中日ドラゴンズバトルロワイアル第五章〜ENDING〜
1 :
◆xYQkNOZE :
クライマックスでdat落ち
2 :
代打名無し:02/06/21 21:48 ID:n3WzdgD7
もったいないよね・・・
立った!立ったよ!!(感涙)
5 :
代打名無し:02/06/21 21:57 ID:n3WzdgD7
6 :
代打名無し:02/06/21 21:58 ID:xCrm/mVn
>>1 速攻スレ立て乙でした〜。
「不眠城」スレも落ちちゃって鬱だったからここの復活嬉しいよ…。
完結に向かって、職人さん方がんがって下さい。
板、縮小化の方向なのでしょうか。
ネタ系だけじゃないと思うけどスレが500に減ってる。
現在の状況
*は非選手
<ナゴヤドーム>
川上、井端、小笠原(星野により足を負傷)
音スコアラー*、長谷部ブルペン捕手(星野の殴打により負傷と思われる)*
<栄駅構内>
野口、荒木(鈴木平により全身を負傷)
<名駅マリオットアソシア>
中村(負傷)、山本昌(重傷)、彦野OB(重傷)
<その他>
屋内練習場(BR本部):山田、仁村など幹部
マリオットアソシア非常階段:島野コーチVS橘高審判員
↑彦野に*印付け忘れたーよ(鬱)
9 :
代打名無し:02/06/21 22:04 ID:n3WzdgD7
>>6 はっ、何か足りないと思ったら・・・マズー
これまでのあらすじ
日本のまんなか中京に本拠地を構える中日ドラゴンズ選手たちは、ある日突然殺人ゲーム『バトルロワイアル』参加者に選ばれる。
友情と裏切り、血と涙、さまざまな死闘を繰り返したのち、ナゴヤドームにたどり着いた川上憲伸たちは星野仙一との決闘に勝つ。
しかしゲームはそれでは終わらなかった。
かつて同じ戦いに巻き込まれた彦野の出現により、中村と山本昌は、悪の黒幕が高見の見物をする名駅ツインタワーのホテルマリオットアソシアへ挑んでいた。
『老人』の刺客により彦野と山本は瀕死の重傷を負う。
そして老人の待つ部屋へたどり着いた中村の孤独な戦いを、川上たちはナゴヤドームのライブビジョンで目にする…。
11 :
代打名無し:02/06/22 07:06 ID:vr5FCcHW
>1様
スレ立て乙です〜。
ハラハラドキドキなクライマックスだったからdat落ちビックリでした。
怖いからageさせてください〜〜〜〜〜
12 :
代打名無し:02/06/22 19:00 ID:pOEVq8aw
dat落ち恐いのでage
2日に一度はage
13 :
代打名無し:02/06/22 20:55 ID:bJE2m1C6
ageageage
14 :
代打名無し:02/06/23 00:33 ID:H/yId1WL
age
15 :
代打名無し:02/06/23 14:27 ID:putc9czX
age
16 :
代打名無し:02/06/24 00:09 ID:pXsR9Kyz
コノスレの武志ってすげぇかっこいいage
17 :
代打名無し:02/06/24 17:55 ID:IsO+Zk6J
age
18 :
代打名無し:02/06/24 17:55 ID:qjnKDGZo
age
19 :
◆xYQkNOZE :02/06/24 18:06 ID:ePlt6lVy
「このわしに傷を付けるとは大した奴…さすが中日の正捕手だ、しかしこのわしに勝てると思うなよ!」
そう絶叫に近い言葉を吐き捨てるやいなや、老人は中村めがけて飛びかかってきた。
しかし年老いた身体はあまりに軽く、中村にいともたやすく捉えられてしまう。
体勢を逆転させ、老人を床に叩きつけると鈍い音がして両腕が折れた。
そして中村は、見てはならないものを目にする。
……球界最大の機密事項を。
20 :
◆xYQkNOZE :02/06/24 18:06 ID:ePlt6lVy
東京・大手町。
ものものしい数の警備員が立ち並ぶ読売新聞社会議室に備えられたモニターの前で、原辰徳は驚愕していた。
「んー原君、こんなことも知らなかったのですかー?もっとクレバーにならないといけませんよ?クレバーに。んん?」
そう言って読売ジャイアンツ監督長嶋茂雄は満面の笑みをたたえながら好物のメロンを頬張る。
「し…しかし監督、こんなことがあってもよいのでしょうか」
怯えた顔の原が見つめる先には、読売新聞社社長にして球団オーナー渡辺恒雄の腕から飛び出たチューブやショートする基板が画面に映しだされていた。
「オーナーは今年何歳になると思ってるんです?あの年齢であのパウアーは不思議だと思わないんですか?」
老人が最初の肉体改造、そうだ、読売の大砲清原和博の言う肉体改造ではない、文字どおりの改造手術を受けたのは終戦まもなくのことだという。
それから年月を重ね、身体に不具合が起きるたびに手術を繰り返し、外見は年齢を重ねながらも精神と肉体の若さを保ち続けていたのだ。
「そしてナウ、今のオーナーはですねえ、ブレインだけが生身のヒューマンになっているそうなのですよ?」
恐ろしい。
あの異常なまでのバイタリティはそうして養われていたものなのか。
原はへなへなと床に崩れた。
「いいですか原君、これくらいのことで驚いてはいけませんよ?あのオーナーの最もクレバーなことを教えてあげましょう」
「な、なんですか?」
聞きたくないという表情をして原は顔を上げる。
「オーナーが損をすることを一番嫌っていることは君でもご存じのことでしょう。あのバディーも、そういった考えのもとに造られているのです」
「…え?」
21 :
◆xYQkNOZE :02/06/24 18:07 ID:ePlt6lVy
「みすみす負け試合をするほどオーナーはクレイジーではありません。中村君との決戦を望んだのは、勝ち目があったからなのですよ」
「勝ち目?」
「そーーーーーーーーーーうです」
長嶋は指を一本立てて、原の目の前に突き出した。
「あの人の身体は、生命の危機を感じると、爆発するようになっているのです」
「爆発……つまり…死ぬときは自分に襲いかかった相手を巻き添えに……?!」
「そーーーーうです!エクセレント!」
自分はこの球団にいてはいけない。
この世のものとは思えない現実を知っていても全く動じない長嶋を見て、原はそう心に誓った。
それを逃れられない宿命だと知っていながら。
22 :
◆xYQkNOZE :02/06/24 22:10 ID:1+X767BG
「ごめんなさいね。主人、もうすぐ帰ってくると思うんですけど」
橘高との死闘を繰り広げていた島野は、ツインタワー屋上で赤々と点滅を始めたエマージェンシーランプによってその闘いの中断を余儀なくされ、間一髪で乗用車に滑り込み、西へ向かって走っていた。
思い出すのは、星野夫人との日々。
星野の側近として長く仕えていた島野は、星野の自宅を訪れることもしばしばあり、必然的に夫人と顔を合わせることが多くなっていた。
控えめながら世話好きな夫人の姿に、島野はいつしか淡い恋心を抱いていた。
リビングのソファに座り星野の帰りを待つ島野に、星野夫人は日本茶を勧める。
その日、島野はこらえきれなくなったあまり、思わず夫人の手を握りしめていた。
「奥さん…!」
「!…いけません…!!」
その日以来、島野は気まずくなって星野の自宅を訪れることはなくなり、夫人とも疎遠になっていた。
月日は流れ、島野がやつれ果てた夫人と再会したのは、星野に連れられて見舞いに病室を訪れたときたっだ。
星野が花瓶の水を取り替えに立ったとき、星野夫人は島野の手を取って懇願した。
…お願いします。
…どうか、どうか夫を、星野仙一を、あなたの力で胴上げしてください。
「奥さん…、あなたの願い、叶えてみせますよ」
車は小牧で名神自動車道に入る。
目指すは、甲子園。
23 :
代打名無し:02/06/24 22:37 ID:+/ui5nwP
ヴォケシーーーーー!!!
24 :
代打名無し:02/06/25 00:10 ID:5PKZjg/W
中村の目の前で電流が散っていた。
「道連れだ」
いつもよりしわがれた老人の声。
剥き出しの機械の腕に、逃げる間も無く両の足首を掴まれた。
人間の力ではない。下手に動けば骨が折れるだろう。
鳴り響く警報が五月蝿い。
どこかでランプが光っているらしく、部屋の中が赤い色の光に満ちていた。
「どうした、命乞いの一つもしないのか」
「何故?俺はあなたを殺しに来たんですよ。
あなたが死にさえすればいいんです」
言葉が思うより先に口から滑り出す。
自分が、恐ろしいほど落ち着いているのがわかった。
「…理解できん」
「川上たちはもう一人前ですからね。
俺たち年寄りなんか居なくても、
もう立派にペナントを戦い抜いてくれる…」
「だから、死んでもいいというのか?何故だ?
死んでしまえば全ては終わりだ!
わしの権力も財力も、全て消えてなくなってしまう…」
中村は嘆息した。哀れな老人だ。
これが人を信じなかった報いか。
不意に、足首を掴んでいた力が弱まった。
「ち、力が入らん…わしは死ぬのか…し、死ぬのは嫌だ、死ぬのは」
この老人の小さな体が弾けるのに、もう幾許も無いらしい。
「…さようなら」
振り向くことなく中村は部屋を出た。
老人は尚も何かを言っていたが、聞いてやる義理も時間もない。
これほど派手に警報が鳴り響いているということは、
かなりの範囲が爆風で吹き飛ぶのだろう。逃げることは適うまい。
…ただ、自分の死に場所はここではないと思った。
25 :
代打名無し:02/06/25 06:44 ID:0zAr5a9c
age
26 :
◆xYQkNOZE :02/06/25 11:24 ID:H3RGnSII
「昭和33年、栄光の巨人軍に入団以来今日まで17年間、巨人軍ならびに長嶋茂雄のために絶大なるご支援をいただきまして…」
ホテルのフロア中に、野球人はもちろん誰もが聞き覚えのあるあの一節が流れ始めた。
もはや五感をほとんど無くした彦野と山本の耳にも、それはかすかに届いていた。
…ああ、武志、これで終わるんだな。
山本は笑っていた。
不意に、誰かに抱き起こされる感覚がわかった。あれだけの傷を受けて、まだ触覚は残っているらしい。
…武志か?
…そうですよ、昌さん。
声に出すことはなくとも、二人の間で伝わる言葉。
「…私は今日、引退しますが、我が巨人軍は永久に不滅です。…」
…終わるのか?
…ええ、全て終わりますよ。
…もう、苦しむことはありません。あとは、全て憲伸達に任せましょう。
「…長い間、皆さん、本当にありがとうございました。」
…お前と一緒でよかったよ。
…俺もですよ、昌さん。
…昌、武志、お前らは最高のバッテリーだよ。
「では、そろそろ行きましょうか。」
閃光……………………!
27 :
代打名無し:02/06/25 17:43 ID:MlVSNaJS
俺たち、とても幸せだったよ。
こんなに長い間、野球の選手でいられたんだ。
この球団に入ったこと、一度も後悔なんかしていない。
だから。
川上、井端、小笠原、荒木、野口。
後のこと、任せたぞ。
お前らなら、きっと掴める。
俺たちも触れたことのない、日本一の称号を…
きっと…
28 :
◆xYQkNOZE :02/06/25 18:18 ID:H3RGnSII
「あ…!」
荒木の頬に涙が伝うのを野口は目にした。
「どうした、荒木?」
荒木は自らのことなのに不思議そうな表情をしてみせる。
「わかりません…、でも、今、なんだか、ものすごく井端さんに会いたい。行かなきゃ」
苦痛に顔をしかめながらも、荒木は野口に寄りかかり立ち上がった。
今きっと何かが終わったのだと、野口も荒木も気づいていた。
だから、薄暗い地下鉄の線路なんて歩かない。いつしか、雨はあがっていた。
29 :
代打名無し:02/06/25 20:45 ID:7nKhVCm3
昌と武志のバッテリーを思い出してしもたよ…
30 :
◆xYQkNOZE :02/06/25 21:36 ID:vvaAMNt6
ツインタワーの爆発とともに巨大画面から巻き起こった爆風が落ち着きを見せると、画面は再びノイズがかった映像を映し始めた。
「お疲れ様でしたー」
CBC加藤小百合アナウンサーの声とともに、見覚えのある場所が現れる。
窓の向こうに名古屋城を臨むこの部屋は、監督クラスの人間のインタビューでよく使われるキャッスルホテルだ。
三脚を畳むADの姿が映り、どうやら取材が終わったところなのだと想像がつく。
次に現れたのは、ソファから立ち上がるスーツ姿の星野の姿。
「で、監督。さっきの質問、答えてくださいよ」
小百合アナが立ち去ろうとする星野を追いかける。
「いやあ、女性にそんな風に言われるとなあ、参ったな」
星野の顔がとろけそうに崩れている。頭を掻く。
「これはオフレコにしておきますから。ね?監督。監督が後継者にしたい投手って、いったい誰のことなんですか?」
「んーーーー、まあ、なあ。内緒だぞ?」
「はぁい!」
小百合の喜ぶ様子を見て、ますます表情がゆるむ。そしてゆっくりと口を開く。
「俺はなあ…。憲伸に後を継いでほしいんだよ」
「川上投手にですか?」
ライブビジョンをじっと見上げていた川上は思わず当たりを見回した。井端と、小笠原と、目が合った。
「ああ…。だがな、どうもあいつはあと一歩のところで、思い切りが足りないんだよ」
「思い切り、ですか?」
「そうなんだよ…、押しが弱いというかな。だから…」
星野の言葉が一瞬止まり、川上は息を飲んだ。
「いっそ、俺を倒して踏み越えてゆく男になってほしいんだ」
「倒す!きゃあ、スゴイですね!」
「まあ、例え話だがな。人気だけじゃなくて実力でエースの名を掴み取る、それくらいの男になってほしいんだ、憲伸には…。」
映像はそこで途切れた。
31 :
◆xYQkNOZE :02/06/25 21:37 ID:vvaAMNt6
川上はマウンドに横たえられた星野の遺体を見た。
だから、弾切れの銃を俺に向けたんだ。
本気で立ち向かう勇気のない俺を、本物のエースにするために。
この人は、死ぬまで星野仙一だった。ドラゴンズファンに最も愛された男であり、ドラゴンズを最も愛した男だった。
不意に小笠原がベンチの奥に走っていった。タオルを手にして戻ってくる。
川上は、手渡されたそのタオルを、星野の身体にそっと掛けた。
『HARD PLAY HARD』
闘将・星野にふさわしいスローガンが、プリントされていた。
32 :
代打名無し:02/06/26 00:47 ID:I/HYbtUy
「試合終了、だな」
山田がサイレンのスイッチを押した。
同時に、巨大なモニターから
首輪の位置を示す光点と会場の地図が消えていく。
それに代わり、細い枠に囲まれた文章がゆっくりと浮かび上がった。
十八時二十一分
監督死亡/ゲーム終了
生存者: 2 11 43 47 48
「さて。これからが忙しいぞ」
再び本部にざわめきが戻ってくる。
仁村はどこかぼんやりとその様を見ていた。
全てが終わったのだ。
この球界から「プログラム」が消える。
二人の人間の命と引き換えに…
「そう言えば」
山田がぽつりと言った。
「島野はどうしたかな。死んではいないだろうが」
仁村はそうですね、と生返事をした。
33 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 11:51 ID:eBRgOg6J
名古屋中にとどろくけたたましいサイレンの音に、誰もが安堵の色を浮かべた。
「これから、どこへ行くんですか」
歩を進めようとしていた音に、井端が問う。
スタッフでありながら戦いに巻き込まれて傷ついたブルペン捕手を自分の寺で介抱するのだという。
『壁』さながらの巨体を背負い、音はどこかへと消えていった。
「行こうか、俺達も」
ドームの重い扉を開けた。流れ込む外気が心地良い。
辺りはすっかり暗くなり、今までの惨劇とは不釣り合いに平和な夜空が広がっていた。
気が付くと、向こう側から近づいてくる人影が見える。
あちらもこちらの様子を確認できたのか、大きく手を振っているのが見えた。
「あれ、荒木じゃないか?野口さんもいるぞ」
川上に促され、井端は駆けだした。
間違いない、野口に支えられているのは満面の笑みの荒木だ。
「荒木!」
「井端さーーーん!はは…、すみません、走らせちゃって」
もう何年も会ってないかのような。そんな感覚だった。
井端が目の前にたどり着くと、野口は仕草で肩を貸せと言い、荒木の身体を預ける。
「ちょっ…、おい荒木、重っ…」
「ははは…、井端さん、やっぱり生きてた…」
「バカ、お前みたいなのほっといて死ねるか」
ようやく、選手達に笑顔が戻った。
34 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 12:04 ID:eBRgOg6J
それからの球団復興作業は、山田と野口を中心に急ピッチで進められた。
捕手として初のメジャーリーグ行きに挑戦するも敢えなく夢破れた横浜の谷繁。
巨人からは、ユーティリティピッチャー前田幸長亡きあとの補強として平松を。
イチロー放出後に収益が激減したオリックスが選手を大量解雇したと聞けば、山田の縁故で藤立、木村、栗山を採用した。
そして運命のドラフト会議。
山田は過去に類を見ない、上位二名に捕手を選択するという斬新な策に出た。
不況による廃部で急遽ドラフト対象になった河合楽器の若手ツートップも無事に確保。
新生ドラゴンズの誕生は順調に進んでいた。
もちろん、慌ただしさから他球団の動向を調査する十分な余裕はなく、阪神球団に流れ着いた島野が中心となって極秘裏に進めている『星野蘇生計画』など、知る由もないことである。
35 :
代打名無し:02/06/26 13:43 ID:nZAYjmB2
そ、蘇生・・・!?
何か凄いことになりそうだな(汗)
36 :
代打名無し:02/06/26 15:51 ID:5pClVDz7
既にBR通り越しちゃってるんじゃないか?!と言ってみるテスト
37 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 16:36 ID:eBRgOg6J
2001年・冬。
名古屋の街の復興は着々と進み、『バトルに加えるほどの面白みもない』として伊良湖にキャンプ名目で送られたファームの選手達も続々と戻ってきた。
破壊された中日ビルの改装のため自宅兼球団事務所仮庁舎となった昇龍館のリビングで、野口は井端とともにノートパソコンを睨んでいた。
選手会長と副会長、書記に会計がまとめていなくなったものだから忙しい。
会計にはまめな男を選んでいてよかった、幸いにして正津の遺品には大学ノートの表紙に『こづかい帳』とマジックで書かれた選手会費帳簿が残っていた。
ピンポーン。
玄関先で、来客を知らせるチャイムが鳴る。
野口はパタパタとスリッパの音を立てて向かう。
「今日から中日ドラゴンズに入団することとなりました、中京大中京高校三年、前田章宏です!よろしくお願いします!!」
最敬礼を通り越して何というのだろう、ブレザー姿にサブバッグと枕を抱えた少年が、膝に着くまで深々と頭を下げていた。
見上げるほどの身の丈にいい体格をしているが、表情はまだまだあどけない。汚れを知らない顔である。
自分たちがなくしてしまったものを、野口は見たような気がした。
そして、彼や新しくこのチームに足を踏み入れる者達の瞳を、自分たちが味わったような惨劇で汚してはならない。
固く心に誓いながら、野口は両の手で、前田と名乗った少年の手を握った。
「ようこそ、中日ドラゴンズへ。」
38 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 16:42 ID:eBRgOg6J
>>35 島野さんが阪神に行っちゃったののつじつま合わせで。
そろそろエンドマーク出ますか
39 :
代打名無し:02/06/26 20:43 ID:9DzyoC+L
age
40 :
代打名無し:02/06/26 21:51 ID:SO7Kl2Ba
いよいよラスト。
41 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 21:54 ID:rnj9GVYK
大団円。ハッピーエンドで。
キャストとスタッフロール(コテハン保管人他)出そうと思ったけどkabaサーバのpart2-3が見えなくて断念。
誰か美しくシメて!
ドラゴンアッシュの歌が流れてくるのでもいいや(笑)
42 :
代打名無し:02/06/26 22:12 ID:I/HYbtUy
新しい年が始まって暫く経つ。
川上は、ナゴヤドームの一番ゲート前に来ていた。
シーズン中は人の溢れ返るここも、今は人影もなく閑散としている。
プログラム終了直後は、花を携え泣きながら現れるファンも
少なくなかったが…
直にキャンプも始まろうかというこの季節、
人々は次第に悲しみを忘れていっているようだった。
風が冷たい。
あれから色々な事があった。
沢山の死を埋め合わせる為のあらゆる作業。
名古屋のそこここで葬儀が行われ、
川上たちは必ずそれに参列した。
山本と中村、彦野の三人の死体は見つからなかった。
あの爆発でばらばらに吹き飛んでしまったのだろう。
ただ、焼け焦げた、誰の物とも知れぬ帽子が一つだけ
瓦礫の下から発見された。
遺族の了解を得、その帽子は現在川上の所有物となっている。
これは山本の帽子だったのか、中村の帽子だったのか。
川上は右手に持っていたそれを、そっと己の頭に乗せてみた。
焦げた臭いが鼻を突いたが、大して気にはならない。
ガラス越しにゲートの中を覗き込む。
濃紺の石で作られた慰霊碑が、薄暗い中に浮かび上がっているのが見えた。
犠牲になった選手の名前と球団のロゴが刻み付けられた碑だ。
なんて多くの名前が刻み付けられているんだろう…
見つめている内、だんだんと、その石の輪郭がぼやけて滲んでいく。
川上はガラスに額を押し付け、泣いていた。
43 :
書き手A:02/06/26 22:14 ID:I/HYbtUy
すみません。ラストになりませんでした…あと一息。
44 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 22:18 ID:rnj9GVYK
わー!がんがれー!
45 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 22:28 ID:rnj9GVYK
>>42 川上の姿に泣けました。慰霊碑、ドームで探しちゃいそうだよ(涙)
今更ながら保管サイト読み返してます
最初のころから川上+小笠原、昌+中村、荒木+井端になってたり、荒木はいつでも井端に怪我の手当されてばっかりだったり面白い。
昔の職人さんたちはどこへ行ってしまったんだろう、もう読んでないのかな…。
ラストシーンは2002年開幕ですか←誰か…
46 :
代打名無し:02/06/26 23:01 ID:I/HYbtUy
投手は川上。
遊撃に井端、二塁に荒木。
それ以外は無名選手ばかりの開幕戦。
山田は黙ってベンチで腕組みをしていた。
ヘッドコーチとなった仁村が、何やら
打撃コーチの佐々木と話し込んでいる。
島野はあれきり戻らなかった。
噂によると大阪にいるというが、もうそんな事はどうでもいい。
橘高も何食わぬ顔で審判を続けている。
もういつまでも過去の事は考えていられないのだ。
これから、ペナントレースという名の生き残り競争が始まるのだから…
ドームには沢山のファンが詰め掛けていた。
もうすぐ、試合が始まる。
証明がいつもより眩しく感じられた。
47 :
代打名無し:02/06/26 23:02 ID:I/HYbtUy
2002、プロ野球セ・リーグペナントレース。
中日はあまりに少ない戦力で精一杯戦い抜いたが、
五位以上に二十近いゲーム差をつけられての
最下位に終わった。
しかし、リーダーとしてチームを引っ張った川上の
焼け焦げた野球帽は
多くの野球ファンの心に残り
以後、彼のトレードマークとして長く親しまれることとなった。
彼らが日本一の称号を掴み、慰霊碑に
優勝旗を捧げるのは、まだ少し先の話である。
48 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 23:05 ID:rnj9GVYK
キャーーーーーーーーーー!!!!(泣)
憲伸カコイイ!!素敵!!!
49 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 23:07 ID:rnj9GVYK
>>47 ささ…ドラゴンズの日本一を祈願してエンドマークを…
50 :
代打名無し:02/06/26 23:07 ID:tAPZNBxY
∧ ∧ ∧ ∧
/⌒~~~⌒\ [ー山ー] (´昌` )
/ ( `>Z=L )y─┛~~ 〜(___ノ 〜(___ノ ,γ_
(_ ノγ U ∩_∩) THANK YOU WRITERS ┌───────┐ \
α___J _J and .(| … … | ヽ
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|.| | . ▼ | | \あ\ | 髭 ノ
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\ / 〔/\〕 U / ∩∩ ( ) (___) \と.\ .|/
| | | c[ー。ー] | |ヽ(・w・)ノ | | | | |〜 /\.\う\| (‐_‐)
(__)_) UUUU /∪∪ (___)(_(__) ◎ ̄ ̄◎─┘ .└──┘(∩∩)
51 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 23:12 ID:rnj9GVYK
>>50 キターーーーーーー!!
顔がメインキャラになっててうれすぃーよ!
完結見届けられてうれしーよーーーー
52 :
代打名無し:02/06/26 23:16 ID:EdgIS9jL
完結おめ!
53 :
代打名無し:02/06/26 23:18 ID:ukY8u6fO
おめでとー!!
54 :
書き手A:02/06/26 23:20 ID:I/HYbtUy
すみません、今更ですが誤字訂正。
32の十六行目
×「二人」
○「三人」
46の最後の行
×「証明」
○「照明」
でした。
55 :
代打名無し:02/06/26 23:23 ID:nZAYjmB2
完結おめ!
他球団ファソだけど感動した!ありがとう!
56 :
◆xYQkNOZE :02/06/26 23:23 ID:rnj9GVYK
>>54 をを、びくーり
私も気になってまひたよー。なべつねと中村のことか?彦野は現役じゃないから山本と中村?とおもてた
感動のラストありがとですーーー!!!
57 :
代打名無し:02/06/26 23:26 ID:h1ggAw8T
わー!終わってしまたよ!
毎日これを読むのが楽しみだったが終わってしまったから何だか寂しい(鬱
は〜しかし感動だ!
58 :
代打名無し:02/06/27 00:25 ID:VNc55zo5
マジ感動です、職人様たちありがつぉ!
チュニチの選手が読む前より好きになったYO!
>>57 漏れもさびスィ・・2に期待?wタニシゲとかw
59 :
161:02/06/27 01:10 ID:+0ZQtFEk
◆xYQkNOZE様、お疲れ様です。やはりシメは貴殿しかいませんね。
私のような新参書き手がクライマックス最後の最後を持ってっちゃ
失礼と思いromに徹してました。
スタッフロールがわりにここから生存してる書き手がエピローグ
ちょっとづつ、と言うのはいかがでしょう?
60 :
161:02/06/27 01:12 ID:+0ZQtFEk
と思ったら完結してました(汗)
59は忘れてください。脳内削除禿キボンヌ
61 :
161:02/06/27 01:19 ID:+0ZQtFEk
ということであらためまして。
47番様、
感動のラストをありがとうございました。
話がどう転ぶのか最後までわからないと言う、複数書き手の
リレーならではの醍醐味を味わわせていただきました。嫌味
じゃなくホントに。
62 :
代打名無し:02/06/27 01:32 ID:T9N8p4eu
オワッチャッタ(;´Д`)
書き手のみなさん、お疲れさま。
本当に楽しませて頂きまひた。
ありがとうございます。
>>50 (・∀・)イイ!
>>59 オハヨー
やと前スレのコテハン職人さん出てきてくれたー!
新スレになって全然人が出てこないので勝手にガンガン書いてしまったので、ENDマークまで突っ走るのはどうかと思い、シメようにもシメられずにおりました。
書き手Aさんが出てこなかったら、昇龍館のとこで無理やり終わらせてました。
保管サイト職人さん、あとはよろしく頼みます…
私も過去ログ見えるようになったらボチボチ拾います。
ほとんど荒れず、読者の方々も生暖かく見守るだけで職人の手腕がつたなくても煽ったりしないし、雰囲気が良くて棲みやすいところでした。
シリアス系?のネタスレは、なかなか立ちにくいとは思いますが、立つことがあれば、また職人として恐れ多くも参加させていただきたいです。
おもろいネタと、引っ張れる職人の頭数と、読者の寛大さが揃ったら、また実現するかな。第二弾かどうかはおいといて。
不●城あたりも新スレ立ったはいいけど苦戦してるようですな…
64 :
阪神大本営:02/06/27 06:50 ID:VnlZhdNR
ナゴヤの低学力どもが
そんな暇あったら、とっとと河合塾にいけ
65 :
代打名無し:02/06/27 06:54 ID:2vJ/MlK3
職人様方、お疲れ様でした!!!
ラストも感動的で、泣けてきました。
毎日チェックするのが本当に楽しみでした。
ありがとうございました。
66 :
代打名無し:02/06/27 16:02 ID:YptHLe3E
あああオワッチャターヨ泣
職人様アリガトウ、感動したですーー
>>◆xYQkNOZEさん
このスレはもう流しちゃうの?
(⌒⌒⌒)
| 漏 |
( ´Д` )
/( )ヽ
< <
まだこのスレに居たい…
とりあえず保全って言うのはナシですか?いや、真面目に・・
>>66 私に聞かれても〜一介の書き手で決定権はないので…ぼへ〜ん
スレがもったいないのでまたーり後日談でもしながら保全でもよいのではないでしょうか。
読み物系ネタスレやるならどんなネタがよいかの談義でもよいし…
ttp://dragons-br.hoops.ne.jp/ ログ整理して思ったんだけど、part1-3まで引っ張ってた69110さんは、本家保管サイトの管理人さん?
68 :
代打名無し:02/06/27 18:08 ID:pN4/F0My
職人さん、お疲れさまでした。
このスレの武志は最高にカコヨカッタです。
ちょっとほれますた。
>>66 ああ、付け加えますと、私自身このスレを流したいと思ってはいませんよ。
小ネタやAAは見ていて楽しいけど私には作れないのでリレー長編が出来るここは幸せでした。
野球板は長編連載?スレがあまりないね。
72 :
代打名無し:02/06/27 21:36 ID:vzXXxZsG
チョト遅いけど職人様お疲れ様でしたー!!
ラストは心打たれてホンマに涙が(ノд`)゜・。
>>71 一応同一人物です…。
文章もろくに書いたこともなく
下手な文章を採用していただいているため
せめてお役に立とうと作らせてもらいました。。
因みにパート4でも名無しでちょこっとだけ書いとります。。。
センスのない文章があればそれは私ということで…。
因みに自分なりの妄想エンドも考えていたのですが
一応頭の中にしまったままにして置きます。。。。。
サイトは今週末くらいに何とか…。
>>73 乙でした!
途中までコテハンだったのにもったいない…
でも最初から最後まで見守りつづけた書き手さんがいらしたのは、なんだか安心しました。
私は恐れ多くも新参だったので。
サイト更新楽しみにしています。妄想エンドもこそーり教えてけれ〜
75 :
66:02/06/28 00:16 ID:B/V2tkKK
>>◆xYQkNOZEさん
よよよよかった!まだ居られるんですね嬉!
良スレだと思ってたので良かったです。(荒れてないし)
仰る通り長編連載スレって少ないですし・・
雑談でもしてマターリと…
>読み物系ネタスレやるならどんなネタがよいかの談義でもよいし…
賛成(・∀・)!!です
76 :
書き手A:02/06/28 01:07 ID:UUsG7aS4
新参の分際で、勝手に話を終わらせてしまった者です。
ちょっと提案なんですが。
幸いにしてこのスレは当分余裕があるので、ここからは
全体の推敲をする意味で
エピソードの加筆・修正に利用するというのはどうでしょうか。
具体的には伏線の回収や誤字訂正など。
加筆の場合は「この話は○○(レス番号)の前に入る話だ」
と明記の上で書くとか…
自分が勝手に突っ走って終わらせてしまったせいで
尻切れトンボになってしまうエピソードがいくつかあると思ったもので。
ただ、保存屋さん方にはますます仕事を押し付けることになってしまうので
身勝手な提案だとは思いますし、マターリ談義をするのも賛成です。
書き手様方、どうでしょうか。
「もう燃え尽きたわボケ、今更勝手なこと抜かすな」
とお思いでしたらこのレスはスルーして下さい。
77 :
161:02/06/28 02:37 ID:BhMWXNHd
皆様乙カレー様です。
このスレの今後、いろいろな案が出ていますね。
ならいっそ全部まとめてあとがき大会にしちまいませんか?
誤字等の修正も含めて。
伏線の回収も本編ストーリーに直接関係しかねないんで、
「実はここの伏線はこんな風に使うつもりだったんだYO」
とか、「不発に終わったけど漏れはこんなアイディア考
えてた」とか「実はこの後の展開は漠然とこう言う方向
にもって行こうと思ってたんだ」そう言う風に自由にや
ればなんでもありみたいな。簡単な説明でも良いしストー
リー仕立てでも良いしあらすじでも良いし。もちろん本
編に書かれなかった方も胸にしまっていた案があればそ
れも書いていただければと思います。
正直自分も過去ログ管理人さんの「妄想エンド」もぜひ
見てみたいです。
あくまでリレー小説ですからそれぞれの書き手さんの考
えていた事と違う方向に行く事、それで胸にしまってし
まったアイディア、使えなかったアイディアも多いと思
いますが、話がどう動くか判らないのがリレーの魅力で
もありますのでそれをあとから本編いじくるのはどうか
と思いますが、いじくるのでは無くあとがきの形でそれ
を暴露しあうのは面白くてよいと思いますよ。
最終的にはそれらが出尽くしたあとに「あとがき」とし
て一括保存にすれば保存屋さん達も編集の手間も無くて
良いのでは・・などと愚考しますがいかがでしょう?
過去のことはもう振り返らない。
俺が思うのは、ただ、去っていった彼らのために、これから何ができるか、だけです。
(川上憲伸 20XX年8月・『星野』阪神との首位攻防三連戦を控えて)
…と憲伸も言っているので(捏造)自分で書いた段落についてどうしても直したい部分があれば歴史がおかしくならない程度(せりふ直し・追加・具体的な場面描写の追加など)に挙げるだけ挙げて、
修正するか別バージョンとして保存するかは保管屋さんのお時間次第…なんて(汗)
如何でしょう?<保管屋さん
大量の誤字はなんとかしたいですね。最初の頃の「プロレスラー」はどうにかしたいよ(涙)「穂のう」(炎?)とか…
あと、登場人物の口調(同じ相手に対して丁寧語だったりタメだったり)もところどころ違うな。
今まで気になってた疑問とか感想とかネタバラシとか
・Part2の18で中村が憲伸たちに銃を向けた理由はなんだったんだろう?
・Part4で憲伸が150km/h超えた球を投げられたのは火事場のバカ力以外のなにものでもありません。
・Patr4で私の書いたところで死んだと思った荒木がまだ生きててよかったよ。続きを書いてくれた職人さんありがとう
・だいぶ昔のことですが山田さんをフェリーで神戸に亡命させる案をぼんやりと考えてました。
山田さんが悪役じゃなかったら書いてたと思う(でも参加者に賭けたりしていたのでやめた)
ほかの職人さんたちや読者の方々の裏話や撮影秘話(これが劇中劇であるとして)きぼんぬ〜
最終的な結果でもまとめてみるかな
…戦争を知らずに 僕らは生まれた
…戦争を知らずに 僕らは育った……
(山井大介 2002年初登板当日のブルペンにて口ずさむ)
79 :
代打名無し:02/06/28 17:00 ID:nleCl2+z
前々からちょこちょこっと出てた山田新体制でのBRについての話しもアリ?
と言ってみるテスト。
80 :
書き手A:02/06/28 18:30 ID:GPYM8YkW
パート1の始めの方は単なるコピペ改造だったんですよね?確か。
あそこは出来れば何とかしたいですね。
温めていたネタとしては…
・逃げ行く読売のヘリに手榴弾を投げ込む中村。
その一瞬、往年の強肩が蘇る!(少年漫画調)
というのがありました。
「老人」が逃げそうもないキャラになったので使いませんでしたが。
>79
山田編は、全く別の話としてならありかもしれませんね。
これの続編にしてしまうと昌、中村、彦野が犬死になので。
81 :
保存屋:02/06/28 20:48 ID:PblFto7i
最初のほうはコピペだったのを
元ネタを知らない私が勝手に話を作って
無理やりオリジナル路線に持っていってしまいました…。
82 :
代打名無し:02/06/28 20:58 ID:hvkKSZwB
>>書き手Aさん
うん、山田編を作るとしたらまったく別の話としてですね。
じゃないとドラのメインキャラほとんど居ないからいくら良い物語でも…(´Д`;)
[…ε…]好きな漏れもやるせないですw
83 :
161:02/06/28 21:18 ID:RQqP+tY5
では私めも伏線のままお蔵入りになったネタを。
雨が降り出していた。北の方では雷鳴も聞こえる
↑実はこれも伏線だったり。ナゴドは栄から見て北の方ですから。
漠然と、星野倒すのに落雷を使えないかな〜なんて。お約束です
し。
具体的にどうするか考え付かなかったので没。
川崎の爆弾入りリュック、植え込みの向こうに飛ばしたのも
実は伏線。植え込みが盾になって無事でしたって事で野口に
拾わせて対星野戦の切り札に・・とか思ってましたが野口あっ
さり戻ってしまい没。
老人の部屋に中村だけ飛び込ませたのは老人を倒すのは彼に
したかった為。最後のエピローグで、
***************以下は当時考えていた妄想エンディング*************
黒幕を失ったプログラム制度は、世論の高まりに押される形で
廃止が閣議決定された。
そのニュースを持ってきた記者に対し、野口はただ一言、
「中村さんの、おかげです」とだけ答えたという。
FIN
**********************************************************************
と言うお約束セリフによるオチを考えていたので。ただこれだけの話の
エンディングとしては少々くだらないのと、最新参書き手の自分がこん
なくだらないオチで最後のおいしいとこを持ってくのはちょっと・・・
と思い自主規制。<ビビッたとも言う(笑)
ってな感じです。
84 :
161:02/06/28 21:59 ID:RQqP+tY5
山田編はやっぱ別の話にしませんと人数的にもキツいですね。
リナレスとバルガスも出したいです。ブレットがビミョー。
コピペの変なとこ、大筋を変えないようにしてリライトしてみます。出来たら貼ります。
>>81 オリジナルに持っていってくれてありがとうです!!
ただのコピペだったり原作に名前当てただけだったらクソスレになって埋もれて忘れさられていたでしょう。
>ヤマドラロワイヤル
今のと世界観ごっちゃにしないために、このスレで現ストーリーのおさらいと次のネタ会議して、1000まで使い切ってorDAT落ちしたら次スレでストーリー開始、はどうでしょうか。
え?1000まで誰も付き合わない?(汗)
福留は今年の活躍っぷりから考えても次は主役級になりそうですね。
同一人物が現話と全く違うキャラ設定にすると面白い(再び書く価値がある)かも。
たとえば
・立浪が頭を使って皆をだますとか
・山崎が気の弱さ全開とか(二軍落ちしてるから出てこないのもありかも)
現話で死んぢゃった今中もOBとしてからめたら面白そう。
伝説のストレートがついに復活!(←自分で考えて泣けてきた)
>>84 ダメ質問ですみません、バルガスって???入団するんですか?リナレスは聞いてるけど…
>>83 そのオチ、いい(笑)感動のエンディングというより、殺伐とした気分になった読者をほっとさせますね。
生死をリストにしてみてて気づいたことなんですが、ドラフト一位にして登場しない人がいました。ある意味屈辱では…汗
ヒント:夢は100マイル
86 :
161:02/06/28 22:50 ID:RQqP+tY5
87 :
代打名無し:02/06/28 22:54 ID:eNVADvqW
1000まで行ったら新スレってのも良いかも。…行くかな?w
>山田BR
中村(今YBだけど)を今回の今中辺りの役柄にして谷繁を導入とか、
一応参加させて谷繁と戦わせるとかダメですかね?w
モティロン谷繁は某転校生的役柄で。あくまで「的」役柄で。立浪も悪い感じに。
生き残りも多くとも3人くらいで…
>>86 ありがとー
背番号39で元捕手なのか…泣ける…それにしても若い
>>87 行くといいなあ、途中で捨てて新スレ立てたらネタスレ厨呼ばわりされそうなので…
で、以下part1-26リライトしてみた。
*****************************************************
一瞬、慣れ親しんだ練習場ではないと川上憲伸は錯覚した。
もちろん、実際その部屋はいつもの室内練習場であったのだけれど、 何かがおかしかった。何かが違っている。
すぐに、彼はその原因に気づいた。窓の外で、すでに日が暮れようとしている。
さっきまで練習中であったはずなのに…
川上は、辺りをそろそろと見回した。慣れ親しんだ選手たちが、先ほどまでの彼と同じように地面に突っ伏して眠っている。
そのなかには、彼の後輩である小笠原の姿もあった。
俺、どうしたんだろう? 川上がそう思ったとき、場内に大きな音がした。
選手たちは次々に目を覚まし、川上と同様に周囲を見回している。
一体、何が起きたのだろう?何故俺達は、ここに居るのだろう?
誰もが困惑と不安を隠しきれずにいた。
「あ…、か、川上先輩……何が、どうなってるんですか?俺、怖い……怖いよ……」
小笠原は、目に涙を溜めて不安を訴えた。
川上憲伸は「大丈夫だよ」と言ってあげたかったが、出来なかった。
自分自身、現状が怖くてたまらなかった。
そう、嫌な予感がする。
噂だけなら何度も聞いた、『あれ』の状況によく似ている……
突然、施錠されていた扉が、開いた。
そして、銃を携えた兵隊の様な連中が十数人、入って来る。
胸に『NPB』のエンブレムを着けた兵士達は整列すると、銃を選手達に向け、構えた。
いつでも発砲できる体勢だ。
まさか……
そのとき。
コツ、コツ、と、兵士達とは違う、軽い足音が聞こえた。
********************************************************
新話では朝倉をあんな(現話)使い方したくないなあ
続き
part1-27
28にも「教室」って書いてあったので、そこも「練習場」とか「室内」とか、意味が通じるように直してくれると嬉しいです<保管屋さん
********************************************************
練習場に入って来たその足音の主は……星野仙一だ。
星野は彼らの目前に立つと、見たことのないような笑顔で、話し始めた。
「目が覚めたか。まさかお前らに集まってもらう事になるとは、この俺も想像できなかったぞ。」
表情とはうらはらに星野らしい強い口調だ。
しかも今日は普段にも増して、自信に満ちているようだ……川上にはそう映った。
そして星野は、室内をぐるりと見回すと、衝撃的な一言を言い放った。
「今日はこれより、お前たちに殺し合いをしてもらう!」
室内の全ての空気が止まった。
「お前らは、今回の『プログラム』に選ばれたのだよ!」
川上憲伸の予感が、的中した。
小笠原は、ギュッと川上の腕を掴んで、震えていた。
誰かが、うっ、とうめいた。
*******************************************************
武器について
・私は原作はパラパラめくったくらいしかないけど(映画は見た)、中日バトロワは武器の描写があまりない。
でも、そのほうが、素人が必死に戦ってるんだ、って感じがして、個人的には、好き。と最近思った。生々しくないし。
・あんまり突拍子もない武器は出てこなかったですね。
次話では山本がラジコンの知識を生かして何か作るとか…
野球選手はあまり特徴的な趣味がないんだよね。そういうのがある人がいれば、攻撃なり防御なりに役立ちそうなんだけど。井端の自炊とか。
激しく余談
・ヤクルトバトロワの優勝者として招かれた川崎は、結果として井本しか殺してなかった。せめて現実で早く一軍登板してください(鬱)
90 :
代打名無し:02/06/28 23:45 ID:eNVADvqW
>野球選手の趣味
ドメの釣りとかはどうでせうかw<某選手名鑑より
「そーれ音重鎮…か。」
現役時代の応援歌をつぶやくように歌ったあと、音は目の前の真新しいユニホームに溜め息をついた。
慰霊祭での読経を終えた音は、監督室まで来るよう山田からの呼び出しを受けていた。
慰霊も済んだしどうにでも好きにしろ、と丸腰で向かった音に山田が伝えたことは、非常に拍子抜けするものであった。
スコアラーから二軍コーチへの異動。
「そんなに選手が大事なら、現場へ戻ったらいい」
山田は事務的にそれだけ伝えると、ユニホーム一式を手渡して無言で部屋を追い出した。
あの外様監督は私に何を望んでいるのだろうか。
それを推し量れるほど、ピッチャー出身の山田と外野育ちの音には繋がりがなかった。
けれども、これもまた運命。
落合の魂は、無事に昇天しただろうか。
『83』の背番号を受けた音は、今、天を仰いで再びユニホームに袖を通す。
************************
↑皆の魂が浮かばれますように。と思っての小ネタ。
>>90 新スレで使えそうなシーンあったら書いてみてくださいませ…
一人使えそうな趣味(特技?)があったけど私に知識がないのですぐには書けないなあ。
出てこなかった(次に使えそうな)名古屋名所
・メイチカ
・名古屋城(使いたかったけどネタ出ず断念)
・名古屋港(川崎が港にいる描写あり。名古屋港になるだろうけれども具体的な場所指定なし)
・マウンテン(?)
・学校の類
・大須(お寺とコメ兵?)
・熱田神宮(神宮西の駅は出るけど敷地内は出てこない)
・空港(新旧)
・かいしょの森?
具体的に舞台設定するとなんとなく実際の名古屋で起きてるみたいで面白い。
92 :
代打名無し:02/06/29 07:40 ID:hOqrkIoe
初めて来ました。
面白いね、ここも
93 :
書き手A:02/06/29 15:06 ID:uRk3/p6t
>◆xYQkNOZEさん
リライト乙カレー様です。
次回も名古屋を舞台にしたいですね。
選手達のキャラに関しては
細かいネタは心の中に秘めておくとして、
主役だけでも決めておきますか?
今中はスタッフ側の特別ゲストとして出してみたい気も。
94 :
代打名無し:02/06/29 17:46 ID:D3Ny4ZWD
age
95 :
代打名無し:02/06/30 00:28 ID:vC/UKOj6
>>91 スマソです、やっぱ使えない…@釣り
なんなら食料補給に―だなんて思ったわたくしめがアフォでした(´Д`;)。
今回のCDBRで早死(?)した福留wとかぁさくらタン(立浪とかも)を上手く使いたい…ような。
>>93 書き手Aさん
リレー小説…ということなので主役を決めるのはどうか?という意見がある人もいるかもしれないのですが、現話も当初から憲伸主役という話にはなっていたので、決めても決めなくても、どちらでもおまかせ…と私は思います。
ただ、現実の2002年の活躍状況をふまえつつ、現話であまり書かれなかった人たちを活躍させたいですね。
現実の活躍状況を考えると福留が主役級に扱われるのが順当でしょうか。
意見求むです。
思いつく限りであまり扱われなかった人たち:
・今中
・立浪
・ドメ
・小山(苦笑)
・紀藤
こんなもん?
あと、ショーゴーはすぐ死んだけど強烈だった。
現実で今年特に活躍しているのは、立浪・ドメ・森野・井端・朝倉・小笠原(最近は駄目だが)・蔵本?
移籍組で活躍してるのは谷繁と藤立(堅実キャラ?)でしょうか。
他に現実で起きているネタ
関川や荒木が打てないとか、山崎が二軍落ちとか、野口の怪我とか中里が再起不能とも言われてる(泣)とか
もうすぐ100レスになりますね。
現話でのネタバラシや訂正はほかにありませんか?dat落ち怖いよん
1000まで行かずに現話関連のこと出し切ったら無理に次スレ立てなくてもこのスレで区切り付けて次回作書き始めるほうがいいのかも。
あ、もしここが950までレス付いたらスレ立て頼みます。踏んだ人。
98 :
95:02/06/30 03:06 ID:vC/UKOj6
>>◆xYQkNOZEさん
タツは(選手会長だから)ともかくドメは今を逃したら使う機会が無くなるかも?なんて言ってみるテスト
荒木はすっごい好きなんだけど現実では最近ヘタレだからなあ…(´Д`;)
なんとか中盤までもたせてみたりナド。
井端は主役級の扱いになる…と思ったり。
でも丸々今回の生き残りを使うってのはあれですよね。困。
99 :
書き手A:02/06/30 04:32 ID:CSUJvU4N
このスレで山田編、始めた方が良さそうですね。
とてもじゃないですが1000は無理ぽいんで。
個人的には主役は福留を推します。
前回と違うシナリオにならないと面白みが無いし…
それにしても、活躍している選手ほどいい役がもらえるあたり
バトロワスレってすごくファン心理が反映されますよね(w
あ、それからルールはどうしましょう?
前回と同じく監督死亡で終了にするか、
本家に準じて最後の一人まで殺し合うルールにするか、なんですけど。
禁止エリアルールはリレーに不向きそうだから無しでいきますか。
100 :
代打名無し:02/06/30 10:20 ID:n8BgyI9l
山田編書くのでしたら「星野蘇生計画」も是非!
>>書き手Aさん
ルールは監督死亡で終了より残り1名で終了の方をキボンヌです。
本家に応じて何らかのカタチで数名生き残らせるとか…w
禁止エリアは出発した場所だけであとは設定しなくても良いと思います。
福留主役級扱い(実際にラストで結果的な主役になるのが誰なのかはストーリーの進行方向次第だと思うので、こう表現してみました)は賛成です。
どの選手であっても現実の活躍ぶりはストーリーに繁栄させて、あたかも現実で起きてるがごとく動かしてあげたいと思っています。
でも逆に、現実で活躍してない選手が、それをバネに一軍選手を殺すべく派手に動き回るという可能性もありますし。
>>100 星野蘇生計画は、現ストーリーの続きにならないと難しいと思います…
今回は、監督(星野/山田)はものすごくいい人で、選手を救うために奮闘したり、大会本部に捕われたりという動かし方をしてみたいです(個人的には)。
たとえば(今考えてる山田編プロローグのネタ)
・星野監督勇退のときに山田監督を抱きしめて泣いたのは、星野さんは全て知っていたからだった。とか
・阪神に行ったのはバトルを止めさせるためだった。とか。(でもそれは罠だったので星野さん怒りまくり)
バトル開始時期はいつにしましょうか。
現話が2001年秋(キャンプ中?)だったので、話を始めやすいのは沖縄出発前か、沖縄から帰ってきたら名古屋には住民がいなくなっていたとか、ペナント開始直前とか?
>阪神に行ったのはバトルを止めさせるためだった。とか
なんか昔いたハワード・バトルを止めること想像しちゃったよ
104 :
代打名無し:02/06/30 23:42 ID:Os+q/Ea8
age
105 :
書き手A:02/07/01 00:17 ID:T1rlqv1A
ペナント開始直前に話を始めると仮定して、ちょっとイントロを書いてみました。
--
2002年。
日韓共催によるワールドカップ開催の為
プロ野球ペナントレースは大幅な日程変更を余儀なくされていた。
それでなくても人気低下に悩む球界にとって
この事実は打撃である以前に屈辱であった。
――野球がサッカーに劣るというのか。
若い世代ならば、野球とサッカーを
比べるなどという愚挙に出ることはないだろう。
それらは全く質の違うスポーツであったから。
しかし、「野球は日本で最も愛されるスポーツでなくてはならぬ」
と信じる古い人間たちは
この現実を受け入れる事が出来なかったのだ。
そして2002年3月某日、遂に或るプログラムの「開催」が決定される。
「プロ野球再生プロジェクト其の壱」。
それはプロ野球選手達に殺し合いをさせ、
さらにその様子を全国に放送するというものだった。
その対象に選ばれたのは、
程良い人気と選手層を持つ古豪球団「中日ドラゴンズ」であった…
--
…と、こんな感じでどうでしょうか。変な所などあったらご指摘下さい。
あとは参加選手をどうするかですね。全員は多すぎるし。
最初に一覧を作っておいた方が混乱も無いと思うんですが。
>>書き手Aさん
ъ( ゚ー´)しく(・∀・)イイ!!!
時期的にはそれが一番だと思います。
一覧作ったほうがイイですかねやっぱり・・
中村が居たらイイナァ…谷繁も勿論いれて。勿論谷繁のターゲットは中村でw
107 :
書き手A:02/07/01 01:23 ID:T1rlqv1A
>106
ありがとうございます。
ただ、個人的には中村無しで行きたいですね…
>書き手Aさん
ハゲしく乙です!!!イイ!
開幕を飾るにはあまりに重すぎるプレイベントですよね。
>>106 横浜勢(中村・種田・山田博士あたりまでか)はバトル正式参加メンバーとは別の扱いで登場させませんか?
わき役・チョイ役で。何らかの形では登場させたいな。
バトル参加者は開幕の時点で選手登録されている人のうち一軍〜1・2軍を往復している人あたりまででしょうか。
一覧は作りますか?
作るならフォーマット(というほどでもないが)は
(背番号) (氏名/登録名):(紹介文)
みたいな感じでどうでしょう。
例
23 関川浩一:99年リーグ優勝の原動力となるも現在は度重なる故障に苦しむ。もうあとがない状況で今年こそはと復活を目指す不屈のガッツマン。
109 :
代打名無し:02/07/01 15:04 ID:MULq8RYR
牛島などのOBは何人ほど登場させますか?あまり出しすぎると巨人版のように収拾がつかなくなりますからある程度絞っておいては・・・
>>109 最初に登場人物を全て限定してしまうのもリレーとしての(何が起きるかわからない)面白みがなくなるのでは…
登場させたら責任を持ってその人がどうにかする、なんて。
保全sage
序
2002年3月23日、ナゴヤドーム。
かつての大投手、背番号14今中慎二は、ついに完全復活を遂げることなくそのユニホームを脱いだ。
往年のスピードを取り戻すことの出来ない身体になってしまった彼にとって、延命策として技巧派への転身を図ることなどなど考えられることではなかった。
オープン戦のまばらな観客の前で、彼は、今、マウンドを降りる。
かつて苦しい時代を共に戦った、盟友・山本昌にボールを託して。
報道陣に囲まれコメントを求められながら、今中はグラウンドに振り向き、一言つぶやいたという。
…嫌な予感がするんです。
その言葉は記者達の望むそれではなかったため、どの媒体にも掲載されてはいない。
ただ、彼はその日のドームに流れる空気が、自らの引退セレモニーを終えたという主観を除いても、異様であることを感じ取っていた。
そのことを思い出すたび、今でも時々彼はそのとき何も出来なかった自分を責める。
けれども、自分一人が抗ったとしても、どうなるものではないということも、今中にはわかっていた。
「悔いは、あります。」
その日以来、これが今中の口癖となった。言葉の真意を知る者は、いない。
113 :
代打名無し:02/07/02 21:19 ID:u0VmeJ6H
おぉぉ・・・カコイイage
114 :
代打名無し:02/07/02 21:22 ID:2BzCo/g7
あれ、あがってないage
115 :
書き手A:02/07/02 23:18 ID:bRdCb5L4
ひとまず、簡単な参加選手リストを作ってみました。
キャラが立っていそうな選手が中心。
00 柳沢裕一
1 福留孝介
2 荒木雅博
3 立浪和義
4 レオ・ゴメス
5 渡辺博幸
6 久慈照嘉
7 谷繁元信
8 波留敏夫
11 川上憲伸
13 岩瀬仁紀
16 森野将彦
17 紀藤真琴
18 エディ・ギャラード
20 川崎憲次郎
21 正津英志
22 山ア武司
23 関川浩一
24 遠藤政隆
26 落合英二
28 中里篤志
31 井本直樹
33 小山伸一郎
34 山本昌広
37 筒井壮
38 鈴木郁洋
40 森章剛
41 朝倉健太
42 メルビン・バンチ
43 小笠原孝
47 野口茂樹
48 井端弘和
49 スコット・ブレット
54 神野純一
56 藤立次郎
57 蔵本英智
58 大西崇之
59 山北茂利
60 大豊泰昭
99 井上一樹
+αとしてリナレス、バルガス?
