いやね、なにもくわせものだからいけないっていうんじゃないですよ。
プロ野球の世界っていうのはね、あなた、一種の錬金術です。
わたしはあられもない露骨なポジション確保への下品な欲望が
実に立派な成績を生み出す例をいくつも見てきました。
またその逆の例をいくつも見てきました。
つまり高潔な精神――正々堂々――みたいなものが競争意識を甘くし
『一軍出場なしで戦力外通告』といったような腐り果てた結果を生み出すのも見てきました。
正直に言ってだからどっちがいいというようなものでもないんです。
プロ野球の世界というのはですね、ああだこうだという理屈じゃなくて出てきた結果がすべてなんです。
大型ルーキーといいながら、新人王どころか入団してみれば名前まで抹殺されてしまった、
慶応大森・九共山村・かっての甲子園スター川口でさえ、結果で判断されるもんなんです。
しかし、この野村監督って人は、こう言ってはなんだがわたしの目から見てさえ
とびっきりのとんでもない方でしてね。あの人の前に出ると、
私の下司なビーンボールリードなんてものはちっぽけな猿みたいに見えた。
ルーキーへの「野球=人生論」ミーティングの嫌らしさ、
「エリートだから苦労させなあかん」「打たれたのは捕手の責任」
といった学歴コンプレックスと責任回避の姿勢。これは勝てっこないと思いましたね。
そういうのは同類には一目でわかるんです。下品な言い方ですみませんがね、
ちんぽの大きさと同じです。大きい奴は大きいんです。わかりますか?」
160 :
代打名無し:04/03/15 20:48 ID:UGYxU0Mf
「最近のパリーグの選手はみんな礼儀正しくなったんだ」と
東尾は島本さんに説明した。
「僕が選手の頃はこんなじゃなかった。パリーグの選手といえば、
外国人はクスリをやっていて、選手の半分くらいが性格破綻者だった。
でもときどきひっくりかえるくらい凄いプレーが見れた。
僕は大阪の藤井寺に行って近鉄戦で投げていた。
そのひっくりかえるような経験を求めてだよ」
「そういう選手たちが好きなのね、東尾くんは」
「たぶんね」と東尾は言った。
「まずまずの素晴らしいものを求めてパリーグにのめり込む人間はいない。
九の外れがあっても、一の至高体験を求めてファンはパリーグに向かって行くんだ。
そしてそれがパリーグを動かしていくんだ。それが芸術というものじゃないかと僕は思う」
東尾は膝の上にある自分の両手をまたじっと眺めた。
それから顔を上げて島本さんを見た。島本さんは東尾の話の続きを待っていた。
「でも今は少し違う。今ではパリーグは経営重視だからね。
球団がやっているのは資本を投下して回収することだよ。
職員は芸術家でもないし、何かを創り出しているわけでもない。
そして球団社長はここでべつに芸術を支援しているわけではないんだ。
好むと好まざるとにかかわらず、この場所ではそういうものは求められていないんだ。
経営している方にとっては礼儀正しくてこぎれいな連中の方がずっと扱いやすい。
それもそれでまた仕方ないだろう。
世界じゅうが江夏豊で満ちていなくてはならないというわけじゃないんだ」
こんなスレがあったのか。
大ちゃんの風の歌を聴けシリーズハゲわろた。
>160は地味に名作。。
「・・・岩本勉について、私が何を調べればいいの?」
「ぜんぶ」と私は言った。
「とても急いでるし、とても大事な事なんだ」
「ふうん」と彼女は言った。「どの程度大事な事なの?」
「優勝にかかわることなんだ」と私は言った。
「ゆうしょう?」と彼女は繰りかえした。さすがに少しは驚いたみたいだった。
たぶん私のことを純粋な岩本ファンか
岩本ファンに見える純粋な人間のどちらかだと思っているのだろうと私は推測した。
私はどちらかと言えば後の方を選んでくれることを祈った。
そうすれば少しは私に対して人間的な興味を抱いてくれるかもしれない。
しばらく無音の振子のような沈黙が続いた。
「ゆうしょうって、23年も前にしたあの優勝のことでしょう?」
「23年かかる優勝もあるし、2年しかかからない優勝もあるんだよ。
でも信じてほしいんだけど、これは日本ハムにとって大事な事なんだ。」
「ねえ、私があなたのことをどう考えているかわかる?」
