最悪のシナリオだ。133試合のペナントレースで、4.5差もつけた2位・西武に
プレーオフで敗れた1位・ダイエー。その波紋が広がる。最初から矛盾だらけだった、
変則プレーオフの大罪追及だけに止まらない。ワースト日本シリーズの恐怖が球界を襲う。
(夕刊フジ編集委員・江尻良文)
「中日Vs西武の日本シリーズなんて最低の組み合わせだぞ」と球界、テレビ局関係者が、
頭を抱えている。それも無理はないお寒い現実に直面だ。
5年ぶりの日本シリーズ出場の中日だが、地元・名古屋のファンは燃えていない。常に
ファンへのアピールを念頭に入れた、星野熱血野球と対照的な、勝つことだけがすべての
クールなオレ流落合野球だからだ。しかも、相手がパ・リーグ2位の西武。
前回の名古屋での日本シリーズは、世界の王が率いる若鷹軍団と、現役時代から打倒ONを
生きがいにしてきた星野監督の因縁の激突という最大のセールスポイントがあったが、
今回は売りが無い。精々西武のエース松坂が登板したときだけ注目が集まるくらいだろう。
「中日Vs西武の日本シリーズでは、視聴率なんて取れないぞ」と、テレビ局関係者が
真っ青になるのも良く分かる。名古屋、埼玉ローカルの話題で全国区人気を望むほうが
酷というものだろう。
「テレビの視聴率、観客動員数、シリーズ収入、すべてにワースト記録を作るのではないか」
と、球界関係者は戦々恐々としている。球界再編問題で激動した今年の締めくくりの日本シリーズが
最悪の結果に終われば、来期への明るい展望も見えてこない。
リーグ存続の切り札という大義名分で導入した変則プレーオフの大罪が、改めて問われることになる。
西武とのプレーオフ第2ステージ開始前に、「日ハムとロッテの3位争い。西武と日ハムとの
試合も面白かった。プレーオフは盛り上がるね。セ・リーグも人気がなくなってきているんだから、
プレーオフをやればいいんだ」と、ダイエー王監督は、プレーオフ賛歌を口にしたが、勝利を
確信していたからこそだろう。
ペナントレースで西武に4.5差をつけて優勝したのに、日本シリーズに出られなかった
ダイエーナインもファンも納得できるわけがない。プレーオフ5試合全てを福岡ドームで開催、
球団側に莫大な利益をもたらしたといっても、現場には関係がないことだ。
「来年は、無条件で1位チームに1勝分のアドバンテージを与える必要があるだろう」
とプレーオフ第2ステージが始まってから小池パリーグ会長が言い出したが、まさに後の祭りだ。
「1位チームが5ゲーム差以上つけたら、1勝分のアドバンテージ」という条件にたった0.5差
余計に悔しさが増すだろう。何が何でもプレーオフをやりたければ、前期・後期の2シーズン制に
すればいい。手抜き防止のために、前期優勝チーム、後期優勝チームと違った年間勝率1位
チームがでたら、そのチームにもプレーオフの出場権を与えればいいだろう。
ライブドア、楽天の新規参入争いで、経営危機に直面している球界がすくわれたかのように
錯覚しているが、とんでもない。新規参入球団がパ・リーグの新たなお荷物になり、
リーグ消滅の危機に拍車をかけかねない。