おー、壮観。ありがとうございました。
リナレス・バルガスは来日時期の関係で当初の参加メンバーからは外したほうが。(何らかの形で登場可能かと思います)
中里は「篤史」ですよ。中里や野口はかなり本気なリハビリ中なわけですがどうやって引っ張ってこよう。←本編で書く人はこのへん説明きぼん
個人的にはドラ1の前田も出してみたかった(ドラ1だからというだけの理由で強制参加)けど一軍登板してないから私には書ききれないですわ。
117 :
書き手A:02/07/03 00:52 ID:Ehu4fo32
しまった、中里の名前間違ってましたね。すみません。
リナ&バルは出すなら後出しでいいと私も思います。
新人は一応リストから免除しました。
↑『免除』ってえ言葉がバトルっぽいですね。
ではリナバル(←一人の選手みたいだ)は当初は保留で…話が進んだら出したい人がしかるべき場所で出すということで。
試合開始の場所はどうしますか?という思いを込めて書き始めてみます。↓
続き書いてくれる人、場所決定きぼん。
*********************************
1 運命の出発
オープン戦の最後を飾る本拠地ナゴヤドームでの対オリックス戦は打線が振るわない一方でバンチが派手に打ち込まれて終わった。
様子見のための試合とはいえ最後が黒星とは縁起が悪いな…
スポーツ選手には縁起を担ぐ者が多い。福留孝介も見かけに寄らずまた例外ではなかった。しかし今年は今までと何もかもが違うのだから仕方ないと自分を納得させる。
球界一の投手陣を支えた中村さんがいない。
かつてのエース、今中さんも、昨日でいなくなった。
肝心の野口さんは怪我で出遅れている。
何より、あれだけ慕った星野監督が勇退ののち、いろいろあって阪神の監督になってしまった。
自分こそ佐々木コーチの個人指導で調子を上げてはいるが、チーム全体としては明らかに昨年よりマイナス要因が多い。
立浪さんも、大変だな…
最近になって、十年来尊敬してやまない我らが選手会長の表情に険しさを感じることが多くなった。目の前に立浪の姿を捉えた福留は何か言おうとしたがそれを飲み込み、軽く会釈をして立浪を追い越した。
「すまんが、今日はこれから移動してもらう」
駐車場に待っていたのは仁村ヘッドコーチの姿だった。
その後ろには、青く塗られた移動用のバスが待機している。
ああ確かに今日の試合は散々だったからな。これから練習場でひと汗かくことになるのだろうと誰も疑うことはなく次々とバスへ乗り込む。
「よーし、全員乗ったな」
点呼を終えた仁村が運転手に合図する。
山田監督の姿がないことと、自分が乗ってきたベンツが駐車場から消えていたこと。
福留がそれに気づくのはバスが発車してからのことであった。
***************************************
資料:
ttp://dragons.cplaza.ne.jp/info/info/bus2002/020316bus1.jpg
>>115 これでひとまづ決定で、初期参加人員は40名でいいですか
2 予兆
バスは順調に名古屋の街中を走っていた。
窓の向こう側に見える景色は活気に溢れ、年度始めの慌しさを感じさせる。
福留は背もたれの上で身じろいだ。
妙な違和感。いつもどおりの風景のはずなのに、何かがおかしい。
気が付けば、バスが普段は通らない筈の道を走っていた。
渋滞を避けてでもいるのだろうか。それにしては…
「なぁ、荒木」
「…うぁ?」
隣、通路側の席に座る荒木雅博に話し掛けると、かなり眠たげな返事が返ってきた。
「変だ」
「んん…何が?」
「外、見てみろよ」
「外ぉ?」
荒木は不承不承といった様子で体を起こしたが、
窓を少し覗き込んだだけで座席に戻ってしまった。
「いつもどおり、人がたくさんいるだけじゃないか…」
「でも…変だ。みんな同じ方向に歩いてないか?
なんか誘導されてるみたいな…ほら、警官がいるし」
「孝介」
「ん?」
「俺、眠い…変だな、凄く眠いんだ…」
がくっ、と荒木の首が倒れた。どうやら完全に眠ってしまったらしい。
どうしたんだ?こいつ。夜更かしでもしたか?
しかし、はたと福留は気付いた。バスの中に流れる不気味な静寂。
立ち上がって見回すと、乗り込んだ選手の殆どが眠ってしまっていた。
おかしい。いくら試合の後とはいえ…
「うっ」
そして遂に福留に対しても、猛烈な睡魔が襲い掛かってきた。
眠ってはいけない、と本能が叫んだが、もはやどうすることもできなかった。
何か、とても良くない事が起こる。急速に意識を失いながら、福留は戦慄していた。
121 :
書き手A:02/07/03 14:35 ID:mb7jbS55
本部の候補地は
中日ビルかナゴヤドーム(バスが引き返すとして)
辺りですかね。他にいい所あります?
122 :
代打名無し:02/07/03 21:48 ID:IbD+voEz
age
今日も負けちゃったヨ…鬱だ
>>121 中日ビルだと40人収容は狭そうなのでナゴドでいきますか
戻ってきたときには観客撤収作業が終わってるんだよきっと。
他の場所でもいいけどスタート地点(本部)にしてしまうと戦闘に使えないからなあ。名古屋城とか、本部らしいけど、戦闘の舞台にもしたいし
初代(?)BRの出だしより内容が凄く(゚∀゚)イイ!!です。アラキン...
3 宣告
次に意識を取り戻したときには、福留はまず自分が横たわっていることに気づき、ほどなくして先ほどまで移動用のバスに乗っていたことを思い出した。
おかしい…
ぼんやりとした頭で周囲を見渡すと、はたしてそこは、先ほどまで試合を行っていたはずのナゴヤドーム。違うのは、照明が一切ついていないことと、観客席が無人であること。やがて視覚がはっきりしてくると、同じようにいぶかしげな顔をしている選手達の姿を確認する。
「おい、荒木、起きろ」
荒木はまだ眠っているようで、自分の隣にうつぶせに倒れ込んでいた。肩を揺さぶる。
「ううん…、あー、孝介?」
寝ぼけまなこの荒木はついさっきの福留と同じように辺りを見回している。
「なんだ、ドームじゃないか…。真っ暗だし…、何で俺達、戻ってきてるんだ?」
「俺が知りたいよ…何なんだ、いったい?」
そのとき、選手達が横たわるマウンド一帯に突如スポットライトが向けられた。暗闇に目が慣れていたせいか、誰もが目をしばだたせる。
「中日ドラゴンズの皆さん、こんにちはー、ヤクルトスワ…、やないなぁ、日本プロ野球選手会会長の、古田敦也です」
関西弁訛りの甘い声がスピーカーから流れ、お馴染みの眼鏡を掛けた『球界ナンバーワン捕手』の顔が、スコアボード下のライブビジョンに現れた。
125の続き
************************************************
「いやあ、なんと申しますか、世間では不況不況と言われてまして、プロ野球の世界も例外ではないみたいですなあ。
うちは日本一取らしてもらいましたんで、今年くらいはなんとかなる思うてましたけど、ワールドカップもありまして、いやあなんとも言えませんなあ」
何だこりゃ。今時、ドッキリか?金屏風まで立ててるじゃないか。
への字に曲げた口元で不快感を現しながら、それでも仕方なく福留は映像を見やる。
「ドラゴンズさんも、聞きましたわ!地元での人気はなかなかみたいですけど、今年はシーズン席、余ってるそうやないですか。困りましたねえ…」
そして画面の向こうの古田は、一段、声のトーンを上げた。
「そーこーで!です。私どもプロ野球選手会首脳陣は、この不況を打破する対策を検討すべくNPBと緊急会議を設けまして、あるひとつの結論に達したのです。」
誰もが一斉に立浪の姿を見た。ドラゴンズの選手会長である彼は、何も知らぬと激しく首を振る。
「ああ、すみませんねえ、首脳陣ゆうてもNPBに呼ばれたの私だけですわ。
それはさておき、プロ野球人気を復活させるため、皆さんには開幕前にひと仕事してもらうことになりました。
球界の権威復活のための一大プロジェクト。その名も……、『バトル・ロワイヤル』。」
古田が放ったその言葉でドーム内全ての照明が点いた。
4 流血
「これはですね、プロレスに『バトルロイヤル』ちゅうのがありますけど、
早い話がそれの応用ですわ。
ドラゴンズの皆さんには、最後の一人になるまで――」
そこまで言うと、画面の中で古田は一息ついた。
「――殺し合いをしてもらいます」
一気にざわめきが広がった。
「殺し合いだって!?」
「おい、一体何なんだよ…」
「ゆ、夢見てんのかな、俺」
そんな中、福留は一体自分の身に何が降りかかったのか、
いまひとつ理解できずにいた。
起き抜けで頭が働かないと言うよりは、あまりに非現実的で…
隣で呆然としている荒木も同じ気持ちなのだろう。
しきりに首を振ったり瞬きをしたりしている。
「…古田、悪趣味な冗談はやめろよ」
不意に、ドーム内に山本昌のよく通る声が響いた。
「お前が言ってることは滅茶苦茶じゃないか。
ワールドカップが野球人気を圧迫してるからって、
どうして俺たちが殺し合いをしなきゃならないんだ」
「おお、山本。今からそこを話そうと思ってたとこや。
はい、ええですか皆さん。
その殺し合いの様子は、NHKで全国に生中継されます。
いやー、これは凄い視聴率になりますよ。ワールドカップなんて目じゃない。
フジで中継できないのが残念ですわ」
「…へぇ。そういう事か」
相変わらず明るい古田の声を聞き、山本昌は諦めに満ちた笑みを声に含ませながら呟いた。
「解ってもらえたみたいやな。
んじゃルール説明させてもらいますんで、よく聴いとって下さいねー」
「えー、皆さんの首にはこっちで首輪を着けさせてもらってますー。
弄くると爆発するんで、触らん方がええですよ」
はっと福留は首に触れた。確かに冷たい金属の感触がある。
周りを見回すと、間違いなく全員の首に銀色の首輪が嵌められていた。
「その首輪は、皆さんの位置をこっちで掴むためのもんです。
要するに逃げようとしても無駄って事ですわ。
変な動きをしている人がいたら容赦なく爆発させますんで。
…んー、一応ここらで見本を見せといた方がええかも解りませんね。
まだ疑ってる人もいると思うんでー」
古田が言い終わるが早いか、ピッ、という電子音が、微かに福留の耳に届いた。
「川崎。お前みたいな奴は生きとってもしゃあないやろ」
ピッ。ピッ。
音のする方を見ると、確かにそこには絶望の表情を浮かべた川崎がいた。
嵌められた首輪の一部が赤く光っている。
「ふ、古田さん…」
「命乞いしても無駄やで、これ、止められへんから。
まぁ最期に人の役に立てると思って笑って死んでくれや」
これは悪夢か?
「孝介、なぁ…変だよ。これ。現実なのか?なぁ」
荒木の声が震えている。
「そんなのわかんねぇよっ」
ピッピッピッピッ。音のテンポが上がっていく。
川崎の周りから自然、人が退いた。
「あー、離れんとっても大丈夫ですよ。爆発って言っても
小さいもんです。ま、首を吹っ飛ばすには充分ですけど」
ピーッ…
「化けて出てやる」
ぽつり、川崎が言った。それが最期だった。
ぱん、と妙な音がして、辺りに血飛沫が広がった。
129 :
代打名無し:02/07/04 14:35 ID:Uc4xrFr5
age
5 ルール
福留は頭がガンガンと痛むのを自覚していた。
川崎が死んだ…目の前で。
その死体は、まだ生きた人間と殆ど変わらぬ姿をしていた。
ただ、首だけは皮膚が破れ、剥き出しの肉が焦げ付いて二目と見れない状態だったが。
肉の焦げる匂いと血の匂いに吐き気がする。
奇妙な程周囲は静まり返っていた。
「というわけで、これはドッキリでも冗談でもなんでもありません。
本当の殺し合いです」
わざとらしい程陽気な古田の声。
「はいはい、いつまでも死体なんか見てると聴き逃しますよー。
ええですかー。それでですね、皆さんには一つずつ武器が支給されます。
ただし、これは誰がどれとか決まってるわけじゃないんですね。
銃を手に入れる人もいれば、水鉄砲が当たる人もいます。
そこんとこは運ですわ。もちろん、他人の武器を奪ってもかまいません」
古田がぺらぺらと喋っている間、福留はまだ川崎の死体から目を離せずにいた。
別に親しかったわけではない。しかし…
「孝介、余所見してると危ない…」
「…解ってる」
荒木に咎められ、漸く福留はライブビジョンに視線を戻した。
「えー、ここ、ナゴヤドームを出発したら、
基本的には名古屋から出なければどこへ行っても結構です。
但し、皆さんで一つの所に固まったりするのは駄目ですよー。
二十四時間の間一人も死者が出なかったりすると、
自動的に全員の首輪が爆発してしまうんでね。
それじゃ面白くないんで、はい。
あ、あと全員が出発したらもうドームには近寄らんといて下さいね。
ここはプログラムの本部になってるんで、あんまり近付くと首輪が爆発しますよー」
それだけ一息に言うと、古田はやれやれといった風にまた一つ息をついた。
131 :
代打名無し:02/07/04 23:32 ID:Y7ZAJE20
age
6 ゲーム開始
「皆さんにお配りするバッグの中には武器と食料、地図、筆記用具一式に、それと名簿が入っとります。
参加者はテレビ的におもろい人を一軍二軍関係なくちょうど40名、あー川崎は死んでもうたので39名ですね、選ばしてもらいました。
死んだ人の名前は一日二回、9時と夕方5時に読み上げますんで、商店街の有線なんかで確認してくださいね」
シーズンオフのチーム対抗番組でルール説明でもしているかのように古田は淡々と話し続けた。
これが勝者と敗者の違いか?画面の向こうでのうのうと高見の見物をしている男を誰もが苦々しく思った。
「それでは、今から順々に名前呼びますんでー、前に出てきてください。」
上ばかり向いていたので気づかなかった。視線を落とすと、センターの守備位置のあたりに『お立ち台』のセッティングが既に終わっており、審判員たちが、大量にバッグを積んだ台車を押してやってくる。
「最初だから私が呼びますわな。番号順ですよ、背番号00番、柳沢裕一君」
「ひッ」
福留は背後で小さく上擦った声を聞いた。
「はーい呼ばれたらさっさと前へ出るー。たらたらしなーい。」
柳沢が一旦つんのめりそうになり、慌てて前へ駆けてゆく姿が見える。
「はーい、いいウォーミングアップになりましたね。で、前に出てきた人は、お立ち台に上って箱の中に入ってるボールを一個、引いてもらいます。
ああ安心してくださいね、人数分より余計に用意してありますから、最後の人、えー凄い番号やな、99やて。井上一樹君が不利になるっちゅうわけやありませんよ」
名前が挙がった井上は普段にも増して顔を引きつらせた。
古田に促され、柳沢が審判員の差し出す箱に手を突っ込む。
「はい、引いたら高々と手を挙げて皆さんに見せましょうー。そう、そうです。高校野球のくじ引きみたいで実にすがすがしいですね」
古田はまるでこども相手のような口調と笑顔でぱんぱんと拍手した。お立ち台を降りた柳沢は、色となにやら文字が付いたボールと引き替えに、同じ印のついたスポーツバッグを受け取る。
そして不安そうな表情でマウンドに待機する面々を一瞬見ると、一気にライト側に開いた出口まで駆けだした。
「わかりましたかー?こんな感じで始めさしてもらいます。
私もいつまでもこんなんやってられませんので、あとは会場のほうにお戻しします。ほな、さいなら。あ、JOCX-TVて言うんやっけ?」
映像は古田が椅子を立ち上がった中途半端なところで途切れ、代わりに渋谷のNHK本社の静止画像を背景にテロップが流れた。『この番組はNHKと民放各社の協力により全国ネットで放送しています』。
目の前にある、あまりに非現実的な現実。それをなんとか飲み込もうと、福留は大きく深呼吸した。
落ち着け、落ち着け。
そして、隣で同じように大きく息をしていた荒木に目を移した。
待ってる。
そう、声に出さずに口を動かして、ウグイス嬢に名前を呼ばれた、背番号1番、福留孝介は、走り出した。
7 鉄と現実
ドームから出ると、辺りは薄暗くなり始めていた。猫の子一匹居ない。
福留はぞっとした。
本当に、もう逃げられないのだ。これは現実なのだ。
柳沢はどうしたのだろうか。その姿は見当たらない。
疾うに遠くに走り去ってしまったのだろう。
ということは…あの人は、俺を信用してなかったんだな。
仲が良かったわけではないのだから、当然のことかも知れない。
それでも福留は複雑な気分にならずにはいられなかった。
やっぱり、みんなで殺し合うのか、もう逃げられないのか。と。
いや。ともかく、自分だけでもここで待とう。
そこから糸口が掴めるかも知れない。
腹を決めてドームのゲート前に座り込むと、福留はスポーツバッグの中を探ってみた。
入っていたのは先の説明で古田の言っていた物が一通り。
そして最後に、バッグの底から一枚の紙と共に重い鉄の塊が出てきた。
一瞬それが何なのか福留は理解する事にに躊躇した。
それは、どこをどう見ても、拳銃だったのだ。
一緒になっている紙は説明書のようだったが、英語表記の為わけが解らない。
理解できたのは、COLT GOVERNMENT M1911A1、
というのがこの名前の銃らしいという事ぐらいか。
いずれにせよ、冗談じゃない。
福留は銃と説明書をバッグの底に押し込んだ。
狂ってる。何だよ、これ。
どうしてこの平和な日本で、プロ野球選手の俺が実銃を触らなきゃならないんだ。
殺し合いだって?畜生。チームメイト同士が殺し合うなんて。
…いや、落ち着け…落ち着け。今は荒木と合流することが一番だ。出来れば立浪さんとも。
そして、福留の前方、ドームの一番ゲート内から荒木が姿を現した。
【残り39人】
中里と蔵本がどんな感じで書かれるのか今から楽しみです
136 :
代打名無し:02/07/05 18:17 ID:tYmU9Gj2
うひょ〜!新しいバトロワ始まったんですね!
それでは、楽しみにさせていただきますよage
うわー!新しいのが始まってる!楽しみ!
138 :
134:02/07/06 08:15 ID:wrX0SCYF
すみません、誤字訂正。
>134の21行目は
×「というのがこの名前の銃らしい〜」
○「というのがこの銃の名前らしい〜」
でした。
139 :
代打名無し:02/07/06 11:25 ID:YP9WEwS0
age
古いほう文章だけうpしました。
また時間ができれば細かいところを直して
星のドラゴンズ編は完成させたいと思いますが、
新バージョンのほうをサブサイトやってくれてる人が
担当していただければ…と思います。
どうも更新が追いつきそうにないもので…。
保管の事ですが私にもやらせてもらって良いですか?
私はドラ兼他球団ファンでもあるのですが
勝手ながらCDBRはかなり楽しませて頂いてるので
何かお役に立てたら良いなと…。
ストーリー自体にも参加したいとは思うのですが舞台である名古屋の事にはくわしくないんで(凹)
是非お願いします。
142 :
代打名無し:02/07/06 17:46 ID:U/698CjL
他球団の選手と言えば巨人のバトロワで入来兄とか池山とか古田とか出てたな入来弟のからみで
その時でも古田は・・・
今日の試合で八回裏に、蔵元を変えた理由を、誰か説明できるやつ、いないか?
ピッチャーが右だから以外の理由で、三安打の蔵元を・・・・
今日の試合で八回裏に、蔵元を変えた理由を、誰か説明できるやつ、いないか?
ピッチャーが右だから以外の理由で、三安打の蔵元を・・・・
146 :
月に疲れたピエロ:02/07/06 23:55 ID:54O918wq
そのこと忘れてたんじゃない? はい、説明終了
147 :
代打名無し:02/07/07 00:00 ID:Pxmk3w5l
蔵本
8 初仕事
ナゴヤドームバックスクリーン側には、ガラス越しに観戦が出来るレストラン席がある。
何しろガラス越しなので臨場感は無いが、のんびり観たいときにはなかなか良い席だ。
そこで男はウェイトレスが運んできた料理をつつきながら、
ぼんやりとグラウンドを見下ろしていた。
下では立浪がスポーツバッグを受け取ろうとしている。流石に声は聞こえない。
「スピーカーをお持ちしましょうか」
「いや…ええよ」
ウェイトレスの申し出を断ると、男は立浪がゲート方向に歩いていくのを目で追いながら
又一口、料理を口に運んだ。
「外はどうなってる」
「は」
「柳沢に、福留、それに荒木はどうなったんや」
「あ、はい。盗聴記録によりますと、柳沢選手は一人で移動中です。
福留選手と荒木選手は、ドーム前で言い争いをしているようです」
「言い争い。あいつらがか」
「立浪選手を信用するかしないかでもめ事になったようですが」
「ははぁ。立浪さんな。ありゃ信用したらあかんわな」
男はくっくっと背を揺らして笑った。
「よお言っとった、山本さんが。「あいつは悪魔のような奴だ」って」
「…お食事の後はどうされますか」
「俺に選択権は無いんやろ。ちゃんと本部の方に行くわ」
「御賢明な判断です。それでは、ごゆっくりどうぞ。
また何かございましたらお申し付け下さい」
ウェイトレスは一礼すると下がっていった。
それを横目で見、男は無理矢理スープを飲み下した。
食欲は無いが、それでも食べなければならない。
このプログラムの「解説」として呼ばれてしまった以上、
何か胃に入れておかなければ恐らく体が持たないだろう。
「初めての解説が…こんな試合とはなぁ…」
酒も料理も少しも美味く感じられない。当然と言えば当然のことだ。
去年までの同僚達の殺し合いを、これから観なければならないのだから。
【残り39人】
69100さんお疲れ様でした。
◆xYQkNOZEさん、いつもありがとうございます。
141さんも保管サイトやってくれるんですか?楽しみにしてます。
>>142 住人でもないのにカキコ頼んですみません(汗)
代理人さん書き込みのとおり、保管進めさせてもらっております。
******************************************************
9 別離
福留はゲートから現れた立浪の姿に、荒木が止める間もなく声を上げていた。
「立浪さん!!」
瞬時、立浪の応えを待つ福留の頬を、何かがかすめた。
手をやると、ぬるりとした感触。福留は目を疑った。血だ。
カシャンと落下音がした先には、小さな両刃のナイフが落ちていた。
「死にたくなければ、早くここから離れろ」
呆然とする二人に立浪が与えた言葉はそれだけだった。福留には、ただ、急速に小さくなってゆく『3』を背負ったユニホーム姿の男を見送ることしかできなかった。
「孝介…誰か出てくる」
慌てて荒木が腕を引っ張り、売店の陰に姿を隠した。
両肩に荷物を背負った、レオ=ゴメス。
片方には例のスポーツバッグ。もう片方には、……ユニホームを着た人間。
ドサリとその『荷物』を床へ落とすと、ゴメスは呟いた。
「Por fabor, Sr.Watanabe.俺は今年はファーストに就くんだ、生き残ったってあんたの出番はもうないよ、きっと」
そして、胸の前で小さく十字を切り、床に寝かされた人間の腕からバッグを奪い取ると、ゴメスは悠々と、地下鉄の駅まで続く歩道橋へ向かって歩いていった。
あとには、胸の辺りを真っ赤に染めた、既に事切れた渡辺博幸の身体だけが残った。
10 理由と目的
大曽根駅のほど近くまで続く長い歩道橋を渡り終えた背番号6、久慈照嘉は、階段の陰でバッグの中身を検め、その支給された武器を目にし、失笑せざるを得なかった。
デリンジャー。
自分の手の中に納まってしまうほどの銃身、装填可能な銃弾はわずかに二発。
くじ運がいいんだか悪いんだか、小兵の自分には、こんなおもちゃみたいなピストルがお似合いってわけか。
ならばゴメスや山崎は、大砲でも背負ってくるのか?
いや、大砲だったら大豊さんか。
いついかなるときでも笑顔でいること、それが久慈の信念であった。それはときに必死さが伝わらないと受け取られることもあったが、彼を理解する人は皆、彼の存在によって心を和ませていた。
ひととおり中身を確認した久慈は、ペットボトルの水を口に含み、ドーム内での極度の緊張から乾いて仕方なかった喉を潤した。
そして『彼』の向かうであろう場所の心当たりを自分の中でまとめながら、道路標識で歩くべき方向を確かめた。
あの人は、俺がいないとすぐ暴走するんだから…。一人で暴れて死にました、なんてのだけはやめてくれよ?
そしてゆっくりと歩き始める。
己が半身、関川浩一に出会うために。
11 絆
荒木に手を引かれる儘、福留はドーム付近の住宅街を縺れるように歩いていた。
まだ頭が混乱している。非道く気分が悪い。
福留は何においても立浪を先輩と思い、尊敬していた。
いつかあんな男になりたいと思っていた。
しかし、現実には…立浪は自分を攻撃してきた。既に、人を殺す気になっていたのだ。
こんな絶望的状況でチームを纏めてくれるのは立浪しかいないと、
心の何処かでまだ希望を持ちながら考えていたというのに。
「これで解ったか、孝介。立浪さんはああいう人なんだ」
大股で歩きながら荒木が言った。
掴まれた左腕が痛いのに、振り払うことが出来ない。
平生なら力で負ける気はしないが、
今はとてもではないが体が動かなかった。
「解った。解ったから、手ェ離せ。もういい。一人で歩ける」
「性懲りもなく立浪さんを探しに行ったりしないな」
「しない。もう、頼まれてもそんな気しねぇよ…」
団地の前で立ち止まり、その敷地内に入ると荒木は漸く手を離した。
「…お前をドームの前に置き去りにしたくなかったんだ」
言い訳するような荒木の声に、福留はただ頷くしかなかった。
今この状況で、自分に敵意を持っていないのは荒木だ。立浪ではない。
荒木は味方だ。そこを間違えてはいけない。
「ここだと人目に付くから、もっと奥の方まで行ってこれからの事を考えよう」
「…解ったよ」
「そうヘコむなよ。お前らしくもない」
「ヘコまずにいられるかよ」
「…まぁ、気持ちは解るけどな。あ、武器何だったよ、お前」
「銃」
「げ、俺なんかバットだったのに。しかもその辺で売ってるようなやつ」
「へぇ、なんかお前らしいな」
福留は久しぶりに笑った。それを見て荒木も笑った。
まだ人を信じていられる、福留は思った。
【残り38人】
12 それぞれの心
次々とチームメイト達が外に出ていく。
ある者は怯え、ある者は笑い、ある者は無表情の儘。
森野の名前が呼ばれたのを聞き、いよいよか、と紀藤は息を吐いた。
すぐ隣には山本昌が、何やら考えありげに天井を眺めている。
「山本、どうする」
「どうって」
森野がおどおどと前に進み出た。
選択肢は色々ある。結束するか、一人になるか。戦うか、信じるか。その方諸々。
「戦うつもりか、お前も」
「…俺さ、この機会にどうしても欲しいものがあるんだ」
山本はにやりと笑ってみせた。どこか子供じみた笑みだ。
先に古田に食ってかかった時の、冷静で正義感溢れる姿は何処へ行ったのやら。
「へぇ。欲しいものねぇ」
「心配すんな、お前を殺すつもりはないから」
「そりゃありがたいな」
スポーツバッグを持った森野のシルエットが小さくなっていく。そろそろ呼ばれそうだ。
「紀藤、そう言うお前はどうなんだ」
「俺は…まぁ、適当にやってみるわ」
そうとしか言い様がなかった。無理矢理生き残る気もなければ
あっさり殺されるつもりもない。
最後まで生き残れるとは我ながら思えないが、まぁ、なるようになればいい。
そんな心境だった。
「理想が低いな」
「そっちこそ、年寄りの癖にちょっと欲深じゃないのか」
「…俺は「それ」さえ手に入ったら死んでもいいんだ、別に」
「何だよ、さっきから。気になるな」
「こういうのは人に言うと手に入らなくなるって言うからなぁ。秘密にしとく」
「やな性格だな」
そこまで言った時、紀藤の名と背番号が呼ばれた。
「はいはい。今行きますよ」
ま、せいぜいやってみるか。
【残り38人】
期待age
155 :
代打名無し:02/07/08 01:15 ID:J9mCBRTO
>>155 どどどどうした!
IDがC(hunichi)BR(w
内緒!
13 愛する人よ
岩瀬仁紀は、自然、その足を南へ向けて歩いていた。
走るでもなく、ただ、ゆっくりと。
目指すは、名古屋港。
ふと立ち止まり、ハイネックのアンダーシャツの中から、小さなペンダントを取り出す。
蓋を開けると、微笑んだ女性の写真が現れる。
浅子。
彼はその女の名前を呼ぶ。
岩瀬の学生時代からの恋人であり、岩瀬の妻になるはずだった女性の名を呼ぶ。
恐らく彼がその女性に再会することはあり得ないだろう。岩瀬にはわかっていた。
彼が彼女を愛するのと同じように、彼には憲伸やチームメイト達が大切だった。
彼らに対して刃を向けることなど、彼に出来るはずがなかった。
だから、岩瀬はせめて彼女との思い出の場所、名古屋港の水族館を目指して歩いていた。
浅子。
もしも俺がこのまま死んでしまっても、未来永劫、俺だけを愛してくれるかい?
浅子。
寝ても覚めても、俺のことだけを思っていてくれるかい?
浅子。
今、何をしている?
会いたい。
岩瀬はロケットの蓋を閉じ、再び胸に閉まった。そしてまた一歩、歩き始めた。
あ〜れ〜
「閉まった」→「しまった」
161 :
代打名無し:02/07/08 15:34 ID:23xzu1ti
age
162 :
代打名無し:02/07/08 20:21 ID:pHVqilFe
age
153の10行目は
×「その方諸々。」
○「その他諸々。」
でした。すみません。
---
14 凶暴な男
紫がかってきた空に星が輝き始めている。
谷繁元信は常に自信に満ち溢れたその顔を不機嫌に歪ませ、
頬の返り血をアンダーシャツの袖で拭った。
「お前みたいな、こういう時にもへらへらしているような奴が、俺はこの世で一番嫌いなんだ」
返答は無い。辺りは静まり返っていた。
既にドームからも随分と離れ、ここからその姿は見えなくなっている。
谷繁は名古屋の地理には明るくないので現在地の正確なところはわからなかったが、
ともかく大曽根駅の方角に歩いてきたつもりだった。
「横浜にいた頃から、ずっとお前が気に食わなかったんだよ。思えば変な縁だな。えぇ?波留よ」
谷繁の足元に蹲った波留は、何も言わなかった。
いや、言えないのだ。その首から、胸から、夥しい量の血を流し、
言葉など発することもかなわないのだから。
「何か言ってみろよ。んぁァ?俺を笑わせてみろよ、おら」
右手に持ったサバイバルナイフを弄びながら、谷繁はごつっ、と波留の頭を蹴った。
微かなうめきが上がったが、ごぼこぼと血の泡立つ音に紛れ、
それは谷繁の耳に殆ど届かなかった。
「結局お前には何もできねぇじゃねぇか。世の中、食い合いが全てなんだ。
ムードメーカなんて必要ねぇんだよっ」
ひときわ強く頭を蹴上げられ、波留の上体はふうっと宙に持ち上がり、
それから、仰向けにアスファルトの上に倒れた。血がはねる。
「お前、悔しいだろ?自分のバッグに入ってた武器を俺に分捕られて、
しかもそれで殺されるんだもんな。…ったく、お前は本当にお目出たい奴だよ。
当たった武器がよりによって果物ナイフでいらついてた俺に、ほいほい話し掛けてくるんだから。
俺の性格を知らなかったわけじゃねぇだろうに」
波留はもう殆ど意識が無いのだろう。谷繁の顔を見ることもなく、ただ血溜まりの中に横たわっている。
或いはもう死んでいるのかもしれない。
「…さてと。とどめはささねぇ。せいぜい苦しんで死ねよ。じゃあな」
それだけ言うと、谷繁は自分のバッグと波留のバッグの二つを両の肩にかけ、
再び大曽根に向かって悠々と歩き出した。口笛など吹きながら。
【残り37人】
>>163氏
乙です!ヤバー、谷繁カコヨスギ!!
実際ありそうで恐い…w
165 :
◆xYQkNOZE :02/07/09 13:05 ID:90QaIOyc
15 天使と悪魔
金山駅まで一気に走り抜け、朝倉健太は、はあはあと荒く息を上げながらその足を止めた。
ちくしょう、どこ行ったんだ、あいつは…。
朝倉が『尋ね人』を連れて来たことのあるCDショップが入っているビルを覗く。
「なにしてるんですか?朝倉さん」
背後からの声に驚き、朝倉は即座に振り向いた。
連絡通路橋から、こちらを見下ろす中里篤史の姿があった。
「やっぱりここか…。何してるって、お前を捜してたに決まってるだろ?リハビリも済んでないくせに、ほっとけるかよ」
中里は紅潮してまくし立てる朝倉を見て笑った。
「それはそれは…。でも、御心配なく。ボールのコントロールは出来ないけど、ほら、銃だって撃てるし」
中里が手を伸ばすと朝倉の背後のガラスが割れた。
「なッ…、おまッ…、なにやってんだよ!」
「格好いいでしょう?ワルサーP38、ってね。ルパン三世にも出てきた奴ですよ」
ひらりと中里の身体が宙を舞い、そして朝倉の目の前に降り立った。朝倉は一歩、後退する。
「フフ…、殺しはしません、安心してください。こんな馬鹿げたゲームであなたと決着をつけようとは思ってませんから」
まるで子供がおもちゃで遊んでいるかのようだった、くるくると銃身を弄び笑う。
自分が知っている『中里篤史』はこんなにも恐ろしい男だったか?
今まで感じたこともない不気味な雰囲気に朝倉は身震いした。
中里の無邪気に見える笑顔が、あまりに残酷だった。
「ねえ…、朝倉さん。せっかくだから、僕と組みませんか?」
「は?」
思いも寄らない言葉に朝倉は混乱する。
「僕とあなたが最後まで生き残ったら…。そしたら、決着をつけましょうよ。勝つのはもちろん、僕ですけどね」
「ふざけるな、人殺しなんて御免だ」
「朝倉さん」
離れようとする朝倉の腕を掴み、朝倉の肩に拳銃を突きつける。
「ああああはいはい、わかったよ。だからその物騒なものを降ろせ」
負けじと、朝倉も後ろ手に隠していた出刃包丁を中里の鼻先に突きつけた。
「こわぁい、そんなもん持ってたんだー。朝倉さんも、なかなかやりますね?」
「当たり前だ。お前なんかに負けてたまるか」
朝倉は思いきりアカンベエをしてみせた。
16 欲する者
ナゴヤドームに程近い民家の庭に隠れた小笠原は、前方を横切る大きな体に気付いた。
見覚えのある横顔。背番号34。山本昌だ。
良かった。じきに夜だというのに、これ以上一人で震えていたくない。
「山本さん」
小声で呼び掛ける。山本は流石に緊張しているのか、ぎょっとした風に辺りを見回した。
が、
「山本さん、こっちです。…小笠原です」
再びそう声をかけると、すぐに気付いて苦笑いを浮かべながら歩み寄ってきた。
「なんだ、お前か。脅かすなよ」
「すみません。一人でいるのが恐かったんで、つい」
「…ま、無理もないか…いきなり殺し合いをしろ、だもんな」
話しながら、家の裏庭まで移動する。いくらか人目に付きにくくなるだろう。
「お前、武器は?俺を襲わなかったって事は、大した物じゃなかったな?」
俺はこれだったよと、山本は左手に握り隠していたメスを見せた。
明らかに「ハズレ」の部類だ。
「まさか。見て下さいよ…本物の銃」
小笠原は懐に隠していた小さな拳銃を山本に差し出した。
S&W M36チーフス・スペシャル。説明書も付いていたことだし、実銃だろう。
「お、すげえな。本物なのか」
「ええ。多分…」
そう言い終わった瞬間だったろうか。
テレビや映画でしか聞いたことの無かった銃声というものが、
小笠原の鼓膜を激しく揺らした。
「…え」
右脇腹が熱い。
「あれ。ちょっとズレた?もう一発いくか」
再び銃声。
今度は右肩が熱を持った。自分の鼓動がやけに五月蠅い。
何が起こっているのか解らなかった。
「へえ、反動がかなり来るなぁ。漫画みたいにはいかないか」
「や…まもと、さん…?何が…」
「お前さぁ、馬鹿?」
「…は…?」
「撃たれたのに、逃げないのか?まあ…その体じゃ逃げても死ぬだろうけどな」
「え、撃たれた…って…」
痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。痛い。
右の脇腹と肩が気を失いそうに痛い。そして、目の前には小さな拳銃を構えた山本の姿。
小笠原は漸く、事態を理解した。山本は自分の見せた銃を奪って…そして発砲したのだ。
「どう…して」
堪えきれず、道路に膝をついた。山本は屈んで頭に銃を押しつけてくる。
「ん?お前が左腕だからだよ」
「そ、そんな…理由、で」
あまりにも理不尽。利き腕は生まれ付いてのものだ。変えようが無いではないか。
「お前に俺の気持ちが分かるかよ。俺は、今中と野口さえいなけりゃ、
中日のエースの一人に数えられてた筈なんだ。
それが、あいつらのお陰で俺はいつも二番手止まり。
エースと呼ばれたことなんかありゃしない…
みんな口を揃えて言ったよ、「山本昌はエースの器じゃない」ってな」
吐き捨てる様に言いながら、山本の口元には笑みさえ浮かんでいる。
「だから、俺、この機会にライバルは全員殺すことにしたよ。…ごめんな」
そして小笠原に向けられたのは、いつも通りの優しい笑顔。
これは何かの冗談ではないのだろうか…
「あ、言っとくけど別に殺しが好きなわけじゃないからな。
お前が右利きか野手なら手は出さなかったんだよ。
残念だな。お前の事、嫌いじゃなかったよ。左腕でさえなければな」
「…ひっ、死にたく…ない…助け…」
「中日の左腕エースはこの俺だ」
そして、三発目の銃声が轟いた。
【残り36人】
--
すみません、163の「ムードメーカ」は「ムードメーカー」の間違いですね。
どうしてこう誤字が多いのか…
またやってしまった。
167の12行目の「道路」は正しくは「地面」でした。
毎回毎回申し訳ありません。
169 :
◆xYQkNOZE :02/07/09 14:24 ID:90QaIOyc
17 雑草
「藤立さん、どうして俺を信じてくれたんですか?」
夜、錦のバーのカウンター。男が二人、語り合う。
ただし、明かりはない。酒もない。代わりに並ぶのは、水とレーダーと丸い球が数個。何かと聞いたら知らないと答えるので、試しに投げたら煙幕と分かった。
「うーん…、実のところは、誰も信じていないんや」
「え?」
「誰も信じられないのなら、誰を信じようと一緒やろ?だから、たまたまや」
大西崇之は藤立次郎の返す言葉に寂しそうな顔をした。自分だからこそ信じてもらえたのだと言ってほしかったのだろう。本当は同い年なのに敬語を使う、明るくて実に気のいい男だ。
「御免な…、嘘つくの苦手やさかい、正直に言わしてもらった。こんな時やしな」
「そうか…、そうですよね、藤立さん、まだ中日に入ったばっかりですからね…」
名古屋に来て数ヶ月、練習場と自宅周辺のほかは右も左もわからない状態の藤立は、ドームを出てからさてどうしようと頭を抱えていた。そんなとき、後ろから大西が走ってきて彼を呼び止めたのだ。
この『試合』が宣言されたとき、藤立は死を覚悟した。チームに十分打ち解けたとはいえない自分を仲間にする人間はまずいないだろう。無視されるか、さもなくば殺されるかのどちらかになる。ならば、流されてみようと考えた。一旦そう決めてしまうと、あとは楽だった。
「信じてもらえてなくても、藤立さんと一緒にいられてよかった。心が休まりますよ。なんでそんなに落ち着いているんですか?」
お前がやかましいだけちゃうか、と目の前の男をほほえましく思いながら。
「まあ…、どうせリストラされて拾われた身やし…いっぺん死んだ気になれば、なーんも怖いものは、あらへん」
大西はそれを聞いて、丸い目をますます大きく見開いた。いい笑顔だ。
「俺もこう見えて結構、修羅場くぐってるんですよ?高校辞めて大学辞めて…、そうそう!オリックスのテスト受かってたんですけど、中退したから入団資格がなくて取り消し…なんてのもありましたよ」
「そうか…、ならお前も、こんなん余裕やな」
「もちろん!あー、なんか、元気になってきたなあ」
巨人の上原がもてはやされていた頃、『雑草魂』なんて言葉があった。けれども、本当の雑草なんて、そのへんにごろごろ生えてるものなんだ。俺も、隣ではしゃぐ男も。
いつもは自分がベンチに戻るときに入れ替わることが多いこの男と、遺言代わりに語り尽くそう。
男達の夜は、まだまだ続く。
スゲー!!おもしろすぎる!!
書き手さんオツです!これからもヨロシクっす!
18 晒し者
本部に向かう途中、ドーム内の廊下で男は古田に呼び止められた。
「よ。元気そうやな」
「…どうも」
「まぁそう硬くなんな、解説つっても野球の試合やるわけじゃなし、
適当に言いたいこと言ってりゃうまくいくわ」
「言いたい事なんてありませんよ」
かつての仲間たちの殺し合いに対して、一体何を言えというのだ。
ああ可哀想ですね、と泣き真似でもするのか。
糞面白くもない。
「極端な話、スタジオで座っとるだけでもええよ。
お前が出てるってだけで番組を見る奴はいくらでもおる。
特にこの名古屋の辺りには」
「客寄せパンダをやれってわけですか」
いや、そんないいものじゃない。晒し者だ、自分は。
「ま、そう睨まんでも…ああ、そろそろ八時やな。本部スタジオが待っとるで」
「…じゃ、また」
スタジオか。早足で歩きながら男は思った。
オールスター放送さながらのセットとカメラの群れが自分を待っているのだろう。
これが実際オールスターの解説なら、いくらでも資料を集めて臨むのだが。
現在の状況は大まかに聞いていた。
死者は四人。川崎、渡辺、波留、小笠原。
川崎が開始前に始末されたのは見ていたからまだ信じられる。
しかし、渡辺がゴメスに、波留が谷繁に、小笠原が山本に殺されたと、
それだけ聞いてもまるで実感が湧かない。
ゴメスは試合以外の場では物静かで敬虔なキリスト教徒だったし、
谷繁は、インタビューなどした限りでは…多分に強気ではあるが…気さくな男だった。
山本は温厚で世話好きで、多くの後輩に慕われていた男だ。自分も現役の頃は世話になった。
男は唇を歪めた。このプログラムは人を狂わせるというわけか。
「今中さん」
スタジオから出てきたスタッフらしき人間が男を呼んだ。
ああ、と男――今中慎二は投げやりに言葉を返した。
【残り36人】
19 俺は悪くない
『伊勢の名匠千子村正による本品はその鋭い斬れ味と徳川家康にまつわる因縁により妖刀との異名を持ち…』
山崎武司はその説明書をひととおり読み流すと丸めてぽいと草むらへ捨てた。暗闇の中、鞘から抜いた刀が月明かりに照らされる。
ぶんと、素振りの要領で真横に振ってみる。薄い刃が横にしなるので、バットよりもコントロールが難しいものなのだとわかった。
帰りたい。怖い、怖い。
恐怖心から彼はナゴヤドームからさほど離れていない母校の敷地に身を寄せた。とは言っても、既に彼の在学中とは様変わりして、随分と立派な校舎がそびえ立っていたのだが。
高校時代の山崎は、休み時間にこうやって(もちろん手にしていたのは今のように日本刀ではなく金属バットであるが)校舎の裏で素振りをするのが好きだった。
誰にも負けたくなかった。寸暇を惜しんで練習した。
愛着のあるナゴヤ球場を離れることになったときは確かに寂しかったが、同時にドーム建設場所が名駅近くの空き地から現在地に変更されたことを知ると、何度も車を飛ばして工事現場に足を運んだ。
ドラゴンズのホームグラウンドが高校のそばに出来ることで、後輩達が奮起してくれることを願った。
いつからだろう。そんな純粋な気持ちを忘れてしまったのは。
結果が出ない。容赦なく罵声が浴びせられる。
俺が何したっていうんだ。こんなに頑張ってるじゃないか。お前達に俺の気持ちが分かるか。
山崎は自分の思いとはうらはらにどんどん傲慢になっていった。挙げ句の果てが、昨年末の無茶苦茶なFA宣言だ。
175 :
◆xYQkNOZE :02/07/10 13:16 ID:dvBX1LsX
山崎は知ってほしかった。頑張っていることを解ってほしかった。けれども彼はあまりに不器用で、それを素直に現す術を知らなかった。ひとり、またひとりとファンは離れてゆくばかり。
どうして誰も俺のことをわかってくれないんだろう。俺はこんなにも野球が好きで、こんなにもドラゴンズが好きなのに。ベイスターズに行きたいはずなんかないのに。どうして止めてくれないんだ。どうして。
ガサッ。
背後の草が揺れる音がした。
一気に血の気が引いた山崎は、刀を闇雲に振り回そうとした…
が、彼の最初の一降りで刀は止まった。
その刃は草陰から現れた井本直樹の首に、ざくりと刺さっていた。
「あ…やま…っさ……」
あああああああああああああああああああああああああ。
震える手で刀を抜いた。鮮血が飛び散った。
「うわあああああああああああああああああ!!!」
俺は知らない。俺は何もしていない。
あいつが悪いんじゃないか。俺の背後から襲おうとしたんだ、そうに決まってるんだ。
俺はちっとも悪くなんかないんだ。俺は悪くない。俺は悪くない。
物凄い勢いで、山崎は駆けていった。
【残り35人】
176 :
代打名無し:02/07/10 17:54 ID:B+OLIH8o
すげえ!!こっちもおもしろい!!!
野球バトロワファンになりますた!
谷繁がどんなキャラになっていくかに期待します。
20 プログラムの魔力
時計の針は八時を幾分か回っていた。
ここは大須の商店街、街灯のお陰で夜でも明かりには困らない。
どうやら電気は止められていないらしい。
川上憲伸は辺りに人の気配が無い事を確認してから、
オープンカフェの店先に放置されていた椅子の一つに腰を下ろした。
何とか井端や小笠原に会えればと思っていたが、
今のところ手がかりが何も無い。
ドームを出てから、もう二時間ほど経っている。
あれからまた誰か死んだのだろうか…
川上は見てしまっていた。
ドームから少し歩いた地点の路上に放置されていた、
まだ温かい波留の死体を。
誰が殺したのだろう、そいつは俺も見付けたら殺すだろうか、
そんな事ばかりが気になって気分が悪い。
仲間を信じなければと自分を戒めてみても、
あの血塗れの死体のリアルさが脳裡にこびり付いて離れてくれないのだ。
元々オカルト系が苦手な川上にとって、その映像は強烈過ぎた。
自己嫌悪で頭が痛くなりそうだ。恐怖心からチームメイト全員を信じられなくなるとは。
ため息が自然と零れる。
おまけに支給された武器は、その辺で売っていそうな金槌。如何にも心許ない。
問題は山積みな訳だが、さて、これから一体どうしたものか。
せめてここに居並ぶ店が戸締りさえしていなければ、中に侵入して使えそうな物を…
…馬鹿な。何を考えてるんだ、俺は。それじゃ盗みじゃないか。立派な犯罪だ。
慌てて川上は首を振り、良からぬ考えを振り払った。
人を殺してもいい、というこの状況で犯罪云々の話を持ち出すのも滑稽だが、
それにしてもこんな事を考えるなんてどうかしている。
きっと、このプログラムという異常な状況には人の狂気を引き出す力があるのだ。
波留を殺した人間もその例に漏れなかったのだろう。
負けてはいけない。飲み込まれてはいけない。
川上は立ち上がった。やはり、まずは誰かと合流した方が良さそうだ。
【残り35人】
番外編1 横浜某所にて
NHKで野球に関する特番をやっているらしい、
と聞いてTVの電源を入れたのはつい三十分前のことだ。
しかし、もう五時間もこうして画面を凝視しているような気がする。
今年度から横浜ベイスターズ所属となった中村武志は、
未だに画面の中で起こっていることがよく飲み込めずにいた。
急拵えのセットの真ん中、スーツ姿の今中が、
現役時代そのままのポーカーフェイスでブラウン管越しにこちらを見つめている。
その回りには中村も見知った顔のアナウンサーや芸能人が配され、
何やら場を盛り上げようとつまらないトークを繰り広げていた。
「いやーどうですか今中さん、優勝はどの選手だと思いますか」
「…さぁねえ。僕は野球の解説なら出来ますが、
人殺しに向いてる選手なんて解りませんから」
「ははぁ、ごもっともですねぇ。あ、えー、今また新しく情報が…
山ア選手が井本投手を殺害したそうで、
はい、これで残り35人という事になりましたね。
いや、なかなかハイペースじゃないですか、これは」
何だこれは。エイプリルフールには少しばかり早い。
中日ドラゴンズ。自分が十六年間所属していた球団。
去年フロントとの諍いで自分はこの横浜に来たわけだが、
それまで長年付き合ってきた仲間達が、今は遠き名古屋の地で殺し合いをしているというのだ。
しかももう五人も死んだという。
「しかしこう、何と申しますか、実に意外な選手が意外な選手をねぇ、
手にかけているわけですね。はい、こちらのフリップですが」
アナウンサーが机の下から一枚のフリップを取り出した。
誰が誰を殺したか、ということが簡単に纏められた表が印刷されているようだ。
中村は気分が悪くなってきた。
この連中、人の死さえ単なる視聴率のタネくらいにしか思っていないらしい。
「解説」に今中を呼ぶあたり、実に周到だ。
「あ、谷繁捕手が波留選手を殺害した場面を纏めたVTRが用意できたようですね。では…」
思わずTVのスイッチを切っていた。
もういい、もう充分だ。これは悪夢ではない、現実だ。よく解った。
身震いをした中村は、自分が冷や汗まみれになっていることに漸く気づき、
額を手の甲で擦った。全身がべた付いている。
今夜は眠れそうにない。
>>178 芸能人てやっぱり坂東英二とか加藤晴彦とかが揃ってるんだらうか…と想像したYO!
>>177氏
川上の中ではまだオガサーラタンは生きてるってところが妙にリアルで鳥肌が...w
181 :
新参者:02/07/11 02:14 ID:5xQk4kfK
21 帰りたい男
カキーン。
青空に打球音が響く。追う。飛びつく。つかむ。投げる。
「まだまだぁ〜っ!」
立ち上がりながら叫ぶ。
カキーン。
打球音が響く。追う。飛びつく。つかむ。投げる。
あぁ、オレは帰ってきたんや。またこのチームで野球がやれるんや。
随分回り道をさせられたけど、それも今はいい思い出や。
カキーン。
打球音が響く。追う。飛びつく。もう少しでつかめる…
ピンポーン。
その音で目が覚めた。時計を見る。00:01。
寝ぼけ眼を擦る。誰やこんな時間に…つぶやきながら、意味もなく天井を見る。
ピンポーン。
…無視したら諦めるやろか…
ピンポーン。
はいはいはいはい…しょーもない事やったらしばくぞ、ホンマ…
ベッドから転がるように降り、玄関に向かう。明かりをつける。
ピンポーン。
電気がついたらチャイムは押さんやろ、普通。何を考えとんねん。
だいたい、近所迷惑やろ。
「…誰やねん、こんな時間に」
壁にもたれ掛かりながら、細目の男は明らかに寝起きと分かる低い声でインターホン越しに聞く。
「なんや、こんな時に寝とったんかマイケル。相変わらずマイペースやなぁ」
種田は一瞬にして目が覚めた。聞き覚えのある声だった。いや、忘れられない声だった。
「か、監督!?」
あわてて玄関を開けた。男が見慣れた笑顔で立っていた。開いた口が塞がらなかった。
「おいおい、監督はないやろ?マイケル」
背番号77、真っ白なドラゴンズのユニフォームを着た星野仙一の姿がそこにあった。
182 :
新参者:02/07/11 02:17 ID:5xQk4kfK
ごめんなさい!我慢しきれずに書いちゃいました!
