1 :
ウグイス嬢:
日本プロ野球高額所得選手による一億円プレイヤーバトルロワイヤル
−通称ビリオネア・バトルロワイヤルを開催します。
2 :
ウグイス嬢:2005/09/04(日) 15:43:21 ID:WALeSHc90
参加選手一覧
・セントラルリーグ
読売ジャイアンツ
順位 氏名 年俸(万)背番号
4清原和博38000 5
5上原浩治 3500019
6高橋由伸 3400024
9工藤公康2900047
17小久保裕紀240006
27桑田真澄 2120018
28仁志敏久 200008
32清水隆行180009
41江藤智 1550033
47二岡智宏140007
55阿部慎之助 1200010
59前田幸長1100029
62岡島秀樹1060028
64元木大介100002
計14名 合計年俸 29億2300万
横浜ベイスターズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
1佐々木主浩65000 22
17斎藤隆 2400011
25三浦大輔2200018
25鈴木尚典220007
28石井琢朗200005
50佐伯貴弘1300010
59若田部健一1100014
計7名 合計年俸 17億7000万
3 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/04(日) 15:47:39 ID:GphUBWMM0
ぶりぶり3get
4 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/04(日) 15:50:33 ID:rPiceyQa0
携帯にかけるなら
0033
5 :
ウグイス嬢:2005/09/04(日) 15:53:28 ID:WALeSHc90
参加選手一覧
・セントラルリーグ
読売ジャイアンツ
順位
氏名 年俸(万)背番号
4 清原和博 38000 5
5 上原浩治 35000 19
6 高橋由伸 34000 24
9 工藤公康 29000 47
17 小久保裕紀 24000 6
27 桑田真澄 21200 18
28 仁志敏久 20000 8
32 清水隆行 18000 9
41 江藤智 15500 33
47 二岡智宏 14000 7
55 阿部慎之助 12000 10
59 前田幸長 11000 29
62 岡島秀樹 10600 28
64 元木大介 10000 2
計14名 合計年俸 29億2300万
横浜ベイスターズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
1 佐々木主浩 65000 22
17 斎藤隆 24000 11
25 三浦大輔 22000 18
25 鈴木尚典 22000 7
28 石井琢朗 20000 5
50 佐伯貴弘 13000 10
59 若田部健一 11000 14
計7名 合計年俸 17億7000万
清原優勝
糸冬
7 :
ウグイス嬢:2005/09/04(日) 15:55:10 ID:WALeSHc90
中日ドラゴンズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
12 谷繁元信 25000 27
12 立浪和義 25000 3
19 岩瀬仁紀 23000 13
19 山本昌 23000 34
19 川上憲伸 23000 11
28 福留孝介 20000 1
47 井端弘和 14000 6
59 落合英二 11000 26
63 野口茂樹 10080 47
計9名 合計年俸 17億4080万
阪神タイガース
順位 氏名 年俸(万)背番号
11 金本知憲 26000 6
12 今岡誠 25000 7
19 井川慶 23000 29
32 片岡篤史 18000 8
38 矢野輝弘 17000 39
46 下柳剛 14300 42
50 赤星憲広 13000 53
55 桧山進次郎 12000 24
計8名 合計年俸 14億8300万
8 :
ウグイス嬢:2005/09/04(日) 15:57:12 ID:WALeSHc90
ヤクルトスワローズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
8 古田敦也 30000 27
32 宮本慎也 18000 6
37 岩村明憲 17400 1
39 五十嵐亮太 16400 53
計4名 合計年俸 8億1800万
広島東洋カープ
順位 氏名 年俸(万)背番号
41 前田智徳 15500 1
45 緒方孝市 14500 9
50 佐々岡真司 13000 18
58 黒田博樹 11500 15
64 野村謙二郎 10000 7
計5名 合計年俸 6億4500万
9 :
ウグイス嬢:2005/09/04(日) 15:58:46 ID:WALeSHc90
・パシフィックリーグ
ソフトバンクホークス
順位 氏名 年俸(万)背番号
2 城島健司 50000 2
7 松中信彦 32000 3
43 柴原洋 15000 1
43 斉藤和巳 15000 66
57 大村直之 11600 7
計5名 合計年俸 12億3600万
西武ライオンズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
12 松坂大輔 25000 18
12 和田一浩 25000 5
19 豊田清 23000 20
28 西口文也 20000 13
54 森慎二 12500 11
計5名 合計年俸 10億5500万
北海道日本ハムファイターズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
3 小笠原道大 40000 2
40 金村暁 16000 16
計2名 合計年俸 5億6000万
10 :
ウグイス嬢:2005/09/04(日) 15:59:12 ID:WALeSHc90
千葉ロッテマリーンズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
19 小林雅英 23000 30
32 福浦和也 18000 9
47 清水直行 14000 18
計3名 合計年俸 5億5000万
オリックスバファローズ
順位 氏名 年俸(万)背番号
9 谷佳知 29000 10
64 村松有人 10000 3
計2名 合計年俸 3億9000万
東北楽天ゴールデンイーグルス
順位 氏名 年俸(万)背番号
32 岩隈久志 18000 21
50 礒部公一 13000 8
計2名 合計年俸 3億1000万
総参加人数 66名 年俸総額 134億8080万
※年俸は名簿の額を正しい数値とする。
※参加メンバーの年俸総額が10億を切ればゲーム終了。
11 :
1(1/9):2005/09/04(日) 16:00:38 ID:WALeSHc90
−プロローグ−
ぱっ――と、いきなり瞼の向こうが明るくなった気がして、高橋由伸(G24)は
うっすらと目を開けた。
もともと明るいと眠れないタチだ。いきなり真っ暗闇から明るい場所に放り出さ
れたせいだろう、カクテル光線並みの強い光りが目に差し込み、しばらくチカチカ
して周りがよく見えなかった。
眠っていたらしい。睡眠の一番深い部分から無理矢理引きずり起こされたような
感覚が脳の奥に残る。同時に頭痛がし、高橋は不快感に眉を顰めた。
瞼の裏で瞬く光りを収める為、高橋はしばらく俯いて目を閉じた。周囲のざわめき
が少しずつ大きくなっていく。大きな声を上げて驚く者、ヒソヒソと隣人と囁き出
す者、様々だ。どうやら相当な人数が一カ所に集められているらしい、ということ
に気付く。
ようやく光りに慣れてきた目を懲らして周囲を見渡した。
東京ドームを小さくしたような感じ――というような印象を高橋はその建物から
受けた。
丸形のドーム球場。しかしその規模は遥かに東京ドームよりも小さい。
縮尺はそのままで、何分の一かに縮小されたオモチャ球場。慣れ親しんだ外野まで
の距離の短さに違和感を覚えた。
自分が先程まで寝転がっていた地面は、これまた馴染みのある人工芝で、ちょうど
一塁ベースとマウンドの中間くらいに高橋は座っていた。
その周りにはざっと5,60人だろうか、ユニフォームを着た男達が同じように
状況を飲み込めない顔で人工芝に座っていた。中にはまだ横たわって寝ている者も
いて、近くの人間が起こしてやっている光景も見られる。
ふと高橋がすぐ隣に目をやると、よく見知った顔が転がっていた。どこまでも呑気
な顔で、微かにイビキすらかきながら眠る、同僚の上原浩治(G19)。
「おい、起きろ」
肩を掴んで揺さぶると、うめき声のような寝言を呟きながら上原がゆっくりと目
を開けた。
「う……はよ……。頭痛ぇ。……てか、ここどこ? なんでお前がいんの?」
頭を抱えながら、寝ぼけた声で質問を連発してくる。
12 :
1(2/9):2005/09/04(日) 16:01:15 ID:WALeSHc90
その全ての問いに対して、高橋は明確に返せる答えを持ち合わせていなかった。
そう、どこはどこだ?
