10 名前:代打名無し 投稿日:04/02/21 02:58 ID:g+YEnir4
小学生時代、勤めから帰った親父がキリンラガービール片手に見るナイター中継を一緒に見た。
王選手以外名前は知らなかったけれど、そこに出てくる選手達は皆いかつい顔をしていた。
ビールの香りのように大人の世界を感じさせた。
20年経ち、俺は2児のパパとなった。学生時代野球部を経験し、プロ野球選手になることを夢見たけれど、
その夢も脆くも破れ、俺は普通のサラリーマン。
父がそうであったように帰宅後のナイター中継観戦は欠かせない。
画面のプロ野球選手は脚も長く、今風で格好いい。
NHKマンデーパリーグ中継で俺はある選手に目を留めた。
濃い髯の剃り跡、へんてこな構え。
「女子供なんて関係ねぇ。」というオーラを醸し出しているダイエーの選手。
その男、大道典嘉。
俺はその選手を見て一目で好きになった。
男なら大道。
13 名前:代打名無し 投稿日:04/02/22 02:44 ID:vM7C1Z7V
俺は日本中の誰もが知っている電器メーカーの工場がある街の借家で生まれた。
俺の父はその借家の中でも少し変わり者で通っているようだった。
小さい時の俺はそうは思わなかったが、俺の友達と時々する喧嘩の時に必ず
父の事を持ち出して攻撃しいていたので、俺の父は変わり者だったかも知れない。
特別趣味の無い父は家では寝転がってテレビばかり見ていた。
何故かダイエーの「大道」という選手が特に好きなようで、
彼がの打順になると横になっていた身体を起こすのであった。
家族にも無愛想な父だったが、母は父と喧嘩もしたことも無いし、悪口を言った事もない。
母は父のことについて、
「貴方のお父さんは無愛想だけど、昔は男前で女の子に持てたのよ。」と時々言っていた。
今年高校受験の俺は父の良さも父が好きな大道の良さもわからない。
15 名前:代打名無し 投稿日:04/02/23 01:59 ID:PBWdeq1i
私は三重の海岸沿いの街に生まれた。
自分で言うのもなんだが小さい時からかわいくて、頭も良かったから
学生時代はモテたし、友達も多くて人気があった。
私は皆に良く思われたくてにこにこしているような女の子だった。
大学は東京の一流校に入学し、上京した。
私の同級生のほとんどは地元の短大に入学し、少し頭のいい子は名古屋の大学に行った。
私程の学力を持つ子は地元では居なかった。
私は上京すれば、頭が良くて、かわいいことが東京でもっと生かされると思っていた。
こんな片田舎の男達では無く、東京の格好いい男にちやほやされて、
そのことを地元の女友達にさりげなく自慢してやろうと思っていた。
8年後私は地元に帰ってきた。
東京で生活するのに疲れて帰ってきたのだ。
学生時代は楽しかったが、背伸びを常に強いられているようだった。
東京には私と同じ位かそれ以上に頭のいい子はたくさんいて、かわいい子も大勢いた。
私は負けるわけにはいけないと虚勢を張りながら大学生活はやり過ごした。
格好いい男の友達もたくさん出来、夏休みに帰省した際はそれをさりげなく自慢した。
しかし、社会人になって私は立て続けに男に騙された。
一人は同期の男で、一人は妻子持ちの先輩に。
私は、ただの女性としてしか見られていないことに20代半ばにして気付いた。
地元の同級生の殆どが結婚していた。子供も居る子もいたし、同級生同士で結婚している子もいた。
「家事手伝い」の私に地元の人が投げかける視線は冷たいようにも見えるし、
昔の私のままで声をかけてくれる人たちもいる。
私は少し老けた父の晩酌に付き合ってナイター中継を見た。
ある時私の視線はある選手にいった。
不恰好な構えに今なら流行らない濃い顔。
若くてスマートな選手が多いダイエーの選手の中にあって
一人浮いている中年男。
しかし、その選手は2塁1塁のチャンスに西武松阪の球に必死に喰らいついている。
バットを短くもってチームのために粘っている。
その男、大道典嘉。
男なら、大道。
20 名前:代打名無し メェル:sage 投稿日:04/02/24 02:33 ID:ACci+qcR
俺はあせっていた。
明日手形の引き落とし期日にも関わらず、金の工面が全く出来てなかった。
万事窮す。
必死に働き上り詰めて来た人生もここでお終いになるのか…。
俺は必死に働いてきた。同年代奴らの倍は働いたと思っている。
そうしなければ生きていけなかったのだ。
実家は自営業でそこそこの生活をしていた。
俺が高三の秋、家業の倒産によって故郷を追われ、
当然するのものだと思っていた大学進学を諦め、働くことになった。
俺は必死に働いた。家族の為だけではない。
急に手のひらを返すように冷たくなった周りの大人たちや、
俺より成績が悪かったのに大学に進学し、ちゃらちゃらしている友人達を見返すために。
時代は「バブル」と後に言われる時期だった。
俺は時代に背を向けて必死に働いた。
真っ当といえない仕事もしたこともある。
金こそが正義だと真面目に思い込んでいた。
90年代初め、株のカラ売りで種銭を得、こつこつ貯めたお金が数千万になった。
多くの人は株を買いつづけた為に多くのものを失った。
欲をかくからだ。ざまみろ、と俺は思った。
俺はその金で会社を興し、商売を始めた。
商売は低迷する時代の逆を行くように右肩上がりの成長を続けた。
俺は勝った、と思った。真実を見据え続けたから成功者になり得たと思った。
しかし俺は「ババ」を掴んだ。
友人の保証人になり、その友人がビジネスが上手くいかずにケツをまくったのだ。
俺のオヤジが会社を潰したのと同じ原因だった。
俺は笑うしかなかった。
因果応報なのか?俺が何をした?
