1 :
代打名無し@実況は実況板で:
テンプレもってないけど立ててみました。
あとよろしくお願いします。。
2 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/03(金) 12:40:26 ID:X4O6gtEh0
とっくの昔に旬をすぎてる。
3 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/03(金) 12:49:57 ID:4rX96eUfO
オールスターの奴が面白かったが、英智祭りで消えてしまった。
4 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/03(金) 13:23:19 ID:o0C2QHsF0
オールスターは職人さんが足りなくて落ちてしまったような。
>>1 普通はテンプレ探して来てから立てるもんでしょ。
無責任だぞー……と言いつつ保守してみる。
でも、書いてくれる職人さんいるの?
以前も全然書いてくれる人いなくて
すぐ落ちちゃったよね
7 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/03(金) 16:08:41 ID:o6/5g1u60
以前は確か、「プロローグだけ書かせてくれ」って職人さんがいて、その人待ってるうちに落ちちゃったような。
9 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/03(金) 17:57:57 ID:Hw+nZyDy0
保守っとく
代表選手
1 福留孝介(中)
2 小笠原道大(日)
5 中村紀洋(近)
6 宮本慎也(ヤ)
8 金子誠(日)
9 城島健司(ダ)
10 谷佳知(オ)
11 清水直行(ロ)
13 岩瀬仁紀(中)
15 黒田博樹(広)
16 安藤優也(阪)
17 三浦大輔(横)
18 松坂大輔(西)
19 上原浩治(巨)
20 岩隈久志(近)
21 和田毅(ダ)
23 村松有人(オ)
24 高橋由伸(巨)
25 藤本敦士(阪)
27 木村拓也(広)
30 小林雅英(ロ)
55 和田一浩(西)
59 相川亮二(横)
61 石井弘寿(ヤ)
元スレから転載
110 名前:90 ◆blL/.FOGqo [sage] 投稿日:04/12/09 13:46:26 ID:0HKmemn4
00 狂いだす歯車
For the Flag―
2004年アテネ五輪。1984年ロサンゼルス五輪から公式種目となった野球。
国民的な人気を誇る日本のプロ野球は、アメリカ・メジャーリーグにこそ劣るものの、
その実力は世界において高いレベルを保持していた。
しかし毎回プロとアマチュアを交えての国際試合は、厚い世界の壁に阻まれ
後一歩のところでいつも優勝を逃していた。
選出メンバーすべてをプロで固めた6回目の五輪。惜しくも優勝は逃したが、
それでも3位という好成績に留まり、彼らは24個のメダルを手にした。
アマチュアのためのものといわれる五輪においてプロ選手のみを用いた采配。
メディアは当然金メダルを取るものと食っていた。国民の期待も当然大きかった。
代償は、最悪の形となって払われることとなる。
「どういうことだね、中畑くん」
中畑清―志半ばにして病に倒れた長嶋茂雄監督に代わり全日本の采配を行った男は、暗がりの中、
数人の老人に向かい合う形で椅子に座っていた。
「だから私はオリンピックなど嫌いなんだ。あんなアマチュアの祭りに金を使う理由が全く分からん」
「…申し訳ありません。私の力が及ばないばかりに」
厚い眼鏡をかけた老人に中畑は頭を下げた。
「期待はしていなかったが…まさかあそこまで酷いものとは、落ちたものだな」
「あれでは選手たちの大事なペナントの後半戦への影響が多すぎる。だから私は忠告していたのに」
老人たちから非難の声が飛ぶ。その中心に座る男は不服そうに葉巻を加えていたが、
「まぁいい。これで国民のプロ野球への関心も時期に廃れよう」
ふぅ、と満足そうに煙を吐く。
「国のために闘った戦士たちを、金の名において排除する。実に面白い制度ではないか。その―BRとやらは」
元スレから転載
111 名前:90 ◆blL/.FOGqo [sage] 投稿日:04/12/09 13:47:01 ID:0HKmemn4
高価そうな牛側張りの椅子に腰を落とした渡辺恒雄前読売巨人軍オーナーは、気だるそうな瞳を細めて笑う。
「代表メンバーはチームの主力…当然年棒のいい連中ばかりだ。邪魔者を始末してしまえば
各球団の経営は格段に良くなる。責任をとらせる意味でも、一石二鳥だ」
「か、考え直してください。それでは国を代表して戦った選手たちに対しあまりにも」
「口答えできる立場かね」
即座に切り返され、次に出すはずの言葉を失う。
「まぁそう言うな。彼にはしてもらう仕事が山のようにある。別に断ってもかまわんが、その時は文字通り君の首が飛ぶことになるがな」
苦虫を噛み潰したような中畑の顔に、脂汗が浮かぶ。
「ふん、所詮君に選択肢はあるまい…。これより計画を実行に移そうと思う、異議はないな」
「異議ありません」
「こちらも、異議ありません」
一人蚊帳の外に放り出された中畑を尻目に、老人は書類をまとめ話を進めていく。
「マスコミに圧力をかけろ。テレビ局、新聞、インターネット、他すべての情報媒体、各メディアに報道管制を敷け。
我々の動きを読まれるな」
「これでプロ野球の未来も明るくなるというものだな。ははははは」
中畑を嘲るように老人は下卑た笑い声を上げる。中畑は歯を食いしばり、膝に置いた両腕を強く握り締めた。
「(皆…すまない。どうか、私を…私を許してくれ)」
前スレから転載
62 名前:幕間・1 メェル:sage 投稿日:05/02/05 23:53:32 ID:tCWSwWKa0
ホシュ…ばかりでも何なので。
職人さん降臨までの場つなぎに。
=====
「オリンピック…か」
試合を終え帰宅した井端弘和【D6】は、煙草の煙とともに言葉を吐き出した。
自宅のリビングには大きなテレビが置かれ、その中では日の丸を背負った選手たちが赤茶けたグラウンドに立っている。
オールプロで望んだ予選、そして本選。
だが、それがどれだけのプレッシャーを選手たちに与えているのか。
そのことを、井端は嫌と言う程味わった。あの、札幌での予選で。
きっと遙か異国の地で闘っている彼らにも、目に見えない重圧は重く重くのし掛かっていることだろう。
「勝って当たり前」だなどとマスコミは煽り立てる。勝負事に「絶対」など有り得ないと、誰もが知っているはずなのに。
試合の合間に掛かってくるチームメイトからの電話の端々に、重圧への疲弊が表れている。
慣れない環境で、慣れないチームメイトで、過大な期待で、辛いのだろうと思う。
だが、同時に思う。
本来なら、自分もあの場所にいたのに、と。
あの予選を戦い抜いたのは自分だ。
確かにたった3試合ではあったが、それでもアテネへの切符を手にした時、自分はあのユニフォームを着ていたのだ。
ならば、決戦の地へいて当たり前ではないのか?と。
漠然とした夢だった。
けれど、それは確かに夢だった。
まだプロ野球選手になるとは思っていなかった学生時代。社会人へ進んで、オリンピックへ行こうと思った。それが最高到達点だと思った。
だが、プロへ進んだことで、その憧れは現実になり得ないことだと諦めた。
自分の高みはプロの世界にあるのだと、そう思った。
前スレから転載
63 名前:幕間・2 メェル:sage 投稿日:05/02/05 23:55:46 ID:tCWSwWKa0
けれど、思いもかけぬプロアマの歩み寄り。歴史的な雪解け。
プロであっても、国際大会に出場出来るようになった。日の丸をつけたユニフォームを着るようになった。
その雪解けの日から、その最初の大会からここまで、ずっと代表にいたのは自分なのだ。
社会人の選手たちとも一緒に、マスコミに注目されることも少なく、ファンの関心も低かった時から、闘ってきたのは自分なのだ。
それが、「1球団2名まで」という下らない枠に阻まれ、最後の舞台には辿り着けなかった。
行きたいとゴネてどうなるものでもないから、黙っていた。
福留と岩瀬なら、自分よりもチームの力になるのは分かっているから、笑顔で彼らを送り出した。
だが、どうしたって心の奥で燻るものがあるだろう?
逃げ出したくなるほどの緊張と重圧に、それでももう一度身を晒してみたいと思うのは、勝負師としての性だろう?
そうだろう?
「…それより、ペナントレース、ペナントレース」
身体の内側で熱く滾るものを抑え、井端は自分に言い聞かせるように呟く。
幸い、チームは春先の不調を乗り越えて首位を毒そうしている。
この8月さえ乗り切れば、目の前に優勝の文字が見えてくるはずだ。
手に入れることが出来なかったものを羨んでいる暇などない。
99年の時には味わうことの出来なかった、「自分の手で掴み取る優勝」を確かなものとする為に、明日も日本で野球をする。
ただ、それだけだ。
だが、それが大事だ。
予選に出場しながらもアテネへ行けなかった井端が幸運なのだと、この時には知るよしもなかった。
狂気のゲームが開催されるのは、まだ少し後のことであった。
ホシュついでに
もしよかったら書いてみたい気がする
けど、選手全員の性格知らないし
リレーになった場合、自分で止めてしまう可能性があるし
どうするべきか思索中
1ですがほんとにテンプレもなく立てちゃってごめんなさい(´Д⊂グスン
バトロワを見守るスレで、みんながスレ立てられなかったみたいだったので。。
リレーだったら私でも書けそうな気もするけど、ほかの職人さんを待ちます。。
「闇の鳴動」
それは、闇。
光があれば、そこには闇がある。必ず、ある。
それがこの世の理。
2004年8月、アテネの地で日本代表は最も価値のない銅メダルを手にした。
初めてオールプロで闘った五輪。それは、最も過酷な五輪だった。
誰もが「必ず金メダルを獲る」と信じて疑わなかった。
だが、結果は格下とも思われる相手に負け、無惨にも3位。
予選であれほどの盛り上がりを見せた国民も、失望の溜息ともに野球そのものへの興味を失ってしまったようだ。
「だから奴らには無理だと言ったでしょう」
その暗闇の中、小柄な老人は長めの白髪を揺らしながら、嘲笑うように言う。
手元には切り子のグラスに、透明な酒が揺らめいている。
「だから金を遣うのは厭だったんですよ」
その老人の向かいに座る、もう一人の老人。眼鏡の奥でぎらりと瞳が光る。
それは獲物を狙う爬虫類のようでもあった。
「仕方ありませんね。成績が悪ければお仕置きがあるものです」
「無駄にした金も取り返せる、とびっきりのお仕置きですな」
どちらもの唇が釣り上がる。
その歪みは酷く醜悪なものであることに、二人は気付かない。
ただ闇の中で、低く笑いが零れるのみ。
「さあ、誰が生き残るのか。誰も生き残れないのか。
ゲームを愉しもうじゃありませんか」
「では、もう一度乾杯といきますかな」
繊細な音を立てて、二人の手元にあるグラスが合わせられた。
野球界に巣くう、二人の怪物の手で打ち鳴らされたその乾杯の音は、同時に、凄惨なゲームの幕開けでもあった。
そして、日本球界最大の闇が始まる。
せっかく全球団なんだから、リレーがいいかなーと
勝手に書き始めちゃったんですけど。
このまま廃れさせても何なので。
職人様乙ですw
ありがとー
リレーの件ですが、
私は千葉ロッテと横浜の選手くらいしか知らないのですが、自分も書いていいですかね・・?
職人の方々乙です
知ってる選手だけでもいいから
どんどん書いて行って欲しいっす
期待してます
「ついてない男」
日常生活でも、ままあること。野球ならば、よくあること。
この稼業、どうしたって怪我は付き物。それすら仕事の内。
けれど。
福留孝介【D1】は自らの左手を見つめた。
大仰なほど強固に固められたギプス。だが、この焦燥と悔しさは、どんなに頑強なギプスであっても抑えることは出来ない。
新監督になって、四番に据えられた。意識をしないでも、その重圧は彼を押し潰した。否、意識をしないつもりが、余計な呪縛となって彼の手足を縛り付けた。
不調のどん底で、さんざん野次も浴びた。己も責めた。決して責を問うてこないチームメイトが、余計に辛かった。
そんな中で、オリンピックの為にチームを離れた。
首位に立ったチームは、まるで福留がいなくなった途端に軋みなく回りだした歯車のように、独走態勢に入った。
アテネから毎日チームの様子を国際電話で聞いた。同僚の岩瀬と二人、「自分たちがいない方が調子いいんじゃないか」と笑ったりもした。
だが、本当は笑っている余裕などなかった。
本当に自分が「要らない」ものであるような気がしたから。
チームが首位を走っているのは嬉しい。
だが、自分がいなくても全く差し障りがないのは、辛い。
悔しさに歯軋りをしたのは、決して一度や二度のことではない。
それでも、かつては慣れ親しんだこともある日の丸のユニフォームを着て闘ううちに、本来の調子を取り戻しつつあった。
長くも苦しいオリンピックを戦い抜いて帰国すれば、そこには優勝まであと僅かなチーム。
さあ、やっと、本領発揮。
そう思った矢先。
誰が悪いわけでもない。誰を恨むことも出来ない事だった。野球選手なら、誰でも覚悟は出来ているはずのこと。
それはきっと、悪魔的な出来事でしかなかったんだろう。
本来の調子を取り戻したその途端に、福留のシーズンは終わってしまった。たった一つの白いボールが、彼の指を砕いてしまったのだから。
チームがリーグ優勝を決めても、日本シリーズであと1勝を逃して50年振りの日本一を逃してしまっても、それはもう、福留にとっては他人事にしかならなかった。
傷んだ指を抱え、彼はもうその場所にはいられなかった。
「…俺、そんなに行い悪いんかな…」
まるで何かに呪われてるのかと言いたくなるような一年だった。
何もかも、上手くいかないまま終わってしまった一年だったのだ。
アテネで金メダルを逃したのさえ、自分の不運にチームを巻き込んでしまったかのような気がする。
何処までも後ろ向きな考えになりそうになって、慌てて首を振る。
いつまでも過ぎたことを悔いても仕方がない。終わってしまったのなら、また次のシーズンへ向けて動き始めなければならない。誰よりも早くに2004年のシーズンが終わったのだとしたら、また誰よりも早く2005年のシーズンを始められるのだから。
せめて下半身だけでも鍛えようとランニングに出掛けようと立ち上がる。
その時、郵便受けに封書が届いていることに気が付いた。
オートロックのマンション、本来ならエントランスにある郵便受けにしか郵便物は届かない。ここまでやって来れるのは、よほどのことがない限りないはず。
不審に思いながらリターンアドレスのない封書を開けると、そこにはよく知った名前が印字されていた。
「2004年五輪会のご案内…?」
五輪会、それは毎年オリンピック代表経験者が集まって行われるレセプション。
19歳で初めてオリンピックに出場した福留にとって、知らないものではない。
そしてそこに記されたよく知った名前が、彼の思考から不信感を奪い去ってしまった。
それが、地獄への招待状だとも知らずに。
ドラゴンズと多少のアマチュアくらいしかわからんのですが
書いてみました。
他の職人さんщ(゚Д゚щ) カモオオオン
職人さん来てる!乙です!
職人さん乙です
福留……不憫だ……
保守る
「重圧からの解放」
その頃アテネでキャプテンを務めていた6番宮本慎也は自宅で愛娘と
一緒に遊んでいた。
アテネ五輪代表に選ばれた時は、子供とも遊ぶ暇がなかった。
宮本が主将に抜擢された時は睡眠剤を飲まないと眠れないほどだった。
しかし宮本の頭からは不甲斐ない結果に終わってしまった事がいまだに頭を過る。
その時だ「あなた、あなた宛に郵便が届いてるわよ。」と妻の知美が言った。
「ありがとう。誰からやろ?」と言いながら宮本は封を開けた。
「2004年五輪会のご案内?何やこれ?」と宮本は言った。
その時電話が鳴った。
24番高橋由伸からだった。
「宮本さんこんにちは。また飯食いに行きません?」
と高橋由伸が言った。
宮本はチームが違うとはいえ高橋由伸とは、普段から仲がいい。
「なぁ由伸ちょっと聞きたい事があんねんけど」
と宮本が言った。
電話の向こうの高橋が「どうしたんですか?」と言った。
「由伸のとこにも2004年五輪会のご案内ゆう手紙きたか?」
と宮本は尋ねた。
「はい。届きましたよ、何なんでしょうねあの手紙?きっと打ち上げか何かの
案内なんじゃないんですか?長嶋監督もこられるとか?」
と由伸が答えた。
しかしこの二人にとってこの通知がこれから始まろうとしている地獄への招待状だという事は
この時の二人には知る由もなかった・・・。
「マリンスタジアム」−1/2−
11番清水直行は、千葉マリンスタジアムのブルペンにいた。
チームは3位と4位の間を行ったりきたりしている。
今年からパリーグで導入されたプレーオフのため、この時期だとあるはずの、いわゆる『消化試合』がほとんどない。
その中で中五日ローテーションを組むといわれた清水は、横目で今日の試合の行方を追いながらもくもくと投げている。
「ナオ、ちょっといいか?」
不意に声をかけられ、清水は投球モーションを中止し振り返った。声の主は、30番小林雅英だった。
「…なんですか?」
モニターには、今季で消滅が決まっている近鉄バッファローズの磯部が打席に立っている姿が映っている。
「…五輪会って知ってるか?」
「ああ、ウチにも来ましたよ。その案内。」
清水はブルペンにあるベンチに汗をふきつつ座った。スポーツドリンクを一口含み、息をつく。
「正直いうと、行くのどうしようかと思ってる。」
隣に座った小林の言葉に、清水の脳裏にアテネでの情景がはっきりと思い出された。
「マリンスタジアム」−2/2−
ぎらぎら照りつける明るい太陽。
固く乾いた土と、風が吹くと舞う土ぼこり。
内野に設置されたスタンドで飛びかうどこかの国の言葉。
相手はみな、日本語を話さない外国人ばかり。
事前に手に入れていた情報と明らかに違う相手チーム。
オレはそこのマウンドにたち、背に日の丸を負って、一敗も許されないような異様な雰囲気の中で投げていた。
「オレ、…打たれたんスよねぇ。」
清水はため息混じりに言った。「でも、アテネには行ってよかったと思ってますよ。」
「あんな経験、めったにできないしな。」
小林はモニターを見上げた。
モニターの中では、小林宏之が奮闘しているさまが映っている。
点差もあるし、今日は勝ちゲームだろう。
「まあ、せっかくまた勝ち負け関係なくあのメンバーと会えるし、行ってもいいんじゃないですか」
「そうだな」
清水の言葉に、小林はうなずく。「しかし、その…なんだ。『消化試合がない』というのも、結構大変だな」
「正直日本ハム、ぜんぜん負けませんね」
二人のエースは、現実に目の前にあって、手を伸ばせば届くかもしれないプレーオフ出場権を思い、ため息をついた。
とりあえず千葉ロッテマリーンズのプロローグ編です。
なんか一度にコピペしたら『行大杉』だそうなので、2回にわけました。
ほかにも職人様くるんですかねー?
職人さんキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
36 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/04(土) 13:55:49 ID:FgpZylec0
職人さん方、乙です!
保守支援。職人様方GJ!
「ささやかな打ち上げ」
その頃6番宮本慎也と24番高橋由伸は、とある場所でささやかな打ち上げを兼ねた
食事をしていた。
由伸が「少し遅くなりましたがお疲れ様でした。」と言った。
宮本も「お疲れ様でした。」と言いお互い
グラスをぶつけ合わせた。
二人は束の間の打ち上げも兼ねた食事を楽しんでいた。
しかし宮本は例の招待状の事が脳裏に焼きついて離れなかった。
「なぁ、由伸アテネ五輪会の事やけど」と宮本から話を切り出した。
食事をしていた由伸が「あぁこれですね。」
と言い招待状をバッグから取り出した。
「お前この会参加するか?」と宮本が聞いた。
すると由伸は、「僕はなぁ結果はともあれ仮に長嶋さんが来られた事を
想定すると立場上でないわけにはいきませんからねぇ。」
と言った。
「そうやなぁ・・・。」と宮本は俯いた。
宮本は、やはりアテネの事が脳裏に焼きつく。
あれだけ金メダルを宣言しておきながら不甲斐ない結果に終わって
どれだけ叩かれた事か―。
少し忘れかけてた事が再び思い起こされそうで葛藤していた。
その時由伸が「何だこれ?」と封筒の中からもう一枚
入っていた用紙を取り出した。
その用紙には、次の文が書いてあった。
[このアテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が
該当となり強制参加になります。
尚、欠席者には重大な罰則が科せられます。]
と・・・。
千葉ロッテのプロローグを書いた者ですが。。
みなさん、何月何日ぐらいを想定してますか?
私はよくわかんなかったんで、とりあえず9月14日の対近鉄戦を元に書いてます。。
もしかしてシーズン後だったらどうしよう、とか。。
40 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/04(土) 21:20:06 ID:xk6uFAsOO
落ちそうだからage
>39
自分は書いてないが五輪終わった直後かと思ってた。でもあんまり気にしなくていいんじゃ?
>>39 ドメの話に日本シリーズで日本一を逃してしまったいう部分があるからシーズン後じゃないかな?と思いますが、
時期とバトロワの開催場所ははじめに決めておいた方が職人さんによってずれが生じなくていいかも。
42 :
39:2005/06/04(土) 23:47:55 ID:9Ne+QRyZ0
>>40 >>41 ありがとですー。
というか、ドメの話よく読んでなかったのか自分orz
空気読めなくてすまん。。。
書き直そうかな〜。。
43 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 00:15:32 ID:719vuqY/O
>38は正直ヘタレ。
44 :
39:2005/06/05(日) 00:18:06 ID:KBkyZmn20
「電話連絡」−1/2−
「どうした、相川?」
17番三浦大輔の携帯にかかってきた電話の声は、バッテリーを組んでいる59番相川亮二のものだった。
『あの、そっちにも、変な手紙来ませんでした?』
「やぶからぼうになんだよ? その変な手紙ってのはどういうことだ?」
言いながら、三浦はテーブルの上に置かれた白い封筒を手に取る。「あ、もしかしてコレのことか?」
その封筒は、まだ封も開けずに放り出してあった。
『それ、あけちゃだめですよ!!』
「は? 中味には何書いてあるんだよ?」
『・・・五輪会のおしらせ、っていう手紙が入ってます』
「五輪会って・・・アテネのか」
三浦は、アテネオリンピックに行ったときのことを思い出した。
金メダル確実、という周囲の声で必死に野球をやって、ふがいない成績で帰ってきてみたらまさにチームも火の車で。。
今から考えると、よくあのチーム状態でアテネなんか行ったなと思う。
『そうなんですよ! でも、それが、ですね』
そこで、三十秒ほど間が空いた。
45 :
39:2005/06/05(日) 00:20:21 ID:KBkyZmn20
「電話連絡」−2/2−
「・・・おーい?」
『あ、すみません。ちょっと水飲んでました』
三浦の呼びかけに、相川は悪びれずに言う。『それで、、、ええと、どこまで話しましたっけ』
「五輪会、っていう会のお知らせだ、ってとこまでな」
『ああ、そうでした! それでですね、その内容がちょっと、変なんですよ』
「何が、変なんだ?」
『五輪会のお知らせ、という手紙と、別紙で変な追伸文がついてます』
「変な追伸文ねぇ・・・」
『ええと、『アテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が該当となり強制参加となります。』
って書いてあります』
「なんだ、強制参加じゃないか」
三浦が呆れて言うと、相川はそれをさえぎるように言った。
『変ですよ? だって、普通五輪会って他のスポーツチームと合同でやるもんでしょ? なんでウチだけ単独な
んですか?』
「まあ、そうかもしれんが・・・」
『とにかく! 三浦さんはその封筒は開けちゃだめです! 絶対ですよ??』
電話は唐突に切れた。
三浦は携帯をテーブルに放り、自分もソファに体を沈めた。
「・・・なんだそりゃ」
三浦はひとりごちた。「訳分からん」
テーブルの上には、携帯と封を開けてない白い封筒が放置されている。
46 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 00:24:20 ID:9sNRUDNs0
31=38だと思うんだが。
書いた後自分で見直したりしないんだろうか。
台詞と地の文がくっついてて読みづらい。
それ以前に由伸の台詞おかしいだろ?
ドメ編書いた者だが、勝手にシーズン後にしてた。
アテネ直後に書き直した方がいいかな。
先走りスマソ
48 :
38:2005/06/05(日) 00:41:04 ID:kqJMNPDg0
>>46ご指摘ありがとうございました。
そうです。
別に悪気があったわけではないんですが・・・。
一応読み直してはいたつもりなんですが
後は他の職人さんにおまかせします。
すいませんでした。
49 :
39:2005/06/05(日) 00:49:20 ID:KBkyZmn20
とりあえずついでに横浜ベイスターズのプロローグあげときました。
アテネネタには千葉ロッテならファンブックがあるから困らないんですが、横浜難しい。。orz
時間軸はとりあえずシーズン終盤からシーズン終わったくらい、というところでいいんじゃないですかね?
んで、選手が集まる日は日本シリーズ後某日ということで。
※東京フレンドパークに出てたよねぇ?確か。。
51 :
38:2005/06/05(日) 00:54:37 ID:kqJMNPDg0
>>それ以前に由伸の台詞おかしいだろ?
厳しいご指摘ありがとうございます。
次回の参考にさせていただきたいので
どこがおかしいかご指摘くださればありがたい
のですが・・・
52 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 01:15:00 ID:719vuqY/O
>38の文章をまず勝手ながら指摘させてもらうと動詞が単調すぎ。「〜た。」を繰り返しすぎるのは面白みを半減させる。
あと「 」はなるべく改行してほしい。
偉そうにスマソ…。
53 :
38:2005/06/05(日) 01:25:58 ID:kqJMNPDg0
>>52読み返しましたらご尤もでした。
ご指摘のとおりでした。
今後気をつけます。
多少言い訳になりますがストーリーは、他チームですが
宮本と高橋由伸は、普段から仲がいいと聞いたもので
ストーリーの展開として使わせていただきました。
>>38 どこがおかしいかというより、文章の基本の問題。
「僕はなぁ結果はともあれ仮に長嶋さんが来られた事を
想定すると立場上でないわけにはいきませんからねぇ。」
これじゃ由伸がアホの子みたいだ。
「僕はなぁ」はないと思うよ、年上の人に対して。
あと、台詞はどうしてもたるみやすいから、句読点を使った方がいい。
使いすぎも問題だけど。
「僕は結果はともあれ、仮に長嶋さんが来られたことを想定すると、
立場上出ないわけにはいきませんからねぇ。」
↑これくらいで丁度いいんではないかと。
選手は20代〜30代のれっきとした大人だということを頭において台詞を
作った方がいいと思う。
指摘するのも正直心苦しいよ。ラノベじゃない小説読んだことあるか、と聞きたいし。
句読点、誤字・脱字、言い回しその他諸々、文章の基本をまず勉強してくれ。
55 :
38:2005/06/05(日) 01:45:46 ID:kqJMNPDg0
>>54ご尤もです。
厳しいご指摘ありがとうございました。
気を付けます。
56 :
39:2005/06/05(日) 01:48:25 ID:KBkyZmn20
いまさら「電話連絡」でかぎかっこの一番最後に「。」つけるの忘れてることに気づいたorz
ちょっと逝って来るわ。
>>38 がんがれ!
あの二人は私も好きなので、また書いて欲しいです。
58 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 02:29:11 ID:xWluBim50
もうすぐ60
59 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 03:57:00 ID:7UaoRzgk0
ていうか、なんでオリンピックは一チーム二人だったんだよ。
実力でえらべっての。
60 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 05:35:55 ID:G2y/2hElO
61 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 10:26:04 ID:+DM3tXtV0
期待age
62 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 11:04:38 ID:4ahlrHWZ0
>>59 1チーム2人の縛りがなければ、ホークスから和田城島の他に松中と井口も呼ばれてたかも?
そして期待age
63 :
39:2005/06/05(日) 11:40:28 ID:KBkyZmn20
なんとなく作品をあげるのはここでいいと思うけど、
内容に関するほかの職人さんたちのネタあわせには他の掲示板使ったほうがいいのかな?
といいつつどんなシステムにするんだとかなんにも決まってないわけですがw
他のところってどうしてるんだろ。。?
64 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 13:29:34 ID:MfRWg/bt0
今はまだ序章の部分だし、話し合いもルールとか日時設定の話なら
ここでもいいんじゃないかと個人的には思う。
でもそのうち必要にはなるだろうけど。
65 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 14:14:28 ID:RFzf31940
ゴリラと人間 1/2
「おーい、和田」
和田はチームスタッフから1通の封筒をわたされた。ジョーさんにも同じ
手紙がきたそうだ。
手紙を開けてみると、「五輪会」のお知らせという便箋が・・・・・・・・・・・・・
「なんじゃこりゃ」
打ち上げの案内であろうか?それとも最近話題のW杯に関するものであろうか?
和田は理解することができなかった。
「今日は雨で中止だし、ジョーさんに相談してみるか、1位でプレーオフいけそうだし」
この時点でダイエーナインの中では心の余裕が生まれていた。
そうして和田は、城島のもとを尋ねた。
66 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 14:15:33 ID:RFzf31940
ゴリラと人間 2/2
和田「ジョーさん」
城島「ウホッ」
和田「(まだ、人間になってないや)ジョーさん、五輪会とやらどうしますか、たぶん打ち上げか、合コンですよ」
城島「(飯)、ウホッ、ウホッ」
和田「ジョーさん、行く気満々ですね。じゃあ、僕も行きますよ」
城島「ウホッ」
ダイエーナインの中で心の油断が、この時点で生まれていた。シーズン中だというのに。
二人は合コンと飯を目当てに喜んで「五輪会」に参加することになった。
しかしこの二人にとってこの通知がこれから始まろうとしている地獄への招待状だという事は この時の二人には知る由もなかった・・・。
67 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 14:36:07 ID:RFzf31940
ジョーはゴリラと人間の二重人格ということにしました。
戦闘能力では、ゴリラ>人間で
知力 人間>ゴリラってことで
何だそりゃ
>>67 設定は別にして「ダイエーナインの〜」が二回も書いてることが文章をおかしくしているよ。カキコする前にもう一度読み直して。
70 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/05(日) 20:06:20 ID:RFzf31940
あげ
前スレで書きたいと言った者なんですが・・・岩隈(当時Bu)編書いてもよろしいでしょうか?
ぜひおねがいしますだー
[溜息]1/2
もう何度目とも分からない溜息を一つ吐く。
革張りのソファーに体を埋め、天井を仰いだ。
テレビからは興奮したアナウンサーの声が響いている。
右手の甲を額に当てるとやけに熱い気がするが、多分気のせい。
ちらりとテーブルを見ると、その上には封を切られ裏返された封筒がある。
「五輪会か・・・・・。」
そう言って、岩隈(Bu21)はもう一度その白い封筒に手を伸ばした。
あんまり出たくない。
岩隈はそう思っていた。
手で出来るだけ丁寧に開けた口から二枚の紙を取り出す。
もう何度も見返した真っ白の紙に印字された文字。
『2004年五輪会』の文字。
あの試合。
勝ちは出来たけど、自分の投球が出来なかった。
あまりにも自分が不甲斐なくて。
「(会いにくいな・・・・・・)」
座りなおして、もう一度読み直す。
五輪会とはどんなものか、どこでいつやるのか、どんな事を用意すればいいのか。
そして、もう一枚の紙と入れ替えた。
そこに躍る文字が岩隈の心を重くしていた。
[このアテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が該当となり強制参加になります。
尚、欠席者には重大な罰則が科せられます。]
はっきり言っておかしいと思うんだけどな。
『重大な罰則』って何かよく分からないし、それに何でそもそも野球だけなんだろう。
休めるものなら、休みたいよ・・・・・。
ぼんやりとそう考えながら岩隈は正面にかけてある壁時計を見た。
「どっちにしろ出なくちゃいけないのかな・・・・・。」
そう呟くと岩隈はまた溜息をついた。
今の状況について、そしてこれからの事について頭を痛めながら。
つけっ放しのテレビはいつしか二人の男の話になっていた。
文章がつたないとは思いますが、これからどうぞよろしくお願いします。
「新婚生活」
18番松坂大輔は、兼ねてから噂のあった日本テレビの柴田倫代と結婚して
新婚生活を送っていた。
歳は少し離れてはいるものの松坂にとっては野球に集中できる環境を
彼女は作ってくれている。
「大輔、夕飯出来たよ。」
「今行くよ。」
松坂が倫代が作った食事に箸をつけようとした時
家のチャイムが鳴った。
「どちら様ですか?」
と倫代が言った。
「速達です。判子お願いします。」
「ご苦労様です。」といい倫代は、手紙を受け取った。
「大輔宛だ。誰からだろう?宛名は書いていないし・・・」
倫代は不振に思いながらも松坂に手紙を渡した。
「何松坂はそんな事も知らずに夕食を食べていた。だったの?」
「大輔宛に来てるわよ。それが宛名も書いてないのよね。
何だか気持ち悪いわ。私もアナウンサー時代によくあったけど。
こういう宛名のない手紙はいつ届いても気持ち悪いわね。」
とため息混じりに倫代は言った。
松坂は、倫代の言葉にも耳をかさず手で封筒を破るようにして開けた。
79 :
78:2005/06/06(月) 04:23:10 ID:9Xaiu3wR0
「新婚生活2」
「五輪会のお知らせ?なにこれ?」
その時ひらりともう一枚同封されていた用紙が落ちた。
倫代が拾い
「何かもう一枚紙が入ってたよ。」
松坂はそっちにも目を通した。
思わず彼は目を疑った。
やはりもう一枚の用紙にも次の文があった
[このアテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が該当となり強制参加になります。
尚、欠席者には重大な罰則が科せられます。]
「強制参加ならまだ分かるけど重大な罰則って何なんだ?」
松坂からはずっとその事が頭から離れなかった。
何松坂はそんな事も知らずに夕食を食べていた。だったの?」
正しくは→松坂はそんな事も知らずに夕食を食べていた。です。
訂正します。
すいませんでした。
職人様乙です〜ヽ(´ー`)ノ
このストーリーって予選組みは、入れないんですか?
おぉ、いっぱい来てる…
職人様方、乙です!
「上原浩治の野望」
その頃19番上原浩治は、自宅へいた。
勿論上原の所にも例のアテネ五輪会のお知らせの手紙は届いていた。
手紙を見ながら上原は笑いながら
「アハハ、強制参加って何やねんな?
ひょっとしたらこういう場にメジャー関係者が着てたりするんやろうか?
日本は優勝は逃したけど一応強敵キューバに勝ったしその辺のとこ関係者
が見とったんやろうなぁ。」
この男は、人一倍メジャーに対する意識が強い。
この男だけは妙に能天気だった。
この招待状が地獄の始まりとは知らずに―
84 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/07(火) 03:04:19 ID:PSAmP44b0
職人様方々乙です♪ヨーシ、アゲテイクゾヽ(`Д´)ノゴラァ!
職人さん方乙です!
でも
×倫代→〇倫世では…
確かorz
86 :
39:2005/06/07(火) 18:36:08 ID:whsBaZzr0
なんとなく裏ストーリー思いついちゃったりしてるんですが、
とりあえずみんなが拉致られてから書き始めようかと(;´Д`)
拉致られてって・・・orz ナンカイヤン
いつ頃続き書きましょうかね。。
>>86一通りの選手のエピソードが出てからの方がよいかと・・・。
まだカープの選手がでてないし・・・
88 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/07(火) 19:15:40 ID:lD6SgR9x0
日ハムと阪神の選手もまだ出てない…
引き続き職人様降臨キボン!
よかったらカープ書かせてもらいたいんですが・・・
90 :
83:2005/06/07(火) 19:54:01 ID:mSMieInz0
「上原浩治の野望 2」
「やっぱなメジャーの関係者がぎょうさんくるんやろう。こりゃ行かない手は
ないやろ。俺はあいつだけには負けとないからな。」
そうあいつとは、同じ球団で今大会で代表に選ばれた24番高橋由伸の事だ。
上原浩治と高橋由伸は、偶然にも生年月日が昭和50年4月3日と一緒だった。
そのせいもあってか投手と野手の違いとはいえ野球以外の面でも何かと比較
される事が多かった。
年俸を始め毎年送られてくるファンからのバレンタインのプレゼント、ファンレター
の数、そして学歴と―。
時に上原にとって由伸の存在は、目の上のこぶに思えることもしばしばだった。
「俺はあいつにだけは、負けとない。由伸より先にメジャー行ったるからな。」
そう心に決め上原は、アテネ五輪会に出席する決心をしたのだった。
キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!!!
職人さん、乙です。上原と由伸の関係、面白そう。
これからが楽しみです
93 :
89:2005/06/07(火) 21:37:54 ID:ZRfTGeNI0
「凶兆(1)」プロローグ〜カープ編〜
晩夏の日差しが容赦なく降り注ぐ市民球場の外野には、
黙々と走り込みをしている背番号15、黒田博樹の姿があった。
市民特有の蒸した、じっとりとした熱さが9月になっても居座りつづけている。
外野の端まで来ると、黒田はスピードを落とし、足を止めた。
額に浮かんだ汗を袖で拭い、空を見上げる。
からりとしたアテネの日差しと強い潮風を、ふと懐かしく思う時がある。
あの重圧も、悔しさも、過ぎてしまえば達成感に変わる。
無論、チームの結果に満足しているわけではなかったが、
『良い経験をさせてもらった』、その言葉に嘘は無かった。
けれど今はそんな事を思っている暇もない。チームは低迷、泥沼の連敗が続いている。
「今は、チームを何とかせなあかん、」
自分に言い聞かせるようにそう呟き、黒田は首を振った。
ストレッチをする為、バックスクリーン前へとゆっくり歩き出した黒田の背中を、クラブでつつく小さな影があった。
黒田と共にアテネでの日々を戦った背番号27(C0)、木村拓也だ。
「くろだぁ」
「うっわ、ビックリしたぁ、・・・何すか?」
「お前んとこにも変な手紙きたぁ?」
驚いた表情で振り返った黒田を追い越し、ゆっくりと歩きながら、ぽんぽんとグラブを叩く木村。
黒田は木村に肩を並べると、ひとつ頷き溜め息を漏らした。
「お前行く?」
「まだ、考えてるとこなんすよ。」
「そうだよなぁ。・・・うん。」
「行きたいけど、・・・なかなか会えへん奴も多いし。」
黒田はそう言うと、足を止め、グラウンドを見渡した。
内外野でそれぞれに練習をしているチームメイトは、決して暗くなっているわけではない。
けれどこのままいけば、チームは長年の定位置である5位からも転落してしまう。
そんなチーム状況で、参加することができるのか。
少なくとも今は、それを考える事よりも優先するべきことがある。
94 :
89:2005/06/07(火) 21:43:33 ID:ZRfTGeNI0
「凶兆(2)」プロローグ〜カープ編〜
「まーくんとか、なおちゃんとか、小笠原とか、ジョーとかぁ・・・」
指を折り、共にアテネを戦ったメンバーの中でも対戦のない、
パ・リーグの選手の名前を一人一人挙げる木村を、黒田が笑った。
「全員やないすか。」
木村はその言葉を待っていたようで、口元を歪めニシシと笑った。
けれどすぐに笑みを消し、帽子を取ると空を見上げる。
「でもなー」
「でも?」
「何か変やったよなぁ。」
「変って?」
丁度、バックスクリーンにさしかかる少し手前、
ストレッチをしている選手からは遠いそこで、木村はすとんと座り込んだ。
黒田もつられるようにして隣に腰を下ろし、木村の顔を覗き込む。
木村はグラブで黒田の頭を小突くと、辺りを見渡し声を落とした。
「黒田、あの手紙ちゃんと見とらんやろ。」
「え?」
「強制参加とか、欠席者には重大な罰則とか。」
「へ?何なんすかソレ。」
「俺も分からんから黒田に聞いたの。手紙くらいちゃんと読めよォ。」
木村の呆れたような声に黒田が苦笑を浮かべる。
「強制参加、ねぇ・・・」
「それどころじゃないって時に。」
「何か、変すね。」
「だーかーらー、さっきからそう言ってるデショ?」
黒田をからかうようにそう呟いて、木村はばたりと後方に倒れ込んだ。
95 :
89:2005/06/07(火) 21:46:48 ID:ZRfTGeNI0
「凶兆(3)」プロローグ〜カープ編〜
見上げた空は、まだ容赦なく日差しを降らしている。
けれど西の方に顔を覗かせる、灰色の不気味な雲。
「一雨、来るかもしれんなー。」
「それで涼しなるならいいんですけどね。」
木村は西の空を暫く見つめた後、よいしょ、と立ち上がった。
「・・・お前、上原とかには聞いた?」
「いや、また連絡してみます。」
「うん。俺も何人か聞いてみる。」
帽子を被り、ユニフォームを軽く叩いてホームの方に視線を移した木村。
黒田はあぐらをかき、木村を見上げた。
「連敗ストップの一打、頼みますよ。」
「お前もしっかり投げろよ?」
二人が顔を見合わせて笑っていると、丁度木村を呼ぶ声が聞こえた。
木村がバッティング練習を始めたのを見つめながら、
黒田はアテネで共に戦ったメンバーの顔を思い出していた。
「・・・強制参加、て何やねん。」
ぽつりと呟き、溜め息をつく。
暫く俯き唸っていた黒田だったが、すぐに立ち上がり投手陣の輪の中へと移動した。
とにかく今は、チームの連敗を止めるのが先だ。
考えるのはこのシーズンが終わってからでも遅くないだろう。
そう気持ちを切り替えて、黒田はストレッチを始めた。
市民球場を囲んでいた青空が、いつのまにかもくもくと大きくなった灰色の雲に覆われ始めた。
遠くで雷鳴が聞こえている。
黒田と木村は、それぞれの思いを抱えたままそれを耳にした。
自分達がカープで過ごすシーズンが、まさか今年で最後になるとは夢にも思わずに。
96 :
89:2005/06/07(火) 21:54:15 ID:ZRfTGeNI0
長くなってスマソ。
ロッテのプロローグ書いてた職人さんが9月14日あたりと言ってたんで調べたら
市民が落雷で停電してた頃だったので思わず。
清原に死球与えた直後でなんて演出が過ぎて何度思い出しても笑えます。
話がそれましたが職人様方、がんがって下さい。
名無しに戻り陰ながら応援させてもらいます。
|ミ
97 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/07(火) 22:04:16 ID:PSAmP44b0
カープ編もキタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!
職人様方GJ━━━━━━━━━━ !!
98 :
79:2005/06/07(火) 23:10:58 ID:TlqxvDn+0
「戸惑い」
試合が終わり55番西武の和田一浩が帰宅した。
ポストをあけ自分宛の郵便物を確認した。
「ん?何だこの手紙は?誰からだろう?」
やはり宛名は書いていなかった。
きっと書き忘れたのだろうと思い特に気に留めなかった。
「はぁー。疲れた。」
和田一浩はもうすぐ一時の父親になる。
和田自身も元気な子供が生まれてきてくれる事を願っていた。
後は、チームが優勝してくれる事と・・・。
明日も試合があるから風呂へ入って寝ようとした時
あの手紙が気になった。
「そういえばさっきの封筒まだ開けてなかった。一体誰からだろう?」
と思いながら封を開けた。
「アテネ五輪会のお知らせ?何でこんな手紙がいまさら?」
和田にとってはできたら妻の出産に試合が無い限り立ち会いたい
そう思っていた矢先の事だった。
「妻の予定日がもうすぐだっていうのに。ったく冗談じゃないよ。」
と言いながらもう一枚の用紙に気づき取り出した。
「え?何?五輪野球メンバーは、強制参加で欠席だと罰則?
どういうことだ?そもそも罰則って何だ?契約更改に響くのかなぁ?」
和田に取ってはチームが日本一になって新しく生まれてくる子供と一緒に
オフはすごすと決めていたところだった。
「やっぱ参加しないといろいろな面で響くんだろうな、今年はストとか
あったしな。」
和田は、どうしようかと戸惑っていた。
「1号と2号」
神宮球場クラブハウスのロッカーで、61番石井弘寿は一枚の手紙を見つめ悩んでいた。
家を出る時に覗いた郵便受けに入っていた、自分宛の手紙。それには「2004年五輪会のご案内」と記されていた。
アテネ五輪会の野球チームを対象にしたレセプションが行われるという。
あの、アテネで共に戦った仲間達にまた会えるのは嬉しい。だが、銅メダルという結果に終わってしまった事を思うと、やはり気が進まない。
「『五輪会のお知らせ』?」
「うわっ!!」
突然耳元でした声に驚き、飛び退くようにして振り返ると、そこにはそんな石井の反応に笑いを堪え切れない様子の、五十嵐亮太(Ys53)の姿があった。
「ゴリさん驚き過ぎー。」
笑いながら言う五十嵐に、石井はバツが悪そうに手紙をポケットに押し込む。
「お前、脅かすなよ…つうか、何勝手に見てんだよ。」
「中々練習こないから呼びに来たんですけど、呼んでも気付かないし。」
そう言われて周りを見ると、既にロッカールームに残っているのは自分だけになっていた。
「…何かヤバい手紙なんですか?それ。」
そんな石井を不審に思った五十嵐が、訝しげに尋ねてくる。
「別に…ただ、アテネ五輪の野球チームで集まりがあるらしい。」
「何だ、楽しそうじゃないですか。」
途端に笑顔になる五十嵐に、石井は思わず苦笑を漏らす。
「1号と2号(2)」
楽しかった。確かに楽しかった。
各チームから選ばれた素晴しい選手達とチームを組んで、真剣勝負で世界の頂点を目指す。
押し潰されそうなプレッシャーと緊張の中にも、プレイヤーとして最高の舞台に立っている嬉しさ楽しさは常に感じていた。
だが、勝利を逃した時のショックはその分−−いや、それ以上に大きかった。
その時の絶望感が再び頭を過り、振り払うように慌てて頭を振るう。
石井のそんな反応を不思議そうに見ていた五十嵐が、ふと床の上に封筒が落ちているのを見つけた。
先刻、石井が驚いた拍子に落としたものだ。
拾い上げ、石井に渡す。
ポケットの手紙を取り出し封筒に戻そうとした石井は、封筒の中にもう一枚の紙が入っているのに気付き、それを取り出した。
「じゃあ、先に練習始めてますからね。」
そう言って出て行った五十嵐の言葉も、もう石井の耳には入っていなかった。石井の頭は、再び手紙の事しか考えられなくなっていた。
[このアテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が 該当となり強制参加になります。 尚、欠席者には重大な罰則が科せられます。]
リアルタイムで投下キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
職人さん乙です。
103 :
100:2005/06/08(水) 03:09:39 ID:bDwNwFuV0
初投下してみました…。ヤクルト石井編です。
至らない点が多々あるかもしれませんが、よろしくお願いします。m(__)m
「愛娘とのひと時」
「ただいまー。」
宮本慎也が帰宅した。
「パパお帰りー!」長女の陽奈が走ってきた。
「あなたお帰りなさい。高橋さんと夕飯食べていたの?」
と妻の知美が言った。
「いや、あいつとはちょっとその辺で軽い食事しただけやから」
「そう。」と知美が言った。
「パパ一緒にご飯食べよう。」
と陽奈が言った。
「一緒に食べようね。」
宮本は食卓を囲んで夕飯を食べていた。
妻の知美が聞いてきた。
「アテネ五輪会あなた参加するの?」
と聞かれ宮本は
「参加せなあかんやろ。一応俺主将勤めてた手前あるし。」
「パパまた遠くに行っちゃうの?」
と長女の陽奈が今にも泣きそうな様子で言った。
「違うよ。パパは、パーティーに行ってくるだけだよ。」
次女の菜桜が悲しそうなつぶらな瞳で宮本を見ていた―。
「愛娘とのひと時 2」
夕食を終えた宮本は、やはりもう一枚の同封されていた用紙の文が気になっていた。
「誰か俺の身近な奴でオリンピック出た奴いてるかなぁ?」
「せや、古田さんがいてたわ。」
そう思い宮本はさっそく古田の自宅に電話をした。
古田は、ソウル五輪の後ヤクルトに入ってきた名捕手だ。
「もしもし宮本ですけど古田さんのお宅ですか?」
と宮本が聞いた。
電話の先は古田だった。
「おう。せやけどどないしたん?宮本。」
「お忙しい所すいません。ちょっとお伺いしたい事があるんですが。」
「どないしたん?」と古田が言った。
「古田さんがソウル五輪の後ソウル五輪会ってありました?
あとその五輪会って野球選手以外に誰かきましたか?」
「う〜ん、大分前の話やからうろ覚えやけど・・・ただ野球選手以外にも
来てたで。それがどないしたん?」
「今日自宅にアテネ五輪会の手紙が来てて今回の代表に選ばれた人は、強制
参加とかって書いてたんですよ。」
「それは、変やな。まぁ俺の時は野茂とかもアマで行ったからなぁ、その違い
とちゃう?」
「そうですよね。ありがとうございました。失礼します。」
といい宮本は、電話を切った。
その横で次女の菜桜が悲しそうな瞳で見ていた。
106 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/08(水) 03:54:56 ID:b93rLP9v0
オモロイな〜w
なんか書こうと思ったんだけど・・・
どうしてもアテネ絵日記が思い浮かんでしまってギャグしか思い浮かばないのでとりあえず保守。
ギャグでもいいんじゃ?
最終的に本編を壊さなければ(;´∀`)
ギャグ全然いい、というかむしろそういうのも読みたいので
よかったら書いてくれ。
「やる気のない男」
その封書を受け取った時から、なんとなくめんどうくさい事になりそうな予感が彼にはあった。
「五輪会?めんどくさいなぁ」
金子誠(Fs8)がその通知を読んだ際の、第一の感想はそれだった。
2004年五輪会のご案内。オリンピック野球代表が集まって行われるレセプションのようなものらしい。
適当な言い訳を用意して不参加を願い出よう、と思ったのも束の間、同封されていた別紙の内容に顔をしかめる。
[このアテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が 該当となり強制参加になります。 尚、欠席者には重大な罰則が科せられます。]
「強制参加か。ますますめんどいな」
ともすればへらへらしているようにも見えてしまう甘いマスクと、クールでスマートなプレイのせいか普段から「やる気がない」とファンから言われてしまう男は、それを肯定するような言葉を吐いてため息をついた。
わけのわからない会合に参加するくらいなら、自主トレでもしていたい。
だいたい今更、五輪選手を集めて何をしようというのだろう。
「お説教か、慰安か。強制参加というからには説教だろうな・・・」
冷静に分析してみて、ますます行きたくなくなる。
「ま、ガッツさんも一緒だし、俺はどうせオマケだろうから」
小笠原道大(Fs2)、通称ガッツ。
チーム内から共に五輪選手に選ばれた彼のもとにもこの手紙は届いているだろう。
彼は金子と違って多リーグ、他球団のファンですら名前を知っているチームの顔ともいうべき選手である。
エンターテイメント性あふれる新庄の加入で、最近はすっかり「日本ハムといえばSHINJO」という風潮だが、弱小と呼ばれたファイターズをずっと支え引っ張ってきたのがは誰なのか、ファンならずとも野球に詳しい人間なら誰でもわかっている。
選手会長にして内野の要、ついでにチーム一の高額年俸。そしてそれに恥じぬ活躍。
五輪では残念ながらあまり活躍できなかったが、日本最高の打者の1人であることは疑いようがない。
金子にとってもチームメイトの中でも最も尊敬する先輩である。
たとえばそれが球界関係者だか後援会だかなんだかの叱咤激励の会であろうと、それとも彼が想像するのとは違うもっと別の何かであろうと。
叩かれるにしろ、労われるにしろ、自分が主役でないことはわかりきっていた。
たとえばこれがジャイアンツであれば高橋と上原、同年代で実力・人気・収入とすべてが拮抗の二人であるが、ファイターズから選出された二人のうち、セリーグにまで名が通ってる小笠原に比べて自分がかなり見劣りするのは否めない。
もしかしたら報道陣などもいるのかもしれないが、どうせカメラやマイクを向けられるのは小笠原だろう。
そう思うとちょっと気が楽になった。
寡黙でストイックな性格や、厳しそうな外見から「孤高の人」と思われがちな小笠原だが、責任感が強く面倒見もよくチームメイトの信頼あつい頼れる人物だ。
特に金子は同じ千葉出身で年も近いということで、仲良くさせてもらっている。
強制参加というあたりにあまりいい予感がしない会だが、彼と一緒ならばそう不愉快な思いもしなくてすむだろう。
・・・ガッツさんには悪いけど、俺は後ろでそっとされとこう。
目立つ事があまり得意ではない先輩には申し訳ないが、金子はそんな結論に達した。
めんどう事はなるべく回避。常に沈着冷静に物事を見極めて、余計な労力は使わない。
スマートにスムーズに、ただしやるべき時には全力で。
それが彼のモットーだった。
だからこそ今回も一線を引いて、おざなりに参加を決意してしまったのだ。
どうせ自分は脇役だ。
取り立てていい目をみないかわりに、さほどひどい目もみない。
金子はそんな風に思い込んでいた。
だから、いやな予感もさほど気にしないことにした。
それが自分の人生において最大の「めんどう事」への招待状であるとは、とても予測できなかったのだから。
長くなって申し訳ない。
なんかギャグというか中途半端なものになっちまった。
マック好きなんだが、なんかヘンな人にしてしまってスマソ。
奴の得体のしれないやる気のなさを表現したかったんだが難しいのう・・・
ハム二人いこうと思ったのに長くなりすぎてガッツまでいかなかったorz
誰か頼みますw
訂正
×多リーグ
○他リーグ
です。吊ってくる・・・orz
職人さん乙です
金子がやる気なしキャラとは知らなかったYO
金子おもしろいなw
職人さん乙です〜w
117 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/08(水) 18:09:53 ID:qyR1WULo0
職人さん乙!面白いですw
ノシ
感想どうもです。
金子にやる気がないのはハムファンにはけっこうデフォ。
実況では「金子やる気だせ」が合言葉ですw
ところでまたまた訂正が。
×ファイターズをずっと支え引っ張ってきたのがは誰なのか
○ファイターズをずっと支え引っ張ってきたのは誰なのか
あと「たとえば」連続だった〜。「これがジャイアンツであれば」の前の「たとえば」はなかったことに・・・。
推敲甘すぎ自分・・・もうだめぽ・・・orz
ハム職人さん乙!