そして自分達は何故ここにいる?
ここにいる者は全員プロ野球選手だ。見知った顔も多い。どうやらチーム別に集
められているようだが、人数はまちまちだった。パリーグは2,3名しかいない
チームもある。
どういう基準で集められたのか知らないが、傾向としては各チームの主力、ビッグ
ネームが多いように感じた。
今は2005年のオフシーズンのはずだ。いわゆる「冬休み」の自分達が、ユニ
フォームを着てこんな球場まがいなところにまとめて押し込まれている理由はない。
「なぁ聞いてる?」
「俺が知るわけないだろ」
答えない高橋に、重ねて聞いてくる上原を一蹴する。
起きた上原には一瞥もくれず、高橋は必死に眠る前の状況を思い出そうとしていた。
確かオフのテレビ特番の収録があると聞いて某局に足を運んだはずだ。通された
出演者用待合室には、実に14名のジャイアンツの主力選手がずらりと顔を揃えて
いた。不甲斐ない成績で終わった昨シーズンで、これだけのメンツを集めてどんな
特番を行おうというのか、その時点で疑問というか、不安があったのは確かだった。
そこで不慮の事故があり収録準備が遅れている――と結構な時間待たされ、清原
がそろそろ機嫌を悪くしだした頃、ゆったりとした睡魔が高橋を襲い――
そこから、この偽東京ドームの明かりで目を覚ますまで、何一つ記憶はなかった。
「うわっ!? 何やこれ!?」
上原が突然声を上げる。うるさいな、と思い顔を上げると、上原は首に巻かれた
鉄色の首輪に両手で触れ、目一杯驚いていた。
(首に巻かれた首輪?)
ふいに、確かに感じた首周りの違和感に、高橋は慌てて自分の首を確認した。
ひんやりとした金属の感触に、首から上の血の気が引く。
この異様なシチュエーションの方にばかり気を取られ、気付かなかった。
洒落っ気の欠片もない鉄の輪っかの存在に気付いた途端、高橋は急に肩にずっしり
とした疲れを感じた。
13 :
1(3/9):2005/09/04(日) 16:01:43 ID:WALeSHc90
見れば、その場にいる全員が同じ首輪を巻いていた。
(俺たちは奴隷か犬か?)
『おはよう諸君』
突如、ドーム全体にその声が響いた。
試合中のウグイス嬢のアナウンスと同じだ。ただその声は、嗄れた老人の声だったが。
『よく眠れたかね? まあ、安眠できるのはこれが最後と思ってもらえたらいい。
君たちには今からゲームに参加してもらうことになる。殺し合いのゲームだ。先に
言っておくと、あまりその首輪を触ったり無理に外そうとしたりするなよ。爆発して
周りの人間も巻き込んで死ぬぞ』
ざわっ……と内野に集められた選手達の間にざわめきが起こった。
同時に、ぱっと外野中央の、本来ならば電光掲示板がある場所に鮮明に老人の顔
が映った。良く見知った顔だ――高橋の顔に苦いものが走った。
あまり見たい顔ではない。元読売巨人軍オーナー、現球団会長の渡辺恒男だった。
『簡単に説明をさせてもらう。先月オーナー会議で話し合われた球界の諸問題――
まあ君らの年俸高騰や戦力の偏り、とかそういうものだ。それらの対策として、ひとつ
画期的な方法が提案され、可決された』
パパパパパッ――と、東京ドームならば企業の巨大広告の掲げられている部分が
スクリーンになっており、選手達を取り囲むように次々に年配の男達の顔を映し出
した。見たことのある顔もあれば、ない顔もいる。
だがどういうメンバーかはすぐに分かった。各球団のオーナー連中だ。
『詳しいことは私の方から説明させて頂きます』
そのうちの一つの顔が、コホンと咳払いを一つした。楽天球団オーナーの――三木、
だったか?
