ通り、引退選手は参加なしでいいと思う。
これは最初の設定で、ということでいいのかな。
後から出すのも職人次第ということでFA?
>>59 自分もそれでいいと思う。
はじめる前からあんまり細かく設定を決めすぎると
後々職人さんたちが困ることになる気がするしね。
あとリレーに置ける川田役や誰がマーダーなのか、とかも
最初に決めずに職人さんたちが書いていく過程で決めていけばいいんじゃないかな。
>>60 うん。それでいいと思う。
話を破綻させないように、最初に投下した職人の設定(主にゲームのルール)を、
各職人達で面白く展開していくという流れが一番面白いと思うよ。
前回は宮島だったけど今回も宮島でおk? あそこなら地理を詳しく書ける人もいそうだし険しい島だからバトロワ舞台にはもってこいなんだよな。
それだとあまり宮島の地理にあかるくない人に書く事が出来るのか心配になるな 今までの他球団のバトロワとかだと 現実に存在する島を利用したり架空の場所を設定したり色々なパターンがあったが やっぱり職人たち全員に一度聞いてみない事にはなんとも言えんね
>>62-63 新しいバトロワだから、個人的に宮島以外がいいな。
架空の島の方が書きやすいかな、とは思う。
連投スマン。
虎バトの現行スレの過去ログを読んでいたら、
リレー職人専用の打ち合わせ掲示板というものが
存在するみたいですね。
>>61 で書き込んだ事を撤回するわけではないが、
リレーに参加する職人さん達はやはりある程度書きたい
設定・人物・場面があると思うんだ。
そう思うとやっぱり打ち合わせが必要かな?
先に投下したもん勝ちというより、公平に話を進めていくには
必要かな、と。
どう思われますか?
同意、ネタバレになりそうな打ち合わせをここでやるのもあれだろうから やっぱり職人専用掲示板はあった方がいいな。
俺は読むだけの人間だけど 職人さんたちの打ち合わせを先に目にしちゃうと 新作を読む楽しみがそがれてしまうから できたら舞台裏は舞台裏でやってほしい。 殺し合いの始まりを待つなんて不謹慎だけど いよいよ本題に入るのが楽しみだー!
保守しときます。 職人さんがんばれー!
69 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/02(水) 22:53:31 ID:ZBNhczpG0
今日は301氏来ないのかな(´・ω・`) あとあげ保守させていただきます
期待保守
2.混乱 嫌な夢を見た、夢だと自覚しながら自分はそれを見ていたものの 家族が泣いている光景なんて夢だとわかっていてもそうそう見たいものではない。 何故泣いているのかと問いかけてもみんなは首を振るばかりで まったく要領を得る事が出来なかったが、みんなとても悲しい顔をしていた。 「……ん」 天野浩一(背番号48)は突然の背中の痛みに顔をしかめた。 誰だか知らないが痛いじゃないか、嫌な夢を終わらせてくれた事には感謝するけどさ 背中をさすりながら天野がゆっくりと後ろを振り向くと バツの悪そうな表情をした栗原健太(背番号50)が 「あはは、あの、すいません 起こそうと思ったんですけど勢いが付きすぎたみたいで思いっきり叩いちゃって……」 謝る気があるのかないのかよくわからない言葉をもごもごと口にしている。 こいつらしいというか何と言うか…。 「まあそれはいいんだけどさ、ここどこだ?」 辺りを見回すとここはどこかの学校の教室の様に見えたが、見覚えはまったくなかった。 (あれは………) 右斜め前の席に突っ伏してまだ眠っているのだろう緒方の、その前の席 そこだけ座る者も無くぽっかりと空いているのが何故だかとても気になった。 更に周りを見回してみても、やはり空いている席は中途半端な位置のそこだけだった。 何か意味があるのだろうか…?
「さあ、俺にもさっぱり」 そう言って栗原は首をひねったが、ふと何かを思い出したかのように 「あれはなんですかね」 そう言って真っ直ぐ先を指差した、普通なら黒板や教壇がある筈のその箇所には この『学校の教室』という場所におおよそ似つかわしくない 大型のスクリーンが設置されていた。 「…あれも気になるけど、それ以前にここはどこなんだって話だよな」 確か自分たちはブラウン新監督に会いに行くという名目で朝早くに市民球場に集まり バスに揺られて大野練習場に向かっていたはずだが…… ここは一体どこなのか、何故自分たちはこんな所にいるのか 首につけられたこの銀色のものは一体何なのか 頭が混乱するばかりで何もわからない、わからない事だらけだ。 少しの間栗原と面をつき合わせて考え込んでいた天野だが 「みんな起きたかい?」 その声にばっと後ろを振り返ると 突然教室の扉が開き、黒いスーツに身をつつんだ初老の男が入ってきた。 天野がその初老の男が広島東洋カープ現オーナーの松田元だ という結論に至るまでにはそれほど時間を要さなかった。 「みんな起きろ、朝だぞ朝」 少しの間松田元がパンパンと手を叩いていると まだ眠っていたチームメイト達も徐々に起き出して来た。
そして、ここにいる全員が覚醒するのと同時にパニックが始まった 不安は不安を呼び、誰にもわかるはずの無い答えを求めて大声を上げる者もいる。 少しの間その光景を松田元はスクリーンの横で静かに眺めていたが 静まる様子のないざわめきの勢いに一度大きくため息をつくと。 「ちょっとこっちを見てもらえるかな」 「君たちも彼みたいにはなりたくはないだろう?」 ブン、という音とともにスクリーンはある光景を映し出した。 その言葉が発せられたと同時に画面いっぱいに映し出された映像 それは鮮明で無く多少ぼやけてはいるものの、映し出されているものが何かくらいはわかった。 ここと同じ古びた教室、ここと違う点を挙げるとすれば そこには今自分たちが座っている様な席が一つも無いこと。 そして 教室の真ん中に映る異質なものの存在。 そこに映っていたのは、うつ伏せに倒れているユニフォーム姿の人物。 顔はわからないものの丁度心臓の位置に穴の開いたその背中には 赤いシミの様な物がべったりと広がっていたが、NOMURA.7の文字が見てとれた。 「…………あ……」 松田元以外の全ての人間が息を呑んだ。 嫌な汗が背中を伝うのを天野は感じた。 (何だこれ…これじゃ…これじゃまるで野村さんが…………) “死んでいるみたいじゃないか” その言葉をぐっと飲み込み、バスの中の事を思い出し天野は思った。
辺りを急いで見回してみても、野村の姿はどこにもなかった。 すーっと音を立てて体中の血の気が引いていくような気がした。 「あ……あ……」 自分は栗原の前に座らされていた、 緒方さんの前の席、中途半端な位置なのにあそこだけ空席だった。 あの空席は、あの空席は、あの空席は―――――――――――――― 「これを見てもわかると思うが、野村君は死んだ」 いつの間にかざわついていた声は止み、静寂だけが室内を包み込んでいた。 その中で、あくまで笑顔を崩さずに松田元は言葉を続けた。 「君たちも彼の様になりたくないのだったら 少しの間静かに僕の話を聞いてくれるかな?」 その有無を言わさぬ口調と先程受けた衝撃によって 選手たちは黙って頷くほかなかった。
>>リレー職人 俺もリレー楽しみにしてる、頑張れ
76 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/03(木) 11:42:48 ID:xilreZG70
職人さんキテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! 乙です。 本格的に始動してきましたね。 リレーはどうなるんだろう・・・・。
77 :
携帯の人 :2005/11/03(木) 14:58:09 ID:xZQ7p6x5O
リレーの設定練るための掲示板借りてきたんだが、携帯からなので 色々設定いじれなかった…それでも良ければ何かの際に使ってください。 アドレスは目欄。
>>71 乙です!!
天野ヲタの自分としてはいろいろドキドキ(;´Д`)
79 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/04(金) 01:53:03 ID:7c0YnHrG0
保守
3.自己矛盾 松田元は静かになった選手たちの顔を見渡し、満足そうに言った。 「今から君たちには殺し合いをしてもらいます」 松田元がその言葉を発すると同時にスクリーンに映ったものは消え、 ただ白を湛えるだけとなった。 (イマカラキミタチニコロシアイヲシテモライマス) 膝の上に重ねた手を、がたがたと震わせながら 木村拓也(背番号0)はごくりと喉を鳴らした。 自分の理解の範疇をこえた突然の事態に、木村の頭の中はかつてないほどに混乱をきわめていた。 (ああ) 頭が本当にどうにかなってしまいそうだ。 「君たちの命をかけてのバトルロワイアル、とでも言ったほうが理解しやすいかな」 しんと静まり返った教室の中に松田元の声はよく響いた。 「野村君にはこちら側についてもらって このゲームを円滑に進める手伝いをしてもらおうと思ったんだが」 その為に彼だけ別室に運んで話をしたんだが…思いのほか強情でね、 そんな事は御免だと突っぱねられてしまったよ、だから殺した、僕としても残念だったがね
「それじゃ…今から詳しい説明を……」 矢継ぎ早に話を進めていく松田元の声を遮ったのは 福井敬治(背番号38)のあっけらかんとした語調による言葉だった。 「あの、オーナー、これって何かの冗談ですよね」 野村さんの、野村さんの事も全部全部、どっきりか何かですか? 声のした方向に顔を向けると、福井が青ざめた顔をしてそこに座っていた。 (お前、顔青いぞ…体だって震えてるじゃないか) その言葉を発した福井自身、その言葉を信じていない様に見えた。 それに、笑顔を顔に浮かべてはいるものの、松田元の眼も言葉も真剣そのものだった。 (でも、野村さんの事は…あくまで『映像』の中の事だし…もしかしたら…) 福井の言ったその僅かな可能性を木村が信じたかったのも事実だが。 肯定も否定もせずに 松田元はそれも想定内だと言わんばかりに福井を無視して 唐突にうちの前監督、山本浩二の現役時代の美談を話し出した。 「うちの前監督の現役時代の事を君たちは知ってるかな?」 「山本さんはとても素晴らしいプレーヤーだった 野球を勝負と割り切ったその思い切りに溢れるプレーは見るものを皆魅了していた。 何より彼はチームプレー、クレバーなプレーというものを知っていた。 勝利の為ならバントだってなんだって、立派にやってのけた。」 遠くを見るように目を細めて、夢見るように松田元は言葉を紡いだ。 「監督としては能力不足だったようだが、そう、彼はプレーヤーとしてなら最高の人物だったよ」
「それだけに残念だったなぁ、彼も先程見せた野村君同様 バトルロワイアルに最後まで反対していてね」 現役時代同様クレバーな判断を期待したんだが… 彼のお陰で少々厄介な事になった、ゆえに そこでいったん言葉を止めて、今までの夢見るような顔つきから 何を考えているのかわからない薄ら寒い笑顔を浮かべた表情に戻ると。 「このゲーム遂行にあたって邪魔な存在、と僕は判断したんだ」 松田元が手を一回叩くと、教室の扉からは、松田元同様黒スーツに身を包んだ プロ野球選手の自分から見ても体つきのいいと思える見知らぬ男たちが 何かを乗せた担架を運んできた こいつらは誰だ?そう思うまもなく 目の前に広がった惨状に今度こそ木村は両手で目を覆う事となった。 (全部これはすべて現実なんだ、これから先に起こるだろうことも全部全部) 暗にそう言われた気がした、打ちのめされた様な気がした 野村の場合とは違い今度こそ等身大の現実。 その担架の上には、話の渦中の人物が変わり果てた姿でそこにその存在を主張していた。
(野村さんはバスの中で元気そうにしてたじゃないか…だって…今だって…)
今更だが上の1文を
>>74 の一行目に脳内補完してほしい
84 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/04(金) 14:20:44 ID:UtDRLm6N0
保守あげ
86 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/05(土) 01:21:20 ID:iSoT3ZoM0
301氏のバトロワは、もしかして主人公が決まってない…?
>>51-53 を見る限りでは尾形かと思ったけど、違うよね?
どっちにしても続き楽しみに待ってます。
87 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/05(土) 11:20:30 ID:dgYV20iq0
保守
88 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/05(土) 12:31:55 ID:H5RibPfBO
主 人 公 は 鈴 衛 以 外 認 め な い
>>88 見せしめに・・・ゴホッゴホッ
いや、何でもない
チビは悪役になってしまうのか?
>>88 リレー職人さんの方にしろ301氏の方にしろ
そもそも鈴衛が出るのかどうかすらわからんぞw
92 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/05(土) 16:15:58 ID:dgYV20iq0
保守
主人公は神か2323か粗いさんかな
4.誤解される男 佐々岡真司(背番号18)はエースナンバー18を背負った 広島東洋カープの現最年長者でありながら、プライド高いという事は決してなく むしろ投手でありながら優しすぎるきらいがあるくらいだった。 それは彼の長所でもあり短所でもあったが この場合においてそれは悲しいことに、短所でしかなかった。 佐々岡の口から漏れたのは悲鳴でも嗚咽でもなく 風が抜けた様な奇妙な息と、誰も聞き取れないくらいに小さな小さな言葉だった。 「嘘だろ………」 誰でもいい、嘘だと言ってほしかった。 先程の野村の映像とは違い、これは紛れもなく目の前ある現実だった。 これが現実ならば先程の野村さんも多分………… 「僕は野村君を運んできて実際に見てもらう方がいいかと思ったんだがね」 彼の場合ほら、死んで間もないだろう?まだ血も乾ききっていなくてね 流石の僕でも彼らにそんなものを運ばせるのは躊躇われた訳だ、 折角のスーツが真っ赤に染まるなんて可哀想じゃないか 松田元の言葉も何もかもが遠いもののように感じられた。 「さあ、今度こそ、信じてもらえたかな?」 君達を助けようとして山本さんも野村君も死んじゃったんだ、現実逃避はもう止めよう 誰も聞いてはいない様だったが、 勝ち誇ったように松田元は更に声を張り上げた。 担架の上に存在する、もう人ではなくなったもの。 それはユニフォームを着ているというより 上半身にはずたずたに裂けた赤いストライプのはいった布切れを身に纏っていると言った方が正しい。
生きている人間ならばまず有り得ない奇妙な方向へ曲がった首 “彼”のトレードマークでもあったサングラスは捻じ曲がり、同じく捻じ曲がった首の脇に置かれていた。 その一文字に切られた腹の傷からは、薄いピンクの色をした内臓器官がとび出し 何かぶよぶよとしたゼラチン質の黄色いものがのぞいているが、あれは脂肪だろうか。 「…………」 それは全身赤黒い血で塗れていた 遠くから見たらサンタクロースにでも見間違えられるんじゃないかと思えるくらいに。 ホラー映画にでも出て来そうに悪趣味な、血塗れサンタクロース。 濁ってしまったその目にはもう何もうつってはいない、もう何も見てはいない 色々な事があったが、長い間苦楽を共にしてきた人は、もうそこにはいなかった。 もう血は完全に乾ききっていたが 山本浩二その人の死を示す、むせ返る様に異質な物の臭いだけはそこに生々しく漂っていた。 佐々岡はそれから目を逸らす事が出来なかった。 「う、ぁ…うわぁあああああああああああ」 耳を劈くような誰かの悲鳴 それが引き金となり、静まり返っていた室内はまた一気に騒然となった。 嗚咽する者、目を覆うもの、壊れた様に笑う者 様々な反応を見せる選手たちを見て松田元は満足げに微笑んだ。 その悲鳴に我に返った佐々岡は 口の端から机上に置いた自分の腕に落ちる赤い滴を見て そこで初めて佐々岡は自身が唇を歯で強く噛み締めていた事に気がつき それを慌ててユニフォームの袖で拭った。
そして騒然とした室内で一人、佐々岡は ふいに頭に浮かんだ文字の羅列について考えていた。 『人はおのれの役割に応じた人物を演じるべきだ』 (なんの台詞だったかな…ああ、思い出せないや) どこで知った言葉なのか定かではなかったが それは今の自分に相応しい言葉だという風に佐々岡は感じた。 今のカープの選手においての最年長者は自分、その自分が落ち着かないでどうするのか。 それに………野村がこの場にいたとしたらきっとこう言うのだろうから。 「年長者のお前がしっかりしないでどうするんだ」 (そう、自分は、最年長者、落ち着け落ち着け) 佐々岡はともすれば震えだしそうになる体を必死に押さえつけ 出来る限り平静を装った、そしてそれは成功したと、少なくとも佐々岡はそう思っていた。 「じゃあ今から話の本筋に入るね、もしもまた誰かが僕の話の邪魔をしたら…」 松田元がそこで言葉を切ると。 スーツ姿の男達がどこに隠し持っていたのだろう 昔見た『セーラー服と機関銃』に出てきたようなソレを構えている様子が佐々岡の目に映った。 (はは、本気だねこりゃ………) それと同時に佐々岡はある覚悟を決めた。 (これから先何が起こったとしても、俺は最後まで自分を演ろう、ああ、絶対に。) 佐々岡が感情的にならないよう、ともすれば不安に曇りそうな表情を 出来る限り笑顔に近づけようと懸命に努力した結果、 気味悪く引き攣り、歪んだ微笑みを顔に形成する事に成功。 そして口の端には血を拭ったような跡もうっすらと見え――――――――― そう、実際他の者のからすれば今の佐々岡は『怖い』以外の何者でもなかった。 そしてその事実が、後々の彼の運命をも危うくしていたのだが そんな事は今の彼が知るところではなかった。
>>86 ロワが始まった後の話の主軸(中心)人物達は大体決まったが
基本的に全員が話の主役だと俺は思う。
98 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/05(土) 17:14:52 ID:uxxdNB6i0
自分の中では勝者は鬼緒方・天才前田・スズエさんなんだがなぁ・・・
ピーコ。・゚・(ノД`)・゚・。 まあええことよ
>>90 64氏のバトロワではそうだったな
しかし正義キャラのチビは想像つかんw
保守
102 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/06(日) 14:33:39 ID:W/xVAkwK0
保守
>>100 一瞬ソフバンのオーナーのことかとオモタ>正義キャラ
104 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/06(日) 16:52:00 ID:W/xVAkwK0
保守
これからみなさんにはちょっとパチスロをしてもらいます!! わーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい(中堅、コーチ)
106 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/07(月) 00:03:44 ID:SUcU2Ypr0
>>105 勝者は森笠か?ww
とりあえず期待保守あげ
100 想像がつかないからこそ見てみたい気もするが… やはり悪役か?
>>107 だってあの東出が、
・誰も殺せない。
・人を殺すぐらいなら自決する。
・狙われている他の選手を守る・身代わりになる。
・こんなゲーム理不尽だ!選手全員で一致団結してこのゲームを壊そう!
ってキャラになると思うか?w
「あの」東出がwww
見てみたいかも(*´Д`)
善人の東出と悪人の粗いさんだけはどうしても想像できない。 いっそのこと最初に反抗して殺される役が東出とかw
かといって最初に反抗して殺されるほど要領悪くもなさそうなあたりが…w 難しいけど書き甲斐有りそうな感じだね。 職人様方頑張ってください。
とりあえず 前田or緒方=桐山?
どちらかと言えば緒方のが適任だが個人的にはラロッカあたりにやって欲しい。 外国人選手が目立つバトロワ意外と少なくない?
ミッキーが突然凶暴化して東出を襲う!! 緑の芝生を走れ!逃げろ!東出!!
64氏作品では鬼神ともに白キャラだったからな。 黒くてカッコいい二人が見たい。 しかしこの二人が揃ってマーダーに回ると、対抗できそうな奴がいないw
5.プライドの跡に芽生える感情 俺は誰にも負けたくないし、負ける気も勿論無い。 黒田博樹(背番号15)は、悲しみとも怒りともつかない表情をして ただ黙って目を瞑っていた。 目の前で少なからず世話になった2人の人間の死を見たというのに 頭の中には悲しみや怒りの感情は微塵も浮かんでこなかった。 我ながら薄情だと思う、冷たい人間だと思う でも、それよりも俺は――――――――――――――― 黒田はある『言葉』を聞いた後から もやもやとしたものが腹の中で膨れ上がっていくのを感じていた。 「………ざきこうじくん」 ぼんやりと視線を扉のほうに移すと、幾分強張った表情を浮かべた山崎浩司(背番号00)が 重そうなザックを抱えて廊下へと出て行く所だった。 (なんでこんな状況になってるんだっけ?) どうも自分は山本浩二の変わり果てた姿を見てから後の記憶が曖昧らしい。 「あいつらがまたあれを、山本さんだったモノを運び出した後―――」 今の今まで自分の目の前で繰り広げられていたことを思い返してみた。 今の今まで文字の羅列としてしか捉えられなかった言葉の集合体 『ここ数年広島東洋カープの成績は低迷、Bクラスの常連、挙句今季は最下位だ』 『監督やコーチの挿げ替えはきくが選手の挿げ替えはきかない…不公平じゃないかい?』 『低迷の原因は上だけの責任じゃあない、君たちにも責任はあるんだ』 『公式戦に出場するのは一軍の選手、そうだろ?』 『よって今僕はここに宣言します、ここにいる00番山崎君から98番フェリシアーノ君迄全員に バトルロワイアルを行ってもらい、最後まで生き残った3人だけをまた元の日常へと帰してあげまーす』 『生き残った3人は破格の待遇で迎えてあげるよ』 『詳しい説明もその生き残った3人にだけ実施します』
ああ、オーナー様は本当に身勝手だな、そう思ったのを覚えている。 『さて、バトルロワイアルのルールは簡単』 『制限時間の3日以内に生き残り人数を3人にまで減らせばOK』 『6時間毎に定時放送を流すのでよく聞いておくようにね』 『誰が死んだとかどこが禁止エリアになったとか重要な事を流すので 絶対に聞き逃さないように』 『一応君達がここを出る時には 最低限の食料と水、地図とコンパス…それとランダムで武器を一つ渡します』 当たり外れはあるけどそこは臨機応変に頑張ってくださーい 『ここは以前は人も住んでいたけれど、今は無人となった島です、この島の中ならどこを歩いてもおーけー』 『ただし、禁止エリア内に足を踏み入れたら 君達が首につけている首輪がどかーん!…と爆発するので、 放送はよく聞いておかないと命取りになるよ、まあ聞きたくはないだろうけど』 『制限時間の3日を過ぎた時点で生き残りが3人以上残っていた場合も 全員の首輪を爆発させるので…そのつもりで頑張ってね』 はたから見て滑稽なほど大げさな身振り手振りをつけて 松田元が説明していたのを覚えている。 そこでふと回想を止め、恐る恐る手を首筋に運んでみると、 ひやりとした感触から何かが巻きついているのがわかった。 これが本当に爆弾なのか―――正直胡散臭いことこの上ないが、多分事実なのだろう。 黒田はそこで一息つくと、また回想に耽った。 『救済措置としてもう1つ条件を出します』 『イスカリオテのユダ、知ってるかい?』 『要は裏切り者ってことさ』 『君達の中に3人、こちら側についた裏切り者がいます』 『その3人は後の2人が誰かという事は知りません』 『その3人にはこちら側の駒として動いてもらう事になっているのだけれど』 『3人がどんな理由にせよ全員死んだ時点でも、このバトルロワイアルは終了します』 『最低死ぬのは3人でも済むんだ、有り難く思ってくれよ』
最低3人、誰が裏切り者か分かっている場合でしか有り得ない可能性。 『…まあ誰が裏切り者か、なんて事は僕側の人間か…もしくは本人にしかわからないわけだけど』 『怪しい奴を片っ端から殺していくかい?それで裏切り者が見つかるといいんだけどねえ』 確かその話が出た後からざわめきの感じが変わったのを覚えている。 まあそうかもしれない、今まで一緒に戦ってきた仲間の中に裏切った奴がいるなんて聞いたら 誰だって疑心暗鬼に陥るのが普通だと思う。 『以上、簡単なルール説明でした』 『同じ穴の狢なんだからチャンスは皆公平平等にね』 『期待してるからみんな頑張ってくれ』 (今年は俺何時にもまして頑張ったつもりやけどな) 完投数は最多11、最多の15勝、 横浜の三浦に次いではいるものの防御率はセリーグ2位。 同じ穴の狢。それを聞いた後、急速に心が冷えていったのを覚えている。 その言葉が黒田の自尊心を大いに傷つけたことは言うに難くなかった。 「……俺もよくよく運のない男だな」 ふと、今年ユニフォームを脱ぐこととなった同期の顔が浮かんだ 同期のドラ1、自分の1番のライバルでもあった男、でももうここにはいない。 それが俺にとって良い事なのか悪い事なのかはわからないが――――――― 黒田はキッと松田元の顔を睨み付けた。 自チームとはいえ元々投手はみんなライバル、突き詰めればみんな『敵』だった。 その「投手」が「ここに存在する全ての者」に変わっただけの事 上等だ、俺は負けない、俺は最後まで生き残ってお前も殺してやるよ。 生きて帰ってまた野球をやるんだ、今以上を目指して、もっともっと。 「次、0番木村拓也君」 悪夢のゲームがちょうど始まりを告げた頃、東京では 山本浩二が残したもの、松田元曰く『少々厄介な事』が今まさに動きだそうとしていた。 「ねえちょっと、これから二人でホテルどう?」
新作乙です! く、黒田?黒田? ユダ・・・・・元さん何考えてんだよ元さんorz 厄介なことって何だ?最後の台詞ちょっおまw
続きが23しく気になる展開・・・黒田はマーダー? ユダ設定は新しいなー。
ユダは誰なんだ!滅茶苦茶気になる! 黒田はマーダーっぽくないな。責任感強そうだし生き残りを纏める役かも。 そしてその集団を紛れ込んでいたユダに自分以外皆殺しにされ、血濡れのユダと対峙する2323・・・ みたいなのを妄想した。文章に起こせないのが残念だが。 やっぱり裏ではホリエモンとかナベツネとかが暗躍してるとかかな。 じっちゃんの影に苦しむ元ちゃんとか・・・。
ユダという字を見て北斗の拳を思い出した自分って一体・・・orz 駆け込み訴えのユダですな
>「……俺もよくよく運のない男だな」 よく見たらシャアキテルコレ
>「ねえちょっと、これから二人でホテルどう?」 野球バトロワで初めて(?)の濡れ場クル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
微妙に匂わす程度の描写なら、確か浜バトにあったと思うが>濡れ場
126 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/08(火) 19:02:05 ID:spg/vn1B0
新作期待!マダー?
>>123 自分も北斗の拳思い出した。
併せて何故か東出が…
128 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/08(火) 22:53:44 ID:VzCD7/4+0
保守
リレー続きマダー?
130 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/09(水) 11:46:48 ID:qyjy6UGU0
保守
続きが23しく気になる〜 ユダが誰か、勝手に予想してるけど当たるかなw
番外.裏切り者の見る風景1 誰かやる気になった奴が待ち伏せしてるんじゃないかと 終始身構えながら校舎を出たものの、誰も待ち伏せなんてしていなかった。 ―――――とはいっても自分の出発はかなり早かったから、後の奴等はどうなのか そこは自分の知った所ではないが。 男は草の生い茂った獣道を一歩一歩踏みしめながら歩いていた。 10月半ばにしては少々肌寒い時分、風が足元を吹きぬけた。 やはり甘すぎると思う、まあ松田元もそんなことだろうと考えて 自分や後2人の人間を用意したんだろうが。 それにしても甘すぎる、未だ銃声の1つも聞こえてきやしない。 『甘いんだよ君達は、野球は一種の勝負だ、決して甘ちゃん同士の友情ごっこじゃない』 男は星の瞬いている夜空を見上げた、月と星の瞬きだけがこの場を照らす明かりだった。 開始の放送が流れてから数十分がたったが、そろそろだろうか。 草むらの中にどっかりと座り込み、男はザックの中の物をあらため始めた。 ペットボトル3本と缶詰が3つ、地図にコンパス、ランダムの武器それと―――――― 手の平に納まるくらいの大きさの機械。 その液晶画面上ではたくさんの光の点滅が移動を繰り返していた。 レーダー、これを使えば行動を優位に進めることが出来るのは請け合いだ。 「………………」 そして自分は出来るだけ点滅の多い方向へと進んできた。 人と出くわすか出くわさないかのギリギリのライン。 これを持っていて尚、自分がこの点滅の中心に陣取ったのには理由がある。 男は今出したものを全てまたザックの中へと戻すと ユニフォームのポケットからあるものを取り出した。
携帯電話、持ってきていた奴は他にもいると思うが この島で電話を使うと電波の関係から全てB−9……あの校舎内にしかつながらない。 だが逆にそれを利用すれば誰にも疑われずに松田元と連絡が可能だ。 元々は参加者が勝手に他所と連絡をとらないようにと 用意された妨害電波らしいが、その点では便利だ。 もっとも普通に電話が使えたところでこの島内ではせいぜい圏外表示が関の山だろうが。 男はそれもザックの中へとしまうと、 右腕につけられた何の変哲もない時計を見た。 全員に支給されたデジタル時計、それは丁度PM:6:30を示していた。 『1日目 PM:6:00 バトルロワイアル開始』 疑心暗鬼にさせたはいいがそれで全員が島のどこかに隠れました 3日間誰一人死ぬこともなく過ぎ、全員の首輪が爆発、バトルロワイアル終了、勝者0。 自分も死亡、それじゃ洒落にもならない。 男はまたザックを開けると中から新たにもう一つの『物』を取り出した。 最初から彼のザックには、ランダム武器とは別にもう一つの物が入っていた。 今彼の手の中で月の光を反射して黒光りしているそれは名前をKimberCustomUといった。 これには弾が一発しか込められていない、それはこれを使うのが一回きりだから。 銃なんて使った事はなかったが最初から込められた弾を撃つだけなら誰にだって出来る。 『きっかけが必要なんだ、それは何でもいい、ほんの些細なことでも』 「必要なのはきっかけ、か」 そう、きっかけ、疑心暗鬼。
一度でも疑ってしまったらその瞬間にすべてのものが敵となる。 でもそれはまだ完全じゃない。 松田元、オーナー、向こう側の人間の言葉だけじゃ駄目なんだ。 あくまで仲間『選手達』の中に修羅の幻を見せない事には完全じゃない。 まず自分がやるべきこと、それはきっかけ作り。 男は空に銃口を向けると、その引き金を引いた。 きっかけ作りの為だけに用意された拡声器付の銃は空気を切り裂くような音を空に木霊させた。 余韻の残る静寂は、男にとって心地よいものだった。 「………もうこれは必要ない」 男は銃を木々の茂みに放り投げると、その場を足早に立ち去った。 明確な理由付けなんて必要ない。 後の2人が誰かわかった所で協力はしない、自分とは関係無い。 今回の話は断ろうと思えば断れた、それでも自分が断らなかったのは もしもこの試合に自分が勝てたら本当の自分になれる気がしたからだ。 だから話にのった、後悔はしてない、自分の為に自分は動く。 その為に何を犠牲にしても―――――――――――――――― 男の鳴らした一発の銃声が、幾多の人間の運命を狂わせていく。
ユダキタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!! 301氏乙です。 …いったい誰なんだorz
136 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/10(木) 12:08:48 ID:PfFSH7M60
面白いなー 301氏GJ!
137 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/10(木) 19:46:20 ID:iEx94UjH0
面白すぎ。
今更バトロワかよwwwwwwwwwwwwwwwwww
301氏GJ リレー職人さんもщ(゚Д゚щ)カモォォォン
140 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/10(木) 20:59:36 ID:3GLeN8670
( ̄粗 ̄)ノ「保守しますよ」 (* ̄粗 ̄*)「職人さん達には僕のカッコイイ活躍を期待してますよ」
保守
保守
144 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/11(金) 21:16:34 ID:/cTvqerY0
保守あげ
(・ ε ・)「保守だよ」プップクプー
保守
保守
148 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/12(土) 21:12:49 ID:iTCcShuL0
保守
149 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/13(日) 01:04:23 ID:JBwyQm/Z0
保守
150 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/13(日) 07:25:32 ID:POosgwk60
保守
151 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/13(日) 16:27:07 ID:cDupONHA0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
152 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/13(日) 16:28:41 ID:IuIhMYSJO
ほしゅ
6.信じたい、信じられない 梅津智弘(背番号39)は青の塗装も禿げ掛けた古いベンチの上に腰をかけると 何をするでもなくぼんやりと空を見つめていた。 こんな状況下だというのに何時にもまして空は綺麗だった、故郷の空同様に。 「昔はこういう場所にもよく来たっけ」 以前ここは公園だったのだろう、砂場とブランコそれにベンチだけの少し寂しい公園。 「信じられないな…、今でも夢みたいだ」 こういう言葉はいつか好きな人にプロポーズした後にでも言いたいものだ――――― ここでそんな事を愚痴ってもしょうがないが。 「どうしたって変わらずにはいられないんだろうな」 梅津のその呟きは誰に聞かれることもなく、荒涼とした風にかき消された。 「あー、やっぱり暗いな」 この島に人が住んでいた時分は夜も公園に灯りをともしていただろう 街路灯も、今はその役目を果たさずそこにその姿をさらしているだけで 灯りも無しに風の吹きすさぶこの場所は、ただただ寂しいものだった。 「これで曇りだったりした日にはもう本当に真っ暗だったろうな」 月と数多の星が出ているだけ自分達は幸運なのかもしれない。 (幸運、か………) こんな事に巻き込まれている自分達が果たして本当に幸運と言えるのか ふと疑問に思ったが、これが不幸中の幸いという物だろうか。 「それにしてもここはどこなんだろうな」 得体の知れない何かに追い立てられるようにしてここまで走ってきたが 実際のところ、一体ここはどこなのか。 梅津は強く握りすぎてくしゃくしゃになった地図に視線を落とした。 「えーと、俺は学校を出てから途中まで川沿いに歩いて、走って」 「川は途中で曲がったけど俺はそのまま真っ直ぐ走って走って走って…」 「ここに着いたんだよな?うん、確かそうだった」 「B−4……であってると思うけど本当の所どうなんだろう」 誰がいるわけでもない虚空に向かい、一人自問自答する男の姿は はたから見れば滑稽なものとして映ったかもしれない。 それでも本人にしてみれば滑稽どころか真剣そのものだった
止まらずに何事か話し続けていないと何かが壊れる気がしたからだ。 オーナーよりも何よりも今は自分以外に誰も存在しない空間の静けさの方が怖かった。 梅津はおもむろに立ち上がると、ベンチの後ろへと回り込んだ。 長身の梅津にとっては少しばかり低すぎる柵の向こう側には 満面の空が広がっている、そしてそのずっと下方には暗い夜の海が月と星々の陰影を描いていた。 「あー、いっそ清々しいくらい何も無いな」 梅津はしばらく黙って柵の向こう側を眺めていたが 一向に何も変わらない景色に諦めたように首を振ったあと、ベンチへと戻った。 「見たくないんだけどな、正直」 梅津はベンチに深く腰をかけてザック下に敷いた地図を取り出すと 覚悟を決めたかのように深呼吸した後、もう一度それを開いた。 地図を裏返すとそこには名簿があった、名前と背番号だけが書かれた簡易なものだが それでも参加者を確認するには十分な物だった。 ご丁寧にも背番号8山本浩二、背番号7野村謙二郎の名前まで記入されているそれは 梅津にとっては頭の痛くなるような代物でしかなかったのだが。 「全部で49人、生きて帰る事ができるのはたったの3人」 もういない…その2人の名前を除くと自分を含め人数は全部で49、 2人の立派な人間の命を奪い、更にまた49人の命が理不尽な形で失われるかもしれないなんて そんな事があってもいいものだろうか、自分達はただ野球がやりたかっただけなのに。 「俺らの命ってそんな軽いもんなのか?」 「死にたくないよ」 死にたくない、かといって自分には人を、仲間を殺せそうもなかった。 「他の人だってそう思ってるよ、死にたくない、それでも人なんか殺せないって」 梅津のポツリと呟いたその言葉は、彼の本心でもあり彼が自分に吐いた嘘でもあった。 梅津は、この公園にやってくるまでの行程を思い出した。 何故自分はここに来る途中すれ違った新井さんやロマノさんから逃げたのか。 川の向こう側で自分の名前を呼びながらこっちに向かって手を振っていた新井と 学校を出てすぐの林の中で、自分に声を掛けてきたロマノの姿が梅津の脳裏をよぎる。 話もろくに聞かずに逃げた際、彼等に共通していた悲しそうな表情が今も梅津の目からは離れなかった。
本当に自分がみんな――仲間の事を信じていたのならば、話を聞くべきじゃなかったのか。 (俺って馬鹿だ、彼らは俺を信じてくれていたのに、俺は彼らを信じきれなかった) 野球において信頼関係というのは絶対的なものだと思う。 投手と捕手、投手と野手、選手と監督、その他色々。 仲間を信じることが出来ないのなら野球なんて出来ない。 自分は何をした?信じるどころか走って逃げたんじゃないか。 「……でも、他にどうすれば良かったんだよ」 少しの錯乱状態にあったあの時は、逃げる以外に自分の選択肢は存在していなかった。 ―――――今も、彼ら…仲間を信じたいが完全には信じることは出来ない。 それは先ほど聞こえたある『音』に起因した物じゃないか、梅津は漠然とだがそう思った。 10分程前の事だ、やっぱりもう一度あの2人に会って話を聞こうと ここから足を踏み出そうとしたその瞬間に聞こえたあの音は――――――― 「季節外れの花火とか……じゃないよな、多分」 自分でもわかっている、こんな誰も住んでいない島の中で花火なんて上がる筈もない事は。 あの音が銃声じゃないなら何だと言うのか。 「銃をもらった誰かは…やる気、なのか?」 そういえばオーナーが言っていた『裏切り者3人』 その裏切り者とやらがやる気なのか、それともそんな事は関係無しに やる気のある奴がいるのか、そもそも裏切り者なんて本当にいるのか 「俺にわかるわけないだろ」 「…あー…俺はどうすればいい?俺に何が出来る?」 誰も信じられない今、歩いて一体どうなるというのか。 茫洋としたこの島内を当てもなく歩く気には到底なれそうもなかった。 死にたくない、殺したくない、何をするという目的もない、こんな自分に一体何が出来る? 梅津がふと思いついたようにザックの中をごそごそとさぐり 取り出したのは、現実味のない重い物。 「ハリウッド映画とかに出てきそうだよな…はは、本当」 わざと過剰なリアクションを付けてみたものの、気分は重かった。
ベレッタM92、付随されていた薄っぺらな説明書にはそう書かれていた。 実弾15発装填済み、当たり武器、おめでとう…か、一体どこが当たりだと言うのか 自分は銃なんて触ったことも使ったことも無いというのに。 それでもどことなく優雅なその外観のそれからは一種の気品すら漂って見えた。 ただ、この場の風景からは浮いて見えたが。 (暗い公園のベンチに座り込んでるユニフォーム姿のでかい男も同様だけどな) 梅津は苛立ったように右拳をベンチに叩き付けた。 とはいっても、彼は投手だった故に知らず知らず力を加減していたので それを見ていた第三者…佐々岡真司(背番号18)には、 彼が力なく肩を落としたという風にしか見えなかったのだが。 【残り49人】
3/3で収まらなかったんで2つに分けた、すまん
梅ちゃんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! 301氏乙です。 さ、佐々馬様が気になる…。
159 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/14(月) 12:18:20 ID:DBsg4ek40
161 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/14(月) 22:04:10 ID:XNFotUn10
162 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/15(火) 02:38:51 ID:z14OcS170
保守
ほふ
164 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/15(火) 08:52:02 ID:z14OcS170
ほ
165 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/15(火) 15:33:23 ID:z14OcS170
ほ
保守
続き期待保守
168 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/16(水) 12:34:33 ID:CnH2CDMI0
保守
1.目覚め(1/4) 「うっ」 誰かの呻き声で新井貴浩(25)は覚醒した。頭はまだ、霧の中を彷徨っているようにぼんやりしている。 やっとのことで分かったのは、呻き声は自分が発したものだったということだけだ。 …それにしてもいつの間に眠ってしまったのだろう。 召集に応じて集まり、同級生たちとふざけて笑っていたところまでは覚えている。 …何かがおかしい。 ひんやりとした床の温度が手のひらに伝わって、新井はまじまじと床を見た。 皆が集められたあの部屋は、こんな風にモルタルの床だったっけ? それから何故自分は寝てしまったのだろう。寝不足などではなかったのに。 「何が…」 ふと横を向くと横山竜士(23)が床に突っ伏していた。 ご丁寧に右肩を上にして、肩に負担がかからないようにしている。 (無意識に利き腕や肩を庇うのは本当なんだな) (それからこいつ、ユニフォームなんていつ着たんだ?) 無性に可笑しくなって、笑おうとして…凍り付いた。 自分も目の前の同級生と同じく、ユニフォームを着ていたからだ。 自分だけではない。狼狽して辺りを見回すとチームメイトがばたばたと倒れていて、その全員がユニフォームを着ている。 ただならぬ雰囲気を感じて、新井は思わず横山を揺すった。
(2/4) 「何だよ…やめろよ」 寝ていた横山は乱暴に揺する新井の手を面倒臭そうに払い除ける。 それでも揺すり続ける新井に半ば観念したように、横山は身を起こした。 「何だあ?ここどこだよ」 ぽかんとしている横山に新井は状況を説明しようとして、自分に向けられている訝しげな視線に気付いた。 「…お前、何、それ」 横山の視線は自分の首元に向けられている。新井は恐る恐る首元の違和感に向けて手を延ばした。 ヒヤリ。無機質な金属の冷たさが指先に伝わる。 「な…何だこれ?」 「自分で付けたんじゃねーのかよ」 「ちょっ、これどうなってる?」 「どうなってるも何も、首輪か?それ…」 横山は笑った。しかし、その笑顔が数秒後凍り付いたのを新井は見た。 横山も同様に金属の冷たさを首に感じたに違いない。 「ちょっと待てよ、何だよこれ!」 横山が突然上げた大声に眠りを遮られたチームメイト達が、次々と身を起こす。 たちまち部屋の中が疑問とぼやきで一杯になった。
(3/4) 「何でお前らユニフォーム着てんの?」「馬鹿、お前も着てんじゃねえかよ」 「ええ?着替えた覚えなんかねーよ」「つーか、どこだ?ここ」 誰もが明確な答えを欲しがっている状況で、新井は周りをきょろきょろと見回した。 どうやら最初に集められた場所から、知らぬ間に移動したらしい。 (でも、どうやったらこんな大男ばっかり移動できるんだ?) 今現在自分達が居るのは、学生時代を思い出す、まるで教室のような…いや本物の教室か。教壇と黒板がある。 教壇の上にはテレビが載っているが…あれはちゃんと映るのだろうか、配線が全く無いように見える。 窓の外は暗くてよく見えなかった。集まったのは朝だから…どうやら結構な時間眠っていたらしい。 部屋の隅の方では前田智徳(1)が仏頂面で腕組みをしていた。 少し離れて、緒方孝市(9)が本当に静観しているといった感じで座っている。 浅井樹(6)も腕組みをして後方から状況を見ていた。そのさらに横には佐々岡真司(18)がいる。 (きっと大丈夫だ) 新井が少しホッとしたとき、部屋の扉が突然開いて誰かが慌ただしく駆け込んできた。
「静かに!」 大声で皆を制止したのは、見慣れた顔であった。 「奉文?…何だよ、それ」 紛れもなく今季まで一緒に同じグラウンドで汗を流した仲間。 その仲間が、機関銃を自分達に向けていた。 静かにしなければ殺す、とでも言うかのように。 「冗談やめろよ、なあ」 松本の隣には同じく戦力外を通告された田村がいた。 同じように機関銃を携え、こちらに向けている。 新井は目眩を感じた。納得できる説明が欲しい。 静まらない室内に呆れたかのように、松本奉文が銃口を少々下げた。 そして、引き金を引いた。 パラパラパラ…と雨が強く打ち付けるような音が止むと、室内に静寂が訪れた。床に無数の穴が空いて埃が舞っている。 「……全部これから説明されますよ」 松本の声に冷たさと得体の知れない恐怖を感じ、新井は身を震わせた。 おかしい。明らかにおかしい。これは夢なんじゃないか? 混乱する元チームメイト達をよそに田村がテレビの配線を繋いでいる。 横で松本が元チームメイト達に銃口を向けている。 夢だと言ってくれ!新井の声にならない叫びをまるで無視するかのように、 テレビの画面がブンッ、と音を立て見えるようになり、聞き覚えのある声がスピーカーから流れだした。 【生存者残り42人】
2.『選抜』開始(1/2) 「皆、突然の集合ご苦労じゃった。驚かせてすまんかったのぉ」 画面の中には笑みを浮かべた「元監督」の山本浩二がいた。 「さて、具体的な説明の前に今回集まってもらった理由から話そうかの」 室内に緊張の糸が張り巡らされたかのように、誰もが身動き一つせず画面に集中している。 「…これから『選抜』を始めようと思ってな。真の赤ヘル戦士の選抜を」 「皆も分かっていると思うが…今季のチーム成績はお世辞にも良いとは言えん。むしろ最悪といってもいいくらいじゃ」 「あまりの腑甲斐なさに球場からファンは離れ、買収っちゅう不愉快な話題まで出てくる始末だしのぅ」 「…ワシはもう一度強いチームに戻ってほしいんじゃ。もう一度、強い赤ヘル軍団にの」 「その為には少々の犠牲を払っても、一度壊さんと」 「つまり皆には新生カープの礎となってもらいたいんよ。闘志と実力無き者は新生カープは必要ないけん」 「じゃけぇ『選抜』から漏れた闘志と実力無き者にゃぁ…残念じゃが死んでもらう」 死ぬ?戦力外の喩だろうか?つまり試合で判断すると?ではその試合とは? 多くの選手がこの時点で元監督の意を理解した。 しかし理解はしても納得はできない。できるはずもなかった。 そして画面の中の「元監督」は笑顔のまま最終通告をした。 「皆にゃぁこれから殺し合いをしてもらうけぇ」
(2/3) 「な、何かの冗談だろ?」 誰ともなく呟きが漏れた。張り詰めていた緊張の糸は切れ、ざわめきが広がる。 「静かに」 松本が再度ざわめきを制した。田村が素早くリモコンを操作する。 画面の元監督が笑顔のままで静止し、映像はビデオ録画されたものだと分かった。 「…まだ信じられないんですか」 やれやれ、といった口調で松本が話し始めた。 「僕らも最初半信半疑でしたけど、球団は本気ですよ」 その証拠をお見せします、そう言って松本が田村に目配せする。 軽く頷いた田村はまたビデオを再生させた。 「…とは言っても、やっぱり皆いきなりは信じられんと思うけぇ…」 「木村一喜」 名前を呼ばれた木村一喜(27)の肩が揺れた。 「…お前にゃぁ借りがあったのう」 「森伊蔵の借り、返してもらわんと」 田村がビデオを一時停止すると、どこからともなく電子音が聞こえてきた。 ピッ、ピッ、ピッ 木村一喜は立ち上がったままポカン、としている。どうやら電子音は木村の首輪から発せられているらしい。 ピッピッピッ 段々と音の間隔が狭くなってきて、新井はその音に何かぞっとする響きを感じた。 ピピピピピピピピピピ 突然音が止んだ。次の瞬間、選手達は目を見張ることになる。
(3/3) 閃光。爆発音。 赤い。 首が、首から上が、ない。 木村一喜の体は糸が切れたように、膝を折って前のめりに倒れた。 そこら中に脳しょうと頭蓋の欠片と血をばらまいて。 「う、うわあああああ!」 部屋の中で誰かが嘔吐する水音と、叫び声とが混ざり合う。 松本が制止するが、その声ももはや届かない。 そんな松本をよそに、田村が機関銃を「木村一喜だったもの」に向けた。 「やめろ!!」 誰かの叫び声の後、強い雨の音と共に赤い飛沫が周りの選手にかかった。 木村の血を浴びた選手の顔や、ユニフォームに赤の斑点ができた。 …もう誰も言葉を発しようとはしなかった。室内に血の臭いが立ちこめる中、沈黙がその場を支配していた。 【木村一喜(27)死亡 生存者残り41人】
3.ルール説明(1/2) 「…これで分かって頂けましたか」 松本の声とともに田村がビデオの再生ボタンを押した。 途端に画面の元監督が動き始める。 「…ほいじゃあ、具体的な説明に移ろうかの」 「ルールは簡単なようで難しいけぇよく聞けよ。まず皆の首に付いている首輪じゃが」 皆が身を固くした。先程木村一喜の命を奪ったものだ。何人かがそっと手をやる。 「ああ、下手にいじると爆発するけぇ」 手をやった選手が慌てて手を引っ込める。 「それは皆の行動を抑制するためのものでな、あやしい動きをしたら、さっきの一喜みたいになる」 つまりは、反抗することができない。 「それから禁止区域に入ったとき。禁止区域は放送で伝えるけぇ、ちゃんと聞けよ」 「ちなみにこの建物から出たらすぐ離れたほうがええ。出た3分後に禁止区域になる。 それ以降ずっと禁止区域じゃけぇ、迂闊に近寄るなよ」 つまりは、逃げ続けることもできない。
(2/2) 「武器や地図、ある程度の飲食物はこっちで用意した。出るときにもらっていけ」 「特に地図はすぐに各自確認せぇよ。ここは小さな島じゃけぇ」 「それから、ある意味これが一番重要じゃが…最終的に選ばれる赤ヘル戦士は6人。その人数以内に入った奴はまた晴れて野球ができるっちゅうわけだ」 「じゃあ最後になったが、次期監督からの激励の言葉を聞いてくれ」 画面が切り替わり、引きつった笑顔のマーティー・ブラウンが現れる。 「ミナサン、Good luck!」 プツン、と音がして画面が漆黒を映しだした。田村がリモコンの停止ボタンを押す。 「…ただ今午前0時。『選抜』を開始します」 元チームメイトの声が、殺し合いの開始を告げた。 【生存者残り41人】
4.ある師弟の対峙(1/4) 「背番号00、山崎浩司」 抑揚の無い声で名前が読み上げられる。 新井は横の同級生をそっと見た。目が合う。 (あいつら二人は球団側の言いなりになってるのかな) (知らねえよ。でももうすぐ分かるだろ) 新井は横山の意味することが分からず、首を捻った。 (ほら、) 横山の視線の先を辿って、新井はようやく理解した。 「…背番号1、前田智徳」 相変わらず抑揚の無い声で松本が名前を読み上げた。 そして室内の注目が松本と前田に注がれる。 「…奉文」 静寂のなかに前田の声が響く。 「…何スか、前田さん」 松本の表情は変わらない。 田村から武器等が入っているデイパックを受け取って、前田は松本と真正面から対峙した。
(2/4) 行動は突然だった。 前田が松本の頬を殴ったのである。体格差があるとはいえ、松本の体が傾ぐ。 田村が機関銃を前田に向けた。 「撃つな」 体を立て直した松本が田村を制した。 「気が済みましたか、俺を殴って」 「……」 「何ならもう一発殴りますか?……ただし」 松本がゆっくりと銃口を前田に向けた。 「……出来れば、の話ですが」 前田は黙って松本を睨んでいたが、舌打ちすると部屋の出口へと向かった。 新井は目の前の出来事が信じられなかった。恐らくそれは選手全員の思いだったに違いない。 目の前にいるのは、以前のチームメイトではない。血の通わぬ別の「何か」だ。 (まさか奉文が前田さんに…) (やる気みたいだな、球団も) 新井の目には、部屋を出るときの何となく寂しそうな背番号1が焼き付いていた。
(3/4) 「背番号2、東出輝裕」 名前を呼ばれた本人、東出輝裕(2)はデイパックを受け取ると小走りに部屋を出た。 東出にはある確信があった。 恐らく、前田はあまり遠くには行っていないはずだという確信が。 そしてその確信は的を得ていた。前田智徳は建物のすぐ外に佇んでいたのである。 秋風が木々を揺らす中にただ一人。 「前田さん」 「おう、東出か」 予想外に明るい前田の声に東出は少し、ほっとした。 「あの…」 「撃たんかったな」 「え?」 「奉文、撃たんかったな」 確かにそうだった。いつでも引き金を引ける状況で、松本は引き金を引かなかった。 (でも) 東出は思った。 (前田さん、何ていうか、ロマンチックすぎやしませんか) 前田は引き金を引かなかったことを理由に、松本に希望を見出だしたいのだろう。 しかし東出の考えは違った。
(4/4) (要するにパフォーマンス、かな) いつでも殺せるぞ、殺し合いは始まっているんだぞ、という。 (殺さなかったのは前田さんが生存者の有力候補だからだ) だけど。 (前田さんが信じてるなら、それも、まあ、いいでしょう) 「前田さん、僕そろそろ行きます」 「何?一緒に行かんのか」 「色々確かめたいことがありますし、やらなきゃいけないこともあると思うんです」 「…そうか」 「なあチビ」 立ち去ろうとする東出に前田が声をかけた。 「お前、何を考えとる?」 「……ただもう一度野球がしたい。それだけです」 「その為にお前は人を殺せるのか?」 「……さあ、どうでしょうね」 前田はそれ以上追及しなかった。 はぐらかしの言葉を残して、背番号2が夜の闇に消えるのをただ見ていた。 そしてそれを見届けた背番号1もまた、暗闇へと溶けるようにして消えていった。 【生存者残り41人】
キタ―――( ^ω^ )―――!!!