183 :
◆xYQkNOZE :02/07/11 10:13 ID:HrHHiWJc
>>182 我慢って…
リレー小説だからどんどんお書きくだされage
22 NHKからのお知らせです
時間は少し遡り、夜の九時半。
すっかり辺りは闇に包まれている。
身を隠すために忍び込んだ団地の一角、入り口からは見えない建物の影で、
福留は膝を抱えてアスファルトの上に座っていた。
三月の夜はまだまだ寒い。体を動かしたい。
「いつまでもここにいても仕方ないんじゃないか…」
隣に座る荒木に縋るように問い掛けると、
その体が微かに震えているのが見て取れた。
「ん…確かにここに座っているだけじゃ、
誰かに襲われた時とっさに逃げられないだろうしな」
「だろ。さっき決めた通り、人が集まりそうもない千種の方に行って、
それからまた考えよう」
「わかったよ」
バッグを持って立ち上がり、伸びをしてみると、
随分体が強張っているのがわかった。寒い中ずっと座っていたのだから当然だ。
「それにしても寒いなー」
「まぁ、歩けば暖まってくるだろ」
「あれ…孝介」
「んん?」
「何か聞こえないか…」
ばりばりばりばり。
「ん、何だこの音」
荒木に言われて気付いた時には微かだったその音は、
あっという間に膨れ上がり、辺り一帯の空気を揺らす轟音になっていた。
見上げると、上空にはぎらぎらとした金属の固まり。ヘリコプターだ。
「…NHKのヘリか!」
「畜生、今更何の用だっ」
石でも投げてやろうかと睨み付けたが、
そんな事をしても無駄だと自分を落ち着かせる。
反抗したら何があるか解らないのだ。
『みなさーん、元気に殺し合いしてますかー。本部からのお知らせでーす。
会場が名古屋一帯だと広すぎる、退屈だ、と視聴者の方から苦情が来たのでー、
今から二時間後、十一時半ですね、それ以降この東区は立ち入り禁止にしまーす。
二時間たっても居座っている人はー、首輪が爆発してしまいますよー。
速やかに他の区へ退去してくださーい。以上でーす』
アナウンサーらしき男の、はっきりした声が辺りに撒き散らされた。
プログラムを盛り上げるための措置というわけだ。
「…くそっ、これで嫌でも移動しなきゃならなくなった」
荒木が吐き捨てる。福留は唇を噛んだ。
去っていくヘリコプターが堪らなく憎い。
【残り35人】
いつもは人が溢れかえっているはずの街は、不気味に静まり返っていた。
街灯だけが照らし出す町の景色はなんとも言えない威圧感のようなものが漂っていた。
そこで森野将彦はぜえぜえと息を切らしていた。
先程のヘリからの放送を聞いて必至になって走ってきたため、いつもの彼にならわかるはずの道も全然わからなかった。
さっきまでいた東区からは出たつもり、ただなんとなくそれだけはわかった。
―仲間が欲しい…。クソ!こんなだだっ広い街の中じゃ探しようが無いじゃないか!!
実はここまで逃げてくる途中に一度だけ誰かに呼びとめられたような気もしたが、
その時の彼には立ち止まって仲間を見つける事よりも確実に命の期限が迫ってくる東区から出る事が先決だった。
森野は心底後悔した。あのとき立ち止まっていたらこんなに辛い思いをする事は無かったんじゃなかったのかと。
バッグに入っていた武器は護身用などに使うスタンガンだった。
こんなものが武器じゃあ万が一襲われてもまともに応戦すら出来ない…。
これも彼にとって大きな不安要素の一つでもあった。
暫くそこで息を整えているとどこかから小さく足音が聞こえた。
森野は、それに気付いた瞬間ビクリと体を起こし、バッグの中のスタンガンを取り出した。
まともに使い方もわからなかったが、こんなものでもないよりはマシだった。
そして、それを震える右手でしっかりと持ち、聞こえた気がした方向に声を飛ばす。
「誰ですか!?僕は森野です!!居るんなら返事して下さい!!」
足音の主はその姿を彼の前に表した。
「…た・・た、立浪さん…」
足音の主―立浪和義はククッと鼻を鳴らした。
すみません、タイトルを入れ忘れてしまいました…。鬱。
「23 誰にもわたさん」
でお願いします…
-ここから本文-
「よう森野ー、探したんよ、お前の事。」
そう言った彼の口の端にはわずかな笑みが貼りつけられていた。
「さっき呼び止めたのにお前走ってってまうからさあ、負いかけんのに必至やったよ。」
どんどん距離が狭まってくる。気付くと立浪はすぐそばに居た。
そして、彼は言った。
「なあ森野、悪いんやけど…死んでくれんか?」
瞬間、左の太もも辺りに激痛が走る。
「ーーーーーーーッッッッッッッ!!!!!!!!!!!!!!!」
声にならない声で叫ぶ。そして足を刺され、バランスを失った森野はその場に倒れこんだ。
「お前等が居るからオレが二塁をやれんのや!!!!」
そう、あの時だって抱いていた敵意は福留にたいしてではない、そのそばに居た荒木に対する敵意だった。
ただあの時の相手は銃を持っていたし人数も二人、そしてこっちは一人。
本気で戦っても体に鉛弾を埋め込まれるだけで終わりになっていたかもしれなかったのだ。
立浪は倒れた森野に馬乗りになって首を締める。
「…や…やめ・・てくださ…い…」
必死にもがきながら腹のそこから力を振り絞って叫ぶ。
「オレが二塁や、誰にも渡さん、誰にもだ!」
止めを刺そうとした瞬間どこかから「やめろ!!!!」という声と共に立浪と森野の顔の間を何かが走り抜けた。
とたんに拘束が解け、森野は酷く咳き込む。
『それ』が飛んでいった方向に顔を向けると街灯の鈍い光に照らされた細長い銀色の物体が落ちていた。
その物体は、細身の銀の矢だった。悪魔を討つ為の銀の矢だった。
飛ばされてきた方向からは、落合英二が姿を表した。
立浪の手には先程の森野のスタンガンが収められていた。ドサクサに紛れ森野から奪ったのだ。
そして彼は「チッ」舌打ちしてその場から姿を消した。
「森野?!大丈夫か?!」
「な・なんとか大丈夫みたい、です…」
まだ咳き込みながらではあるが、しっかりとした声で返事をした。
「嫌な空気が流れてきた様な気がした。まさかこんな事になっていたとは…」
落合は立浪が消えた方を見つめ、小さく呟く。
「…立浪とはまた顔をあわすことになりそうだな…」
また中心街に静寂が訪れた。
【残り35人】
188 :
◆xYQkNOZE :02/07/11 18:10 ID:HrHHiWJc
24 夢は何マイルか
ぐらぐらと煮立つ鍋の前で額に汗を浮かべる落合の姿があった。
その横で、小山伸一郎はぼんやりと立っている。
手伝うつもりで厨房に入ったのだが、あまりの手際の良さに、入る隙がなかった。
「そこのどんぶり、持ってきてくれ」
「あっ、はい」
チャッ、チャッ、リズミカルに湯を切り、湯気の上がった麺を小山の差し出した丼に開ける。
「具はそこにあるの適当に…でも明日のぶんは残しておくんだぞ。正津ー!メシ。ちょっと休憩だ」
遠くで正津英志が応え、こちらへやってくる。いい匂いが辺りに漂う。
「落合特製宮きしめん、完成ーーー。早く座れ」
逃げ込んだ熱田神宮の売店には、冷蔵庫に保管された食材が山ほど残っていた。普段の参拝客の多さを物語っている。
「では、揃ったところで、頂きます」
「頂きます」
箸を割り、麺を口に運ぶ。落合流は、かつおとこんぶの合わせだし。
「……落合さん………」
泣きそうな顔。
「どうした、小山、口に合わんか?」
「………うまいッス……」
くしゃくしゃな表情に、落合はほっとした。そして再び、麺をゆでているときと同じく真剣な顔つきになり、正津のほうを向いた。
189 :
◆xYQkNOZE :02/07/11 18:11 ID:HrHHiWJc
「どうだ正津、ラジオのほうは」
「難しいですね…なかなかバンドが合わなくて。今誰かのマイクを拾ってるんですけど、一人でいるみたいで息がハアハア言ってるだけなんですよ」
「そうか…俺達以外は単独行動なのかな」
「そうなら寂しいですね」
休憩所の座敷に森野が眠っている。
小山は再び落合ときしめんを作りながら考えていた。
「相当体力消耗してそうだったから、卵も乗せてやってくれ」
ここにいるメンバーで、役に立たないのは俺だけだ。
「わかめはさっき冷蔵庫しまったからな」
落合さんは気が利くし、正津さんは器用だし、
「森野って出身どこだっけ?もっと濃いめのほうがいいかな」
森野は頑張りやだからきっと俺よりかわいがられるに決まってる。
「お盆あっちにあったぞー」
見捨てないで落合さん…もう後輩に追い抜かれるのは嫌だ……
「…やま、こ・や・ま!」
はっと気が付くと、丼を乗せた腕を掴まれていた。汁が波打って盆の上にこぼれた。
「刃物をひとに渡すときは、自分が刃のほうを持つ、だろ?」
小山の手から、盆の下に隠したキッチンバサミが落ちた。
「滅多なことは考えるんじゃないぞ、お前も森野も正津も、みんな俺の可愛い後輩なんだから」
小山がわあと泣き出す声で、森野は目を開けた。
落合カッコイイ!!そのまんまな感じだ…
波留は星野編に続きとっとと逝ってしまったが、
彼の人格タイプからいっていたしかたないか(w
25 何もいらない
澄んだ静寂の中、野口茂樹は心地よい倦怠感に身を任せていた。
黄味がかった薄明かりと湿った空気。木の長椅子。
ああ、本当に静かでいいな。今にもパイプオルガンの音色が聞こえてきそうじゃないか。
支給品の地図の裏にここのスケッチもしてしまったし、もうする事は何もない。
正面の大きな十字架を何となく眺めながら、野口はスポーツバッグの中を探った。
別にキリスト教を信仰しているわけではない。
ただ、目的も無く昭和区の住宅街を歩いている時、
不意に目に入った「南山教会」の文字に何故か惹かれた。
それにここの静けさは、死に場所には丁度いい。
神様のお膝元からなら迷わず昇天できそうだ。
エースと呼ばれて一年間を戦い抜き、その報いがボロボロになった左腕と殺人ゲーム。
ああ、下らない。もう疲れた。疲れ果てたよ俺は。
せめてこの死を以って反抗の意としておこう。
バッグの中から取り出したのは、ごく一般的なカッターナイフ。
武器としては役立たずだが、手首の動脈を切り裂いて死ぬには充分だろう。
左手にしっかりと握ると、右手首に当てがった。
冷たい刃物の感触に思わず微笑む。
年俸一億円以上貰ってる男が安物カッターでリストカット自殺か。
面白すぎて笑い話にもならない。
でも、仕方がないじゃないか。もう欲しいものなど無い。
金も名誉も命も全てどうでもよくなった。
だから、せめて死に方くらい自分で選んだって罰は当たらないだろう?
エースという称号も一年で手放さなければならない、
野球の神様に見放された自分だけれども。
力を込めると皮膚に鋭い痛みが走り、それから刃の下から血が滲み出した。
もっと奥だ。ああ…さすがに痛いな。
刃がずぶずぶとのめり込んでいくのがまるで作りものの様だ。
鼓動に合わせてどくりどくりと溢れ出す血は、鮮やかな赤色をしていた。
だんだん全身から血からが抜けていく。座っている事ができなくなり、体を横たえた。
カッターを引き抜こうかと思っていたのだが、もうそんな余力は無いようだ。
野口は目を閉じた。この瞼を上げる事は二度とないだろう。
父さん母さん先立つ不孝をお許し下さい、か。やれやれ。金は残していくから勘弁な。
椅子を伝い、床に鮮血が滴り落ちていった。
【残り34人】
26 燃える男
種田仁は星野仙一がいた空間をぼおっとながめていた。
頭の中では、星野の言葉が繰り返されていた。
「色々、辛い思いをさせたな。すまなかった」
そんな…監督が謝る事やないですって。
あのままドラゴンズにいたら、代打の切り札で満足してしもうたかもしれん。
ベイスターズに来て、もう一回レギュラーを狙う気になったんや。
感謝こそすれ、憎むなんて…
「波留が死んだ。だが、お前のせいじゃない」
…何やて?波留さんが?…
「これから、タケシとダイスケの所にも行く」
中村さん?ダイスケて、益田か?
「もしかしたら、これが最期になるかもしれん」
…え?最後?最後って…何でや?
「これからのドラゴンズを、よろしく頼む」
え?何言うてますの?監督…オレはいまベイスターズの選手なんやで…
何が起こったのか分からず、混乱した頭のまま寝室に戻った。
ベッドに腰掛け、もう一度星野の言葉を思い出す。
これは…夢ちゃうやろか。頬を抓る。痛い。夢ではない。
不意にテレビが目に入った。何かに導かれるようにスイッチを入れる。
深夜番組らしく、妙に高いテンションの番組が映し出された。
だが、何かが違う…。
「ゴメスが渡辺を、山本昌が小笠原を、そして未遂に終わりましたが、立浪が森野を…
やはり、同じポジションでのライバル意識が剥き出しになってますねぇ。
山崎はちょっとパニックになってますねぇ。井本の武器を奪わなかったのは大きなミスです。
これが今後、どういう影響を及ぼすのか、ひじょーに注目される所です」
アナウンサーの声と同時に画面に出たのは5人のドラ戦士たちの顔写真。
写真の下に赤い文字が書かれている。
渡辺/ゴメスに刺殺、波留/谷繁に斬殺、川崎/首輪爆破(実験台)、井本/山崎に斬殺、小笠原/山本昌に銃殺…
殺人番組。一瞬、その考えが頭を過った。だが、あり得ない…この日本でそんな…。
だが、カメラがスタジオ内をパーンした時、絶望的な表情を浮かべる今中と、
邪気のない笑顔を浮かべる古田の顔が写った。
「…そういうことでっか…監督…分かりました。」
種田は理解した。
ドラゴンズを出された自分達、いや、少なくとも自分の使命。
それは、この馬鹿げたプログラムの後も、ドラゴンズという球団をこの世に存在させる事。
ならばこの出来事は全て見ておかなければならない。
たとえそれが、拷問より酷い責苦だとしても…
星野仙一はベンツの後部座席に深く腰掛けていた。
「なぁ、島野。降りるなら今のウチだぞ」
しかし、運転している男は返事をしない。その代わりにアクセルを強く踏み込んだ。
このベンツの他に走っている車はない。おそらく日本中が馬鹿らしい殺人番組のとりこになっているのだろう。
「…まぁ、ええわ。好きにせぇ」
星野は笑いながらそう言った。
おそらく、これから自分が生きて戻れる可能性は万に一つもないだろう。
だが、愛したドラゴンズがむざむざ地上から消されるのを指をくわえて見ているのは性に合わない。
絶望的な状況になるほど燃える。星野は結局、そういう男だった。
「…野口が、死にました。自殺だそうです」
運転席の男はそう言った。イヤホンから情報が入ってくるらしい。
星野はそうか、とだけ言い、目を閉じた。
男2人を乗せたベンツは、夜の横浜を西へと走る…。
【残り34人】
194の名前、化けちゃいました…
2ちゃん初心者なもので。
Macからのカキコは難しいのかな…
…てか、
>>181,
>>194-196は番外編にした方が良かったですかね?
>>ルーファン殿(ルーチェンガンかと思たYO)
今保管作業してますけどどうしますか?
通し番号振ってしまっているのでずらすのもなんですが。
もしこの話が何らかの形で本編に絡む可能性を秘めているのならば章番号残しておきますよ。
余談ですが私も平日昼はマカーです。
そうですね。
種田は個人的に好きな選手なので、出したかったんですよ。
ただ参加となると…。
少なくとも星野仙一は絡んでくると思うので、
このままで行って下さい。
>>200 ルーファン殿
了解ですた。私もタネタネ好きですよ。
ドラを離れてもいつまでもドラを恋しがっているような気がしてならないです。FAすんのかなあ。
202 :
書き手A:02/07/12 00:49 ID:zohQCbKw
>◆xYQkNOZE氏
保管作業乙カレー様です。人物表などよく参考にしてます。
ところで保管サイトの「番外編1」の文章部分に文字化けがあるように見えるのですが…
私の環境のせいでしょうか?もしそうなら申しわけありません。
>>202 書き手A殿
どれどれ…ぶっ化けてました
昼はマカー、夜はWinの二つの顔を使い分けているとボロが出ます(?)直します。
おつあいは武器が明言されていないので(洋弓?ボウガン?はたまた吹き矢???)表に入れてません。
204 :
◆xYQkNOZE :02/07/12 01:09 ID:rS0va2cH
山崎の正しい字が文字コードと相性悪かったみたいです。
勝手に『崎』に直させてもらいまつた…
野口が昇天したので泣きながらageます
205 :
◆xYQkNOZE :02/07/12 01:13 ID:rS0va2cH
かなりどうでもいいがIDが2chだ!(笑)
206 :
141:02/07/12 01:16 ID:cYQzrHh8
141です。今、リアルの方がやっと落ちついてきたので、
遅れ馳せながら作業に取り掛からせて頂いてます(´Д`;)
>>149さん
そう言っていただけると大変嬉しいです、
自分はこっちの方で貢献していけたら…とおもいますです
141氏も職人さん達もがんがって下さいage
208 :
代打名無し:02/07/12 13:55 ID:Ly3v6ZVG
ageるな、この基地外ヤロウが
209 :
◆xYQkNOZE :02/07/12 16:53 ID:6nLeWm4/
27 第二日
「キョオーモゲーンキナアーサガキター、シアワセイッパイアーサガーキター」
「−−−%&☆@◇*ッ!!」
鶴舞公園のスピーカーから大音響で響き渡るラミレスの歌唱と思われる歌声は、常人よりも繊細な部類に入る井端弘和の神経を覚醒させるに十分であった。
起こされなくても、とっくに起きてるっての。いや、ほとんど寝てないっての。この状況で熟睡なんか出来るかよ。
全く、他人の神経逆撫ですることばかりしやがって……、生きて返ったら滅茶苦茶にしてやる。
歯噛みをする井端の耳からあまりに美しすぎた歌声がフェイドアウトし、ほどなくして、あの、ドームで聞いた古田の声が飛び込んできた。
「皆さん、おはようさん…古田ですー。こっちも各局総力あげて中継さしてもろてますから、この調子でどんどんいっちゃってくださいな」
そして古田は至極当たり前のように、これまでに死亡した人間の名前を、それを放映した時点の瞬間最大視聴率をアナウンスした。
「おかげさまでいーい絵を撮らしてもらってますー。今日も一日、頑張ってください。ほな、また」
死亡者の中に『野口茂樹』の名前があったことで井端は脅えていた。昨晩、八事の方向へと歩いてゆく、彼の姿を見かけていたからだ。
確かに井端は声をかけた。
しかし、野口はただ、寂しげな表情(街灯のせいでそう見えただけなのかもしれないが)を返して足を止めることなく去っていったのだ。
もしも力づくで野口さんを引き止めていたなら、あの人は助かっていたかもしれない。あのあと、誰が野口さんを殺したんだ…、誰が!!
もしかしたら犯人はこの近くにまだいるかもしれない。むざむざと殺されてなどやるものか。早くトラップを張らなければ………
木の枝で作った鳴子は着実に増えていた。
支給品のゲイラカイトにセットされていたたこ糸で繋ぐ。
来るな。来るな。誰も来るな。ここへ来るな。
ひとつ、またひとつ、井端は無心に鳴子を繋いだ。
>>209 誤字訂正sage
(誤)
これまでに死亡した人間の名前を、
(正)
これまでに死亡した人間の名前と、
211 :
代打名無し:02/07/12 17:15 ID:+cO2Kg16
>>210 訂正しないほうが強調きいてておもしろいよ
しゅーじがくじょーっつーの?
28 ターゲット
名鉄の線路沿いを南に歩く2人の影。
「…それにしても、腹減ったな」
ナゴヤドームからここまで、飲食店は多くあった。
しかし、どこもかしこもシャッターを下ろしていた。
この殺人ゲームが終わったら、きっと何ごともなかったかのように日常生活が始まるのだ。
オレ達の事も、いずれ忘れ去られる。そう考えて、筒井はふっと笑った。
「どうしたんですか?」
「いや、オレもいずれ死ぬんだよな、と思ってな」
「そんな、止めて下さいよ…」
そうだ。人間の一生なんてたかだか80年。
100年も経てば、今生きている人間は全て死んでいるんだ。
ショーゴー、お前もだ。…尤も、そう簡単に死ぬつもりはないが…
2人はナゴヤ球場の近くに来ていた。辺りを朝日が包み始めている。
「あ、筒井さん、店が開いてますよ。ひと休みできますね」
森は言うが早いか走り出していた。
「おい、待て」
筒井の制止も森には届かない。あっという間にその姿はシャッターの下りていない喫茶店に消えた。
…バカが。敵がいるかもしれないのに…
筒井は森の後を追った。そして、自分の考えが間違いでない事を知った。
「不用心だなショーゴー、筒井。そんなんだから、いつまでも2軍なんだぞ」
森の視線の先には銃が。そしてその銃を持っているのは…
「昌さん、何で…」
「ここにいれば、誰かが来るだろうと思ってな。リュックを降ろして両手を挙げろ」
「…昌さん、オレ達を殺す気ですか?」筒井が聞く。
「いや、お前らはオレのターゲットじゃない」
「ターゲット?」
「ん?ああ、気にするな…なんだショーゴーは携帯テレビか…貰っておくぞ。…おいおい筒井、お前は石か。貧乏くじだったな」
リュックを調べ終わると、山本昌は銃を腰のベルトに差した。
「朝飯、食うか?モーニングセットだ。セルフサービスだけどな」
食べかけのトーストに山本昌はかぶりついた。
…ここはこの人に従う他ないか…だが…。筒井は後ろポケットに手をやった。
小さなビニールに入った白い粉。自分に与えられた本当の武器はまだ黙っておいた方がよさそうだ。
29 笑み
「お前ら、岩瀬見なかったか?探してるんだよ」
言いながら、山本は立ち上がった。
「え、岩瀬さんですか…って!山本さん!」
自然と山本の姿を目で追い、そして森は気付いた。
山本のユニフォーム、腹部の辺りに広がる赤。
先ほどは銃を向けられた恐ろしさに全く気付かなかったが…
乾いて黒ずんだその色は、明らかに血だ。
「山本さん、怪我してるんじゃないですか…そこ、血が…」
「…これは返り血だ。質問に答えろ」
山本はベルトに挿した銃に手を伸ばして見せた。
思わず背筋が伸びる。
「えっ、あっ、見てないですっ…ねえ、筒井さん」
筒井はコーヒーを啜りながら頷いた。
まだ機嫌が悪いらしく、眉間に皺が刻まれている。
「そうか、ならいいんだ。…俺はもう行くから」
そうですか、それは良かった。森は胸を撫で下ろした。
山本さん、怖いですよ。そんな、返り血なんて。
だってそれって…人を殺したんですか?早くどこか行って下さいよ。
「じゃあな。せいぜい生き延びろよ」
「待って下さい、山本さん」
筒井の声が、山本の背に向かって鋭く飛んだ。
「つ、筒井さん…もういいじゃないですか」
「黙ってろショーゴー。山本さん、一つ教えて下さい。
あなたは人を殺したんですか」
一瞬の間の後、振り返らぬまま山本が答えた。
「殺したよ、小笠原を。岩瀬も山北も殺すつもりだ。
最後の仕上げには、高みの見物をしてるあいつをな」
そこまで言い、振り向いた山本の顔は笑っていた。
狂気の笑み…ではない。しかし…
「じゃあな」
気が付くと、森は腰を抜かしていた。
【残り34人】
>>211 折衷で訂正
(誤)
これまでに死亡した人間の名前を、
(正)
これまでに死亡した人間の名前と、
(最新)
これまでに死亡した人間の名前を、そして
216 :
代打名無し:02/07/13 13:20 ID:7jjT+UVb
山田はいつでるんだろう?
217 :
141:02/07/13 16:09 ID:Sjzf3NIg
とりあえず出来あがりました…ハァハァ
http://mypage.naver.co.jp/drabr2/ ちょっとばかりスタイルシート使わせてもらってます。
対応してない方は文字サイズは小がいいです。
画像いくつか使ってるので重かったらすみません(焦)
なんか悪いとこばっかりだ(´Д`;)
勝手ながら◆xYQkNOZE様と69110様の保管サイトにリンク貼らせて頂いてますです。
もしまずかったら一言仰ってくださればはがしますんでご容赦下さい。。
番外編2 所沢にて
「さて、ここで情報が入りました。ナゴヤ球場の方で何か動きがあったみたいです。
今、現場に中継のへりが飛んでいます。…つながりますか?
はい、それではカメラを切り替えます」
アナウンサーの声と同時に画面にナゴヤ球場が現れた。
ナゴヤドームが出来て以来、空から見るナゴヤ球場を見る事は少ない。
レフトスタンドも照明灯も取り壊され、以前の面影も失われつつある。
「今度は誰が殺されるんだ?」
「誰が生き残るか賭けないか?」
西武ドームのロッカールームでは、テレビを囲んだ若手からそんな声があがっていた。
そうか、オレがあそこにいたことを、こいつらは知らないのか…
無理もない。清水雅治はあの日の事を思い出していた。
平成8年10月8日。
中日と巨人は130試合目、勝った方が優勝といういわゆる「10.8」
中日の先発は今中、巨人は槙原。
今中は対巨人戦5連勝中。その数字を示すかのように1回の表は三者凡退。
…よし、いける。そう思った。
トップバッターは清水。
快心の打球は右左間を破るツーベース。
どうしても先取点が欲しい。当然、ベンチのサインは送りバント。
槙原の投じたボールはストライクコースへ行く。
清水の足は自然と3塁方向へ進んだ…が。
小森のバットを、ボールはすり抜けて行った。
キャッチャーからの牽制が2塁ベースに向かって飛んでくる。
まずい!そう思った時にはもう遅かった。
多くの人が、オレのせいではないと言ってくれた。
だが、あの試合で負けたのは間違いなくオレのせいだ。
あの日のミスを取り戻すために、オレはプロ野球選手を続けている。
だが…。
あの日、同じグラウンドに立っていた選手が目の前で殺し合いをしている。
…トレードがなければ、オレもあそこに立っていた…
現実は残酷と言うが、これ以上残酷な事があるだろうか。
ナゴヤ球場近くの駅で何かが爆発した様子がテレビに映し出された。
スマソ、誤記訂正
5行目
×「空から見るナゴヤ球場を見る事は」
○「空からのナゴヤ球場を見る事は」
30 殺るか殺られるか
「マコトさん、隠れるのダメ。出て来い」
…ハゲが、好き勝手言ってくれる。出て行ったら殺すつもりだろうに。
斬り付けられた左手を押さえながら、毒づいた。
ナゴヤ球場前駅構内。
かつては多くのファンが通ったであろう改札の陰に、紀藤真琴は隠れていた。
青龍刀を振りかざしてきた大豊の目を支配していたのは、間違いなく狂気。
誰も殺さず、誰にも殺されず事が終われば良かったが、そうは問屋が下ろしてくれないらしい。
自分の足下に目をやると、左腕を伝った血が点々と落ちていた。傷は浅い。だが、いずれ見つかる。
あの男を殺さなければ、自分が殺される。
…やるしかないか。そう決めると不思議と心が落ち着いた。
「マコトさぁぁん?ドコデスかぁ?」
日本人になって何年になるんだよ?いつまで経っても日本語が下手なヤツだ…。
顔をしかめながら、リュックの中に手をやる。
「ハハハァ、こっちカ」
どうやら血の痕を見つけたらしい。足音が次第に大きくなる。
不意に…紀藤は立ち上がり、振り向きざまに手榴弾を投げた。
その手榴弾が大豊の足下に転がるのを確認すると、
紀藤はリュックをつかんで走り出した。
背後で爆発が起こった。
31 咆哮
爆音に気付き外に駆け出した森の目に映ったのは、黒鉛の立ち上る「ナゴヤ球場前」駅の残骸だった。
「こりゃひどい…」
後から追いついた筒井が眉を顰める。
正直、自分達は一軍戦よりも、ナゴヤ球場で行われる二軍戦に出場する機会が多かった。
二軍戦を見に来てくれる人々にとって、この駅はとても重要な存在だったはずだ。それなのに。
そりゃあ、駅なんて作り直せばいいものかもしれない、しかし…
「…おい、ショーゴー。こっち来てみろ」
森が考え込んでいる間に、いつのまにか筒井は瓦礫の中に立っていた。
「そんなとこ危ないですよ、筒井さん」
「いいから。これ…見ろよ」
瓦礫に足をとられないよう恐る恐る筒井の隣まで歩き、それから森は、再び腰を抜かした。
「おい、危ないぞお前…そんなとこに座ってどうする」
「だ、だって、これ!た、大豊さん…が、死んでる…」
筒井の足元には、頭と右腕の無い焼死体がうつ伏せに横たわっていたのだ。
ユニフォームの背番号は辛うじて読み取れる。60、と。
「ん…ユニフォームからして、大豊さんらしいな」
「…さっきの爆発に、巻き込まれたんでしょうかね…?」
「多分。立てるか」
「は、はい」
筒井の差し出した手を掴み、森はふらりと立ち上がった。情けないことにまだ膝が震えている。
「これで7人目か。今朝の放送から誰も死んでなければ」
「…だ、誰がこんな…大豊さんはいい人で…」
二軍でよく一緒になった大豊。未だに少したどたどしい日本語と、
頼もしげな笑顔が印象的だった。まるで父親の様な。
「馬鹿。極限状態なんだぞ。ひょっとしたらこれは正当防衛かもしれないんだ。
大豊さんが温厚な人だったのは俺も知ってるけど、な」
正当防衛だって。襲われて襲い返す、こんな状況でそれをしたら泥沼化するばかりだ。
様々な感情が森の頭を締め付けた。
返り血を浴びていた山本。今ここで死んでいる大豊。そしてこれまでに6人も死んだという事実。
「…狂ってる。みんな狂ってますよ!どうしてこんな事ばかり起こるんですか!
どうしてチームメイトが殺し合わなきゃならないんですか!」
森は叫んだ。天に向かって吼えた。何にもならないと知っていながら。
筒井は何も言わず、大豊の死体を眺めていた。
【残り33人】
恥ずかしい誤字発見…
221の一行目の「黒鉛」を「黒煙」に訂正します。失礼しました。
223 :
代打名無し:02/07/14 02:48 ID:cO6prCmt
age
このスレ、最強におもしろい!!!!!!!!!!!
224 :
書き手A:02/07/14 10:15 ID:H+U4GNPk
>141氏
乙です!龍の絵がカコイイですね。
32 荒木負傷
「・・・うぅっ」
「起きたか?」
荒木は古田のアナウンスで目が覚めた。
「今メシ作ってやるからもう少し横になってな」
福留は泊まっていた民家の階段を下りてながら昨晩の出来事を思い出していた。
〜〜〜ヘリからの警告を聞き福留と荒木は西へ向かっていた。放送から30分たっただろうか。
2人は歩き続けていた。
東区からは出た。
しかし、ここまで来る間に誰にも会うことは出来なかった。
やっぱり名古屋は広いんだな――
「これからどうする」
荒木はバッグの中に入っている水を飲んだあと言った。
「あぁ・・・」
「とにかく仲間になってくれそうな人を探そう」
「そうだな」
―――仲間になってくれそうな人―――
福留はふと立浪さんのことを思い出した。
彼は必ず仲間になってくれると思っていた。みんなが助かる方法を考えて何とかしてくれるんだろうとも思った。
―――しかし現実は違った。
彼は自分たちに刃を向けた。自分たちを殺す気だった。
今でも信じられない・・・。いや、信じたくない。
あの立浪さんが・・・。
福留と荒木は進み続けると、大きな通りの交差点がある所に出た。
夜であることもあったし、車の行き来が全くないので静まり返っていた。
街灯が数個だけついていた。
十字路の真ん中に誰かが立っている。
2人から見て後ろ向きに立っていて顔はわからなかったが、背番号を見て誰だかわかった。
『57』蔵本英智だ。
「蔵本さんだ」
荒木は蔵本の方へ走っていった。
「蔵本さんはここで何してるんですか」
「ちょっと荒木、待てよ」
荒木と蔵本との距離が5メートルくらいになった時、蔵本は2人の方に向いた。
蔵本は向いたと同時に何かを構えていた。
ボウガンだ。
「荒木、逃げろ!」
福留は荒木の方へ走りながら叫んだ。コイツは殺る気になっている。
ボウガンから矢が発射された。
「うっっ」
矢が荒木のわき腹をかすった。
荒木も必死によけようとしたが、間に合わず、わき腹をおさえながら倒れていった。
血がおさえている指先の間から流れ出ている。
「荒木!・・・くそっ!!」
福留は倒れている荒木の所へ駆け寄った。
荒木が顔中汗だらけになりながら苦しんでいる。
「大丈夫か」
カチャカチャ。蔵本の方から音がする。福留が蔵本の方を見ると、蔵本が次の矢を装填しているのだ。
俺たちを殺す気か――
しかし、使い慣れていないせいか、装填に手間取っている。
やばい。この距離から矢をさけるのはまず不可能だ。
仕方がない・・・。福留は自分のバッグを開け、奥底にしまっているあれを取り出した。
―――使わないと決めていたが
蔵本にあれ・・・COLT GOVERNMENT M1911A1を向けた。
「ここから消えろ。撃つぞ」
声が震えていた。当たり前だが、こんなセリフ今まで言ったことがない。
「・・・・・・」
蔵本は表情を変えず、ボウガンをおろした。そしてそのまま走っていった。
福留の視界からは完全に消えた。
ふぅ〜。全身の力が抜けるようだった。
殺されることと、銃を持った緊張感から解放されるようだった。
「荒木、大丈夫か」
「・・あぁ・・」
汗がひかない荒木は弱々しい声で言った。
「とにかく手当てしたほうがいい。民家に行けば何か道具があるはず」
荒木を担ぎ、歩いていった。
〜〜〜〜〜〜
思い出しただけで頭が痛くなる・・・。誰を信じればいいんだろうか。
次からがバトロワ原作でいう
中盤戦
Now 33 players remaining. てところか?
>>227 原作知らずに書いてます
>>220 素朴な疑問ですが実際の大豊は帰化してないんじゃなかったっけ?(ex.ワールドカップ台湾代表)
採用前に一年球団職員になった経緯、ドラフト関係の規則詳しい方いたら教えてちょ
ややスレ違いなのでsage
229 :
鴎ファソ:02/07/14 18:56 ID:RiaAO4Vn
酒井・吉鶴・椎木・山本保が何らかの形で出てきたらいいな〜と思いつつ、
いつも楽しく読ませてもらってます。職人のみなさんがんがってください。
>>228 原作知ってますが、むしろ原作のコピーじゃないところが
凄く新鮮だし、先の読めない楽しみもあって面白いですよ。
ところでそのバトロワの原作は、8月に幻冬舎から文庫化される予定。以上スレ汚しに付きsage
33 おとうさん
長島温泉・ホテル花水木。
球団から強制避難させられた寮生の一人である前田章宏は、浴衣姿で部屋の窓から庭園を眺めていた。
中継は既に総合テレビに切り替わってしまったらしく、昨晩から付けっぱなしの画面には小学生のリコーダーアンサンブルが写っていた。
お父さんは、大丈夫かな……。
前田には、父と慕う人物がいた。
紀藤真琴。
同じ高校の出身というだけで、一回り以上も年齢の離れた紀藤は入団前から前田にあれこれと世話をしてくれていた。
「今日から俺のことは、父だと思って何でも言いなさい」
「親子と言えども野球の場では他人だ!」
……わけのわからない人だったなあ。
キャンプでは同じ部屋に寝泊まりし、高校のこと、紀藤が広島にいた頃の名古屋のこと、夜毎に語り合った。
親子ほど年齢の離れた二人ではあったが、紀藤が年齢に似合わず若々しく前田がしっかり者であったため、まるで兄弟のようにも見えた。
お父さんは、山本さんと仲が良かったと思うんだけど…
昨日の中継では、山本さんは優勝候補って言ってたからな。
なんで皆、あんなふうに変わってしまうんだろう……。
表情を曇らせた前田の耳に、電子音の『燃えよドラゴンズ』が入った。
慌てて取り上げた携帯電話の画面には、メールの着信記録が表示されていた。
34 ユーガッタ・メイル
臨時閉店中のツクモ電機本店の片隅に、人影があった。
『ブロードバンドを体験しよう!』コーナー。
一心不乱にキーボードを叩く中里と、それを観察するのにもいささか飽きた様子の朝倉。
中里が昨年オフにパソコンを買ったのは知っていたが、いつの間に覚えたんだろう。コンソール画面には朝倉がおよそ目にしたことのない文字が流れていたが、いとも簡単にレスポンスを入力する中里に驚きの念を隠し得なかった。
「やった!!朝倉さん、通じましたよ!!」
腕を引っ張られて画面を覗く。
「何だ?これ」
「何だ、って…、ええとこれはですね、ブラウザから見られるフリーのメールを……、あーもう気にしないで下さい、メールが外の人間と通じたんですよ」
馬鹿にしたような口調に少し腹が立ったが、渋々指を差されたところを見る。
Date: Mon, 25 Mar 2002 9:32:55 +0900 (JST)
From: akihiromaeda@******.ne.jp
To: nakazato_a@*****.co.jp
Subject:中里さん?!
章宏です!!今どこにいるんですか?他の人達とは
一緒なんですか?!僕達は村田さんと一緒に長島温
泉に来ています。
「……これ、章宏?」
中里は満足げに笑みを浮かべた。
「そうですよ。マシンは落としてあったけど、ネットワークの回線は生きていたんで、設定変えたら繋がりましたよ」
「そっかあ長島温泉か……こっちは生きるか死ぬかなのにいいよなあ。
で、どうするんだ?」
中里が口を開こうとしたそのとき、裏口で物音がした。
「おーーーーい、誰か、いるのか?」
言葉を返す代わりに中里の口をついて出たのは小さな溜め息だった。
厄介なことになったなあ………。
中里カコイイ!!知的っぽいから似合うな(w
以前中日応援番組で、川上が中村さんのことを「おかあさん」といってたのを思い出してしまった…(w
こっちもがんがれ。
234 :
おひさしぶりの161:02/07/14 21:45 ID:r8XfDn5t
>>228 大豊は日本の大学に留学にきて野球部で活躍してたんですよ。んでそこからがウロ覚え
でスマソですが、プロ野球の規則?かなんかで、
日本にA年以上居住し、なおかつ日本の大学高校でB年以上在籍した外国人は日本人扱い
(そのAとBが何年だったか忘れた)とかなんとか。んで卒業時彼はBは満たしてたん
ですがAには一年たりなかった。
235 :
続き:02/07/14 21:49 ID:r8XfDn5t
おっと、上の規則ですが「入団時に」ってアタマにつきます。
だもんで卒業時にそのままプロ入りしちゃうとずっと貴重な
(当時2人だけ)外人枠を消費してしまい、本人にも不利な
んで一年浪人することにしたんです。つかそれをネタに中日
が球団職員として囲い込んだんですよ。
>>234 おお、おひさしぶりだ!!!ありがとです。
引退したら台湾に貢献したいらしいし帰化はしてないのかな。
同じ台湾でも郭源治御大は帰化したら苗字まで違う字にしていたよ。
237 :
161:02/07/14 21:55 ID:r8XfDn5t
帰化はしていないでせう。する必要もないし。
国籍は台湾でもプロ野球の世界でだけはルール上日本人扱いですから。
郭源治の帰化も外人枠のカラミだったと記憶してます。
>>237 重ねてありがたう
ネタスレなのにためになるなあ。親切な住人ばかりだ(涙)
>>228、
>>234-237 御指摘サンクスです。
そうだった。うっかりしておりました。
以下、
>>220の誤記訂正よろ。
×日本人になって何年
○日本に来て、何年
以後、気をつけます。スマソ。
35 ある滅亡の夢
ナゴヤ球場からあまり離れていない小さな公園に紀藤はいた。
ユニフォームの切れ端を巻きつけたお陰か、左腕の傷からの出血は止まっていた。
何故か鉢合わせてしまった山本が隣で拳銃を弄くっている。
小さな滑り台の上に大の男二人は窮屈だ。ぬるい太陽の光が辺りを照らしていた。
「…夕べ一眠りした時に、やな夢を見た」
不意にそんな言葉が零れた。悪夢は人に話すといい、というのは本当だろうか。
「へええ。よくこんな状況で寝られたもんだな。俺は徹夜だよ」
「お前と違って誰も殺してなかったからな。…ああ、さっき一人殺したか」
「やっぱりお前だったのか、あの爆発」
大きな背を丸めて山本が笑った。
「あれは…正当防衛だ、言っとくけど」
「へぇ。左腕の怪我で駅一つ爆破してたんじゃ追いつかないな」
また笑う。紀藤は苛立った。
「茶化すなよ」
「ああ、悪い悪い。で?夢って?」
「…世界が滅亡する夢だよ」
「おいおい、スケールでかいな」
全くだ、我ながらどうしてこんな夢を見たのか。
「俺は瓦礫の山の上に座ってた。夕日が綺麗だったのを憶えてる」
「なんで滅びたんだよ、その世界は」
「知らん。もう滅ぶに任せるしかないと思ってたな、夢の中では。で、俺はそこで人を待ってた」
「誰だよ」
「息子」
「へ、お前息子いたっけ」
そうか、こいつには言ってなかったか。
「…いや…いいんだ。結局そいつは来なかったよ」
「ふうん、専門家に聞かせたら面白く分析してくれるかもな。…さて。そろそろ行くわ」
「小笠原を殺したんだってな、お前。街頭テレビで見たよ」
立ち上がった山本は、そう言われても特に驚いた様子は見せなかった。
「ん。野口と井本が死んだから、あと三人だ」
それどころか、しれっと「犯行予告」だ。とんでもない食わせ者だと思う。
「やれやれ、左腕全員殺す気だったか。…ん、人数が一人多くないか」
残るは岩瀬、山北の二人のはずだが。
「俺も昨日の夜、街でテレビを見たんだよ。今は携帯テレビも持ってるしな」
それだけ言うと、山本は一気に地面に飛び降りた。すぐその背は見えなくなった。
やがて紀藤もゆっくりと立ち上がった。「息子」は元気だろうか、などと考えながら。
【残り33人】
241 :
代打名無し:02/07/15 11:55 ID:qfhXBUOm
期待age
242 :
◆xYQkNOZE :02/07/15 17:32 ID:UEy7o9x7
36 明日、あの海で
海を臨む貨物の廃駅に造られた小さな遊園地。誰もいないはずのその場所で、観覧車が、今、ゆっくりと動き始めた。
岩瀬はそれを確かめると、目の前に降りてきた真っ赤なゴンドラに乗り込む。
一人で乗るそれはやや危なげに傾いたが、やがて安定を取り戻し、遠くに名港トリトンが姿を現す。
何度も訪れたそこは穴場でも何でもない、名古屋の定番デートスポットではあったが、夜の闇に紛れてしまえば誰も自分が著名な野球選手であることなど気づかなかった。
そこを歩く者は恐らく誰も、自分の恋人に夢中で精一杯なのだろう。
それは岩瀬自身もそうであり、将来を誓った恋人といて何が悪いのだと、堂々と歩いた。
海の匂い。
それは恋人と過ごした場所の匂い。
閉め切ったゴンドラの中ではもはやわからない。
一周したら、もっと水際まで行こうと思った。
けれども、岩瀬にとってのささやかな静寂は、終点で待つ男によって破られた。
『中継ぎエース』としての自分を狙うスナイパー。
最期の時くらい、一人にしてくれよ。
俺にはもう手に入れられないものを、貴方は持ってる。
エースの称号なんて、所詮はいっときのものにすぎない。
俺が手に入れたかったのは、そんなものじゃないのに…。
名古屋の上空を巡ったゴンドラは、地面に降りる。
ドアを自らの手で開けて、岩瀬はその男と対面した。
「こんにちは、山本さん」
37 悪役
『君には悪役になってもらいたい』
蔵本は血まみれで瀕死状態の柳沢裕一を見つめていた。
常にこの言葉が頭から離れない。
ゲームが開始し、名前が呼ばれドームのゲートから外へ出ようとした時
「ちょっと君、来てくれないかな」
40代くらいの男性に呼び止められた。
「君にやってほしいことがある」
やって欲しいこと?何だ??
理由もわからないまま、男性についていった。断る理由もないしな。
男はドーム内の駐車場にあるワゴン車の中へ蔵本を連れて行った。
―――逃してくれるのか?免除か?
そんな期待も一瞬、した。しかし、現実はとても残酷なものだった。
車内には先ほどの男以外に4人いた。
首から何かを下げている。どうやらNHKの関係者らしい。
「さっそくだが、君には悪役になってもらいたい」
意味がわからなかった。悪役??
「いきなり言われてもわけわからんかもしれんが、悪役を演じて欲しいんだよ、君にね」
蔵本は黙ったままでいた。状況がいまいちつかめない。
関係者の1人がニヤニヤしながら言う。
「ほらぁ、中日の選手ってどちらかというと仲良しグループて感じじゃん。だからさぁ、殺し合いをやると言ってもなかなか実行する奴いないと思うんだよねぁ、だったら視聴者も楽しくないじゃん?」
奴らが言っていることが何となくわかった気がした。
「要するに俺にチームメイトを積極的に殺して欲しいって言ってるんだな」
「まっそんな感じ」
冗談じゃない。チームメイトを殺すなんて・・・。
「やめてもらっては困るんだよねぇ。こっちとしては。上の人たちに頼まれたことだし」
他の関係者たちがニヤニヤ笑っている。
腹が立つ。
「本当に出来ません」
「こっちが何回頼んだってそう言うと思ったよ。だからねこっち側もねいろいろ考えたんだよ」
「君さぁ、子供いるでしょ?」
・・・何言ってるんだ?
「断られたら困るからさぁ、君の家族を人質としてとらせてもらったよ」
「・・・嘘だ」
蔵本は怒りで拳が震えている。
「いやいや、本当さ。別に信じなくてもいいけどさぁ、その代わり君の大切な家族殺しちゃうよ?いいの?」
どうやら本当らしい。俺が従わなければ妻と子供は殺される。俺が従えば妻と子供は助かる。
本当に頭にくる話だ。しかし・・・
「わかりましたよ。やりますよ。その代わり妻と子供は解放してください」
妻と子供が無事でいるんならそれでいいかもしれない。
「OKね。あとこの事は口外しちゃダメだよ。盗聴器があるから丸聞こえなんだからね」
はいはい。用意周到だこと。
関係者たちの話を聞き終え、蔵本はワゴン車から出て歩いた。
「あとー、ボクたちの話は放送されないからさぁ、君は視聴者から見たら本当の悪者にしか見えないんだよー。もちろんテレビで見てるチームメイトにも。誰も同情すらしてくれないよーー」
ワゴン車の窓が開いて男が10メートルくらい離れた蔵本に言った。
悔しい、悔しすぎる!あまりにも無力な自分が。
ドームを出てしばらく歩き続けて夜になった時のことだった。
福留と荒木が現れた。
福留と荒木は歳も近いし、それなりに仲良くやっている。
しかし、荒木の声を聞いた時、あの男の声が聞こえてきた。
『君には悪役になってもらいたい』
無意識にうちにボウガンを構えていた。
そして放っていた。
はっと我に返ると目の前で荒木が倒れていた。
自分がやったのである・・・。
荒木、すまん。これも家族のためなんだ。
このときはそう思っていたかもしれない。
そして今・・・
いきなり襲ってきた柳沢を(この人はずいぶん前から発狂していたんだろう)突き飛ばし、柳沢が持っていた銃(イングラムM10サブマシンガンというらしい)を奪い、突き飛ばされている柳沢に銃口を向けた。
『君には悪役になってもらいたい』
柳沢に向けて容赦なく撃った。
柳沢の体が何回も跳ねた。そして動かなくなった。
蔵本はただ見つめているだけ。
蔵本自身は気づいていなかったが、彼はもう家族のために殺してはいなかった。
すでにこのプログラムに魅了されていたのかもしれない。
あぁ、悪役も悪くないかもな。
【残り32人】
38 蜘蛛の糸
遠藤政隆は一瞬、「それ」を巨大な蜘蛛の巣かと錯視した。
嫌味なくらい天気のいい午前中の公園に、
「それ」はあまりにも似つかわしくない存在だった。
「井端、お前…」
十重二十重に張り巡らされた凧糸と鳴子の巣の中、
井端はぎらぎらとした目を遠藤に向けたが、何も言わなかった。
「何だよ、これ。変…だろ。
かえって目立つじゃないか、こんなに糸張ってたら」
鳴子と糸を使った罠自体はごく一般的なものだ。
しかし井端が公園の一角に作り出していた「それ」は、
糸の張り過ぎでもはや罠としての役割を果たしているようには見えなかった。
実際、ここ鶴舞公園に入ったほぼその瞬間、
遠藤はこの蜘蛛の巣を見咎めたのだ。完全に周りの景色から浮き上がっている。
「なあ、井端、聞いてるのか…」
「来るな、誰も来るな。ここに来るな…」
「井端っ」
「…俺は生きたい。死にたくない。死にたくない」
「井端、お前どうしたんだよ、なぁ、未来のチームリーダーが」
「来るな、来るな、来るな、来るな…」
会話にならない…遠藤は首を振った。
井端の目はこちらを向いてはいるが、遠藤を見てはいないらしい。
狂ってしまったのだ。井端は。
遠藤は別段、井端が好きだったわけでも嫌いだったわけでもないが、
今は誰か傍に居て欲しいと思っていた。井端はかなり頼りになる部類だと思っていたのだが。
そう、見掛けほど強くないんだ、俺は。
本当は気が弱くて、誰かとつるんでいなきゃ不安で押しつぶされそうなのに。
バッグに入っていたベレッタ92Fには、恐ろしくて触れることすらしていない。
「井端、お前、その巣にいれば自分一人助かるって思ってるのか。
お前がそんな奴だなんて思わなかったよ…」
蜘蛛の糸に縋っても、自分一人助かろうと思った人間は地獄に落ちるんだぜ。
心の中で呟くと、遠藤はその場を後にした。
【残り32人】
番外編3 強風のスタジアム
「お前、外野に回れ」
そう言われたのは、まだシーズン中だった。
「キャッチャーが多すぎるんだ。それより、外野で勝機をつかめ」
その時は平野の真意が分からなかった。
だが、今は何となく分かる気がする。
吉鶴憲司は外野から力一杯のボールを投げた。
強風をものともせず、ノーバウンドでホームへ。
受け取ったのは…椎木匠。
ついこの前まで、同じポジションを争っていた相手だ。
「お互い、勝負の年ですね」
2人は同い年だが、プロ入りは椎木の方が先。吉鶴は自然と敬語を使う。
椎木は黙って頷いた。
そう…勝負の年だ…色んな意味で…
考えてみれば、ロッテはドラゴンズにとって縁の深いチームだ。
牛島、上川、平沼、桑田と落合の4対1の超大型トレードが有名だが、
宇野勝、平野謙、仁村徹といったかつてのドラゴンズの一時代を築いた選手達が
ロッテでプレイヤー人生を終えている。
そして現在も、元ドラ戦士の現役プレーヤーは4人いる。
「仁村さんは何をしているんだろう」
ウェイトトレーニングをしながら、酒井忠晴は山本保司に話し掛けた。
「気になりますね…やっぱり」
2人がロッテに来たのは96年。
樋口一紀、平沼定晴、前田幸長投手と酒井忠晴、仁村徹、山本保司との
3対3のトレードだった。
慣れない環境で頼りになったのはベテラン、仁村徹の存在。
広岡GMの元で指導者修行を行うという目的が達成されたのか分からないが、
現在の仁村はドラゴンズのヘッドコーチである。
今回のゲームにどう関わっているのか、気にかかる。
「オレ達が悩んでも仕方ないか…」
誰にいうでも無く、酒井は呟いた。悲しいが、それが現実である。
「あ、昌さん…」
ジムのテレビ画面には背番号34、山本昌の姿があった。
僕がいたから、昌さんは登録名を山本昌にしたんだったな…。
そんな事を思いながら、山本保は画面を見つめていた。
>>229 マリーンズ編、やってみました。
調べるの面白かったです。
話し方とか違ってたらスマソ。
がんがれ!元ドラ戦士!
ところで、リアル山本保は故障中なのですか?
39 砂の城
「よォ」
右手で挨拶、左手に銃。
山本昌はあまりに非現実的な姿で岩瀬の到着を待っていた。
「馬鹿だな。こんな目立つモン動かしたら、一発で誰かいるってことが分かるだろ」
「別にどうも思っていません。死ぬ前に海が見られれば、それでよかったんです」
岩瀬は山本の脇をすり抜ける。その黒く光った拳銃の恐怖をものともせずに。
「俺に殺されることが、わかっていたのか……?」
くるり、岩瀬は振り向いて言った。その手には、いつのまにか背負ったバッグの中に収められていたワルサーPPKが握られている。
「−−−ええ、昨日の夜に、港の売店でテレビを見ていましたから。小笠原を殺したのが貴方だってことも、知っています」
「ふぅん……、俺と撃ち合う気か?」
目を伏せた岩瀬は首を振る。もう少しだけ時間がほしいのだと答えた。海へ行くための時間を。
無言のまま二人の男は歩き、やがて潮の香りが近くなると、口を開いたのは岩瀬のほうからだった。
「ねえ…、山本さん、貴方……、小笠原に、言ってましたよね。エースの称号がほしいのだと」
海が見えるところへ。一歩、一歩、歩く。
「ああ、言ったさ。中継ぎのエースの名を欲しいままにしたお前にも俺の気持ちはわからないだろうな」
「俺には、貴方の気持ちが…、わかりません」
「そりゃ、分からないだろうな?俺みたいな二番手の人間のことなんてよ」
水際で足が止まる。そして山本の目を見て。
「『エース』の名前なんて、そんなにいいものですか?