面白かったですよ〜。
ところでまとめサイトとかって作るのか…?せっかくの文が落ちちゃうのはもったいない。
120 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/08(水) 22:57:27 ID:snrYqjKf0
職人さん乙です!
是非その勢いでガッツ編もお願いしたいw
保管庫はやっぱあった方がいいですよね〜。
公職人さん乙〜!
やはりマックはやる気無いっていうデフォ知らない人の方が多いんだろうなw
ガッツ編もどうかお願いします。
このスレは保管すべきだろうね。
保管庫は欲しいよね。
どっかいい鯖教えてもらえれば作ろうか?
そろそろ本題に入った方が・・・。
124 :
39:2005/06/09(木) 00:48:56 ID:UQfIQdG90
>>123 私の中では阪神さんとオリックスさん待ち・・・。
あと、上がるなら小笠原編はぜひ読んでみたい。
といいつつとりあえず千葉ロッテマリーンズ編の続き(本編)は準備してる。
※バトロワですが、どんなシステムにしましょうかー?
自分の中ではソフロワ+αのあのバーチャルシステムがイイナと思ってる。。
宮本編書いてる奴、前と全然変わってねぇ…
続き考えてるんですけど、集合場所は横浜港あたりで船上パーティーのふりってどうでしょ?一人ずつ拉致るより手間はぶけるかなぁと…てネタバレあんましない方がいいか?
127 :
39:2005/06/09(木) 01:02:51 ID:UQfIQdG90
>>126様
そのアイデアいただきです。船の名前を出していただければ、氷川丸ベースでシチュエーションそろえます。
船で拉致→バーチャルシステム だと、ソフロワ+αそのまんまな気もするけど…
>>125すいません。
宮本編書いてる人は全て38です。
一応文章の書き方学習したつもりなんですが・・・。
不適切な文等があったら申し訳ありません。
逝ってきます。
130 :
39:2005/06/09(木) 01:17:15 ID:UQfIQdG90
>>128 あ、そかorz
だめじゃん。
でも船に集まるのはよさげなのでそのまま書いちゃいます。。
あとでいくらでも変更効くので。
131 :
126:2005/06/09(木) 01:23:49 ID:W5wjwfJVO
自分はバーチャルよくわかんないので普通にどっか島に拉致られるかと思ってた。けど基本的には前に合わせてかくよ。他の人の意見も知りたいね
132 :
129:2005/06/09(木) 01:26:44 ID:8bTMP7OV0
意見だけ書かせてください。
使えなくなったどこかの球場とかに連れてかれるとか・・・
133 :
126:2005/06/09(木) 01:33:51 ID:W5wjwfJVO
あ、申し遅れましたハム書いた奴です。今お言葉に甘えてガッツ編考えてんですが、船okなら話ちょっと進めたい。とりあえず集合してオリ阪神到着待ちではいかがか?
134 :
126:2005/06/09(木) 01:47:34 ID:W5wjwfJVO
連投スマソ。とりあえず自分が投下できるのは明日の昼以降なんで、皆さんの反応みて軌道修正などします。意見のある方はどしどしお願いします。
135 :
39:2005/06/09(木) 01:59:55 ID:UQfIQdG90
>>126サマ
了解でする。
とりあえず集まっときますか。
136 :
100:2005/06/09(木) 02:29:42 ID:R91yYoAR0
私も船OKだと思います。
ガッツ編楽しみにしてます!
137 :
100:2005/06/09(木) 02:31:49 ID:R91yYoAR0
138 :
39:2005/06/09(木) 04:12:38 ID:UQfIQdG90
「豪華客船」−1/2−
「おはよう」
・・・言ってみた挨拶で、こんなに憂鬱になるのも珍しい。
小林雅英はややうつむき加減な同僚の肩をバンバンと叩いた。
「なぁ、雅やん。」
清水直行はタキシード姿だった。
なぜなら、あの手紙にそう書いてあったから。
もちろん、小林もそれに習ってタキシードを着てきている。「普通、こんなカッコするときは、いいことがあるときだと思うんだけど・・・。」
「みなまで言うな。俺もテンションさがるわ。」
横浜港の大桟橋。国際客船ターミナルに、二人は立っている。
目的地は現在ターミナルに停泊している客船『ダイアモンド・プリンセス・シー』。
主にアラスカクルーズを行っている外洋大型客船の一隻だ。
今回は造船されて初めての日本寄港らしい。
二人は少しの間乗船ゲートの前で自分たちと同じ目的の者を待ったが、誰も現れなかった。
二人は意を決して手紙で指定された乗船ゲートに進み、五輪会に来た旨を係員に伝えた。
「はい。封筒はありますか?」
制服を着た女性係員に彼らがそれぞれ封筒を差し出すと、彼女は封筒を何かの機械にかざす。
ピッ!
機械的な音がなったのを聞き、モニターを見ていた係員はにっこり笑った。
「失礼いたしました。千葉ロッテマリーンズの小林様と清水様ですね? 承っておりますので、このままお進みください。」
彼女はは封筒を二人に返すと深々と頭を下げた。「良い旅を。」
139 :
39:2005/06/09(木) 04:14:22 ID:UQfIQdG90
「豪華客船」−2/2−
タラップを上がり進んだ客船の中は、豪華ホテルそのままだった。
踏むとソールまで沈み込むような毛足の長いじゅうたんが敷き詰められ、豪華な調度品が目を引く。
メインエントランスに船の設備や概観が書かれたプレートがかけられていたため、二人はおのずと足をとめてそれを眺める。。
どうやらこの船にはカジノやメインシアター、ジャグジースパ、レストランも複数箇所あるらしい。
五輪会のメイン会場はメインシアターと手紙には記されていたが、まだ集合時間には時間があった。
小林は、携帯を取り出すとプレートを写真に撮る。
「記念だから、な。」
「記念なんだったら、俺、撮りましょうか?」
清水は言いながら小林の携帯を奪い取ると小林とプレートをあわせて撮影する。
小林は清水の携帯を取り上げ、同じように撮影した。
「・・・さて、どうしようか?」
二人は撮影したプレートを見ながらあちらこちら一通り歩き終わった。
「暇だし、とりあえずなんか飲んどくか。」
清水の問いに、小林はとりあえず目の前にあるバーを見ながら言った。
「いいんかな? 俺らここに泊まってる訳じゃないし。」
「いいんだよ。多分。」
小林は肩をすくめると、バーに行き何かを注文した。バーテンダーは頷き、手馴れたしぐさでシェーカーを降り始める。
「ほんまに、いいんかなぁ・・・。」
つぶやく清水に、小林の声が飛んできた。
「ナオ、お前の分も作ってもらったぞ。」
「あ、はぃ・・・。」
あの手紙、届いたよな?
清水は祈るような気持ちになり、天井を仰いだ。
140 :
39:2005/06/09(木) 04:21:18 ID:UQfIQdG90
続きです。
横浜ベイスターズの二人分についてはまた別途。
というか、眠すぎてこれ以上ムリ(汗)
ベースにしている船はプリンセスクルーズ社運航の『ダイアモンドプリンセス』で
2004年3月就航の外洋船。全長が290メートルある大型客船ですね。
ちなみにアメリカ船籍ですが、メイドインジャパン(三菱重工長崎造船所製)なんだそうです。
一度でいいから乗ってみたい。。
141 :
39:2005/06/09(木) 04:25:17 ID:UQfIQdG90
ああ、さっそく間違い発見。
アメリカ船籍じゃなくて、バミューダ船籍だった。。当たり前だ。
とりあえずもう寝る。。orz
阪神編書きたいと思ってたんですが忙しくて書けずにいたら
話し進んでますね。書きたいのですがどうしたらいいですか。指南よろ
143 :
ハムのひと:2005/06/09(木) 10:15:14 ID:WyZM4VZj0
「サムライと天使たち」
「ただいまぁ!」
玄関に元気のよい合唱を響かせて、二人の娘は家に駆け込んでいった。
小笠原道大(Fs2)は頬を緩めてその後を追った。
そうすると、髭面のいかめしい顔がびっくりするほど優しくなる。
オフのひととき、娘二人と買い物から帰ってきたばかりの小笠原は、家族と過ごす幸せをかみしめていた。
普段、遠征ばかりで淋しい思いをさせている分、一緒に過ごせる時間は何よりも大切にしている。
「孤高のサムライ」と呼ばれる男の、意外なほどの娘への溺愛ぶりはチーム内でも有名だった。
しかし、時にはそれが仇となることもある。
居間に入ると、妻の美代子が娘たちから没収した買い物袋を手に、怖い顔で待ち構えていた。
「またこんなに、お菓子ばっかり買って!」
妻の呆れたような怒声に、娘たちはきゃー!と歓声とも悲鳴ともつかぬ声をあげながら玄関に舞い戻っていった。
こうなると本格的にお小言タイムだ。
「あなたったら本当に甘やかすんだから!だいたいあなたは普段から……」
まずい。
小笠原は首をすくめた。
しかし、延々続きそうな妻のお小言から彼を救ったのは、他ならぬ愛娘の声だった。
144 :
ハムのひと:2005/06/09(木) 10:17:42 ID:WyZM4VZj0
「パパー、おてがみきてたよー!」
長女の茉由がとたとた走ってきて、得意げに封筒を差し出した。
「おてがみー! よんでー!」
1つ下の次女の汐梨も、同じように差し出す。
「ああ、ありがとう。……なんだ?」
長女が持ってきた封筒は、差出人も書いてないそっけない白い封筒。
次女が持ってきたピンクの封筒は、美代子が受け取る。
「あら、美肌コース無料お試し券? 行ってみようかしら」
エステかなにかのダイレクトメールだったらしく、美代子は熱心に読み始めた。どうやらお小言のことは忘れたようだ。
さすが俺の天使たち。
二人の娘に深く感謝しながら、小笠原は封を切った。
それが、この幸せを壊す悪魔の手紙であると知る由もなく。
職人様乙ですヽ(´ー`)ノ
やっぱ小笠原カッコイイなぁ。。
>>142 まだ間に合いますですよ〜
お待ちしています。
146 :
ハムのひと:2005/06/09(木) 10:27:48 ID:WyZM4VZj0
とりあえずガッツ編プロローグ。
たぶん皆のイメージと違うガッツでスマソw
集合編は皆さんの意見を待って、夕方くらいに投下します。
>>142様
阪神待ってました!
とりあえず手紙を受け取る〜集合までは好きに書かれてよいのでは?
楽しみにしてます。
あとはオリ待ちですね!
147 :
142:2005/06/09(木) 11:01:34 ID:pyaSIXhvO
わかりました。今日か明日中に投下できるよう頑張りますわ。
148 :
39:2005/06/09(木) 12:55:46 ID:dVNs0Dqr0
ごめん。ひとつだけ確認。
勝手に集合させちゃってるけど、結局集合日って、
シーズン中に設定するかんじでいいのかな・・・??
当方眠すぎ+差込仕事大杉で頭全然働いてないです。。orz
だれかキメてオネガイ
149 :
ハムのひと:2005/06/09(木) 13:25:33 ID:WyZM4VZj0
フレンドパークは12月の始めくらいかな?あと11月の始めにはコンベンションでみんな顔を合わせてます
151 :
39:2005/06/09(木) 14:29:19 ID:dVNs0Dqr0
>>149 了解です〜。日シリ後ということで・・・
ウチの地味様は最終戦も本気モードで投げてたんで、正直どうしようかと
思ってました(ノ´∀`*)
152 :
39:2005/06/09(木) 14:31:24 ID:dVNs0Dqr0
「見慣れた町並み」
三浦大輔と相川亮二は、客船『ダイアモンド・プリンセス・シー』の最上階デッキの上から山下公園を眺めていた。
視線を移せば、見慣れたY字型のライトが見える。
さらには、マリンタワーや中華街の町並みもビルの隙間から見え隠れしている。
「今でも後悔してますよ。やっぱり中身教えなきゃよかった、って。」
相川は三浦に言い、山下公園に背を向けて手すりに寄りかかった。「怪しいですもん。この会。」
「嫌な予感がしたから俺は吉見にとりあえず相談してみたぞ?」
三浦は晴れた空を見上げた。気持ちのいい海風が、雲をゆっくりと動かしていくのが見える。
「吉見に?」
怪訝そうな顔をして相川は三浦を見る。
「ああ。あいつもオリンピック行ったからな。」
三浦の答えに、相川ははぁ、と息をつき頭をかいた。
「そうかー・・・あいつ、シドニー組でしたっけ。忘れてたなぁ。」
相川は口を尖らせ小さくつぶやく。三浦はその様子をみてはは、と笑った。
笑いながらも三浦の胸中には、吉見祐治のとある一言が深く刺さっていた。
『 こ れ 、 本 物 で す か ? 』
吉見は書面と封筒のコピーをとり、他のシドニー組にも聞いてみると言っていた。
あれはどうなったんだろう?
結果も聞かず、俺はここにいるが・・・。
「・・・うらさん? 三浦さん?」
相川の問いかけに、三浦は意識を相川へと向ける。
「・・・なんだ?」
「なんだ、じゃないですよ。せっかく来てるのに、ただ上に上がっただけじゃないスか。」
相川は言いながら、階段へと歩いた。「横浜の街はいつでも見れるんですから、もっと他のところも見ましょうよ。」
「いつでも、か・・・。」
三浦は一度振り返って横浜の街並みを眺め、相川と階段を下りていった。
153 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/09(木) 15:15:50 ID:A/rrYs/k0
皆様GJです!
ガッツかわいいよガッツ。
段々相談内容もネタバレぽくなって来たし、やっぱ保管庫とか掲示板とか欲しいですね。
どこかいい所ないかな…。
154 :
39:2005/06/09(木) 15:19:51 ID:dVNs0Dqr0
とりあえず横浜ベイスターズの二人組を船に乗せときました。
しかし、12月かー。外で話してたら風邪引くぞ・・・orz
しかも名前の前に背番号ないよー(´Д⊂グスン
モウダメポ
155 :
ハムのひと:2005/06/09(木) 15:32:22 ID:WyZM4VZj0
まとめサイトがないので以下補足。
〜設定まとめ〜
・手紙が届いたのはおそらくシーズン終盤あたり(総合)
・手紙は差出人不明(
>>24参照)
・集合日は日本シリーズ後(
>>24参照)、フレンドパーク収録よりあと
・集合場所は横浜港に停泊中の豪華客船『ダイアモンド・プリンセス・シー』内のメインシアター(
>>138参照)
・指定の服装はタキシード、船内に入るときは封筒チェック(
>>138参照)
※集合日について
混乱を避けるためフレンドパーク放送日後でいいと思います。キャンプイン前の1月中旬某日でどうでしょ?
実際は自主トレで国内にいなかった選手もいると思いますが、そのへんはフィクションなのでスルーってことで。
今まで出た共通と思われる設定をまとめてみました。なんか仕切り屋みたいですいません。
基本的にはリレー形式ってことで、先にかかれた方の設定に矛盾が出ない範囲で新しい設定をつけていけばいいと思います。
ご意見あったらお願いします。
…どっか相談所欲しいっすね。見守るスレとか使ってもいいのかな。
156 :
122:2005/06/09(木) 15:37:38 ID:JnSei3Mr0
>>155 とりあえず、今掲示板手配してます。
少々お待ち下さい…。
157 :
122:2005/06/09(木) 15:55:09 ID:JnSei3Mr0
158 :
39:2005/06/09(木) 15:55:37 ID:dVNs0Dqr0
>>155様
>>156様
すんません、まとめのほうお願いしますだ。。
超書きっぱなしでゴメンナサイ
上原と由伸編をのんびり書いていたら先に職人さんが来てた。
とりあえず、書いた部分は影響なさそうなので投下させていただきます。
160 :
159:2005/06/09(木) 16:51:35 ID:GxuHYNNU0
「お前何で俺に直ぐ相談せんと宮本さんとメシ食うとるん?」
上原はケータイに向かって大声で喚いていた。
電話の向こうの人物はそっけなく「うっせぇな」とだけ返す。
『キャプテンの宮本さんならなんか知ってるかなと思っただけじゃねぇか。ちゃんとこうして連絡してるだろ? いちいち細かいことうるせぇんだよ、お前は』
「冷たいなぁ由伸は。直行も黒田さんも直ぐに連絡くれたってのに」
『え? それでどうするって』
「どうもこうも、強制参加なら行くしかないやろって。ちょうどそのころ予定入れてたのにって愚痴ってたわ」
『みんな来るのか……』
由伸の呟くトーンがふざけているモードからシリアスなそれへと変わったのを敏感に上原は感じ取った。
「何?」
思わず問い返す。
『何かおかしいと思わねぇ?』
「どこがやねん?」
上原は話しながら目の前のテーブルに置いてある白い封筒を摘まみ上げる。中から遊び紙に被われた三つ折りの案内状を引っぱり出し、改めて開いてみた。
『強制参加っての』
「せやって長島監督が来るかもしれへんし、しゃーないやん。体面的に誰か抜けてたらヤバいってことやないの? どっちにしろ監督来るんやったら俺とお前だけは絶対に行かなあかんやろし」
『そりゃそうだろうけどさ……』
何が気になるのか、由伸は黙り込む。
上原は手の中にある紙を見つめながら、続く言葉を待つ。
『そうだな。監督が来るかもしれないんだもんな』
それはどこか自分を納得させようとしている呟きに聞こえた。
「そうや。監督が来るんやから」
上原はあえて断定した。
自分はこの手紙を見た時に何もおかしいとは思わなかった。
何かに気付いた由伸はチームメイトである自分では無く、五輪のキャプテンである宮本に相談に行った。
同じものを受け取ったにも関わらず、どうして受け取り方が違うのか。
全く同じ年、同じ誕生日であるのに、どうして。
上原の中に微かないら立ちが沸き起こる。
「行かな、あかん」
161 :
75:2005/06/09(木) 17:35:05 ID:2yPprj7E0
書きっぱなしですいませんorz
>>155氏
>>156氏
まとめ&掲示板ありがとうございます。
早速今から船に乗るまでの続き書いてみます。ノリはこの時期何やってたかな・・・orz
新作が大量に・・・
職人さん達GJです
まとめと掲示板の方も乙です
>>160 この二人はマジで普段もこういうやり取りしてそうだ
163 :
107:2005/06/09(木) 20:14:41 ID:WyZM4VZj0
「アクアラインのその先に」
東京湾横断の旅は、思ったより短かった。
小笠原道大(Fs2)と金子誠(Fs8)は、金子の運転する車に乗り合わせ、千葉から神奈川まで海上道路を使ってショートカットしてきたのだ。
小笠原の愛娘たちが海ほたるに行きたがっているといことで、その下見も兼ねてのルート選択だ。
相変わらずの微笑ましい親バカぶりに、金子は呆れながらも付き合うことにした。
待ち合わせた時も「土産」と称して手渡された紙袋を覗き込むと、お菓子が一杯つまっていた。
それも「きのこの山」や「コアラのマーチ」など、子供の好きそうな可愛いお菓子ばかりだ。
現代のサムライと称される男の持参する物としてはかなり不似合いだが、金子にはその理由がわかっていた。
「また娘さんにねだられて、お菓子買いすぎちゃったんですか?」
「……どうも逆らえなくてな。虫歯になったらどうするんだって女房に怒られたから、少し回収してきた」
これで、少し?
金子は呆れたように袋いっぱいのお菓子と、いたって真面目な髭づらの横顔を見比べた。
どれだけ買ったんだろう。奥さんも、そりゃ怒るよ。
苦笑するしかないが、そこが小笠原の親しみ易さでもある。
その小笠原はいつも通りのポーカーフェイスで、タキシードの襟をいじっていた。
「ガッツさんも意外と似合いますね」
「勘弁してくれ、参るよ。新庄さんならこういうの得意なんだろうけど」
「あぁ、あの人は大喜びでオーダーメイドで作っちゃいそうですよね。真っ赤なのとか」
「目に浮かぶな」
派手好きの同僚を思い出して、二人は少し笑った。
164 :
107:2005/06/09(木) 20:15:44 ID:WyZM4VZj0
「しかし、なんでしょうね、この格好」
「わからんな。船でやるっていうし、野球代表だけっていうわりにはずいぶん大げさだ」
小笠原は腑に落ちない、という表情で眉根をよせた。
彼にはこの会の趣旨がなんなのか皆目見当がつかなかった。
五輪経験のある選手に聞いてみたが、船で集まったとかそんな話は聞いたことがないという。
世間に告知してないようなのでごく内輪の会なのかと思えば、タキシードで来いという。
なにかうさんくさい。なにかアンバランス。
だが、その心にひっかかるものがなんなのか、はっきりと言葉にできるほど彼は器用ではなかった。
その彼に、更に追い討ちをかけるように金子がため息をつく。
「マスコミたくさん来てるんですかねぇ。やだなぁ」
金子の憂鬱は小笠原にもわかる。
二人とも、プロ野球選手という職業の割に目立つことが嫌いな人種だった。
特に金子は控え選手のような扱いだったこともあり、五輪関係ではあまり表に立ちたがらない。
小笠原自身も、金確実と言われていたチームが、己の不甲斐なさもあって不本意な結果に終わってしまった、と思っていた。
貴重な経験をさせてもらったには違いないが、手放しに喜べるほどの実績を残せたとも思えない。
あまり騒がれたくないのが本音だ。
165 :
107:2005/06/09(木) 20:16:35 ID:WyZM4VZj0
しかし、そんな二人の心配は杞憂に終わった。
指定された船の停泊する周辺はがらんとして、マスコミどころか人っ子ひとりいない。
ほっとすると同時に、その妙に閑散とした雰囲気は、何故か彼らを落ち着かない気分にさせた。
「これ、ですよね?」
金子の目の前に停泊するのは、想像以上に美しく大きな船だった。
「間違いないな。『ダイアモンド・プリンセス・シー』だ。……しかし、凄いな」
さすがの小笠原も、驚いているようだ。
二人が圧倒されていると、いつの間にか背後に現れた係員らしき男に乗船ゲートまで案内された。
車は係員が近くの駐車場に預けてくれるという。
男に車のキーを渡す際、金子はふと気がついて後部座席のドアを開けた。
たしか、高橋とか甘党だったよな。持ってってやろう。
お菓子の詰まった紙袋を取り出す。
係員は少し不審げな目をしたが、何も言わずにキーを受け取り目礼した。
166 :
107:2005/06/09(木) 20:18:25 ID:WyZM4VZj0
悪夢の8連敗から目を背けたいあまり、現実逃避にやる気まんまんのハム人です。
名前欄に文字入ってると本文読みづらいと思うので、以後、初参上スレ番に戻ります。
>>156様
掲示板ありがとうございます。早速使わせていただきました。
「突然の訪問者(1)」
その頃BR会議室では選手がパーティーを楽しむのをよそに着々とゲームの準備が進められていた。
その会議室にはこれからゲームで22人に支給される必要最低限の食料、水、申し訳程度に戦い地域が
書かれた地図、ランダムに武器が入ったリュックが置かれていた。
「これでプロ野球の未来も明るくなるなぁ」
と牛革の椅子に腰をかけた渡辺恒雄前オーナーが言った。
その時ドアをノックする音がした。
「誰だね、こんな時に、まっまさか情報が漏洩したわけじゃないだろうな、
まぁとにかくあけたまえ。」
と渡辺前オーナーが言った。
「はい。」と係の男が言った。
「誰だね。君は?」
「お久しぶりです。渡辺オーナー、星野です。」
そこには星野仙一の姿があった―。
「突然の訪問者(2)」
「何だね?星野君何の用かね?たとえ君でももうこの事は決まったことなんだ。
止めにはいろうったってそうはいかんぞ。」
と渡辺オーナーが言った。
ところが星野はそんな言葉を遮るように
「私はこの法案はご尤もだと思いますし、阻止ししようなんて更々
思っていませんよ。」
「どういうことだね?」
と一人の男が聞いた。
「僕は、あの大会で解説をしていました。プロで挑んだにも関わらずなんだ
あいつらのあのざまは?僕は怒りを感じているんです。
あんなんだから日本のプロ野球は舐められるるんです。アメリカには負けても
オーストラリアのリーグもない格下相手に負けて・・・」
星野は横にいた中畑を睨み付けた。
「突然の訪問者(3)」
星野仙一といえばアテネ五輪の日本代表の指揮を取る予定だった長嶋茂雄
監督が倒れた後に監督代理に最有力といわれた男だった。
「私は解説してた立場から言わせていただきますと解説放棄して何度あの
マウンドへ降りようと思った事か、あいつらは見事に日本の野球の醜態を
世界に見せ付けてくれたな。
僕は、BR法は大賛成ですよ。」
その時BR委員会の一人の男が口を開いた。
「ところでオーナーこのBR法にも勿論指揮官が必要ですよね。」
「あぁ、そうだったな。大事な事を忘れていた。もう中畑なんかには
任せられんしな。」
中畑は、下を見て「大変申し訳ございません・・・。」
「そのBR法の指揮官この私に任せていただけませんか?」
そう星野は言った。
「突然の訪問者(4)」
星野の突然の発言に渡辺オーナーを始めとする委員会のメンバーがざわついた。
「実は僕この様な罰則があるんじゃないかと思ったらやはり実行されると聞いて
こちらへ駆けつけました。」
渡辺前オーナーは一瞬考え込んだ末に結論を出した。
考えた末
「よし、ここは一つ星野君に任せてみようではないか。異議ある奴は
いるか?」
委員会のメンバーはばらついた口調で「特に異議はありません。」
「これで日本のプロ野球界に本当に誰が必要かが決まるわけだな。
また君のおかげで面白い事になりそうだ。」
「任せたよ、星野君。」
と渡辺前オーナーが言った。
「えぇ、期待を裏切りませんよ。」
「これで日本のプロ野球界は未来が明るい。そういえばBR法のBはベースボールの
Bだなぁ。」
星野の発言に張り詰めた委員会の部屋にいた一同が笑い出した。
「ハ、ハ、ハ、」
勿論こんな声は選手達には届いてはいなかった―
なんか超怖い奴が敵にいますが
アワワ ヽ(´Д`;≡;´Д`)丿 アワワ
172 :
170:2005/06/09(木) 21:26:45 ID:K23Tv/+T0
ちょっと過激すぎたでしょうか?
一応映画だとビートたけしがやった役を星野監督
という設定で書いてみたんですが・・・。
気に入らなければ変更していただいてけっこうですので・・・。
いや、全然大丈夫っす!!
びびってなんて・・・((((;゚Д゚)))ガクガクガクブルブルブル
174 :
167:2005/06/09(木) 21:43:37 ID:K23Tv/+T0
22人訂正です。24人でした。
すいません。
1001降臨かよ!KOEEEEEEEEEE!
たださ、アイデアはいいんだけど文章が変すぎるよ。
句読点の位置がおかしいし、特に星野の台詞の意味がわからない。
おせっかいかもしれんが、添削させてもらう。
>アメリカには負けても オーストラリアのリーグもない格下相手に負けて・・・
アメリカに負けるならともかく、オーストラリアのようなリーグもない(ry
>私は解説してた立場から言わせていただきますと解説放棄して何度あの
マウンドへ降りようと思った事か、あいつらは見事に日本の野球の醜態を
世界に見せ付けてくれたな
解説していた立場から言わせていただきますと、解説を放棄して何度あのマウンドへ降りようと思った事かわかりません。
あいつらは見事に日本の野球の醜態を世界に見せ付けてくれました。
>実は僕この様な罰則があるんじゃないかと思ったらやはり実行されると聞いて
こちらへ駆けつけました。
実は僕は、この様な罰則があるんじゃないかと思っていたんです。
そうしたら、やはり実行されると聞いてこちらへ駆けつけました。
無理やり直して、こう。これでもまだちょっと変だけどな。
176 :
75:2005/06/09(木) 22:32:02 ID:bqRRTsW40
〔誤った選択〕1/3
『え?行かない?』
焦ったような声が携帯電話の向こう側から聞こえた。
「別にいかんでもええんとちゃうんかなぁ、ほら『一身上の都合』とかあるやん。」
『いやっ、でも・・・・。』
慌てた様子の岩隈の声を聞きながら「あの時のチームメイトと会えんのは寂しいけどな」と付け足す。
中村(Bu5)は携帯電話を自分の耳と肩に挟み、バックの中に脱いだジャージを畳んで入れていた。
「五輪会やろ?俺も出たことあるからどんなもんか分かるよ。」
『でもノリさん、二枚目の紙見ましたか?」
「ん?強制参加せぇって奴?」
ズボンを横に一回折り大雑把に丸めてジャージを入れたように詰め込む。
もう畳むものが無くなったので、右手に電話を持ち左手でジッパーを閉じる。
忘れ物がないか確認しながら肩に持ち手を掛けた。
その間にも中村は岩隈へ五輪会は参加しないといい、岩隈は二枚目の紙を見たなら参加して欲しいとの押し問答が続いていた。
『[欠席者には重大な罰則]ってのがあるんですよ?』
「でもな、よぉ考えてみいやクマ。何で俺らだけそんな強制参加せなアカンねん。」
『そりゃ・・・・あれでしょう。僕らは銅メダルだったから・・・・・』
「前の時も金取れんかったけど、そんな紙なんか無かったで。」
ひんやりと冷たいアルミのドアノブを回し、扉を開ける。
『でも、前の時はプロとアマ混合でしょう?でも僕ら全員プロの選手で行ったじゃないですか。』
そう言えばその事でよぉ言われたな、とふとあの日を思い出した。
3位に終わり、日本に帰ってきたあの日の事を。
『それもやっぱり・・・・あるんじゃないんですかねぇ。』
177 :
75:2005/06/09(木) 22:32:32 ID:bqRRTsW40
ぎぃっと音がして扉が開き、ロッカールームを出るとすぐ横の壁に寄りかかった。
シドニー、アテネ、オリンピック、バファローズ。
あの日のニュースは大体俺達日本代表をなじる事も無く、もう『過去』の事として扱っていた事を思い出す。
俺らが戦ってきたんは世間にはそんなもんやったんやなと感じた。
自分なりにはシドニーでの屈辱は晴らせたと思ってるし、悔いは無い。
怪我したのはチームに申し訳ないと思ったけど、正直あの環境で野球しても集中出来なかっただろう。
そこまで思いだし、大きく息を吐き出した。
今はとにかく夢に向かって頑張りたい。
「とにかく、俺は行かんで。みんなによろしく言うとってな。」
『ノリさん!』
まだ罰則がどうの強制参加がどうのと聞こえるが無視して終話ボタンを押す。
一息ついて、バックの側面に入れておいた封筒を取り出す。
誰も居ない廊下を歩き、出口へ向かう。
五輪会、強制参加、罰則か。
何であんなにクマの奴は必死になっとったんやろう、罰則で金でも取られるんのが嫌なんかな。
そう思いながら罰金を取られている岩隈の姿を想像して、中村は小さく噴き出した。
そして右手に持った封筒を両手で持ち直すと横にしたそれの中心辺りから裂いた。
びりりと紙が二つの分かれる音が静かな廊下に響く。
その時ちょうど視界にゴミ箱が入ったので、二つになった招待状入りの封筒をその中に入れた。
いつまでも過去に囚われとったらアカンのよ、と自分に言い聞かせるように呟きながら。
中村は夢へと、未来へと向かうためにまず練習場から出る扉に向かった。
引き裂かれた招待状はポツリとごみ山の上にあった。
彼は選択を間違ったのだと最初に知るそれは何も言わずにそこにいた。
178 :
75:2005/06/09(木) 22:33:00 ID:bqRRTsW40
「・・・・・・・・ノリさん。」
その頃岩隈は愛娘の画像になった携帯電話の液晶画面を見ていた。
大きく溜息をつくと車のキーを回し、エンジンをかける。
それでもしばらく画面を見ていた。
中村が居れば何とか行けるかと思っていた岩隈だったが、当の本人はまったく行く気が無く今も大阪にいる。
その事を思いだし、再び溜息をついた。
やっぱり行くしかないのか、元バファローズから一人も出てなかったらダメだろうし・・・・。
助手席の背にかけたタキシードを見て、岩隈は何となく胃がキリキリし始めたのを感じた。
数十秒考えた後、意を決してダッシュボードに携帯電話を入れハンドルを握った。
きらりとバックミラーにかけたイーグルスのロゴ入りキーホルダーが揺れる。
横浜港まで後何分だ?
真新しい地図は岩隈にとりあえず高速道路を降りろと告げた。
きっとこの声の主は悪魔だったであろう。
岩隈はそれを知らない。
179 :
75:2005/06/09(木) 22:37:31 ID:bqRRTsW40
改行と切る位置おかしくてすいませんorzカナリミヅライデスネ・・・
って言うか星野さん参戦ですか((((;゚Д゚)))
>>167 つか一行目で選手がパーティはじめちゃってんのかよ。まだ全然そろってねーだろ。公・星・鴎しか着いてねーし。
それ書きたいなら皆着いてからにしろよ。リレーで時系列ムシすんな。
チームごとの職人さん固定でリレー?
そうするとオリ、阪神の職人さん出てくるまで話進まないよな・・・
阪神の職人さんきてなかったか?近いうちに投下するって。
183 :
167:2005/06/09(木) 23:45:58 ID:K23Tv/+T0
>>175厳しいご指摘ありがとうございます。
どんどん言ってください。
申し訳ありません。
184 :
122:2005/06/09(木) 23:46:17 ID:JnSei3Mr0
185 :
167:2005/06/09(木) 23:57:43 ID:K23Tv/+T0
>>180すいません。
空気読めなくて・・・。
とりあえず最初の文はスルーして読んでください。
本当にもう訳ありません。
>>185 どんまい!よかったら訂正版も投下してみたら?
豚切りだが岩瀬編書いてみたいんですけど…。福留編の人が書いてるなら降りますが…。
187 :
167:2005/06/10(金) 00:41:48 ID:gmbzKKWp0
不快に思った方の為に言い訳がましい事を書き込みさせていただきます。
少し選手のエピソードが続いたので「その頃BR会議室では・・・」
という具合で書いたつもりが空気読めない箇所やおかしい文章が
合った事や読みにくかった箇所があった事をお詫びします。
正直言いますとリレー小説参加させていただくのまだ慣れていない物で・・・。
ご迷惑をおかけしてすいませんでした。
連投スマソ。
あと
>>167さん、毎度スレ上げないで欲しい…。
>>190 メール欄にsageと書いてくれないか。
スレの内容が内容だけにsage進行の方がいいだろう。
「言い訳がましい」とか「慣れてない」とかそういう書き込みはあまりよろしくないぞ。
おまいさんに対するレス全部にレスをつける必要もない。
空気を悪くする要因になりがちだからな。
こんな事で作品の面白さを損なうはもったいないと思う。
がんがれ167。
192 :
167:2005/06/10(金) 01:23:53 ID:gmbzKKWp0
>>191温かいお言葉どうもありがとうございます。
あまりに読んでる方々が不快だったぽいので・・・
余計なお世話かもしれませんが職人の方は作品以外で口を開かないほうが余計な面倒が起きずに済みますよー
と以前どこかで書いていた経験から言ってみる
たしかに厳しいレスもあるけどみんなそれだけ期待してるって事だと思う。
職人さん方は大変でしょうけど応援してます。頑張って下さい。
余計なことをスレで言わないために見守るスレがあるんだしな。
「まもなくプレイボール」
最後に前髪を立たせて、福留は堅い表情のまま背筋を伸ばす。
鏡の中ではやけに余所行きの顔をした自分が見返している。
「タキシードなんてなあ…」
あまり気乗りのしない「五輪会」。
しかも正装で、となれば、余計に重苦しい気になる。
強制参加でなければ、謹んで辞退したいところだ。
黒のタキシードを着こなしてみても、左手の仰々しいギプスの違和感が引き立つだけ。
こんな格好でも出なきゃいけないなんて、と天を仰いでから、ドレスルームを出る。
時計を見れば、集合時間まで40分ほど。
山下公園を眼下に見下ろすこのホテルからなら、大桟橋まで歩いても10分程度だ。
部屋に置いてあるドリップ式のコーヒーを淹れ、忘れ物がないかを頭の中で確認する。
「忘れ物……岩瀬さんか」
名古屋からタキシードで来るわけにもいかないから、大桟橋近くのホテルで1泊しよう、と岩瀬に持ちかけた。
あまり気乗りしない集合だからこそ、気心の知れたチームメイトと一緒の方がいいかもしれないと思ったから。
けれど、岩瀬は岩瀬で別に行くから、と言った。
それならそれで構わないけれど、昨夜から何度か携帯を鳴らしても出ないのが気になった。
また何処かのお姉ちゃんと一緒にいるのか、単に気付かないだけか。
まさか寝坊なんてこともないだろうけど。
何処にいるのか連絡をしようと思って、思いとどまる。
いい大人なんだから、そんなに心配しなくてもいいだろう。
首を振りながら、メモリを呼び出していた携帯を閉じる。
集合場所へ行けば、必ずいるのだろうから。
ポケットに携帯をしまおうとして、何かに気付いたように、もう一度それを開く。
たった3年間しかチームメイトではなかったけれど、福留にとって大きな存在の名前を呼び出す。
どうして電話しようと思ったのか、それは福留自身も分からない。
でも本当は、この招待状が届いた時から、「彼」に電話をしたかったのだ。
自分でもその理由に思い至らなかったから、とうとう今日までかけなかったのだけれど。
社会人の「彼」は仕事をしているのだろうか?
それとも野球部のグラウンドにいるだろうか?
一般人とは違う生活リズムでいるが為に、福留は「彼」がその時間には携帯を取ることが出来るかどうかは分からなかった。
かつては自分もサラリーマン生活をしたことはあるけれど。
何度かのコールのうち、無機質なメッセージか「彼」の不在を教える。
そのまま切ってしまおうか、と思いながら、耳障りな機械音がメッセージを残せと促す。
だから、反射で声が出る。
「お久しぶりです。福留孝介です。
これからアテネ五輪会に向かいます。
その前に話が出来たらと思って電話しました」
用件と呼べるほど明確が意図があったわけではないから、言葉に詰まる。
恐らくあまり長くはない録音時間、もう一言だけ残して、そして携帯を閉じる。
きっといきなり留守電を残された「彼」も戸惑うだろうけれど。
ただ、オリンピックに関することなら、「彼」に訊くのが一番だと思った。
かつての福留のチームメイト。
「ミスターアマチュア」との異名を持つ彼に。
福留が経験したことのないバルセロナ大会の時にも、こんな五輪会があったのか、
一言訊いておきたかったのだ。
こんな不自然な五輪会は、アトランタ大会の時にはなかったのだから。
それでも、宴の開幕は刻一刻と迫っている。
そろそろ大桟橋へと向かう時間だ。
せっかくの集まりに遅刻をして、水を差したくはない。
もう一度身の回りのものを確認して、それから部屋を出た。
帰ってきたら、また電話します。
留守電の最後に残したメッセージを、何故か口の中でもう一度繰り返してみる。
まるで、自分が戻れない道を歩きだしたのを知っているかのように。
それが最後の伝言になるかもしれないと、勘付いているかのように。
福留は長い脚でゆったりと歩き出す。
地獄へと。
話毎にノンブル入れた方が読みやすかったか…?
改行多すぎで一気に書き込めなかったorz
>>186 今気が付いた!
岩瀬編、お願いします。楽しみにしてます!
職人様乙です!
電話した先があの人とは。。
渋いとこついてきますね。。
職人の皆様乙です!
>>166 自分もこの連敗の現実逃避がてら、ここで癒されてます。
204 :
186:2005/06/10(金) 16:53:37 ID:wjpIoV4DO
>>201 ありがとうございます!期待に応えられるよう頑張ります〜。
檻編も書いてみたいが挫折…orz
どなたか青波同士の方、書いてください…。
206 :
39:2005/06/10(金) 19:23:44 ID:RYRU6ue/0
全然オリックスの選手わからんのですが_| ̄|○
とりあえず職人様降臨待ちですね・・・
※それより、自分としては沖原の移籍のほうが痛いんですが(;´Д`)
207 :
186:2005/06/10(金) 19:55:46 ID:wjpIoV4DO
檻編書いたら岩瀬がおざなりになりそうだ…orz
どちらか始まりだけにして後を引き継いでくれる人がいれば…。それかもう最初から岩瀬をお任せする人か…。
>>207 集合するあたりまで書けばあとはもうシャッフルじゃないでしょうか?
どんなキャラかさえわかれば後継いでくれる人もいるかと。
「憂鬱な道のり(1)」
石井は、横浜港までの道を1人で愛車を走らせていた。
身に纏っているのは、糊のきいた黒のタキシード。
案内状で指定された服装だが、そんな服を自分で持っている筈もなく、わざわざ妻が貸衣裳屋で借りて来てくれた物だ。
石井は、まだこの集まりに参加するべきか悩んでいた。その最大の理由は、案内状に同封されていた一枚の紙。
「強制参加」はまだ場合によってはあり得るかもしれない。しかし、「重大な罰則」というのはどう考えてもおかしい。
チームメイトのシドニー五輪経験者、石川にそれとなく聞いてみたが、やはり4年前にはそんな集まりは無かったと言う。
古田も、野球チームだけでの集まりはなかったと言っていた、と宮本から聞いた。
何故今年だけ?しかも、何故船上で?
できる事なら、何か理由をつけて欠席したいと思っていた。
だが、自分には守るべき妻と子がいる。メジャーリーグへ行く夢もある。
「重大な罰則」が何かは知らないが、その妨げになるような事はなるべく避けたい。
そんな風にダラダラと考え続け、一緒に行かないかと誘ってくれた宮本にも素直に「行きます。」とは言えなかった。
そして結局結論は出ないまま、当日を迎えてしまった訳だ。
悩み続ける夫を見兼ねた妻が、用意していたタキシードを身につけさせ送り出してくれたのは幸か不幸か。
210 :
100:2005/06/11(土) 00:38:34 ID:+ikzd4vT0
「憂鬱な道のり(2)」
気の晴れないまま横浜港に着いた石井の目に飛び込んだのは、今まで見た事も無い、今後二度と見る事もなさそうな豪華客船。
そのあまりの巨大さと美しさに、車を降りたまま思わず言葉をなくして立ち尽くす。
「すげぇ……。」
そして直後、段々とワクワクした気持ちが涌いてくる。
こんな豪華な船に乗れるなんて、一生に一度あるかないかの事じゃないか?
船上で何があるのかは分からないが、きっとしばらく我慢すればいい話だろう。
それよりも、こんな立派な船を前にしてここで帰ったら、必ず一生後悔する。
胸の内に涌いて来た興奮と共に、彼の頭もそう結論をつけた。
よく人から「おおざっぱ」と称される性格であるが、この際は「単純」と言った方が正しいだろう。
近付いてくる係員らしき男性に軽く会釈をしてみせた石井が、この結論を後悔する事になるのはまだ少し先の事であった。
211 :
100:2005/06/11(土) 00:41:04 ID:+ikzd4vT0
何か石井が頭弱い子みたいですみません…。
でも私の脳内イメージはそんな感じですorz
212 :
122:2005/06/11(土) 01:09:18 ID:86MxPetz0
保管庫作るって言ってた者です。
職人さんの投下の割にちょっと作業が遅れてます。
ごめんなさい。
「微笑む死神」
五輪会への招待状はこの男、岩瀬仁紀(D13)にもちゃんと届いていた。皆と同じ白い封筒の招待状。
何の躊躇もなく乱雑に封筒を開ける。その中には招待事項とさらにもう一枚の紙が入っていた。
「…[このアテネ五輪会は今大会の野球日本代表に選ばれた選手全員が該当となり強制参加になります。
尚、欠席者には重大な罰則が科せられます]…か。つまりは強制参加というわけだな。」
その中に明記されていた文章をわざと音読してみる。もちろんその文章が意味することは岩瀬にもわからないが彼の直感が途端に働き五輪会への興味を沸き立たせた。
そういえば先程からの何度かの携帯の着信。気にはなったがどうせ福留からのものだろうと思い意図的に無視を続ける。そんなことよりも五輪会のことだ。
「さて…行く準備をしなければね。」
招待状を手でぐしゃりと握り潰し無造作に投げ捨てる。いつもの優しそうな笑顔から想像もつかない恐ろしげな微笑を薄らと浮かべ岩瀬は集合場所に向かった。
「なにか楽しいことがありそうだな…。」
書くと言ってから時間立ちまくりなうえ、稚拙な文章ですいません…。変なところがありましたらご指摘願います。
岩瀬=死神というわけでそのままな…orz
んで檻の方は時間かかってしまう恐れがあるので先に投下できる職人様優先でお願いします。自分も檻編を考えてはいますので様子を見て、ということで…。
一旦保守あげ。
職人様乙です ノシ
216 :
39:2005/06/11(土) 20:22:32 ID:z2Cn8eS40
「その距離500メートル」-1/2-
「さっむいなー・・・。コレだから冬の港は・・・。」
山下公園にある、海を眺めるベンチのひとつ。
ぶつぶつ文句を言いながら、灰色のコートに身を包んだ男が冷えた缶コーヒーと双眼鏡を持って真ん中に座っている。
彼の前をカップルや家族連れが通り過ぎていくが、野球をよく知る者が見れば、(M31)渡辺俊介と分かっただろう。
彼の視線は、大桟橋に停泊している大型客船『ダイアモンド・プリンセス・シー』へと向いている。
「渡辺、久しぶり。」
「おう、来たかぁ。」
渡辺の隣に、(SL22)野田浩輔が座った。「同じベンチに座るなんて、何年ぶりかね。」
「4年ぶりだよ。」
野田は言い、渡辺の視線の先にある大型客船を見た。「うわ、あれか・・・。デカイな・・・。」
野田は渡辺に缶コーヒーを渡した。買ってきたばかりらしく、まだ暖かい。
渡辺は手に持っていた缶コーヒーを一気に飲み干し、2mほど先にあるゴミ箱へとポイと投げた。
缶は放物線を描いてゴミ箱の中へ入った。
「あの船のメインシアターで、例の五輪会が開かれる。」
渡辺は封筒をかばんから出すと、野田に押し付けるように渡した。「ソレ、直さんから来た手紙。」
「中味は、五輪会のおしらせ、ってやつか。」
野田はしばらく渡辺から渡された手紙とコピーに目を通していた。
「・・・野田、他の連中には声かけた?」
「え? あ、ああ。」
渡辺の問いに、野田は渡辺に手紙を返すと、懐から手帳を出してページを繰った。
「あ、その手帳。まだ使ってんだ?」
渡辺のうれしそうな問いに、野田は手帳を繰る手をとめ、手帳の表紙を見た。表紙下のほうに、『Nippon Steel』の文字が入っている。
「ああ。・・・毎年総務が送ってくれるからね。これ以外の手帳を見ても使いづらいよ」
野田は苦笑しながら言うと、手帳の目的のページを開いた。
「沖原さんと赤星、杉内くん、山田くん、廣瀬くんはいつでも連絡が取れる場所にいる、と。
阿部は石川と『事務局』に行くとか。吉見はココに来るって言ってたが・・・。」
「ま、関西方面は沖原さんと赤星がいるから心配してないけど。阿部くんと石川くんが微妙に心配か。・・・吉見くんは、まだ来てないね」
「近くだし、待ってればくるさ。」
野田は手帳を懐に収め、客船へと視線を移した。
217 :
39:2005/06/11(土) 20:26:43 ID:z2Cn8eS40
「その距離500メートル」-2/2-
「あ!お久しぶりです!」
ラウンジデッキに下りてきた(YB8)相川亮二は、見知った二人組を見つけて声をかけた。
(M18)清水直行と(M30)小林雅英はソファに座っていたが、相川の声に席を立つ。
清水は相川の笑顔にホッとした顔で会釈する。小林は空になったグラスをウェイターに返しながら言った。
「落ち着かないし、さっさと終わって、どっかでパーっと飲みなおしたいね!」
「俺らだってそうですよー、こんなカッコも慣れてないしこんな豪華客船も慣れてないし。」
相川は笑いながら言う。「やっぱりユニフォームの方が気楽ですね。」
「俺ら? 他に誰かいたんか?」
清水の声に、相川は何がなんだか分からない、といった顔をして、振り返った。
「え、だってそこに三浦さんが・・・あれ? 三浦さん?」
相川の視界に入るはずの、三浦の姿はそこにはなかった。
「・・・すいません、遅くなりました!」
客船を見ながらしばらく昔の話や近況を話していた渡辺と野田の後ろのほうから声がした。
野田が後ろを向くと(YB21)吉見祐治が遠くのほうから走って来るのが見えた。
「ああ、おはよう〜。」
渡辺は笑顔になり手をあげる。「寝坊でも?」
「やだなぁ、またそのネタですか?」
吉見は渡辺に笑いながらいうと、野田の反対側に座った。
「何も起こらなきゃいいんだけどね。」
渡辺の言葉に、野田ははあ、と深く息を吐く。
「あの、もう・・・。そうだ、三浦さんたちは船に乗っちゃいましたかね・・・?」
吉見は思い出したように、二人に聞いた。
「さぁ? ・・・どうして?」
「俺、三浦さんに連絡したんですけど、電話にでなくて・・・。家にも誰もいないし。」
「出かけてるんじゃないのか?」
「いや、おとといも電話したのに誰も出ないんですよ? 迷惑かなとおもいつつ三浦さんの自宅の方にも連絡したけど・・・。」
渡辺は、吉見の言葉に空を仰ぎ、目を閉じた。
218 :
39:2005/06/11(土) 20:28:07 ID:z2Cn8eS40
30行以上書き込めないのか。。。orz
コネタ削っちゃったよ・・・
「不運な彼ら」
晴天の下のヤフースタジアム。谷はベンチで自分の出番が来るのを待っていた。
「佳知、五輪会の手紙…読んだか?」
自分の打順を終えて戻ってきた村松が谷の隣に座る。
「読んだよ。有人は行くのか?」
重い表情で放たれた村松の言葉に、谷は今朝家に届いていた封筒を思い出す。
リターンアドレスどころか、差出人の名前すら無い無機質な白い封筒。
訝しんで封を開けば、2004年アテネ五輪会の案内状と追伸文が入っていた。
「強制参加だからな。行かざるをえないだろう…。お前は?」
「俺も一応行こうと思ってるけど…前の五輪会とちょっと違うんだよなぁ。」
以前経験した五輪会の時には無かった、妙な追伸文が引っかかる。
「前の…?ああ、シドニーのか?」
「シドニーの時は野球限定じゃ無かった。強制参加でも無かったし、厳しい罰則なんかも無かった。」
「…かなり違うじゃないか。」
そこまで違うのなら、もう少し怪しんだらどうだ?と村松は苦笑いする。
いくら怪しんだ所で行かない訳にはいかないのだろうが。
「…実は、野球限定ってのには正直助けられてるんだ。強制参加もさ…。」
谷の言葉の意味に、村松はすぐに気づ。
「…奥さんか?」
「……同じメダルを取れてれば良かったんだけどさ。」
谷は、夫婦で金!と笑顔で言い切っていた妻に申し訳なさと劣等感を感じていた。
オフに入れば、またTVや雑誌に夫婦で出演したりしなければならない不安と共に。
五輪会の案内は、そんな夫婦共演から少しの間でも逃れる為の絶好の言い訳だった。
「私は強制参加で一競技限定の五輪会の案内なんて一度も来た事無いけど?」
と妻に怪しまれたが、実際にその追伸文を見せたら一応納得してくれた。
「野球は団体競技だ。金が獲れなかったのはお前だけのせいじゃない。」
村松は谷の肩を軽く叩いて、アテネ五輪での自分を思い返した。
自分も怪我さえしていなければ少しは状況が変わっていたかも知れない。
目の前で重圧に苦しむチームメイトより、自分の方が罪は重い。
そんな罪悪感もあった村松の励ましを、谷は力なく笑って返した。
「亮子もそう言ってくれてるけど…周りがな。」
アテネ五輪の前は夫婦で金メダル!と当たり前のように期待されてきた。
その期待に答えらたのは、妻だけ。夫はギリギリ及第点の銅メダル。
2人並べば嫌でも比べられる。マスコミの前はおろか、世間の前でも。
「…お前、苦労してるな。」
村松は遠い目でグラウンドを見つめる谷の姿に哀愁を感じた。
「有人こそ。せっかくFAでここに来たのにな…。」
谷はグラウンドに青々と茂る天然芝を見つめていた。
村松は少しでも多く天然芝…このヤフースタジアムの上でプレーしたくて、このチームに来たのだ。
だが合併騒動で決まった決断…来年からオリックスの本拠地は大阪ドーム。
また長い間人工芝の上へと立たされる事になる村松の悲劇に、谷はそれ以上何も言ってやれなかった。
「しょうがないさ…。俺達の力じゃどうにも出来ないだろう?」
もう諦めはついた、と笑う村松が不憫でならない。
「ストライキで…どうにかなるかもしれない。」
谷の呟きには、僅かな希望が込められていた。
数日後、日本プロ野球史上発初のストライキが決行される事になる。
だが、それ以上に恐ろしい事が忍び寄ってきているなど、二人はまだ知る由もなかった。
代理であげました。
文の訂正は以下のとおりだそうです。(役立たずでごめんなさい・・・)
谷の言葉の意味に、村松はすぐに気づ。
→谷の言葉の意味に、村松はすぐに気づく。
それ以上に恐ろしい事が忍び寄ってきているなど、
→それ以上に恐ろしい事が忍び寄ってきている事など、
以上連絡でした。
>>219-221 代理しようと思ったら先こされ・・・お仕事早いっす、GJ!
さて、皆さん。相談所にオリ職人さん降臨されましたよ!
これで12球団ソロッタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
223 :
いわせな人:2005/06/11(土) 21:36:47 ID:CHkLr96LO
>>219 檻職人様、GJ!です。
そういえば虎は誰か書いてましたっけ…?