「優勝を諦めて現実逃避へ移行した末期的ファンか
『まいど!』が聴きたいだけの岩本のギャグフェチ、
どちらか決めかねているんじゃないかな?」
「だいたいあたっているわね」と彼女は言った。
「自分で言うのもなんだけど、優勝を諦めてはないよ」と私は言った。
「岩本のギャグフェチでもないし、ギャグですらない。
岩本に関しては、期待を裏切りつづけられて、諦めを通り越して憎くさえあった。」
「ふうん」と彼女は言った。
164 :
代打名無し:04/03/18 23:00 ID:zj2AEgun
age
165 :
代打名無し:04/03/18 23:22 ID:HZ2L/N6i
永沢先輩「ときどき俺はアンチ巨人を見回して本当にうんざりするんだ。どうしてこいつら努力という
ことをしないんだろう。努力もせずに巨人の悪口・不平ばかり言うんだろうってね」
僕はあきれて永沢さんの顔をながめた「僕の目から見れば2chのアンチ巨人ファンはずいぶんあくせく身を
粉にして巨人叩きをしているような印象を受けるのですが僕の見方は間違っているのでしょうか」
永沢先輩「あれは努力じゃなくてただのひがみだ」と永沢さんは簡単に言った。
休載
167 :
代打名無し:04/03/24 20:23 ID:ksti4ohT
春樹あげ
しかしなかなか名スレだな。
169 :
代打名無し:04/03/25 12:45 ID:FCQOUyo/
本人降臨きぼんぬ。
本人はヤクルトのファンなんだよな。
小説を書くきっかけも神宮球場で野球見てたらぼんやりと「小説を書こう」って思ったからだとか。
不正確&うろ覚えスマソ
捕手
でもセ開幕後は糞スレ乱立で
守れ無そうだなこのスレ
173 :
代打名無し:04/03/30 14:26 ID:+w/6B5lD
キキ!
174 :
代打名無し:04/03/30 14:29 ID:+w/6B5lD
存亡の
175 :
代打名無し:04/03/30 14:30 ID:+w/6B5lD
キキ!
.
age
凄い良スレだと思えるんだが、なんとなくsage
179 :
代打名無し:04/04/03 17:20 ID:IGk0oD4s
hojyuu
180 :
代打名無し:04/04/03 17:25 ID:cjWUP4IR
永沢先輩もっともっと
181 :
h.:04/04/03 17:48 ID:4ml0WSHu
ごめん、開幕しちゃったからこっちにネタ書く暇がない、_| ̄|○
184 :
代打名無し:04/04/05 01:43 ID:NMFm9D4N
「予定が変更された」と聞き覚えのある声が言った。「史上最強打線の具合が急に悪く
なったんだ。だから巨人のマジック点灯も繰り下げられる」
「どれくらい」
「三ヶ月。それまでは打てない。三ヶ月たって史上最強打線が打てなければ、
巨人はおしまいだ。俺が戻るべき場所はもうどこにもない」
三ヶ月、と僕は頭の中で考えてみた。しかし僕の頭の中では時間の観念が取り返し
のつかないくらい混乱していた。三ヶ月でも四ヶ月でもたいした違いがないように思
えた。そもそも打線が好調になるのに一般的にどれくらいの時間がかかるかという
基準がないのだから仕方がない。
「よく4番バッターばかり集めましたね」と僕は言ってみた。
「我々には大抵の選手は集めれる」と堀内は言った。
「投手陣以外はね」と僕は言った。
「そういうことだ」と堀内は言った。
185 :
代打名無し:04/04/05 12:57 ID:NhkiqYaY
「史上最強打線て言うほど凄くないのね」テレビのスイッチを切りながら彼女が呟いた。
「そうかも知れない」
「何でこれを史上最強なんて呼ぶの?誇大広告だわ」
「よくあることだよ」
「例えば?」
僕は眠い目をこすりながら答えた。
「大ちゃんス打線」
「ふぅん。野球って誇大広告だらけなのね」
「やれやれ」
彼女は何も分かっていない。プロ野球なんてそんなもんだ。
捕手
188 :
代打名無し:04/04/06 23:26 ID:2UU4zvQt
スリークォーターのデニーは列のずっと後方で僕を待っていた。
彼は派手なメーキャップの仲間達にはさまれて、ひどく物静かに見えた。
