広島だけどそろそろ金本を返していただこうか

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317中国新聞「記者手帳」(1)
 別に阪神ファンではない。
「勝ちたいんや」という関西の熱気からセ・リーグ優勝を果たしたチームが、
「勝ちたいんじゃ」のカープ担当として、今年は気になった。
金本知憲選手(35)の存在がそうさせた。
 フリーエージェント(FA)宣言から31日で一年になる。
この間、彼の人生の選択に賛同や中傷を何度も聞いた。
「そこまで言わなくても」と思いつつ、今では少し胸を張っている。
阪神選手の意識を変えたといわれる野球観は、広島で培われたものである。
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318中国新聞「記者手帳」(2):03/10/30 21:29 ID:Ws86sOf5
 リーグ優勝後に阪神ベンチを訪ねた。広島弁で率直な物言いは昔と同じ。
「遺恨試合にならんでよかった。でも(カープの)若手は活気がないのぉ」。
変わったのはユニホームと、優勝を味わった充実感の漂う表情だろうか。
 そこで愚問。「残留した方がよかったと思うことはなかった?」。
驚くほどの即答だった。「あるよ」。
……(3)へ
319中国新聞「記者手帳」(3):03/10/30 21:29 ID:Ws86sOf5
初めての広島3連戦を終えた四月。広島駅を離れた新幹線の車窓に、
生まれ育った待ちの風景が広がっている。
「わしは何で大阪に帰るんじゃろ。ずっといたい…と思うたよ」
 人生の選択を周囲がとがめる必要は無いだろう。
今は阪神だが、気持ちは「ちょっとカープ」でいいと思う。
甲子園球場である広島戦の試合前、左翼席にいる一握りのファンに
サインボールを投げ続けている。感謝の気持ちを込めているのかもしれない。
 別れ際、祝福の思いも込めて言った。
「カネ(金本)の選択は正しかったと思うんじゃ」。
彼は何も言わず、笑っていた。 【完】