>>223 すいません、虎がまだでした…orz
どなたか書くと言っておられたんで…その気になってました。
「胸騒ぎ」
結局来てしまった。
冷たい海の風が頬を叩く。安藤優也は、後悔と疑念を抱いたまま横浜港に到着した。
目の前には豪華客船、ダイアモンド・プリンセス・シー。
「来たくなかった」というのが正しいだろう。五輪に関して、チームとしてもそうかも
しれないが個人的にも、いい思い出は実際のところ無い。戦力になりに行ったのに、
勝ちに貢献しに行ったのに、何も出来ないままアテネの夏は終わった。悔しいというより
自分に呆れた。春先から思う通りに投げることが出来なくて、裏切られっぱなしの自分に
とどめを刺された感じ。とてつもない虚無感と劣等感が彼を襲った。
準決勝で敗れて、3位決定戦ではみんな解き放たれたように溌剌なプレーで銅メダルを手にした。
世間とは関係ないところで束の間の自己満足をした。彼はその中にも入れなかった。
それから暫く引きずった虚無感と劣等感は癒えはじめ、少しずつ五輪のことも忘れかけていた折、
招待状は届いた。
妙だと思った。
直接家に届くあたりや、1月という時期、それに別刷りの追伸に刻まれた「強制参加」の文字。
「五輪」という文字に反応し再び襲った心痛もあいまって、この会に参加することに気が進まずにいたのだった。
しかし、来てしまった。当たり前のように誘い合わせの電話をかけてきた彼に流されて。
「おーい入らへんの?」
藤本敦士が振り返って自分を呼ぶ。彼はいかにも寒そうに小さな体をよりちぢこませて、
ぴょんぴょん跳んでいる。
「ごめん」
「おう。あー着慣れんわこんなん」
しかめっ面で縮めた体をよじらせる。コートの下はタキシードなのだろう。安藤自身も着ている。
こういうの俺たちには合わないな、と返事を返す間もなく次の一言が飛んでくる。
「でかすぎちゃうこの船」
いつもとなんら変わりなく、寧ろ楽しみにしている様子の藤本。彼は、此処へ来るのに迷いは
なかったのだろうか。それ以前に、この招待状に引っ掛かるところはなかったか?
怪しいとは思わなかったか?
「なあ――」
「ん?」
「あ、いや」
ずっと聞こうと思っているが、結局聞けないでいる。心のどこかでストップがかかる。招待状のこと。
藤本は首を傾げたが、深く問うようなことはせず、前を向くと封筒を右手の人差し指と中指で挟んで
ひらひらさせながら絨毯の通路を歩いていく。
「久しぶりやなー、みんなで会うの」
「そうだな」
考えないようにしよう。此処まで来たんだから。パーティを楽しもう。そうしようとする毎に、頭の中が
其れでいっぱいになる。
胸騒ぎとはこういうのを言うのだろうか。
「あー俺もフレンドパーク出たかったなー」
藤本がダーツの矢を投げるジェスチャーをした。
その手に持った手紙がひらりと舞って、落ちた。
遅くなりました。なんか他の職人さんの投下いっぱいきてますが
あまり読まずに投下してしまいました・・・
まずいとこあったら指摘してくださいね。
虎キター!職人さん乙です!
フジモンかわいいなw
今度こそ12球団ソロッタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
229 :
かもめw:2005/06/12(日) 01:21:54 ID:unUUHihV0
相変わらずすげぇ曲だな・・・
あああ、誤爆したっす。。。
わすれてくれ。
「微かな期待」
「あーああんま気乗りしねーな。」
その頃18番松坂大輔は自宅にいた。
松坂大輔は、何度も何度も招待状を読み直していた。
『一体、重大な罰則を科すってどういうことだ?』
ずっとそれが気にかかっていた。
その時だ。
「大輔」と自分の事を呼ぶ声がした。
妻の倫世だった。
「何だよ。」
と大輔が言った。
「見て、このスーツ私が日テレのアナウンス時代にお世話になってた
スタイリストさんに特別にオーダーしておいたの。」
そのスーツは、確かにセンスは悪くなかった。
大輔は、ため息混じりに言った。
「おい、そんなに気合入れなくてもいいよ。正直行きたくねぇし、俺たち結婚
してオフに近場の温泉とか行きたいなぁって思ってたんだよ。」
しかし倫世は大輔に思わぬことを言った。
「私思うんだけどこれってメジャーか何かの選考会に思えるの。」
「メジャーの選考会ねぇ・・・」
と大輔がため息混じりに言った。
確かに日本は銅メダルに終わったとはいえあの野球大国のキューバに大差
で勝って一人で投げきった松坂大輔に対しては評判は悪くは無かった。
日本のメディアも「メジャーのスカウトが注目してる」と騒がれて
現に大輔を獲得に動いている球団も数球団あるとも言われている。
232 :
231:2005/06/12(日) 01:44:36 ID:/duyU/Ji0
「そうなればメジャーリーグ関係のお偉方さんとかもたくさん来ると思う
の。私の時もそうだったけどそういう方たちの前では、きちっと正装して
行くべきなんじゃないかしら?」
確かに倫世の言う通りだ。
「メジャーか・・・。」
大輔は、メジャーリーグへの夢が全く無いといったら嘘になる。
同じチームで予選で戦ったメッツへ行った松井稼頭央を見て
自分もいつかは・・・と思っていた。
倫世の言ってる事はその時の大輔には、満更でもないように思えてきた。
「大輔、こんなチャンス逃す手ないじゃない。私もあの時現地で仕事で
見てたけど大輔は本当よくやってたわ。怪我してたにも関わらず最後
迄投げきってそれがメジャーの人たちに通じたのよ。」
「そうだよな。」
「行っておいでよ。」
「あーぁ。」
大輔の不安は、倫世の言葉によって不安から希望へと変わってきた。
「確かにこんな願ってもいないチャンスかもしれないよな。」
「忘れ物は無い?気をつけてね。」
大輔は、スーツが入った紙袋を車の後部座席に乗せた。
「行ってらっしゃ〜い。」
「行ってきます。必ずいい報告持って帰るから。」
大輔はそう言い残し指定された横浜の船上のパーティー会場へ
車を走らせたのだった―
233 :
75:2005/06/12(日) 05:07:03 ID:dB8jMg1z0
岩隈は『ダイヤモンド・プリンセス・シー』の船先を見ながら呟いた。
「これかな・・・・・」
他に船は無いし、集合場所は横浜港だって書いてあったし、多分これだろうな・・・。
いや、もう一度確かめた方がいいかも知れない。
そう思い、買ったばかりのタキシードの懐から招待状入りの封筒を取り出し、中のものを右手で抜き取った。
そして読もうとするがこの季節特有の強く骨にまで染みこむような寒い風にあおられ、危うく招待状を海に落とすところだった。
どうせなら貰ってなかった事にしたい、と思いながらも飛ばないようにピンと両手で伸ばして読んだ。
集合日は今日、横浜港に停泊中のある客船にて五輪会を行う。
そのような事が書いてあった。
岩隈は再び顔を上げてその紙に印字してある名前と、目の前の海に浮かんでいる白い船の側面に書いてある文字が同じがどうか確認した。
・・・・間違いない、これだ。
風にはためく自分のコートの裾を見ながら、驚きより何より先に岩隈の心に浮かんだのは諦めに近い感情だった。
もうここまで来たんだから帰れない、という気持ち。
しかし同時に、別にこれに乗ってアメリカとかに行く訳でもないのにという自分自身に対しての疑問が生まれた。
その答えは簡単だった。
もう一枚、封筒から三つ折にされた白い紙を取り出す。
招待状を左手の人差し指と中指で挟み、今度はそれを読んだ。
何度目とも分からないほど読んだ文章。
今なら空で言えるかな、と少し自嘲した。
不安、なのだ。
この紙に書かれた『強制参加』と『重大な罰則』の意味するものが。
普段はあまり何事も深く考えない岩隈であったが、この2つの言葉だけは招待状を貰ってからずっと頭の何処かに引っかかっていた。
それに加え、中村の不参加。
人見知りが激しく口数もそれほど多くない岩隈は、自分でも意識しないうちに誰か自分の身代わりになってくれそうな人が居ないか探す癖があった。
しかしそんな性格と癖を知っているはずの中村の欠席。
今日はアテネ五輪で顔見知りになったメンバーだけとは言え、気後れしていた。
234 :
75:2005/06/12(日) 05:07:21 ID:dB8jMg1z0
封筒に招待状と紙を戻し、すぐ出せるようコートの右側のポケットに入れる。
ふと思いだし、反対側のポケットから携帯電話を取り出した。
携帯電話を開くと、カチッと音がする。
そして明るくなった画面には愛娘の写真、時計と今日の日付の他には何も無かった。
もう一度ノリさんに電話掛けてみようか。
そう思い一旦はリダイヤルに当たるボタンを押そうとした。
しかし、押せずにそのまま数秒が経った。
やっぱり止めとこう。
岩隈は押そうとしたその指で隣のボタンを押した。
馴れた指使いで画面の壁紙を正月に家族全員で撮ったものに変えた。
笑顔が溢れる液晶画面を見て、ふっと笑みがこぼれる。
携帯電話を畳むと、さっきした行動とは逆にコートのポケットの中に戻した。
そしていささか重い足取りではあるが船に沿って歩き始めた。
帰ってくるよ、帰ってきたらなんか中華街でお土産買おう。それで家に帰るんだ。
自分に言い聞かせるように岩隈は4,5回そう呟いた。
そして乗船ゲートの前に来た。
受付の係員に無言で招待状入りの封筒を渡すと、何かの機械にそれをかざした。
招待状になんかICチップでも入ってたのかな、など思いながら岩隈はその一連の動作を見ていた。
「大阪近鉄バファローズの岩隈様でございますね。」
「はっ、はい。」
ぼんやりとしていた岩隈は、自分の名前をいきなり呼ばれ心臓がバクバクとしたのが自分でも分かるほど驚いた。
係員はそんな岩隈に関せずといったように、白い封筒を返す。
「このままお進みください、それではいい旅を。」
そう言ってにこりと笑った。
岩隈は白い封筒と深く頭を下げる係員を見比べてからそそくさとその場を離れた。
235 :
75:2005/06/12(日) 05:08:06 ID:dB8jMg1z0
迷う、絶対迷う。
豪華な調度品に囲まれた岩隈はすぐにそう感じた。
タラップを上りきったその先は、さっきまでの灰色の世界はどこに行ったのかと思うほどきらびやかで華美だった。
フラフラと言った方が合いそうな歩きで、まず岩隈はこの船のつくりについて書かれた紙やパンフレットが無いか探した。
方向音痴ではない自信があったが、かといって物覚えに自信がある訳ではない。
数分後、ようやく船内の紹介プレートを見つけ、じっとそれを眺めた。
自分が今居るこのデッキに集合場所であるメインシアターがあるのが分かり、とりあえずほっとする。
しかし、ある事に気が付いた。
『五輪会』はオリンピックに出た選手が呼ばれると中村に聞いた事を思い出したからだ。
オリンピックは何も野球だけが出れた訳じゃない、他の柔道やレスリング、バレーボールにサッカー・・・様々な種目が日本代表という看板を背負って出場したはず。
それならそれなりに人が居てもおかしくないはず。
なのに今、あるべき足音や話し声が全くといっていいほど聞こえない。
右手にはめた腕時計が指す時刻はあと一時間足らずでこの船が出港することを示しているのにもかかわらず、だ。
やっぱり、何かおかしい。
岩隈の心は不安の濃い霧に加え、まるで新月の夜になったかのごとく真っ暗になった。
自分の他には誰も居ないと感じさせるような、音の無いこの場所が怖かった。
左手をコートのポケットに突っ込み、そっと携帯電話のプラスティックで出来た表面を撫でながらさっきとはまるで違う足取りで乗船口に向かった。
入り口に向かえば、いつかきっと誰かが来るはず。
そう信じて。
236 :
75:2005/06/12(日) 05:15:00 ID:dB8jMg1z0
いつの間にか空が明るい・・・・orz
とりあえず、Bu岩隈乗船完了です。
時間的には「その距離500メートル」の少し後ぐらいのイメージで書きました。
って題名忘れてるorz
〔不安〕でお願いします。
職人の皆様乙ですw
新作読むの楽しい〜
※しかし、あげてもぜんぜん上位に上がりませんなぁ・・・
238 :
107:2005/06/12(日) 12:08:21 ID:2kENEVWo0
. .... ..: : :: :: ::: :::::: :::::::::::: : :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
∩F∩ . . . .: : : ::: : :: ::::::::: :::::::::::::::::::::::::::::
/:彡ミ゛ヽ;)ー、 . . .: : : :::::: :::::::::::::::::::::::::::::::::
/ :::/:: ヽ、ヽ、 ::i . .:: :.: ::: . :::::::::::::::::::::::::::::::::::::::
/ :::/;;: ヽ ヽ ::l . :. :. .:: : :: :: :::::::: : ::::::::::::::::::
 ̄ ̄(_,ノ  ̄ ̄ ̄ヽ、_ノ ̄
すいません、ハムの略号FsじゃなくてFでした…ファン失格…
苦難スレの突っ込み見るまで素で気づかなかった…ほんにいつまで東京時代なんだよ…
保管庫さん、申し訳ありませんが、うpする時に直してくださると大変ありがたく…
11連敗に加え、リアル金子は二軍落ち…ああ、もうどうしたらいいか…
>>107 ガンガレ。
今はチームを信じて応援するしかないですわ。
もしできるんであれば、球場に行って声をからして応援するのが一番なんだけどね。
鴎の時も、信じて応援してたけど、・・・辛かったなぁ・・・orz アアン
今は暗くても、いつかは絶対晴れる日がきますよって。。
※ごめん、ぜんぜん違うネタでマジレスしますた。
なんか続々投下されてますね。皆さん乙です!
241 :
89:2005/06/12(日) 22:24:29 ID:JSA6JX++0
「デッドライン」
タクシーから下りると、凍てつくような潮風が頬を掠めた。
「さっびー!」
木村は思わず声に出し、背を丸めると前方に居る黒田の背中の後ろに隠れる。
何とか寒さを紛らわそうとしたが、黒田が振り返り横に並んだ所為で盾となるものが無くなってしまった。
寒い寒いと連呼しながら仕方なく歩き出した木村。小さい体を一層縮める木村を笑いながら黒田も歩き出した。
風に晒されたコートがはためき、ばたばたと音を立てる。
大桟橋に向かう二人の後方で、タクシーは何かに怯えるように急いでその場を去った。
「アレ、ですよね。」
「あーそうだろ。アレしかないじゃん。寒い。何でもいいから早よ入ろ。」
アレ、と黒田が指差した先には、横浜の美しい景色に馴染む、思わず目も眩みそうな豪華客船。
黒田の言葉に一度適当な返事をしてから、木村は顔を上げ足を止めた。
「でか・・・」
「ほんまにアレ、なんすかね。」
「アレ、やろ、多分。・・・写メール送ってやろ。」
早速携帯を取り出し、恒希喜ぶかなぁと息子の名前を口にした木村。そんな木村の嬉しそうな顔を見つめ、黒田は小さく息を吐いた。
さっきからしていた、予感めいた嫌な胸騒ぎがすっと消えていく。思い過ごしだったんだろうと自分に言い聞かせ、黒田は歩き出した。
いつも石橋を叩いて渡る自分の腰の引けた性分と、木村の何にでも向かっていく姿を比べて思わず苦笑を漏らす。
エースになりきれない自分と、長年ユーティリティープレーヤーとしてチームを支える木村の違いはそこだ。
「見習わんとなぁ。」
「ん?何が?」
メールを送り終えたらしい木村が隣に並び、不思議そうな視線を向ける。
黒田は苦笑を浮かべ、何でもないと返した。
「そいやお前はいいの?電話とか。」
「さっきしましたよ。」
「ひなちゃん今日は話してくれた?」
「嫌味すか。」
木村のからかう視線に緩み切った笑みを返し、今日はバッチリ、と続けた黒田。
暫くの間、二人は可愛い子供達の話に花を咲かせていた。
242 :
89:2005/06/12(日) 22:24:56 ID:JSA6JX++0
「やっぱ、でかいっすね。」
今一度、『ダイヤモンド・プリンセス・シー』を目の前にして思わず二人は息を飲んだ。
広島で見る船と言えば宮島に渡るフェリーや高速船、大きくても戦艦で。それとは段違いの華やかさとオーラがある。
「・・・コレ、用意出来るなら、こんくらい出してくれるよなぁ。」
ふいに木村が呟いて、コートの右ポケットから取り出した紙切れ。
黒田はそれに目をやると、思わず吹き出した。
「何領収書なんかもらってんすか。」
「取れるモンは取っときゃいいんだって。」
「まぁ、そりゃそうすけど。」
「最悪選手会で頼むよ、新選手会長さん。」
「また嫌な話題を・・・ちなみにそれは会計に頼んで下さい。」
「あの会計じゃ心もとない。」
こっくりと頷いた木村に、黒田は新しいカープ選手会のメンバーを思い出し笑った。
暢気なものだった。
この五輪会への不信感を振り払ったのは、シーズン終盤なんとか定位置に落ち着いたチーム事情。
新しく生まれ変わろうとするチームに、希望と期待、そして決意があった。
先を見据える二人には、この会の真の目的等知る由もなかったのだ。
二人はアテネでもそれぞれの仕事を果たしていた。その事が危機感を遠ざけたのかもしれない。
「あ、あそこみたいっすね。」
「皆もう来てんのかなぁ。」
乗船ゲートへと進む二人の歩調が、少し早くなった。
それが地獄へと続く道のりだとは知らずに。
243 :
89:2005/06/12(日) 22:27:27 ID:JSA6JX++0
プロローグだけ参加しようと思ってたんですが一応船まで。
この後は他の職人さん、又引き継ぎいでくれる方に任せます。
職人さん方続き楽しみにしてます。がんがってください。
それではお粗末でした。
職人様 乙ですw
なんか下がってきたので一度保守あげしときます。
どんどん新作きてますねw
12球団のプロローグが出たところで思ったことがあるんですが
このゲームってどうやって進めていくんですか?
チームごとor適当にくじ引きか何かでタッグを組ませて戦わせる
あるいは、単独で戦うか?
職人さん方目障りでしたらすいませんでした。
>>245 ルールや内容に関する打ち合わせは皆さん相談用の掲示板でやってるよ。
ネタバレになるから、ここでは聞かない方がいいかも。
過去レスにあるから言ってみたら?
でも書き手じゃないならあんまりそういう質問しない方がいいと思う。
248 :
245:2005/06/13(月) 01:40:57 ID:o++s2F4l0
>>247見てきました。
失礼しました。
逝ってきます。
249 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/13(月) 18:54:36 ID:2blyH6tK0
これ面白い
期待age
[消えた疑念]
「これが・・会場のある船か。でかいな・・」
目の前にそびえる(当にそびえると言う表現が相応しいような)巨大客船ダイアモンド・プリンセス・シーを眼前にして和田毅(FDH21)はしばらく言葉を失った。
全長290m、全幅37.5m、総トン数116,000トンの白亜の美しい船体が静かに横たわっているさまは当に圧巻と言うに相応しかった。
(こんなのチャーターする金があるなら各球団に援助でもしてくれればいいのに・・)
彼のいた球団は資金不足で先日身売りしたばかりだ。
幸い良い親会社がついてくれたおかげでバッファローズのような最悪の事態は避けられたが。
(写真とって後でスギや渚に送ってやろうかな)
こんな豪華客船に乗ったなんてこと知ったらあいつら悔しがるだろうな、と和田は同じチームの悪友たちを思い浮かべ小さく笑った。
それにしても寒い。
海から吹き付ける風は冗談ではなく身を切るような冷たさで和田はコートのポケットに両手を突っ込み首をすくめて寒さをやり過ごした。
早く風が防げるところに入ってしまいたかったが初めての場所に(しかもこんな豪華客船に)一人で入っていくのはさすがにためらわれ、また五輪会も初めての経験だったため事前に同じチームの城島健司(FDH2)と船の前で待ち合わせをしていたのだ。
(みんな元気かな?)
船を見上げながらあのアテネの夏空の下で共に戦った同胞のことを思う。先日の東京フレンドパークの撮影の際、何人かとは再会を果たしたがそれでもまだ会えなかった人のほうが多い。
あの押しつぶされるようなプレッシャーや焦燥感はもう二度と体験したくないと思ったが、終わってしまえば懐かしく思い返すことも多かった。
なにより自分は良いピッチングが出来たと自信と誇りと充足感を持ってあの夏を振り返ることが出来る。結果は決して満足のいくものではなかったが最後に勝ち投手になって終われたことは自分の中では大きかった。
。
251 :
250:2005/06/13(月) 19:32:05 ID:xTdTnOU80
(あれで、俺は完全燃焼できたんだよな)
そう思うと自分は幸せだった。ただ自分より年長の選手たちは金メダルを逃したことを非難され、そしてそれ以上に自分を責め苦しんだ。
彼らがどのくらい真剣に野球に取り組み、どれだけ必死に期待に応えようとしたか、そしてあの舞台で普段通りの実力を発揮するのがどれほど難しかったかを知っているだけに胸が痛んだ。
(みんな元気になってるといいけど・・)
こんなことを思うのは傲慢かもしれないけれど、そう願わずにはいられなかった。
(ジョーさんはまだかな?)
かじかむ手に息を吹きかけながら辺りを見回すが、周囲には城島どころか他の選手も誰一人として見当たらない
(…?みんなもう船に入ったのか…?)
そこで和田は初めて違和感に気づいた。
人がいなさ過ぎるのだ。
選手はもう船に乗り込んだにしてもマスコミや関係者、または五輪会に関係ない一般の横浜港の利用者までまったく見当たらないのは不自然すぎる。
(どういうことだ…?)
252 :
250:2005/06/13(月) 19:33:58 ID:xTdTnOU80
閑散としたターミナルを見渡しながら和田は眉間に皺を寄せ考え込んだ。そもそもこの五輪会は不審な点が多い。
野球選手だけが招待されたこと。開催日が多くの選手が自主トレ期間中であろう1月に設定されたこと。説明の無い強制参加。それを破れば重大な罰則が下されるという脅迫めいた追加文。
前回の五輪経験者である杉内に聞いてみてもシドニーではこんなことはなかったと言う。
フレンドパークの収録で久々に再会した三浦や宮本もこの五輪会には疑問を感じているようだった。もっとも上原は長嶋監督が来るから体面上強制参加を課しているだけだろうと言っていたが・・・
先程まで圧倒されるばかりだったダイアモンド・プリンセス・シーはその堂々たる美しい巨体を変わらず静かに佇ませていたが、周囲の寒々しいまでの閑散さも相まって今度は不吉な印象を和田に与えた。
そういえば同僚の杉内やフレンドパークで再会した岩隈がしきりに嫌な予感がすると繰り返していたのが今更ながら思い出され、和田の胸中に暗い影を落とす。
253 :
250:2005/06/13(月) 19:38:26 ID:xTdTnOU80
(そういえば、皆やけに五輪会に対してネガティブだったよな・・?)
五輪会に出席する全員とそのことについて話したわけではない。だがフレンドパークの出席者、宮本・三浦・清水・小笠原・岩隈・石井−上原に聞いた話では高橋や黒田もこの会に対して消極的だったらしい。
責任感の強い面々だからアテネで十分な結果を残せなかったことを未だに引きずっているのだと思っていたが・・
皆、言葉では言い表せないような不安を感じていたのだとしたら・・?
和田はもう一度、ターミナル内を見渡した。
やはり人っ子一人、マスコミも一般客も港関係者さえもいない。誰一人存在しないのだ。
和田は瞬時に鳥肌が立つほどの恐怖に似た不自然さを感じた。
(やっぱりおかしすぎる・・)
誰もいないなんてありえない。
254 :
250:2005/06/13(月) 19:38:59 ID:xTdTnOU80
「おい」
次の瞬間、不意に何者かに後ろから肩を叩かれ和田は飛び上がらんばかりに驚いた。
「ひっ!」
「なんだ・・その驚きようは」
そこには城島が憮然とした表情で立っていた。何のことは無い待ち合わせをしていた城島が到着したのだ。
「なんだ・・ジョーさんですか」
「なんだとはなんだ。人を化け物のような顔で見やがって」
ほっとした和田に対し城島は苦笑しながら冗談交じりに毒付いてみせる。
「あはは・・すみません。考え事してて。」
「なんだ?考えすぎるのは相変わらずか。何をそんなに考え込んでいたんだ?」
「あー・・いえ、大した事じゃないです」
和田は曖昧な表情で先程まで考えていたことを誤魔化した。
城島と会ってほっとしたこともあり先程までの不安や疑念が急に子供じみたものに感じられ、わざわざ言葉にするのもためらわれたからだ。そう、何もかも確証の無いことだ。自分の早とちりかもしれない。別に騒ぐようなことじゃない。
城島は不審そうな顔をしたものの特に追求することは無く二人はそのまま他愛も無い話をしながら船に向かった。
和田には城島と会ったことにより子供っぽい不安で騒いだり動揺した姿を見せたくないという『見栄』が生まれ、同時に「城島さんがいれば大丈夫」という無意識の内の『甘え』が生まれた。
この相反する感情は城島という絶対的な存在に支えられているホークスの若手投手陣全体にいえることであり彼ばかりを責める訳にはいかない。
しかし、もしここでもっと慎重になっていれば。または感じた疑念や不安を率直に話していれば。あるいは未来はもっと変わっていたかもしれない。
だが先程までの不安はすでに無かったかのように嬉々としてダイアモンド・プリンセス・シーに乗り込む和田には知る由も無いことであった
255 :
250:2005/06/13(月) 19:43:57 ID:xTdTnOU80
長々とすみません。
ホークスを誰も書かれてないみたいだったので僭越ながら書かせていただきました。
つたない文章なので見苦しいところもあると思いますが、誤字脱字も含めてよろしければご指摘ください<(_ _)>
×バッファローズ
○バファローズ
職人さん乙です〜。でも一個だけ、
×バッファローズ
○バファローズですよ。
鷹職人さん乙です!
ところで、最初に鷹を書いた人の城島はゴリラと人間の二重人格設定て
どうすればいいんでしょうね…
細かいこと全然わからないし。
あれが書き手さんが鷹を敬遠する原因な気もするんですが。
「彼らの相違点」
「…凄いな。」
村松は国際客船ターミナルに停泊している船を見上げて思わず呟いた。
『ダイアモンド・プリンセス・シー』。まさにその名に相応しい豪華客船。
…確かにこの船ならタキシードだな。と村松はコートの下に着込んだタキシードを覗く。
普段滅多に着る事の無いそれは、まだ体に馴染まず動きづらさを感じる。
ホテルから出る時からずっと、その着慣れない服を気恥ずかしく思っていたのだが、
実際この船を見上げてしまうと、タキシードで良かったと安堵する。
「有人、どうした?」
既に乗船ゲートの方に向かっていた谷が立ち止まっている村松に振り返った。
村松は一旦船を見上げるのをやめて、冬の潮風に凍えつつ谷の方へと駆け寄る。
谷は豪華客船に驚いている様子も無く再びゲートの方へ歩き出す。村松もその後に続く。
ゲートにつくと、待機していた係員に封筒はあるかと聞かれる。
2人がコートのポケットに入れていた封筒を素直に差し出すと、
係員は慣れた手つきで封筒を機械にかざした。
無機質な機械音がした後、モニターを確認した係員の手は2人を船の方へと導く。
「オリックス・ブルーウェーブの谷様と村松様ですね?
承っておりますので、このままお進みください。」
笑顔の係員に促されるように、谷と村松はタラップを上がっていく。
「…ブルーウェーブの谷様、か…。」
谷は歩きながらため息をついて、潮風にかき消されそうな声で呟いた。
その小さな呟きは、重い皮肉が込められているように聞こえた。
村松の耳にもその呟きは入ってきたが、何も返す言葉が思いつかず渋い顔で黙り込む。
谷も言葉を続ける事は無く、二人の間に沈黙が漂う。
オリックス・ブルーウェーブは、オリックス・バファローズになる。
天然芝の本拠地はおろか、ブルーウェーブの名も消える事が確定した。
その上ファンは近鉄が消えた、と合併球団を非難し、新球団を応援する。
そんな理不尽な状況の中、谷は今どのような心境なのか。
先程係員に呼ばれた時、村松は何とも思わなかった。
《ブルーウェーブの…》もう、そんな風に呼ばれる事はないと分かっていたのも関わらず。
きっと、ホークスからFAで来た村松には無い、ブルーウェーブの誇りが谷にはあるのだろう。
そんな外様と生え抜きの違いが、二人の間に見えない溝を作る。
潮風がコートをはためかせる音と2人の足音だけが聞こえる中、2人は船の中へと入った。
高級ホテルのような船内。豪華な調度品に囲まれても、村松は先程の様に驚く気にはなれなかった。
メインエントランスにかけられた船内の案内プレートを見やりつつ、考えを巡らせる。
…同じ境遇の岩隈や中村と会えば少しは気が紛れるかもしれない。
村松は今回の五輪会に出席するはずの、アテネでのチームメイトを思い浮かべる。
自分達の「ブルーウェーブ」が消えると同時に、彼らの「近鉄」も消えるのだ。
谷と同じ様に所属球団に誇りを持ち、理不尽な状況に置かれていた彼らとなら、
谷も多少心の内を吐き出せるかもしれない。
外様の自分には言えない何かを、彼らになら言えるかも知れない。
だが、村松はすぐにその考えを否定した。
…岩隈は新球団に…イーグルスに決まったんだ…中村もメジャーだ。
彼らは、自分達が差し出した手を振り払って自分達の球団を去った。
己の意思を最優先にする事が悪いとは言わない。それが吉と出る事もあるのだから。
しかし彼らは……自分達の事を少しでも考えてくれただろうか?
彼らは己の道を決めるのに必死だった。だが、自分達も必死だったのだ。
特に谷は、自身の契約更改を後回しにしてまで若きエースに手を差し出していた。
その手が無残に振り払われた時、果たして谷は何を思っただろうか?
「ああ、メインシアターはここか。」
「……は?」
突然の谷の声に驚いた村松は、谷がプレートに指し示した辺りを慌てて覗き込む。
「他にも色々あるんだな。まだ時間もあるし、少し船内を回ってみるか?」
谷は左手につけた腕時計を見やりながら、村松に問いかける。
「あ、ああ…そうだな、指定された時間までにメインシアターについていれば問題ないだろう。」
先程の呟いた時よりずっと明るい谷の声に違和感を感じつつも小さく頷く。
谷の表情には何の曇りも無い。何の緊張も、不安も感じられない、にやけ顔。
…俺の考え過ぎか?それとも、気を使わせてしまったか?
どちらにせよ深く考え込むのは自分の悪い癖だ、と村松は反省する。
こんな船に乗れるなんて滅多に無い事なのだ。暗い事ばかり考えてもしょうがない。
村松は一つ深呼吸をして、谷に精一杯の笑顔を向けてみせた。
「…有人、どうした?何か、顔が固いけど…悩みでもあるのか?」
怪訝そうな表情と共に返された同級生の言葉に、固い笑顔は苦笑いへと変わる。
「俺でよければ、相談に乗るけど…?」
「…いや、いい。」
無愛想に答えると、村松は颯爽と船内を歩いていく。谷も不思議そうな表情でそれに続いた。
以上 代理投下しました。
掲示板上ではふたつに分かれていましたが、行大杉らしいので3つに分けさせていただきました。
。。。はやく自分の分も書こうっと orz
>>263 そのスレは知ってますし、城島の設定も知ってるけど、BRには合わない希ガス。
そのネタを使ってしまったら、かなりふんいき(なぜかryは壊れるのではないかと。
空気悪くしてしまったら、すいません。
職人の皆さんがOKならいいです。
書くのは職人さんだ。
読ませてもらってる側があーだこーだ言う必要はない希ガス。
自分もスレ汚し失礼しました。
以下何もなかったようにドゾー↓
「勝手な思い込み」
「着いた着いたえらい大きい船やなぁ。それにしてもえらー寒いなぁ。」
19番上原浩治が言った。
「でもなぁ、アメリカにこの船で行くんやろうから当たり前か。」
早速上原浩治は、船の中に入っていった。
係りの女性が「ジャイアンツの上原様ですね。招待状はお持ちでしょうか?」
と言われ上原は、ポケットに入れていた招待状を取り出し
「あぁこれですか?」
と言った。
「どうぞ、お入りください。」
そう言われ周りをキョロキョロしながら奥へ進んだ。
「ダイヤモンド・プリンセス・シーかー。正しく名の通りやな。」
上原浩治は、ターミナルへ行った。
その時、「おう、久しぶりやなぁ上原。」
そう声をかけてきたのはカープの15番黒田博樹だ。
「おう、黒田さんこそ。」
「お前、見取ったでぇ。ちょっとオフテレビに出すぎちゃう?」
と黒田が言った。
「まぁ俺テレビ出る事嫌やないしちょっとしたお小遣い稼ぎにもなるしなぁ。」
そういいながら黒田と談笑をしながら上原は、ある男がまだ来ていない事が
気にかかった。
268 :
267:2005/06/14(火) 12:00:41 ID:dNR/4XzN0
同じチームメイトの24番高橋由伸の姿がまだそこには無かった。
上原は、思った。
『あいつ、欠席するつもりやろうか?』
そう思いながら罰則で由伸が罰金を取られている姿を勝手に思い描き
思わず「ふっあいつアホちゃうか?」
そういって噴出した。
『この時点で俺の勝ちやな。』
その時黒田がそんな上原を見て思わず
「お前さっきから独り言言うたりニヤニヤしたりして恐いで。」
「そうやった。」と上原が言った。
しかし黒田が上原の心情を読み取ってたかのような事を言い出した。
「なぁ上原、ちょっと気になった事があんねんけど、お前ちょっと本気か
知らんけど少し同じチームの由伸の事言いやで
今年に入って番組で『由伸むかつく』ってもう2,3回は軽く言うてたで
いくら冗談でも度が過ぎるのは、よくないで。」
269 :
267:2005/06/14(火) 12:19:33 ID:dNR/4XzN0
その時「どうも上原さん、黒田さんご無沙汰しております。」
近くにいた21番和田毅が話しかけてきた。
「あぁ、久しぶりやなぁ和田とは言うてもお前とはフレパの収録以来やけど」
「そうですねぇ。」
しかしこの男にも上原浩治の言動は不審がられていた。
「何か上原さんさっきから一人でニヤニヤしてて僕が言うのもなんですが
ちょっと恐いですよ。」
「そうやろ、和田お前もそう思うたか。俺もそれ言うたんやけどなぁ、あと
由伸の事言いすぎやで」と
と黒田が言った。
しかし和田毅も上原に追い討ちをかけるかのように
「そうですよ、上原さんフレパの収録の時も楽屋でアイツ(由伸)来ないで
良かったとか言ってらしたんですよ。アイツが来るとまたおいしいところ
持ってかれるわ。とか言ってらしたんですよ。」
「せやから冗談やて。毅余計な事言わんといてや」と上原が言った。
しかし和田毅は
「仲良くしてくださいよ、お二人は生年月日も一緒じゃないですか。チーム
メイトの事を言いすぎるのは良くないですよ。お二人とも僕は尊敬してますし。」
しかし上原は俯き和田毅に向かって
「お前みたいな男前のような奴には分からへんやろ。お前にはな―」
和田毅は、黒田博樹に思わず
「黒田さん、僕上原さんに対して失礼な事言ったでしょうか?」
それに対し黒田は
「あいつ嫉妬心が人より強いだけやから気にせんといて。」
「はぁ。」と言い和田毅は用意してあったソフトドリンクを飲み干した。
270 :
267:2005/06/14(火) 12:38:46 ID:dNR/4XzN0
軽く言うてたで →訂正です軽く言うてたで です。
すいませんでした。
清水・小林乗船(ロッテ乗船完了)、バーで飲む。
小笠原・金子乗船(ハム乗船完了)
相川・三浦乗船(横浜乗船完了)、最上階デッキから横浜の町をながめる。 →(三浦は吉見に会のことを知らせている)
福留乗船、乗船前、携帯で某選手に連絡、留守電を残す。
石井乗船。
岩瀬乗船(中日乗船完了)
相川、清水・小林とラウンジデッキで合流。三浦は所在不明。
藤本・安藤乗船(阪神乗船完了)
岩隈乗船、中村欠席確定。(近鉄乗船完了)
黒田・木村乗船(広島乗船完了)
和田・城島乗船(ソフトバンク乗船完了)
谷・村松乗船(オリックス乗船完了)、船内散策へ。
上原乗船、黒田合流。和田合流。城島は所在不明。
進行表ないとつらいので、簡単にまとめてみました。
相談所にもおいときます。
ですね。あ、すいません上記の和田は全てホークスの和田毅です。和田が二人いるの忘れてた;
まだ乗船してないのは、ライオンズ二人とG高橋、Ys宮本ですね。
松坂は車で向かっているようですがw
274 :
250:2005/06/14(火) 14:37:03 ID:hAWIWylT0
>>256,257
遅レスですが指摘ありがとうございます。
バッファローズって何だよ…バファローズだよ…ort
>>258 その設定は私も気になっていたんですが…
後から書かれる職人さんがうまく処理してくれないかなーと…すいません、人任せはだめですね
というかこれは相談掲示板の内容ですかね?
>>274 自分も気になりますた。
城島って4番正捕手というチームの要なので、決めておいた方がいいような。
では以降相談所で。
「ニアミス」
一人で考え込んでてもしょうがない。
1番ドラゴンズ福留孝介はそう思いせっかくだから船内を探検してみようと思った。
確かにいくら散々な結果に終わったとはいえ一応自分は、選ばれてこの船に乗船する
事が出来たのだから・・・。
「♪あるある探検隊〜」と口ずさんでいた。
その時だ孝介は、VIPルームらしき所を見つけた。
「こういう所に海外から来た来賓客とかが泊まるんあろうなぁ。」
と思っていた。
その時だそのVIPルームらしき所から何やら人の話し声が聞こえた。
しかし何やら楽しいパーティーらしい感じにしては重苦しさすらドア越しにいる
孝介にも伝わってきた。
気のせいかその中に何やら聞き覚えのある声があった。
その聞き覚えがある声とは、そうあの男
現在阪神のGMをやっている星野仙一であった。
「ま、まさかこの船に星野さんも一緒に乗船してらっしゃるんだろうか?」
その時だ。
いや、きっと気のせいだ第一星野さんは今ハワイかどっかにいるはずだ。
あの方だってお忙しいのにわざわざこのパーティーに来るわけが無い。
孝介は、そう言い聞かせた。
しかしドア越しに聞きなれた男が
「少し退席させていただきます。」
と言った。
孝介は、最悪の事態を考え念のため物陰に隠れた。
そうドアから出てきたのは、このゲームで指揮を採ることになっている
星野仙一だった―
「や、やばい」
孝介は物陰に隠れた。
しかし孝介は何かの時の為に孝介は携帯電話の写メールで撮った。
「パシャ」
「大丈夫かなぁ?今の聞こえていないかな?確かにドラゴンズで監督と
して指揮を採っていた時は、よく殴られたけど離れてみてまた殴られる
となると恐い物があるなぁ。この事は、みんなに伝えた方がいいよな。」
そう言いながら孝介は写メールをみた。
しかし後ろ姿しか写っていなかった。
278 :
276:2005/06/14(火) 21:01:31 ID:dEzJIr3L0
その頃船上では、人数がそろってきたせいか大分にぎわっていた。
上原浩治や黒田博樹達がたのしそうに談笑しているのが孝介の目に
止まった。
そこには、石井の姿もあった。
上原が「宮本さん来ないですね。」
と言った。
その時石井が言った。
「宮本さんって場外乱闘SPでかなりエロい事を言って奥さんから
叱られたらしいですよ。」
上原を始めとし、そこにいたメンバー、黒田、石井、和田が
いっせいに笑い出した。
その時だ。
「孝介、どないしたん?そんなん慌てて。」
汗だくになって孝介が走ってきた。
「おい!この船に星野さんが一緒に乗船してるぞ。」
そういい孝介は写メールで採った写真を見せた。
しかし上原を始めとするそこにいたメンバーが一世に笑い出した。
「なぁ孝介、お前頭でもぶつけたんちゃうかぁ?星野さんなんか
来るはずないやんか?こんなん人違いやろう。」
その後に和田毅も
「福留さん今頃星野さんはハワイに行ってゴルフでもしてると思いますよ。」
更に黒田も
「だいたいこれ後姿やしなぁ・・・。」
「おい信じてくれよ。俺は本当に星野さんを見たんだってば。」
どうして俺を信じてくれないんだ?
こいつらに言っても話しにならない。
藤本とかなら何か知っているかもしれない。
孝介は、藤本と安藤を探し回った。
279 :
276:2005/06/14(火) 21:10:03 ID:dEzJIr3L0
「やっとみつけた。」
「どないしたん?福留」と藤本が聞いた。
更に安藤が「汗だくになって運動でもしてたんですか?」
「お前達、この船に星野さんが一緒に乗船してるけど何か聞いていないか?」
「さぁ」と藤本が言った。
「いくら同じチームとはいえ何も聞いてませんよ。」
と安藤が言った。
更に孝介は、上原たち同様に藤本と安藤にも写メールで撮った
写真を見せた。
しかし安藤こう言った。
「確かに後姿はしょっちゅう見てたから似てるっていっちゃぁ似てるけど
・・・」
二人は顔を見合わせた。
「もういいよ。」
そういって孝介はその場を去った。
『どうしてなんだ?どうして俺の言う事を誰も信じてくれないんだ?
俺はそんなに皆から信用されてないのか?まだ全員に聞いたわけでは
ないけどきっと答えは、気のせいだとか疲れてるだけとか言われるんだろう』
乙です!
ただ、ひとつ気になることが。
>>167で星野さんがオーナー達とはじめて顔を合わせたのは選手たちのパーティ中となってます。
>>276の状況だと、星野はオーナー達と話して出てきたように思えます。
時間にずれがあるような?
私の読み違えならごめんなさい。
書きながら投下すんのやめろや
一通り書いてから推敲→投下が筋じゃないのか
それにいちいちコテ変えてるが、>>267-
>>269と
>>276-279は同じ書き手だろ?(つか宮本編書いてた38だろ?)
投下する時にいちいちageんのもやめろ
全然前と変わってねえじゃねえか・・・
282 :
267:2005/06/14(火) 21:46:50 ID:dEzJIr3L0
>>267-
>>269と
>>276-279は同じ書き手だろ?(つか宮本編書いてた38だろ?)
そうです。
申し訳ありません。
ただ何か失態すると38だろうと言われますが私は38とは別人です。
早く書かないと他の職人さんにかかれると思ったので・・・。
逝ってきます。
言い訳になってないよ。他の職人さんに先こされるのがイヤなら相談するとか。
284 :
267:2005/06/14(火) 22:08:02 ID:dEzJIr3L0
>>283 そうですよね。
勉強不足ですいません。
安藤がドメに敬語喋ってるけど同い年だよ
まず相談所を覗いてみたら?資料も進行表もあるし。間違いへるよ
上原編を書いて推敲していたら結局先を越されてしまった俺がいる
もったいなーい。避難所にあげてみないか?読みたいw
>>276-279みたなシーンは後々重要になってくるから、
ちゃんと推敲&相談して書いて欲しい(複数でやってるんだから特に)
書きたいシーンがあるなら相談所で書きますって宣言して、
誰かとかぶったら当人同士で調整するとか出来ないの?
前後のつじつまもあってないんだからそれ以前な希ガス
ぶっちゃけ、もういい加減にしろとゆいたいです
とりあえず避難所に投下してきました。
たいしたもんじゃなくてすまん。
さぁ、殺伐としてまいりました。
リレーだから新規参入する時は周りに一言言わないと。
ホリエモンみたいにただのお騒がせになるよ。
新規云々より内容だって。推敲は基本。推敲してあれならモウダメポ
上原編よんできますた159氏乙!正直あれを本編採用にしてホスィ…
297 :
いわせな人:2005/06/15(水) 05:49:49 ID:30pMbA7JO
「死神の到着」
岩瀬は大きな『ダイアモンド・プリンセス・シー』を見上げた。その大きさに少しばかり見とれたが首筋に寒気を感じ、すぐに首をすぼめた。外からでも既に船の中の賑わう声が聞こえてくる。時計を見るともう乗船時刻ギリギリだ。だいぶ準備に時間がかかってしまったようだ。
「タキシードなんて着慣れてないからなぁ…」
そうつぶやくと自分の所為でくしゃくしゃになってしまった招待状をポケットから取り出した。
もう時間がない、小走りでゲートへと向かう。
ゲートで招待状の掲示を促され招待状を差し出すとゲートの係員にちょっと嫌な顔をされたように感じた。
(…そんな顔されても…)
やってしまったものはしょうがない、あんまり岩瀬に罪の意識はないようだ。
そのまま促された方向へと進むが中は広く迷ってしまいそうだ。
298 :
いわせな人:2005/06/15(水) 05:50:47 ID:30pMbA7JO
(五輪か…)
今更ながら五輪のことを振り返りはじめる。時は結構過ぎているのについ、最近のことのようだ。その時、手にした銅メダルはなにか悲しささえ感じた。
五輪終わりも即シーズン、日本シリーズと抑えのエースとして多く投げ続け忙しい一年、でもそのことよりも今、行なわれる五輪会に岩瀬の頭はいっぱいになっていた。
「なにかわからないけど楽しみなんだよね。」
歌うようにそう言うと先程のように小走りでメインシアターに向かう。
その楽しみというものは純粋なものなのかそれとも…
299 :
いわせな人:2005/06/15(水) 05:54:22 ID:30pMbA7JO
一応乗船シーンを書きました。大変遅れて申し訳ない…orz
>>271ではもう既に乗船してるので必要なかったか…?
>>159 乙です。読んできたけどスゲー良かったですよ
今後も期待してます。
>>299 乙です〜!
すいません。あれは書く時の参考に、かってにテキトーにまとめただけなのでキニシナイでください。
岩瀬は船に向かう描写しかなかったので微妙かな?と思ったんだけど、入れちゃった…かってなことしてスマソ…orz
もう
>>276の事は、忘れて再開したら
如何ですか?
敵ボスだから曖昧な扱いはなぁ…NGでいいなら話は早いが
>>276の文章は、NGでいいんじゃないんですか?
>>276本人?とにかくいい加減スレageないでよ
えーい、めんどうだ。ageで書かれた文は全部荒らし認定でNGはどうだ!?
>>307 それはちょい酷かと…。頑張って書いてるみたいだしなぁ…
何でageをsageに変えられないのか
荒し認定されてもしかたない
何度注意されても聞かない人は荒らし認定でもいいんじゃない?
一部のせいで職人さんのやる気が低下してるよ…
一番やる気をそぐのは口だけ達者な名無しが増えて雰囲気が悪くなることだよ
312 :
107:2005/06/16(木) 10:09:26 ID:fZxcDh840
「あと1人」
松坂大輔は、車を降りてひとつ伸びをした。
眼前に広がる港の風景。
その先に停泊する大きな白い船が、目的の場所だろう。
美しい景色と頬を刺す潮風が、なんとも情緒的だ。
横浜は、彼の第二の故郷ともいうべき青春時代を過ごした土地だった。
あの頃は部活三昧の寮生活で、こんな風にのんびり港の景色をみることもなかった。
きつい練習がいやでズル休みをしたこともあった。
けれど、今時流行らない泥まみれの青春を、後悔したことは一度もない。
一瞬だけ感慨にふけっていると、携帯が鳴った。
着信は『和田一浩』、一緒にこの会に呼ばれている大先輩のチームメイトだ。
そういえば、和田もこの会にはあまり乗り気ではなかった。
「もしもし?」
携帯を耳にあてると、全部言い終わらないうちに、電話の向こうから和田ではない声がした。
「大輔、後ろ向けー!」
それだけ言って、携帯は切れた。
振り向くと、100メートルほど離れた場所で、和田と宮本が手を振っている。
「おそいぞ、こらー!」
宮本が叫び、和田は笑った。
「こんちは!」
松坂が二人に駆け寄ると、宮本はビシッと指を突きつけた。
「遅いっ! 大輔、グランド10周!」
「待ち合わせしてないじゃないっすか」
ひょうきん者のキャプテンに、松坂は苦笑した。
直前まで参加を迷っていた松坂は、誰とも待ち合わせしていない。
「船はあれですよね?」
車を停めた方を振り向く。その先に浮かぶ巨大な船。
313 :
107:2005/06/16(木) 10:19:54 ID:fZxcDh840
ちょうどその時、船の方から係員らしき男が歩いてきた。
「まもなく出航となりますので、ご乗船お急ぎください」
儀礼的に言った。
「もう皆来てるんですか?」
宮本がたずねると、男は持っていた書類に目を落とし「まだご乗船手続きをされてないのは、4名様です」と言った。
3人は顔を見合わせた。では、あと一人だ。
「あと誰です?」
「読売ジャイアンツの高橋様です」
「由伸の奴、しゃあないな。じゃあ、俺待ってるわ」
「じゃあ、俺も」
宮本の言葉に、和田が従う。
「俺は先行ってます」
係員に預けた車を見送った松坂は、あっさりと言った。
「なんや、薄情もん。一緒に待たんかい」
「いやですよ、肩冷えるし」
1月の海風は冷たい。確かに、いつまでもここにいると体が冷える。
「そりゃそうやな」
宮本はあっさり引き下がったが、和田は内心はらはらする。
よくいえば天真爛漫、悪くいえば傍若無人。しかし本人にはまったく悪気はない。
松坂の性格をよく知っているチームメイトならともかく、10歳も年下の後輩にそんな口をきかれれば、普通なら気を悪くしてもおかしくない。
しかし、宮本は気にしないどころかむしろ感心していた。
なにしろヤクルトには、包丁で指を切ったり、サッカー観戦に行って風邪を引いてきたりするピッチャーがいる。
松坂は自己管理の意識の高さは、自軍の同世代の投手陣に見習わせたいくらいだ。
314 :
107:2005/06/16(木) 10:29:52 ID:fZxcDh840
しかし、今回の松坂はそれだけではなかったようだ。
「それに俺、出る時ちょっとバタバタしちゃって、まだ着替えてないし」
松坂は持っていた紙袋をかざしてみせた。
和田と宮本は笑う。
「しょうがないな、大輔は。なにやってんだ」
「これだから新婚は。どうせ嫁さんといちゃこらしてたんだろ」
「してませんて」
そう言いながらも、松坂はにやけた。
「でも、うちの奥さん、スーツ仕立てといてくれたんですよ」
いいでしょ?と自慢げな松坂に、和田と宮本は顔を見合わせた。
「大輔。俺たち皆、タキシードだぞ」
「え?」
和田の言葉に松坂はきょとんとした。
「ほらほら」
宮本がコートの襟をはだけて蝶ネクタイを見せる。
「え? え? マジっすか?」
「マジだよ。少なくともフレンドパークに出た連中は、皆タキシード着るって言ってた」
「え、嘘! スーツ俺だけ?」
「他はわからんが、たぶん」
「巨人もタキシードだって言うてたな」
「えー!?」
松坂は、コートのポケットから封書を取り出した。慌てて文面を読み直す。
「だって、これ! 正装としか書いてないっすよ! スーツじゃダメなんすか!?」
「うん、まぁ、ダメってこともないだろう」
315 :
107:2005/06/16(木) 10:32:16 ID:fZxcDh840
和田がなだめたが、松坂はまだショックのようだった。
「うわー、どうしよ、俺。恥ずかしー!」
「いいんじゃないか? お前らしくて」
「それ、どういう意味っすか〜」
拗ねる松坂に、宮本が笑って促した。
「いいから、大輔、早く乗れよ。おねーちゃんが困ってるぞ」
見ると、乗船ゲートの女性係員がこちらを注視していた。困ってるようには見えなかったが、早く乗船して欲しいのは間違いないだろう。
「ベンちゃんも先行きなよ。由伸は俺が待ってるし」
宮本はにやりと笑った。
「一応キャプテンだしな。喝入れてやらにゃ」
松坂と和田の背を見送った後、宮本は誰もいなくなった港を見回した。
高橋の姿は、まだ見えない。
悪魔のはかりごとが完成するまで、あと1人。
316 :
107:2005/06/16(木) 10:34:18 ID:fZxcDh840
流れ読まずに投下。
捏造イパーイ。呼び名はすべてイメージで。裁きのお沙汰をお待ちします。
317 :
107:2005/06/16(木) 10:47:06 ID:fZxcDh840
おっとまた訂正が。保管庫さんスイマセン。
あと1人→あと一人
4名様です→四名様です
3人は顔を見合わせた。→三人は顔を見合わせた。
松坂は自己管理の意識の高さは、→松坂の自己管理の意識の高さは、
職人さん乙ですーー!
包丁で指切ったりサッカー観に行って風邪ひいたりするピッチャーワラタw
まだ文字は保管出来ていませんが
アド取得してタイトルページなどおおまかに作っておきました。
こっちに貼ってある掲示板は職人さんの相談所ですので、
ネタバレ嫌な方は覗かないでね。
アテネバト保管庫
http://athensbr.fc2web.com/ 文字保管前にこちらでお尋ねしますが、
タイトルがついてない話のタイトルはどうしましょう?
書いた職人さんがいたら付けてもらたいのですが…(マリバトみたいに自分がつけるのは無理ポorz)
あと何かもめてますが、
>>276氏の扱いはどうなるのでしょう?