所詮俺は球団の看板、そう、よく言えば毎試合のように顔を見せる看板、実際のところは体のいい使い捨てに過ぎないピッチャーだ。
来る日も来る日も、マウンドに上がるかどうかもわからないのに肩を作って、壊れてしまえば『悲劇のヒーロー』として担がれる。
全てを賭けて築き上げても所詮は一瞬で崩れ去ってしまう砂の城だ。
貴方は見てきたんでしょう?あの、今中さんが苦しんだ姿を!!」
今中。
その名前を聞いて山本は唇を噛んだ。
双璧と呼ばれながらも所詮自分は常に二番手だった。あの男がいたからだ。
「…ああ、そうだよ。俺は今中が、恨めしくて仕方がなかったんだよ。
故障から復帰できなくても、何年も過去の栄光だけで球団からはお目こぼしされる。
挙句、引退した今はこの俺を、死と隣り合わせの俺達を、画面の向こうでよそよそしく眺めているんだからな」
ふう。
岩瀬の口から、言葉にならず、溜め息が漏れた。
「−−−これを、お願いします。貴方が生きて帰ったら」
「綺麗な女性だな、彼女か?」
「結婚するつもりで、婚姻届も用意してました」
手渡されたロケットを、山本はそっとポケットに仕舞った。
「形見の品か…、俺が預かるのもおかしいがな」
「いえ、貴方にこそ、持って帰ってほしいんです。
山本さんには、家族がいるでしょう?」
ふと、頭の中に息子たちと妻の姿が浮かんだ。
血塗られた自分の姿を、恐らく画面の向こうで眺めているに違いない。
果たして、生きて帰ったとしても父と認めてくれるか。
夫として、受け入れてくれるのだろうか。
慌てて首を振った。考えたくもない。
「俺は…、山本さんが、うらやましかった。
誰よりも丈夫な身体を持って、もう…、19年ですか。
人並み以上の年月を、第一線で投げつづけた。
俺も、貴方のように家庭を持って、自分の子供に今の姿を見せておきたかった」
山本は、何も言わない。
ただ、銃口を岩瀬の胸に向けていた。
「でも…、山本さんは、俺が手に入れられなかったものを全て手にしていながら、俺が手にした『エース』の称号を欲しがっていたんですね。
本当に手に入れたいものなんて、きっといつまでたっても手に入らないのかもしれない。
貴方もいつかわかるかもしれない、でも、貴方みたいに屈強な人は、使い減りなんてしないから、俺や今中さんのことは永遠に理解できないかもしれませんね」
銃声が、一度だけ響いた。
山本は、引き金を引かなかった。
いや、引けなかったのだ、正しくは。
なぜなら、彼が引き金に力を込める以前に、岩瀬は自らPPKの銃弾を放ち、こめかみから鮮血を噴出していたからだ。
視界が真っ赤に染まった。
ゆっくりと、スローモーションで、岩瀬の身体が崩れ去る。
ゆらり。
散りゆく中継ぎエースの表情は、笑っているようだった。
そして、その姿は、水面に消えていった。
苦悶の表情を浮かべながら、どす黒い波間に漂う岩瀬の野球帽に弾丸を打ち込む。一発、二発と。
帽子が沈んでいったのを見届けると、山本は踵を返して再び歩き始めた。
そうだ、それでも欲しいのだ。左腕エースのとしての栄光が。
ポケットの中のペンダントには、岩瀬の愛した女性が微笑んでいた。
【残り31人】
>◆xYQkNOZE殿
まるで図ったかのようなタイミング!(驚
>保管人のみなさま
人物一覧の名前を増やしてしまいますた、スマソ。
>>ルーファン殿
私も書いててびくーりしますたよ。
結婚しよう(笑)
職人様方、いつも楽しく読ませてもらってます。
私は広島ファンなので紀藤がどうなるのかが一番気になってしまいます。
紀藤とトレードされた鶴田んも複雑だろうなぁ…。
井端は知的キャラだと思ってたのでチョト衝撃ですた(w
でも面白い!
書き手のみなさんがんがってください。
昌&岩瀬・・・涙が止まらないです
>>255 そんなあなたには星野編!(と、さりげなく過去の産物を宣伝)
御免よイバタン…わすがキャラクター設定固まらないうちに変なことさせたばかりに…
いつもどきどきしながら読ませていただいてます。岩瀬〜(涙
職人の皆様がんがってください。
結構移籍した選手もちらちら出て来てるので鶴田も出してもらえたら
いいなあと言ってみるテスト。
259 :
255:02/07/16 01:05 ID:UdUDxjd8
>>257 星野編読みました、ありがとうございます。
イバタンだけじゃなく皆の設定が全然違ってて、楽しかったです(w
こっちはこれからどうなるんでしょうか…。
昌さん…。
40 虚像
強い照明とセットとカメラに囲まれ、今中は嫌な汗が全身に滲むのを感じていた。
夕べからほとんど眠れず体調は最悪、おまけにまた殺し合いを見せ付けられ、
しかも…なるほど。山本は自分を殺したいと思っているらしい。
仮に山本が生き残ったところで、自分に危害が及ぶことは恐らくないだろうが…
自分が現役だった頃、後輩たちに慕われていた「昌さん」はどこへ行ってしまったのか。
優しくて、面倒見が良くて、ファンからの評判も良かった、あれは誰だったのだろう。
全ては偽りの人格だったというのか。
引退セレモニーのあの日、この手からボールを渡した瞬間も、山本は憎悪に燃えていたのだろうか。
エースの俺が憎かったって?
俺は無条件に愛されるあなたの人格を恨んでいたよ。
左腕を故障して一番に思い知ったのは、人間の冷たさだった。
エースとしてもてはやされていた頃は、擦り寄ってくる人間などいくらでもいたのに、
いざその称号を剥奪されると、皆一様に背を向けた。
…ああ、エースでなくなった俺に惹かれる人間なんて、いないんや。
そして悩みぬいた。金と名誉以外、自分には何の魅力も無かったのか、と。
そんな時、ふと後輩たちに囲まれた山本の姿を見たのだ。
…この人、後輩の中から一人くらい抜けても、他の奴の世話で忙しいからどうでもええんかな。
その時初めて、今中の中に山本への憎しみが生まれた。
もっとも引退する一年前あたりから、そんな憎しみはほとんど消えていたのだが。
けれど、山本は今も名誉欲と周りへの嫉妬にかられている。
「昌さん」はもういない。
このプログラムの狂気に消し飛ばされてしまったのだ。
後に残されたのは山本昌広、という名の人殺しが一人。
…もしかしたら。あの人はずっと、こうして爆発する日を待っていたのかもしれない。
今中は手元に用意されている麦茶を一口飲んだ。
ぬるい液体が喉を通り抜けていく。
アナウンサーがまたしきりに何か言っていたが、聞く気は無かった。
【残り31人】
261 :
141:02/07/16 16:23 ID:zaRG1ONo
更新遅くてスミマセン。。なんとか39まで昨日の夜にうpりました。
40からは夕方(?)やらせていただきます(´Д`;)
直接ゲームに参加しない(?)面子(古田や今中、1001等)は
ゲーム進行状況とは別にリストを作ってもよろしいですかね?
>書き手A様
なんか物足りないと思って見つけたのがあれでした(笑)
Dragonsってフォントだったんで丁度いいかなーっとおもって…(´Д`;)
41 信じられるもの
「6人も死んだのか・・・」
福留が作った朝食(とはいってもちゃんとしたものではなく、おかゆみたいなもの)をほおばりながら言った。
「一体誰がこんなことを・・・」
福留と荒木がいるここ北区は本部からと思われる妨害電波のせいでテレビ、ラジオ、携帯電話といったものが全く使えない状況となっていた。一般電話も通じなく、唯一の情報源といえば1日2回放送される本部からのアナウンスだけだった。
「さぁ・・わからない」
すでに殺る気になっている奴がいるのは十分わかっている。
自分にナイフを放った立浪さん、渡辺さんを殺したレオ、そして荒木を負傷させた蔵本さん。
この3人の誰かが小笠原さんらを殺したのだろうか。それとも3人のうちの1人がまとめて殺したのだろうか。それとも・・・他にもまだ殺す気になっている奴がいて、そいつが4人をころしたのだろうか。
「これからどうする?」
―――これからどうする?
福留はこの民家に着き、荒木のケガを軽く手当てした後、寝ずにずっと考えていた。
荒木の状態がよくなったら、ここから出て信用できそうな人を集めて何とかこの名古屋から脱出したい。
だが、首についているこれのせいで脱出がバレたら(何たって奴らは自分たちの居場所がわかるんだから)、首が吹っ飛ぶ。
それに信用できる人と言えば、今となってはほとんどいない。
憧れていた先輩には傷つけられ、荒木は殺されそうになった。
この先、信用して着いていった奴にいきなり後ろからドーーンってこともあるかもしれない。
福留は荒木に目をやり、荒木くらいかもしれないな信じられるのは。と思っていた。
【残り31人】
やがて 海が見える
寂しがり屋たちの 伝説さ
One night carnival fun fun・・・・・
42 希望を求めて
何重にも張り巡らされたタコ糸を、久慈は1つ1つ切っていった。
1本切るたびに木の枝で作られた鳴子がカラカラと乾いた音を立てた。
巨大な蜘蛛の巣状の砦の中心部には、先ほどまで狂気の瞳でわめいていた井端が、今はピクリとも動かずに地に倒れ伏していた。
足元に溜まっていく糸を踏みつけながら、久慈は途中で手に入れたー誰かが持っていた武器だったのだろうか、それとも一般市民の忘れ物かはわからないがーその小型ナイフで張られた糸を丁寧に切り開いていった。
久慈にとって井端はショートというポジションを奪われた相手である。
しかしそのことに悔しさは感じていなかった。
年を経ればいつかは後輩にポジションを明け渡す日がくるのだ。
井端の守備センスは久慈も認めていた。
それに井端は雑誌のインタビューに答えて久慈のことを「12球団一のショート」と言ってくれたらしい。
自分を認めてくれた者が自分を追い抜かしていくのは、悔しさよりも嬉しいとさえ思った。
だから井端を救いたかった。
久慈はようやく中心の井端のもとにたどり着いた。
体を起こして鼓動を確認する。
・・・生きている。
狂気を越えてのショック死を懸念してはいたが、どうやら気を失っているだけのようだ。
久慈は、小柄な井端より更に小柄な体で、井端を引きずり出すと近くの植え込みの中に隠すように横たえた。
そして久慈は手にしていた小型ナイフをそっと井端の手の下に置いた。
拾った時には自分の護身用にしようと思っていた。
しかし護身のためとはいえそれで誰かを傷つけるつもりはなかった。本来の支給武器である銃でも、である。
井端がいずれ目を覚ました時、狂気に堕ちたままか、それとも正気に戻っていてくれるか、それは分からないが、久慈は井端の命を繋ぎたかった。
井端が正気に戻ってくれることを望み、それに希望を託したかった。
その時に役に立つ武器を手に出来なかった井端が護身用にでも役立ててくれればいいと思った。
久慈は立ち上がり、しばらく井端の姿を見守るようにして、植え込みを出た。
再び関川と合流すべく歩き出した。
【残り31人】
265 :
264:02/07/16 19:16 ID:M6TTBTdM
新参者です。
どうしても井端をあのままにしておきたくなかったんで、書いてしまいました。
266 :
◆xYQkNOZE :02/07/16 22:01 ID:Nn4VQ6WG
後半戦幸先の良い勝利だったのでageちゃう。
>>264 お心遣いに泣けます……
井端は『今でも久慈さんが十二球団で一番のショートです』って言ってたの思い出したよ
267 :
◆xYQkNOZE :02/07/16 22:03 ID:Nn4VQ6WG
>>266 ああ本文中にがいしゅつのこと書いて書くべきこと書かずにageてしまった。
週ベの記事思い出したよって書こうとしたんだった…鬱
43 奇妙な二人
関川浩一は焦っていた。このプログラムが始まってから
ずっと歩き回っているというのに、未だに久慈が見付からない。
今朝の放送でまだ死んではいないと知り安心したが、
それでも、あれからもう数時間経つ。そろそろ昼だ。
どこにいるんだ、久慈よ。
俺たち、二人揃えばきっと生き残ることができる。
そうしたら俺は死ぬ、それでお前は帰れるんだ。頼む、それまで死なないでくれ。
今朝までで6人…自殺した者もいるらしいが、6人全員が自殺という事はないだろう。
ということは、信じたくはないが人殺しがいるのだ。チームメイトの中に。
しかし、怯えていては人探しなどできはしない。
ここは中区と千種区の境界あたりだろうか。もう千種区に入っているかもしれない。
鶴舞公園にでも行って一休みして、それからまた探そう。
そう関川が思ったその時、前方の道路上に人影が現れた。
かなり大柄だ。一目で久慈ではないとわかった。
しかし、もしかしたら目撃くらいはしているかもしれない。
ひょっとして、「あいつは俺が殺したぜ」なんて…
「関川さん!?」
考えているうち、人影もこちらを見付けたらしく、一声叫ぶと一気に駆け寄ってきた。
ずんぐりとした体躯、背番号は24。遠藤だ。
どうも敵意は無いらしい。というか、むしろ怯えているようだ。
でかいなりして、ふてぶてしい顔しといて、こいつ意外と気が弱いんだよな。
有り体に言ってしまえば「チキン」というやつだ。
契約更改でもめて、泣きながら落合に電話をしたこともあったらしいが。
「おい…無用心だな」
「関川さん、俺、俺…」
どうも少し動揺しているらしい。
「落ち着けよ。なあ、お前久慈を見かけなかったか?」
「え、いや、見てませんけど…」
「そうか。って…ついて来る気か」
歩き始めると、遠藤はちゃっかりと関川の後ろについていた。
「お願いしますよ。一人は嫌なんですよ…あの、俺の武器使っていいですから」
そう言ってバッグを差し出してくる。
「いや、別にそこまでしなくても」
「どうせ恐くて使えないんで…銃なんです」
「やれやれ…じゃあ預かっておく」
関川は遠藤からベレッタを受け取った。さすがに本物だけあって重い。
ああ、俺は今、殺し合いの中にいるんだな。何となく実感した。
自分に当たった武器がプラスチック製のフリスビーというふざけた物だったことと、
まだ死体も戦いも見ていないことなどが相まって、いまひとつ実感が無かったのだが。
「行くぞ」
何だか変な連れが出来てしまった。
【残り31人】
>>269 フリスビーワラタ
でもこのフリスビーが思わぬ展開を導いたりしたらマジ凄い。
44 新しい規則
「一日で6人、二日目開始早々に3名ですね。
で、残り31名。このペースで何日かかるんでしょうね?」
ナゴヤドーム内に設置されたバトルロワイヤル実行本部。
薄暗い部屋の中で2人の男が向かい合って座っている。
「そうですねぇ…2週間ぐらいで終わるんちゃいます?」
ニヤニヤしながら、眼鏡の男は答えた。
「今の所いい数字は取れています…ですが、ちょっと気になることがあるんですよ」
「何ですのん?」
スーツの男は手元のパソコンを操作する。
スクリーンに円グラフが表れた。
視聴者アンケート
1日目の結果に満足ですか
・充分満足 33.4%
・満足 43.5%
・やや不満 15.3%
・不満 5.2%
・無回答 2.6%
「…何や、あれで物足りんのが20パーもおるんか…ぜぇたくやなぁ」
「6人と言っても川崎は開始前の処刑、野口は自殺ですからね」
「…野口もつまらん死に方しよったなぁ…もうちっと視聴者の事を考えろや…」
「もともとが地味な男でしたから」
「それもそうやな…で、どうせぇ言いたいんや?」
「このままでは2日目以降、不安です…もっと過激になる方法を考えて頂きたいんです」
「…分かりました、ちょっと幹部会にかけてみましょ」
そう言うと古田は立ち上がった。
スーツの男はよろしくお願いします、と頭を下げた。
…やっぱ蔵本一人では力不足やったか…ったく、つまらん奴らやのぉ…
呟きながら、古田は部屋を出た。
ピンポンパンポーン
「聞こえとりますかぁ〜?古田ですぅ。皆さん、本当に仲がよろしいですなぁ。
仲よき事は美しき哉…いや〜わがヤクルトも見習いたいですわぁ」
…何事だ、一体?定期放送にはまだ時間があるはず…
筒井は訝し気にスピーカーを見た。
「せやけど、あまり仲が良すぎると数字が取れんのですわ。
もっと過激にせぇってクレームがガンガン来とるんですわぁ」
…ふざけやがって…オレ達に殺し合いをさせておいて、手前は高みの見物かよ…
右手に力が入る。
「そーこーで!です。今から新しいルールを発表します。よぉ聞いて下さいよぉ!」
声のトーンが上がる。
「今から三日、72時間以内に一人も殺せんかった情けな〜い方の中から
抽選で一名の首輪を…爆破しまぁす!」
!
筒井は森を見た。森も筒井を見ている。
「ちなみに、今までに殺しをしている人は除外するんで安心して下さい。
抽選の結果は三日後の夕方に発表するさかい、楽しみにしとってな。
ほな、きばってやぁ!じゃぁラミ、外国人向けに説明したってくれや」
「イエッサー、フルタ!」
声の主はラミレスに変わった。
「…ど、どうします?筒井さん…」
「大丈夫、72時間もあるんだ…何とかなる…」
さすがに声が震える。
…丸腰同然のオレらに何ができる…とにかく誰かを見つけないと…
誰かを見つけたとして、それでどうなる?
殺されるだけじゃないのか?オレに人が殺せるのか?
…いや、いざとなればこいつでショーゴーを…
「筒井さん?」
その声で我に帰った。いけない、何でそんな事を考えてしまったんだ。
…まさか、オレも狂い始めているのか…
「…大丈夫だ、ショーゴー。とにかく誰かと合流しよう」
「…はい…」
72時間誰も殺さなかったとしたら…爆破される確率はどれくらいなんだ?
いや、それはその時に考えればいい事だ。
「グッバーイ、アイーン!HAHAHAHA」
ラミレスの声が消えると、再び静寂が訪れた。
「…行こう…」
…だが、どこへ?
生ぬるい風が2人の間を吹き抜けて行った。
273 :
229:02/07/17 00:11 ID:+ObwZSf0
>>247-248 無茶なリクエストに応えていただいて本当にありがとうございます。
ヤス山本は相変わらずケガばっかりしてるものの、今はファームで試合に出てますよ。
一軍の内野はほぼ固定されているので、よしんば上に呼ばれても控えの可能性大ですが
何とか代打屋としてもう一花咲かせて欲しいところですね。。。
45 史上最大のスパイ大作戦
「おーーーい?いるのか?入るぞ???」
中里はその間が抜けた声の主を、精一杯の『作り笑顔』で出迎えた。
「川上先輩!!!僕達とっても怖くてずっとここに隠れてましたぁ」
その隣で朝倉が舌を出してみせたが、背中を思いきりつねられてしまった。
「ん?どうした?朝倉」
「いえ…っいタッ…あ、何でもありませんちょっとやめッ」
「朝倉さんさっき拾ったお菓子食べてお腹壊しちゃったみたいなんです」
川上はどこから持ってきたのだろうか正露丸をバッグから取り出して朝倉に飲ませた。
単純な、と言うのが失礼に当たるなら言い換えよう、川上の素直な性格のお陰でうまくこの場は切り抜けた。
いつどこでカメラに収められているのかわからないのだから、あまりことを大きくしたくない。
そう、この店の防犯カメラだってもしかしたらスタジオのモニターに直結しているのかもしれないのだ。
非常に優秀なディレクターならば、今、自分の頭の中にある計画が画面の前で堂々と実行されたとしても、『番組構成上非常に面白い』として妨害はしないだろう。
だって。
『主催者に果敢にも挑む知的な未来のエース』なんて、最高に格好いい絵が取れるじゃないか?
結果的にその主人公が生き残ろうと死のうとも。
しかし、全ての番組制作者がそうとは限らない。
制作サイドに火の粉が飛び散るのであれば、それを水面下でもみ消そうとする奴らもいる。マスコミの悪い癖だ。叩くときだけ好きなだけ叩きやがって。
「朝倉さん!コレ面白いんですよ!川上さんも、ほら見てくださいよ…」
隣のマシンのブラウザを開き、朝倉に目で合図して、自分から川上の注意をそらした。今のうちに早く指示を送ろう。
「へー…なになに」
案の定、インターネットなどやったことのない川上は、朝倉の指差す水色の画面に興味を示した。
『Welcome to Way To Win ようこそ山本昌広ホームページへ』
無茶ですよぉ〜。(>_<)
前田章宏は即座に返事を送った。
中里からの二通目のメールには、『今から寮に帰ってほしい』と書かれていた。
なんでも、館長の部屋でやってほしいことがあるのだという。誰にも見られてはならないことなので、部外者にしか出来ないのだとも言っていた。
名古屋へ帰ることに恐怖はなかった。
むしろ今、画面の前で起きている絵空事を、自分の目で直に確かめてみたいとさえ思っていた。
ただ、問題はだ。
いったいここからどうやって名古屋へ向かえというのだろう?
JRも近鉄も桑名で折返し運転とのことだ。
車の免許も持ってないし、昨日着てきたユニホームはクリーニングに出してしまった。
頼む!信頼できる後輩は章
宏しかいないんだ!川上さ
んと朝倉さんも君を頼りに
してるって言ってるよ。fr
om中里
ああ、もう。何時間かかっても知りませんよ!
太陽は出ているがまだ肌寒い。浴衣に半天を羽織ったいでたちの前田は、フロントに借りた従業員用自転車のペダルを踏み出した。
276 :
161:02/07/17 02:20 ID:KLBc6x1t
45 .リアリスト
吐いても吐いてもこみあげてくる。もう胃の中は空となり、胃液しか出ないがそれ
でも吐き気は収まらない。
既に事切れたメルヴィン・バンチ、その遺骸の横で苦しげに蹲る背番号99、井上
一樹。
名古屋は広い。絶海の孤島では無い。住宅地の星の数程ある民家、その一つに
隠れ潜めば明かりが漏れない限り発見はほぼ不可能に近い。一軒一軒探しに入
るのは現実的゛は無いからだ。名東区で適当な民家で立てこもり、最終状況に近
くなるまでとりあえず事態を静観しようとした井上だったが、保存食を調達しようと
出かけた星が丘三越でバンチと遭遇してしまったのだ。
「OH!イノウーエ!」目を輝かせて駆け寄ってくるバンチの右手に光るナイフを見
た時、彼は支給された武器であるS&W M66を使ったのだ。バンチが何を考えて
いたのかはもはや知る由も無い。ただ単に護身用に持っていただけなのかも知れ
ないが、どの道あんな体格の奴に刃物付きで近寄られる訳にはいかないのだ。い
かに甘言を弄したとしても、いつ不意を突かれるか判ったものでは無い。
やがて、銃声を聞きつけた誰かが来る可能性に思い至った彼はゆっくりと起き上が
り、その場を離れた。吐き気はまだおさまらない。
277 :
161:02/07/17 02:22 ID:KLBc6x1t
いきなり訂正(>_<)
276の一行目、45→46でおながいします。
278 :
代打名無し:02/07/17 02:23 ID:KLBc6x1t
やはり、やるしか無いのか。
チームメイトを殺して回るなど吐き気がする。が、生き残れるのはただ独りだけな
のだ。そして自分はこんなふざけたイベントでむざむざ死ぬなんて御免だ。なら
ば、よろしい。チームメイトでは無くただの標的。そう思うしか無かろう。
彼はリアリストだった。多くの選手の中でまともにやって自分が勝ち抜けると思う
ほど自惚れてはいない。とにかく隠密に行動し、不意を突いての一撃離脱、それ
しかあるまい。
ただしうかつに他の選手を狩り出して回るのは危険すぎる。こちらが奇襲を受け
る恐れがあるからだ。
慎重に、臆病すぎるほど慎重に行動しなければ。確実に殺れるチャンスだけを狙っ
て。
「この世界では臆病者だけが生き残れる。」
昔読んだエスピオナージュ小説のセリフを思い出した。やれやれ、自分がそんな
立場におかれるとは。
「さっきみたいに、殺した奴のそばにいるのは危険だな。倒したらすぐに離脱しなけ
れば。」そう独りごちた彼は、手元の銃に目を落とした。リボルバー式のそれには、
もう3発しか弾が残っていない。バンチを倒すのに半分使ってしまったのだ。これで
は不足も良いところだ。それに拳銃では近距離でしか使えない。
何か有利な武器を入手しなければ。ある可能性に思い至った彼は、慎重に周囲を
警戒しながら、北へと進みだした。
279 :
161:02/07/17 02:32 ID:KLBc6x1t
いや〜前作で自分の文章力の無さに絶望して今回はROMってようと思って
たんですが、皆さんの読んでたらついにこらえきれずに・・・(^^;
ところでカズキくんに強力な火器与えてよかとですかね??
280 :
書き手A:02/07/17 03:51 ID:A4tp91ds
>161氏
いやいや、相変わらずクールで格好いい文章じゃないですか。
基本的には誰に何を使わせちゃってもいいと思います。
せっかくのリレー形式ですから。
46 すぐそこにある狂気
『はーい、もうすぐお昼ですねー。ここ名古屋は実に清々しい天気で、えー、
午後の降水確率は0%だそうです。しかし夜頃から次第に雲が出てくると、
そういう天気予報が出ていますねー、はい。
えー、では二回目の「お知らせ」です。これより約二時間後の、午後一時半ですか、
それ以降、西区は立ち入り禁止になります。
今後一日二区ずつ立ち入り禁止になるので、あと七日でタイムアップですね。
まあその前に優勝者は決まると思いますが、時間切れの場合優勝者無しですよ。
先ほど放送した72時間ルールもありますからね、皆さんどんどん殺しあって下さいねー。以上でーす』
くそ、耳障りなヘリコプターめ。でも西区で助かったな、今のところ関係ない。
福留は息をついた。しかし、すぐについ先ほどの放送を思い出し唇を噛む。
72時間以内に誰かを…?できるものか。自分の首輪が必ず爆発するとは限らないのだし。
しかし、だ。この広い名古屋で、あと一週間でケリが付くのだろうか…
もし一週間後、二人以上の生存が確認されれば、優勝者は無し。全員死亡。
ともかく信頼できる仲間が欲しくて荒木と組んだけれども、そして今でも荒木のことは信頼しているけれども、
二人だけ生き残ったとして、その時どうする?
一瞬、ほんの一瞬だけ、恐ろしい考えが頭に浮かび、福留は己の頭をはたいた。
畜生。馬鹿なことを考えやがって。
「孝介」
居間のソファに横になっていた荒木が、まるで福留の心を見抜いたように言った。
「もし俺たち二人が最後の生き残りになったら、その時は俺を殺してくれ」
「馬鹿、何言ってんだっ!」
「俺より、お前が生き残った方がいい…お前はきっと中日の…」
耐えられず、福留は叫んでいた。
「やめろ、そんな話聴きたくない!」
「…そうか。悪かったよ」
「ともかく、今は目先のことだ。
まずはここから移動して、せめてもう少し情報の入ってくる区に行こう」
行動していなければ狂ってしまいそうだった。
誰もが、心の中に狂気の種のような物は持っているのだ、きっと。
そしてこの、逃げ場が無く、人を殺すしかないという状況は、その種にとっての水となり養分となる。
どんどんルールの締め付けがきつくなっているから、
自分の心はもっと危うくなっていくだろう。
この程度で挫けてはいられない…
【残り30人】
283 :
書き手A:02/07/17 04:56 ID:tM0tdm7H
しまった、またやらかした…
281-282は、46ではなく47になります。
すみません。
47 再出発
「おい!荒木!!」
荒木が負傷した右わき腹をおさえて倒れていた。
近くによってみると、右わき腹からの真っ赤な血が包帯の上ににじみ出ているのがわかった。
昨晩、蔵本が放った矢によってケガをした荒木だが、その後すぐに民家にある出来る限りのもので手当てをし、その時には血が再び出てくるようなことはなかったのだ。
思ってたより傷が深かったらしく、こんなちんけな手当てでは完全に傷口が塞がることはないみたいだ。
とにかく荒木を何とかしなければ。荒木の顔は真っ青である。
もっとまともな治療道具があるところへ行かなければ。
しかし、こんな状態の荒木を外へ出すのはあまりに無防備すぎる。
さっきの放送を聞いた奴が自分たちを目撃したら間違いなく荒木を狙うだろう。
そういえば・・・。
「荒木、外へ出よう」
福留はこの家の車庫に車が一台あるのを思い出した。
これだと誰にも狙われずに遠くまで行くことが出来るだろう。
さすがに名古屋の外までは出られないが・・・・。
右に荒木、左に2人のバッグをかかえて福留は車庫へ向かった。
とにかく大きな病院へ向かおう。
荒木を後部座席に寝かせて、トランクにバッグを押し込め、エンジンをかける。
さぁ、病院に向けて出発だ。
【残り 30人】
>>269 フリスビーが武器のPOPさん・・・ハァハァ
新参者ですがよろしくお願いします。
職人不毛の地(?板のタイトル画もないし)な野球板なのに職人さんイパーイ集まってきた…
読み手も書き手も雰囲気の維持に協力しあってる感じがしますね。またーりするなあ。
>161殿
アヒャ!ROMだったんですか〜戻ってきてくれてうれすぃよ
>書き手A殿
禿しく同意。先が読めなくてこそリレーの醍醐味ですよね。七日でタイムアップになるとは(汗汗汗)
286 :
284:02/07/17 12:52 ID:tPvydjNN
47は48でしたね。
スマソ
287 :
代打名無し:02/07/17 16:56 ID:PGOPLIis
age
49 目覚め
井端の顔を不意の水が襲った。
それが刺激となって、井端はようやく意識を取り戻していた。
ここはどこだ?
目を開けると、木々に遮られてはいるものの、昼の高い日差しが眩しい。
井端は再び目を閉じた。
今までのことを思い出そうとする。
頭がクラクラする。
バトルロワイヤル。チームメイトたちとの殺し合い。
悪夢のような事実をぼんやりと、そして次第にはっきりと思い出した。
あれからどれだけの時間が経ったんだ?
そして俺は何をしていたんだ?
思い出せない。ドームを離れる時に貰ったバッグには何の変哲もないゲイラカイトが入っていた。
それを確認して失望したことは覚えている。
・・・頭が痛い。
再び目を開けて、井端は首を左右に傾けた。
土の上に寝転んでいるのは分かる。木々が取り囲んでいる。
「!?」
井端の顔に再び水が掛かった。飛び起きる。まだ飛び起きるだけの体力はあるようだ。
「・・・公園?」
見覚えのある場所だ。そうだ。鶴舞公園だ。
植え込みから見える芝生の中でスプリンクラーが作動している。さっきから掛かる水はこれだったらしい。
まだすべてが理解できないままぼんやりとスプリンクラーから放たれる水の放物線を見ていた井端は、ふと手に当たる冷たく硬い感触に気付いた。
「ナイフ・・・だ」
こんなものを手に入れた覚えはない。しかし自分の手の中にそれはあった。
「誰が・・・?」
自分の得たゲイラカイトとは違う、立派な武器だ。そんなものをわざわざくれるような相手に覚えはなかった。
考えあぐねてふと近くに視線を落とすと、木の根元に木の枝で書いたような文字があった。
『生き延びろ』
馬鹿げた悪夢のようなこのゲームをどう生き延びろというのか。
しかし、その言葉は井端の心に深く深く染みた。
井端は立ち上がった。
手にした小型ナイフを見やって、それをギュッと握り締めた。
・・・行こう。
どこへ?
分からない。でも行かなければ。
進まなければ。
植え込みを抜けた井端の足元に、散乱したタコ糸の山があった。
井端はそれをジッと見下ろした。
自分がそれで何をしようとしていたのかは分からない。
しかしこれをこんな風に切った人は、きっと自分を救い出してくれたのだろうと思う。
ナイフをくれたのもその人だろう。
『生き延びろ』
心の中で言葉を反芻した。
生きよう。
そして出来るならこんな馬鹿げたゲームを終わらせなければ。
井端の目にはもう狂気のかけらも無かった。
昼の強い日差しを浴びながら、井端はまっすぐ前を向いて歩き出した。
【残り 30人】
50 思わぬ出会い
福留と荒木はやっとのことで名大病院へ着いた。
途中で車がガス欠になってしまい、そこからは歩いて向かうことになってしまったのだ。とは言っても、車が止まってしまったのは病院から100m位の所なのだが、今の荒木にとってはとても遠い距離に感じていただろう。
中へ入ると不気味なほど静かで広く、電気もついていなく廃墟のように思えた。
2人は薬品庫を目指した。
しかし、薬の知識のまったくない自分に何ができるんだろう?
家にあった救急箱のマキロンと塗り薬で何とかすることくらいが自分の出来る限りだった。
薬品庫を見つけ入ると、そこは壁一面全てが棚で埋まっていた。棚の中には何種類くらいあるのだろうと思うほどの瓶。
その瓶からだと思われるアルコールのような酢のような匂いに2人は思わず鼻を手で覆った。
とにかく消毒できるものを探さなければ。
福留は荒木を床に座らせて、棚の中を探し始めた。
何て数なんだ。
あまりの多さに消毒液一つ探すのも一苦労だ。
「おい、何やってるんだ?」
ビクッ、突然の声に福留は飛び跳ねそうになった。
誰だ?振り返るとドアの前に山北茂利が立っていた。
「山北・・・」
荒木もすっかり驚いている様子だ。
こんな所に自分たちの他に人がいるなんて。
「これはこっちのセリフだ。ここになんでいるんだ?」
俺たちを殺しにきたのか。あの放送でお前もやる気になっているのか。
福留はポケットの中で民家で見つけた携帯用のナイフを握っていた。
「俺はドームを出てから今までずっとここにいたんです。福留さんたちは?」
「・・・・・」
まぁ、荒木の状態を見れば明らかだろうが、福留はなぜか黙っていた。
「俺を信用していないのですか?俺は誰かを殺す気なんてありませんし、武器だってほら・・・」
山北は右手に持っていたアイスピックを見せた。
「だけど、信用した俺たちを背後から襲うことはできる」
「孝介!!」
荒木は福留に対し怒った。
「お前もう少し人を信用しろよ。みんなが人を殺すわけじゃないし」
荒木の言うことはもっともなことかもしれない。
疑心暗鬼になりすぎたかもしれない。
「・・・山北・・すまねぇ」
福留は素直に謝った。
確かに人に疑われるということは気分が悪いものだ。
「いや、いいんです。で、荒木さんそのケガはどうしたんですか。まさかあの時の蔵本さんの・・・?」
「山北なんで知っているんだ?」
近くから見ていたのか?あの場所には誰もいなかったはずだが。
「ここの待合室で見ていたんですよ。蔵本さんが殺そうとしたところを」
山北は棚の中を払拭しながら淡々と言った。
「テレビで見れるのか・・・」
福留たちが今までいた所は妨害電波のせいで見れなかったうえ、車内でもラジオが聞けなかった。
「えぇ、いろいろなことがありましたよ。いろいろと・・・でも今は妨害電波のせいでみれませんけど」
どうやら妨害電波の範囲が広がったらしい。
山北は棚から瓶2、3本を取り出し、引き出しから包帯を持って、2人の所へやってきた。
「山北?」
「ちょっと痛いかもしれませんが、我慢してください」
荒木のわき腹の傷口に消毒液をつける。
「・・・うっ」
消毒液がしみたらしく、荒木は思わず声を出した。
「山北、おまえ・・・」
「俺にこういう心得があったらおかしいのですか?」
ひたすら手当てしている山北が少々怒りっぽく言った。
「ごめん・・・でも何でここまでしてくれる?」
「"ケガしている人が近くにいるから助ける"じゃダメですか?」
山北は福留を見て笑った。
ははっ、コイツはいい奴かもしれない。がしかし、何かをもう悟っているようにも見える。
自分の死がすぐ近くにあることを。
「テレビで見たことを話して欲しいんだが」
「・・・いいですよ」
手当てしている山北は渋々うなずいた。
【残り 30人】
ホントは自分も活躍したいのだが、
長文の省略表示のやりかたがわかりません(泣)
どうしたらできますか?初心者板でもきいたのですがよくわかんなかった…
教えてちゃんでごめんなさい。
わーなにかいてんだろ。自分。
×活躍
○参加
51 数々の事実
山北は福留と荒木にテレビで見たことを話した。
波留が谷繁に殺されたこと、野口が自殺したこと、そして森野が立浪に殺されそうになったが、落合によって救われたこと。
「立浪さんの狙いは俺だったんですね」
山北の手当てによって状態がよくなった荒木はうつむいていた。
立浪さんは本当にセカンドが好きなんだ。人を殺してまで守りたいんだ。
「だから荒木さんは気をつけてください」
「山北、話には出てこなかったけど小笠原は誰に殺されたんだ?」
「・・・」
山北は黙っている。
「山北?」
「小笠原さんは自分の持っていた銃を奪われて殺されたんです」
「だから誰に?」
「本当に何も知らないのですね。でもそれは誰だかは言えません。そして俺はその人に狙われているんです」
一瞬の沈黙。しかしそれは随分長く感じた。
「教えてくれ、誰なんだ?」
「福留さんたちは大丈夫です。野手だから。俺は左腕だからという理由で狙われている。岩瀬さんが自害したというのもその人が絡んでいましたし」
殺されるかもしれないというのに、恐怖とかそういうものを一切感じさせないそんな話し方だった。
「そうか・・・これからどうするんだ?」
「ここから出ます。まだ妨害電波の届かない地域の方が多いですから。他のチームメイトもテレビを見ているかもしれません。福留さんたちも早くここから出たほうがいいです」
「俺たちと一緒に行かないか?」
荒木は淡々と話す山北に言った。
しかし山北は首を横に振った。
「殺されるとわかっていても俺はあの人のところへ行かなければならない。それにあの人にだったら殺されてもいいとどこかで思っている。いつも俺や投手陣をまとめてひっぱってくれたあの人が大好きだった。
いつもあの人に迷惑かけっぱなしだった。そんなあの人が俺の死を望んでいるならそれでも構わない・・・」
山北は目にいっぱい涙を浮かべながら言った。
・・・。2人は止めることができなかった。
「わかったよ・・・。がんばってこいよ」
何にがんばってこいなのかよくわからなかったが、そうとしか言えなかった。
「じゃあ、福留さんも荒木さんも無事でいてくださいね」
「山北さっきは疑って悪かった。それに荒木の傷まで・・・本当にありがとう」
山北は2人に深く礼をして薬品庫を去ろうとした。
「山北、井端さんは、井端さんはどうしてる?」
荒木がドアから出ようとした山北を呼び止めた。
荒木はずっと井端のことが気になっていた。
「井端さんですか・・・。会わないほうがいいですよ。今はどうかわかりませんけれどテレビで見た限りでは、今の井端さんとまともに話すことは難しいと思います」
「どうして?」
やたら熱心になって聞き出す荒木。
荒木はもしかしたら自分より井端さんと一緒にいたかったかもしれない。
福留は悲しいがそう思ってしまう。
「どうしても会いたいというなら鶴舞公園へ行った方がいいですよ。井端さんはそこにいると思います」
「すぐそばだ。山北本当にありがとう」
井端に会える喜びのせいか荒木はとてもハキハキしている。さっきまでとは全くの別人だ。
「では、失礼します」
山北はそう言って薬品庫から出て行った。山北の足音が遠のいていく。
「山北を狙ってる奴というのは昌さんのことかもな」
「たぶんな」
自分の目から見ても昌さんはとても人殺しをするような人には見えない。ピッチャーのみんなはとても仲良くてうらやましかった。誰からも好かれている昌さんが一体どうして・・・?
「これからどうする?」
山北の言ったとおりここから出たほうがいい。
「井端さんの所へ行く」
「井端さん!?でも今の井端の状態を聞く限りでは・・・」
まともに話すことができないらしいが・・・
「孝介に行く気が無いなら俺1人でも行く」
「・・・わかったよ、行くよ」
荒木は井端さんを慕っていた。荒木が心配するのも無理はないが・・・。
それに井端さんのことだ、きっと大丈夫だろうけど。
2人は病院を後にした。
【残り 30人】
>>292 長文省略は、勝手にスレが処理してくれるので、気にしないで書き込みください。
(長すぎます!が出たら途中でカットして何回にも分けて書き込んでください)
がんがって活躍しる!
297 :
161:02/07/17 22:43 ID:Tsjv1iYt
番外編4 祭り
■掲示板に戻る■ 1- 101- 201- 最新50
お前ら1リアルでバトロワですよ〜part31
1 :代打名無し :02/07/17 11:54 ID:RkdW/Arw
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もう31スレ目。終結までにいくつ行くんだ?
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(て__(メ゚Д゚)
\⊂ ノつ
━^━
関連スレは
>>2-20のどこか
>>900か
>>950踏んだ人、新スレよろしく
中日ドラゴンズバトルロワイアル実況掲示板
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/base/1024663656/l50 195 :代打名無し :02/07/17 21:52 ID:B9DX5NHK
なんかすごい荒れてるね・・・
196 :代打名無し :02/07/17 21:52 ID:oHkAAkxm
>195
ニュー速厨が大量に流入してるからな。
197 :反転石 :02/07/17 22:01 ID:q3F/kAPZ
田舎球団殺しあえプ
198 :代打名無し :02/07/17 21:53 ID:B9DX5NHK
邪魔の野郎よくも井本タンを・・・
298 :
161:02/07/17 23:09 ID:Tsjv1iYt
199 :代打名無し :02/07/17 21:53 ID:w3Fjvqet
漏れとしては
>>1にスレタイの事を小一時間問い詰めたいんだが・・・
200 :代打名無し :02/07/17 21:53 ID:m2av8D0r
スレタイ厨うざすぎ
201 :代打名無し :02/07/17 21:53 ID:+gOSrcJq
さっき俺んちの前を自転車乗っ物凄い勢いで通り過ぎて逝ったヤシ
ドラ1の前田に似てたんだが・・
まさか・・な。鬱
202 :代打名無し :02/07/17 21:54 ID:B9DX5NHK
俺広島ファソなんだけど、うちの本スレで今練習場に変なベンツが入って逝ったと目撃証言が。
ま、まさかうちでも(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
52 走れ
「僕の姿まで見られてる…」
国道一号線をひた走ってきた前田章宏は、自販機で買ったジュースを飲みながら中里のメールに記載されたURLを携帯電話の簡易ブラウザで開いていた。
それは、ネット世界では有名な巨大掲示板。膨大な数の匿名参加者がいるために世の中の流れが即座に反映されることで有名なそこには、ご多分に漏れずこのバトルのスレッドが乱立していた。
バトルの実況中継をするスレッド、気に入った選手を応援するスレッド、優勝者を予想するスレッド、バトル終了後の名古屋でオフ会を計画するスレッド…。
そのひとつには、彼の姿の目撃情報までが既に書き込みされていた。
いったいこの日本にいる人間の何人が、中継を見ているんだろう。
野球中継も、これくらい視聴率が取れたらな。ああ、でも全国放映なんて、巨人戦だけか。
悲しいかな、ドラゴンズは今現在、あの読売をも超え、最も世間から注目を集めている野球チームとなったのである。
死んでいった先輩達はこれで報われる?まさか!
誰もこんな風に注目されたかったわけじゃない。
生きて、野球に命を懸けるのが野球選手の使命じゃないのか。
こんなことをしても、何も変わらない。何も。
古田さん、あなたのことは尊敬していたけれど、それはプレーのときのあなたに限ることにします。
「『
>>198 IDがNHKだ!』…と」
『名無し』の書き込みでは今の自分の証にもならないけれど、前田は何かを残したかった。
僕達は、生きているんです。
生きて、野球がしたいんです。
休憩を終えた彼は再びサドルにまたがった。目の前には、『愛知県』の標識が彼の通過を待っている。
300 :
292:02/07/18 00:23 ID:10/ePyCX
>>296 どうもありがとう。がんがって活躍します(wそういうもんですか。シパーイしなきゃいいけど…。
301 :
141:02/07/18 00:36 ID:Kzu34oGg
>161様
一瞬本物のコピペと錯覚してしまいまスタ!!
反転石がいる辺りが妙にリアルだと…
∧ ∧
(て__(メ゚Д゚)
\⊂ ノつ
━^━ 前々から思ってたがこれカワイイナァ…。ヤクルツしぃも好き。笑
>292様
ガンガッテ下さい!自分もAAで何度も経験(?)した事があるから大丈夫だとオモウヨー!
302 :
161:02/07/18 00:36 ID:uiQ4nPOM
53 ボーナスステージ
井上は唖然としていた。
倉庫の中には、武器の山、また山。
整然と立てかけられた小銃の列を前に、しばし立ちすくむ。
「好きに使え、と言う事か。」
ようやくたどり着いた結論に、体中の力が抜ける。
陸上自衛隊守山駐屯地。
これから戦い抜く為に便利な道具でもないか、あわよくば退避のどさくさにどこかにし
まったまま忘れられた武器のひとつでも、と思って来たのだが、結果は予想以上だ。
武器庫の鍵は開いていた。主催者側の差し金だろう。ここの存在に思い至った者へ
の贈り物。ここにある物を使って、このイベントを盛り上げろとのメッセージ。
ご丁寧にも、すべての火器には操作教本が一冊添えられている。
印刷は・・NHK出版。
「すべてはお釈迦様の手のひらの上、だな・・・。」
とりあえず64式小銃の列からスコープ付きの物を取り、マガジンを着ける。
サイドアームに9ミリ機関拳銃。
支給されたバッグに手榴弾と予備の弾薬を放り込み、他の火器類に目をやった。
「持ち歩くには重過ぎるな。だが・・・・何かの役には立つかもしれん。」いくつかを手近
にあった台車に積むと、それを押して武器庫を離れた。
「このへんかな・・・。」
台車に積んだ重火器を近くの民家に隠すと、再び駐屯地に戻って来た井上。
肩には重火器のひとつ、カール・グスタフ対戦車無反動砲。
教本を開き、操作法を確認する。武器庫までは約300m。少し近すぎるが、これ以上
離れると障害物が多すぎる。覚悟を決めて、照準をつける。
「悪く思うな。他の奴らにここのブツを渡すのはまずいんだ。」
誰にとも無くそうつぶやく。
予想したよりも発射のショックは大きかった。飛び出した砲弾の行方を見定める暇
も無く、横にある建物の影に飛び込む。
最初の爆発に続いて・・・大地を揺るがす轟音。内部の弾薬類が誘爆した。
303 :
161:02/07/18 00:45 ID:uiQ4nPOM
>141様
非難轟々を覚悟しながらいっぺんやりたかったお遊びでしたんでそう言って
いただけると嬉しいですm(__)m
それわ受けて書いてくださった◆xYQkNOZE様にも感謝。かなり笑かせてもら
いました。
って言うか本スレにまで飛び火しちゃうし(涙)
>>303 | 僕の姿まで見られてる…
\
 ̄ ̄ ̄∨ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
ヽ从/ ____
∧_∧ ... ||\ \ ̄| ̄ |
(;‘。。’) || | ̄ ̄ | .|:[].|
┌( つ/ ̄||/  ̄ ̄/ |= |
|└ ヽ |二二二」二二二二二二二」
 ̄]|__)_) .| || | ||
/ ̄\ / . || / ||
◎ ◎..[____|| .[__||
素晴らすぃ!>161様
感激のあまり繋げてしまいました。
305 :
141:02/07/18 01:02 ID:Kzu34oGg
>161様
ほ、本当だ!w
でも見てくれてる人が多いってことで考え様によってはプラスってことにしませう(ぇ)!
それにしても反転石がリアル過ぎてマジで錯覚…
実際こういう発言してそうですよ…(´Д`;)
54 憧れの人
荒木は目に見えて落ち込んでいる。
何と言っていいかわからず、福留は痒くもないのに首筋を掻いた。
まあ、当然か。怪我しているのにあまり気落ちするのも問題だが。
つい五分ほど前、井端は確かに荒木の目を見て言ったのだ。
俺は誰とも組めない、と。
きっと迷惑をかけるから、とも。
それだけだった。荒木がどんなに引き止めようとも、井端は振り向きさえしなかった。
山北の言っていた事と関係があったのだろうが、
プログラムが始まってから今までの間に、井端に何があったのか…
「井端さん…」
「な、荒木、井端さんにも何か考えがあるんだよ」
「…孝介、俺にはわからない。井端さんは…
いや、井端さんが、俺たちに何の迷惑をかけるっていうんだ」
「知らねえよ、そんなの…ともかく井端さん本人がああ言ったんだから、
付きまとってもしょうがないじゃないか」
「井端さんは立派な人だ。真面目で頭も良くて、俺の目標だった。
なのにどうして」
荒木は俯き、ただぶつぶつと言葉を呟くばかりだった。
ここは鶴舞公園。広い公園の片隅、目立たない小さなベンチに二人は座っていた。
ここで井端を見付けたまでは良かったのだが。
「畜生…」
いつまでも独り言の止まない荒木に、次第に腹が立ってくる。
こいつ、要するに井端さんが自分の思い通りに動いてくれなきゃ嫌なのか。
「甘ったれんなよ。山北なんて、昌さんに憧れてたのに、
その昌さんに殺されに行くつもりなんだぞ」
荒木の肩がひくりと震えた。
「…俺だって立浪さんに攻撃されてショックだった。
お前は井端さんに何もされてないじゃないかよ…
「迷惑がかかるから、組めない」って言われた程度でこんなに落ち込むなんて、
お前がそんな情けない奴だとは思わなかった」
一気に言ってしまってから、言い過ぎた、と後悔したが、
間違ったことを言ったとは思わなかった。
荒木は黙っていた。黙っていたが、独り言を止めたのが答えだと福留は理解した。
「…立てるか」
ああ、と荒木が顔を上げた。
【残り30人】
55 安堵
(よかった。荒木も、福留も、まだ生きていたんだな。)
井端は歩を進めながら、ふと笑みを口元に浮かべた。
自分がどれだけの間寝ていたか分からない。その間の定期放送分でどれだけの死者を読み上げられたか分からない。
誰が死んで、そして誰が生きているのか。
これから自分がどうしていくのかを考えながら歩いていたところへ、荒木と福留が現れてくれた。
「なぜですか?!」
一緒に行動しましょう、と誘われて断った。
少し悲しげで、すがりつくような目で荒木は俺を見ていた。
でも俺は、「一緒には行けない。誰とも組めない。」と繰り返した。
「どうしてですか?」
荒木は何度も繰り返していた。
でも、断った。「きっと迷惑をかけるから。」、と。
背を向けた俺に、荒木は何度も何度も同じ言葉を繰り返した。
「どうしてですか?!」
ゲームが進めば、きっと追い詰められる。
生き延びようとするなら、苦しい選択をしなければならない時がきっと来る。
そんな時に荒木や福留と一緒にいたなら、自分も苦しいだろうが、荒木たちも苦しむだろう。
荒木たちは苦しい選択の犠牲には出来ないだろう。
それに・・・。
井端は顔を上げた。人の気配を感じた気がした。
ポケットの中のナイフをギュッと握りしめた。
(憲伸もまだ生きていてくれるだろうか?)
特に仲の良いチームメイトの安否を胸の中で心配しながら、井端は表情を引き締めて周りに鋭く視線を巡らせた。
(・・・・・・・・・・)
気配がしたと思ったのは、錯覚だったのだろうか、誰も現れはしなかった。
井端は短く息を吐いた。そして再び歩き出した。
そんな井端を、物陰から久慈が見ていた。
(正気に返ってくれたんだな・・・。)
歩き疲れた体を休めていたところに井端が歩いてくるのが見えた。
表情と雰囲気から、井端がもう狂気を帯びていないことを確信した。
(よかった・・・。)
【残り30人】
308 :
代打名無し:02/07/18 07:28 ID:aZPz+k6x
age
309 :
代打名無し:02/07/18 08:40 ID:gsI6nWMa
よほどの中日ヲタクにしかわからないキャストでよくがんばった
感動した
井端完全復活おめ!
山北と昌はどうなるんだろう…楽しみにしてます<職人様方
あと、重箱の隅をつつくような指摘で申し訳ないのですが、番外編4、日付が全部昨日にしてありますよね。
オープン戦終了後開幕前って時間設定の筈なのでちょっと気になりました。
>>310 2002/3/24-25が適当かと思われ>161氏
職人様方、乙です。
毎日すごい勢いで進んでるので、携帯からチェックする身には、嬉しい反面ちょっと大変だったり。
でもすごく楽しみにしてるので、頑張ってください!
職人様方いつもありがとう!
毎日読むのが楽しくてしょうがないです!
314 :
161:02/07/18 20:46 ID:eUQdpaj0
ぐはっ!しまった日付と時間まで気がまわりませんでした(^^;
回線切って以下略。差し替えお願いします。
************************************************************
番外編4 祭り
■掲示板に戻る■ 1- 101- 201- 最新50
お前ら1リアルでバトロワですよ〜part31
1 :代打名無し :02/07/17 11:54 ID:RkdW/Arw
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もう31スレ目。終結までにいくつ行くんだ?
\____________________
|/
∧ ∧
(て__(メ゚Д゚)
\⊂ ノつ
━^━
関連スレは
>>2-20のどこか
>>900か
>>950踏んだ人、新スレよろしく
中日ドラゴンズバトルロワイアル実況掲示板
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/base/1024663656/l50 195 :代打名無し :02/03/25 02:52 ID:B9DX5NHK
なんかすごい荒れてるね・・・
196 :代打名無し :02/03/25 02:53 ID:oHkAAkxm
>195
ニュー速厨が大量に流入してるからな。
197 :反転石 :02/03/25 03:01 ID:q3F/kAPZ
田舎球団殺しあえプ
198 :代打名無し :02/03/25 03:53 ID:B9DX5NHK
邪魔の野郎よくも井本タンを・・・
199 :代打名無し :02/03/25 06:53 ID:w3Fjvqet
漏れとしては
>>1にスレタイの事を小一時間問い詰めたいんだが・・・
200 :代打名無し :02/03/25 07:25 ID:m2av8D0r
スレタイ厨うざすぎ
201 :代打名無し :02/03/25 08:03 ID:+gOSrcJq
さっき俺んちの前を自転車乗っ物凄い勢いで通り過ぎて逝ったヤシ
ドラ1の前田に似てたんだが・・
まさか・・な。鬱
202 :代打名無し :02/03/25 09:48 ID:B9DX5NHK
俺広島ファソなんだけど、うちの本スレで今練習場に変なベンツが入って逝ったと目撃証言が。
ま、まさかうちでも(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
315 :
161:02/07/18 20:55 ID:eUQdpaj0
と思ったら一箇所訂正し忘れ。スレ汚しスマソ
ついでに時間も祭りっぽくこんな時間にって感じに訂正ニダ。
************************************************************
番外編4 祭り
■掲示板に戻る■ 1- 101- 201- 最新50
お前ら1リアルでバトロワですよ〜part31
1 :代打名無し :02/03/25 08:54 ID:RkdW/Arw
/ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
| もう31スレ目。終結までにいくつ行くんだ?
