2GET そして大予想
来年は中日連覇です
1 中日 川上山本昌朝倉小笠原ドミンゴ平松高橋大回転 福留復活ぶっちぎり
2 ヤクルト ラミちゃん川島新人王藤井復活も
3 横浜 三浦番長根性の復活&打撃爆発も防御率脅威の9点台で。
4 広島 嶋が奇跡の確変続行に打撃陣に怪我なしも投手陣が・・・
5 阪神 井川福原以外にダークホース金澤15勝も兄貴が・・・・・ 打撃大不振
6 巨人 上原に加え内海が予想以上の活躍も。ラビ封じられ大炎上
反論 ありえなーい
来年の萌えドラ
1回山井が三三振
2回朝倉三三振
3回昌でも三三振
もーえーどらごんずー
4回川上三三振
5回あきふみ三三振
6回川岸三三振
もーえーどらごんずー
7回山北三三振
8回久本三三振
9回岩瀬が守護神だ
もーえーどらごんずー
前スレ容量超待ち保守
保守
==、,-、 、ヽ、 \> ,, '''\ _
メ゙ヽ、\ ̄""" ̄--‐ 、 \ /ゝ、\
=─‐\\‐ /─'''''ニ二\''' |レレゝゝ、\
 ̄く<<く >, ゙、/<三三二\ ̄\ゝゝゝゝゝゞ''ヽ、 / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
<<<<〈__入 ゙、く彡三三三二ヽくゝ\メメメゝ、_ゝ、\ | さあ幕田の顔写真をかせ・・・
くく<<<<<< ゙、 ゙、ミ三三二ニ─ゝゝゝゝゝ,,,,,,,、 '( ゙''ヽ、ヽ、 < どんな表情でもにこやかな
くくくくくく彡‐ヽ ゙、ミ三三二ニ'''くくゝゝ_ゝゝ、\\_,>」ノ, | 顔にかえてやろう
く く く く く 彡゙、゙、三三二ニ‐くゝ、/ ,,,,,,,,メメゝヽ''''"ゝゞ丶、 \_____
二─二二彡彡、゙、三三二==くメゝ/ ゙'ヽ、メゝゝゝゝゝゝゞ''ヽ-、,,,,,,_
‐'''" ̄ \彡彡ミ、゙、三二=''"く<メ/:: \''-、メメゝゝゝ_ゝ 、 ,,、ヽヽ
、 ,,,,- ゙彡//ヾ、三二= くゝ/:::.... \>∠レ-,-‐ニ二メヽ''ヽ ノ
゙ヽ、,,,-‐//_///,,、゙、三二= ゙、 ""''' ヽ>//レレヽ,,___ /
-,,,,,,-‐'''"""/////,,ヽ ゙、三二─ ゙ヽ. //-ヘヘ,、 レレレレノ
''" ,l|"////ノ,、\彡'''''‐-ニ,、 ::::::::::,,,,,,,,// ゙ヽフ/|/| レ'
/ゝ、/ヽ|ヽレ,,゙ヽ、゙''ヽ、,,,,,,_ヽ''ニ='',,-'"、─-,,,,,_  ̄"'ノ
/メ / レ/,''"へへべ''─---- ̄-メヽ"ゝゞゝヽ、 >---''"
8 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/08 16:52:03 ID:SexlpNd6
フラッシュ化きぼん。
10 :
代打名無し@実況は実況板で :04/11/08 22:41:16 ID:tMUfJPuq
前スレ梅完了 乙
11 :
358:04/11/08 23:20:51 ID:FAg/Vi1x
135.独り
潮騒が近い。そこにある林を抜ければ海に出るのかもしれない。
川相がぼんやりと林のほうに目を向けたとき、波の音に混じった、談笑の声を聞きわけた。
(またか……)
表情を維持するために力を入れる。渡邉は気づいているのだろうか。
どこか様子見のできる場所は……と視界に入る情報を分析している後ろで、渡邉が足を止めた。
「川相さん、ちょっと待ってください」
聞こえているが、わざと無視して進む。すぐにベルトをつかまれた。
この様子だと、声の主がわかったのかもしれない。抵抗せずに林を見つめていると、
ユニフォームと思わしき姿が三つ、次第に輪郭をはっきりさせてきた。
けれどその一つは、やけに赤黒く見える。
「やっぱり。立浪だ」
渡邉が言ったのとほぼ同時に、その赤黒い影がその人であることを
理解した。隣で肩を支えるようにしているのは落合、後ろにいるのは……
「おーい」
控えめな叫びが向こうから飛んできた。二人に気がついたらしい。
「行きましょう」
渡邉は有無を言わさず強引に、川相のベルトを引いて三人に近づいていった。
12 :
358:04/11/08 23:21:09 ID:FAg/Vi1x
お互いが状況報告している間、川相は退屈そうなそぶりをして空を眺めていた。けれど次々と
告げられる死者や殺戮者の情報に、一つ一つ確認を取って聞き返したい衝動が絶えず彼を襲った。
渡邉は言葉数少なく、そうか、と時々合いの手をうつだけだ。三人は、川相がおかしくなっている
という事を聞くと、それ以上何も追求しなかった。空を一羽の鳥が、すっと横切っていく。
「これから、どうするんだ?」
話が一段落して、渡邉が聞いた。今までの出来事を改めて振り返ったせいだろう、
三人の俯いた顔には暗い影がさしている。
「…こいつの状態も良くないんで、落ち着いて治療できる場所を探します」
立浪が一度、視線を落合に当てたが、諦めたように目を伏せた。酷い有様だという自覚はあるのだろう。
彼のユニフォームは白の部分よりも血濡れた部分の面積の方が大きくなってしまっている。
渡邉は軽く頷いて、ふと地図を取り出し指さした。昨晩己らが使った穴蔵の事を思い出したのだ。
「使えるかどうか、わからないけどな」
「いえ、ありがとうございます」
一礼して、川相の方に目配せすると、彼は尋ねた。
「ナベさんは…どうするんですか?」
「俺は、この人についていくよ」
「でも、川相さんは……」柳沢がなぜか必死な様子で、口を挟んだ。
「わかってる。でも、この状態で一人にするわけにいかないだろ」
渡邉の物静かな口調がまた、正気の川相の心を揺さぶった。
三人の沈黙が、渡邉への同情と自分への呵責のように感じられた。
薄ら笑いの喉の奥に、ぎゅっと力を込めた時だ。
青空を縦に裂く細い光の筋が目に入った。間をおかず、雷鳴が駆けていく。
川相はほぼ無意識的に立ち上がり、ありったけの力で走り出した。
「川相さん!」
―背後の声が、聞こえなくなるまで――
その思い一つ、彼を動かした。
【残り18人・選手会12人】
13 :
112:04/11/09 01:23:55 ID:leMZPf5I
136.笑顔の意味
雷鳴がとどろき、井上は顔を上げた。
視線の先には雲一つない青い空。
(こんなにいい天気なのに、雷?)
見上げた空に関川の面影が浮かんだ。
最後に見せた、あの笑顔。
(俺って、顔に似合わずロマンチストなのかな?)
井上は苦笑する。
ーセキさんは、本当に俺を殺すつもりだったんだろうか。
その疑問は、ずっと井上の中にあった。
外野手を殺してレギュラーを取り戻す、そう言っていたのに、実際の行動は…。
「馬鹿ですよ、セキさん」
口に出して言ってみる。
「レギュラー獲りたいんなら、迷ったら駄目ですよ。俺を逃がしてる暇なんか、ないでしょうが」
あの後関川がどうなったのか…それを確かめに行く勇気はなかった。
木にもたれかかったまま、井上は呟いた。
「なんであのとき笑ってたんですか、セキさん…」
14 :
112:04/11/09 01:24:57 ID:leMZPf5I
とどろいた雷鳴に、空に目をやるが、すぐに視線を戻す。
どこに敵が潜んでいるかわからないのだ。一瞬の気のゆるみが、死につながりかねない。
ーー死ーー
思考の中に浮かんだその単語に、ぶるっと、高橋の体が震えた。
あのとき、額に銃を突きつけられ、死ぬ、と思う暇もなく引き金を引かれて、
…偶然弾が切れていたから、俺は今ここで生きている。
ほんの紙一重の差だったのだ、生と死は。
「ーーなんであのとき笑ったんだよ、あいつは」
必殺の機会を、弾切れで逃した。それは失策だったはずだ。
試合での失策なら負けるだけだが、殺し合いでの失策が意味するところは…死。
それがわかっていたはずなのに、何故笑えたのだろうか。
「わかんねーよ…」
考えても仕方のないことだ、とわかっていても、頭から離れない。
(こんなことじゃ駄目だ、由伸)
自分に言い聞かせる。
(俺は、あのジジイを殺すんだ…絶対に)
そう思いながらも、キャンプ地の方向に自然と足が向いていた。
ついさっき味わった恐怖が、一人でいることをためらわせた。
どこか弱気になっていたのかも知れない。
(なんで笑ったんだろう)
森の中を慎重に歩いていく由伸の心を、もう一度疑問がよぎった。
(もしも、俺が死ぬときはーー俺も、笑うんだろうか?)
【残り18人・選手会12人】
職人さん乙です。
17 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/09 19:21:18 ID:kEAsxmxY
川相には生き残って欲しいなぁ…
でも無理なんだろう…
>>18 最後のほうで死ぬんだろうな。
話は変わるけど誰か生き残ってるメンバーまとめてくれ。
>>19 ドラゴンズ
福留・荒木・立浪・渡辺・井端・川相・森野・井上・川上・岩瀬・正津・柳沢・落合英
山本昌・小笠原・英智・大西・高橋聡・中里
選手会
古田・清原・緒方・高木大・桧山・小久保・黒木・高橋由・佐伯・今岡・松中・中村
間違いあったら訂正ヨロ、そういえばしばらくバトロワ書いてないなぁ
21 :
代打名無し@実況は実況板で :04/11/10 06:56:22 ID:rSHMMCoS
後は仲澤・ゴメス・俺竜、オーナー共かな(中日は死亡)
保守
25 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/11 13:01:28 ID:c9o2lvZ9
ほしゅ
マップはないのかな
選手会のキャンプ移動経路とか
井端(のユニ)が落ちた崖と荒木・福留の距離とか
気になるんですが…
>>27 正直マップ作ると破綻が生じると思うのだが・・・・
そこを力技でなんとかw
正直、これ以上、職人さんに負担かけるのも忍びないよ…
31 :
112:04/11/12 00:13:32 ID:RZWZJpa9
>>27 作ろうとしてみたんですが俺では無理っぽい…orz
情報が少ないし、どうやっても矛盾ができてしまう。
ホシュ
まあ最初から地図があって話をつくってんじゃないんだから、しゃーねーべ。
地図作って、職人さんが
「こいつらが海岸に行くとこいつらと遭遇するからダメポ・・・」
なんてことになったら困るしな。
>31
そうですか、無理言ってすみません…
前章からの雷みたいに、いろんな職人さんがいっこのテーマをつなげるの
カッコイイなあと思ったもんで。
あと前田問題みたいのの防止になるかなーと思ったんですが、
そういう場合は先に制約つくっといてリレーする形式の場合かもしんないですね。
前田みたいになったら、中日の選手にさっさと殺させくぁwせdrftgyふじこ
37 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/13 08:41:40 ID:4datsP7u
捕手
137.狂気の爪痕
小久保は目の前の光景に我が目を疑った。
─なぜ、今岡の首をチームメートでもあるはずの桧山が締め上げていたのか?
……なぜ……それを止めようとした松中が血に染まって地に倒れ伏しているのか………?
『小久保さん、逃げて!!!』
松中が倒れる間際に発した悲痛な叫びは、いまだに耳にこびり付いている─
にも関わらず、小久保は動かなかった、いや動けなかったのだ。
視線に囚われた、そう言ってもいい。
─この戦いを楽んでいるようにすら見えた高橋由伸ですら、
その目の奥には歪んではいたが信念のようなものが垣間見えていたというのに…
松中の叫びに反応して顔を上げた桧山の目の奥には、ただ虚無だけが広がっていて……
その得体の知れなさは、小久保を恐怖の淵に追いやるには十分過ぎるものだった。
そんな小久保をさらに追い詰めようとするかのように、桧山がゆっくりと近付いてくる。
「……ロス……殺す……裏切りもんも、逆らうやつも、英智も……お前はどっちや?」
問いの意味を理解できずに黙り込む小久保をしばらく無表情で眺めていた桧山だったが、
小久保が無意識に零した涙を目にした瞬間、おかしくて仕方がないと言わんばかりに
腹を抱えて笑いだした。
「……なんや、ただの腰抜けかい!?」
桧山にやっと戻ってきた表情……それは狂気を宿した嘲笑だった。
「殺す価値もないなぁ。」
吐き捨てるように言い放ったあと、桧山は松中を撃ったと思われる銃で小久保をひとつ殴打し、
顔に嘲笑を貼り付けたまま立ち去っていく……
その背中が見えなくなったあとも、しばらくは痛みと残された恐怖に動けずにいた小久保だったが、
先ほどの場所からまったく動かず横たわったままの松中が視界に入った瞬間、呪縛が解けたかのように
身体が動き出した。
「マツ、マツ……嘘だろ……」
這いずるかように松中の側まで歩み寄り、その身体を揺さぶってみる。
「パリーグの…プロ野球界の灯を消す気か? 起きろ…目を開けろよ……マツ!!」
しかし、松中から返事を得られることはない。
「……すんません……すんません………止められなくてすんません………」
かわりに、すぐ近くで咳き込むような音と共にそんな声が聞こえた気がしたが、
小久保は、動かない松中から視線を外すことができなかった。
「マツ……」
小久保が松中を呼ぶ声は、やがて慟哭へと変わり、自らを罵倒する言葉に変わり…
そして、桧山とオーナー達への怨嗟に形を変え……あたりに響き渡った。
【残り18人・選手会11人】
乙です!