リレーも始まったか。 楽しみが1つ増えたなw
184 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/17(木) 01:46:35 ID:o6/NPEV60
リレーキタコレ!!
誤爆すまん
187 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/17(木) 10:58:40 ID:FUhXwC2J0
キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
うはwwwリレーテラタノシミスwwwww
189 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/17(木) 22:02:38 ID:Ob+S603v0
期待アゲー!!!!!
まとめサイトって欲しい? 希望があれば作ってもいいかなと思ってるんだが まとめと言っても、職人さんが書いてくれたのそのまま貼るだけだけど。
192 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/17(木) 22:52:45 ID:B9VOHKXX0
盛り上がってキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!
>>190 是非お願いします!!
193 :
190 :2005/11/18(金) 00:28:32 ID:fRWn568i0
194 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/18(金) 13:04:52 ID:+tjWiIts0
おもしろいのか、このあそび^^;
196 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/18(金) 13:18:44 ID:E5xFOE1p0
ああ
おもしろいから未だにたくさんあるんだろうな
>>193 GJ!
保守
199 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/19(土) 14:14:41 ID:3zGmJ2C00
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
怖い〜!でも面白い〜!。゚(゚´Д`゚)゚。
>>153-156 梅ちゃんキタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!!
ラロッカがしんだ
レイボーンもしんだ
デイビーも・・・
保守
保守
保守
7.数字は踊る 月明かりの元、鬼気迫る形相で商店街をひた走る一人の男の姿があった。 腕も足も鉛が入っているかのように重く、腹の傷は焼ける様な痛みを発していたが 廣瀬純(背番号26)はそれでも息を切らせながら必死に走っていた。 「げほっ、ごほっ……っ……」 まだ少ししか走っていない筈なのに、酷く、息が苦しい。 喉はからからに干上がっていて咳き込む度にひゅーひゅーと鳴った。 それは致命傷では無いにしろ、廣瀬が思っているほど 腹の傷が浅いものでは無いという事を明確に示していたのだが 今はそんな事にかまけてる余裕も無かった。 背負ったザックの重みも傷の痛みに拍車をかけていたが 震えるほどに冷えていた空気の存在もまた 熱を持った傷と全力疾走で火照った体の前に、その影を潜めていた。 それとは逆に、運動後普通なら赤く火照るはずの顔色も 大量の血が体から抜けつつある現在は蝋燭のロウのように青白くなっていたのだが。 走るたび、足に体重をかける度にどろりとした血が体を抜ける 元々赤いユニフォームを更に赤く赤く染め上げていく。 夜の帳が下りてしまったこの時間帯でさえなければ 白地に赤いラインの入ったユニフォームの一部分が赤黒く染まっていく様が 誰の目にも明らかになっただろう。 「……やっぱ、気休めでも、あっちを優先して願っておけばよかったかな」 わらにでも何にでも、縋り付けるのなら縋り付いてりゃ良かったのか 夢中で走る彼の脳裏にはある光景が延々とフラッシュバックしていた。 流星、鬱蒼とした森の中、赤い数字が踊る、5、5、5、5、ああ、もううんざりだ
所々欠けている石畳の道を進み、寂れた商店街をおぼつかない足取りで抜けると 緑で覆われた小さな丘があった、そのそれ程高くは無い丘の上には樫の大樹がそびえている。 廣瀬は大樹を目指してその歩みを速めた。 彼は自分が『走って』いるものだとずっと思っていたが、 怪我の影響もあいまって実際の所は千鳥足でゆっくりと『歩いて』いるに過ぎなかった。 「しんど……」 結構な怪我をした上で重いザックを背負いながら坂を上るのはきついものがある。 万全の状態ならただの緩やかな丘にしかすぎないにしろ、だ。 数分間、ゆっくりと、確実にその斜めの地面を廣瀬は登っていった。 丘、それはこの時の廣瀬にとって終わりの無いもののように思われたが それでも終わりというのは何にでも均等に訪れるもので あと数歩歩けばこの小山の頂上という所までに登りつめた。 そしてまた廣瀬が一歩足を踏み出した瞬間、体が浮いた様な気がした、いや、実際に浮いた。 何もないところで躓き宙に浮いた体はすぐその重力にしたがって地面へと投げ出された。 ああ、何もかもが上手くいかない、あと一歩で上につくのに。 草の上に倒れこんだ廣瀬が横を見ると、横手のススキ群生地の中には 自分と同じように宙に投げ出されたザックが転がっていた。 危ないかと思ったが、少したっても何の異変も起こらなかった所を見るとどうやら支給品は無事のようだ。 廣瀬は一時傷の痛みも忘れ、ほっと胸をなでおろした。 「………!」 ふいに目と鼻の先にある頂上から、風が草や木々を揺らす音とは違う人為的な足音が聞こえてきた。 廣瀬は急いで起き上がろうとしたものの 怪我による貧血に加えた疲労も祟り、今すぐには起き上がれそうに無かった。 足音は、自身の目の前でその歩みを止めた。 恐る恐る顔を上げた廣瀬の目に映ったものは きょとんとした表情で自身にその手を差し伸べる新井貴浩(背番号25)の姿だった。 「大丈夫か?」 廣瀬は目を見開いた。 彼の脳裏ではまた、数字が踊り始める。 【残り49人】
5!?ユダは5の付いてる背番号なのか??
だとしたら… 黒田とか松本、嶋もユダ候補か。
他のヤル気になってる奴なのかもしれん… 誰なんだorz
もう味方じゃないし
ほしゅだよ
hoshu
とまべづなのかそれとも栗か おらなんだかわくわくしてきたぞ
保守
保守
5「主将気質」(1/2) 部屋の隅に座る比嘉寿光(10)の足元で、こんなところにまで飛んできた木村一喜の血の鮮やかな赤と、吐瀉物の澱んだような色とが交じり合う。 あらかた吐き尽くし、胃液だけしか出てこない。 それでも苦しそうに咳きこみ続ける松本高明(45)の背中を、比嘉はずっと撫で続けた。 「背番号9、緒方孝市……さん」 名前を呼ばれた仲間の出立を見送ろうと視線を動かす度に、首から上のない人間の体が嫌でも目に入ってくる。 襲ってくる己自身の嘔吐感には必死で堪えていた。 (大丈夫…大丈夫だ。ここで弱気な顔をしちゃ駄目なんだ!) 比嘉はまだ入団2年目ではあったが、高校生主体のドラフト戦略をとる広島には、大卒の彼より若い選手が何人もいた。 高明もその一人だ。 いつの間にか…本人の自覚もないままに、比嘉はそういった選手の面倒を見る役割を自分に課していた。 単に年齢の問題だけではない。 間違っても、彼らより自分の方が能力が勝っていると思ったわけでもない。 何か理由があるとすれば、少年野球から大学に至るまで、全ての在籍チームで主将を勤め上げた彼自身の気質に他ならなかった。 「背番号10、比嘉寿光」 奉文の声が比嘉の出立を促した。 高明がようやく体を起こす。その肩を支えて、大丈夫かと問いかけた。 「じゃあ、俺行くからな。頑張れよ、高明」 「…比嘉さん」 「大丈夫。心配するな。」 そう笑ったすぐ後で、表情が少し強張っていなかっただろうかということが気になった。 上手く笑えただろうか。 かえって高明を不安にさせはしなかっただろうか。
(2/2) 大丈夫? 何が? どうして? 断言できる根拠なんてどこにもなかった。 目の前で一人、チームの先輩が死んだ。生々しい血の匂いが、これが長い夢ではないことを雄弁に語っている。 何が大丈夫だ。白々しい。気休めだ。そんなこと、自分でもわかっている。 それでも大丈夫。比嘉は今度は心の中で、同じ言葉を呟いた。 昔からずっと未来を信じてきた。だから、それを信じた。 今、比嘉に出来ることはそれだけだった。 大丈夫だと。道はきっと開けているはずだと。 「ぐずぐずするな、比嘉!」 「待ってください!今、行きます!」 苛付くように怒鳴りつける奉文に、それ以上の大声で返事をする。 「しっかりしろよ、高明」 「はい」 次の選手の出発時間をしきりに気にする田村からバッグを受け取る。 二歩ほどドアに向かって歩いたところで、振り向いた。 見慣れたユニフォーム、見慣れたチームメイト。この人たちを殺す?殺される?そんな馬鹿な。 確かに一喜は死んだ。それでもまだ認めない。殺し合いなんて、信じない。 信じたらきっと、きっと負ける。 大きく息を吸い込むと、勢いをつけて深深と頭を下げた。 「お先に失礼します!」 そして、未だ裏切りと絶望とを知らない男がその扉をくぐった。 【生存者残り41人】
リレー版キタ!乙です! 比嘉かっこいいよ比嘉。 「お先に失礼します!」って他球団のバトロワでも言ったやつ少なさそ…
キター(・∀・)−−−!
比嘉らしさが出てるな
225 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/24(木) 01:02:00 ID:LCTpME100
保守
226 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/24(木) 12:38:36 ID:FCUsq7Gl0
保守
8.それでも×××××× 「この島、本当に人なんて住んでたのか?」 「ジャングルと言っても過言じゃ……あー、それは言い過ぎか」 草木を掻き分けて道なき道を進んでいく1つの影があった。 福井敬治(背番号38)はそんな事をぼやきながらも 彼らしからぬ真剣な表情で今後の事について考えていた。 ああ、あれだ、自分は年俸1000円だの何だの言われて 巨人から広島東洋カープに移籍したいわば外様な訳だ。 それでも球団の雰囲気には意外なくらいにすんなり馴染めたし 同い年の新井も嶋も小山田もびっくりする程気さくな奴等で、すぐに意気投合した。 ペナントの順位はあれだったけれども、それでも 広島東洋カープという球団が持つ独特の雰囲気は好きだった。 (なんでこうなっちゃったんだろうな、オーナー様は何をお考えなんだ?) 「誰かいねーかなぁ」 誰かに会いたい、とはいってもそれは誰でもいい訳じゃない、『信頼できる』誰かに会いたい。 例えばあいつらは誰彼構わず声をかけて皆を集めようとするだろう。 すこぶる人の良さそうな笑みを浮かべた3人の顔が容易に想像出来た。 ふ、と福井は苦笑したが、すぐに真顔に戻ると。
それは別にいい、それがあいつらの良い所だと思う。 選手、仲間全員の事を信じられるっていうのは凄い事だ、でも、俺は違う。 広島東洋カープに来てからまだ1年しか経っていない俺が 仲がいい奴ならともかく選手全員の事を信じられるか?答えはノーだ。 「とは言っても……」 それは逆についても言えることであった。 「もしかしなくても俺、誰にも信じてもらえないかもな」 あの3人だって現状自分の事を信じてくれるのか疑わしい。 こんな状況下、何も保証されている事などないのだから。 福井はそこで一瞬歩みを止めた後、やれやれという風に首を振ってまた歩き出した。 「ま、俺もそうだし、例えそうだったとしてもしょうがないか」 その声音はいつもの彼と全く遜色の無いもので 声だけを聞いた者ならば何も疑問には思わなかっただろうし 福井本人すら別段何の感慨も抱かなかったのだが 自身が心なし寂しそうな表情を浮かべているという事に福井は気づいていなかった。 新井、嶋、小山田。 とりあえずでも信頼出来る奴に会える確証が無い以上 下手に人探しをするのは得策じゃない。 「誰かに会いたい、でも会いたくない、か、矛盾しまくってんな俺……」
それでもそう考えた俺は、幸か不幸か今までは誰にも会わなかった、 十数分前に小さな丘を通りかかるまでは。 「怖いなぁ、あれ、本当に誰がやったもんやら」 大きな木が生えた丘の上で、眠るように死んでいた男の顔を思い出し福井は身震いした。 木の幹にもたれ掛かかって、まるで眠っているかの様に彼はそこにいた。 もしもそのユニフォームが血に塗れてさえいなかったら 本当に眠っているだけだと錯覚してしまいそうなくらいに極々普通にそこにいた。 傍らには手のつけられていないザックがあったが どうにも持っていく気にはなれずにそのままにしておいた。 後々の事を考えるとザックの中身だけでも頂くべきだったか? さしずめ墓場で屍の腐肉を貪るハイエナの様に。 (……いや、これで良かったんだよな) 「怖いなぁ」 そう呟く福井の顔には、怖がっているというよりも寧ろ、何かを諦めた様な感が漂っていた。 あいつは誰にやられたんだろう、何を思って死んでいったんだろう 馬鹿が死ななきゃ治らないのと同様に、そんなのは 自分も同じ状況に置かれない限りわからないんだろうが、それでもただ気になった。 俺よりも長い年数一緒にやってる球団の仲間に殺された気持ちはどんなもんなんだろう。 例の3人じゃなくとも可能性はある。 オーナー側についていようがいまいが、今は誰だって人殺しに成りうる状況なんだから。 (これの嫌な所は仲間同士で殺しあうっていうとこだ) 福井は草の中に埋もれるようにしてあった石を蹴った。 石は暗い暗い夜空を弧を描くように飛んでいった。 「……物を作るのは大変でも壊すのは簡単」 ほんの少しひびをいれるだけで徐々に崩れていくんだ、まるでガラスの様に。 今まで築いた関係性も信頼関係も全部が全部壊れていく。 むかつくけど、多分『裏切り者』とやらがいなかったとしても遅かれ早かれ、な。
いっそ生存者が残り3人になるまでどこかに隠れているというのもいいかもしれない。 ―――ああ、俺は、どうすればいい? 「……お?」 ふいに拓けた場所へと出た。 「やっと落ち着いて休憩出来るな」 眼前には、周りを森でぐるりと囲われたテニスコートが2面、その存在を主張していた。 昔は綺麗に整備されていたんだろうそのコートも、 今は見る影もなく雑草が生え放題となっていた。 福井はコート内の比較的草の生えていない場所にザックを下ろすと 傍らにある石造りの水飲み場へふらりと赴き、その蛇口を捻った。 勢いよく掌を濡らす水はとても冷たかった。 それを両手ですくって夢中で飲んだ、喉を潤す冷えた水は 煮詰まっていた福井の思考回路すら緩和してくれる様だった。 「ふー、生き返った」 濡れた口元をユニフォームの袖で拭うと 重苦しかった気分も少しは良くなったようだった。 「さてと、今まで適当に進んで来たけど……ここどこだ?」 ザックのあるコート上まで戻り、地図を出そうとしゃがみ込んだその時。 「G−7だよ」 ふいに後ろから声が聞こえた時は心臓が喉から飛び出る程に驚いた。 はじかれた様に後ろを振り向くと、そこには近寄りがたい雰囲気と評される事が多い彼が立っていた。 【残り38人】
>>保管庫 仕事の早さにただただ感服するばかりだ、 いつも本当にお疲れ様です
ってかいつの間に38人に…(´Д⊂
すまん、人数間違えた・・・・ 【残り48人】
>>234 間違いでしたかw
それでも1人あぼーん・・・(´・ω・`)ダレダロウ
丘・・・大きな木・・・・・時間軸が今の所出てないから一概には言えないが もしかして((;゚Д゚)ガクガクブルブル
237 :
中の人 :2005/11/24(木) 23:24:15 ID:VWGEkJ0+0
こんな序盤から赤鬼が出るのか!?((;゚Д゚)ガクガクブルブル
239 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/25(金) 13:23:23 ID:dsySdGyO0
続き気になる保守
近寄りがたいと言えば… あのサイボーグか!
[δ _ δ]…
( `仝´ )!?
243 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/26(土) 21:50:15 ID:YhHwa3gO0
保守
保管庫が見れない…orz 鯖落ち?
鯖落ちしてるっぽいな…
( ´∀`)<かなこ〜
( ̄∀ ̄) <おっぱい!
保守
249 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/27(日) 23:53:51 ID:TUAJAT1N0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
>>244 亀レスですが、サーバメンテナンスだったみたいです。
>>250 そうでしたか。昨日の夕方はちゃんと見れたのでほっとしました。
いつも素早い仕事乙です。
保守
253 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/28(月) 22:02:58 ID:B0J43ZDA0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
9.認識の問題 もしも今、D−4民家群の中にある古びた一戸建ての家の前を通りかかった者がいたとしたら 閉め切られたカーテンの隙間から、少しの光が漏れていることに気づいただろう。 部屋の中は少しばかり薄暗くあったが それでもテーブルの中心に置かれたロウソク、その灯りのお陰で多少なりとも明るかった。 埃をかぶっているテーブルの横には、4つの影が並んでいる。 ―――――と、不意に何処からか物音がした。 部屋の中の3人は一同に驚愕の表情を示し、玄関口のほうを振り返ったが 男は薄くその目を開いただけだった。 男がその視線を彷徨わせると、その先に犯人はすぐ見つかった、窓ガラスだ。 重く垂れたカーテンの向こう側では、立て付けの悪い窓ガラスが風でがたがたと音を立てている。 ここに来た時にちゃんと閉めた筈なのに 、力任せに閉めただけではやはり駄目だった様だ。 男がゆっくりと窓の方を指で指すと3人もようやくこの『犯人』の正体に気がついたようだった。 3人はほっと肩を撫で下ろすと、また先程と同じ様に話を続けた。 「……………ですよ」 「だから、さっきからそう言って……」 「それじゃどうしようも………」 (彼らは何を話しているんだろうか) 男は先程から早口で進んでいく会話に加わることもできずに その様子をただ真摯に見つめていた。 何かを熱弁しているらしいのはまだ若い野手、松本高明(背番号45)だ。 最初にこの島中に放り出されたとき 森の中で一人佇んでいた男にたどたどしい英語で声をかけたのは彼だった。 『Will you go with me』 それは男にとって少々意外なものであったのだが。 (……どうして、だろう) 普通こういう場合は言葉のあまり通じない外国人を避けるものなんじゃないだろうか 何を考えているのかわかったもんじゃない、普通はそう思うものじゃないんだろうか。 今までこういう事態に陥った事はないが少なくとも自分ならそうすると思う。
男はそこから視線をはずすと 主に聞き役に回っているらしいこれもまだ若い2人の捕手へと視線を移した。 石原慶幸(背番号31)と倉義和(背番号40)。 当てもなく2人でふらふら歩いているときに出会ったのが彼らだった。 これもまた意外な組み合わせだと思ったが、 同じポジションといっても取り立てて仲が悪いという訳でもなく 寧ろチーム内で見る限り彼らの関係は良好そうだった事を思い出した。 また視線を熱弁中の松本に戻すと、今度は目が合った。 笑顔が視界に入る。男は弱弱しく笑い返した。 (早く、僕は、出て行かないと) 彼らはまだ若い、きっと4という数字の重さには耐えられないだろう。 表面上はきっと優しい、あくまで優しい。 それでも、深層心理下では常に怯えている筈だ。 男は先程の事を思い出し軽く微笑んだ。 彼らが普通の心理状態ならばすぐにあれが窓の音だと気づいただろう。 けれど彼らはまるっきり見当違いの方向、玄関の方を気にしていた。 ここに来てからずっと明るく振舞ってはいるが、やはり精神的にも限界なんだろう。 ゲームクリアの条件は、裏切り者と名された仲間を全員を倒すこともしくは 3日以内に生存者を3名まで減らすこと、なのだから。 (1では足りない2でも駄目だ、3なら丁度良い、4じゃ――――) 多すぎる。
男は最初の学校……教室を出てすぐの場所で 上等の黒いスーツを着た男達に説明を求めた時の事を思い出した。 並々ならない事態だという事はわかったが 日本語、松田元の説明だけでは色々わからない事もあったからだ。 たくさんの質問を投げかける男に対して黒いスーツの男の1人はこう返答した。 『リアルストラテジーゲームを知っているか?』 それなら僕も知っている、パソコンゲームの一種だ。 プレイヤーはリアルタイムに進行する時間に対応しつつ、プランを立てながら敵と戦う。 うん、確かそんな感じのゲームだった様に思う。僕も実際やってみた事がある、 その時はゲーム内で進行していく時間に追われてすぐ敵にやられてしまったが それでもゲームならリセットすればまた主人公は復活出来る。 男がそう答えると、マシンガンを構え上等の黒いスーツを着た男は せせら笑いながら変に流暢な英語でこう言った。 『これは文字通り命をかけたリアルストラテジーゲームだ』 質問タイムはそこまでだった、その後すぐに校舎外へと男は追いやられた。 (この場合の『敵』は誰なんだ?) 裏切り者、何らかの形でオーナーに協力している者が確かにいたとしても それが本意かどうかなんてわからないじゃないか。 脅されているのかもしれない、止むにやまれぬ事情があったのかもしれない。 その3人だけを責めるわけにはいかない。 条件の一つとして挙げられている『裏切り者3人の死』 とにかく……その裏切り者達だって生きる為に必死になんだろうから。 暗い島内を彷徨うのはゲームの中の怪物でも化け物でもなく 現実の『仲間達』に他ならないんだから。 ゲームなんかじゃない、こんな破綻したゲームはゲームとして成立してすらいない。 彼の言っていた『公平』なんて欠片もないじゃないか。 大体このゲームのルールが確実に守られているのか、 僕達はそれを確かめる術すら持っていないというのに。
男はにやけ顔の松田元の事を思い出し、悔しそうに目を瞑った。 外見は紳士であっても中身はそれに伴わない場合が多々ある。 それは教養のある人間のように振る舞おうとする俗物、似非紳士に他ならない。 クレイジー、彼はとんだスノッブだ。 (でも………) 果たして狂っているのは彼だけなんだろうか。 『狂う』という事がもしも自己の認識によるものなのだとしたら どんな感情でもどんな気持ちでもいい。 それを狂気と認識した時から人は狂い出すんではないか? 気の持ちようで人は狂人にも常人にもなれるんじゃないか? それなら、彼に対して憎しみとも恨みともつかない、言い様のない感情を抱き続けている僕は――――― (ああ、もうそろそろ行かないと) 未練が残る。なかなか決心がつかなかったのは、 きっとここがあたたかかったからだと思う。離れ難いと思ってしまうくらいに。 僕にとってのこの場所は、最後の砦とでも言うべきものだったのかもしれない。 (なんだか似てるんだよ) 言い換えれば、これはノスタルジアというものだろうか。 僕には2つの故郷がある、一つは祖国アメリカもう一つが日本、広島だ。 活躍する度に喜んでくれる人達の存在、あの赤い球場、仲間、あの空気は 僕にとって、とても優しい場所だった。 いつしか僕は、この家の中の雰囲気にあの場所を重ねていたのかもしれない。
そういえば、ここに来てもうどれくらいの時間がたったのだろうか 男が腕の時計に目を滑らすと、そこには自分達がここにやって来てから 2時間半もの時間が経過している事を示す数字が表示されていた。 「だからこそ…………」 「どうしてそう悲観的に…………」 卓上で続く会話をどこか遠いもののように感じながら 男は机の上に広げたザックの中身を手早くまとめ始めた。 男の動きに気づいたらしい松本が顔を上げた。 「ちょ、どこに行くんですか、外に出たら危ない……」 その言葉を遮り、ゆっくりとした口調で日本語と英語を取り混ぜながら グレッグ・ラロッカ(背番号43)が告げた言葉は、場の誰もが予期せぬものだった。 「……君達にはいくら感謝してもし足りない、でも僕は――――」 風もないのに卓上の炎は揺らぎ、静かにロウがその白い幹を滴り落ちた。 【残り48人】
ラロッカ行かないでラロッカ・゚・(つД`)・゚・
更新北 ラロッコかっこよす
10.H・ERO≠HERO? 「うわぁ、もうすぐ冬だねぇ」 誰もいない部屋の中に空しく声はこだました。 窓の外を眺めると、街はまだ10月半ばだというのにも関わらず 色とりどりのイルミネーションで優美に飾られていた。 この分だと街角にもうすぐ大きなクリスマスツリーが立つんじゃないだろうか。 サンタクロースの装いをしたクリスマスケーキの販売員ももうすぐ現れるだろう。 まだ10月半ばだというのに。 「……まあいいや、楽しみだなぁDVD」 それでも、街がどうなっていようが今の自分には全く関係がない。 そう思い男は勢いよくカーテンを閉めた。 いそいそとデッキにDVDをセットする。 ブラウン管に映ったのは雪の様に白い脚だった。 画面上に映し出された薄暗い部屋の中に響く粘着質な音が、淫猥な雰囲気を醸し出していた。 男はごくりと喉を鳴らした。 内容の薄いお決まりの台詞が画面上を流れるように表示される。 女の身体同様真白い布の上で繰り広げられる痴態の数々。 だがそれは男の琴線を震わせるには至らなかった。 「……あー、なんだろうなぁ、なんか集中出来ないや」
男は首を振り振り、カーテンをもう一度開け街を眺めた。 夜の明けない都市東京は、他のどことも違う一種独特の存在感を放っている。 自分も誰かにそう思ってもらえる様な、そんな存在になりたかった時があった。 でもそれはそれ過去のこと、今はもう何もかもがどうでも良かった。 一体自分はどこで人生を間違えてしまったのか。 (何急に感傷に浸っちゃってるんだろ、僕は) 秋季キャンプももうすぐ始まるのだから。 「頑張らないと駄目なんだけどね」 正直なところ、来季は勝負の年だ。 今季限りでクビにされるんじゃないかと冷や冷やしていた男にとっては 来季はラストチャンスと言っても過言ではなかった。
あと1本さえ出れば、何かが変わりそうな気がするんだけどな。 男は未だ中途半端な数で止まっている自身の本塁打数の事を思った。 幻の350本目のアーチ、屋内ドーム球場ではなく屋外球場なら350本目は入ってた どの解説者も異口同音に答えたその言葉。 『身から出た錆だ』暗にそう言われている気がした。 「野球の神様に呪われてるのかな」 それを声に出して呟いてみてから、男ははたと知人の怖い鬼を思い出した。 (みんな元気かな) 何の脈絡もなく、男はふと、そう思った。 野村さんは惜しまれながらも今年に引退してしまったが、来季になれば嫌でも顔を合わせる面々だ。 その為にも原新監督の下で必死に頑張る、か。 あの若手大好き人間が果たして今の自分を使ってくれるのだろうか。 「……頭痛くなってきたよ」 興ざめした男は、これからが本番だというのも関わらずデッキの電源を落とした。 それと同時にブラウン管からは、艶かしく誘うように動く白い身体が消えた。 「あーあ、ナンパは失敗しちゃうし、僕ってなんて不幸なんだろう」 頬は赤く腫れ上がり未だじんじんと痛みを発していた。 丁度一時間ほど前に、街頭で若い女の子に声をかけてみたところ 痴漢と間違われて殴られた時の打撲傷だった、なんだか無性に物悲しかった。 玄関の方から激しい音が聞こえてきたのは 江藤智がぶつくさ文句を言いながらDVDを片付けて、すぐの事だった。 【残り48人】
江藤キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!! これから何が起こるんだ(((( ;゚Д゚)))
>>117 の下の正体江藤だったんだw
江藤が何か鍵握ってるのかな?
それにしても江藤が出るとは不意打ち食らったw
2作品投下、乙です!
保守
保守
269 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/11/30(水) 23:12:47 ID:2ZGkuqIF0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
301氏乙です 微妙に飲み会続きで保管庫更新できない…
>>270 一介の読み手に過ぎない自分ですが
忙しい中いつも乙です!
一分の対話、一分の対峙(前編)1/3 「森笠!」 森笠繁(41)は、心臓が大きく脈打つ音を聞いた。どくん。 今のは空耳?いや違う。じゃあ誰だ? 出発を待つ時間は、思いのほか長く感じた。 何人もの仲間を見送った。 怯えたように走り出す者、事の重大さを理解できていない者、絶対生きて帰ると豪語した奴。 その間に、森笠は頭上を走る白い蛍光管を目で辿りながら、ぐるぐると思考を巡らせた。 初めのうちはあちこちで囁くように聞こえていた声も、段々となくなった。 静寂は不安を増大させ、考えは千々に乱れて纏まらない。 名前を呼ばれる直前に辿り着いたのは“できるだけ遠くに逃げてゆっくり考える”という、 何の解決にもならないような結論でしかなかった。 仲間を信頼していないワケじゃない。 100%大丈夫。そんな顔だって幾つも思い浮かぶ。幸い同期には恵まれていた。 でも…この異常事態。パニックに陥っている者が出ても不思議はない。 だからとりあえず落ち着くまで、誰にも会わないような遠くへ行こう。 そう決心して奪うようにしてディバッグを受け取ると、すぐに駆け出したのだ。 それが、建物を出た瞬間の声。 (ちくしょう…なんで考えつかなかったんだ?待ち伏せされたら終わりじゃないか!) もしも誰かが“やる気”になってしまっていたとしたら? そう、そうしたらバラバラになる前、建物の入り口で襲うのが相当確率が高い。 己の迂闊さを呪いながら、声の聞こえてきた方向へ顔を向ける。 「待ってたぞ、森笠」 ああそうだ、この声は。どうして気が付かなかったのだろう。 緊張に唇が乾いていて、とっさに返事をすることができない。 明るい室内から出てきたばかりの目は、まだ慣れてもいない。 それでもその声の主が誰なのかは、はっきりと知ることが出来た。
一分の対話、一分の対峙(前編)2/3 「これからどうしような」 (殺気…は、ないな。) 「事態がさっぱり飲み込めなくてさ」 (でも確かに、待ち伏せして殺すんなら、呼び止めなんてしないか、普通。) その緊張感のない穏やかな口調に、森笠はようやく一つ息を吐き出した。 倉義和(40)は森笠の動揺にはまったく気がついていないようだった。 そんな倉の様子に“この人は仲間なのだ”と、そんな当たり前のことを確信して安堵する。 一方で、そんな当たり前のことを信じられない精神状態に陥っていた自分に愕然とした。 鼻腔の奥に残る死の匂い。目蓋の裏の鮮やかな血の色。 「とにかく誰かと話し合って、ゆっくり考えなきゃいけないと思って」 (そうなんだ、考える時間が欲しい。わけわかんないよ。) 「でも監督が3分以内にここを離れなきゃいけないって言ってただろ? だからお前までしか待てないから…」 (そうだ、忘れてた!急いでここを離れなきゃ……って、えぇ?!) はっとして、森笠は自分の腕に目をやった。 時計。(起きた時に首輪と一緒につけられていた。標準時刻というやつだろう。) 森笠は自分の出発時にこれを確認していた。そこから1分6秒、7秒…… 「倉さん俺より1分早いんですよね、出発?ヤバくないですか?」 「そうなんだよな。お前が出てくるのがムチャクチャ早かったから助かったよ。 相当走っただろ?」 「そんな悠長なこと言ってる場合ですか!行きましょう!すぐ!」 彼らの前監督は“出来るだけ早くこの近くを離れろ”と忠告した。 “この近く”がいったいどこまでの範囲を指すのかは知らない。 だが、ここはおそらく危険な場所だ。建物から50mと離れていない。 「倉さんも、もうちょっと遠くで待っていてくれれば良かったじゃないですか」 「そうしたら合流できなかったかもしれないだろ? 実際、俺の前の梅津はパニクって出ていったのか、全然追いつけなかったから」 「…確かに俺もパニクって走って行くところでしたけど ああでもありがとうございます。人と話せるって、すごいほっとする」
一分の対話、一分の対峙(前編)3/3 だんだんと目が夜に慣れてくる。灯りは背後の建物だけのようだったが、月が明るい。 建物の輪郭、遠い丘の稜線。尖った影は送電線の鉄塔だろう。 この闇の中に、もう何人もの仲間がいる。そしてまだ… (あ…そうか) 走りかけた足を止めて、振り返った。 四角い建物の白い灯りが、まるで夜の海に浮かんでいる船のように見える。 「どうした?」 「倉さん、先に行っていてください。急いで!」 もう一度、時計。 1分24秒。倉の時間はあと36秒、35秒。 「あの鉄塔。あそこで待ち合わせましょう。俺はあと1分平気です。 次の奴に待ち合わせ場所を伝えます。そいつは、またその次に。 そうやって何人かで集まって今後のことを話し合いましょう。」 倉の口元が、微かに動きかけた。まるで何か言葉を探しているように。 だが、倉にはそれを見つけている時間はもうなかった。 気をつけろ。それだけを言い残して、影の街へと走り出す。 【生存者残り41人】
一分の対話、一分の対峙(後編)1/2 次は誰だっただろう。 思考がその背番号に辿り着くよりも早く、答が姿を現した。 「森笠さん?ですか?」 森笠は、長谷川昌幸(42)の足取りがひどくゆっくりなのが気にかかる。 時計を見た。既に森笠の出発からは2分になろうとしている。やはり、遅い。 「長谷川、聞いてくれ。 取り合えずできるだけたくさん仲間を集めて、今後のことを話し合いたい。 鉄塔が見えるだろ?あそこに倉さんが待ってる。次の奴にそれを伝えてくれ」 時間が無い。森笠は息も継がずに一気に喋る。 じゃあ頼んだぞ。最後のフレーズを言う前に、長谷川が口を開いた。 その足取りと同じようにゆっくりと。 「出来るだけたくさんって正気ですか?生き残れるのは6人しかいないんですよ?」 「………なっ」 何を。言いかけた言葉を飲み込んだ。 一度、ベルトの後ろに手を回された長谷川の右手が、森笠の前に突きつけられる。 正確には右手をではなく右手に握られた拳銃を。その銃口を。 「はせが……」 「その様子だと開いてもないみたいですね。バッグ。武器が支給されるって言ってたんだ。 そうしたら真っ先にそれを確認するのが常識じゃないですか?」 (コイツは何を言ってるんだ?何がしたい?) 時間を確認したかった。だが銃口から目を離せない。殺気。 チームメートが殺し合いに“乗った”。そんな馬鹿な。 だが、汗が背中を伝う。 理屈なんかんじゃない。動物としての本能。これは殺気。 森笠の視線が、自分に向けられた銃口ただ一点に集中する。 長谷川の右手は、揺らぎもしない。その位置が少し高いのは、眉間を狙っているからか。 手の平サイズの小さな拳銃。そんなものに身動きが取れない。
一分の対話、一分の対峙(後編)2/2 その時、森笠の狭い視界には、建物から出て来た一つの影は入っていない。 長谷川の方にもきっと、それに気付くだけの余裕がなかったのだろう。それはあまりにも一瞬だった。 ふいに銃口が揺れる。長谷川の体が傾いて、森笠の目の前から消えた。 何が起こったのかわからなかった。 「うわあっ」 どさり。長谷川の驚いたような声の後に、重たいものが倒れる音。そして 「逃げろ、森笠!」 はっと気がつくと、地面に二人の人間が転がっている。 一人は長谷川。そしてその両手を押さえつけているのは、背番号44。 「福地さん!」 「早く逃げろ!!」 弾かれたように森笠は走り出した。 (間に合え…間に合え…!) 時計を見る余裕はない。どこまで走ればいいのか分からない。 (だから甘いって言われるんだよ、俺は!) 唇を噛み締めながら、自分に罵声を浴びせ続ける。パニックになって、誰かに待ち伏せされたかと疑った。 だがその疑いが晴れたとたんに、なんとかなるかもしれないと楽観的になり過ぎた。 緊張感を持っていれば、長谷川の様子におかしいことにだって気が付けたかもしれない。 (倉さん、すみません。福地さん、どうか無事で…) ― ガァァ……ン ― 「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!」 その銃声は背中で聞いた。 福地寿樹(44)の悲鳴も同時に耳に届いた。 立ち止まって目を落とした腕の時計は、3分15秒。 この時、森笠は二つの事実を知る。一つは、禁止区域を抜けたということ。 そしてもう一つ。もう、そこには戻れないということ。 【生存者残り41人】
>>270 保管庫さん、いつもお世話になってます。
忙しい中、本当に乙です。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
長谷川キタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)!!! 本人には悪いけど、悪役が似合うな・・・
章番号付け忘れてました…orz 6 「一分の対話・一分の対峙 前編」 7 「一分の対話・一分の対峙 後編」 です。スマソ。
281 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/01(木) 19:22:44 ID:9VjT+souO
これって、福地と倉が死亡って事でFA?