\____________________
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∧ ∧
(て__(メ゚Д゚)
\⊂ ノつ
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関連スレは
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>>950踏んだ人、新スレよろしく
中日ドラゴンズバトルロワイアル実況掲示板
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/base/1024663656/l50 195 :代打名無し :02/03/25 09:42 ID:B9DX5NHK
なんかすごい荒れてるね・・・
196 :代打名無し :02/03/25 09:44 ID:oHkAAkxm
>195
ニュー速厨が大量に流入してるからな。
197 :反転石 :02/03/25 09:47 ID:q3F/kAPZ
田舎球団殺しあえプ
198 :代打名無し :02/03/25 09:49 ID:B9DX5NHK
邪魔の野郎よくも井本タンを・・・
199 :代打名無し :02/03/25 09:53 ID:w3Fjvqet
漏れとしては
>>1にスレタイの事を小一時間問い詰めたいんだが・・・
200 :代打名無し :02/03/25 09:54 ID:m2av8D0r
スレタイ厨うざすぎ
201 :代打名無し :02/03/25 10:03 ID:+gOSrcJq
さっき俺んちの前を自転車乗っ物凄い勢いで通り過ぎて逝ったヤシ
ドラ1の前田に似てたんだが・・
まさか・・な。鬱
202 :代打名無し :02/03/25 09:48 ID:B9DX5NHK
俺広島ファソなんだけど、うちの本スレで今練習場に変なベンツが入って逝ったと目撃証言が。
ま、まさかうちでも(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル
316 :
161:02/07/19 02:27 ID:LJzdzHrG
番外編5 遠い所
「何か用ですか?練習があるんで・・」
鶴田はそっけなく背を向けた。
昨夜は、眠れなかった。
何かを振り払うように、早朝から練習場に来て汗を流していた。
俺は広島カープの人間だ。よそのチームがどうなろうと知った
事では無い。そのはずだ。
そう自分に言い聞かせ、乱れる心を押し潰してただ練習に没頭
していた所に、彼が現れたのだ。
「ああもちろん---阪神の監督としちゃこんなところにいてはま
ずいんだが」星野は苦笑いしながら続けた。「ちょっと顔見とき
たくてな。」
怪訝な表情で振り返る鶴田。いったいどう言う風の吹き回しだ?
ふと、星野が縦縞では無く見慣れたドラゴンズのユニフォーム
を着ている事に気がついた。違和感が無かったせいで、気付く
のが遅れたのだ。
---あれから何年になるのだろう。なんだかずいぶん遠い所に
来てしまったような気がする。
「よろしく、頼む。」
星野はただそれだけを言い残し、駐車場のメルセデスに戻っ
て行った。意味がわからず呆然とする鶴田を残して。
317 :
161:02/07/19 02:29 ID:LJzdzHrG
今日はトーナメントに夢中ですた。とりあえずリクのあった
鶴田編のみうp。
318 :
書き手A:02/07/19 14:12 ID:bE6QimfQ
>161氏
差し替えありがとです。
トーナメント?2ch板対抗トーナメント?(違)
>書き手A氏
おもろい。頂きますた。
「もうだめぽ」スレが見たい…アハン
きっとニュー速板にオフ板にネット事件(?)にと飛び火してるんだろうなあ。祭りだ。
320 :
書き手A:02/07/19 17:44 ID:kD76RK9M
321 :
書き手A:02/07/19 18:13 ID:2LFJrrCW
>書き手Aサマ
すごーい! 見てみたいスレばっかりですよ
本文も期待してます
>書き手Aさん
野球板スレの中に、[正気に戻った井端を応援するスレ3]が!!!(感激)
井端を強引に正気に戻した自分としては嬉しい限りです〜。
でもこれからイバタンどうしましょう(焦
戻した手前、展開にビクビクです・・・
>書き手Aタン
>>321の画像が404です。
是非とも再うpしてください。おながいすます。
325 :
書き手A:02/07/20 02:53 ID:ymjRWYNw
326 :
代打名無し:02/07/20 07:08 ID:WOaymtJC
age
327 :
324:02/07/20 11:41 ID:rfQo3Vje
ありがdでした!
328 :
代打名無し:02/07/20 15:58 ID:+KvZY4SE
あぁ、続きが気になる・・・
職人さん方、期待してます。
329 :
161:02/07/21 00:30 ID:Ujg6Fjqf
>>325 すげっ!わらかしていただきました。
せっかくですから「番外編6」として・・・いかがですか?
>>319 うい。それです。巡回先が序盤でほぼ全滅したのですが一箇所だけ
活動してる板があったんで雑魚として支援すてますた。
終わったはずなのに今夜も突発的な祭りやってて目が離せません(笑)
56 予告された死
神野純一は随分長い間空を眺めていたが、ふと目の疲れを覚えて寝返りをうった。
芝生がちくちくと頬に当たるのがむず痒い。
先ほどまで両足が信じられないほど痛んでいたのたが、
だんだん意識が薄れてきたお陰か、今はそれもあまり感じなくなっていた。
ここ庄内緑地は、じきに立ち入り禁止となる西区の中に位置している。
留まるのは自殺行為だ、そんな事は解っていた。
でも、だからどうしろっていうんだ?神野は自嘲した。
二本の足の折れてしまった今となっては、この広大な緑地の外に出ることさえ叶わない。
ただゆっくりと迫る死を待つのみだ。
それにしてもどうだろう。この緑の美しさ、空の青さよ。春の野は平和そのものだ。
どうして人間は殺し合いなどするのか、全く馬鹿馬鹿しくなってくる。
そう、けれども、全ては自業自得なのだ。
ヘリコプターによる放送の直前頃、
自分はここで鈴木郁洋を見付け、攻撃したのだから。
こちらの武器はコルトパイソン357マグナム。
完全な不意打ちで、銃弾は間違いなく鈴木の背中を抉るはずだった。
…鈴木が防弾チョッキを身に着けてさえいなければ。
そして神野の足はへし折られた。追ってこられないようにと。
勿論、銃はバッグごと持ち去られ、もうここには無い。
それから五分も経たぬ内に、西区が立ち入り禁止になるとの予告があったのだ。
そろそろ二時間経つ頃だろう。
ああ、生きて帰りたかった。
家には妻と、幼い三つ子が待っている。せめてもう一度抱きしめたかったのに。
悲しいほど美しい景色の中、神野は自分の首輪が発する電子音を聞いた。最後通牒だ。
「ごめんな」
画面の向こうにいるであろう家族たちに、神野は囁いた。
この緑地を血で汚してしまうのは残念だが、自分はここまでらしい。
【残り29人】
331 :
書き手A:02/07/21 01:22 ID:4mKbTekN
>161氏
◆xYQkNOZE氏が「番外編4」の挿絵(?)として
保管サイトに置いて下さっているので、
「番外編6」のタイトルはまた別の文章に譲ることにします。
板対抗トーナメント、ここはびっくりするくらい盛り上がってなかったですね。
みんなペナントの方が大切か(笑)。
投票じゃなくてラウンジの某企画にかまけてますた。
>161氏&書き手A氏
よその板の支援FLASHがうらやましかったよ
でも野球板住人にはチームを超えて板としての団結力はないみたいなので(板のタイトルロゴもないし)仕方ないのかも。
私も投票してないけど(鬱)
333 :
代打名無し:02/07/21 12:04 ID:Ykvvcy6G
57 合流
久慈は大きく伸びをした。
名古屋の広さを実感する。歩いても歩いても関川には会えない。
(他にいそうな場所は・・・)
誰かいるだろうと思って鶴舞公園にも行ってみた。
そこで見つけたのは狂いかけの井端。その井端をなんとか救い出して、久慈はまたこうして関川を探して歩き出した。
久慈は知らなかった。
自分のいるその場所から公園をほんの半周もしないところに関川が遠藤とともにいることを。
(栄にでも行ってみるかなぁ・・・)
当てがないのだから人が来そうなところを探すしかない。
もちろんそれは既に殺人鬼に化しているチームメイトに出くわす危険もあるのだが。
そんな久慈の目の前に突然飛び出してきたものがあった。
「セキさん!? ・・・蔵本か・・・」
痩身・髭面が関川に重なる蔵本が目の前に立っていた。
蔵本の手には柳沢から奪ったサブマシンガンがあった。
その銃口が静かに自分に向けられて、久慈はゆっくりと息を吐いた。
自分の武器・デリンジャーはバッグの底にしまったままだ。
すぐに出せれば威嚇にくらいは使えたかもしれない。
でもどちらにしろ蔵本のマシンガンの前には、逃げるすべはない。
蔵本は何も言わずに銃口を向けている。殺す気なのだ。
命乞いなど何にもならないだろう。
関川に会えずに死ぬのは心残りだが、仕方がない。
久慈はもう一度深く息を吐いて目を閉じた。
(マシンガンで蜂の巣なら、苦しまずに死ねるかな)
久慈はそんなことを思っていた。
「ぐあっ・・・!」
叫び声をあげたのは蔵本の方だった。
久慈は目を開けた。蔵本が顔を抑えて足元に転がっていた。
その傍にまだ揺れながら落ちているのは、フリスビー。
334 :
代打名無し:02/07/21 12:05 ID:Ykvvcy6G
「テル!」
「セキさん!!!」
久慈は振り返った目に関川の姿を認めて、嬉しそうに顔をゆがめた。
関川は遠藤に荷物を預けて久慈に駆け寄った。
倒れている蔵本に遠藤から預かった銃を向けて威嚇しながら関川は久慈の肩に手を置いた。
「よかった。探してたんだぞ」
「そりゃこっちもですよ。セキさんが暴走してないか心配で」
言葉を交わし、笑みを浮かべた2人の足元で蔵本が体を反転させた。
「あっ」
足を掴まれて久慈はビクッと体を震わせた。
瞬間、関川は引き金にかけていた指に力を込めた。
「ヒィ・・・ッ」
蔵本の手が久慈から離れた。その腕の付け根に血がほとばしっていた。
「た・・・助けてくれ。俺は、俺はただあいつらに言われて。俺だって・・・」
ピピピピピ・・・
蔵本の首輪が警告音をたて始めた。
あの脅しを口にしかけた蔵本の口封じにあいつらが装置を作動させ始めたのだ。
関川はとっさに久慈の腕をひいて離れた。
背後で軽い爆発音がした。
【残り28人】
フリスビーで久慈を助ける関さんかっこいい(w
58 光芒
さてと、この辺りか。
山北は道路脇に自動車を停め、辺りの様子を窺いながら外に出た。
どうやら周囲は無人だ。車内で折り畳んでいた体を思い切り伸ばす。
全くこういう時はひょろ長い手足が恨めしい。
名大病院からこの港区と熱田区の境目辺りまで移動するのに、
山北は福留達が乗ってきた自動車を使っていた。
目立つのは解っていたが、ともかく山本が誰かに殺されてしまう前に会わなければと、
それだけずっと思ってここまで来たのだ。
もう車は必要ない。
二時間前に山本がガーデン埠頭にいたことを考えると、
真っ直ぐ歩いていればこんな辺りか、もう少し北か。
まあ、何しろ山本は携帯テレビを持っているのだ。
恐らく自分が車で移動している姿も見ていただろうから、向こうから来てくれるだろう。
「山北」
そう、こんな具合に。山北は声のした方に顔を向けた。
道路の向こう側、丁度山北の死角になっていた建物の陰から山本が姿を現す。
左手に握り締めているのは、長身に似合わぬ小さなリボルバー。
予備が無いのなら、弾はあと二発のはずだ。
「…山本さん」
自分の口元が笑っている。
嬉しいわけではない。楽しいわけでもないのに。
「動くな」
「わかってますよ」
辺りを見回しながら、ゆっくりと山本が道路を横断する。
その様子が、まるで自動車が来ないかどうか窺いながら道路を渡る子供の様でおかしかった。
「何がおかしい」
「いいえ、何も」
あなたの姿ですよ、と言うのを堪えるとまた口元が緩む。
道路を渡りきった山本が露骨に顔を顰めた。
「死ぬのが恐くないのか…」
言いながら間近で見上げてくるその顔は、明らかに疲弊していた。
「恐いですけど」
胸に銃口が押しつけられる。
「そうは見えないな」
「知ってるんでしょう。あなたにだったら殺されてもいい」
口説き文句のような気障な台詞が、するりと喉を通って出てきた。
自分の馬鹿さ加減に呆れる。同時に、わけも解らず涙が溢れた。
「俺はお前が思ってるほど立派な人間じゃない。
この期に及んでもそれが解らないのか。俺は人殺しだ」
「…俺はただ、山本さんの手助けがしたいだけです。
左腕を全員殺すのがあなたの目的なら…それに殉じますよ。
山本さんは、いい人だから」
沢村賞、最多勝、最多奪三振、最優秀防御率…あらゆるタイトルをその手にしてきた山本。
それなのに全く傲らず、自分にも笑顔で接してくれるのが嬉しかった。
「いい人?違う…俺は…」
「喩え山本さんの優しさが全部ニセモノだったのだとしても、俺は嬉しかったんです。
今でも、山本さんを尊敬してます」
涙が顎を伝い、乾いたアスファルトの上に落ちた。
「お前は馬鹿な奴だ」
「ええ」
山本が銃を握り直す気配がした。いよいよらしい。流石に鼓動が早くなってきた。くらくらする。
「最後に教えて下さい、山本さん。
俺が右腕か野手だったら…嫌いにならないでいてくれましたか」
山本は小笠原に言っていた。お前が左腕でなければ嫌いじゃなかった、と。
「ああ」
「…良かった」
激しい衝撃が、胸のみならず全身に走った。
山北にとって山本は目標とすべき星だった。
その輝きが永遠に失われないことを、四散していく意識の中で願う。
俺の死があの星の、ほんの一片にでもなれればいい。ほんの一輝きにでもなれればいい。
【残り27人】
すんません、
>>292ですが、自分もかかせてもらっていいですか?長文になりそうなのですが。
59 悪夢の果てに
足元にうずくまる波留−。谷繁は冷ややかにそれを見つめていた。
首から、胸から大量の血を流し、苦しみもだえる彼の哀れな姿に、谷繁は恍惚の笑みを浮かべる。
苦しめ。お前みたいなお調子もんなだけの役立たずは、生きてる価値なんかねぇんだよ。
足元の波留は、小さくなり、がたがたと両肩を震わせていた。
−へぇ、人間確実に死ぬとわかってる時でも、まだ死にたくないなんて思うもんなんだな。
どれ、命乞いのひとつでもきいてやるか。
谷繁は、薄笑いを浮かべ、波留の顔をのぞきこんだ。
が、次の瞬間谷繁の勝ち誇った顔は、驚愕の表情へ変わった。
波留の顔は、笑っていた。
波留は、俯いた姿勢のまま、ぎょろりとした瞳だけを、谷繁に向け、口を開いた。
「あいかわらずやの、シゲ。そやって自分の気にいらんもんを全部蹴散らしてきたん…?」
なっ、なんだこいつ、息もたえだえだったはずなのに…。
おののく谷繁をよそに、波留は言葉を続けた。
「お前はいつだって自分本位やったなあ。4年前、日本一になると、アホなマスコミは、ホイホイお前を褒めそやした。単純なお前はどんどん勘違いしていった。」
「何がいいたいんだよ…」
波留は血に赤くそまった歯を見せてニッ、と笑うと、再び話し始めた。
「だけど、監督が代わると、怖いもん知らずのお前もさすがに壁にぶつかった。
減点方式の森は、投手が打たれると、必ずお前に責任を追求した。」
言葉も発する事も叶わなかったはずの波留の口調が、どんどん強くなってくる。
谷繁の心の闇を、すべて晒してやるかのように。
「自信家のお前は、それが気にいらんかった。
思うようにならん投手連中を、次々どなりつけ、当たり散らし、萎縮させていった」
「うるさい!!」
谷繁は、波留の額を蹴り付けていた。波留の小柄な体はふっとび、地面に叩きつけられた。
しかし、波留は、小さく笑い声をたてただけで、まったくこたえていないようだ。
ゆっくり体を起こすと、谷繁に向かって一歩、二歩歩みよってきた。
歩くたびに、傷口から鮮血をどくどくと垂れ流しつつ−
嘲りに満ちた暗い瞳をこちらに向け、波留は言葉を重ねた。
「そうこうしとるうちに、投手たちの心はお前から離れていった。
FA移籍でお前が出てく時、俺はてっきり誰かが引き留めるやろと思うたわ。
けど、だーれもおらんかったなあ。
さみしい男やのう、シゲ!
中村さんなんか、出てく時にみんな泣きよったで。行かないで〜ってな。えらい違いやなあ。同情するわ」
中村−その名前に谷繁は思わず反応した。
大して打てもせず、リードもセオリー通りというだけ。
丈夫な体と、根性だけがとりえの、地味なあの男が、なぜあんなに投手の心をつかんでいるのだろう。
どう考えても、投手自身の力で勝ったような試合でも、野口をはじめ中日投手陣はこう繰り返す。
「中村さんの、お陰です」
気にいらなかった。
あんなたいしたことのないやつが、なんで−
「なぁ、シゲ」
波留の声に、谷繁ははっと我にかえった。
いつの間にか波留の血だらけの腕は、谷繁の肩に絡みついていた。
「投手の信頼無くしたキャッチャーなんか、ただのお荷物やで。だからこそフロントも、チームメイトも、お前んこと引きとめんかったんや」
そして、谷繁の耳もとでねっとりと囁いた。
「なんもできんのは、お前かて、一緒や」
「離せーッ!!」
波留の腕をふりほどこうとし、谷繁はハッと目をさました。
高速道路下の、ホームレスが置いていったテントの中。
谷繁はここで仮眠をとっていた。
こんな夢みるなんて、俺もどうかしてるぜ。
俺はいつだって正しい。俺には才能がある。
そう自負があるからこそ、長年正捕手をつとめた中村がチームをでた時も、彼は強気だった。
中日の投手が自己主張しないのは、中村の甘やかしによるものだと、記者相手にあからさまに強調してもみせた。
結局自分が優位にたつには、相手が攻撃してくる前に、自分から相手を叩くしかない。
殺られる前に殺る。これがプロなんだ。
夢の中での波留の言葉を振り払うかのように、谷繁は波留から奪ったサバイバルナイフを握りしめた−。
【残り27人】
すんません。292でした。名前入れ忘れスマソ。
344 :
書き手A:02/07/21 16:22 ID:IndEVtzE
アアン、ドメ達が使った自動車はガス欠になってましたね。
337の二行目の「自動車」は「救急車」に、
六行目を「山北は病院に放置されていた救急車を使っていた。」
に訂正です。
>書き手さん方
現実逃避に楽しく読ませてもらってます(泣)。
これがあるから少し救われてるかもしれない…
ここならいい奴も悪い奴もへたれも皆それなりにカッコいいし。
346 :
代打名無し:02/07/21 22:13 ID:tjcbSGyd
巨人に3連敗・・・(鬱
>>345さんと同じく、ここで選手の頑張りを見たいと思います・・・
347 :
中日ファソ:02/07/21 22:16 ID:0U2tQCld
正確には6連敗くらいじゃねーか?
中日は巨人優勝のA級戦犯
いや、7連敗。こりゃだめだ。
ドラは筆頭だが、巨人に負け越してる全てのチームが戦犯
350 :
代打名無し:02/07/21 23:09 ID:tjcbSGyd
>>348 そうだね。巨人には7連敗か・・・
せっかくいい感じで後半スタートしたと思ったのに意味ない。
人が試験勉強放棄してまで見てたのに何だよ〜!
60 リモートコントローラー
時刻は午後四時を回ろうとしていた。
15分間のニュースを放送している今の時間は本来ならば休憩になるところであったが、スタジオにはにわかに慌しい空気が流れていた。
何が起きようと知ったことか。
今中は極力平静を保とうとしていたが、歩み寄ってくるディレクターを避けるわけにもいかず、仕方なく耳を貸した。
「何者かが首輪のタイマーを停止したらしいんです」
男は告げた。指差された方向を見ると、確かにスタジオの壁に設置された二つのカウンタ…『全員の首輪爆破まであとXX:XX:XX』『無作為爆破まであとXX:XX:XX』の表示は『99:99:99』に切り替わっていた。
本部には厳重な警戒態勢を敷いている。しかし外部からメインサーバのデータへ不正アクセスが行われたらしく、現在制御不可能な状態となっているそうだ。
「まったく酷い損害ですよ…視聴者からの苦情の電話は鳴りっぱなしですし、復旧作業には丸一日かかると見ています」
それだけ言うと男は去った。ニュースの時間が終わったので、カメラはスタジオに切り替わる。
司会者は視聴者へのお詫びを告げ、現在状況を説明し始めた。
今中は興味なざげな顔をいまだ保っていたが、テーブルの下で両手を組んで祈った。
どうか少しでも生き長らえてほしいと。
「えーー皆さん、システムエラーによって首輪のタイマーが止まってまーす。
残念ながら当分の間は爆発しませーん。一人も殺せなかった人にも少々余裕ができましたー。
明日には復旧しますので、せいぜいチャンスだと思って引き続き頑張るようにー」
NHKのヘリが去ると、中里は小さくガッツポーズを決めた。
前田が昇竜館に到着すると、中里は即座に指示を送り、村田館長の部屋に鎮座するサーバの設定を変更させ、外部からのtelnetアクセスを可能にした。
昇竜館サーバ経由で本部サーバに接続すると、手探りではあったがまず手始めに首輪の制御装置を停止し、先のアナウンスに至ったのである。
もちろん、接続成功と同時にrootのパスワードを変更してしまうあたり用意周到である。
朝倉と川上はもはや出る幕なしで、ネットサーフにも飽きてしまった様子だ。
しかしそんな二人に構っている余裕はない。中里はディレクトリ構成をひとつひとつ調べていた。
しかし。
『サーバから切断されました』
思いも寄らないメッセージに、中里は表情を凍らせた。
61 父子鷹
−−−どうした?フリーズしたか?
停電です(>_<)いきなり落ちちゃいましたよ〜!!
騒がしい日常とはうって変わって物音ひとつしない寮の館長室で孤軍奮闘していた前田は肩を落とした。自分が現在生き残っている選手たちの生命を左右しているという事実に疲労はかなりのものだった。
−−−仕方ない。復帰したら連絡してくれ
中里からの連絡はそれで途絶えた。重圧からようやく解放されたことで、前田はそのままマシンの前で横になった。窓から西日が差し込んでいる。
前田に全く過失はない。しかし彼の性格から、何も出来なくなってしまったことに罪悪感を感じざるを得なかった。
ギシッ。
何かがきしむ音が、耳に入った。
飛び起きる。
誰か、いる。確実に。
辺りを見回した。目に入ったのは、消火器。
安全ピンを外して構える。
ギシッ。ギシッ。ギシッ。
鼓動が早くなる。
大丈夫、大丈夫、選手は皆、仲間なんだ。
大丈夫………
ガラッ。
「うわーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
ドアが開くと同時に、前田はレバーを引いた。
一面、真っ白になる。
もくもくと立ち上る粉末が落ち着いたとき、そこに姿を現したのは、頭から粉をかぶった、真っ白な紀藤の姿であった。
「………あ、おとうさん!」
「ぶほ、なんだ、章宏か。ぶほ!ぶほっ…お前の部屋で昼寝させてもらってたぞ。あーあ、こんなにしちゃって」
安堵によって脱力した前田は床に膝を付いた。表情は、笑っていた。目の前でむせている『父親』も、笑っていた。
61 最後の標的
小笠原を殺した。井本は山崎に殺された。
野口は自殺した。岩瀬も。そしてつい数時間前、山北を殺した。
もう、この中日に残った左腕投手は俺だけだ。
食料を求めて侵入した中京病院、その旧病棟の屋上で、
山本は薄暗くなっていく空を眺めていた。
西の空に濃い雲が固まっている。
明日は悪天候になりそうだ。
手にした拳銃には、あと一つだけ銃弾が残っている。
見てるんだろう?今中。
気付いてるんだろう?今中。
「殺してやる」
右手に持った携帯テレビの画面に向かって、呟く。
スタジオの今中は表情を変えない。
画面が切り替わり、古い建物の屋上に建つ自分の姿が映し出された。
近くの建物にカメラが仕掛けられているらしい。
もしかしたら新病棟のどこかかも知れないが、どうでも良かった。
「ここに来い。誰を連れてきてもいい」
お前が憎い。何の努力もせずエースの称号を得たお前が憎い。
俺の最後の標的はお前だ。
お前を殺したら、もう死んでもいい。
これは賭けだ…今中は来ないかも知れない。いや、まず来ないだろう。
或いは、今中が来たと見せかけ、機関銃あたりを持ったスタッフに
蜂の巣にされるということも考えられる。
しかし、もう後には退けない。退くわけにはいかない。
可愛い後輩たちの骸の上に、俺は立っているのだ。
【残り27人】
355 :
書き手A:02/07/21 23:48 ID:Xx2WwZbt
番号ケコーンしてしまった。
354は「62」でお願いします。
スーパーハカー中里タン(・∀・)イイ!
62 ある思い
鶴舞公園を後にし、福留と荒木は線路沿いを南下していた。
「なぁ、俺たちは最後まで生き残れると思うか」
荒木がしばしの沈黙を破り言った。
井端に一緒に行けないと言われた時はショックで荒れて、その後は福留の問いかけに対しても答えることはなかったのだ。
福留はあきらめ2人は黙ったまま移動していたのであった。
「どうだろうな」
福留は足を止め、続けた。
「でも俺はチームメイトを殺すなんて無理だ。チームメイトを殺してまで優勝したいなんて思わないよ」
「どんな状況でも殺すのは無理ってわけか」
荒木は何とか元気になったらしい。
「じゃあ、お前は最後に自分と井端さんが残ったとしたら井端さんを殺せるのか?」
「それは・・・」
荒木は言葉が出なかった。
「無理だろ?俺だって最後にお前や立浪さんと残って決着をつけろと言われても無理だ。だからといって、山北みたいにこの人に殺されてもいいなんて思わない。
「じゃあどうするんだよ?」
バッグを椅子代わりにして座ってる福留は真っ直ぐ前を向き言った。
「この名古屋から脱出しようと思うんだ」
荒木は驚いた顔をして福留を見た。
「できるのか?」
「さぁ・・・」
「『さぁ』って・・・。だって俺たちこれのせいで逃げも隠れも出来ないんだぞ」
荒木はこれ・・・首輪を指差した。福留の首にも巻かれているこの首輪。
「それにドームにだって近づけないうえに名古屋の外に出ることも出来ない」
「でもこの首輪さえ何とかすれば・・・」
「何とかって?この首輪のロックを解除するってことか?機械関係に全く無知な俺たちがこの首輪を変にいじってみろ?俺たちの命は一瞬にしてなくなる」
荒木は少しいらついていた。
「なぁ孝介、出来もしないことそう簡単に言うなよ。脱出するっていうからには何か方法があるのかと思ってたのによ」
「ごめん・・・でも荒木、俺は本当に脱出したいんだ。誰も殺すことなくみんなで。きっと方法はあるはずだから・・・」
福留はうつむきながら言う。
荒木はふぅーとため息をつき、自分のバッグを福留が椅子代わりにしているバッグの隣に置き、自分も座った。
「わかったよ。俺も手伝うよ。その方法を探すのを」
このゲームから逃げる方法はきっとあるはず。このプログラムには大きな穴があるはず。そして今は結論の出ない話だけれどもいつか出ると信じたい。
「山田監督はどうしたのだろう・・・」
荒木はふと思い出したように言う。
そういえば・・・山北の話ではゲームに参加していない他のチームメイトは三重県へ移動したという。でも監督や佐々木コーチの話は出てこなかった。
どこにいるのだろうか。
ドームの中からこの殺し合いゲームを見ているのだろうか。
【残り27人】
63 最悪の出会い
「なんだって!?」
福留と荒木は本部からのアナウンスを聞いてほぼ同時に立ち上がった。
「俺たち脱出できるんじゃないのか?」
荒木は興奮気味に言う。
「でも1日たったら復旧するんだぞ?俺たちが名古屋の外へ出たってバレたらそこで終わりだぞ?」
「それまでにこの首輪を壊せばいいんだよ。」
確かに。今だったらこの首輪を壊したって自分たちに何の危害もない。
「みんなを集めよう」
福留は肩にバッグをかけ、行く準備をしている。
「みんなだって別々に逃げるって。行くぞ」
荒木もバッグを持って、2人は歩いていった。
中央本線沿いを歩き、金山駅からは国道沿いを南下していった。
今は駅から500メートルくらいだろうか。このまま行けば南区へ行きそのまま名古屋市から出られる。
荒木は脱出できることがうれしいのだろう、足取りが軽い。
しかし福留は不安に思っていた。
そう簡単に脱出なんて出来るものなのだろうか。殺し合いのためのこのゲーム、こんなにもあっけなく終わるのか。
福留は前方を歩いている荒木を見ると、荒木が動かずに止まっているのが見えた。
「荒木?」
走って荒木のもとへ行ってみるとそこには妙な光景が見えた。
「山崎さん・・・」
それはただ立ったままの山崎と血まみれになり倒れているスコット=ブレットの姿があった。
「ち、違うんだ!!」
山崎は2人の方へ近寄ってくる。
「違うんだ。あいつがいきなり襲ってきたんだ。殺されると思ったから必死に抵抗して・・・」
「抵抗して銃を奪って殺したんですね」
「そうだ。本当に殺されそうだったよ」
やけに淡々と話す。本当に殺されそうだったのか。
「山崎さんはさっきの放送を聞いたのですか?」
「聞いたよ。もちろん逃げるつもりだ。で、その前にいきなりこいつが襲ってきたんだ」
偉そうな話し方。彼から全く今までの恐怖などが感じられなかった。
荒木も不信そうな目で山崎を見ている。
でも井本さんを・・・
「でも井本さんを殺したでしょう?」
福留が思っていたことを荒木は口にして言った。
福留はちょっぴり驚いた。
「あれだってあいつがいきなり背後から・・・」
「正当防衛ってやつですね」
2回とも正当防衛だって?いかにも嘘くさい話である。
福留はブレットの死体を見た。ユニホームの胸の辺りが真っ赤に染まっている。
もっと近寄って見てみると胸に1箇所だけ大きな穴が開いていて、そこから血が出ている。胸に一発撃たれたらしい。
襲われそうになった相手から銃を奪いその銃を相手に向けて撃った時、こんなに正確に胸に撃てるのだろうか。しかも一発で致命傷となっている。
山崎は嘘をついているのではないか。
「うわっ」
後方から荒木の叫び声がした。
振り返ると山崎が荒木を人質にとっていた。
右手に握られた日本刀らしきものの刃が荒木の首にぴったりくっついている。
「荒木!!・・・・・・あんた何考えてるんだよ!」
「ふっ・・・俺はお前らを殺してから逃げるとするよ。これで俺は井本、ブレット、孝介、荒木と4人殺したことになるのか。すごいな、俺ふふふ」
やっぱりコイツが井本さんもブレットも殺したのか。
「俺はお前らが大嫌いなんだよ。若いからって周りからチヤホヤされて、エラーしようが何しようが大目に見てくれる。ふっ、まぁ、お前ら以上に俺は立浪が嫌いだけどな。
あいつも荒木、お前が大嫌いらしいな。うれしくないけどあいつと一致してやがる。あーひゃっひゃっひゃっ」
山崎は狂っていた。福留に対し開かれた目は赤く、狂犬病にかかった犬のようだった。
荒木は立浪に続いて山崎にもというチームの先輩2人に嫌われていたということがショックでうつむいている。
「荒木を離せよ」
「くっくっくっやだね〜〜ん」
怒りでどうにかなりそうだった。しかしここは冷静になりつつ言った。
「山崎さん、逃げたほうがいいんじゃないですか?早くしないと首輪が元通りになってしまいますよ」
山崎はふっと鼻で笑い言った。
「お前さぁ、本当にバカだな。本当にここから逃げられると思ってるワケ?誰かが本部のコンピューターに入って、この首輪を破壊したとしてもよぉ、そんな復旧に1日もかかると思うか?その手のエキスパートに頼めばほんの1,2時間で元通りになるさ。
1日かかるんだと信じるバカは逃げてる途中でバーンって首が吹っ飛ぶのさ。しかしまぁ、このゲームの誰かだと思うが勝手に侵入した奴もバカだよ。見つかったらどうなるのかわかっているのか?本部からすれば自分がやりましたって言ってるもんだよ」
福留も荒木も驚いている。山崎はやけに的確なことを言っている。
狂ってはいないのか。
「俺たちはこのゲームから逃げる逃れられないんだぜひゃーひゃひゃっひゃっ」
やっぱり狂っていた。
「なぁ孝介、お前の銃貸せよ」
「持っていませんよ、銃なんて」
「嘘を言え!!ふっ俺は知ってるんだよ。お前が蔵本に向けて銃を構えていたのをな!」
ちっ、テレビを見ていたのか。
刃は相変わらず荒木の首にぴったりとくっついている。山崎が少しでもずらしたりでもしたら、そこから大量の血が水しぶきのように出るだろう。
福留はバッグの奥から銃を出し、構えた。
「あひゃ、俺を殺すのか?しかし、お前みたいなヘタレが撃ったって荒木に当たるだけだぞひゃーひゃっひゃっひゃっ」
落ち着け落ち着け。怒りで血が頭に上っている自分に言い聞かせる。
―――チームメイトを殺すなんて無理だ
さっき言ったばかりだった。しかし、このまま山崎に銃を渡せば2人とも殺されてしまう。
「さすがアマちゃん、撃てるものなら撃ってみろや」
プチンと福留の頭の中の何かが切れた。
その時だった。
一瞬のすきをつき、荒木が山崎から離れた。
「うああああああああああ!!!」
福留は引き金を引いたのだった。
パンッ
山崎の額のほぼ中心に小さな点ができ、そのまま後ろへ倒れていった。
【残り25人】
長くてスマソ
あ、63と64でした
乙です!アラキン危なかったな…焦
マジで面白かったです。
「あーひゃっひゃっひゃっ」で谷繁を思い出した自分て一体
365 :
代打名無し:02/07/22 17:43 ID:yyyGoLXI
>>359-361 みんなそれなりにカコイイのにジャーマンだけは
ヘタレなのねん。
でもそのヘタレっぷりがいいぜ!
366 :
代打名無し:02/07/22 18:54 ID:53PRlXcB
井端はどうなった?
その後が気になる・・・ハァハァ
今日のドラワールドは元気がなかったのよ〜
((( `Θ´ )))<アヒャヒャ
>>364 ハゲドゥー
私も谷繁思い出したよ(w
しかし、書き手の皆様も本当に乙です
いつも楽しませて頂いてます
ジャマーは氏んじゃったんですか???
370 :
254:02/07/22 23:34 ID:q03rq9i5
>>316 リクエストに応えて鶴田ん登場ありがとうございます。
「祭り」の
>>202と繋がってる辺りすごいっす!
職人さん方これからもがんがってください。楽しみにしてます〜。
こんな時でも意外とマイペースなまこりん萌え(w
65 命拾い
『一人も殺せなかった人にも少々余裕ができましたー』
さっきの古田の放送はなんだったのだろう。
井端は空を振り仰いだ。
青い青い空が広がっている。
狂気の中で井端は先の放送を聞いていなかった。
72時間以内に1人も殺せなかった者の中から抽選で1名の首輪が爆発する、というあの放送を。
井端は何をするべきか考えながら、ただ足を中日ドラゴンズ本社のある中日ビルへ向けていた。
当てがあるわけではなかったが、何かある、と思っていた。
「井端さん」
不意に後ろから声が掛かった。
「フミ・・・か?」
井端は振り向かなかった。振り向く必要はなかった。
背中に当てられているのは多分、銃口。
「なんで俺を殺す?」
井端の声は冷静だった。
鈴木は井端の背に神野から奪ったコルトを突きつけていた。
「・・・死にたくないんです」
「そうか」
井端は静かに息を吐いた。
「逃げないんですか?」
鈴木は尋ねた。普通ならば逃げる。命乞いの一つもするはずだ。
「銃を押し付けられて逃げられる余裕があるか。俺がちょっとでも動けば引き金を引くんだろう」
「・・・・・・」
鈴木は答える代わりに更に銃を押し付けた。
ゴリッとした硬い嫌な感触が背中に伝わって、井端は少し前にのめりそうになった。
「引けよ。さっさと殺したらどうだ?」
井端はそう促した。
鈴木は引き金にかけた指が震えるのを感じた。
このコルトは神野から奪ったものだ。でも神野を殺したわけじゃない。
ただ足をへし折って放ってきただけだ。
しかしその後に神野を置いてきた西区は立ち入り禁止区域になった。
動けない神野はきっともう首輪が爆発して・・・。
・・・結果的に殺した・・・。
そして今自分は生き残るために井端に銃を向けている。
死にたくないから殺す。
でも・・・。
少し心をざわめかせた鈴木の隙を井端は見逃さなかった。
一瞬を衝いて井端は体を沈ませた。
鈴木の足を払い、倒れた鈴木の上に馬乗りになった。
「わああああああっ」
鈴木は怯えたように井端に銃を向けた。
しかし動揺したその手は照準を定めることは出来なかった。
大きな反動とともに放たれた弾は井端の顔の横を通り過ぎた。
井端は頬に熱さだけを感じた。
「・・・・・」
再び井端に向けたコルトが火を吹く前に、井端のナイフが鈴木の細い首を撫でた。
2度目の銃弾は虚空に飛んだ。
鈴木の首から生暖かい血が噴きだすのを、井端は黙って見つめていた。
人を殺すのはなんて簡単なんだろう、そう思っていた。
鈴木だってためらわず、自分と言葉を交わさずに、引き金を引けばいいだけだったのだ。
それだけで自分は死んだはずだ。
でも鈴木はわざわざ声をかけた。
言葉を交わした。
死にたくないから殺す、そんな理由で普通の人間がためらいもせずに人を、ついこの間まで仲良くしていた人を殺せるわけがないのだ。
言葉を交わすことによって救われたかったのだ。
黙って殺せるほど冷酷になんかなれなかったのだ。
だからこそ、自分は生き残った。
鈴木が冷酷な殺人マシーンになれなかったから、生き残れたのだ。
本当は鈴木を殺したくはなかった。誰も殺したくはなかった。
しかし背中に銃を押し当てられた時から、殺し合わずに別れることはできないと覚悟していた。
井端は立ち上がった。
鈴木はもう動かない。
井端は再び空を振り仰いだ。
高みの見物をしている奴らにこの苦しみが分かるか。
今のを中継で見て喜んでいる奴らに。
ただのエンターテイメントとして笑っている奴らに。
井端は鈴木にしばしの黙祷を捧げた。
そして鈴木の手からコルトを外して携帯すると井端は再び歩き始めた。
鈴木を殺したことが、72時間後(もう少し猶予は減っているだろうが)の無作為爆破から井端を救ったことなど知ることもなく・・・。
【残り24人】
65 暗雲
「あ…」
ガバメントを取り落としそうになり、福留は漸く全身が震えていることに気付いた。
慌てて握り締める。落として暴発でもしたら大変だ。
――大変?
――人殺しが命を惜しむのか?
「あ…あ、そうだ、俺、山崎さんを…山崎さんを」
息ができない。目の前に横たわるのは山崎の死体。
「殺したんだ…」
「孝介!」
ふ、と足から力が抜け、福留はその場に尻餅をついた。
力の入らない手で、バッグの底に銃をしまい込む。
もうあんな物見たくない。二度と。
「孝介、しっかりしろ…」
荒木が駆け寄ってきた。どうやら怪我は無いようだ。
しかし、福留の心が安らぐことは無かった。
「…荒木、俺、山崎さんを殺した」
「俺を助けてくれたじゃないか」
「でも…人殺しだ」
恐ろしい。遂に人を殺してしまった。
つい先ほどまで自分は、人を殺すまいと思っていた。
チームメイトを殺す事などできないと、間違いなく思っていたはずだった。
それがどうだ。この現実は。
心のどこかで冷静な自分が囁いた。
――そらみろ、お前だって山崎と同じだ。
――何だかんだと理由を付けて人を殺したがっているんだ。
――この偽善者め。
荒木が、ブレットの遺品らしき銃と山崎の持っていた日本刀を持ってきた。
「ほら。お前、銃はもう持ってるから、これを使えよ。こっちの銃は俺が持つ」
そう言って、鞘に収まった刀を福留の眼前に突き出してくる。
「嫌だ…武器なんてもう見たくない」
「馬鹿、寝惚けるなよ。身を守る為にも武器は多い方がいいだろ」
「嫌だ、こんなの触ったらまた人を殺すかもしれない!
見ただろ、俺だって結局人殺しなんだ!
いざとなったら戸惑いもせず人を殺せるんだよ!
もしかしたらお前も殺すかもしれない…!」
一息に叫ぶと、福留は肩で息をしながら絶望的な気分で荒木を見上げた。
もう駄目だ。自分など死んだ方がいいのだ。こんな大嘘つきは。
「もう俺のことなんて…ほっといてくれよ…」
「孝介ッ」
左の頬に鈍い痛みが走る。
荒木に殴られたのだと、一瞬してから理解した。
「甘ったれはどっちだよ、この野郎…」
「…いてぇ」
「立てよ。お前が何を言おうと、俺にとってお前は命の恩人だ。
こんな所で死なせないからな、絶対に」
荒木に無理やり腕を引かれ、福留は不承不承立ち上がった。
「解ったらこれを持て。バッグに入れておくだけでいい」
無理やり刀をバッグに押し込まれる。
抵抗する気力も無く、福留はその様子を見ていた。
「もし誰かがお前を人殺しだって言ったら、俺が庇ってやるから。な」
「…ああ…」
西の上空を広く雲が覆い始めている。
福留の心は未だ暗い淵に沈み、全身をだるさが包み込んでいた。
【残り25人】
375 :
書き手A:02/07/22 23:55 ID:vJUKAsJf
わー。また番号ケコーンが。遅筆な自分が憎い。
373は「66」になります。
374の【残り25人】は【残り24人】に訂正です。
ああ、書き手Aさんだったのですね。
先に行かせてもらっちゃいました。
訂正させて申し訳ないですm(_ _)m
377 :
書き手A:02/07/23 00:05 ID:8k6eiDm/
>376(371-372)氏
いや、とんでもないです。
書き込む前にリロードしなかったこちらが悪いのですから、
どうぞお気になさらず。
>書き手Aさん
ありがとうございます。
ところでまだギャラード出てきてませんね。
彼が出てきたらやっぱり劇場開幕?
ギャラタンよりも山Qが気になります
確かに山Q気になる。
今頃何してんのやろ?
381 :
代打名無し:02/07/23 14:35 ID:YanEs2hs
age
67 悪魔来たる
灰色がかった雲が空全体を覆っている。
これから雨でも降るのだろうか。
森野は見上げてそう思った。
つい先ほど目が覚めたばかりの森野は落合が作ってくれた料理(これがまたすごくおいしいものらしい)を食べ、少し外の空気を吸いたいということで今、熱田神宮敷地内の歩道を散歩している。
森野が外へ出たいと言うと落合はもちろん反対した。
それでもどうしても出たいと言ったら神宮敷地内だったらということで許してもらった。
森野がわがまま言って外へ出たかったのはただ外の空気を思いっきり吸いたかっただけなのである。
ふぅーーーーーー
森野は深呼吸した。
しばらく寝ていたので外の空気を肌で感じるのはすごく久しぶりのように感じた。
売店の中で今まで落合、正津、小山といた。3人は投手で野手の森野とはそこまで交流はなかったのだが、ケガ人の森野にとても親切にしてくれたのだ。
―――本当にありがとう
森野は心の中で感謝した。
そして空を見上げ、雲をじっと見ていた。
「・・・っ」
左太ももが痛む。立浪にやられた太ももが。
森野の中に恐怖がぶり返した。
そして立浪の自分に対して向けられた憎悪でいっぱいのあの顔が頭によぎった。
また立浪さんに会ったらどうしよう。
ぞくっと冷たいものが背筋を通る。
いよいよ心拍数は高くなっていく。
いや、大丈夫、大丈夫だ。現れるわけがない。
いきなり襲ってきた恐怖で狂いそうだった。
震えが止まらない。顔も汗だらけである。
殺される!落合さん助けて!殺されたくない!!
はぁはぁ。呼吸も荒くなっていく。
「よぉ」
背後から声がした。
ビクッ、心臓が飛び跳ねそうだった。
そして森野が振り返る間もなくその声をかけた人物は森野の口元を手で押さえ、首にナイフを突きつけた。
「・うう・・・」
「動いたら殺すぞ」
その男は耳元で囁いた。
その声はどこかで聞いたことがある。
あまりの恐怖でおかしくなってしまっている森野ははっと一瞬正気に戻った。
ま、まさか・・・・・
さらなる恐怖が襲った。
汗でアンダーシャツは背中とぴったり密着している。
パラパラと雨が降ってきた。
男はふっと鼻で笑い、森野の口元を押さえている左手でそのまま後方へ押し、倒れた森野の上に馬乗りになった。
「た、立浪さん・・・」
立浪の冷え切った目が森野を見下ろしている。
立浪を見る森野の目は涙で溢れている。
死にたくない、助けて・・・
前にもこんなことがあった。あの時は落合が助けてくれた。だが今は落合はいない。落合のいる売店とは少し距離が離れている。
「ううっ!!」
立浪は両手で森野の首を絞めた。
全身の毛穴が開き、冷たい汗みたいなものが吹き出してくる。
・・・た・・すけ・・て・・・・・くるし・・・い・・・・・
立浪は相変わらず冷たい目で森野を見ている。
目がかすみ、音も聞こえなくなってきた。
・・・お・・ちあい・・・さん・・
やがて意識が遠のいていった。
立浪は森野が全く動かなくなるのを確認すると、先ほどのナイフを森野の胸めがけて思いっきり刺した。そしてもう一度。
雨は激しくなってきた。
何度も何度も刺す。力任せにメッタ刺しにした。
気がつけば立浪のユニホームは森野の血で赤く染まっていた。
雨は降っているがユニホームの血はとれない・・・
ようやく立浪は立ち上がり、近くに置いてあった自分のバッグを持ち熱田神宮を後にした。
ザーザーと降る雨の中、立浪は小さな声でつぶやく。
「荒木はどこだ・・・」
【残り23人】
68 劇場開幕
…誰か来るな…
気配を感じ、谷繁は咄嗟に手近の建物の陰に隠れた。
耳をすますと、足音が聞こえた。
そっと足音の主を確かめると、そこには右手に拳銃を持ったギャラードの姿があった。
こちらに気づいた様子はない。まだ、距離がある。
相手は銃。不意を付くより他にない。
波留の血に濡れたナイフを握りしめる。
もっと近くへ来い。もっとだ…。
足音が少しずつ、大きくなる。
同時に、自分の鼓動も少しずつ大きくなる。
ちっ、こんな所で緊張するとは…オレもまだまだだな…
心の中でそう呟く。
ほとんど無抵抗だった波留よりも手強い相手であることは間違いない。
失敗すれば、自分が殺られる。
足音がすぐそこに聞こえた。
よし、今だ。
「ホールドアップ、シゲ」
背後から外国人の声がした。
同時に、頭に冷たい鉄の塊を押し付けられた感触が。
「…ゴメス…お前ら、グルだったのか…」
「ホールド、アップ、シゲ」
ゴメスはゆっくりと同じ言葉を繰り返した。
…谷繁はサバイバルナイフを投げ捨てた。
「はいはい、分かりましたよっと!」
振り向きざま、ポケットから果物ナイフを抜き、切り掛かった。
が、手首をゴメスに掴まれ、そのまま後ろ手にひねりあげられる。
「ぐあっ…」
降参しても、殺される。となれば、一か八かに賭ける他ない。
だが、その博打も失敗したようだ。…くそ、ここでゲームオーバーか…
ガチャッ。
谷繁の目の前に無線機らしきものが落とされた。
「ギャラ?」
見上げるとギャラードがその物体を指差し、その後、自分の耳を指差した。
同時にゴメスも手を離す。
「…これを付けろ…ということか?」
訝しがりながらイヤホンを耳にあて、無線の電源を入れる。
「おお、シゲ、久しぶりやのぉ」
ナゴヤドームでも聞いた、そして今朝も聞いた、憎々しい声が聞こえて来た。
「古田っ…おまえ…!」
「怒っとるんか?はは、まぁそやろな。ところでな、お前に頼みがあるんや」
「頼み…だと?」
古田の頼み。それは、このゲームを盛り上げる事。
そのために、無線の指示通りに動いてもらいたい、と言う事。
もちろん断る事はできない。
だが、他のメンバーの動向を把握したまま動けるとなれば、生き残る確率は高くなるだろう。
もっとも、古田をどこまで信じる事ができるのか、という問題はあるが…。
「どや、悪い話やないやろ?」
「…オレの命もお前の思うがまま、というわけか…」
「ま、そういうこっちゃ」
「…仕方ない、乗ってやるさ」
「ええ返事や。褒美に隠してある武器の場所も教えたるわ」
「用意周到だな」
「まぁ、そう褒めんでもええわ。じゃぁ、最初の指令や。な〜んもせんと、うどん食うとった奴らがおるよってな」
…とことんやってやるさ。だが、これが終わったらお前を必ず殺す。ナンバーワンキャッチャーはオレだ。
「レッツゴー、シゲ」
ギャラードが声をかけた。いずれ裏切る事を約束された、とりあえずの仲間だ。
「分かった」
谷繁、ゴメス、ギャラードの3人は、動きだした。
【残り23人】
69 戦友
広島市民球場。
主力選手が集まり、ペナントレースに向けて最終調整を行っていた。
だが、いつものような覇気がない。
そこに鶴田の姿はない。誰が一番辛いのか。それは広島ナイン全員が知っていた。
だから、それを咎める者もいない。
「黒田、ちょっとタイム!」
金本はバッティングピッチャーとして投げていた黒田に声をかけると、ベンチに向かって走り出した。
練習開始時間から遅れてきた山本浩二監督の姿を見つけたのだ。
「監督、あのっ!」
それに気づいた選手達がベンチ前に集まる。
「監督、紀藤さんを助ける事はできないんですか!?」
その問いに、山本は俯いたまま応えない。
「…自分に出来る事だったら、何でも言って下さい。命と引き換えでも構いません」
そう絞り出すように言ったのは、前田だった。
取り囲む選手達も頷く。
「…お前ら…」
山本は顔を上げた。
「センイチ、広島に何しに来たんだ?」
「うん?やっぱりお前には会っておきたくてな、コージ」
それとも、迷惑だったか?そう聞かれて山本は首を振った。
オレとお前の仲じゃないか。何を遠慮する事がある。
「やっぱり、お前はそっちが似合うな」
「はは、タイガースは余り着とらんからな」
島野からの連絡を受けて行ったホテルの一室。そこにドラゴンズのユニフォームを着た星野がいた。
ついこの前まで監督をしていたチームが大変な時に、何をしているんだ?
そう思った時、星野が並々ならぬ決意を持っている事に気づいた。
…こいつ、死ぬつもりだな…
直感だった。が、それは間違っていないという確信があった。
「ブチには話してあるのか?」
「ああ。余計な事だったかもしれんが…年を取ると心配性になるんかな」
…年か。今まで気にした事もなかったが…
「それで、どうするんだ?」
「今回の事はウチの阿呆フロントの失態や。そのケツを拭かなアカンやろ」
「…そうか…」
「福岡まで行きたかったが…そろそろ戻らんとな。時間だ」
「…死ぬなよ」
自然と言葉が口をついて出た。
「…まぁ、頑張るわ」
そう言うと、星野は部屋を出て行った。
山本の表情はサングラスによって隠されていた。
その頬を涙が伝って落ちる。
そして、かつてミスター赤ヘルと呼ばれた男は言った。
「お前らの気持ちは受け取っておく。だが、この馬鹿馬鹿しいゲームを止めるのは、オレの戦友の仕事だ」
【残り23人】
388 :
書き手A:02/07/24 00:11 ID:DcNQ6aOt
他球団ファンの方も結構読んで下さっているようなので、
舞台となっている場所の写真など少々撮ってきました。
名古屋在住でないとピンと来ない場面も多いかと思いまして。
ttp://cdbr-2.hoops.ne.jp/photo.htm 我ながら写真は巧くないですが、雰囲気だけでも。
>ルーファン氏
おお、ピーコがカコイイですな。
そしてやっぱりギャラは劇場ですか(笑)。
389 :
◆xYQkNOZE :02/07/24 01:30 ID:+JkDjw5e
70 戦線復帰
白い天井が視界に広がっている。山田久志中日ドラゴンズ監督は空に腕を上げてみた。指を曲げたり伸ばしたり。
よし、動ける。
医務室のベッドから上半身を起こし、彼は意識を取り戻すまでの出来事を回想した。
球団幹部からの突然の通達。
今まで育てたかわいい我が子達に殺し合いをさせるという事実。
怒鳴り込んで行った社長室で―――急に意識を失ったのであった。痛みを感じてユニホームのベルトを外すと、腹部が青く腫れている。
しかしこれくらい現役時代に当てた打球と大差ない。山田はドアを開け、勝手知ったるドームの通路を歩き始めた。
390 :
◆xYQkNOZE :02/07/24 01:38 ID:0SB7X8sx
〉書き手A氏
ありがたう!東京の人間なので写真撮りたくても撮れなかったんですよ〜。
甲子園の写真なら週末に撮るけどあんまり関係ないカモ…広島の写真は家にあるので探してみます(現在沿革地にてPDAで書き込み…鬱)
************
佐々木恭介は代用に急遽あつらえられたサーバマシンの前で大あくびをしていた。
メインサーバのデータはあろうことかDATテープにバックアップを取ったのみだったので、佐々木はその入れ換えを指示されていた。
一本推定6時間×3本。テープが最後まで回るのをじっと待つ。
何もしないのが仕事って…ドモホルンリンクルじゃないんだからよ。福留はまだ生きとるかな…
球団上層部の指示とはいえ、ようやく指導することができた『金の卵』を彼が案じずにいられないはずがなかった。
そのときドアが開いた。目の前に、眠っているはずの山田が姿を現した。
「監督なんでここに…うッ」
アンダースローの如き山田の腹部への一撃で佐々木の身体は崩れた。
「すまん」
佐々木からユニホームとサングラスを奪い取ると、それらを身に付け、山田は部屋を後にした。
************
自分で書いてあれですが変装バレバレです<山Q
荒木危ない!!
死んじゃイヤン
392 :
代打名無し:02/07/24 06:54 ID:PV1QxKKZ
保全age
選手以外の動きも慌しくなってきたなぁ
みんながんがれ!