それが分からないとどう保管していいものやら…
で、教えていただいても明日まで更新出来なさそうです。
ごめんなさい…orz
320 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/16(木) 13:12:22 ID:A2wqaMb+0
乙です。
タイトルは、ここまでなら
プロローグ―○○1、2
入港―○○1、2
(○内は登場人物)みたいな感じでどうでしょう。
今後はなるべくつけてもらって
「強固な決意」
「西武ライオンズの松坂様と和田様でございますね。開始のお時間が迫っておりますのでお急ぎください」
松坂と和田が搭乗ゲートの係員に封筒を差し出すと、係員は手馴れた手つきでそれらを検めると二人をメインシアターに促した。
「あ、ちょっとすいません」
が、松坂はメインシアターには向かおうとせず係員を呼び止めるといぶかしげな顔をする係員に片手に持った紙袋を肩の高さまで上げて見せた。
「俺、出がけにばたばたしちゃってまだ着替えてないんですけどどこか着替えられるような部屋あります?」
と悪びれることなく言ってのける松坂に和田は思わず天を仰いだ。
(あ〜あ、自分が悪いんだからちょっとは遠慮して見せろよ)
本当にパーティーの開始が迫っているらしくそれを言われた瞬間の係員の顔は目に見えて強張った。
口元をひくひくと引き攣らせながらなんとか愛想笑いを貼り付ける係員に同情を覚えながら和田は心中溜息を吐いた。
この若者の傍若無人と言うか強気な面は試合中では頼もしいことこの上ないがそれ以外では胃が痛くなることもしばしばだ。
(まったく。俺が心痛で禿げたらどうしてくれるんだ)
宮本辺りが聞いたら「いや!ていうかもう禿げとるやん!」と即座に突っ込みを入れそうなことを思いながら和田が松坂と係員のやり取りを見守っていると、相手もさすがにプロらしく一瞬の自失の後は完璧な営業用の顔で「では、客室にご案内いたします」と答えて見せた。
「どーもすいません」
と言葉では殊勝なことを言いながら丸っきりそう思ってないだろう松坂の後に続きながら、これからパーティーでお偉方と松坂をはじめとする傍若無人な若手たちとの間に挟まれることを考えるとすでに胃がちょっと痛くなってくる和田であった。
「大輔さん、和田さん」
二人が船内の豪華な内装に半ば見惚れながら進んで行くとふいに通路の横から控えめな声が掛けられた。
「クマじゃん!」「おう、岩隈か」
そこに居たのはアテネの同僚にして近鉄の若きエース、そして今年からは楽天のエースとなった岩隈久志だった。
長身痩躯に線の細い顔立ちも相まってどこか気弱そうに見えるこの若者は着慣れないタキシードのせいか、
それとも華美に過ぎる船内に気後れしてかどこか居心地悪そうに佇んでいた。
「お久しぶりです」
それでも知り合いに会えたことにほっとしたのか人の良さそうな笑顔を見せた。
それは移籍問題で世間を騒がせたあの頑なな態度など欠片も無い、気安い信頼できる仲間に見せる安心した笑顔だった。
「久しぶりじゃん。てか、お前こんなとこで何してんだよ?」
松坂の言葉も無理からぬものだった。
先程パーティーの開始が迫っていると係員に嫌な顔をされたばかりであるというのに岩隈はメインシアターに向かうでもなくこんなところをうろうろしている。
「実は・・ちょっと一人で行くのに気後れしちゃって誰か知ってる人を待とうと思って受付のところに戻ろうとしたんですけど・・迷っちゃって」
ばつが悪そうに話す若者に和田は思わず「ぶっ」と噴出してしまった。
世間一般では落ち着いているとかしっかりしているとか言われるこの青年もなんのことはないまだ23の若者なのだ。
「お前・・それで遅れたら元も子もないだろう。社会人なんだからもっとしっかりしろよ」
松坂が自分のことは棚に上げて尤もらしい説教を後輩に垂れると「いや、お前が言うなよ」と即座に和田の突込みが入る。
それに「俺はしっかりしてますよ」としれっと答える松坂の即席漫才コンビに表情をほころばせ、
「いや、でも本当にお二人が通りかかってくれて助かりましたよ。ホント右も左もわからなくてどうしようかと思ってたところなんです」
と岩隈が笑いながらフォローを入れた。
それから「ところでお二人こそどうしてこんなところへ?」と岩隈が尋ねると和田が笑いながら松坂を指し
「こいつ着替えてないんだよ。それで着替えに客室に案内してもらってんだよ」
と答えた。三人のやや前方からこちらを伺っている係員を目に留め岩隈は「ああ」と納得した。
それならこんなところで立ち話などしていては悪いだろうと思い岩隈は二人を促して歩き始めた。
歩きながら「確かにタキシードで来るのは恥ずかしいものがありますしね」と言うと、
途端に松坂は憮然とし和田はにやにやしだした。
岩隈がわけがわからず目を丸くしていると
「こいつ、タキシードじゃないんだよ。スーツなんだよ」
と和田が人の悪そうな笑みで教えてくれた。
「だって正装って書いてあったら普通スーツって思うじゃないですか」
不機嫌そうにぶつぶつ言う松坂に和田は笑いながら「俺はタキシードだと思ったけど」とちゃちゃをいれる。
「はあ・・僕もスーツか迷ったんですけどナオさんに相談したらタキシードで行くって言ってたんで」
「クマ!何でそこで俺に相談しないんだよ!!」
「え、いや、それは・・」
「大輔、それは言いにくいけど人望の差だろう」
和田がさらに面白がって松坂をからかい、松坂は憤慨して「和田さん!!」と噛み付く。
岩隈はどうしていいかわからずおろおろと二人を伺っていた。
「いいですよ!これはうちの嫁さんが仕立ててくれた一級品なんだから!そこら辺の安物のタキシードには負けませんって!」
ついには開き直ってしまった松坂に和田はにやにやと「おお、惚気か!新婚はお熱いね〜」などと更にからかいだす。
「あ、そういえば大輔さんのところ新婚ですよね。遅れましたけどご結婚おめでとうございます」
ふと、岩隈は松坂がほんの2ヶ月ほど前に結婚したことを思い出し今更ながら祝辞を述べた。
新妻の柴田倫世さんとは以前彼女が司会を勤める某番組で一緒になったことがある。
そのときは松坂も一緒に出演していて、隠しているとはいえ結婚間近のカップルに挟まれて居た堪れない気持ちになったものである。
「おお、サンキュ。お前も楽天に決まって良かったな」
もうすでに言われ慣れたことなのか松坂は照れることもなく逆に岩隈の門出を祝ってくれた。
「ありがとうございます・・自分の意地を通したために回りに迷惑を掛けてしまって少し申し訳ないですけど」
近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブの合併という昨夏の一連の騒動において
最も煽りを食らったのは両球団の選手たちだったろうが、その中でも岩隈の移籍問題は特に熱かった。
合併球団が自分を必要だといってくれたのは嬉しかったが、
近鉄が消滅したから合併球団に・・という気持ちには到底なれなかった。
多分、自分はオリックスバファローズに移籍していたとしてもその球団を愛することはとても出来なかっただろう。
だから楽天がどんなに弱かろうと自分の選択を後悔することは決して無いと、胸を張って言えた。
だが、それでも熱心にオリックスに誘ってくれた谷のことを思うと岩隈の胸は痛んだ。
後悔はしていない。しかし申し訳なかったという気持ちが無いわけではない。
そんな岩隈の葛藤を、しかし松坂はあっさりと切り捨てた。
「そんなのはお前が気にすることじゃねえよ。お前はお前の意思で楽天を選んだんだろう。
ただ座って待ってるだけじゃ自分の望み通りの未来なんて転がってくるわけねえじゃん。
未来は自分で勝ち取るもんだよ」
松坂のあまりに迷いの無い口調に岩隈はしばし呆然とした。
「そう・・でしょうか・・?」
確かにこれは自分に必要な未来だ。この選択に関しては後悔していない。
しかし、その選択をするに当たって傷つけた人がいることすらも省みる必要は無いのだろうか・・?
「まあ、大輔は多少強引だが言ってることは間違ってないわな。まあ、決まったからにはお前さんは
新天地で頑張ってファンや周りに認めてもらうしかないんじゃないかな」
「そう・・ですね」
和田の言葉に岩隈は今度は笑って頷いた。
そうだ、確かに自分には頑張って結果を残す以外に迷惑を掛けた人たちに報いる方法は無い。
「こちらの客室でお着替えください。着替えが済みましたらすぐにメインシアターの方へお越しください。
開始のお時間が迫っておりますので」
くどいくらい念入りに釘をさされながら松坂は案内された客室へ入っていった。
もちろん部屋の前の和田と岩隈に「待っててくださいよ」というのは忘れずに。
一人だけスーツで行くなんて恥ずかしすぎる。
室内はやはり豪華な装飾や家具で溢れ松坂に溜息を吐かせた。
(こんだけ豪華な船でやるってことはメジャーのスカウトってのも本当かもな)
紙袋の中を見ると、さすがにあのしっかり者の妻が用意してくれただけあって高価そうなスーツが納まっていた。
これならタキシードに見劣りすることも無いだろうと松坂はほっと息を吐いた。
(未来は自分で勝ち取るもの)
先程、岩隈に言った言葉を思い出す。
そう、未来は自分の手で勝ち取るものだ。
焦る必要は無いが座して待っていれば転がり込んでくるほどお気楽には世の中できていない。
(勝ち取るさ、自分の手でな)
MLBでプレーするという夢。そのためならば自分はどんな苦労も犠牲も厭わないだろう。
そして、自分にはその夢を掴み取るだけの力量があると松坂は信じていた。
(勝ち取るさ、自分の手で)
そのための障害があるなら全力で排除する。
胸の内でそう呟きながら松坂は自分を鼓舞するためにやりと笑った。
327 :
159:2005/06/16(木) 16:43:16 ID:XUGhWxF50
「乗船完了」
ハッキリ言っておかしい。
高橋は愛車で目的地に向かって湾岸沿いをひた走りながらも、まだ不安に捕われていた。
前例のない五輪会。強制参加。罰則。
様々な疑念がぐるぐると頭の中を回る。
妙に息苦しさを感じて高橋は窓を少しだけ開けた。
とたんに一月の冷たい風が吹き込んでせっかく整えた高橋の髪を乱す。
ガラスに映り込む自分のタキシード姿がどこか滑稽だ。誰かがこの姿を見たがったのだろうか。
でもいったい誰が?
高橋は一つため息を吐くと、ついさっきまで電話をしていた人物との会話を思い出していた。
どうしても不信感を拭えない高橋は、一人の人物と接触しようと電話を掛けた。
『はい?』
「ごぶさたしております。高橋由伸です」
『おお、どう?肘の具合は』
電話の向こうの人物は高橋の突然の連絡を喜んでくれたようだった。
気配りが服を着ているような男は、高橋がオフに手術した肘の具合を心配してくれる。
キャンプ当初から痛みはあった。不安を抱えたままアテネに参加し、ストレスと酷暑の中でさらに悪化させ、痛み止めまで打って宥めた爆弾。肘を痛めたことは後悔していない。むしろ悔いているのは金メダルが取れなかった、ただそれだけだった。
あの時、ベンチには日の丸とユニフォームか掲げられていた。
みんなが祈りを込めて触れた『3』と書かれただけの日の丸と、誰も触れることが出来ない背番号3。
それをチームに運んで来たのもこの人だった。
もし監督が参加されると言うならば、この人なら何か知っているに違いない。
高橋が連絡をした相手は、今年初めに巨人球団代表付アドバイザーという役職についた人物----長嶋一茂だった。
言わずと知れた長嶋監督の愛息子。去年春にその監督が突然倒れてから、ある意味窓口を務めている唯一の男。
328 :
159:2005/06/16(木) 16:46:04 ID:XUGhWxF50
未だ公の場に出て来ることが出来ない監督本人に直接連絡を取るのは何年も世話になって来た高橋でも躊躇われた。
マスコミ関係を一手に引き受けている一茂ならば何かを知っているに違いない。幸い高橋には巨人の選手会長としての立場がある。その自分が監督について問い合わせをするのは、何も不審なことはないだろう。
こう考えていること自体、おかしいことなのだ。
何故この五輪会にこれ程までに不信感を覚えるのか、それを払拭したくて、一通りの挨拶を終えた後、おもむろに高橋は口を開いた。
「今日の五輪会に監督は出席されるのですか?」
『……いや、まだ父は公の場に出る予定はないけど』
ほんの一瞬だけあった沈黙が不審に思えてしまうのは自分の気のせいだろうか。
「え? 本当ですか?」
『ああ。まだね、父は体調が万全ではないから、華やかな席にはね……』
何故かこんな答えが返って来るのを知っていた気がする。
『父も出席したがっていたけど』
そこで言葉が止まる。
『……いや、君たちに会いたかったって残念がっていたよ』
この人は、何か知っている?
高橋の直感がそう告げる。
「あの、今日の五輪会が何故」
強制参加なのか、何か知ってませんか?と続くはずだった言葉は少し強めの言葉で断ち切られた。
『申し訳ない。私はこれから用事があるので、いいかな?』
「あ、済みません、お忙しいところを」
『じゃ』
話を切り上げようとする気配に高橋は早口で引き止めた。
「あの、じゃぁ一つだけ」
『……何?』
少しだけ苛ついたかのような一茂の態度に少し鼻白みながらも、高橋は堅い声で伝言を頼んだ。
「監督に、『お会い出来る日を楽しみにしています』と、お伝え下さい」
『……分かった。確かに伝言を承ったよ』
よほど急いでいるのか、それとも別の理由があったのか、唐突に通話は切れた。
しばらく高橋は物言わぬ携帯を耳にしたまま、さらに膨れ上がった言い様のない不安を見つめていた。
329 :
159:2005/06/16(木) 16:46:50 ID:XUGhWxF50
車を停めた高橋はまだ眉間に皺を寄せたまま駐車場に降り立った。
吹き付ける風の冷たさにたまらず腕にかけていたコートを急いで着込む。
「あれか……。『ダイアモンド・プリンセス・シー』」
高橋は船体に記されている文字を一つ一つ声に出して読むと、ふぅっとため息を吐いた。
「でけぇな」
しばしその白く巨大な客船を見上げる。
ここに行けば全てのことが分かるだろう。だが、本当は行きたくない。
時間はもう迫っている、行かなくてはならない。
肘が何かを訴えかけるようにしくりと痛む。思わず左手で押さえ、高橋はそのまま動けなくなった。
追い立てる何かと、引き止める何かの狭間で高橋の身体が凍る。
このままではいけないと、くっと唇を噛み締め、一歩踏み出そうとした時だった。
「由伸、遅いっ!」
聞き覚えのある大声での叱責に振り向いた高橋は、一人の人物を認めると強ばった顔を緩めた。
「なんであの人、わざわざあんなとこにいるんだ」
宮本には聞こえないように小さな声で呟くと、笑いを堪えつつ手を振って足早に近づいて行く。
強い海風に煽られた宮本の前髪はすっかり上にあがってしまっている。おまけに真上にある水銀灯が丁度そこを照らし出しているのだ。
「お久しぶりです」
「何がおかしい?」
「いいえ」
妙ににやつく高橋の顔を宮本は不思議そうに見ている。
「お前が最後やって」
「もうみんな来てるんですか?」
「さっき大輔とベンちゃんが乗船したところや。あとお前だけやって」
「そう……大輔と、和田さんが」
高橋はどうしても口元が歪むのを抑えきれなかった。
もし和田がまだここに残っていたならば、水銀灯はもっと遠くからでも誰が待っているか明白にしていたのだろう。
330 :
159:2005/06/16(木) 16:47:18 ID:XUGhWxF50
見てみたかったな、と心の中だけで呟くが、もちろん宮本はそんなことなど想像もしていない。
「お前、さっきからニヤニヤニヤニヤ、おかしいわ」
「いえ……。すみません、急いでいるんですよね」
「ほら」
宮本が指差す先には巨大な白亜の客船の前で今や遅しと待ちかねている様子の女性係員の姿があった。
「あぁ、じゃぁ急がないと」
二人は肩を並べて足早に乗船ゲートへと向かった。
出航まであと少し。
これで全ての駒が、揃った。
331 :
159:2005/06/16(木) 16:48:11 ID:XUGhWxF50
保管庫管理人さんお疲れさまです。
>>160のタイトルは「苛立ち」とでもしておいて下さい。
禿しく乙であります
333 :
107:2005/06/16(木) 17:59:49 ID:fZxcDh840
キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
334 :
107:2005/06/16(木) 18:02:49 ID:fZxcDh840
途中でおしちゃった。スマソ。
>>319 保管庫さんキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!! 乙です!
タイトルページかっこよくてワクテカでした。
修正多くてすいません。よろしくお願いします。
保管庫管理人さん&職人さんGJ!
だけど
>>322-326は何?
>>312-315を読んで反射的に妄想しちゃった腐女子?
松坂が着替えるだけの話に5レスも使って長文はやりすぎだろうよ。
せめて流れに関係ない話は2レスくらいにおさまらないか?
しかも
>>312-315からの使いまわし表現が多くて読んでてくどい。
なんかリレーの意味はきちがえてるんじゃないかなあ。
336 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/16(木) 20:04:01 ID:5LZ6IZtf0
>>335 何様?
>>322氏
気にしない方がいいと思います。
ただ句読点はもうちょっと使った方がいいんジャマイカ。
長文で句読点がないことが、文章を読みづらいものにしてるとオモ。
自演にしてもおそまつすぎる。
>>335 >>336 おもしろすぎるぞおまいさん。
まあなんだ、自演はともかくとして、
>>322-356氏、
改行と句読点はもうちょい欲しいところだが、
登場人物のキャラが見えてきて(・∀・)イイ!!文章だとオモタよ。
もう何が何やら・・・?
本編よりスレ内の方がよっぽど殺伐してる件
変なのはスルーの方向で。
新作大量にキテタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━!!皆様GJ!
てゆうか皆ー!!!
もっと職人さんの方に言葉かけようよー!!
荒らしへの方がレスが多いなんてヘンだぞー!!
本当に職人さんこなくなっちゃうぞー!!
>>344 じゃあage荒らし野郎どうにかしてくれ…。見守るにもなんかあらわれたぽくてうざい…。
おー久々に自作ジエーン見たよw
ってか保守以外のage厨は無視すりゃいいんじゃね?
相手にするから上みたいな自作ジエーンする椰子も来るんだってw
俺は松坂スーツネタが好き。松坂可愛いよ松坂w
350 :
75:2005/06/17(金) 23:35:40 ID:AvGDOegz0
[時を待て]
「ふー。」
胸ポケットからハンカチを出し、手を拭く。
扉の隣には直立不動の黒服の男が立っていた。
正直この男が野球選手だと言われたら騙されてしまいそうなほど筋肉のバランスがよく取れている、もったいないな。
服の下からでも野球に適している筋肉かどうか分かってしまうのは解説者のしての癖か、そう考えながら高木はポケットにハンカチを戻し
歩き始めた。
そうすると足音を出さずにそっと後ろから黒服の男が着いてくる。
忍者みたいだな。
高木は声に出さずに心の中でそう呟いた。
「高木様。」
「はん?」
ぼんやりとしていたからか妙な返事をしてしまった高木、しかし本人は気にも留めず立ち止まり振り返った。
「何か?」
「大阪近鉄バファローズの中村選手は本日の五輪会を欠席なさる模様です。」
「・・・そうか。」
欠席か、繰り返すように高木が呟く。
しかしあることに気付いた。
「・・・・何故欠席だと分かるんだ?まだ少しぐらい時間はあるだろう。」
着慣れないタキシードの右袖をまくって、時計を見る。
自ら言った通り、出港まで少しまだ時間があるのを確認した。
黒服の男は懐から白い封筒を取り出しながら、こう説明する。
「皆様にお送りした招待状には探知用のチップが埋め込みさせていただきました。」
「もしかしたら招待状を家に置き忘れたのかも」
「GPSで確認させていただきましたが、招待状のある場所が野球の練習場でした。」
ならそこに、と言いかけた高木。
それを遮るかのごとく、目の前の男は話を続けた。
「確認に向かわせたところ、二つに破られた招待状がゴミ箱から見つかったと。」
高木の目が少しだけ見開かれる。
しかし表情を変えることはなく、そうか。とだけ返事をした。
351 :
75:2005/06/17(金) 23:36:09 ID:AvGDOegz0
そして再び高木は歩き始めた。
少し狭くなった額に右手を当てながら、何ごとか呟きながら。
呟くスピードに合わせて歩く速さも増していき、黒服の男も自然と速歩きになる。
何事か思いついたのか突然大股でザカザカと歩いていた高木が立ち止まる。
着いてきていた男も足を止めた。
「そう言えば聞いていなかったが、今この船に乗っているのは誰だ?」
「すでに乗船されている選手でございますか?少々お待ちください。」
高木は振り返らずに尋ねた。
男は銀色に輝く文庫本ほどの大きさの機器を取り出し操作をした後、その画面に出てきた名前を高木に告げた。
乗船した順なのか、そのチームの中で選出された二人の名前が連続で呼ばれる事もあれば、バラバラに呼ばれる事もあった。
「・・・・西武ライオンズの和田選手、松坂選手。読売ジャイアンツの高橋選手。以上でございます。」
結論から言えば、中村以外全員乗船済みだった。
「そうか。」
呟くように言うとまた高木は歩き始めた。
352 :
75:2005/06/17(金) 23:36:35 ID:AvGDOegz0
『君達には《見守って》もらおうかと思ってね。何と言ったって監督とコーチだ、選手が頑張っているのを見ないでどうする。グァッハッハッハ・・・・』
ふと思い出した台詞に吐き気がする。
それを必死に堪え、高木は歩き続けた。
「・・・時を待て・・・」
自分に言い聞かせながら、後ろの男に気付かれないように口の中で何度も繰り返す。
時を待て、時を待て、時を待て、時を待て・・・・
『黒い』客室を目標に歩きながら、高木の瞳の奥には何かが潜み、燃え上がっていた。
時を待て。
高木は低く呟いた。
353 :
75:2005/06/17(金) 23:39:58 ID:AvGDOegz0
>>350の5行目の改行は無視してくださいorz
保管庫様の方であの改行を消していただけるとありがたいですorzスイマセン
つまんねーよー。もうやめろ
職人さん乙ですー!
何か最近、額ネタが多いですなw
しっかり話進めろよ、馴れ合いばっかしてんな腐女子どもがwwwwwwww
なんか下手な文章しかありませんね。よくこんな文章で投下する気になるのかわかりませんね。
あげな人また降臨か。とりあずsageとこう。
荒らすことを覚えたのなら、sageのやり方やIDの変え方も覚えましょうね(^−^)
ここの人達は文章力ないですね。面白くないですし。
やれやれ、これだから…
以降荒らしスルーでよろしく。
相手にすればつけ上がるからな。
↓荒らしはスルー
362 :
107:2005/06/18(土) 19:51:22 ID:P5230lr40
おわりのはじまり
『ダイアモンド・プリンセス・シー』の豪華な船内施設の中でも、最上級の調度を揃えたVIPルーム。
そこでは、悪魔の元締めが上機嫌でグラスを傾けていた。
元巨人軍オーナー、渡辺恒雄。
昨年、金銭問題でオーナーを辞任したはずの彼には、すでに読売巨人軍代表取締役会長への就任が内定している。
結局、去年の辞任騒ぎはただの茶番。あいかわらず彼は、唯我独尊の独裁者であった。
「しかし、星野君の手腕は見事だな。さっそく部下がネズミがうろついてるのを発見したそうだ。君の言った通りだったな」
「ええ。かなり強引な方法で選手たちを招集されたようなので、不審を抱くものもいるかと思いまして」
星野はいくぶんイヤミをこめてそう言ったが、空気を読まない渡辺には通じなかった。
「いや、さすがだよ、君は」
渡辺は上機嫌で星野を褒める。分厚い眼鏡の奥のふてぶてしいが、きらりと光った。
「我が巨人軍にも、君のような優秀な人材が欲しいものだね。どうも無能ものばかりで困るよ。どうだね?
来季あたりから、うちでやってみんかね?」
「いえ、とんでもない。僕のような者に、栄光の巨人軍の監督はつとまりませんよ」
「はっはっは。謙虚だねぇ。いや、いいことだ。最近はどうも礼儀をわきまえない輩が多くて困る。
あの堀江とかいうのも、なんだったのかねえ。唐突に出てきて球団を欲しいなどと、馬鹿馬鹿しい。
金があれば買えるってものではないんだよ。球団のオーナーというものには、品格が必要なんだ。
だいたいなんだね、あの服装は。学生じゃあるまいし、大の大人がみっともない。IT成金だかなんだか知らないが、」
363 :
107:2005/06/18(土) 19:52:02 ID:P5230lr40
「ええ、その通りですね」
星野は渡辺の延々続きそうな話に、すばやく割り込んで相槌を打った。
「ところで、こちらが先ほど届いた中村に関する報告書です。僭越ながら、先に読ませていただきました。私の意見も添えてあります」
星野が差し出した書類をパラパラとめくり、渡辺はにんまりと笑う。
「すばらしい! 君が参加してくれてよかった。我々の計画もますます磐石だな」
「いえ、すべて渡辺さんのお力あってのことですから」
まるで時代劇に出てくる悪代官と悪徳商人の会話だな、と後ろで聞いている中畑は思った。
「越後屋、おぬしもワルよのう」「いえいえ、お代官様にはかないませぬ」…そんな雰囲気だ。
ただ時代劇と違うのは、これが現実の策謀であるということと、劇中ではたいてい詰めが甘く無能であるはずの悪者側が、球界随一のやり手だということだ。
片方は富と権力の塊、片方は才知と統率力の塊。まさに最強のタッグ。誰に勝ち目があるだろう?
そんな中畑の苦悩も気づかず、報告書のある一文に目を留めた渡辺は眉を寄せた。
「フン、中村はメジャー志望か。最近の若いのは、実力もないくせにすぐにメジャーメジャーと騒ぎ立てる。日本球界に育ててもらった恩も忘れおって。実にいかん!」
「誰もがイチローや松井になれるわけでは、ありませんしね」
星野は憤慨する渡辺に、望み通りの言葉をくれてやることにした。リップサービスなどいくらしたところで減るものではない。
「そうそう、そうなんだよ」
渡辺は報告書をデスクの上に放り投げると、部屋の中をうろうろと歩き回った。
「おお、そうだ。いいことを思いついたぞ!」
突然、手を叩いてにんまりと笑う。
「優勝者はメジャーに行かせてやる、奴らにはそう言うんだ!奴らは、きっと食いつくぞ!」
渡辺は新しい遊びを思いついた子供のようにはしゃぎだす。
364 :
107:2005/06/18(土) 19:52:28 ID:P5230lr40
残酷な支配者の残酷な遊び心に、中畑は心の中でうめいた。
やめてくれ……!
あいつらの大事な夢を、こんな糞ゲームの餌に使うなんて。それだけは、やめてくれ!
しかし、中畑はそれを言葉にすることはできなかった。
「いやあ、いいアイデアだ。上原や松坂も張り切るだろう。あいつらが本気になったら、凄いんじゃないかね? やはり物事には、励みがないとなぁ。世の中はアメとムチだよ。わかるかね、君」
自画自賛する渡辺は、背後に幽霊のように控えていた秘書を呼ぶと机の上にあった黒い冊子を突きつけた。
「おい、これを直しておけ。至急だ」
それは、選手らへの説明などが書かれた『ゲーム』の台本だった。悪意の込められたその黒い表紙には、赤い文字で『BR』の刻印が押されていた。
秘書がに台本を持って出て行くと、渡辺は実に楽しそうに笑った。
「さぁ、はじまりだ」
人の文章無視した駄目な文章ですね。勝手に差し替えるほどの物ではないですよ
366 :
107:2005/06/18(土) 19:58:55 ID:P5230lr40
※「突然の訪問者」は最初の一文を削除ということらしいので、星野の扱いはそれに準じました。
367 :
107:2005/06/18(土) 20:17:50 ID:P5230lr40
うわ、しまった!荒らしにレスしたみたくなってしまった!
ただの補足文ですので、あしからず。
(((;゚д゚)))
乙です。
ナベツネ+星野ってかなり凶悪ですな…((((;゚Д゚)))ガクブル
371 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/18(土) 21:21:24 ID:68QwrNRP0
職人さん乙です!
最強タッグコワス((((;゚A゚))))
すまん。あげちまった・・・吊ってくるOTZ
ID:cxZs6n9vO
こいつはいらない
>>374 スルーしろって。
いらないならあぼーんでもしとけ。
このスレ早く終われ
テベスは反則だろ
「豪華絢爛」1
「『アテネオリンピック五輪会』にご出席の皆様、本日は『ダイアモンド・プリンセス・シー』にご乗船いただき誠に
ありがとうございます。スタッフ一同、誠心誠意、皆様のお世話をさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたし
ます。」
メインシアターの舞台前で赤いチャイナ服に身を包んだ女性が言い、頭を下げるとその後ろに並んだアオザイに身を
包んだ女性たちがいっせいに頭を下げる。
その一言で始まったアテネ五輪会は、選手たちにとっても驚きの連続だった。
豪壮なつくりのメインシアターホールの内壁は彫刻やタペストリーで飾られ、天井を見上げれば大きなシャンデリア
が煌びやかに明るい光をホール全体に落としている。
メインシアター前方には大きな舞台があったが、刺繍とスパンコールで彩られた緞帳がおりていて、舞台の様子は見
ることができない。
広いホールにはビロードが敷かれた丸テーブルが置いてあり、その上には色とりどりの花やリボンで飾られたオード
ブル等の料理が並べられていた。
そしてBGMは弦楽器をメインとした弦奏楽団が生演奏をしている。
「なぁクマ? あれ食った?」
「え、アレ? アレって・・・?」
岩隈久志が清水直行に言われ、キョロキョロと周りを見回した。
「フカヒレの姿煮とか、ムッソリーニステーキフォアグラ添えとか。・・・ほら、さっきから何にも食ってないみたい、だ
からさ?」
清水は取り皿をテーブルに置き、グラスを代わりに取った。
「あ、はぁ。・・・なんだか腹減らなくて。」
岩隈は肩をすくめる。
「それにー・・・。」
そこまで言って、岩隈はもう一度周りを気にするように見回した。
「ノリさん、ここ来ないって。」
「豪華絢爛」2
「はぁっ?・・・アリなんか? それ?」
清水は思わずグラスを取り落としそうになり、そしてぐるっと見渡す。
「た、確かにおらんけど・・・。」
「俺にもわかりませんよ・・・。」
岩隈は、深くため息をつく。清水はなんとはなしにグラスの底を注視した。
Baccarat。テーブルウェアのブランドに疎い清水でも、その名は聞いたことがある。
「取り皿の裏には、マイセンのマーク入ってますよ。」
岩隈はいい、グラスの中身を飲み干した。カラン、と氷がグラスに当たって澄んだ音がする。
「少し、気味が悪いくらいに徹底されてますよね、ここって」
清水はかぶりを振り、岩隈の言葉に肯定の意を表した。
「お客様。こちらの飲み物はいかがでしょうか?」
不意に声をかけられ岩隈がびくっとして振り返ると、アオザイを着た女性が飲み物が入ったグラスを載せたトレイを
差し出した。
「皆様。お手持ちのカードの準備はいかがでしょうか?」
メインシアター横の司会台には、赤いチャイナ服の女性が立っていた。
「アテネオリンピック五輪会事務局から皆様への感謝の意を込め、少しばかりのプレゼントを準備させていただきました。こちらをお配りするため、当方でクジ引きをさせていただきます。」
「クジ? そんなんありましたっけ?」
石井弘寿はそのアナウンスに、持っていた取り皿をテーブルに置いた。
相川亮二は懐から紫色の封筒を取り出す。封筒の中身は、トランプのカードが一枚と、小さな鍵。
「もしや、コレか?・・・なんだ?この鍵?」
スペードの12。相川はそのカードと小さな鍵をしげしげと眺める。
「あー、そういや貰いましたね。」
石井もポケットから紫色の封筒を出した。カードはスペードの6が出てきた。
「他の人は何番なんですかね?」
石井は周りを見回した。
「豪華絢爛」3
「・・・あれ?」
石井はもう一度、周りを見回す。
「どうした?」
相川も周りを見、ある違和感を感じる。
「・・・ウェイトレスさん、いなくね?」
相川の問いに、石井も頷いた。
「ああ、やっぱりそう思います?」
先ほどまで目ざといまでに飲み物を勧めていた女性たちの姿が、消えていた。
「なお、くじ引きをするのにあたり、特別ゲストとして星野仙一様をご招待させていただきました。・・・」
「はぃ?」
藤本敦士と安藤優也は女性の声に、互いの顔を見合わせた。
福留孝介と村松有人、谷佳知はその様子思わず苦笑する。
「なんだ、お前らには連絡なしかよ。」
村松はハートの11を手の中でもてあそんでいる。
「そんなん、言うたって・・・、なぁ。」
藤本はスペードの11を出した。
「あ、藤本は村松さんと数字一緒や。」
安藤がスペードの9を皆に見せる。
「俺はハートの7、谷さんはスペードの8ですか。」
福留は言い、自分のカードを注視した。
くじ引きは、星野が別に準備したボックスの中に入っているボックスからカードを引く、という単純なものだった。
景品として用意されたものは、何やらいっぱい入っている鞄。鞄にはなぜか、ファスナーが開かないように小さな南京錠がつけてある。
が、その場にいた選手たちには鞄がなんだかすぐに分かった。
「豪華絢爛」4
「あれ、アテネのときに配られた鞄じゃないですか・・・?」
和田一浩がつぶやくと、宮本慎也も低くうなずいた。
「何考えてる? 五輪会事務局とやらは・・・?」
「わかりませんね。」
宮本の言葉に、和田は肩をすくめる。その手には、ハートの6。
一方、宮本の手の中にはスペードのAが握られている。
「・・・あとな、ゲームに使うっていうて、変な首輪つけられたろ。」
宮本はそっと首元に手を当てた。
入り口でカードを選んだとき、一緒につけられたものだ。
金属製だが、そんなに重さは感じられない。
「何のゲームに使うのかもさっぱりわからんし。・・・そもそもこの五輪会って・・・。」
なんだか重たいものでも入っているのか。
小笠原道大は星野から貰った鞄をまじまじと見た。
「おつかれさん。ようがんばったな。」
自分が持つカードを呼ばれ、星野から鞄を渡され、握手を求められ、なし崩しに握手はしたものの。
「ゲームの説明をするまで、開けないでくださいね。」
司会の女性が笑顔で言った言葉が、頭の片隅にこびりつく。
ゲーム?
なんだか嫌な響き。そういや、さっき変なチョーカーつけられた。
「・・・中、なんでしょうね?」
金子誠がニヤニヤしながら言う。
「さあ?」
生返事で小笠原は答え、鞄を足元に置いた。
「ハートのエースだったし、きっといいもん入ってるでしょう。」
金子は自分が得たカード・・・ハートの8をポケットにしまいながら言った。
「そうか・・・?」
小笠原は言いながら、まだ自分の中で感じた違和感が何か、考えに耽っていた。
「豪華絢爛」5
「・・・大体メモできたな。」
黒田博樹は携帯をいじる手を止めた。
「マメやなー・・・。」
木村拓也はニヤニヤしながら、同僚を横目で見ながら言う。
「じゃ、見せんわ。」
黒田が携帯をしまおうとすると、木村は笑顔のまま黒田の手を止めた。
「まあ落ち着け。」
木村は黒田の携帯を覗き込んだ。
宮本 S1
清水 S2
高橋 S3
和田つ S4
木村 S5
石井 S6
谷 S8
安藤 S9
岩隈 S10
藤本 S11
相川 S12
小笠原 H1
城島 H2
上原 H3
黒田 H4
三浦 H5
和田一 H6
福留 H7
金子 H8
「豪華絢爛」6
岩瀬 H9
松坂 H10
村松 H11
小林 H12
「よく短時間でここまで打ち込んだな・・・。」
木村は言い、それからあわててつけたす。
「ほめてるからな?」
「・・・分かってますわ。」
黒田はバランタインを軽くあおり、傍らのテーブルに置いた。
「ただ、・・・なんやろ、なんか、変な気持ち。」
心の奥に引っかかる、気持ち。嫌な予感?
「嫌な予感?」
木村の言葉に、黒田は眉をしかめ、木村のほうを見た。
384 :
39:2005/06/19(日) 10:33:44 ID:GR38a12c0
掲示板にあったパーティー編?を代理投下しました。
以上連絡まで。
386 :
39:2005/06/20(月) 02:35:33 ID:OZDVjaeQ0
「ロケット広場」
なんばCITYのロケット広場。
大阪の繁華街なんばでも待ち合わせ等でよく使われるその場所で、沖原佳典は電話を受けていた。
「ああ、渡辺くん。久しぶりやね。」
沖原は周りを見て、階段の影に移動した。
渡辺の声が、ともすれば雑音で消えそうになる。どうやら渡辺はどこかに外出でもしているようだ。「この前の
件?」
『はい。確認したいことが一つ。』
「確認・・・?」
沖原の呟きを無視して、電話の主である渡辺俊介は続ける。
『ちょっと思い出して欲しいのですが、・・・電話って、特定の番号に対して、通話規制をかけることはできますか?』
「またずいぶん懐かしい話を・・・できるが、やるとすれば局内で工事が必要やな。」
沖原は頭をかいた。「それが、どないしたん?」
『そうか・・・。』
渡辺の、つぶやき。
「せやから、なにが、どうなってんねん?!」
沖原は語気を荒げて聞いた。「電話、切るぞ?」
『あ、ああ。すみません。』
慌てたように渡辺は謝った『実は、横浜ベイスターズの三浦さんの家なんですが、もしかすると通話規制されていた
んじゃないか、と思いまして。』
「なして?」
『吉見くんがここ数日中ずっと三浦さんに電話かけてたらしいのですが、全く電話がかからなかったようなんです。』
「へぇ・・・。」
沖原はいい、目の前にあるロケットを見上げた。
・・・そんなことをするなんて。何のために?
387 :
39:2005/06/20(月) 02:36:41 ID:OZDVjaeQ0
「ロケット広場」-2/2-
『一応確認のために、吉見くんを三浦さん家に行かせて今の状況を確認してもらってます。野田には石川くんと阿部く
んのフォローに向かわせてますが・・・正直人が足らないです。』
渡辺はため息交じりに言った。『沖原さん、忙しいところを大変申し訳ないですが、・・・できたら赤星さんや杉内くん
なんかも連れてこっちに合流していただけませんか?』
「・・・わかった。あの手紙は正直変だったからな・・・。気になっとったんや。」
沖原は一つ息をついた。「皆に声かけて、そっち行くわ。また連絡するねんけど、早くて到着は明日やな。」
『はい。ありがとうございます。』
渡辺の声と重なって、遠くで汽笛の音が聞こえた。
通話を切ってから、沖原は渡辺がどこから電話をかけてきたか聞くのを忘れたことに気がついた。
彼は手に持ち少し熱を帯びた携帯を見ながら少し迷い、携帯をもう一度開ける。
「もしもし、赤星? 俺、沖原や。」
『あ、お疲れさんです。』
赤星はどこかの室内なのか、静かなところにいるらしい。声がよく聞こえる。
「今、おまえどこ居る? この前の件やねんけど・・・。」
『大阪ドームにあるジムにいますけど?・・・ああ、優也や敦士に来てた例のアテネ五輪会の件ですか。』
赤星はこの前の件、で状況を理解したらしかった。
「せや。アレ、やっぱりオカシイて今、渡辺くんから連絡あってん。」
『なるほど・・・。そういうことなら、こちらからも援軍に行きます?』
赤星は言う。『渡辺のことやから、多分人が足りんとか言って来はったんでしょ?』
「そういうことや。とりあえず杉内くんとか山田くん、廣瀬くんあたりに声かけよ?」
『分かりました。明日にでも関東に着いて合流したほうがええかも分かりませんし。現場判断でやりましょ。』
赤星はまたかけます、と言って電話を切った。
沖原は電話を閉じると、ふうと息を吐く。
「さすがに聡いな、赤星・・・。」
一言つぶやき、沖原は傍らの階段を駆け上がった。地上では、冬の日差しが柔らかに照らしている。
彼は冷たい風に上着の襟を立て、駐車場へと歩いていった。
388 :
39:2005/06/20(月) 02:44:05 ID:OZDVjaeQ0
シドニー組編です。まだ本編とそんなに絡まないので。
389 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/20(月) 04:05:56 ID:ccgg3e/I0
はやくバトルに入ろうぜ
>>389 なんか妙に最初にこだわってるからまだ無理。『自分書くよ。』と自己宣言したのがちゃっちゃっと進めればいいのに…。もちろんちゃんと推敲してな。
age荒らしを相手にすんなというのに。
だって正直もうアテネバトの展開に萎えてるし。あげの人、相談所にまであらわれるなよ…。
萎えるとか書くほうもうざい。
気に入らないなら見なければいいだろ。
まったくだ。萎えるとか早く書けとか言う奴のせいで余計空気悪い。
萎えるって書いたのは悪かったけど、あげの人後処理ぐらいしろよ。ROMるとか言うくせに何回もあらわれやがって。
あげはもうただの荒らしになってるから言っても無駄。気持ちはわかるがスルーしる。
>>39さん新作乙です!
って言うか赤星さん話が早すぎるよ赤星さんw
399 :
107:2005/06/20(月) 17:08:26 ID:0zedhok90
「最初の悪意」
その時、突然明るいファンファーレが鳴り響き、司会の女性が再びマイクを取った。
「皆様、プレゼントは行き渡りましたでしょうか。
それでは、ゲームの説明をさせていただきたいと思います。
まずは、2004年アテネ五輪会特別記念として製作されたスペシャルムービーをご覧いただきます。
どうぞ、スクリーンにご注目ください」
その声を合図に、会場の照明がだんだんと落とされていく。
同時に、舞台にかけられた緞帳がするすると引き上げられ、大きなスクリーンが姿を現した。
やがて、完全に暗闇となった室内をほのかに照らすように、スクリーンに「2004アテネオリンピック野球代表ストーリー〜長嶋ジャパンの軌跡」のタイトル画面が映る。
「お、ドキュメントかいな」
「金かかってんなー」
「これで映像クイズとか言うんじゃないの?」
「こういうのって、なんか照れるよなぁ」
「いつの間に撮ったんだよー」
「大丈夫、お前は映ってないから」
既に多少の酔いが回っている選手達は、口々に勝手なことを言い合いながらスクリーンに注目し始める。
皆が興味津々に見守る中、画面には縦縞のユニフォームに身を包んだ選手達が現れ、軽快な音楽とともに様々なプレーが映し出されてゆく。
しかしそれは、彼らの予想していた場面の特集ではなかった。
手に汗握る力投や力強いホームラン、鮮やかなファインプレーの代わりにそこに映るのは――打たれてうなだれる投手、あえなく三振する打者、無様なエラーの数々……
それは、彼らの失敗の記録。
選手達の顔が、次第に強張ってゆく。
明らかにその映像は、悪意と侮蔑のもとに編集されていた。
400 :
107:2005/06/20(月) 17:08:56 ID:0zedhok90
「なんだよ、これ」
「おい、いいかげんにしろよ」
徐々に選手達のざわめきが大きくなっていく中、ふいに映像に変化が起きた。
画面に黒い斑点が飛び散り、どんどん大きくなっていく。
そして、遂には真っ黒に塗りつぶされた画面に、判で押されたようなかすれた赤い文字が浮かび上がった。
『BR』
その不吉な印象の文字は、選手達に更なる動揺を呼び込んでゆく。
なんだ?
なんだ?
これはなんだ?
しかし、その答えはすぐにもたらされた。
予想外の人物から、予想外の方向で。
カシャン、という機械的な音と共に壇上にスポットライトが当てられる。
そこには、赤いチャイナの女性の代わりに、厳しい顔をした星野仙一が立っていた。
先ほど選手達と握手した時の表情とは、あからさまに違う不穏な表情。そして全身に纏う不穏な気配。
手にはマイクと、A4サイズの黒い冊子。よく見れば、冊子にはスクリーンの画面と同じ『BR』の文字が見てとれる。
星野は、ゆっくりと選手達を見回し、厳かな声で宣告した。
「これからお前達には、殺し合いをしてもらう」
401 :
107:2005/06/20(月) 17:10:33 ID:0zedhok90
最初、その言葉は、選手たちのささやかな失笑を買っただけだった。
「はぁー? 何言うとんねん?」
「おいおい、なんのゲームだよ」
「くっだらねー」
言った相手が星野なだけに、皆、壇上に聞こえない程度の小声ではあったものの、顔には不愉快さと不可解さがありありと浮かんでいる。
中には、黙ったまま険しい表情をしている者もいた。
「すいませーん、なんの冗談ですかー!」
皆の気持ちを代表するかのように、藤本が叫んだ。その言葉には、かすかながら怯えが混じっている。
しかし、嫌な予感を振り払うように、メガホンのように口元に手を当て、わざとおどけた声を出した。
星野の威圧感には、慣れているつもりだった。
それが、いつもの星野であれば。
藤本の予想では、星野はちょっと顔をしかめてから呆れたように「人の話は最後まで聞け。なんでそう、お前は落ち着きがないんや」などと返してくるはずだった。
そうあって欲しかった。
けれど、星野は表情も声の調子もまったく変えないまま、冷然と言い放つ。
「冗談を言ったつもりはない。これが証拠だ」
軽く手を挙げる。
瞬間、落とされていた照明が元に戻った。
23人の選手達はようやく、自分達の置かれた状況の恐ろしさを知ることとなった。
いつの間にか、銃を構えた男達が壁際にずらりと並んでいる。
一様に黒いサングラスをかけた彼らからは表情が読みとれず、ただ静かに、選手達に銃口を向けていた。
402 :
107:2005/06/20(月) 17:16:14 ID:0zedhok90
※避難所に投下された草稿と思われる星野編は、申し訳ありませんがスルーさせていただきました。
乙です!
いよいよゲームの始まりですね
職人様乙です。
やっぱり仙一おっかねぇ・・・
GJ!遂にお約束の台詞が来ましたね!
職人さん乙です!
雑音に負けずがんばってください!
遂に開始か。職人さん乙!
408 :
107:2005/06/21(火) 18:26:42 ID:vWZl6sad0
「夢の代償」
しん、と静まり返った会場を、星野は相変わらず厳しい瞳のまま見渡した。
「他に質問はないようだな。では改めてゲームの説明に入る。まずは引き続きムービーを見てもらおう」
「ちょっと待ってください!」
異を唱えたのは宮本だった。
質問がないだと? 冗談じゃない。聞きたいことは山ほどある。
宮本は疑問を叩きつけるように叫ぶ。
「説明してください!何故そんなことしなくちゃならないんです!」
「わからないか、宮本」
星野の言葉には、妙な陽気さが含まれていた。それは人を絶望に突き落とす時の、残虐な期待を含んだ悪魔の陽気さだった。
「さっきのムービーを見てもまだわからんのか!」
星野は興奮を隠そうともせずに、持っていた冊子で壇を叩く。
ぱん、という小気味よい音がして、場の静けさに不釣合いなほどに響いた。
「あの無様なプレーはなんだ! あれがプロの姿か!? あれが日本の野球のレベルか!?
オールプロで臨んだ戦いで、最低の銅メダル! それがどんなに恥ずかしいことかわからんのか!
お前達は自分が情けなくならんのか!」
一人一人の顔を睨みつけながら、星野は憤然と言葉を浴びせる。
そして、ゆっくりと最後の息を吐いた。
「お前達は、罰を受けるべきだとは思わないか?」
「だから・・・…だから、殺し合えって言うんですか!?」
星野の迫力に押されながらも、宮本はなんとか言葉を紡ぎ出した。
星野の言うことはわかる。
自分達のプレーを誰より悔やんでいるのは、自分達なのだから。
でも。
だからって。
殺し合いをしろ、だと?
409 :
107:2005/06/21(火) 18:28:53 ID:vWZl6sad0
そうだ」
「い、意味がわかりません。無茶苦茶だ!」
「わからなくてもいい。お前達はこれから殺し合いをする。それだけわかっていればいいことだ」
星野はすげなく言い捨てる。その冷淡な態度は、宮本にまったくとりつくしまを与えなかった。
しかし、ここで引き下がるわけにもいかない。
あまりのことに声を失った宮本を援護するように、他の選手達も口々に異論を叫び始める。
星野はしばらく黙ってその様子を眺めていたが、やがて軽くため息をついて彼らを制した。
「どうやらお前達は、俺が思っていたよりも物分りが悪いようだな」
「物分りとか、……そういう問題じゃないでしょう!?」
叫んだのは誰だったか。
それは全員の気持ちだった。
いきなり殺し合いをしろといわれて、はいそうですかと納得できる人間がどこにいるのか。
「仕方ない。多少順番が前後するが、話を進めやすくしてやろう」
星野は緞帳の端から舞台の袖を覗き込み、何事か合図をした。
袖から黒い布のかけられた台車が運ばれてくる。
豪華な船の豪華なホール。その豪華な舞台とそぐわない、なんの変哲もない青い台車。
何故かそれがひどく不吉なものに見える。
「ところで、この会の招集通知に『欠席者には重大な罰則』とあったことは覚えているな?」
星野は急に話を変えた。
むろん、忘れるわけはない。誰もが気にかけており、この会への不信の源となっていた一文である。
「その『罰則』というのがこれだ」
言うが早いか星野が台車にかけられた黒い布をひきむしった。
しばらくの間、静寂がその場を支配する。
「……まさか」
誰かの声が呟いた。
410 :
107:2005/06/21(火) 18:29:57 ID:vWZl6sad0
「ノ、ノリさんっ!?」
ひきつれたような岩隈の悲鳴が響く。
その声を聞くまでもなく、それが中村紀洋であることはその場にいる全員に理解できていた。
ただ彼らに理解できないのは、その姿。
中村は、赤く染まっている。
台車の上に載せられたパイプ椅子に縛り付けられたまま、四肢をだらんと垂らし、口からはどす黒い液体が数条こぼれている。
腹のあたりは真っ赤というよりも赤黒く、ところどころに黒い点があるのが見える。
視点のない虚ろな瞳にかつての仲間たちを映している。
それはどう見ても、どんなに違うと思い込もうとしても、まぎれもな中村であったもの、そして今はもう中村ではないもの。
腹にいくつかの穴が開いた、血にまみれた死体であった。
アテネ代表のチームメイトの中でただ一人、この会を欠席した男。
ルールや世間体より、自分の夢を選んだ男。
その代償が、これだった。
この中の誰よりも不遜で自分に正直だった男は、もの言わぬ無残な死体となってそこにいる。
『重大な罰則』――全員が、その意味を知った。
【中村紀洋(Bu5)死亡 残り23人】
411 :
107:2005/06/21(火) 18:33:21 ID:vWZl6sad0
連投スマソ。続き書けたのでいっちゃいました。
死亡枠内は名前いらなかったら消してもらいます。
番号はチーム名+アテネ背番号ですが、これもいらなかったら(ry
412 :
107:2005/06/21(火) 18:39:51 ID:vWZl6sad0
すいません。
>>409の頭の台詞、「が抜けました。
保管庫さん、修正よろしくお願いします。
職人さん乙です。
ついに最初の犠牲者か・・・(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
乙です!
1001テラコワスwwwww
415 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/21(火) 22:33:11 ID:rdQlGp6T0
職人さん乙です!
ついに始まったよぉぉぉぉ!!
ついにハジマター!!!
職人さん乙です!見せしめキタよー!
「ルール説明」
「ノ、ノリさんをなんで殺したんだ!!!」
岩隈は思わず勢いに任せ中村の遺体に近づこうとしたその時、
パンッ
と風船の割れるような音がして何か速い物体が岩隈の頬を掠めうすらと血の色に染めた。岩隈は急な出来事に思わず動けなくなる。恐る恐る正面を向くと周りを取り囲んでいた男の一人の銃から煙が立っていた。
その光景を見た選手達は悲鳴の混じったような声を出す。
「勝手な行動は許さない、これからルールの説明を始める。」
選手達の声を遮り星野の強い口調が船内に響き渡った。その声と同時に先程のスクリーンにどこかの島の様子が浮かび上がる。人の気配が一切ない無人島のようだ。
「今、この船はこの島に向かっている。この島でお前達に殺し合いをやってもらうことになる。ルールは最後の一人になるまで殺し合いを続けるだけだ、至って簡単だろ?
ただし、6時間ごとに禁止エリアを設けてあり、そこに入ると首輪が爆発する、そして24時間以内に誰も死ぬことがなかったらお前達全員の首輪が爆発するからな。どちらもちゃんと頭に入れておけ。
武器や食料は先程配ったカバンにすべて入っている。島に到着してからあけるように。
尚、着ているタキシードに何か不振な物が入ってる可能性があるかもしれないだろう、出発する前に各自五輪の時のユニホームに着替えてもらう。
……説明は以上だ。理解したら今すぐ、そこに用意されているユニホームに着替えろ。」
星野の長い説明にただ唖然として選手達は聞いていた。もう誰一人、口を開こうとするものはいない。
これは現実なんだ。
逃げることはもうできないんだ。
いつのまにか船はスクリーンに映し出された島に停泊している。いよいよ、恐怖のゲームが始まりを告げたのだった。
微力ながら書いてみました。間違い等のご指摘お願いします。
掲示板見ようとおもったらメンテ中で落ちてた orz
それだけ。
職人さんたち乙です!