ひーやん怖いよひーやん
42 :
358:04/11/13 22:22:38 ID:rDoScCeU
138.36、再び戦場へ
報告その1。中日の背番号35の選手は、「前日海岸で射殺された」模様。
断末魔の悲鳴(再生したが、すぐに宮内は切るよう命じた)の後、波の中を掻き分けているような水音が
続き、そこで生命反応が途切れた。狙撃手は断定しきれないが、恐らく
小久保・高橋の選手会人員二名だと思われる。
報告その2。背番号35の選手は、現在既に死亡している可能性が非常に高い。
カメラに後ろ姿が映ったが、真っ直ぐに進めばその先のカメラにまた映りこむはずである。
しかしあの後4時間以上が経過しているが、そのカメラはおろか付近のカメラにもそれらしい人物は
映っていない。恐らく途中で何者かに襲われ殺害されたと考えられる。ちょうど、直線を結ぶと
背番号51の生命反応が無くなった位置とぶつかるため、ここで何らかの戦闘が行われたと思われる。
報告その3。背番号11、21の両者は依然生死の確認がとれていない。
事務員風の男が直立不動で、印刷された紙を棒読みしていた。その横を別の男が、軽食やら酒を
盆に乗せせわしなく往復している。渡辺はモニターに見入ったまま、こちらを見向きもしない。
ウィスキーだけはしっかり受け取っていたが。
「わかった。お前は11番と21番の生死を早く確認してくれ。誤作動の対策は別に任せておく」
「了解しました」
一礼して、彼が宮内に背を向けた時だ。ドアが乱暴に開けられ、個性のないスーツ姿が部屋に飛び込んできた。
「失礼します」
「何事だ、騒々しい」
その落ち着きない様子から、また何かあったのがすぐにわかり、宮内はうんざりしたように息をついた。
43 :
358:04/11/13 22:24:00 ID:rDoScCeU
「その…右のモニタ、お借りします」
渡辺が鬱陶しそうに事務員を睨んだが、彼はそれに気づく余裕もなくスイッチを操作した。
画面は、誰の姿もない病院の廊下から、まばらに杉の木が立ち並ぶ風景へと変わる。
「これはここの様子なのですが…」
数字の散らばったモニタを指した時、渡辺の肩に彼の腕が当たったが、やはり軽く詫びただけで
それ以上は気にしていない。指先の位置に向かって、6の丸数字が接近してきている。
やがてそれは重なり、木々の映していたカメラにその後ろ姿が現れたのだが――
「……どういうことだ?」
「わかりません。けど、恐らくこれも誤作動の可能性が……」
宮内は頭を抱えた。はっきりと映し出された背番号は、36だったのだ。謎の多い35と
1つ違いだというのが、余計に彼の不安を駆り立てる。
「36…死んでるじゃないか。死亡時の様子は?」
「それが……先ほどのシステムダウンの時だったのか、記録が残ってないんです」
「ふん。責任者をあの部屋に招待すべきだな」
ウィスキーを嘗めながら、渡辺が気味の悪い笑みを浮かべて呟いた。
誰かの血が見たいだけなのかこいつは。宮内は心の中で毒づいた。
「今はそういう時じゃないでしょう。君、この36を……」
36を、どうすればいいのだ。機械のことは何一つ知らないわけだし、
ここは島ではない。捕まえて確認するという手段もとれない。
「誤植はまず訂正するものだろう。6を36に直しておきたまえ」
言葉の途切れた宮内を馬鹿にしたように、渡辺は指示した。事務員は、はい、と
かしこまって、部屋の端にあるコンピュータを触った。すぐに、丸数字の6が36に置き換わる。
「誤作動か何か知らんが、早く正常に動くようにしてくれ。こちらも色々かかっているのでな」
低い笑い声が部屋に響く。宮内は一瞬、全ての数字が地図上に戻ってしまうような錯覚にとらわれた。
そんなはずはない。この計画は、成功させる。手元にあったウーロン茶のグラスを、一気に傾けた。
【残り18人・選手会11人】
乙!桧山とうとう壊れたな((((;゚д゚)))
乙です!
選手会が一人・・・・・・一人ってことは今岡はまだ生きてるのか。
って言うか怖いよ桧山怖いよ((((;゚д゚)))
井端はどうなるんだろう・・・・・。
乙です。
怖いよ桧山、怖すぎだよ(((゚Д゚)))ヒィーガタガタ
以前選手会側は進行が遅いと言っていた人が居たが、これで話が進みだしそうだな
それにしても、今まで以上にこのあとが気になりだした
小久保と今岡はタッグを組むのだろうか…
しかし、今岡の首を絞めてたかと思ってたら、松中をすぐに銃殺とは行動早いな、桧山
保守
なるほどな…これで井端は完全に井端じゃなくなったってことか
なかなか深いもんだなぁ、平井、改めて乙
それはそうと桧山怖杉w
このままだと英智、あっさり殺されてしまうぞ
ひーやんと今岡のコンビ、好きだったんだけど
これからどうなっちゃうんだろ…そして井端も…
50 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/15 10:50:49 ID:7pcZ6PyU
>>49 ノシ
殺伐とした中で、笑いアリのいい味出しているコンビで好きだっただけに、
今回の豹変振りはショックだった。
職人さんはその落差を狙っていたんだろうが、思った通りに振り回されました。
だからこそ、もうこのまま桧山は突っ走ってもらいたい。
あと、佐伯もどうなっちゃうんだろう。
とにかく、職人さん乙でした。
52 :
112:04/11/15 23:30:50 ID:VRavs+Og
139.祓うべき魔は
荒木はひたすら走っていた。
福留とはぐれてしまったことは気づいていたけれど、
それよりも井端のことが重要だった。
―嫌な予感ばかりが胸に浮かんでくる。
6のユニフォームが落ちてくる前に聞こえた銃声―
あの崖から落ちて、井端さんは無事でいられるのか―
自分の武器である弓矢を握りしめる。
「弓矢って魔除けになるんだぞ。破魔矢ってあるだろ?」
山本昌の言葉を思い出す。
(井端さんが誰かにあの崖から撃ち落とされたんだとしたら…井端さんを撃った人が、魔)
井端を撃った魔を、討ち果たす。
自分の武器、魔を破る矢は、その役目にふさわしいように思えた。
(でも、井端さんから仕掛けたんだったら…井端さんが、魔…?)
そのときは、手にした弓矢で、魔である井端を祓うべきなのだろうか?
とりとめもない考えを浮かべていたせいだろうか、走る速度がゆるんでしまっていたことに気づく。
荒木は、ぶんぶんと頭を振って、よけいな考えを追い出した。
―今は、どうしようもないことを考えている場合じゃない。
(井端さんを見つけて、助ける!)
それだけを考えて、荒木は再びスピードを上げた。
53 :
112:04/11/15 23:32:37 ID:VRavs+Og
森が切れ、急な上り坂が見えてくる。
坂道の前で、荒木は一度足を止めた。
(たぶん、ここを登ればさっきの崖にでるんだろう)
さすがに、走り続けで息が切れていた。この状態では坂を登り切ることは難しい。
少し息を整えようとした荒木の視界の端に、自然にはあり得ない青色が映った。
急いでそちらを見ると、自分と同じユニフォーム姿が、森の中に入っていこうとしていた。
(36番、平井さんだ。今このあたりにいるのなら、井端さんがどうなったのかを知っているかも…)
「待ってください、平井さん!」
荒木は大声で呼びかけ、駆け寄る。
近づくにつれて、少し違和感を覚えた。
(あれ?平井さん、あんなに背が小さかったっけ?もっと大きかったような―)
立ち止まり、ゆっくりと振り向いた36番を見て、荒木は絶句した。
―なんで、あなたが…?―
「井端さん…?」
呆然と呟く。
青い空に、雷鳴が走った。
【残り18人・選手会11人】
54 :
126:04/11/16 02:21:33 ID:Fe+c8hrS
140. 火種
“オーナーを殺せ!!”
── そう、事の始まりは、この言葉からだったのだ。
気づけば、この島に来ていた。
球界の未来に暗雲をもたらす者たちを排除する ── それを大義名分とし、自分たちは
当たり前のように武器を手に取った。
オーナーは『人』ではなかった。消去しなければならないただの標的。
だから、何の疑いも、ためらいも持っていなかったのだ。……最初は。
オーナーを殺す。邪魔する者は容赦しない。
その信念に揺らぎが生じたのは、『敵』が中日ドラゴンズの選手であると分かった時だ。
選手という同じ立場の人間が敵。その事実がかすかなためらいを心に生んだ。
名前も顔も知らない、傭兵か何かならばともかく……。
『やられたらやり返せ、でしょ?』
自分が言った台詞を、もちろん憶えていないわけがない。
けれど、もし敵が傭兵だったのなら、自分は、そして桧山は何と言っていただろう。
邪魔する奴は殺せばいい ── そういう結論になっていたのではないだろうか?
“殺意”の火種は、おそらく選手会全員の心にあったのだ。
しかし、選手同士の殺し合いに躊躇をおぼえたその瞬間から、今岡の内にある火種は徐々に
くすぶりを弱くしていった。
そのことが、ゆがんだ方向を示していた彼の精神の、軌道修正をうながす契機となった。
『桧山さん。やめましょ』
今岡の心が正気への道筋をたどった結果が、この台詞だったと言っていい。
時すでに遅し、桧山の心はとうに狂気に魅入られていたわけだが ── ……
55 :
126:04/11/16 02:22:21 ID:Fe+c8hrS
堤義明はホテルの一室にてデスクトップパソコンのモニターを見つめながら、含み笑いを漏らした。
「ふむ。付け焼刃の“暗示”にどれほど効果があるのかと思っていたが、まさかここまでとはな」
今回の試作プログラム実行に際し、渡辺のコネクション(とは言っても、あくまで間接的なものだが)を
介して、武器調達や島全体の管理等、様々な面で某国の協力を得ることとなった 。
── だが協力とは名ばかりの、お粗末な援助に過ぎなかったことはあえて伏せられている ──
ともあれ、その見返りとして、某国の軍からプログラムの中でぜひ試すようにと要請された事柄が二つある。
一つは、強力覚醒剤および筋肉増強剤の人体実験。
もう一つは、サブリミナル ── 潜在意識操作の軍事的応用における実践的試験。
要は、薬物と暗示、この二つによって『殺人マシーン』を作るという構想を持つ某国軍の、試験場に
使われたということだ。
そのあまりに荒唐無稽な妄想を、最初、堤は鼻で笑ったものだったが。
「無線を使ってのサブリミナル攻撃など、絵空事に過ぎんというのが本音だったよ。しかし、実際に
この目で見たからには、確信を持つより他にないということか」
そう言って、堤は傍らに立つスタッフに目を向ける。
精神科医による鑑定結果を綴ってあるファイルを開き、スタッフは頷いてから口を開いた。
「個人差はあるようですが、第一の“暗示”はほぼ全員に効力を及ぼしているようです。
特に、被験者、M-54に見られる人格の混乱などはその延長線上で起きたものであると思われます」
「だが、持続時間の限界がある。すでに何人かの暗示が切れかかっているようだな」
「ええ。ですが、第一の暗示はこの島に来たことを疑問に思わせないためのものですから、被験者たちが
島に閉じこめられた今となっては、暗示が切れたとしてもさほど問題はないかと」
(さて、それはどうだろうか…)
あっさりと断定するスタッフの口ぶりを、堤は胸中で皮肉る。
56 :
126:04/11/16 02:25:19 ID:Fe+c8hrS
彼は知らないのだ。完全に『正気』を取り戻した時、誰よりも賢しく立ち回れるだろう人物がいることを。
そしてその人物が、こちらの ── 主催者側の大きな障害となるに違いないことを。
堤が一瞬だけ浮かべた笑みに気づくことなく、スタッフは事務的に報告を続ける。
「被験者、T-24は完全な成功例と言って良いでしょう。催眠暗示、殺人衝動操作共に
効果が表れています。T-07は残念ながら、暗示から逃れた模様ですが」
「まあ、失敗が前提のような試みだ。結果がどうあれ、こちらの腹は痛くならんさ。それよりも、
高木君はずいぶんと手ぬるいことをやっているな。遊んでいる場合ではないというのに……」
「私的な見解を許していただけるのなら 、高木氏は、あまり積極的とは言えませんね」
余計な台詞をはさんだスタッフを、堤はじろりと一瞥する。
無言の圧力を受け、彼はわざとらしく咳払いをし、一度閉じたファイルをまた開いた。
「…高木氏と行動していたC-09の殺人衝動操作については、成功しそうですが ── 」
「報告はもういい」
堤は話題を打ち切り、片手を振る。下がれという合図だった。
「……。失礼いたしました」
複雑な表情で一礼し、スタッフはその場を辞した。
彼の姿がドアの向こうに消えるのを見送り、堤は椅子の背もたれに身体を沈ませながら、吐息をもらした。
「ふん…所詮はただの余興だ」
あの老人の好みそうな演出ではある。
せいぜい、今の内に楽しんでおくがいいさ ── 渡辺に対する嘲笑を口許に刻みながら、だが堤とて
この盤上ゲームの行方を気にかけていないわけではなかった。
渡辺の天下気取りもあと少しで終わる。それまではゲームの展開を見守るのもまた一興だろう。
「案外にもろいものだな。人の心というやつは」
ぽつりと洩らされた堤の言葉は、的確に示唆していたと言っていい。
誰もが“狂気”の予備軍であることを。
【残り18人・選手会11人】
職人さん方、乙
ようやく、そして遂に荒木と井端が出会ったか…
スゴイ裏側も見えてきたな
59 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/17 01:45:24 ID:bZ0uLZbJ
捕手
hosyu
サブリミナルか・・・
保守
63 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/18 17:19:07 ID:2+8h01b1
ひたすら保守
65 :
126:04/11/19 19:40:52 ID:3tEPjSsb
141. 偶像を見つめる瞳
四つんばいの姿勢で灼けるように熱い喉を手で押さえ、今岡は何度も咳きこんだ。
生理的な涙に濡れた両目に、ぼんやりと霞がかった景色が映る。
(生きてる……?)
脳に集中していた血の気が引いていくと同時に、今岡は自らが命拾いしたことを認識した。
まともに呼吸ができない。力任せに気道を締めつけられた感覚がまだ、喉に残って……。
(桧山さん、の……)
喉を圧迫する指の感触。間近にのぞきこんだ双眸の、底知れない、闇 ──
そのすべてがフラッシュバックし、今岡の思考は一瞬白く弾けた、のだが。
「起きろ…目を開けろよ……マツ!!」
耳を打った悲痛な叫びが、ヒステリー状態に陥ることを踏みとどまらせた。
今岡は声の方向にぎこちない動きで首をめぐらせ、地面を染める血の色を見た。
倒れ伏す松中の胸の位置あたりから、赤黒い液体が生々しく広がっている。
ハッと目を見開いて、今岡は身を起こし、右肩に手をやった。
狙撃銃を肩にかけるために付いていたストラップの感触が、そこにない。
あの時 ── 朦朧とする意識の片隅に松中の叫び声が聞こえた時、桧山が自分の狙撃銃を
奪ったことを、記憶の断片から辛うじて思い出す。
突然締め上げられていた首を解放され、強烈な目眩とともに前後左右の感覚が消失した ──
その後の空白の間に、桧山が松中を撃ったということなのだろう…。
事切れた松中の傍らには、先ほどの声の主 ── 小久保の姿があった。
蒼ざめた顔で、ただひたすら松中の身体を揺さぶっている。二度と動くことのないその身体を。
すんません、と今岡は口走っていた。叫び出したい衝動と吐き気とが一気にこみあげてきた。
「……すんません………止められなくてすんません………」
言葉のほとんどは嗚咽と咳に取って変わった。小久保はそれに対して反応することなく、松中に
視線を落としたきり、とめどなく悲嘆の叫びを洩らし続けた。
── 許さない。
やがて小久保が震える声で呟いたのを、今岡は聞いた。
「…殺してやる。オーナーも、桧山さんも、俺がこの手で殺してやる…!!」
「小久保さん!!」
今岡の怒鳴り声に、弾かれたように彼が顔を上げた。
目の前にいるのが誰なのかを再認識しているかのような長い沈黙ののち、呆然とした声で呟く。
66 :
126:04/11/19 19:41:48 ID:3tEPjSsb
「…どういうことだよ…」
真っ直ぐに向けられた小久保の目は、言い知れぬ怒りに満ちていた。
「説明しろよ! さっぱりわかんねえよ!! なんなんだあの人は!!