森の奥で平たい石に座って僕を待っていたようだった。
僕は彼の前に立ち、その懐かしい茶髪を眺めた。
深いダーク・ブラウンの宇宙、インクをこぼしたような茶だ。
そして大きな白い手。
ストレート、スライダー、シンカー・・目前には純白の白星が待っている。
客席のファンには笑顔が灯り、その様子はまるで一家団欒のひとときのようにも見える。
フィールドも去年のままだった。同じダーク・ブラウン。ベースはほほえみからこぼれる歯のように真白だ。
星の形に積み上げられたレモン・イエローの六機のカクテル光線がゆっくりと光を照射させている。
二つのベースには清水と小久保、サードランナーは仁志・・・、すべては静寂にみちていた。
デニー、と僕は言った。・・・いや言わなかったのかもしれない。
とにかく僕は審判のプロテクターの板に手を載せた。審判は氷のように冷ややかであり、僕の手の温もりは白くくもった十本の指のあとをそこに残した。
デニーはやっと目覚めたかのように僕に微笑む。懐かしい微笑だった。僕も微笑む。
189 :
代打名無し:04/04/09 10:37 ID:xHOT0vum
mosyu
190 :
代打名無し:04/04/11 12:30 ID:PEm8Uv5E
191 :
代打名無し:04/04/13 00:58 ID:STciC4+I
あげ
村上春樹ってこんなに面白いの?
今度一冊買ってみよう。
「私、生理が近いのよ。だからイライラしてるんだと思う」
「知ってるよ」と僕は言った。
「でも気にすることはない。そういうのに作用されるのは君だけじゃない。
河原だって登板のたびにいっぱい失点するんだ」
彼女はビール瓶から手を離し、口を開けて僕の顔を見た。
「何、それ? どうしてここで急に河原の話が出てくるの?」
「このあいだ新聞で読んだんだ。ずっと君に話そうと思って、話し忘れていた。
どこかのスポーツライターが言ってたんだけどさ、河原という選手は肉体的にも精神的にも
ゲームの点差に大きく影響される選手なんだ。チームの勝利が近づくにつれて、
河原のコントロールはものすごく乱れるし、肉体的にもいろんなトラブルが出てくるんだ。
9回のセーブがつく場面になるとたくさん失点するし、非本塁打率も圧倒的に増える。
どうしてそうなるのか正確な原因は誰にもわからない。でも試合結果を見るとちゃんとそうなっているんだ。
巨人を専門にしてるスポーツライターは、河原登板の日には忙しくて眠る暇もないくらいなんだそうだよ」
「ふうん」と妻は言った。
「でも河原よりまだ悪いのがカラスコなんだ。
カラスコが出た日には近鉄の置かれた状況はもっと悲劇的なものになる。
勝利がかかった場面のカラスコがどれくらい失点するか、君にはきっと想像もつかないと思う。
とにかく、僕が言いたいのは、こうしている今もカラスコがばたばたとチームの勝ちを消しているということだよ。
それに比べたら、君が誰かに当るくらいたいしたことじゃないじゃないか。
そんなこと別に気にしなくていいんだ。逆転負けする近鉄のことを想像してごらんよ。
サヨナラ満塁弾を打たれた後に西武ドームの芝の上に立ち尽くして、口から白い泡を吹きながら、
苦悶に喘いでいる中村紀のことを考えてみなよ」
彼女は西武ドームで失点するカラスコについてしばらく考えているようだった。
「あなたには確かに不思議な説得力があるわね」と彼女はあきらめたように言った。
「それは認めざるをえないわ」
「じゃあ着替えて、外にピザを食べに行こう」と僕は言った。
「さて」と堀内はホクロを触りながら言った。「そろそろ次に獲得する選手を決めなくちゃね」
「次に獲得する選手についてはイメージができてるの」と渡辺は言った。
「どんな?」
「とにかく選手の名前を順番に読みあげてみて」
堀内は不細工な江藤に頼んで選手名鑑を持ってきてもらい、「インデックス」というページを片端から読みあげていった。
250ばかりつづけて読みあげたところで堀内がストップをかけた。
「それがいいわ」
「それ?」
「今最後に読んだ選手よ」
「カツノリ」と僕は読んだ。
「どういう意味」
、 、
「野村克則」
「それを獲ることにするわ」
「聞いたことがないな」
「でもそれ以外に獲るべき選手はないような気がするの」