っていうかついに始まっちゃったよ・・・・・ガクガク
職人さん方、乙です。
保管庫からスレの皆様へお知らせ。
携帯からも一応見えるようにしてみました。
もしかしたら機種によっては容量オーバーで見れない話があるかも…
424 :
75:2005/06/22(水) 21:25:13 ID:avrBNIK40
[ぼんやりと見える隙間]
殺し合い
まさか過去の上司からこんな台詞が出てくるとは思わず、岩瀬はぼんやりしていた。
ぼんやりしている間に中村の死体が台車によって運ばれ、岩隈の頬に一筋赤い線が出来た。
「殺し合い。」
デザートの入ったトレーが並ぶ台の側に立っていた岩瀬は、自分にも聞こえないほどの声でそう呟く。
そして、自分の呟いた言葉に背筋が冷える思いがした。
舞台の上に目をやれば、赤黒くなった物体の隣に星野が立っている。
途轍もなく異常な光景だが、後数時間もすればこれが普通になるんだろうか。
ざわめきの消えた部屋でそうぼんやり考えていた。
「・・・・ただし、6時間ごとに禁止エリアを設けてあり、そこに入ると首輪が爆発する、そして24時間以内に・・・・」
星野の口の動きを目で追いながら、腕組みをする。
生き残れるのは1人だけ、6時間ごとに増える禁止エリア、24時間死人がいなかったら即爆破、必要なものはアテネ用の鞄の中、それで今からアテネ用ユニフォームに着替える、か。
頭の中に必要な事だけを入れると、足元に置いた白いエナメル加工の鞄を見た。
これが俺のこれからの運命を決めるのか。
ふと岩瀬は自分でも不思議なほど冷静な事に気付いた。
腕を組んだまま、左手で台の上に置いたオレンジジュース入りのグラスを持った。
そしてごくごくと飲むと会場内を見回した。
真っ青な表情、あっけにとられている顔、怒りを抑えられないような顔、様々な表情が見える。
無言のまま一人一人を見回していると、ガラガラと舞台の前に台車が出てきた。
多分あれが新調したアテネ用ユニフォームだな、と思いながら岩瀬はグラスの中に残っていた液体を飲み干す。
それから鞄を右肩にかけて、普段と同じようにすたすたと歩き始めた。
すると岩瀬の足音に驚いたのか何人かが振り返る。
『お前、これに乗るつもりなのか?』や『何考えてるんだ・・・・』などが視線を通して岩瀬の耳に入る。
425 :
75:2005/06/22(水) 21:25:46 ID:avrBNIK40
しかし岩瀬は淡々と舞台前の台車に向かう。
そして台車の前に着くと整然と並べられたビニール袋入りのユニフォームを見た。
その中から自分の背番号と苗字がローマ字で刺繍してある物を選ぶ。
ふと顔を上げると険しい表情の星野と目があった。
「着替える場所無いんですか。」
岩瀬は自分でもよく考えないままそう言い、そしてこの会場の室温がまた下がったみたいだという事を肌で感じた。
ぼんやりと岩瀬は白いライトに照らされた過去の自分の監督を見ながら、答えを待った。
「無い。」
星野はこの場の空気を無視するがのごとく、冷たく言った。
適当に返事をして、自分のユニフォームの背ネームを眺めながら、岩瀬は元の場所へ戻ろうと踵を返す。
しかしまだ呆然としている岩隈を除くほとんどが多様な感情を隠すこともせず、眼で自分を突き刺している事に気付き、立ち止まる。
じんわりと自分の手が汗で濡れているのが分かった。
426 :
75:2005/06/22(水) 21:25:56 ID:avrBNIK40
「おぉ、そうだそうだ。」
いきなりスピーカーから星野の声が響いた。
もう一度全員の視線が舞台上に向く。
岩瀬は短く息を吐き、再びデザートのテーブルの前に戻った。
どさりと鞄を絨毯の上に置くと同時に、星野が話し始めた。
「ある御方と話をして、このゲームの勝者は無条件にメジャーに挑戦できるようにした。あとこの船を出る順は背番号順だ。」
早く着替えろ、と静かに低く星野が言った。
あんまり興味ないなと思いながら聞き流し、タキシードのボタンを外して着替える。
ビリリとビニール袋を開けると真新しい布の匂いがした。
中を確認するとアンダーシャツもベルトもソックスも入っている。
殺し合いが始まるって言うのに何でこんなに俺は静かなんだ。
岩瀬は動き出した他の選手たちを気にも留めず、ぼんやり考えながらアンダーシャツとユニフォームを取り出した。
長袖のアンダーシャツの首元と薄い灰色の縦縞のユニフォームの背中に『13』の刺繍が輝いている。
その輝きに秘められた『何か』に気付くことなく、岩瀬はぼんやりと自分の背番号を眺めていた。
427 :
75:2005/06/22(水) 21:28:06 ID:avrBNIK40
D13岩瀬お借りしました。
「嗅覚」
まさかこんな形で日の丸を背負うことになるとは。
真新しいユニフォームに袖を通してみても、酷く着心地が悪いのは気のせいだろうか。
気持ちの整理もつかないうちに、福留のスタートはやって来た。
どうやら舞台となる島には豪華客船が泊まることが出来るほどの港はないようで、
簡素なボートに乗り換えて島へと送り届けられた。
監視役の係員としてなのか、ボートには銃を手にした男が2人一緒に乗り込んでいた。
福留持ち前の明るさで軽口を叩いてみたが、無機質な銃口を向けられただけで、
彼らは口を開かなかった。
もしこれが手の込んだ作りものなのだとしたら?
例え島についても、適当にサバイバルごっこか何かして終わるだろう。
さんざん怯えきった選手たちを見て、誰かが笑うんだろう。
でも、これが本当の殺し合いなのだとしたら。
ゲームの舞台に上がるまえに逃げ出した方が得策なのでは?
ボートには3人だけ。
だが、膝をつき合わせるほど小さなボートでは、不穏な動きをしただけで
黒光りする銃口が火を吹くだろう。
このゲームが本当なのだったら。
BRとやらが作り物でも本物でも、海の上で暴れてみてもいいことはない。
ならば、陸に上がってから考えた方がいい。
どちらにしろ、揺れるボートの上ではマトモな考えもこぼれ落ちてしまいそうだ。
ボートを下りる前に、ダイヤモンド・プリンセスを振り返る。
乗る時には何とも思わなかったが、今はひどく禍々しく見える。
悪魔の煌びやかさなのか。
ぞくりと鳥肌を立たせて、不気味な静寂に包まれた島へ足を下ろした。
背番号順なら、次にここへ来るのは小笠原道大。
ファイターズの頼れる選手会長だ。
だが、福留は小笠原を待つことは出来なかった。
理屈ではなく、身体が拒否したのだ。
平坦な海辺にいることを、怖いと思ったのだ。
それはきっと、命の危険を感じた動物の本能。
鞄の中身を確かめるために、福留は隠れる場所を探して島の中へと入って行った。
職人様乙です!
落ちすぎっぽいので一度あげ。気にせず続きどぞー。↓
職人様方、乙です!
この後の小笠原→宮本→金子って順番が何かすごく気になる…。
433 :
107:2005/06/24(金) 11:37:08 ID:8WLKfNzE0
「サブキャスト」
海岸から続く道を歩きながら、金子は自分の背番号に感謝していた。
チームにいる時と同じ背番号8の彼は、死亡してしまった中村が抜けたことで4番目の出発となった。
これは、かなりありがたい。
自分の前に出たメンバーもよかった。
最初に出発した福留はケガ人であるし、2番目の小笠原は金子にとって誰より信用できる。
3番目に出た宮本もキャプテンで責任感が強く、星野にも表立って反抗していたから大丈夫……
少なくとも、いきなり待ち伏せされて襲われる危険性はないだろう、と金子は考えていた。
背後にさえ気をつけていれば、今のところは安全だ。
今のところは、か。
金子は自嘲気味に思った。
こんな馬鹿なゲームに参加する選手などいるわけない、と笑い飛ばせない自分が悲しい。
と同時に、すでに保身のみを考えている自分の小心さも自覚していた。
ゲームを知らされた時の仲間の様子を思うと、自分は他人より感情の振り幅が小さいのかもしれないと今更に感じる。
状況を理解した時、怒りや恐怖や動揺が湧き起こるよりも先に、ただ「死にたくない」と思ってしまった。
それから、「生き残る」ためになすべきことを必死で考え始める自分がいた。
小心で臆病であるからこそ、常に慎重な行動が必要になる。
そして、思考を回転させていれば感情に支配されずに済む。
それは一種の現実逃避であったかもしれないが、自分なりの平常心の保ち方でもあった。
ああ、でもなんか普通に平気そうな人もいたな……岩瀬さんとか。
皆が動けなくなっている中、一人平然と着替え始めていた岩瀬を思い出す。
その顔からはなんの感情も読み取れず、不気味なほど落ち着いているように見えた。
やはり名ストッパーと呼ばれる人は、普通より度胸が据わっているのだろうか。
脱出する何かいい手でも考えついたのだろうか。
それとも……?
434 :
107:2005/06/24(金) 11:39:47 ID:8WLKfNzE0
岩瀬はゲームに乗る気かもしれない。
何人かが内心抱いたであろう疑念を、金子も抱いていた。
だが、それに対する感想は、他の人間と違う。
だとしたら、岩瀬さんは自分に自信があるんだ。羨ましいよな。
この時点で、金子の思考からは完全に倫理観が抜け落ちていたが、本人はそのことには気づいていない。
ただゲームの勝者を目指すことのできる立場を、純粋に羨んでいた。
それはある意味最も単純な解決策だが、自分には決して真似できない解決策でもある。
ゲームに乗ったとしても、このメンバーの中で自分が最後の一人になれるとは思えない。
もう一つの危惧は、たとえ最後の一人に残ったとしても本当に命が助かるのかということだった。
卑劣な手段で人に殺し合いをさせようとする連中が約束を守るとはとうてい思えない。
メジャー挑戦をさせてやるなどと調子のいい事を言っていたが、生き残れば大規模な犯罪の生き証人。口封じに殺されるのがオチだ。
岩瀬のような実績のある選手であれば、条件によって行かせて貰えるかもしれないが、メジャーに行ったところで活躍するはずのない自分は無理だろう。
そう考えると、ゲームに乗った所で金子には何のメリットもなかった。
では、どうすればいいか?――それがわからない。
沈着冷静が持ち味だと公言してはばからない金子は、島に着くまでの短い間にとりあえずの気持ちの整理をつけていたが、だからといって、この状況を打破するいい手が浮かぶわけでもなかった。
問題を解決するのに冷静さは必要だが、冷静さだけあったとしても何も解決しない。
できれば打開策を考えるのは、自分以外の誰かであって欲しかった。
海岸に降り立った時、どこかで小笠原が待っていてくれないかと思ったが、どこにも見当たらなかった。
それどころか、ボートに同乗していた男達に「早く行け」と言わんばかりに銃を向けられ、結局その場を離れざるを得なかった。
あのまま、自分の次に来るはずの城島――実は彼には、少なからず期待していた――を待っていようとしたら、発砲されたかもしれない。
よく考えてみれば、自分達が協力体制を整えようとすることを、あの星野が見逃させるはずもなかった。
435 :
107:2005/06/24(金) 11:42:12 ID:8WLKfNzE0
なんとかガッツさんに合流できればいいんだけどな。
出発時間はそう離れていないが、向かった方向がわからなければどうしようもない。
海岸の砂浜には3つの足跡が残っていたが、どれも砂浜から上がる石段に続いており、そこから先の進路はわからなかった。
何か目印でも残ってないかと探してみたが、それらしいものも見つけられない。
「くそー、薄情だな、もう!」
そうしているうちに後続の到着時間が迫ってくる。だんだん不安も募ってきた。
城島も、メジャーで充分通用する選手だった。
力も強い。体力もある。もし彼がやる気になっていたら、勝てるわけない。
金子は期待や信頼よりも、身の安全を取ることにした。
道を逸れ、森に分け入る。
数分後。
ようやく落ち着ける場所を探し当てた金子は、鞄を開けて出てきたものを見て、脱力するしかなかった。
436 :
107:2005/06/24(金) 11:42:43 ID:8WLKfNzE0
30センチ四方のビニール袋に、いくつかの小物が詰め込まれ、派手な赤いシールが貼ってある。
取扱説明書を兼ねているらしいそれには、ポップな字体でこう記されていた。
『かんたんガーデニング★5点セット』
・園芸用シャベル…錆に強いセラミック加工!(※特許申請中)
・強力殺虫スプレー…どんな害虫もイチコロ!
・ミニ植木鉢…割れにくく汚れにくいプラスチック製!
・デラックス肥料…これさえあれば栄養満点!
・花の種(パンジー)…初心者でもカンタンに育てられる人気の花!
種まきの時期:初秋から(9月〜)
花が咲く時期:晩秋から初夏にかけて(11月〜5月)
……やっぱり、俺は主役じゃないらしい。
金子は、深いため息をついた。
437 :
107:2005/06/24(金) 11:51:48 ID:8WLKfNzE0
※以降、キャラ拘束するつもりはないので、小笠原・金子とも職人の皆様ご自由にお使いください。
「雑草」
「クソッ、よりにもよってこんな時に」
上原は舌打ちした。
期待は最悪の形で裏切られた。
優勝こそ逃したが巨人の弱体投手陣の中にあって獅子奮迅の働きをし、シドニー五輪でもそれなりに世界にアピールできたと思う。
シーズン中に結婚もした。さあこれからというときに。
乗り込んだ豪華客船は、地獄への渡し舟であった。
自分の直前に船を出た松坂の姿は見えない。無論他の選手も。
しかしゲームは確実に始まっている。
既に中村が殺された。そしてこうしている間にも誰かが殺し合っているかもしれないのだ。
右手に鎌を握り締め――これが彼の支給品だった――身を潜める。
戦えなくはないが、やはり銃をもっている相手には分が悪い。迂闊に見つかることは避けねばならない。
とにかく生き残らねばならない。自分のため、そしてあの男と決着をつけるためにも。
「とにかく我慢、や」
いつものように言い聞かせる。苦境に陥った彼をいつも救ったのがこの忍耐だった。
高校で建山の控えに甘んじていた時も、大学に落ちて浪人していたときも。
メジャー移籍騒動で毎日のようにマスコミに叩かれていた時も。
この場にいる他の選手にはない、エリートコースの外から這い上がってきた者の強さが自分にはあるはずだ。
何としてでも生き残ってやる。雑草魂を見せてやる。
遠くで、殺し合いの開始を告げる乾いた銃声がした。
439 :
438:2005/06/24(金) 22:50:03 ID:bmE2/HSd0
>>437 乙です!
及ばずながら少し書かせていただきました。
>>438 乙です!ただ、シドニー→アテネかなと思いますが?もし違ってたらすいません…。
441 :
438:2005/06/24(金) 23:17:07 ID:bmE2/HSd0
>>440 すんません。「シドニー→アテネ」です。訂正します
職人さん方乙です!
金子と上原、これからどう転んでいくのか楽しみです〜。
金子の支給品の使われ方は色々想像しちゃうなぁ。
443 :
39:2005/06/25(土) 11:53:04 ID:GOpbsMKN0
「右へ歩く」-1/3-
『右にいけ。俺も後を追う。』
ユニフォームに着替えている最中に小林雅英からささやかれた言葉を心の中で反芻し、清水直行はひたすら海を右手にして歩いていた。
おそらく何も言われなかったらその場に立ち尽くしていただろうことを思い、清水はチームメイトに深く感謝する。
これから、どうするのか。
これから、どうなるのか。
ゲームに乗る気はさらさらないけれど、生き残るためには、どうすればいい?
雅やん、クマ、大丈夫かな・・・。
歩きながら、グルグルといろいろなことが思い浮かぶ。
実は壮大なドッキリとかだったらいいのにな。
ああ、こんなことならいきなり声がかかったドーピング検査に行かなきゃよかった。
なんで俺、こんなとこでこんなことやってんだろ・・・。
砂浜は早々に終わり、森の端の道なき道をかきわけ、ひたすら歩く。
ドメや小笠原さん、宮本さん、金子、ジョー、谷さん。
俺より前にこの島に入った人たちは、今どこで、何をしているのか。
・・・武器を準備して、誰かを付け狙ってる?
「まさか、皆に限ってそんなん・・・。俺、何考えてんねん。アホや、ほんま。」
そうつぶやいては見たものの、清水は心の奥底で否定できない自分に打ちのめされていた。
444 :
39:2005/06/25(土) 12:06:14 ID:GOpbsMKN0
「右へ歩く」-2/3-
何故アテネで必死にやってきた皆で、殺し合いなんかしなきゃいけないんだ。
このバカなゲームを終わらせるためには、どうすればいいのか。
アテネでともに辛酸をなめた仲間を皆殺す?
そんなこと、できるわけがない。
よしんば運良く生き残ったとして、千葉に戻ってからまた今までどおり野球ができるのか?
「ああ・・・ムリや。他の連中は笑顔で迎えてくれたとしても。・・・俺、もう投げられへんかもな。」
清水の脳裏に、女房役の橋本や里崎の顔が思い浮かぶ。
一塁でにやけながら球を受ける福浦、三塁で涼しげに微笑む初芝、いつも笑わないショート小坂、眉間にしわを寄せながら守備をこなす二塁堀。
「今頃何やってんやろなぁ。」
森を抜けると、昔は畑だったらしい草原が広がっていた。
海岸は坂になっていて、上がりきった崖の上に灯台が立っている。
清水は草原に分け入り、鞄をぽんと放り投げるとその傍らで横になった。
周りには誰の気配もしない。ただ、波の音や風に草が揺れる音が無限ループのように響いるだけ。
ああ、そういや俺に支給された武器って、なんだろ・・・。
草の陰に隠れ誰の姿も見えないが、それでも周りを見回し耳を澄ましてから鞄を開けた。
鞄から出てきたずっしりと重いビニール袋には、銃が一丁と、マガジンが3本入っていた。
【『ブローニング ハイパワー』!! これでがんがん人を殺してね(はぁと)】
袋に貼ってあった赤いラベルに、丸文字で書かれた言葉。
袋の中身の物騒さとラベルのギャップに清水はガックリと肩を落とす。
「はぁ・・・。」
445 :
39:2005/06/25(土) 12:07:13 ID:GOpbsMKN0
「右へ歩く」-3/3-
本当に人を殺す武器が入ってた。
殺し合い、という言葉は嘘じゃなかった。
でも、俺、これをチームメイトに向けられるのか? 引き金を引くのか?
ありえない。死にたくないけど、俺は・・・どうすれば・・・?
嫌だ、どうして俺がこんな役割なんだよ・・・。
銃を目の前にしてグルグル考えをめぐらせていた清水の意識は、かすかに聞こえたパァン、という乾いた銃声で現実に引き戻された。
俺の鞄に銃があるくらいだ。他の者にも支給されて当然だ。
銃を支給された奴がこのゲームに乗り気だとしたら。
背番号が後ろの者はボートから降りたところで狙撃されるかもしれない。
小林も、それは例外ではない。
「ま・・・雅やんを、守らなきゃ・・・。」
清水は取扱説明書を兼ねるラベルを見て、マガジンを銃にセットする。
試しに構えてみると、ずしりと重たい鉄の感触。
一種の高揚感とともに、目に見えない何かが自分の背を押しているのを感じる。
やれる・・・かも?
清水は来た道を引き返し森へと入った。
頼れる守護神を守るために。
446 :
39:2005/06/25(土) 12:07:59 ID:GOpbsMKN0
あああ、あげちゃった・・・orz
スマソ
「愛する家族」
次に順番を待つ岩隈久志は、考えていた。
『どうにかしてこの首輪は、取れない物か・・・』
家族三人で仲良く写っている写真を見ながらずっと考えていた。
「まどか、うた、必ず僕は、生きて変えるからね。」
一人でそうつぶやいた。
そして岩隈は、ずっと震えていた。
その時だ。
♪ピンポンパンポーン何やら放送の知らせの音がした。
「BR参加者は、船から降りた後に改めて出欠確認を取る。」
その声は、星野の声だった。
『出欠って一体・・・?』
岩隈がそう思っていた時にBR委員会の一人が銃を突きつけ
「20番岩隈早く行け!」
そう言われ岩隈は、声を震わせながら「は、はい。」と言い
船を出た。
岩隈は、鞄の中を確認したら岩隈に支給された武器は
プラスとマイナスのドライバーだった。
「これでどうやって戦えというのか?」
『とりあえず誰かと落ち合えたらいいけど・・・』
そう思いながら岩隈は周りを見渡した。
>>447 お前、例のあげ厨だろ?文章支離滅裂で他の職人に迷惑かかることわかってんのか?
>>448は以下、華麗にスルー。
職人さん乙です!!
話が進んできてワクテカですよ!!
「様々な足跡」
…とんでもない事になったな。
波に揺れるボートの上、村松は自分に銃を向ける男を睨みながら小さく呻いた。
傍に置いた鞄に対する緊張は、中に何が入っているか分からない不安からくるものだろうか。
じっとしていられなくて、自分が着込むユニフォームとは酷く不釣合いな首輪を撫でてみた。
この首輪が自分の命運を握っているのだと思うと、船酔いとは違う種類の吐き気に襲われる。
「…とても爆発するようには見えないが…。」
独り言のつもりだった呟きに、自分に銃を向けていた男が反応した。
「……お試しになりますか?」
男が丁寧な口調で囁くと、村松は咄嗟に首輪から手を放す。
「…遠慮しておく。」
至近距離で人間の死体を見た後での、この状況。愛想笑いを浮かべる余裕など無かった。
あの中村の無残な姿を思い出すだけでも吐き気が更に酷くなり、思わず口を押さえる。
自分があんな風になるのだけは、嫌だ。中村には悪いが、あんな死に方、俺は絶対にごめんだ。
頭を左右に振って死体の残像を散らすと、少しでも遠くを見ようと徐々に近づく島に視線を移す。
その島で行なわれる馬鹿げたゲームのルールを改めて思い返しながら、頬杖をつく。
星野は24時間以内に誰かが死なないと、全員死ぬと言っていた。
自殺などは条件に含まれるのだろうか?と思ったが、自殺するつもりなど毛頭無い。
その行為は、生きたくても生きられなかった昔の仲間に対してあまりにも失礼だと思ったからだ。
誰かが自殺してくれれば有り難いかもな、と頭の片隅でボンヤリと思うにとどまる。
勿論、誰にも死んで欲しくないというのが本音ではあったが。中村が死んだ今、それは叶わない。
「そういえば…誰かが死んだら、すぐに分かるのか?」
両手を上げて敵意が無い事を示しながら問いかけると、男は銃を向けたまま説明的に答える。
「首輪には生命反応を感知する機能がついていますから、すぐに分かります。
6時間ごとに禁止エリアを放送する際に、死亡者も放送します。」
「…殺人者は?」
「………。」
返答の代わりか、向けられた銃が更に接近する。その無言の返答は、否定とも肯定ともとれない。
まあ、後になれば分かる。と結論付けて村松は再び島を見やった。
島にはもう半数以上の選手が到着している。待ち伏せされている可能性も無くはない。
…まさか、全員がやる気になっているはずはないと信じたいが…。
いくら命が掛かっているとはいえ、突然言い渡された殺人遊戯に何の躊躇いもなく乗る方が異常だ。
恐怖に苛まれながら怯えている人間や、皆で助かろうとしている人間の方が多いはず。
彼らと合流して力をあわせれば、打開策はきっと見つかる。きっと…おそらく。
ただ、説明の後に星野が付け加えた言葉がどうしても気に掛かった。
…このゲームの勝者は無条件にメジャーに挑戦できるようにした…
そんな物につられて殺人を犯す人間がいるとは思いたくない。
…メジャーなんて、FAで行けるじゃないか。
裏切り者と呼ばれても構わない、と淋しく笑った後輩のように。
しかし誰一人として、彼を裏切り者とは呼ばなかった。
当然だ。彼は長年かけて手にした正当な権利を使って夢の世界へと旅立ったのだから。
その長年を惜しむ気は分かるが、だからってこのゲームに乗るような奴の気がしれない。
…人を殺してまで自分の夢を叶えようとする奴は、人間じゃない。悪魔だ。
村松は固い表情で汗が滲む拳を力一杯握り締める。島に悪魔がいない事を祈りながら。
だが、その祈りは無残にも突然島から響いた微かな音に打ち消される。
鳥を一斉に空に舞わせたその音は、銃声以外の何物とも思えなかった。
あの島にはもう、悪魔がいる。それを島に着く前に知る事ができたのは幸か不幸か。
海岸が近づくにつれ、砂浜につけられた様々な足跡が目に入ってきた。
走った跡、歩いた跡、転んだ跡。様々な方向につけられた足跡が砂の上にはっきりと残っている。
果たして、どれが人間の足跡で、どれが悪魔の足跡か。
分かるはずも無い事を無意識に考えている自分に気づいて、苦笑する。
…いざという時にはこの手を血で染める事になるかもしれないな…。
誰かに襲われた時。誰かが襲われている時。その時だけは正当防衛の名の下に、己に殺人の許可をだそう。
まだ鞄に何が入っているのかは分からないが、その気になれば武器などなくても命は奪える。
ボートが海岸に着くなり、村松は鞄を担いで立ち上がった。潮の臭いが妙に鼻にさわる。
胸に溜まった気持ち悪さはまだ抜けない。だが男達が見ている前で吐く事は己のプライドが許さなかった。
…とにかく、まずは信頼できる「人間」を見つけなければ。
正義感に溢れながらも冷徹な心構えを胸に秘めて、村松は島へと降り立った。
453 :
39:2005/06/25(土) 22:12:53 ID:Jrhf1ret0
以上 掲示板からの代理投下でした。
またあげな人の意味不明話なのに…何故スルーできるんだ?放置したら大変だぞ?
とりあえず
>>447は全ボツで華麗にスルーでいいだろ。
放送なんて意味不明すぎ。
文章、内容、リレー的見地のすべてでNG。
よって破棄されて当然。
わかったわかった
「ルパンを探せ」
24番目…これは良い順番なのか、悪い順番なのか…由伸はただぼんやりと無気力に鞄を開ける。まったくの無防備で、まるでどうなっても構わないかと言うように。
【最強のガンマン次元愛用『S&W』〜ハードボイルドな世界〜 】
鞄から出てきたのはS&W。渋い書体で記されたラベルを見るなり脱力するように大きなため息をつく。
「これをスコープ代わりにしろってか?」
そして新しくごわついたキャップをさする。確か次元は帽子をスコープ代わりにしており、帽子が無いと弾が当たらないと聞いたことがあり、さらに苦笑する。こんなどうでもいいことをこんな状況で思いだし、苦笑する自分。それはまだこの歪んだ闇にピンとこないからであろう。
「無理…だな。俺には無理だ。」
誰かを殺すことでしか生きる事ができない。万が一生き残ったところで何事も無かったように野球やって…そのうち結婚でもして子供ができて、引退して…今度はOBとしてゲームを黙認して…
「……」
生き残るということはそういうことなのか…由伸は襲ってきた寒気に身を震わす。
「生き残っても地獄…か。」
生きる気力を失ったようにS&Wをゴトン、と地面に落とす。
「どうしようかね。」
由伸は目を閉じる。だが、このまま犬死にしたところで…今後この悲惨なゲームが二度と起こらない保証などあるであろうか。
(…生き残り、何事も無かった顔して野球続けて…引退後はゲームを知らないフリをする…誰がそう決めたんだ?生き残るという事は…)
由伸は落としたS&Wを拾い上げた。
(二度とこんなゲームが起こらないように…それこそ命賭けて阻止する事が…本当の意味での生き残る、じゃないのか?)
S&Wをじっと眺めながら今一度自分自身に問いかけてみる。
「俺がここで死んで…もし生き残った奴等が今後もゲームを黙認するようなら…この先とんでもない数の犠牲者が出てしまうじゃないか…」
それこそ身の毛がよだつ話しである。由伸は固く口唇を噛みしめた。
「生き残ろう…生き残って…」
なんとしてでも今後、二度とゲームが起こらないようにしなくてはいけない。
「死ぬのはそれが終った後でも遅くない…」
そうと決まれば動くのみである。だが、今は一人という極めて寂しい状況であった。
「次元愛用S&Wか…次元にゃルパンが付きものだ。」
既にヤル気になっている選手もいるであろう。悲しい事であるが、容易に想像できることだ。そんな中で信頼できる相棒を探す…これは困難な事かもしれないが、絶対不可欠なことでもある。
(こんな状況なんだ。こいつなら…というのは独断と先入観にすぎないだろうな。でも…)
その独断で動くしかないのだ。
「…動く前に…少し考える時間を作るか。」
やみくもに動くことで、信頼できる仲間と出会えるという劇的な可能性よりも、この選手ならば…とある程度決めて動く事にした由伸は砂浜に選手達の名前を書き連ねる。アテネで共に過ごした面々の名前を…
職人様方々乙です!
あげの文章は一切スルーなのか?保管庫さん困ってるそう…。
困ってるそう→困ってそうでした…。自分も日本語駄目だ…。
ほんとどうしたらいいか…。
先に進めるのはいいけどあげの人のこと話し合おうよ…。
このまま放置されたら牛職人さんも困るのではないか?
岩隈はある程度書きたいと言ってたし…。
>>460-463 ここで話合うのもアレかなと思ったので、一応掲示板『保管庫から職人さんへスレ』の方にネタ振りしておきました。
もし適当でなければ別途スレ立てして話し合ったほうがいいと思いますが・・・。
>>464 ノシ
そうですね…。スレ立てて来ました。意見のある方よろしくお願いします。
>>458 職人さん乙です!
次元な由伸カコヨスwwww
ワルサーが誰に渡るか楽しみになってきましたw
ひとつツッコミなんですが、アテネ背番号は欠番があるので由伸の出発は17番目ではないでしょうか?
>>458 次元ってことはS&Wマグナムですか!
ワルサーの行方にワクワクですw
ある程度
>>477のことは話し合ったようですし39氏、もう投下してもいいんじゃないでしょうか?
ってか自分が早く続き読みたいだけw
問題は話し合ったかどうかじゃなくて結論が出たかどうかだと思うんだが。
満場一致で
>>447はボツってことらしいけど、
読み手書き手交えて10レス以上ついてるから可決でいいんじゃないか?
次元は帽子がないと弾が当たらない設定懐かしいw
次元好きとしてorzになったもんだ…
次元のネタはすっかり忘れてた。
たまにはCSでルパンを見直すか。
由伸=次元って意外な感じだけどいいね。
しかし次元は帽子が無いと弾が当たらないとは…知らなかったよ。
474 :
39:2005/06/28(火) 00:32:55 ID:7Gdq098r0
まいどー。
掲示板で
>>447さんの文章について相談していたのですが、とりあえずネタが消化しきれないしスルーすることになりました。
以上ご報告まで。
475 :
75:2005/06/28(火) 00:58:55 ID:5mPpr7KR0
[逃避]
気が付くと、漂流物がいくつかある以外はまっさらな海岸に降り立っていた。
後ろには小さなボート、そのまた遠くにはライトアップされた豪華客船があることぐらい見なくても分かる。
伸びた茶色い髪の毛が微風に吹かれてなびく。
ここはどこだろう、と一人呟く。
押し寄せる波の音以外は、何も聞こえない。
聞きなれた車の騒音も、自分を呼ぶ娘や妻の声も、少し音量を小さめにしたニュースを読む声も、今は全て聞こえない。
ただ波の音だけが耳に入る。
もう一度心の中で『ここはどこだ?』と呟くと、背番号20番――岩隈はおぼつかない足取りで歩き始めた。
波打ち際を歩いているので一歩歩くたび、ゆるくなった地面にスパイクが埋まる。
それでも一歩、一歩と進むほかないことは岩隈自身知っていた。
今自分が居るのは『戦場』なのだと、おぼろげながら認識していたからだ。
岩隈はさっきまでの出来事を覚えていなかった。
頭に入っていたのは、星野の『殺し合い』の言葉だけ。
残りは岩隈の自己防衛本能が働いたのか、記憶していても思い出せない状態になっていた。
しかし現在の岩隈は思い出すということをするより先に、足が動いたのだ。
476 :
75:2005/06/28(火) 00:59:14 ID:5mPpr7KR0
砂浜と岩場の境界線の少し手前で、岩隈はふと立ち止まった。
島に降りてから20分あまりして肩にかけていたバッグの存在にようやく気付いたのだ。
波が足をさらいそうになる場所から少し上に行き、バッグを地面に降ろす。
しばらくそれを観察した。
全面がほとんど白のそれは、ジッパーの持ち手に開けられた穴と鞄を吊るすための紐が取り付けられている金具とを小さな南京錠で繋いである。
ユニフォームの右ポケットを探ると、スペードの10のカードとともに白い封筒が出てきた。
右側が少し膨らんでいるのを確認すると、勢いよく白い封筒を2つに裂く。
そして左手を広げ、中の鍵を出す。
薄い銀色の鍵は、その姿をはっきり見せない月の光に少しだけ反射した。
バッグについている南京錠に鍵を差し込んで回すと、小さくカチッと音がした。
外した南京錠とその鍵は少し迷いもしたが、岩隈の左ポケットに収まる事となった。
一気にジッパーを開け、中を確認した。
まず見えたのが小型の懐中電灯、次にこの島の地図であろう紙と赤いペンの入ったスケルトンの首掛けホルダー。
岩隈はまず小型懐中電灯の頭をひねり、中を確認しようとまずホルダーを手に取った。
表は島の地図だろうか黄緑色や水色が使われている、裏は黒の一色で[アテネ五輪日本代表選手一覧]と書かれている。
それを見た瞬間、『現実だ』と頭の中に声がして、岩隈は目を伏せた。
477 :
75:2005/06/28(火) 00:59:48 ID:5mPpr7KR0
殺し合いをする、あの夏を一緒に戦ってきたメンバーで、一人になるまで。
様々な思いが頭をよぎってはそこら辺に隠れ、岩隈をあざ笑っていた。
生き残りたいのか?
裏切り者、
楽しけりゃあいいんじゃない、
寂しいだろ、
お前は絶対生き残れない、
生きる資格なんてない、
「俺は・・・・」
かもすればさざ波の声にかき消されそうな小さな声。
頭を抱え、顔には怒りと悲しみと焦りが混合した表情が浮かび、内面から聞こえる声が寒くもないのに体を凍らせた。
その瞬間、一つの銃声が岩隈の耳の中に、いや島中に響き渡った。
岩隈はそれがスタートの合図だったかのように、左手で懐中電灯とホルダーを持ち、右手で鞄の白い持ち手を掴み岩場に向かって走り出した。
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ
逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ逃げろ
呪文のように何度も何度も心の中で繰り返しながら走る。
岩場の飛び石になった部分を素早く飛んで、少し苔に足をとられながらも走る。
波が岩に押し付けられ水が自分に跳ね返ってこようが、お構い無しに走る。
岩隈は走る、右頬の痛みなどとっくに忘れて。
【A20・岩隈E−2よりG−1へ移動
残り23名】
478 :
75:2005/06/28(火) 01:02:44 ID:5mPpr7KR0
岩隈書きたいところは終わりましたのでご自由にどうぞ。
【】は連絡までに書いただけです。
479 :
39:2005/06/28(火) 01:15:13 ID:7Gdq098r0
「警告」
三浦大輔は、ゆっくりと草むらから体を起こした。
手にするライフル・・・レミントンM700の銃口からは細く白い煙が立ち上っている。
とりあえず今は、これでいい。
少なくとも一人はやる気になっていることを知らせるために、わざとサイレンサーもつけずに撃ったのだ。
的にする者は別に何でも良かった。
結果として道を歩いていた犬を狙ったのは、鞄の中に入っていたライフルを組み立て終わったあと、たまたま目に付いたからに他ならない。
この暗さで弾が命中しているわけはあるまいが、もし生きて会うことがあったらアイツには謝っておこう。
「・・・生きて会うことがあったら、か。」
ふふん、と鼻で笑った。
生き残りたいなら、俺の前から姿を消すことだ。
次は、誰だろうとはずさない。
三浦は鞄を背負いまっすぐ前を見た。暗さにも目が慣れ、遠く道の先には月明かりの下何軒か家が立っているのがおぼろげながら認識できる。
「さて、どこへ行くかな。サイレンサーもつけたいし・・・。」
480 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/06/28(火) 03:48:09 ID:Pit51B8u0
職人さん乙です。
番長やる気マンマンやー!!
うわああああああああああばんてふ・・・・・・・・・・・゚・(つД`)・゚・
482 :
39:2005/06/28(火) 10:39:48 ID:fJxfHuxz0
時間軸を超間違えて書いたっぽいです。(陳謝)
どこで夜だと認識したんだっけかなぁ・・・ orz
なので、以下改訂文です。
483 :
39:2005/06/28(火) 10:42:01 ID:fJxfHuxz0
「警告」 (改訂版)
三浦大輔は、ゆっくりと草むらから体を起こした。
手にするライフル・・・レミントンM700の銃口からは細く白い煙が立ち上っている。
とりあえず今は、これでいい。
少なくとも一人はやる気になっていることを知らせるために、わざとサイレンサーもつけずに撃ったのだ。
的にするモノは別に何でも良かった。
結果として道を歩いていた犬を狙ったのは、鞄の中に入っていたライフルを組み立て終わったあと、たまたま目に付いたからに他ならない。
弾が命中しているわけはあるまいが、もし生きて会うことがあったらアイツには謝っておこう。
「・・・生きて会うことがあったら、か。」
ふふん、と鼻で笑った。
生き残りたいなら、俺の前から姿を消すことだ。
次は、誰だろうとはずさない。
三浦は鞄を背負いまっすぐ前を見た。
砂浜から続く道の先には何軒か家が立っている。
「さて、どこへ行くかな。サイレンサーもつけたいし・・・。」
>>482 訂正乙です。
とりあえず上陸後の時間軸に関する提案を相談所の質問スレにおいてきたので、
職人さんは目を通して意見くれると助かります。
485 :
75:2005/06/28(火) 17:56:26 ID:4cvO/DSK0
>>475-477[逃避]に修正部分が見つかったので書きこみます。
第1段落
>後ろには小さなボート、そのまた遠くにはライトアップされた豪華客船があることぐらい見なくても分かる。
から
>後ろには小さなボート、そのまた遠くには贅の限りをつくした豪華客船があることぐらい見なくても分かる。
第3段落
>薄い銀色の鍵は、その姿をはっきり見せない月の光に少しだけ反射した。
から
>薄い銀色の鍵は、ほぼ南中の太陽の暖かい光にきらりと反射した。
第4段落
>岩隈はまず小型懐中電灯の頭をひねり、中を確認しようとまずホルダーを手に取った。
から
>岩隈はまず小型懐中電灯を左手に持ち、ホルダーの中をきちんと確認することにした。
以上です。
迷惑をおかけしたようで申し訳ありませんでした。
職人さん乙です!
上陸後の展開、バトロワ否参加選手達も気になる。
楽しみにしてるよー。
時間軸の問題が解決したようなので、相談所から転載しておきます。
以下参考にしてください。
<到着〜上陸以降の時間軸>
時間は福留の出発が午前10時くらいで、上陸に一人5分くらい。23人で115分で約2時間。
ラストの石井が上陸終わるのが約12時で、そこから本格スタート。
最初の放送がそれから6時間後の午後6時。
↓では続きドゾー
「頼りすぎ」
「ジョーさん!」
砂浜付近の森の中で彼の姿を見つけるなり、和田毅は歓喜の声を上げた。
呼ばれた城島は無言で己の口に人差し指を添えて和田に沈黙を促すと、双眼鏡で海岸を覗く。
その表情は試合でマスクを被っている時と同じように、真剣そのもの。
和田は辺りを慎重に見回しながら城島に近づき、すぐ傍の木にもたれかかって座り込む。
「ああ、良かった。俺さっきまで凄く不安だったんですよ。何処かで銃声はするし…。」
歩いた距離はさほどでもないはずなのに疲れきった顔をしているのはその不安のせいか。
「でも、ジョーさん見つけて安心しました。」
信頼できる人を見つけたという安心。城島ならこの状況を何とかしてくれる、という期待。
和田の言葉は城島に対する期待と信頼で溢れていた。
「…俺の武器がこれでもか?」
和田に振り返った城島が手に持ったのは、双眼鏡。それは正直「武器」とは呼べない物。
「ここからならボートを降りる選手の一挙一動、表情までよく分かる。」
「便利ですけど武器じゃないですね、それ。でもそんな物で見てたんなら、
俺が上陸した時に近よってきてくれれば良かったのに。」
そうしてれば、不安の中、森を彷徨う事も無かったのに。と心の中で付け足す。
「お前がやる気になってないとは限らないからな。」
そう言って再び海岸を覗く城島の言葉を、信頼されてないなぁと軽く受け流す和田。
そういえば、俺の武器は何だろう?と鞄に付けられた錠をはずして中を漁る。
一人きりで鞄を開ける事が恐くて今まで開ける事ができなかった鞄。
水が入ったペットボトルや地図を掻き分けると、金属の塊が手にあたった。
多分これが武器だな、と一気にそれを鞄から引き上げた瞬間、目を疑う。
「………ピストル?」
詳しい名称など分からないが、それは明らかに銃の形をしていた。
一人の時に鞄を開けなくて正解だった、と和田は大きく息を吐いた。
城島に会う前に開けていたら、きっと激しい不安に襲われていただろう。
それでなくても、先程聞こえた銃声にずっと怯えながら城島を探していたのだから。
だが頼れる仲間を見つけた和田は冷静さを取り戻していた。
これは、誰かを殺す為の道具じゃない。そう、自分達の身を守る為の道具。
そう考えると、胸の中に篭る黒い靄がスーッと晴れていくのが感じ取れた。
…やる気になってる人がいたら、これで応戦できるかな?
和田は十数メートル先に見える木に対して片手で銃を構えてみる。
…うん。俺、結構サマになってるんじゃない?鏡があればいいのになぁ。
「そんな物で遊ぶんじゃない。」
和田がポーズを決めてニヤつく姿を見て、城島が呆れたように呟く。
「心配しなくても、撃ったりしませんよ。」
小さな声で撃てるはずないじゃないですか、と付け足す。
だが滅多に手にする事のできない「武器」に、好奇心はかき立てられる。
…1発位、撃っても大丈夫かな?
駄目だと言われる事をやりたがるのは、人間のしょうもない性か。
様々な言い訳を考えながら、銃を見る和田の目はどんどんと輝いていく。
先程だって銃声があった。あれもひょっとしたら誰かの試し撃ちかもしれない。
たとえ誰かを撃った音であったとしても、自分もいつか撃たねばならないかもしれない。
…どんな感じなのか確かめた方がいいよな。ほら、銃を撃つ時は反動があるっていうし…。
軽い気持ちでくいっ、と引き金を引いた瞬間、衝撃が和田に襲い掛かった。
「うわっ!」
予想以上の強い反動に思わず声を上げる。狙いは木を大きく逸れた。
「ぐあっ!!」
誰かの悲鳴が聞こえた。自分が狙った木の、近くで。
自分の撃った弾が、誰かに、当たった。
その事実が和田の思考を停止させる。誰かが誰なのか考える事すらままならない。
「馬鹿、何してる!」
和田が状況を把握するより早く城島は走って悲鳴の先を確認するが、既に人の姿は無い。
城島の足元の草には血が点々とついていた。
それは乱暴に草木を踏みつけていく音と同じ方向へと続いている。
「早く後を追え!!」
城島の見たことも無い怒りの形相が、和田の思考を更に困惑させる。
「え、いや、あの…俺…!」
ようやく出せた声も、今にも泣き出しそうな情けないものだった。
「早くトドメを刺さないと、今よりずっと敵を増やす事になるぞ!」
城島の口調は、語気こそ荒いが冷静そのものだった。
「………え?」
「走って逃げたという事は致命傷じゃない。逃げた先でお前に撃たれたと必死に広めるぞ!」
「そ、そんな…トドメって…ジョーさんも一緒に行って説得してくださいよ!」
立ち上がり、右手で城島の腕を強く掴む。左手は不安から銃を離す事が出来ないでいる。
そんな哀れなほど震えている和田に対して、城島は残酷な程平然と返した。
「説得?試しに撃ってみた弾が不運にも当たりました。とでも言えば相手は納得すると思うか?
…それに、俺は誰とも組むつもりは無い。お前のフォローをするつもりは全く無い!」
「…か、海岸を覗いてたのは仲間を集めて皆で助かる為じゃ…。」
和田の弱弱しい声に表情を変える事は無く城島は、海岸をチラリと海岸を見やる。
「皆の動向をチェックしてただけだ。向かった方向も一応把握できるしな。」
試合の時と同じように冷静に状況を観察する城島に、和田に重い不安を抱く。
「ジョーさん…まさか、このゲームに乗るつもりですか!?」
その言葉を、否定してくれればまだ和田は救われていたかもしれない。
「一人だけが生き残るゲームで誰かを頼ろうとする奴の方がおかしいだろ?
お前、中村さんの死体をちゃんと見なかったのか?無残だったなぁ。」
城島の冷たい表情と中村の死体の表情が、重なる。
ああ、あの死体はやっぱり本物だったんだ。だから城さんも真剣なんだ。
でも俺は貴方を信じてたんだ。だって捕手を信頼しない投手なんていないでしょ?
ああでも、それは試合だけ。試合の時だけ。今は、試合じゃない。殺し合いで。
貴方は捕手じゃない。俺も投手じゃない。今は仲間じゃない。なら何故殺さない?
自分の武器が双眼鏡だから?でも、俺の武器は………
自分の左手にある「武器」が、和田の中に再び湧き上がった不安を更に煽る。
恐怖と不安に満ちた和田の顔を、城島はただただ見下している。
「自分のやった事のケリぐらい、自分でつけろ。」
「う……うわぁぁぁぁぁっ!!!」
メンバーの中で誰より信頼していた仲間から放たれた冷徹な言葉に、とうとう心が悲鳴を上げた。
鬼気迫った表情で短銃を片手に森の奥へと走り出した和田を、城島は遠い目で見すえていた。
492 :
39:2005/06/29(水) 23:57:37 ID:DTeGAjHI0
以上代理投下です。
※もう一本あります。
「背負いすぎ」
…どいつもこいつも…人に嫌な物を何もかも押し付けて、楽したがるんだよなぁ。
和田の姿が見えなくなると、城島は何食わぬ顔で双眼鏡で再度海岸を覗く。
殺して武器を奪えたかも知れないが、あの和田の青白い表情を見れば殺す気すら失せる。
こんな状況でまだ人を頼ろうとする奴は、どうせ足手纏いにしかならない。お荷物だ。
もう、誰かの油断に自分が巻き込まれるのはうんざりだった。
あんな様子じゃ、そのうち誰かに殺される。だがそれは全て和田自身の責任。自分には関係無い。
…責任か…。
双眼鏡を覗く先を豪華客船に移す。最初は綺麗だと見蕩れたその船体も、今となっては忌々しい。
あの中には、悪がいる。それに纏わりつく愚人。その中の一人を思うと、反吐が出る。
…あんたはまた楽しい所で高見の見物ですか。良い御身分ですね。
五輪時、自分より重大な責任を背負っていたはずの彼らは優雅にアテネを観光していた。
必死で敵対相手の試合を見て研究していた自分が、馬鹿みたいに思えた。
銅メダルに対しても、あれ程金、金、と騒いでいた国民はあっさり妥協した。
妥協されるより、責められた方がずっとマシだったのに。それだけの覚悟を持って挑んだのに。
必死で金を取ろうとしていた自分が、馬鹿みたいに思えた。
五輪会にだって、強制参加じゃなければ来なかった。
アテネ五輪野球に関わった人間と会うのが嫌だった。
ただ、和田が一人で行くのが心細そうだったから仕方無く付き合っただけで。
国民の期待。選手の信頼。国の名誉。4番の責任。
色々な物を背負って。必死にそれに応えようとした結果が、これか。
これ程までに報われない結果は、人類史上そうそうある物じゃないだろう。
城島は双眼鏡から目を放して、辺りを見回す。
辺りに人の気配は無い。先程の銃声を警戒しているのだろうか。
先程和田がもたれかかっていた木に寄りかかり、再び海岸を見やる。
…海岸を覗いてたのは、仲間を集めて皆で助かる為?
和田の言葉に笑いが込み上げ、顔がニヤつく。そんなつもりは全く無かった。
ここでは自分の命だけを背負えば良い。
他人の命も信頼も責任も背負う必要も義務も無い。
死んだら、何もかもがそこで終わり。野球よりずっと気楽だ。
…和田。悪いけど、俺もう何も背負いたくないんだ。
笑っていたはずの顔はいつしか悲しそうな表情に変わり、微かに曇った空を見上げていた。
495 :
39:2005/06/30(木) 00:00:23 ID:pHQtipuZ0
以上代理投下でした。 職人様乙です ノシ
新作キター!
え、え、城島何だって城島ガクブル
ジョーさん・・・((((;゚Д゚)))ガクブル
なんかやる気の人多いお!皆怖いお!
498 :
159:2005/06/30(木) 18:00:30 ID:5d13x0W00
「エンジェル」
男は雑木林の中をざくざくと枯れ葉を踏み締めつつ歩んでいた。
肌に撫でる風は冷たいが、上陸した浜から休まずに移動して来た男の額にはうっすらと汗が滲み出していた。
足を止めて木々の間から空を見上げると、まるで心の中を映したかのごとく重苦しい曇天に被われている。
男は額に浮いた汗を拭おうと帽子を取った。
ユニフォームの袖で額から上へと撫で付ける。
それから、陽光であれば目立って仕方なったであろう頭をしっかりと帽子で隠した。
和田一浩。背番号55番。
出発は後ろから3番目だった。それが良い順番だったのか、最悪だったのかは分からない。
少なくとも島に辿り着いた時、砂浜には見なれたユニフォームの遺体は転がっていなかった。
上陸するなり男達に銃で追い立てられ、慌てて砂浜から伸びる階段を駆け上がった。
港からは道が左右に伸びていた。
和田はカバンを肩に担ぎ直すと、何気なく左手へと足を向けた。
無意識の選択は和田がレフトという守備位置を仕事場にしていたからかもしれない。
最も入団したときは捕手として期待されていたはずだったのだが。
――人を殺したいとも思わない。しかし死にたくもない。
どちらにも心を決めかね、誰かいないかとずっと海なりに続く道路を歩いていた。
和田の前に出発した20人はどこへ消えたものか、気配さえ感じない。
海から吹き付ける風が耳に当たり、冷たさでキンと痛む。
誰かがどこかで自分を見張っているかのような錯角に、和田は道路を外れると小走りで右手に見える雑木林へと向かった。
もしかしたら最初に進む方向の選択を間違えたのかもしれない、そう思えて仕方なかった。
499 :
159:2005/06/30(木) 18:00:50 ID:5d13x0W00
誰もいないのを確認すると木の根元に荷物を落とし、厚く積もった枯れ葉の上へと腰を下ろした。
ランダムに選ばれた『はず』のカバンを開こうと胸元のポケットを探る。紫の封筒を開くと中からカギを取り出し、しっかりと口結ばれた南京錠を開けた。
和田は疑っていた。
カバンは意図的にそれに相応しい人物に渡るようになっていたのではないかと。
このゲームの勝者は無条件にメジャーへと行ける、そう星野は言っていた。
しかし、参加者全員の目がかの国へ向かっている訳ではない。
あの不可解な特典が示すこと。
星野は――いや影にいる主催者には生き残って欲しいと願う男がいるのではないか。
『メジャー』という響きに相応しい野心を備えた男を。
例えば、上原。
松坂。
――城島。
ポスティングで、FAで、メジャーに行きたがっている、行くのではないかと言われている男達。
彼等にはサバイバルに必要かつ十分な道具が渡っているのでは。
もし彼等にゲームに乗るつもりがなくとも――人間は弱い生き物だ。
強大な武器を手に入れれば、使いたくなるかもしれない。
炎天のアテネの元、一緒に戦った仲間を疑って掛かりたくはない。
泣いて、笑って、悔しがった仲間達を殺したくもない。
だが、ここで何もしなければ確実に死んでしまうのだ。
和田はごくりと唾を飲み込むと、恐る恐る首に巻き付いている『ソレ』に触った。
金属の妙な冷たさにざわざわと鳥肌が立つ。
誰も死ぬことがなければ、24時間後にこれが爆発する。
首が吹っ飛ぶのか、それとも頸動脈を破裂させ、大量出血死させるのか。
指先が汗でぬるりと滑る。
今にも首輪が作動しそうな錯角に、和田はそれを毟り取りたい衝動に駆られた。
指を掛け、しかし、寸前で力を緩める。
下手に衝撃を与えて最初の――和田が知らないだけで、既にいるかもしれないが――犠牲者にはなりたくない。
いつしか息はベースランニングをした後のように激しく弾んでいた。
和田は冷たい一月の空気を胸いっぱいに吸い込み、沸き起こった不安を追い出そうと大きくため息を吐いた。
500 :
159:2005/06/30(木) 18:01:08 ID:5d13x0W00
改めて見なれた白いカバンを見つめる。
この中に、支給された武器が入っている。
メジャーという世界に縁のない自分には大したものは与えられていないだろう、そう思う。
死にたくはない。だが、殺したくもない。
自分には最愛の家族が待っている。
自分以外の者にも待つ家族がいる。
――死にたくはない。だが、殺したくもない。
惑う指でカバンのファスナーを摘むと、ゆっくりと引き開けた。
大きな布の袋が見えた。
引っ張り出すと、その袋には針金で説明書らしき小さな紙が括り付けられていた。
【『医療品セット』ラッキーアイテムです! これであなたも、けがなく!あかるく!】
どこかの監督であった男が口にしそうな言葉が丸文字でしたためられている。
和田はふぅっと息を吐いた。
安堵のため息だった。
「どうやら、俺には別の役割があるみたいだ……」
殺すのでもなく、殺されるのでもない。
『生かす』という道を得て、和田の心は決まった。
「さしずめ、俺はナイチンゲール、かな」
聞く人のない呟きに、和田の口元が少しだけ歪む。
もしかしたら、自分はこの戦場を照らす一筋の光となれるかもしれない。
となれば、やることは決まっている。
まずは、いざと言う時にこれを使えるようになっておこう。
和田はアテネの天使となるべく、医療品セットを開けるとひとつひとつ中身とその使い方をチェックし始めた。
【現在位置:E-6】
>>500 職人さん乙です!
