山本浩二監督とともに苦難を乗り越えていくスレ11

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406代打名無し@実況は実況板で
西暦2030年。広島県は新幹線口の近く。
今は取り壊しを待つ元・FUKUYAが見下ろすこの街は、30年前とまったく変わらない。
昼夜の区別なくサラリーマンが行き交う忙しい街だ。
そんな街のガード下にあるみすぼらしい飲み屋の戸を、がんがんと叩く男がいる。
店の主人がランニング姿でしぶしぶ出てくる。
「やっぱ、あんたか」
「おう!わしじゃ。まぁええことよ」
黄色の色眼鏡をかけたその老人は、握った右手をぶるぶる震わせながら差し出す。
「ああ、ダメダメ、あんたのツケ一体いくら溜まってると思ってんの?
 もうこれからは現金持ってこないとダメだよ」
「そ、そ、そじゃけえ、これ」
ぶるぶる震える手に、大事そうに握られていたのは、
かつてプロ野球界に旋風を起こした広島カープのユニフォームだった。
「わ、わ、わしの、た、た、宝物じゃ。わ、わし、ドッ、ドラフトでな、1位だったんじゃ」
「ふん、何言ってんだか、どうせレプリカだろ」
主人は老人の腕を蹴る。ユニフォームは風に乗ってドブに落ちる。
「な、な、なにするんよ。わっ、わしはな、い、今まで黙ってたけどのう、
 実は広島黄金時代ののう、四番だったんじゃ。だ、大スターだったんじゃ、本当なんじゃ」
「馬鹿も休み休み言えや。」
「ほんまなんじゃ。、む、昔はわし、かっ、監督もやってたんだぞ。現場監督じゃないで」
主人はもう取り合わず、店の戸をぴしゃりと閉める。
老人はドブに腕をつっこんでユニフォームを拾おうとしたが、やがて泥まみれの腕を上げる。
その手には硬貨が握られていた。
「ひゃっ、ひゃっ、百円じゃ」
老人は目を輝かせて嬉しそうにつぶやくと、人ごみの中へと消えていった。