岡田監督を殴って苦難を乗り越えていくスレ15

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74代打名無し@実況は実況板で
2030年。大阪は新世界のはずれ。
通天閣が見下ろすこの街は、50年前とまったく変わらない。
朝っぱらからシャブ中や酔っぱらいが半裸でうろつく通りだ。
そんな通りのみすぼらしい飲み屋の戸を、がんがんと叩く男がいる。
店の主人がランニング姿でしぶしぶ出てくる。
「やっぱ、あんたか」
「おう!俺よ。期待して貰って結構よ!!」
足を引きずり気味のその老人は、手をぶるぶる震わせながら差し出す。
「あかんあかん、あんたのツケなんぼ溜まっとると思とんねん。
 もうこれからは現金やないとあかんで」
「そ、そ、そやから、これ」
ぶるぶる震える手に、大事そうに握られたのは、
かつて人気球団として関西に君臨していた阪神タイガースのユニフォームだった。
「ワ、ワ、ワイの、た、た、宝物や。ワイ、ド、ドドドラフトでな、1位やったんや」
「ふん、けったいな、どうせパチモンやろ」
主人は老人の腕を蹴る。ユニフォームは風に乗ってドブに落ちる。
「な、な、なにしとんねん。ワ、ワイは今まで黙っとったけど
 ホンマはミスタータイガースやったんや。ス、スターやったんや」
「アホも休み休み言えや、だいたい今どきタイガースなんて犬も食わへんわ」
「そっ、そんなもん、そらオマエ、ホ、ホンマやて。
 そっ、それにな、む、昔はワイ、かっ、監督もやってたんやで。現場監督やないで」
主人はもう取り合わず、店の戸をぴしゃりと閉める。
老人はドブに腕をつっこんでユニフォームを取ろうとしたが、
他の何かの感触を得たのか泥まみれの腕を上げる。
その手には硬貨が握られていた。
「ひゃ、ひゃ、百円ひろた」
老人は目を輝かせて嬉しそうにつぶやくと、人ごみの中へと去っていった。