オリックスの石毛監督が解任された。わずか一年と20試合。
石毛がかわいそうでならない。と同時に、フロントへの強い憤
りがこみ上げてくる。
プロ野球ファンなら、誰もがわかるはずだ。今のオリックスが
優勝争いを出来るチームかどうか。イチローが抜けたあと、戦力
は大幅に低下した。勝てるチームではないのだ。許せないのは「与
えた戦力で勝てますよ。」と、いい顔をしてオーナーに報告して
いるフロントの姿勢だ。
昨年、宮古島のキャンプを訪ねた。正直、最下位だと感じた。
戦力はもちろん、指導するコーチングスタッフも整備されていな
い。石毛のブレーンは、立花、中尾、藤田の3コーチ。あとは、
フロントからあてがわれた、というか押し付けられたスタッフだ
ろう。石毛のように情熱的に指導するタイプは、時としてコーチ
の領域を侵すこともある。気心の知れたスタッフならば丸く収ま
るのだろうが、よほど疎通が出来ていないと、監督が浮いてしま
うことになる。
ことし、フロントは補強に力を入れたそうだが、人の獲得が戦
力アップに直結するとは限らない。問われるのは、新戦力を得る
のにどれだけ熱心に調査をしたかだ。ことし獲得した新外国人選
手は活躍していない。これは努力を怠ったフロントの責任だ。闘
えもしない駒をあてがっておきながら、「勝てないから解雇」と
いうのはあまりに虫が良すぎる。
断っておくが、フロントがコーチングスタッフ、選手を現場に
あてがい「これで戦え」というのは正しいスタイルだ。メジャー
スタイルといってもいい。米国では、ゼネラルマネージャー(G
M)が現場と十分に話し合い、戦力の補強をし、チームを整備す
る。監督に対して「これで勝てるか」と問う。現場もそれでよけ
れば引き受ける。一方的に戦力を提供して任せるのではなく、フ
ロント、現場双方が納得してスタートするわけだ。このシステム
だと責任の所在が明確。結果が出なければ、監督は解任されるだ
ろうし、GMだって「おれは知らない」と突っ張れない。
日本球界の場合は、米国のうわべをまねしているにすぎない。
それなのに、責任を監督だけに押し付ける。何年たっても、同じ
ことを繰り返しているから腹が立つ。
オリックスに戻ろう。このチームは、教育が必要なチーム。選
手を育てなければ勝てないチームだ。選手をある程度のまでの水
準に引き上げるには、最低でも3年はかかる。1年で、育つはず
がない。「石毛は育てられないから解任する」というのなら分か
るが、「勝てないから」という理由は納得できない。
石毛は、私が育てた選手だった。チームをベテランから若手に
切り替えるとき、徹底的に鍛え上げた選手だった。だから石毛は、
育つ苦しみを知り抜いている。教えられたことを体に暗記させ、
無意識で動くようになることの難しさを身をもって知っている。
石毛にしてみれば、「さあ、これから」と思っていた直後の解
任だろう。志半ばで、現場を追われる。これでは、石毛は監督の
器ではない、というらく印を押すようなもの。育てるためには時
間がいるのに、目先の結果だけに振り回される日本のフロント。
一体、有能な人材の将来をいくつ葬れば気が済むのだろうか。