俺を馬鹿にした奴らを馬鹿にしたからか?
一人きりの事務所で俺は想いをめぐらせていた。
「このバッターは88年入団のベテラン選手。今はバットを短く持っていますが
入団当初は巧打の長距離バッターとして期待されていました。
いかつい風貌ですが若い頃は顔立ちの整ったいい男だったんですよ。」
「今の彼の姿からは想像出来ませんねぇ・・・」
つけっ放しだったテレビからアナウンサーと元プロ野球選手の解説者による
コミカルな実況が聞こえてきた。
俺は画面に目をやった。
その男は69年生まれで俺と同い年であることがその実況からわかった。
三重の高校をでて16年目のシーズンだという。
俺と同い年なのか・・・
こいつはどんな人生をこれまで送ってきたのだろう・・・。
その男、大道典嘉。
男なら大道。
26 名前:代打名無し 投稿日:04/02/27 19:28 ID:/SQ07+9w
ぼくは少し太っちょだ。
じぶんではそんなふうに思ってないけれど、みんなが
「デブ」とか「ぶた」とか言う。
ぼくはそれが少しいやです。
ぼくは町内のやきゅうチームにはいっています。
ポジションはキャッチャーです。打じゅんも9ばんです。
かんとくはぼくが太っちょだからといって、キャッチャーをさせました。
打じゅんもデブだからといって9ばんにします。
たまにほ欠になることもあります。
山田くんや田中くんより打つのがうまいのに9ばんなのは、少しいやです。
ぼくは松さかせん手がすきです。
しょうらい松さかせん手のようなプロやきゅうせん手になりたいです。
ぼくはある日テレビのやきゅう中けいをみました。
ライオンズたいダイエーのしあいでした。
ダイエーのベンチを見ていたら、うしろの方で「パン」をたべているせん手がいました。
ぼくは少しびっくりしました。
おじさんみたいなそのせん手は「大道」というせん手でした。
ダイエーのこうげきになり大道せん手の打じゅんになりました。
大道せん手は少し太っちょでした。
バットを短くもって松さかせん手の投げるボールをねばっていました。
まるでぼくたちがかんとくにいわれるように短くばっとをもって、
ミートしようとしていました。
8きゅう目に大道せん手は2るい打を打ちました。
2るいベースでハアハアといきを切らせながらガッツポーズをする大道せん手はカッコよかったです。
ぼくも大道せん手のようにまわりを気にしないでやきゅうのきほんをまもれるせん手になりたいです。
あれから僕は毎日すぶりをするようになりました。
大道せん手のようにバットを短くもって、一日100回すぶりします。
まえよりヒットを打てるようになり、今では6ばんを打っています。
体じゅうも5キロやせました。
やせたらなぜだか、かたまでよくなりました。
この前のし合いでとうるいを2回アウトにしました。
プロ野きゅうがはじまりました。
大道せん手がでていないのはさびしいですが、
ぼくは大道せん手をおうえんします。
がんばれ!大道!
男なら大道!
60 名前:34歳・主婦 投稿日:04/04/01 01:53 ID:UTZkZPoW
宗タン、和田サン、私はイケメンが多いダイエーが好き。
野球はそんなに知っている訳ではないけれどダイエーのテレビは必ず見て応援する。
そんな時はダンナの前でも平気で「宗ターン!!」と声を張り上げて応援するの。
本当は私を構ってくれないダンナへのあてつけなんだけど。
私のダンナは結婚14年目。今は家であまり会話がない。
私とは生活に必要な最小限の言葉しかまじわせない。
今は家でごろごろするだけのダンナだ。
私たちは高校のサッカー部のキャプテンとマネージャーという間柄だった。
ダンナはかっこよくて、プレイもスタイルもスマートだった。
時の経つということはこういうことかと思うぐらいダンナは変わった。
ある試合で鳥越クンの代打で背番号55の選手がでた。
ダイエーファンだけど、正直カッコいい選手の名前しか知らないにわかファンなので
私は彼の名前を知らなかった。
彼は無骨で、昭和の香りがした。
打席で不敵な顔をしてガムをくちゃくちゃさせた彼ははっきりいって不快だったけれど、
彼は短くもったバットから鋭い当たりの2塁打を打った。
2塁上でふてぶてしい顔をしながらベンチを見た彼の顔が少しうれしそうだった。
その顔はどこかで見たことがある・・・・。
そう、私のダンナの顔。つっぱってカッコつけながらもはにかみ屋の私のダンナ。
私はそんなダンナが好きで結婚したんだっけ。
55番の選手をはじめて(注目して)見たそのゲームの晩、私はその選手の名前をネットで調べた。
その男、大道。
男なら大道。