倉はよくわからんが福地は死亡でFAじゃないか?
倉は生きてるんじゃね? 福地は撃たれたっぽいな…
撃たれたって事は・・・時間切れ死亡の可能性も大だな
チンコの足なら逃げ切れるハズ(´;ω;`)ウッ
そもそも直接的な「死」の描写がないから今は人数が減ってないだけで 既に死んでる可能性もあるからな
あれだ、今言える事は・・・・・ 職人さん達いつも乙!投下も増えて本当に嬉しい限りです。 中の人もいつも乙です!
保守
8.絶望のち、希望(1/4) 走った。どこまでも。呼吸なんて忘れて、ただ走り続けた。 暗いとか、寒いとか、そんな事はどうでもいいぐらい急かされるまま走った。 「も、限界…っ」 忘れていた呼吸を思い出すと同時に呟きが漏れる。 スピードを緩め完全に立ち止り、膝に手をついて浅い呼吸を繰り返す。 『3分後に禁止区域になる』 自分を急かしていたのはその言葉。 ちらっと腕時計に目をやると3分から十数秒過ぎたところだった。 そっと、本当に触れるか触れないか微妙な程そっと。…指先の感触に息を吐く。 爆発は起きなかった。どこまでが禁止区域だったのかは分からないが、 3分をとうに過ぎても無事なとこを見ると禁止区域は脱したらしい。 ―――まあ、爆発が起きていたなら、今現在こんな風に考える事もないだろうが。 とりあえず第一の関門は突破した、というところだろうか。 安堵感からか、嶋重宜(55)はようやく自分の身の回りに気を配り始めた。 真っ直ぐ前だけを見て走っていたものだから、周りの景色なんて目に入らなかった。 もしかしたら誰かとすれ違ったかもしれない。 もしかしたら誰か声をかけたかもしれない。 もしかしたら誰かに攻撃されていたかもしれない……。 今にして思えば何て無防備だったんだろう。 マイナス思考へと移りそうになり、我に戻ってその考えを自ら否定する。 自分の悪い癖だ。出発前、あれ程仲間を信じようと決心したのに。 「絶対に、全員生きて帰る」 絶対に。 自分に言い聞かせるように呟き、頭の中でも何度も連呼させる。 この言葉はこれから先の自分の未来の行方を暗示している。 その確信を得たのは、出発を待っている時だった。
(2/4) 全員が悲愴な表情を浮かべながら出発して行く中、嶋は誰にも声を掛ける事が 出来無かった。そんな余裕など無かった。 これからどうすればいいのか?自分はどうするべきなのか?考えれば考える程、 絶望という暗闇が足の先からちょうど首輪の辺りまで覆い尽くし、声も出せ無かった。 「背番号23、横山竜士」 そんな中、数いる同級生の中でも一番付き合いが古い横山竜士(23)の出発となった。 他の選手の時と同様、ただ歯痒さだけがじんじんする中、 出て行こうとする背中を見守るしか無いと思われた、その時――― 「こんなゲームぶっ壊して、全員で生きて帰ろう!お前ら!待ってるからな!!」 振り返り、ハッキリとそう宣言した横山と視線が合った。 口には出せなかったものの、無意識に頷いていた。 何人が自分の様に頷いたかは分からない。 しかし横山はいつもマウンドで見せる強気の、余裕を感じさせる笑みを浮かべると出て行った。 ―――こんなふざけたゲームを 全身が絶望に包まれそうになっていた時、一つの希望ともいえる目標が出来た。 ―――ぶっ壊して その希望はすんなりと、全身へと、それこそ頭のてっぺんを突き破って行った。 ―――全員で、生きて帰る?――― しかし出来るだろうか?そんな事が。現に1人死んでる。 木村一喜(27)だった肉塊をちらっと見て、絶望はゆっくりと、また足元から這い上がって 来ようとしていた。この時まではマイナスの感情の方が遥かに勝っていた。 中々確信を持てずに俯いた瞬間、再び声が聞こえた。 「俺も待ってるけぇ!後で落ち合おう!誰も死ぬな!気持ちを持て!それから…」 「早くしろ!」 顔を上げると、横山と同様残りの者に声を掛ける新井貴浩(25)に、急かす様に田村が声を上げていた。 「わかっとる!それから、絶対に、全員で生きて帰る!絶対の絶対に!!」 二番煎じだったが、新井も力強く宣言し教室を出て行った。
(3/4) 「……全員で、生きて……帰る。全員で生きて帰る。絶対に」 今度は口に出してみた。 まじないの様に呟く。何度も何度も。そのイメージがはっきりと形作るまで。 もう周囲なんて目に入らなかった。無造作に置かれている木村一喜の死体も、 淡々と仕事をこなしているだけの奉文と田村も。 傍からみたら見たら狂ったと思われたかも知れない。 しかしその逆だ。呟くことでどこか非現実的な希望は現実的に理想へ。理想は目標へと変わってくる。 ……変わる。いや、掴み取った。 それで絶望は完全に無くなり、わずかな希望に過ぎなかったものは確信へと変化した。 根拠など無い。しかしこんな状況の中でも、こんなに心強い仲間がいるじゃないか。 自分はただぼんやりとしているだけだったのに、あの二人はそこに居た者 ―――少なくとも自分には希望を残していってくれた。 だから後は信じるのみだ。こんなふざけたゲームに乗る奴なんか、絶対にいやしない、と。 多少の合う・合わないはあるが、選手全員気の知れた仲間だ。 野球に関しては厳しい面を持つ先輩達も、普段は気さくな人達ばかりで信頼できる。 今まで苦い経験を味わってきた自分に、後輩達は色々と相談してくることもあった。 そして何よりも横山と新井の二人に加え、他の同級生達。 切磋琢磨しながら私事でも、長年一緒に過ごしてきた。 いじられ役の新井にさえいじられるが、今期一段と成長したと思える小山田。 まだ一年経たないというのにすっかりチームのムードメーカーになった福井。 そして今は同じポジションを争う事になった森笠。 誰もが自分にとって欠かせない、大事な仲間だ。 だから、俺が信じなければ誰も俺を信じてくれない。 もう二度と人を疑う事などしない……! 思考は完全にプラスへと移ったようだ。
(4/4) その目標を実行していく為に頭の中を整理しなければ。とりあえず落ち着ける場所を…と辺りを見渡す。 斜め左に大きい岩があり、デイバッグを置くとそこに腰掛けた。 咽喉が渇いている事に気付きデイバッグを開ける。水…と手を突っ込んだところで手を止めた。 「……なんじゃこりゃ」 その声と共に手にとってみる。 大きなハリセン。どの角度から見てもただのハリセン。 一番右端にはなんの洒落かは知らんが、『広島名物ハリセン』と書かれている。 まさかと思い更に探ってみるがそれらしき物は見当たらない。 「これが、俺の武器……?」 しばらく呆気にとられ、左手を軽く叩いてみる。パンッ!と小気味良い音が辺りに響いた。 ふと、これで頭を叩かれている横山と新井と福井の3人を想像して吹き出した。 「これでコントでもやれってか?」 これじゃあどっちみち人なんて殺せない。うん。俺にはこれでいいんだ。 出発の順番と時間差から、横山と新井は一緒に行動してるかもしれない。 見つけたら、真っ先にあいつらに一発ずつこれをお見舞いしてやろう。 中々収まらない笑い声を上げ、目の端に浮かんだ涙を拭う嶋の背後から人影が忍び寄る。 それに気付かない、嶋の上下に揺れる肩に、ぽんっと手が置かれた。 【生存者残り41人】
嶋キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
新作キタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━!!! 俺の横竜テラカッコヨスwwwwwww
「気持ち」キタコレ!こういうさりげに織り込まれた小ネタ大好きw
横竜カッコよす
それでも横竜は今夜も ∩ ( ̄∀ ̄)彡 おっぱい!おっぱい! ( ⊂彡 | | し ⌒J
ちょwwwwwww保管庫可愛くなってるwwwwwwwwwww
保守
保守
9.逆説にいたるまで (1/3) 41選手中41番目の出発となったのは、背番号69の天谷宗一郎(69)だった。 天谷は廃校を出た後、両手で鞄を抱きしめ、しばらくうつむきかげんに歩いていた。 一歩一歩踏みしめるように、胸に溜まった息を時折吐きながら、何も考えずにただひたすら足元に地面がある限り歩いていた。傍から見ればぎこちなさが端々に見えたことだろう。 しかし天谷は歩き続けていた。 それからほんの数分経ったときだったろうか、ごつりという音が突如天谷の頭に響いた。 次いで額にひりひりとした痛みを感じ、思わずよろよろと後ろに二歩ほど下がる。 それから木にぶつかったのだと気付くまでに数秒かかった。 天谷は歩みをやめ、ぶつかった木に背を預けながらそのまま座り込んだ。 「いて……」 鞄を傍らに置き、膝を立てて座る。そして額をさすりながら、考えることをやめていた脳をまた動かし始めた。ぼんやりとした脳に秋の夜風が吹き込む。 (死にたくないなぁ。) 単純明快な言葉をまず思いつき。 (野球したいなぁ。) それに理由をつけて。 (じゃあ、どうする?) そして自分に問いかけた。 問いかけた後、天谷は『そもそも』と別の疑問を解消することにした。 そもそも、逆だ。 昨日まではどんなに憎い相手でも殺しちゃいけなかった。でも今日からはどんなに親しい相手でも殺さなきゃならない。 逆だ。逆の世界だ。 天谷は遠い目で空を見上げた。見れば星がいくつも見えた。 だからといって天谷のこれからには何の影響も与えはしなかった。あくまで天谷は見上げただけだったのだから。 ぽかんと口を開いたまま、天谷は脳を回転させ続ける。
(2/3) でも、横山さんと新井さんは全員で生きて帰ろうと言っていた。 20分前の光景が天谷の脳裏によみがえる。確かにあの二人は、言っていた。 でも、と天谷はその後の事も思い出した。 10分ぐらい前に聴こえてきたひとつの銃声。それは今まさに誰かが誰かを撃ったのかも知れない。 だったらどうだ? 生きるの反対は死ぬだ、殺すだ。 だとすれば、横山さんと新井さんは逆のことを言ったんじゃないか? 逆の世界は、全部逆なんだ。だからきっとみんなの言う事もきっと、逆なんだ。 天谷はそう考え、思わず身震いがした。 逆の世界なんだから、逆で、それはつまり横山さんと新井さんが―――。 急いで鞄を開き、中を探る。そしてその中から手にしたのは一本の白い細身のロープ。 何の変哲もないそれを天谷は右手に数回巻きつけ握り締めた。 それなら『郷に入れば郷に従え』と言うことなのか? だとすれば、俺も逆にしよう。逆にするんだ。 俺は死にたくない。とすると逆に他の人も死にたくない。 だったら他の人はどうする? 死にたくないから、俺を殺す? ならその逆なんだ。 41番目の出発となった天谷宗一郎は、廃校で一人きりの時間があった。井生が出発した後の1分間。 しかしその1分が天谷を少しずつ狂わせていた、暖かな昼間から暗闇が広がる夜になるかのごとく。ゆっくりと、静かに。 自分を管理する側である松本と田村の視線が、木村一喜だった肉体の破片とそれからかもし出された強烈な匂いが、そして誰もいないという孤独感が。その3つだけで充分だった。
(3/3) (死にたくない人を、俺は殺す。) 自分勝手な思考回路で考え。 (死にたい人を、俺は殺しちゃいけない。) 焼け崩れたモラルを基準とし。 (逆なんだ、逆。) 純粋な生への渇望に溺れる。 天谷にとって、この3つと野球だけが全てとなった。 「……死にたくない。」 (じゃあ、どうする? 死にたくない。野球がしたい。じゃあ、殺さなきゃ。) 死んだら野球が出来ない。だから俺は生きたい。だから俺は殺さなきゃ。俺以外に生きようとする人を殺さなきゃ。 ぐるぐると頭の中を巡る言葉をもう一度確認した後、右手に巻きつけたそれを見た。 そして天谷は口を結んで、立ち上がる。 その目はさっきまでの暗さを振り切り、一種狂気じみたものになっていた。実質狂っているのだが本人は全く気付くことはない。まず間違っていることに気付かないからだ。 冷え切った指先に息を吹きかけながら、天谷は鞄を肩にかけた。 そして再び歩き始めた。今度は真っ直ぐ前を見ながら、自分の信じた道を進んでいく。 その歩みは、もう誰にも止められない。 【生存者残り41人】
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ッ!!
天谷キタ─wヘ(゚∀゚)√レ( ゚∀)wヘ( ゚)√レ( )wヘ( )√レ(゚ )wヘ(∀゚ )√レ(゚∀゚)√レv〜
306 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/04(日) 00:48:20 ID:Pudj8PDH0
職人さん乙!新作投下続々でイイヨイイヨー
サイコ天谷・・・ドキドキ
308 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/04(日) 15:06:00 ID:uuxhTHtZ0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
10.舞台裏の男 (1/2) 細長い折り畳み机が数組に無造作に並んだパイプ椅子、 申し訳程度に幾つかの椅子に掛けられた数枚の毛布。 いかにも味も素っ気もない学校の会議室といった薄暗い部屋に、 最初の『仕事』を終えた松本奉文と田村彰啓が入ってきた。 気怠い様子でつい今までかつてのチームメートに銃口を向けていた機関銃を机に置く。 ガチャリ、というその音は機関銃それ自体の重みよりも更に重苦しく響いた気がした。 部屋の一角、影が凝り固まったような暗がりに立ち 窓から空を見上げていた小林幹英がゆっくりと振り返る。 「ご苦労さん」 「いえ…」 「とりあえずは順調にスタートってとこだな」 言いながら小林は奉文の赤くなった頬に目を留めた。 「奉文、顔どうした?」 出発する部屋の様子はさっきまでいた別の場所で見て知っている。 敢えて聞いた。 あちらさんは豪華なソファーにリビングセットときたもんだ。 ふん、良いご身分だな。 少し動揺を見せた奉文の横から田村が答える。 「前田さんに殴られたんすよ」 「……黙れ」 「ふぅん……で?」 奉文は苦々しい顔で目線を逸らせ、吐き捨てるように言った。 「スター選手をあっさり殺っちゃつまらないでしょ」 「何もしなかった訳か」 「……」
(2/2) それ以上は言及しなかった。別に奉文をいじめてもしょうがない。 小林は再び窓の方に向直り、吸い込まれそうな漆黒の風景に目をやった。 この闇の中に今まさに解き放たれた選手達がそれぞれの思いを抱え散らばっている。 すでに銃声が響くのも聞いた。狂気は始まっている。 「ちょっと顔洗ってきます」 奉文が部屋を出て行き、重苦しい雰囲気を感じ取ったのか田村もその後を追い、 また部屋には小林1人が残った。 お前もまだ甘いよな、奉文。 まあ稀代の天才バッター、あの前田さんに特別に可愛がられていたんだもんな。 いわゆる果報者ってやつだ。それが今は辛いだろうがな。 俺は違う。 俺はもう何も迷ってはいない。 鮮やかな光芒を放った入団1年目、しかしそれ以降の苦境は言語に絶した。 あの98年の光の強さは、寧ろその後の影を暗く濃くしただけだった。 石にかじりつくようにやってきた。 これ以上何をどう頑張ればいいのか分からない程に頑張ってきた。 その末の解雇宣告。 俺はもっと投げたかった、しかしその気力も粉微塵に挫かれた。 そして言い渡されたこの馬鹿馬鹿しい反吐が出そうな計画。 その裏方、スタッフとしての役割に俺は乗った。そして…… 窓に映る小林独特の長く切れた目が鬼気を孕み更に鋭く吊り上がる。 その視線は漆黒の風景を通り抜け、小林にしか分からない更なる暗がりを見つめていた。 「……お前らの思い通りになんてさせてたまるかよ」 【生存者残り41人】
リレー連続でキタコレ! 職人さんたち乙です!
幹英 キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
職人さんたちここ数日乙! 幹英・・・続きが気になりますな。 保管庫の中の人も早い仕事乙! つうかTOPかっこええ!
>>264 11.悲しき幸せ配達人
森の中、2人の男が並んで地面に座り込んでいた。
男が空を見上げるとそこには月があった、それはここで得られる全ての明かりだった。
そして視線を目の前の地面に戻すとそこには――――酒瓶があった。
男はため息をつくでもなくぼんやりとそれを眺めた。
ここにくる道中、足を進める度にガラス同士がぶつかる様な音が
背中に背負ったザックの中から絶えず響いていた、その音の正体がこの酒瓶だった。
(まあこんな事だろうと思ったけどな)
この状況が悪い冗談か何かの様に思えてきたのは、
木村一喜(背番号27)がザックの中に収められた『武器』を取り出してからすぐの事だった。
木村一の手の中におさまっているメモ用紙程度の大きさの紙には
一言だけ『酒』と書いてあった。酒、なんて簡潔な説明だろうか
せめて銘柄や度数くらいは書いておいて欲しいものだ。
そんなピントのずれた事を考えながら、木村一は
目の前にずらりと並べられた5本の酒を品定めするように眺めた。
重度の酒飲みを自称する自分に相応しい物だと言えなくもないが
『武器』としてこれを用意したオーナーのセンスは理解できない。
木村一はその内の一本を手に取ると、その透明な瓶に貼られたラベルを読んだ。 緑の英字でスピリタスウォッカと書かれているそれは 木村一も以前に飲んだ事のある物だった。 この純度96のアルコールは通常何かで薄めて飲むべき代物だ。 自分が飲んだときは牛乳か何かで割った覚えがある。 とにかく――――ストレートで飲むには危険な物である事は間違いない。 静かにその瓶を地面へと下ろした。 (これ全部飲めって事か? それならそれでそれ相応のもんを用意してもらわな………) 木村一が思考を止めたのは、隅に置かれた酒瓶に目が行った時だった。 箱に入っている訳ではなかったものの、4体の酒が傷ひとつ無い綺麗な状態で存在しているのに対し その中の1本だけは少し違った状態でそこにあった。 緑の瓶に貼られた緑のラベルには、白く銘柄が印字されているが その文字に被る様にして墨汁のように点々と付着しているものには 思い出したくもないが、確かな見覚えがあった。もしもこれをもう一度朝日の下で眺めたならば、 自分の目には墨汁というよりも何か濁った赤黒いものとして映ったんじゃないかと思う。 よく見ればこの酒はあの時よりも一回り小さかったが、やはり見覚えのある代物だった。 「……多分おゆずりなんだろうな」 山本さんとオーナーとの間にどんなやり取りがあったのかは知らないが この酒もその場に用意されていたんだろう、木村一はそう確信した。 それは長年培った酒飲みの勘とでも言うものなのかもしれない。 木村一は目を細め、それを手に取りゆっくり瓶を揺らすと中の酒はこぽんと音をたてた。 あの人の好きな高級酒なのに、封は破られていない。 確かにその場にあっただろう酒なのに、一滴も飲まれてない。 せめて一滴くらい飲めば良かったのに、あんたの好きな酒でしょう? この酒が用意されていた場所で一口も飲む暇さえ与えられず殺されたんだろうか。 木村一はゆっくりとそれをまた元の場所へと戻した。 全貌はわからないが、それでもわかった事はある。 貧乏球団はあんたが空けなかったせいでこんな物まで使い回してますよ。 俺の所にこれが来たのが偶然? そんな訳、ないですよね。 そしてまたぼんやりと酒に貼られたラベルを眺めていると 今度は沸々と怒りにも似た感情が湧き上がってきた。
(馬鹿だよ、本当に馬鹿だ) 木村一は思いの丈全てを自身の心中にぶちまけた。 あんた達は今年限りで辞めたんだ、なのにまだ背負ってたんですか? 最年長、皆のリーダー、監督、背負わなくてもいいものまで全部。 そんなもの捨てればよかったんですよ、あんた達は英雄である前に一個の人間なんだから。 どうせこんな事になるんだったら協力しても良かったのに。 あんた達はまだ生きるべきだった。他にもっといい死に場所があった筈なのに馬鹿だよ、本当。 オーナーもオーナーだ、ミスター赤ヘルという存在も次期監督という存在も一気に失ったんだから 少しは後悔しろよ、自責の念にでも駆られろよ 2人が死んだのも構想の範囲内って事なのか、答えろよ畜生。 そして俺達は、俺は、それすらも上回るくらいに必要の無い存在なんだ。 木村一の思考はいつしか自分の存在意義へと移っていた。 (俺なんてほぼ代打でしか活路見いだされてないんだから……) 打撃が少しばかりいいだけの中途半端な捕手、弱肩、一辺倒リード。 何度も言われた言葉が頭の中をぐるぐると回る。 彼らの存在意義は大いにあった、でも捕手としての俺には何の利点も無い、存在意義などある筈も無い。 木村一は隣の男にも聞こえないくらいに小さな声で、自嘲気味に呟いた。 「馬鹿だよ、あんた達はもっと自分の価値を知るべきだった」 ミスター赤ヘル山本浩二、ビッグレッドマシーンの中心にいたトリプルスリー。 共に一時代を築いた選手。そんな彼らの最期は 広島東洋カープの選手達の事を想いそれを庇って死ぬというものだった。 なんてきれいな死に方だ。俺はオーナーもそうだけれどあんた達も許さない。 ずるいよあんた達は。記録も人の記憶も掻っ攫う、そんなのは俺が許さない。 いい人、偉い人、凄い人、そんな心象だけを俺達に植え付けて勝手に死ぬなんて許さない。 あんた達は俺や他の仲間に死を悼んでもらえる、悲しんでもらえる、でも俺は―――― 激昂する様に木村一は握り締めた拳を膝に叩きつけた。 「俺が死んだ時は、誰か悲しんでくれるだろうか」 そもそも俺が死んだ時傍に居るのは家族でも友達でも何でもない ただの人殺しだ、人殺しに最初からそんな事を期待するのが間違いなのかもしれない。
知らず知らず口に出ていた言葉は、ただ文字の羅列として空に消えていくかと思われたが、 今度は聞こえていたらしい隣の男からこんな返事が帰ってきた。 「そのときは俺が悲しんであげますよ」 木村一は目を見開いた。玉山健太(背番号52)は何の気なしに 軽い冗談のつもりで言ったのだろうが、それでもそれは木村一の心に大きな変化をもたらした。 ゆっくりと横を向くと玉山は透明なガラスで出来た灰皿に見入っていた。 どうやらそれが玉山の『武器』らしい。 「そうか、ありがとう」 木村一は玉山に向けて笑顔を浮かべた それはここに来て初めて見せた明るい表情でもあった。 玉山も笑い返すと灰皿を地面に置き、こちらに背を向けてザックの中の点検を始めた。 やっぱり俺は誰にも冥福を願ってもらえなさそうだ。 そりゃそうだ、唯一願ってくれそうだった人間を俺が殺すんだからそれは当然の結果と言える。 それを俺は何故殺さなきゃならない? 何故何故何故? 俺の死を悲しんでくれる人間は確かにいた、泣きたくなるくらいにそれは嬉しい事だった。 でも、だ。それは俺に存在意義がある事とは結びつかない、そうだろ? 俺は俺の存在意義が欲しいんだ、それは自己満足、ただのエゴでしかないが。 (それでも、嘘でもそう言って貰えた事は俺にとって嬉しい事だったのは間違いない)
そのときは俺が悲しんであげますよ だからこそ俺は玉山を殺すんだ。言って貰えた言葉が嬉しかったから。 だからこそ俺は殺さなきゃならないんだ、嬉しい事は分かち合うべきなんだから。 俺に出来ること、存在意義なんてそれくらいしかないんだから。 「それなら俺もお前の為に祈ってやるよ」 (俺にだって看取るくらいは出来る、祈るくらいなら出来る) 念仏のように呟かれるその言葉は、瞬く間に木村一の心を埋め尽くしていった。
木村一は地面に置かれた灰皿を静かに拾うと その無防備な背中、玉山の後頭部をスローイングの要領で殴りつけた。 少し手元が狂いあまり力は入らなかったが、それでも動きを止めるには十分だった。 玉山は呻き声を上げると前のめりに倒れた。 チャンスとばかりに木村一は素早い動きで玉山に馬乗りになると、 何度も何度も灰皿を玉山の後頭部に打ち据えた。 (なんで力が入らないんだろうな……) もしかして俺、本当は―――木村一の心に少しの不安がよぎったが 力の入らなかった本当の原因に気がつくと今度は一転笑い出したくなった。 力が入らない、そりゃそうだ、俺は右利きなんだから。 今度はしっかり灰皿を右手で持つと木村一は痙攣を起こしている玉山、 その後頭部にもう一度灰皿を振り下ろした。頭蓋が砕けるような感触とともに痙攣は静かにおさまった。 「俺が殺して俺が悲しむ、俺が悼む、俺が看取る」 人工的な死と祈り、その繰り返し。 それでもそれが俺の存在意義になるのなら…… 念のため崩れ落ちた体を仰向けにし確認したが、玉山はもう息をしていなかった。 木村一は灰皿をその場に投げ捨てると、糸が切れた凧の様にふらりと立ち上がった。 今の今まで玉山だったものを見下ろして両手を合わせた。 悲しいほどの静寂はそれでも彼の心に優しく響いていた。そしてそれは玉山の、 以前までの『木村一喜』という存在の、死を悼む鎮魂歌として彼の耳には届いていた。 【残り47人】
キムカズ殺人キター
いっぱい来てタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! うおお俺の幹英ぇぇえぇぇ
ピンキタキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!! 乙です!玉山…(´Д⊂ヽ
極上森伊蔵キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 連日職人さん乙です!
森伊蔵アナオソロシス(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
保守
326 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/06(火) 22:54:04 ID:+A2ObnRG0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
327 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/07(水) 11:02:07 ID:m9bFKgvt0
328 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/07(水) 23:34:25 ID:j/M8R5tD0
好守
(・ ε ・)「好守」
はいはいハイガサイドハイガサイド
保守
(・ ε ・)「拙守」
[・ ε ・]「好投」
{・ ε ・}「捕逸」
||| O Σ(;ノ ̄粗 ̄)ノ 「後逸」
(丶 ̄栗 ̄)つ 〜〜〜○ 「暴投」
(丶・ ε ・)つ >>>>○ 「魔(ry」
再開を楽しみにしつつ保守
保守
11「月に吠える」(1/2) 枕元の時計に目をやった。 まだ、灯りを消してからそう時間は経っていない。 そのため眠りが浅かったのだろう。彼女はその異変に気がついた。 ― …ン…ワンッ… ― 声は窓の外から。 (どうして、こんな時間に?) 広島県が温暖といっても、それは瀬戸内の印象でしかない。 中国山地を背にした北広島町では、この季節は夜はもうだいぶ冷え込みが厳しい。 上着を羽織って外へ出れば、 「どうしたの、ミッキー?」 彼女の家族が、じっと空を見詰めたまま鳴き声をあげていた。 もともとミッキー(111)の性格は大人しい。 喜ぶ・甘えるという感情の表現は豊かだが、怒ったり吠えたりということは珍しかった。 ましてやこんな夜更けに。 「お腹…はすいてないよね。どこか痛いの?」 「クゥ…ン…」 横に座って声をかけると、ようやくミッキーが振り返った。 切ないげな声。そして 「え…」 背を撫でようと伸ばした手を、止めた。 (……泣いてる?)
(2/2) どうしたのと、もう一度問いかければミッキーは少し俯いて。 そしてまた、すぐに空を見上げる。 その瞳が泣いている。涙を流しているわけではない。 それでも彼女にはわかるのだ。ミッキーが泣いている。 「哀しいことがあったの、ミッキー?」 しかしミッキーはその問いには答えない。 視線の先で星が瞬いていた。 星座はゆっくりと天を巡り、南の空には冬の気配を纏った明るい星々が姿を見せ始めている。 その方角をじっと見詰めたまま、ミッキーは動かない。 「何があるの?あの空の向こうで、何があったの?」 両腕を伸ばした。 その暖かな首に顔を埋れば、微かに震えている。やはり泣いている。 この夜、空の向こうで、一つの悲劇がその幕を開けている。 ミッキーの大切な者たちの激情と慟哭は、空を震わせて彼の耳に届いた。 だが、それを知ったところで、ミッキーに何ができるというのだろう? その者たちの心の痛みを和らげることも、悲しみを癒すこともできず、 今はただ無力に、こうして空を見て泣くことしか出来ない。 彼女は、この夜更けに急に泣き出したミッキーの悲しみの理由を知らない。 彼を愛した…そして彼が愛した者たちに訪れた悲しみを知らない。 だからただ、空を見詰めて泣く彼のことを強く抱きしめ続けた。 空には、月が出ていた。 【生存者残り41人】
ミッキー…・゚・(ノД`)・゚・
343 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/11(日) 00:08:12 ID:fG6DVsgn0
ミッキーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! まさかミッキーの話がくるとはww いや、セツナサス(´・ω・`)
344 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/11(日) 13:12:13 ID:j85+kzuZ0
ミッキー…せつないよミッキー… 先週PCが壊れてようやくひと段落ついたばかりなので 保管庫の更新はしばらくお待ち下さい。
12.渇望(1/4) 海。 自分が広島に来る前は、よく海に行ったもんだ。特に用が無くても。 北陸地方に属する富山県出身の浅井樹(6)は、海を見ながら故郷の事を考えていた。 「こんなだらみたいなことあっか?」 その一言に浅井は今の感情・状況など全てを収縮していた。 「だら」、とは、富山弁の代名詞とも言える言葉だ。 標準語に直すと「馬鹿」という意味で、富山県民の喧嘩では3秒に5回ほど─さすがにそれは誇張か─いや3秒に1回は出るかもしれない。 まぁ、勿論喧嘩だけに使うものではない。人の奇行を笑ったり、ありえない状況に苦笑したり、様々な状況で使われる言葉である。 『チームメイト同士で殺し合いをする』 信じられない事だった。信じられない事だからこそ、浅井は誰かに「こんなだらなことないちゃ〜」とでも言ってほしかった。 しかし、受け入れるしかないのだ。この状況を。現実を。 「あ、そういや武器見てなかったな」 浅井はディバックを開けると、すぐに目に入った何かを取り出した。 細長いその物体に巻かれた白い布を少しずつ剥がしていくと、銀色に光る刃が姿を現した。 「包丁…」 普通の包丁よりはやや細身なそれは、刺身包丁だった。 _これで仲間を活け造りにしろってか?冗談じゃねぇ。これは魚を下ろすもんだろーが! もうすぐ冬だ。冬といえば寒鰤。朝とれの鰤をこの包丁で刺身にして、緒方さん一家に食わせてあげたいもんだ。 …あ、でも駄目か。緒方さんの娘はまだちっちゃいからな。小さいうちから富山の魚を食わせたら舌が肥えてしまう。 浅井は富山の海の幸の味を思い出すと、バッグの中のまずそうなパンを見て溜息をついた。 _もっとマシな物をよこせよ。たとえばますのすしとかさぁ…。 富山県を代表する土産物、ますのすし。 県外のデパートでも催される「全国駅弁フェア」などで売られるほど有名だ。しかし、あんなものは邪道だ。 あぁいうのは全体的に薄い。やはり富山で売っているものでないと… そんな事をぼんやりと考えていた浅井だったが、ふと学校を出た時のことを思い返した。
(2/4) _…俺はなんで、緒方さんが出てくるまで待ってなかったんだ… やや一匹狼なところのある緒方ではあるが、浅井とは親しかった。それに緒方の出発順は浅井の次。…だが怖かった。 木村一喜の『今』の姿が頭から離れず、ぼやぼやしていれば自分もすぐにあぁなるかも…、という不安がどうしても拭えなかった。 学校から出るや否や、道も知らない大地をひたすら駆け抜けた。 そしてこの海岸に辿り着いた。おかげで誰とも会うことなくここまできてしまった。 浅井の出発順はかなり早い。前には5人しかおらず、特にゲームに乗りそうな選手もその中にはいないと思っていた。 緒方とタッグを組めていたら、これほど心強い仲間はいなかったというのに…と、 襲われる事に怯えてすぐに学校近辺から逃げ出してしまった事を、今更になって深く後悔した。 _しかし、あの人はどうするんだろうな…? 緒方の現在について考えてみた。緒方は果たしてこのゲームに乗るつもりなのだろうか。 もし緒方が自分に銃を向けてきたら、自分はどうすればいいのだろうか。そう自問した。 _説得するか? だが、「絶対に緒方だけは怒らせてはいけない」と、先輩の野村や金本からも散々言われてきたほどだ。 もし緒方が冷静さを失っていれば、自分の言う事など全く聞かずに獣のように襲い掛かってくるかもしれない。 _そうなったら俺は一喜… _!! 頭の中に浮かびかけた最悪の状況を必死に消そうと、首を激しく横に振る。記憶が飛んでしまうほどに激しく。 浅井としては、このありえないゲームに関する記憶まで全て消えてくれればいいと思った。 …しかしそんな事をしていても始まらない。首を振るのを辞め、落ち着くために深呼吸をしてみた。そして再び脳を動かす。 _それなら、どうする…? 首の振りすぎで脳神経が働いていない気もした。 実際、何も考えたくなかった。 _…なんだ、これ? その時浅井は、刺身包丁についていたらしきメモがバッグの中にあることに気づいた。
(3/4) メモにはコンピューターで印刷されたであろう綺麗な文字で短い文章が書いてあった。 これは試合です。 生き残れば、あなたは勝者。死ねば、あなたは負け犬。 今生まれ変わる広島カープは、勝者のレギュラーを確約します。 この試合に勝利できた強者ならば、必ずや輝かしい成績を残すスター選手となることでしょう。 さぁ、この包丁でライバル達を活け作りにしてやりましょう! 「レギュラー…?」 入団して以来ずっと、浅井は確たる地位を築いていなかった。 代打の切り札、と言うと格好はいいが、裏を返せば毎試合控え選手だということだ。 _俺が…レギュラーになれる? 外野手として入団したが、同期の前田に抜かれて内野手になった。 しかしファーストとしても、若手や外国人にレギュラーを奪われて─まぁ、新井なんかは監督の贔屓が明らかだったが─ レギュラーに定着することはなかった。 入団して以来掴めなかった地位が、手に入るということなのだろうか。 _代打専門の浅井樹が、レギュラーに…? 心のどこかでは、生きて帰ってもおそらく自分は今まで通りの代打要員なのだろうという諦めがあった。 たった一つの単語が、つい先ほどまでは全くもって正気だった浅井の思考回路を一気に狂わせた。 もはや心の奥底から湧き上がってくる感情を抑えきれなかった。包丁を握る左手が小刻みに震える。 _欲しい。その地位が。…欲しい。何よりも欲しい。 バットを振るときのように集中し、包丁を持った左手を本気で振ってみた。夜闇の中で、銀色の刃が怪しく光る。 _俺は、もう負けたくねぇ。 刃に自分の顔がかすかに映っているが、その顔に満ちた狂気は本人には見えていない。 _俺は、何人殺してでもこの試合に勝つ。 浅井は支給された水を飲んで喉を潤すと、「試合」の支度を始めた。
(4/4) _絶対に殺しておかなければいけない奴は…誰だ? 浅井がこのゲームの参加者を思い出そうとすると、真っ先に一人の男の仏頂面が浮かんだ。 _…そうだ、お前は俺の手で必ず活け作りにしてやる。お前がいなかったら俺はこんなに苦しむことはなかったんだ…! 10代で一軍に定着し、今やカープ不動のレギュラーになっている、その男の顔が。 _新チームでスターになる俺にしたら、お前は邪魔だ。チームの顔は一人でいい。 若い頃からメディアに注目され、今やカープで最も知名度・人気のある選手になった、その男の顔が。 _誰が相手になろうと、タイマンなら俺は負けねぇ。勝負所での集中力なら、俺はチーム内ではNO.1だからな。 今ここで、チーム一の集中力を持つ男がゲームに参戦した。 マーダー、浅井。背番号、6。 【生存者残り41人】
おさかなキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!! 刺身包丁www 鬼緒方の出現も楽しみになってきた…
刺身包丁テラワロスwwwwwww おさかなvs神なのか、これは?
353 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/12(月) 22:38:08 ID:eNjc2MEG0
お魚が刺身包丁ワロスwwwwwwww 浅井って富山出身だったんだな
354 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/12(月) 22:41:25 ID:2E61ZJab0
まじめな話、選手に殺し合いをさせる[ネタ]とやらが不快でしょうがない。 なんで平気なんだ?ファンじゃないの?
何気に活け作りとかあったwwwちょ浅井おまwwww どちらにせよコワス・・・
>>354 人それぞれとしか言い様がないと思ったり。
AAネタが嫌いなやつもいるだろうし、バトロワネタが嫌いなのもいるだろうし。
人それぞれ人それぞれ。
幸いネットは情報の取捨選択の自由が己にあるんだから見たくなければ見なければええことよ。
357 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/13(火) 13:35:39 ID:bTpFMd480
>>356 マジレスカコワルm9(^Д^)プギャー
吹いたwwwwww 刺身包丁てwwwっうぇwwwww 死ぬ云々は抜きにしても読みごたえあった。 職人さんGJ!!