『2005年に創設された東北楽天ゴールデンイーグルスの初年度の結果は皆さん
ご存じだと思います。新球団故の戦力不足は仕方がないとはいえ、従来の戦力補強
の方法では適正戦力の構築まで時間がかかりすぎ、それまでに戦力の不均衡により
球界の将来が危ぶまれるのでは、という憂いの声が今回のオーナー会議で出て、今回
特別処置として楽天の特別補強策が組まれました。具体的に言うと、楽天の来季の
補強費限度額を10億円と定め、全球団から年俸一億円以上の選手を殺し合わせ年俸
総額が10億円以下になるまで数を減らす。残った選手に来季楽天でプレーしてもらう、
というものです』
14 :
1(4/9):2005/09/04(日) 16:02:07 ID:WALeSHc90
三木の説明が一旦終わる。シン――と、疑似東京ドームが静まりかえった。
誰もがその説明に耳を疑い、呆れるか、絶望するか、放心するか――ともかく、
誰一人突然突きつけられた現実に二の句が継げないでいた。
なんてことだ。高橋は青ざめた。高額年俸が祟って殺し合いゲームに参加させら
れるなど、自分を喜んで巨人に入団させた親はどう思うだろうか。
入れ替わりに、再び渡辺の声が響く。
『残った選手にはFA権短縮という形で楽天に移籍してもらう。従来の規定で今年FA権
取得する者もそのまま権利を保有して移籍できる。FA権短縮は君たちの希望の一つ
だっただろう? 球団側としても年俸の上がり過ぎた選手を削減出来るし、戦力の
均衡にも一役買う。一石二鳥どころか三鳥というやつだな。ワッハッハ』
渡辺のすぐ左隣の滝鼻巨人オーナーが大仰に頷く。耳障りな笑い声に、ちょっと
したざわめきが起こった。数名の選手が、殺気立った視線をスクリーンに向けている。
『今年引退を表明した選手も、生き残った場合このルールに則って最低1年間現役
を延長してもらうことになる。ゲーム中に死亡した現役選手も、心配しなくていい。
不祥事が表に出ないようにこちらでそれぞれ任意引退か事故等として配慮をしておく』
(何が配慮だ……!)
高橋は胸中毒づいた。どこまでも言い方が気にくわない。「プレーしてもらう」
「移籍できる」「心配しなくていい」「配慮しておく」強制的にやらせるつもりな
のに、まるでこちらの意志を尊重しているかのような恩着せがましい言い方をする。
誰かを殺さなければいけないなら、まずこの狸爺共を殺したいと高橋は思った。
渡辺が言葉を切り、ちらり、とレフト側のスクリーンに目配せした。それを受け
取った元西武オーナーの堤が、その視線をさらにライト側の元阪神オーナー久万に
流す。どうやらこのスクリーンと同じ配置で、今彼らは顔を付き合わせているらしい。
渡辺同様、相変わらずこの辺りの面子も健在なようだ。
堤にたすきを渡された久万は、面倒くさそうに顎を撫でながら、手元にあった書類
を持ち上げた。
15 :
1(5/9):2005/09/04(日) 16:02:43 ID:WALeSHc90
『なんや、儂が説明するんかいな。手塚も面倒臭いときに風邪ひきよって……えーと、
スタートは66名。年俸総額134億8080万。……えっらい数字やな。自分ら
これ聞いたらちょっとはこんなことなってしまったんが分かるんちゃうか? 外国人
は長続きせんからいらんって三木さんに言われたわ。まぁ英語とか何とか語で説明
せんでええからちょうどええやろ。えー、ここはとある小島で、この狭いドームは
その島の丁度真ん中にある。君らにはこの後一人ずつ荷物を持って外に出てもらう。
反則はなしや。一騎打ちでも騙し討ちでも好きにせぃ。でもここではまだやったら
あかんで。外に出たら何でもええ。あー疲れたわ。誰か変わってくれませんかな』
そう言うと、仕方がなさそうに堤が後を継いだ。まるでここにいる人間が今にも
殺し合いをしたくてうずうずしているような口ぶりが高橋は気に食わなかったが、
いちいち反応していても仕方がないことだ。
『荷物には数日分の食料と水、島の地図、方位磁石、名簿、各自武器等が入っている。
ゲーム終了は生き残り選手の総額年俸が10億円以下になった時。死亡者とその時点
での総額年俸については一日に4回、全島放送で知らせる』
「俺達が殺し合わなかったら、どうするつもりだ?」
静かに手を挙げ、選手側から初めて声が上がった。ファイターズの小笠原だった。
それ程大声で叫んだ訳ではないが、マイクでも埋め込まれているのだろうか、堤は
すっと目を細めて小笠原の質問に答えた。
『これはこれは、年俸額第三位の小笠原君じゃないか。それを今から言おうと思って
いたところだよ。ただ殺し合え、と言われても君たちもすぐに昨日までの同僚を殺す
のはやりにくいだろう。そこで理由をつけてあげることにした。全員首輪は嵌めて
いるかね?』
最初に無理に外そうとしたら爆発する、と洒落か酔狂のような注意事項をさらり
と渡辺に言われてから、誰も触れていなかった首輪について、堤が初めて言及した。
『最初に渡辺さんがおっしゃったが、それは自爆装置が仕掛けられていて、無理に
外そうとしたら爆発する。さらに、24時間以上誰も死ななかったら、生存者全員
の爆弾が一斉に爆発する』
「なっ……!」
誰かが呻いた。
16 :
1(6/9):2005/09/04(日) 16:03:06 ID:WALeSHc90
ガー……と、バックネット裏で響いた機械音に、全員が一斉にそちらを振り向いた。
白い、巨大なスクリーンが天井からゆっくりと降りてくる。
少し照明が落ち、スクリーンに孤島の地図が映し出された。学校や役所などの施設
も詳しく書き込まれたそれに、碁盤上の升目が重ねられている。縦軸にアルファベット、
横軸にはそれぞれローマ数字が振り分けられていた。
『これと同じものを後で配る。今君たちがいるのがここ、島のちょうど中央のドームだ』
地図の中央の正方形が、堤の声と同時に赤い斜線で塗られた。
『君たち全員が出て行ってから20分後、この区域は禁止エリアになる。禁止エリア
というのは、その場所に入ったら首輪が爆発するエリアのこと。一日4回の放送で、
死亡者、総額年俸と一緒に追加される禁止エリアについて発表する。自分がいる場所
が禁止エリアに指定されたら、速やかに移動すること。当然日が経つにつれ動ける
エリアは狭まってくる。ずっと同じ場所に留まられてはゲームの進行に支障をきたす
からな』
一通り説明が終わり、小笠原は何も言わなかった。
その様子に、堤が満足そうに目を細める。
『理解出来たかな。首輪について留意すべき点は4点。一つ、過度の衝撃を加えると
