悲運の名将 西本幸雄

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50近鉄ファソ
>33
81年10月8日、監督として最後の采配を揮った試合は奇しくも阪急戦だった。試合の勝敗は覚えて
いないが、試合後近鉄の選手のみならず(というか先に)阪急の上田監督、山田、加藤、福本らの
阪急側も加わっての大規模で、感動的な胴上げがあった。


>37
巨人との日本シリーズ、ある判定を巡って阪急側は退場者を出し、後味悪く負けた試合があった。
その夜、宿舎で西本監督と選手達が新聞記者と一枚の写真を間にして対峙していた。

その写真とは、退場者を出した起因でもある巨人土井のホームスチール(正確には1、3塁からの
ダブルスチール)で、キャッチャーの足元の間からホームプレートを踏んでいる決定的な瞬間を
写していた。(試合後、カメラマンが現像して始めて分かった。)

一見すれば、土井が後ろに弾き飛ばされるほどの完璧なブロックだったため、誰もがアウトだと
思ったプレイだったが、主審はセーフの判定をし、猛烈な抗議を引き起こした。それだけに選手
達はぐうの音も出ず沈黙していたが、しばらくして、西本監督がこう言った。

写真ではセーフかもしれんが、うちの選手がみんなアウトと言っているんだからアウトなんだよ

無茶苦茶である。理屈もヘッタクレも無いコメントではあるが、不思議な事に選手達はその言葉に
納得したような表情をしていたという。これは「キャッチャーのブロックが甘かった」だの「セカ
ンドからの送球が高かった」等という小ざかしい非難の言葉等一切出さず、常に選手の側に立って
いる指揮官の姿勢を感得したからに違いない。

蛇足ながら、巨人の土井と言えば檻の監督時代イチローを見抜けなかった奴、虚のコーチ時代
一茂に「あんな奴イラネェ」と暴言を吐かれるなどネガティブなイメージが持たれがちだが
この走塁も含め、選手時代は確かに名二塁手だった。