中日の選手だけじゃ飽き足らずに、仲間まで殺して回る気なのかよ!!」
彼の叫びに今岡は瞠目した。その勢いのまま開きかけた口を、だが寸前でつぐむ。
( ── 違う)
反駁の言葉は胸の奥へ押し戻され、己の内にのみこだまして消えた。
違わない、何も。見せつけられた現実がすべて。それは分かっているのだ…。
「…あの人はマツを殺した…! 俺の目の前でだ! 狂ってる……普通の目じゃなかった。
人を撃っておいて笑ったんだぞ!? あれじゃあ、まるで……」
── 殺人鬼じゃないか。吐き捨てられた彼の台詞に、今岡は戦慄する。
「桧山さんは……」
反射的に、声がこぼれていた。
「狂ってしまった。それは間違いないと思います。でも」
自分は殺されかけて、松中は殺された。手を下した人物の目は確かに狂気を宿していた。
でも ── と、今岡は続ける。
「狂わされたんです。人為的な方法で」
こちらに向けられている小久保の表情が、憮然としたものに変化する。
「何なんだそれは」
本気で言っているのか、とでも言いたげに、彼の目が嘲りの色を帯びた。
「『狂わされた?』……はっ、人殺しをかばうにしても、もっと言いようがあるだろう。
桧山さんは自分から狂ったんじゃないって言いたいのか?
仮に狂わされたんだとして、それであの人のやった事が正当化されるってのか?」
「俺は桧山さんをかばう気はないです。そうやなくて…」
ほんの少し、今岡はかぶりを振った。
「……罠、やと思うんです。俺らは現に、いつ狂ったとしてもおかしくないような環境におるんです。
さっき、小久保さんも言うてはりましたね。殺してやるって」
「……」
「すいません、揚げ足取るつもりじゃないんです。桧山さんも中日の選手に恨み持ってたみたいで、
そいつを殺してやるって言うてました。実際やりかねへん感じでしたけど。
でも、それは見境なしのもんではなかったと思います」
小久保は黙ったままでいる。嘲笑はいつしか消え、厳しい眼差しが今岡を見据えていた。
67 :
126:04/11/19 19:42:23 ID:3tEPjSsb
「どう考えても腑に落ちひんのです。俺の首を絞めた時の桧山さんは、絶対に桧山さんじゃなかった。
何かに操られたみたいな…。まあそれも、かばってる言われたらそれまでなんですけど」
無意識のうちに、右手が喉元に触れていた。まだ痛い。目を閉じる。
「……きっかけがあったってことなのか」
低く、小久保が重い口を開いた。
「桧山さんが狂わされたって。お前がそう思った、きっかけが」
「ありました。はっきり断定はできませんけど、それが罠なんやと思います」
「……」
「俺は桧山さんを信じてます。俺が自信持って言えるのはそれくらいのもんです。せやから」
(人殺しにならないで)
伝えられなかった言葉が心に甦る。今岡は唇をかみしめた。
だから、桧山がもし自らの意思とは別に、人殺しになったとしたなら ──
自分のするべきことは、ひとつしかないはずだ。
今岡の心は決まった。立ち上がり、小久保を振り向く。
「……そうか」
彼は身じろぎし、傷ついた足をかばうようにして姿勢を変えた。
目線は今岡から外れ、地面へと向いている。
小久保を説得できるとは思っていない。彼に慰めの言葉をかけたところで、何の意味もなさないことは
分かっている。
ましてや、同行者の凶行を止められなかった自分のことを、信じてもらえるとは到底思えない。
かと言って怪我人を放っていけるわけもなかった。
ざあっ、と頭上で風が逆巻いた。突風にあおられた木立がざわめく。
小久保に声をかけようとして ── だがそれより早く、彼が口を開いた。
「由伸とは違うってことか……」
独白まじりに呟いて。
憂いをたたえた瞳を、小久保は静かに伏せた。
【残り18人・選手会11人】
68 :
112:04/11/19 21:15:17 ID:XPe857de
142.理不尽な電話
砂原は、ゆっくりと床に落ちた資料の一枚を拾い上げた。
何度見てもそこに書かれた文字が変わるわけもなく、―佐伯が石井とデニーを殺した事実も変わらない。
(…佐伯に確かめなければ。どういうつもりなのか)
砂原は携帯のメモリーから佐伯の番号を選び、発信ボタンを押した。
もしかしたら確かめない方がいいのかも知れない、という不安に躊躇いながら。
(しっかし、毒なんてえげつないもん持っとる奴がおるなんてなあ)
間違いなく「えげつないもん」の域に入っているであろう、サイレンサー付きの銃をもてあそびながら、佐伯は森の中を歩いていた。
(ほっといても人数減らしてくれそうやな。古田さんには手を出さんといてほしいけど―)
佐伯の思考は、スーツの胸ポケットに入れた携帯の振動で断ち切られた。
着信だ。
(誰や?ナベツネさんか?)
軽く舌打ちする。
(誰か見てたらどうすんねん、不用意に連絡してくるなよオッサン)
とりだした携帯の画面に表示された番号を見て、佐伯は眉をひそめた。
「…砂原オーナー?」
「ご無沙汰してます。こっちから連絡しようかと思っとったんですけど」
電話の向こうから聞こえる佐伯の声は、いつも通りに明るい。
その事実に、絶句する。
チームメートを二人殺しておいて、いつもと同じ態度がとれるような人間だったのだろうか、佐伯は?
69 :
112:04/11/19 21:15:50 ID:XPe857de
「…あれ、オーナー?聞こえてます?」
「……ああ」
なんとか返事を返すと、佐伯が苦笑する。
「そうですか、ならよかった。実は、謝らんといけんことがありまして」
「石井とデニーのことか」
「なんや、もう知ってらしたんですか」
「何で殺したんだ!」
「なんでって…そういうゲームでしょ、これは」
思わず怒鳴りつけた砂原に、淡々と答えが返ってくる。
「選手会役員と古田さんを殺して、10球団1リーグを実現させる。それが俺の役目です。
まあ琢郎とデニーさんはできたら殺したくなかったですけど、あの人らも役員ですから。例外には出来ないでしょ?」
「…君なら、うまくやってくれると思っていた」
砂原は言葉を絞り出した。
「横浜の選手を守って、その上で渡辺さんの希望に答えてくれると思っていた。
…君なら、出来ると思った」
佐伯に掛けていた過大な期待が、砂原の中で理不尽な変貌を遂げていく。
失望に、嫌悪に、憤怒に、憎悪に。
それを叩きつけるべく、砂原は携帯を強く握りしめて、大きく宣言した。
「横浜ベイスターズは君と来季の契約を結ばない」
「なっ………!オーナー!ちょっと待って…」
電話の向こうで息をのんだ佐伯が、何か言おうとするのを遮る。
「君はFA権があったな。FA宣言してどこへでも行ってくれ。
…ベイスターズの選手を害するような奴は、必要ない」
言い捨てると、砂原は乱暴に携帯の電源を切り、床に投げつけた。
【残り18人・選手会11人】
…上手いなあ、ネタの絡ませ方が。
思わずニヤニヤしてしまったよ佐伯
71 :
623:04/11/20 09:30:47 ID:DWcEw8Z2
143.奇妙な追跡劇
井端さん――
荒木が再びその名を口にしかけた瞬間、井端の顔をした男は荒木に背を向けて走り出していた。
「あっ、待って!!」
すぐに後を追おうとした荒木の足は、しかし二、三歩踏み出したところで止まった。
さっきまで、共に行動していた福留のことが脳裏に浮かんだからだ。
――孝介、なにグズグズしてるんだよ!
元来た道を振り返ってみるが、福留がやってくる気配は感じられない。
そうこうしているうちにも『36番』の背中はどんどん遠ざかっていく…
それでも、この場にさえ留まっていれば必ず福留と再会できるという確信―
―裏を返せば、ここを離れたら二度と会えなくなるかもしれないという不安
は、荒木の足をこの地に縫いとめて離さないかのように見えた。
だが結局、この拘束は長くは続かなかったのだ。
必死に目で追っていた背中を木陰が一瞬だが隠してしまったとき、
荒木の中から『福留を待つ』という選択肢はきれいさっぱり消え去ってしまった。
「ごめん孝介、もう待てない……」
荒木は、知らず握り締めていた一本の矢を地面に突き刺すと、
(自分が確かにここに来たという証と、親友でもある福留を魔から守って欲しいという
願いが込もった矢だ。)
後は振り返らずに、再び井端の影を追い始めた。
72 :
623:04/11/20 09:31:30 ID:DWcEw8Z2
宮内の目の前のモニターが背番号36を映しだしたのは、ちょうどこの前後のことだ。
荒木が走り出すのがもう少し早かったなら…いや、せめて宮内がもう少し冷静な状態で
モニターの見続けていたのなら、『36番』を背番号2番―つまりは同じ中日の選手が
執拗に追いかけまわす奇妙さに気付き、誤植の訂正をしばらく思いとどまらせ、
監視を続けさせるなどの対処を確実に行っていたであろう。
だが現実はというと更に信じられないことに、誤植の訂正後の36番の動向に
誰も注意さえ払ってはいなかったのだ。
見せ付けられる狂気と、度重なるトラブルはオーナーたちの判断力をも確実に狂わせている。
だが当人たちはそれには気付かず…あるいは気付かぬ振りをしてそれぞれの思惑をめぐらせている。
【残り18人・選手会11人】
職人の皆さん、いつも乙です。
小刻みな展開で大変だろうけどがんばってください。
>112さんへ
「謝らんといけん」よりは、「謝らんとあかん」の方が自然な希ガス。
細かい指摘で申し訳ないけど、
琢郎→琢朗です。訂正おながいします。
佐伯のこれからが気になる…。
74 :
358:04/11/20 22:15:06 ID:s4hLZPkA
144.執着
中里は躊躇わず、聡文の懐にとびこんだ。同時に、ガラス器具がはじけ飛ぶような音が
背後で散らばった。散弾銃の弾は目標である中里を逃し、備品庫の奥の棚で炸裂した。
そして、中里のメスは、標的の右胸に深々と突き刺さった。
中里はにやりと冷たい笑みを浮かべ宣告した。
「やっぱり、僕とお前だったら、明らかに僕が生き残るべきだよな」
聡文の戦慄の表情から目をそらし、メスを右下へ向かって走らせる。
ユニフォームの繊維が刃にまとわりつき思ったより力がいったが、
それでも肉が切れていく感触は非常に気持ち悪く、生暖かい返り血が中里の顔を曇らせた。
けたたましい悲鳴が部屋の壁に打ちつける――
70番を追って、傷だらけの体を引きずっていた黒木は、薄暗い廊下で
誰かの悲鳴を聞いた。最初は大波のような激しい声であったが、やがてゆるやかに
波が引いていくように、弱く弱くなっていく。
黒木がよろめきながら廊下の奥へ進んでいった時だ。奥の部屋から血まみれの人影が
躍り出てきたのだ。それは、ぎょっとして足を止めた黒木を見て、
懇願するような瞳を向けたが、黒木はその目を見てはいなかった。
彼の目線は胴体の右下部分に釘付けだった。切り刻まれてているユニフォームの、番号部分に。
男は黒木の方に手を伸ばし、口を開いた。ぽたぽたとそこからも血液が滴る。
「…助けて………」
掠れた声を最後に、その人物は自分の作った血だまりの中へ、音を立てて倒れ込んだ。
背中にも、あちこちに刃物で刺したような後が残っている。
ぼろぼろになっている背番号は、67だった。
75 :
358:04/11/20 22:16:07 ID:s4hLZPkA
興奮で体の震えがおさまらない。中里は息を整えながら、なかなか立ち上がれない自分に苛立っていた。
(なんだよ……ちょっと聡文が暴れたからって、こんな、びびることなんか……)
右手の出血がどうなっているのかわからないぐらいに、両手が真っ赤に染まっていた。
左手なんて、指を動かすと粘着するような液音が聞こえる。
(ああ、嫌な音だ…こうなる前にさっさと死ねよ。どうせ生きてても役立たずのくせに……)
聡文は部屋の外へ飛び出していったが、あの傷では到底生き延びられるとは思えない。
どうせ、部屋を出てすぐぐらいの所で事切れているだろう。
まだ呼吸は元に戻らなかった。何度も首を振って、メスに映った自分を見つめる。
(あいつが抵抗したし頑丈だったから、疲れただけだ。銃だったら、そう、
銃だったらもっと楽だったのに…あのクソハゲ、次見つけたら絶対殺す)
殺す――考えたところで少しげんなりした。またこれと同じエネルギーを費やすのは
もうごめんだ。刺殺は嫌だ。殺すなら楽な方が良い。
(…そうだ、あいつの散弾銃もらっとこう。早くしないと、あのスクラップがまた
性懲りもなく襲ってくるだろうしな)
立ち上がってみると、随分息苦しいのに気づいたが、それをかえりみる余裕はない。
聡文は言っていた、あと3人だと。もう自分とあいつしかいないはずだ。
「ポンコツ……待ってろよ、お前――」
76 :
358:04/11/20 22:16:24 ID:s4hLZPkA
その時だ。引き戸のすぐ向こうから、ぴちゃ、と液体が跳ねる音がした。
(ちっ、もう来やがった)
こちらにはやはりメスしかない。不意打ちを仕掛けるつもりで中里は構えた。
ところが、戸の向こうにいるであろう人物は、なかなか次の一歩を踏み出してこない。
(…罠のつもりか?)
中里がじりじりとしていると、相手は唐突に呟いた。
「7ばっかり……」
それは間違いなくあの男の声であったが、さっきとは全然違う、絶望に近い感情が混じっていた。
「ゴキブリみたいだ、殺しても次々出てくる…」
(何言ってんだあいつ…?)
相手の思惑が読めず、うんざりとするような緊張が全身を縛り付けている。
「お前を殺せば終わるか?70、そこにいるんだろ」
聞こえた瞬間、扉に向かって駆け出した――が、血だまりに足を取られそのまま転倒した。
振り返った中里の目に一瞬、恨めしげな目をして足首を掴む聡文の幻影が映った。
【残り17人・選手会11人】
77 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/20 23:31:27 ID:N0mJ/6pO
聡文…(´Д⊂
聡文…((((;゚д゚)))
勘弁してよ、さっきまでオカ板にいたんだからさあ
79 :
112:04/11/20 23:44:27 ID:tAc0Kckj
145.発覚
とりとめのない考えを巡らせながら歩いていた高橋は、木々の向こうに人影を見つけた。
薄暗い森の中にとけ込むようなスーツ姿。背格好から見るに、佐伯のようだった。
由伸は少しほっとした。独りでいるのは不安だ。…また、中日の選手に殺されかかってはたまらない。
声を掛けようと踏み出した由伸の足は、しかしすぐに止まる。佐伯の手に握られた物に気づいて。
(携帯電話…?)