首輪が爆発する。一、24時間誰も死亡者が出なかった場合、生存者全員の首輪が
爆発する。一、禁止エリアに入れば爆発する。そう、言い忘れていたが……一つ、
島から脱出しようとした場合、首輪が爆発する。首輪が解除されるのは、参加者が
死亡した場合と、ゲームが終了した、つまり生存者の総額年俸が10億を切った時のみ』
堤がまとめた留意点は、つまりは絶望的な状況だった。
誰かを殺さない限り、いずれ死ぬ。殺し合い、生き残ったものだけが元の世界に
帰れる。
首輪の爆発と、誰かに殺される危険に怯えながら、全島放送を待ち、年俸総額が
減っていく様を期待する――それが、ゲームに参加させられた者に提供された道だった。
『怖い顔しとるやつらもおるけど、恨むんやったらこんなことになるまで年俸ねだり
過ぎた自分らを恨むんやな』
これで一通りの説明は終わったのか、沈みきった顔の選手たちに、久万がいらない
茶々を入れる。
「そんな話を誰が信じるってんだ?」
17 :
1(7/9):2005/09/04(日) 16:03:32 ID:WALeSHc90
怒気を孕んだ口調で言ったのは、福留孝介(D1)だった。全員の視線が一気に集
まる。冗談にしては凝りすぎた状況説明に、釈然としないまでも信じかけていた高橋
は、福留の言葉に本当にこれがただの虚構ならばと救いを求めた。
『信じる信じないは君たちの勝手だ。誰か、試しにその首輪を引きちぎってみたらいい』
だがあっさりとそう答えた渡辺に、再び沈黙が訪れる。渡辺が映るスクリーンを
睨み付けた福留の頬を汗が伝う。
緊張が走り、福留の首輪に注目が集まる。無理矢理取り外そうとすれば爆発する
――冗談でなければ。この状況で、果たしてハッタリと決めつけてやって見せるこ
とが出来る人間がいるだろうか。自分の命と、そして周囲のチームメイトの命を巻
き込んだ全く利のない賭けだ。
結局福留も、もちろんその他の誰も、指一本首輪に触れることはなかった。
『ふむ――思っていたよりも賢いな、君たちは。だが現実味がないというのなら現実
を思い知らせてあげよう』
その様子を見て取り、渡辺が意味深な発言をする。すると、ブルペンから二人の
男が出てきた。
スポーツ選手の目から見てもガタイが良い、と思う迷彩柄を着込んだ大柄な男たち。
戦闘服と言うやつだろうか。ヘルメットに、金属製のマスクと完全に武装した彼ら
の顔は分からなかったが、大型の銃を担ぎこちらへ並んで向かってくる動きは、訓練
された者のそれと分かる。
ずるずると、その二人の男に引きずられる、黒い寝袋のような袋。
「ひっ……」
前列にいた誰かの口から、引きつった声が漏れた。
一気に飛びかかれない程度の距離を空け、戦闘服の男たちは全く同じタイミング
でピタリと立ち止まった。
どさっ……と、重い音をたて人工芝の上に投げ出された寝袋から、黒い――髪の
毛のようなものが覗き、何人かが息を飲んだ。
ずるりと、向かって右手の男がその髪を掴んで袋から中身を引きずり出す――
「うわぁぁぁぁぁっ!!??」
前の方にいた中日の井端(D6)が叫んだ。
それは血に濡れた原辰徳――いや、かつて原辰徳だったもの、だった。
18 :
1(8/9):2005/09/04(日) 16:03:58 ID:WALeSHc90
眼球が飛び出しそうなほど見開かれた目。半開きの口から血とも唾液ともそれ
以外の体液とも付かないものが零れている。何故だろう、もう何年も前の、83番
の巨人のユニフォームを着ていた。原が監督として巨人を率いたときの背番号だ。
白いユニフォームに、いくつもの身体に撃ち込まれた銃弾の跡と、そこから溢れた
大量の血の染みが鮮明に浮き上がっていた。辛うじて顔には傷がなく、誰であるか
が判別できたが、その後頭部は、銃弾か何かで削られ――なんだかよく分からない
ことになっていた。
何なんだ? これは?
渡辺が見せると言った現実はあまりにも非現実的で、混乱していた自分たちの思考
を停止させてしまっただけだった。そもそも、これは現実なのだろうか?
最初に井端が叫んだ以外、誰も何も言わない。高橋自身も、何も言えなかった。
尊敬するかつての将の死に泣けばいいのか、そのあまりにも滑稽な姿に笑えばいい
のか、凄惨な遺体の様子に嘔吐すればいいのか――いったいどうするのがその場に
最も適した行動なのか、高橋には分からなかった。
『せっかく事前に事を説明してやったのに、猛反対して食ってかかってからな。惜
しい人材だったが、仕方がない。こうやって君たちに現実を知らせる役目を買えて、
選手想いの原君も本望だろう』
ギリッ……と、何かを擦り合わせる不快な音が耳に響いた。自分が奥歯を噛み締
めた音だと、高橋は気付かなかった。
すぐ目の前にいる上原の拳が、肩が、微かに戦慄いているように見えた。後ろの
方で嗚咽が聞こえる。誰かが泣いているのかもしれない。
選手達の反応を余所に――いや恐らく満足して――渡辺は最後の締めに入った。
『ここは今回の為に特別に作ったドームだ。別にどんな形でも良かったんだが、
せっかくだから東京ドームに似せてみた。まあ、プレイボール、には相応しい場所
だと思わんかね? さて、ドーム内の構造は東京ドームと全く同じだ。セパ交互に、
それぞれの05年の順位、チーム内の背番号順に名前を呼んでいくのでセリーグの
選手は一塁側、パリーグの選手は三塁側のダグアウトを通って速やかに退場すること。
各ゲートで支給品を配るスタッフが立っている。彼らを脅しても意味はないから、
無駄に絡んだりしないように』
19 :
1(9/9):2005/09/04(日) 16:04:22 ID:WALeSHc90
『――ただいまより、第一回日本プロ野球ビリオネア・バトルロワイヤルを開催します。
出場選手の紹介を行います』
マイクが切り替わり、聞き慣れた東京ドームのウグイス嬢の声が冷たく響いた。
ビリオネア・バトルロワイヤル? たいした名前だ。このくだらないゲームに相応しい。
高橋はすでに、頭に血を上らせることをやめていた。ただ単に上れるところまで
上り切ってしまっただけかもしれない。高橋はこの時初めて、自分のチームの今年
の不甲斐ない成績に感謝した。
日本シリーズの覇者からセパ交互に呼ばれていく、死刑執行にも等しい出場選手紹介。
高橋の名が呼ばれるには、まだいくらか時間があった。
ひとり、またひとりとグラウンドから選手が姿を消していく中、悪夢の時は刻一刻
と近づいていた。
――プレイボール―― 残り66名 年俸総額134億8080万
楽天のオーナーって三木じゃなく、三木谷じゃなかったっけ?