まあどっちかというと野球板じゃなくて同人板とかにあるべきスレのような気もする
「無垢の暗闇」(1/2) 暗闇。何もかも現実感を伴わず頼りない。 目に映るありきたりな森の風景も自分の存在も。 デイパックをかけた右肩を落とし、 その重みに引きずられるように おぼつかない足取りで松本高明(45)は暗い森の中を歩いている。 この重みだけが世界と自分を繋ぎ止めているように。 とりとめもなく頭をよぎるのは目覚めてから今までの悪夢のような出来事。 冷たい目でデイバッグを差し出す田村。 ――「お前が最年少だな。しっかりやれよ、コマツ」 部屋を出る時に奉文がかけてきた言葉。 しかし以前とは明らかに違う、どこにも感情がこもっていない無機質な響き。 あんなに優しかった人が、どうして。 そして呆然としたまま廊下を抜け建物を出ようとした時に聞こえた銃声と叫び声。 「う、嘘だろ……」 誰かが?誰かを?そんな馬鹿な。そう思いながら反射的に音とは逆方向に走っていた。 慣れない凹凸のある地面はいつもより早く体を疲労させ、すぐに息が上がり目がかすむ。 ゆがんだ視界に、ふと、現実がどこか手の届かない彼方に遠のき、 今いるこの世界が得体の知れない空間になったような違和感に苛まれぞっとして立ち止まった。 これは何だ。ここはどこだ。俺はどうしてこんな所にいるんだ。 分からない。今の状況も、自分がどうするべきかも、どうしたいのかさえも。 目の前で衝撃的な事柄が繰り広げられてゆき、それに翻弄されているだけで 高明には何も考えるような余裕がなかった。 ただ、立ち止まっていたら寒くなったのでふらふらと歩き出し、今に至る。 どれくらい歩いたのか、突き出た木の根に躓き転倒し体をしたたかに打った。 「痛ぇ……」 体に感じる確かな痛みに拡散していた意識が多少引き戻される。
(2/2) 「吉田……お前がいてくれたらな……」 ここにはいない、ドラフトで同期入団した高校時代からの誰より気が置けないチームメイト。 いてくれたら何だというのかは自分にも分からない。 多少は心強かっただろうか。一緒に行動できただろうか。 ――「最終的に選ばれる赤ヘル戦士は6人」 それならせめて最初からチーム分けでもしてくれりゃ良かったのに。 前田さんとか、緒方さんとか、そんなチームを背負って立つ憧れの人が一緒にいれば同じ状況の中でもどれだけ心強いだろう。 あの部屋で自分を励ましてくれた比嘉さん。力強い言葉を残していった横山さん、新井さん。 誰でもいい、誰かに会いたい。縋りたい。導いてもらいたい。 先輩達がいてくれたら。 先輩達が言う事なら。 先輩の……言う事なら? 体育会系の上下関係といったら先輩は神様で後輩は奴隷だ。 でも待てよ、先輩どころか監督が殺せって言ってるんだよな。 監督っていったら絶対権力、神様以上だ。 監督がカラスは白いと言ったら白いんだ。その人が命令してる事なら。 「殺して……いいのかな」 半分無意識につぶやいた言葉の恐ろしさにに驚愕し、一気に血の気が引き我に返った。 「何考えてんだよ!いい訳ねえじゃねーか!」 闇に引きずられそうな自分の心を振り払うように 高明はデイパックを乱暴にかかえ暗い森の中を走り出した。 何も考えたくない、考えるのが怖い。 若くうつろいやす過ぎる心はただ空っぽのまま、誰かが示してくれる指標を求めていた。 【生存者残り41人】
続けてキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! 高明どうなるの高明
来るときは続くね。職人さんGJGJ
保守
14「Say anything」(1/2) 何か言ってください。 お願いです、何か言ってくださいよ。 何か。 喋ってください。口聞いてください。 ただでさえ緊張するのに…なんですか、冗談ですか。 だったら笑えないっすよ。 やめましょうよ。 昔からテレビでプレー見てました。 すげえって思ってました。 ずっと憧れだったんです。 同じチームになって近くで見て、改めて思いました。 ……本当にすげえって、心の底から。 実はまだ、こうして向かい合うのだって勇気いるんですよ。 尊敬してるんです。 外野にコンバートされた時に、頑張れよって声かけてくれたじゃないですか。 憶えてますか。 あれ、俺、メチャクチャ嬉しかったんです。 その後もやっぱり、ほとんど見てるだけしかできなかったけど。 いろんな話をしたかったんです。 バッティングのこと、守備のこと、走塁のこと。 本当は色々、教えて欲しかったんです。
(2/2) こんな首輪つけられて殺し合いとか言われたら、普通焦りますよね。 そうでもないですか…?でも、少なくとも俺は焦ってて。無茶苦茶焦ってて。 夢中で走りまくって、やっと人に会えてほっとしたんです。 しかも、一番頼りになる人に…って。安心したんです。 だから何か言ってくださいよ。お願いします。 取り合えず手、下ろしてください。だってソレ、銃じゃないですか……正直、ちょっと怖いんです。 だからすみません、やめてください。 やめましょうよ、嘘でしょう? どうして何も言ってくれないんですか。 冗談だって言ってください。お願いします。 緒方さん! 何か…何か言ってください!お願いします! 「……………緒方さぁぁん!!」 ― ぱんっ ― 緒方孝市(9)の右手で、乾いた音がした。 続けて二度、三度。 例えるならそれは、物語の途中で厚い本の表紙が閉じられた時の音に似て。 次いで訪れた静寂が、全てが終わった事を告げていた。 緒方は何も言わずにそこに立っていた。 その目の前で、井生崇光(64)の身体が、まるで朽ちた木が倒れるように崩れ落ちる。 左胸から流れ出た血が、舗装された道路に水溜りのように広がった。 それは月の明かりを白く映しながら、やがてゆっくりと地面に染み込んでいく。 海へ向かって緩やかなカーブを描く道の中央で、井生の時間はもう動かない。 緒方は何も言わずそこに立っていた。 【井生崇光× 生存者残り40名】
緒方マーダーか。 ということは前田が自動的に生残り派リーダーになりそう。
なぜか井生と鈴衛のイメージが被りはじめてる俺 スレ違いなのだが、なんとなく書き込みたくなったり…。
ついに鬼緒方来たか。無表情な緒方が想像できて怖すぎ。 そして井生。・゚・(ノД`)・゚・。 とにかく職人さん乙です
保守
保守
ほっしゅ
ほっしゅん
捕手 鈴衛
保守
377 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/17(土) 21:55:36 ID:gW0WWnQY0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
保守
15.死なない決意、殺さない決意、負けない決意 (1/5) 1分のインターバルを挟んで、それから10秒。 気味が悪いほど静まり返った廃校から漏れる光が、約1分前自分が出てきた正面玄関に暗い影を落としているのが見える。 (後…約1分半。全速力で走ったら出れるかな。) いつの間にかご丁寧に利き腕とは逆の右手首につけられた腕時計を見る。時刻は自分が出たおよそ1分15秒後ほど。 再び木の陰から身を少しだけ出し、正面玄関を見る。 自分のいるこの場から正面玄関まではそう遠くない、ざっと走って5秒もかかるかどうか。 どれほどが最初の首輪が爆破されるポイントかは分からないが、まぁ1分も全速力で走れば出られることだろう。 (首輪が爆破……一喜さん…痛かっただろうな……) ふと頭によぎるあの光景。あの瞬間、あの人はどんな気分だったのだろうか。 左手で首輪を掴む。それは元になった映画の中それと同じようにある程度の厚みがあり、それは外気の温度と同じようにひんやりとしていた。 そしてその冷たさが今起こっていることは現実だと知らしめていた。あの映画と同じだと。 「……智?」 「…健太さん。」 木にすがって立っていた仁部智(34)は聞き覚えのある声で呼ばれた自分の名に振り返る。 振り返った先にはいささか驚いた表情の佐竹健太(36)が立っていた。 「何してんだよお前、まさか…」 「とりあえず時間ないんでこっから出ましょう。」 「あ、うん……」 仁部は強引に話を打ち切ると佐竹が後ろについてくるのを確認しつつ校門から出た。 そして再び時計を見る。さっきからほんの5秒しか経っていない。 あぁ佐竹さん走ってきたんだろうな、と仁部は全速力で森の中を走りながら思っていた。 後ろを見た。佐竹は苦そうな表情で自分の後を走っていた。
(2/5) ある程度走っただろうか。仁部がもう一度時計を見ると自分が学校を出てからゆうに4分が経っていた。 そんなに息切れはしていないが、それでも秋から冬へと変わる時期に走るのは辛いものがある。喉が痛い。 腰に手を当て、思いっきり深呼吸をする。 2mほど間を開けて立ち止まった佐竹の方をうかがい見ると、全く自分と同じような行動を取っていた。 「……健太さん。」 仁部が声を掛ける。すると佐竹ははっとした表情の後、また苦そうな表情を浮かべた。 その苦そうな佐竹の顔を見て、今度は仁部がぴくりと眉を上げる番だった。 (警戒するのは分かりますけど、その表情やめてもらえませんかね。) 一回はそう考えたものの仁部はすぐに考え直した。 本格的に警戒しているのならば、校門付近で隠れていた自分に声を掛ける訳ないじゃないかと。 あの時、明らかに他の事を考えていた自分を無視するのは容易いことだったろう。しかし佐竹は自分に気付いて声を掛けてきた。 (……根が優しいからなんだろうな。もしくは気が弱いから? …さっきも押し切ったしなぁ。) また佐竹の方を見た。近くの木にすがって、じっとうつむいたまま立っている。表情は見えない。 自分と一緒に移動したことを悔やんでいるのかどうなのかもよく分からない。 でも話さなきゃ始まらないよな、と仁部は考え唇を湿らせた。 「健太さん。ちょっと聞いて欲しいんですけど。」 我ながら情けない声を出してしまったと仁部は内心思った。 「…何だよ。」 しかし佐竹の返答は少しの緊張感はあるものの、普段聞いているものと似ていた。それを聞き、仁部はほっと胸を撫で下ろした。 「…とりあえず俺に戦う気はありません。今もそうですけど、これからも人を殺す気もありません。」 自分で言っていて、ぞっとした。それは佐竹も同じだったのか、一瞬顔を上げてその苦い表情を再び仁部に見せた。 そしてしばらく、二人の間に無言が続いた。さらさらと風が木の葉を小さく揺らす音だけが聞こえていた。
(3/5) 「……なぁ、智。」 自然が織り成す音が満ちた沈黙は意外なことに佐竹が破ることとなった。 その呼びかけに仁部は顔を上げ、佐竹の目を見た。 「…お前、どうする?」 佐竹の問いかけには佐竹自身が自分に向かって聞いているようなイントネーションが含まれているように仁部は感じた。 (健太さん、悩んでる?) 見つめ返した目は仁部が思ったとおり、どこか迷っているように空中をうろうろと見回していた。 その佐竹の行動を見て、仁部は一瞬考えた後、告げた。 「俺は、これを潰します。」 一瞬息を吐き、続ける。 「死にたくないって言うのももちろんあるんですけど、俺負けたくないんです。 こんな変なことで強くなるなんてあれじゃないですか。野球を馬鹿にしてるのと一緒じゃないですか。 そりゃあ俺はもっと強くなりたいですよ。強くなって、小さいからって馬鹿にされるちっちゃい子達に見返す勇気をやりたいですよ。でも。」 仁部は息を飲んだ。佐竹は黙ったまま仁部の姿を見つめていた。 「…これは違うでしょ、明らかに。 こんなことで強くなったってそれは、本物の強さな訳ないじゃないですか。 それに、もし仮にこれで俺達が死んでいってカープが強くなったとしてもそれが永遠に続く訳ないでしょ? だったらまたこんなことするんですか? もう一度強くなりたいから、その時の選手達に死ねって言うかも知れないですよね?」 またしばらく黙り込んだ。目を閉じて、ゆっくり心の中で言葉を紡ぐ。 「…そんなの、嫌じゃないですか。俺は、俺の命が無駄になるなんて絶対に嫌です。 確かに俺はカープの選手です。でも、俺は俺のために生きてます。絶対にカープのためには生きてません。 俺は野球が好きだから、野球がしたいから、カープにいるんです。それは明らかに俺のためです。 だからカープが俺から野球を…野球をする権利を奪うなんてことは出来ないはずですよね。俺が生きる権利は俺のものなんですから。」 時間を掛けてまぶたを上げる。
(5/5) これから先、何が起こるかは全く分からない。でも。 そこまで思い、隣を歩く佐竹を見上げた。見上げた先の顔はマウンド上のように、凛とした空気を漂わせている。 仁部は真っ直ぐ前を向きなおり、こう決意した。 ―――俺は生きる。生きてこれを潰す。 ―――俺は誰も殺さない。そんなことになる前にこんなこととっとと潰してやる。 ―――絶対に誰にも邪魔はさせない。絶対に、負けない。 そう心に決め、左手を強く握り締めた。 その表情は佐竹と同様に凛とした、そしてマウンドで見せるもののように、どこまでも強気だった。 【生存者残り41名】
(
>>381 と
>>382 の間です/4/5)
「だから、これを潰します。俺は死にたくないし、未来の選手が犠牲になるのも嫌だから。」
目を開けきり、仁部は佐竹を見た。
佐竹は空を睨み、それから視線を地面に向ける。
また二人を静寂が包み込む。それでも仁部は佐竹を見つめていた。少しの希望と祈りを込めて。
「……そう、だよな。」
呟くような佐竹の声が仁部の耳に届いた。
「…未来の選手のため、か。うん、そうだよな……」
「じゃあ、健太さん…」
佐竹が二、三歩前へ踏み出す。その表情は少し目元が苦いままも、全体的に見ればさっきとは見違えるほど明るくなっていた。
「…俺も、そうしたい。俺も戦うよ。」
「健太さん!」
「……そう、だよな。正義は勝つよな…。」
佐竹が弱弱しく差し出してきた手を頬を緩ませながら、しっかりと握り返した。
その手は外の空気で大分冷えているが、仁部はこれ以上にない暖かさを感じた。
言葉では言い表せない、信頼が持つ暖かさを感じた。
しばらく手を握り、そして離す。いつまでも暖かさに浸っている訳には行かない。
ふと佐竹を見上げると、普段の冷静さと優しさを取り戻しているように見える。
あぁ、背番号が続いててよかった。仁部は初めてそう思った。
「とりあえず、どうする?」
「とりあえず、新井さんと横山さんに合流したいですね。」
「そうだな。うん、そうだな…。」
目の前の闇を見つめながら、二人揃って歩き始めた。
仁部キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!
ちっさい人キタコレ 無事合流できるのかな…
中継ぎサウスポー達ガンガレ
仁部
佐藤剛士
>>382 今気付いたけど【生存者残り40人】じゃね?
>>367 で井生死亡で40名ってなってるし
それとも時間の関係?
一億バトロワでは江dあぼーん。・゚・(ノД`)・゚・。 301氏の江dの活躍を祈る(`・ω・´)
394 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/21(水) 12:37:59 ID:KZxP4nlh0
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
保守
396 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/21(水) 21:35:17 ID:oUHZ0PoS0
保守
保守
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
ほ
400 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/23(金) 23:16:22 ID:WvY7Jbz40
保守ヽ(`Д´)ノウワァァン!!
保守
次の投下マダー?
倉
尾形
西山
「北へ、南へ」(1/6) (あれ…この道、見覚えがあるぞ?) 既視感、デ・ジャヴという言葉がある。 だが、それはこのときの状況を説明するものではない。 なぜならば彼は、確かに同じ場所を通ったことがあるからだ。 (そうだよな。さっきはあっちの方から走ってきて、角を右に…いや、左だったか?) 自身の出発から一時間。 山崎の出発により、この殺し合いが始まってから一時間半が経過したこの時。 ……栗原健太(50)は文字通り道に迷っていた。 背番号順の出発というのは、栗原にとっては幸運なはずだった。 何故ならば、彼のすぐ後に出発するのは同期の末永真史(51)だったからだ。 ― 出たら真っすぐの方向に歩いて進んでてくれよ。走ってすぐに追いつくから ― ― OK ― 1人よりは2人。こんなに心強いことはない…“はず”だったのだ。 すべては栗原が予定通りに行動してさえいれば。
(2/6) 真っすぐ、真っすぐ。呪文のように唱えながら、少し速足で歩いた。 それでも末永の足ならすぐに追いつかれるだろう。 何の疑問も抱かずに歩きながらディバッグのジッパーを開けて中を探ってみると、 固いものが手に触れる…冷たい。 (うわ…マジかよ) 月明かりの下に引き出されたそれは、どこからどうみても拳銃だった。 モデルガンとは思えない質量が、手の平にずしりと重たい。 殺し合いと言う言葉が突然現実感を増して来て、ごくりと唾を飲み込んだ。 瞬間。 「うわぁぁぁ!ふ……さ………?しっかり!」 突然の悲鳴。 (何だ?!) 言葉ははっきりと聞き取れなかったが、何かがあったことだけは明らかだった。 栗原は拳銃をベルトに挟みこむと、反射的に走り出していた。 気のせいか?いや、違う。確かに今、道の先で大きな影が動いた! (誰の声だ?今の?) 走りながら、記憶の引出しを片っ端から開けていく。 どこかで聞いたことのある声というのは、何の手がかりにもならない。 面倒になって数えるのは途中で止めてしまったが、 自分の前に出発した人間は30人ほどいる。 (取り合えず俺の前に出発したのは天野さん…大島…高明…あ、天野さんか?) 確証はない。笑い声は聞いたことがあっても、悲鳴なんて当然憶えがない。 (天野さんってあんなに大きい人だかったか?いや、でもあの声は他に…) 影の動いたように見えた場所は、そう遠くはなかった。 道端に遠慮がちに据えられた小さな祠。建物からは距離にして100mあるかどうか。 「…天野さん?」 声に出して見る。応えない。 左右を見回した。誰もいない。
(3/6) 道はくの字の形に曲がりながら伸びているが、分岐はしていない。 行ったのであれば、間違いなくこの先だ。 「…?何だこれ?」 追いかけようと足を動かしかけて、足元に染みが広がっていることに気がついた。 雨が降った様子はない。なのにその一部分だけ、不自然に地面の色が違う。 栗原はディバックをするりと下ろして祠の脇に置くと、大きな身体をかがめて指を伸ばす。 (濡れてる?!) 慌てて引いた手が月の明かりに晒される。 指先。それは、夜目にもはっきりと赤い色をしていた。 どこかで見た。 (……………っ!血?血だ!!) そう、それはつい先刻まで押し込められていた部屋の床に広がった鮮やかな。 「天野さん?どこですか天野さん!」 ここで何かがあって、そしてこの先に消えていった…道は1本。 全力で駆け出した。 住宅の間を抜けて、すぐに分かれ道。 どっちだ。少しためらった後、左に曲がる。 (誰もいない…間違ったか?) 戻って、右。折れて左。 突き当たる。また左。 (天野さん、どこですか?…って、あれ…?この道、見覚えがあるぞ?) どの建物にも灯りはなかった。 街はしんと静まり返って、自分の足音と呼吸の音だけが聞こえている。 三叉路を左…袋小路を戻って右………… (ここ、どこだ?)
(4/6) 街の小さな郵便局には小さな駐車場。 歩き通しに歩いて、辿り着いた赤いポストの隣に腰を下ろした。 我に帰るという言葉の見本のような唐突さで栗原が悟ったことは、 まず、末永と合流ができなかったこと。 次に、現在位置の確認をしようとしても地図を持っていないこと。 そう、地図どころか、栗原は何も持っていなかったのだ…ベルトに挟みこんだ拳銃を除いて。 何気なく手を見ると、指先が汚れている。 (…あの時だ) 足元の染み。 結局は血であったが、それを確かめようと身をかがめたあの時。 邪魔だと思ってディバッグを肩から下ろした。 それは覚えている…だが、その後、走り出した時にそれを手にした記憶はない。 間違いなく荷物はそこにある。出発点のすぐ近く、何かを祀った小さな祠の脇。 (でも、それがわかったところでなあ…) 3分なんて疾うに過ぎている。もう、迂闊に戻ることはできない。 それ以前に、戻るための道順すらわからない。 (末永、怒りまくってるんだろうなあ…) 道に迷ったことに気がついてからも、栗原はしばらく歩くことを続けた。 もしかしたら、末永が血相を変えて追いかけてはこないだろうか。 天野と思われるあの影に出会うことはないだろうか。 それとも他の誰か…誰でもいいから。
(5/6) もしこの時、栗原に“建物のドアを開ける”という発想があったなら、 また結果は変わっていたのかも知れない。 しかし今に至るまで、栗原は誰にも出会いはしなかった。 (さすがに疲れたな。どうするか、これから) ぐるりと首を回すと、駐車場の隅に水場があることに気がついた。 立ち上がって蛇口を捻ると、水が迸る。 こすり合わせるようにして指先の血を洗い流してから、口を近づける。 冷たい。 (そういえば地図だけじゃなくて水も食い物も持ってないんだな、俺。) 取りあえず水は大丈夫。水道は生きている。あとは地図と食料。 (やっぱり誰かに会えないとキツイよな…それにしても本当に) 「情けねぇなあ」 声に出して呟いて、少し笑った。 理不尽に始められた殺し合い。 目の前で殺された木村一喜、誰かの悲鳴と血溜り、渡された拳銃。 そんな状況の中で、自分は“迷子”になっている。そのギャップはどうだ。 (…ゴメンな、末永) 合流したら、頭ごなしに罵声を浴びせるに違いない。 さすがに今回は返す言葉も無い。大人しく聞いてやるしか… ああ、もしかしたら広島に帰ったら飯でも奢らないと納得しないかもしれない。 ― なあ末永、絶対、会えるよな?俺たち、また広島に帰れるよな? ―
(6/6) 濡れた手をズボンで拭こうとして、拳銃に触れる現実。 誰かを撃つとか撃たれるとか、そんなことが本当に。 「帰れる…よな。」 聞く者も答える者もいないのにそれでも口に出したのは、不安な気持ちを打ち消したかったから。 大きく深呼吸をして、顔を上げた。 市民球場のナイターで見上げた空には、カクテル光線の明るさに消されて星の姿なんて見た記憶が無い。 それが、この島では月の光に消されぬ星が幾つも瞬いている。 この島では… (そうだ、ここは島だって言ってたよな?ってことは真っすぐ歩けば海に出るって事か?) 海に出たからといって場所がわかるわけではないけれど、 四方八方分からない所にいるよりはとにかく“端”がある場所にたどり着いた方がマシな気がした。 そしてその“端”は必ず広島に繋がっている。 生き残るための殺し合いとか…そんなことよりも、とにかく広島に帰ること。 それは確かな目標になるような気がした。 だから真っすぐ、真っすぐ。 呪文のように唱えながら、栗原は再び歩き出した。 (それに海に行けば魚くらいいるかも知れないし…って魚って拳銃で獲れるのか?) 【生存者残り40人】
またタイトルNO.忘れた… 16「北へ、南へ」です。
416 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/27(火) 22:52:06 ID:QVRyASOP0
栗原キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!!!! 職人さん乙!
職人さん乙です
栗がんがれ栗
419 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/29(木) 22:19:44 ID:h+lyeBhE0
保守age
栗原大丈夫かよ…
保守
年末年始保守するぞ!年内はもうないのかな(´・ω・`)
423 :
代打名無し@実況は実況板で :2005/12/31(土) 23:08:55 ID:FsiFsXMN0
保守
424 :
【大凶】 :2006/01/01(日) 21:05:27 ID:SNROkn+G0
保守
orz
426 :
【豚】 :2006/01/01(日) 23:34:22 ID:fdlRNlt70
イキロ
orz
428 :
【凶】 :2006/01/01(日) 23:50:31 ID:shpeaBWf0
何やってんのおまいらww
orz
おまいらオモロすぎ(w
<⌒/ヽ-、___ シクシクシクシク... /<_/____/
おまえらこんなスレで俺を笑い殺す気かwwwww
保守
保守
保守
17.違和感(1/2) 「俺と組まんか?出口を出て西の方向に歩いてるからな」 すぐには無理だろうと思われていた合流は、意外にもあっさりできた。 急いでいる様子は全く無く、のんびりと歩くその後姿は、デイバッグを 担いでいなければ球場にいる時と何ら変わりない。 夜という事と自身が近視という事から、かなり近付かなければ背番号の 数字もよく判らなかった。 しかしその数字を確認すると共に、自然と緊張は解け、自分だと安心させる為に 高橋建(22)は小走りで近付きながら声を掛けた。 「佐々岡さん!」 名前を呼ばれた佐々岡真司(18)は歩みを止め、ゆっくり振り返った。 手に持っている懐中電灯を照らしながら高橋だと確認する。 「おう」 短くそう返しただけで、佐々岡は歩き始めた。 それに遅れを取らない様に高橋も慌てて追う。 肩を並べようと歩調を早くするが、それを拒む様にずんずん先を行く佐々岡。 すると小道を逸れ、森の茂みへと方向を変えた。 がさがさと大きな音を立てながら突き進む。 「あの……他の人は?」 他にも誰か誘われたと思っていたが、どうやら佐々岡と自分の二人だけらしい。 「おらん」 振り返りもせずそれだけ答える。 「……」 妙な不安を感じたものの、それ以上喋る気にもならず黙り込んだ。
(2/2) ―――――どれぐらい歩いただろう。 腕時計に目をやるとかれこれ30分は経っていた。歩いても歩いても同じ景色しか見えてこない。 夜の暗さに目は慣れたはずだったが、佐々岡の前方に見える覆い繁った無数の木々達が行き先を邪魔する。 それでもどちらとも歩くのを止めない。しかしずっとこのままでいるわけにもいかない。 そもそも佐々岡の目的はなんだろう。誰かを探している風でもなく、 ただ闇雲に歩き続けているだけの気がする。 何故他の人間はいないのか。何故自分だけが誘われたのか。 「佐々岡さん」 1人で考え込むより明確な答えが欲しくて、久々に口を開いた。 佐々岡は振り返らない。それでも今度は続けて話しかけた。 「やっぱり……他の人も探しませんか」 「……」 「二人だけだと心細いというか。ほら、誰か俺達と行動したいと思ってるかも知れな」 最後まで言い切る前に、佐々岡は立ち止まった。つられて高橋も歩みを止める。 「本当にそう思うか……?」 ゆっくりこちらを振り返った佐々岡の顔はどこか強張っていた。 「え……?」 視線をすぐ下に向けると、発射口が当然とばかりにこちらに向けられている拳銃。 「何を……!」 驚きと共に二、三歩後退り、できるだけ佐々岡から距離を置こうとする。それを 逃さないかの様に佐々岡も合わせて右手を伸ばした。 「お前の選択は二択だ」 ゆっくりと指が引き金にかかる。 「俺と組むか。それとも今、俺に殺されるか」 涙もろいことが自分の代名詞の様になっている高橋だったが、その場も例外では なかったらしく、すでに溢れんばかりに両目には涙が溜まっている。 自分の思惑通りになったようで、佐々岡は口端を吊上げると右手を下ろして再び歩き始めた。 高橋は何も言えず、先ほどよりも距離を開けて佐々岡の後ろを付いて行くしかなかった。 【生存者残り40人】
お馬さんがーーーーー((;゚Д゚))ガクガクブルブル 建さんどうなるんだー!
弱々しい建さん萌え
442 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/06(金) 23:07:26 ID:Y9NOZMXN0
職人さん乙!
『選ぶ者、選べない者』(1/5) 時計の針はちょうど午前3時を指していた。 海の見えるやや小高い丘に、地図には載っていない塀に囲まれた大きい家があった。 そこに向かってると思われる一人の男に見つからないように、小島紳二郎(58)はその後をつけていた。 _チクショウ!ふざけんじゃねぇよ!! 小島は怒っていた。 _何が殺し合いだ!すぐ一軍で使うって言うから広島に入ってやったんじゃねーか! それはこのゲームに対する怒りであったが、次第に広島首脳陣への怒りも加わってきた。 _だいたいあのクソ監督…俺がせっかくいいピッチングしてたのに『いっぱいいっぱいやった』とか言って代えやがって… センスねーんだよテメェは!ピーコみたいな顔しやがって!なんでシーズン途中で辞めなかったんだよ! 小島の一軍初登板は先発としてだった。 5回を投げて被安打2。誰もがの6回以降のピッチングに期待した。 だが、…代えられた。 何故か? 答えは一つ、監督が馬鹿だからだろう。小島にはそうとしか思えなかった。 マメが潰れたくらいなんだ。森やら天野やらに比べれば遥かに自分の方が上だ、と思っていた。 _カープが弱いのは、テメェのせいだろーがっ!! 山本浩二(8)への怒りが溢れ出てきて、拳をグッと握り締める。 _絶対…生きて帰ってやる。このゲームが終わったら…アイツを殺…せたらいいんだけどな。 ゲーム終了後、山本浩二を殺したら…おそらくはその周囲の兵士たちにたちまち殺される。 さすがにそれはまずい。まだ死にたくはない。 怒ってはいるもののまだまだ現実的な思考をもって、小島は歩いている。 手には拾った金属バット─かなり錆びてはいるが…─、ポケットの中には怪しげな小瓶。 小島は、生き残るためのある計画を考えていた。それは『自分の武器はこの小瓶ではない』と思わせる事が必要だった。 つい先程、とある民家で見つけた金属バット。武器だと見せるにあたって一応問題はなさそうだ。 本当は包丁が理想だったが、仕方ない。それに、計画に使える物も見事に見つかったので良しとする。 _やるか、やられるか。どっちか選べといわれたら、そんなのやる方に決まってる。 何もしないでただやられるなんて、馬鹿極まりない。あの監督みたいなもんだ。
(2/5) 決意を胸に秘めた小島は大きな家の前に着くと、玄関のドアをあけ、やや大きめの声で言った。 「田中さん!小島です!窓から田中さんが見えたんで…」 その声につられて玄関からすぐの部屋から顔を出したのは田中敬人(19)だった。 二人とも04年のドラフトで入団。社会人出の田中とは年齢差があったが、同期入団ということで比較的仲良くしていた。 小島は、一人目のターゲットして田中を選んだ。 おそらく田中がゲームに乗る確率は極端に低い。義理人情に厚く、どこか古臭い、典型的な体育会系の人間だったからだ。 もし田中がコーチか監督だったら、このイカれたゲームに猛反発して実施前に殺されていただろう。 そんな人間が、自分を殺そうとするはずがない。自分の身は安全だ。 うまくいけば田中を殺せて、水や武器が手に入る。…武器が銃器なら儲けもんだ。─というか、この計画は使える 銃火器を手に入れる事が目的でもあるのだが…─ 「なんだ、小島か…」 「すいません、少し休ませてください…」 「あ、あぁ…」 小島は半ば強引に上がりこみ、田中のいた部屋に入った。 田中は少しとまどったが、とりあえず部屋に戻った。 居間と思われるその部屋の座布団に、二人は座った。ちゃぶ台を挟んで向かい合い、しばし無言のまま時間が流れた。 田中はやけに落ち着いており、バッグの中から出した水を飲んでいる。 何せこの家は、片付ける間もなく住民が退去させられたようだったから、田中がまるでこの家の住人のようにも見えてくる。 「た、田中さん」 いよいよ『計画』を実行に移す時がきた。 …緊張。かつてないほどに緊張してきた。小島の心臓の鼓動が早くなり、舌がうまくまわらなくなる。 一軍初登板の試合ではそれほど緊張はしなかった。 だがこれは、生死をかけた、命のやりとり。それからくる重圧は、半端なものではなかった。 _何どもってんだよ、俺! 「ん?」 小島は焦ったが、田中は特に気にすることもなく聞いている。少し安心して、続けた。 「俺、さっき他の家で、コーンスープの素を見つけたんですよ!よ、良かったら、どうですか?この辺、ガ、ガスも水道も生きてるみたいだしっ…」 「…」 田中はそこで言葉に詰まる。
(3/5) 「ど、どうしたんですか?」 「…お前、なんでそんなに焦ってるんだ?」 そこで初めて田中は小島と目を合わせた。 「焦るって、ど、どういうことですか?だって、田中さんが俺を殺そうとするはずが…。それに、お、俺が田中さんを殺そうと」 「お前のその右手」 小島の言葉を遮って田中が言った。その表情は徐々に険しくなっていく。 ビクッ、と、小島は驚き、…沈黙したまま田中の次の言葉を待った。 「そのバット、なんでずっと持ったままなんだ?」 「…あ!あ、す、すいません!」 慌てて金属バットを離し、作り笑いを浮かべる。まるで自分の計画が全て見透かされているかのようなそのきっとした目つき。 鋭い目つきにやや気圧されながら、必死に胸の奥の殺意を悟られないように笑顔を作る。ひどく崩れた笑顔を。 _クソ、なんなんだよこいつ!なんでこんなに落ち着いてるんだ?? 「言っておくが──」 田中は小島の方を真っ直ぐに見つめたまま、一呼吸置いて次の言葉を発した。 「俺はもう人を殺した」 「え……?」 衝撃的な言葉だった。予想だにしていなかった言葉だった。 _あの田中さんが…?人を、殺した……?? その言葉の意味が理解できず、─いや、理解しようとしていない、という感じか─小島は言葉に詰まる。 「俺は、誰も信じない。…なぁ、お前もこのゲームに乗ったんだろ?」 田中はベルトの方に手をやると、ゆっくりとその右手をあげていく。 「だったら──」 田中のなんともいえない威圧感に気圧され、小島は言葉が出てこない。絶句、というやつか。 「お前も殺す」 黒くてゴツい何かが小島に向けられた。 小島は呆然としながらも、自分に向けられているものが何かを認識した。 田中は引き金に手をやり、威圧するようにゆっくりと言う。 「俺と…殺り合うか?」 小島は目を見開くばかりで何も言えない。…何も。ただ無意識のうちに後ずさりして、壁にもたれかかっていた。
(4/5) 「なぁ、小島。やるか?」 「た…」 ようやく小島の口から言葉が発せられた。 「た…なか…さ… や、…めて…」 完全に田中に呑まれていた。 「…何ビビってんだよ。殺る気がないんだったらさっさと失せろ。…今だけは見逃してやる。」 「たなか…さ…」 小島は金属バットを乱暴にディバックにねじ込み、それを担ぎ上げるや否や走り出した。 廊下で足を滑らせて派手に転んだ。それでも小島はひたすら走った。走って、その家を出た。 「…すまん、小島…」 肩を落として、力なく呟いた。誰もいなくなった部屋に、その声が虚しく響く。 疲れがどっと出た。極限の心理状態での、相手とのやりとり。 声が震えそうになるのを必死にこらえ、一文字一文字を丁寧に言葉にした。 動揺を悟られてはいけない。相手より上の立場にいなければ…、余裕を持っていなければならない。 たった2〜3分のやりとりで、田中は気力を使い果たした気がした。 ──もう、何も考えられない。 小島が自分を慕っている事は勿論分かっていた。 だが、とにかく…、死にたくない。殺されたくない。 小島が冷静さを失っている事を察し、上の立場から脅せば『勝てる』かもしれないと思った。 その一心で、小島を脅した。小島は、どう思っただろうか。 慕っていた先輩に裏切られて落ち込んでいるだろうか? それとも『殺し損ねた』と悔やんでいるだけだろうか? …人の心が読みたい。 小島の気持ちが純粋に知りたかった。 …誰も信用できない。 こんな状況では、何の根拠もなしに小島を信じる事などできはしなかった。 「すまん…」 目にうっすらと涙を浮かべ、田中は手に持った銃を自分の心臓に向け、引き金を引いた。
(5/5) _パン …というちゃちな音がしただけで、田中の命が失われる事はなかった。それはただのモデルガンだった。 田中はモデルガンをそこに置き、さらにうつむいた。 「…すまん」 チームメイトを殺すなど絶対に嫌だ。 チームメイトに殺されるのはもっと嫌だ。 …だが、生きて帰りたい。野球がしたい。 人と会うのが怖い。 人と会ったら、必ず選択を迫られる。 そいつを殺すか、そいつに殺されるか。 きっと多くの人が誰も信じられずに、狂っていっているだろう。協力など、できるわけがない。 学校を出発した時まではあった微かな希望が、潰えた気がした。実際に人と会ってしまったことで。 このゲームは、そんなに甘いものじゃない──。 いざ人を前にすると、冷静でいることなどできない。 俺が仲間を殺す? 仲間に俺が殺される? …嫌だ。どっちも…選べない。 …俺は、 どうしたらいい───? 【生存者残り40人】
新作GJ! 田中・・・
449 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/08(日) 02:12:11 ID:6vQld1Hr0
職人さん乙! そろそろ前田とか黒田とか出るのかな?
保管庫TOPに 鈴 衛 キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・* !!!!
19. 危ういバランス (1/4) 凍るような青白い月明かりの下、冷たい海風が吹きすさぶ海岸を二つの影が歩いている。 夜の海はどこまでも黒く陰鬱で、寄せては返す波の音もただその不気味さを助長させていた。 (昼の海とはえらい違いやな……けど今、明るい海を見たところで気分が晴れる事もあれへんわな) 「しー……」 森跳二(16)は寒さに顔をしかめ息を吐き、体を震わせた。 (にしても……) 同行している梅津智弘(39)はずっと黙ったままだ。なので、森も黙って歩き続けている。 (なんやねん、俺誘ったんはお前やろが) あの場では、それは確かに有り難く思えた。 ――「おい。ここ出たらとにかく南に5分、全力で走れ。そこで落ち合おう」 次々と選手が出発させられていく中、ただ呆然としていた森にそっと梅津が言葉をかけてきた。 (なんや、こいつは落ちついとるな) 同期入団で同い年、同じポジションの奴が。そう思うと多少悔しさもあり、森も冷静になる事ができた。 この状況に複数人数で行動するのはどうなのか、それははかりかねたが差し当たっては悪くない。 常軌を逸した事が起こっているのだ、状況判断しようとしても基準自体が曖昧になっている。 面倒な事が起こったらその時考えればいい。 ただ森が実際に学校を出て南に走ってみると3分も経たず海岸に出てしまい、 見通しの良すぎる場所で寒い海風に晒されながら背番号が離れている梅津を待つ時間には辟易したが、 無事に合流してきた梅津の顔を見た時にはやはりほっとした。 互いの武器を確認し合うと森はサバイバルナイフ、梅津は鉈。 すぐに出発してきたあたりから響いた銃声に自分たちの武器の弱さを知り多少失望したが、 とりあえず吹きっさらしの海辺よりもましな所を探そうと森が提案し、あてどもなく歩き出した。 それから数十分、2人は一言も会話を交わしていない。 (なんで黙りっぱなしやねん……1人でいるより心強いのは確かやけど、どうも面倒やな) 森がそんな事を思った矢先、誰かの叫び声が聞こえ2人は足を止めた。 「……今のって?」 海とは反対側のそう遠くない場所から聞こえたそれは切羽詰まったような絶叫だった。
(2/4) しばらくの間視線をそちらに向け耳をすませていたが、それっきり特に動静はない。 森がどうすべきか悩んでいると、梅津が黙ったままその方向に歩き出した。 「おい、迂闊に近づくな、危ないやろが!」 声を殺したそんな忠告も黙殺されたが、一応足音を忍ばせ、舗装された道から少し逸れた土の上を歩いている。 仕方なく森も後を追った。 海岸から少し道を登ったそこに2人が見たものは、倒れている人影と銃を携え悠然と去っていく後ろ姿。 月明かりに微かに確認できた背番号は……9。それは背筋を凍り付かせる恐ろしい数字だった。 恐怖の象徴のようなその姿が見えなくなり、更に暫くするまで2人はそこに立ちすくんでいたが 倒れている人影にまず歩み寄って行ったのは森の方だった。 「井生さん……」 道一杯に広がった血だまりの中で幾つもの銃弾をその身に受け、 恐怖に引きつった表情で絶命している練習熱心で真面目だった先輩選手。 しかしその姿よりも、森はそれを見て思った以上の衝撃を受けていない自分自身に驚き違和感を感じた。 (俺の感覚は麻痺しとるな。と言うより、自分で麻痺させたんか。 せやな、そうでもせんと動けんかった。まともに受け止めていたら俺は錯乱してまう。 この状況でそれは得策やない。心と身体がそう判断して、適応させたんや) 体に感じる現実的な寒さとは違う、自分の心が冷たく凍っていくような感覚に襲われながら そんな事をぼんやり考えていた時、いつの間にか横に並んでいた梅津が沈黙を破ってつぶやいた。 「緒方さんか……厄介だな。けどまあ、あの人はそれを選んだって事か」 「何やて?どういう意味や、それ」 「別に。それだけの意味だ」 緒方が去った方向を見ている無表情なその横顔を見て森は確信した。こいつもそうか。心のどこかを麻痺させている。 (やっぱり、1人でいた方が良かったんかな……) 今からでも、この場で別れてしまった方がいいかも知れない。 ――「それを選んだ。それだけの事」 明晰で冷静な意見だ。それ以上でもそれ以下でもない。だが、その先は。 (ならお前は? 梅津、お前は? そして、俺は……?) 何て事だ、たった2人でこのざまか。この島には40人以上もいるってのに。
(3/4) 今はっきりと分かっているのは緒方が殺す側の人間になっているという事と、 井生はもうこんな煩わしさから解放されているという事。 (死にたないけど、その点だけは羨ましい気がしますよ、井生さん) 森が静かにため息をつくと、梅津が再び口を開いた。 「……なあ、お前は死にたくないって思うのか?」 「あ?ああ……まあ、死にたないな」 「ふーん……」 「お前も、やろ?」 「まあ、そうだな」 そのまま、また梅津は黙り込んだ。 沈黙の裏は伺い知れない。だがその抑揚のない声に隠れた僅かな機微を森は感じた。 同じ思いを共有する者同士の、それは一種の以心伝心だったかも知れない。 森は再び確信した。こいつと俺は、近い。 心のどこかを麻痺させ、危ういバランスを保ちながら何かを吹っ切れずにいる。 空を見上げると相変わらず蒼ざめた月が冷たい光を投げかけていた。 月の光は狂気をもたらす、それはどこかで見た文献だったか詩の一編だったか。 狂ってしまえれば楽だろう。しかしそれは自らの人格の破壊、死と同じだ。 死にたくない、という意思に反している。 (どう転ぶにしても、出来る限り抵抗してみるか……) 「ほんまに厄介やな。鬼に金棒ならぬ、鬼に銃や」 そうおどけて言ってみると梅津が口の端で少し笑った。その顔は昨日までのものと変わらなく見えた。 (よし、大丈夫や。もう少し、こいつと一緒にやっていってみよう)
(4/4) 「なあ、ここじゃあんまりやから井生さんを向こうの木の影にでも移動させよう。 そんなんはただの生きてるもんの自己満足やけど、それでもええやんか」 そう言うと梅津は相変わらず黙ったままだが素直に従った。 まだ生暖かい血を手の平に感じながら井生を抱え道から逸れた土の上に置き、 血をユニフォームのズボンで拭い目を閉じさせると森は立ち上がり梅津の肩を軽く叩いた。 「行こう、梅津。返事はせんでええから俺の話を聞いてくれ。 俺の事、お前の事、今思ってる事を洗いざらい話しときたいんや。気が向いたらお前も何か言うてや」 梅津は真直ぐに森の顔を見た。思えばここに来て以来、目と目を合わせたのは初めてだったかも知れない。 一瞬先にはどう傾くか分からない、ピンと張った糸の上でその両手に何よりも重い命を乗せたヤジロベエ。 (さて、俺らはどこに行くんかな) 出来ることならこいつと乗り切っていきたい。それは今だけの感傷かも知れないが、悪くなく思えた。 【生存者残り40人】
GJ!
梅ちゃんキタワァァァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。..。.:*・゜゚・*
梅ちゃんキタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━ !!!
職人さんGJ! 梅津カッコヨス
そう言えば森って関西人なんだな
梅津キタァァァァァァ(゚∀゚)ァァ( ゚∀)ァァ( ゚)ァァ( )ァァ(` )ハァ(Д`)ハァ(;´Д`)ハァハァ
[前向きに生きる男](1/7) ヤバイ。カープヤバイ。まじでヤバイ、マジヤバイ。 カープヤバイ。 まずおかしい。もうおかしいなんてもんじゃない。超おかしい。 おかしいとかっても 「FAでバンバン他球団から選手引き抜くくらい?」 とか、もう、そういうレベルじゃない。 何しろ殺し合い。スゲェ!なんか野球とかじゃないの。守備とか打撃とかを超越してる。殺し合いだし超おかしい。 しかも選手間で殺し合いするんて。ヤバイよ、選手間よ? だって普通はプロ野球選手って殺し合いせんやん。だって自分のチームの戦力が一気に無くなったりしたら困るやん。 アジア一とか超遠いとか困るっしょ。 選手が死んで、今年の春はリーグ1位だったのに、来年の春は連敗街道まっしぐらとか泣くっしょ。 だから普通球界再編とかあっても殺し合いはしない。話のわかるヤツだ。 けどカープはヤバイ。そんなの気にしてない。殺し合いして強くなるとか思ってる。選手の家族の事なんかこれっぽっちも考えてない。ヤバすぎ。 殺し合いって言うたけど、もしかしたらドッキリかも知れん。でもドッキリって事にすると 「じゃあ、一喜さんの死体ってナニよ?」 って事になるし、あれはどう考えても死んでる。ヤバイ。ドッキリで選手が死ぬなんて凄すぎる。 あと超ここドコ状態。どこかの島。難しく言うと絶海の孤島。ヤバイ。秋なのに昨日の夜に比べてちょっと暖かい。どう考えても南の孤島。何やそれ。 それに超変。超何も音しない。それに超お化けとか出てきそうな。花子さんとか平気で出てくる気がする。花子さんて。 小学生でも言わんよ、最近。 なんつっても俺は武器が凄い。鉄砲とか平気やし。 これの元になったあろう映画なんてブーメランとかたかだかお鍋の蓋で出てきただけでうろたえたりしたり、 凄い奴は初っ端からマシンガンだったり、もっと凄い奴は爆弾とか作っちゃったりするのに。 でも俺は全然平気。武器をその目的のまま扱ってる。凄い。褒めた自分をちょっと嫌になったけど。 とにかく他球団の選手達は、カープのヤバさをもっと知るべきだと思います。 そんなヤバイカープに入ってしまった俺とか他のカープ選手達とか超大変。みんながんばれ。俺がんばれ。
(2/7) 山崎浩司(00)はそう考えながら、山に沿うように獣道を走り続けていた。 出発が一番最初だったということが幸か不幸かは今のところよく分からないが、とりあえず走っていた。 別にチームメイトから逃げたい訳ではなく、本当にとりあえず思いついたまま走っていた。 走って走って、山の裾を抜け平野に出たところで山崎は初めてスピードを落とす。 「…あー、つっかれたー。」 アンダーシャツの袖で流れる汗を拭きつつ、時計を見る。 結構な時間が経ったかと思いきや、あんまり経っていなかった。正味26分。 その割には結構進んだな、と息を整えつつ辺りを見渡す。そして右のポケットから地図を取り出すと、適当にすがれる木の根に座った。 懐中電灯で地図を照らし出しながら、大体の現在位置を確認し、鞄を開け手を突っ込む。 取り出したのは水の入ったペットボトル。蓋を開け、一口だけ飲み、また鞄へ戻す。 水を飲み、大きく息を吐くと山崎は大の字になって寝転がった。 広島で見たそれとは大きく違い、自分の存在を知らしめるかのごとく瞬く星々達を見上げる。 あぁ綺麗やな、って言うか多くね? そいや街のネオンで星見えんことなるって中学校の先生言いよったっけ。 (どっちにせよ、もうどうでもええけどなー。) さっきは思わず脳内で妙な展開をされた思考を整理していく。 カープの選手同士で殺し合いをして、6人にしたら広島に帰れる。それだけなんやけど、どうなんそれ的問題な訳で。 「人殺してまで戻れるほど偉くないっちゅうねん、こっちはのぉ…」 別に死にたいという訳ではない。別に生き残りたいという訳ではない。 人を殺してまで生きていいような人間ではないと自分自身考えているし、かといって大切な妻を苦境に立たせる訳には行かないのが男の意地というものだ。 つかそもそも俺新婚さんやし、結婚したばっかりで未亡人ってのは辛いやろ…。 胸に溜まった息を吐きつつ、寝転がったまま鞄に手を入れる。 「つかこれよこれ。俺むっちゃ素晴らしいやん?」 さっきは無意識の内に自棄になっていたが、今見てもやっぱり自棄になって呆れた笑いしか出てこない。 何って? 俺の武器何って? 言ってごらんよ俺。
(3/7) 「『昆布・煮干・鰹節 豪華出汁3点セット これでいい味出して頑張ってくださいね』まる。」 山崎は軽い口調で言っていたが、明らかに落ち込んでいた。 武器はランダムだった、確かにランダムだった。 でも今シーズン、いや常に繋ぎ役に徹してきた山崎にとっては嫌味以外の何物でも無かった。 最初から仕組まれていたかのごとく、出汁セットが当たる。誰がこんな武器考えたのかは知らないが、そいつは内心喜んでいることだろう。 やって俺に当たったんやからなぁ! あっはっはっはっはっは! 一通り笑った後、山崎は自分が生きてきた中で最高レベルに落ち込んでいた。 「…俺はいい味今まで出てなかったんかい。これでも一応犠打2位やっちゅうねん…6本差で。」 自分の存在価値が否定されたような武器。しかも原価は野口英世が3枚も要るか要らないかぐらいだろう。 またそれだけでなく自分に死ねといってるような武器。昆布や煮干や鰹節でどう人を殺害しろというのか。 『昆布を喉に詰まらせて窒息死! 北海道の水産卸売業者を過失致死容疑で逮捕!』 新聞でこんな見出しあったか? 少なくとも俺は見た覚えないぞ。 っていうか殺し合いがそもそも何やねんって話やん、と山崎は頭に手を当てつつ考える。 ―――殺し合いして、強くなる? もしそんな事が過去にカープいや他の球団であったとしたら、球界再編なんて起こらなかったはずだ。 自分がいたあのチームが無くなる事など無かったはずだ。だって、弱いから合併したって話やん? 殺し合いして強くなるんやったら、間違いなくあの社長どもやったらやるはずだ。今回と同じようなことを、あのチーム―――大阪近鉄バファローズで。 普通自分らのブランド落とすような真似せんやん、合併でかなり近鉄イメージダウンしたって聞いたし。 やったらあの社長どもやったら、間違いなくこっちの方取るはず。…
(4/7) 「そいや上村元気かなぁ…」 『近鉄』と『合併』という言葉で不意に山崎の脳裏では一緒に移籍した上村和裕の顔が浮かんできた。 元々上村はオリックス・ブルーウェーブ、山崎は大阪近鉄バファローズ。 そして上村は捕手、山崎は内野手ということもあり、パ・リーグに居た時は二軍の試合で顔を合わす程度だった2人。 しかし今回ブルーウェーブとバファローズの合併、そして2人合わせてのカープ移籍とあってそれなりに仲良くなったものだ。 ここに連れて来られた基準はよく分からないが上村の名は名簿の中には入っていなかった。 少々羨ましいというか多少恨んだが、とりあえず無事かなと思いほっとしたのを思い出した。 「…近鉄の奴らも残った奴もみんな元気なんかなぁ…」 オリックス・バファローズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、そして他球団に散ってしまった近鉄時代の仲間達。 そして二軍一軍で共に戦ったカープの仲間達は、同じ1980年生まれの選手達は、みんな元気にしているだろうか。 まぁこんな場所でこんなことを考えるのかもどうかと思いつつ、山崎は目を閉じた。 まぶたの裏で思い出すのは、これまでの事。 初めてボールを捕った瞬間に始まり、小学、中学、高校、そして近鉄、カープと一流れに過ぎていく。 あの応援、あの景色、そして―――。 音も無く早送りで頭の中を過ぎる一つの物語に山崎は『走馬灯ってこんなんやろか』と感じていた。 自分が歩いては通り過ぎていった人生が一つずつ、目の前を通る。 それは掴みたくても掴めない、ただ呆然と見送るしかない。 今は『現在』であり、それが『過去』である限り、掴んで引っ張って戻すことなど出来ない。 「しみったれとうな自分。」 自嘲しつつ、右手で両目を覆う。 こんなにしんみりせんでもええやん自分、武器が出汁セットやからって。 頭の片側でそんな声がする、しかしそれでも山崎は覆った手を除ける事はしなかった。
(5/7) ―――このままいけば自分は死ぬ。したら、もう二度と野球出来んのやで? 目の前を通り過ぎていく過去はみんなして野球が好きだ。みんなしてというか全部俺なんやけど。 どんなに辛くても、どんなに悔しくても、どんなに落ち込んでも、とにかく野球が好きだ。もちろん、今でも。 それだけに、もう二度と野球が出来なくなってしまうということが恐ろしくてしょうがなかった。 「なら、殺すんか?」 自分に問いかける。死ねば無理だが、生き残れば野球は出来る。しかし、それはチームメイトを殺すということだ。 例え、奇跡的にここで殺さずに生き残れたとしても、見殺したことになる。チームメイトを、一緒にシーズンを戦った仲間を。 ―――見殺せるか? 俺は、カープのみんなを、自分が野球がしたいからって。 「そんなわがまま通用するかい…。」 両目を覆っていた右手を地面につけ、もう一度星を見る。 「…この季節に見える星座って何やったっけ。さそり座、は夏やったかな。じゃあオリオン座か? っていうか北斗七星どこやろ。」 山崎はそう呟き、一度目を閉じた。そして意識しながらゆっくりと息を吐く。 そして目を開け、笑った。
(6/7) 「…カルシウム豊富やし、まぁ食料にはなるよなぁ。」 鞄の中の出汁セットを再び手に取り、煮干の封を切る。袋の中に鼻を入れると、香ばしい潮の香りが頭に伝わる。 「ホンマ煮干しやな、いい出汁取れそうやわー。」 映画の通りなら、多分首輪越しに聞いているであろうこの武器を考え出した人間に話がけるかごとく話す。 「ま、これやったら餓死ってことはないやろうなー。」 煮干しを1本手に取り、食べる。魚っぽい味が口中に広がる、いや元魚やけどね。 山崎はさっきと違い、楽しむように笑った。 ―――こーなりゃ、開き直るしかないな。開き直ると言っても、前向きにやけど。 前向きに考えるのが自分のいいところではないか。 いいところは、最大限に生かすべきなのだ。どんなときでも、どんな場所でも、どんな状況でも。 (そうやって今まで生きてきたんやしな。) 前向きに、常に前方を見据えて、考えて、行動する。 それが今までに繋がってきた自らの生き方、まぁこんな事になるとは露ほども思わなかったが。 「…とーりあえず誰かに会うかな。」 煮干しの袋片手に鞄を抱え、立ち上がる。そしてまた煮干しを1匹食べると歩き始めた。 「んー、まぁ昆布で人は殺せんけど、人は助けられるわな。 出汁セットで美味しい出汁が取れる、それを誰かに渡す、そして飲む、やっぱり大事なのは仲間だよー!! ってかぁっ! いい計画やん俺!」 自画自賛しつつ、元来た道を戻る。山崎は歩きながら2回、自分の左胸を叩く。 1回は自分の為、1回は自分以外の全員の為に。 (俺の生き方は誰にも絶対変えさせん、つか絶対変えれん。そんなん、俺が一番知ってるがな。) 山崎はもう一度星を見上げた。そして笑った。
(7/7) 「よっしゃ! みんな待っとれ、俺が美味しい出汁作ったるからな!」 ―――で、またみんなで野球やるんや。なぁ? 鞄に煮干し入りの袋を突っ込み蓋をして、山崎は走り出した。 その顔にはかすかな微笑さえ浮かんでいた。 【生存者残り40人】
すいません、章数は20です。
GJ! 山崎か。次誰に会うかによって運命が大きく変わりそうなキャラだな
乙です にしても山崎おもしろいキャラだなw
ポジティブ山崎゚+.(・∀・)゚+.゚イイ!! この先も期待してます
職人さん乙です。 山崎ガンガレ超ガンガレ!!