自分の携帯を確認するが「圏外」の文字が表示されている。
この島にきてからずっと、電波は入ってこなかった。小久保や松中もそうだったはずだ。
(なぜ佐伯さんは、携帯電話を使えているんだ?)
ドラグノフを手にして、声が聞こえる範囲まで注意深く近付いていく。
何を話しているのかはわからなかったが、一言だけははっきりと聞き取れた。
「オーナー」という呼びかけだけは。
(佐伯さんの電話の相手は、オーナーなのか?!)
「圏外」のはずの島で、オーナーと電話。それは、つまり―
(なんてことだ。敵は、中日の選手だけじゃなかったのかよ!)
ここで佐伯を殺すか、それともキャンプに戻って佐伯の裏切りを伝えるか。
迷いながらも、とにかく距離をとろうとして後ずさった足下で、茂みが大きな音を立てた。
(しまった!)
失敗したと思ったが、もう遅い。舌打ちしながらドラグノフを佐伯に向ける。
80 :
112:04/11/20 23:44:44 ID:tAc0Kckj
「オーナー!ちょっと待って…」
言葉の途中で切られてしまった電話を、呆然と見つめる。
「なんや、それ…」
横浜のために、それだけのために自分は動いてきたのだ。
渡辺に人身御供としてだされ、裏切りを、その手を血で汚すことを求められ、…そして、切り捨てられた。
「なんでや…」
うつむいて唇をかみしめる佐伯の耳に、ガサッという音が聞こえた。
(誰かおる?!まずい、さっきの話を聞かれとったら…!)
弾かれたように顔を上げ、音の方向に銃を向ける。
銃を構えて睨みつけてくる高橋由伸の姿が、そこにあった。
二人の視線がぶつかる。
乾いた笑いが、佐伯の顔に浮かんだ。
【残り17人・選手会11人】
81 :
112:04/11/20 23:47:54 ID:tAc0Kckj
>>73 指摘ありがとうございます。
関西弁は難しい…気をつけます。
保管するときに訂正入れます。作業遅れまくっていますが。
中日バトロワ再開してたのね。今日気付いたーヨ
なつかしひ・・・・
83 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/21 10:25:49 ID:IvohIFG+
84 :
126:04/11/21 20:24:13 ID:tyAPZvkN
146. 偶像を信じる心
『目を見ればわかる。こういう、極限状態だから余計にな』
小久保は自らが口にした台詞を思い返していた。
(あの人の目は…)
胸板を内側から突き上げられるように、鼓動が高鳴った。
記憶に刻まれた、あの時の銃声がこだまする。
ぐらりと大きく傾いだ松中の身体が、前のめりに倒れていく ── その光景の向こうに見た、彼の姿。
小久保は動けなかった。恐怖か、畏怖か、おおむねそのようなものが自分を縛りつけた。
彼の目の奥に感情を見出せなかったことが、小久保には恐ろしかったのだ。
(由伸の目とは違った)
殺意のありありと感じられる、鋭い眼光を向けられた時のことを思い出す。
高橋のそれは、標的であるオーナーを ── そして目的の障害となるものすべてを ── 殺すという
明確な意志の色に染まっていた。
伝わってくるその意思を感じ取ったからこそ、小久保は彼との考えの違いから離別を選択したのだ。
だが桧山からは、闇に覆われたその瞳からは、何の心緒も読み取ることができなかった。
今岡の言葉を鵜呑みにするなら、あれが『狂わされた』ということなのだろうか。
(操られた……。マリオネット、ロボット……。くそっ、B級映画じゃあるまいし………)
陳腐すぎる。こみ上げる苦々しさに顔をしかめた。
黙ったままでいる小久保の目前に立つ今岡の足が、所在なげに少し地面を擦った。
それから彼が動き出す気配を察し、小久保はつと目線を上げる。
「……何してるんだ」
骸と化した松中の傍らにかがみこもうとしている今岡に、思わず咎めるような声が出た。
「このままじゃ晒しもんやから…」
ひざまずき、両手を合わせて黙祷した後、今岡はぽつりと言った。
「せめて、あそこにでもと思って」
彼が視線を移した方向を見やると、木のそばに草深くなっている場所があった。
今岡は地に伏す松中の両脇に手を差し入れ、少しずつその身体を草叢へ運んで行った。
彼も大柄な部類に入るとは言え、重量は松中の方が勝っていたはずだ。
事もなげに、とはやはり行かないようで、かなりの苦労をしながら引っ張っている。
小久保は片足を踏ん張って何とか立ち上がり、小刻みな歩調でその後を追った。
遅れてたどり着いた草叢の中には、仰向けにされた松中が横たわっていた。
85 :
126:04/11/21 20:25:50 ID:tyAPZvkN
「……」
倒れこむように膝を折り、そっと松中の身体に触れた。
決して穏やかとは言い難い死に顔の、見開かれたきりの両目を閉ざしてやる。
怒りとも悲しみともつかない感情に震える手を持ち上げ、掌を合わせた。
もう泣いている場合ではなかった。せめてもの手向けにと、彼の冥福を一心に祈る。
(マツ、お前の意志は俺が継ぐ)
どうか安らかに ── きつく閉じた瞼を開いた小久保は、彼の腕に引っかかっている狙撃銃を見た。
地面の上を引きずられていたために、土と草があちこちに付着した銃を手に取る。
昨日、姿も分からぬ誰かに狙撃された自分と高橋を守ってくれた、松中の銃。
(結局、最後まで守られてばかりだったな…)
高橋と物別れした今、唯一信じられる身近な仲間は松中だけだった。
信頼 ── 脳裏をよぎった言葉に小久保はふと、顔を上げた。
風がまた、耳元で鳴った。天候の変わる前触れかもしれない。漠然とした考えを意識の隅に置きながら、
自分たちから少し離れて佇む今岡の姿を視界におさめる。
「今岡」
呼びかけたが、斜めに立ち、横顔を見せている彼が振り返ることはなかった。
何を考えているのかわからないという、第一印象の通りに、ぼんやりとある一点を見つめている。
── もしも。不意に浮かんだその考えは、本来ならば忌避すべきものだったのかもしれない。
けれど、警鐘に反して思考は続いた。
(もし、逆の立場なら、俺はマツを信じていただろうか)
死んだのが桧山で、殺したのが松中なら。松中が狂ってしまった、いや、狂わされたのなら。
今岡は泣いただろうか。殺してやると喚いただろうか。松中を止められなかった自分を逆恨みして ──
(……っ)
脳の血管が切れてしまうような錯覚に、小久保は首を横に振った。
今岡、と乾いた唇を動かしてもう一度呼びかけ、思うように動かない身体を起こした。
足を引きずって彼に近づく。右手に下げたライフルが振動で音を立てた。
それに反応してか、今岡がこちらを見た。彼の特徴とも言うべき無表情を目の当たりにし、小久保は
用意していたはずの台詞をなぜか失念してしまっていた。
「……古田さんたちはどこにいるんだろう」
結果、口から滑り出たのは全く意図しない言葉だった。何を言ってるんだ俺は、とほぞを噛む。
86 :
126:04/11/21 20:26:38 ID:tyAPZvkN
今岡は小久保の葛藤に気づいた様子もなく、少しの間を置いて、荷物の中から地図を取り出した。
広げた地図の印部分を示し、ここです、と言った。
「古田さんらはもう着いてるはずです。ここからだいたい二十分くらいですね」
「……合流するのか?」
「しないんですか?」
きょとんと首を傾げて、今岡が聞いた。
小久保は思わず眉を寄せる。この状態で古田たちと合流するということはつまり……。
「小久保さん怪我してはるやないですか。それの治療もせなあかんし、キャンプに合流したら
とりあえずは安全でしょ?」
「ちょっと待てよ。けど、桧山さんのことは……」
「このことは古田さんにちゃんと話しますよ。全部信じてもらわれへんかったとしても、桧山さんが
危険やってことは伝えとかないと」
今岡の口調には抑揚がなかった。わけもわからず腹立たしい気分になり、小久保は息を吸い込んだ。
「……そうじゃない! 今の桧山さんは誰を殺すか分からないんだぞ!? それこそ、先にキャンプ地へ
行ってしまったんなら、その場の全員を皆殺しにする可能性だってあるんだ!!」
それなのに、何でお前はそんな冷静なんだ ── 音声にならない叫びが胸中で渦巻く。
「何度も言わせないでください」
瞬間、今岡の表情がひずんだ。目一杯開かれた瞳孔に、灯のともるさまを見た気がした。
「 ── 俺は桧山さんを信じてる!! 俺にはそれしかできないんですよ!!」
抑えられた呟きに続いた怒号は、波状の響きを持って小久保の耳を打った。
冷や水を浴びせかけられたような感覚に、身体全体が硬直する。
疑心暗鬼に陥るのは簡単だ。自分が傷つかないために、相手を先に疑うことは呆れるほどに容易い。
それを戒めたのは、他ならぬ己自身ではなかったのか。
ここで今岡を信じないということは、自らを裏切ることにならないのか。
87 :
126:04/11/21 20:27:16 ID:tyAPZvkN
小久保は今岡の目を見た。双眸には光がある。力がある。
揺るがない意志が ── ある。
自分の目も今岡にそう見えていることを願った。
「すまなかった」
うつむいて、小久保は謝罪を口にした。
「俺は、お前を信じる」
その言葉の何と頼りないことかと、思う。
「だからお前も、俺を信じてくれ」
しかし口に出さなければ、決して伝わらない。そのための言葉なのだ。
小久保は右手に持った銃を、彼に差し出す。
「銃…、これを持ってろ。お前のは取られたんだろう?」
「……小久保さんは?」
「俺は持ってる」
ちら、と小久保は背後を振り返るようにする。先程の場所に荷物は置き去りのままだった。
松中が中村に託されたというその銃を、もう一度持ち上げてうながす。
「俺は、マツとその銃に守られた。だからお前もそれで、お前の信じる相手を守ってやれ」
今岡は小久保を見て、それから銃に視線を落とす。ややあって、ずっしりと重いそれを受け取った。
── これでいいよな。小久保は亡き友に向けて呟いた。
ふと口許を綻ばせた自分に、今岡も自然と表情を緩めた。
その時、互いに交わされた言葉はなかったが、小久保にとってはそれで充分だった。
【残り17人・選手会11人】
88 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/22 12:28:48 ID:FqhpAdb5
乙です!
今岡と小久保いいコンビになりそう。
小久保と今岡と井端と正津と平井はかっこいいな…
特にもう平井はいないし、正津はリアルで新天地だからな
激しく今更なんだけど。
>>11-12で、ナベが立浪と落合より年上みたく書いてるが
実際はナベ34歳、立浪&落合35歳のハズ・・・
92 :
358:04/11/23 00:13:34 ID:4g+rIpA8
>>91 orz
また何か勘違いを…保管庫の方に訂正文載せておきます。
112氏の仕事増やしてばっかりだな…
93 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/23 11:41:07 ID:8aDxIXiS
保守
95 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/24 09:33:56 ID:ANcXOJgW
hosyu
98 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/26 02:42:47 ID:2nm0YDBr
捕手
100
101
102 :
358:04/11/27 00:10:23 ID:L0LheeV0
147.生者を思う気持ちの鎖
別れの挨拶もなおざりに、渡邉は川相を追って走り出した。
その後ろ姿が遠ざかるにつれだんだんと、立浪の視界の中でぼやけていく。
チーム最年長のベテランでさえ、『逃避』してしまうような状況の中でも、
石川は最期まで優しかった。最期まで、自分以外の人間のことを気遣っていた。
自らの危機をも顧みずに立浪を庇って、そして命が果ててしまうほどに……
その対比が言いようのない感情となって、立浪の眼から涙を押し出した。
(石川、お前は……)
両手で顔を覆う立浪を見て、落合は静かに肩を叩いた。
「俺は、生きなあかんねや……」
「…ああ」
(もう、心配ない。後は俺たちが必ず守る。だから――)
落合が、立浪の背後にある光に向かって語りかけると、それは逡巡しているかのように、
二度三度輪を描いたが、やがて高く空へ舞い上がっていった。
(安らかに眠れ、石川)
見上げた空は相変わらず、禍々しい物たちが渦巻いていたが、彼の無垢な魂は惑わされず
それを超えて天へたどり着ける。そう、確信できた。
103 :
358:04/11/27 00:10:37 ID:L0LheeV0
視線を下ろしてくると、柳沢が何かを必死で求めるような目で、渡邉らの消えていった先を見つめていた。
「…どうした?」
「どうしたって…追いかけないんですか?」
どこかヒステリックな響きを持った彼の声に、泣いていた立浪も振り向いた。
「あのスピードには無理だ。川相さんはどこ行くかわからないらしいし、
今追いかける余裕はないよ」
「けど、川相さんも渡邉さんも、あれじゃ、あれじゃ死ぬに決まってるじゃないですか!」
(やばいな――)落合は口の端をきっと引き締めた。
柳沢は、自分一人が取り残されること、自分を置いて死なれてしまうことを極端に恐れている。
三人で行動するうちに、少しは治まってきたかと思っていが、やはりそう簡単にはいかないらしい。
狂った川相と、それにただひたすらついていく渡邉。落合も立浪も内心は、
あの二人がそう長く生き延びられるとは考えていなかった。
それは柳沢も同様で、二人が走り去った事が彼には、この世から消えていくようにさえ感じられたのだ。
眠りかけていた絶望的な感覚を、指で弾いてしまったら……
「それはわからない。けどな、柳沢。軽々しく死ぬなんて決めつけるな」
「だって、見ましたか? 渡邉さんの武器。あんなちゃちな銃で、何ができるんですか。
向こうは狙撃銃持ってるんですよ、おもちゃで対抗できるはずなんか――」
喚き立てながらついには髪の毛をかきむしって、彼はうずくまった。
「やっぱり死ぬんだ、みんな、俺を残して…」
呪詛のように死ぬ、死ぬと呟き続ける柳沢の背後には、彼のことが気がかりで
昇天できない魂が二つ、おろおろとしているかのように漂っているのが落合には見えた。
あまりに、救いようのない光景だった。
【残り17人・選手会11人】
職人さん乙〜。
落合かっこいいなー。
英二の設定はおいしいよなー
使う側も上手いけど
職人さん乙!