けがなく!あかるく!にウッカリ笑ってしまったw
職人様乙です。
そして全編に渡ってにやにやしていた俺を許してくださいorz
503 :
75:2005/06/30(木) 21:02:00 ID:jFZiPsSD0
[ある投手とある捕手]
「次、30番小林。」
星野の声が耳に届く度、石井は自分の顔がどんどんこわばっていくのが分かった。
この場に居るのは自分を入れて4人だけ、その上一番最後に出発とあって思わず自分の背番号を呪う。
もう少ししたら、俺もあの場所に行かないといけないんだ。
絶対に人なんか殺したくない、人を殺した手で悠太や麻美子に逢いたくない・・・。
下を向いたまま、石井は自分の手を見た。
今まで数多くの強打者をねじ伏せてきた左手は、自分の意思とは関係なく小刻みに震えている。
あぁ怖いんだ、だって怖い、死ぬなんて嫌だ、もっと子供と遊びたい、もっとスワローズのユニフォーム着て投げたい・・・・。
「おい、ゴリ。」
青ざめた石井の表情を見て、隣に立っていた相川は声を掛ける。
同じ高校の後輩であり、そして捕手として石井とバッテリーを組んだこともある相川。
そんな事もあって、このゲームの開始を告げられてからずっと石井のことを気に掛けていた。
「はっ・・・はい?」
石井が焦った様子で振り返った。
相川は横目で舞台上の星野を確認した、大分疲れているのかこっちの方を見ていない。
チャンスと思うと、そっと石井の耳に口を寄せる。
『大丈夫か。』
『・・・・・大丈夫です。』
しばらく間があり、石井が返答した。
大丈夫じゃないだろう、と心の中で思いながら相川はさらに声を潜めて話す。
504 :
75:2005/06/30(木) 21:02:26 ID:jFZiPsSD0
『お前、このゲーム乗る気か?』
その瞬間、石井がぽかんとした表情になったのを見て、相川はさっきの自分の言葉に否定のサインを入れた。
石井の表情がまた焦ったようなものに変わり、『乗るわけないじゃないですか!』と言うのを聞いて、改めてそのサインが正しい事を確認し。
そして、話しかける瞬間まで考えていた言葉を告げた。
『俺と、組まないか?』
また石井の表情が変わる。
それは色々な感情が一気に顔に出たのかなんとも不思議な表情だった。
見ようによっては唖然とした表情、また見ようによってはまだその言葉を信頼していないような表情に見えた。
それでも相川は希望を持った瞳で石井を見ていた。
捕手は投手を信頼しなければ成り立たないポジションだと、かつて先輩であったある捕手に言われたからだ。
そんな考えがこのゲームで通用するのかどうかはまだ分からないが。
505 :
75:2005/06/30(木) 21:02:41 ID:jFZiPsSD0
石井は悩んでいた。
相川が心の底から自分を信用しているか、本心はどうなのかと分からなかったからだ。
もしかしたら利用するだけして殺されるかもしれない、もしかしたら人を殺すことを手伝わされるかもしれない。
どうすればいいのか分からなく口をつぐんだままでいる。
左手の震えがさらに激しくなったのが分かった。
『嫌なら、別に・・・』
そう言って相川は引きつった笑顔を見せた。
それを見て石井ははっとした。
怖いのは俺だけじゃないんだ、相川さんだって死にたくないし怖いって思ってるに違いない。
そう感じるや否や、即座に「組みます!」を潜めたにしては大き過ぎる声で言った。
すると星野の視線が自分の背中に突き刺さったのを感じて、石井は慌てた様子でわざとらしい咳をして誤魔化そうとする。
ちらりと舞台上の星野を見ると、ちょうど時間が来たのか残っていた和田の名前を呼んだ。
次は相川の名前が呼ばれる。
506 :
75:2005/06/30(木) 21:02:54 ID:jFZiPsSD0
『それじゃあすぐにお前見つけられるとこに隠れてるから。待ってる。』
石井はきりりとまっすぐ前を見据えている相川の瞳に、自分のチームの大黒柱と言われる人物の顔を思い出していた。
そういえば彼も自分のことを信頼してくれていた、自分も彼のことを尊敬あるいは信頼していた。
信頼しあってこそバッテリーは1+1=2以上のものを手に入れられる、といったのも彼だったか。
気がつくと左手の震えは消えて無くなっていた。
『分かりました。相川さんのこと信頼してます。』
潜めた声ではあるが、はっきりと石井は言った。
最後の一言は自分でも考えない内に出たのか自分自身驚いていた。
相川はその言葉を聞いて安心したように少し目を優しくした。
『ありがとう。』
そしてそう言うとバックを肩に掛け、まっすぐ舞台上の星野を見た。
石井はこの時ばかりは自分の背番号に感謝した。
たった一人とはいえ、自分を信頼してくれているであろう人物がいることを知ったからだ。
「・・・次、59番相川。」
「はい!」
凶気のゲームが始まるまで、残り5分を切った。
新作ラッシュ乙です!
相川とゴリてなんかほのぼのなコンビだなwタノシミスwww
508 :
39:2005/06/30(木) 23:56:33 ID:n1KqWmQk0
「お人よし」-1/2-
小林雅英は、小船から降りた後まっすぐ右手へと歩いていた。
・・・森の中から誰かの視線を感じる。それも、複数人の。
この中に、ナオの視線も混じっているのだろうか?
そういやあいつ、結構ここぞという試合でヘタレてたからなぁ・・・。
打たれた試合の後、背番号18がロッカールームのベンチでやや俯いて目を閉じている姿を思い出す。
だからこそ、俺が行ってやらなきゃいけないんだよな。
いきなり誰かに襲われて怪我なんてしてないよな?
あいつ根がいいやつだから、うっかり誰かにだまされていなければいいんだが。
・・・なんでここまでナオの心配をしながら歩かなきゃいけないんだ俺。
小林は思わず苦笑する。
「雅やん、雅やん。」
木々の陰から、聞きなれた声がした。
「・・・ナオか?」
小林が、声のしたほうに注意深く近づく。
「雅やん、怪我、ない?」
「あ、ああ。」
小林が言いながら木の陰を覗き、息を呑んだ。「お前、すごい怪我だぞ?!」
「あ、うん・・・。ちょっと、痛いよ?」
木に寄りかかった清水直行の左の肩から腕に向かって血がどす黒い染みを作っていた。
509 :
39:2005/06/30(木) 23:57:28 ID:n1KqWmQk0
「お人よし」-2/2-
「何があった?!」
「・・・さぁ?」
清水は力なく笑った。「なんや、後ろの方で銃声したっぽいけどな・・・?」
「お、お前・・・。」
小林は脱力してその場にヒザをつく。
「利き腕やないし、つばつけとけばそのうち止まるんやないか、って思て。」
清水はそこで、ひとつ息をついた。
「なあ、雅やん。俺、狙われたんかな?・・・それとも、なんかの間違いやったんかな?」
清水はのんびり言った。小林は自分のユニフォームの一部を細く破ると、清水の左肩を縛る。
「ほんとに人がいいなお前・・・。」
呆れたように小林が言うと、清水は笑った。
「ははは・・・せやかて、信頼できへんと、9回のマウンドなんか、人様に譲られへんで?」
「そうか・・・。」
「あまり、こういう状況やからって、一緒にやった仲間やもん。やっぱり疑うのは良くないんちゃうかな・・・?」
「そう、だな・・・。負けたよ、ほんと。」
薄く笑いながら言う清水に小林は諦めたように言うと、肩をすくめて少しだけ笑った。
「俺、カッコワルイわ・・・武器がちょっといい奴だったからって、雅やん守ったるって思ったけど、結局守られてんやん。」
小林はそこで初めて、清水のズボンのポケットに銃が納まっているのに気づいた。「少しでも皆を疑った、天罰ちゃうかなぁ・・・。」
「・・・とりあえず、立てるか?」
小林は清水のカバンをも背負い、清水に手を差し伸べる。
「ああ。・・・雅やんに会うたら、ちょっと元気でたわ。」
清水は笑顔を作ると、ゆっくりと立ち上がった。
「病院かなんか、あるだろ。そこで怪我の治療して、これからどうするか考えよう。」
小林は自分に言い聞かせるように言うと、清水とともに歩き始めた。
すげー新作ラッシュだ!
職人様方乙です!
「けがなく!あかるく!」は主催側わざとやったんじゃないかと疑ってしまうw
新作ラッシュ、ヤッター!!!
鴎コンビはほんと、良い奴等だな。
512 :
39:2005/07/01(金) 01:50:00 ID:HU8NJYF10
まいどー。
進行上あんまり関係ないけど描写上どうよ?という箇所を見つけたので修正。
小林はそこで初めて、清水のズボンのポケットに銃が納まっているのに気づいた。
↓
小林はそこで初めて、清水のベルトに銃が挟まっていることに気がついた。
以上よろしくお願いします・・・。
513 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/01(金) 02:12:19 ID:4zZrygJa0
新作ラッシュ 乙ですw
さがりすぎなので一旦あげます。
514 :
107:2005/07/01(金) 11:22:27 ID:BS46TzC00
「獅子の矜持」
松坂大輔は、怒りに燃えていた。
彼は今、海岸から続く道を、早足である場所へ向かっている。
このゲームの最中、他人を警戒している人間なら大きな道は避けるのが普通だが、松坂は少しも気にしない。
警戒という意識が入り込む余地もないくらい、彼の心はひたすら怒りに支配されていた。
自分たちの失敗の記録を見せられた。
わかりきっていたことを今更なじられた。
この寒い季節に変な島に連れてこられた。
愛妻が仕立ててくれた上等のスーツを没収された。
何もかもが気に入らない。
「こんなバカなこと、付き合ってられるか!」
不満をぶち撒けながら、ずんずん歩く。
彼は元々感情豊かな青年であるが、今は完全に怒りのメーターを振り切っていた。
昨年ようやく念願の日本一も達成して、長年の交際を実らせて結婚もした。
来年こそは心おきなく夢に見た新天地へ旅立てる。
そう思っていた矢先に、この始末。
松坂は島に降り立って早々に鞄の中身を確かめ、次に地図を見て当初の目的地を定めた。
そうするうちに、最初の銃声を聞いた。
銃声は、誰かの殺意。
かつての仲間が、同じ仲間の誰かに向けた裏切りの殺意。
その現実が、許せなかった。
その現実に、自分達を放り込んだ者達が許せなかった。
515 :
107:2005/07/01(金) 11:24:38 ID:BS46TzC00
特に、あの男。
自分達の戦いを無様だと、だから殺し合えと平然と言い切った、あの男。
「何が殺し合いだ、ヤクザみてーな顔しやがって! 中身もヤクザかよっ!」
チームメイトを殺された。
殺し合いを強要された。
未来を踏みにじられた。
誇らしい夢を餌にされた。
何もかもが気に入らない。
「何がメジャーだ、ふざけやがって! そんなの自分の力で行くに決まってんだろっ!」
メジャーという言葉が出た時、何人かの視線が自分に来たことを覚えている。
計るような視線。疑うような視線。もっとあからさまな、敵意を含んだ視線。
心外きまわりなかった。
自分の夢は、自分の力で勝ち取ってみせる。
こんなふざけたゲームの賞品として、あんな卑劣な奴らに与えられるまでもなく。
夢と秤にかけて、人を殺す人間がいるとでも思っているのか。
自分が、そんな浅ましい人間に見えるのか。
口ほどにものを言う彼らの視線は、ひどく松坂の矜持を傷つけた。
516 :
107:2005/07/01(金) 11:26:06 ID:BS46TzC00
そしてまた、銃声が聞こえる。
先程とは違う音が、先程と違う方角から。
「もう、いいかげんにしろよな! どんだけやる気になってんだよっ! バッカじゃねぇの!」
正体のわからない発砲者に悪態をつきながら、松坂はどんどん早足になってゆく。
銃声は、彼を怯ませる代わりに闘志を燃え立たせていた。
そして、ここに至る経緯のすべてが、松坂の怒りを加速させていた。
誇りを傷つけられた若獅子が、誇りを取り戻すためにやるべきことはひとつ。
「見てろよ! この糞ゲーム、ぜってぇぶっつぶす!」
松坂は、運命に反逆する覚悟を決めた。
517 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/01(金) 12:40:00 ID:eqS2qJdF0
職人さんたち乙です!新作ラッシュに嬉しい悲鳴w
和田さんサイコーに輝いてますね!
松坂怒りすぎw
すみません。
ageてしまいました・・・
やべぇ…松坂のキレっぷりが気に入ったw
520 :
418:2005/07/01(金) 18:02:49 ID:G7PM6lGmO
『孤独』
島に着いてからだいぶ時間がたっただろうか、木村は一人砂浜にたたずみ考え込んでいた。
(・・・誰からも落ち合うみたいな指示はなかったよな・・・。誰かと上手く落ち合うことができればいいんだけど・・・。)
しかし、今このいる場所は戦場。実際に誰が発砲したのかわからないが何発かの銃声が木村の耳にも聞こえた。
その事実が混在するこの状況で信じ合えることのできる仲間などできるのだろうか・・・。そんなことを思うとますます深く考え込んでしまう。
(・・・さすがに泳いでこの島から出るのは無理かな・・・。仮に泳ぐことができたとしてもこの島からでたら首輪が爆発するかもしれないし・・・。)
連れてこられたボートの姿がだんだんと小さくなっていく姿を見て目の前に広がる大きな海からこの島は周りから完全に孤立していることはわかっていた。
木村はそっと自分の首にはめられた首輪を触り、大きなため息をつく。
(俺はこれからどうすればいい。)
常に死と隣り合わせであるこの状況に大きな不安と恐怖を感じ、泣きたくなるような気分に陥る。なぜ仲間同士の殺し合いをしなければならないのだろうか。
こんなことをして何を得ることができるというのか。
木村はおそるおそる支給されたバッグの中身を確認してみた。
「・・・ナイフ・・・。」
バッグの中には地図や食料、そして武器と思われる小型のサバイバルナイフがひとつ。
ナイフと一緒に入っていた紙は読むこともせずにすぐに捨ててしまった。読む行為は殺し合いを認めることになるようで嫌気が差した。
ふぅ、とまた大きなため息をつきナイフの刃をじっと眺めてみる。
ナイフの刃は木村の顔をくっきりと映すほど綺麗に研かれていたが、それを冷静に見ていると一刻も早くナイフが誰かの血でこの刃を染めて欲しいと願っているようだった。
(このナイフですべてを終わらせることもできるんだよね・・・)
521 :
418:2005/07/01(金) 18:04:57 ID:G7PM6lGmO
自分が犠牲になればみんなが助かるという思考があったのかもしれない、それともただの現実逃避か。理由はわからず突然に木村は自らの胸を手にしていたナイフで
一刺し、
二刺しと…。
ナイフの刃によって傷ついた木村の胸はどんどんと赤黒い血の色にじんわりと染まっていた。
自覚症状はない。
刺し傷からはとめどなく鮮血がこぼれ落ちていく。
522 :
418:2005/07/01(金) 18:05:46 ID:G7PM6lGmO
(あ・・・。)
地面にたまってゆく血だまりではっと我に帰る。
今、自分は何をしているのだろう…。
血・・・?胸が痛い・・・!!!
「うわぁぁぁぁあああ!」
ここが戦場だということも忘れ、ありったけの声で叫ぶ。木村の孤独な心は張り裂けた。
死にたくない、死にたくない…。誰かのために命を捨てることなんて到底できない!
とにかく自分の体の安全が先だ。ふらふらとした足取りで歩きだす。
木村の体からはポタポタと血が垂れ、彼の足跡を残していった。
職人さん乙です!
たくやぁぁぁぁぁぁ(つД`)
たくや痛々しいよたくや・・・・
たっくんがぁぁぁ
たっくんがんがれ超がんがれ
525 :
39:2005/07/02(土) 13:49:45 ID:f1JLSKOE0
「阿部と石川の潜入レポート1 〜編集主幹〜」-1/2-
『あの人』は、嬉々として出かけていった。
今頃はダイアモンド・プリンセス・シーのVIPルームにでも陣取って、きっと唯一神気取りで下の者をこき使っているのだろう。
「なんだ、来ないの?これから面白いことが始まるのに。」
本社を空けるわけにはいかないと同行を断ったら、さも残念そうに『あの人』は言った。
「こんな面白いショーを間近で見ないなんて、もったいない。」
これから始まるBR。アテネで戦った日本代表が、理不尽な天秤にかけられる。
一度は同じチームでプレイした仲間同士の、殺し合い。
・・・人を駒としてしか見ることができない『あの人』だからこそ、他人事。
アテネ日本代表は、日本プロ野球でも選りすぐりの逸材たちだ。それが失われたときの、影響は計り知れない。
こんなことをしても何も残らないというのに、まだ懲りていないようだ。
そもそも、アテネの野球日本代表に対してキャンペーンを張ったのは誰の肝いりだったと思っているのか。
盛り上げるだけ盛り上げて、いざ日本代表が銅メダルに終わったとき、気づくと知らぬ存ぜぬの一点張りで。
盛り上がった世論を操作するためにどれだけこっちが苦労したか。
あのままだったら、それこそ野球自体が叩かれて今よりもっと悲惨なことになっていたかもしれない。
結果として近鉄球団がスケープゴートとなってしまったことを、今でも悔いている。
もっと別のうまいやり方があったはずだ。
そう、『あの人』の介入さえなければ。
今回のBRの運営資金にしても、(さすがにBRの資金だとは言わなかったが)『あの人』の一声でグループ傘下企業がそれぞれ一部供出させられている。
このままだと、伝統ある読売グループ全体が揺らぐことになりかねない。
なんとか例の栄養費問題でスポーツ振興の直接の運営からは引き離したが、グループ全体への影響力は今だ健在だ。
社内に『あの人』の間謀が何人もいることは分かっている。
不穏な動きを見せたら『あの人』の気分ひとつで更迭。・・・力を持たざる者の末路は、いままで嫌というほど見てきた。
526 :
39:2005/07/02(土) 13:50:14 ID:f1JLSKOE0
「阿部と石川の潜入レポート1 〜編集主幹〜」-2/2-
「どうにか・・・ならんものか・・・。」
『あの人』を引き摺り下ろす絶好のタイミングなのだが・・・。なんとかして、選手たちを救ってやれないものか。
読売新聞東京本社の取締役室で、滝鼻卓雄は革張りの大きな椅子に体をうずめ、思案に暮れていた。
自分にも当然監視の目があるし、表立って動くことができない。さて・・・。
ふいに机の上にある電話が内線を告げた。液晶画面に表示された内線番号は、腹心として動いている高見秘書のものだ。
『社長。配下の者から報告があり、これから巨人軍の阿部様が来社するとのことです。』
「阿部君が、この時間に・・・。」
滝鼻が見た電波時計は午後7時を指している。「高見君、コーヒーを入れてくれないか?」
『ただいま参ります。』
受話器を置き、滝鼻は自分のパソコンにUSBメモリを挿すといくつかファイルをコピーした。
「失礼致します。」
数回のノックの後、えんじ色のスーツを着た高見がコーヒーを淹れたカップをトレイに載せて現れる。
「これを頼む。」
空になったカップとともに、滝鼻は小さなUSBメモリを高見に渡した。
高見はそれを眉ひとつ動かさずに一瞥すると、自分のポケットの中に入れる。
「かしこまりました。」
「・・・で、僕は何をすればいいんですか?」
石川雅規はハンドルを握る阿部慎之助に聞いた。
「ああ、居てくれればいいよ。」
二人を乗せた車は、首都高神田橋出口から右に曲がる。「会う人にはアポ取ってるから。」
「大丈夫なんですか?」
石川は天を仰いだ。「なんだか不安だなぁ・・・。」
527 :
39:2005/07/02(土) 13:52:13 ID:f1JLSKOE0
まいどー。
シドニー組編なんですが、時間軸的には船でパーティーが開始されている頃を想定しています。
ちょっと時間は戻ってしまいますが、しばしご勘弁を。。orz
529 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/02(土) 20:29:59 ID:XOivzo69O
39=仕切り大好きで自己陶酔してる腐女子
>>527 乙です。外でも色々と動きつつありますね!
「手作り探知機」
藤本敦士はただただ森の中を必死に駆け抜けていた。
正面と、手に持っている板状の小さな機械の画面を交互に見て戸惑い無く駆け走っていく。
両手で持つ機械の画面には、地図と赤い点が点々と表示されていた。
赤い点はまったく動かない物もあれば、激しく移動する物もある。
…よし、この辺には誰もおらんな。
森を抜けた平地で立ち止まって額から垂れる汗を拭い、辺りを見回す。
人の気配は全く無い。藤本は改めてその機械を見やる。
薄くて小さい割にはズッシリと重いその機械が、藤本に支給された武器であった。
話は数十分前に遡る。
藤本はボートを降りるなり、砂浜を駆け上がり森に身を潜めていた。
その表情に、数時間前に星野に対しておどけて見せた面影は一切無い。
(死にたくない。殺したくない。誰も殺さずに島から脱出して生き延びたい。)
その為にはまず自分の武器が何であるかを知る事だ、と思った藤本は必死で鞄を漁りはじめた。
鞄の中に入っていた武器は、単3電池4本と説明書と共にエアーキャップの袋で丁寧に包まれていた。
それを乱暴に取り出すと一枚の白い紙がはらりと地に落ち、書かれていた丸文字が目に入ってくる。
【『首輪探知機』ラッキーアイテムです!これで危険な奴が一目瞭然!予備の電池もオマケ!】
10cm四方の画面の右脇には、上から小さな十字キー、「拡大」「縮小」「決定」のボタン、
そして1から9の数字が記入されたボタンがズラリと並ぶ。
試しに機械の電源を入れてみると、画面上に地図と赤い点が点々と広がった。
海にある赤い点が海岸に近づいてきている事から、赤い点が選手を示している事は分かった。だが。
(…どれが誰か全然わからへんやん…ん?)
自分のいる所の比較的近くに3つ程、赤い点が集まりかけている所がある。
(集まるって…普通、何の相談も無しにこんな短時間で集まれるか?)
何の相談もできそうになかったあの状況。こんな短時間で集まるのは少し不自然に思えた。
だが、もしかしたら落ち合う約束でもしてたのかもしれない。あの船の中で。
あんな中でも冷静な人っていたんやなぁ、と変に感心してしまう。
よし、自分も仲間に入れてもらおう。そう思って近づいた矢先……。
(何で、いきなり撃つねん!)
突然放たれた銃声と人の悲鳴にビビって、一目散にそこから走り出した。
そして、今に至る。
(よくよく考えてみたら…交戦中って場合もあるんやよなぁ…アホや俺…。)
自分の浅はかなで単純な思考に溜息が出る。もっとよく考えるべきだった。
(誰が撃ったのか分からんけど…、撃たれたのは多分…清水さんやよな?)
悲鳴を思い出す。地味な印象はあったけど、喋ると結構面白い人だった。
(死んでないといいな…撃たれたら痛いんかな?痛いんやろうなぁ…。)
頭の中で不安と同情が巡る中、もう一度画面を覗く。十字キーで、先程のエリアを指定する。
赤い点は一つだけになっていた。それが誰なのか、藤本には分からない。
(何がラッキーアイテムや!誰か分からんと、何の意味もないわ!!)
探知機を地面に叩き付けたい衝動に駆られるも、理性がそれを止める。
赤い点だけでも、自分の近くに誰かがいたりする事は分かる。
逃げるという点では。様子を見るという点では、それは何物にも代えがたい利点だ。
藤本は思い直して再び画面を覗く。今、どれ位上陸しているんだろう、と縮小ボタンを押す。
地図の全体図を見ると、もう殆どの選手がが島に上陸しているのが分かった。
(ん?何や?赤い点にカーソルが…。)
動かせるかな?と十字キーを動かすと、カーソルは別の赤い点に移る。
「…もしかして、これって…。」
藤本はエアーキャップの袋に残した説明書を取り出して、読み込む。
説明書というにはあまりにも薄いそれに書かれた文に、藤本は驚愕した。
《全体図にすると、カーソルが表示されます。点に合わせて決定を押すと入力部分が表示されます。
数字を記入して再度決定を押せば、点は記入された数字になります。》
「早よ言えって!そんな事!!」
藤本はがっくりと項垂れた。すぐ説明書を読まなかった自分が悪いのだが。
もっと早く気づいていれば少なくとも3、4つの赤い点の正体を判明させる事ができただろう。
(…TVゲームする時にいちいち説明書なんて読まへんから…悪い癖が出たなぁ…。)
これは確かにゲームだ。だが、画面の向こうに表示される何のリスクも無いTVゲームではない。
現実の中で行なわれる、常に命の危険を伴うサバイバル・ゲーム。もっと慎重になるべきだったのだ。
この首輪探知機を完全な物にする為には、数多くの赤い点に近づかなければならない。
とりあえず自分の点を背番号に変えてみる。赤い点だらけの中の25は酷く空しく見えた。
…何やっとんやろ、自分…。
どんなエラーよりも痛烈な失敗に、どうしようもない後悔を感じていた、その時。
『おい、お前ら!聞こえとるか!?今、最後の選手が島に上陸した。これから本格的にゲームスタートや!
死亡者や禁止エリアは次の…今から6時間後の放送から発表していく。聞き逃すなよ!』
星野の声が何処からともなく聞こえてきた。きっと島にはいくつもスピーカーが設置されているのだろう。
(アホか!そんな大声で叫ばれたら聞き逃す方が難しいやろ!)
実際に星野に向かって言ったら殴られそうやなと苦笑いしつつ、藤本は汗に滑る指でカーソルを動かす。
星野の声をこれ程有り難く感じた事は、2003年のシーズン中だってなかった。
今、海岸にいるのは、一人だけ。これは間違いなく最後の上陸者…石井弘寿だ。
(…確か、あいつはヤクルトの時と同じ…61だったはず。)
アテネ五輪の時のユニフォーム姿の彼を思い出して確認する。そして入力する。
海岸の赤い点が61に変わるのを見て、藤本は重い溜息をついた。
先程のように危険の中に飛び込んで、一つ一つ赤い点の正体を突き止めていくべきか。
危険を避け、赤い点から逃げ続けて様子を見るべきか。
本格的にゲームがスタートしたと同時に、藤本は2択を強いられる事になった。
535 :
75:2005/07/03(日) 20:59:15 ID:qslBGUrg0
代理投下しました。2氏さん乙です。
536 :
75:2005/07/03(日) 21:00:04 ID:qslBGUrg0
[水面に映る月]
誰も居なくなり、暗くなったメインシアターにその男は立っていた。
苦虫をすり潰したような表情を浮かべ、右手は血が出そうなほど強く握られている。
その男――大野豊の全身はただならぬ怒りに包まれていた。
――彼らは地獄へと向かわされてしまったのだ、あの何も分かっていない老人どもに!
人の命を軽く扱うことに対しての怒り、私利私欲のためにこんなにふざけた事を推し進めた人物達への怒り・・・
そして、何も止める事の出来なかった自分に対する怒り。
大野は奥歯を強く噛み締め、必死に怒りを吐き出す事を堪えていた。
普段の温厚な表情は消え果て、ただ多大なる憎しみと怒りだけがその顔には浮かんでいる。
何故だ、何故彼らが・・・
大野はアテネの熱い空気を思い出した。
誰もが最後まで諦めず、ただ一つの目標に向かって、彼らなりに懸命に戦ってきたというのに――
何故だ、何故こんな事になった。
537 :
75:2005/07/03(日) 21:01:13 ID:qslBGUrg0
「大野さん」
はっと気がつくと少し間の抜けたような声が背後から聞こえた。
大野はゆっくり振り返る。
視線の先にはいつの間にか自らが開けて入ってきた重厚な扉の前に黒服の男が二人立っていた。
「・・・・何だ。」
大野は険しい表情のまま、その男を見た。
「何だはないでしょう。」
二人のうち、タキシードを着ている小柄な男が大野に向かって歩き始めていた。
大野と同じく、アテネ五輪野球日本代表のコーチを務めた高木豊である。
高木は大野から三歩程度手前で止まるときょろきょろと会場を見渡す。
黒服の男はまだ扉の前に立っていた。
「こんなところに来てどうかしたんですか?」
「こんなところに?」
「いやぁ始まっちゃいましたね。」
こんなところに?始まっちゃいましたね?
ヘラヘラとしながらそう話す高木に大野は絶句した。
この男も一緒だというのか・・・!
本当は今にでも目の前の男を殴り飛ばしたい衝動に駆られていたが、その代わりに握り締めていた右手に更に力を入れた。
柔らかいとは言いにくい皮膚に食い込んだ爪が大野の頭をかえって冷静にさせる。
「誰が勝つんでしょうね。僕の見解ではやっぱり上原とか松坂、それに城島あたりが有力だと思ってるんですけどね。」
目ざとく酒の入ったグラスでも見つけたのか、高木はサラダが並ぶテーブルに早歩きで向かった。
538 :
75:2005/07/03(日) 21:01:32 ID:qslBGUrg0
大野は動かないまま、目でその行動を追う。
ふと高木が向かったテーブルの足元に何かの紙袋が置いてあるのが見えた。
「高木、その紙袋取ってくれないか?」
大野が声を上げるとひょこひょこと歩いていた高木が振り返った。
「紙袋?」
「お前の足元にある奴だ。」
すっと大野の横を黒服の男が通った。
しまった、と感じながら急いで高木の元に向かって走る。
黒服の男より先に着いたのは幸か不幸か。
高木は不思議そうな顔で紙袋の中を覗いている。
「・・・・大野さん、これもらってもいいっすかねぇ。」
「は?」
黒服の男が紙袋を高木から奪い取る。
男と大野が中を覗くとそこには『きのこの山』や『コアラのマーチ』など菓子が山ほど。
「結構入ってますよ、誰のですかねぇ。」
中を確認すると紙袋を高木に押し付け、黒服の男は再び出口に向かった。
大野は呆気にとられていたが、高木は黒服の男を一瞥してから胸の前に抱えた紙袋に手を入れる。
そしてキャラメルを発見し嬉しそうな表情を浮かべた。
高木さんなんか要りますー?と、ごそごそと紙袋を探りながら能天気に高木が大野に話しかける。
しかし大野は険しい表情のまま返事をせずに踵を返した。
怒りに満ちた大野の表情に首を傾げる高木。
539 :
75:2005/07/03(日) 21:01:51 ID:qslBGUrg0
自分が大丈夫ならどうでもいいとでも言うのか、ふざけるな!
絶対に選手達を救い出してみせる。
選手達の夢や希望や誇りや幸せ、全てを私の命に掛けても!
そう決意した。
左胸に手を当て、祈るように一言呟きながら。
そしてかつては地獄への扉だった重く華やかな扉に手を掛け、メインシアターを出て行った。
大野の脳裏には笑顔に満ち溢れたアテネ五輪の選手達が浮かんでいた。
高木は胸ポケットにキャラメルを滑り込ませながら、大野の後姿を見て呟いた。
「・・・・・いい顔ですね、大野さん。」
その表情からは何も読み取れない。
【A31高木・金子のお土産(お菓子の入った紙袋)所持】
540 :
75:2005/07/03(日) 21:03:01 ID:qslBGUrg0
題名間違えました。
[水面に映る月]→[弱気は最大の敵]です。
苦虫すり潰す→苦虫を噛み潰す。
ですよ。
542 :
75:2005/07/03(日) 21:50:57 ID:qslBGUrg0
>>541 そうだったんですかorzスイマセン知りませんでした・・・
第一段落の二行目
>苦虫をすり潰したような表情を浮かべ〜
から
>苦虫を噛み潰したような表情を浮かべ〜
になりますorzスイマセンデシタ
またまた新作ラッシュ乙です。
フジモンの一人ボケツッコミカワエエ。
大野さんはやっぱカコイイ男がサマになりますな。
職人さん乙です。
揚げ足とるようで悪いんですが、
>>538の下から3行目
> 高木さんなんか要りますー?と、ごそごそと紙袋を探りながら能天気に高木が大野に話しかける。
最初の高木さんは大野さんの間違いじゃないでしょうか?
545 :
75:2005/07/04(月) 02:34:15 ID:PHmghlMN0
>>544 指摘ありがとうございます。
何でこんな初歩的ミスやってるんだ自分・・・orz
>>538下から3行目
>高木さんなんか要りますー?と、〜
から
>大野さんなんか要りますー?と、〜
に訂正ですorzホントウニスイマセン
選手別状況表
名前/行動方針(状態)/支給品
福留隠れる場所を探す/?
小笠原不明
宮本不明
金子身の安全/ガーデニング5点セット
城島自分のことだけ考える/双眼鏡
谷不明
清水人を信じる(誰かに撃たれ左肩に銃創)/ブローニング ハイパワー
岩瀬不明
黒田不明
安藤不明
三浦ゲームに乗る/レミントンM700サイレンサー
松坂ゲームをつぶす/?
上原生き残る、高橋と決着?/鎌
岩隈混乱&逃走中(頬に銃のかすり傷、記憶障害)/?
和田毅誰かを撃ってしまい混乱&逃走中/拳銃(詳細不明)
村松信頼できる人間を見つける/?
高橋生き残ってゲーム廃止、信頼できる仲間を探す/S&Wマグナム
藤本人の特定を急ぐか逃げるか二択思案中/首輪探知機
木村混乱中(胸に自傷のナイフ傷)/サバイバルナイフ
小林清水の治療・病院を目指す/?
和田一ナースエンジェル/医療品セット
相川石井と合流/?
石井相川と合流/?
現在の状況確認。間違いがあったらツッコミ&修正お願いします。
保管庫さん落ちてるみたいなので、こっちにあげ。
見づらいので修正。何度もすいません。
名前/行動方針(状態)/支給品
福留 /隠れる場所を探す/?
小笠原 /不明
宮本 /不明
金子 /身の安全/ガーデニング5点セット
城島 /自分のことだけ考える/双眼鏡
谷 /不明
清水 /人を信じる(誰かに撃たれ左肩に銃創)/ブローニング ハイパワー
岩瀬 /不明
黒田 /不明
安藤 /不明
三浦 /ゲームに乗る/レミントンM700サイレンサー
松坂 /ゲームをつぶす/?
上原 /生き残る、高橋と決着?/鎌
岩隈 /混乱&逃走中(頬に銃のかすり傷、記憶障害)/?
和田毅 /誰かを撃ってしまい混乱&逃走中/拳銃(詳細不明)
村松 /信頼できる人間を見つける/?
高橋 /生き残ってゲーム廃止、信頼できる仲間を探す/S&Wマグナム
藤本 /人の特定を急ぐか逃げるか二択思案中/首輪探知機
木村 /混乱中(胸に自傷のナイフ傷)/サバイバルナイフ
小林 /清水の治療・病院を目指す/?
和田一 /ナースエンジェル/医療品セット
相川 /石井と合流/?
石井 /相川と合流/?
>>546-547 まとめさん乙です!
ナースエンジェルに笑ってゴメンなさい和田さんorz
>>550 神キタワァ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・* !!!!!
壁紙つくってくれた人と同じ人?
なんにせよGJ!
「究極のアホな恰好付け屋」
生い茂る森の付近の平地に宮本慎也は腰を降ろしてぐるりと辺りを見渡す。その姿は殺し合いに強制参加させられた者とは思えないものであった。
「ええ景色や。陽奈と菜桜が喜びそうやな。」
妻とかけがえのない娘達…大事な家族は今、どうしているであろう。こうした家族を想い、締めつけられる苦しさを味わっている選手は一体何人いるのであろう。
(大事な家族のために何がなんでも生き残る…そう思う奴もぎょうさんおるやろな。)
そのためならたとえ仲間を殺めても、と思う者もいるだろう。だが、それを責めるつもりはなかった。
(俺には…できへんなぁ。俺みたいな奴には無理や。)
リーダーシップがある出来る人間、というイメージばかりだけでは気恥ずかしく、エロDVDが大好きだ、などと言っておちゃらけたりする自分は、ある意味究極の恰好付け屋だろうと自負している。
(家族の元へ帰る為なら、仲間を犠牲にする…んなことできるわけない。)
名内野手、最高の繋ぎ役を徹してきた自分には、誰に押し付けるわけでもない、誇りと美学というものがある。ここで家族の元へ、という己の利益のみで仲間を殺すなど、今までの自分を殺す…すなわち死ぬのと一緒だとごろりと大の字にねっ転がる。
「俺は旦那として最悪だし、父親として最低やなぁ…」
愛する家族のためなら仲間をも犠牲にするしかない、と思う事ができない究極のアホな恰好付け屋や、と宮本は空を眺める。鞄の中には銃が入っていたが、さきほどちらりと見ただけで閉じたままである。
「かといってこのまま何もせずにヤル気になった奴らにぶっ殺されるのも恰好悪すぎやしな…」
もうしばらくこうして、だらだらとねっ転がり、ぶつくさ呟いていたかったがそうもいかない。
「…さて、気ぃ引き締めなあかん。」
むくりと起き上がった宮本は、その表情を真剣そのものに変貌させる。自ら意欲的に自分の為に仲間を殺すなど、何があってもやる気は無いが、そういった奴らにみすみす殺されるつもりもなかった。
「俺は…キャプテンや。こんなゲームにみんなが放りこまれたのは…そりゃ俺のせいやね。」
自分一人が悪いわけではないであろうが、キャプテンという立場はそういうものなのだ。
「責任、とらなあかん…このままここですんませんでしたって死ねたら楽な話しなんやけど…」
死で償えるものならいくらでも死んでやるが、それは後々いくらでも出来ることであり、今やるべきことは…ゆっくりと立ち上がった時…パラパラという銃声が聞こえた。
「…!阿呆が…早すぎるやろ…何考えてんねん…」
もうヤル気になった者が居るのか、それとも試し撃ちか…何となくだが前者のような気がした宮本は舌打ちをする。動揺、混乱よりまえに自分以外の全てを犠牲にしようと考える者がいる…
(誰や…誰が…)
同じ目的を持ち、戦ってきた仲間達の誰が…考えたところで分かるわけがなかった。
「…!」
ややあって今度は近くの森から別の銃声が聞こえる。
「…阿呆二人目、というわけか。」
近い場所からの銃声に、宮本は心底からやるせないように首を振った。
「行くか…」
銃声を無視するわけにはいかない。二つの銃声…とりあえず近くの方に行こうと宮本は鞄を掴み、急いで森に向うのであった。
あと職人さんにお願いがあるのですが、
作者検索を保管庫に作りたいので投下時にコテを付けてもらえたら嬉しいです。
今までコテ付けてないよーって人は保管庫の掲示板に、
この文とこの文は自分のですーって報告して頂けたら嬉しいです。
よろしくお願いします。
557 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/05(火) 18:40:36 ID:i1luNx4T0
hosyu
「夢を取り戻せ」
谷佳知に渡されたのは、何の変哲もない金属バットだった。
本来なら夢をつかみ、また夢を与えるための道具であるバット。
しかし今、夢を掴むためでも与えるためでもなく、共に戦ったチームメイトの命を奪うためにこのバットを握らされている。
昔からプロ野球の世界を夢見てがむしゃらに練習した。
社会人からプロの世界に飛び込み、「オリックスに谷あり」と言われるほどの選手になることができた。
日本代表に選ばれ、少年時代からの憧れのスターであった長嶋茂雄の下で戦うことになった時は天にも昇る気持ちだった。
「夫婦で金メダル」という周囲からのプレッシャーさえ当時の彼にとっては快感だった。
しかし、追い続けた夢の先に待っていたのが、まさかこの名も無き島での殺し合いだったとは…
あの日、オーストラリアに負けた瞬間彼らの運命は変わってしまった。
彼が内野ゴロに打ち取られ、最後の打者になった瞬間に。
ムービーの最後にも写っていたあの瞬間のことは、半年経った今でもはっきりと思い出せる。
今での目を閉じるたびにあの光景が脳裏に浮かんでくる。この状況だから余計に鮮明に浮かんでくるのかもしれない。
確かに自分たちは勝てなかった。誰より悔しいのは自分たちだ。ましてや最後の打者だった自分は尚更だ。
しかし日本代表としての誇りを胸に、全力で戦ってきた。はっきりそう言い切れる。
だがゲームの主催者たちは、彼らの誇りを、人生を、そしてプロ野球をにべも無く踏み潰そうとしている。
高みの見物をしていただけの彼らが、望んでいた色のメダルが得られなかったという、それだけの理由で。
谷にはそれが許せなかった。
「一体誰がこんなゲームを…」
分かったところでゲームが終了する訳でもない。余計な思念は命取りだ。だが考えずにはいられなかった。
ゲームを指揮する星野も誰かの指示に従っているだけだろう。
思い当たるのは…二人か。こんなことを思いつくのは彼らを置いていないはずだ。
「たかが選手が」と言い放った在京球団のオーナーと、「経営のため」と称してスター選手を何のためらいも無く捨て、
さらに合併・1リーグ化を強引に進めプロ野球を解体しようとしていた彼の球団のオーナーの顔が浮かんだ。
…考えただけで虫酸が走る。彼らにプロ野球を踏みにじらせるわけには行かない。
とりあえず、やることは決まった。
「こんな馬鹿げたゲーム、絶対に止めてやる」
既に誰かが発砲している。ゲームに乗った選手も少なくないはずだ。
しかし何としてでも止めなければならない。
プロ野球を再び選手とファンの手に取り戻す。そのためにはまずこのゲームを壊さなくては。
だから、もしゲームに乗った奴に会ったらそのときは…
谷は島の中心に向かって歩き始めた。
【以前投下した上原と谷の居場所については他の職人さん方のご想像にお任せします】
【宮内氏の名前を勝手に出してしまいましたので、今後の流れにそぐわないようでしたらこの文自体無視してしまって構いません】
438さん乙!でもこの文無視〜とか書かない方がいいと思う。他の職人さんが混乱するよ。後、今フラッシュ作ってるらしいから居場所は明確にしておいた方がいい。
>>560 了解しました。
上原の居場所はG-6近辺、谷はH-2近辺でお願いします。
新作乙です!
宮内か〜。元檻や元近鉄組みは他の奴よりも思うところがあるだろうな。
よしくんガンガレ。超ガンガレ。
乙です!
よしくん…ええ子や…
宮内は想像に登場してるだけだし問題ナッシングでは。
もちろんこのあと本物登場してもいいと思うけど。
『大きく変わる運命』
岩瀬はいくつかの銃声で目を覚ました。
目を擦りながら間延びする。
この島に着いてからすぐに体力温存のために眠りに就いたが銃声が耳に入りあまり長い時間の睡眠時間を得ることはできなかった。
「なんだか銃声が多いよなぁ…」
岩瀬はぼーっとした声で呟く。少しばかり眠気が残っていたが早々に出発の準備を始めることにした。
現状ではあまり自分の行動については決めてはいない。ただ流れるままに行動している。
島に着いた直後に岩瀬がバッグの中身を確認したところ、何の変哲もないフライパンが入っていた。恐らくこれが岩瀬の武器なのだろう。
(…こんな物、武器になるのかな…。)
そんなことを考えているとバッグの中のある物が岩瀬の目に入った。
「あれ?さっきこんなの入ってたかな…?」
そう言って取り出したのは黒光りの小さな箱型の機械のようなもの。
「なんだろう…?」
「岩瀬、岩瀬聞こえるか!」
「うわぁ!」
その機械から突然声が聞こえ思わず手を離してしまう。
「岩瀬!聞いているのか岩瀬!」
「ほ、星野さん!?」
機械から聞こえた声は紛れもなく星野の声であった。
「こ、これなんですか…」
「無線だ、これから言う話をよく聞け」
「は、はい…!」
岩瀬は突然の星野との会話に戸惑いをみせるが星野の口調の強さに思わず素直に返事をしてしまった。
「あのバッグの中の一つに実は無線をいれてあった。それを引き当てたのが岩瀬、お前だった。これも運命と思って、是非こちら側に協力してもらいたい」
「協力…ですか?」
「そうだ、協力をするのならばそれ相応の武器と命の保障を与える。悪い話ではないだろう?」
武器。
その言葉になぜか強く心が引き付けられる。
「…協力って何をすればいいんでしょうか?」
「メジャー志望のある選手を重点的に殺してもらいたい。それと高額年俸者もだ。まぁ、協力する、しないもお前の自由なのだがこの島から生きて帰ることが一人だということを忘れるなよ」
突然の星野からの申し出に岩瀬は動揺を隠しきれない。この返事一つですべてが決まってしまう。
随分と長い沈黙を経て出てきた言葉。
「…わかりました…。
僕は、そちら側に協力させていただきます」
その言葉はこのゲームの運命を大きく変える。
【岩瀬現在地、E-6】
誠に勝手ながら今回からトリップをつけさせていただきました。
キムタクのほうの現在地はF-2付近ということでよろしくお願いします。
職人さん乙です!
って岩瀬がジョーカーですか!((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
あと、保守ageしておきます…すいません。
死神様ジョーカーキタキタキタ━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━!!!!!!!!!!
って((((((;゚Д゚))))))ヒェェェェェェガクガクブルブルナニスルキダシニガミサマ
由伸は黙々と砂浜に名前を書き続けていた。だが、それは森の方から乾いた音…銃声によりピタリと止まる。
「!今のは…」
こういう時、人は逃げるか、そこに向うかのどちらかの行動を取るものであるが、由伸は後者であり、砂浜を蹴り付けるように全力疾走し、森に向った。
(誰だ…誰が撃たれたんだ…?)
撃った奴より前に誰が撃たれてしまったのか…そちらの方が気になり、頭の中で選手達の顔が駆け巡る。
(…ここからそう遠い場所じゃないはずだ。)
静かな森の空気でトーンダウンしたように、由伸は冷静になると、そっと歩き出す。ほどなくして人の気配を感じ、思わず木陰に身を隠す。
(あれは…小林さんと清水…撃たれたのは清水だったか…)
前方に見えるのは小林雅英と清水直行であった。小林がその傷口を縛っていたとこから、清水を狙撃したのは他の既に姿が見えない何者かだと分かった。
(…命に別状無いようで…良かった…)
様子を伺うのみで姿を現すつもりはなかった。信頼しあうチームメイト同士…それは羨ましい事であった。
(…行ったか?)
信頼しあう彼らに割り込むつもりなどなかった。ゆっくりとその場を去っていく小林と清水を木陰から見送ると、由伸も少し遅れて歩き出し、スッとキャップのツバを触る。
「…ん?」
偶然深めにかぶってみて気がついたが、視界が狭まる事で何かシャープな光景に見え、思わず足を止めた。
「単純な話しじゃないか…」
自分は野手だ。こうして帽子の代わりにヘルメットをかぶり、速い直球、えぐるように曲がる球を見極め、バッドで打つという仕事を毎日やっているのだ。
(言ってみりゃ…毎日コイツをスコープ代わりにしてるようなもんだ。)
かなり強引な理論でだけどな、と苦笑する。
(球を打つ感覚で…弾丸を放つ…か。)
それに気がつくとふいにブルリと震える。それまではこの銃に対してピンとくるものがなく、まるでおもちゃを持っているような感覚でしかなかったが、いきなり冷たくずっしりと重い物質に感じ…由伸はじっとS&Wマグナムを見る。
「…行くか。」
襲ってくる底知れぬ冷たい恐怖から、思わずS&Wを投げ捨てたい気分になるが、それを抑えるようにつぶやくと再び歩き出す。
【高橋現在地、D-1からC-1へ移動】
暫く黙々と歩いてみたものの、視界に入るのは生い茂った木々ばかりである。
(…誰が信頼できるか…考える暇無いまま来ちゃったからな…)
思案する前に、聞こえた銃声に思わず駆け寄ってしまった自分に苦笑しながらも、考えながら動くことにしようと気を引き締める。
(…上原。)
本当なら一番信頼し、真っ先に探すべきであろうチームメイトを由伸は複雑な面持ちで思いだす。
自らを雑草と言い、不満や疑問を躊躇することなく吐露する上原は、正直な性格とも言えるが、感情垂れ流しの子供とも言えた。
そんな上原は嫌いではなかったし、しょうがないなと苦笑混じりの好感さえ持っている。
(それがあいつのキャラだしな…正直なのは良いことだ…あいつならどんな状況でも自分の意志通りに進もうとするだろう。でも…)
その彼の「意志」というものが自分の「意志」と違うのではないか…何かそんな予感がして、踏みきれないのだ。
(あいつは何を目的として…生き残る「意志」を進めようとするんだろう…)
由伸の中の何かが「違う」と言っているのだ。上原と自分の意志は徹底的に違うものだと、まるで警告するように鳴り響く。
(あいつとは求めるものも…考える事も違う気がする…)
それが野球の上でなら構わない。だが、この状況ではそれが悲劇になりかねないのだ。そういった嫌な予感がどうしても消えてくれない。それは何やら泣きそうになってしまうほど、悲しい予感であった。
(一緒に行動する、ということは信頼しあえるということだ…)
既にヤル気になっている者もいる…そんな状況で共に行動できる者…同じ意志を持つ者は…由伸は考え込む。
「あとは…」
思案を巡らせようと足を止めた時であった。
「…!あれは…」
足を止めた途端、前方からちらりと人影が見える。そのまま無視する手もあるであろうが、とりあえず誰か確認くらいするべきだと頷く。
(ったく…考える時間がねぇな。)
あの選手はどうだろう?どうしているだろうとさえロクに考える間もなく銃声が響いたり、人影が見えたりと何やら落ち着かず、ため息をついた。
(とりあえず行ってみるか。)
気がつかれないように、ソロリソロリと気配を消しながら、由伸はゆっくりと人影に近づくのであった。
あ…すみません。高橋はC-1からE-3に移動です。
…カキワスレタ。
「縄張りの隙」-1/2-
安藤優也は集落の中にある一軒に入ると、鍵をかけた。
「よっしゃ、これで一応安心や。」
自分からしてみれば、こんなばかげたゲームにのるつもりは毛頭ないし、他人を殺すのは最後の手段としたい。
だから、船から下りて道をまっすぐ走ったとき、行く手に家があるのを見て内心小躍りしそうだった。
家の中に入って、中から鍵を掛けてしまえば誰も入ってこられないのではないか?
禁止エリア・・・とか放送では言ってたけれど、それに引っかかるまではここに居れば安全だろう。
それに、こういうところで食料や水なんかも調達できればそれに越したことはない。
唯一の心配事は集落の家々に入れないかもしれないという事態だったが、それは杞憂だったようだ。
「家に篭ってちゃあかんって誰も言うとらんし、誰も入ってこなきゃ殺られるようなこともないやろ。」
安藤は家の中を一通り見て回ることにした。
とりあえず蛇口をひねってみたものの、水は出てこなかった。
台所の戸棚の中には、この家に住んでいた者がおいていったのであろう缶詰が積まれている。
さらに戸棚を探すと、缶切やワインオープナー、果物ナイフまで引き出しから出てきた。
ガスコンロがとりあえず使えることまで確認したあと、彼は二階に上がった。
2階の部屋の押入れには布団が2組収まっていた。据え付けられていた小さな洋服箪笥からはTシャツやパーカーが出てくる。
「誰が住んどったんやろ・・・?」
まるで、それまで人が住んでいたのが人だけ抜け落ちたかのような、そんな感覚。その最中に、殺し合いをしなければならない自分たち。
でも、その輪からはとりあえず一つ離れたところに今自分は居る。
「布団もあるし、しばらくここに居てもええな。」
「縄張りの隙」-2/2-
安藤は二階の窓を開けた。一気に新鮮な空気が部屋を満たす。
窓の向こうには、学校らしき建物。周りを見回すしてみたが、どうやら一番大きな建物は学校らしい。
「いやぁ、快適だ・・・」
安藤は外に向かって大きく伸びをした。
次の瞬間、安藤の目の前がパッと紅く染まった。
三浦大輔は校舎の三階の窓からそっと離れた。そして、深く息を吐き出す。
持っている狙撃銃のサイレンサーの口からは細く煙が昇る。
三浦はスコープでしか、遠くの標的を視認することが出来ない。
そのため、二階から顔を出したら狙撃できるよう校舎の三階から二階建ての家の窓を狙っていたのだ。
様子はスコープで見ていたが、どうやら胸に命中したようだ。背番号は・・・忘れた。顔は安藤だった。と思う。
視界の狭いスコープでは、パッと赤い飛沫が胸の真ん中あたりから飛んだことぐらいしか分からなかった。
胸をかきむしるような仕草をしながらゆっくりと後ろへ倒れていく様は、何かサイレント映画でも見ているかのようだった。
まさか本当に顔を出すとは思わなかったが・・・死んだかな、あいつ。
「そういや、あいつは武器何もってたんだろ?」
三浦は自分のつぶやきに肩をすくめ、次の移動場所へ向かうためにカバンと狙撃銃を背負った。
【三浦大輔 現在H-4】
【安藤優也 G-4>OUT 残り22人】
かなり確認したはずなのに、投下後に誤字脱字発見。
誤>窓の向こうには、学校らしき建物。周りを見回すしてみたが、どうやら一番大きな建物は学校らしい。
正>窓の向こうには、学校らしき建物。周りを見回してみたが、どうやら一番大きな建物は学校らしい。
でお願いします。
素人が遠距離から一発で胸に当てられるわけないと思うんですが…
39=腐女子は脳内で妄想ばっかりだからすぐに矛盾が生じるんだよ
>>576 素人どころか中学生が飛んでくる手榴弾を空中でつかんで投げ返したり、マシンガンをフルオートをぶっぱなすのもムリだと思うがね
本家バトロワですらやってるエンターティメントの範囲内での「ちょー」な描写に突っこむなよ。池沼が
意味不明。エンターテイメントて何でもありなんですか?
>>578 自演乙。
39は何度もやらかしてるからさすがに普通の人も頭にきたんだろうな。
いくらなんでもこの話は矛盾がありすぎ。
>>580 本家だって中学生の体力、心情がリアルかっていえばそうじゃないだろ、展開だってかなり強引。
お前は気に入らない、俺は許容範囲だと思った。
たかだかそれだけの話なのに一読者を自演呼ばわりして「リアル」とやらに拘るのかよ。度量狭すぎだね
まーとりあえず見守るスレに場所移して話し合ったら?
583 :
24 ◆OjH6MKnvfA :2005/07/09(土) 17:34:00 ID:OL/I6BRv0
「ネクストバッターズサークル」
銃声が彼方から聞こえる。
誰が撃ったものなのか。
誰が撃たれたものなのか。
雑木林を抜け、小高い山の中で身を隠した福留孝介が、はっと顔を上げた。
赤いハートが並んだトランプ。
船の中でそれを受け取った時には、やはりゲームは余興の一環なんだと思った。
例え島に放り出されても、心の何処かで「嘘だ」と思っていた。
あの夏を一緒に戦った彼らと殺しあうなんて。
だが、木立の中で身を隠し開けた鞄の中には、青光りする刃物が入っていた。
よく研ぎ澄まされたそれは、使ったことはなくともよく目にする刺身包丁だった。
行きつけの寿司屋の奥で、大将が鮮やかに魚を捌いていた。
まるで滑るように。
自分には、それで人を殺せと?