393 :
代打名無し:02/07/24 17:39 ID:IFeu/m+T
>>386 カープ、いい奴らだな…(∩д`)
ハマの佐伯とかも落ち込んでたりするんだろうか。
山Qキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!!
かぷの選手、イイ!
紀藤はかぷでファンにもチームメイトにも愛されてたからね。
ここや他のスレ見てると、中日でも愛されてるみたいでウレスィよ。
これからも楽しみに見せてもらいますね。
71 逃れられぬ運命
中村は、迷った挙句に今日もまたテレビの電源を入れてしまっていた。
無論の事だが、チャンネルはNHKに合わせてある。
何故だろう。何故見てしまうのだろう。もう二度と見るまいと思ったはずなのだが。
もう夕刻だ。そろそろ、外は暗くなり始めている。名古屋は雨らしいが、皆どうしているのだろうか。
そうだ、俺がテレビをつけたのは元チームメイト達の事が気になるからだ。
決してこのプログラムを考えた奴らの思い通りになんて…
次第にはっきりとしてきた画面に真っ先に映し出されたのは、
古田が作り笑顔を顔全体に浮かべつつ原稿らしきものを読み上げている姿だった。
定例放送中、と画面の右下にテロップが出ている。
「はいはい、皆さんお元気ですかー。
五時になりましたんで死亡者の名前を放送しまーす。よう聴いて下さいよー。
今朝の九時から、これまでに死んだ人数は…えー、34人が23人になったんやから、11人か。
なかなかのペースですな。では、死んだ順番に読み上げますー」
何だって。中村は思わず目を見開いていた。
もうそんなに死んだのか。そんなに殺し合ったのか。
それは本当に自分が所属していたあの中日の話なのか。
あんなに皆、仲が良かったじゃないか。
眩暈がした。悪夢なら今すぐ覚めて欲しかったが、残念ながらやはり現実らしい。
「大豊さん、柳沢、岩瀬、バンチ。ここまでが朝に死んだ人です。
昼組は…神野、蔵本、山北、ブレット、山崎、鈴木、森野。と、これで11人ですね。
山崎選手が殺される瞬間は特にいい視聴率が出ましたー。いや、ありがたい事ですわ。
…ああ、それでは、ここでスタジオに届いた応援ファックスを読み上げます。
これ聴いて元気出して、またどんどん殺し合って下さいね。一通目は…」
駄目だ、やはり見たのは間違いだったのだ。とても耐えられない。
中村はテレビのリモコンを取ろうとし…そこでふと気付いた。
今中がスタジオにいない。確か「解説」とかで、一日中スタジオに座らされているような雰囲気だったが。
いや、休憩中という事も考えられる…そういう事にしておこう。
『今中解説員は現在ヘリコプターで横浜に向かっています』
画面にその字幕が表示されたのと、手元にあった携帯電話の着信メロディが鳴り響いたのは同時だった。
薄暗い部屋の中、光る液晶ディスプレイに、今中からの電話だという情報が表示されていた。
【残り23人】
中村さんキターーーーー!!
彼はどうなっていくのか楽しみです。
ベイファソながらこのスレを愛読してます。
武志キタ━━(゚∀゚)━━!!!
72 涙は雨に流れて
徐々に強まる雨と夕闇の中、カンテラを手に夜回りをしていた落合、正津、小山の一行は、つい先ほどまで彼らと歓談していた森野の凄惨な死体を発見し、身動きはおろか呼吸をすることさえも困難になっていた。
「俺のせいだ、俺が行かせたせいだ」
やっとの思いで声を絞り出した落合はじっと目を強く閉じたまま、こぶしを握り締めている。
「…こんなときまで、一人で背負い込まないで下さい」
正津がそっと肩に手をやる。
その後ろで一人、小山は初めて目の当たりにする現実により言い知れない恐怖に襲われていた。
横たわる森野の身体。はっきりと剥いたままの目、青黒く跡を残した首と、鮮血に染められた胸。
先刻まで生きていた人が、今は死んでいるという現実。
落合に止められたとはいえ、昨晩自分が犯そうとした罪が、たった今、別の人間の手によって犯されたという事実。
小山の流している涙は哀しみからではなかった。
哀しみを理解する前に、彼の身に降りかかってきたものは、『恐怖』だった。
自分が犯そうとした罪への恐怖。自分のすぐ近くに殺人犯がいたという恐怖。
怖い。怖い。怖い怖い怖い怖い怖い。
落合が、森野の傍らにしゃがみこんだ。
せめてもの弔いに、瞼を閉じてやった。
すると、何か感触を得た落合は、森野の瞼に触れた手をまじまじと見つめる。
「…花粉だ」
「花粉?ですか?」
手についたのは花粉。もしかしたらそれは、犯人が残した手がかり。
「小山、お前園芸に詳しかったよな。分かるか?」
雨で匂いは薄れていたが、それでも小山は差し出された手の花粉を精一杯記憶と照合させる。
「………蘭、だと思います」
「蘭?」
「蘭…デンドロビウムかな…蘭…蘭……ランの…館に…いる?」
そう呟くや否や、小山は休憩所まで走り去った。落合達が止める声など耳に入るはずもなく。
そしてバッグを手にすると、すぐに部屋を飛び出した。
誰だ、俺にこんなに怖い思いをさせるのは。
誰だ、森野をあんな目に遭わせたのは。
俺が犯そうとした過ちへの報いなのか。
こんな現実、乗り越えてやる。
森野を殺した奴を殺して、乗り越えてやるんだ。
俺だって、誰かの役に立てるんだ。
小山の目には、もはや涙はなかった。恐怖を克服せんとする男には、涙など必要なかった。
ボケシキターー!!
Qさんと決着つけるのは落合?ドメ?
古田が殺されるのは嫌だぞシゲシゲよう…
>>400 感動しますた
()Φ._ Φ()(・Д・)ъ( ゚ー´)ッス
この3人は生き延びてホスィ・・・なあ
73 成長しない二人
激しく降りしきる雨の様子を荒木は窓から眺めていた。
山崎を銃で殺してしまった福留は激しく気落ちしていた。
お前は悪くないと何度も言い聞かせても福留は首を振る。
俺は人殺しだ、最悪だ、と。
そんな気落ちしている福留に荒木はかける言葉もなくなっていた。
そんな中、雨がパラパラと降ってきてあっという間にザーザーと激しく降り出したのだ。
とにかく雨宿りできそうな場所を求め、荒木は歩く気力もない福留引っ張ってここ金山駅まで来たのだった。
2人は駅内の事務室で雨宿りすることにした。
事務室内は暗く、静かだった。
2人は荷物を床に置き、近くのソファーに座ったまま黙っていた。
雨の音が聞こえそうなくらい静まり返っている。
2人は肉体、精神共に限界にきていた。
特に福留はこのプログラムが始まってから一度も寝ていなく、精神的にもつらいことが続いたので、今にも倒れそうだった。
荒木は少し休めと言って、強制的に福留を寝かせた。福留はソファーに横になると同時に深い眠りについた。
そのことを確認すると荒木は窓の近くへ行き、外をずっと眺めていたのだった。
雨は一向にやみそうにない。
孝介も休んでいるしこの天気じゃしばらく外に出られそうにないな。
荒木は今までの出来事を思い出してみた。
ゲーム開始からいきなりゴメスの担がれている渡辺の死体を見た。そして蔵本にはボウガンを向けられわき腹を負傷した。名大病院では山北が名前を聞いたこともない薬を使って手当てをしてくれた。
鶴舞公園で探していた井端に会った。そして彼に一緒には行けないと言われ、しばらく落ちこんだ。福留に元気づけられ、そんな時に山崎に出くわした。人質にとられそして福留が発砲・・・。
こんな経験一生かかったってもう二度と出来るもんじゃない。
だからといってこのゲームを考えた奴に感謝しろと?冗談じゃない。
『皆さん、お元気ですかーーー・・・』
突然のアナウンスに荒木は座っていた椅子からひっくり返りそうになった。
びっくりしたじゃねーかよ!
護身用にベルトに挿してあった銃を思わず出しそうになった。
その声はこの事務室内にあるスピーカーから聞こえてきたのだった。
こんな所にも仕掛けてあるのか。
大会本部の奴らはここに誰かが来るのを予期し、スピーカーを仕掛けたのだ。
『・・・・頑張ってくださいねー』
アナウンスが終わるとまた雨の音が聞こえるくらいの沈黙がおとずれた。
山崎が殺されたときが最高視聴率だったらしい。日本刀を突きつけられたあの情けない自分の顔がより多くの人間に見られたのかと思うと少し恥ずかしかった。
荒木を襲った蔵本、病院で会った山北の名前があった。
「山北・・・」
荒木はつぶやいた。
やっぱりお前は昌さんに殺されたのか?
山北の涙を思い出しながら、荒木は悲しい思いにつつまれた。
そして森野の名前も。
荒木はいやな予感がした。
立浪さんか?立浪さんが森野を殺したのか?
だとしたら次のターゲットは自分だ。居場所を突き止めたら確実に殺しにくるだろう。
突然荒木は窓を開け、身を乗り出し周りを見た。
いるわけないか・・・
しかし、荒木の心臓はいつも以上に動いていた。
落ち着け、落ち着け、いるわけなんかない。
ふぅ〜と深く呼吸し、平静を取り戻す。
今ここに居もしないものに恐怖し、些細なことでいつも傷つく。
傷ついては、励まされて元気になり、またすぐ傷つく。
そんなことを繰り返してばかり。
井端さん、俺たちはこのプログラムでちっとも成長していない・・・・・
【残り23人】
恐れ多くもギャラード登場の場面でゲーム参加メンバー全員が話に登場したことになりますた。
408 :
404:02/07/25 16:51 ID:h6Hs+oRu
訂正です。
19行目
×ゴメスの
○ゴメスに
でした。スマソ
ナゴド行ってきますた
選手達を見てるとここのストーリーが思い浮かんでフクザツですた
410 :
代打名無し:02/07/25 23:59 ID:c7fY7Lk9
age
最萌トーナメント投票スレでまるまる一日フライングしてしまった…
ドラゴンズの投票日は明日だすよー皆投票しませう
74 懐かしき名古屋へ
「誰を連れてきてもいいと昌さんに言われましたけど、
俺は中村さんしか居ないと思ったんです」
電話の向こうで、今中がいつも通りの飄々とした調子で言っている。
それを半分くらい聞き流しながら、
中村はゆっくりと今まで言われた事を頭の中で整理していた。
山本が左腕エースの栄光を掴むため、小笠原を、山北を殺し、
そして最後に今中に挑戦状を叩き付けた。
が、ついては誰を連れてきてもいいと…つまりはそういうことらしい。
「俺をかつごうとしてるんじゃないよな?」
「こんな大規模なドッキリがありますか。
いや、ドッキリだったらどんなにええかと今でも思いますよ」
それもそうか。
NHKの全国中継を二日間に渡って利用した壮大なドッキリなど、
普通に考えてあるはずがない。
ただ、頭が理解を拒んでいるだけのことだ。
「…解った。すぐに準備する」
「お願いします。
ああ、頼んでおいてこんな事言うのも何ですけど…命の保証は出来ませんよ」
その事についての心配はしていない。
昌さんは俺を殺せない、中村は確信していた。
「俺より自分の心配しろよ。どこに行けばいい?」
電話を右手に左手にと持ち替えつつ、
まだ着慣れないベイスターズのユニフォームを身に付けながら
中村はふと窓の外を見た。
まだこの横浜に雲は来ていない。空に星が輝き始めていた。
名古屋は、雨だというのに。
【残り23人】
413 :
書き手A:02/07/26 01:05 ID:2QtKUTN7
>>413 ワーイ
僭越ながらリンク致しますた。141さんとこも。
中村さん、ついに名古屋へ…?
田螺下との対決はあったりするのだろうか。
楽しみだ!
クララが現実でも悪役に…ウワァァァァン(号泣)!!
417 :
代打名無し:02/07/26 23:41 ID:2+qzTBjV
ヤヴァイ 保全age
418 :
代打名無し:02/07/26 23:50 ID:u6dSRsVE
リナレス帰れ! 要らん。
75 リメンバー
雨はますます強くなっている。
近くにあったビニールシートで体を包んだ山本は、
わけもなく手が震えだすのを自覚していた。
寒い、のだろうか?
恐い?いや。違う。
それにしても土砂降りだ。春の嵐というのだろうか、風も激しく吹いている。
屋根のある所に避難することも考えたが、
何故かこの雨の降りしきる屋上から山本は足を動かせないでいた。
耳がじんじんと痛む。
かじかむ手で、懐の銃に触れた。
これだけは守らなければならない…
今中は何を持ってくるのだろう。誰を連れてくるだろう。
それ以前に、ここに来るかどうか。
ともかく来るべき時の為、武器は
いつでも使えるようにしておかねばならないのだ。
まだ雨が降り出す前、山本は少し眠っていた。
眠りが浅かったのだろう、長い長い夢を見た気がした。
夢の中に出てきたのは真夏のナゴヤ球場だった。
周りには泥だらけになった仲間達。
山本はそこで笑っていた。金も名誉も手に入れていなかった、若い日の光景だ。
俺も感傷的になったもんだ。年は取りたくない。
今更あの頃に戻れるものか。
自分はチームメイトへの嫉妬を、憎しみを知ってしまったのだから。
誰も俺を認めてなどくれなかった…
微かに上空から音が聞こえたのはその時だった。
ヘリコプターが飛行する音だ。
あまりに視界が悪く、姿は確認できないが確実に近付いている。
来た…
山本はもう一度、銃を握りなおした。
【残り23人】
420 :
書き手A:02/07/27 00:17 ID:hU1T17Bt
では最萌え投票行って来ます。
421 :
◆xYQkNOZE :02/07/27 01:07 ID:N8gvScnI
昨晩ふらいんぐして恥さらしたので匿名で投票しますた〜
76 公平
「何だよこれは…」
神宮前駅にあるコインロッカーの前で谷繁は毒づいた。
古田から指示された番号の扉を開けると、そこには草刈り用の鎌が置いてあった。
いや、良く見れば柄の先に鎖が繋がっており、先端には鉄の分銅がついているのが分かった。
…これが武器だというのか?古いカンフー映画でもあるまいに。
「贅沢言っとったらあかんで」
イヤホンから古田の声が流れ込んで来た。
「相手はほとんど丸腰やよってな、そんなに差を付けたら不公平やろ」
楽はさせないということか。いいだろう。
鎖鎌を手にして振り返ると、ベンチに外人2人が座っている。
ゴメスは黙々と散弾銃を磨き、ギャラードはトカレフを弄んでいる。
最初の抽選で手に入れた武器だ。
外を見ると、夜の雨の中から熱田神宮の森が目に入ってきた。
あそこに落合と正津がいるらしい。
「恨みはないが、狩らせてもらうぜ」
頭の中では狩りのプランが練られている。
古田の思い通りに動くのは癪だが、どうせなら派手な場面を演出してやろう。
谷繁は2人の外人へ歩み寄った。
【残り23人】
77 楽園を求めて
高架下で2人の男が肩を寄せあっていた。
全身を濡らす雨が体力を奪う。
春とは言え、3月の夜はまだ冷え込む。
「もうすぐだ」
とにかく誰かと合流したい。
そう思った筒井と森は、紆余曲折の末にテレビで見た落合たちを思い出した。
互いに助け合い、励まし合う姿。
自分達が好きだったドラゴンズがまだそこにある。
2人はそう思った。
「夜のうちに行くぞ」
筒井はそう告げた。
頷いた森はナゴヤ球場前駅の瓦礫から見つけた青龍刀を握っている。
あまりに重いから途中で捨てて行こうと筒井は言ったが、森は聞かなかった。
「大豊さん…僕たちを守って下さい」
そう青龍刀に祈る森を筒井は冷ややかに見ていた。
「死んだ人間に何ができる。生きている奴だけが頼りだ」
そう言い放つと、筒井は雨の中へ走り出した。
大豊の遺品を両手に持ち直すと、森も後へ続いた。
今の2人は知る由もない事だが、間もなくそこは狩猟場になる。
【残り23人】
424 :
代打名無し:02/07/27 16:29 ID:FyDNFyzE
78 賢者の贈り物
「雨、ひどくなってきましたね」
久慈がそう言って関川を振り返った。
降り出した雨に、慌てて近くの民家のガレージに飛び込んだ関川、久慈、遠藤の3人。
これからどうしたものかも分からずに思案に暮れていたところへの雨だった。
「これからどうするんですか?」
不安そうに遠藤が尋ねた。
「・・・・・」
関川は答えずにジッと降りしきる雨を見つめていた。
さっきの放送でまた何人もの死亡者の名前が読み上げられた。
確実に減っていくチームメイトたち。
自分達もいつまで無事でいられるか・・・。
「セキさん」
身動き一つしない関川を気遣うように見ながら久慈はその隣に座った。
逃げても地獄、逃げなくても地獄。
この恐ろしいゲームが始まった時からそれは分かっていた。
主催者達に抗う術のない自分達にとって、生き残ろうと思えば誰かを殺さなくてはならない。
最後の一人にならなければ生き延びることはできないのだから。
425 :
代打名無し:02/07/27 16:30 ID:FyDNFyzE
「セキさん、いざとなったら俺のこと殺してくださいね」
いつもと変わらぬ顔で、しかもちょっと笑顔で久慈はそう言った。
「テル、それは俺のセリフだ。最後、俺とお前だけになったら、お前は俺を殺して生き延びてくれ」
「俺なんか生き延びてもしょうがないですよ。俺よりセキさんが生きてた方がいいですよ」
関川は少し顔を上げて久慈を見た。しかし再び視線をコンクリート打ちっぱなしの床に向けた。
「・・・お前が死ぬのは・・・嫌だ」
「俺だってセキさんが死ぬのは嫌ですよ・・・」
久慈も同じように床に視線を落とした。
そんな2人の会話に口も挟めず遠藤は少し離れて座っていた。
自分にもそうやって思い合える仲間がいてくれたら、そうしたらこのゲームの中でもう少し救いがあったかもしれない。
今はとりあえず半ば無理やりこの関川たちにくっついてはきたが、仲間と言える関係ではない。
(・・・っていうか、この3人でいて、いざとなったら俺、真っ先に殺されるんじゃ?)
そう思い当たって遠藤は一瞬戦慄した。が、今更離れて独りで行動する勇気もなかった。
いざという時のことはまだ考えないようにしよう、と思った。
雨はいよいよ激しさを増してきていた。
雨音がうるさく辺りを包んでいた。
その中に溶け込みながら、かすかに異音が響いた。
何かの爆発音。それも、大きな・・・。
3人は視界の効かない土砂降りの雨の向こうを凝視した。
【残り23人】
426 :
代打名無し:02/07/27 16:32 ID:FyDNFyzE
78 背負うもの
井端は雨に濡れながら目の前で起きたことを呆然と見つめていた。
中日ビルに入って、上の階にある中日ドラゴンズ本社のフロアに着いたところで大西と藤立に出くわした。
そして有無を言わさず2人に腕を引っ張られるようにして、今来た階段を駆け下りさせられた。
間一髪、外へ出たところで上から激しい爆発音が響いたのだ。
降ってくるガラスや瓦礫から身を守るように、転がるようにしてなるべく遠くへと離れた。
なんとかバスターミナルの屋根の下まで来て、煙の立ち上るビルを見上げた。
「危なかったな」
大西と藤立が声をかけてきた。
「・・・なんなんですか、これ」
井端はそう尋ねるのがやっとだった。
「トラップだったんや。誰かが来ると予想しとったやつがいたんやろ。ドアを開けると時限装置が作動するようになっとったらしいわ。俺らがドア開けたらいきなり警告音が鳴り出しよって」
藤立はそう言うと大きく息を吐いた。
「俺達も来たし、井端も来たんやから、仕掛けた誰かさんの読みは当たったわけやな」
藤立の口調は軽かったが、その表情は重かった。
「井端、無事だったんやな」
大西が井端の肩を叩いてそう言った。
大西と藤立はさっきまで身を潜めていたバーの奥にあったTVでゲームの中継を見ていた。
井端が砦を築いて狂った様子も、それを久慈に救われた様子も見ていた。
「井端は知らんやろうから、教えとくわ。お前、久慈さんに助けてもらったんやぞ」
「久慈さんに?」
そう呟くように問い返して手にしていたナイフを見た。
「そのナイフも久慈さんが置いてったんや」
久慈が助けてくれたのだ。
『生き延びろ』
そう書いたのも久慈なのだろう。
427 :
代打名無し:02/07/27 16:34 ID:FyDNFyzE
「井端・・・お前これからどうするんや?」
大西が問いかけた。井端はすぐに返事が出来なかった。
「大西さんたちは?」
「俺らか? まあ、適当に名古屋の名所巡りでもして生きとるわ」
大西はそう言うと藤立を振り返って笑った。
「井端、お前も一緒に行かへんか? こんなゲーム、なるようにしかならんわ。足掻いてもしゃあないやろ。死ぬ時は死ぬ時や思うて、のんびりしといたらええ」
大西に誘われて井端は少し目を伏せた。
本当に足掻いても仕方のないことなのだろうか。
死ぬ時は死ぬ時、確かにそれはそうかもしれないが、だからと言ってのんびりとその運命を待つだけなのか。
「すいません。俺はもう少し1人で・・・」
「そうか。ま、ええわ。でも折角久慈さんに助けてもらった命やぞ。死に急がんとけよ」
そう言われて井端は頷いた。そして2人から離れた。
久慈に助けてもらった命。そしてまた今も大西と藤立にも救われた命。
生かされている。ならばそれに対して自分は何をするべきか。
これからどうすればいいのかはまだ思いつかなかった。
でも何か、どうにか出来ないだろうか。
井端はベンチに腰掛けて止まない雨を見つめていた。
【残り23人】
428 :
426-427:02/07/27 16:42 ID:FyDNFyzE
うーん、やってしまった。
>>426 1行目で「雨に濡れながら」とか書いたけど、バスターミナルの屋根の下にいるならもう雨に濡れてないんじゃ・・・。
というわけで「雨に濡れながら」は削除。
429 :
426-427:02/07/27 16:47 ID:FyDNFyzE
ってゆーか、章番号も間違えてるし・・・凹
>>426 は78じゃなくて79です。
すいません
80 賭
暗い雨の中を、ヘリコプターのライトが円形に照らし出す。
この悪天候の中を飛ぶのは危険だと本部に散々説得されたのだが、
数十人が殺し合いをやっているこの時に何を今更、と今中ははねつけていた。
本部の連中を見ていると反吐が出そうだ。奴等は感覚が麻痺しているとしか思えない。
人気だとか、視聴率だとか、そういうものに踊らされているのだ。
「なあ、まだ着かないのか…」
ごく狭い機内に詰め込まれる様にして乗り込んだ中村は、
当初から頻りに外を気にしていた。
ベイスターズのユニフォーム姿が目に新鮮だ。
私服で来るものとばかり思っていたら、
それはユニフォームを着て戦っているみんなに失礼だという。
「いや、そろそろでしょう」
雨の下に名古屋の街並みが霞んで見える。
「そうか…」
中村が何を考えているのか、今中には解らない。
ただ色々なことを考えては棄て、考えては棄て、
深く悩んでいるらしいことは見て取れた。
ずっと山本とバッテリーを組んできた中村を呼んだこと、
それは間違った選択ではないと思っている。
しかし、結果がどうなるか。
最良の選択が最良の結果を呼ぶとは限らない、という言葉をどこかで聞いたこともある。
山本の拳銃に弾は一発。
それが何処に飛んで何をもたらすのか、
考えつく限りの可能性を頭の中で追いながら、
今中は上着の内ポケットに重く沈んでいるニューナンブM60に触れた。
日本の警察官が持つ銃だから、性能などたかが知れている。
だが、撃つつもりは始めから持ち合わせていない。銃の形さえしていればいいのだ。
その為に一番手近にあった銃を拝借してきただけのこと。
いわばこれがユニフォームの替わりか。
命は惜しいが、山本をこのまま死なせたくない。
ギリギリの所に今中は立たされていた。
どちらかを棄てなければならないとしたら、どちらを…
『今中、中村、もう着くけど準備はええか。こっちはバッチリやでー』
いきなり無線で古田の声が入り、機内に緊張が走る。
終始無言を守っていたパイロットはやはり何も言わなかった。
ただ無線の声だけが響く。
『テレビ的な事も考えて、中村が一緒やって事は公表しとらんから。
きっと山本も驚くわ。んじゃ頑張ってな』
「くそっ」
小さく中村が呻いた。
深呼吸をしたが動悸が収まらない。
窓の下に、青いビニールのような物を纏った山本の姿が見えた。
【残り23人】
81 叫び
山本の目は、一瞬だけ見開かれた。
「武志」
雨に紛れた呟きは聞き取れなかったが、
口の形からそう言ったのだろうと今中は推察した。
だが、驚きは一瞬だった。すぐに山本の口元には昏い笑みが広がっていく。
「救えないな、今中。情に訴えようってのか。
俺が今更殺しを怖がってると思うなよ」
山本は立ち上がると同時にビニールシートを払い捨てた。
見る間にその姿が雨に濡れていく。
今中も、今し方その隣に降り立った中村も条件は同じだ。
五分も経たない内に全員濡れ鼠になってしまうだろう。
…それまで生きていればの話だが。
ヘリコプターを背後に待機させたまま、遂に二人は山本と対峙していた。
「山本さん、こんな事はもうやめて下さいよ。
こいつを殺して何になるんです」
「武志は黙ってろ。俺はずっとこいつが憎かった…
殺してやりたいくらい、憎かったんだ、畜生っ」
殺してやりたい、か。ここまで憎まれるのは、
ある意味では貴重な経験ではないだろうか。
何故か今中は他人事のように感心していた。
「で、今中。どういうつもりでこいつを連れてきた。
殺す前に教えろ」
いつの間にか山本はチーフスの銃口をこちらに向けていた。
答えなくても殺すというわけだ。
「…さあ。実は大して考えがあったわけじゃないんですよ。
ただ中村さんなら、山本さんの…何か、虚しさみたいなもんを」
言葉に詰まる。そこから先の言葉が思い浮かばなかった。
救う、ではないし、埋める、も何かが違う。
「どうした。答えられないんなら、今すぐ殺すぞ」
「…山本さん、駄目だっ」
中村が一歩前に出た。山本がぴくりと震える。
「武志、お前まで…お前までこいつの味方か!
そうだ、みんなそうさ、俺にもいい顔しときながら…
本当に好かれてるのはいつもエースの今中なんだ!
今中はただふんぞり返ってるだけなのに!
疲れるくらい周りに気を使ったって、俺の事なんか誰も…
俺はいつも笑ってて、優しくて、気配りが出来て、
それが当然だってのか!俺はそんな立派な人間じゃないっ!」
中村の一声が引き金を引いたのか、山本は一気に激昂した。
そこに「昌さん」の面影はない。
山本にとって「昌さん」は偽りの人格ではなく、道具だったらしい。
他人の目を自分に向ける為の?
けれどただそれだけで、あそこまで出来るものだろうか。
今中にはもう解らなくなっていた。どちらが山本の本性なのだろう。
…どちらも、という陳腐な結論を出さざるを得ないではないか。
あの優しさが全て打算から生まれたものだとは思えない。
「俺はライバル全員殺してエースになって、俺に戻るんだ!
その為には、ずっと俺を邪魔してきた今中を
殺さなきゃいけないんだよ!どうしても!」
山本は泣いていた。子供の様に泣きながら叫んでいた。
【残り23人】
434 :
◆xYQkNOZE :02/07/28 07:39 ID:32iNQdpn
おはよう。age
甲子園はアツかった。
中村さんは山本の魂を救えるのか?
全国の200万乙女も涙!
もう毎回クライマックス!
待て、次号!
436 :
代打名無し:02/07/29 06:42 ID:eWWsTnPe
保全age
437 :
代打名無し:02/07/29 12:38 ID:bGPz4EQV
マサvsタケシ(今中)もドキドキだが、中里&朝倉&川上組も気になるですよ
みんな、がんがれ!
82 窮鼠猫を
3、2、1、Fire!
木陰からゴメスが威嚇射撃の第一発を撃ち込む。
反応はない。
谷繁とギャラードは一気にドアを蹴破った。
瞬間、弓矢が迎え撃つ。
ボウガンを構えた落合と、鍋の蓋に包丁でとりあえずの武装をした正津。
「はん、少しはやる気になったってわけか」
床に転がったラジオからは、谷繁自身の声が聞こえていた。
盗聴。戦闘態勢に入っていたのはそういうことか。
分銅を振り回しながらじりじりと近づく。
正津はともかく、落合の武器なら接近戦に持ち込めばこっちが有利だ。
パァン
ギャラードのトカレフが煙を上げた。
落合はピッチャーの命である肩に血を滲ませてうずくまっている。銃声で耳鳴りがする。
今だ、
谷繁は鎌を振りかざして飛びかかったが正津の向けた刃に遮られた。
ぎりぎりと互いの刃で攻め寄りあう。脂汗が額を流れる。
谷繁はちらりとギャラードに目を移した。
何だよ、笑ってやがる。眺めてないで早くとどめを刺せよ。
その隙に谷繁の身体は正津に跳ね返された。
後方によろめくも再び体勢を立て直した谷繁の耳、いや誰もの耳に、そのとき、呻くように重々しい叫び声が入った。
82 啼く獣
涙を流しながらも山本の眼は鋭さを失ってはおらず、
むしろいよいよ炯々と、獣のそれの様に光っていた。
「山本さん」
中村がまた一歩、歩を進めた。
「来るな!撃つぞ!」
「ええ。撃ちたければ撃って下さい。覚悟はしていますよ」
余裕の声音だった。撃てるはずがないという自信に溢れた。
しかし万が一のことも考えられる。
今中はじりじりと前進しながら、山本に悟られぬよう慎重に
上着の中に手を差し込んだ。硬い感触がある。銃だ。
いざとなれば、威嚇射撃くらいはしなければ…
「山本さん。山本さんは、エースになりたかったんですか?」
「…ああ。そうだよ。何度も言わせるな」
「俺には、そうは聞こえませんでした。さっきの山本さんの叫びは、
エースになりたいと言うよりも…まるで」
「黙れ!」
山本が遮った。怯えが声に含まれている気がした。
しかし、中村は臆した様子も見せずに続けた。
「嫌われるのに怯えながら外っ面を取り繕い続けるのはもう嫌だ…って、
俺には聞こえました。違いますか?」
「違うっ!違う!俺は栄光が欲しいんだ!」
「エースになれば、もう誰にも自分を偽らなくていいと思ったんですか?」
「違う…」
山本は遂に押し黙ってしまった。
しかし眼光鋭く、歯を固く噛み締め、その形相には鬼気迫るものがある。
憎しみ、欲望、怒り、悲しみ、そういったものが綯い交ぜになった、
偽りの顔を脱ぎ捨てた人間の顔そのものなのかも知りない。
今中は周囲に無遠慮な人間だとよく評されたものだが、
この山本の顔を見ると、自分もよくよく猫を被っていたのだと思い知った。
しかしそれが普通ではないのか?
あまりに分厚い偽りの仮面を着けていた山本には、
身勝手だった頃の自分が何一つ己を偽らぬ存在に見えたのだろうか。
【残り23人】
440 :
◆xYQkNOZE :02/07/29 15:38 ID:99csKzVQ
筒井は、目の前で起きていることを即座に理解できなかった。
その場に立ちすくむことすらままならず、がくりと地面に膝をついていた。
向かった先の熱田神宮の一角がやけに騒がしい。
息を潜めて接近すると、その先に待ち受けていたのは、あの落合たちが襲われているところであった。
とうとうここも知られてしまったんだ…
呆然とする筒井に、更なる予期せぬ事態が起きた。
常に自分の背後にいたはずの森が…飛び出したのだ。
大豊さん、僕に、力を。
目の前にいる獲物にばかり気を取られていたゴメスが振り返ったときにはもはや遅かった。
森がその両の手で振りかざした青龍刀は、大きく袈裟懸けにゴメスの胸を切り裂いた。
絞るような叫び声を上げる。
自分に斬りかかった相手に発砲を試みるも、引き金にかけた指に込める力はなかった。
散弾銃をその場に取り落とし、ゴメスは、重い身体を引きずりながら、闇の中へと消えていった。
「邪魔が入ったか…これで終わったと思うなよ!」
捨て台詞を残してギャラードとともに立ち去る谷繁が一度だけこちらを見た。そのあまりに冷徹な視線と目が合って、筒井は小便を漏らしたかと思った。
やがて、静寂が熱田の境内に戻る。
あの、自分の背後で怯えてばかりいたショーゴーが。
目の前の敵に危険をものともせず立ち向かっていった。
非現実的な理想や建て前ばかりを主張して、一緒にいる意味すら忘れかけていた後輩が、今は自分より一回りも二回りも大きく見える。
筒井は、力の抜けた足でどうにか立ち上がり、目の前で剣を握りしめている森の側へと近寄った。
「ショーゴー、凄いな、見直したぞ、おい、ショーゴー。ショーゴー?」
筒井が肩を揺すった途端、森の身体は仰向けに倒れた。白目を剥いて気絶していた。
441 :
◆xYQkNOZE :02/07/29 15:38 ID:99csKzVQ
おっと結婚してしまった。
442 :
書き手A:02/07/29 15:41 ID:qAr5rgc9
げげ、すみません。「啼く獣」は83でお願いします。
84 裁き
「山本さん…誰に対しても本当の自分を出せなくなってから、
何年我慢したんですか?窮屈でしたか?
苦しかったから、今こうして爆発してしまったんですね?」
「なんだよ、気色悪ぃな。猫なで声出しやがって、
カウンセラーでも気取ってんのかよ、武志」
「いや。俺は山本さんの女房役として、もっと早く
その苦しみに気付くべきだったと悔いているだけです。
一番山本さんを追い詰めていたのは俺だ。
解りませんか?山本さんの敵は今中じゃない。
…俺なんですよ。俺を撃って下さい」
「中村さん!」
その背に向かって今中は叫んだ。
何を言い出すのかと思えば、撃ってくれ、だって。冗談じゃない。
本来中村は無関係だ。巻き込んでしまったのは自分だ。
どうして中村が死ななければならないのか。
山本を少しでも楽にしてやれるのは中村しか居ないと思って連れて来たが、
それはやはり誤りだったらしい。
大体、今の山本は完全に頑なになってしまっている。誰の説得も聞くまい。
「そんな方法で今中を助けようとしても無駄だ。
俺が発砲しようとした隙に仕留めようってハラだろう。
何しろスタッフは全員お前らの味方なんだからな」
「山本さん、そんなに俺が信じられませんか…」
「ああ、信じられるかよ!誰も信じてないんだ、俺は、最初っからな!」
遠くで雷鳴がした。まだこの雨は止まないらしい。
そして山本の心は閉ざされたまま。
こちらこそシツレーイ。挟んでしまいました。
440は章タイトル忘れたのではなくて438『窮鼠猫を』の続きです。
「…解りました。じゃ、こうしましょう」
今中が止める間も無かった。中村は駆け出し、一瞬のちに山本の左腕を掴んでいた。
「っつ…離せよっ、この」
「これだけ近ければ、隙も何も無いでしょう。撃って下さい」
今中も駆け出していた。馬鹿な。こんな筈ではなかった。中村を死なせるなど。
中村は山本の腕をずらし、チーフスの銃口を己の左胸に宛がっていた。
「中村さん、やめて下さい!こんな事…俺はそんなつもりじゃ」
「いいんだ。ヘリの中で覚悟を決めたから。
…さあ、山本さん。俺を殺して下さい。
その代わり…俺を殺したら、もう無理に自分を押さえつけないと約束して下さいよ。
少しくらい我がままになっても、誰も山本さんから逃げたりしませんから。
皆、山本さんが好きなんです」
死を以って証明するとでも?やめてくれ。そんな話は美しすぎて現実にはそぐわない。
「中村さん、山本さん!もうやめて下さい!」
「…武志、お前そこまで」
山本の顔が、ふと和らいだ。
先程までの、獣か鬼かという表情から一変し、
いつもの優しい「昌さん」に戻っていた。
いや、それ以上に素直な温かささえ感じられるような…
「信じても、いいのか…?」
次の瞬間、今中は硬直した。
あの、もう二度と聴きたくないと思っていた
忌まわしい電子音が耳に届いたかと思うと、
「あ…武志…」
更に二度と聴きたくないと思っていた軽い爆発音がそれに続いた。
山本の体が、赤い血の線を引きながらゆっくりと頽れる。
いや、それはもしかしたら一瞬の出来事だったのかもしれないが、
今中には堪らなく長い時間に感じられた。
それでいながら自分の体はぴくりとも動かない。
嘘だ…
考えるまでもなかった。山本の首輪が爆破されたのだ。
血溜まりが雨に混じって広がり始め、主を喪ったチーフスが、雨に濡れて転がる。
そこで漸く今中の体感時間は平常に戻った。
たっぷり一時間はその場に立っていたような疲労がどっと押し寄せたが、
今はそれどころではない。
「…や…山…本…さん…」
中村ががくりと膝をつく。
今中は振り向き、ヘリコプターを睨み付けた。畜生。
「…どういう事や!何故山本さんを殺した!」
降りてきたパイロットに詰め寄ると、やはり無言で無線機をつき付けられた。
『参加者以外に危害を加えようとした奴は、その場で始末する。
運営側として当然の措置やろ?
ついでに首輪の動作チェックも出来たしな。こうやって使う分には問題ないみたいで良かったわ』
雑音に混じり、古田の冷徹な声が耳を突き刺す。
馬鹿な…こんな馬鹿な、こんな…
「あ、あ、あ…こんな馬鹿なことがあってええんか!こんな事が許されると思っとんのか!」
最早それ以上は声にならず、今中は頭を抱えて蹲った。
豪雨に体を打たれるのも気にせず、ただその場で泣いた。
【残り22人】
>>438 鍋の蓋に包丁…ついでに鍋をヘルメットにした正津を思い浮かべますた(W
85 危険な相手
どれほどの時が経ったのだろう。
井端はゆっくりと辺りを見回した。
ベンチに座ったまま少し眠ってしまっていたらしい。
我ながら無防備だな、と自嘲気味な笑みを浮かべながら井端は立ち上がった。
雨は小降りに変わっていた。
少し移動しよう。このままここにいて好戦的なやつらの餌食になってもしょうがない。
もう少し安全なところへ行って今日は休もう。
そう思って歩き出した井端の足は自然と元来た方へと向いた。
鶴舞公園で自分を助けてくれたのが久慈なら、久慈はまだその近くにいてくれるだろうか。
会えたらお礼の一つも言っておきたかった。
それにしても人のいない栄の街の夜は、どことなく薄気味悪い。立ち並ぶビルも入る気を起こさせない。
足を早めて若宮大通を越えかけたとき、井端は前方に街灯に浮かぶ人影を見た。
(立浪さん・・・っ)
井端はとっさに物陰を探した。
そして上を通る名古屋高速の橋脚の陰に入ろうと身を翻した瞬間だった。
「井端か?!」
立浪の声が自分の名を呼んだ。走ってくる足音もした。
「・・・立浪さん」
井端は観念して立浪の前に出た。
立浪のユニフォームが返り血に染まっている。雨に濡れて滲んだそれは不気味さを増していて、井端は思わず目をそむけた。
「ちょうど良かった。荒木を知らないか?」
ギラギラした目をして立浪はそう尋ねた。
「さあ・・・? 昼ごろ福留といるのは見かけましたが、その後は知りません」
井端は努めて冷静に答えた。
立浪が荒木を探している。
荒木を狙っている?
「ふん、まだ福留と一緒か・・・」
立浪はそう呟くと手の中のナイフを見やった。井端もつられるようにそのナイフを見た。
赤黒い血がこびりついていた。
自分のナイフにも同じように鈴木の血がついているのだと思うと、井端は唇を噛み締めた。
そんな井端に立浪はニヤリと笑う。
「二遊間コンビ、か。なあ井端、お前、誰がセカンドだと一番いい?」
危険な問いかけだ。
井端は短く息を吐いた。
「・・・まだ自分のことで精一杯ですから。コンビネーションは相手が誰でもまだまだ・・・」
井端の答えに立浪は少し不服そうな顔を見せたが、何も言わなかった。
クルリと背を向けた立浪に井端はホッと息をついた。しかしすぐに厳しい顔になる。
荒木が狙われている。
どうすればいい?
このまま背後から立浪を・・・、いや・・・。
左手をナイフに、右手を銃に触れさせながら、井端は立浪の背中を見つめた。
その時、立浪が振り返った。
「井端、良かったらお前も休んでいかないか?」
「え?」
思いがけない誘いに驚く井端に立浪が顎で指し示したのは、道を渡った先の『ランの館』。
「なかなか快適だぞ。まさにオアシスだ」
井端は立浪とランの館を見比べた。
立浪と一緒にいればきっと荒木を救える。
立浪を止められる。
井端はコックリと頷くと、立浪の後についていった。
【残り22人】
タツさんの心理が読めなくてドキドキです アワワ
イバタンどうなるんだーー!気になる木。
やっぱり荒木のために動くイバチン萌え〜
イバチン、絶対死んだりしないでね。
あ、でも荒木のためなら・・・いいかも
86 殉教者
したたるなどという生易しいものではない、流れ出る血によって途切れることなく描かれた一本の線がゴメスの歩いた道筋を示していた。
己の命がもう長くないことを悟った彼はせめて、最期のときを迎えるに相応しい場所へと向かうべく進んでいた。それだけが、彼の身体を動かしていた。
白い十字の掲げられたその建物を目指し、階段を登る。歩を進めるたびに、胸の傷が口を開けようとしている。生暖かい感触が触れる。
重い扉に上体を預け、とうとう、ゴメスはそこへたどり着いた。
祭壇の前に掲げられたイエス像。
神に仕える者として、己の死に場所はここしかなかった。
うずく胸の傷と、膝に抱えた爆弾。不思議と、それでも足は祭壇へと向かっている。
ようやく最前列へたどり着かんとするとき、ゴメスは霞んだ視界の中で、椅子に腰掛ける誰かの姿を認めた。
もう息をするのも苦しかったが、それでもその人物を確かめんと覗き込んだ彼は次の瞬間一気に全身の痛みが消えるのを感じた。
ゴメスは、確かにそこでキリストの姿を見たのだ。
右腕から血を流し、既に息絶えた野口茂樹。
その姿は、全ての罪を背負って人間達のために十字架へとかけられたイエス=キリスト。
ああ、神はこの荒れ果てた世界にひとり子イエスを遣わしたのだ。
そしてその死は愚かな罪びとである私達を背負ったものであり、神の私達への愛の証なのである。
ゴメスはそして、静かに眠りについている野口の前にひざまずき、両手を胸の前で組み、祈りを捧げた。
万物の終りが近づいている。だから、心を静かにし、身を慎んで、努めて祈りなさい。
何よりもまず、互の愛を熱く保ちなさい。愛は多くの罪をおおうものである。
語る者は、神の御言を語る者にふさわしく語り、奉仕する者は、神から賜る力による者にふさわしく奉仕すべきである。
それは、すべてのことにおいてイエス・キリストによって、神があがめられるためである。
栄光と力とが世々限りなく、
彼にあるように、
アァメン。
中日ドラゴンズ主砲でありながら神に命を捧げた男、レオ=ゴメスは、全ての人間の罪を背負いし神のひとり子イエスの名古屋における姿、野口茂樹の膝にもたれかかり、異国の地南山教会の礼拝堂の中で、その生涯に幕を閉じた。
【残り21人】
(ペテロの第一の手紙第四章7-8、11より引用)
QDRカコ(・∀・)イイ!!
漏れ的にQと谷繁がイイなんて思ったりしてみるテスト
456 :
代打名無し:02/07/30 06:41 ID:HCqN20nQ
朝なのでageておく
457 :
代打名無し:02/07/30 11:32 ID:/ULNgwM3
>453、454(・∀・)イイ!
つうか何か今までのとは違った意味で泣けてきた…
Qさんカコイイ!
個人的には主役2人とQさん、関さんを応援してます。
Qさんには最後の方まで生き残っててほすぃ
87 敵地へ
山本の死体の目を閉じさせて丁寧にビニールシートに包むと、
中村はゆっくりと立ち上がった。
右手に山本の遺した銃。
ヘリコプターの方を振り仰ぐと、今中が無線機に向かって何やら言っていた。
あの無口な…何も言うなと命令されているのだろうが…パイロットは、もう機内に引っ込んでいる。
「今中」
「ああ…中村さん。これからどうします。何なら横浜まで送りましょうか」
今中の目元は赤かった。自分のことで精一杯で気付かなかったが、
ポーカーフェイスの代名詞のようなこの男が泣いていたらしい。
「お前は本部のスタジオに戻るのか」
「ええ。…それしかないですよ」
あいつらに一泡吹かせてやりたいですからね。そう今中は中村の耳元で囁いた。
恐らく今の言葉、さすがに本部にキャッチされてはいまい。
時期を待って内側から崩す心積もりというわけだ。
「俺もドームに行く」
「いや、それは…危険ですよ。中村さんはもう横浜の人間だ。
呼び出した俺が言ってもアレやけど…
これ以上俺たちのせいで迷惑かけられませんよ」
「落とし前をつけたいんだ。中日時代のことを清算しないと、
俺は横浜の一員になれない気がする」
山本の死を看とる為に名古屋に来たわけではない。
こうなったらとことん関わってやる。
今中はしばらく俯いていたが、解りましたよ、とため息混じりに言った。
「…一応本部に取り計らってみます。どうなっても知りませんよ」
「覚悟はしたって言っただろ」
こんなプログラムを実際に見せ付けられて、黙って見過ごせるものか。
山本の苦しみを暴き引きずり出し、一瞬のみ救ってくれた事だけには感謝してやってもいいが。
二人は再びヘリコプターに乗り込んだ。
目指すは「敵地」ナゴヤドーム。
「いつかチャンスは来ると思います」
今中が誰にともなく言った。
【残り21人】
460 :
代打名無し:02/07/30 18:05 ID:ZxzJjxJs
中村さんがんがれ!
ベイファソの漏れも応援するぞ!
88 静かなる・・・
立浪に連れられて入ったそこはまるで別世界だった。
煌々と点けられたライトの下、花と緑が溢れていた。
雨に濡れてすっかり冷え切っていた井端の体も、室内の熱気に包まれて次第に暖かさを取り戻していった。
「あっちにカフェがある。冷蔵庫に食材が入っているから勝手に食べるといい」
やけに親切な立浪を訝りながら、井端は指された方へ足を運んだ。
もっとも立浪が自分を殺すつもりならさっさと殺しているだろうし、今からでも気が変われば殺しにくるだろう。
そうなったら応戦するだけだ。立浪は武器を預けろとも言わなかったから、銃もナイフもまだ手元にある。
背後を気遣いながら通路を抜けると、広い吹き抜けの中に観葉植物に取り囲まれてカフェがあった。
キッチンに回ると立浪が言ったとおりに冷蔵庫に食材が詰め込まれたままになっている。
しかし井端は何も食べる気が起きず、とりあえず湯を沸かし、コーヒーを淹れることにした。
「ふぅ・・・」
誰もいないフロアの真ん中のテーブルについて、井端は椅子に身を預けた。
何の音もしない静かな空間だった。
ガラスの向こうには、ライトで見辛いが暗い夜空が広がっているようだ。
今までのことが夢のようだ。いや違う。今のこの状況が夢なのか。
どれくらいそうしていただろう。
ガサッという物音で井端は振り返った。
「井端、俺にもコーヒーを淹れてくれないか」
立浪がゆっくりとした足取りで近づいてきた。
井端は立ち上がって、その立浪の姿に目を見開いた。
立浪の血に汚れたユニフォームに生々しく鮮血が飛び散っていた。
「立浪さん・・・まさか・・・っ」
井端は駆け出した。立浪の横を抜け、さっき来た通路を逆走した。
そしてエントランスにたどり着いた井端が見たものは、血溜まりの中に倒れている小山の姿だった。
「小山・・・?」
井端は立ち尽くした。
何も気付かなかった。自分がしばし休んでいる間にこんなことが起きていたなんて・・・。
「井端は飯は食わんのか?」
背後から声が掛かった。振り返ることが出来ない井端のすぐ後ろに立つ気配がした。
「ほら、食え。腹が減ってはなんとやら、だ」
横から立浪にパンを渡されて井端は慄然とした。
立浪は小山を殺したことをなんとも思っていない。人を殺しておいて、普通に食事が出来るなんて。
「心配するな。お前はまだ殺さん。それを食ったら適当に好きな場所で眠れ」
立浪がそう言うと井端はようやく立浪の方を振り向いた。
「立浪さん、なんで小山を殺したんです?」
「うん? 突然飛び込んできて掴みかかってきたから刺したまでだ」
立浪は平然と答えて井端に背を向けた。それはあまりに無防備に見えたが、だからといって不穏な動きをすればすぐに反撃されるだろう。
「まあ、今日はもう眠れ。俺も寝る」
そう言って立浪は木々の重なる通路へと消えていった。
それを見送った井端は手に持たされたパンに視線を落とした。
立浪がオーブントースターで焼いてきたらしいそれは、湯気と香ばしい匂いを立ち上らせている。
血溜まりの中の小山とそれはあまりにも異常な組み合わせだった。
『まだ殺さん』と立浪は言った。
しかしいずれは殺すつもりでいるだろう。いつかは自分もそこの小山と同じようになるのかもしれない。
だがしかし、その時にはこっちだってむざむざと殺られはしない。
井端は踵を返すと立浪とは逆方向の通路に向かった。
手にしていたパンを齧った。
思いのほか、美味しかった。
【残り20人】
残り人数が半分になったね…
89 代償
焼け付くような日差しの元、福留は一人、ひたすらに素振りをしていた。
努力に勝る天才無しという言葉がある。自分はそれを信じてここまでやってきた。
下手だ下手だと馬鹿にされたショートの守備も、
泥だらけになって毎日練習した。だが、あればかりはどうしても上達しなかった。
今年からは外野手での登録となる。
これ以上チームに迷惑はかけられない…せめて打で貢献するのだ。
振って、振って、振り抜く。それしかない。
ふと喉の渇きを覚え、福留は手を止めた。
今日は暑い。何か飲まないと脱水症状を起こしかねない。
バットを地面に置くと、やけに黒い自分の影が目に入った。日差しが強いからだろうか。
それから福留はじっと影を見つめていた。
喉が渇いて堪らないのに、何故か影から目を離せないのだ。
どれほどの時間が経っただろう。影がぴくりと動いた。福留の動きとは関係なく。
ほとんど本能的に逃げなければと思ったが、体が動かなかった。
助けを求めようにも、声も出ない。
影はやがて福留の足首に纏わりついてきた。
そのまま地面の中にゆっくりと引きずり込まれる。いつの間にか全身は冷え切っていた。
「誰か…たす…け…」
漸く出た声は、しかし、ひどく掠れてとても聞き取れるものではなかった。
飲まれる。影に飲まれてしまう。
どこからともなく呪詛の言葉が聞こえてくる。
人殺し…と。
「孝介!おい、孝介!」
誰かが体を揺さぶっている。
「あ…?荒木…?」
重い瞼を開けると、荒木の顔が視界を蔽っていた。
…そうか、今のは夢か。福留は息をついた。
「うなされてたぞ…お前。嫌な夢でも見たのか」
ソファの上に上体を起こし、福留は全身が冷や汗にまみれていることに気付いた。
「ちょっと、な」
雨音がうるさい。福留は微かに体を震わせた。
「寒いか?毛布探してきた方が…」
「…いい」
この寒気も悪夢も、自分に課せられた罪だと思えば軽いものだ。
「これからどうするかな…」
荒木が外を眺めながら独り言のように言った。
【残り20人】
465 :
代打名無し:02/07/31 06:56 ID:5LxfFWx0
とりあえず保全age
age
467 :
代打名無し:02/07/31 23:25 ID:g9PHvr7H
あげとこか
90 悪の華
立浪は3つ目の部屋で井端を見つけた。
蘭のむせ返るような匂いの中で、井端はベンチに横たわっていた。
眠っている、その顔は険しい。
眉根を寄せて、唇の端を引きつらせて、見ている夢は悪夢かも知れない。
「・・・・・・」
立浪はジッとそれを見下ろした。その顔に笑みが広がった。
いい餌が手に入ったものだ。
荒木は井端を慕っている。
どんなにうまく身を隠していても、井端が呼べば出てこざるをえまい。
出てきたところで井端を楯に取れば荒木は手も足も出まい。
そうして荒木をなぶり殺してやる。
セカンドは俺のモノだ。他の奴らに守らせてたまるか。
(井端、お前に二遊間コンビ、セカンド守備は俺が一番だと言わせてやる)
立浪はニヤリと笑い、もう一度井端の顔を覗き込んだ。
改めて思う。いい人質だ。
立浪は満足げな顔でゆっくりとその部屋を出て行った。
咲き誇る蘭の群れが妖しくライトに浮かび上がる。
井端はその中に埋もれるようにして眠り続けた。
【残り20人】
お花畑(?)で眠ってるイバタンが、眠ってるうちに別のお花畑に行っちゃったりして…ゴメソ
470 :
代打名無し:02/08/01 06:50 ID:WuRPWKXo
>>468 立浪コワイヨー
井端ガンガレ
ついでにage
91 やがて、悪夢は終わるだろう
シャワーを浴びて戻ってくると、居間のソファで泣く前田を見つけた。雷のお陰か、電気が今になって復旧した様子である。
あれほど、見るなと言ったのに…
掠れ声は声にならない。震える手で指差すテレビ画面の向こうには、
『山本昌 死亡』
のテロップが、赤文字で浮かび上がっていた。
「昌さ……首輪が…なかむらさ………危害…」
言うな。無理して言わなくていい。
紀藤は前田の肩に手をやった。
たかだか18の、世間を知らない子供にこれは酷だ。あまりにも。
ぽんぽんと、優しく背中を叩いてやる。まるで自分の子供にそうするように。前田はゆっくり、紀藤の胸に頭を預けた。
やがてテレビでは前田がリアルタイムで観ただろう出来事がリプレイされる。
今中との対面。そこにはなぜかかつての女房役、縦縞のユニホームが目に新しい中村の姿も。
中村を罵倒する山本。涙と雷鳴。
そして…血の飛沫。
紀藤は、たまらずテレビを消した。
ポケットの中から取り出したハンカチで、前田の顔を拭う。
「もう、休め」
前田はこっくりと頷いた。そのまま、紀藤の膝に頭を預ける。
山本、お前は死ぬ間際、何かを手に入れられたのか?