何かGTOのコピペ思い出してしまったのは内緒です。 職人さんGJ!!
宇宙ヤバイキタコレwwwwwwww
職人さんGJ! 出汁ワロスwwwwってか山崎マジカワイスwww
ho
shu
21.九年目の孤独 (1/4) ―――13。 「オリックス?なんだよそれ?!」 「トレードだってさ。」 「だから、それはどういうことだって聞いてるんだ!」 「チーム事情…って。仕方ないよな、そう言われると。」 「…それでいいのかよ」 「また一からやっていくよ。だから」 ―――14。 「……笑えないぞ、その冗談」 「でも確かにもう言えないんだ。あと一年待ってくれ、なんて。」 「限界とか嘘つくなよ。どうして引退なんだよ?他の球団って道だって…」 「俺は広島で終わるよ。それが一番なんだって、そう思うから。」 「本当に決めたのか?」 「決めた。悔いは少し残るけど。だから」 ―――15。 「だから?」 「お前は頑張れよ。カープを頼んだぞ」
(2/4) 足音。 近付いて、遠ざかる。 外の気配が完全に消えるのを待ってから、黒田博樹(15)は部屋のカーテンを開けた。 (若手か?バタバタしやがって、無用心な奴だ) そう呟いて、苦笑する。いつの間にか、自分は若手ではなくなっていた。 ドラフトも入団会見も初登板も全て、昨日のことのように鮮明に覚えているのに。 物音をさせないように気をつけて、ゆっくりと部屋の隅に腰を下ろした。 煌々とした月明かりのせいで、近付いて覗き込まなければ外から家の中は見えない。 部屋の扉は全部開けておいたから、玄関が開けばその音はすぐに聞こえる。 いずれにせよ、もし何かがあったとしても逃げることも隠れることも容易いはずだ。 そこまで準備を整えて、ようやくほうっと一つため息をついた。 (取りあえずここで朝まで様子見だな。錯乱してる奴も多そうだったし、今、外を出歩くのは危険すぎる。 それにしても横山の奴だいぶ頭に血が上ってたけど、キレて奉文に掴みかかったりしてんじゃねえか? 新井も全然余裕無い顔してたし、森笠なんて真っ青だったな。まったく、平気かよあいつら) 出発前の部屋の様子が思い浮かんだ。覚えているということは、自分はだいぶ冷静だったということだ。 動揺もしたし、怒りもした。それでもこうして、予防線を張りながら時間をやり過ごすことが出来ている。 (…ってことは、やっぱりそれなりに歳くったって事かな、俺も)
(3/4) 黒田は一人でその学校を後にした。 投手陣の先陣を切って出て行った小山田は、黒田を待っていなかった。 比嘉と合流したのかもしれなかったし、単にそこまで頭が回らなかっただけかもしれない。 だが、それはどうでも良かった。黒田の方も、16番の森や17番の大竹を待つつもりはなかったから。 会えば、おそらく彼らは自分のことを頼りにしただろう。多分、自分も彼らのことを信じただろう。 だが、それは「おそらく」であり「多分」に過ぎない。 それでは、この不安定な状態のうちは合流はできない。 第一、本当ならば黒田は“待たれていなければいけない”はずだった。 こんな非常時でも…いや、だからこそ。 無条件の信頼で当然のような顔をして、彼を待っていたはずの二人はもういない。 トレード、戦力外通告、引退勧告。 プロ生活も9年にもなれば、そんなことには慣れっこのつもりだった。 「チーム事情」。この球団では、そんな曖昧な言葉も何度も聞いた。 それでも、たった一年のうちに同級生のチームメイトに二人もいなくなられては、流石にこたえた。 同じ歳の奴も、ドラフト同期の連中も、もう来期からは誰もいない。 13、14、15。綺麗に番号順に並べられた三人が、気がつけば一人。 (なにが『仕方がない』だよ。揃いも揃って、勝手にいなくなりやがって)
(4/4) 六畳敷きの和室に両足を投げ出して、バッグから手探りでペットボトルを取り出した。 カーテンを開けているので、懐中電灯は付けられない。軽く渇きを潤す程度に、水を含む。 地図はもう少し目が慣れてから確認することにしよう。焦ることは無い。 焦って命を無駄にするのが、一番馬鹿げている。 それにしてもどうして、命の心配なんてしなければならないのか。殺し合いなんて、正気の沙汰とは思えない。 「チーム事情」だから仕方が無い?阿呆か。そんな理屈がいつもいつも通ってたまるか。 (佐々岡さん、また会えますよね。倉、お前は人が良過ぎだから心配なんだよ。 緒方さんは平気だろうな…前田さん、無茶だけしないで下さい。) また幾人もの仲間を思い浮かべた。出立を見送った顔。見送られた顔。 (ああ、チクショウ、何でこんなことになってるんだ。何を考えてるんだよ、この球団は!) 視線の先には、窓ガラス越しの夜があった。四角く切り取られた世界は、まるで写真のように動かない。 足音の主はどこに行ったのか。 そしてこれから、自分はいったいどうするのだろう。 ぼんやりと思いを巡らせながら、黒田は壁に掛けられた時計がカチカチと時を刻むのを聞いていた。 (頼むから…もうこれ以上誰もいなくなるなよ。俺を、勝手に置いていかないでくれ…) 【生存者 残り40名】
>>480 (2/4)
のトリップが違いますが本人です。
どこをどう間違ったんだ…
2323キタ━━━ヽ(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)人(∀゚ )人(゚∀゚)人( ゚∀)ノ━━━!!!!!!
485 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/15(日) 13:41:33 ID:nQKuiqM10
ほしゅあげ
ついに黒田が! 職人さん乙です!
職人さんGJ!
ちょwwwwwほかんこハゲワロスwwwwwww
>>488 見てきたw23しくワラタwww
保管庫管理人さん、画像チョイスGJ!
保管庫トップの2人テラカワイスwwwwwwwwwそしてワロスwwwwwwwww
捕手 クララ
492 :
ふー :2006/01/19(木) 15:35:49 ID:YvAJwWLR0
今、彼女が去年の残ってたジェット風船を膨らましたらすぐ割れたよー。なぜ?
493 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/19(木) 19:21:05 ID:5cLnxsbLO
捕
手
鈴
497 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/21(土) 14:52:11 ID:rPiGUXjk0
木
498 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/21(土) 23:44:45 ID:c/a/yPcn0
杏
22. 密談(1/2) 「そうか、連絡無しだったか……」 「でもまだ希望は捨てずにいきましょう」 「ああ。しかしもう既に何人かが……。それに連絡が取れた所で果たして……」 「幹英さん」 「いや、ごめん。こっちにも策を練る時間の余裕が出来た。そう思おう」 「そうっすよ。俺ももっと考えてみます。 ……その、文句がある訳じゃないけど、今の策は……俺はあんまり……」 「分かってるよ。俺も考える」 校舎2階の一番端、窓から差し込む微かな月明かりだけが光源の薄暗い理科室で 小林幹英と澤崎俊和は額を付き合わせるように座り声をひそめて話し合っていた。 ちらりと時計に目をやり澤崎が立ち上がる。 「そろそろ戻らないとやばいすね」 「そうだな、じゃ次は……今から4時間後にここで。もう一度策を話し合おう」 「ラジャ。じゃ次の合い言葉は『ミノフスキー粒子』と『メガ粒子砲』で」 「……分かりずらいよ。て言うかさ、合い言葉いらないだろ」 「いいじゃないすか。テンション上がるし」 (やれやれ) 苦笑いしながら小林は承知した。 わざと脳天気な事を言ってこの陰鬱な状況を少しでも和ませようとしてるのか。 周りに気を使いすぎる性格はいつまで経っても変わらないらしい。 「もう行け。用心しろよ」 「分かってますって。じゃっ、澤崎行きまーす!」 声を潜めているため何ともマヌケだが精一杯の勢いをつけてそう言うと、 ドアに耳を当て外の物音を伺い、用心深く細く開け体を滑り込ませ廊下に出た。 そっとドアを閉めもう一度周囲を伺い、大きく一つため息をつく。 (諦めないぞ。こんな馬鹿なこと、絶対に終わらせてやる) 自分に言い聞かせるようにそう強く心に念じ顔を上げると、ふと黒田の顔が浮かんだ。
(2/2) 今や押しも押されもせぬカープのエース、セリーグを代表する最多勝投手。 片や自分は故障に泣かされ続け、結果的に入団一年目だけの活躍で終わってしまった。 それはもちろん悔しく様々な葛藤と苦渋の日々があったが、黒田を妬むような気持ちはない。 あいつ自身の才能と努力で掴み取った揺るぎ無い栄光だ。 そうやすやすとくたばるような奴じゃない。そうは思うがやはり心配で胸が痛む。 (頑張れよ、生き延びてくれよ。なあ、また飲みに行ってバカ騒ぎをしよう。俺もここで戦うから) 戦力外を通告された自分が安全な場所にいて、誰よりもチームに貢献した奴が生命の危険がある場に放り込まれている。 こんな理不尽なことがあっていいはずがない。 様々に到来する思いを胸に歩を踏み出すと頭の中で1つのメロディーが沸き上がった。 ――まだ怒りに燃える闘志があるなら……巨大な敵を 討てよ 討てよ 討てよ…… (そうだ、諦めてたまるか。戦うぞ。新しい時代を創るのは老人ではない!修正してやる! そして帰るんだ。それぞれの、帰る場所へ!) ふつふつと沸き上がる怒りに歩調は止めどなく早くなり、終いには走り出していた。 走り去った後に壁に貼られた『ろうかは静かに!』の貼り紙がヒラヒラとたなびく。 (やっぱただの天然かな……) 騒がしい澤崎の足音が遠ざかるのを聞きながら小林は周囲に視線を泳がせた。 教室の壁沿いにある棚の上には小動物や鳥の剥製が並び、薄暗い中でその目が光っている。 命を奪われ、防腐処理をされ、目にはガラス玉をはめられ、内臓を抜き取り人工の詰め物をされ…… 生きている時の表面上の姿だけを無理矢理留めさせられている哀しく滑稽な置物。 (まるで……) ふっ、と自嘲気味な笑いを漏らし、目を逸らせ立ち上がった。 (そう、死んだものは無に返してやるべきだ。跡形もなく消し去るべきだ……) そっとドアを開け、暗い廊下に踏み出すと小林は静かに歩き出した。 【生存者 残り40名】
職人さん乙!!
502 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/22(日) 02:37:47 ID:73RX6I4I0
おお!リレー続ききてた。職人さん乙! 澤崎とカンエイが何か鍵握ってるのかな? ところで 301 ◆CChv1OaOeU 氏の話の再開はまだだろうか。 楽しみにしてるんだが
ザクキタ━━━━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━(゚∀゚)━(。A。)━━━━!!!!
504 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/22(日) 21:18:12 ID:TmSOHzhO0
捕
鯨
23.『B級青春ドラマ』(1/6) 「なんでいねぇんだよ、アイツは…」 末永真史(51)は、栗原健太(50)と合流することなく海岸まで出てきてしまっていた。 途方に暮れるように、とぼとぼと海岸沿いを歩いていた。 学校を出たらひたすら真っ直ぐ。 いくら馬鹿でもその指令を間違えるわけがない。 (誰かに襲われたのか…?) まさか、やる気になっている誰かに襲われたのだろうか? (まさか…死んで…ないよな?) 力はあるし、足も遅くはない、身体能力に秀でた栗原がそんなに簡単に殺される事などあるはずがない。 末永は絶対にその最悪の状況を考えまいと、強く強く意識した。 (とにかく…早いうちに合流しないと…) このゲームは危険すぎる。 たとえ学校を出た時は冷静でも、時間が経つにつれて正気を失う奴が出てくるはず。 早いうちに栗原と合流しなければ、生きて再会するのは無理になってしまう。 (こんなもんを…使わざるをえなくなる時が来るのかな?) 手にしっかりと握っているのは連射性能に優れたサブマシンガン、イングラムM10。 『大当たり』と赤字で書かれた簡単な説明書はとりあえず読んでおいたが… (嫌だぞ、皆と殺し合いなんて…。) 玩具ではない事が明らかなその重量感。 このゲームの元になったであろう映画では、殺人鬼となった人物が愛用していたという嫌なイメージ。 (俺は…絶対あんな風にはならないぞ…。) 42人の中で1番か2番目にいい武器をもらったであろうその幸運も、この状況では不運とも呼べるものだった。 武器がもし誰も殺せないような変なものならば、仲間を殺すという嫌なイメージが浮かぶ事がなくて良かったかもしれない。 そんな事を考えながら末永は、それの安全装置がかかっている事を何度も確かめながら歩いていた。 と、そんな末永に、小高い丘にそびえる一軒の家が見えた。塀に囲まれた、立派な家だ。
(2/6) (とにかく、栗を見た人がいるかもしれないし…) その一念で、危険は承知だったが情報を集める事にした。 もしかしたら、栗原を見かけたかもしれない。 いや、もしかしたら栗原がそこにいるかもしれない。 とにかく、一人では心細い。学校にいた時から常に付きまとう嫌な影をなんとかしたい。 喪服に身を包んだ男が、何やら棺桶を用意している。 ──少年、この先待つのは地獄だけですよ。さっさと死んだ方が楽でいいんじゃないかい?── (なんだ。いくら俺が子供扱いされてるからって、あの本の主人公みたいじゃないか。俺は中学生かっつーの。 そりゃぁ、あの本や映画を見た夜は眠れなかったけどさぁ…。) とにかく一番頼れるのは普段から仲の良い栗原だ。 まず栗原と合流したら、あとはこんな状況でもなんとかしてくれるであろう川…いや、前田と合流すれば安心できる。 他にも新井・横山組が何か計画しているかもしれない。それでもいい。──ああ、なんて他力本願なんだい、少年…── 周囲を気にしながら近寄り、末永はその家の玄関にたどり着いた。 「誰かいませんか?末永です!俺はこんなゲームに乗る気はありません! 栗原を探してるんです!栗原を見たかどうか、今はそれだけが聞きたいんです!」 しかし、返答はない。 唾を飲んで、末永は言う。 「入りますよ…?」 もし、”やる気”の奴が中にいたら──?今、俺を殺そうとその牙を研いでいたら──? 途端に恐怖に襲われ、足がすくむ。 ──『前田二世』とか言われていい気になった選手が、ゲーム開始直後に即死。ああ、なんて無様な最後なんでしょう── (いざとなったら…撃っていいのかな?) もう一度イングラムに目をやると、それの安全装置を恐る恐る解除した。 (…何やってんだよ!誰も殺さないって決めただろ!) ──綺麗事ばっかりじゃ生きていけませんよ?生き残りたいんでしょ?だったら殺さなきゃ…── (うるさい!黙れ!黙れ!!) 泣きそうになりながら葛藤し、再び安全装置を乱暴にかけた。もしかしたら自分は狂いかけているのかもしれない──。 深呼吸をして必死に恐怖心を抑え、足を踏み出し、玄関からすぐの部屋に足を踏み入れた。
(3/6) 「動くな」 田中敬人(19)は静かに呟いた。その右手にもった銃らしきものが、末永のこめかみに突きつけられた。 「田中…さん?」 ──へいへい、やっちまったんじゃないの?少年── 血の気が引き、鳥肌が立ったのが分かった。棺桶と一緒に、喪服の男が一歩こっちに近づいてきた。 「頼む…俺を一人にしてくれ…。何も言わず、出ていってくれ」 田中敬人(19)は、しゃがれた声で呟いた。 「…田中さん?何言ってるんですか?」 「疲れたんだよ…こんなゲームには。もう…嫌だ…誰とも会いたくない……」 生気の感じられない、弱弱しい声。どうやら相当まいっているようだ。 「田中さん…諦めてどうするんですか。横山さんが出発する時に『みんなで生きて帰ろう』って言ってたんです。 きっと新井さんと横山さんは今頃仲間を集めながらこれをぶっ潰す計画を立ててるはずです。 それに新井さん達だけじゃなくて、みんなが何とかしようと今頑張ってるはずです。 …だから、そんな事言わないでくださいよ」 銃をつきつけられている末永は、目だけを田中に向けて言う。鳥肌が立ったほどに感じていた不安は、少し和らいでいた。 田中からは、ギラギラとした殺意を全く感じなかったからだ。 「みんなで帰る?馬鹿な事言うな…。俺達は6人になるまで殺し合うんだ…」 「絶対他に道はあります!だから、…頑張りましょうよ」 末永のその言葉を無視するように、田中は末永の左手のマシンガンを奪い取り、銃口を自分の顔に向ける。 「お前、いい武器持ってるな…。なぁ、この引き金を引けば、楽になれるよな…?」 「田中さん!」 「もう…疲れたんだ」 虚ろな目でイングラムの銃口を見つめる田中。 ──そこで末永の怒りは頂点に達した。何かスイッチが入ったのか、様子が急変した。 持っていた荷物をその場に降ろし、田中の胸倉をつかんで無理矢理顔をあげさせた。 「…ふざけんじゃねぇ!!」
(4/6) 腹から息を吸い込んで、田中の頬を本気で殴った。そして怒りの形相で田中を見下ろして、叫んだ。 「何がもう嫌だ!何が死にたいだ!今度そんなふざけた事言ったら、俺がぶっ殺してやる!!」 ──しょ、少年、そんな顔も出来たのかい?── 田中は、頬を押さえてしゃがみこんだまま俯いている。 「みんな同じなんだよ…みんな辛いんだ。アンタだけが被害者ヅラしてんじゃねぇよ!」 その叫びには、末永自身の悲痛な想いもこもっていた。そう、辛いのは決して田中だけじゃない。 「…」 「絶対俺達は生きて帰るんだ!勝手に諦めんな!」 すると田中は起き上がり、今度は末永の胸倉を掴んで叫んだ。 「夢見させるような事を言うな!どうやって帰るって言うんだよ!逃げられるわけないだろ!?」 ずっと生気のない顔をしていた田中だったが、末永に負けじと大声を出す。 大丈夫、まだこの人は死んでない──。末永はこんな状況ながら少し安心した。 「だからって仲間を殺していいのか!仲間が死んでいくのを黙って見てろって言うのか! 俺は、こんな腐ったゲーム絶対に認めないぞ!」 「お前は甘すぎる!純粋すぎるんだよ!誰も信じられないこんな状況じゃ、割りきるしかないんだよ! 俺達は、6人になるまで殺し合うんだ!それが嫌ならさっさと死ぬ!それ以外の道はない!」 「道がなけりゃ作るまでだ!みんなで力を合わせてこんなゲームぶっ潰してやるって、どうしてアンタは考えられないんだよ!」 「…俺だって、出来るもんならお前みたいに希望を持っていたいよ…」 何かを思い出したように田中の様子は急変し、声のトーンが下がった。気になったが、末永は続けた。 「…田中さん、あんたはマウンドに上がった時何を考えてた?『こんな奴、俺には絶対抑えられない』なんて思ってたのか? 『弱気は最大の敵』って、教え込まれてきたんだろ!?」 「弱気は、最大の敵…か」 しばしの沈黙。末永は荒い呼吸を抑え… 「…お願いです、田中さん。…仲間を信じてください。説得すれば、みんな絶対分かってくれます。 横山さん達と合流して、みんなでこのゲームをぶっ壊しましょうよ!」 訴えかけるように一言一言に感情を込め、懇願する。
(5/6) 「…駄目なんだ。俺、小島を…脅して追い返してしまったんだ。俺には、お前と一緒に行く資格がない…」 「小島を…?」 「俺は最低の先輩だ…。あいつは俺を頼って声をかけてくれたのかもしれない、それなのに俺は…」 再びうつむき、拳を握り締める。強気な投球が身上の田中の、こんな表情を見るのは初めてだった。 「…それなら、俺が小島を探し出して説得します。田中さんの気持ちも伝えます」 「…」 「俺達には、悩んでる時間なんてないんです」 「末永…」 「一緒に、これをぶっ壊してやりましょう」 末永の目を見ていると、心の奥から、失われた光が戻ってくる気がした。末永の目は、純粋無垢な少年のような目だった。 顔に活力が戻り、少しずつ普段の表情に戻っていく。 そして末永もまた、狂いかけていた自分を取り戻した気がした。とにかく、現実から逃げてはいけないのだ──。 「…なら、もし小島に会えたら、土下座して謝るよ。そして、あいつと一緒に由宇に帰るよ」 「何言ってんですか。市民球場でしょ」 「はは、そうだな…」 この島にきてから、二人は初めて笑った。先程からのやりとりはまるで青春ドラマの1シーンだ。 大の大人が二人して、希望に満ち溢れた会話。安っぽい青春ドラマだ。視聴率は1ケタか?巨人戦中継にも劣るな、こりゃ。 まぁいいか。このクソゲームに、少しだけ希望が見えてきたんだ。 『弱気は最大の敵』。まさに、このゲームのスローガンはそれなんだ。
(6/6) それから末永は事情を話したが、田中は栗原を見てはいなかった。 仕方なく末永は栗原を探しに出ることにした。 「俺は栗を探しに行きます。田中さん、一緒に行きませんか?」 「いや、俺はこの辺を探索してみる。誰か来たら説得して、仲間を増やすよ。だから、小島に会ったら…頼む」 「…分かりました」 「あ、そうだ。今玄関の近くで見つけたんだが…この弾、お前のマシンガンで使えないか?」 田中が取り出したのは拳銃の弾だった。22マグナムという弾で──まぁ、二人には知る由もないのだが──、 末永のイングラムM10には使えないものだった。 「えーと…確か俺のは…あ、多分違いますね。田中さんが一応持ってて下さいよ」 予備マガジンに装填されている弾と比べると、明らかにそれとは違っていた。 「そうか」 (しかし一体誰のだろうな?俺より先にここに来た人がいるんだろうか…?) 「じゃぁ、絶対また会おうな」 「はい。…弱気は最大の敵、ですよ」 「あぁ、分かってるよ」 そして清々しい顔で、二人は別れた。二人は、なんとかこのゲームのフィールド上に真っ直ぐに立てた気がした。 ──しかし、二人とは全く違う、殺意を持った表情をしている男の影は、すぐそこまで迫っていた。 【生存者残り40名】
職人様乙です。 末永かっこいい! 栗と生きて遭遇してほしい。 喪服の男のへいへいと末永急変後の 戸惑い方にワロタw
乙! 末永かっこ(・∀・)イイ!!
514 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/23(月) 14:11:46 ID:vrwd38kx0
保守
515 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/23(月) 15:35:08 ID:F8LdvNRt0
捕
逸
今年の正捕手 鈴 衛
519 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/24(火) 19:06:11 ID:Ssk1r/yO0
モン
逮
24.信じる者は…(1/3) 小島、お前を信じてやれなくて、すまなかったな… だが、もしお前に会えたら、土下座でもなんでもして謝る。 だから、俺を恨まないでくれ。俺を許してくれ── 「…いやー、助かりますね。缶詰があるなんて」 「あぁ、本当だな。あんなまずいパンだけじゃ、腹はふくれないしな」 「さ、腹ごしらえしましょうか」 「おう」 目の前に出された缶詰と、インスタントの味噌汁。 味噌汁のいい臭いが鼻を刺激し、食欲をかきたてる。 「こんな腐ったゲーム中だ、これでもご馳走に見えるな」 非常食らしき缶詰のパンでも、支給された堅くて味のないパンよりは断然マシだ。 口の中にいれると、チョコレートの甘い味が広がった。 「うまいな…」 「なんかこう、希望が出てきますね」 「そうだな、このゲームからどうにかして逃げてやろうって気になれるな」 清々しい気分だった。小島を信じられなくて追い返してしまった自分が恥ずかしい。 人を信じる事ができなかった自分が恥ずかしい。 現に、目の前にいるこの男は自分に何の危害も加えていないじゃないか。 末永、礼を言う。年下の奴に説教されるとは思わなかったがな。しかも前田さんにいつも子供扱いされているような奴に。 まぁ、とにかくこの調子で仲間を増やして…
(2/3) 何も意識することなく味噌汁を一口飲んだ。 その直後に、体に起きた異変に気づいた。しかし、もう遅かった。 _なんだ…この…… 「グ、ゥ!」 次の瞬間、口から勢い良く真っ赤な液体が吐き出された。 田中敬人(19)はそのテーブルにうつぶせになり、ピクリとも動かなくなった。即死だった。 田中が味噌汁を飲んだのを見るとすぐに対面の椅子から離れた大島崇行(46)は、 冷や汗を垂らしながら、少し笑った。 すごい効き目だ。この薬は── 使いにくい武器だとは思ったが、全く警戒することもなく声をかけてきた田中のような無警戒な男には、 全く殺意を悟られずに殺す事ができるものだった。 ポケットに入れたドクロマークのラベルが貼られた小瓶は、まだまだ中身が残っている。 それが残っている限り、自分を信じる者全てを片っ端から殺していく事ができる。 「信じる者は…救われないんですよね」 学校を出発してすぐに、誰かが倒れているのを見た。 暗くてよく見えなかったが、おそらくは襲われたのだろう。──あと少し近寄ればそこに 倒れている選手の背番号が見えたのだろうが、見たくはなかった── あの人は、チームメイトに信じてもらえなかった。だから襲われた。きっとそうなんだ。 ──だったら自分は、誰も信じない。 この時考えたのは、ただ、それだけ。 缶詰や水、それから救急箱といった使えそうな物資を全てバッグに詰め、大島はその大きな家を後にした。
(3/3) ──烏の鳴き声が聞こえてきた。夜明けが近いのだろうか。 この島で行われている惨劇を空から見守る烏達の声は、どこか悲しげに聞こえた。 「田中さん…大丈夫かな…」 田中に食って掛かった時の勢いはすっかり無くなり、不安気な表情で歩く末永真史(51)。 やはり一人でいるという事自体が、末永の恐怖心を再び煽っていた。 「栗も…大丈夫かな…」 そしてちょうど末永がそんな事を考えていた頃──、 「腹減ってきたなぁ…」 海に近い辺り、草木が生い茂る草地を、栗原健太(50)はひたすらまっすぐ歩いていた。 末永と同じ海を見ながら、栗原は空腹に耐えていた。 一方、すぐ近くにある茂みの中では、一人の大男が鼻息を荒くして栗原を待ち構えていた。 そして次の瞬間… 「グッ!」 栗原の視界が90度回転した。 田中敬人(19)死亡 【生存者残り39名】
職人様乙です。 田中…せっかく… 。・゚・(つД`)・゚・。 そして栗はどうなるんだ!気になる…
525 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/25(水) 00:05:28 ID:XtxVKbl70
めさんこ気になる! 大島オソロシヤ
526 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/25(水) 21:29:38 ID:lXapaKhA0
ホ
モ
528 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/26(木) 00:07:17 ID:4Fjmg93H0
に
恋
530 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/26(木) 01:51:27 ID:nDc5LGwO0
濃
531 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/26(木) 19:02:25 ID:4Fjmg93H0
い
532 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/27(金) 03:43:55 ID:HeaQFGV+0
ホッシャ
533 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/27(金) 16:14:17 ID:TVyjEe1F0
シコシコースキー
ウンコがブリトー
25.厄介者(1/4) ―――お願いします。神様。 どうかそっとしておいて下さい。 誰も信用できません。こんな状況では誰も。 頼みます……。頼むからそっとしておいて下さい。 生き残れる6人が決まるまで、そっと……。 この場所はあまりにも無防備だろうか。咄嗟に身を隠す場所も無いに等しい。第一、屋外ではゆっくり休めない。 このゲームが何日間も続いた場合はこの場所では食料確保も出来ない。やっぱり真っ直ぐ走ってきたのは失敗だっただろうか。 学校があるのだから住民がいる。住民がいるのだから当然、市街地がある。 そんな事を考える余裕も無かったのだから仕方が無いのだが、地図を見て後悔した。 市街地なら、身を隠す場所も、ゆっくり休める場所も探せただろうし、食料確保も出来ただろうに。 (ああ、でもそういう場所だと誰かと遭遇する確率も高そうだしな。まだここはその確率が低いだけマシかもしれない。だけど……) 煮えきれない後悔が絶えない中でも、大竹寛(17)はここから動こうとは思わなかった。
(2/4) ひとしきり後悔した後、大竹はひたすら祈っていた。 森の茂みに身を隠して、胸の前で両手を握り締めていた。 これほど神に祈った事など、自分の人生の中においてあっただろうか? いや。無い。そもそも神の存在など信じた事がない。 だから神に祈った事もなければ、これほどの恐怖を味わった事もない。 自分の苦手な対戦相手を目の前にしても、これほど弱気になった事もない。 「なんで……こんなことにっ……」 何度目かの呟きを零すと、両目に浮かんだ涙を拭った。 何でかなんて分からない。きっと誰も知らない。 チームメイト同士で殺し合いをするなんて、いくらチームを強くする為とはいえ意味が無さ過ぎる。 (死にたくない……) 切実な思いは声に出せなかった。 このゲームに参加させられた大抵の人間は同じ想いだろう。 だから思うのだ。誰も殺したくない、勿論自分自身も殺されない。 最後の6人になるまで、この場所にいさせてくれ、と。 (神様……) 再び目を瞑り、両手を握り締めたところで誰かが走ってくる音が聞こえた。 (ひっ……) 思わず声に出しそうになり慌てて口元を覆う。 大竹が身を隠している位置を少し過ぎて立ち止まった気配を感じる。 その人物は何度も呼吸を繰り返していて、とても急いでここまで来た事が分かった。 (……誰だ……?) この場所に来てすぐ、バッグの中身は確認した。 何か防寒になるものでも…と思ったのだが、バッグの中身は、あまり美味そうとはいえないパンとほんのわずかな水。 コンパスと地図、この島にいるであろう選手全員の名簿、ペンを足したそれらはご丁寧に別のビニール製の袋に入っていた。 更に奥を探ると懐中電灯。結局防寒になりそうな物は何一つ入っていなかった。 しかし一瞬ではあったが、別の意味で寒気が走った。 それは今もズボンの後ポケットに差し込んである、武器の短刀。 時代劇等でよく、武士が切腹のシーンで使うようなそれを手に取った時は、思わず咽喉が鳴った。 そっと鞘を抜くと、約20cm程の刃がわずかな月光を反射させた。
(3/4) ―――こんなもの使いたくない。使いたくないから早く行ってくれ。 頼むからここでそっとしといて下さい。お願いします。お願いします。お願いします……。 そんな大竹の思いを覆すかのように、パンッ!と何かが弾ける音が聞こえた。 一瞬身を竦めた後、その音から思いついたモノは―――。 (ピストルだ……!) 恐怖が大半を占める中、あの音だけで、単純に人殺しの武器だと決め付けた。 しかし大竹の場合、妄想はこれだけでは終わらなかった。 歪んだ恐怖は、妄想から勝手な確信へと導いてくれた。 ―――今のはきっと試し撃ちだ。今度は誰かに命中させる気なんだ。……誰に? ……俺に?……もしかしたら、ここに俺がいることはばれているのかもしれない。 いや、初めから俺を狙うつもりで追いかけて来たのかもしれない。 だったら……やられる前に、やってやる……! 一通りの妄想を終えると、大竹は決意した様に後ポケットに突っ込んであった短刀を取り出した。 そっと鞘を抜く。鋭い刃先が光った気がした。 とても暑く感じた。それは気温が上がったからではなく、かつてない興奮のせいだとは気付かなかった。 だって初めてプロのマウンドに上がった時も、こんな暑さは感じなかった。 声がする方に、ゆっくり近付いていく。気付かれない様に。絶対に気付かれない様に……。 泥棒の心境もこんな感じなのだろうか。 汗で滑って落とさない為にも、ユニフォームで掌の汗を拭う。 暗い中……背番号が見えた。5……。55。『SHIMA』の文字。 ……嶋は笑っていた。何がそんなに可笑しいのか。こんな至近距離にいるのに、本当に気付いていない。こちらとしたら好都合だが。 こっちは短刀。相手は飛び道具。狙うなら今しかない……! 気付かれず、大竹は嶋の真後ろに立つ事に成功した。 その勢いのまま短刀を振り翳した、瞬間―――――。
(4/4) 「!」 大竹は自分でも信じられない失態を犯した。 勢い余った左手が、上下に揺れる嶋の肩に触れたのだ。 思いがけない出来事に、大竹は身を固くする。 左手はまるで普通に呼び止めるみたいに嶋の肩に置かれていた。 スローモーションの如く、眉間を打ち抜かれる自分のイメージが、はっきりと頭に浮かんだ。 ―――……もう駄目だ……。 「あ……」 驚愕の表情で振り返った嶋に、言い訳など出来ない格好のまま、大竹は完全に固まってしまっていた。 「……大竹?」 襲われるものだと身構えしたものの、目を開いたままぴくりともしない大竹に、嶋は呼びかけた。 「おいっ、大竹!?」 激しく揺さ振ったり、真っ赤になっている頬を抓っても、何の反応も無い。 「おおた……」 ハリセンで軽く頭を叩くと、大竹の身体は横に倒れた。 「わわっ!」 慌てて大竹の握り締めていた短刀を取り上げる。 「大竹くーん」 もう一度呼びかけてもやはり反応は無い。 「気ぃ失った、か……」 ふぅー…と息を吐いて、ハリセンの先で大竹の頬を突付いた。 これはとても厄介なモノを拾ってしまったかもしれない。 そう思うと、嶋は頭を抱え込んだ。 【生存者残り39名】
職人さん乙! 気絶てwww大ケケ可愛いよ大ケケ
職人さん乙!ワクテカしながら待ってます!
フォ
542 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/29(日) 23:21:30 ID:LbBGN1wkO
保守
543 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/29(日) 23:30:34 ID:4fhW8soG0
大ケケてぃき〜ん
26. 導かれるままに (1/5) デイバッグをかかえ松本高明(45)は走り続けていた。 走っても走っても不安は執拗につきまとい、限界に近づいた足がもつれ再び地面に投げ出される。 勢いのままに数度転がりながら鬱屈しきった思いが口をつき爆発した。 「だぁぁーっ!……っ痛ってーっつってんじゃねーか畜生!」 しかし叫び声はただ闇に溶け、虚しさと不安と上がりきった息に立ち上がる気力もない。 (畜生……なんでこんな所で……なんで俺が……もう嫌だ、誰か……) 思考が落ち込もうとした時、ふいに視界が白一色に染まった。 「高明か?」 「え、え!?」 懸命に瞬きしつつ焦点を合わせた目に、懐中電灯をこちらに向けている木村拓也(0)が映った。 「なんだよ1人でわめき散らして。騒がしい奴だな」 「た、拓也さん!」 一回り以上年が違うためそれほど親しいとは言えないが、気さくで尊敬できる大先輩だ。 泣きそうな、すがるような高明の顔を見て拓也は少し首を傾げ笑った。 「まいったな。こんな遠くまではそうすぐに人が来ないと思ったのに。 さすがに俊足の若いもんは違うなぁ」 「遠く?」 「なんだよお前、地図も見てないのか?」 「地図……?」 高明は呆けたように拓也の言葉を繰り返す。 「おいしっかりしろよ。それともそのバッグにとんでもない武器でも入ってたか?」 「え……あ、俺、バッグ開けてないです。あの部屋出てからただ夢中で……」 「しょうがねーなぁ」 小さな子供を諭すように笑う拓也を見て、高明の心も次第に平静さを取り戻していった。 「このすぐ先に小さい家があるんだ。とりあえずそこ行くか」 「あ、は、はい!」 拓也に促され立ち上がり、連れ立って歩く。 (会えた。良かった、人に会えた) 何より落ち着いた拓也の様子が頼もしく、高明は言いようの無い安堵を感じていた。
(2/5) 上がりこんだ平屋の民家は少し埃っぽくすえた匂いがした。 狭い和室で畳に置いた地図を挟み2人は向かい合って座っている。 「――で、今はだいたいこの辺り」 「なるほど、分かりました」 「よしよし、だいぶしっかりしてきたな」 「へへ」 安心しきっている高明の様子を見てまた拓也が首を傾げた。 「なあ高明、お前俺を警戒しないのか?」 「え?どうしてですか?」 「どうしてって……あのなあ、俺達殺し合いしろって言われてんだぞ」 言われてみれば、高明にはなぜ自分が拓也を少しも疑っていないのかよく分からない。 ただ会った時から何の変わった様子も無かった。そう、あまりに普段通りだったからだ。 そこまで考えてふと不安になり、 「あ……もしかして拓也さんは、俺を警戒してるんですか?」 「ばか、転んで大声出すような奴警戒するかよ」 「そ、そうですよね」 軽く一笑に付された。信用されてるんだか馬鹿にされてるんだか。まあ後者だろう。 「ところでお前の武器って何?」 「あ、はい、えーと…」 高明はバッグを開けて中を探り、ぎくりと身を堅くした。 「拳銃……ええと、ベレッタM87……?うわ、これ本物ですかね」 「へぇすげえな」 軽い調子の拓也とは裏腹に高明の脳裏には出発した時に聞いた銃声と叫び声が蘇り、 その冷たい金属の感触が心に冷たく響いた気がして慌ててバックに戻した。 「何しまってんだよ。持っとけ」 「え、嫌ですよ俺」 「いいから。ほら、ベルトにでもはさんどけ。その説明書もちゃんと読めよ」 「嫌だなあ……」 渋々と拓也に従ったが、どうにも心地が悪く高明は拗ねたようにつぶやく。
(3/5) 「ぶつぶつ言うな。ちなみに俺のはこれ」 「……何すか、それ」 拓也が差し出したのは原色の色遣いがいかにも安っぽい、どう見てもおもちゃの箱だった。 「”ママとお料理キッチンセット”だってさ。ホットケーキくらいは焼けるらしい」 よく見るとご丁寧に小麦粉の袋まである。おどけた拓也の様子に思わず高明は吹き出した。 「ぶ、武器じゃないじゃないですか!」 「おー言ったなこいつ。道具は使いようだろうが。俺の器用さをなめるなよ。 ……っつってもこれじゃぁなあ」 「面白すぎますよ。勘弁して下さいよ」 「こら、笑いすぎだぞお前」 頭を軽くこずき、そう言いながら拓也も笑っている高明を見て顔をほころばせている。 「す、すみません。そうだ拓也さん、俺のこの銃持ってて下さい。 きっと拓也さんの方がうまく使えますよ」 笑いを堪えながら高明が銃を差し出すと拓也は目を見開き、一瞬その顔が強張った。 「……何言ってんだ、俺だって嫌だよ。それはお前んだろ、お前が持ってろ」 「あー、ずるいっすよぉ」 高明はまた渋々とベルトに銃を差し込みながら、 ふと、暗がりでよく見えないながら拓也の顔色が悪くなっているような気がした。 「拓也さん?具合でも悪いんですか?」 「ん?いや別に。疲れだろ。……けどそうだな、少し寝るかな」 「そうして下さい。俺起きてますから」 「そうか、悪いな。一応あちこち戸締まりしとくか」 「そうですね。じゃ俺行ってきます」 そして高明が懐中電灯を手に立ち上がり部屋を出ようとした時、 ほんのもののついでのように拓也が言い足した。 「あぁそれからな高明、一番奥の部屋には行くなよ」 「はい?」 「比嘉が死んでる」
(4/5) ――死んでる? つい今までの状況とはあまりにも不似合いな言葉を咄嗟には理解できなかった。 「ちょ、な、なに、言ってるんですか。悪い冗談……」 「嘘じゃない」 今まで話していたのと同じ、普段通りの顔をして拓也は高明を見上げている。 「死んでるんだ。俺が殺したから」 (何を言ってるんだ、この人は) 「う、嘘だ!やめてくださいよ、からかうにしてもひどいですよ!」 叫ぶと同時に高明は廊下を走り、一番奥の部屋の襖を乱暴に開けはなち息を呑んだ。 暗い部屋の奥に仰向けに倒れている人影。 はっきりとは見えないが確かに大柄な背格好は比嘉に似ている。 「比嘉……さん?」 まさか。震える足で歩み寄りながら、まだ高明は状況を理解しても信じてもいなかった。 そうだ、焦って近づいたらきっと起きあがるんだ。「だまされてやんの、バーカ」とか笑いながら。 そうしたら俺は「ひどい冗談ですよ!」とか返して……笑って……拓也さんも笑ってて…… しかし懐中電灯の光に照らされたそれは、そんな淡い願いを嘲笑うように崩し去った。 不気味に光を反射している左胸に刺さった金属製の棒。 そこから広がる赤黒い血に染められ判別しづらくなっている、 チームを背負う大砲たれとの期待が込められた左胸下の背番号10。 ぽかんと開いた口からも溢れている血、哀しげに薄く開いた何も見つめていない空虚な目。 端正な顔立ちにひどく不似合いな、生きている者のそれとは明らかに違う濁った肌の色。 全て疑う余地もなく、それは命の灯が消えた比嘉の姿だった。 「う……あああぁぁああああ!!!」 比嘉に取りすがり滅茶苦茶に揺するが、金属の棒が大きい振り幅でゆらゆらと揺れるだけで その体からは何の抵抗も返ってこない。 「ひ、比嘉さん!比嘉さぁぁん!!」 嘘だ、嘘だ、こんな事有り得ない。出発前に自分を励ましてくれた人が。笑いかけてくれた人が。 さっきまで、ついさっきまで生きて喋っていたじゃないか!こんなの嫌だ、こんなの嘘だ!