最初、わざとかなと思ったけど一応指摘を。
何はともあれ、続きが楽しみです。職人さん頑張ってください。
間違える人多いけど、渡辺恒『雄』ね
>>ウグイス嬢
期待してるぞ、頑張れ
29 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/04(日) 20:42:00 ID:4HMcBYYV0
やたら個性の強い奴が多いが
それでも
>>1なら…
>>1なら最高の話を書き上げてくれる気がする
これはすごく楽しみ。色々想像して早くも泣いてしまいそうだ。
職人さん頑張ってください!
31 :
26:2005/09/04(日) 20:56:29 ID:RPgaKstaO
>>28 帰省中でしばらくPCが使えないんですが、よろしくお願いします。
トリ付けた方がいいでしょうかね?
>>1 乙!
>>30氏同様続きがすごく楽しみだ。
もしよければまとめサイトを・・・と思うんだが、まだ気が早いかな?
>>1 乙。
参加したいが掛け持ちになるからな・・・序盤が一番書きやすいんだがw
>>31 実は自分もちょっと忙しい時期に入るので心配ですがヨロです
一応付けましょうか
>>32 まだ早いかもしれませんがまとめサイト作って頂けたらすごく有り難いです
ありがとうございます
>>33 自分も掛け持ちだから無問題
どうも序盤気負ってしまうところがあるので良ければ参加して下さい
35 :
32:2005/09/04(日) 23:09:42 ID:SIBFNRoy0
>>34 わかりました
では少しずつ準備していきたいと思います。
26です。トリつけました。
ストーリーの流れに間することなど、具体的な打ち合わせはどうしましょうか?
初参加で緊張orz
参加希望です。
とりあえずトリのみ。
自分も参加希望です。
かつて別板でバトロワ書いていたけど…久しぶりに書いてみたくなった
自分もトリつけてみた。
簡単な方針だけはあった方がいいだろうね
自分も参加希望です。宜しく。
41 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/05(月) 01:05:57 ID:NvOe6mbT0
おお、結構いるなー。ウレスィ
自分は今回66人と人数多いし最初は適当でいいんじゃないかなと思っていました
残り人数減ってきたらさすがに話あっていかないといけないけど
さすがにバトロワ開催したのは初めてなんでどう進めて行こうか悩む部分もあるのだけど、
簡単な方針ってどういうものになるんでしょうか?
>>44 あと地図は先に作っておいた方がいいと思う。
外側の形だけ用意して、細かいことは話の中で作っていく方向で。
うん
今まとめサイト作成中なんですが
1氏のミス(三木谷の名前等)は直した方がいいですよね?
まとめサイトとか作るのはじめてなんで・・・すいませんorz
>>47 どっか適当に掲示板借りてきて(したらばとか…)
職人さんに訂正個所を明記してもらったらどうかな?
保存庫さん、これからお世話になります。
地図はどうしましょうか。
マス目だけ決めて、後は各自で施設等を盛り込む感じかな?
>>47 保存庫さんありがとうございます
三木谷と渡辺恒雄は直しておいて下さい。すみません、ご迷惑をかけます
あと、年俸総額134億8080万円
にしといたほうがいいかな(円を付ける)と細かい部分ですが思いました
地図は島の形と升目だけ決めて、文中で指示されていったものを順に書き込んでいく
感じでいいんじゃないでしょうか
54 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/08(木) 22:25:23 ID:KBJGHayX0
一旦、上げますよ
>>50 そうですね。4×4〜5×5ぐらいでいいと思います。
こういうのはスレ立てした人の特権と言うことで、2氏がさくっと決めてください。
>>51 失礼しました
保管庫さん乙です。お手数おかけしました、ありがとうございます。
これからよろしくお願いします。
『5人目』
ふざけるなよ。
一連の説明を聞いた後、西武ライオンズの背番号20豊田清はそう口の中で呟いた。
ふざけるな、何が『戦力均等化』の為だ? その為に人が死んでも何とも思わねぇのかよ。
しかも生き残ったら―――来季はイーグルスだぁ?