お前が欲しがっていた何かは、確かにお前の望むものであったのか?
それはもしかしたら、お前はとうに手に入れていたものなんじゃなかったのか。
お前が愛したチームメイト達に愛されるということ。
たった一年の付き合いだったが、俺だってそんなこと、わかっていたよ。
お前は最高の左腕で、ドラゴンズ投手陣のリーダーだってことを。
「全部……」
暫く無言だった前田が、口を開いた。
「……全部、夢だったら、いいのに」
「ああ、……そうだな。こんな悪夢、早く醒めてしまえばいいな」
膝の上の前田が少し、笑った。
「目が覚めたら…今まで見たことは全部嘘で、皆と一緒にまた、いつもみたいに、ナゴヤ球場で練習できればいいな」
「おいおい、ナゴヤ球場か。早く一軍に上がってくれよ」
今度は、満面の笑みを見せた。先ほどのショックでも何とか大丈夫な様子を見せる前田に、紀藤は安堵した。
「おとうさん……僕、いつか、おとうさんと、いや、紀藤さんと……ナゴヤドームでバッテリーを組めたらなって……」
全て言い終わらないうちに言葉は欠伸の中に飲み込まれ、やがて前田は寝息を上げた。
おやすみ、俺の息子よ。
せめて、今はいい夢を。
雨音が耳に心地よかった。紀藤も、背もたれに身体を預けて目を閉じた。
紀藤カコイイ(w
紀藤イイ!
会社の昼休みにチェックに来て、思わずウルウルきますた
昇竜館て西区なのでは?
西区は立ち入り禁止区域になってますが、紀藤は大丈夫なのですか?
>>475 アヒャアヒャ
首輪のタイマー止まってまつ、ということで(昌さんのは手動爆破)
477 :
代打名無し:02/08/01 14:04 ID:O3oQzi2+
>476
あ、そっか(w
では、いきなりタイマーが復旧して紀藤があぼーんしちゃわないこと祈ってます(w
>>477 うへえ勘弁ちて
昨晩から娘。祭りに気を取られて頭回ってないYO
\ ∧_∧ /
___ \ ( -w-). ∧_∧ /
_|__D__| \ ⊂. つ (;_;=) /
(⇔ヽ⇔;;) \ | || ((∽) ) / [^^||] (´Θ`)
( ;;3) \ ∧∧∧∧ / ( ━━⊂ ヽ
| | | \ < バ .> / || | ( ヽ
(_(__) < ト ド .>/ (( )
< ロ ラ >
―――――──―――――――< ワ ゴ >―――─――――――――
< な ン >
< 予 ズ > | ヽ∧_∧
∧_∧三 / < 感 . >\ .| 」(・Д・;)
/つo´ )三 /i i i i< .>β__\ ||⊂ ◎)
ヽ 33つ三 /i∧_∧i i ∨∨∨∨(;`ε´)i\ | | |
Y 人 ヽ三 /i (;Д⊂ヽi i(;;´昌`)( )i i i\ (_(_)
(_) J三 /i i i( V ノ⊂;;; つ| | |i i i i i\
/i i i i iし___)__)i i iヽ ヽ ヽ i i i i i\
/ \
うへぇ・・・小山失敗した・・・
92 嘘も方便
外を眺めながら、荒木は何となくバッグの中にしまい込んだ銃の事を思い出していた。
DESERT EAGLE.50AEと名の刻まれたそのハンドガンは、
自分が日頃想像していた「銃」よりも重く大きく、とてもまともに扱える代物ではなさそうだった。
やはり、映画のように片手で撃ちまくるというわけにはいかないらしい。
もしかしたら、同じくバッグの中に眠っているごく普通の木製バットの方が
扱いなれているし、戦力になるだろうか。
しかし、ボウガンやら拳銃やらを相手取ってはバットで応戦できるとも思えない。
今の荒木には、完全にナーバスな状態に陥ってしまった福留を守り抜く自信が無かった。
人を殺す事に対する抵抗も未だ大きい。
命を救ってくれた福留の為、と己に言い聞かせるのだが
どうしても空恐ろしい思いに背筋が冷える。
しかしとっさとはいえ、福留はこの重圧を押し退けて自分を助けてくれたのだ…
荒木ははっと我に帰った。しまった、またもや考えがループしてしまった。
本当に成長しない自分が情けない。
ああ、井端さん、井端さんならこんな時どうしますか。
こんな時、井端に頼っていられたらどんなに楽だったか。
けれど井端はいない。自分で考え、行動しなければ。
「荒木」
背後から呼びかけられ振り向くと、ソファに座った福留が
自分のバッグからガバメントと日本刀を取り出していた。
「孝介、まだ寝てても…」
「俺ならもう大丈夫だ、よく寝たから」
言いながら、福留は銃と刀を腰のベルトに挿した。
大丈夫と言うが、明らかに顔色が悪い。
「無理すんな」
「無理なんか…ほら、俺が立ち直り早いの忘れたのか?」
な、と言って福留は笑った。
不自然なほど明るい笑顔だった。
「…そうか、そうだな、お前、エラーしてもケロっとしてるような奴だもんな。
心配して損した」
荒木も、無理矢理だが笑顔を作ってみせた。
せっかく福留が必死で嘘をついているのだ、それに乗ってやらなくてどうする。
「お前も少し寝ろよ。今度は俺が見張ってるから」
福留の足がふらつくのを見ていない振りをし、荒木は頷いた。
禁止エリアが発表されるのに備えて、少し眠っておいたほうが良さそうだ。
「じゃあ、一時間だけ頼む」
念の為にバットだけバッグから出すとソファの傍に置き、荒木は目を閉じた。
深く眠る自信はなかった。悪夢を見るだろうか。
【残り20人】
483 :
書き手A:02/08/02 00:43 ID:SwGeAG9s
>379
素晴らしい!グッジョブ!
小山カコイイじゃないですか。正ちゃんがいい味出してますね(w
484 :
書き手A:02/08/02 00:45 ID:SwGeAG9s
間違えた、上のは479氏宛てです…
ノーヒットノーランで浮かれていたとはいえ、失礼しました。
485 :
代打名無し:02/08/02 12:31 ID:iUTyqtbA
保守age
486 :
代打名無し:02/08/02 22:01 ID:te3/9prf
93 つかの間の平和
長い夜が明けた。
朝の定時放送が入る。相変わらず神経を逆撫でするような古田の声が響いてくる。
「えー、じゃあ、立ち入り禁止区域ですがー、今日はぐぅーっと下がって南区。南区を立ち入り禁止にしますー。近いところにいる人もいるようですがー、うっかり区の境界線をまたがないよう気ぃつけてくださいねー」
それを聞いて、井端はベンチから立ち上がった。
井端がエントランスを通りかかると、当然のことながら小山の死体はまだそこにあった。
それがまだ非日常の中にいることを解らせる。
「昨夜はよく眠れたか?」
カフェに行くと既に立浪がいた。それどころかテーブルの上には簡単な朝食の用意が整っていた。
迎える立浪は普通の、いつもの立浪に見える。でも違うのだ。
「なんで俺にはそんなによくしてくれるんです?」
答えはなんとなく解っていたが、井端はそう尋ねた。
立浪はニヤリと笑う。
「お前は荒木に対していい人質になるからな」
ああ、やはりそうなのだ。自分は荒木と対した時に有利に事を運ぶための人質なのだ。
井端は考えていた通りの答えに小さく頷いた。
「じゃあお前は何のために俺についてきた?」
逆に立浪が問いかけた。井端は立浪をジッと見た。
「・・・立浪さんに荒木を殺させないためです」
井端は答えた。立浪も井端の答えは解っていたようで、表情一つ変えることはなかった。
「まあ食べろよ。今日は暑くなりそうだ」
一面のガラス窓から昨日の大雨がウソのように、明るい日差しが差し込んでいた。
井端は立浪に向かい合って腰掛けた。立浪はもう食べ始めている。
それを見ているとこのゲームが本当にバカらしいモノに思えてきた。
目の前にいるのは、敵・味方で言えば『敵』だろう。
なのにこんなにのんびりとした朝を一緒に迎えている。
平和だ。あまりにも平和なひとときだ。
このまま時が止まってしまえばいいのに。
「さて腹ごしらえもしたことだし、そろそろ荒木を探しに行くか」
日常のなんでもない言葉のように立浪はそう言った。
その一言で井端はキュッと唇を結んだ。
また悪夢が始まる。
【残り20人】
94 別れは突然に
「あ、誰か来ますよ」
遠藤が不意に通りの向こうを指差した。2人連れのようだ。
「立浪さんと、井端だな」
関川もそれを確認した。久慈も頷く。
こっちは名古屋駅に向かって歩いていたところだったが、どうやら向こうも同じ方へ行くところらしい。
3人は歩みを止めて2人が来るのを待った。
「あれは遠藤たちか?」
その頃、立浪たちも前方の3人に気付いた。向こうは立ち止まっている。どうやら自分達を待っているらしい。
「・・・・・」
立浪に続いて少し足を早めながら井端は立浪を見た。
相手が荒木じゃなければ、向こうから仕掛けてこない限り立浪も手を出さないだろう。
しかし、妙な胸騒ぎがした。
「あ、久慈さん」
井端はその中に久慈を見つけて嬉しそうにその名を呼んだ。助けてもらったお礼を言わなければ。
「久慈か。・・・久慈もセカンドをやってたな」
駆け寄ろうとした井端の隣で、立浪が呟いた。
井端は全身が凍りついたように動けなかった。
確かに久慈も何回かセカンドの守備についたことがある。しかし久慈の定位置は誰が見てもショートだ。
立浪のセカンド定位置を脅かすとは思えない。
それなのに・・・。
「・・・久慈さんっ、逃げてください!」
搾り出すように叫んだ井端の声と、立浪の投げたナイフは同時に久慈に届いた。
「テル!」
倒れかけた久慈の体を関川は抱きとめた。久慈の胸には深々とナイフが突き刺さっていた。
「・・・このやろう!」
よくもテルを・・・。
カッとして関川は立浪に銃を向けた。
井端はとっさに立浪の腕を引いて路地へと入っていった。
「チッ」
後を追おうとした関川は足を止めた。それより久慈の方をなんとかしなければ。
「テル! しっかりしろ! テル!!」
「・・・セキ・・さ・・・ん・・・・頑張って・・くださ・いね・・・・最後まで・・・生き残っ・・・て・・」
久慈の声はもはや途切れ途切れだった。
関川が揺さぶっても久慈の体からは次第に力が抜けていくようで、関川の腕に死んでいく重さがのしかかった。
やがて久慈は目を閉じ、がっくりと頭をたれた。
「・・・テル・・・」
関川は久慈を頭を抱え込むようにして肩を震わせた。
こんな風に殺されてしまった久慈の無念さ、そしてどうすることも出来なかった自分の無力さに、声も無く涙が零れた。
「関川さん・・・」
どうしていいのか分からず、遠藤はそう呼びかけた。
「・・・独りにしてくれ。どこかへ行ってくれ。ここからはもう独りで行かせてくれ」
関川は顔を上げずにそう遠藤に言った。遠藤は俯いた。
「これは返す。丸腰では困るだろう」
関川は持っていたベレッタを遠藤に向かって突き出した。
遠藤はためらった。
目の前で殺される久慈を見ては、やはり1人になるのは怖い。
しかし遠藤はそれを震える手で受け取ると、その場を離れるしかなかった。
「テル、お前の仇は俺が絶対にとってやるからな」
ひとしきり泣いたあと、関川は涙を拭ってそう久慈に言った。
「お前の前にあいつの首を持ってきてやるからな」
久慈の胸に刺さったナイフを抜き取り、握りしめた。
関川は歩道脇の陰になったところに久慈の体を運んだ。そしてゆっくりと横たえた。
「お前の銃も使わせてもらうからな」
久慈のバッグからデリンジャーと予備の弾薬を出して携帯する。
「じゃ、ここでちょっと待っててくれよ。すぐに帰ってくるからな」
答えることのない久慈にそう言って関川は立ち上がった。
立浪、テルの仇、殺してやる。
関川は井端と立浪が消えた路地の方向を睨むと駆け出していった。
【残り19人】
489 :
479:02/08/02 22:57 ID:Kus74q1W
ちょっと改訂
| \ ∧_∧ /
|__ \ ( -w-). ∧_∧ /
|D__| \ ⊂. つ (;_;=) /∧∧ ∧。∧
|山▼;) \ | ||; ((ξ) ) / [;^_^] (゚Θ゚)
.| ⊂) \ ∧∧∧∧ / ( )━━〜( 〜)
| | | \ < バ .> / || | ノノ
|_(__) < ト ド .>/ (( )
| < ロ ラ >
―――――──―――――――< ワ ゴ >―――─――――――――
< な ン >
< 予 ズ > | ヽ∧_∧
∧_∧三 / < 感 . >\ | 」(・Д・;)
(つo´ )三 /∧∧i i< .>__\ ||⊂ ◎)
( 33つ三 /( ・A;)i i ∨∨∨∨|_β__\ | | |
Y 人 三 /i ( <V>)i(;;´昌`)i i(`;ε⊂ヽi\ (_(_)
(_) J三 /i i i | | |⊂;;; つi ( )i i i\
/i i i i i(___)__) iヽ ヽ ヽ (__(_J i i i i \
/ \
490 :
479:02/08/02 23:03 ID:Kus74q1W
野口の手から出る血が逆・・・
491 :
代打名無し:02/08/03 07:04 ID:BBjXbJRy
毎朝1age
ミンナガンガレ
(0^ε^0)
山Q早くなんとかしる!
95 それぞれの夜明け
朝の定時放送で流れたラミレスの『アイーン体操』でラジオ体操をする川上と、座り込んだままの朝倉の横に寝転んで、中日ドラゴンズの未来のエース、『右の今中』こと、中里篤史は大いにふてくされていた。
雨はあがり、昇竜館のサーバは復旧したものの、肝心の本サーバが既に落とされており、不正進入は不可能となっていた。
恐らく、オフラインにして復旧作業が進められているのだろう。
「……なあ、どうするんだよ」
沈黙にたまりかねて朝倉が口を開いた。中里は応えない。
「なあ……、なあ!!」
揺り動かすと、中里は飛び起きた。朝倉の鼻先に、ワルサーの銃口を突きつけて。
「うるさいなあ…どうするもこうするもどうにもならないから何にもできないんでしょう何かあるなら言ってみてくださいよ、さあ、さあ!」
ぐいと鼻を押しつぶされる。これ以上鼻の穴を大きくされてはたまらない。
「お前が俺と組みたいって言うからついてきたんだろうが!一緒に考えてみようぜ?そうやっていつまでもふてくされてないでさあ」
「ふてくされてなんかいませんよどうせもう僕もあなたも死ぬんだからとっとと好きなところへ行ったらいいんじゃないんですか?当然そのときは僕のコイツであなたの頭を吹き飛ばしますけどね」
「中里…てめー、いいかげんにしろよ……?」
朝倉が床に転がしていた包丁に手をかけたそのとき、瞼の奥に火花が飛び散った。
「お前達、仲間割れもいいかげんにしろ!!!」
ゴツン、ゴツンと川上のゲンコツが、朝倉と中里の頭に食らわされたのだった。
「はい、仲良くする!いいな!!」
二人の手をむりやりもぎ取って握手させる。口を尖らせたままの後輩たち。
あーー、もう…お守りなんて、やってられないよ…。
井端、生きてるんだったら助けてくれよ…。
川上は窓の外に広がる、晴天の空を見上げた。
96 永遠の別れなんてない
窓の外から差し込む日差しで、紀藤は目が覚めた。
夜が、明けたのか。
ソファの上とはいえ、ずいぶんとゆっくり眠らせてもらった。
もう何日も、まともに寝ていないような気がした。
膝の上の少年を起こさないよう注意して動いたつもりだったが、環境の変化で過敏になっているのであろう前田も続いて目を覚ました。
「悪いな…、起こしたか」
「いつのまにか、寝ちゃいました。僕、枕が変わると寝られないんですけど、なんでかな、ふふ」
あと数時間もしないうちに、定時放送が流れるだろう。
首が吹っ飛ぶ前には、ここから出て行かねばな。
戸棚にあったパンをくわえ、乱れた髪をかきあげる。
「お前も、メシを食ったら、早く帰れ」
「……いえ、しばらくは名古屋に残ります」
「!!何で…。お前はまだ若い。俺たちがいなくなったあとのドラゴンズを背負って立つ人間だ」
前田の顔がみるみる曇った。いたたまれなくなり、紀藤は目の前の大きな子供を抱きしめた。
「僕は…何が起きているのか、全てをこの目で確かめたい。たとえどうなってもいいんです」
「章宏。辛い思いをさせて悪かった…
お前はここ名古屋で、大人たちのエゴ、球団経営の闇、世の中の汚いもの全てを見るだろう。
だが、どうか耐えてくれ。そして全てを残された者たちに伝えてくれ……」
紀藤は、ハンカチを前田の手首に結んだ。
お前にはいつも、とうさんが、ついてる。
そして、バッグを背負って再び戦場へと駆け出した。
背中を見送る前田の目にもはや涙はなかった。
唇を噛み締めると自分の部屋に戻り、クロゼットからユニホームを取り出す。
父から授かった『55』を背に、少年は再び、ペダルを漕ぎ始めた。
*******************************************
では、ハマへ逝ってきます。
496 :
代打名無し:02/08/04 03:01 ID:lqfdwARE
保守
497 :
代打名無し:02/08/04 14:53 ID:xbWMC8uI
age
498 :
代打名無し:02/08/05 00:10 ID:9Yye5We9
age
97 追う者・追われる者
昔ながらの大須の町へ逃げ込んで、井端はようやく立浪の腕を放した。
「なんで俺を助けた?」
立浪は息を弾ませながらそう問いかけた。
「関川に撃たれて俺が死ねば、荒木もお前も難なく生き延びることが出来たろうに」
「・・・何ででしょうね。死んでくれたほうがいいような人でも銃を向けられていたら、とっさに助けようと思うんですね」
井端は荒い息の間から答えて、座り込んでいる立浪の隣に自分も腰を下ろした。
確かに立浪の言うとおりだ。
さっきあのまま関川に撃たれて立浪が死んでくれていれば、荒木ももう狙われずに済んだのだ。
しかし助けてしまったからには、立浪は荒木を探し、殺そうとするだろう。
「ふん、お人好しだな」
立浪は笑うような声で言った。
「仕方がないですね」
そう言って井端も苦笑いを浮かべて地面に視線を落とした。
久慈はやはり死んでしまっただろうか。
久慈の胸に刺さるナイフ。そして倒れていく久慈。
あのシーンをコマ送り再生のように思い出す。
やはり久慈は助からなかっただろう。
結局久慈に礼を言うことは出来なかった。立浪の狂刃から救うことさえ・・・。
立浪が何かを感じたように背筋を伸ばした。つられるように井端も顔を上げた。
「立浪さん?」
立浪は無言で井端の腕を掴んだ。そして井端を引き上げるようにして立ち上がると、民家の生垣の狭い隙間に身を滑り込ませた。
「・・・・・・」
2人は息を潜めた。井端の耳にも今ははっきりと足音が聞こえていた。
生垣の重なる枝葉の間から、関川が左右を見回しながら横切っていくのが見えた。
自分達を、立浪を探しているのだ。
「行ったか・・・」
立浪が体を起こすとその下に身をかがめていた井端も腰を伸ばした。
立浪が笑う。
「お前はやっぱりお人好しだな」
「え?」
「一緒に身を隠してないで、俺を突き飛ばせばよかったんじゃないのか。そうすれば俺は関川に見つかって、関川が俺を殺してくれたかもしれないぞ?」
立浪の言葉に井端はビクッと体を震わせて立浪を見た。
「ああ・・・ああ、そうですね・・・」
井端は左手でそっとナイフを握り締めた。
今なら立浪をこの手で・・・?
「見つけたぞ、立浪ー!」
ハッとして立浪と井端は振り返った。関川が近付いてきていた。
関川が手に持っているのは小さいながらも銃だ。
「よくもテルを殺したな! テルの仇だ! 殺してやる!」
関川はそう言うと迷わず発砲した。
井端は再び立浪の腕を掴んでその銃弾を避けた。そして再び立浪を引っ張って走った。
「井端! 立浪を庇うならお前も殺すぞ!」
背後から関川の声がした。それでも井端は立浪を掴んだまま走り続けた。
そして2人は万松寺へ飛び込んでいた。
入り組んだ寺の中ならすぐには見つからないだろう。
「井端・・・」
「あなたを殺すのは俺です」
立浪が言いかけた言葉を遮って井端はそう言った。
「あなたが荒木を殺そうとした瞬間に、俺があなたを殺します。そこでしか、あなたに隙は出来ない」
立浪の手がこの瞬間もナイフに触れているのを知っている。井端の言葉に立浪はニヤリと笑った。
「ふん、荒木を見つけたらお前に邪魔はさせん。さっさとカタをつけさせてもらう」
井端はそう言った立浪をジッと見つめた。
「まあ、当面は荒木を探すより、関川から逃げるしかないようだがな」
「関さんは殺さないんですか?」
「殺せたら、殺す」
立浪はそう言ってもう一度ニヤリと笑った。
井端は目を伏せた。
荒木、今お前はどこにいる?
どうか俺達の前には姿を現してくれるな。
井端は短く祈り、そして追ってくる関川の気配に神経を尖らせた。
【残り19人】
98 奴らは何処だ
朝の定期放送を終えて、古田は不機嫌だった。
禁止地区を増やしたのはいい。
だが、だれがどこにいるのか、皆目見当がつかないのだ。
何者かの手によって破壊されたシステムは未だに復旧していない。
現在に至っても首輪の居場所の探知はおろか、音声の受信すらも不可能。
頼みとなるのは、名古屋市内のあちこちに仕掛けた監視カメラのみ。
これも数が多い上に、死角に入られてしまうと見つけようがない。
首輪の爆破はかろうじて可能だということは確認できたが…。
不用意に町中をうろついている、藤立と大西。
大須に駆け込んだ立浪、井端、関川。
関川と離れたばかりの遠藤。
熱田神宮の落合、正津、筒井、森。
…今、正確に居場所が分かっているのはこれだけ。
それも今の場所から動かれると、見失う可能性もある。
そのうえ、
2人一緒に行動しているはずの福留、荒木。
大量の武器弾薬を手に入れた井上。
ナゴヤ球場付近からの足取りがつかめない紀藤。
自分の駒となるはずだった谷繁、ギャラード。
ツクモ電機本店に入る所までは確認されている川上、中里、朝倉。
この約半数のメンバーの正確な所在地が分からない。
「まだか…」
システムの復旧が思いの他遅れている。
まだ何者かが妨害をしているのでは…。
その可能性が古田の頭をよぎった。
【残り19人】
◆xYQkNOZE殿、これでフォローになってまつかね?
番外編6 西方浄土
「打球はショートへ…危ない!取ってファーストへ!
やりました!野口!ノーヒットノーラン達成!」
鳥越裕介はダイエーの宿舎であの日のビデオを繰り返し見ていた。
1996年、野口茂樹がノーヒットノーランを達成したあの日。
最後の打球を処理したのは鳥越だった。
「…『危ない』ってなんだよ…久野さんよぉ…」
このビデオを見なくなってどれくらい経つだろうか。
ビデオの中で、子どものように喜んでいる男は、もうこの世にはいない。
1999年、その年に加入した福留とのポジション争いに敗れ(それ以外の原因もあったが)、
ダイエーにトレードされた。
だが、この年にセ・リーグは中日、パ・リーグはダイエーが優勝。
4勝1敗でダイエーが日本一となった。
中日にいたままならば、この栄冠を手にする事は間違いなく出来なかっただろう。
鳥越にとってはこのトレードのおかげで日本一を体験できたとも言える。
今はここでどうにかレギュラーの座をつかんでいる。
あれから月日は流れ。
大型ショートとして期待された福留もあまりの守備の酷さに外野手に転向。
左ピッチャー限定でスタメンを任される事もあった井端が
久慈とのポジション争いに勝ち、今や中日の新しい顔となっている。
あのトレードがなかったら。
あの場所に立っていたのは自分だったかもしれない。
だが、その幸運を感謝する気にはならない。
ビデオを巻き戻す。
野口よ。今のお前なら完全試合だって出来ただろうに。
何で逝ってしまったんだ。早すぎるぞ。
…お前の優しい性格なら、仕方ないか。
…そうだ。
将来、おれがそっちに逝ったら、一緒にチームを組んで
巨人を相手に完全試合をやってやろう。
大丈夫だ。オレの守備もあの時よりは上達しているから。
なぁ、野口…。
504 :
代打名無し:02/08/05 06:48 ID:oyYGoXBT
>>501 ルーファン様、残り選手の組み合わせや位置が解りやすくてよいです。
では今朝もage
505 :
代打名無し:02/08/05 09:51 ID:91pr/FfQ
99 宿命
星野仙一は名神高速道路を走っていた。
ラジオからは相変わらず悪趣味な実況が聞こえて来る。
信じられないことだが、もう人数は半分以下に減ってしまったらしい。
それにしても、再び(しかもこんな形で)中日のユニフォームに袖を通すとは
思ってもいなかった。
半年前、星野はフロントと半ば喧嘩別れの形で球団を去った。
そして、阪神の監督に就任。
過去は忘れようと思った。
だが、どうしても中日への愛着心は捨てられなかった。
だから、この馬鹿げたゲームが始まった事を知った時、いてもたってもいられなかった。
かつての教え子達が殺しあう場面をテレビの前の一視聴者として見ていることは、
星野の正義感がどうしても許してくれなかった。
「因果なもんやな‥。」
そう呟くと、ふと距離表示の看板が目に入ってきた。
『名古屋まで、あと50km』
506 :
代打名無し:02/08/05 11:55 ID:wHGzmFCN
山崎いらん、氏ね。
100 規制
朝のアナウンスの声と共に荒木は目を覚ました。
どのくらい寝ていたのだろう。
アナウンスを聞き終え、窓から外を見てみるとずっと降り続いていた雨も止み、雲一つない青空が広がっていた。
軽く寝るつもりだったのに。
荒木の寝ていたソファーの隣にあるもう1つのソファーに福留が寝ている。
見張っててやると言ったものの、今の福留がそれをできる状態ではないと荒木は覚悟していたので、それほど福留が寝ていることに対し驚くことはなかった。
まだ福留は精神的な疲れがとれていない。
山崎を殺してからだ。
山崎は自分の死と引き換えに福留の中に自分の存在を残した。それが徐々に追いつめ、蝕んでいく。
山崎の呪縛から逃れられる術など荒木が知るはずもなかった。
なぁ孝介。
俺が立浪さんに殺されそうになった時、お前はどうする?
立浪さんを撃って俺を助ける?
それとも人を殺すことのできないお前は黙って俺が殺されるさまを見ているのか?
荒木は自分が立浪に狙われていると知った時からずっと考えていた。
自分のことを見殺しにする福留を想像できてしまうのも何とも情けない話だ。
自分もネガティブになりすぎている。
「・・・ん・・」
「お、孝介目覚ましたか」
福留は起き上がり一度大きなあくびをした。
「あ、俺寝ちまったよ・・・ごめん」
「いや、いいよ。睡魔には誰だって勝てないモンだし」
福留はやはりしょんぼりしている。
もし自分が寝てしまったせいで何か起きたとしたら・・・と考えているに違いない。
荒木は話を変えようとし、先ほどのアナウンスのことを話した。
「南区が禁止区域か。全く問題ないな」
『はーい、言い忘れていたことがありましたので言いますよ』
突然のアナウンスに2人はビックリした。
ん?この声は・・・。
「荒木、この声って・・・仁村コーチじゃねーのか?」
『古田くんがね今ちょっと他の作業で忙しいらしいから代理でこの仁村がやらせていただきます』
仁村コーチ、あなたまであっち側の人間だったのですか・・・。
山田監督や佐々木コーチもやはりそうなのか?
『視聴者からもっと選手が疑心暗鬼になっているところが見たいという意見がたくさんあったので、テレビ、ラジオなどを禁止するため、全ての電源を切りまーす。夜はろうそくや懐中電灯とかで何とかしてください。』
もっと疑心暗鬼になってほしいだと?こっちはどんな思いでやっているのかわかってるのか。
『あと、移動は徒歩のみです。車、自転車等は一切禁止ですよ。ではがんばりなさい』
「クソッ、規制だらけじゃねーかよ」
と言い、荒木は壁を蹴る。
【残り19人】
101 侵入者、なし
マスコミとは無情なものだ。
一夜が明け、赤い目をした今中がスタジオに戻るとカメラはその顔をアップで捕らえた。
涙と寝不足でそれはもはやかつてのエースの原型をとどめてはいない。
疲れ切った男がただ、一人、いるだけ。
司会者が意見を求めても、ああそうですかと投げやりな返事を返すことの繰り返し。
しかしそれもまた視聴者が望むものなのである。
過去に苦楽を共にした仲間が一人、また一人、命を落とす現実に直面し、壊れてゆく元エースの姿を。
朝の放送を終えるやいなや、不意に古田が席を立った。
画面はスタジオから、市内に設置された各監視カメラの映像へと切り替えられている。
「今中さんも、よかったら休憩を」
ディレクターに告げられ、席を離れる。
気分転換になんてなりやしない…そう思いながらも、せめてもの抵抗としてスタジオを出る。
しかし廊下に設置されたモニターは全て、ご丁寧にもテレビ中継に切り替えられていた。
目に、耳に、飛び込んでくるもの全てを消し去りたい。
思い出の品が揃うそこを訪れることは新たな苦しみになると思ったが、今中は球団資料の展示コーナーへと向かった。
一瞬だけ訪れる静寂。
だが、その安堵感も先客の姿によって消える。
選手同様俺のことも、どこにいようと監視するということか。好きにしろ、逃げも隠れもしない。
貼り出された歴代選手のプロフィールを眺めていたのは、今年就任したばかりの佐々木コーチ。
この人も、既に『本部の人間』なのか。いや、もしかしたらそのために中日へ入ったのかもしれない。
たとえば福留が最後まで生き残るのを確かめて近鉄へ斡旋するというような…
憎々しい顔をして佐々木の背を凝視していると、彼は振り返った。マスクなどしている、風邪でも引いているのか。
佐々木は今中へ歩み寄る。
そして、すれ違うとき、
トレードマークのサングラスを、
ほんの少しだけ、
外してみせた。
「……山田さん!!」
驚愕する今中に背を向けたまま、男は軽く手を挙げて立ち去った。
古田が向かったマシン室からはやがて、佐々木『本人』の姿が発見され、ドーム全体へと混乱が広がってゆく。
102 うずまく殺意
「う、うわっ!」
遠藤政隆が物音に驚いて後ろを振り返ると、カラスがゴミをあさっていた。
遠藤はつくづく自分の気の弱さを呪った。
ピッチャーとしてだって、度胸がないせいでいつもここ一番で打たれている。
そんな事だからいつまでたっても自分は中継ぎ要員のままなのだ。
久慈の死を目の前で目撃し、遠藤の弱い心は限界近くまで達していた。
関川と別れた遠藤はとにかく誰かと、一緒に行動する仲間と会いたかった。
1人でさまよっているのはもう嫌だった。
栄まで戻ってきたのも、ここになら誰かがいそうな気がしたからだ。
遠藤の頭にはある人物の顔が浮かんでいた。
「落合さん‥‥。」
落合英二。
中継ぎ投手陣をまとめてきた彼になら、安心してついていける。
と、その時、誰かが遠藤の視界の中に入ってきた。
「あれは‥、井上さん!?」
遠藤の前方を歩いていたのは荷物をたくさん背負った井上一樹だった。
「井上さ〜ん!!」
遠藤は大声をあげて井上を呼び止めた。
この際、1人でなくなるなら野手の井上でも構わない。
だが、振り返った井上から投げられたのは再会を喜ぶ言葉ではなく、
何やら丸い物体だった。
「え?」
何かが自分の横を通り過ぎて行ったのに気付いた時、遠藤は後ろからの
爆風に吹き飛ばされていた。
「‥‥い、井上さん、な、何でっ?!」
しかし、その物体(手榴弾?)が遠くはずれたお陰か奇跡的に遠藤は軽傷だった。
「あ‥‥、あ‥‥、も、もう嫌だ!もう嫌だ!」
混乱した遠藤は全速で井上から逃げ去っていった。
「あちゃー、狙いが外れちゃったか?
そういや、俺ノーコンだからピッチャー止めさせられたんだったな。ふふ。」
井上はそう言うと栄の街に消えて行った。
【残り19人】
512 :
代打名無し:02/08/05 22:09 ID:/8EQOPk3
age
ピンゴリカコイイ
514 :
代打名無し:02/08/06 06:41 ID:zG5kpH/l
遠藤…邪魔者扱いか(w
今朝も保全age
職人様方ガンガレ
103 決意
大西崇之と藤立次郎は千種区今池の辺りを歩いていた。
「しかし、名古屋の街は殺風景でいかんな〜。
神戸はもっと異国情緒ってもんがあるんやけど。」
「そうですか?慣れれば結構いいもんですよ、藤立さん。」
自分達2人はこの試合の開始以来こうして名古屋の街をさまよっている。
チームメートが半分に減ってしまったという現実感は大西にはなかったが、
それは幸運にも『やる気』になっている人間に遭遇した事がなかったからかも
しれない。
「‥‥なあ、大西。
さっきの放送おかしいと思わんかったか?」
藤立の顔が急に真剣になった。
「へ、何かありましたっけ?」
「あの、テレビや車が使えなくなるって奴や。」
「いや、別に普通じゃないですか?」
「お前も間抜けな奴やな。
あの規制ってのは、この試合に乗り気な奴らに不利になるんや。
いいか、バーの奥のテレビで俺らの行動が詳しく実況されているの見たやろ?
誰かを狙ってる奴はそれを見て相手の位置を探る事ができた。
だけど、これで誰かに遭遇する事を運に任せるしかなくなったんや。
これは俺達に殺しあいをして欲しい主催者の意図と矛盾してないか?
何か、何かあるで‥‥。」
この人は意外と切れるのかもしれない、と大西は思った。
「考え過ぎじゃないっすかね。」
ふと大西が支給品のレーダーに目をやると、すぐに異変に気付いた。
「し、しまった!」
「どないしたん?」
「しばらく目を離していたら誰かが凄いスピードで近付いて来ている反応がある
んです!
‥‥あ、も、もう、すぐ後ろに‥‥。」
後ろを振り返ると、そこには銃を構えた男が立っていた。
終わった、大西はそう思った。
不思議と怖くはなかった。
藤立が横にいるお陰かもしれない。
1つ心残りなのは残される家族の事だった。
だが、その男の口から発っせられた言葉は大西にすれば意外なものだった。
「く、来るな!来ないでくれぇ!!!」
は?
柄にもなく、覚悟を決めていたのに‥‥。
大西は全身から緊張が抜けていくのを感じた。
「なんや、遠藤。
そないな物騒なもん持って。
とっととしまってこっち来いや。」
「い、嫌だ!あんたらも俺が油断する所を狙ってるんだろう‥‥?
早くどっかに行ってくれよ!」
遠藤政隆は青ざめた顔をして立っていた。
「しょーもないやっちゃな〜。
俺らは武器になるもん持ってないで。
ほら、両手を上げるから。」
この人は本当は凄い器なのかもしれない、そう思いつつ大西も藤立に続いて
両手をあげた。
「そうか、久慈さんが立波さんに‥。あと井上はやる気になってるのか?」
「あ、あの人はヤバいです。な、なんというか‥‥。」
それ以上言葉にならなかった。
震える遠藤を尻目に藤立は何やら考えだした。
「このまま殺されるのも何かしゃくやしな〜。
なんとか、上層部の奴らに一泡吹かせたいな‥‥。」
本当にこの人は‥‥。
大西は藤立の目に普段試合で見せるような闘志が宿り始めている気がした。
【残り19人】
517 :
代打名無し:02/08/06 14:23 ID:mXa0bZKj
104 42人目の参加者
「仁村さん、あなたの責任でもあるんですよ!」
古田敦也のイライラは頂点に達していた。
いつまで経っても復旧しないシステム。
ドームから姿を消した山田久志。
大阪で行方をくらまして以来、消息のつかめていない星野仙一。
目に付くものすべてが反乱因子に見えた。
まさか、こんな事態になろうとはさすがの古田のIDも予期していなかった。
「大体どういう事ですか?
今後活躍しそうなのが、谷繁、ギャラード、井上の3人だけってのは!?
それに、さっきから全然人数が減ってないじゃないですか!
あなたの普段の指導方針に問題があるんやないですか?」
「そんな事言われてもな‥‥。
そうだ、人数が減らないなら昌の時みたいに首輪をつかったらどうだ?
手動だったら動くんだろう?」
「仁村さんねえ‥‥、スタッフから聞いてないんですか?
昌さんが亡くなった後、視聴者からの抗議が凄かったみたいなんですよ。
まあ、盛り上がってる場面でしたしね。
だから、もう下手にその手は使えないんですよ。
プロ野球人気の回復のためにこんな事やってるのに、視聴者の反感買ってたら
意味ないですからね。」
「そうなのか‥‥。」
「とにかく、このまま動きがなかったら、仁村さん、分かってますね?」
「ま、待ってくれ。
実はこんな事もあろうかと、フロントに頼んで海外から助っ人を呼んで
もらっていたんだ。」
「助っ人?」
「そうだ。
1人はキューバの至宝、もう1人はブラックスネークと呼ばれている奴らだ。
もうすぐここに着くと思うんだが‥‥。
そいつらならきっと今の状態をかき回してくれるぞ。」
「そんな人たち、当てになるんですか?
‥‥ったく、とにかく頼んますよ仁村さん。」
古田はそう言って仁村のもとを後にした。
窓の外では雲行きが怪しくなっていた。
プロ野球選手会会長も楽じゃないな、古田はそう思い直しスタジオへの道を急いだ。
【残り19人】
助っ人キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
マタシンキャラカヨ・・・
次郎がかっこいいな。
521 :
代打名無し:02/08/07 02:05 ID:8ocdeLVk
かなり下がってたよ age
522 :
代打名無し:02/08/07 13:02 ID:OaTbPnyK
dat落ち恐怖あげ
紀藤と藤立カコイイsage
職人さん方がんがってください
ヴァルガスキタ━━━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━━━!!!
525 :
代打名無し:02/08/07 23:26 ID:YSS5Moh6
保守age
105 諍い
「荒木、落ち着けよ」
「これが落ち着いていられるかっ」
頭では解っている。今更自分たちに抵抗する術などない。
そして中日関係者のほぼ全員が既にプログラムのスタッフになってしまっている。
けれど、解っていたら諦められるという類のものか?これは。
荒木は再度壁を蹴りつけた。
足が痛くなったが、それ以上に頭に血が上って殆ど気にはならない。
「やめろってば!荒木!」
福留に肩を掴まれ、荒木は何かが切れるのを感じた。
「お前はいいよな、誰かに命を狙われてるわけでもないんだからな!」
「あ、荒木…」
駄目だ、と思ったが止まらなかった。
いつ立浪が現れ、自分に凶刃を突きつけるか知れない。
何だかんだと言っても、荒木は恐ろしかった。ただ、恐ろしかった。
頼れる存在だった井端も今はどこにいるかも解らないし、
再会できたとしてもまた逃げられるだけだろう。
それに、立浪以外にもやる気になっている連中はいるに決まっている。脅威は立浪ばかりではない。
そういったあらゆるマイナスの要因が、荒木から冷静さを奪っていた。
「いざとなったらお前は立浪さんを殺せないんだろう!
俺が殺されるのを黙って見ているつもりなんだろう!
そうさ、どうせ全部他人事だと思ってるんだ!」
「なっ…どうしてそんな、俺は…!」
「…ああ、お前は?何だって言うんだよ、え?」
福留は俯いた。
俺は…と、力なく呟く。
荒木はため息をついた。…ああ、まただ。
つまらないことで喧嘩をして、なんとなく仲直りをして、これじゃ何も変わらないのに。
この非常時にこんな有様では、とても生き延びられるとは思えない。
どうして頭で解っているのに、こうなってしまうのだろう。
「…どうしても俺を信用してくれないんなら…俺が立浪さんを…殺してもいい…」
「孝介?」
思わぬ言葉に、荒木は戸惑った。何を言っているんだ、立浪さんはお前の憧れの人じゃないか。
「誰にも信用されないよりはましだ…」
「いい、もういい、孝介、俺が悪かった」
まさかそこまで思い詰めるとは。いつも明るい福留の言葉とは思えない。
やはり口では何を言っても、人を殺してしまった事のショックが大きすぎるようだ。
窓から燦々と射す日の光が少しも心地よくなかった。
「な…いつまでもここにいるわけにも行かないし、どこかに移動しないか」
ともかく、この狭い室内は気詰まりすぎる。
荒木が自分のバッグを持ち上げて提案すると、福留は無言で頷いた。
そうだ、今は喧嘩をしている場合ではない。この怒りは全て主催者達にぶつけるべきものだ。
苛立ちを必死で抑え、荒木は何度も自分に言い聞かせなければならなかった。
本当に、このプログラムに巻き込まれて以来嫌なことばかりが重なる…
【残り19人】
保守sage
書き手の皆様方がんがってください
熱田神宮組の先が気になりつつage
職人の皆様がんがって下さい
530 :
代打名無し:02/08/08 17:43 ID:wopbAOi6
すみません上がってなかった・・しかも気づいたのが今(鬱
531 :
代打名無し:02/08/09 00:59 ID:rVx/SS2B
保全age
532 :
代打名無し:02/08/09 07:40 ID:4EKVUT1U
保全あげ
職人様方がんがってください
ていうか、今までのハイペースが異常だったのかも…
533 :
◆xYQkNOZE :02/08/09 13:26 ID:T9kEh7vE
暑いと何するのも疲れますからね。
大西サヨナラヒットあげ
106 カウンター
…何が起きているんだ…紀藤は走り続けている。
『誰かが待っている』
そんな予感がして行った昇竜館だったが、
そこが西区にある事に、そして西区が立ち入り禁止区域に指定されていた事に気づかなかった。
息子たる前田章宏と会い、彼の寝顔を見ている時にその事に気づいたのだ。
ベテランらしからぬ失態だった。
だが…首輪が爆発する様子が一向にない。
まだ高校を出たばかりの章宏の前で、残酷なシーンを見せる事は忍びなかったのだろうか。
いや、このゲームの主催者がそんな情け心を持っているとは思えない。
喜々として首輪を爆破し、父を失った子どもの顔を晒し者にするはずだ。
それは、将来の中日を担うであろうキャッチャーを精神的に崩壊させることにもなるはずだ。
そうしなかったという事は…。
信号の消えた町を紀藤は走り続けた。さすがに息が上がる。
考えるのは後だ。とにかく西区を出なくては。
奴らに気づかれる前に…
…気づかれる前に…
…気づかれる?
「そうか…」
紀藤は足を止めた。
奴らは、自分が今いる場所を知らない…!
多分、首輪のタイマーが止まったと言う古田のアナウンスがあった時間から…!
いや、ならば神野は…?
西区の庄内緑地公演から動けないまま首輪爆破されてしまった彼はどうなる?
あの瞬間はしっかりテレビ中継されていたはず………
その時、紀藤の視界の隅に光るものが入った。
昇竜館から失敬した双眼鏡を目にあててみる。
パチンコ屋のネオンの間に、そっぽを向いたテレビカメラが見えた。
!
監視カメラ!
そうか、神野はこれに見つかったのか。首輪爆破の瞬間を流したのも、この監視カメラだろう。
だが、双眼鏡に写ったそのカメラは動いている様子がない。
沈黙を守り、あさってを向いたままだ。
『テレビ、ラジオなどを禁止するため、全ての電源を切りまーす』
今朝の仁村コーチのアナウンスが耳の奥で蘇った。
まさか、監視カメラの電源まで落とされている!?
もしそうだとすれば…。
…チャンス、だ。
紀藤は禁止地区に指定されている東区へ向けて動き始めた。
監視カメラや首輪の位置検索システムがいつ復旧するかは分からない。
だが、主催者にカウンターを喰らわせるなら、今をおいて他にない。
【残り19人】
536 :
代打名無し:02/08/09 23:21 ID:b0dAwuok
新作うp乙です。
まこちんカコイイ!!
ついでにageときます
保守sage
紀藤カコイイ!
538 :
代打名無し:02/08/10 22:23 ID:D1x2TbZP
中日サヨナラ勝ちage
539 :
代打名無し:02/08/11 08:19 ID:Pi2U7MCU
朝一age
職人様方、がんがれ〜
540 :
代打名無し:02/08/11 22:17 ID:6VE7FQKg
昌、誕生日&勝ち投手おめでとうage
541 :
代打名無し:02/08/12 13:13 ID:nIq/fGa8
とりあえずこまめに保全age
542 :
代打名無し:02/08/12 23:16 ID:IGoubZp4
落ちるの怖いからageます
ъ( ゚ー´)ッス「保全はsageでも大丈夫だったはずッス」
( `‥´)「基本的に新作があぷされない限りageは控えた方が・・・いっかな?」
(・Д・)「職人さんガンガレー」
107 籠城
半ば放心状態のまま夜を明かした筒井は、名古屋城の天守閣から城下を眺めていた。
整然とそびえ立つオフィスビルに囲まれたここは見通しがよい反面、城下の茂みに誰かが潜んでいても気づくことはないだろう。
希望を求めて向かった熱田の森で遭遇した、谷繁達の奇襲。
怯える自分たちに重症の傷を負った落合は告げた、そこに残ってはならないと。
集団は強いが、狙われれば全滅する可能性も高い。
自由の利かなくなった身体を正津に預け、落合達もまた、夜の闇の向こうへと去っていってしまった。
部屋の中には、床に青龍刀を投げ出したまま宙を眺めて横たわるショーゴー。
まさかこいつが、ゴメスに斬りかかるとは。
最も従順な後輩が、もしかしたら自分の敵になるかもしれない。
一瞬だけ頭に浮かんだ良くない考えをうち消そうと頭を振った。
なあ、ショーゴー。
俺はもう、わからないよ。
何が正しくて、何が間違っているのか。
ポケットに隠し持った毒薬の瓶を、服の上から触れて確かめる。
叔父さん。
今、何を思ってる?
俺にこんなことをさせるために、プロの道に向かわせたわけじゃないでしょう?
俺はただ純粋に野球がしたかっただけで、こんな社会の裏構造を知りたかったわけじゃない。
叔父さんも今、怯える俺達の顔を見て、『他人事』みたいにああかわいそうと泣いてるの?
それとも、逃げてばかりの俺を、情けないと怒りにうち震えてる?
叔父さん…
いや、やめよう。
『星野監督』のことばかり考えていては、コネクションの固まりと思われても仕方がない。
俺は筒井、『星野の甥』なんかじゃない。プロ野球選手、筒井壮なんだ…。
窓の向こうの景色に背を向けたその瞬間、爆発が起こった。
慌てて飛び起きたショーゴーとともに、筒井はビルの谷間から立ち上る煙を確かめた。
545 :
書き手A:02/08/13 14:26 ID:3BKZhiU/
546 :
代打名無し:02/08/13 15:54 ID:hd1ouj2U
108 イントルーダ−
「ふ、藤立さん、い、い、今の爆発は?」
遠藤政隆は突然の爆音に驚き藤立次郎に寄り掛かった。
「誰かが殺しあってるんやろな。
そんなことより、遠藤、大西、この道路を越えたらそろそろ禁止エリアや。」
爆発を『そんなこと』で片付けないでくださいよ‥‥。
遠藤はこの極限状態に藤立が冷静でいられる事が信じられなかった。
現在、藤立、大西、遠藤の3人は今池から北上して名古屋ドームに向かっている。
「そもそも、どうして禁止エリアに入れるなんて事が判るんですか!?
何か根拠でもあるんですか?
もし間違ってたら首がふっとばされるんですよ!」
「勘や、勘。勝負師の勘。
もし外れてても、死ぬのが少し早くなるだけや。
グチグチぬかしてないで、さっさと行くで。」
ひょっとして藤立さんはもう既に頭がおかしくなってしまっているんじゃないだろうか?
そんな考えさえ遠藤の頭に浮かんで来た。
大西は大西で藤立さんを止めもしないし…。
ああ、1人でいるよりましだといっても、とんでもない2人についてきてしまった……。
最初から投手陣の誰かと行動していればよかったな‥‥。
大体、自分が出くわしてきたのは野手ばっかりじゃないか。
ま、まさか、投手陣はもう全員‥‥。
そんな事を想像すると背筋が寒くなった。
「よし、俺から行くで。
お前ら2人は離れて見とけ。」
「あ‥‥。」
藤立が道路を越えて行く瞬間、遠藤は目をそらした。
……。
あれ、何も起こらない?
藤立さんが言ってる事は本当だったのか?
「よっしゃ、このまま行くで。
監視カメラに気いつけとけよ。」
「ちょ、ちょっと待って下さい。
首輪が爆発しないなら名古屋から逃げましょうよ!
その方がいいですよ!」
「名古屋から逃げだせても近隣住民に通報されて一発でアウトや。」
「で、でも今からドーム行ってどうするんですか!?
武器だって俺のベレッタしかないんですよ!」
「そんなこと分かっとるわい!
今しか、禁止エリアが止まってる今しかチャンスはないかも
しれないんや!急ぐで!」
目的の地、名古屋ドームは3人のすぐそばまで迫っていた。
【残り19人】
109 「鬼」
「ち」
古田は小さく舌を打った。
赤外線レーダーに反応あり、か。
首輪のタイマーにバグが発生した時の予備として設置したものだが、
これが無かったら今頃、と思うとぞっとする。
それにしてもスタッフはシステムの復旧で忙しいというのに、何と厄介な。
復旧率は50パーセント程度だから、今夜までには何とかなりそうだが…
これ以上のイレギュラーはパニックを呼びかねない。
「…しゃあない。ちょっと行って来ますわ」
こんな事もあろうかと手元に用意していたサブマシンガン、H&K MP5A5を手に
古田は急造のスタッフルームを出た。
背後から止める声が聞こえたが、今現在もプロ選手である自分以外にこの役をこなせる人間などいまい。
引退済み中年の弛んだ体に何ができるというのだ。
さて、一応防弾チョッキは身に着けているが、どれくらい信用できるのだろうか。
ほとんど人気のない廊下に足音が大きく響く。やけに体がべたつくと思ったら、汗をかいているらしい。
ふん、この俺ともあろうもんがビビってるわ。
まあいい、相手はおそらく複数。仲間を作って行っても不公平ではないだろう。
「あー、君、そうそう、そこの君や。ちょっとついてきてくれへん?」
廊下に撮影スタッフらしき若い男を見つけ、
古田はにこやかに声をかけた。
「えっ、…はぁ」
男は…当然の反応だろうが…戸惑った様子で頷いた。
「すぐ終わるわ。ちょっと寄り道するで」
本部に立ち寄るとそこにあったGLOCK 26をスタッフの男に押し付け、
古田は再びドームの外へと急いでいた。
「あ、あの、古田さん、これ、本物ですか…」
後からついてくる男は未だに自分が何をさせられるのか理解していない様子だ。
「当然やろ。今から不届きモンを処刑しに行くんやで」
息を呑む音がした。
「そ、そんな。俺…ひ、人殺しなんてできませんよ」
「この番組のスタッフになった以上、番組進行の障害を排除する義務ってもんがあるやろうが。
安心せえ、首輪付けた奴を殺しても罪にはならんから」
「で…でも」
男はまだ何か言いたげだったが、古田にはそれ以上聞いてやる気は無かった。
何しろ、まだ人数は半分までしか減っていないのだ、
ここでプログラムを終わらせるわけにはいかない。
このプログラムが万一「失敗」と判断されたら、「やり直し」の為に次に標的になる球団はおそらく…
「ともかく、頓挫させるわけにはいかへん…邪魔もんは殺すだけや」
鬼とでも悪魔とでも呼ぶがいい、中日の選手など死のうが知ったことか。
俺はヤクルトさえ手出しされなければそれでいい。
【残り19人】
110 レクイエム
福留と荒木は金山駅を出て、そのまま北上し伊勢山辺りにいた。
2人の間に会話がしばらく無く、ただひたすら黙って移動していた。
時計を見ると正午を回っていて、いつの間にか陽が高くなっていた。
「なぁ荒木、何か聞こえないか?」
「ん?」
ようやく口を開いた福留に荒木は少し驚きながらも聞き返す。
「何か聞こえる?」
耳を澄ますと確かに何かが聞こえる。ピアノの音?のような気もする。
もう少しその音が聞こえる方へ近づいてみるとピアノを弾いている音が明らかに聞こえてくる。
誰かがピアノを弾いているのか?
しかし今ここにいるのは生き残っている中日の選手だけのはず。中日の選手の中にピアノを弾ける人なんて聞いたことがない。
逃げ遅れた人でもいるのだろうか?だとしたら避難するよう言ったほうがいいかもしれない。
「もう少し行ってみるか・・・」
福留も同じようなことを思っていたらしく、2人はそのピアノの音の方向へもっと近づいた。
ピアノの音がだんだんと大きくなっていく。
2人は音を頼りに歩いていくと目の前に小学校があった。ここからピアノの音が聞こえていたのだ。
「行ってみるだろ?」
荒木が言うと、福留は頷いた。
小学校の中へ入ると、電気もついていなく陽もあまり入っていなく薄暗い。
階段で2階へ行くと、ピアノの音がかなりはっきり聞こえる。
廊下を歩いていると前方にドアが開いたままの教室が見えた。音楽室だ。
ここで誰かがピアノを弾いている。
荒木は万が一のために銃をベルトに挿して、音楽室へ入った。
入った瞬間、2人はぎょっとした。
それはとても妙な光景だった。
部屋の中心に置いてあるグランドピアノ、自分達を睨むかのように壁掛けてある作曲者の肖像画、ピアノの後ろには山のように積んである武器の数々、そして・・・迷彩服にヘルメットをかぶりピアノを弾いている井上一樹の姿・・・。
「よぉ」
井上は伴奏をやめ、2人に話かける。
「何ぼーっとつっ立ってるんだ?こっちこいよ」
2人は黙って井上の元へきた。
別に井上を信用しているわけではない。
ただ何となく井上の所へ行ってしまった。確かに2人と井上は同じ九州出身で2人にいろいろとお世話してくれた。
だが、あんな格好でピアノを弾き、武器を大量に持っている人を信用なんてできない。人を殺して奪ったのか?