、 、
僕は礼を言って名鑑を江藤に返し、野村克則に電話をかけてみた。やたらハキハキした声の男が電話に出て、
打率二割とホームラン一本くらいなら打てると言った。打率二割とホームラン一本以外にはどんな事が出来るのか、と僕は念のため訊ねてみた。
打率二割とホームラン一本以外にはもともと何も出来なかった。少し頭が混乱したがともかくそれで契約し、年俸を訊ねてみた。
年俸は堀内が予想していたのとたいして変わらなかった。
>>195
激ワロタ
デニーが打たれ出したあとも、上弦の月はいつまでも僕の頭上にあった。
デニーがカーブを待たれるごとに、ツキは消えたり現れたりした。
僕はそのツキを眺め、ツキが見えなくなると、球場の外を過ぎていく
いくつかの小さな電車の明かりを眺めた。
一人で電車に乗って山の中のぺンションに戻っていく、青い毛糸の帽子をかぶった
C.W.ニコルの姿を思い浮かべ、そしてどこかの草陰で眠ってるファンの松山千春の姿を思い浮かべた。
それから僕は、これから自分が指揮していく世界のことを考えた。
「さよなら、ヤマシタコーポレーション」と僕は言った。
さよなら、C.W.ニコル、僕は君が自然にしっかりと守られることを祈っている。
僕は眼を閉じて忘れようとした。
でも本当に忘れることができたのはずっとあとになってからだった。
どこからも誰からも遠い場所で、僕は静かに束の間眠りに落ちた。
「やました大輔クロニクル」 完
198 :
代打名無し:04/04/16 12:06 ID:Gv+Jw5m8
良スレなんだけどなあ…age
199 :
ダンス ダンス ダンス:04/04/17 12:47 ID:P6wsmY3B
「あなたいい人だったわ」とユキが言った。
ど・う・し・て・過・去・形なんだ、とカツノリは思った。
「あのペタジーニを献上することにするわ」と若松は言った。
まるで夕食のおかずを告げるときのようなあっさりとしたしゃべり方だった。
「ペタジーニは物じゃない」と古田は指摘した。
「物みたいなものよ」と若松は言って、車の中に戻った。
「献上と言うものもある場合には必要なのよ。とにかくペタジーニの所に行って」
古田はあきらめて車を二百メートル前に進め、ペタジーニの駐車場に入れた。
駐車場には赤いぴかぴかのブルーバードが一台停まってるだけだった。
若松は毛布に来るんだ現金を古田にさしだした。
「そんなもの使ったこともないし、使いたくもないよ」と古田は抗議した。
「使う必要はないわ。持っているだけでいいのよ。オルガも抵抗しやしないから」と若松は言った。
「いい?私の言うとおりにするのよ。まず二人で堂々と家の中に入っていくの。そしてオルガが『ようこそオルガ邸へ』と言ったらそれを合図にさっと『ジャイアンツ』て言うのよ。わかった?」
「それはわかったけど、でも・・・」
「そしてあなたはオルガに現金をつきつけて、全部の家族とお手伝いを1ケ所に集めさせるの。それを素早くやるの。あとは私がうまくやるから任せておいて」
「しかし・・・」
「現金はいくらくらい必要だと思う?」と若松は古田に聞いた。「二十億もあればいいかしら?」
「たぶん」と僕は言った。そしてため息をついて現金を受けとり、毛布を少しめくってみた。
現金は砂袋のように重く、新入社員のスーツようにパリッとしていた。
「本当にこうすることが必要なのかな?」と古田は言った。
それは半分は球団に向けられた質問であり、半分は野球会全体に向けられた質問だった。
「もちろんよ」と若松は言った。
age
でもとにかく、何か喋ろう。自分について何か喋ることから全てが始まる。
それがまず第一歩なのだ。正しいか正しくないかは、あとでまた判断すればいい。
僕自身が判断してもいいし、別の誰かが判断してもいい。
いずれにせよ、今は語るべき時なのだ。
そして僕も語ることを覚えなくてはいけない。
僕は今ではギャラードが好きだ。
いつからかはわからないが、いつの間にか自然に好きになった。
気に入っていたデニーは僕が歴史的最下位に経った年に兎に打たれて肺炎で死んだ。
それ以来デニーは一回も使っていない。万永は今でも好きだ。
終わり。
でも試合はそんなに簡単には終わらない。