目を落とし、ユニフォームのロゴを見る。
明るい空色で『LIONS』『20』と少々固い文字で印刷してある。
13年間、俺はライオンズの為に投げ続けたという自負がある。
それをこんな馬鹿げた事で無しにされるって言うのかよ! ふざけるな…
ガツガツと外野の芝生を叩きながら考え続ける。
「豊田さん、豊田さん」
ふと自分を呼ぶ声に気付き、表情を変えないまま振り返る。
その声はヤクルトスワローズ背番号1、岩村明憲が発したものだった。
「‥‥なんだよ。」
「松坂とか和田さんとかもう行っちゃって、後3人で豊田さんの番すよ。」
さっきからボーっとしてるし、何か松坂豊田さん達の方見て合図送ってたみたいだからー。
あぐらに頬杖の姿勢で岩村が続ける。
豊田はその岩村の話し方に何か引っかかるものを感じながらも聞いていた。
「岩村、松坂何してたんだ。」
「んー何か右手の親指上げて、心配すんなって感じでぇ。」
「そうか。」
そう言って岩村は微かに笑った。
豊田は目の錯覚かと思い、自分の目を2、3回こすった。
「お前…」
『西武ライオンズ背番号20番、豊田、豊田清。
年俸2億3千万、チーム内順位3位、全体順位19位。』
岩村に話しかけようと豊田が声を出した瞬間だった。
不運にもウグイス嬢の冷たい声が豊田の耳に届いた。
「んじゃ、また会えたら。」
幾分か楽しそうな声色で岩村がそう言うと豊田の表情が更に険しくなった。
―――また? それに何かこいつは…‥
引っかかるものを感じながらも、立ち上がり3塁側のダグアウトへと向かった。
その途中、同じライオンズの西口や森を発見する事が出来た。
二人とも不安そうな面持ちで豊田が歩くのを見ている。
「…絶対に死なない。」
声に出さず呟き、マウンドでするように大きく息を吸って吐く。
そしてベンチの前まで来ると振り返らずに、すっと右手の親指と人差し指を伸ばした手を上に挙げた。
帰ろうみんなで。
愛するライオンズに―――
係員から奪い取るように鞄を持ち、左肩に掛けた。
ゲームはまだ始まったばかり。
2氏地図乙です
37氏も新作乙です!
赤テラコワスorz
新作キタ------!!
赤…やる気なのか赤……?
新作乙!
岩村・・・
『5人目』うpしました。
『目指すは故郷の地』
行き先は二つの天。天国か、楽天か。
死ぬのは論外だが、生きて帰って楽天に移籍する? 全員が、冗談じゃない、
そんな選択肢はどちらもごめんだ、と心の中で叫んだ。
彼らは皆、そのチームの顔なのだ。愛着もあるだろうプライドもあるだろう、
楽天なんて、行ってたまるか。そんな思いがある。……一部、例外を除いて。
「俺が最後か……」
小声で言ったのは、日本プロ野球界最高額の年俸を誇る男、そう、佐々木主浩(YB22)である。
ルール説明を聞いたとき、そのあまりに自分にとって不利なシステムに愕然とした。
まず狙われるのは自分だ。10億引く6億5千万は3億5千万。自分と、多くても三人しか生き残れなくなる。
下手すれば生存者は二人だけ、という条件になるではないか。どう考えてみても、最悪の状況に陥るのは確実だ。
生き残る自信が、全くないわけではない。しかし、迫りくる不安に唇が震えているのもまた事実である。
ピンチに見せてはいけない、気弱な方の自分が出てきそうになるのを、ぎりぎりのところで堪えていた。
「そうですね…」
返事をしたのは斎藤隆(YB11)。高校、大学、そしてプロと、常に佐々木の後を歩んできた選手だ。
彼は佐々木に比べると、最初の方こそ顔を引きつらせていたが、随分落ち着いている。
もっとも、佐々木は自分のことで必死だから、彼のそんな様子に気をはらってはいないが。
横浜の選手は一塁側のファウルグランドに座っていた。
三浦大輔(YB18)や野手の三人は固まっているが、話をしている風はない。若田部健一(YB14)はぽつんと、
その四人とも、佐々木と斎藤とも離れた位置で、三塁側のダグアウトを見つめている。
また一人、若田部の視線を横切って選手が出て行く。ドームは狭いが、誰かの話声はほとんど届かず、
ただひそひそ話の気配がするのみ。ウグイス嬢の声だけがセンタースクリーンに跳ね返って揺れる。
佐々木は乾いた唇をなめ、つばを飲み込んだ。
「楽天」
隣がぼそっと呟いた言葉に、顔を上げた。斎藤隆は笑っていた。薄い微笑。
気味の悪さに眉をひそめたその時、彼がほとんど聞こえないぐらいの声で、言った。
「悪くないですね」、と。
はっとして、思わず顔を背けた。確かに、そうだ。
もうどの道、横浜で投げることは出来ない。プロ野球人生の延長戦は、仙台で。
良いじゃないか。バッシングを覚悟し、わがままを押し通してでも得たかった凱旋登板の舞台。
生き残ればもう一度、あそこで野球ができる。自分は、それを喜んで受け入れる気がある。
他の、楽天に行く気の無い選手が生き残るよりも、自分が、いや―――
もう一度斎藤と目を合わすと、小さくうなずいた。一緒に生き残りましょう、そういう意味の合図だろう。
周りに見つからないように、親指を立て了解の返事を送る。
――そう、自分たち二人が、生き残るべきだ。
唇の震えは止まっていた。道は決まった。生き残ってみせる。それだけの権利が、自分にはあるのだから。
佐々木の青写真と斎藤の青写真。二つが違う物であることを、この時佐々木は知らなかった。
残り66名 年俸総額134億8080万円
地図と保管作業乙です。
うわ、うわ、隆〜!!
職人様乙です!
ちょ佐々木おま・・・隆怖eeeeeeeeeeeeeeeeee!
保守
捕手
33氏新作乙です!