あの…落合は設定じゃなくてホントに霊感体質ですからw
15 名前:代打名無し@実況は実況板で[sage] 投稿日:04/11/07(日) 17:49:34 ID:SxE3c8dl
また中日ネタでスマヌが、前スレの最後のほうにあって未収録のままのやつ
【霊感】
中日落合英二投手のこと。文字通り霊感が強く、頻繁に霊を見たり予言をしているらしい。
例としては
1.新人時代、沖縄のホテルで誰もいないところを指差して「あそこの女の子がいる」とのたまい、
一緒にいた選手らを不気味がらせるが、あんまり頻繁に口走るため最後には先輩たちから
「今日は何が見える?」と聞かれるのが日課に
2.どのバットで打席に立とうか悩んでいた大豊選手に「これがいいですよ」とアドバイス
その打席で大豊は見事ホームラン
3.試合中にベンチで突然「ここでホームラン打たれる」と口走った途端、味方投手被弾
4.山崎武司に送った年賀状に「今年のあなたには『6』という数字が見えます」と予言
そしてその年の最終戦、その日までホームラン14本の山崎はふとその予言が浮かんだあと、
その日2本ホームランを打ち16本でシーズン終了
5.沖縄キャンプの休日。後輩らと港へ遊びに行った際に防波堤上に女性の霊を目撃
ここ数年伸び悩んでいた山田洋(現山田博士)に「ツキが変わるかもしれないから
女性霊の所に行って来い」と命令し、それに従った山田はその年のシーズン中に横浜へトレード。
6.高津を見て右腕の肘から下が見えないと言ったら高津の肘に故障発生
コレだな
一番下のが怖いな…
>107
あーゴメン、それは知ってたけど言い方が拙かったねw
将来、落合英二監督になったら大変な采配しそうだねー
新人投手に沢村栄治を表意させたりしそうだw
憑依だスマソ
113 :
623:04/11/28 10:47:24 ID:BqzoSLZW
148.嵐到来
海の天気は変わりやすい。
誰もが一度は耳にする言葉だが、それを実際に体感したことがあるものは
意外と少ないのではないだろうか?
だがいま現実に、否応なしに体感させられている者たちが存在していた。
「うわぁ!!!」
「おい、うるさいぞ!雷くらいで、いちいち叫ぶなよ!!!」
先程から度々あがる大の大人のものとは思えない情けない悲鳴に、
仲澤は一瞬だけ振り返り、八つ当たりも兼ねて怒鳴りつけた。
「だって俺、雷がこの世で一番苦手………
あああぁ!またでかいのキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!」
叫び声の主が誰なのか……確かめる気も起きなくなった仲澤は、今度は振り向きもせず、
返事すらしない。代わりに鉄を蹴りつけたような音が響き、辺りに気まずい空気が流れる。
突然の嵐に見舞われたのは、いまから十数分前―
間の悪いことに『協力者』である軍の男の助言で、針路を少々変更した直後のことだった。
そのことは艇内に、別の嵐をも巻き起こしかけている。疑心暗鬼という名の嵐を…。
しかし、そもそもはもうとっくに着いてもいいはずの島に辿り着かないことに疑問を持った
仲澤達のほうから男に助言を求めたのだ。
当然、仲澤にしてみたらこの事態がおもしろいはずもなく、ついつい気が荒くならざるをえない。
少し落ち着こうと、島が見えてくるはずの前方に注意を払ったままに深呼吸などもしてみるが、
黒雲とガスに覆い隠された視界は、ますます仲澤を苛立たせるだけだ。
「頼むよ…こんなところで立ち止まってる場合じゃないんだ……」
それは、祈りにも近い言葉だったが誰の耳にも届かなかった。
雷を従えたまま、雨は降り続けている。
目指す島影はまだ見えない……
【残り17人・選手会11人】
114 :
623:04/11/28 17:54:56 ID:BqzoSLZW
149.負けたくない
嵐に巻き込まれ立ち往生している仲澤たちを、知らず追い越していたゴメスたちは、
今まさに目的の島の目の前にいた。
このあたりの海のことを知り尽くしている漁師の男は、うまく嵐をくぐり抜け、
ほぼ最短の時間でこの島にゴメスを導いてみせたのだ。
「思ったよりも簡単に着いたな!」
短すぎる船旅の間にもすっかり打ち解けていた二人は、顔を見合わせて笑いあう。
「さて、どこか船をつけられるとこ探さなきゃ。」
そう言いながら操舵室に戻っていく男を見送ったゴメスが、男と出会えた幸運に感謝して、
十字を切り、顔をあげた時の事だった…ゴメスの視界に、海の色ではない青色が入り込む―
「wait!マッテ!!!」
それが何なのか、確信が持てなかったゴメスは、操舵室に一歩足を踏み入れていた男の元に
急いで駆け寄って、その方向に注意を促した。
「……人か?!」
男は急いで舵を握ると方向転換をして、人影と思われるものに向かって船を走らせ始めた。
近付いてみるとそれは確かに人のようで、そのいでたちからからするに中日の選手
―しかも、どうやら二人いるようだ――。
そのうちの一人はぐったりとして動く様子がなく、もう一人の方がその身体を支え、
必死に岩にしがみついているのがわかる。だがそれも限界が近いらしい…
ゴメスたちが近付いていく間にも、何回か海に沈み込みそうになっていた。
「しっかりしろ! いま助けるから、それまで頑張れ!!」
声を掛けながら男が急いで、しかし慎重に船を寄せていく。
限界まで近付いたところを見計らって、ゴメスが手を伸ばす、が届かない……
焦って身体を乗り出したところを、逆に背中をつかまれ引き戻されてしまった。
115 :
623:04/11/28 17:55:10 ID:BqzoSLZW
「危ない!お前さんまで落ちる気かい?ちょっと、待ってな!」
男は救命浮き輪を掴んで戻ってくると、すかさず海に投げ込んだ。
「つかまれ! 連れのこと絶対離すなよ!!」
意識を保っているほうの選手が声に反応して、なんとか浮き輪を掴んだのを確認すると、
ゴメスたちはロープを引っ張り始めた。
大人の男二人を一度で助けようとするのは容易なことではなく、ロープが食い込む腕は悲鳴を
上げていたが、そんなことを気にしている余裕もない。
そのかいもあって、徐々にだが船に近付いてきた選手二人の身体をタイミングを計って掴むと、
渾身の力を込めて船に引き上げた。
ゴメスが真っ先にしたことは、動かなかった選手の無事を確認すること――大丈夫…生きている!
「はぁ…こんな大物釣り上げたの久しぶりだぜ……。」
自分の安堵のため息と重なるように出た男のセリフと、さっそく二人の選手を救うことができた
喜びに、ゴメスが声をあげて笑った。
その声に反応して、床にうずくまって息を整えていた選手が顔をあげる。
「?…??……レオがどうしてこんなところに???」
「マズ、テアテスル。ハナシ、アト。OK?」
うなずきながらも、不思議そうな顔をして自分を見つめてくる、一緒にプレイをしたこともある
後輩にそう声を掛けると、気を失ってしまっている背番号21…正津の手当てをゴメスは始めた。
「さて、じゃあ兄ちゃんの手当ては俺がするとしよう。ちょっと乱暴かもしれんが勘弁しろよ。」
今度はまったく見知らぬ顔が現れたことに、更に不思議そうな顔になった背番号11番…川上の腕を
男は構わずに取ったが、その有様におもわず顔を顰めた。
左腕の傷もさる事ながら、二人分の体重を支えていた両手は殆どの指の爪が剥がれ落ち、
手の平にも数え切れないくらいの擦過傷と切り傷が出来ていて赤黒く腫れ上がってしまって
いたのだ。
116 :
623:04/11/28 17:55:25 ID:BqzoSLZW
「こりゃひでーや……兄ちゃん、よく頑張ったなぁ。」
「負けたくなかったんす……絶対、負けられない試合だった……か…ら………」
「?」
突然言葉が途切れたことに不審に思って顔をあげた男の目に映ったものは、
目を閉じ横向きに倒れていく川上で……
「わっ!ちょっと待て!」
慌てて支えようとはしたものの、タイミングが合わず一緒に床に倒れこんでしまった。
「いてて……いきなり寝るなよ!……まったく…」
文句を言いながらも、男は身を起こし、気を失ってしまった川上の手当てを続けようと
消毒液を手に取ったのだが…その時、船が風に煽られ大きく揺れた。
「こりゃ、いけねぇ。嵐が来るな……」
身体に感じた風にその事を確信した海の男は、手当てを中断し操舵室に戻りながら、
ゴメスに声を掛ける。
「ゴメスさん、その旦那の手当てが終わったら そっちの兄ちゃんのほうも頼む!
少しの間、島から離れるぜ! 風に煽られて岩場にぶつかったりしたら船に穴が開いちまうから!!」
早口でまくし立てられた為、言葉の意味の全てはわからなかったが、ゴメスは男を信じてうなずいた。
こうして、船は島から離れるべく動き出す。
島から離れられないはずの二人を乗せたままで…
【残り17人・選手会11人】
乙です!
ケンシン助かったー(つД`)
118 :
126:04/11/29 00:17:29 ID:P6C6CPvD
150. 蜘蛛の巣
新しいキャンプ地は断崖に面しているためか、時折吹きつける風の勢いがことさら強く感じられる。
木の根元に腰を下ろしている緒方は、ざわざわと枝のしなるさまを視界の中におさめ、その先に広がる
空の変化を見てとった。
(雲が出てきたな)
朝方は見られなかった、灰色がかった薄雲が青の領域を侵しつつある。今すぐとは言わないまでも、
いずれ天気が崩れるのかもしれなかった。
節くれだった木の幹に後頭部を当てて空模様を遠くに眺めながら、何でもいい、と意識の隅に思った。
── 舞い落ちる枯葉。地面を這い回る蟻。風の音。他愛のない会話 ── 何でもいい。
とめどなく思考することを止めずにいられる材料が、今は何より自分には必要だった。
抗いがたい睡魔のように、意識を埋めつくそうとする暗闇が迫る。
右耳の、外せずにいるイヤホンのスピーカーから、可聴域ぎりぎりのかすれた『声』が ──
「緒方」
ふわり、と意識の浮き上がる心地がした。柔らかな声音が耳元をさらう。
振り向くと、真顔でこちらを見ている中村の顔が目に入った。緒方は目配せで応じ、首を傾ける。
「それ取ってくれないか」
彼が指さした先には、ペグ打ち用の鎚が転がっていた。さっきテントを張る際に使ったものだ。
手を伸ばしてそれを拾い上げ、中村に手渡した。
「考え事か? ホームシックなわけないよな」
木のそばに張られたテントの前に腰を下ろしながら、中村が口を開く。テントの四隅を固定する金具が
気になるらしく、触って具合を確かめている。
「いいえ、何でも…。そんな深刻そうに見えましたか、俺?」
「あー、やっぱペグ打ち甘かったなあ。……というより、お前そんなに喋るの得意じゃないほうだろ」
「…得意ではないですね」
答えた緒方に、だろ? と中村は鎚の柄を向けた。
「実は俺もなんだけどな。あれだ、類友。そんな気がしたんだよ」
視線をペグに戻した横顔で、中村が言う。そのまま、金具を鎚で叩きはじめる。
彼の意図を読めずにいると、少し離れた前方の平地にいる古田の声が聞こえてきた。
119 :
126:04/11/29 00:19:10 ID:P6C6CPvD
「あ、中村おった」
そちらに視線を移すと、古田が手振りと口の動きで「中村呼んで」と言っている。緒方は中村の肩に
触れて、古田が呼んでいることを伝えた。中村は金具を打つ手を止めて後ろを振り返り、頷いた。
鎚をその場に置き、彼が立ち上がる。その動きを追った自分に、ふと目を向けてくる。
「あんまり溜めこむなよ。話せることは話したほうがいい」
な、とこちらの肩を軽く叩き、中村は古田のいる場所へ足を向けた。柔和な笑みを残して。
中村の姿が遠ざかった後、緒方は視線を落とし、自らの肩を手でつかむようにした。
(話せることなら ── )
今すぐにでも洗いざらい全部吐きだしてしまいたい衝動に、背筋が震えた。
心のストロボが伏せた瞼の裏を灼き、この身に降りかかった事象を鮮明に映しだす。
あの時、背骨に沿って押しつけられた銃口の冷たさと、『彼』の発した声。
── 興味があるんですよ。あんたがどんな風に狂っていくのか。
(コロセ)
殺せ、と、右の鼓膜を絶えず打つ吐息が、思考の焦点を奪う。五感と、シナプスとの直結が鈍っている。
目はただのレンズ。耳はただの集音機。口は壊れたスピーカー。
眼窩に収まったレンズが、差し向かいに座り込んで話す二人の男を捉え、さらにその様子を腕組みして
傍観している男(こちらは木にもたれて立っている)に向けられた。
集音機は吹き荒れる風の音を拾うばかりで、彼らの会話まではつかめない。
そして吸い寄せられるように、レンズはそれを見た。
前方から左側へ。テントの緑色の先、目立たない場所を選ぶようにして座っている人物。
地面に置いた小さな道具を、面白くもなさそうに片手で操作する ── その動きを止め、顔を上げた。
彼の両目が冷たく細められ、笑顔となる。嘲るそれに。
── でも俺の予想だと、緒方さんはあっさりと狂ったりはしないと思うんですよね。
(高木)
知っている。自分は知っている、それでも。
闇に侵食され、塵と化していく自我がそれでも、まだ意志を保とうとしていることを。
じわじわと『狂っていく』己自身を、第三者の目で見ていることを。
知っているのだ、何もかも。緒方の思考は虚をさまよう。
120 :
126:04/11/29 00:20:58 ID:P6C6CPvD
元凶は、無線機から繋がる右耳のイヤホン。だがこれは外せない。いっそのこと外してしまえば楽に
なれるだろうことを分かっていても、生存本能が否応なく先に立つ。
(腹の中にある爆弾、か。本当にドラマだな)
選手会役員全員の体内にあるという、カプセル入りの爆弾の存在を告げたのは高木だった。
少しでもおかしな真似をすれば、監視しているオーナーがそれを爆発させるという。
想像は恐怖を生み、生まれた恐怖は自身を束縛する糸となる。袋小路のメカニズム。
殺せ、殺せ、と急きたてる声が、果たして聴覚が捉え続けているものなのか、それとも脳内でリフレインを
起こしているだけなのか、判別すらできなくなっていた。
ああ、殺してやるよ ── 緒方は思う。この場にいる人間を片っ端から撃ちぬくのはどうだ。それでは
面白くないから、ここにある鎚で頭を叩き割ってみようか。
誰を最初に? 誰から? ふつふつと熱くなる脳とは対照的に、冷やりとしたものが掌に触れた。
知らないうちに、鎚を握りしめていた。緒方は表情をひきつらせた。笑いたかった。
(残念だな、高木。俺はとうに狂ったみたいだ)
掌に張りついて放せないそれを固く握ったまま、緒方は立ち上がる。夢遊病者のように危なげな所作で。
だがそれでいて、無駄のない素早い動きで。
「古田さん」
その時彼が ── 清原が発した声を、古田は危うく聞き逃してしまうところだった。
中村との会話の間隙ができた瞬間でなければ、低く平坦な呟きはたやすく風に紛れていただろう。
そちらを振り返ると、腕組みをした清原が元々のいかつい顔をさらにしかめて、ある方向を見つめていた。
「……緒方がおらん」
ただ読み上げられただけの台詞は、理解するためのわずかな猶予を古田の脳内に生んだ。
まさか、とその人物がいたはずの場所へ視線を転じ、そして清原の告げた言葉に偽りのないことを知る。
降りそそぐ木漏れ日が、灰色の雲に翳った。