(5/5) 「嘘じゃなかっただろう」 静かな声に飛び上がるように振り返ると、右手にゴテゴテした弓のような物を持った拓也が立っていた。 「た……くやさ……」 「そんでこれが、比嘉の武器。小型ボウガン」 やはりさっきまでと変わらない、穏やかな表情と口調。 信じる糧としていたそのあまりの普段通りさが、一転して高明を一気に混乱に陥れていく。 「なんで……」 「言っただろ、俺達は殺し合いしてるんだよ」 「ころ……し」 「比嘉を殺した。もう後戻りはできない」 拓也の腕がゆっくりとあがり、高明の額にぴたりと照準が合う。 比嘉の亡骸を背に尻餅をついた姿勢のまま、高明の思考と行動は完全に停止した。 目に映る物、耳から入ってくる言葉、すべて認識はできるが理解が出来ない。 動けない。信じたくない。何も考えられない。 「おいどうした、また遠くに行っちゃってるのか。 ……しょうがねーなぁ。ほら、腰にあるものは飾りか?」 (腰……に?ベルトの……間に……) 拓也の顔を呆然と注視したまま、高明は手探りで銃を手に取る。 「そうだ。説明書読んだんだろ。安全装置を外して」 (外して……) 「ここだ。しっかり狙えよ」 拓也は自分の左胸をトントン、と指さした。 自分が何をしているのか認識できないまま、高明は引き金に手をかけゆっくり引き絞る。 「……まったく、なんでそんななんだよ、お前も比嘉も。 せめて敵意剥き出しで反撃でもしてくれれば……俺は……」 そのつぶやきは小さすぎて高明の耳には届かなかった。 混乱が極限に達しているその目には、拓也がとっくにボウガンの焦点を高明から外している事も、そっと目を閉じたのも見えなかった。 【比嘉寿光(10)死亡 生存者残り38名】
職人さん乙です!…ってあぁぁぁぁ比嘉ー! まさか高明に殺されるとは…
550 :
549 :2006/01/30(月) 01:41:15 ID:6F1G09Ap0
うはw読みちがえたww俺ヤバスwww
・・・たっくん・・・比嘉・・・ 死人増えてきたね。・゚・(ノД`)・゚・。
552 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/01/31(火) 01:04:08 ID:Y+Kn+sNQ0
兎に角保守
キテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!! たっくん何があったんだよ...まだ死なないよね...・゚・(ノД`)・゚・。
ヒガ… 回想かなんかで、どういう風に死んだか見たいな
スズエ
ホリエ
sinobu
(丶 ̄嘉 ̄) おらもう出番ねえんだがー
(丶 ̄栗 ̄) そらおらの口調だがー フゴー
| |ε・)プップクプー と ザコどもが… |
ほ
ホイミ
ベホイミ
ベホマズン
565 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/03(金) 00:50:30 ID:+JycnwSz0
マホイミ
ほ
│
む
ら
ん
571 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/06(月) 11:48:27 ID:s1IpMoYoO
軒
スズエッシュ有
スズエ・ローマシュ・匡
スズエ・ピカソ
鈴衛スレになっとるw ↓ということでバトロワの話振って
代表的マーダーに誰がなると思う?
撲殺天使かなこちゃん
某サイボーグ
神
おさかな
2323
[悩み、そして銃声](1/4) 今晩は半月だ、それに赤い。 いや、もしかしたら本当はいつものように黄色いのかも知れない。でも何となく赤く見えた。 その上、半分になった月の影から今にもひょこりと何かが出てきそうで思わず寒気がする。 あぁもしかして月は自分の心の内を―――、と思ったところでやめた。 「……んなこたぁいいんだよ…。」 静まりきった登山道の中腹で、廣瀬純(26)はひとりごちる。 古ぼけた切り株の上に腰を据え、頭と懐中電灯の光を地面に向けてからもうかれこれ5分は経過しただろうか。 廣瀬は悩んでいた。ただひたすら悩んでいた。 思えば最初に大野練習場に集められた時からすでに悩んでいた。 その悩みはプロ野球という世界に入ってからずっと抱え込んできたもので、それこそ今になっては他愛もない悩みではあったのだけれど。 それでも一人前に悩んでいた、バスの中でもあの狭苦しい部屋の中でも。 ずっとずっと悩み続けていたら、突然途轍もなく大きな悩みが飛び込んできた。 それはほんの数時間前に抱え込んでいた慢性的な悩みよりもはるかに重厚長大であり、また自分の人生を大きく変えてしまうような悩みだった。 その悩みの本質は考えてみれば至って簡単であり、それでいて二択である。 その上、人間は動物であることを考えてみれば、今まで自分が悩んでこなかったことが不思議ほど単純なものである。 だがしかし、いくら単純で簡単で二択であったとしても今ここにある悩みは答えによって、己だけでなく周りの人間をも破滅させる可能性をはらんだ『悩み』であることに間違いはない。 だからこそ廣瀬は悩んでいた。ただひたすらに悩んでいた。 『生』または『死』の狭間で。 しばらくうつむいた後、廣瀬は顔を上げた。 かと思うと、またうつむく。その一連の動作を繰り返しながら、ただひたすら悩んでいた。
(2/4) 廣瀬は『戦争』が嫌いだった。嫌いなものを上げてくれという質問にすぐさま答えられるほど、嫌いだった。 理由は『家族や仲間が死ぬことが嫌だから』というものである。 だとすればどうだろう。 今この現状を簡潔に言うと『選手同士で戦い、選手が死ぬ』ということだ。選手同士で戦うのだから、どちらかが死ななければ永遠に戦い続けるしかないのだ。 選手とはつまり―――廣瀬にとっては『仲間』だ。 同じ釜の飯を食べ、共に励ましあい、成長しあってきた『仲間』。 『仲間が死ぬのが嫌』という廣瀬にとっては、まさに生きながらにして地獄のようで、また救いもない世界に等しかった。 救いもないといえば、廣瀬が出発した時の話だ。 廣瀬、背番号26の前に出発したのは背番号25と23を背負った男2人である。 新井貴浩と横山竜士―――絶対に全員で生きて帰ると言い放った、2人。 廣瀬は他の数選手同様、2人に着いていこうと即座に決めた。仲間が死ぬのが嫌だと思うような性格である、当然とも言える。 それに廣瀬は2人のすぐ後だったから、必ず合流できると信じていた。 新井と自分との間は1分しかない、そしてその新井は『待つ』と言っていたのだから。 しかし―――蓋を開けてみれば、居ないのだ。 ぶんどるように鞄を持って、なるべく急いで出たにも関わらずだというのに。 無論、廣瀬は探した。制限時間いっぱいまで出来る範囲を。 しかし2人は居ないのだ。風に吹かれて消えたかのごとく。 制限時間を過ぎ、振り返って出発した学校を見た時に廣瀬の心に浮かんだのは怒りでも悲しみでもなかった。 『恐れ』だった。 もしかしたら2人はあんな事を言ったばっかりに、もしかして――― ただそこに佇んでいるだけであるのに、学校の奥に秘められた何か暗く重く黒いものを見た気がして、廣瀬はその場に立ち尽くしてしまった。 立ち尽くした廣瀬であったが、そのうち頭に浮かぶ2人のおぞましい姿から目を逸らしたくて、ひたすら走ることにした。 ふと気がつけば山の中腹に来ていた。そして現在に至る。
(3/4) 「新井さん…横山さん……。」 2人は大丈夫だろうか。膝の上で両手を組み合わせながら思う。 みんなで生きて帰るって言った人が最初に死ぬ訳ないですよね。そう信じていたかった。 しかし廣瀬自身の脳はそれでも無邪気とでも言いたくなるほど、残酷だった。 ―――横山が待っている、新井を迎える、その瞬間に銃撃が――― さっきからその映像がスローモーションで終わりなく続いている。 自分の脳でありながらこんなことしか考え付かない自分に対して、廣瀬はいい加減気分が悪かった。 「あぁ、もう―――」 うんざりだと言うはずだった。 その言葉は突如聞こえた発砲音によってかき消され、廣瀬は同時に息を呑む。 ―――明らかに、銃声。場所は――― 音がした方をみると目に映ったのは、偶然にも木々の間から見ることが出来たあの建物。 「……学校…?」 慌てて時計を見ると、山崎の姿を最後に見た時からすでに25分を少し過ぎている。廣瀬が学校を出たのは18分後。 だとすれば今頃出発しているのは自分より後ろの8、9人ほどになるだろうか。
(4/4) とっさに廣瀬は立ち上がり、鞄の中から名簿を取り出すと再び地面を強く蹴りつけた。 山の斜面はさほど角度がなさそうではあったが、それでも勢いがつく。 揺れる名簿を何とか懐中電灯で照らし出し、9人ほど後ろの背番号の選手を探す。 背番号40の倉、41の森笠、42の長谷川…。 倉、森笠、長谷川。くらもりかさはせがわ、と口に出して呟き、廣瀬は名簿を鞄に戻す。 ―――…みんな殺しあうなよ……死なないでくれよ…。 弱弱しい口ぶりでそう言うと廣瀬は目を細める。 限りない恐れと悩みを抱えたまま、廣瀬はひたすら夜の小道を走った。 その頭上に半月が輝いていることなど忘れたように。 見ようによっては、青白くも赤くも見える月が輝いていることを。 【生存者残り38名】
章番は27です。
職人さん乙です!!
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!! 職人さん乙です。 301氏の方では死に掛けだが廣瀬ガンバレ
589 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/12(日) 01:25:29 ID:66FqxVDVO
正田耕三
全米が泣いた…
〜猿の惑星〜the planet shoudakouzou
592 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/12(日) 09:58:24 ID:9uadIvE90
↑誤爆?
あぼーん
595 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/12(日) 11:46:06 ID:66FqxVDVO
>594 スレ違い
保守
ホモッシュ
ホルモン
599 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/14(火) 15:35:14 ID:y04SOiMdO
掘る菊門
600 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/14(火) 15:37:27 ID:nFe0yvMOO
601 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/14(火) 15:37:41 ID:8vtxcx4uO
鈴衛600ゲット
602 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/14(火) 15:38:52 ID:nFe0yvMOO
隣のハイガサイドは柿食うハイガサイドだ
赤ラッカル青ラッカル黄ラッカル
606 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/15(水) 15:59:45 ID:vLnuPvOcO
生前田 生永川 生出し栗原
此の竹垣に竹立て掛けたのは竹立て掛けたかったから、竹立て掛けた
拓也死なないでくれ(´・ω・)
保守
ホリエッシュ
ホリゴメッシュ ナイト
28.届かなかった声(1/2) じんわり…とイヤな汗が浮かぶ。緊迫が支配する中、何度も込み上げる不快感と共にそれも拭う。 あれから何時間経ち、そして何時間沈黙と歩いているのか。いつの間にか時計を見ることをやめていた。その行為がとても馬鹿馬鹿しいものだと悟ったからだ。 何の解決の糸口も見えないまま、時間の経過を窺うのは非常に馬鹿らしい、と。 相変わらず鬱蒼とした道を歩いていた佐々岡真司(18)と高橋建(22)は、しばらくしてぽつりと開いた場所に出た。 「ぅわっ!」 突然の二人の出現に、慌てた様な声が聞こえた。 佐々岡が懐中電灯で声のした方を照らすと、眩しげに目を細める永川勝浩(20)の姿がそこにあった。 ようやく落ち着いていたところだったのだろう。 動揺を表す様に、咽喉を潤していたと思われるペットボトルが地面に落ち、それを拾う余裕も無いのか、貴重な水はどんどん土に吸い込まれていく。 そのわずかな数秒間、どちら側も何のリアクションもとらなかった。おそらく3人共次の行動を迷ったに違いない。 微妙な空気の中、意外にも先に動いたのは永川だった。 驚きと不安で強張っていた表情は、佐々岡と高橋だと気付いた途端見る見る緩んでいった。 ぎこちない笑みを張り付かせ、その表情のまま立ち上がろうと腰を上げた瞬間。
(2/2) 「逃げ―――」 その言葉が届くよりも先に空気を切り裂く一発の轟音が辺りに響いた。 立ち上がりかけた永川の身体が大きく後に傾く。 「ぐっ……」 痺れる感覚の中、永川の短い呻き声だけはリアルに聞こえた。 右足を抱えて痛みにのた打ち回る永川の身体に続けて穴が開いていく。目を覆う間も与えなかった。 暗いはずなのに嫌でも目に入る、開けられた箇所から飛び散る血は、それこそ赤。 赤いユニフォームを更に赤に、Carpのロゴは既に読み取れない。赤で不思議な模様を広げながら、周囲一辺を赤で侵していく。 土も、木も、緑も、目の前も、倒れこんだ永川も。 赤、赤、赤、何もかも赤――――― 「やめろ!やめろーっ!!」 そう叫んだのは誰だったのか。 制止を乞う声は、歪んでしまった空間にただ吸い込まれていくだけだった。 【永川勝浩(20)死亡 生存者残り37名】
乙です! ナガカー…・゚・(つД`)・゚・
ノーコン 死んだー
616 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/02/19(日) 19:17:47 ID:Oxqv5vJo0
>>603 >それってこの前の日本がレイプされたやつ?
バレンタインデーになんちゅう事を言ってるんだorz
永川…あっさりと撃たれて…orz 打たれる時もだが…
/"lヽ ( ,人) (・д・) チンコー \ノ ノ/ 〜(__人_) 〜 ノ (
職人様乙です! 永川ー! 初登場で死んじゃったよ
不細工 貼るな
保守
アナルVSワギナ * w
ペニスVSワギナ O O w U
永川(´・ω・)
29.「カルーセル」(1/5) 「この辺にしておくか…まあ、どこにしろ安全っていうことはないだろうけど」 「それにしても夜の森って不気味ですよね。いかにも何か出そうって感じで」 「実際出るんじゃないか」 「…止めて下さいマジで怖い。駄目なんですよ、そういう話は!」 どれくらい歩いただろう…そういえば時計はあれから一度も見ていなかった。 学校を出たのがついさっきのようにも、何年も昔のことのようにも思えた。 尾根から少し下ったところに大きな岩を見つけ、その影に隠れるように腰を下ろしてようやく息をつく。 森笠は倉と合流すると、すぐに山に入ることを提案した。 表向きの理由は、見通しの良いところは落ち着かないということ。 本当の理由は、長谷川に合流場所を教えてしまっていたこと。 “長谷川は走っていってしまい、声を掛けても気付きませんでした。スミマセン” 嘘をついて、軽く頭を下げた。 しようがないさと笑った倉はそれを信じたのかどうか。 気を緩めるとすぐに涙が出てきそうになる。 あの時背中で聞いた音が、ぐるぐると頭を回って離れない。
(2/5) 「え…ちょっ、何だよこれ…」 改めて懐中電灯の丸い光りに照らされた地図を覗き込んで、森笠は愕然とした。 中央から少し外れたところに打たれたポイントがスタート地点だというのは、すぐにわかった。 しかし、問題はその点の示す範囲だった。それは思い描いていたものよりも遥かに小さかったのだ。 「これが立ち入り禁止エリア?学校から100mもないじゃないか…あれだけ焦って離れたのに!」 「これは、やられたかな」 「どういうことですか?」 「ああやって言われると、取り合えずできるだけ遠ざかりたくなるじゃないか」 「遠ざかる…」 「もし制限時間がなく、出口で後から出てくる選手を待っていられたとしたら… 若い背番号には先輩が多いから、その人たちが俺たちを待っていてくれたとしたら? そうしたら殺し合いなんてできるわけがない。 未だに信じられない話だけど、とにかく球団は俺たちに『殺し合い』をさせたいんだから」 「集団になられたら困るんだ…」 森笠はもう一度地図を覗き込んだ。 そこに描かれているのは確かに島だ。ぱっと見た感じでは、そんなに大きくはない。 だが、街もあれば山もある。一旦散らばってしまえば再び集まるのは難しいだろう。 現に、自分たちは鉄塔で合流してからここに来るまで誰にも会わなかった。 「まあ、俺の勝手な想像だけど」 「いや、多分それですよ。そうか」 森笠は今更ながら、倉が自分を待っていてくれたことに感謝をした。 (そうだ、俺は一喜が殺されてパニックになりかけてたけど、倉さんと話したら取り合えず落ち着いたものな。 でも、もし一人のままだったら…そのまま、パニックになってる他の奴に出会ってしまったとしたら? なあ長谷川、お前もそうだろう?ただパニックになってただけだよな。 もしお前があの時会っていたのが俺なんかじゃなくて、例えば前田さんとか緒方さんとかだったら、 銃なんて出さなかっただろう?そうだよ、そうしたら福地さんだって…) また、耳の奥で一つ銃声が響いた。
(3/5) 「うわ、物騒だなこれは」 「何ですか、それ?」 バッグの中身をチェックしていた倉の驚いたような声で、森笠の聴覚が現実に引き戻される。 見れば、その右手には何か塊のようなものが握られていた。 さっき漁ってみた自分のバックには入っていなかった。つまりそれは倉の武器ということになる。 「手榴弾って書いてあるな。あと、閃光弾…音響弾…」 呟きながら倉が一枚の紙を差し出した。使用説明書。その上に大きな文字が躍っている。 『あらゆるニーズにあわせて大活躍!超★豪華・投擲三点セット!』 「投擲ってことは、投げて使うのか」 「おお!すごく倉さん用って感じの武器ですね」 「どれくらい届くんだろうなあ」 「大きさは野球のボールとそんなに変わらないけど…って何やってるんですかぁ?危ない!」 森笠の目の前で、倉大きく右腕を振って手榴弾を投げる構えをとった。 「大丈夫だよ。信管抜かなきゃ爆発しないって書いてあるし。」 「そういう問題じゃないです!怖ぇぇぇぇ…」 肩が冷えていること、重さと形状がボールと違うこと。両方を加味して、全力で100m届くかどうか? そう言いながら倉がもう一度スローイングの真似をしたので、のけぞった森笠はバランスを崩して斜面に転がった。 だから、その後の倉の呟きに森笠は気がついていない。 「100m、か…」
(4/5) 「もう止めてくださいよ!せめて俺の方に向かって投げる真似だけは!絶対!」 「悪い悪い。ところでお前の武器はなんだったんだ?」 「え、ああ…」 バツの悪そうな顔をしながら、森笠はユニフォームに付いた土を払った。 少し躊躇ってから、ズボンのポケットに手を回す。 「これです。バタフライナイフって書いてありました」 長谷川の拳銃や倉の手榴弾に比べて、その武器はいかにも貧弱に思えた。 「どこかで聞いたことあるな」 「昔、話題になりましたよね。キレやすい子どもが持ってるとかいう」 「ああ、思い出した。なんだ、それこそお前にぴったりじゃないか」 「やめてくださいよ、俺はキレませんって。横山じゃあないんだから」 からかわれて笑い返した時に、ふいにその同期の名前が出てきた。 「そういえば横山の奴、ちゃんと新井と合流できたのかな」 「いくら横山と新井でも大丈夫だろう……多分」 「なんとかアイツらに会えるといいんですけどね。あと嶋と、小山田と。ああ、福井とも」 「そうか、福井が入って、お前の年代はますますキャラが濃くなったなあ」 「何かアイツ、既に十年くらい一緒にやってるんじゃないかってくらい馴染んでますからね」 「珍しいよな、その歳でそれだけの人数が残ってるのは」 「だいぶ減ったんですけどね。朝山とか田村とか遠藤…。なにせ、もとが多かったから」 「それで減ったっていうのが凄いよ」 指折り数えて幾つもの顔を思い出す。 先輩たちにはからかわれ、後輩たちとは馬鹿をやって騒いだ。 入団年は違っても、やはり同級生というのは特別だった。 「あれ、そういえば倉さんと同い年ってだれでしたっけ?」 「もう福地だけだよ。まあ、もともと少なかったから」 「……!」 一瞬、呼吸が止まった。 森笠の耳に記憶の音が甦る。倉には聞こえない、背中に張り付いた銃声と悲鳴。
(5/6) 「ほとんど一緒に一軍でやれてない情けない同級生だけどな。 でもまあこの間、来年は怪我をしないで二人で一軍にいようって話をしたよ。 何だかんだでここまで一緒にやってきたからなあ」 (そうだ、福地さんは…そうだ、倉さんと福地さんは。謝らなくちゃ。馬鹿、謝ってどうなる? でも、このまま黙ってるのかよ?このまま…) 「倉さん」 「ん?」 「スミマセン、あの、長谷川…」 「なんだ、もういいよ。合流できなかったのは仕方がないさ。何か考えよう」 (そうじゃないんです。そうじゃなくて。) 言葉が出てこない。 見捨ててきました。そんなことを言えるわけがない。 「……スミマセン」 「だから、もういいって!しつこいぞお前…」 俯いて、唇を噛み締めた。無事で…どうか無事で! ― ガァァァァァ……ン ―
(6/6) ああ!またあの音だ!あの時背中で聞いた音。 あの音は長谷川の拳銃。あの悲鳴は…… 「隠れろ森笠!今の音は、ここから結構近いぞ!」 夜の森の静寂を破って響いた突然の銃声に、倉が慌てて岩の陰に身を寄せた。 だが、森笠にはその音がどこで鳴ったのかがわからない。 記憶の中の銃声と、現実の銃声が混ざり合って頭を巡る。 ― ガァァァァァ……ン ― 二度目の銃声。 倉が森笠の腕を無理矢理引いて、岩陰に引き寄せる。 足元の土が崩れて、小石が斜面を転がった。 (やめろ!やめてくれ!) 耳を塞いで蹲る森笠の、その鼓膜の奥で絶え間なく巡り巡る音の回転木馬。 銃声・悲鳴…そしてまた銃声、銃声! まわるまわるまわるまわるまわるまわるまわるまわるまわるまわる……… 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 「森笠?!」 【生存者 残り39名】
分割失敗してしまって最初と最後で分母が違います。 全部で6分割です。
職人様乙です! もりかさぁぁぁーーー??
職人さん乙! そういえば撃たれた福地は無事なのだろうか
残り生存者数、変じゃない?
指摘ありがとうございます。 記述間違いです。 正しくは【生存者 残り37名】です。 ミス多くて申し訳ない……
ヒソーリ
保守
「山守さん。弾はまだ残っとるでよ」
↑ ?
意味不明
保守
645 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/01(水) 18:47:36 ID:1p/ff0d10
ほしゅあげ
647 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/02(木) 15:40:17 ID:l1q/Byzr0
東出が結婚 広島 2006年3月2日(木) 15時23分 共同通信 広島は2日、東出輝裕内野手(25)が山口隆夫さん(49)と結婚したことを発表した。昨年11月に婚姻届を提出している。 [ 3月2日 15時23分 更新 ]
だれだよ 山口隆夫…
保守
メディーナ メデテーナ
漏れら極悪非道の 嶋拓ブラザーズ! 今日もネタもないのに 保守連発してやるからな!  ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ∧_∧ ∧_∧ ヽ・ω・∩>(∩.´_`) SHIMA (つ 丿 ( ⊂) TAKU ( ヽノ ヽ/ ) SHIMA し(_) (_)J TAKU
(´・ω・)デカチンポ栗原
(・ ε ・)リトルチンポ ハイガサイド
M字はデカイらしいぞ
(・ ε ・)鬼チンポ ハイガサイド
保守
〈 ´仝`〉神のチンポ 智徳
正 捕 手 鈴 衛
正 捕 手 鈴 衛
662 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/09(木) 00:45:23 ID:dRmVWVGy0
( ̄粗 ̄) やらかしチンポ粗い ~U~
663 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/09(木) 00:56:50 ID:ZE6d/hQmO
クリニゲ栗原
丶・ω・> むかしはほしゅ
(・д・)ノーコンチンポ永川
〈 ´仝`〉神のチンポを見たくないかい?
667 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/12(日) 11:45:03 ID:fUqH7YO+0
(・ ε ・) オレのチンポにかなうはずがないだろ?雑魚が!!
保守
保守
(◎ ε ◎)すげえええええええええええええええええ 前田はん!!!!!
〈 ´仝`〉すげえだろ 今度お前のかみさんにも見せてやるよ
保守
(*・ ε ・*)嫁のことなんかどうでもいいです。俺に…
保守
40万部のベストセラー『嫌韓流』の第2弾 『嫌韓流2』発売中 意外とおもしれーぞ
保守
保守
まとめサイト久々に更新してみました。
ほ
保守
>>678 乙です。
マーティの倉殺害シーンだなw
683 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/19(日) 08:34:40 ID:QkcSW8bJO
新井いらね
お前がいらね
685 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/19(日) 12:24:45 ID:QkcSW8bJO
おまえがいらね 氏ね
>>678 乙です
保管庫トップの写真が密かにいつも楽しみw
保守
保守
ギルガメッシュナイト
保守
保守
ちんぴお
693 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/22(水) 02:01:42 ID:j34CVTGC0
保守
おまんちょ
695 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/03/23(木) 01:52:39 ID:T8rLpOvL0
保守
保守
虚乳
(  ̄∀ ̄) ヤダ
このスレの事覚えてる職人さんいるかな
さて700なわけだが
30.サヨナラアーチ(1/4) 茂みの中から飛び出した人物が自分に飛びかかり、倒れこんだ自分に馬乗りになって自分を見下ろしている。 栗原健太(50)は、今絶対的な窮地に陥っていた。 手にしっかりと持っていたジグ・ザウエルも手から離れ、数メートル先の地面にある。 (参ったな…。飯のための魚はほしいけど…。なんであんたと会うんだよ…) 吹き飛んだ栗原は右腕から着地したため、強い痛みを右手首から肩にかけて感じていた。 (まずいな、痛めたか…) 「よぉ、まだ死んでなかったがか」 闘牛のような激しい体当たりで栗原を吹き飛ばした浅井樹(6)は、その大きい手で栗原の腕をしっかりと押さえつけ、抵抗を許さない。 「…俺は死にませんよ。絶対に生き残ります」 両者ともに力では他に負けたくない選手だけに、軽い会話を交わしながらも力と力の押し合いが続いている。 「生き残る気か?残念やったな、ファーストは俺のもんや」 「ふざけてんですか?大した実力もないくせに…」 (こいつ───!!) 浅井はその一言で激昂し、栗原の首を右手で締め付けた。 「か…はっ…」 栗原の喉の奥から、苦しそうな呻き声が弱弱しく出てきた。 ものすごい力で抑えつけられているため、力には自信のある栗原だったがその体勢から逃れられなかった。 そのカープ一太いと言っても過言ではない二の腕は伊達ではないということか。 (この人、すげぇ力…) 浅井は右手を離すと、そのままその右手で栗原の頬を殴りつけた。 「何ゆーとんがや!二度とその口聞けんようにしてやろーか!?」 左手で持った刺身包丁を栗原の眼前に持っていき、威圧する。
702 :
リレー版 :2006/03/25(土) 01:44:12 ID:W5BoICKb0
(2/4) 浅井は、完全に劣勢である栗原が、どこか余裕の感じられる目をしていたのがたまらなく気にくわなかった。 若くしてレギュラーの座を掴みつつある栗原が、いつまでもレギュラーになれない自分を見下している気さえした。 「レギュラーは俺が貰います。ファーストはアンタじゃねぇ。…俺ですよ」 栗原は咳込みながら、吐き捨てるように言った。 浅井はうつむいてしばらく沈黙すると、少しだけ顔をあげた。 口元がつりあがり、奇妙な笑みを浮かべているのが栗原には見えた。 「そうか、お前がこんなにこわくさい奴やとは思わんかったわ。そんな奴には、お仕置きしてやらんなんな…」 「…お仕置き、っすか…」 お仕置きといえば、子供の頃は何か悪い事をすると寒い中ひたすら店の周りの雪かきをさせられた。 当時は厳しい両親を恨んだものだが、今になって思えばそういう経験のおかげで強い精神力を養えたのかもしれない。 「…じゃあ、何ばすればええんだべか?」 挑発するように、栗原も負けじと言い返す。 「…そーやな、ほしたらな…、そのままじっとしとれ」 浅井もその不気味な笑みを浮かべたまま、包丁を持った左腕を軽く振って見せた。 「運いいわぁ、お前。こんな近くで、俺のバッティング見れんがや」 「は…?」 「サヨナラアーチや」 栗原の左腕を押さえていた右手で右腕の二の腕のあたりを抑えつけ、左腕を高く振り上げる。 (ヤバイ!ヤバイヤバイ、それはヤバイ!!)
703 :
リレー版 :2006/03/25(土) 01:45:12 ID:W5BoICKb0
(3/4) へいへいとーちゃん、それはおイタが過ぎないかい? だってそんなことしたら、俺、雪かきも野球も何にもできなくなるんじゃないかい?焼肉屋も継げないかもしれないぜ? 右腕のない野球選手なんか見たことあるかい?右腕のない焼肉屋店員、だってありえないだろ? 真冬日に、あー今日は義手のつなぎ目が一段と冷えるな〜、なんてほのぼのとした会話ができるかい? ──実際は、そんな事を考えている余裕もなかったのだが。 浅井は腹から大きく息を吸い、渾身の力を込め、栗原の右肘めがけて高く振り上げた左手を振り下ろした。 栗原も必死で抵抗するが、尋常ではない力を出している浅井に完全に力負けしていた。吹き飛んだ時に右腕を痛めた事もあるが。 「らぁあああああ!!!」 (!) 「うあ゛あああああああああああああ!!!」 栗原の右腕を、刺身包丁が貫通した。血液が溢れ出、刃の周辺が一瞬にして真っ赤に染まる。 栗原は絶叫しながら暴れるが、浅井は左手の包丁をしっかりと刺したままにしているため、傷口は余計に広がっていく。 「お前の野球人生はここで終わんがや。…もういっぺん聞くぞ、カープのファーストは誰や!?」 「…栗原、…健太だぁっ!!」 激痛で顔を歪めながらも一瞬だけきっと浅井を睨みつけ、言った。 喋る事すら苦しいのだが、ここで負けを認めることだけは絶対に嫌だった。 (俺は、カープの四番バッターに、…いや、日本一のバッターになる男なんだ…) 2005年シーズン、出遅れはしたが自己最高の成績を残した事は、確かな自信になっていた。 7年目のシーズンは、本気でHR王を狙うつもりだ。勿論、新井との競争に勝って四番の座も奪う。 そしてお世話になったカープを自分が引っ張って優勝させた後、夢だったメジャーリーグへ── 育ててくれた両親に、それ以上ないくらいの親孝行をしてあげたい。 焼肉屋を継がずにプロ野球選手になんかなって、しかも最初の数年間は2軍でしか活躍できず かなりの心配をかけてしまった。その上今年は隠し子騒動なんかもあった。こんな親不孝な息子が、どこにいるだろう? 寒い山形で暮らす両親に立派な家を建ててあげて、引退するまで店を継げない代わりに立派に改築する。従業員も増やす。
704 :
リレー版 :2006/03/25(土) 01:45:38 ID:W5BoICKb0
(4/4) ──その時まで、俺は負けない。負けられない。誰にも。 (こんな怪我、痛いもんかよ!) 呻き声が漏れそうになるのを喉元で必死に堪え、栗原はなお浅井を睨んでいる。 「だらか!!」 包丁から離した左手を、血が出るくらい強く握り締めて、浅井は栗原の顔面を殴った。 「カープのファーストは浅井さんやと言えま!」 「…誰が…そんな馬鹿な事を…!」 「なんでお前にもこんなだらにされんなんがや!俺は、お前にも新井にも実力で劣っとるとは思ってないがやぞ!!」 もう一発。 _ペッ 栗原の吐いた唾が、浅井の眉間に付着した。 そこで、浅井は静まり返った。そしてどこか哀愁の感じられる口調で、言った。 「…屈辱や。たかが23歳のガキにまでこんなだらにされるとはなぁ…」 (その生意気な口に、この包丁を突き刺してやる… そしてその唇をさばいて、奴への土産にしてやろう。 富山の名物にはならないが、”唇のお造り”、いいじゃねぇか…) 浅井は栗原の腕に刺さった包丁を抜こうとした。その瞬間── 「栗!!」 栗原の悲鳴を聞いて駆けつけた末永真史(51)が、我を忘れて大声を揚げた。 ”スイッチ”は、既に入っていた。二人から30mほど先に、鬼のような形相の末永が立っていた。 「この野郎ぉおおお!!」 辺りを飛んでいた鳥達が、一斉に飛び去った。 【生存者残り37名】
705 :
リレー版職人 :2006/03/25(土) 01:53:14 ID:W5BoICKb0
参加当初トリップのつけ方が分からず、一人だけ浮いとる職人の者です。 間隔をあけてしまって皆さん大変申し訳ありませんでした。 自分は今日センバツで地元勢が早くも負けやがったのでふて寝しようかと思いましたが、 某選手が粗いさんのHMを使っていたという珍事に気持ちをもらい見きり発車で投下しました。 今後は他のBRとは違った面白い展開に多分他の職人様方がしていってくれると思うので 皆様このスレを巡回コースから外さんようにどうぞよろしくお願いしますorz
職人乙です! 相手は浅井だぞ…末永返り打ちに合うなよ…
職人さん乙! 「こわくさい」の標準語は何になるんだろ? 方言で台詞が書けるっていいよなー 臨場感が違うっていうか キャラが生きるっていうか
職人さん北陸の方? 山形では「ええ」とは言いませんよ この場合「ほだら何すっどいんだっす」みたいな感じですかね ちょっと気になったのでつっこませていただきました、今後も頑張ってください。 栗がんがれ栗…(ノД`)゚・。
709 :
リレー版職人 :2006/03/25(土) 23:23:08 ID:/zfYfN1E0
やっぱ無理がありましたね…浅井は北陸色丸出しな反面栗原は標準語ってのが嫌で、 なんとかキャラのためにも栗原に方言喋らせようと色々調べたんですが…。 山形弁変換ページとかあてにならんなぁ。てか山形弁難しすぎorz 今後は自分とこ以外の言葉は無理せんようにします。どうもご迷惑かけました。 ちなみに こわくさい=生意気な です。浅井登場エピの際には注釈いりますかね?w
職人さん超乙ッ!!!前から思ってたんだけど「だら」は富山弁じゃなくて石川の金沢弁だよ。 それにしても浅井に末永が勝てるとは思えないなぁ…
>>710 富山でも使うんじゃない?
よく知らないけど。
>>709 ドンマイ。続き楽しみに待ってますよ。
>>709 乙なんですけど、語尾以外の方言は控えた方がいいと思う。
鯉ファン以外も見てるんで、できるだけ分かり易くお願いしたいです。
広島弁は仕方ないにしても、特に都会の人間には馴染みが薄いからワカンネになるし。
選手も相手が理解しえないほどの方言は使ってないかと…
注釈入れないといけない程は、結構きついっす。
解りにくそうな単語方言の場合はその単語の直後に ()付とかで標準語訳入れればいいんじゃないか? 上記に出てきた「こわくさい」なら 「こわくさい(生意気な)」って感じで
個人的に方言は歓迎です。 「ああ、こういう意味なのね」と色々調べて楽しんでみたり。 まあ自分のような暇人ばかりではないと思うので、カッコで解説が 良いんじゃないでしょうか。
俺も方言は歓迎。 けど大量に出てこられると何が何だかになる気がする… 俺だけかもしれんが。 解らなそうな方言は「渇望」みたいにさらっと本文で説明がいいと思う。 ()だと気が抜けそうで…。
どっちでも良いよ。 職人さんのやりやすいようにして欲しい。 ただ、何年もその地に住んでるのに、いつまでも生まれた所の方言使ってる奴はまずいないだろうけどな。 他人と全然交流しない職業とか、よっぽどの引きこもりでもない限り。 特に広島弁は感染力強いと思うし。
カッコ解説だと気が抜けそうで嫌だな。 シリアスなシーンでカッコ解説だと、入り込めない。 書く側も読み手のことを考える必要があると思うけど。
感情が高ぶると方言出てくる(罵詈雑言ほど方言出やすいし)ってことなんだろうけど でも方言って文字にすると途端に意味不明になるから難しいよな
難しいね。関西弁ならTVなんかで割と聞くから分かるけど 山形とか北陸の方はなじみがないからなぁ。 広島弁もコテコテだったら分からない事が多い。 でもピーコは広島弁じゃないとしっくりこないなw個人的なイメージだけど
捕手
管理人さん乙ですノ"
ほしゅあげ
罪過(1/3) ミィィン…ミィィン…ミィィン… 耳の奥の方で蝉の鳴き声が延々と聞こえる。 苦手な夏を連想させるその鳴き声は、それでもどこか心地良かった。 「うわあぁぁぁぁっ!!」 蝉の鳴き声は、突如誰かの叫び声によって掻き消された。 高橋はただただ呆然と立ち尽くしていた。目の前の光景が、すぐには理解出来なかったからだ。 気付けば永川に加え、佐々岡までもが血まみれで倒れている。 二人はぴくりとも微動だにしない。 仰向けに死んでいる永川。そして佐々岡は高橋の方に手を伸ばし掛けた格好のまま……死んでいた。 二人分の血の量は半端でなく、共通した箇所には血溜りが出来ていた。 その血溜りから流れている血は高橋の足元にまで届いていて、スパイクの先が少し変色していた。 嗅いだ事も無い血生臭さが辺りを充満している。 静寂が戻ったはずのそこは、3人も人間がいるのに息遣いさえ聞こえてこない。 「あ……?」 ようやく発した言葉はやけに掠れていた。 (―――なんだ……?なにかの、間違いだろ……?) (―――永川だけじゃなくて、何で佐々岡さんまで……?) そこで初めて高橋は、自分の左手に握られている拳銃に気付く。 存在を初めて知り、急に震えだした。 そして、そこから導き出される答えは一つ。 (―――俺が……佐々岡さんを撃ったのか……?) 震える拳銃と、今は遺体と化した佐々岡を交互に、徐々に引き出される断片的な記憶。 鼓膜を揺さぶる轟音。刹那的に穴が開いていく体。そこから飛び散る鮮血。 そして―――――
(2/2) 『建……、おまえっ……』 最後に、手を伸ばしながら自分を見つめる佐々岡の恨めしげな眼――――― 撃った。間違いなく、自分は佐々岡を撃った。 しかし、佐々岡の手にあったはずの拳銃が、何故今自分の手に握られているのかはまったく憶えていない。 そこだけ都合よく記憶が抜け落ちている。 無我夢中でやったのか。 「あ、あ、……」 理由はどうであれ、自分は人を殺した。 「―――――!!」 もはや声ではない悲鳴を上げて頭を抱え込んだ。 膝からがくがくと力が抜け、その場に座り込む。 耐えられなかった。とてもその事実を受け入れる精神力は持ち合わせていなかった。 「あ、くっ、……ぅ」 すぐにでもその場を離れたかったが、立ち上がる力さえ湧いてこない。 「ごめんなさ、い……っ……ごめ、んなさい……」 無意味な謝罪だとしても、口に出さずにはいられなかった。 助けてやれなかった永川と佐々岡へ。そして帰りを待っているだろうその家族。 もちろん自分にも守っていかなければならない大切な人達がいる。 だからこそ懺悔の隙も与えない程に、瞬間的に罪の重さが増してくる。 重くて、重過ぎて、それこそ狂えてしまえればどれ程楽だろうとさえ思う。 でもそれを許さないかのように、最後の佐々岡の眼が脳裏に焼き付いて自分を責め立てる。 推す様に懺悔と後悔の涙が止まる事を知らないかの様に、後から後から零れ落ちる。 「どうしたら、いいんですか……?」 逆恨みする立場ではないと理解していても、心の片隅に影を落とした少しの憎悪を含む質問をぶつける。 しかし誰も答えるはずがなく。 「どうしたら……答えてくださいよぉ……」 視線の先は永川と佐々岡を通り越して、空虚を彷徨っていた。
(3/3) ――――― 長い間その場にいた。 夜明けが近いのか、暗く闇を落としていた辺りは薄っすらと変わり始めていた。 すっかり涙は枯れ、今は嗚咽も消えている。 幾分落ち着きを取り戻したものの、膝を抱えたままの姿勢を崩そうとはしない。 容赦なく初冬の寒さが体温を奪っていく中、今後自分はどうするべきなのかずっと考えていた。 「肩……」 乾燥しきった唇を少し動かした。両肩を抱きかかえる様に更に身体を丸める。 こんなに冷え切ってしまっては、当分投げ込みも出来ないだろう。 ……いや。もう一生投げる事はないのだ。 (そうだ……それしかないんだ) 考えて、考えた結果。 それは生きて罪を償う事。 山本元監督は6人生き残れると言っていた。 だけど生き残ったとしても野球を続けるのが目的ではない。 自分の犯した過ちを、一生かけて償っていく事。 (……ムシが良すぎるだろうか) 自信が中々持てなくて、また自問自答を繰り返したところで辿りつくのは同じだった。 それでも。自分がこの先出来る事はそれしか思いつかなくて。 だから。 「生き残らないと……」 そして謝らないと。罪を償っていかないと。 高橋は二人の遺体はそのままに、突如自分に科せられた宿命を背負いふらっと立ち上がる。 霧が蔽い始めた森は自分の心の中にまで入り込んでくるようで、誘われるまま、深い先の見えない中を一人歩き始めた。 【佐々岡真司(18)死亡 生存者残り36人】
章番抜けてました。 31.罪過 です。
ナガカー、ササ様・・・ 乙です
馬さま。・゚・(ノД`)・゚・。
馬様・゚・(つД`)・゚・
職人様、乙です ケンちゃん‥この後どうなっちゃうの?