ファンが何かを試合に求める時(求めないファンがいるのだろうか?)、
ファンはもっと多くのネタを僕に要求する。
明確なAAを描くための、より多くのネタが要求される。
そうしないことには、何のレスも出てこない。
データフソクノタメ、カイトウフカノウ。アタマヲミガイテクダサイ。
頭を磨く。反射がきつくなる。
球場中の人間が僕に物を投げはじめる。もっと喋れ。ネタをつくれ、と。
オーナーは眉をしかめている。僕は言葉を失って、フィールドの上に立ちすくんでいる。
喋ろう。
そうしないことには、何も始まらない。それもできるだけ長く。
正しいか正しくないかはあとでまた考えればいい。
203 :
代打名無し:04/04/18 00:31 ID:yasEDMHw
よく史上最強打線の夢を見る。
夢の中で僕はそこに含まれている。つまり、ある種の継続的状況として僕はそこに含まれてい
る。夢は明らかにそういう継続性を提示している。夢の中では史上最強打線の形は歪められて
いる。とても細長いのだ。あまりに細長いので、それは打線というよりは屋根のついた長い球場みた
いにみえる。その球場は太古から宇宙の終局まで細長く延びている。そして僕はそこに含まれている。
そこでは誰かが涙を流している。僕の為に涙を流しているのだ。
打線そのものが僕を含んでいる。僕はその鼓動や温もりをはっきりと感じることができる。僕は、
夢の中では、その打線の一部である。
そういう夢だ。
目が覚める。ここはどこだ?
やれやれ。ここはニューヨークだ。
204 :
1を読まずにカキコ:04/04/18 12:10 ID:kIJVPuQ+
やれやれ
僕は36歳になり、佐野は37歳になった。ちょっとした歳だ。
「近鉄バファローズ」はイメージの改革の際にドームに移り、すっかり小奇麗なチームになってしまった。
とはいっても吉井は相変わらず毎日打たれているし、吉井ファンも昔の方が良かったね
とブツブツ文句を言いながらもビールを飲み続けている。
僕は成功して、ロスで暮らしている。
僕と妻はnomoベースボールクラブの試合があるたびに日本に行き、
帰りにはフェニックス通りでビールを二本づつ飲み、鳩にポップコーンをまいてやる。
クラブの選手の中では僕は「樋口新緑」が気に入っているし、
彼女は「染谷健一」が最高だと言う。
クラブ以外の選手では、僕は「ラルフ・ブライアント」が好きだし、
彼女は「秋山幸二」が好きだ。
長く暮らしていると趣味でさえ似てくるのかもしれない。
幸せか?と聞かれれば、だろうね、と答えるしかない。
夢とは結局そういったものだからだ。
佐野はまだ嫁を探し続けている。彼はその幾つかの見合い写真を毎年クリスマスに送ってくれる。
昨年のは大阪ドームに勤めるウグイス嬢で、一昨年のは「ジュディー&マリー」
を下敷きにしたバンドガールだった。
あい変わらず彼の見合いには成功はなく、当事者は誰も傷付かない。
見合い写真の一枚目にはいつも、
「コンカイモ、フセイコウナリ
そして
オマエモ、モテナクナッタライインヤ」
と書かれている。僕には女の子のファンがいるからだ。
脳のシワが4本しかない草魂に、僕は二度と会えなかった。
僕がオフに大阪に帰った時、彼はバファローズをやめ、マンションも引き払っていた。
そして人の洪水と監督史の流れの中に跡も残さず消え去っていた。
僕は冬になって藤井寺に戻ると、いつもチームメイトと歩いた同じ道を歩き、
客席の上段に腰を下ろして一人で天王綾を眺める。
泣きたいと思う時にはきまって涙が出てこない。そういうものだ。
「16与四球の完投勝利」のビデオは、まだ僕のビデオ棚にある。
夏になるたびに僕はそれを引っ張り出して何度も観る。
そして西武球場のデイゲームことを考えながらビールを飲む。
ビデオ棚の隣には机があり、その上には乾いてミイラのようになった長谷川の髪の毛がぶらさがっている。
佐野が嫉妬から引っこ抜いた髪の毛だ。
アメリカを去った入伊良部の写真は引越に紛れて失くしてしまった。
バファローズは久し振りに新しいエースを出した。
パ・リーグの野球がもっと、
オールド・スタイルならね・・・・。
>>206、207
正直イマイチ。
春樹の風情が感じられない。