【残り17人・選手会11人】
121 :
126:04/11/29 00:27:46 ID:P6C6CPvD
しつこいようですが、体内爆弾は高木のウソです。
122 :
112:04/11/29 00:43:56 ID:4lUM38Co
151.勝利条件
乾いた笑みと、向けられた銃口―それが、佐伯の裏切りを確信させた。
オーナーに好き好んで与しようという佐伯の気持ちは、由伸の理解の範疇を越えている。
…まだ小久保の考えていたことの方が理解できる気がした。甘い考えだったけれど。
(佐伯さんがどういうつもりでも…殺し合わずにすむわけがないな)
自分の銃は狙撃銃、佐伯の銃は自動拳銃のようだ。
懐に入られたら、やばい。
距離を詰められたらどうなるかは、ついさっき身をもって確かめたばかりだ。
ただし、と由伸は思う。
(無理して殺さなくても、逃げられればそれでいい。
…殺すのがベストだけどな)
裏切りが知れているのとそうでないのとでは、危険度が全く違う。
逃げきって、佐伯の裏切りを選手会の誰かに伝えることができればいい。
目の前に敵がいるというのに、思ったより落ち着いている自分に気づき、由伸は薄く笑った。
(とにかく、生きてこの場を切り抜けること。それが、俺の勝利条件)
憎しみのこめられた視線と、向けられた銃口。―それが、裏切りの発覚を確信させる。
(よりによって由伸か…ナベツネさん怒るやろうけど、しゃあないな)
由伸の銃は狙撃銃、自分の銃は自動拳銃。この距離なら十分優位に立てる。
ただし、と佐伯は思う。
(逃がしたらまずい。絶対殺さんとあかん)
逃がして裏切りが知れてしまえば、今後の行動が著しく制限される。それは避けたい。
いずれ露見するにしても、タイミングは遅ければ遅いほどよいのだから。
(何が何でも仕留めること。それが、俺の勝利条件)
123 :
112:04/11/29 00:46:25 ID:4lUM38Co
「なあ、由伸」
少しだけ足を踏み出しながら呼びかける。
一応説得だけはしておかなければならない。
由伸が応じることはないだろうが、ナベツネへの弁明のためだ。
「できたら、お前は殺したくないんやけど」
何気ない風を装いながら、少しずつ距離を詰めていく。気づかれないように、ゆっくりと。
「今更何言ってるんだ。あんた、ジジイどもの手先だろ?」
気づかれないように、少しずつ後ずさる。少しでも距離を稼いでおかなければ。
「んー、まあそうやね。でも、お前殺したら渡辺さんに怒られてまうからなあ」
銃口を向けたまま、軽く肩をすくめてみせると、由伸の表情が僅かに強張った。
「渡辺さんはお前のこと心配してるで。恩を仇で返すのはよくないんとちゃう?」
「恩なんてねえよ」
吐き捨てる。あるのは、憎しみと怒りだけ。
睨み付ける由伸に、いっそ優しい口調で問いかける。…決して受け入れられることのない問いを。
「お前が協力してくれたら楽できる。…なぁ、俺と来んか?」
「断る。あのジジイに従うつもりはない」
「そうか…」
ならば、ここから先は殺し合いだ。
少しの静寂の後、双方の表情が同じようにゆがんだ。
「…じゃあ、死んでもらうしかないわなぁ?」
【残り17人・選手会11人】
152 宴の支度〜浸透〜
「目標の内部システムは全て掌握しました。いつでも仕掛けられます。」
先刻からもう三度も同じ報告をして来る。早く仕掛けさせろとの催促だろう。軽く頷き、
男はチェシャ猫のような笑みを顔に貼り付けてゆっくりと答えた。
「まだだよ。まだその時じゃ無い。」
何日も風呂に入らない人間特有の体臭と、ジャンクフードの臭いが充満したその部
屋で端末に向かう太った男たち。彼の会社の後ろ暗い部分を担当する部署、社長室
第二別室。
既に「プログラム」の管理システムは密かに彼の掌中にある。命令ひとつでいかように
も操れる。だがたかがアナログメディアの主と言えど相手の力は強大だ。安易に正面
切ってこの「プログラム」を崩壊させた所でその後に狩られるハメになるのは目に見え
ている。
彼は待っていた。後ろから殴り倒すタイミングを。その一撃を老人達の致命傷へと結び
つけることが可能な一瞬の隙を。
無論、仮にも企業家である。単なる私怨だけでリスクは取らない。それに見合うだけの
収益は毟り取る。英雄として球界に迎え入れられる新たなる盟主の座、そしてその知名
度と信用を武器にIT業界の中心に躍り出る。
その為には──選手どもにはもう少し踊っていて貰おう。
「俺の知らない会社、ね・・その侮辱、後悔させてあげるよ?爺さん。」
【残り17人・選手会11人】
125 :
代打名無し@実況は実況板で:04/11/29 06:23:57 ID:LxqhX4i9
新作キテタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
職人さん達GJです!
とりあえず憲伸と正津が(つ∀`)
職人さんたち乙
ホリエモン光臨しとる…w
スケールがどんどん大きくなっていくな
そしてゴメス頑張れ
やべえホリエモンがかっこよすぎる
ぞくっとした
ホリエモン臭キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
ひそかにヨシノブと佐伯も修羅場
ホシュ
133 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/02 22:16:35 ID:EAPDofC+
hosyu
136 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/05 02:19:47 ID:leJK943G
降臨期待あげ
137 :
112:04/12/05 07:54:20 ID:hN4GYhj3
153.踏んだり蹴ったり
「死んでもらうで、由伸!」
先に動いたのは佐伯だった。
手にした銃を撃ちながら突っ込んでいく。銃弾が由伸の周囲で撥ねた。
「―死ぬのは、あんただっ!」
佐伯に照準を定めて、由伸は引き金を引いた。
しかし、走ってくる人間を狙うのは、やはり容易なことではない。
胸を狙ったはずの銃弾が逸れて肩をかすめる。赤い血が散ったが、佐伯は止まらない。
必殺を狙った初撃が外れた。…ならば、無理はしない。生き残ることが最優先なのだから。
木を盾にしながら逃げ、チャンスがあればまた撃つ。
由伸は身を翻した。
(一撃離脱ねぇ…悪うないで、由伸)
潔いほどの逃げっぷりに、佐伯は目を細めた。
「ただし、お前の足が万全だったらの話やけど」
その視線は由伸の足に向けられている。井端との交戦で負傷した足。
痛むのだろうか。僅かに引きずるような形になり、スピードを殺してしまっている。
あまりの足の速くない佐伯でも、容易に距離を詰められるほどに。
銃声が近づいていることに気づいて、由伸は舌打ちする。
負傷した足。なんとか一人で歩けるくらいにはなっていたが、走るのはまだ無茶だったようだ。
このままでは、そのうち追いつかれて、そして――
銃声と共に由伸の右腕が跳ね上がり、激痛が走る。
銃を取り落としそうになるが、両手で何とか支えて振り返り、発砲した。ろくに照準もつけないままに。
当然命中するはずもなく、銃の反動が右腕に強く響いた。
右腕が銃から離れ、だらりと落ちる。追い打ちを掛けるように、脇腹を銃弾が削いだ。
地面に膝をついてしまった由伸の右腕と脇腹からは、真っ赤な色がにじみ出ていた。
138 :
112:04/12/05 07:54:47 ID:hN4GYhj3
「畜生…」
それでもなんとか立ち上がり、佐伯を睨み付ける。
気の弱い投手ならおびえて制球が定まらなくなるような視線の先で、
佐伯は悠然と銃のマガジンを取り替えた。
「その足でよう頑張ったけど、ここまでみたいやね」
銃口が由伸の胸に向けられる。
「じゃあな、由伸。…恨まんといてな?」
引き金を引こうとした佐伯の動きが、急に止まった。
佐伯の顔が困惑にゆがむ。胸ポケットに振動を感じて。
それは、携帯電話の着信を知らせる振動だった。
―由伸にとどめを刺そうという所に電話してくる奴が誰かなんて、確認しなくても…考えなくてもわかる。
(ナベツネさん…!この大事なときに!)
渡辺は由伸に執着しているようだった。
ならば、この電話は―「由伸を殺すな」との叱責と、
「逆らったら横浜がどうなるかわかっているだろうな」との恫喝に決まっている。
(んなアホな。由伸逃がしたら、どうなると思ってんねん!…でも…)
佐伯の動きが止まったのを見て、由伸は素早く動いた。
手にしたドラグノフ、右腕の負傷でまともに構えることすら難しいそれを、思い切り佐伯に向けて投げつけると、
佐伯がバランスを崩してよろめくのを確認することもなく、森の中に飛び込む。
足が、腹が、腕が、焼け付くように痛むが、かまっていられない。
少しでも遠くへ行かなければ。生きて切り抜けて、誰かに―
気を抜けばかき消えてしまいそうな意識を叱咤しながら、由伸はひたすら森を駆けた。
139 :
112:04/12/05 07:55:44 ID:hN4GYhj3
森の中へ消えていく由伸の背中に銃口を向けたまま、佐伯は動けなかった。
由伸は怪我をしている。銃も手放した。
今追いかけていけば、仕留められる、それなのに、追いかけることができない。
ポケットの振動は続いている。のろのろと携帯を取り出すと、案の定渡辺からだった。
―無視して撃てばええ。
ええやんか、ベイスターズなんか、どうなっても。
ベイスターズが潰されたって、知らない。そう、知らない……
「……んなわけ、ないやろ」
力のない呟きが漏れた。
佐伯にとってベイスターズは全てを擲って守るべきもの、愛するべきものなのだ。
―たとえ、それが自分を切り捨てた存在であったとしても。
苦虫を噛み潰したような表情で銃を降ろすと、やっと電話の振動は収まった。
「こういうのを、踏んだり蹴ったり、って言うんやろうなあ」
―チームメイトを、殺した。
―愛するチームから、切り捨てられた。
―裏切りがばれてしまった。
―自分に指示を出している人間に、由伸の殺害を邪魔された。
―由伸に逃げられた――
佐伯は天を仰いだ。
見上げた視線の先では、佐伯の愛するチームのシンボルカラーと同じ色の空が
急に出てきた黒雲に浸食されようとしていた。
まるで今の自分の心のようだ、と思う。
自然に、弱気な言葉が口をついて出た。
「…横浜、帰りたい…」
【残り17人・選手会11人】
140 :
2×4:04/12/05 08:23:57 ID:p08aWv7o
ごめん、つまらん
佐伯…(つД`)
>140
職人さんGJ・・・・
佐伯・・・・・本当にお前って奴は・・・・・(つД`)
板が英智だらけ・・・
145 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/06 19:20:02 ID:O+lOAHaY
age
保守
147 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/07 16:21:57 ID:Vaap48ng
tanisige
150 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/09 00:42:59 ID:PcSh4TFj
ほす
保守
153 :
358:04/12/10 22:23:44 ID:q5mNc7Wp
154.道化の目的
背後の足音は一向に遠ざからなかった。複数ではない。あいつ一人だけだ。
もう追ってくれるな…。走ってみると、一日分の疲れが濡れた布のように
身体全体にまとわりついてくる。反射的に走り出したが、さっきいた地点から
どちらの方に向かったか、どれぐらい離れてしまうと"コース"を見失ってしまうか……
衝動の後ろ髪を、理性がつかんだその時だ。
右足が障害物にぶつかって、深くすくいあげられた。
上半身は慣性の法則に従って、今までのスピードで前へ進もうとする。
当然、身体が宙を舞った。股のぞきした視界には横たわるユニフォーム姿の誰かと、
そして追ってくる背番号5が――
「ぐぁっ」
頭頂部では衝撃全てが吸収できなくて、首に反動が伝わった。遅れて、下腹部が
地面に叩きつけられ少し跳ねた。
「川相さん!」
ずっと前から聞き続けているような錯覚さえする、渡邉の叫びが耳に届く。
首の骨はどうやら大丈夫らしい。けれど、すぐには動けそうになかった。
吐き出す息で、目の前の雑草が振り子のように大げさに揺れるのが、ぼんやりと映った。
何に躓いたんだ……けれど、あれは多分中日の……
「川相さ――」
彼の台詞が途切れた。心音が、走ったのとはまた別の理由で大きくなるのがわかる。
誰だ、そして生きてるのか、死んでるのか。
次の言葉が出るまでが、やたらに長い時間のように思われた。
「…森、野?」
それを合図に、なんとか頭を動かしてみた。つま先の向こうに見えるのは、黒い染みが広がる
中でも鮮やかに浮かび上がる、赤い算用数字の8だった。
154 :
358:04/12/10 22:24:00 ID:q5mNc7Wp
『そりゃ川相さんはいいですよ、世界記録持ってるし、
もう十分野球やって満足いってるのかもしれませんよ』
そう、人を罵倒して離れていったのはいつだったか。1日前の出来事だ。
なのに、随分昔の出来事のように思えた。
あの時、右手の拳が震えていたのを、こいつは気づいていただろうか。
殴りかかりたかった事を。ここへ来た自分を踏みにじられた屈辱感に、
怒髪天を衝くほどの思いでいた事を。恐らく彼は気づかなかっただろう。
そして気づかないまま逝ってしまった。あの時、怒りにまかせて彼を殴っていれば、
(確かに怪我はするだろうが)こうして一人死んでしまうことはなかったのではないか。
渡邉が懸命に、横たわった森野から返事を得ようとしていたが、それはもちろん叶わない。
彼のやりとりが急に遠ざかっていく。一つの疑問に、気がついたために。
――何のために、自分は狂ったふりをしているのか?
このままでは、抑えた怒りも悲しみも、全てが無駄になってしまう。
こいつらがあっけなく死んでしまっては意味がないのだ。多少の犠牲は出るだろうと
頭ではわかっていたが、目の当たりにしてみると違う。もっと強く切迫した自責の念が押し寄せてくる。
うかうかしていられない。地面に手をついてみた。しっかり力が入った。
じわじわと自分の体を地面から引き離す。渡邉は黙って、隣に佇んでいた。
こいつと鬼ごっこをしてる時間はない。走り出した時の胸に迫る思いも、こいつが
死んでしまえば何にもならない。
一刻も早く、"蛇"の巣へ。そこでたとえ、こいつらを救う決定的な手段が見つからなかったとしても、
今自分には、それしか方法がない。行くほかにないのだから――。
頭の中で地図を広げた。さっき進もうとしていた方向と、今自分が走ってきた方向、結ぶと
三角形の斜辺が現れる。右よりの道をとれば、元の方向に戻れるはずだ。
まだふらつく足取りで草を踏み分けていくと、その後ろをやはり、渡邉がついてきていた。
泣いてはいなかったと、思う。
【残り17人・選手会11人】
相変わらず巧い話運び。
川相の向かう先はもしかして・・・?
久々の投下、乙です!