日本の刃物は押して切るものではない。
滑るように引いて、切るものだ。
普通の包丁よりは長身で細い包丁を、誰かの体に滑らす自分の姿を思い浮かべる。
自分と同じユニフォームを着た、誰かを。
出来るか?
出来るのか?
幸い、一番に島に上陸した福留には、時間があった。
考え込む時間が、赦されていたのだ。
そして、腹を括った。
人を殺したいわけではない。誰かを傷つけるのが好きなわけではない。
決して。
だが、それが「ルール」なら。
例えば3つアウトを取られれば、チェンジになるように。
誰かを殺して自分が生き延びること、それがこの「競技」の「ルール」なのだ。
自分が積極的に参加したものではなくとも、放り込まれてしまった以上、ルールは遵守すべきものなのだ。
生きて帰る。
必ず、生きて帰る。
やり残したことがあるから。
メジャーなんてどうでもいい。そんなことじゃない。
ただ、優勝したいんだ。日本一になりたいんだ。
否、日本シリーズの打席に、立ちたいんだ。
ただ外から見守ることしか出来なかったあの打席に、あの場所に。
だから、誰を殺してでもいい。
必ず生きて帰る。絶対に。
福留は獲物がやって来るのを待つ。
己の武器が決して強力ではないことを知っているから。
山の中へと迷い込んでくる獲物を、じっと待つ。
戦いは、攻め込むよりも守りを固めて潜んでいる方が強いのだから。
守りの、福留。
獲物までもう少し。
【A1福留孝介 現在位置−C−6】
ああああアゲてしまいました。
すいません。
てか前から39さんになにかと文句言う奴でしょ?
粘着相手はスルーに限るよ。
ゲーム開始の最初の犠牲者が出てしまったか…
ソフロワで脳内ルール貼り付けて悦に入ってた奴じゃないの?
自分の思うとおりにしたいなら自分でサイト作るなりチラシの裏なりで
一人でやってればいいのに
>>576 確かに指摘は正論だと思うので、あまり変わってはいませんが次スレ番のとおりに書き直し。つたない文章でご迷惑をおかけいたします。
保管庫さま、「縄張りの隙」-2/2-は次スレ番号のをイキとしてください。
以上お手数おかけいたします。
「縄張りの隙」-2/2-
安藤は二階の窓を開けた。一気に新鮮な空気が部屋を満たす。
窓の向こうには、学校らしき建物。周りを見回してみたが、どうやら一番大きな建物は学校らしい。
「いやぁ、快適だ・・・」
安藤は外に向かって大きく伸びをした。その瞬間、パッと目の前が紅くなった。
なにが、起こった??? 胸のあたりが猛烈に痛い・・・!
安藤が痛さと衝撃でもんどりうって後ろへ倒れ込むのと同時に、パリンという音とともに窓ガラスに穴が空いた。
狙われ・・・てる・・・? ヤバイ、どこかへ・・・逃げなきゃ・・・オレ・・・うわ、血がと・・・まら・・・ない・・・た、すけ・・・
安藤はうつぶせになって血を吐き、そのまま意識が遠くなった。
三浦大輔は校舎の三階の窓からそっと離れた。そして、深く息を吐き出す。持っている狙撃銃のサイレンサーの口からは細く煙が昇る。床には三個の薬莢が転がっていた。
彼はスコープでしか、遠くの標的を視認することが出来ない。そのため、二階から顔を出したら狙撃できるよう校舎の三階から二階建ての家の窓を狙っていたのだ。
うまく当たってればいいのだが、距離遠かったからな・・・。とりあえず、狙った奴がどうなったか確認だけしにいくか。
もし生きていたとしてもケガの一つもしていればこっちのほうが有利だろうし、少なくともこっちが返り討ちにあうことはない。
三浦はそこまで考えると、校舎内で拾ったジャージと文化包丁をカバンに詰め込み立ち上がった。
【三浦大輔 現在H-4】
【安藤優也 G-4>OUT 残り22人】
「希望が見えない」
「岩隈ー、おるのは分かっとるでー?」
誰もいない岩場に向かって、黒田は呼びかけた。
岩場を全力で走る岩隈を見つけて追ってきてはみたものの、姿を完全に見失う。
近くにいるのは分かっている。だが下手に近づくのは危険だ。
走る際の必死な形相から、岩隈が完全に平常心ではないと見て取れた。
「…まあ何や、突然こんな所に連れられてパニックになるのは分かるけどー…。」
黒田はチラり、と後ろを振り返る。ここからはもう砂浜は確認できない。
(木村さん…大丈夫やろか?)
本当は砂浜の近くに身を潜めて落ち合うつもりだったのだが。
岩隈の半狂乱の姿を見て、どうしても見捨てる事は出来なくて後を追って来た。
すぐに追いつけると思ったが、甘かった。お互いプロの野球選手。体力は常人以上。
気づけば、エリアの一番隅…I―1まで追いかけっこは続いていた。
そしてこの辺りで岩隈の姿を見失い、滑りやすい岩場を慎重に歩く内に星野の放送が聞こえてきた。
今から戻っても、もう砂浜に木村の姿は無いだろう。
(…木村さん、堪忍してください。でも貴方も俺の立場やったら岩隈を追うでしょ?)
実際の木村が今どういう状況なのかも知らず、のん気に結論付けていた、その時。
「…殺し合い…。」
黒田の耳が、波の音に混じる呟きを捉える。その呟きは終わりの無い呪文のように続く。
「殺し合い…殺し合い…逃げる…殺し合い…嫌だ…。」
(…あかんな、あいつ完璧にイカれとるわ。)
黒田の額に、じっとりと汗が滲む。走る際に滲んだ汗とは違う、冷たい汗が。
先程の判断を後悔するが、来てしまったものはしょうがない、とすぐに開き直る。
言えるだけの事は言っておこう。呪文が聞こえてくる岩の陰に向けて、大きく息を吸い込んだ。
「殺し合いなんて、今までだってやってきたやないか!」
繰り返される呪文を掻き消す程の大声が、岩場に響く。
「俺らが投げる硬球は、当たり所悪ければ死ぬんや!打者が打ち返してくる球も同じや!
お前が気づいてへんだけで、俺らは常に殺し合いやっとんねん!!」
黒田の頭に、シーズン中、ライナーが頭に直撃したベテラン右腕の姿がよぎる。
その人はその後普通に続投していたが、当たった瞬間は流石にベンチ内が静まり返った。
自分があのマウンドの上でああなっていたら。当たり所が悪かったら。
ああ、自分達は常に死の危険の中でプレーしているのだ、と思い知らされた。
(…でもマウンド上で死ねるんなら、投手としては…)
「ぼ、僕は人を殺すつもりで投げた事なんか、一度も無い!!」
突然、岩隈が黒田の見据えていた岩の影から姿を現し、黒田を睨みつける。
黒田は慌てて身構えるが、岩隈が武器を持っている様子は無い。
まるで苛められていた子供が初めて逆らったかのような、声が裏返った叫び。
手に握り締めているのは鞄の持ち手と小型の懐中電灯。足が微かに震えている。
「…当たり前やろ!そんなつもりで投げられてたまるか、アホ!!」
言い返すと同時に、黒田は自分の呼吸が乱れている事に気づいた。
重い鞄を持って走ったり、大声で叫んだりしたから疲れたのだろうか?
俺ももう年かな?ふと、そう思った。一息ついて呼吸を整えて、怒りの形相をしている岩隈に呟く。
「…ファンいなくなるぞ?そんな顔しとったら。」
「どうせ、ここから生きて帰れやしないんです!どんな顔してたっていいじゃないですか!!」
震える声で吐き出された反論の後、数秒…黒田はそうやな、と小さく笑った。
上陸した当初は木村と合流しようと思った。だが、合流した所で何が出来る?
もし、メンバーの中に権力者や天才がいたなら、集まって何かできたのかもしれない。
だが実際は体力ばかりに自信のある人間の集まりだ。集まった所で何が出来る?
大きな権力を持つ主催者に対して、俺達は何が出来る?黒田はその先に何の希望も持てなかった。
ならば、一人だけ生き残る道を選ぶ?そんな気にもなれない。
武器がハズレだった訳ではない――武器は小型のボウガン。矢も十数本ある――が、
仲間を殺した手で可愛い子供に触れたくないし、その子に「人殺しの子供」のレッテルを貼りたくない。
岩隈を追いかけていく中で考えれば考える程、黒田は深い絶望の淵に追い込まれいた。
気づいたのだ。絶望の中にあるはずの微かな希望が、自分には見えない事に。
「…なぁ岩隈…今、お前何がしたい?」
落ち着いた声で放たれた黒田の問いかけに、岩隈は微かに首を傾げた。
黒田は視線を岩隈から海の方に移す。岩場に打ち付けられる波の飛沫が綺麗だと思った。
足場の岩に生えた苔を、片足で弄る。簡単に剥がれて靴に纏わりついた苔を、他の岩にのじりつける。
「…黒田さんは、何がしたいですか?こんな状況でも何かしたい事がありますか?」
岩隈から返ってきた声は多少早口で取り乱してはいたものの、先程よりはずっと落ち着いていた。
「俺か?俺は………。」
予想していなかった返答に、黒田は言葉を詰まらせる。
(…俺は今、この状況で何がしたい…?)
黒田は空を仰いだ。その余りにも無防備な姿につられて、岩隈も空を見上げた。
だが何の変哲も無い曇り空を見上げ続ける気にはなれず、すぐに黒田に視線を戻す。
黒田はまだ空を見上げていた。岩隈の存在を忘れたかのように、ただ曇った空を見上げていた。
何が見えているのだろう。もしかしたら何も見えていないのかもしれない。岩隈は思った。
「……黒田さん?」
岩隈の波の音より小さな呼びかけは、黒田に届いたのかどうか分からない。
突然、黒田は岩隈に背を向けて走り出した。その後ろ姿は全く岩隈を警戒していない。
「黒田さん!!」
岩隈は狂ったように黒田の名を叫び、慌てて後を追おうとしたが足場が滑り派手に転倒する。
岩隈が立ち上がった時、もう黒田の姿は見えなかった。
【A15黒田H−1(ややI−1寄り)&A20岩隈I−1へ移動 残り22名】
以上代理投下でした。
職人様乙です。
黒田キタ━━━━━━(゚∀゚≡(゚∀゚≡゚∀゚)≡゚∀゚)━━━━━━!!!!!!
職人さん、乙!
ソフロワのあれを脳内ルールとか言ってる時点でモウダメポ…と思ったら見守るで総ツッコミ受けてる擁護厨か。処置なし。
職人様乙でございます!
って言うかクマ踏んだり蹴ったりだなお前・・・・・・orzガンバレヨオウエンシテルカラ
[キャッチボールがしたい]
「『薬品セット☆ これであなたも毒殺のプロ☆★☆』か・・・・」
湖の畔にあった木を背もたれにして座ったまま、小笠原は低く呟いた。
あぐらをかいた足の上には救急箱のような白い小さな木製の箱がある。
その中には高さ10cmほどの寸胴で茶色い薬瓶が4本入っており、蓋の裏にはきちんとパッキングされた小型の注射器が5本あった。
試しに一番右上の小瓶を取り出してみる。
その瓶のラベルには黒い文字で『水酸化ナトリウム』と印刷してあるのが読めた。
水酸化ナトリウムか・・・・・聞き覚えがあるような無いような。
瓶を元の場所に戻すと灰色の雲に覆われた空を見上げた。
島の上空には鳥が一羽大きく旋回しながら飛んでいる。
昨日の今頃はこんなことになる事など想像だにしなかった。
可愛い娘と妻と一緒に夕食を食べたり遊んだりと『いつもの通り』のオフを過ごした。
それが、どうだ。
今は思い出だったこのユニフォームを着て、殺人ゲームに放り込まれ、妙な島に連れてこられ、『いつも通り』なんて欠片ほども感じられ
ない。
いや今だけじゃない、ずっとこれからだ。
死のうが生き残ろうが、昨日まであった『いつも通り』はもうすでにこの世界から消えて無くなっているのだから。
それに死ぬ確率の方が高いだろうな。
そう考えながら小笠原はアテネでの夏を思い出していた。
パ・リーグの首位打者として招集されたが、全試合出場しての打率は2割5分以下の散々足るもので。
全試合出場して、まともに結果を残せなかった自分に目が届かない訳ないだろう。
小笠原は残りの薬品の確認はせずに、箱の蓋を閉じて白い鞄の中に戻した。
それから首にかけていた透明のホルダーの中から地図を取り出して広げ、足の上に置く。
そして頬杖をつきながら、人差し指で自分の通ってきた道を確認した。
最初の砂浜から一本道を通って、E−4の分かれ道を右に行って、湖に沿って右に歩いて、今に至るか。
足の上に地図を置いたまま、今度は選手の名前が書かれた紙を取り出した。
そういえば何人の選手がこの島に着たのかも分からないな、とふと気付く。
時計があれば大体の人数は出せるかも知れないが、あの船に置いてきてしまった。
今思えば時計ぐらい良かっただろうな、と小笠原は後悔した。
船から持ってきたと言えば――喘息用の薬とハートのエースのカードぐらいか。
そう思い出しながら喘息用の吸引薬をポケットから取り出す。
まだこれをもってくるって事は死にたくないんだな、俺は。
自嘲気味に口元だけで笑いながら呟いた。
しばらく吸引薬を眺めた後、それを鞄の中に放りこみ、鞄の口を閉める。
そしてユニフォームの一番上のボタンを引きちぎると、左手の薬指にしていた結婚指輪を外し、鞄の側面にあったポケットに落ちないよう
にと奥の方に入れた。
自分を支えてくれた家族の愛情と、今まで野球に打ち込んできた情熱を綺麗なまま残すために。
「さて・・・どこに行こうかな。」
広げたままの地図を再び眺めた。
自分の居る地点からはちょうど反対に当たる場所に診療所と学校と野球場があることが分かった。
野球場、か。
地図を畳み、名簿と一緒にホルダーの中に仕舞う。
どうせなら誰かとキャッチャボールでもするか。その前にボールとグラブがあるのかは気になるが。
その後の事はそれから決めよう。
それからでもきっと遅くないだろう。
小笠原はそう決めて、立ち上がる。
『ハートのエースだったし、きっといいもん入ってるでしょう。』
その瞬間、不意に金子の言葉が脳裏に浮かんだ。
ああいい武器だ、死のうと思えばいつでも死ねるんだから。
肩から提げた鞄のポケットをそっと撫でた。
別に殺されても構わない、殺人者にもなりたくない、人の命の上に立ってまで家には帰りたくない。
でも約束は裏切ってしまうな。
2人の天使のような娘の姿を思い出しながら小笠原は苦笑した。
玄関で約束した、『絶対帰ってくる』と。
今思ってみればあの二人の子供達はこれからの自分の運命が見えていたのだろうか。
出るときに思いっきり泣かれた事も思い出した。
でもそれは―――最早過去のこと。
もう二度と帰ってこない、過去のこと。
小笠原は野球場を目指して歩き始めた。
キャッチボールをするためにそして、一人の野球選手として死ぬために。
その表情に迷いは無かった。
【A2・小笠原C−4からH−4の野球場へ移動開始】
新作ラッシュキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
ドメ!ドメはやる気なのか!?
あ、アドゥー!!orz
ガッツさんまで…。・゚・(ノД`)・゚・。
黒田…
職人さん頑張って!
泣けるなぁ…ガッツ……
ガッツ…カコイイ…けど泣ける…
ガッツぅ。・゚・(ノД`)・゚・。
「幸運の裏表」
松坂大輔は途方に暮れていた。
彼にしては珍しい心境といっていい。
理由は、目の前にある機械の群れ。
彼が最初に目的地と定め、足早にたどり着いたのは学校の放送室だった。
おそらくこの小さな島では、学校は災害時の避難所として使われたはず。
ならば、島全体に放送を流すことのできる設備があるのではないか。
彼はそう思ってこの場所に来た。
殺し合いが始まってしまう前に、ゲームに乗らないよう、ゲームを潰すよう皆に呼びかけることができれば……。
そう考えていたのだが、どうやら自分の目論見は甘かったようだ。
放送室には、素人目にもなかなか立派な放送設備が揃っていた。しかし、肝心の電源が入っていないのだ。
「なんで電気来てねえんだよ〜!」
腹立ち紛れに備品を蹴りつけてみても、ご立派な機械群は松坂をあざ笑うようにウンともスンとも言わない。
「せっかく急いで来たのにムダ足かよ、くそっ!」
くじけかける心を無理やり奮い立たせるように、松坂は悪態をつく。
怒りはまだ持続しているが、そのやり場のなさに困ってしまうのも事実。
松坂は、ジャンパーのポケットにとりあえず一個だけ入れておいた自分の武器を取り出し、軽くため息をついた。
それは無骨な深緑色。
自分がふだん握っている白いボールとは全然違う、人の命を奪うためのタマ――手榴弾であった。
「なんでこんなモンが当たるかなぁ」
投手である自分に“投げる”武器が当たったことは、幸運なのだろうか。
手榴弾というのは殺傷力はあるが、使い勝手の悪い武器だ。
ゲームに乗らない自分には、どちらかというと不運な武器であるような気がする。
これで誰かを爆死させることなど考えたくもない。
威嚇として使うにしても細心の注意が必要だ。
息巻いて訪れた放送室の機器が使い物にならなかったことといい、この武器といい。
「俺、ひょっとしてついてなくね?」
思わず自問してしまう松坂であった。
しかし、彼自身は気づいていなかったが、松坂は実は幸運だった。
彼は島に着いてすぐに――しかも大通りを人目もはばからず早歩きで――学校を目指したことで、一番最初にこの場に着いた人間となった。
彼は施錠のされていなかった正面玄関から堂々と入り、鍵をかけた。
そして、そのあとは放送室にやはり鍵をかけてこもりきりだったのだ。
自分が通った二つの扉に鍵をかけてきたことは、さしたる理由があってのことではなかった。
年上でしっかり者の新妻に「戸締りはきちんと」と口を酸っぱくして言われてるせいだったかもしれない。
それにより、後からここを訪れた者は先に入った松坂の存在に気づけなかった。
松坂のいる部屋の特殊性も幸運に作用した。
防音加工がされている放送室は、中の気配を外に漏らさない。
そして、放送を目的とする者以外は、放送室には用はない。
ここには武器になりそうな者も、それ以外のサバイバルに役立ちそうなものも何も置いていないのだ。
あるのは電力の通っていない今となっては、無用の長物となった放送機器の類だけ。
だからこそ、松坂は幸運にも見逃されていたのだ。
自分のすぐ前に島に着いた男。そしてすぐ後に学校に着いた男。
奇しくも彼と同じ名を持ち、まったく違う目的でこの場所を選んだ男。
今のところただ一人自らの同胞を殺し、恐るべき狙撃手となり果てた男――三浦大輔に。
【松坂現在位置 H−4】
すみません、訂正です。
>>609五行目
×ここには武器になりそうな者も、それ以外のサバイバルに役立ちそうなものも何も置いていないのだ。
○ここには武器になりそうな物も、それ以外のサバイバルに役立ちそうなものも何も置いていないのだ。
保管庫さん、すみません。よろしくお願いします。
107さん乙です!
太輔キタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
そうか三浦も大輔・・・・
松坂危機一髪!?
大輔二人の進路が明暗別れてますね〜ドキドキ
新作ラッシュキテル━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
大輔二人が学校に…とか、ちょっと鳥肌たっちまいました
すごいスリルあって、スゴス
74.幸運の裏表まで保管しました。
保管サイトのメニューを少々、改造しました。
読みたい章をクリックて開きます。
見にくかったら保管庫の掲示板に書いてください。 ナオシマスノデ…
>>保管庫さん
いつもいつも乙かれ様です!
メニュー物凄く見やすいです!
616 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/11(月) 23:55:13 ID:9weQOaRX0
保守age
hosyu
保管庫に所持武器一覧作成しました。
>>618 乙です!
画像つきでメッチャわかりやすいです!
銃器類カコイイw
「大きな子供」
背後からゆっくりと近づくにつれ、ぼやけた人影は段々と鮮明になる。
(あれは…和田じゃないか。)
見えた人影はホークスの方の和田であった。由伸は茂みから様子を窺うが、
和田は木の根元に座り込み、頭を抱えながらガチガチと震えている。
(…誰かに襲われたのか?…いや、あの銃声の被害者は清水だったはず…)
だが、茂みの隙間から見える和田は、撃たれた清水の様子と比べ物にならないほど、
恐怖と苦痛に顔を引きつらせるような、悲痛な表情であった。
(何にせよ…放っておけないな…)
どういう理由か分からないが、仲間である選手が恐怖と悲痛で苦しんでいる。
それは声をかけるのに十分な理由であった。
「…おい。」
「…!う、うわぁぁっ!」
そっと茂みから姿を現した由伸が視界に入るなり、和田は悲鳴を上げ、さらに震えだす。
「…大丈夫だ。俺に殺意は無いよ。」
銃を構えては余計に混乱させるだけであろう。由伸はS&Wを後手に持つ。
「く、来るな!信用できるもんか!誰も…誰も信用できるもんか!」
信じて疑わなかった城島にさえ、冷徹に突き放されたのだ。
もはや誰も信用などできるわけがない。
「…とにかくさ、落ち着け。な、大丈夫だから…」
まるで子供をあやすような口調で由伸は言う。
要は一番上の兄の幼い姪っ子をあやす感覚で接すればいいのだと。
「……」
少しは落ち着いてきたのか、和田はじっと伺うように無言で由伸を見上げる。
「そうだ…冷静になるんだ。何があったか知らないけど…」
言いかけた由伸は和田の手元を見るなり、ハッと目を見開いた。
そして微かに銃口が煤けている拳銃に釘付けになる。
「…!」
見られた…目を見開く由伸の視線の先にある己の銃を掴むと、
和田は立ち上がるなり、由伸に銃口を向けた。
「まさか…お前が清水を…」
言いかけたと同時に、失言だったと慌てて由伸は口を噤む。
だが時既に遅しで、和田は再び混乱で目を光らせる。
「清水さんだったんですか…。そうですよ…俺が撃ったんです…」
悲鳴の主は清水であった。そして目の前の由伸はそれを知ってしまった。
「試し撃ちのつもりだったんだ!本当に、軽い気持で…
そ、それが…清水さんに当たってしまった…俺は、俺は…殺す気なんか…」
ガクガクと足を震わせながらも、銃口を向けたままの和田に由伸はため息をつく。
「…分かってる。殺す気満々の奴がそんなに怯えたりするもんか。」
だから和田の言う通り、不運な事故だったのだろう。
「う、嘘だ!あんたは俺が清水さんを撃ったと広めるつもりだ!」
「そんなことしねぇよ。お前は殺す気なんか無かった。それが分かれば十分だ。」
あの銃声は仲間が仲間を殺そうとしたものでは無かった。
それは由伸を安堵させた事実だったが、肝心の和田はさらに瞳を歪ませる。
「あんたに知られてしまった…だから…口封じしないと…
敵が増える…そう言われた…」
「誰がんなことを…随分と極端な事を言う奴だな…」
「自分のやった事のケリくらい…自分でつけろって…だから…」
悲痛な面持ちのまま、大きく拳銃を揺らしながらそれでも由伸向け、構える。
「だから…あんたを始末する!」
「えぇ!?いきなりかよ!…ちょっと待てって…」
S&Wマグナムは後手に握ったままであり、構えようものならさらに混乱させ、
発砲されかねない。かといってこのままでも危ない。
(もしかして今、すごくヤバくねぇか…?)
放っておけないと声をかけたつもりが、いつの間にか大ピンチである。
幼い姪っ子よりも聞き分けがない大きな子供相手に由伸はため息をつくのであった。
【由伸・和田毅 D-2】
「分かれ道にて」-1/3-
飛ぶ雲 飛ぶ声 飛ぶボール〜
「・・・。」
見晴るかす 神戸 〜
「・・・・・・。」
玄界灘の 潮風に〜
「・・・・・・・・・。」
小林雅英はT字路で立ち止まり、後ろを歩いている清水直行へと振り返った。「・・・ナオ、それって、新手の宗教かなんかか?」
「あ、いや・・・、正直しんどいから歌でも歌っとこうかと・・・。」
ジャンパーを羽織ってほとんど空のカバンを背負い、顔色が悪いながらも笑顔をつくる清水の様子を見て、小林は少し笑った。
「・・・しゃーない、ちょっと休憩な。」
小林はT字路の角の草むらにカバンを下ろすと、清水を手招きする。
「マサやん、他のチームの応援歌ってどれだけ知っとる?」
清水は小林からペットボトルを受け取りながら聞いた。
「えっ・・・、空で歌えるのは、ジャイアンツと、阪神と、ウチのぐらい?」
「俺、パリーグの全球団と六甲颪ならほとんど歌えるよ。」
清水は一口水を口に含むと、一つ息をついた。「ラッキーセブンのときに、スタジアムで流れるっしょ。」
「あ、そうか。」
「俺、先発だからさ。・・・相手の応援歌を聴いてると、『よっしゃ、後三回や』って気合が入るねん。」
「俺クローザーだからなぁ。あんまりそういうの覚えてないや・・・。」
小林はポケットから地図を出して眺めた。「今いるのは、このあたり。」
指差した位置は、E-3,E-4,F-3,F-4が交差するT字路だ。「とりあえず右に行けば、集落があるな。」
「なんや、もう少しやんか。」
清水は隣から地図を覗き込み、ホッとしたような声を上げた。「サクサク行って、サクサク傷の手当てしよ?」
「・・・さっきまでしんどい言ってたのは誰だよ?」
「あ、俺や。」
清水の言葉に、小林はあははは、と笑った。それにつられて清水もははは、と笑う。「・・・ちなみに、隠れてるの分かっとるよ?」
小林はそっと傍らに置いたブローニングに手をかける。「誰? さっきから居るようやけど?」
「分かれ道にて」-2/3-
「・・・全く、何やってるんだ。」
背の高い草むらの影から姿を現したのは、小笠原道大だった。
「うわ、ガッツさん!」
清水が目を丸くしてぺこぺこ頭を下げる。「ため口聞いちゃってホントすんません。」
「まあ、こんな状況だから仕方ないよ。」
小笠原は肩をすくめて言う。「で、これから何処に行くんだ? 診療所、とか言っていたが・・・。」
どうして、彼らの前に姿を現す気になったのか、小笠原自身も分からなかった。
ただ、こんな異常な状況の下でも笑っていられるということに惹かれてしまったからかもしれない。
この二人を見ていると、今離れている金子誠のことが気にかかる。
金子、・・・。
小笠原の自問は、小林の一言で現実に引き戻された。
「・・・で、清水が誰かに撃たれたんですよ。」
「誰か?」
小笠原の問いに、清水はお手上げ、といった風情で両手を挙げる。
「後ろから、突然撃たれてしまって・・・。」
清水はうつむいた。「俺、怖くてその場から逃げちゃったんですよ。きっと、・・・撃った人、俺のこと探してると思います。」
「・・・まさか。」
「しとめるために。・・・とは思いたくないですけどね。まあ、小林さんも居るし、なんとかなると思てますけど。」
清水は小林をちらっと見やる。「一人より、二人。二人より、たくさんですわ。」
「小笠原さんも、途中まででも一緒に行きません? 一人よりたくさんのほうが何かといいですよ、きっと。」
小笠原は小林の申し出に目の前の二人を交互に見た。
「一つだけ、質問させてくれ。」
小笠原は一つ息をついた。「もし、撃った奴が目の前に現れたとしたら、・・・お前らどうするつもりだ?」
「俺は、清水を守りますよ。」
小林は頭をかいた。「今まで辛いこともいいことも一緒に乗り越えてきた奴ですから。置いていけないッスよ。」
「分かれ道にて」-3/3-
「・・・俺は、撃った奴と話しますわ。」
清水は小笠原をまっすぐ見た。「何かがあって、きっと撃ったんだと思いますし、もし行き違いだったら誤解を解いておきたいです。」
「・・・会った瞬間撃たれるかもしれないぞ?」
「・・・そんときは、そのときで。本当に俺、こういうときだからこそ、人を疑いたくないんですわ。」
小笠原はしばし考え、笑みを浮かべた。
「そうだな、とりあえず診療所までは一緒に行くよ。」
小笠原の答えに、清水と小林がホッとした様子で互いを見やる。
「じゃ、・・・仲間ですね。よろしく頼みます。」
清水は小笠原に右手を差し出した。
「こちらこそ、頼むよ。」
小笠原もがっちりと握手を返した。
「さて、仲間も増えたことやしファイターズ賛歌でも歌うかぁ〜。」
清水の言葉に、小林はややげんなりした様子で言った。
「歌うのはいいが、小笠原さんに少しは遠慮しろよ? さっきから歌詞しかあってないっぽいからな。」
【A2小笠原,A11清水,A30小林 現在地 E-4】
ちゃんと推敲したつもりが描写に間違いが発生していたので修正を。
誤> 小林はそっと傍らに置いたブローニングに手をかける。「誰? さっきから居るようやけど?」
正> 小林はそっとカバンの上に置いたブローニングに手をかける。「誰? さっきから居るようやけど?」
以上よろしくお願いいたします・・・。
>>623の歌詞、
飛ぶ声 飛ぶ雲 飛ぶボール
じゃありませんでしたっけ?間違ってたらすいません…。
飛ぶ雲 飛ぶ声 飛ぶボールで合ってると思う。
たとえ間違ってたとしても、清水が間違って覚えてると思えばいいんジャマイカ?(他チームなんだし)
それより毎度修正を入れていることの方が気になるんだが、 誤字・脱字ならある程度仕方ないが描写に関しては投下前によくよく見直して欲しいと思う。
推敲したつもりと言われても、あまり推敲してないように見受けられてしまう。
アテネを引っ張ってくれてる職人さんだし、情熱は素晴らしいと思うのにハッキリ言ってもったいない。
629 :
:2005/07/14(木) 16:50:11 ID:GskG+dQ90
足元注意
藤本敦士は、注意深く探知機を覗き込みながら歩いていた。
彼が目指すのは、森の中の一つの赤い点。
藤本がこの機械の電源を入れた時から、ほとんど動かない誰かの所在を示す点だった。
地図と照らし合わせてみると、そこは森の中。
やる気になってるならもうちょい動くはずや。
それに、動かないってことは遠くからでも確認できるかもしれへん。
背後から背番号さえ見ることができれば個人の特定は簡単だ。
人の特定を急ぐか逃げ続けるかの二択を悩んだ末、とりあえず彼が考え出したのが、「安全そうなトコから確認」という折衷案だった。
逃げ続けるにしても、誰が誰だかわかっていた方がいいに決まっている。
移動している点は、自分がたどり着いた時にはいなくなっているかもしれないから×
複数で固まっている点は、先程のように交戦中かもしれないから×
消去法で考え、ほとんど動いていない一つの点をまず確認してみることにした。
本来ならむやみに動き回るのは危険だが、自分は探知機がある限り常に人と一定の距離を保ちながら安全に移動することができる。
それが藤本に行動を決定させた理由のひとつだった。
この時、藤本はやや油断していた。
赤い点が近づいてこない限り、自分は安全だと思い込んでいた。慢心、といってもいい。
もう少しで目標の赤い点という場所まで来た時だった。
「うわあっ! たっ!」
足元に違和感を感じた時にはもう遅い。
藤本は、踏みしめたはずの地面が抜けるのを感じた。
それは落ち葉で覆われる森の道に仕掛けられた、単純で古典的な罠。
藤本は、落とし穴に落ちたのだった。
穴自体はたいして深くはない。深さは藤本の膝のあたりまでしかない。
足をとられて前につんのめりそうになったところを、思わず探知機を放りなげて地面に手をつきなんとか踏ん張る。
なんとか顔面を落ち葉に突っ込むことは回避できた。
バランスを崩して転びそうになった、ただそれだけのこと。
しかし、予想外の出来事というのは人をパニックに陥れる。
藤本は一瞬だけ恐慌状態になっていた。
それゆえに、自分が悲鳴を上げてしまったことに気づかなかった。
――落ち葉の上に投げ出された探知機が、目標にしていた赤い点が近づいてくることを示している。藤本は、それに気づかない。
穴の中にはご丁寧に水が張ってあり、藤本はくるぶしまで泥水につかってしまった。
靴の中に水が浸入してくる感触がとても気持ち悪い。
屋根のない球場を本拠地に持つチームの一員だし、元々セリーグにはドーム球場の方が少ない。
雨天時にはびしょ濡れでプレーすることも慣れているし、試合に集中していれば濡れることなど気にならない。
けれど、やはりこの不快感は嫌いだった。
「なんなんや、最悪や〜」
藤本は慌てて穴から足を抜くと、水びたしのスパイクを脱いだ。
支給されたばかりの真新しいスパイクとソックスは、泥水を吸って水分と細かい砂に侵食された情けない有様になっていた。
せめて替えのソックスはないかと鞄を漁ってみるが、あいにくそんな気のきいたものは用意されていなかった。
――探知機の中の赤い点は、徐々に藤本に迫っている。藤本は、まだ気づかない。
ソックスを両方脱ぎ、鞄の中から見つけたタオルでなんとか靴とソックス水気を取ろうと努力してみる。
新品だけあって、スパイクの方の撥水性はなかなかだった。
タオルで包んでとんとんと叩いただけで、だいぶ水分を追い出せている。
作業の間、彼はずっと落とし穴の側の木に背を預けて座りこんでいた。
すぐ側に、つい先ほどまで熱心に覗き込んでいた探知機が落ちているが、今はそれを確認することを失念している。
――探知機の中の赤い点は、藤本のすぐ側まで来ていた。藤本は、それでもまだ気づかない。
同じ要領でソックスもやってみる。
タオルが靴とソックスの代わりにびしょ濡れになった頃、なんとか水気は取れてきた。
あとは歩きながら乾かそう。
まだ湿っているソックスを履き、左足のスパイクの靴紐を結ぶ。
――その時、藤本を示す25の点と、近づいてきた赤い点がほぼ重なった。
「おい」
ふいに頭上から降り注いだ声に、藤本は顔を上げた。
片膝をつき、片足はソックスという間抜けな格好のままで。
「猿も穴に落ちるってとこだな」
茂みの奥から姿を現し、無表情に藤本を見つめる金子誠の第一声はそれだった。
【藤本・金子 G−2】
職人さん超乙です!
新作ラッシュで嬉しい悲鳴w
「足元注意」まで保管しました。
あとおまけの画像が表示されてなかったのを直しました。
スイマセンでした。orz
※画像を作って下さった方へ
画像のバイト数がうちの鯖の上限超えていたので勝手にバイト数直してしまいました。
ダメだったら言ってください。
>>保管庫様
画像作った者ですが、バイト数の変換ありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
職人様方もファイトです。
>>636 勝手に変換しちゃってすいません!
これからもお願いします。
平日新作ラッシュキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
職人さん方乙です!
保管庫さんも乙です!
画像職人さんも乙です!
だんだん選手達絡んで来ましたねーw
由伸と藤本はどうなってしまうのか…ドキドキ
638 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/15(金) 00:52:02 ID:auECmva60
職人様方、乙です!
一旦保守ageします。
マックどうするんだマック……
由伸なにげに人が良いなw
ロッテ2人組も動いたし、
藤本もどうなることやら・・・
新作ラッシュ乙!
[歪んだ雑草魂]
えーっと砂浜から階段進んで、道なりにずーっと来たら家があって、そこを通り過ぎたところにあった橋を渡って・・・・。
森の中であぐらをかいて上原は記憶を手繰り寄せていた。
ホルダーの中にあった地図とペンを使い、今まで自分が歩いていた道を辿る。
「橋を渡って・・・・で・・・森やから・・・・」
ペンの先がG−6の真ん中あたりで止まった。
俺が今おるんがここか、と上原は確認してホルダーの中に地図とペンを戻す。
そしてふぅと一息付き、ぼんやりと空を眺めた。
銃声が二発聞こえた、とりあえずやる気になってんのが二人居るって考えても良さそうやな。
それと銃が二丁あることは確実や、できればこれからのためにも銃が・・・
これから?と自分の頭の中で再生された単語に思わず口元が歪む。
これからな、と口に出して呟く。
そしてふと宙から視線を外し、右手を見る。
握られた新品の鎌の刃がきらりときらめいて、上原はぞくぞくするような感覚を体の底から感じた。
怖いんか?俺。殺し合いや言われてこんなとこ放り込まれて・・・。
ざぁっと風に吹かれながら上原は自分に問う。
怖い?怖い訳あれへんし。
もう一度空を見上げると灰色の雲が空を覆っているのが見えた。
怖いんやない、楽しみなんや。
優勝してメジャーに行ける事が。
尚且つ邪魔な由伸を消せる事が。
もう一度風が吹き、前髪を揺らす。
しかし上原はそんな事を気にもとめず鎌を目の高さまで持ち上げた。
普通の鎌と何らかわりのないはずのそれはやけに軽く思え、やけに美しく見えた。
殺す。
武器なんか無くてもええ、この体と俺の頭があればいくらだって誰だって殺せる。
俺が進むべき道で邪魔なもん全て殺す。
信頼とかそんなもんどうでもええねん。
殺して、殺して、殺して、優勝して、メジャーに行く。
そんで俺が全日本、いや世界一の投手になったんねん。
殺して、殺して、殺して、殺して、俺は生き残るんや。
松坂やって、城島やって、もちろん由伸やって、みんな俺が殺したんねん。
俺は生き残る、絶対生き残る。
みんな殺して、生き残ったんねん。
生き残って、んで最後に笑うのは俺や。
上原の瞳が一層暗さを増す。
口元は笑いで歪んだまま、右手は鎌を握ったまま、そして自分の欲望の赴くまま、上原は立ち上がった。
とりあえずどこ行こか。
人が多く集まりそうなところがええな、はよみんな殺してこんなゲーム終わらせたいし。
上原はそう考えながら、右手を後ろに回してベルトとズボンの間に柄が挟まるようにして鎌を入れた。
「殺したんねん」
誰だって、殺して。
「最後に笑うんは俺だけでええわ。雑草魂なめんなや。」
そう呟くと上原はさっき通った集落へ向かって歩き始めた。
歪んだ雑草魂が今目覚める。
【上原G−6からG−4に向かって移動開始】
「臆病者と卑怯者」
「皆、何処に行ったんですかね…ここまで来て、誰にも会わないってのも恐いなぁ…。」
石井はA−3とB−3にまたがる集落の中を見回しながら、ゆっくりと先を進む相川の後に続いた。
砂浜からここまで海沿いに用心深く歩いて来たが、人はおろか小動物すら見かけない。
「きっと皆、何処かに隠れて様子見してるんだろうな。命かかってりゃ慎重になるだろうよ。
…入る高校間違えたりしてるお前には慎重なんて言葉、縁が無いだろうけどな…。」
相川は見向きもせずにのん気に返す。ただ、表情は真剣に正面を見据えている。
「や、やめてくださいよ、その言い方。別に、間違えてないし…。」
「嘘付け。本当は浦安の方に入りたかったくせに。」
相川は石井の入部した頃を思い出す。初練習の時、石井は凄い事を言ってのけた。
「大先輩の石井一久さんのような投手を目指して頑張ります!」
あの純粋な少年に、石井一久は姉妹校…浦安の方だぞ、などど誰が言えただろう。
結局あの後誰かが教えてやったみたいだが。頭の片隅に、部員達と爆笑した記憶が残っている。
あの少年も、自分も。もう立派なプロ野球選手。不思議なもんだ。
だが、今は正直それどころじゃない。想い出に浸っている余裕など、無い。
「い、今は東京学館に入って良かったと思ってますよ!?」
「シッ…静かにしろ!」
反論しようとした石井を咄嗟に民家の影へと突き飛ばし、自分も影に隠れた。
何するんですか、と言いたげな石井を横目に、相川は民家の影から少しだけ顔を覗かせる。
「…あれ、村松さんじゃないか?」
相川の言葉に驚いた石井が、地に膝をつけた状態で相川と同じ様に影から顔を覗かせる。
(大男が2人、民家の影からストーカーみたいに顔を覗かせる姿って異様な光景だよな…。)
だが不運な事に、ここには誰もそれに対して突っ込める人間はいなかった。
相川は一つ軽いため息をついて、改めて30M程先に立つ男を見すえる。
背番号23。自分達と異なるリーグの外野手が背を向けて歩いている。こちらには気づいてないようだ。
「今まで何やってたんだろ?…武器は持ってないみたいだし…話かけてみるか?」
「えぇっ?話しかけるんすか?」
意外そうに自分を見上げる石井の言葉が、相川にとっては意外だった。
「話しかけないでどうすんだよ?後ろから襲い掛かれってのか?」
「いや、そんなつもりは…あの、ちょっと…村松さんって、何か近寄りがたくて…。」
ああ、確かに。異なるリーグだし、アテネでもあまり話した記憶が無い。相川は納得した。
内野手ならまだ連携プレー等で話す機会はあっただろうが、外野手。石井が敬遠する理由は分かる。
「けど、そんな事言ってたら、誰にも接触できないぞ。」
相川の言い分も最もだった。この先、誰かに話しかけない事にはどうしようもない。
「でも、話しかけた瞬間に襲い掛かってきたりなんかしたら、どうすんですか?」
石井のマイナス思考――この状況の場合、しょうがないが――に相川は肩をがっくりと落とす。
「お前なー…皆が皆やる気になってるはずがないだろー?」
「そりゃそうですけど…お互い、あんまり知らない人とは行動したくないと思うんすよ。
気心の知れた人ならまだしも、あまり交流の無い人をいきなり信頼しろと言われても俺は無理です。」
「…それは、一理あるな。三浦さんとか宮本さんとかだったら良かったのになぁ。」
2人はまだ無事だろうか?自分達が島に着いてからずっと沈黙が続いている。それが不気味だった。
「…第一、村松さんって僕らに何の接点も無いじゃないですか。顔恐いし…。」
(…顔恐いのは関係ねえだろ…つーか、お前も人の事言えないし…。)
慎重さと偏見が入り混じっていた石井の発言に、相川は呆れて声が出せなかった。
「無愛想だし、無口だし…あれは絶対、人見知りするタイプですよ!」
(…お前もなー…。)
声に出して突っ込んでいる余裕は無い。相川は改めて村松を見やる。距離はもう50M程だろうか?
「向こうだって、そのうち誰か見つけますよ…固執しなくてもいいんじゃないすか?」
「でも、そいつが村松さんを殺さないとは限らないだろ?突然襲撃されるかも知れないし。」
「う…。」
石井は言葉を詰まらせる。そう。他に危ない人間がいるかもしれないのだ。いや、いるのだ。
「…ここで問題。岩瀬さんと村松さん、話しかけるとしたら、どっち?」
相川の質問に石井は顔を俯かせる。岩瀬の船の中での、あの態度。あの人は恐い。危険だ。
合流した時に真っ先に、岩瀬さんとだけは関わりたくない、と言ったのは石井だった。
「何なら、小笠原さんでも良いけど。」
石井がこれ程真剣に悩むとは思わず、助け舟を出してみるが石井の反応は薄い。
「ちょっと…恐そうな人ばっかじゃないすか。宮本さんとか黒田さんとかにしてくださいよ。」
その発言はいかがなものか。お前、実は殆どの人が駄目なんじゃないの?相川は苦笑する。
「…ま、いいか。お前が嫌なら話しかけるのはやめとく…少し離れてこっそりひっそり様子を見よう。
誰かと会った時、村松さんがその人を攻撃するようならすぐに逃げればいいし、
逆に村松さんが襲われても、襲った奴が危険人物だと分かる。武器も分かるかもしれない。
せっかく人を見つけたんだ。ここで見過ごすのは勿体無い…いいアイデアだろ?」
自分で言葉に自分で頷き、自画自賛している相川に、石井が冷めた目線を向ける。
「それ…あの人を囮にするって事ですよね?卑怯だなぁ…。」
(真剣に人を両天秤にかけるお前の方が卑怯だよ…。)
だが他に良い方法が思いつかない。石井も嫌がってはいるものの、反対はしない。
「…誰かと会った時に何事も起きなければ合流しよう。力を合わせて、島を出るんだ。」
その考えは、臆病者の考えかもしれない。卑怯者だと言われるかも知れない。
だが生きる為には臆病になる事も、卑怯になる事も必要。善人ぶって死ぬよりは、ずっとマシだ。
二人は、いつの間にか集落を出ようとしている村松の後を追いかける事にした。
……………気づかれないように、こっそり、ひっそりと。
【A23村松A−3(集落と道路の接点付近)、A59相川&A61石井A−3(集落内)残り22名】
コテ一部付け忘れてますが、以上掲示板からの代理投下でした。
職人様おつかれさまです。
上原マーダー化キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
相川&石井コンビもキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
って上原(((((((゚A゚;;))))))
石井ワロスwww
上原コワス(((;゚Д゚)))
雑草魂コエ━━━━━━(((((((゚A゚;)))))) ━━━━━━ !!
由伸がいろいろ心配です。
アホモンキーも心配です。
金子と藤本ってアテネ絵日記の珍道中コンビですねw
あっちはほのぼのしてたのに、こっちでは…
東京学館漫才コンビにはなんか癒されるw
「疑心暗鬼を生ず」
息が荒い。
今も尚、胸からの流血は止まら気配はない。
「…少し寝かせてくれ」
木村は誰かに伝えるかのように呟いた。
どのくらい歩いただろうか。いつのまにか木の茂るこの場所に辿り着いていた。
近くの勝手のいい木に寄り掛かり息を整える。
自ら傷つけた箇所は相変わらず出血が止まることはない。だんだんと眠気も感じてきてもいる。
その本能に逆らうことなく静かに目を閉じようとした時、木村の目の前を何かが通り過ぎた。
「黒田…!」
その姿は一瞬ではあったが黒田と判断することができた。
すぐに追い掛けようとするが怪我のせいで足が思い通りに動かない。
「…くろだぁーーー!」
思わず自分の残りの力を振り絞り黒田の名前を呼ぶ。
何故わざわざ引き止めようとしたのだろう。その理由は木村自身もわからない。ただ無意識のうちに叫んでいた。
声に気付いたのか黒田の動きが止まり、こちらに向かってくる様子を見せる。
木村もおぼつかない足取りで黒田に近づいていった。
「黒田…」
「き、木村さん…。どうしたんですか…?」
「助、け、て…」
木村はそう呟き黒田の肩に寄り掛かかった。その体は力なく黒田の支えがなけれはすぐに倒れてしまいそうだった。
ようやく誰かと今、出会えることができた。孤独に潰されそうになっていた木村は久しぶりに多くの安堵を感じた。
「その傷は…」
「大丈夫、軽傷だから…」
「そうは見えへんですよ。何があったんですか」
黒田は胸の傷を覗き込む。
そしてそっと木村をその場に座らせ何か傷を癒せるものはないかとバックの中を捜し始めた。
一緒に木村もそのバックに目をやる。
バックの中には大抵は自分と同じ物。
地図、水、食料に
ボウガン。
人を殺すことのできる武器。
(……まさか黒田も!)
木村は怪我人とは思えない素早さで即座に黒田から間合いをとる。
「どうしたんです…?木村さん…?」
黒田も木村の急に見せた俊敏な動きに戸惑いを見せる。
「…お前の…その武器はなんだ…。」
「え…。」
「それで何するつもりだ!」
そう言うと木村は突然、隠し持っていたナイフで黒田に切りかかった。
そのナイフは空を切り、近くの木の皮を削げ落とす。
「黒田ぁ!」
もう一度態勢を整え再びナイフで切りかかる。
しかしナイフを持った木村の腕は黒田の手によって強く掴まれた。
「はなせっ!何をするんだ!」
「やめてください!何でそんなことをするんですか!」
「わかっているだろ!殺し合いなんだぞ!」
「……木村さんまで…。みんなどうしちゃったんですか…」
「くろ…だ……」
気付くと目の前の黒田は泣いていた。
大粒の涙を流し泣いていた。
「殺し合いなんて…やめましょうや…。木村さん…」
「ふ、ふざけるな!この状況で人を信じるなんて…」
「木村さん…」
いつもとはまるで違う黒田の姿に混乱する。
慌てて掴まれていた腕を振り払い、荷物をまとめ泣き崩れる黒田を背中に木村は走り去った。
走り去るも黒田の哀しげな声が頭に残っていた。
【木村・黒田 F-1 木村はF-1から移動】
カプキタ━━丶・ω・>人[・ ε ・]━━━!!!
職人さん乙です。せっかく会えたのに二人して痛々しいよ(つД`。)
かぷロワで人を信じてた拓也を見てるから、こっちの拓也はすごい新鮮だw
拓也黒田を信じてあげてよ拓也…
新作来てたーーー!
職人様乙です!
疑心暗鬼を生ずまで保管しました。
職人さん、いつも乙です!
これからもファイトォ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
新作乙です!
キムタクさん、もももmっもちついてー!
どうなっちゃうんだよ。
黒田さんも心配だ。
[面倒嫌いは森が好き]
星野の放送後、城島は名簿とにらみ合いながら、ボールペンで何かを記入していた。
「とりあえず三浦さんと上原さんと岩瀬さんは『星印』だな・・・・。」
三浦・上原・岩瀬の名前の横に星のマークが記入される。
「松坂と岩隈、それに和田に木村さんあたりは『黒丸』と・・・。」
さらさらと名簿の上をペン先が動く。
「後は・・・そうだな清水さん、和田さん、それから相川、石井あたりも『白丸』にしとくか・・・・」
55の右隣に丸を記入したところでペンが止まった。
それと同時に城島の呟きも止まった。
城島は支給された双眼鏡を使い、島上陸後の各選手の行動を見ていた。
笑って歩き出した者、ふらふらと歩き出していた者、しっかりとした目つきをしていた者、かなり憤慨しているように見えた者・・・・。
まさか見られているとは思わなかったのか、どの選手もかなり行動に差があることに城島は目をつけた。
これも自分の『捕手』としての癖か?と自嘲気味ながらも、しないよりはマシと割り切って考えた城島は、見ることの出来た18人の選手の行動を分析してある一定の法則に従って名簿に印を付けていった。
『危険』『あまり接近しない方がいい』『非戦闘的』をそれぞれ『星印』、『黒丸』、『白丸』に変えて。
記入が終わり、一息ついていると城島は自分のとはまた別の鞄があることに気が付いた。
先ほどの出来事を思い出し、アイツ馬鹿じゃねぇ、と呟きながら鞄の持ち手に手を伸ばし引き寄せる。
中を探ると和田が持っていった支給品の拳銃以外は全て残っているようだった。
ラッキー、と小さな声で呟きながら、城島は和田の鞄の中に入っていた食料や水を自分の鞄に移していった。
鞄の中身を移す作業をしていると、和田の鞄の中に一つ見慣れない小さな箱があった。
取り出して開けてみると、白い紙が入っておりその下には補充用の銃弾がずらりと並んでいる。
箱の側面に書かれている数字通りなら50発分入っているらしい。
城島は箱に入っていた紙を見た。
『ミネベアM60(通称:ニューナンブ)
何とあの警察でも使われている拳銃です!扱いやすくて初心者でもバンバン人殺し出来る当たり武器☆★』
裏返すとどうやらそのニューナンブの使い方や詳細について書いてあるようだ。
いいなーくじ運あって、と溜息を一つ漏らす。
銃弾だけあっても意味ねぇし・・・・・と思いつつ城島は箱の蓋を閉じ、鞄とは反対側に置いた。
鞄の中身を移しきると先ほどの紙の裏に書かれた説明を読み始めた。
そこには撃つ時は撃鉄を下げてから引き金を引くだけでいい事と、銃弾を補充する際はロックを外して左側にシリンダーを出す事が簡単に書いてあった。
そしてその下にはニューナンブの全長や重さ、口径などがこれまた簡単に書いてある。
城島は詳細の部分にあった総弾数を見てある事に気付いた。
総弾数5発?
思わず目を見開く城島。
じゃあアイツ撃てるの4発って事かよ。さっき誰かに当たったから1発無駄にして、セットで支給品だった補充用銃弾は今ここにある。
傍らに置いた箱を見ながら城島は笑いを堪えられなかった。
マジでバカだなぁアイツ、くじ運よくてもこんなんじゃあっという間に死ぬじゃん。
まぁ早く死んでもらったほうが楽でいいけど、と思いながらペットボトルを取り出し水を一口飲んだ。
さてこれからどうするかな。
城島はペットボトルを持ったまま頬杖を付いて考え始めた。
まだ今はみんな動き回ってるだろうから、行動を始めるなら夜の方がいいだろうな。
あんまり人に会うのも殺すのも面倒だと思うし。
ま、銃とか奪えたら後は隠れとくか。
禁止エリアになればその都度場所変えればいいし、誰かに会ったらとりあえず様子見ればいいだけだしな。
とりあえず夜自由に動けるように寝るか。
この場所は和田以外は知らないだろうし、わざわざ島の奥から開始地点まで戻ってくる奴もいないだろう。
アイツも帰ってくる訳ねぇしな、あんだけ混乱してたら。
さっさとそう決めると城島は鞄にペッドボトルを戻し、それを枕にして寝転がった。
ペットボトルやら何やらがゴツゴツしていて痛いが寝れないことは無い。
小さく欠伸をすると眼を閉じて、頭と鞄の間に組んだ両手を入れた。
人殺しなんて面倒くせぇなぁ。
面倒な事嫌いなんだよ、いい加減分かれよ・・・。
最後にそう考えながら、城島は静かに眠りの海に沈んでいった。
【城島 D−2で睡眠中】
新作マタ*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(゚∀゚)゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!