ケンちゃんがマーダーにならないかな
捕手
保守
捕手 上村
保守
捕手
739 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/04/06(木) 15:34:02 ID:RB2MgAj90
SUZUEに2万点
SUZUEあげてもたすまない
741 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/04/07(金) 12:38:33 ID:EdL6tLHp0
せっぴ〜何処だage
広島で2年間やってきたので落ち着いてバッティングができました。 チームが連敗していのでなんとかしたかったです。 広島でやりたかったし、マーティの元でやりたかったんだけど、まあ残念です。 連敗を止める働きが出来てよかったです。 (グレッグラロッカ 4打数3安打2HRの大活躍 市民球場よりヒーローインタビュー)
743 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/04/08(土) 00:27:12 ID:e8m0J1ys0
今年も最下位
保守
保守
hoshu
747 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/04/10(月) 17:31:57 ID:hZPd4BLUO
ほす
748 :
世界一のプロ野球!チケット売れ行き好調 :2006/04/10(月) 22:04:29 ID:9pht7owT0
hoshu
倉捕手
hoshu
保守
ほしゅ
ほしゅ
もう職人さんはいないのかな…保守
756 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/04/16(日) 13:27:59 ID:BQNB4cU/0
ほ
しゅ
ふむ
保守
32.再会(1/4) 「この野郎ぉおおお!!」 「ちっ!」 (やべぇ、あんなもんと正面から撃ちあえるかよ!) 末永の持っている武器を見るや否や浅井はすぐに栗原から離れ、落ちていた栗原の拳銃を拾い上げた。 正面から撃ちあうのは分が悪すぎる。 特にここは遮蔽物もなく、タイマンで銃撃戦をするには不向きな場所だった。 浅井は続けて自分のディバックだけを拾い、すぐに逃げ出した。体は大きいが、意外に浅井は足が早い。 「逃がすかあっ!!」 足では負けない。末永は自慢の俊足で浅井を追いかけようとした。 乾いた大地を左足で踏みしめ、グッと力を入れて地面を蹴り、一気にトップスピードに乗った。 (殺してやる!殺してやる!!殺してやる!!!) 「ぶっ殺してやる!!逃げんじゃねぇ浅井ーーっ!!」 _ぱらららららららららら 怒号と銃声が辺りに響き渡る。 末永のこんな叫び声を聞く事は、普段はほとんどなかった。 末永といえばルックスが良く、女性人気はカープ内ではかなり高い部類に入る。 性格はやや子供っぽく、皆──特に先輩達か──から可愛がられていた。 前田に『スエちゃん♪』と呼ばれて、照れ笑いしながら『やめてくださいよ』、と言っていた。 ”怒る”というとあまりイメージがわかない。たいていの選手はそう言うだろう。 子供のようなはにかんだ笑顔。 人生初のサヨナラヒットを打ってお立ち台に上がった時のような笑顔のイメージが強かった。 しかし、栗原は末永が激怒した場面をよく知っていた。
761 :
リレー版 :2006/04/18(火) 23:10:16 ID:uKdgdMMh0
(2/4) ある日の甲子園。森跳二(16)が阪神タイガースの正捕手・矢野の頭部に危険球を投じた事で、 甲子園の雰囲気はどこか異様なものになっていた。 そして、事件は起きた。 カープの守備。本塁クロスプレー。キャッチャー倉がホームに陣取る。 3塁ランナーのシェーン・スペンサーが走ってくる。そして── (!!) 故意か事故か。確かめる術はない。だが事実、倉は吹き飛ばされ、後頭部から地面に落下した。 そのまま担架で運ばれ、カープベンチが一瞬のうちに静まり返った。 そして、甲子園はわれんばかりの”シェーン”コール。 ──なんだなんだ、これはプロレスの試合だったのかい?── そんな雰囲気にも呑まれ、カープの選手達はただ黙って倉を心配するだけだった。 何より、チームの総大将の山本浩二自身が腕を組んで座っていただけだったから。 すっかり”負け犬体質”が染み込んでしまっているカープの選手達には、ベンチを飛び出す気力もなかった。 だが── 『なんだよ、今のは!!』 血相を変えてベンチを飛び出した一人の選手がいた。それこそが、末永だった。 顔を真っ赤にして、自分とは比べ物にならないほどにガタイのいいスペンサーに向かって突進していった。 『末永!落ち着け!!気持ちは分かるけど、止めろ!!』 グラウンドで審判に激しく抗議していた新井貴浩(25)に制止されて立ち止まった末永を、栗原は急いで取り押さえた。 『離せよ栗!あいつ、ぶん殴ってやる!!』 『馬鹿!落ち着け!そんなことしてどうする!』 『どう見てもわざとじゃねぇか!あいつ、絶対許さねぇぞ!!』 その細身な体からは信じられないほどの力を出し、大柄な栗原の手を振り解こうと暴れる末永。 そんな力があるのなら何でバッティングにも使えないのか、と栗原は後々不思議に思ったりもした。
762 :
リレー版 :2006/04/18(火) 23:10:35 ID:uKdgdMMh0
(3/4) 『はいはいスエちゃん、落ち着いて〜』 福井敬治(38)他何人かの選手にも抑えられ、なんとか末永をベンチまで戻したはいいが── (こいつ、キレたら凄いんだな…) それが、栗原が末永の意外な一面を知った場面だった。 『畜生!』 『おい、利き手はやめろ!』 その後も利き手でベンチを殴ろうとしたりしたので、しばらくは見張りに気を使った。 (『どこかのピッチャーみたいになるぞ』、なんて冗談も言える雰囲気ではなかった) そんなわけで、キレた末永を野放しにはしておけない。 このまま放っておけば、その武器に装填された全ての弾丸──いや、ひょっとしたら『持っている全ての弾丸』、かも…── を浅井にブチこむくらいのことはやるだろう。そうなってはいけない───! 「スエ!!」 末永がマシンガンの弾をばら撒きながら物凄い速さで栗原の脇を駆け抜けていこうとしたその時、 栗原は腹の底から叫び、呼び止めた。 末永はその叫び声を聞いた瞬間に、前に流れる体を無理矢理止め、我に返ったように振り向いた。 「スエ…行くな。俺の事はいいんだ。…だから、そんなもんをチームメイトに向けないでくれ…」 「何言ってんだよ!!今すぐお前の仇をとってきてやるから!!」 「お前が浅井さんを殺したら、ますますこのイカれたゲームが止められなくなるかもしれないんだぞ…」 栗原の視線の先には、末永の左手にしっかりと握られたマシンガンがあった。 マガジンに装填された30発の弾丸のうち、1発でも当たれば人を殺せる凶器。 末永は今、その凶器をチームメイトに向けている──! 「あんな奴ほっといたら、止められるもんも止められねーよ!」 「それよりも…この傷、やばい。血、止めねぇと…」 浅井の突き刺した刺身包丁は、今も栗原の右腕に刺さったままだった。
763 :
リレー版 :2006/04/18(火) 23:11:05 ID:uKdgdMMh0
(4/4) 血は止まっているのか分からなかった。右腕が真っ赤になって何がどうなっているのか分からなかった。 ただ、放っておいていい傷ではない事は明らかだった。 「…くそっ!」 _ぱららららららら! とうに姿の見えなくなった浅井が逃げた方向へ、全ての弾を吐き出した。 そのまま三振した後バットを投げる時のように、イングラムを地面に叩き付けた。 そしてちっ、と舌打ちをし、ディバッグの中をゴソゴソを探り、下のほうにあった地図を手に取った。 「包帯とかないか?」 「今はないけど…、ここに来る前に田中さんと会った。大きな家だ。 あそこは大きい家だから、救急箱くらいは絶対ある。あそこを目指そう。そう遠い所でもないしな」 「あぁ、分かった…」 「立てるか?」 「大丈夫だ…」 栗原はゆっくりと立ち上がった。荷物を落とし、銃も浅井に持ち去られたため、持ち物は何もなくなっていた。 「お前さ、なんで俺の言う事聞かなかった?…てか、なんで手ぶらなんだよ!」 「いや…歩いてたら悲鳴が聞こえてさ。気がついたらそっちに走ってた。荷物もその時落とすし、ロクなことがなかったよ」 「ったく…。今度お前の実家行くから、焼肉10人前おごれよ」 「あぁ、どんだけでも食わせてやるよ」 いつもの調子で談笑しながら、二人は歩き出した。 一人より二人。やはり二人で歩くというのは安心感が違う。もう、狂う事はない。 自分の中の安全装置が外れてしまうこともないだろう。それほどに安心した。 しかしその道中── 『みんな起きとるか〜。そんじゃ、死んだ奴の名前を言ってくけぇのぉ…』 末永はこのゲームの恐ろしさを改めて知る。 【生存者残り36名】
職人様乙です! 栗、栗良かったよ末永と合流できて(ノД`)・゚・。
おお〜久しぶりに投下されてる!! 職人様乙!! ネ申の「スエちゃん♪」ワロスwwwwwwwwww あと、栗末コンビ(・∀・)イイ!!今後の活躍に期待。
>>「ぶっ殺してやる!!逃げんじゃねぇ浅井ーーっ!!」 スエちゃん♪かっこいいいいいい!!
ドラバト落ちた捕手
ほ、捕手なんだな
久しぶりの投下キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 職人さん乙です
33.「鬼」(1/7) 海が見える。 うっすらと白くなり始めた空の下に、どこまでも続く凪が見える。 穏やかな波の上を、眠りから醒めた海鳥が滑るようにして飛んでいく。 緒方は枝を伸ばした木の根元に腰掛けながら、それを見詰めていた。 レーダーで回りに誰もいないのを確認してから、銃を取り出す。 (減音器といっても、無音になるわけじゃないんだな…これが安物なだけかもしれないが) MK23“ソーコムピストル”。銃の名は聞いたこともなかった。 説明書を渡されたのは出発の三日前だ。 それから広島を出発するまでの時間の大部分は、その扱い方を頭に入れることに費やした。 たいていのことはわかって臨んだつもりだったが、実際に撃ってみると随分と勝手が違うものだ。 発砲時の反動、火薬の匂い、乾いたような破裂音。 この銃を、撃った。 この銃で、井生を殺した。 夜明けまでの6時間は、島の地勢を把握するのに使おうと決めていた。 地図も予め渡されていたとはいえ、確認しなければならないことは山ほどあった。 どの程度なら全力で走ることが出来るのか。死角は。 川の水量・市街地の見通し・山道の傾斜。目測・距離感。全てを身体に叩き込む。 それはまるで、初めて訪れたスタジアムの照明の加減や、芝の状態を確認する作業と似ていた。 迂闊という他に言いようのないような遭遇だった。 森と梅津が近くを歩いていることにばかり、気を取られ過ぎていたのかもしれない。 油断が、全力で走ってきた井生を緒方の前に立たせた。 「井生」 初めて口に出してその名を呟いてみる。 彼は本当は、生き残るべき人間ではなかったのだろうか。 今更の後悔が少しだけ胸に残っている。 覚悟なら疾うに決めてこの島に来たはずだったのに。
(2/7) ------------------- 「正気ですか?そんな…そんなこと!」 両脇から押さえつけてこようとした奉文と田村を、力任せに振りほどく。 怒りで唇が震えているのが自分でもわかる。 それでも、その話を語った目の前の人間を張り倒さなかったのは、その名が「山本浩二」だったからだ。 心から尊敬し、信頼していた人から呼び出しを受けたのは、一週間前のことだった。 そこで聞かされた悪魔のような計画……今期一軍公式戦に出場した全選手による殺し合い。 「わしは本気じゃけぇ、メグ」 「どうして…」 その時の山本浩二の口調はいつもと同じものだった。 だから緒方は聞き返しながらも、悲しいほどに確信を持ってしまった。この人は“本気”なのだ。 「どうしてそんなことを?カープをどうしようというんですか?」 返事の変わりに、机の上のクリアファイルから一枚の紙を取り出した。 受け取れというように緒方の目の前にひらりと差し出されたので、手を伸ばす。 「わしはカープを強くしたい。ただ、それだけよ。」 そこに描かれているのは升目で区切られた…地図? 「これは、どこかの島ですか?」 「会場だ。お前には渡しておくから、他の連中に見られんようにな。」 「え?」 「武器はまだここにはないが、お前の希望を聞いて使いやすそうなものを用意させる。 ああ、それでも説明書くらいは、先に渡しておかんといかんかのぅ。」 「待ってください、それはどういうことですか?説明してください監督!」 緒方はまだ、目の前の人を他の名では呼べないでいた。 今では“元”監督となったその人は、少し寂しげに笑ったようにも見えた。
(3/7) 「監督はこんなことで、本当にカープが強くなると思ってるんですか?」 「思っとるよ。」 「そんな!だからといって殺し合いなんて、許されるわけがない!」 「メグ、どうしてカープは弱くなった?強かったあの頃と何が違う?」 語気を強くする緒方とは対照的に、静かな口調でぽつぽつと言葉を落としていく。 「簡単なことよ。あのころは皆、ギラギラしてた。勝ちに飢えて、命さえ賭けるほどの気持ちでいた。 今は試合をやって、ただ負けた、ただ勝った。それだけだ。 闘争心っちゅうもんがないんよ。それは、わしも含めて。」 最後の言葉が、殊更に悲しい語調を孕んでいるように聞こえたのは気のせいか。 いつの間に出て行ったのか、部屋から奉文と田村の姿が消えている。 緒方は、そんなことに気がつかないほどに狼狽していた。 目の前で語られた言葉の一つ一つが、破片となって散らばってまるで形にならない。 「…俺は、何をすればいいんですか」 何か自分に伝えたいことがあるのだということは分かっていた。 たった一人だけこの球団事務所に呼ばれたことには、何か意味があるはずだ。 漠然とした悪い予感が胸を渦巻く。それは予感だが、確信でもあった。 それでも聞いておかなければならない。 「メグ、お前にしか頼めんことだ。殺す役を引き受けて欲しい」
(4/7) オフの球団事務所は静かだった。 緒方は静寂の重さが、心を折ろうとするのに耐えていた。 一方でその沈黙が永遠に続けばいいとも思う。聞きたくない。これ以上、何も。 だが、その願いは叶わなかった。山本浩二は、いとも簡単に沈黙を破ってみせる。 「殺し合えと言われても、実際に出来るわけがない…お前はそう思うか? だがわしは、殺し合いが起こる状況にはすぐになると思う。 始めにちょっと追い込んでやれば、精神的に弱い連中は錯乱して、何かをしでかすだろう。 でも、そんな奴らは、殺し合いを始めるのには役立っても、結局は使い物にならん。 最終的には、強い意志を持って戦って生き抜いた奴が欲しいんじゃ。 だが、そうなると話は難しい。基本的には甘っちょろい奴らばかりじゃけぇ…わかるな?」 「わかりません」 その緒方の答は無視される形になった。語尾の疑問符には意味はなかったのだろう。 「弱い奴が殺される。錯乱して弱い奴を殺した連中も誰かに殺される。 残った奴は、どんどんと追い詰められる。追い詰められて、追い詰められて。 最後に、自分自身に強い執着を持った連中が生き残る。そうなって初めて、この殺し合いが意味を持つんじゃ。」 「……監督!」 もしかしたら泣いてしまえば楽だったのかもしれないと、今になって思う。 泣いて、わめいて、嘘だと否定するだけの若さがあったなら。 だが、緒方はにはそれは出来なかった。 目の前に突きつけられた、その人の“本気”から目を逸らすことが出来なかった。 「もう止めてください、そんな無茶な話は! 第一、殺し合いをすれば選手が足りなくなる。ペナントが戦えなくなる。 それでどうやって、優勝なんてできるんですか!」 「選手は足りる。メグ、わしは“来年”優勝するチームにするとはいっとらんだろう。」 「…え?」 「わしらが目指すのは、2009年の優勝だ。」 ざあっとつま先から何かが這い上がるような感覚があって、足が震えた。2009年。
(5/7) 2009年の優勝。そうだ、それはカープの至上命題。 新球場建設。そして 「謙二郎に強いカープを渡してやりたい。」 「…………野村さん」 「この殺し合いに残った連中を核としてチームを作り直す。 選手の数が減れば、ドラフトに金が回せる。いい外国人も呼べる。コーチも揃える。 メグ、今年のカープのキャッチフレーズを覚えてるか?」 「Reborn…赤ヘル、再生…」 「そう、文字通り“再生”だ。カープは生まれ変わるんじゃ。」 散らばった全ての欠片が一つに纏まって、緒方の頭の中でパズルを組み上げた。 財政難の球団。低迷する成績。 選手の選抜。チームの再建。 許されることではない。それでもやらなければいけない。 そう、全ては2009年のために。 「もしも」 なんてことだ、声がかすれている。 「もしも、“断ります”といったらどうなりますか。」 「その時は残念だが、お前の家族の命を預からせてもらうことになる。」 「馬鹿な!」 「だがな、メグ」 泣いてしまえ。叫んでしまえ。 今ならば間に合うかもしれない。今なら…… 「お前はきっと、断りはせんよ。」 -------------------
(6/7) 海が見える。 躊躇いもなく一直線に海と空を分けて、水平線が伸びている。 東の空がオレンジ色を溶かしたように染まっていく。夜が明ける。 緒方は手首を捻って、拳銃を裏返した。 あまり大きい武器は走れなくなるから止めて欲しい。そんな希望を汲んで用意された銃。 チームメイトを殺す。その役割を果たすために、選んでバッグに入れられた武器。 (かなこ、俺はこの銃で人を殺したよ。お前は信じないだろうな・・・でも、これは真実なんだ。) まず、闘争心のないものを殺す。 次に、緊張感に負けた心の弱いものを殺す。 三年後のチームで優勝の戦力にならないであろうものを殺す。 この、チーム再建のための選抜を邪魔しようとするものを殺す。 ― もし、俺が三年後に必要だと思った選手が、他の奴に殺されたら? ― ― それは気にせんでええ。それは、そいつがその程度の人間だったということだ ― 本来ならば、選手の可能性を見極めるのは監督の仕事ではないのか。 その問いに、“それが出来ていれば、殺し合いなんて必要なかったのぅ”と、その人は呟いた。 それ以上は言葉もなかった。 (野村さん、俺は井生を殺しました。伸び悩んでいた若手です。 俺の姿を見て、泣きそうになってた。恐怖に震えていた。だから、殺しました。 そのために俺はこの島にいるんです。そう思って、その時は迷いもせずに撃ちました。 でもね、野村さん。もしかしたらアイツは、これからいい選手になったかもしれない。 可能性はありました。不器用だけど、前向きで、一生懸命練習する奴だった。 ……何様のつもりなんでしょうね、俺は。人ひとりの夢と可能性を潰しました。 井生を、殺しました。そんな資格なんて、あるはずないのに。) 己の判断のみを拠り所として人を殺す。そんな資格を持った人間などいるはずがない。 もしもいるとするならば、それは人ではなく無慈悲な神か、あるいは冷酷な鬼だろうか。 緒方は目を閉じて深く息を吸い込み、そしてゆっくりと開けた。
(7/7) ポケットから小さな機械を取り出せば、中央に赤い光と“9”の表示。 それは武器とともに荷物に入れられていた、首輪の発信機の位置を示す装置だった。 もう、油断はしない。今は周りには人影はない。 確認してボタンを操作する。表示を全島に切り替えると、たくさんの赤が画面にあらわれた。 この中にはもう64の数字はない。他にもいくつかの光が失われたはずだ。 だがまだ、これだけの光が残っている。本当の勝いはこれからだった。 (野村さんは怒るでしょうね。あなたの愛したカープの選手を殺した。でも、これからも殺します。 俺はどうしてもあなたと優勝したいんです。新しい球場で選手としてグラウンドに立っていたい。 そこで、あなたを胴上げしたい。だから………) 夜が明ける。 最強のカープを作るための殺し合い。もう後に戻ることはできない。 ― だから俺は、鬼になります ― 【生存者 残り36名】
もいっちょキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
新作キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 職人様乙です。 末ちゃんキレたらオソロシス 緒方が出てきて「ユダキタ━(゚∀゚)━ !!」 と思ったらユダは301氏だったorz
新作キタ━━━━━━━(゜∀゜)━━━━━━━!!!!! 記念あげ
新作乙です。 ピーコ何考えてんのピーコ。 なんか切ないなぁ・・
すっごい関係ない話になるんですけど… スペンサーが倉に突撃した時の末永さんの話って本当の事なんですか!?
783 :
リレー版職人 :2006/04/22(土) 03:20:55 ID:Qna27web0
倉事件の末永突撃は勿論フィクションです。 ブルガリア入れたりして嘘っぽくしたつもりなんですけどw
鬼緒方が真の力を発揮する時人々は恐怖に支配される…こんな感じになってほしいな。
捕手
嶋グランドスラム保守
緒方… なんか切ないねぇ…
ほっしゅ
保守
ほかんこ更新ワロタw 毎回かなり楽しみ。乙です!
>>790 保管庫さん他のところと違って独特だよなw
保管庫へのメッセージありがとうございます。
下手糞ですが、あのような画像作るの好きなんで、地味に公開してます。
独特っていえばそうかもですねw
物語はあくまで職人さんの努力の賜物なのであり、
私がしゃしゃり出るとウザイ感じなのであまり表に出ないようにしていますが、
過去レス見れば載ってますが、知らない方の為に一応宣伝。
http://www6.atwiki.jp/moriizou/ なお保管庫にご意見、苦情等ありましたらトップページの下の方に
メッセージ欄がありますので、ご利用ください。
それではまた保管庫の中に戻ります。スレ汚しすみませんです。
職人さんの素敵な作品期待してます。
794 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/04/27(木) 23:56:43 ID:f4Sr96UqO
倉
795 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/04/28(金) 16:06:21 ID:Vy1Uwk+h0
キムタクをつぶさないで、キムタクのプレーを見たい。
保守
ho
次のエピソードがうpされるまで、お前らオナ禁な
西山
800
ほしゅ
hosyu
803 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/05/04(木) 00:22:23 ID:hnISe9eo0
下がりすぎーこわ〜〜 なのでアゲ
このスレ初めて知った。 まとめさんトコで全部読んで、はじめキムカズが死んだ時は吐き気すら覚えたが 次第に『面白い』と思うようになった。俺も感覚が麻痺しちまったようだ。 保守。
三連勝保守
出勤前の保守
就寝前の保守
着床記念保守
ほしゅあげ
保守
マーティ
ほしのあき
m9(^Д^)プギャーッ
あげます
(・ ̄‥ ̄) 人(´倉`) ほす
ヽ|/ / ̄ ̄ ̄`ヽ、 _ /__C____ヽ / \,, ,,/ | | (●) (●)||| | | / ̄⌒ ̄ヽ U.| | | .l~ ̄~ヽ | | |U ヽ  ̄~ ̄ ノ | |  ̄ ̄ ̄ |
保守
hosyu
保守
捕手投手内野手外野手
鈴 衛
(・ ̄‥ ̄)<ほしゅ
ほしゅしゅ>(@∀@) ナーナーナナナ♪
ほしゅあげ
保守
34.一日目 午前6時 第一回目放送 (1/4) 『それでも必ず夜明けはやって来る』。 よく耳にするありきたりなフレーズ。 今日だって例外ではない。 昨日までの平和な日常とは正反対の世界に放り込まれても、ここに存在する限りそれは当然の事だ。 「……い!おいっ!起きろよ新井!放送の時間だぞ!」 中々仮眠から目覚めない新井貴浩(25)を揺り起こし、横山竜士(23)は地図とペンを手に取った。 まだ完全に目覚めていないも、慌てて新井もデイバッグに手を突っ込んだ。 島に散らばった誰もが安眠出来なかったであろう、午前6時。 第一回目の放送の声は、よく聞き慣れた独特の訛りだった。 『お〜、聞こえとるか?朝やぞ〜。みんな起きとるか〜』 のんびりした口調の主は、今季まで監督を務めた山本浩二その人だった。 その声が何処から聞こえてくるのか分からないのか、新井はキョロキョロと辺りを見回す。 「ここだよ。ここ」 横山が右腕を差し出してトントンと指で腕時計を叩く。 新井が腕時計に耳を近づけたところで続けて声が聞こえてきた。 『そんじゃまず、この6時間で死んだ奴の名前を言ってくけぇのぉ。 27番木村一喜、64番井生崇光、10番比嘉寿光、19番田中敬人、20番永川勝浩、18番佐々岡真司。 以上、6人じゃ。6時間でこれだとまあまあのペースじゃな』 満足そうに読み上げられた名前とその数に、横山と新井は衝撃を受けた。 たった6時間で6人の人間が死んだ。その現実を突きつけられる。
(2/4) 『それから、現在の禁止区域は変わらずE-6の学校周辺じゃが、今後、立ち入り禁止区域を増やしていくことにする。 同じ場所に隠れてじっとしている連中が多いと殺し合いにならんけぇ。 時間になってもその場所にいると、首輪が爆発するからな。 立ち入り禁止区域は2時間ごとに増えるから、しっかり聞いとけよ』 「首輪が爆発」。その台詞は6時間前の出来事を蘇らせた。 もっとも、あの場面を忘れた瞬間などなかったのだが。 『それじゃあ今から、その立ち入り禁止になる区域を言うけぇ』 一つでも聞き間違いの無いように全神経を集中させる。少し緊張で手が震えた。 『8時にC-5、10時にC-2、そんで12時の二回目の放送と同時に、A-9。 これは全部、ブロック全体が立ち入り禁止じゃ』 地図の空白部分に読み上げられたアルファベットと数字を記入していく。 『おっと、言い忘れとったが、放送は6時間毎にあるからのぉ。 今のところ以上じゃ。 ほいじゃあお前らが元気出るよう、応援歌かけるけぇ、頑張れよ〜!』 山本監督の声がフェードアウトしていくと共に、この場には似合わない音楽が流れ始めた。 ♪カープ カープ カープ ひろしま 広島カープ♪ そんな音楽は耳に届かないのか、お互いに確認しながら禁止区域に印を付けていく。 横山は溜息を吐くと共に呟いた。
(3/4) 「佐々岡さん……」 同じ投手として、そして一人の人間として尊敬するところが多い人だった。このふざけたゲームを止めるのに必要な人だと思っていたのに。 もちろん、名前を呼ばれた他の人間にも少なからず思い出はある。 名前を呼ばれた一人一人を思い出しながら名簿に×印を付けていく。 思っていたよりも深刻な状況に苛立ちと虚しさを感じながら、握っていたペンを潰さんばかりに力を籠めたその時、横山の目の前にパンが差し出された。 「食え」 すでにパンを頬張っている新井が、口をもぐもぐさせながら横山に勧めてきた。 正直食欲は無かったが、少しでも苛立ちを紛らわす為一千切りだけパンを口に含んだ。 「マズっ……」 「そうか?結構いけるぞ」 口を動かしながら新井はもう一口パンを頬張った。 あまりの無神経ぶりに、横山は一瞬怒りを覚えたが、すぐに「これは新井なりの気遣いなのだ」、と心落ち着かせる。 今ここで新井に感情をぶつけてもどうしようもない。今一度冷静になる為大きく深呼吸すると、 「あんまし食うなよ。二個しかないんだから」 と、3分の1しか残っていないパンにかぶりつく新井に一応釘を刺す。 「わかっとる。でも腹が減ってたら戦は出来ん、言うじゃろ?」 新井の言葉に横山は改めて地図を見直した。 「2時間毎か……」 呟くと頭を掻きながらしばし首を捻った。 「んじゃあ、集合場所はココが本命。もしくはココかココ。全部アウトだった場合はこの場所に戻ってくる。……時間は11時間後の午後5時で。OK?」 勢いの任せた感じではあったが、新井に向けてジェスチャーしてみせる。 新井は特に考えること無く、「うん」と素直に頷くと、横山が指差した場所に丸印を付けていく。 本命の場所がD-4の神社。他の候補地はそれぞれE-4の郵便局、F-1の岬。そしてここがC-8の民宿。 放送の時間までに色々提案し合った結果、2人は別行動をとることに決めた。 この島は二つの森と二つの市街地が存在していることが判った。 そこで、地図に書かれているアルファベットのA〜Fを真ん中で分け、あみだくじを行った結果、新井がA〜Cの範囲を、横山がD〜Fの範囲で行動することになった。
(4/4) 別行動をとることによってリスクは高まりそうだったが、どうしても一人でも多くの仲間を捜さなければならない。 予め集合場所と集合時間を決め、それぞれが仲間を連れて合流する。 もう一度二人はこれからの行動を確認し合った。 「禁止区域お前の行くとこばっかだけど、大丈夫か?」 「うん。あみだで決まったもんは仕方ない。それに首輪が反応起こしたら即効逃げるけぇ、大丈夫じゃ」 いつもどたどたと音が聞こえてきそうな程必死な顔をして、ベースに向かって走る新井を思い出し、横山は思わず笑った。 少し和む二人。 一人でも多くの仲間を捜す理由。それは学校の出発時にまで遡る。 【生存者残り36人】
35.幹英からの伝言(1/6) 力強い宣言を残した横山は校舎の正門前で新井を待っていた。気が立っていたせいか、背後に忍び寄る人の気配にも気付かなかった。 背中に硬い感触を感じたと同時に、よく知っている声が聞こえた。 「新井を待ってるのか?」 その声に感情の欠片も感じなかったが。 「……小林さん」 横山は振り返らずその名前を口にする。 何故小林さんがここに?という思いより、やっぱり来ていたのか、という思いのほうが強かった。 だったら教室での出来事も、思いっきり啖呵を切ったのも何処かで見ていたのだろう。 小林が感情無く呟いた。 「おかしな真似するなよ。何なら今死ぬか?」 決して冗談ではないこの状況。 ガチャリ、と背筋を凍らせる音がした。背中に伝う汗が尚更その無機質な感触を思い知らせる。 新井が学校の正門から出てきたのはそんな緊張の中だった。 「ヨコ!」 その光景に驚いたのか、凄い勢いで走って来た新井に引き摺られるまま、二人はその場を去った。 そんな二人を見送る様に、小林はその場に銃を構えたまま追いかけて来ることは無かった。 「大丈夫か?」 しばらく走ったところで立ち止まり、息を整えながら尋ねてくる新井に、横山もまた息を整えて頷く。 「とにかく落ち着ける場所に」 最初は近くに見えていた鉄塔を目指していた2人だったが、もう少し離れた場所の方が少しでも安全だろうと、市街地を抜け、歩いているうちに海の見える場所まで来てしまった。 廃れた民宿を見つけそこを隠れ場に決めた。 咽喉が渇いたので水を、とデイバッグを開けようとしたが、台所の水道が通じているのならと水道を捻ったところ、幸いにも水が出た。 十分咽喉を潤したことでホッとした2人は部屋の中を物色し始めた。 この民宿は廃れてはいたがあまり荒れていないことから近年まで営業していたのだろう。
(2/6) 「なんかこれじゃあ泥棒じゃな……」 「ああ?っんなこと言ってられるかよ。ちょっとでも役に立ちそうなモン探さないと」 しかし特に役立ちそうなものは見つからず、一番役に立ちそうなものはタオル数枚のみだった。 救急箱や非常食といったものは見当たらなかった。 「しょうがねぇ。何か作戦考えるか」 落胆している暇はない。デイバッグを床に落とすとドカッと2人も床に腰を下ろした。 ……かれこれ30分後。 「で?どうする?」 「……」 横山は先ほどからじっと考え込みながら、広げた地図と名簿に目を通している。 「なぁ。ヨコ……どうする?」 「あー!そう急かすな!考えてる最中だろうがっ!」 忙しなく顔を覗き込んでくる新井に苛立ち、横山は声を荒げた。 「だって……どうすればええんじゃ?」 全く反省してないようで、新井は頬を膨らませる。 「お前もちょっとは考えろよ。俺も頭いい方じゃないんだしさ」 横山の自虐的な言い方に新井は少し笑った。 「笑うな。お前に笑われたら腹立つ」 この憎まれ口ともいえる会話に二人ともどこか心地良さを感じていた。それはいつものことで決して悪意など入っていない、長年の付き合いだからこそ出来る会話。 そういえば、と横山は先ほど気になっていたズボンの後ポケットを探った。 出てきたのは小さく折畳まれた紙切れ。 開いたそれにはほぼ全文カタカナで何かが書かれており、急いで書かれたものだと分かった。 窓から漏れている月明かりだけではさすがに読み難く懐中電灯で照らす。 それに気付いた新井が話しかける。
(3/6) 「何じゃ?それ……」 固まっている横山の隣で覗き込みながら、新井は紙切れに視線を落とした。 「く」 口にしたところで横山に口元を抑えられた。 怖い顔で睨みながら、読み上げる代わりに指で一文字ずつ辿っていく。 ―――クビワニ ハッシンキト トウチョウキ フツカメノ ゴゴ6ジマデニ A-2ノミナトヘ――― (首輪に、発信機と……?盗聴器……!) そこまで読んだのを新井の表情から読み取り、横山は手を離すとわずかに首輪に触れた。 (二日目の、午後6時までに、……A-2の港へ……?) 「これは……?」 何故横山がこんなものを持っているのか?とでも言いたげな新井を制止し、 「拾った。役に立つかな?」 と適当な事を言いながら、公衆電話の置かれているところまで行くと何かを手にして戻ってきた。 「まぁ、とりあえず座ろうぜ」 倒れている椅子を起こし、テーブルを運んで向き合うように座る。 先ほど横山が持ってきたメモ用紙に、付属のペンで筆記し始めた。 このメモの内容が本当で首輪に盗聴器が仕掛けられているのなら迂闊なことは喋れない。 「なぁ、これからどうする?」 ―――このメモはさっき小林さんから貰った――― 銃を突き付けられた時。新井が突進する直前にポケットに忍ばされたのだ。 今度は新井が横山の文字の下に、図体に似合わない丁寧な文字を書き始めた。 「どうしよう」 ―――信じても大丈夫じゃろうか?――― 新井の意見はもっともだ。横山ももちろん同じ思いなのだが。
(4/6) 今一度紙切れに視線を移す。 『首輪に発信機と盗聴器』。これは、行動も会話もあちら側に分かっているぞ。気を付けろ、ということだろうか。 『二日目の午後6時までに、A-2の港へ』。これはつまり、二日目の午後6時までに書かれている場所に来い、ということである。 ここが一番の疑問だった。そこに行けば助かるのだろうか?でももしかしたら罠かもしれない。 そもそも主催者側である小林が何故このような行動を取ったのか。メモにはそれ以上必要なことは一切書かれていない。 (何を考えてるんだ?小林さんは……) ―――『何なら今死ぬか?』――― 感情も抑揚も無い声だった。思い出しただけで銃を突きつけられた箇所が疼く。 しかし慌てて書いたこの字は、もしかすると何処か別の部屋で自分達の行動を観察した上で託したものかもしれない。 良い方へ解釈をすれば、小林はこのゲームの反対派でこのゲームを潰すと言った自分達の協力者かもしれない。 それは自分の希望だった。せめて、まだあちら側にまともな人間がいる、と。 実は先ほどからちらちらっと「ある作戦」が頭を掠めているが、すぐにあの声を思い出して自信が持てない状態だった。 「……ああ〜っ!!もう、わかんねぇ!」 短い髪の毛を毟取らんばかりに横山は頭を掻いた。 新井は新井で思うことがあるのか、一心に紙切れと睨めっこしている。 やはり新井には期待出来なさそうで、ふぅーと軽く溜息を吐いて横山は天井を仰いだ。 薄汚れたシミが目に入る。ぼやけたただのシミだったが、じっと目を凝らしていると次第にくっきりと形が作られ浮かんできた。 う遠くはない過去の一場面だった。 故障が続き、一軍に上がれないばかりか二軍でも中々結果が出ず苦しみもがいていたあの頃。 嫌気が差して練習も手抜きがちになっていた時。 『逃げ出したくなったことありませんか?』 ついつい弱音を吐いたことがあった。二軍の練習中だった。
(5/6) 輝いた過去―――というのが横山と小林の共通だろうか。 『そりゃ人間だからあるよ。ああー、もう絶対に今度こそ駄目だーとか』 同じく結果が出ていないのは小林も同じだった。 『だけどな、俺にはちゃんと帰る場所があるから。 いつもそうなんだよ。目を逸らしたところでいっつもここが目に入る。意識しないように、考えないようにしてるのに……可笑しいよな。 で、納得するんだ。逃げ出そうとしたところで俺の帰る場所はここしかないんだな、って』 しゃがみ込んでプレートに付いた土を払いながら少し気恥ずかしかったのか、照れ笑いを浮かべて答えてくれた。 『結局好きなんだよ。野球が』 マウンドの上でバッターボックスを正面から見据えて、そう話してくれた言葉に濁りは無かった。 その熱も少しの照れも横山にははっきりと伝わってきた。 深く息を吸い、少しだけ目を閉じてそれらの思い出をくっきり瞼の裏に焼き付ける。 小林からの伝言と自分が思いついた「ある作戦」。 ―――賭けてみるのも悪くない気がした。 がばっ!と勢い良く姿勢を戻すと、それからの横山の行動は早かった。 床に落としたままのデイバッグの中身を探る。 さっき確認した自分の武器の説明書を手にとって見つめる。ずっと睨んでいた地図にも再び視線を落とした。 「?」 完全に一人置いてけぼり状態の新井は忙しない横山の行動をただ見守った。 説明書と地図を交互に見つめた後、ニヤッ〜と怪しげな笑みを浮かべて顔を上げた。 ―――なぁ、お前覚悟はできてるか?――― 差し出されたメモ書きに一瞬素に戻った新井だったが、「覚悟」の文字にこくん、と縦に首を振る。 教室で啖呵を切った瞬間から覚悟なぞ決めてある。
(6/6) 迷いの無い新井に横山も首を縦に振った。 「そっか……」 ―――だったら――― 「とりあえず、朝になるまで待つか」 ―――俺に任せてもらえないか?――― 新井の字の下に横山が付け加えた。 怪しげな笑みから一転、今は自信溢れる眼差しの横山。その表情から色んな思いが垣間見える。 少しだけ沈黙があったが新井は決心したように頷いた。 「わかった」 その後しばらく筆談し、地図を見ながら夜が明けてからの行動をまとめた。 少しでも体力を蓄えておく為に、気休めの仮眠を交互に取り、第一回目の放送を迎えたのである。 【生存者残り36人】
36.「宮島さん」(1/3) 相も変わらず場違いな応援歌は続いていた。すでに数曲流れているのに未だ終わる気配はない。 忌々しさに舌打ちすると、横山は口を開いた。 「なあ、なんでこんなことになってると思う?」 誰もが一度は思った事だろう。思ったところであちら側の本当の思惑なんて分かるはずもないが、横山は新井に質問してみた。 「……なんでじゃろ。山本監督は、『もう一度強い赤ヘル軍団にする為』って言うてたよな」 長年の癖なのか。何の違和感ももたず、ごく当たり前かの様に元監督の名前の下に未だ監督と付けてしまう。 それに気付いていない新井とは逆に、それに何となく気付いた横山は膝に腕を乗せ頬杖を付いた。 「皮肉だよなー」 「何が?」 「いや、ついこないだまで監督だって尊敬してた人間が、こんな事に関ってるなんてなーと思って」 采配に関しては時々疑問に思うこともあったが、それでも自分はよく目を掛けて貰っていた方だったし、目の前の新井には事の外期待していた。 今季で引退したともあって、最終戦には少なからずともぐっとくるものがあったのに。今は。 「殺してやりてえ」 吐き棄てるように呟いたその言葉は半分本心から言ったものだった。 複雑そうに黙っている新井に、随分話が逸れてしまったと横山は仕切り直した。 「さっきの話の続きだけど。確かにチームを強くする為に、って理由付けしてたけどさ。そんならこんな手間隙掛かる事するんだ?」 手を頬から顎に位置を変え横山は続けた。 「考えてみろよ。そもそもうちの球団にこんな資金力あると思うか?」 言われてみれば、とばかりに新井は目を丸くした。 盗聴器も発信機も爆発機能まで付いている便利な首輪といい、武器といい。廃れているとはいえ、こんな島まで用意していることといい。 本拠地の市民球場は対戦チーム(味方からもだが)から苦情が出るほど老朽し、マスコミにも赤貧と馬鹿にされ、毎年のように球団買収・合併等の噂が持ち上がるのに(実際は黒字経営らしいが。しかしいい環境かどうかは疑問である)こんな資金があるとは思えない。 ではその資金はどこから出ているのか?横山の話を要訳すればそういうことだろう。
(2/3) う〜ん……と新井は首を捻った。 耳が肩に付きそうな程傾げながら考えて考えた末、一つ思い当たる節があった。それに思い立った新井の表情が青ざめる。 「まさか……」 ようやく分かったか、と横山も表情を引き締めて頷いた。 「まさか、樽募金で……!」 「アホかっ!」 何故その方向へいくんだ!?とツッコミを入れたが、新井の顔は至って真面目そのものだった。 「え?違うんか?だったらなんじゃ?」 本当に分かってなさそうな新井に横山は大げさな溜息を吐いて見せた。 「つまり、スポンサーがいるんじゃねえかって。これはもうカープだけの問題じゃないってこと。裏で動いている奴らが他にもいるんじゃねえか、って俺は思うんだけど」 横山の答えに新井はもう一度目を丸くした。 「……!ああ、なるほど!」 新井は心底感心した。普段はそのテンションの高さからつい疲れると思うこともあったが、こんな中冷静に物事を考えている同級生が頼もしかった。 「だったらかなり厄介な事になってるよな。それでも」 「それでもやるしかないじゃろ」 言いのけて見せた新井の顔にもう迷いは無い。横山もまたそんな新井を頼もしく思った。 横山と新井は再度荷物の確認を始めた。 無意識に耳に入ってくる曲を口ずさむ。現在流れているのはカープの攻撃時に点が入ると流れる「宮島さん」。 「宮島さんか」 ぽつりと新井が呟き、何か思いついたのか横山を振り返った。 メモ用紙に筆記し、それを横山に見せる。
(3/4)orz ―――これからこの作戦名を「宮島さん」って呼ぶのでどうじゃ?――― 訳が分からず横山の顔が歪む。 ―――なんで?――― ―――なんとなく。 隠語があった方が便利だと思って。それと――― 「縁起がエエから」 単純な思いつきが新井らしくて横山は笑った。そして指でOKと形を作って見せた。 「よし。それじゃあ合言葉は……『宮島さんに行こう!』で」 「宮島さんに行こう!じゃな」 二人はもう一度顔を見合わせて笑った。 心地の良いこの時間を振り切り、そろそろここから出発しなければ。 −−−−− 小屋を出ると水平線の向こう側、薄く掛かった雲の切れ目に陽の光が見えた。 この海の向こう。ゲーム開始当初から、常に頭の中にある大事な人達に想いを送る。 きっと本物の宮島からこの場所は程遠いだろう。 明日の午後6時にA-2で何が起きるというのか。 出発前、今一度横山は新井に尋ねた。 「なあ、帰ったら何がしたい?」 「何が……。嫁さんと子供に逢いたい。そんでやっぱり、野球がしたい。来年良太と対戦するのも楽しみだし」
(4/4) 「良太……、ああ、弟だっけ?今度中日が獲ることになったんだよな」 「うん。まだまだ半人前のあいつが成長していくのを、野球を通じて見てみたい」 優しい穏やかな顔で未来を語る新井につれられて、横山も自然と緊張が解れていた。 「そっか」 「ヨコは?ヨコは帰ったら何をしたい?」 「俺?俺はそうだな……。やっぱこんぐらいの巨乳をだなー……」 こんぐらい、と両手を広げ横山が悪い顔を見せたので新井は苦笑した。 「……俺も、野球がしたい。つうか今のままで終わりたくねえ」 「だから」息を深く吸い込み、決意新たに。 「絶対、生きて宮島さんに行こうぜ!」 合言葉を掛けると横山と新井は力強く頷き合った。お互いが背を向け合って歩き始める。 振り返る必要は無い。ただ、自分達が信じた前を進んで行くだけ。 【生存者残り36人】
>>835 の下から5行目。
× う遠くはない過去の一場面だった。
○ そう遠くはない過去の一場面だった。
に訂正です。
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
一気に三作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
職人さん乙です。
同級生コンビ頼もしい。信じた道を進んでくれ。
粗いさん樽募金ってww
実際のチーム状況がアレなもんで
>>107-108 が気になってきた。
職人さんおつです!!!!!!続きwktkしつつ保守。
おおっ、地図スゲー! 乙です!