川相&ナベコンビ、本当に好きだー
158 :
112:04/12/12 12:40:35 ID:f/h7aZKt
この話の時期って、2004年夏頃、オリンピックの前くらいでいいのかな?
由伸の話でオリンピックネタ使ってみたいと思ったんで、今更ながら聞いてみる…orz
159 :
623:04/12/12 15:08:10 ID:gOwSy157
>>158 自分も、それ少し気になってました。<この話の時期
とりあえず序章でナベツネさんが「今季首位で良い思いをしただろう」って
言っているのと(まだ優勝は決まってないが、それに近い時期?)、岩瀬と福留が
このバトロワにちゃんと参加していること、福留がまだ骨折してないことの3点を踏まえて、
8月後半くらいなのかなと自分は思ってました。
そしたら、ちょうどオリンピック直後になりますね。
160 :
126:04/12/12 15:19:30 ID:KVEBKl4U
>>158 自分はオリンピック終了後の気持ちで書いてました。8月後半〜9月くらい?
(ドメの骨折は完全に頭から飛んでました…。ってことは9月はありえんわなorz)
オリンピック前の設定だとすると、日本代表がイタリア合宿に入ったのが8月5日
なので、それ以前(7月末くらいから)の話ってことになるんですよね。
それだと、ナベツネの「良い思いをしただろう」っていう台詞にちょっと無理があるかな、
と思うのですが。
2003年の阪神ならともかく、今年の中日はぶっちぎりってわけではなかったですし。
161 :
112:04/12/12 15:57:15 ID:f/h7aZKt
>>159 >>160 今まで7月後半、オールスター休みくらいを想定して書いていました。
岩瀬とドメ、由伸がいること、ナベツネさんがまだ辞任してなさそうだったこと(はっきりと書いている部分は見つけられなかったけど)、
「第2の合併が行き詰まっている」と序章で白井さんがいってた辺りで
そう判断してました。
オリンピック終了後、8月末で進めた方が良さそうですね。
書く前に聞いてよかった…
162 :
112:04/12/12 16:18:09 ID:f/h7aZKt
それと、これまた今更なんですけど、
参加者の現在の位置関係図とかって保管庫に置いた方がいいですかね?
個人的には、結構たくさんの選手が狭い範囲に集まっているような印象があるんだけど。
163 :
623:04/12/12 17:36:03 ID:gOwSy157
155.哂う魔物
落ちてきた雨粒を感じて立ち上がった井上は、ただ歩き続けていた。
関川の生死を確かめる勇気はまだ出なかったが、この場を離れる気にもならず、
その輪を広げながら狭めながら、ひたすら関川とはぐれた場所の近くを巡り歩いていたのだ。
その足と同様にグルグルまわる思考の中で『もう、いっそのこと死んでしまいたい』という
井上自身の声と『お前は絶対生き延びろ』と訴える関川の声が交錯する。
目の前がぼやけるのは雨のせいなのか、それとも涙のせいなのか、それさえもわからない。
まるで迷路にでも迷い込んだかのように、彷徨い続ける井上の目にとうとう横たわる
ドラゴンズのユニフォーム姿が飛び込んできたのは、どの位の時間が経った頃だっただろうか?
「…セ、セキさん…?」
しかし、震える足を叱咤し何とか歩み寄った井上の目に映ったものは、関川ではなかった。
胸部から血を流し、倒れているのは背番号58、
死してなお、自分自身を守ろうとするかのように銃を構え、目を見開いたまま息絶えている大西で…
「……お前、こんなになってまで人に銃をむけるのか?そんなに生きたかったのか?
そこまでして生きる必要あるのか……?」
(俺は、本当に生きてていいのか……?セキさん…大西…誰か答えてくれよ……)
「いい顔して死んどるなぁ。」
大西の死体に取りすがり、泣きむせんでいた井上の背に、何とも気軽なその声が掛かったのは、
井上がせめて見開かれたままの大西の目を閉じてやろうと手を伸ばしかけた時のことだった。
高橋由伸が戻ってきたのか?―と井上は身を強張らせたが、声も言葉のイントネーションも、
高橋のものとは違うことにすぐ気付く。
だが、目の端に映る服の色はドラゴンズのユニフォームの色ではない。
選手会の誰かであることは間違いないだろう…
無意識に自らの武器であるナイフの所在を確かめつつ、涙を拭って井上はゆっくりと振り向いた。
「……桧山さん……?」
「あっちには23番の死体が落ちてわ。お前がやったん?」
笑みを浮かべたまま告げられた言葉の内容に一瞬、呆然としてしまったが井上だったが、
目の前の男のあまりにも不遜な態度に、その心はあっという間に怒りに染まる。
164 :
623:04/12/12 17:36:15 ID:gOwSy157
「落ちてた…ってそんな言い方……それに、なんで笑っていられるんです?
あんたとセキさんは同じチームで一緒に戦ったこともある仲間でしょうが!!!」
だが桧山はその怒りに感銘を受ける様子もなく、井上の神経を逆撫でする笑みを更に深めながら、
井上を挑発するかのような言葉を重ねていく。
「仲間いうても、所詮勝ち負けの世界や。エゴが強い奴だけが生き延びる、野球もこのゲームもな…
いい子ちゃんになった時点で負けやねん。それに…」
「それに?…何だってゆうんです!?」
「いまはただの敵やないか。敵は殺すだけ…死体になんぞ興味ない。」
「なっ…!?」
「聞こえんかったか? それが何様であろうが、負け犬になんぞ興味ない、そう言ったんや。」
そう言い放つと、何がおかしいのか腹を抱えて笑い出した桧山に、とうとう井上の怒りは頂点に達した。
「笑ってるんじゃねえよ!!!……殺す…あんたは許さない……いますぐ笑えなくして、
あの世でいまの暴言と態度をセキさんに謝らせてやる!」
「おお、怖。ほんなら、殺される前に殺さんとあかんね。」
その言葉と共に、井上の足元に何かボールのような大きさのものが転がる。
(手榴弾………!!?)
井上は反射的にその場を駆け出したが、十分な距離は取れず、爆風に煽られ地面に叩きつけられた。
全身が切り裂かれたように痛みが走り、気が遠くなりかけたが何とか意識を保つと、近付いてくる
桧山の影に向かって、ナイフを一本投げつける。
「なっ、危ないやんか!無駄あがきせんで、あっさり死んどいたほうが楽やで。」
その言葉に、桧山の身体にナイフが当たらなかったことを悟った井上だったが、
ここで引くつもりは当然なかった。
「冗談は顔だけにしておいてくださいよ…」
(死んでたまるか…絶対、生き延びてみせる!!)
この期におよんで、ようやくそう決意できた自分に苦笑を浮かべると、井上は残ったナイフを構え桧山と再び対峙した。
【残り16人・選手会11人】
冗談は顔だけキター!
人のこといえn(ry
166 :
623:04/12/12 17:39:11 ID:gOwSy157
>>162 位置関係図、あれば助かります。ちょっとした地図代わりにもなりそうですし…
112氏の負担になりすぎないなら、作って頂きたいです。
正直ゴリには生き残って欲しい。
168 :
126:04/12/12 22:48:59 ID:KVEBKl4U
156. 鏡のこちら、鏡の向こう
── バンッ! 磨り硝子のはめ込まれた引き戸が立てた音に、中里は身をこわばらせた。
亡霊の残像が瞳に灼きつく。ひきつった肺が上下する一呼吸の間に、その幻影は視界から消えた。
そこには、赤い液体に浸ったガラスの破片が散らばっているのみ。
(何 ── だよ ── )
中里はうめいた。見開いたままの両目を正面の扉に戻す。ふっ、と影がさした。
眼前にあるのは、スラックスの膝から下。血糊を引いた革靴。
生唾を飲みこむ音と、心臓が大きく跳ねる音、耳にはどちらの音が響いたのか ──
腕を支えに上半身を起こし、膝をひき寄せた中里の視野を、黒く丸い穴が覆った。
メスを握った左手を動かす契機を見つけられないまま、中里はその闇を見つめる。死の穴を。
革靴が一歩、こちらに踏み出してきた。引き戸がまた、がたんと揺れる。
……ああ、そうか。中里は得心し、瞳の焦点を絞った。像を結んだ銃口から視線を上げ、目の前に
立つ人物の隠せない震えを見てとる。
「………立ってるのも、やっとって感じだけど………?」
この期に及んでも旺盛さを失わない強がりと減らず口は、肌にまとわりつく緊張をはねのけるのに
丁度良い作用を及ぼしたようだ。
(焦るな、こいつは死にかけなんだ)
そう言い聞かせることで、一度萎えかけた闘争本能を呼び覚ます。相手を ── 黒木を見上げる
中里の顔に、余裕の笑みが宿った。ゆるやかに。
さながら鉄仮面のようであった黒木の無表情に、ほんのわずかな亀裂が生じていた。
互いの視線がぶつかった時間は、そう長くはなかった。
ゆらめく双眸の奥に迷いが映った。その隙を見逃さなかった中里は、すっと姿勢を低くした。
標的を見失った銃口がさまよい、下がる。たたらを踏んで後退しかけた黒木に追いすがる形で
中里は床を蹴る。
欠けた指からの流血と、後輩を刺した際に浴びた鮮血。その両方によって赤く染まった右腕を黒木の
胸に押し当て、勢いもろとも後ろの扉に叩きつけた。
「!」
ばあん、と盛大な音を響かせる引き戸に身体を縫いとめられ、黒木の表情が驚愕の色に染まる。
磨り硝子の振動がおさまるのを待つことなく、中里は左手に握ったメスを振りおろす ──
169 :
126:04/12/12 22:50:32 ID:KVEBKl4U
黒木は右手の銃を握りしめる。この扉の向こうに仇敵がいることは分かっていた。
「70、そこにいるんだろ」
そう言って扉に近づいた瞬間、急な目眩が黒木を襲った。よろめいた身体が引き戸にぶつかる。
── バンッ! 鼓膜を叩く衝撃が全身にくまなく行き渡るまでの、ほんの一秒足らず ──
『……、7番のある背番号みたいやな』
水口を殺したのは、7のつく背番号の選手。
『酷い怪我だったから心配したが、大丈夫か?』
敵であるにもかかわらず、負傷した自分に手当てを施したあの選手。彼の背中についていたのは
「17」だった。
黒木の目の前に広がる血の海。そこに伏す死体の背には、「67」の番号が見える。
17、そして67。どういうことだろう、なぜ水口の仇が二人もいるのか。
『ゴキブリみたいだ、殺しても次々出てくる…』
── 殺した? 誰が、誰を? ── 決まってる。水口を死に追いやった相手を、だ。
扉についた左手で身体を支え、コルトポケットを握る右手を顔の高さに持ち上げた。
── この銃で殺した? これで仇を取ったというのか?
(まさか)
澱む水の中を黒木は進んだ。一歩一歩が果てしなく重い。
部屋の中に踏み入った足元で血溜まりが音を立てた。立ち込める鉄錆の臭いに吐き気を催すとともに
その先に倒れ伏す人物の存在を認め、脳幹のしびれが一層強いものとなった。
(70番…)
コルトポケットが標的を捉えた。呆然と、血にまみれた顔を上げてくる相手の眉間に銃口を向けたのは
しごく自然な ── 反射的な動作であるはずだった。
忘れるはずもない、この顔だけは。傷の痛みに震える右腕の先の銃を懸命に固定し、トリガーに指をかける。
だが討ち果たすべきその相手を睨みつけた瞬間、目の前の映像が不意にすり替わった。
70番ではない人間が、額の中央に黒い穴を開けて後方へのけぞっていくのを、黒木は見た。
── 簡単なんだな。憶えのない声が響いた。混乱に侵された脳が全身の動きを封じる。
「!」
右腕がだらりと下がったことに気づくまでに、致命的な時間差が生じていた。
霧散した幻覚の間から現れた70番の腕が胸元を突き、身体を後方に押しやった。固い引き戸に背中が
ぶち当たる。痛みにうめく黒木の眼前に、金属の閃光が迫った。
……意識が空洞と化す。再び。
170 :
126:04/12/12 22:51:24 ID:KVEBKl4U
振りおろされたメスが、黒木の右頬をざくりと裂いた。
刃が肉を切り裂く擦過音と、鮮やかな血の色。その二つを知覚したときにはもう、中里の左腕は
乳白色の硝子を破り、廊下側に突き抜けていた。ばらばらと破片が床を打つ。
(こいつ…!)
黒木の首筋を捉えたはずの刃は、唐突に頭を沈ませた彼の動きに追いつけず、狙いを外したのだった。
死にぞこないが ── 胸中で毒突き、憎悪に満ちた眼差しを返そうとするが、その前に顔の半分を
血に染めた黒木の双眸が中里を射抜く方が早かった。
「……っが…っ!?」
黒木の膝蹴りがまともに鳩尾を打った。流れる動作で振り払った左手の甲が中里の顎の辺りに命中し、
彼の身体はもんどりうって床に倒れこんだ。その拍子に中里の手から離れたメスを、黒木が靴の先で
遠くへ蹴り飛ばした。
回転しながら床を滑っていく凶器の行方を追おうとした中里の視線を、黒光りする銃口がさえぎる。
「俺は」
黒木が呟いた。がらんどうの意識。そこにはもはや、純粋な殺意しか存在していない。
── 背番号70、俺は。
「お前を殺す」
紡がれる、死神の宣告 ──
空虚な闇に埋めつくされた意識の片隅、遠い場所に誰かの声を聞いた。
『黒木、やめろ!!』
(………岩本さん?)
我に返る脳に、トリガーを引く感触が伝わり、小さな銃が目前で弾ける。
乾きはじめた床の血痕の上に新たな血溜まりが広がっていくのを、ただ無言で黒木は見つめた。
【残り15人・選手会11人】
171 :
126:04/12/12 23:05:52 ID:KVEBKl4U
>>162 ぜひお願いします。
まとめ作業に加えて、位置関係図まで作って頂けるのはありがたいです。
あれば本当に助かります。
人数減ってる・・・
中里死んだ?
173 :
112:04/12/13 02:50:32 ID:IaQ1EZAP
まだまとめ切れてないんですが、今のところ。
・北東部
選手会キャンプ地 古田・清原・中村・高木
選手会キャンプ地付近 今岡・小久保、緒方
・北西部
立浪達3人、川相・渡辺
・中央付近
英智・小笠原、桧山VS井上
・南西部
由伸、佐伯
・南部
井端、荒木、山本昌達3人
こんな感じではないかと。
つっこみ、訂正などあったらお願いします。
あと病院の位置がうまく決められない。島の右下で海に面しているみたいだが、
選手会キャンプ(旧)と微妙にかぶるんだよな…。
174 :
126:04/12/13 07:00:52 ID:Dq0VPMvQ
>>172 今気づいた…。普通にコピペしてりゃ良かったのに_| ̄|○
すいません、先走りすぎですね。残り16人に訂正してください。
>>173 乙です。自分も病院の位置に悩んでました。
ドラゴンズの選手の位置関係で、自分の中でちゃんと確信を持てていたのが
南部の井端、荒木、昌さんたちだけってのも凹む話だ。
他の書き手さんたちの意見とも照らし合わせて、訂正・修正できる部分は
していった方がいいですかね?