なにこの嬉しい悲鳴
城島寝ちゃうのかよ大物だよ城島
age
「相棒」
高橋由伸は困惑していた。
今、彼は銃を向けられている。
人生で初めての経験だった。たぶん彼に銃を向けている人間の方も、そうだろう。
それを証明するかのように、和田毅は由伸に震える銃口を向けたまま硬直している。
「と、とりあえず、銃を下ろしてくれ、な?」
呼びかけてみるが、和田は血走った目で睨んでくるだけだった。
銃口は、相変わらず頑なに由伸に向けられている。
「和田、頼むよ。俺はお前と争う気なんてないんだ……」
由伸は情けなさそうに言った。事実、自分が情けない。
和田をなだめるどころか、かえって追い詰めてしまったようだ。
ふいに、和田の目が鋭くなった。
「背中に何を隠してるんですか?」
「え…!?」
「武器を持ってるんじゃないですか!?」
さすがピッチャーだな、と由伸は妙なところに感心した。
混乱しているように見えても、しっかり状況を把握している。
「見せてくださいよ! 後ろに何を隠してるのか!」
和田の銃口の震えが止まった。
――撃たれる!?
由伸は反射的に、後手に隠した銃を和田に向けてしまった。
和田の目が大きく見開かれる。
もう、言い訳はきかない。
「やっぱり、銃を持ってたんですね……油断させて、俺を撃つ気だったんだ!」
由伸の予想に反して、和田はすぐに撃ってはこなかった。
ただ、端整な顔を歪めて憎々しげに由伸を糾弾し始める。
「やっぱりそうだ……誰も信用なんかできない! あんたも俺の敵なんじゃないか!」
「違う、和田!」
それは誤解だ。それは被害妄想だ。
しかし、それを言ってどうなるのだろう。和田の怒りに火をつけるだけなのではないか。
撃たれるかもしれないという恐怖に駆られて、和田に銃を向けてしまったのも事実なのだから。
撃つつもりはない。
だが、今更銃を捨てることもできない。
殺したくない。
死にたくない。
どうすれば……?
由伸は絶望的な思いで和田を見つめた。
和田の目も絶望しているように見えた。
なぜ、こんなことになってしまったんだ!?
どちらかが引き金を引けば、撃ち合いが始まるのだろう。
銃を持つというのは、こんなに恐ろしいことなのか。
目と目、銃口と銃口を合わせたまま、二人は無言で見つめ合っていた。
お互いの瞳の中に絶望しかない。
お互いの心の中に不安しかない。
どうすれば……?
その時、静寂を破るように、ガサリと背後で音がした。
「やめろ、由伸! 毅!」
いきなり割って入ってきた大声に、和田の肩がびくっと震える。
二人は銃を構えたまま、声のした方角へ目を向ける。
そこにいたのはアテネ五輪チームのキャプテン、宮本慎也だった。走って来たのか軽く息が上がっている。
「銃なんか出して何やっとん! 殺し合うつもりなんか!?」
怒鳴るように問いかける宮本に、和田がぎょっとするほど鋭い目を向けた。
「宮本さん……そうか、仲間がいたんですね。だから余裕だったんだ……」
「違う!」
由伸が必死に叫ぶ。
「違いませんよ!」
和田は駄々っ子のように叫び返した。その声には既に涙が混じっている。
「俺を笑ってたんでしょう!? 俺が一人だからって、馬鹿にして!」
絶叫してから、いきなり声を落としてブツブツと呟く。
「由伸さんはいいですよね……よそのチームにまで仲のいい人がいて……俺なんか、俺なんか……」
和田の声が何かに押しつぶされたようにかすれる。
「チームメイトで、バッテリーで! 一番信頼する人に、突き放されたのに!」と、続く言葉を声にするこはできなかった。
自分が城島に見捨てられたことを知られたら、ますますみじめになるような気がした。
そして、声にならない叫びは、銃声に形を変えた。
ぱん、と高い音を鳴らして、弾丸は由伸のすぐそばに立つ木の枝を弾いた。
由伸は慌てて手近の大木の裏に身を隠す。
心臓が跳ね上がり、足ががくがくと震えた。
銃で狙われるというのは、こんなに恐ろしいことなのか。
続いて2発、3発と銃声が響き、その内の1発は由伸が隠れる木の幹に突き刺さった。
悲鳴を飲み込んで、なんとか自分も銃を握ろうとする。
手が震えて、うまくいかない。
「落ち着け……落ち着け……俺は次元だ……銃くらい扱える……落ち着け……」
必死に自己暗示を繰り返し、なんとかグリップを握り込んだ。撃鉄を起こす。
しかし、由伸が意を決して木立ちの影から飛び出した時には、既に和田の姿は消えていた。
「あぁ、怖かったぁ……」
銃を握ったまま木の根元にへたりこむ由伸に、宮本が近づいてくる。
「おい、無事か? 怪我してないか?」
「はい……、なんとか大丈夫です」
由伸は半ば放心状態のまま答えた。
「宮本さんは、どうしてここが?」
不思議そうに見上げる由伸に、宮本は呆れたように苦笑いした。
「あほぅ。銃声が聞こえたから、すっとんで来たんや」
感謝せぇよ、と言いつつぺしっ頭をはたく宮本に、由伸は破顔一笑。
実際、宮本が乱入してこなかったら、あのまま和田にやられていたかもしれない。
和田が逃げたのは宮本を由伸の仲間と思い込み、二対一を不利と悟ったからだろう。
「ほんまにボケボケしおって、お前はなー。打席に立つ時みたく、しゃんとせぇよ」
言いながら、鞄をごそごそと探る。
あー久々に走ったら喉かわいたわー、などと野球選手らしからぬことを言いながらペットボトルを取り出す宮本に、由伸はふと疑問を感じた。
宮本は鞄を肩にかけているだけで手ぶらだった。
銃を持って対峙する人間の前に丸腰で飛び込んでくる勇気には脱帽だが、宮本の支給武器はなんだったのだろう。
「宮本さんは、何をもらったんですか?」
「へ?」
「武器ですよ、武器。何も持ってないから」
「あー、それな。お前らと同じ同じ」
そう言って再び鞄を探ると、ラベルも剥がしていない銃を取り出した。
「こんなもん使えへんし、使いたないし、しまっといた」
「……度胸ありますね」
由伸は改めて感服した。
銃を持っていたのに、敢えて丸腰でいたなんて。やはり、この人には敵わない。
「度胸っちゅうか、人殺しなんかでけへんだけなんやけどな」
宮本は少し困ったように笑って、その銃を由伸に差し出した。
「なんなら、お前持っとくか?」
「いえ、自分のありますから。それに、護身用にだけでも持ってた方がいいですよ」
そう言いながらも、差し出された宮本の銃に、由伸の目は釘付けになった。
銃身の先が細く、グリップが異様に大きい。その特徴的な形状は、説明書を読むまでもない。
「ワルサーP38……」
「ん? そういう銃なん? お前、詳しいなー」
感心したように言ってくる宮本に、由伸は今度こそ心の底から微笑んだ。
やった、見つけた。
「あなたが、ルパンだったんですね」
次元は、無事に相棒を見つけたのだった。
【由伸・宮本 D−2、和田毅 D−2からC−2へ移動中】
おっと、コテ忘れ。
ルパン&次元キタワァ*・゜・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜・* !!!!!
って和田残り一発しか無いんじゃないか(((゚Д゚;)))
新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
まさかルパンがキャプテンとは…期待裏切られた感のある新作2本!
ってきり和田がルパンかと思ってた。
職人さんがんがれ!
職人さん乙です!
面白いくなってきた!
和田あぶなっかしいよ和田
ルパンキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
そう来るか!
ジョーさんはやっぱ頭いいなーw
肝もすわってるしw
どっかのヘタレコンビに分けてあげたいくらいだwww
ルパンはキャプか和田のどっちなんだろーと思ってたらキター!!!
コンビ誕生キタ━━(゚∀゚)━━━!!!
職人さん乙です!
予想してなかったけど、主将ピッタリ過ぎw
ジョーの余裕ぶりコワス。
新作マタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
鷹二人の落差がなんともw
関係ないけど由伸出てくるたびにaya食いたくなる絵日記の呪い…
五右衛門役はともかく不二子ちゃん役は誰か割り当てられてたりしないんだろうかw
「なんや…誰もおらへんな。」
G-4地点に入った上原は、不気味なほど静まり返った集落を眺める。
だが、学校の校門前にちらりと見えた人影に、さっと角に身を隠した。
「んだよ、結局無駄足かよ…」
ぶつくさと文句を言いながら出てきたのは松坂であった。
「……」
上原にとって邪魔者の一人である松坂。同じメジャーを志す松坂の出現に、
どろどろとした高揚感が沸き上がる。
(待てよ…てっきりヤル気になっとると思っとったけど…)
松坂の様子は憤慨しているものの、目的の為にゲームに乗ったようではなさそうだ。
それは上原を困惑させる。
(あいつかてメジャーに行きたいんやないのか?)
そのために、誰であろうが殺しまくるという気は無いのか…
自分と同じ目標な筈なのに、その意志は異なる…
それは上原を困惑から薄暗い憎悪へと変貌させた。
(ああそうか、お前もあいつと同じ人種やからな…)
あいつ…高橋由伸と同じ、常に脚光を浴び、惨めな思いを
したこともない、王道を歩んで来た者だ。
だからこの期に及んでも汚れ無き王道を歩もうとするのだ。
(…決まりや。)
この若き獅子を、己の手で血で染め上げる。
来るべき由伸との戦いへのウォーミングアップとしてこいつを…
上原は顔を上げ、切羽詰まった表情を作り、松坂に駆け寄った。
「…!上原さん!」
血相を変え、近寄ってきた上原に、松坂は目を見開く。
「やっと誰かに会えたわ…銃声が聞こえるし、
こんな武器しかないし、もう怖くて死にそうやったわ…」
心底から安堵する表情、差しだす鎌…自分でも見事だと
自画自賛できるほどの名演技である。
「既に簡単にヤル気になった奴がいるんですよね。
ったく、何考えてんだよ。」
何の疑いもなく、松坂は上原に応じる。上原はあえてしんみり
頷くと、松坂を注意深く伺った。
(武器は…ポケットの中か?)
松坂の手には何も無い。だが、ポケットに楕円形の物体が
入っているのが分かる。
「なあ、これも何かの縁や。一緒に行動せえへん?
正直、一人はしんどいんや…」
俺って俳優の才能あるんやな…心中で苦笑しながら上原は言う。
「そうですね…」
仲間は必要だ。だが、何故か知らないが気が引ける。
上原は一人では辛いと頼って来ている。なのに何故か躊躇してしまう。
「一緒に行きましょう。で、一人でも多くの人達にゲームを
潰してやろうと呼びかけましょう。」
だが己の躊躇を振り払うように、松坂は決断の言葉を発する。
「そうやね。こんなゲーム、みんなで潰したろうや。」
それが出来れば苦労ないだろう、と心中で嘲笑いながら
松坂が乗ってきた事に微かに高揚で身を震わせた。
(こいつも所詮、由伸と同じ、温室育ちにすぎんのや。)
雑草ほどしぶとくもなく、綺麗な場所でしか生きられない。
それはこのような荒地で咲き誇る事などできないという意味だ。
(俺の…勝ちやな。)
後は隙を見てこいつで寝首を掻けば良い…上原は静かに光る鎌を
持つ手に見えない程度の力を込めた。
「……」
そんな上原を松坂はまだ躊躇するように、伺うように眺めるのであった。
【上原・松坂 G-4】
乙です!
上原恐いヨ上原
鎌って武器がある意味拳銃より恐いYO!
松坂危うし
職人さん乙です。
上原(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
681 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/17(日) 19:32:07 ID:JME1xYWE0
圧縮怖いので一旦保守アゲ。
職人様乙です!!
上原のキャラって本家のバトロワの光子って感じがする。
両方鎌だし・・・。
今後の展開が楽しみです。
458氏、タイトル抜けてません?
いつも乙かれさまです!
えっと、なんか水をさすようなんですが、
自分ルパンオタなんですが、次元の銃ですがS&Wマグナムよりは、
コンバットマグナムの方が表記としていい気がします・・・
ちょっと気になってしまって・・・すいません・・・
因みに長ったらしく書くと
S&W M19コンバットマグナムです・・・
S&W社でマグナム弾を使用している銃は他にもあるので・・・
すいません、あと今気が付いたのですが
次元の帽子はスコープではなく照準です。
くどくなってしまって申し訳ありません・・・orz
>>684-685 ヒント:ここは野球板
それを気になるのはアニオタ・銃オタの人だけでは?
自分的には超どうでもいいのでこのままでいいと思います。
せめて最初に出てきた時に言えばいいのに、いまさら…。
自分も今更とは思ったんですが・・・
気になるのは私だけですかね、
スルーしてください・・・
自分もそこそこなアニオタだがそこまで気にすることじゃない。
マグナムが次元の銃なのは分かるし、多少のことは気にならない。
「灯台へ」
「…わかりました…僕は、そちら側に協力させていただきます。」
長い沈黙の後に岩瀬が了承すると、星野は満足そうに話を再開する。
「じゃあ、まずは地図を見ろ。A−1にある灯台に武器を入れた箱を隠してある。」
岩瀬は星野に従い、鞄から地図を取り出す。ここからだと灯台は直線距離にして4キロ程。
だが湖と川がある為に実際はもっと歩かなければならない。岩瀬は小さく舌打ちする。
「…随分、遠い所に武器あるんですね。」
上陸直後なら近かった。協力を求めるんならもっと早く言ってほしいものだ。
心の中で毒づく岩瀬の心情を察したかのように、星野が厳しい声で答える。
「こっちも弱い奴に武器を支給したくないからな。文句を言うな。
そこに着くまでに死ぬような奴に、武器を持たせても意味無いやろ?」
なるほど、そういう事か。岩瀬は星野…及び主催者側の意図を理解した。
自分も参加者の一人だ。そう簡単に強力な武器や命の保障を与えられるはずが無い。
これも向こうにとっては余興の一つ…お遊びに過ぎないのだ。
自分は都合の良い手駒。死んだら「しょうがないなぁ」の一言で済まされる、手駒だ。
だが手駒になる事で生き残る可能性が高くなったのは事実。文句を言うつもりはない。
(でも協力求めるんだったら、もう少しまともな武器入れてほしいなぁ…。)
バッグの中に突っ込んだフライパンを呆れたように見やるものの、やはり声にはださない。
言えば無線越しに怒鳴りつけられる。そんな予感がした。
「…武器、僕が行く前に先に誰かにとられたりしませんかね?」
「隠してあると言っただろう。見つかる可能性は低いし、箱には鍵もかけてある。
鍵はお前が持っとる。鞄を開ける時に鍵を使ったろ?それや。」
「…わかりました。ところで…命の保障というのは?」
「こちらがお前の周りに人…もしくは危険が迫っていると判断した時、首輪から音を鳴らす。
数Mも離れていたら聞こえない位小さな音だ。本来、爆発前の警告の為に鳴らすんだが…。」
それだけ?と言おうとする岩瀬の声を遮ぎるように、星野が続ける。
「これ以上の話は灯台についた後や。まずは灯台に行け。早よ行かんと日が暮れるぞ。」
無機質な電子音と共に星野の声が途切れた。もう灯台に着くまでかかってくる事はないだろう。
無線で会話する姿を、万が一にでも他の誰かに見られたりしようものなら…。
それを考えると、自分の方から無線をかける事も極力控えなくてはならない。
(…まさに「一球が命取り」ってやつか…。)
一つの判断、行動が命取りになる。それは、岩瀬が試合の中でいつも経験している事。
岩瀬はフライパンを取り出した後、無線と地図を鞄にしまうと小さなため息をついた。
フライパンだけでは誰かと交戦する事になった際、圧倒的に不利だ。
灯台に着くまで、誰かと遭遇するのは極力避けたい。多少時間がかかったとしても。
幸い、人や危険が迫れば首輪が知らせてくれる。寝首をかかれる可能性は低い。
(さてと、どうするかな…。)
岩瀬は空を見上げる。日はまだ暮れそうにないが、今の季節、日が暮れるのは早い。
星野は早く行けと言ったが、大半の選手が眠りにつくであろう深夜までここで待つのも手だ。
だが。
「追い詰められる立場には、飽きてたんだよね…。」
岩瀬は誰に言うでもなく呟いた。
目指すべきは灯台。そこには、自分の立場を変える武器がある。
「追い詰める立場か…結構、楽しそうだな…。」
岩瀬は薄気味悪い笑みを浮かべつつ、フライパンを片手に鞄を担いで立ち上がった。
【岩瀬 E−6】
以上 掲示板から代理投下でした。
職人様乙かれです。
職人様乙です!
って言うか死神岩瀬様フライパンでやる気ですかΣ(´∀`;)
死神始動(((((((゚A゚;))))))
ほんとマーダー多すぎw
>>683 またやってしまった…orz。タイトルは「荒地の花」でお願いします。
>>684 S&W M19コンバットマグナムは長いのでS&Wマグナムでも
次元の銃と分かるだろうと省略してしまったんですが…
以後気をつけます。
>>695 職人さん乙です!
たぶん銃の名前なんてほとんどの人気にしてないから
(初出からだいぶ経つのに今まで一度もそんな話題出なかったし)
気にしなくていいと思いますよ。
「灯台へ」まで保管しました。
フラの人の方が更新早くて追いつけないw
職人さん&フラの人、いつもありがとうございます。
皆様ファイトォ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
ここ面白いですね!
職人さん方乙です。
自分は公ファソなんで公の2人が気になるけど他のメンバーもどうなるか凄い気になります!
これからまとめサイトでもう一回読んできますノシ
東京学館コンビイイ!
>>699氏
∩
( ⌒) ∩_ _
/,. ノ i .,,E)
./ /" / /"
./ / _∧ / ノ'
/ /*´∀`)/ /
( / good job!
ヽ |
\ \
勝手に保管庫のおまけページにうpしちゃいましたヨー。
いつも本当にありがとうございます。
更新頑張ります!
>>699 画像神キタワァ ・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
超GJです!
画像スクラップ、なんか泣ける・・・
age
>>699 画像ありがとうございます!
さっそく壁紙にしましたw
皆カコイイよ皆
705 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/20(水) 18:15:50 ID:MsKkmw4ZO
>>699 うぅ…ケータイからしか見れないボクは…orz
あぁ!!!
あげちゃってすいません!!!
[1つの差が全てを変える]
「・・・と包帯がいち、にい、さん・・・・6つか。よし。」
和田一浩は落ち葉の上に支給品である医療品セット一式を広げ、それぞれの個数を名簿の裏に几帳面に書き記していた。
最後に包帯の個数を書くと袋の中に戻していく作業に入る。
一番下に固く壊れにくい物を、そして順々に手際良く袋の中に詰めていく。
冬の風に瓶の冷たさが指にしみるが寒いだなんて言っている暇は無い。
こうしている間にも誰かが血を流して倒れているかも知れない、誰かと誰かが争っているかも知れない。
そんな思いが和田を動かしていた。
そうして冬の凍るような風の中、黙々と傷薬や痛み止めを入れていたがはたと手が止まる。
銃声が耳に届いたのだ―――それも立て続けに3発も。
鳥が一斉に羽ばたいていった空を見上げ、この島に上陸してから初めてそれを聴いた和田は小さく舌打ちをすると急いで残りの医療品を袋
の中に詰めていく。
もしかしたら今の銃撃で誰かが怪我をしているかも知れない、もしかしたら・・・・。
頭を掠める悲劇を振って無くそうとするが、中々消えずに残る。
最後に消毒液を乱雑に入れ袋の口を閉じると、和田は立ち上がって袋を担いだ。
そして砲声の響いたであろう場所へ向かって一心不乱に走り始めた。
みんな、無事でいてくれ、殺し合いなんてしたって意味は無い!
心の中でそう叫びながら、落ち葉が大きくにごった音を立てて割れていく中を走った。
ユニフォームのポケットから滑り落ちた『ハートの6』のカードの存在に気付くこともなく。
福留孝介はその頃山の麓で不思議そうに空を見上げた後、少し唇を歪めた。
これで銃声は5発、相当みんなやる気みたいだ。
やる気のある人が多いと俺としても助かる。日本シリーズの打席に立つチャンスが増えるのだから。
大樹の根元に座ったまま、左手に持った自分の選んだカードを眺める。
これが俺の運命、と福留は独り言を呟いた。
運命か。
自分が呟いた言葉に福留はこのゲームへの招待状を受け取ったときの事を思い出す。
あの時はまさかこんな事になるなんて思いもしなかったな。まぁ思える訳ないか。
五輪会という文字を読んだ時に運命のスイッチは『現実』から『非現実』へと動いた。
そしてそれにより簡単にあっけなく、『普通』が『異常』へと姿を変えていたのを見過ごしていただけかも知れない。
「異常、か。」
俺は異常なんだろうか。福留は心の中でひとりごちた。
『普通』の道徳で考えれば俺は人が死ぬのを求めている、だから異常だ。
でもどうだ?今この場所においての普通は『異常』なんだ。
マイナス掛けるマイナスがプラスになるように、俺の求めているものはここでは『普通』になる。
さっきの自分への問いかけに福留は答えた。
「俺はいたって『正常』だ。」
この『普通』の世界でのルールを守るんだから、俺は『正常』だ。
自分に言い聞かせるように2、3度呟き、右手に持った刺身包丁を見る。
静かに、だが熱く右手の中のそれは何かを待っているように感じられた。
もう一度空を見上げ、今度は左手に持ったそれを光に透かそうと思うが太陽が出ておらず諦めた。
福留は小さく溜息を吐いて、目を閉じた。
光に透かそうとしたそれ――『ハートの7』のカード――が福留の運命のスイッチを更に動かしていたことは誰も知らない。
もちろん、福留自身でさえも。
【和田一 E−6からG−5の大橋目指して移動中
福留 C−6】
「静寂へ」
聞こえるのは波の音だけ。岩隈は暫し呆然と立ち尽くしたままであった。
「静かだな…」
驚くほど静かな世界。それは狂乱を冷ますか、さらなる狂乱に陥るか。
岩隈は能面のような表情で歩き出す。
走り去った黒田はどこへ行ったのだろう。みんなどこへ居るのだろう。
「どうしようかな。どこへ行こうかな…」
とりあえず鞄の中は他に何があるのか。もしかしたらドッキリ大成功!なんて
紙が入っているかもしれない。表情一つ変えずに岩隈は鞄を開く。
「……」
出てきたのは希望ではなく絶望であった。不気味に光る重く堅い
死神のような色合いの銃は、この殺し合いとなる状況の現れだった。
「は…ははは…」
力無く笑いだした岩隈は、やがてケタケタとヒステリックな笑い声になる。
「はははっ…何だよ、これ!」
ラベルには読解不可能なアラビアっぽい文字が書き連ねられており、
かろうじて読めるのはウージーという文字だけであった。
「よりによってこんな…は、ははは…」
やがて、発作が治まるかのように、ピタリと能面のような表情に戻ると、
一目散に走り出した。何処へ行こうとか何か目的があるわけでもなく
ただ走る。とにかく何かをしていたかったからだ。
「…!」
だが、先に見えた人物に、思わず足を止め引き返しそうになってしまう。
「…岩隈。」
それは谷であり、逃げようにも向こうも岩隈に気がつき、間に微妙な空気が流れた。
「……」
一番会いたくなかった選手かもしれない。狂乱で暴走しかけた頭が一気に冷える。
(谷さんは僕を…自分勝手で利己主義と思ってるだろうな…)
新球団移転時に最後まで訴え続けた谷は、自分を心中ではどう思っているか…
今は僅かなわだかまりでさえ恐ろしい。岩隈は怯えるように谷を見る。
「…お前は何をしているんだ?」
ゆっくりと谷は尋ねる。岩隈に対して今更どうこう思う事は無い…と思っていた。
(何をしているんだ、お前は?また…自分の事に必死なのか?)
どうやら自分で思ってた以上に、この岩隈に対して色々と蟠りがあったようだ。
「俺は…このゲームを壊す。何が何でも壊してやる…お前は?」
「僕は…僕も…」
ゲームを壊さない事にはどうしようもない。だが、その勇気がない。
(でも…谷さんは一人でも壊そうと決意している…)
本当に責任感がある、強い選手である。そんな彼とならば…
だが、一度手を振り払っておいて、どの面下げて一緒に行こうなどと言えるか。
(こいつは自分が生き残るために…俺の手を振り払って新球団に行った。)
いつまでもネチネチと責める自分が嫌になるが、堪えていた蟠りが今になって
どうしようもなくあふれ出すのを止められなかった。
「僕も?僕もどうする気だ?」
言ってはいけない。分かっているが止められない。
「あの時と同じ…自分の身最優先で俺の手を振り払うか?」
冷たい谷の言葉に、岩隈の表情はみるみると強張り、悲痛に苦しげに揺らぐ。
「僕もどうする気だ?あの時と同じ、生き残るためにそいつを…ぶっ放すか?」
「…!」
岩隈の表情は悲痛なものから再び…どうしようもないものへの狂乱へと変わる。
「い、岩隈…俺は…」
言ってはならぬことを言ってしまった。激しく後悔し、谷は岩隈に手を伸ばす。
「う、うわあああっ…」
だが岩隈の瞳は先ほど以上の狂乱のもの…歪み何も映らない濁ったものへと変わり、
谷を勢い良く突き飛ばすと、悲痛の雄叫びとともに逃げ去った。
「岩隈!待てっ!悪かったっ…」
谷は縋るように叫ぶが、立ち上がる間に岩隈はあっという間に遠くへ逃げ去ってしまった。
「…岩隈、ごめん…俺は…」
こんなにも恨みがましい、愚かな男だったのか。
やってしまった事に打ちのめされるように、谷はその場に立ち尽くすのであった。
【谷 H-3】
「逃げないと…逃げないと…みんな僕を…裏切り者だって…」
ぶつぶつと呟きながら岩隈はただ走り続ける。
「みんな僕を疑うんだ…自分勝手な奴だって…」
谷のように、みんな自分を疑っているに違いない。
新球団に移籍したように、自分の身のために全てを振り払うかのように
生き残るために全てを犠牲にすると疑うに違いない。
「これは夢だ…そうだ、夢だ…こんな酷い現実なんかあるわけない…」
だから逃げる。仲間の疑いの視線からも、仲間に怯える気持からも。
銃を捨てる勇気も、発砲する勇気もない。できるのは逃げる事だけ。
誰もいない静寂へ。湖でも山でもどこでもいい。
「いつか…目が覚めるはずだ。目が覚めたらまどかと羽音がいて…
いつものようにまどかが御飯作ってくれて、僕は羽音と遊んで…」
だから目が覚める時まで、逃げないといけない。
「もしずっと…ずっと目が覚めないなら…」
そのときはこいつを使って目を覚ます事にしよう。
岩隈はウージーを虚ろな目で眺める。
どうしても、このままずっと目を覚まさないままだというなら…
こいつを頭に撃ち込めばきっと目が覚めて、最愛の妻と娘に会えるはずだ。
どこまでが狂乱で、どこまでが正常なのか。
今の岩隈には分からず、分かる必要もなかった。
「これは…夢だから…」
嫌な悪夢が去るまで、誰もいない場所で待とう。
悪夢の一部であるウージーを鞄の一番底にしまい込み、
ふらつく足取りで岩隈は進む。誰もいない静寂へと。
【岩隈 H-3からC-5に向けて移動中】
職人様乙です!
って言うかクマ怖いよクマ(((((((゚Д゚;))))))
「死体を見下ろす時」-1/2-
校舎からさほど離れていないとある二階建ての家の中に、三浦大輔は入り込んでいた。
唯一施錠されていなかった風呂場の小さな窓から侵入したのだ。
三浦は台所の流し台で果物ナイフを見つけると、それを持って二階へつながる階段へとゆっくりと歩く。
普通なら、外から狙われていることが分かればこの場所を捨てるはず。
少なくとも窓か裏口か、外に出たところの鍵は開いているはずだから・・・。
俺が撃った弾は命中していて、安藤・・・は動けずにいるはずだ。
息があったとしても潰してしまえばいいこと。
二階へ上がった三浦は、斃れピクリとも動かない安藤優也を見つけてニタリと笑った。
伏せた安藤の体からはどす黒く色が変わった血が畳を染めている。
三浦は安藤の体を無理やり起こした。安藤の胸の辺りからどす黒い大きなシミがユニフォームを染めている。
三浦は、冷たくなった首筋で脈をとり、息もないことを確認したところで一つ息をついた。
なんだ、案外簡単に死ぬんだな、人間って・・・、弱い。
この分なら、他の連中もサクサク殺れそうだ。
さっさとこんなゲームを終わらせて、この島から出なきゃいけないからな。
今年は日本一になる、って決めたんだ。
こんなところで死ぬわけにはいかない。
三浦は一階へ降り、居間に放置された、いまや主のないカバンを見た。
カバンにはまだ、鍵がかかったままだ。三浦はカバンを文化包丁で切り裂いた。
カバンの中に入っているペットボトルや食料、タオル等をを自分が持つカバンに移し変える。
「・・・ん? なんだこれ? まい・・・おとろん?」
カバンの中から、ビニール袋に入った丸みを帯びた黒い物体と説明書が出てきた。
ビニール袋には、『マイオトロンSSモデル 最新型FBI御用達の超高性能スタンガン。これであなたの身も安全に!』と書かれたラベルが貼ってある。
パッと見変わった形の電動シェーバーとも取れるそのものは、見てくれとはうらはらにかなり物騒なものだった。
「死体を見下ろす時」-2/2-
※マイオトロンは相手の脳に直接働きかけ、運動神経を一時的に麻痺させるFBI使用の本格的な護身用品です。
随意筋と呼ばれる組織に高周波パルスが直接働きかけ脳波を瞬時にジャミングさせる為、相手は意識があっても立ち上がることさえできなくなります。
セーフティロック付き、通常時に誤って放電する心配はありません。使用する際は相手に奪われないよう必ずストラップを通してご使用ください。
なお、フル充電してあるので約500回の使用が可能です。
うわ、こんなものつきつけられたらイチコロじゃないか。
とりあえず俺が・・・俺と、相川が生き残るために有意義に使ってやるから安心しな。
三浦は黒い物体をジャンパーのポケットに入れると、狙撃銃に弾を5発装てんした。
そのほか、缶詰と缶きり、果物ナイフをカバンに放り込む。
外へ出よう、と裏口をそっと開けた所で誰かの話し声が聞こえた。
「…これも何かの縁や。一緒に行動せえへん? 正直、一人はしんどいんや…」
「そうですね… 一緒に行きましょう。で、一人でも多くの人達にゲームを潰してやろうと呼びかけましょう。」
「…そうやね。こんなゲーム、みんなで潰したろうや。」
二人の話し声。たぶん、西武のエースと、巨人のエース。パリーグのエース松坂と、セリーグのエース上原が一緒にいる。
アテネのとき、日本のエースとして並び称された二人。 あの二人、そうとう辛かったろうな。・・・関係ないが。
三浦はやや重くなったカバンと狙撃銃を手に二階建ての家をそっと出て、隠れるように隣の家の塀の影に入った。
とりあえず、あの二人のうち一人を潰しておくのもいいか・・・。
三浦は二人のうちどちらかを狙うことに決め、二人がどこへ向かうか全神経を集中させて伺っている。
【三浦大輔 現在地G-4】
新作大量投下キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
隈の精神状態が気になる。
谷!谷がトラウマを!!
三浦、相川は殺す気がないのか?!
ドメはまだ迷ってるのかー?!
もう、新作がくる度にワクテカです。
職人さん頑張ってください!
87.死体を見下ろす時まで保管完了しました。
職人さんファイトォ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
718 :
代打名無し@実況は実況板で:2005/07/22(金) 01:27:17 ID:GPOcQVCz0
クマ…(((((((゚Д゚;))))))
下がりすぎage
福留も静かにコワイな
「道程遠く」
決して上手くはない鼻歌まじりで岩瀬は地図を上に下にしながら歩いている。
順調な道程のように見えたが内心は焦っていた。
(…ここはどこだ…?)
どこを見ても木ばかりで目印になるものが何一つない。岩瀬は完全に道に迷っていた。
日が落ちる前に灯台へとなるべく進もうと思っていたのだがこのままでは思い通りの時間配分では進めないだろう。
山を通るルートは失敗だった、と岩瀬は自分で自分を責めるが、今更のことだ。
無線で自分の位置を知らせてもらうことも考えてはみたが自分の行動が誰かにバレる恐れ、それに無駄な無線の使用はきっとあの恐い声で叱られる…それだけは避けたい。
結局、正確な道がわかることはなく岩瀬はただ前へ前へと進んでいた。
「な、なんかここ、さっき通ったような…。方角はあってるよな、たぶん…」
自信のない独り言を呟いた時、岩瀬の首輪から岩瀬にしか聞こえない小さな電子音が数秒発せられた。
(誰かいる!?)
首輪からの電子音は敵の存在を知らせる合図。よく目をこらし周りを見回してみるとそこまで遠い位置にはいないだろう、薄らと見える一人の影。
(誰だろう…。一人かな…?)
ただでさえ迷っているのに回り道はしたくない、そう判断した岩瀬は気配を悟られぬようその人影の後ろを通り過ぎようとする。
慎重に一歩、また一歩…。
ガサリ。
(…しまった…。)
慎重にいっていたつもりだったが岩瀬はつい物音を立ててしまった。
音のせいか相手もこちらの存在に気付いたようでゆっくりと向かってくる様子を見せている。
(こうなったら!)
覚悟を決めると、岩瀬は急いでフライパンを取り出して自ら相手に近づき思いっきり殴り付けた。
「ギャッ!?」
フライパンは顔面に直撃したようで相手は軽い悲鳴をあげ、しりもちをついている。
「ご…、ごめんなさいー!」
相手の隙を得た岩瀬はなぜか大声で謝りながら先の道へと逃げるように進んでいった。
不意をつかれ、岩瀬のフライパンによって殴られた顔面を抑えながら福留はむくりと立ち上がる。
「すげー痛ぇ…。あれはもしかして岩瀬さんの声か…?」
急いで後を追おうとしたが既に岩瀬の姿は見えなくなっていた。
深追いは自分も危険に陥る可能性もあるかもしれない、福留はそれ以上岩瀬を追うことはなかった。
そして福留はまた獲物を待つ態勢に入る。
逃がした獲物の大きさに気付くことはなく。
【現在地 岩瀬B-6、福留C-6】
88.道程遠くまで保管しました。
フライパンを投げつけておいてのごめんなさいにワロスw
職人さんがんがれ〜!
保管庫さん乙です〜
「シマウマ」
金子誠は、しばらく表情の無い顔で藤本敦士を見下ろしていた。
硬直する藤本の背中に、冷たい汗が伝う。
しかし、まだ運命は彼を見離してはいなかった。
「命拾いしたな、藤本」
金子はニヤリと笑った。
「俺がやる気になってたら、お前、今頃死体だぞ?」
金子の言葉に、藤本は思いっきり安堵の息をつく。
「あ〜、びっくりした。脅かさんといてくださいよ。落とし穴、金子さんが掘ったんですか?」
「ああ。本当に落ちる奴がいるとは思わなかったけどな」
「う」
確かに、落とし穴に落ちるなんてイイ年して恥ずかしすぎる。
「とりあえず、靴履けば?」
笑いをこらえきれないというようにニヤニヤしだす金子に、藤本はバツの悪い思いで慌ててスパイクを履いた。
「ほんと、悪かったな」
藤本が身支度を整えると、金子は手を差し出しながら軽く謝った。
「いえ。もういいです。忘れてください」
本当に早く忘れて欲しい。
「金子さんは、このゲーム乗ってないんですよね……?」
藤本が念を押すように聞いた。
金子がゲームに乗っていたのなら、隙だらけだった藤本がタダで済むはずはないのだが。
「当たり前だろう。俺は草食動物だから、殺し合いとかは無理」
金子は真面目な顔で妙なことをあっさりと言う。
「俺って動物に例えると、シマウマとかだと思うんだよなー」
言ってから、まじまじと藤本の顔を見つめる。
「お前は、……」
「わかってますよ、猿やっていうんでしょ」
藤本は、金子の言葉を遮って言った。
普段からサルやらモンキーやら言われ慣れている藤本である。
「いや、そうじゃなくて。お前はこのゲームには乗ってないんだよな?」
「乗るわけないやないですか!」
「だよなー。乗ってたらもっと慎重に行動するよな。落とし穴なんか落ちるわけないもんな」
もしかしたら俺、バカにされとる?
藤本はそう思い始めたが、金子はにこっと笑ったみせた。
「マトモな奴に会えてよかったよ。1人じゃ心細くてさ」
その笑顔に安心して、藤本も笑った。
「俺もです。超ビビってました。でも、金子さんは余裕やないですか。落とし穴なんか掘っちゃって」
余裕がないから罠を作ったんだよ。俺は、臆病だから。
お前みたいな単純な奴にはわからないだろうけど。
しかし、金子は思っていることと全然別のことを口にした。
藤本が持つ黒い機械を覗き込む。
「これがお前の支給品?」
「あ、はい。探知機なんです。人のいる場所がわかるんです」
「へえー、いいなー」
金子は羨ましそうに言って、自分の支給品を見せた。
「お前、ラッキーだな。俺なんかコレだよ」
それは30センチに満たない鉄製の小さなシャベル。
一応、先は鋭く尖っているものの、武器というにはまったく心もとない。かなりのハズレ品だろう。
「それで、穴掘ったんですか?」
藤本はやや呆れたように言った。
やる気のなさそうな顔をして、意外とすごい根性だな、と思う。
「まーな、他にやることもなかったし。とりあえず正規の使い方をしてみたんだが、けっこう使いやすかったな」
特許出願中だそうだ、と金子は妙な自慢をした。
なんやそら、と藤本は思ったが、自分がまんまとその有効性を証明してしまったのでツッコミはやめておいた。
最初は金子を警戒していた藤本だが、くだらないことを話すうちに徐々に人と一緒にいることが心強く思えてくる。
いきなり人が撃たれるところを目撃し、一人で不安と向き合っていたのだ。
人懐こい性格の藤本にしてみれば、人に会えて会話を交わせたことも単純に嬉しい。
金子がロクな武器を持ってないことが、更に警戒心を解かせる。
そうして藤本は、金子と一緒に行動することを決めた。
「穴に落とされたんはアレやけど、金子さんに会えてよかったです。まともな人に会えて。
皆やる気になっとったら、どうしようかて思うてて……。俺、ぶっちゃけかなりヘタレとったんで」
金子の隠れ家があるという場所へ案内されながら、藤本は改めて言った。
「そうだな。俺も怖かったよ。一人でいるとヤなことばかり考えちゃってさ。俺も、お前に会えてよかったよ」
金子は真摯な目でそう言った。
本当に、お前に会えてよかったよ。
そんな便利なもんをわざわざ持ってきてくれるなんて、な。
あとは、せいぜい俺の盾にでもなってくれよ?
金子にあるのは依然「死にたくない」という気持ちだけだった。
生き延びるためには何でも利用し、どんなことでもする。
自分には獲物を切り裂く鋭い牙も、それに耐えうる強い皮膚も、反撃する大きな角も何もない。
できるのはただ考えることと欺くことだけだ。
サバンナの草むらに保護色で身を隠し、弱くとも狡猾に生き延びるシマウマのように。
【藤本・金子 G−2】
職人様GJです!
って金子したたかだよ金子(((((((゚Д゚;))))))
職人様キター!!!!!
凄い金子らしくてワクワクしてきましたよ!
シマウマコワス
新作まだまだキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
職人さん方乙です!
迷子の死神カワイスw
マーダーどうしの邂逅なのになんかほのぼのw
金子おそろしいよ金子・・・
「黒田の決意」
木村が走り去った後も、黒田はしばらくその場に座り込んでいた。
まさか木村に襲われるとは思っていなかった。
自分が一番気にかけていた同じチームの仲間に、拒絶され、攻撃された。
ただ、「人を殺せる武器」を持っていただけで。木村は自分を殺そうとした。
ただ、人を殺せる武器を持っていた「だけ」で。あの人は仲間を殺そうとした。
黒田を覆う絶望は、もはや木村を追いかける気力さえ奪っていた。
ただじっと、手に持ったボウガンを覇気の無い目で見つめる。
この武器が襲った原因か?別の物なら襲ってこなかっただろうか?
何故、もっと冷静に話し合えなかった?
怪我をしていた。怪我は大丈夫だろうか?
自分は、人を殺すような人間だと思われていたのか?
様々な疑問や不安が、黒田の頭の中で激しく渦巻く。
もし、この武器を差し出していたら、信じて貰えただろうか?
それとも、この武器で自分を殺しただろうか?
それ以前に、そうしなければ信頼できないような間柄だっただろうか?
この状況は固い友情も信頼も、全て打ち崩してしまう物なのだろうか?
ボウガンに大粒の水滴が一滴、二滴と落ちていく。
黒田は、自分が改めて泣いている事に気づいた。
(……こんなに泣いたんは、あの日以来やな…。)
完封目前の9回。3点取られてベンチで情けなくも泣いてしまったあの日。
その姿を全国に晒している事を理解していても尚、涙は止まらなかった。
悔しかった。自分が情けなくてたまらなかった。消えてしまいたった。
あの時の涙を悔し涙とするなら、今流している涙は何と表せばいいのだろう。
タオルも無い、TVカメラも無い。明らかにあの時とは、違う涙。
いっそ泣き尽くしてしまおうか。そうすればきっと、スッキリする。
ボウガンを手に持ったまま顔を上げると、ボンヤリと鞄を見やる。
(…アテネか…アテネで泣かんで良かったなぁ…って、何考えとんやろ、俺…。)
その鞄は、黒田達が世界に挑んだ証。それがその鞄の、本来の意味。
黒田と木村は、広島東洋カープの代表としてこの鞄を与えられたのだ。
(…こんな情けない奴がチームの代表やったら、そりゃチームも優勝できんわな…。)
黒田は苦笑する。自分に対して。木村に対して。ここ十数年優勝していないチームに対して。
(……チームの代表なら、最後の最後まで堂々としとらんと、チームに失礼やな…。)
袖で涙を拭い、これ以上涙が零れない様に空を見上げた。顔に吹き付ける潮風が、冷たい。
黒田は大きく息を吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。
己の信念を曲げずに。何があっても動じずに。最高の死に場所を見つけるまでは。誇りを持って。
落ち込んでいる暇はない。木村も岩隈も生きようと皆必死なのだ。それを責めるつもりは無い。
(でも俺は、醜い生き様を晒す位なら、格好良い死に様を求める。)
それは、男として。夫として。父親として。全てにおいての誇り。
そして、岩隈に何をしたいかを問われ、空を見上げた時から決意していた事。
「…俺は勝手に死ぬから、お前ら勝手に生きとけや。」
黒田は鞄を持って立ち上がり、理想の死に場所に向かって走りだす。もう、涙は止まっていた。
【黒田 F−2(H−4を目指している)】
投下完了しました。
2氏さん乙です。
代理投下乙です!
また新作キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
って工エェェ(´д`)ェェエエ工!
黒田死ぬ気なのかよ?!
新作キテタワァ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!!
職人様GJです!三日連続で6作凄過ぎです!
って黒田勝手に死ぬからって何だよ!?
新作またまたキタ━━(゚∀゚)━━━!!!!!
とことんカプの二人がセツナス。黒田!くろーだ!
うわぁぁん!・゚・(ノД`)・゚・
職人様方、乙です!
黒田どうなるの黒田
90.黒田の決意まで保管しました。
マックが恐い…((((((;゚Д゚))))))ガクガクブルブル
黒田死んじゃうつもりかよー!。・゚・(ノД`)・゚・。
保管しつつも楽しませてもらってます!
職人さんファイトォ.*・゜゚・*:.。..。.:*・゜(n‘∀‘)η゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*!!!!
保管庫様、職人様いつも乙です!
なんだかすごくワクテカです。
皆様がんがって下さい!!
「微かな希望」
和田は森を走る。由伸に向けて混乱していたとはいえ
いとも簡単に何発も発砲した自分に対して逃げるように。
仲間のいる由伸と違い、最も信頼する者に見捨てられた自分。
「…自分のケリを自分でちゃんとつける事ができたら…」
もしかしたら城島は考え直してくれるかもしれない。
仲間として再び受け入れてもらえるかもしれない…
それは極めて可能性の低い、微かな希望。
(でも、でも…だからって由伸さんを殺すなんて…)
あの時は怒りと混乱のために、考え無しに発砲してしまったが
やはり誰かを殺すなど…和田は足を止める。
どんな手を使っても城島に受け入れてもらいたい、
だけど誰かを犠牲にできない。そんな葛藤で苦しげに眉をひそめた時である。
「だから次元の帽子は4歳のオスアザラシの腹の皮という決まりなんですよ。」
「んなこと知るかいな。お前、変やで?」
先ほど走った地点とまったく同じルートを歩いて来たのは…由伸と宮本であった。
「不二子のスリーサイズ並にこんなの常識ですよ。」
「え?いくつなんや??」
「…なんでそこだけ食いつくんですか。」
先ほどの事などなかったかのように、十年来の相棒さながら、こんな場でも
他愛の無い会話で盛り上がる2人の姿に、和田の憎悪の念が再び蘇る。
(相棒との会話はさぞ楽しいんでしょうね…)
木陰に隠れながら、和田は瞳をぎらつかせる。
(ああそうだ…こいつらを仕留めれば…城島さんは…)
自分を見直してくれるかもしれない。ならばこいつらを仕留めればいい。
嫉妬、羨望、憎悪に流されるように、和田は銃を構える。対象は決まってた。
自分が清水を狙撃したことを知っている由伸、大事な者に突き放された
自分とは大違いの由伸…狙うは彼だ。
「…和田は…どこ行ったんでしょう。」
瞳を曇らせ、ぼそりとつぶやく由伸に、和田は思わず手を止める。
「気になるんか?お前に発砲しまくったのに。」
「そりゃあね…たしなめるつもりが結果ああですから…」
由伸の言葉に和田は再度逆上する。
(余裕のお言葉ってわけですか…)
もう迷う必要もない。和田はゆっくり引き金に指をかける。
「あいつは…仲間を殺すなんて、そんなことできる奴じゃないんです。」
指に力を込めた瞬間に聞こえた由伸の言葉。そんなことできる奴じゃない…
その言葉に激しい動揺を感じたせいか、引き金を引く指が揺れ動く。
パンッ…
乾いた銃声音。最後の弾丸は宮本をぎりぎりかわし、後の木に埋め込まれた。
「!なっ…」
指が揺れ動いたせいか、狙いは大きく外れた。
「お、お前、影から狙ったのか…」
硝煙の臭いが強い方向の茂みで呆然と銃を構えたままの和田を発見するなり、
由伸は信じられないと目を見開く。
違う。言いかけた和田は言葉を飲み込む。
違う?狙ったのは宮本さんじゃなくて、あんただと言えというのか?
和田は虚ろな視線を由伸に送ると、弾丸が空となった銃を向け直す。
「くそっ!くそっ…」
和田はもはや混乱のみに支配されるように、何度も引き金を引くが、
カチカチと音が鳴るだけである。そこで始めて弾倉が空なのに気がつくと、
さっと青ざめ、由伸を見ると…
「う、うわあああっ!」
和田は聞き取りにくい奇声をあげると、まるで子供そのものに
手を振り回しながら由伸を押しのけ、一目散にその場から逃げ去った。
「あいつ本当に…」
和田を呆然と見送ると、由伸はどうしても信じたくないと俯く。
「…冷静に狙い撃ち考えた奴の行動とも思えんけど…
影から俺らに自分の意志で発砲したのは事実や。」
残酷なまでに正直な宮本も感想に、由伸はさらにうなだれる。
「せやけどそれでも信じるというなら…とことん信じればええよ。
危ない目に合うたから、疑り深くなることが一概に正しいと言えんやろ。」
「宮本さん…」
宮本は本当にどんな状況でも冷静さと、度量の大きさを兼ね備えている。
由伸は感嘆するようにつぶやいた。
「で、どうしたいんや?ここはお前にまかせるわ。」
「…あいつをさらに追いつめたのは俺だから…」
「やってもうた事の責任をとりたいわけやな。お前らしくてええんやないの?」
あくまで悠長に笑う宮本に、由伸も元気付けられるように笑い返す。
「とはいえ…どうしようかまでは考えてないんですけどね。」
ただ混乱を抑え、誤解をとき、お前は悪くないと分からせたいだけだった。
「随分と長くこの森に居る気がすんなぁ…」
由伸と宮本は疲れたようにため息をつくのであった。
【由伸・宮本C-2 和田 D-2へ移動】
742 :
2氏代理:2005/07/24(日) 14:38:51 ID:jMjy13jw0
[ジグソーパズルを組み立てる]
「ちょっと今日は・・・・うん・・ゴメン・・・・ちょっと積もる話があってさ・・・・酒も・・・うん・・ゴメンね、11時ぐらいには帰るから・・・それじゃあ・・・」
渡辺は携帯電話の終話ボタンを押した後、再び目の前のノートパソコンの液晶画面を見た。
暗がりの中で光を放つそれには『Port of Yokohama Entry Schedule』の文字が浮かんでいる。
「やっぱり・・・・って言っていいべきかどうか分かんないけどな・・・・・」
マウスから手を離し両手を握り、それを顎の下に持ってくると渡辺は軽く目を伏せた。
ここに書かれていなければおかしい『Diamond Princess Sea』の文字がどこにも無い。
検索機能も使った、目を皿のようにしても探した。
しかしどこにもないのだ、全ての船の出港が書いてあるはずであるこのページに。
小さく息を吐き渡辺はポケットの中を探って2枚のコピー用紙を取り出した。
そしてそのうちの一枚を広げると、そこには『2004年五輪会のご案内』と印刷してあるのが読める。
その中には確かに『あの船』の名前もあった。
溜息をつき、もう一枚の紙を広げる。
『強制参加』『重大な罰則』との文字が踊るそれは渡辺の疑問の輪郭をさらに鮮明にさせているようだった。
「スケジュールに無い寄航・・・・な訳ないな・・・」
とんとんと画面を右手の人差し指で叩きながら、自分で呟いた言葉に自分で否定した。
このページは確かリアルタイム更新と書いてあった、つい数時間前に出港した船の事が書いていない訳無い。
顔をしかめ、頬杖をついて渡辺は静かに思考を巡らせる。
確かに『あの船』はあそこにあった、それは確かなこと。
でもその存在を公的に示すものは無い。
まるで、『あの船』があそこにあった事を隠すかのように。
それに一競技限定の五輪会なんて今まで無かった。
その上強制参加と重大な罰則が加わるとなると・・・・・。
絶対に何かおかしい。
窓の外には夜の帳の落ちた横浜港が見える部屋で、渡辺はあの時のように天井を仰ぎ目を閉じた。
「あ、野田さんお久し振りです。」
「久し振り。」
「どうもです。」
読売新聞本社近くの漫画喫茶に石川、阿部、野田の三人は居た。
阿部から野田にメールが入り、それまで落ち合う場所にしていた本屋からここへ場所を変えたのだった。
「あーもうこんな時間か。俺もう疲れた。」
「なーに言ってんすか、シーズン中は今から試合でしょ。」
適当に返事をしながら後ろ手に個室の扉を閉めると野田はテーブルの上にあったフライドポテトの山から1つ取って口に放り込む。
「そう言えば野田さん、家に帰らなくても良いんですか?」
部屋の壁にすがって立っていた石川が尋ねる。
おぉ、そこに居たのか。と野田がニヤニヤ笑いを浮かべているのを見て、石川はチームメイトの事を思い出していた。
「あぁ今日帰れないって一応連絡入れといた。俺はオール可。」
「妻帯者ってやっぱ大変ですね〜。」
「お前はとっとと結婚しやがれ。」
野田と阿部の軽快な掛け合いを聞きながら、石川は気付かれないように肩を震わせて笑っている。
何だよ〜と軽い口調で野田は笑っている石川にイーっと歯を見せた。
「んで、誰に会ってきたんだ?」
部屋に備えつけのソファーに座りながら野田が阿部に向かって問うと、笑いに耐え切った石川が返答する。
「滝鼻さんです。」
「誰それ。」
野田がそうあっさりと返すと阿部は盛大な溜息をついた。
「・・・うちのオーナーっすよ。」
そうなの?と言う野田に石川と阿部は思わず顔を見合わせる。
自分のせいで悪くなった空気に気付き、慌てて野田はデスクトップパソコンのディスプレイを見た。
「んで?滝鼻さんには・・・・」
「会えませんでした。」
「え、会えなかった?」
不思議そうな表情の野田に、阿部と石川はこれまでの事を話した。
アポイントメントをとっていたが急な仕事が入ったということで滝鼻に会えなかったこと、
その代わりにUSBメモリを秘書と名乗った男から貰ったこと、
その中身を見るためここに合流場所を変えたこと。
たまに相槌を打ちながら野田は真剣な眼差しで2人の話を聞いていた。
「で、そのメモリの中見た訳?」
「見ました。でも・・・・」
石川の語尾が濁る。
それを受けて阿部が野田の前にあるパソコンを操作し、タスクバーに収まっていたウィンドウを表示させると、画面が黒で覆われた。
そしてその中心にポツリと何かを入力する欄と『Enter』のボタンがある。
野田は画面を覗き込み、一言。
「何じゃこりゃ。」
とそう呟き、首を傾けた野田に『俺らが言いたいっすよ。』と阿部が答えた。
「ヒントもあったんですけど何が何やらさっぱりで・・・・。」
分かんなかったんです、と石川が野田の隣に座りながら言った。
阿部はもう一度操作するとステータスバーに『Hint.txt』と書いてあるウィンドウが開く。
鼻の頭を人差し指で抑えながら、野田は白の背景に浮かんだ細く黒い文字を小さな声で読み始めた。
「真実の母オリンピアよ・・・・」
<<渡辺 横浜港近くのホテル
野田・阿部・石川 読売新聞本社近くの漫画喫茶>>
名前間違えてすいませんでした>75氏・2氏
宮本と由伸の会話が、ルパンヲタの自分には堪らないw
由伸もキャプテンもカコイイなぁ…!
職人さん乙です!
ミスター一人相撲素敵すぎw
由伸いいこだよ由伸
キャプかっこよいよキャプ
シドニーも動き始めてますね〜
プロ野球選手が漫喫にたまってる姿想像するだにワロスwwww