隆・・・怖いorz
佐々木ww
『目指すは故郷の地』
うpしました。
ほす
『わかってしまったこと』
一定の間隔で繰り返されるアナウンスの中。
楽天の選手会長である礒部公一(E8)は、目覚めた時と同じ場所に立ちつくしていた。
突如降りかかってきたこの恐ろしい事態を、はじめ、彼は信じられずにいた。
楽天の特別補強策。そのために、まったく無関係な他球団の選手までも巻き込み、なんと殺し合いをするというのだ。
…アホらしい。誰がそんな話をやすやすと信じるもんか。悪い冗談に決まっている。
第一、楽天ってウチのチームじゃないか。
選手会長の俺の耳にだって、そんな話、全然入ってきてない。だから、何かの悪い冗談だろう…そう楽観視していたのだ。
ついさっきまでは。
「クマ」
礒部が呼びかけると、右隣に立っている岩隅久志(E21)が肩をびくっと震わせて顔を上げた。
ドームの照明の下、岩隈の目の底の方が変なふうに光っているのがわかる。さらに、もともと切れあがっている目尻がそれとわかるほどに吊りあがっていた。
その唇は乾ききって、小刻みに震えるばかりだ。うまく返事ができないらしい。
(パニックに陥ってるな)
無理もなかった。
迷彩服をまとった男達によって、乱暴に目の前へと引きずり出された、原の死体。今もそれは彼らの目の前にある。
礒部と岩隈は、集められた選手達の中では一番後ろの方にいた。だから、それとは少し距離があった。
にもかかわらず、流れ出した血の赤黒さ、かすかに漂ってくるなまなましい匂い…何より、前の方にいる他球団の選手達の狼狽ぶりが、それがニセモノでないことを証明していた。
『それ』が紛れもなく原の死体だということを彼らが理解するのに、そう長い時間はかからなかった。
「…クマ。今から言うとおりにしてくれるか?」
ろくに喋れずにいる岩隈の目をしっかりと見つめながら、もう一度問いかけた。
もう時間がない。最初は66人もひしめきあっていた選手達も、今はもうまばらだ。
うかうかしているとすぐに自分の番がやって来る。
その時、新たな選手の出発を告げるアナウンスが始まった。
しめた、と礒部は思った。この至近距離ならば、小声で話してもちゃんと岩隈に伝わる。
そうしたらアナウンスの音量にかき消されて、周りには内容を聞かれなくて済むだろう―そう思い、礒部は一気に続けた。
「ええか、俺の次に出発するのは、お前や。原さんの方はできるだけ見んようにして、バッグ受け取ったらすぐ来い。
出てすぐの所で待ってる。どっかに隠れて、どうしたらええか、落ち着いて考えようや。二人やったら、何とかなる」
一言一言をできるだけ聞き取りやすいように区切りながら、礒部は力強く語りかけた。
岩隈が、震えを抑えながらようやく頷いた。朗々と響くウグイス嬢の声の余韻が、ドーム内に反響している。
(―こんなん、嘘やろ?なあ。三木谷さん…)
やがて自分の名前がコールされるまで、礒部はその大きな目をいっぱいに見開き、スクリーンに映る三木谷を凝視していた。
彼が、わずかに抱いている希望。それが、そう遠くないうちに打ち砕かれることも知らずに。
残り66名 年俸総額134億8080万円
うわっ、書きあがったときのまんまだ。
投下用の改行入れ忘れてますorz お見苦しくて申し訳ない。
地図と保管庫さん、激しく乙です。お世話になります。
楽天組キター!!
26氏朝早くから乙です!
磯部ーいい人だ・゚・(ノд`)・゚・
改行とりあえず自分で入れておくので
修正等あったら訂正板の方におねがいします
すみません、重大なミスを発見しました。
「05年度の順位順に出発」なのに04年度の順位で考えてました。
実際のところ、今年の順位ってどうなんでしょうか?
04年の順位で自分も考えてました。ヤッテシマッタ
とりあえず今は
セ=1虎/2龍/3燕/4星/5兎/6鯉
パ=1鷹/2鴎/3獅/4檻/5熊/6鷲
ですが、ゲーム差が近いところもありますし、何とも言えない状態ですね。
その辺りについてはシーズンがすべて終了するまでぼやけた表現しか出来ないですかね?
職人さん方乙です
保守age
この年俸は04年度までの成績を反映したものだから、
04年度の順位で進めるのもアリかな、とも思うのですが…
(そうしたら鷲の扱いがややこしいが)
これについては、ぜひ2氏のご意見を伺いたいです。
>>77 お手数をおかけしました。ありがとうございます。
期待してます!ほすします!
>>81 自分の最初の設定のせいで書きにくくなってしまってすみません
退場の順番については時期が05年のオフであることとイーグルスが04年に存在しなかったので
05年の成績順にしたのですが、
順位がはっきりするまでは書きづらい部分が多いかなとい懸念は初めからありました
しかも日本シリーズで勝った方から、になってるので日本シリーズが終わるまで分かりませんし…
スレ立てるのを遅くするか、シンプルに年俸順にすれば良かったかなと(今更遅いですが)
04年の順位にして、イーグルスをパリーグ最下位にするのもアリだと思います
書き直すのは難しくないと思うので、皆さんのご意見を聞きたいです
今更設定を変更してもいいのかどうかという部分も含めてよろしくお願いします
>>82 ご指摘ありがとうございます。
>>84 設定が変わることによって書き直す必要性が出てきても
自分は一向に構いません。
まだ初期ですし、それにもう動き始めてしまったので
04年度の順位で進めた方が、すぐに続けられるし細かく書けていいかなと思います。
他の書き手様方のご意見もぜひ。
>>84 自分は04年順位のつもりで書いていたので
そちらの方がむしろありがたいです。
88 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/15(木) 23:29:10 ID:JgOd+Eol0
age
期待しつつ捕手
アラン・ホッシュ
05年の方が自然だと思うのだが。
ホッシュッシュ
93 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/18(日) 18:23:57 ID:O6R7aqpz0
。
お答えありがとうございます。
>>91 自分も05年の方が自然だとは思うのですが…
ただ日本シリーズの結果が出るのが10月末になりそうなので、
自分も含め、他の職人さんたちもそれまで書きづらいので申し訳ないなと…
04年に書き直して保管庫さんの方に修正を依頼することにします
96 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/20(火) 13:15:11 ID:DKxThtzB0
保守age
97 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/21(水) 10:00:31 ID:LHMVnXbq0
保守
98 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/09/22(木) 05:56:38 ID:71+2cI5a0
保守
『バッテリー』
(まいったねコリャ。)
下柳剛(T42)は、前方のスクリーンに映る地図を眺めながらそんなことを思った。
状況は飲み込めた。どうやら冗談ではないらしいことも。
だがだからと言ってどうすればいいのか、下柳はまだ見当がついていなかった。
生きるのか、死ぬのか。
果たして殺すという選択肢は自分にあるのか? それすらも分からない。
出来ることならば誰も殺したくはないし、殺されたくもない。
だがその要望はこの状況下では少々贅沢すぎる気がした。
固い人工芝の上にあぐらを掻き、肩を回した。また一人、ウグイス嬢の声に呼ば
れ立ち上がる選手がいた。
(どうする?)