37.食えない男(1/2) 「ふぅー……」 一仕事終えた山本浩二元監督(元背番号8)は、マイクから顔を離してソファーに深く座り込んだ。 座り心地は悪くない。しかし色合いが自分好みでないのが唯一つ不満だった。 腹の辺りで手を組み、しばらく流れている曲を聞きながら前方の画面をじっと見つめていた。 黒い画面に島の全体図が書かれたその中に、36個の赤い○とすぐ側に背番号の数字が点っている。 つい先ほど読み上げた人数の数字は、今はもう画面上に存在しない。 机の上に無造作に置かれていた名簿と赤いペンを手に取ると少し難しそうな表情を浮かべる。 「あと30人かぁ……。……このペースでいくと大体……。……それにしてもあいつは意外じゃったな……。まぁええことよ」 1人で悩んだり納得したりぶつぶつ呟きながら◎、○、△、×と様々な記号や色々なことが細かに書かれている名簿に更に書き加えていく。 それにしばらく熱中し、肩が重いな、と軽く首を回していると背後から湯気が立っている淹れ立てのコーヒーが差し入れされた。 「お疲れ様です」 コーヒーカップを差し出した松本奉文が相変わらず無表情のまま淡々と喋る。 「おお。気が利くのぉ。ありがとう」 トレードマークでもある黄色のサングラスの奥から目を細めると山本元監督は礼を述べ、受け皿ごとテーブルに置いた。 「さすがにこの歳になると徹夜は堪えるわい。昔は試合が終わった後も明け方までやんちゃしてたのにのぉ……」 在りし日の自分を思い出しているのか。何も無い宙を見つめながらしみじみと奉文に話して聞かす。 しかし、「そうですか」という相槌も、まして「さすがミスター赤ヘルですね!」、という賛辞の言葉も掛からない。奉文は黙ったままで立っていた。 それを責める事も無く奉文が立っている理由に気付くと、山本元監督はコーヒーカップに手を伸ばした。 「すまん、すまん。折角淹れてくれたコーヒーが冷めるな」 『気の良いおっさん』の顔を作ってコーヒーカップに口付ける。 一息吐いてゆっくりと奉文を振り返った。山本元監督がソファーに座っていることから立っている奉文を下から見上げる形となる。 「ところでお前は誰が生き残ると思う?」 トントン、と手にしていた赤ペンを叩きながら尋ねる。それでも奉文の口から言葉は出ない。
(2/3) しかし山本元監督も特に気にせず話を続けた。 「メグ……緒方には元々の身体能力もそうじゃが、それこそ色んなモンを備えとるけぇ大本命として、残り5人はどうじゃろ」 その時ようやく奉文も反応した。ちらっと動かした視線の先には名簿が置かれている。 「横山や新井辺りも面白そうじゃな。あいつ等教室で言うとったもんな。『全員で生きて帰る』って。 それにわしが目を掛けてたんじゃから簡単に死なれたら困るのぉ」 少しずれていた黄色のサングラスを元の位置に戻す。 「お前も、まぁ……期待しとったのに残念じゃったな。それでも今は裏方として活躍してるんじゃから結果としては良かったのかもしれん」 気を遣う素振りを見せつつその実、「諦めも大事」という余計な説教が混じっている言い方にも奉文はただ立っているだけだった。 「若手でもやる気になってる奴もおるもんなぁ。そういう闘志溢れるモンは将来が楽しみじゃ」 ふかふかなソファーにゆったりと背中を預けコーヒーカップに口付ける。今度は味を楽しむかのように何度も口に運ぶ。 至福の表情を浮かべながらカップを両手に包み込むとしばし上を向いた。 次の言葉が出てくるまでに少し間があった。そのわざとらしいまでの間の後ゆっくり口を開ける。 「……あとはトモ、前田かのぅ」 奉文の反応を窺うように山本元監督はちらっと目線を上げる。口元は手の甲で隠れていたが目は笑っていた。 今度こそ、と思っていたのか。結果は山本元監督を落胆させる程、不気味なまでに奉文は無表情だった。 眉も動かさなければ瞬きさえしないのだから、さすがにこれ以上はどうしようもないと苦笑する。苦笑の顔のまま大げさに降参!と両腕を上げるともう一度コーヒーカップに口を付けた。
(3/3) 溜息にも似た呟きを漏らすと再び画面を見始めた。あるポイントを見つめながらしばし考え込む。 「ふぅむ……」 自分の中で閃いた事を消化でもしているのか、うんうん、と首だけを動かして意味ありげに笑うと山本元監督は電話に手を掛けた。 「……今のままではあまりにも大人しく進みすぎて面白くないけぇ。ちぃとばっかしこっちから仕掛けてみるか」 大きな独り言を話す山本元監督のその後ろで、側に置かれているコーヒーカップの中身が奉文の視界に入る。 「……」 もう湯気が立っていないそれは奉文が淹れた時のままコーヒーカップの中を並々と満たしていた。 【生存者残り36人】
職人さんGJです。 ところで、良かったら参加選手のリストを出していただけませんか? 地図もうpされたんで、資料的ページを作ろうかと。
お、、、おもしろい、、、職人さんgjです!!
昨日千葉まで応援に行ってきた俺が保守しますよ
>>850 保管庫さんいつも乙です。
参加選手は
>>48 の05年一軍試合出場選手を参考にしております。
以下、職人用のでよろしければ参考にして下さい。判明している武器と登場した章付きです。
【投手】
小山田
黒田 プロローグ・21章
森(サバイバルナイフ) 19章
大竹 (短刀)25章
佐々岡 (拳銃系)17章・28章・31章…死亡
田中(モデルガン) 18章・23章・24章…死亡
永川 28章…死亡
高橋 17章・28章・31章
横山 1章・34章・35章・36章
広池
仁部 15章
佐竹 15章
梅津(鉈) 19章
長谷川(ブローニングM1910) 7章
大島(毒薬の小瓶) 24章
天野
玉山
林
小島(ハイスタンダード・22口径2連発デリンジャー) 18章
【捕手】 木村一 2章…死亡 石原 倉(手榴弾) 6章・29章 【内野手】 山崎 (昆布・煮干・鰹節出汁セット) 4章・20章 東出 4章 尾形 浅井(刺身包丁) 12章・30章・34章 比嘉(小型ボウガン) 5章・26章…死亡 新井 プロローグ・1章・34章・35章・36章 福井 福地 7章 松本高(ベレッタM87) 5章・13章 ・26章 栗原 (シグザウエルP226)16章・(24章)・30章・32章 甲斐
【外野手】 木村拓 (ママとお料理キッチンセット)26章 前田 4章 緒方(ソーコムピストルHKMK23) 14章・33章 廣瀬 27章 森笠(バタフライナイフ) 6章・7章・29章 末永(イングラムM10) 23章・(24章)・30章・32章 嶋(ハリセン) 8章・25章 井生 14章…死亡 天谷 9章 【裏方】 松本奉 1〜5章・10章・37章 田村 1〜5章・10章 小林 10章 ・22章 澤崎 22章 山本元監督 2章・34章・37章 ミッキー 11章
以上です。資料的ページ作成頑張って下さい。
保管庫さんファイッ!
>>保管庫さん すみません。ちょっと相談があるのですが、保管庫の方にメアドとか置いてないでしょうか? お手数ですがコメント以外の連絡方法を教えて頂けないでしょうか。
職人さま 早速ありがとうございます。 暇とモチベーションwみつけて更新します。 保管庫のトップページの下の方にメールフォーム付けて、 そこから私に直接メールを送れるようにしておきました。
860 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/05/16(火) 23:42:45 ID:zdFJMEeUO
スライダー
ho
shu
保守しますよっと
保守
ho
(*´倉`) <syu
ほ
し
の
王子様
保守
保守
873 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/05/22(月) 00:45:16 ID:OoN3+BHq0
ほ
ん
と
う
は
す
え
な
が
が
黒 幕
田
鈴
を
か
い
に
み
ん
な
で
ぴ
ん
ち
897 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/05/26(金) 23:22:24 ID:bKB+CdQ80
あげ
も
ま
900
38.弔い(1/7) そう深くもない眠りから目覚めても、目に映る景色は変わらない。 これが現実なのだと、背番号28―――広池浩司はこめかみを抑える。 目の前には海、寄せては返す波の音は規則的に繰り返されている。 暁の空はほんのり明るんでおり、この閉ざされた島という世界にも朝が来ることを示しているようだ。 「…まだ6人か、もう6人か。」 眠気漂う脳を2、3度揺り動かし、名前が42人分印刷された紙を手に取る。 「10番、比嘉寿光。」 味気なく印刷された名前を呼ぶ。そして一呼吸置いてから、名前の上に棒線を引いた。 広池は名前の上に線を引くと、目を閉じ、また1つ呼吸をする。 それからまた広池は同じ行動を5回繰り返した。 18番佐々岡真司、19番田中敬人、20番永川勝浩、27番木村一喜。 「……64番、井生崇光。」 そして6人目、名簿の下から2番目の名前に線を引く。 しばらくボールペンを止めた位置から動かせないでいたが、その内にパタリとペンを倒す。 もう一度、意識して深呼吸をすると広池はペンを離し、目を閉じた。 頭の中には何も浮かばず、ただ波の音がさっきよりは響いているような気がした。 その中で広池は再び呟く。 もう6人か、と。
(2/7) 物事は10分前に遡る。 緊張により眠りと目覚めを通常より浅い場所で繰り返していた広池は、枕代わりにしていた右腕に着けていた腕時計の妙な曲で一気に覚醒へと引っ張られていた。 まだ働かない脳を持ってしても、その妙な――よくよく考えれば自チームの応援歌だったかもしれない――曲の後に腕時計のスピーカーから発せられた日本語は理解できた。 『死亡者6名』と『禁止エリア』。 ある程度の覚悟――人によっては諦めとも言える感情――をしていた広池でも、前者には流石に多大な衝撃を受けた。 (こんなに簡単に殺し合いって出来るものなのか? 同じチームだったのに?) 6人、全体42人のうち6人と言えば7分の1。占めるウェイトは決して少なくない。 そんな人数が、同じチームメイトに殺された。しかも6時間もの短い間に。 「…嘘、であって欲しいよ。」 思わず一人ごちた言葉は偽りのない本心だ。 しかしあの学校での出来事を目前で見た限りでは―――それはまごう事なき『事実』であった。 黙祷を捧げた後広池は目を開き、右手を握り締める。 手首の腕時計の黒いベルトはところどころ変色し、そして自ら着ているユニフォームにも血痕がいくつか風変わりなデザインのように飛んでいた。 広池の血ではない。出発の校舎で偶然広池が木村一喜の後ろの席に座っていたことでついたものだった。 その時のことをふと広池は思い出そうとした。 順を追って思い出す。あの場所で目覚め、席に着いて、それから―――。
(3/7) しかしそこでいきなり記憶の映像は途切れ、音と声だけが広池の中にこだまする。 叫び声、銃声、静寂、そしてあの説明。 音だけはやけに鮮明だが、映像が全く頭に浮かんでこない。自分が何をしたのかも分からない。 ああ、これが人間の自己防衛機能だと広池は感じた。 『人間は極度のストレスを感じると、その物事を忘れ去ることで精神のバランスを保っている。』 どこかで読んだ一説が脳裏に浮かぶ。まさにその通りだ。 波の音がまたぐるぐると頭を巻いている。いい加減、船酔いでもしそうな気分だ。 名簿を鞄に戻し、広池は立ち上がる。 軽く体を曲げていると決して心地は良くない音が体中から聞こえた。無理もない、狭いスペースに押し込むように身を丸めて寝ていたのだから。 首を回す。右に回して、左に回して。ついでに足首も回す。 そろそろ頭も晴れてきた。ゆっくりと深呼吸して。 「広池さん、何してるんですか。」 思ってもいなかったことが起きた。人がいた。 いささか驚きつつも首だけで振り返る。 「…お前か、東出。」 「お前かはないでしょ。」 身軽に岩場を下る東出の行動に敵意を感じなかった広池は本人が自分のところにまで来るのを、柔軟をしながら見つめていた。 最後の岩を両足で蹴り、着地する。それと同時に広池も柔軟を止める。
(4/7) 「おはよう東出。」 「…相変わらず悠長なこと言ってますね。」 「そうか?」 東出と話をしながらズボンのベルトを緩め、ユニフォームの裾を中に仕舞いなおす広池。 「それはお前もだろ? 俺に攻撃してこないじゃん。」 ベルトを元に戻し、鞄の紐を肩に掛ける。そしておまけに東出に微笑みかける。 無表情だった東出の顔に呆れの色が見える。 「…こっちも、広池さんがここに居るとか思わなかったんでね。それに人殺す気とか今は無いし。」 「人を殺す気は無い、ね。お前は絶対やる気満々だと思ってたんだけどね。」 柔らかな口調で広池が返すと、東出の表情にはますます苦味が広がる。 「いくら前の監督とは言え、『殺し合いしろ』って言われて『はい、そーですね。』でぐさりとか俺は気分悪いです。 っていうか、すっごく癪だと思うんで―――」 語尾を延ばし、東出は不意に広池と視線を合わせる。 「…まぁ、時と場合によりますけどね。」 「ほら見ろ。やっぱりやる気あるだろ?」 「平和ボケしてるあんたとやってる暇なんかないんですよ。」 「平和ボケとは言ってくれるな。」 広池が笑う。東出は苦い表情のまま首を傾げる。 そして笑い声が途切れ、場は波の音が流れていた。 2mほどの間をとって向かい合う東出と広池。両方とも普段見せる表情とは相変わりない。 「広池さん、一晩何してたんですか?」 頭の後ろで両手を組みながら東出が尋ねる。 耳の中を行き来していた波の音が和らぎ、広池はふぅと息を吐いた。
(5/7) 「計算して、探し物してた。」 「計算?」 「中学校の時とかに習ったと思うけど、三平方の定理を使った奴ね。 『10m、50m。その2辺が垂直に交わる時に作ることの出来る三角形の斜辺の長さを求めよ』っていう問題。」 返事の代わりに東出が呆気に取られた顔をする。 すぐさま普段の通りに戻っていたが、それでもなお先ほどよりも呆れを増した表情にはなっていた。 広池はそれに気付いていないのか気付いていたのか分からないが、続けて話をしようとする仕草を見せる。 が、東出が右手を出し制止させる。もういい、と。 「…解答とか要らないですから。」 それよりも、と東出が促す。 「探し物ってなんですか。」 「瓶。それと釘かな。」 鞄の中を探り、広池が2本の空の瓶を取り出す。 1つは青みがかった細長いワイン瓶のようなもので、底の方には海草とも苔ともつかない物体が沈んでいる。 2つ目の瓶は寸胴でよくウィスキーを入れている物とよく似ており、貼られていたであろうラベルは申し訳程度にだけ残っていた。 それを数秒見せた後、広池は鞄の中に瓶を戻す。 「…正気ですか?」 東出が先輩に対して尋ねるべきではないことをさらりと言い放つ。 しかし広池はさほど気にする様子もなく、両手を叩きながら答えた。 「正気じゃないだろうね。仲間が死んだって聞いても俺、自分が狂ってるとは思ってないから。」 「違います。」 「何か違った?」 東出は指で広池の鞄を示す。 「こんな状況で瓶とか探しますか?普通。」 初めてそこで広池は自分の考えていた東出の問いが違うことに気がついた。 東出が話していたのは『自分の行動』が正気の沙汰ではないということ。 まぁ確かに、と広池は小さく笑った。 「ちゃんと理由があるから探したんだよ。さっきの計算だって理由があったからやったまでだよ。」 「じゃあどんな理由ですか。」 しんと2人の間の会話が途切れる。
(6/7) 「…三平方の定理はね。」 ぽつりと広池が呟くように東出に語りかける。 「直角三角形の分からない斜辺をx、分かっている辺をそれぞれaとbと置いて、xイコールルートのaの二乗プラスbの二乗っていう式でxを求めることが出来る定理なんだ。 で、さっき話したものにこれを当てはめると斜辺が10の二乗プラス50の二乗の平方根になる。 だったら答えは10の二乗の100と50の二乗の2500を足してルートの中に入れて、まぁ…10ルート26、つまり50ちょっとに数字上にはなるんだよ。」 「…だから何だって言うんですか?」 腕を組み、東出がいらついた様子で足でリズムを刻んでいる。 ああ、と広池がようやく我に戻ったように笑った。 「じゃあね東出。10mを学校の2階の窓までの高さ、50mを学校までの距離だとすると?」 「はぁ?」 文句を言い出しそうな東出の口元を見ながら、広池は間髪入れずに続けた。 「それと、火薬が簡単に作れてそれが衝撃に弱かったら?」 「……え?」 狐につつまれたような東出の顔を見て、広池は目を閉じた。 死んでしまった6人の、球場で交わした笑顔が浮かぶ。 ふっと、笑みがこぼれた。何の為だか分からないが広池は笑った。 「まぁ、これ以上は言えないけどね。まだ俺は死ねないし。」 下手すれば今この場で首輪が爆破されることだろう。 しかし言った何秒後の今でも生きているということは、自分の考えが向こう側に知られていない―――ということでいいんだろうか。 (なら、それでいい。) 一呼吸して、目を開く。東出は何かに気付いたのか、少し陽気な顔をしていた。 広池はそれを見て、再び微笑んだ。
(7/7) 「俺はね、弔おうと思ってるんだ。」 カチャンと鞄の中の瓶が音を立てた。頭の中に響いていた波の音はいつの間にか薄れて薄れて、消えた。 そして朝日がもうすぐやってくる、いつものように。 広池は肩に掛けた鞄を背負いなおすと、背後の岩場に足をかけた。 【生存者 残り36名】
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!! 広池&東出キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!! 三平方の定理(゚∀゚)? …東出はどっちに転がるのだろうか。
久しぶりに東出キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !! 東出らしいw
やっぱり広池はインテリキャラなんだね 職人さんGJ
ピタゴラス・アタック?(勝手に命名w 大砲みたいに撃つのかな?それとも手榴弾? まっ、とにもかくにも次回が楽しみです。 職人さん頑張って下さい!
やべぇこの後の予想される展開とか超書きてぇw でも空気読んでやめとく。職人さんに余計な不穏をもたらしてしまうからな。
913 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/05/29(月) 06:25:20 ID:5Z7ESU430
わ
>>912 こんな書き方したら、かえって職人さんが気にしてしまうのでは
>>912 ネタバレになる可能性があるから聞いてみたいけど(゚∀゚)ヤメトケ!
座して待つのみ
&<ほしゅ
>>914 予想通りになってもならずとも
一名無しとして頭を空にして愉しむ所存。
座位
魂の座
カ | プ、魂の座
ほす
クララ
ほす
保守
ほっしゅ
捕手
928 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/01(木) 23:30:18 ID:bzGr82u80
ユニオンあげ
ほ
い
931 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/02(金) 21:20:07 ID:IpCPh/jTO
み
ん
39.「誰だ」(1/3) 「誰だ!!」 大声を張り上げながら玄関の引き戸を叩きつけるようにして開け放つと、 古い民家のガラス戸が、がしゃんと大きな音をたてた。 黒田は固く拳を握り締めて、朝の町に人の気配を探っていく。 生垣。電柱。物置の影。 一つ一つ確認しながら、ゆっくりと視線を動かした。 ― 誰だ? ― 出発地点から程近い家で朝を迎えた黒田の耳に突然飛び込んできた、耳慣れた声。 その声が告げたのは6人の名前。 木村一喜の死は、今でも信じ難いことだがこの目で見た。その他に5人。 この、夜が明けるまでのたったの6時間で、もう5人が死んだ。誰かが殺した。 腕時計から流れる応援歌が鳴り止んで部屋に静寂が戻った時、 黒田は自分の血液が沸騰しそうなほど熱くなっているのを感じた。 衝動的に手首を壁に打ちつけて時計を壊そうとして、寸前のところで止める。 今後の情報を得るための時計を惜しんだのではなく、自分の腕を庇ったのだ。 だがそれはただの本能であり、冷静さを取り戻したが故の行動ではない。 黒田は自分の怒りを抑えようとは全く思っていなかった。
(2/3) ふつふつと体の奥から止めどなく湧き上がってくる“誰か”への怒り。 一度止めた腕をゆっくりと動かして、コツコツと壁を叩きながら地図の裏に並べられた名前の羅列を思い出す。 当然、知らない名前なんて一つも無い。 そこに書かれていたのは、付き合いの長さ・深さの差こそあれど、一緒に野球をした仲間の名前だ。 どんなに厳しいチーム状況の中でも、同じように勝利だけを目指して戦っていたはずの仲間の名前だ。 だがこの中に、5人を殺した奴がいる。 この胸クソ悪い話に“乗った”奴がいる。 それは誰だ。 ― 誰だ……! ― 黒田は無造作にディバッグを掴んで立ち上がると、逡巡もせずその家を出た。 物音は消そうとせず、気配を殺そうともしない。むしろ、無意識に大声で叫んでいた。誰だ。 だが朝は黒田の怒りに怯えるように、いっそう深く静まりえっている。 物音一つしない。人の影も無い。 この近くにはいないのか…それとも息を潜めて様子を窺っているものがいるだろうか。 (ふざけるなよ。誰だか知らないが、お前、自分で何をしてるか分かってるのか? もしこれで人を殺して生き残ったとしても、永遠に球団の駒でしかないんだぞ。 それくらいのこと、頭冷やして自分で気が付けよ馬鹿野郎) 一時の恐怖に怯えて人を殺し、そして生き残ったとしてその後どうなるのか。 この島の出来事を外部に伏せることが出来たとしても、人を殺したという事実は残る。 球団の人間たちが、そのことを知っている。 その状況の中では、首の爆弾は外されても、直接心に嵌められた首輪からの支配からは逃れられはしない。 それでも野球を続けていくというのか。 そんなところで野球がやれるというのか。
(3/3) 確かにここ数年のカープは優勝はおろか、Aクラスにすら手が届かない。 黒田自身、今の状況がもどかしい。実力不足が不甲斐ない。 だがその責任を全て選手に押し付けて、殺し合いなんてさせる球団がどこにある? そして、そんな連中の思い通りに殺し合いを始めた馬鹿は、いったい誰だ。 (比嘉、井生、田中、お前らロクに一軍でプレーもしてないじゃないか。永川、なあ嘘だろう? …どうしてどいつもこいつも、俺に断りもなく勝手にいなくなるんだよ?!) 自分の知らないところで去っていってしまった仲間の姿を思い出す。 世間には無理だと思われていたのは知っている。 でも、黒田はこの仲間たちと、優勝をするのだと本気で信じていた。 そして、一つの映像を思い出して唇を噛み締める。 見ていたのはいつもその人の背中だった。 マウンドで輝いていたエースナンバー。赤い18の文字。 (佐々岡さん、どうして……) 黒田は、自分の気性が穏やかな方だとは思っていない。 でも人を殺したいとまで思ったことは一度もない。 それも…昨日までは。今までは。 (わかったよ、誰だか知らないが、お前は殺し合いがしたいんだろう? じゃあさっさと出て来い。遠慮なんてするな。相手してやるよ) 荷物を肩に掛け直すと、黒田はゆっくりと歩き出した。 そして、早く来いよと、まだ知らぬ誰かに向かって心の中でもう一度呼びかける。 ― 俺がお前を殺してやるよ ― 【生存者 残り36名】
職人さん乙です。黒田早まらないで(´・ω・`)
937 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/03(土) 09:10:59 ID:+W4r2VXZO
おぉ投下されている!職人さん S U 乙 U E
ほ
939 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/04(日) 01:31:58 ID:9rUp8ZR10
test
保守
新作キテタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! 黒田復讐型マーダーキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!! このまま殺人者になってしまうのか!?
「虚実」(1/2) 苦虫を噛み潰したような顔で松本奉文は階段の手すりに手をかけた。 (そう簡単にはいかないか……くそ、いったいどうすれば……) 苛立ちながら階段を数段下った時、下の踊り場に立ちこちらを見ている小林幹英に気づいた。 「あ、幹英さ……」 そう言いかけ、奉文を睨み据えているその目のあまりの冷たさに思わず足が止まる。次の瞬間、視線はゆっくりと上がっていく幹英の右腕に奪われた。その手には銃が握られ、銃口が真っ直ぐにこちらを向いて止まった。 (しまっ……!) しまった、とはっきり心で言葉にする間もなく様々な思いが、その思いを構成する人々が脳裏をかすめ通り過ぎていく。これが走馬燈ってやつか……と、そんな悠長な事までも同時に頭に浮ぶのに体は根が生えたように動かない。 友人、家族、学生時代のチームメイト。夢だったプロ野球選手に、子供の頃から大好きだったカープの一員になれて、共に過ごした人々。そして誰よりも…… ――『奉文、お前はわしが一流のバッターにしちゃるけぇのお』 ――『あー、しんどいわ。ベンチまでおぶってくれや』 (……前田さ……) そんな思いを容赦なく切り裂くように少しくぐもった乾いた音が響いた。 ――パンッ!! 「ぐぁっ……!!」 それは一瞬自分の口から出た声かと思った。もしかしたら同じように声をあげていたのかも知れない。 しかし続いて背後から聞こえた重い物が落ちる鈍い音に固く閉じた目を開け振り向くと、上の踊り場で迷彩服を着た若い兵士が機関銃を手に倒れているのが目に映った。 「……え!?」 再び幹英を振り返ると、その目は相変わらず冷たく奉文を見据えていたが銃を持った腕は降ろされていた。 「監督につまらん事を仕掛けたな……いいか、よく聞け。スタッフも人手不足だからな、表向きは見逃されているがお前は要注意人物にリストアップされた」 呆然と立ちつくす奉文の横を擦り抜け階段を上がり、倒れている兵士を見下ろすと軽く足でその体を蹴る。 「つまり、こういう功を立てようとする奴に命を狙われても文句は言えない立場になったって事だ。……武器は常に身につけておけ」 言いながら幹英は兵士を抱え上げ、踊り場の窓まで引きずっていき無造作に外に放り出した。廊下には兵士が倒れた位置から窓まで、鮮やかすぎるほどの血の跡が尾を引いていた。
(2/2) 「こっちは裏庭だからまあすぐには見つからないだろ。血の跡だけ消しといてくれ」 背を向け立ち去ろうとする幹英にやっと状況を理解した奉文が慌てて口を開いた。 「ま、待ってください!」 「……」 「あ、あの、助けて頂いて……」 「そういう訳じゃない。どのみちあいつらは少しづつ始末するつもりでいた」 その言葉に奉文は更に衝撃を受けた。この島に来てからずっと冷徹だった幹英の態度。あれはこの計画に協力する姿勢の表れなのだと思い、心の中で軽蔑と共にしばしば悪態をついていた。だけど、それは間違いだったのかも知れない。この人は…… 「あの、すみません俺……誤解してました。幹英さんはてっきりその……計画に乗った側だと……」 「そう思っていればいいよ」 しどろもどろに言葉を探す奉文を振り返りもせず幹英は歩を進める。 「待ってください!何かしようとしてるなら、俺にも何か、できることを協力させてください!」 「……」 「お願いします!俺もう、こんなの耐えられ……」 幹英が足を止め奉文の言葉を遮った。 「やめろ。お前だって家族を盾に脅されてるんだろ?」 その言葉に奉文の体はぎくりと凍り付く。幹英はゆっくりと振り返り再び奉文と視線を交えた。 「言ったばかりだろ。もうこれ以上、下手な動きはしないことだ」 「だ、だけど……」 「犠牲者は少ない方がいい。手を汚すのは俺だけでいいんだよ」 静かでいながら射竦めるような幹英に威圧され、奉文はうまく言葉を継ぐことができずに目を逸らしうつむく。必死で言葉を探すが何をどう言っていいのか分からない。 「お前が俺にできる事は……」 はっと顔を上げる奉文に幹英は優しささえ感じさせる口調で言った。 「今見た事を忘れる事だよ。……分かったな」 また背を向け静かに歩み去る幹英に奉文はやはり何も言葉をかける事ができなかった。 (だけど……だけど俺は……俺だって……) その背を見送りながら、奉文の心の中には言いようのないやるせなさが渦巻いていた。 【生存者 残り36名】
↑ 章番号付け忘れましたすみません…orz 40. になります .
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!! カンエイどうやるつもりだい 奉文がまた前田をおぶれる日はくるのだろうか
新作キテタ━(゚∀゚)━(゚∀)━( ゚)━( )━(゚ )━(∀゚)━(゚∀゚)━!!!! 奉文...(ノД`)せめて前田と再会してほしい。 つかこっちでの拓也はどうなるんだろう...リアルの状況が色々変わって職人さんも複雑だろうなあ('A`)
職人さん乙です。 幹英カコ(・∀・)イイ!! 奉文も人の良さが出てる。 保管庫の中の方も更新お疲れ様です。
キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!! 職人さん乙です!保管庫さんも乙です! 前田神はどうしとるんじゃ〜
保守
ほ
ほすがてら。 今日みたいな試合を見ると黒田が怒り狂って野手陣をジェノサイドする光景が浮かぶ...('A`) ともあれ職人さん、ほかんこさん超乙です!
ほ
う
ぶ
ん
と
e
断固保守します!
959 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/09(金) 20:38:22 ID:r5pvyxhg0
◇ ミ ◇ ◇◇ /厳| ◇◇ ◇◇ \ |島_| ◇◇ 彡 O(,,゚Д゚) / <新井に打たせ給え〜 ( P `O /彡#_|ミ\
ほっしゅる
保守
41.それぞれの想い(1/11) ─ なぁスエ、今のカープを…どう思う? ─ ─ えー、いいんじゃないですか? みんな、仲良くやってるし ─ ─ 仲良く、か… ─ ─ どうかしたんですか?前田さん ─ ─ いや…、………なんでもないわ ─ ─ …ワシはもう一度強いチームに戻ってほしいんじゃ。もう一度、強い赤ヘル軍団にの ─ 前田さんも山本監督も、今のチームじゃ駄目だってのか?? 駄目だから、殺しあわなきゃいけないのか? ─ その為には少々の犠牲を払っても、一度壊さんと ─ 壊す。カープを、壊す。 嫌だ。そんなの嫌だ。 俺は、みんなと一緒に野球がしたい。みんなで優勝したい! ─ 死んだ奴の名前を言ってくけぇのぉ ─ 死んだ奴。この6時間で、誰かが死んだ。誰かが殺した。 誰かが、カープを壊そうとしている。嫌だ。嫌だ。 畜生!!
(2/11) 「…あそこだ」 末永は、栗原の荷物と自分の荷物を全て持って集落まで歩いたため、息を切らしながら言った。 栗原は失血量が多いのかやや顔色が悪く、そうか、と小声で呟いただけだった。 (田中さん…何かの間違いですよね?死んだなんて…) 「田中さん!末永です!戻ってきました!!」 しかし、返事はない。 軽く舌打ちをした末永は、玄関に座りこんだ栗原を励ますように言った。 「栗、絶対助かるぞ。今救急箱を探して来てやる」 「あぁ…」 屋敷に入った末永は、ふと廊下の突き当たりのドアが開きっ放しになっている事に気づいた。 何か引き寄せられるような感じがして、気がつくとゆっくりと歩を進めていた。 しかし、そこで待っていたのは─── 「うわあああ!!」 カープのユニフォームを着ている誰かが、床に倒れ伏していた。 見たくはなかったが、耐えた。ユニフォームに刺繍された数字は…19番。 間違いなく、先程の放送で死んだと言われた田中敬人の番号だった。
(3/11) 「田中さん!?なんでですか!一緒に帰るって…一緒に帰るって言ったじゃないですか!!」 必死に叫ぶが、返事はない。ついさっき、この家で会話をかわした相手が、もう息絶えていた。 ──その時末永は背後に何者かの気配を感じた。背筋がゾクッとするほどに冷たい威圧感。 恐る恐る振り向くと、緒方孝市(9)が、冷たい表情で田中と末永を見下ろしていた。 「緒方…さん…!まさか、まさか緒方さんが…!?」 緒方の右手にしっかりと握られているのは、紛れもなく拳銃だった。 自分の持っているマシンガンに比べればいくらかチープに見えるものの、人一人を殺すには充分だ。 この人は”やる気”だ──!やれ!撃て!殺される! いや、でも殺しちゃ駄目なんだ!このゲームを止めるんだ! けどそんな事考えてる場合じゃない!やらなきゃ殺されちまうんだよ! 緒方の威圧感に気圧され、またも狂いかけてしまう末永。 そんな末永に対して、緒方はゆっくりと右腕に握った拳銃の照準を合わせる。 _ぱん! そして、一発の銃声。
(4/11) 突如聞こえた銃声の音が、朦朧としていた意識をはっきりとさせた。 浅井にこの包丁を刺された時から、ずっと激痛に見舞われていた。 体中の血液が出尽くしたのではないかというほどの脱力感。 (ああ…、情けない。この程度だったのか、俺は) 来年こそは飛躍の年になるはずだったのに。 自分は、おそらくここで死ぬ。こんな中途半端なところで。まだ何も達成できてないのに。 (末、…もういい。包帯とかでどうにかなる傷じゃない… 俺はいいから、逃げろ。逃げて、生き延びろ) ──思えば変な奴と仲良くなったものだった。 同期で入団した時から童顔のくせに"こだわりの"丸刈り。 天才と呼ばれていた割に、自分では外見も性格も『普通だよ』とだけ言う。 そのくせ『理想の打撃は10割打つこと』なんて恥ずかしがりもせずさらっと言うし、 いくつになってもお菓子が大好きで、なんかいつの間にかだらしなく太ってるし、 いつもガキみたいにはしゃぐくせに…キレたらあんな風に豹変するし。 が、それでもカープの中では親しい人物である事に間違いはない。 そんな、いいライバルでありいい友人だった男だ── 今の死にかけの俺に…何ができる? それはただ一つ。末永をこの場から無事逃げさすことだ。 栗原は気力を振り絞って立ちあがり、よろけながらも歩き出した。
(5/11) ──信じられない事だった。自分でも。 末永の額をポイントしていた拳銃から放たれた銃弾は末永の脳を貫くことなく、部屋の壁に突き刺さった。 末永は無意識のうちに頭を下げ、その低い体勢から、一気に緒方の横を駆け抜けた。 頭で考えてやった行動ではない。動物的本能が危険を察知し、無意識に末永を屈ませた。 『前田二世』とも言われた天才肌の野球選手の細胞が、命の瀬戸際で小さな奇跡を起こした。 抜群の脚力で一気に加速し、緒方との距離を一気に離した。 ──へいへい、刺せるもんなら刺してみろってんだ!最高のスチールだぜ!── 緒方は一瞬呆気にとられたらしく、振り返って銃を向けたときには 末永は既に廊下の中ほどまで到達していた。 _ぱん!ぱん! すぐに銃声が一発。二発。 末永はその銃声の直前に右足を踏み込み、そのまま全力で左に飛んだ。 銃弾はその直前まで末永の腹部があった所を通って、前の壁に突き刺さった。 まるでアクション映画のような激しい戦闘だ。 そしてそのまま玄関から外に出た。 この立派な家の敷地を表すブロック塀の影に隠れ、玄関の様子をうかがう。 すぐに玄関の戸から緒方が顔と右手を出した。 _ぱん!
(6/11) 慌てて顔をひっこめた末永の体は、小刻みに震えていた。 無意識のうちにここまできたはいいが、頭も体も完全にパニック状態だった。 イングラムの安全装置を解除しようにも、手が震えて力が入らない。 (な、な、なんなんだよ!!なんだこれ、ドラマの撮影!?銃?本物??緒方さん??鬼?殺し合い??俺、殺される??) _カッ、カツッ… パニックになった末永の視界に、突如上から降ってきた楕円形の物体。 そして… 「手榴弾だ!逃げろーーっ!!」 (!!) 耳をつんざくような轟音。紅炎。そして激痛。鮮血。右腕の感覚が、ない。 「うおおおお!!」 玄関から誰かが叫んでいる。耳がおかしくなったのか、その声はひどく聞きとりづらかった。 ますますパニックになっている末永が、ようやくあることに気付いた。 栗原をおいてきてしまった!──するとさっきの声は栗原か? _ぱん!ぱん! 「ぐああああああああ!!!」 そして銃声。絶叫。またしても混乱。 「スエ、逃げろ!俺はいいから!……うああああああ!!!」 塀の向こうで何かが起こっている。そして、ここでも何かが起こっている。 夢?いや、現実なのか?信じたくないほどに残酷で、地獄のような光景に違いない。 もう、呻き声さえも出てこなかった。
(7/11) ──緒方は、このゲームが始まって初めて、自分の命の危機を感じた。 自分が井生に与えたような、言いようのない恐怖感。 自分に与えられた使命は、『闘争心のない者を殺す』というもののはずだ。 栗原は間違いなくカープの主力になれる選手。そして、闘争心をむき出しにして自分に向かってきた。 (撃ってしまった──!) 銃を構える。狙う。引き金を引く。全ては無意識のうちに行われた行動だった。 「まだだ…まだ終わらねぇぞ。日本一のバッターになるって目標はもういい。今の俺は…」 一方、自分の右腕に刺さっていた包丁を無理矢理引っこ抜き、猛獣のような目で緒方を睨みつける栗原。 体の数箇所から血を流しながらも、痛そうなそぶりなど見せない。 (この刃で、緒方さんの足にでも傷を負わせられればそれでいい) 「アイツを無事に逃がす!それだけだ!!」 ホームランを打つわけじゃない。自分の役割は、そう── (人生最後の大勝負が、まさか送りバントとはな…) 自分を犠牲にして、仲間を先に進める。随分と自分のイメージとはかけ離れた役割なものだ。 強敵・緒方に勝つつもりはない。今の状態では勝てるとも思わない。だが── (送りバントくらいは、決めてみせる!) 血走っている栗原の眼には、一片の迷いもない。 「うおおおおおおおおおお!!」 (スエ、──走れっ!) 咆哮し、緒方に飛び掛った。
(8/11) スローモーションのように栗原の動きが遅く見えた。 (俺は…、どうすればいい…?) そして聞こえた。空耳にしてはやけにリアルな声が。 『パパぁっ!!』 _ぱん!ぱん!ぱん! (あ…) 引き金にかけていた指は、もう止まらなかった。 最後に放たれた銃弾が栗原の額を貫通した。栗原はそのまま重力に従って倒れ、ピクリとも動かなくなった。 苦悩する緒方を駆り立てたのは、帰りを待つ家族への愛だったのか。そう言えば少しは格好がつくのかもしれない。 しかし緒方は分かっていた。それは単なる恐怖心にすぎなかった。 ほんの少しのきっかけで、爆発するほどに膨れ上がった恐怖心。何とも情けない話だ。 これほどまでに自分に腹が立ったのは初めてだった。身勝手な自分に。 俺は──こんなに弱い人間だったんだ… 己の判断のみを拠り所として人を殺す。それすらも出来ない程に。 ただ自分が死にたくないから。それだけの理由で、人を殺した。 俺は──無慈悲な神でも冷酷な鬼でも何でもない、ただの臆病者だ。 こんな人間が、カープを生まれ変わらせられるわけがない!
(9/11) こんなゲームの中でも平常心を失わない自信ならあった。何度怪我をしてもそのたびに這い上がり、 レギュラーポジションを奪回してきた自分だ。精神力という点ではチーム内でもずば抜けている。 だが、それは甘かった。 自分は、自分が殺した井生と何ら変わらない、恐怖に負けた弱虫だ。 猛獣のような目をして襲い掛かってきた栗原の方が、よっぽど強い人間だっただろう。 栗原に殺されなかったのはただ単に、自分が栗原よりいい武器を持っていたからだ。 殺し合いには勝った。だが、勝負には負けた──! 頭の中がグチャグチャになり、めまいや吐き気のような嫌な感覚にも襲われた。 少しずつ、──瓦礫の山から瓦礫を取り除いていき、中に埋もれてしまった”理性”を掘り返すように、 少しずつ、頭の中を整理していった。 俺は、変わらなければならない── せめて冷酷な鬼にはなれるような…強い心を持たなければならない。 ボロボロに崩れたプライドを取り戻さなければならない。 俺が本当にカープを生まれ変わらせたいと願うなら─── この戦場から生きて帰りたいと願うなら─── もっと強く、強くなるんだ──!
(10/11) そして末永もまた、少しずつ頭の中を整理していた。 田中が死んだ。仲間が死んだ。 緒方に襲われた。逃げた。必死で逃げてここまできた。 何かが降ってきた。手榴弾。爆発。運良く体に致命傷を負いはしなかったが、右腕に激痛。 銃声。野太い叫び声。 栗原が、死んだ──? 何故──? 俺が栗原を置いてきてしまったから──? 俺が、どうしようもない臆病者だったから──? 少しずつ、この状況が理解できてきた。溢れてくる絶望感。そして── (なんで俺は…逃げちまったんだ!!栗は…俺のせいで死んだんじゃねーか!!) 後悔で胸が締め付けられる。 「末永」 そんな時、塀の向こうから自分を呼ぶ声がかすかに聞こえた。 「俺は今栗原を殺した。…憎いだろう?」 緒方の声は、ひどく落ちついていた。感情というものを、あまり感じなかった。 「お前の武器は何だ?銃か?…たとえ全く使えないようなものだったとしても、…いいか。 俺が憎いなら、かかってこい。俺達の一番の武器は、──自分の、プライドだ。魂だ。」 その言葉を聞いた時、不思議な感覚が体中を駆け巡った。 (俺の、魂…) 「俺はこの体でずっとカープのレギュラーの座を守ってきた」 ──そう、何度も死の淵から這い上がってきた。 「だから」 ──この肉体がどれほど傷つき衰えたとしても、 「簡単にお前に負けるわけにはいかない」
(11/11) ── 今の俺は…アイツを無事に逃がす!それだけだ!! ── 先程かすかに耳に入ってきた言葉が再度末永の頭と、心に響く。 栗原は──こんな自分を逃がすために、死ぬ覚悟で緒方に襲いかかったのかもしれない。 「末永、未来がほしいなら…ここで俺を殺して行け。自分の力で、掴み取れ。さぁ──行くぞ!」 もしここでも逃げてしまったら── (アイツに顔向けできねえっ!) 意を決してイングラムの安全装置を外し、塀から飛び出して玄関に向けて撃った。 怒りで我を忘れて"狂った"のではない。 迷いのない自分が、"目覚めた"のだ。 全身を支配していた恐怖を打ち破り、末永は第一歩を踏み出した。 そして緒方もまた、このゲームの中での第一歩を踏み出したのかもしれない。 末永は、友の想いに応えるために── 緒方は、自らのプライドのために── ── 俺は、負けない! ── 二人の意地と意地が今ぶつかり合う。 【栗原健太(50)死亡 生存者残り35名】
うをおおおおお!!!!!栗原ああああああああああああああ!!!!!。・゚・(つД`)・゚・。 職人さん乙です!!!!!。・゚・(つД`)・゚・。 複雑な戦いですね・・
職人さん乙です。 栗.・゚・(ノД`)・゚・.末永には生き延びて欲しいけど…
(丶 ̄栗 ̄)・・・(´;ω;`)
うお、ほかんこが挿絵入りになっとる!前田と奉文の写真泣けた・゚・。(ノД`)・゚・。 超GJ
すっごく感動的なのに >いくつになってもお菓子が大好きで、なんかいつの間にかだらしなく太ってるし ここハゲワロスw
次スレは?
(`仝´)
次スレたててみるか
981 :
駄目でした :2006/06/12(月) 09:44:00 ID:SBCowxSp0
バトロワSSリレーのガイドライン 第1条/キャラの死、扱いは皆平等 第2条/リアルタイムで書きながら投下しない 第3条/これまでの流れをしっかり頭に叩き込んでから続きを書く 第4条/日本語は正しく使う。文法や用法がひどすぎる場合NG。 第5条/前後と矛盾した話をかかない 第6条/他人の名を騙らない 第7条/レッテル貼り、決め付けはほどほどに(問題作の擁護=作者)など 第8条/総ツッコミには耳をかたむける。 第9条/上記を持ち出し大暴れしない。ネタスレではこれを参考にしない。 第10条/ガイドラインを悪用しないこと。 (第1条を盾に空気の読めない無意味な殺しをしたり、第7条を盾に自作自演をしないこと)
リアルタイム書き投下のデメリット 1.推敲ができない ⇒表現・構成・演出を練れない(読み手への責任) ⇒誤字・誤用をする可能性がかなり上がる(読み手への責任) ⇒上記による矛盾した内容や低質な作品の発生(他書き手への責任) 2.複数レスの場合時間がかかる ⇒その間に他の書き手が投下できない(他書き手への責任) ⇒投下に遭遇した場合待つ事によってだれたり盛り上がらない危険がある。(読み手への責任) 3.バックアップがない ⇒鯖障害・ミスなどで書いた分が消えたとき全てご破算(読み手・他書き手への責任) 4.上記のデメリットに気づいていない ⇒思いついたままに書き込みするのは、考える力が弱いと取られる事も。 文章を見直す(推敲)事は考える事につながる。過去の作品を読み込まず、自分が書ければ それでいいという人はリレー小説には向かないということを理解して欲しい。
次スレ立て行ってみます
989 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/12(月) 22:48:29 ID:EsIbj8dC0
>988 乙です。
梅津
梅〜津〜
大〜竹〜
松〜本〜
石原死ね
倉オタ乙
そういえば石原まだ出て来てない?
998 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/13(火) 19:45:10 ID:SYc9/0yl0
998
999 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/13(火) 19:50:20 ID:Q7WDA/c1O
1000
1000 :
代打名無し@実況は実況板で :2006/06/13(火) 19:54:20 ID:GG8VnVRe0
1000かも
1001 :
1001 :
Over 1000 Thread