175 :
358:04/12/13 21:19:29 ID:dS2bGJjP
157.バトルロワイアル・ネガ
どれぐらい、激しい波に揺られた後だろう。
さっきまでの黒雲が嘘のように消え去って、操舵室の窓に水色の空が広がっていた。
そして、青色の境目に島影が浮かんでいたのだった。
船酔いにおそわれトイレに篭もっていた仲澤が、青い顔をして戻ってくると、
軍服の男がにっ、と笑って親指で窓を指した。
「あ……」
島だ、と言おうとしたのだが、口を開けたのが悪かったのか吐き気がこみ上げてきて、
また狭い個室に逆戻りになった。
(やっと着くのか…)
いよいよ到着するとなると、身の引き締まる思いがした。
船内にあった不穏な空気もこれで解消される。
(それに、この揺れともおさらばできるな)
実は一番嬉しかったのはその点だったのかもしれない。けれど、彼の船酔いはまだしばらく
続くことになるのだが――
口の中が酸っぱさを通り越して苦くなってきた時だ。突然、低い金属音が響き、
耳障りだったエンジン音が止んだ。振動も機械的な揺れから、何か不規則で弱い揺れに変わっていく。
(……?)
水道で口をゆすいでから船室に戻り、
「どうしたんだよ」と大きな声を張り上げた。
「仲澤、大変だ」 湊川が神妙な顔をしてデッキブリッジから出てきた。
「なんだよ、故障か?」 喋るとまだ、胃のあたりがむかむかする。
「違う。今無線が……」
「おい、あれ…NTVって…」
船室でも、エンジン停止で騒ぎが起こっていたらしく、皆が窓のそばに群がっていた。
その中で、誰かが叫んだ。
「日テレのカメラが、なんでここに来るんだよ」
「わかるかよ……でも、まさか……」
気弱に呟いたのは田上か。疑問符だらけできょろきょろ見回している仲澤を、
湊川が無線室まで引っ張っていった。中では、軍服の男がこれまた硬い表情を浮かべ交信していた。
176 :
358:04/12/13 21:19:57 ID:dS2bGJjP
「はしごは今準備中だ。少し待ってもらいたい。どうぞ」
『了解しました。繰り返しますが、私たちに何かあった場合は、すぐに本部に連絡が行きますので
そこをよく頭に入れておいてください。どうぞ』
「…しつこいな。一回言えばわかる。どうぞ」
「なんだよその間抜けな会話は」 仲澤が口を挟んだ。
「大変な事になった」
「それはこいつから聞いた。何が大変なんだよ」
「今そこに、船が来てます」
仲澤の中で、嫌な予感がはっきり形を持っていくのがわかった。
「……オーナー達の手先か?」
「ええ。船を止めろと言ってきました。止めないと攻撃する、それに本部に連絡する、と」
「連絡…な。なるほど」
単に、足止めを食らわす目的だけではない。テレビカメラが来たという事はつまり――
『はしご、準備完了ですか? どうぞ』
「ちょっと待て。確認する。どうぞ」
『了解』
同時に、無線室のドアが開いた。
「縄ばしご、おろしたけど」
眉間に皺を寄せたままの森章剛が、軍服男を睨み付けるようにして立っている。
「…本当にこれで良いのか?」
彼の声は、完全に男を疑っていた。湊川は心配そうに二人の様子を見た。
「良いのかどうかはわかりません。けど、こうするしか他に…」
「わからないってなんだよ」
「やめろよ」
男に詰め寄った章剛を、仲澤がタメ口で制した。思わず叫んでしまったが、
食道が痙攣をおこしそうになり口を手で覆って蹲った。
「情けねえ奴。便所で吐いてろ」
鼻であしらうと、彼は男に向かって台詞を続けた。
「俺だけじゃない。みんなあんたのこと疑ってるよ。
確認してなかったけどさ、あんた軍隊の一員なんだろ?」
「…雇われの私兵ですけどね」
177 :
358:04/12/13 21:21:11 ID:dS2bGJjP
「じゃあ、俺らに鉄砲向けた集団の中にいたわけだよな?」
男の目線がすっと険しくなった。
「どうなんだよ」
『はしご、準備完了ですか? どうぞ』
先ほどまでの空模様のような、重く暗い空気の中で無線の掠れた声が白々しく響く。
男はそれを機に章剛から目をそらし、完了した旨を相手に伝え、湊川に小さな声で
「様子、見てきてもらえませんか」と言ったきり、黙ってしまった。
仲澤は嘔吐物を胃になんとか戻しながら、迫り来る最悪の事態に思いを馳せていた。
「カメラいける?」
「オッケーです」
「マイクは入った?」
「はい」
「じゃあ早速始めるよー。船越さん、大丈夫?」
「大丈夫です」
「よし。じゃ、本番行きまーす」
船に新たに乗り込んできたのは7人。彼らは、敵対心むき出しで取り囲んでいる中日選手らを
全く無視して、カメラ、マイク、照明、マイクを持ったアナウンサーと中継準備を済ませ、
さっさと何かテレビ番組らしきものの放送を始めた。6人はそれに携わっていたが、
1人だけ、デッキはどこかと聞いた。
「教える義理はない」
山井がすごみをきかせて答えたが、相手は冷たくこう返した。
「こちらの連絡一つで、島にいる選手全員を殺すことだってできるんですよ。
まぁ、その方があなた達には出番も巡ってくるし良いのかも知れませんね」
山井の顔がかっと赤くなった。
「なんだと?」
「山井さん、落ち着いてください。…操舵室はあっちです。そこ入って、右に行ったところ」
間に入ったのは、様子見に来た湊川だ。
「ありがとう」
男は言葉だけの礼を残し、さっさと行ってしまった。山井が何か言いたげに、歯ぎしりをしている。
湊川は頭を抱えたくなった。弱みを握られているのはこっちだ。不安や怒りにまかせ行動したって、
大損を被るのはやはりこっちなのに――
178 :
358:04/12/13 21:21:50 ID:dS2bGJjP
「皆さんこんにちは。始まりました、日本テレビ特別報道番組第二部。現在第一部では
いよいよクライマックスを迎えております。第一部が終了次第、一元中継に切り替えますので、
それまでは副音声でお楽しみ下さい。第二部実況は私、日本テレビアナウンサー船越雅史が
つとめさせて頂きます」
「…どうせ日テレなら福沢朗が良かったな」
立て板に水といった口上を聞きながら、馬鹿なことを言ったのは中村。
どうも状況がわかっていないようだ。
「えー、私は今ですね、中日二軍選手17名が集結しているバトルシップの甲板におります。
今、選手のうち…そうですね、10名ほどがここに集まっています。
ルール説明のため一旦、全員に招集をかけていますが……あ、来ましたね」
湊川が振り返ると、ぞろぞろと船室から残りの選手が出てきた。青い顔をした仲澤も、
そして軍服の男も。
「14、15、16、17…あれ?一人多い…あ、失礼しました、選手17名と操縦士が1人の合計18名でした」
横から差し出された紙を確認し、アナウンサーは発言を訂正している。
「なんだよこれ……」章剛が呟いた。軍服の男も、呆然としている。
仲澤は、横の男の表情を見て改めて、この人物がこの状況を全く何も知らない、
つまりはオーナーと裏の繋がりのない事を確信した。けれど、他の選手がどう思うかは微妙だ。
「えー、第二部ではですね、第一部と趣向を変えて行きたいと思います。
第一部では最初6人、途中参加2名を足して合計8人の選手で、最後の一人になるまで
殺し合いをしてもらうという物でした。今回こちらではですね、その逆をやろう、と」
「…逆?」口々に呟いたのを、
「生き返らせるんですかね」等と反応したのはやはり中村だ。
「逆とはどういうことか。あ、選手の皆さんもよく聞いてくださいね、ここからルール説明になるので。
今、この船にいる人間で、スタッフを除いた18人。この中で――」
勿体つけるように、船越が言葉を句切る。選手が息を呑む音が、マイクで拾えそうだった。
「一人を、殺してください。一人だけで結構です」
【残り16人・選手会11人】
179 :
358:04/12/13 21:28:55 ID:dS2bGJjP
116章で中日二軍選手の残りが23人と書かれているのですが、
数えてみたら17人でした。多分、70人から一軍選手36人と二軍死亡選手11人を
単純に引いた数だと思いますが、外国人選手は入ってないんですよね?
二軍選手名簿
酒井 筒井壮 筒井正(負傷) 佐藤充(負傷) 山井 小川 田上 森章剛
植 湊川 中村 仲澤 都築 森岡(負傷) 瀬間中 中川(負傷) 堂上
>>173 乙です。川相そこにいたのかw …笑い事じゃないなorz
病院とあと廃校の位置が気になりますね
二つともすぐ近くでしたっけ?
180 :
623:04/12/13 22:20:52 ID:ACbrwyZU
>>173 乙です。
病院の裏を勝手に海にしてしまった犯人は自分です。ややこしくして申し訳ない…
今からその設定を取り下げるわけにもいかない展開になっているので、
病院と旧キャンプ地の場所の一案を提示してみようと考えてみました。
あくまで一案ですので、ツッコミ、却下はご自由にどうぞ。
【病院】
島の南南東。島の完全に右下というより右下のほうにあるってかんじ。
現在、昌さん達がいる場所の割と近く。(中里、黒木がこの場所から病院にたどりついている。)
裏が崖、その他三方が林に囲まれているので、近付かない限りはその存在に気付きにくい。
【旧選手会キャンプ地】
新キャンプ地に選手会の面々が向かう道中で、現在南部付近にいるドラゴンズ選手と
接触または接近した気配がないことから病院と同じ島の南東でも、やや東寄りにあった?
あと、ドメと荒木が背番号6が崖下に落ちていくのを目撃した場所は
島の南西部あたりになるのかなと。
>>179 廃校は、島の真ん中にあるもんだと勝手に思い込んでました……orz
181 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/14 06:29:34 ID:8fbGhbMQ
182 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/15 02:07:38 ID:LClfkRMR
保守
ホシュ
週ベの10代特集読んだら、
無性に立浪・清原・片岡の話を読みたくなった。
今から保管庫行ってくる
保守
188 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/19 17:59:39 ID:1gAJ3ITH
189 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/19 18:00:45 ID:1gAJ3ITH
保守
192 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/23 02:44:16 ID:T9rPPjmM
ほしゅ
落ちて・・・ない?
職人さん降臨期待age
197 :
代打名無し@実況は実況板で:04/12/27 20:08:03 ID:BxbcwAPo
あがってなかった…
不安なんで保守
hoshu
12時間経つよ 保守
保守
207 :
代打名無し@実況は実況板で:05/01/03 09:45:12 ID:3yYix73n
保守
保守
210 :
112:05/01/05 02:16:34 ID:HFZxFlPd
158.烽火
広島球団事務所、オーナー室。
松田と山本浩二の居る室内には、重苦しい雰囲気が漂っていた。
部屋の隅にあるテレビから吹き出す煙が、空気の重さに拍車をかけている。
数時間前まで「特別戦」とやらが流れていた画面は無惨に割れ砕け、もう何も映し出すことはない。
激昂した松田が手当たり次第に物を投げつけた結果だ。激昂の原因は言うまでもなく。
「何かできないんでしょうか」
ぽつりと山本が呟いた言葉に、松田が力無く首を振った。
「できることがあったら、ここでじっとしていないよ」
せめてあの人達の居場所や、島の位置がわかれば…と呟く。
本部の場所も島の位置も知らされていない松田には、武器を集め、中日の関係者に託すことが精一杯だったのだ。
再び室内に落ちた沈黙を、遠慮がちなノックの音が破る。
「オーナー、あの」
球団職員がドアから顔をのぞかせた。手には電話の子機を持っている。
「横浜の砂原オーナーからお電話が入っているのですが」
「…砂原さんから?」
疑問に満ちた6つの瞳が、電話機に集中した。
211 :
112:05/01/05 02:17:01 ID:HFZxFlPd
携帯電話の終話ボタンを押した姿勢のまま、落合は目を閉じて考え込む。
「監督、今の電話は?」
声をかけてきた宇野に振り向くと、軽く肩をすくめて見せた。
「広島のオーナーさんからだよ。朗報…なんだろうか」
額面通りに受け取ればいい知らせなんだがな、と前置きして、落合は電話の内容を話した。
「ナベツネ達の本拠地がわかったそうだ。そこに球団社長も捕まっているらしい」
ドラフトやオーナー会議にも使われる高級ホテルの名前を挙げると、宇野の表情がぱっと明るくなった。
「そこに奴らが!すぐに向かいましょう!」
「まあ待ってくれ。これだけなら願ってもない情報なんだが…どうも怪しくてな」
宇野をなだめながら落合は続ける。
松田は、この情報を横浜の砂原オーナーから得た。
「解説」の為に呼び出され、現在は軟禁状態に置かれている砂原は、
ナベツネに反抗している松田に助けを求めてきた。
脱出に手を貸してくれれば、「解説」のための資料―島の位置を示す地図も含まれている―を提供するという――
212 :
112:05/01/05 02:17:18 ID:HFZxFlPd
話を聞いているうちに宇野の表情が険しくなっていった。
「なんだか…話がうますぎるような気がしますが…」
「俺もそう思うんだ。罠かもしれない」
考えてみれば、どうも辻褄の合わないことばかりだ。
監禁されている砂原が、何故助けを求める電話をかけられるのか。
砂原は、松田は、信用できるのだろうか?
彼らもオーナーなのだ。ナベツネと共謀していないとは言い切れない。
あるいは、松田も砂原も…自分たちさえも、ナベツネの手の内で踊らされているのかも知れない。
わからない。考えれば考えるほど、疑問が湧いてくる。
今は、迷っている場合ではないというのに。こうして立ち止まっている間に、選手達は―
「――行きましょう、監督」
顔を上げると、真剣な宇野の瞳と視線がぶつかる。
「あいつらが連れて行かれた場所がわかるかもしれない時に、罠を恐れて動かなかったら、
…俺はきっと後悔します」
宇野の言葉に、落合の思考を遮っていた疑念という黒い霧が晴れる。
「…そうだな。危険を恐れている場合じゃないな」
落合は、穏やかな―しかし強い決意を秘めた―笑みを浮かべながら立ち上がった。
「行こう。虎穴に入らずんば虎児を得ず、だ」
【残り16人・選手会11人】
213 :
112:05/01/05 02:20:10 ID:HFZxFlPd
あけましておめでとうございます。
投下の間隔が酷く空いてしまいました。
ご迷惑かけてしまい本当にすみませんでした。
214 :
代打名無し@実況は実況板で:05/01/05 20:08:14 ID:Y/Kwre0R
すごいブラクラっぽいのだが本当なら見てみたい
>>215 とりあえず落とせた普通画質のをチェックしてみた。
ら、その通りだった(「井端軍団ビーチフラッグに挑戦!」)。
なぜこのバトロワスレに?