己の行く道を決めかねる。
ホークスを出され、ファイターズを出され、流れに身を任せるようにしてこの
タイガースに落ち着いた。次に自分のみに押し寄せる波がこんな濁流だとは、
さすがに予想しきれなかった。
(さて……どう流されようか)
退場の順番が昨年の順位というのはこの場合有り難かった。おかげで、まだ考え
る時間がある。
名を呼ばれ、早々にグラウンドを後にする選手達。下柳はその一人一人の顔を
観察していた。みな一様に青ざめるか、憤激の色を浮かべるか――彼らのほとんどが、
まだ己の中で気持ちを整理仕切れていないように見えた。
(当たり前か……)
それは自分自身にも言えることだ。ちょっとやそっとでは動じない肝は据わって
いるつもりだが、それでもこの展開は俄には信じがたい。
後ろ毛の長い後頭部を掻きながら、下柳はすぐ目の前の背中を見やった。
見慣れたストライプのユニフォーム。
いや、彼の場合見慣れているのは背中ではなく正面か。その男は、常に自分と向
かい合ってきたのだから。
背番号39。
阪神に移籍してから3年間、下柳がバッテリーを組み続けてきた男――同級生の
矢野輝弘(T39)だった。
「矢野、やのちゃん」
原の惨劇があった後から、人形のように動かなくなった矢野に声をかける。
矢野は応えない。
グラウンドにいる時以外は、普段からぼーっとしていることも多い矢野だが、
それとはもちろん違う。矢野は顔を上げ、赤く塗られた現在地を睨み付けていた。
その背中は試合中にも似た、どこか緊迫した空気を背負っていた。
「おーい、矢野ちゃーん? 矢野プー? あきちゃーん?」
後ろから腕を伸ばし目の前で手をひらひらさせて、あらゆるあだ名で呼んでみる。
ピクリと、矢野が肩を揺らした。
「お、」
「シモ……」
起きてるか――? と下柳が茶々を入れる前に、矢野が静かな口調で呟いた。
視線は、変わらず孤島の地図へと向けられている。
「なぁ、俺たち全員生き残れると思うか?」
全員、というのは、この場合阪神の選手を指しているのだろう。
「無理だな」
無情だとは分かっていながらも、下柳はばっさりと切り捨てた。
「全部で8人。合わせていくらかは知らないが、十億は確実に越えてるだろ。人数
も多いし額もそこそこ高いから目立つ。ま、正直ヤバいだろうな、俺とお前も含めて」
追いつめるつもりはない。だが、もし彼が全員で力を合わせて生き残る、などと
いう甘い考えを持っているなら、目を覚まさせる必要があった。
ゲームが始まれば、全員が無事でいられるとは思えない。定員数オーバーの
大所帯で動くのは無謀だ。
(もしかしたら――この中でゲームに乗る人間も出てくるかもしれない)
最後の一言は、口には出さず飲み込んだ。
「そうやな、俺もそう思う」
あっさり望みを絶たれ、気を落とすかと思ったが、意外にも矢野はしっかりとした
声で応えた。振り返った矢野が、初めてこちらを見る。
その表情は、思っていたよりも落ち着いていた。それどころか、その眼は自分より
も冷静かもしれない、と下柳は思った。
「俺は誰も殺したくないし、誰も殺されて欲しくない」
そう言い切った矢野に、黙って頷く。それは、もちろん下柳も同じことだ。
(誰にも死んで欲しくない)
甘いと分かっている。だがそれが本心だ。こんな馬鹿馬鹿しいゲームで失えるほど、
チームメイトというのは軽々しい存在ではない。
「シモ」
このチームで、この名で呼ぶ人間は限られている。同い年の矢野と、金本知憲(T6)
の2人だけ。その金本は自分達よりずっと前方におり、ここからは背番号を確認出来
るだけだった。
最年長のこの3人で、ここまでチームを率いてきたという自負がある。だからこそ、
こんな形で崩されようとしている現実が、納得いかない。
「全員で生きて帰ろうや」
力強い、その言葉が鼓膜を震わした。
「方法は、必ずあるはずや」
それはつまり、このゲームをぶっ壊そうと――こいつは言っているのだ。
(まいったね、コリャ。)
もう一度、その言葉を繰り返す。
自分も冷静なつもりだったが、どう流されようか考えていた自分とは違い、この
男は流れに逆らうことを考えていたらしい。
下柳に訴えかけてくる矢野の顔は、一球の予断も許されない試合の、流れを読む時の
表情そのものだ。
この男に出会って――正確にはこの男と星野仙一に出会って――自分の人生が
変わった面がある。
「方法か……」
下柳は、その言葉を噛み締めて呟いた。方法? 何があるのだろう。おおよそ絶望的
なこの状況を打破出来る画期的な方法が?
面白い。かもしれない。
今更やり残したこともない。
恐らく、一人なら生きるも死ぬも選ばなかっただろう。
こんな意味の分からないゲームにかき回されることは、プライドが許さなかった
に違いない。
黙して次の言葉を待つ矢野に、下柳は大げさにため息をついた。
「仕方ないな」
バッテリーという言葉がある。
十数年この世界で生きているが、その言葉の意味を本当に理解し始めたのは
ここ最近だ。
「せっかくだから、最後まで付き合ってやるよ」
今まで支えてくれたこの男に、命を預けるのも悪くないかもしれない。
流れを堰き止める木の葉があってもいい。下柳はそう思った。
残り66名 年俸総額134億8080万円
GJ
新作来たー!!職人様GJです!
シモさんかっこいいよシモさん
矢野さんはゲーム潰しか・・・・
職人さん乙です(´∀`)
ゲーム潰しって萌える〜矢野さんとシモさんがんがれ
新作乙です!!
矢野とシモさんがんがれ・・・!
新作キタキタキタキターァ!!!
乙乙超乙
職人さんGJ
下さんも矢野もカッコヨス
今後の展開を考えると泣きそうだが頑張れ!!
その状況で矢野プーと呼べる下柳すげー。
いったんage
やっぱこういうのって実際のお互いの呼び名とか調べてるんだろか
だとしたら2氏は神
阪神の場合は、和田コーチのサイトに行けば
チーム内のだいたいのあだ名は分かるんじゃないかな?