「井上さんはピアノを弾けたのですね。しかもかなりうまいじゃないですかー」
福留は警戒しつつ言った。
「あぁ軽く趣味程度でな。お前ら俺が弾いていた曲知ってるか?」
2人は同時に首を振る。
「さっきの曲はな、ブラームスの『レクイエム』ていう曲なんだ。死者に捧ぐ、そう俺に殺されるお前らへのな」
やばい!!
荒木は福留の手を引っぱり逃げる。
2人が音楽室から出るとほぼ同時に座っていた井上がいつの間にか構えていた無反動砲が発射された。
後方でドカーンと鼓膜が破れそうな音に2人は思わず振り向いた。
井上が発射した弾が壁を突き破り、グラウンドを超え、小学校の隣にある建物などが崩壊し炎上している。
「な、なんだ・・・」
窓越しで見たその光景に福留は立ちすくんでいた。こんなのまともに喰らったら・・・
その時、井上が音楽室から出てきて廊下の遥か前方にいる2人に向け構えている。
「孝介、逃げるぞ!!」
荒木は気づいて、福留の手を再び引っぱり、前方右にある階段へ全速力で走り降りた。
階段を降りたとほぼ同時にまた無反動砲が発射され、廊下の真っ直ぐ突き当たりをぶち破り、また建物が炎上した。
「ちっ」
井上は2人を探すため、走り出した。
はぁはぁ・・・
2人は1階の男子トイレに潜んでいた。
「な、何なんだよ!あれは!!」
福留は興奮気味に怒っている。
あんなのまともに喰らったら自分たちは一瞬で肉片と化すだろう。
荒木は興奮している自分を必死に抑え考える。
どうすればいいのだろう?
さっき見たようにあの大砲はあんな距離があったとしても十分に破壊力がある。
もし学校外へ逃げたとしても、2人とも肉片になってしまう。
だとしたら井上と戦うか?
しかしあんな状態の福留を引き連れて戦うのはちょっと無謀すぎるような気がする。
今の福留だったら銃を突きつけられても反撃しないだろう。じゃあ・・・・
「孝介、お前はここで待ってろ」
「お前・・・何言ってるんだ?」
福留は目を丸くして荒木を見る。
「このまま外へ出たって確実にあの大砲でやられてしまう。だったら俺1人で井上さんを止めてくるよ」
「俺も行くよ」
「お前は足手まといだからここで待ってろ」
「どういう意味だよ!!」
「言ったとおりの意味だよ。こんな状態のお前がいたって何もできないだろ!足手まといなんだよ!!」
「・・・わかったよ、ここにあるよ」
ちょっと言い過ぎたかもしれない、でもこう言わないと福留はあきらめてくれないと思った。
2人同時に死ぬくらいだったら、俺1人死んだほうがマシだ。
「孝介、お前の銃貸してくれ」
福留はバッグの奥から銃と弾を出し渡した。
「お前井上さんを殺す気か?」
「・・・わからない、でも井上さんを何とかして止めなきゃいけない」
「・・・じゃあな」
荒木は一度微かに笑い、ドアを出た。
出た瞬間足がガタガタと震えてきた。
本当は死ぬことも殺すことも怖かった。どうしてこんな所へ来てしまったのだろうとも思った。
でもすでにもう手遅れだった。自分が1人で何とかしなければいけない。
自分の銃には弾7発、福留の銃には山崎を撃った弾以外の5発が入っていて、他に弾は20個あった。
荒木は深呼吸し、歩き出した。
【残り19人】
ゴリ、ピアノひけたの??マジだったらチョト驚きW
>だが、あんな格好でピアノを弾き、武器を大量に持っている人を信用なんてできない。
そりゃあ信用できないなW
私、どんどん荒木に惚れていくんですが・・・どうしましょ?
111 接近
「今の音は?」
関川の追跡をかわして大須を抜け南下した井端と立浪は物陰に潜んだまま周りを見回した。
爆発音が聞こえる。
「あれだ」
前方に黒煙が立ち上っていた。
井端は嫌な予感がした。
「派手なのがいるな」
立浪はその煙を眺めてニヤリと笑う。
「あんな武器があったら無敵だろうな・・・つっ」
左腕に熱いショックが走って、立浪は腕を押さえて振り返った。
「関川!」
関川が肩で息をしながら銃を構えていた。どうやら関川の撃った銃弾が腕を掠めたらしい。
関川がゆっくりと近付いてくる。
立浪は井端を見ると目で合図した。再び2人は関川から逃れるために走り出した。
「立浪さん、腕は?」
走りながら井端は訪ねた。立浪はまだ腕を押さえてはいるが血がにじんでいる様子はない。
「掠っただけだ。残念ながら、荒木を殺すには何の支障もないぞ」
立浪の答えに井端は苦笑いを浮かべた。
通りを越えると焦げ臭い匂いが鼻をついた。
炎上している建物。これを炎上させたのは誰なのか。
再び爆発音がした。
建物の向こうから聞こえる。2人が回り込むとそこには学校があった。
「誰がいるんだ?」
門をくぐり校舎を見上げてみる。
「あ・・・」
井端は小さく声をあげた。
今、一階の窓に映った影は福留ではなかったか?
だとすれば荒木もここにいるのか?
井端は校舎に向かって走った。立浪は反射的にそれに続いた。
「孝介!」
「井端さんっ?」
1階の男子トイレに隠れていた福留は突然現れた井端に驚いたように立ち上がった。
そして駆け寄ると井端の腕を掴んだ。
「助けてください。荒木を、荒木を助けてください。このままじゃ荒木は井上さんに・・・」
そこまで言って福留はハッとした。井端の後ろには立浪がいた。
立浪が荒木を狙っているのは知っている。
福留は言葉の続きを失った。
「ふん、この派手なのは一樹の仕業か。だが気に食わんな。荒木を仕留めるのは俺だ。誰にも邪魔はさせん」
立浪が言うと井端は立浪をキッと睨んだ。
「荒木は俺が守ります。あなたにも、井上さんにも殺させはしない」
そう立浪に言って、井端は福留の肩を掴んだ。
「荒木はどこにいる?」
「井上さんを止めにいくと言って・・・」
福留は視線を上に向けた。
「上の階か」
立浪はニヤリと笑って出て行った。井端はそれを追いかけた。
【残り19人】
急接近キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
荒木、福留、井端、立浪が協力したら最強だろうに…。
がんがれドメ、このままだとイバタンに美味しいところ総取りされてしまいかねないぞ(W
112 選択
福留は呆然と二人の背中を見送っていた。
いいのか?
これでいいのか…?
立浪は荒木を狙っている。井上も荒木を見付けたら殺そうとするだろう。
殊に、井上の武装は強力だ。
小柄な井端と、拳銃を持っているとはいえ全く扱った経験のない荒木とで、
二人の猛攻を防ぎきれるのだろうか。
自分も後を追うべきではないのか。
右手をベルトに挿した日本刀に触れさせてみた。そうだ、武器はある。
いつも素振りをしているあの要領でこれを、これを二人の首筋に…
ぞくっ、と全身に悪寒が走った。
また人を殺すのか。
あの奈落の底に落ちるような感覚をまた味わうのか。
もう二度と立ち上がれないかもしれない。
銃で撃つのとはわけが違う、刀で斬ったらはるかにリアルな感触が手に残るだろう。
かたかたと手が震えている。
いや、震えているのは手ばかりではなく、いまや全身が殺人への恐怖で震えていた。
しかし、逆にこうも考えられる。
こんな思いを味わうのは俺一人でいいはずだ、と。
荒木は生真面目な性格だから、
人殺しをしてしまったら自分より遥かに大きなショックを受けるかもしれない。
そんなのは絶対に嫌だ。
それに、もう人を殺した自分は永遠に殺人者だが、荒木はそうではない。まだ。
「汚れ役は…俺一人で…」
あいつのほうが顔も良くて、女の子にもてて、典型的なヒーロー向きじゃないか。
俺はもう、いいんだ。
いいんだ…これ以上落ちるところなんてない。
右手で、ゆっくりと日本刀を鞘から抜いた。窓から射す白い光を、刃がきらりと反射した。
人を切った後なのだろうか、少し血がこびり付いているが、この程度なら問題はないだろう。
「トイレじゃ格好つかねえか」
福留は息をついて無理に笑い、それから一度だけ刀で空を切った。
ひゅうと小気味の良い音がした。
さあ、人殺しに行こう。
【残り19人】
盛り上がってキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
やっぱりイバチン・荒木・孝介のトリオ最高!!
頑張れ〜!!
やっぱりタツサンカコ(´Д`*)イイ!!
>「ふん、この派手なのは一樹の仕業か。だが気に食わんな。荒木を仕留めるのは俺だ。誰にも邪魔はさせん」
痺れまくりですwコソーリ応援しますw
各地核心に迫りつつありますね
いばたんカコよすぎるよ・・(;´Д`)ハァハァ
藤立・大西・遠藤そして紀藤?らドーム組も気になるよおおお
職人さん方がんがって下さいsage
112 復讐成功
荒木は息を殺して一歩ずつ歩を進めた。
井上は今どこにいるだろう。
そんな荒木の耳に再びピアノの音が聞こえてきた。
井上は音楽室に戻っている。
そしてこのピアノの音はきっと自分を呼んでいるのだ。
荒木は銃を握り締めた。
音楽室は井上の武器庫だ。そこに再び入るのは死にに行くようなものだとは解っている。
しかし、もう引くことは出来なかった。
廊下に突き出した音楽室のプレートを見上げる。
あのドアを開けたら自分はすぐに肉片と化すかもしれない。
いや、相手はピアノを弾いているのだ。武器を持ち直す一瞬がある。
そこでなんとか先手をとれれば・・・。
荒木はドアを睨んだ。
呼吸を整える。
ドアに手を掛けた。まだピアノの音は聞こえている。
「!」
荒木はとうとうドアを開けた。そして井上に照準を定めて、矢継ぎ早に銃弾を打ち込んだ。
「・・・それだけか?」
井上の声は悪魔の声だった。井上を取り巻くシールドが荒木の銃弾から井上を守ったのだ。
荒木は蒼白になりながらしゃがみこんで予備の弾を装填した。
井上はそんな荒木を見下して薄ら笑いを浮かべた。
「無駄だ」
そう言って井上は荒木に銃口を向けた。荒木はギュッと目を閉じた。
もう終わりだ。そう覚悟した。
(孝介、ごめん・・・・)
そんな荒木の耳に銃声と井上のうめき声が聞こえた。
井上の手から銃がゴトリと落ちた。
井上の二の腕には深々とナイフが刺さっていた。肩の銃痕からは鮮血が噴出している。
「?!」
荒木はハッとして振り返った。
「た、立浪さん・・・」
ドアの所に立浪がいた。そしてその隣には井上に銃を向けたままの井端の姿も。
「井端さん!? なんで井端さんが立浪さんと!?」
自分には「一緒には行けない」と言った井端が立浪と一緒にいる。
一番会いたかった井端が、一番会いたくなかった立浪とともにいることに荒木は愕然とした。
「一樹、ちょっと手を引いてもらうぞ。荒木を殺すのは俺の仕事だからな」
そう言って立浪は荒木を見た。荒木は顔を引きつらせて立浪の手のナイフを見ていた。
「荒木っ」
井端が立浪の横から飛び出すのと、立浪がナイフを振りかぶるのは同時だった。
荒木を庇うように荒木の前に身を呈し、井端は立浪に銃を向けた。
銃声が響いた。
立浪の手を離れたナイフが荒木と井端の横数十センチの床に刺さった。
立浪の体がゆっくりと前に倒れていく。
その向こうに、いつの間に追ってきていたのか、関川の姿があった。
井端は引き金をひいてはいなかった。立浪を襲ったのは関川から放たれた銃弾だった。
「やった。やったぞ。テル、お前の仇は取ったぞ!」
関川はそう叫んで倒れた立浪の背中に乗った。
立浪の背中は関川に撃たれた場所から血が溢れてユニフォームを染め直していた。
関川は立浪の髪の毛を掴むとその首にナイフを当てた。
久慈を殺ろされたナイフで、立浪の首を切っていく。
最後に一気に力をこめて骨を断つと、関川は立浪の首を高々と掲げた。溢れる血が関川の腕を濡らした。
「テル、俺がお前の仇を取ってやったぞ。この首、憎いこの首、今持って行ってやるからな」
そう言って関川は立浪から離れると満足げに去っていった。
井端は自分も関川に殺されるかもしれないと息を詰めていたが、立浪を殺すだけで満足したようだ。
「荒木、大丈夫か?」
「・・・井端さん・・・」
「お前が立浪さんに殺されなくて良かった。結局俺が守ってやれたわけじゃないけどな」
そう言って井端は荒木の手を取って引き起こした。
振り返ると井上が呻いている。しかし死ぬような傷ではなかったようだ。
「トドメを刺したほうがいいな」
そう言った井端に荒木はビクッと体を震わせた。
「どうした? お前だって井上さんを殺すつもりだったんだろう?」
井端の言うとおりだったが、しかし一時期の覚悟に水を差されて、荒木には人を殺す怖さがよみがえってきた。
「・・・仕方のないヤツだ。そんなんじゃ生き延びることなんか出来ないぞ」
そう言って苦笑いした井端も銃をしまった。
「殺さないなら逃げるしかないな。下で孝介も心配してるし、とりあえず早いとこ無事な姿を見せてやれ」
井端に促されて荒木は音楽室を出た。
「孝介?」
福留が立っている。刀を握り締めたままの福留はホッとしたように表情を崩した。
「荒木、無事だったのか。良かった」
荒木の様子が普通なのを見て福留は安心した。きっと荒木は人殺しをせずに済んだのだ。
3人は階段を駆け下りた。
玄関に着いたとき階上で爆発音がした。校舎が揺れた。
3人はハッとして天井を見上げた。
「ヤバイ。早くここから離れるぞ」
校庭に飛び出すと、3人は全速力で学校の敷地を後にした。
少し離れた東別院の建物内に飛び込んで3人はようやく息をついた。
「井端さん、なんで立浪さんと一緒にいたんです?」
荒木がそう尋ねた。
「あ、そういえば、立浪さんは?」
福留も井端と一緒にいたはずの立浪が一緒に戻ってこなかったことに気付いた。
「立浪さんは死んだよ。関川さんに久慈さんを殺した仇を討たれたんだ」
井端はそう言って目を伏せた。
「俺は久慈さんを救えなかった。まさか立浪さんが久慈さんを殺すなんて思わなかった。セカンドだけ狙ってると思ってたんだ。久慈さんはショートだから関係ないって思ってたのに、セカンドを守ったことがあるからって・・・
井端は唇を噛んだ。命の恩人を救えなかったことを改めて悔やんだ。
「だから俺は荒木だけは守りたかったんだ。それで立浪さんと一緒にいて、お前を殺されないように・・・」
井端は大きく息を吐いた。荒木は井端を見つめていた。
「・・・井端さん、じゃあこれからは俺達と一緒にいてくれますか?」
荒木は恐る恐る聞いた。
井端は黙っていた。
長い長い沈黙だった。
そして井端は首を横に振った。
「お前たちは2人で頑張れ。俺は、憲伸を探して合流しようと思う。・・・生きているならな」
首輪のシステムが故障して生死が把握できないのか、本部からの死者の発表は止まっている。
無事なのか、もうこの世にいないのか、まったく解らないが井端は川上が気になった。
「じゃあな」
「井端さん・・・っ」
引きとめかけた荒木の肩を福留はギュッと押さえた。荒木は立ち止まり井端の後姿を見送った。
【残り18人】
114 遭遇戦
「大西、遠藤!
中の奴らがあっちに気を取られているうちに侵入するで!」
藤立、大西、遠藤、がドームの様子を外から伺っていると、突然駐車場の方から
マシンガンらしき銃声が響きわたったのだ。
「藤立さん、他にも誰かがドームに?」
大西は先頭を行く藤立に尋ねた。
「それは分からん‥‥。
ただ、俺達はこの試合を止めるために俺達ができることをするまでや。
よし、このゲートから入るぞ!
監視カメラに見られてないな?」
警備に発見される事もなくすんなり入れたのが大西には意外だった。
「中枢部はどっちや!?大西分かるか?」
「ちょ、ちょっと待って下さいよ。
警備が少なすぎて逆におかしいですよ!」
遠藤はこの後に及んで泣き言を言っている。
確かに、敵の本拠地がこんなに無防備なのはおかしい…。
禁止エリアだという油断が相手にあったのか?
それとも…。
その瞬間、大西の左肩に熱く、激烈な痛みが走った。
「う、うわあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!!」
「な、何や!?
遠藤、柱の陰に隠れろ!!!!!
大西もこっちへ……!」
藤立はとっさに大西を担ぎ上げ柱の陰に隠れると、銃弾が飛んで来た方向に振り向いた。
中日のユニフォームを来た見知らぬ外国人が、にやけながら銃を握りしめていた。
【残り18人】
新作がイパーイ
職人様方、乙です
何でQさん殺したんだよ〜(涙)
>>568 悲しいけどおちけつ゚・(つД`)・゚・。
たつさん…乙ですた…
Qさんが関川に負けるなんて……゚・(つД`)・゚・。
首取られちゃってたら死亡確定だ罠〜。
粘着ファールのようにしぶとく生き残ってて欲しかった…
これからは次郎応援する
エーンエーン
イバタンなんでアラキと一緒にいてあげないのー?
またフラレちゃってアラキかわいそう…
115 二重の悲しみ
それから福留と荒木は、何も話さずしばらくそこに座り込んでいた。
荒木は人を殺さずにすんだ安堵と、
立浪の首が切り取られる光景を目撃してしまった衝撃とで
ほとんどパニックに陥りかけていた。
死んだ…死んで、首をもがれた…チームリーダーの立浪さんが…
裂けた肉の中に埋もれた白い骨と、鼓動に合わせて溢れていった血の赤。
そして、血の気を失った立浪の顔の、その両の眼窩から虚ろに伸びていた眼光が、
あまりにも衝撃的で脳裏に焼き付いてしまっていた。
川崎やブレット、それに山崎の死体も確かに恐ろしいものではあったが、
あんなグロテスクな死に様ではなかったし、何より荒木と目が合うこともなかった。
目を閉じると体のない立浪がこちらを睨み付けているような気がして恐ろしい。
「死んだんだな、立浪さん」
不意にこぼれた福留の声は、不思議なほど無表情だった。
「ああ」
「どんな風に死んだ?」
「背中を撃たれて…それから、く…首を取られた」
舌が乾いてうまく呂律が回らなかった。
福留は嘆くだろうか。これ以上のショックを受けたら壊れてしまわないだろうか。
「そうか、首…かぁ。俺が狙ってたとこと同じだ…」
はは、と弱々しく福留が笑った。
その笑いの真意が掴めず、荒木は返事に窮した。
「狙ってた、って…」
「俺、立浪さんを刀で殺すつもりだった。でも殺さなくて済んで良かった…」
語尾は震えて声になっていなかった。
地面に垂らした福留の両手が小刻みに揺れている。
「泣くなよ」
もう俺だって泣きたいよ。お前より辛くないと思うから我慢するけど。
「泣いてねぇよ…ちくしょ…いつかあの人みたいになりたいって…俺…」
「うん」
「…下手糞だったけど…必死で…ここまで…さ…来て…」
「うん」
「ちくしょお…なんでこんなプログラムなんか…こんな」
立浪に憧れ、素直に中日を目指してプロになった福留にこの仕打ちはあまりにも酷だ。
回り道をして入団した意中の球団に裏切られ、
憧れだった立浪はむごたらしく死んだ。
荒木は唇を噛んだ。もう何度噛んだかわからず、ひりひりとした痛みがある。
福留は頭を垂れ、しばらくそのまま震えていた。
【残り18人】
ヒィィィ(|||゚Д゚)
新作うpの嵐だ〜
職人さん乙で〜す!がんがってください。
新作大量うpワショーイ
でもQさん死んだんだね(つД`)
職人さん方乙です…がんがってください。
116 御許へ
関川は立浪の首を持って飛ぶように久慈の元へと帰った。
「テル・・・」
民家の軒先で眠ったように横たわったままの久慈の隣に身をかがめる。
「お前の仇は取ったぞ。ほら」
久慈に見せるように立浪の首を掲げた。
しかしこうやって立浪を殺しても、久慈が生き返るわけではない。
関川はジッと久慈を見つめていたが、やがて立浪の首を放して膝をついた。
「テル・・・」
2人で中日にトレードされて、がむしゃらに頑張ってきた。
すぐに熱くなる自分と対照的にいつもニコニコしながらそれを上手に抑えてくれた久慈。
優勝した年のようなプレーが出来なくなって周りからいろいろ言われるようになって腐りかけた自分を久慈は何度も励ましてくれた。
久慈も若い選手達にポジションを奪われてスタメンから外されるようになっていたが、いつも楽しそうに野球をしている姿は関川だけでなくほかのチームメイトたちをもなごませた。
久慈がいたから自分は中日で頑張ってこれたのだ。
でももう久慈は笑わない。
励ましてくれる言葉もない。
関川は涙が溢れた。
「セキさん、スランプの1度や2度あって当然ですよ。その内スカーンと晴れますよ」
「セキさん、いろいろ言われるのはまだまだ注目されてるってことです。頑張りましょうよ」
「セキさん、あんまりムチャしたらいけませんよ」
「セキさん、最近調子よくなってきましたね。俺も頑張らなきゃ」
「セキさん、チャンスで使ってもらえて打てるとやっぱり気持ちいいですね」
久慈の笑顔とともに久慈の言葉が思い出されてくる。
調子の悪い時は慰めて励ましてくれ、調子が出てくれば一緒に喜んでくれた。
いつも自分を助けてくれた。
でももう久慈は・・・。
「・・・セキ・・さ・・・ん・・・・頑張って・・くださ・いね・・・・最後まで・・・生き残っ・・・て・・」
最後の言葉が浮かんできた。そのときも久慈は少し笑っていたように思う。
最後まで生き残って・・・。
しかし、久慈のいないここで1人生き残ってどうなるのか。
「テル・・・すまん・・・やっぱりお前のところに行かせてくれ」
関川はデリンジャーに弾が装填されていることを確かめて、こめかみに銃口を押し当てた。
逆手に持ち、親指で引き金を押し込んだ。
脳漿を飛び散らせながら関川は久慈の上に倒れこんだ。
その反動で久慈の腕がはねた。そして関川の背に腕がかかる。
その情景はまるで最後まで久慈が関川をなだめているようだった。
【残り17人】
前ver.の二人の扱いがあんまりだったので、ようやく本来あるべき?二人の姿に戻れたなとほっとしまつた。
天国で幸せになってください…涙
579 :
549:02/08/14 12:11 ID:jgMYI6qN
今来てみたらストーリーが進みまくっててビクーリ
タツさん・・・・゚・(つД`)・゚・。
ウテンジャー、ジャーマンを除いてみんなカコイイ!!
て、ジャーマン殺したの自分なんだけどね。
>>552 イヤ、たぶんゴリはピアノ弾けないと思う。
ゴリにピアノはあまりにもミスマッチだからそこを狙ってみた
580 :
552:02/08/14 13:17 ID:ChK1OcQ8
>>579 そっか。ネタか。
でもピアノゴリは不気味でよかったよw
ウテンジャーカコヨカッタよね。
ところで昌亡きあとのヴォケたんはどうなったんだろ。
581 :
代打名無し:02/08/14 14:26 ID:66VGd7s5
職人さん乙です!
117 助っ人
「こっちの行動なんてお見通しやったっちゅーわけか!」
藤立の頬には血がにじんでいた。
大西の目の前を跳弾がかすめる。
さっきからもったいつけやがって、何なんだあの背番号39は。
一気に殺せばいいのに、まるで何か、そう、俺達をいたぶっているこの状況を
楽しんでいるみたいだ。
もう、助からないのか…?
大西の体に悪寒が走る。
「おい!遠藤!
何やってるんや!!銃で応戦せんかい!!!!!」
藤立が通路の向い側の柱に隠れている遠藤に叫んだ。
だが、遠藤は首を振った。
今にも泣き出しそうな表情だ。
「ちいっ!役に立たんやっちゃ!!」
嫌だ。
死にたくない……。
怖い……。
怖い……。
激痛と出血でしだいに薄れていく大西の意識にそんな感情が浮かんだ。
さっきまでずっと死ぬ事なんて怖くない思ってたのに、いざその瞬間が近づくと
情けないもんだ…。
……ああ、ついに目の前が白くかすんできやがった。
いよいよ俺は駄目らしい。
「さよなら…。」
大西はこの世への餞別にそうとだけ呟いた。
……。
あれ、まだ生きてる?
ん?違う、この白いのは……。
煙?
あ!
藤立さんの、煙幕?
「遠藤!いったん引くで!」
藤立さんの声が聞こえる……。
「大西!…あかん、血を出しすぎとる!
俺にしっかりつかまっとけ!!」
藤立は大西をおぶると走りだした。
大西はほとんど無意識の中で藤立の背中に必死にしがみついていた。
【残り17人】
118 虫の知らせ
落合が次に目を覚ましたときには、既に時刻は正午にならんとしていた。
自由の利かない身体を動かさずに視線だけ送ったベッドの端には、正津がうつ伏せて眠っている。
落合の身体を担いで正津が闇の中向かったのは、何かと通い慣れた名大病院。
待合室のソファの上に、参加者が残しただろうと思われるどす黒く染まった包帯やガーゼを見つけて一瞬引き返すことも考えたが、それよりも治療が先決だと正津が制止した。
右肩に開けられた傷に消毒液を吹き付けられ−−−気を失ったのだ、おそらくそのときに。
傷は疼き、今も熱を持っている。
恐らく生きて帰っても、この肩は使い物にならないだろう。
皮肉なことだ−−−
プロのスカウトに声をかけられたとき、落合はその野球人生に自ら幕を下ろそうとしていた。
致命的だった、肘の故障。
しかしスカウトは言った、『全て任せてくれ』と。
メスを入れ、リハビリに明け暮れたルーキーイヤー。
男としてのプライド、球団の意地。
そして奇跡は起こる。
奇跡、そう、あれは奇跡だ。
一生に一度の奇跡なんだ。
もうあんな復活劇は起こせやしない。
それともまた、サファイヤでも埋め込むのか?
引退する頃には、キカイダーにでもなってるかもな。
せめて目の前のこいつには、俺の後を継いでドラゴンズの中継ぎに…
急に、悪寒が走った。
びくりと体を震わせた振動で、正津が目を覚ます。
「あ…落合さん、落合さん?どうし…」
「見える」
「見える?」
落合の視界には、正津ではない、真っ暗な映像が浮かんでいた。
見えないはずのものが見える、己の力を落合は呪った。
「不吉だ……ナゴヤドーム…ドームに、蛇が…そう、ドームだけれど、竜じゃない、あれは、真っ黒な大蛇が絡み付いて、そう、ああ、ッアアアアアアアアアアアアアア!」
「落合さん!落合さん!!!」
「頭、頭が…ィたッ……アアアアアアアアアアア…ァァァ……」
落合の意識は再び遠のいていった。
新作大量ワショーイ
職人の皆様乙でつ
ああ、QさんにPOPさん・・(つД`)
職人芸ワショーイ
個人的に川上、落合&正ちゃんが気になって気になって
・・・トオモタラ
>>583『真っ黒な大蛇』がいいっすね〜
新作乙津ですた。
テルポプに不覚にも涙が・・・゚・(ノД`)・゚・
ヴォの行方もきになるです。
期待してますよ。
588 :
復活の161:02/08/14 22:49 ID:Tr3jLpMH
119 復活の獣
その男、井上一樹は苦痛に顔をゆがめながらゆっくりと身を起した。
とんだ醜態をさらしてしまった。いや、醜態などは良い。あやうく殺さ
れる所だったのだ。二度とこんなミスは許されない。次の幸運は、お
そらく無い。
おそるおそる手のひらを開閉して見る。激痛は走るが幸いにして
機能に異常は無い。派手な出血の割に傷は深くは無さそうだ。
カール・グスタフのバックブラストで目茶目茶になった室内を見渡
し、カーテンの残骸を見つけるとそれで手をきつく縛り、止血する。
自信と過信。
強力な火器を手に入れた事で舞い上がり、己を見失ってしまった。
「臆病者であれ、って事か。」
この手の痛みが、戒めとなってくれるだろう。
荷物を左肩に担ぎ、もう一度室内を見渡す。カール・グスタフは放
置しておくことにする。予備弾が無い以上、誰に利用される恐れも
無い。さすがに対戦車砲弾は何発も持ち歩くには大きく重すぎた
のだ。残りは守山区の民家に他の重火器数種と共に隠匿してある。
装備は64式と、手榴弾数発、そしてサイドアームの機関短銃。人
を相手にするには充分な装備だ。弾薬も充分ににある。
「まずは鎮痛剤でも探すか・・・。」
589 :
代打名無し:02/08/14 22:57 ID:52xrAi9U
平松って出てる?
590 :
代打名無し:02/08/14 23:33 ID:Tr3jLpMH
バカかよ、こいつら
Z会でもやれや
592 :
代打名無し:02/08/15 00:06 ID:uaTewq2s
POP…(涙
仲間を守る為に人殺しになる覚悟をしたり、タツさんの為に涙するコースケが(・∀・)イイ!!
職人さま方、応援age
120 尋ね人
川上は、ナゴヤ球場へと向かっていた。
赤門の角を曲がり、少し開けた通りを南下する。
右手に朝倉、左手に中里の手を握って。
いつまで喧嘩しているつもりなのだろう、そっぽを向いて座り込む二人に耐えかねた川上は店を出ることを提案した。提案すなわち決定事項である。
三人で横一列に道を占領して歩く姿は滑稽である。しかし年少者と一緒になって遊ぶことはよくあっても、彼らの保護者的立場となることに関してはあまり経験のない川上には、物理的に繋ぎとめておくことでしか二人の少年を守る確信がなかった。
テレビ局が入っているビルの前を通り過ぎようとしたとき、不意に川上は視線を感じた。
誰だ。ようやくこいつら以外の人間に会えそうだ。
「見てるんだろう?川上だ。戦う気はない、出てきてほしい」
川上の咄嗟の行動に顔を青くしている中里のことなどお構いなしに川上は続ける。
「隠れているなら、俺のほうから向かって行くぞ−−−」
中里が止めるのも耳に入らない川上がビルの陰に歩み寄ろうとしたとき、相手はようやく顔を出した。
福留と、その後ろには、荒木の姿。
表情には生気がなかった。
ずっとここにいたわけではないこと、二人がナゴヤドームを出発したときから一緒に行動していたことなどを聞く。彼らが遭遇した人々の名前も。
殺した相手の名前は決して口を割らなかったが、あの立浪が死んだことも教えられた。
これまでさして危険な状況に遭うことのなかった彼にとっては、福留が話す全てが絵空事のようにしか思えなかった。
言葉を発するたびに苦しげな表情を増してゆく福留にいたたまれなくなり、川上はそこを去ることにした。
「どこへ行くんですか?」
「ナゴヤ球場にでも行こうかと思って。井端、探してるんだ」
「井端さんなら向こうの橋を渡っていきましたよ」
それまでひとことも発することのなかった荒木が初めて口を開いた。
「え…井端、見たのか?」
「井端さんも、川上さんのことを探してました。そう遠くに行ってるわけじゃないと思いますけど」
表情を固くしたままの荒木と福留に礼を言い、相変わらず二人の後輩の手を取って、川上は方向転換して再び歩き出した。
東山のタワーにでも登れば見つけられるだろうか。
イバチンと憲伸を早く合わせて!!
イバチンに少しでも安らぎをあげたい。
こんな事態の中だけど・・・。
久慈と関川に不覚にも涙してしもた…(つД`)
中里と健太の手を引っ張ってる憲伸イイ!
職人さんいつも乙です!ほんとにおもしろい!
121 空しい嫉妬
「…教えてしまってよかったのか?」
道を曲がって三人の姿が見えなくなるとようやく、福留は話を切り出した。
「俺、井端さんに会ったことは言わないでおこうと思って黙ってたのに」
「なんで?」
素っ気無く返事が返ってくる。
「なんか…さ。お前の前で、井端さんの話をすると、なんていうか…また、落ち込んだら嫌だなって」
「別にもういいよ。…ただ」
「ただ?」
荒木は何も答えずその場にしゃがみこんだ。
「そうやって濁すの、お前の悪い癖だぞ」
福留もその隣に座り込み、ちらと荒木の顔を覗き込む。
「悔しいよ。悔しいんだよ…
さっきは立浪さん。今度は、川上さん。
他の人ならいいのに、どうして俺のことだけ避けるんだろうって…」
返事が出来ない。荒木はますます頭を抱え込んで小さくなる。
「たぶん、井端さんには井端さんなりの考えがあって」
「考えって何だよ」
福留に噛み付いたが、すぐに自省の念にかられる。
「御免。孝介だって立浪さん、俺のせいでいなくなっちゃったもんな」
「な…荒木のせいじゃ」
「わかってる。わかってる…けど。
でも俺、孝介には感謝してる。さっき川上さんたちに会ったときだって、孝介がいてくれなかったら危なかった」
「俺もだよ。なんだかんだ言って俺たち結構、恵まれてるほうなのかもな」
笑ってみせた福留に、荒木はほんの少しだけ、笑顔を返した。
「孝介にだけ、今、本音を話すよ。でも今の俺はどうかしてるだけだから、すぐに忘れてほしい」
荒木の顔が歪む。一瞬間を置いて、呟くように言葉を搾り出した。
「川上さんが死んだら井端さんはどうするだろうと思った。」
………。
福留は何も返さなかった。その代わりに、荒木の背中に手を回し、そっと擦った。
「孝介…、たぶん、皆誰も、心の底から憎くて仲間を殺してるんじゃなくて、きっとこういう、些細なくだらない気持ちが今の余裕を持てない状況でどんどん大きくなって、思いつめた結果、誰かを殺してしまうんだろうな。
地下鉄についてる鏡、皆であれ見たらいいのかもしれないな」
新人時代はよく乗った、地下鉄のドアの横にある小さな鏡を、福留はぼんやりと思い出していた。
荒木せつないな…゚・(つД`)・゚・。
紀藤が気になる…。
荒木とドメのやりとりに涙・・(つД`)
紀藤も気になるけど一緒にいた前田Aはどうしてるんだろう・・
QDRの
>>573のシーン
チェチェン思い出したよ・・・
ヴォって何気に星野編、ベイ編、山田編と3回も巻き込まれてるし
星野編では漏れの中ではヴォと昌は生きていることになっている
122 空から降ってきた男
川上たちと別れてもう1時間が過ぎただろうか。
福留と荒木は東本願寺別院に戻って中で何もすることなく過ごしていた。
ぱらぱらと外が何やらうるさい。
何だろうと思い、2人が外へ出てみると、自分たちのほぼ真上辺りの空にヘリコプターが飛んでいるのがわかった。
自分たちの様子でも撮っているのか?と思ったが、徐々にこちらの方に近づいてきた。
「何だぁ?」
福留の声がかき消されそうなほどの音がする。
ヘリと2人の距離が10メートルくらいにせまってきた時、ドアが開き人が顔を出してきた。
「だ、誰だ・・・?」
荒木が見上げても逆光のせいでその姿が誰だか確認できない。
そのヘリの奴は2人に向けて何かを構えた。
それは井上が持っていた無反動砲よりもさらに2回りくらい大きく、こんなものが発射されたら建物1つ簡単に吹っ飛ぶだろう。そんな物をそいつは人間に向けて構えているのだ。
「孝介、逃げるぞ!」
と言った瞬間、大砲が発射された。
別院は一瞬にして全壊し、炎につつまれた。
「い、痛え・・」
爆風で2.30メートル身体が吹き飛ばされた。地面にこすってできた傷、建物やガラスの破片でできた傷が体のあちこちにでき、熱風でやけどもしている。
ジーンとずっと音がする。爆音で鼓膜がおかしくなっている。
荒木は起き上がり周りを見た。
煙に覆われていて何も見えない。
「孝介!?どこだ!!」
隣にいると思っていた福留がいない。あの爆風に福留もどこかに吹き飛ばされたのだ。
一体誰だよ!こんなことしたのは!!
そんな煙だらけの空間にヘリが荒木の目の前に着地した。
ヘリの中から出てきたのは白いコートを身にまといサングラスをかけた金髪の外国人だった。
「誰だ・・・」
煙でぼやけていてまだはっきりと荒木の目にはその姿が見えない。
その金髪の男は荒木に近づく。
「Hey! ARAKI」
プロペラも止まり、男の声がわずかながら聞こえた。
「エディ?」
白いコートの間から見える18の番号、エディ・ギャラードだ。
何でエディがヘリに乗ってるんだ?そもそもヘリなんてどうやって・・・。
「アラキ、goodbye!!」
ギャラードはベルトに両手をまわし銃を取り出した。
ブローニングハイパワー9ミリとトカレフの二丁拳銃を座り込んでいる荒木に向けて構えた。
煙は相変わらず辺り一面をつつむ。
ギャラードが今どんな目をしているのかわからない。サングラスには傷だらけのおびえた自分の顔しか映らない。
福留がどこにいるかわからない。
荒木はどうすることもできなかった。
もう死を覚悟するしかなかった。
123 邂逅
「痛えな・・・」
爆風に吹き飛ばされた福留は地面に強打したらしく、腰を押さえていた。
福留も荒木と同じく破片や熱風で体のあちこちに傷ができている。
煙で周りが見えないが荒木がいない。
「荒木?」
痛めた腰を押さえながら立ち上がり、煙まみれの中を歩き探した。
しかし荒木は見当たらない。
「おい、どうしたんだ?」
何者かが後ろから福留の肩をたたく。
振り向くと福留は目を疑った。それは自分が殺したはずの山崎が立っていた。
幻覚を見ているのか?目をこすってもそこに山崎はいる。
「な、何で・・・」
福留は怖くなり煙の中をにげていった。
どうして山崎さんが・・・?どうして生きている・・・?
「おい!!待てよ」
「ひぃっ!!!」
煙の中から山崎が福留の目の前に現れた。
「落ち着けよ!!」
「落ち着けって・・・。あなたは死んだはず!俺が殺して・・」
そう、俺が銃で殺したんだ。
ずっと悩まされ続けた。常に頭の中で山崎が『人殺し』とささやいていた。血まみれの山崎が自分を睨みつけていた。
もう大丈夫だと思っていてもふと山崎が現われ笑っていた。ずっと罪の意識にうなされた。
「立浪が死んだんだってな」
どうして知っているんだ?
「お前はショックだったろうな。大好きだった立浪先輩が死んだんだから」
山崎の言い方に少しムッとしながらも黙って聞いていた。
「山崎さんはさぞかし嬉しかったでしょうね。大嫌いな立浪さんが死んで」
今誰相手に話しているのか、この人は本当に山崎なのか、もうどうでもよかった。
「いやぁ、あの時は半分狂っててそんなこと言ったかもしれんが、別に嫌いじゃない。お前だって荒木だって」
「今になって後悔してるさ。井本、ブレットを殺したことを。あいつらは何の罪もなく殺されたんだ・・・悪いことをした」
山崎はそう言って、頭をボリボリ掻き笑った。
「俺だって山崎さんを・・・」
ただ怒りにまかせて山崎を撃った。
「お前は間違ったことをしたか?あの時俺を殺さなければお前らは俺に殺されていたんだぞ」
「俺はずっと・・・人殺しの自分が許せなかった。でも・・・あの時は死にたくなかったんだ!!やっぱり俺は弱かった・・・その後はずっと後悔したよ」
荒木にも話せなかった本音をなぜかこの山崎に話せる。不思議だった。
荒木に本音を吐かせておいて、福留はこの部分だけは誰にも言えなかった。
頭の中では銃で撃たれた山崎がスローモーションのように何度も何度も浮かんだ。そしてそんな山崎をあざ笑う自分。これが自分の本性だと思うと・・・
「いっそのこと死んでしまおうと思ったこともあったよ・・・」
あれは間違いなく殺意だった。人を殺さないと言った自分に芽生えた殺意だった。
「・・・・・・・」
山崎は黙って話を聞いている。
「でも死ねなかった。荒木が俺をずっと励ましてくれたんだ。こんな俺放っておけばいいのに。あいつはそんなことしなかった。だから・・・あいつをおいて先には死ねない・・・」
福留は自分の言いたかったことを全てぶちまけて目にいっぱいの涙を浮かべた。
「お前は正しく生きてるよ。あの状況で殺さない奴なんていない。それにそのことで俺はお前を怨んだりなんかしていない」
怨んでいない・・・
山崎のその言葉が福留の気持ちを楽にさせた。
ずっと自分のことを怨んでいると思った。死んだ後も山崎の怨念に取り付かれているような気がしていた。それが今まで福留を苦しめてきた。
しかし、それは違っていた。山崎は怨んでいないと・・・。
「本当・・・ですか?」
「あぁ。お前そんなことより荒木の所へ行ってやれ。あいつ殺されるかもしれないぞ!」
「え・・・あ・・」
荒木が今どうしているのか、立浪が死んだことなどどうして山崎が知っているのか、未だわからなかった。
「このまま真っ直ぐ進めば荒木がいるから早く行け」
福留は地面に置いたバッグを持ち上げ顔を上げた。
そこには山崎の姿はなかった。
「あれ?山崎さん??」
周りを見渡しても山崎はいない。
俺は今まで何と話をしていたんだ?山崎さんの霊??まぁ、いいや。
福留は銃を右手に持ち、走り出した。
605 :
代打名無し:02/08/15 15:45 ID:z6cY8nt3
>>600 ヴォはもうバトロワのプロだな(W
星野編だが、どこかで生きてるといいね。
スレ違いだがベイ編のヴォは飄々とした印象でこっちもなかなかカコイイよ。
606 :
代打名無し:02/08/15 15:45 ID:T1fZhMEu
ゲーリーゲーリーホームラン
124 その理由
川上は相変わらず朝倉と中里を両手に引いて歩いていた。
荒木の言葉では井端はこっち方面へ歩いていったというが、どこで道を曲がっているかもわからない。
しかし川上はまっすぐ歩いてきた。もう少し行って曲がれば東山公園に出る。
こっち方面でめぼしい大きな場所はそこしかないから、井端も東山公園に向かったのかもしれない。
東山公園にいてほしい、そう思いながら川上は歩いていた。
キィィ・・・キィィ・・・キィィ・・・
2つ目の大きな通りを越えたところで川上は金属のきしむ音を聞いた。
懐かしい音だ。子供の頃の記憶がよみがえる。
ブランコ、だ。この音はブランコをこぐ音だ。規則正しく、繰り返される音。
横の立ち木に囲まれた場所はどうやら公園らしい。
キィ・・・ッ
ブランコが止まった。こぐのを止めたらしい。
キ・・・キ・・・
まだきしみは聞こえる。
川上は道を曲がって公園の入り口に向かった。
「井端!」
狭い公園の隅のブランコに井端が座っていた。
うつむいていた井端が顔を上げ、川上を確認して嬉しそうな笑顔を見せた。
「憲伸、無事だったんだな!」
井端がブランコを降りて駆け寄ってくると、川上の後ろの朝倉も中里もちょっと頭を下げて挨拶した。
朝倉と中里をベンチに座らせ、川上は井端と少し離れた別のベンチに座った。
「お前を探してたんだけど、まさかこんなとこでブランコに乗って遊んでるとは思わなかった」
川上はともすれば重くなりそうな雰囲気を振り払うように、努めてからかうような口調で言った。
「いや、俺もお前を探してたんだけど、ちょっと疲れちゃってさ。ここで休んでたんだけどブランコ見たら乗りたくなって」
井端も軽めの口調で答えた。
本当はそんな軽い気分ではいられない状況なのはお互いよくわかっていた。
「・・・さっき荒木と福留に会ったぞ。お前はてっきり荒木と一緒にいるもんだと思ってたんだがな」
川上がそう言うと、井端は少しうつむいた。
「井端?」
川上が井端の顔を覗き込むと井端はちょっと口元をゆがませた。
「俺は荒木を殺せないからな」
井端は少し自嘲するような笑みを浮かべた。
「ゲームが進んで、もしも俺と荒木だけが残ったとしたら、俺は荒木に殺されてもいい。でも荒木は俺を殺せないだろう」
きっと荒木は井端を殺せないどころか、自分が死んで井端が勝ち残る方を望むだろう。
それは川上も容易に予想がついた。
そして先の井端の言葉に戻る。「俺は荒木を殺せないからな」
井端は言葉を続ける。
「だったら俺が自殺して荒木を勝たせてやってもいい。でもそんなことをして荒木が普通でいられるか?」
自分のために井端が死を選べば、荒木はひどいショックを受けるはずだ。最悪、荒木も死を選ぶかもしれない。
川上は井端をジッと見つめていた。
「そりゃあ荒木の傍にいて守ってやりたいとも思う。立浪さんみたいに荒木を殺そうとするやつが他にもいるかもしれないからな」
川上はその言葉にピクリと肩をそびやかした。
立浪が死んだとは聞いた。井端はそこに関係していたのか。まさか立浪を殺したのは井端なのか。
川上が問いかける前に井端は言葉を続けた。
「でもそうやって一緒にいてゲームが進めば荒木だって同じ事を考え始めるだろう。そんなことを考えながら一緒にいるなんて、そんな苦しい状況にあいつを追い込みたくない」
川上は井端のユニフォームにこびりつく血の跡を凝視していた。赤黒く変色したそれは立浪の血なのか。
「それに俺は荒木が死ぬところも見たくない。守ってやりたくても、守りきれずに誰かの手にかかるかもしれないし・・・。憲伸?」
井端は言葉を止めた。そして川上を見た。
「井端が立浪さんを殺したのか?」
「え? いや、俺は殺してない。殺すつもりだったけど、関川さんが先に立浪さんを撃ったから・・・あ、関川さんは久慈さんの仇を取るために立浪さんを殺したんだ。立浪さんに理不尽に殺された久慈さんの仇を取るために」
井端は関川を弁護してうつむいた。
馬鹿げたゲームの中で自分も正気を失っていったのをまざまざと感じた。
理由はどうあれチームメイトを殺す人殺し。自分も立浪は殺さなかったが、その前に鈴木を殺した。今更ゾッとした。
川上も目を伏せた。自分はそんな場面に遭遇しては来なかった。
でも目の前の井端も、さっき会った福留も荒木も、修羅場を潜り抜けて来ていたのだ。
自分は弟分たちの世話をしていただけ。それも手に余るお荷物といった感じで・・・。
川上はふと思い当たって顔を上げた。そして井端を見る。
「・・・さっき、お前、俺を探してたって言ったな?」
「ああ」
「俺といたって、結局最後になったら俺が死ぬか、お前が死ぬかってことになるじゃないか」
「そうだな」
井端は普通に頷いた。川上はちょっと不安そうに顔を曇らせた。
「・・・俺は最後には殺せるってことか?」
「いや、お前なら俺を殺してくれるだろ? 憲伸なら最後に俺を殺して勝ってくれると思ってる」
「そんなっ、俺だってお前を殺せるかよ! 俺、そんな薄情者じゃ・・・っ」
井端の言葉に川上は慌てて言い返す。同い年で同期入団で一番気の会う井端を殺せるわけがない。
「薄情者だなんて言ってない」
井端は川上をまっすぐ見つめた。
「お前を、信頼してるからだ」
そう言われて川上はグッと声を詰まらせた。春の日差しはそんなに暑くないのに、じっとりと汗ばんでくるのを感じた。
川上は慄然としながら再びうつむいた井端を見つめていた。
【残り17人】
井端かっこよすぎ!!
やっぱり荒木と繋がってるんだね(涙
611 :
代打名無し:02/08/15 16:34 ID:C4O6WkP0
しばらく見ない間に新作ラッシュだぁ、嬉しい。
職人様方、これからも期待しております!
125 病室にて
遠藤政隆は窓から外の様子を伺っていた。
名古屋城が目の前にそびえ立っている。
藤立ら3人は名古屋ドームから必死に走り続け国立名古屋病院まで
たどり着ついたのだ。
「大西の応急手当て終わったで。
輸血用の血液が残ってて助かったわ。」
大西は意識を失ったままいまだに眠りこけている。
藤立さんが医学書を見ながら手当てをしたのだが、素人の処置で容態が持ち直すもの
なのだろうか?
………。
いまだに手の震えが止まらない…。
ドームで奇襲を受けた時、俺は何もできなかった。
大西がこんな事になったのも自分に責任があるんだ。
「藤立さん、俺の、俺のせいで大西は……。」
藤立さんは無言で虚空を見つめている。
こんな俺に呆れかえっているのだろうか…。
「…なあ、遠藤。
お前は大西とここに残れ。」
突然藤立が切りだした。
「え?」
「1度乗りかかった船や。
俺は最後の最後まであがいてみたいんや。
だけど、こんな状態の大西を連れまわす訳にはいかないやろ。
だから、お前はここに残って大西の面倒を見たってくれ。」
「で、でも俺1人じゃ……。」
藤立の顔が一瞬こわばる。
「……お前な〜、さっきから情けなすぎるんとちゃうか?
俺達はプロの野球選手なんやで。
いつだってその誇りを忘れちゃいけないんや。
遠藤、お前今年のキャンプたくさん走りこんでたやないか。
絶対生き残って中日のエースになる、その位言ってみろや!
しっかりせんかい!遠藤!」
「藤立さん……。」
遠藤はそうまくしたてる藤立に何も反論できなかった。
「で、でも今出て行ったら生きて帰れるとは限らないんですよ!
もう煙幕さえ2個しか残ってないのに…。」
「遠藤、俺は所詮移籍組の半端もんや。
お前ら中日のはえぬきに比べたら死んでも悲しむ人間は少ないやろ?
他人の心配しとる暇があったら自分の事を考えろ。
…とにかくっ、俺は行くで!」
藤立は自分の荷物を持ち上げると病室のドアに向かって歩きだした。
「…死ぬなよ、遠藤。
大西を頼む。」
藤立は部屋をでる時に振り返らずにそう言った。
遠藤は藤立が出て言ったドアをしばらく見つめ続けた。
【残り17人】
この井端の台詞を複線として、
実際に最後に井端と荒木の二人だけが残ったとき、どうするのか見てみたい。
く〜。藤立次郎かっこよすぎ!
藤立応援しよっと。
憲伸のちょっとしたチキン振りが(・∀・)イイ!
あえてハッピーエソドは望まないでみるてすと
次郎、がんがれ!
職人様方 乙です
これからも期待してます
井端・荒木・福留の3人で最後になったら、井端はとりあえず福留を殺すんだろうか…とか言ってみるてすと
正直、ヲタが喜ぶような終わり方は勘弁。
最後まで生き残るのは遠藤氏ね・・・はありえないね
ともあれエンディングまでおとなしく見守りましょう
見守るだけでなく参加してみるのも一興と思われ。
レギュラーはムリでも単発でとか。
単発のつもりがいつのまにかレギュラー職人に(焦
毎度お目汚しです…
でも書いた部分にレスあるとかなり嬉しいです
ありがとうございます
>>622 僕もそれと同じパターンだったりします(w
624 :
161:02/08/15 23:11 ID:ieCGMblx
自分は星野編に続き、セリフなく散った波留になんとかセリフを、
ダニシゲの闇の部分を…てな感じでお目汚しな文章を一回だけ書きますた(W
スマソ。
626 :
161:02/08/15 23:28 ID:ieCGMblx
126 虐殺という名のショー
脳を、心臓をえぐるはずの銃弾はしかし、荒木の膝を打ち砕いた。
声にならぬ悲鳴を上げ、転げる荒木。薄ら笑いをうかべた金髪の
刺客は、次々にその周囲に銃弾を打ち込む。決して当たらぬよう
に注意しながら。
そのまま素直に射殺するもりは、無かった。
自分の仕事は、ただ殺戮して回る事では無い。この「プログラム」
を盛り上げることだ。ならば--
彼は、子供の頃から弱い相手を嬲るのが好きだった。
ただ嬲るだけでは面白く無い。相手にいったん「希望」を与え、そ
の上でその希望もろとも打ち砕く。より深いこの絶望に耐えられる
人間はいない。その絶望が、彼の歓びになる。
こいつと一緒にいたのは何て奴だったっけ? そうだ、フクドメとか
言ったな。
フクドメ、早く来い。
彼が死んでいないのは判っている。どちらも死なないように注意
深く選んだ場所にロケット弾を打ち込んだのだ。
奴が来て、こいつに助かるかも知れないと希望が芽生えたその
時こそ、眉間に一発打ち込んでやる。・・いや、先にフクドメを殺っ
てからの方がより絶望が深くて良いかな?そう考えるだけで彼の
体は歓びに打ち震える。時ならず彼の分身にさえ力がみなぎっ
て来ていた。
ヘリのTVカメラを通じてこいつを見ているジャップどもに、最高の
ショーを見せてやるぜ。そしたら俺は・・それだけでイッちまうかも
知れんな・・・。
早く来い、フクドメ。
劇 場 開 幕
127 土煙の中
もうもうと立ちこめる煙を振り払い、福留はガバメントをしかと握り締めて走っていた。
肺に土埃が入ってきて息が苦しい。
誰だ、こんな派手な事しやがったのは。
全身の傷は痛むが、幸い大したことはないようで、動きの妨げにはならない。
撃て。迷わず「敵」を撃て。
余計なことを考えぬよう、ひたすら己に言い聞かせた。
人を殺すのは自分の役目だ。そう、もう何も怖くなどない。
あれは…
はっと福留は足を止めた。心臓が破れそうなほど鼓動を刻んでいる。
煙の裂け目に、ぼやりと長身の男が浮かび上がっていた。
幽霊、ではなさそうだ。
サングラス…拳銃…金髪…ギャラード?
そして地面に座り込んでいるのは…
「伏せろ、荒木ぃ!」
ギャラードの顔が腕ごとこちらを向いたが、遅い。
目が合ったその瞬間、福留はトリガーを引いていた。躊躇なく。
反動が腕を跳ね上げる。
遅れて轟音が響いた。もう耳がおかしくなりそうだ。
しかし、煙に霞む長いシルエットは揺らぎもしなかった。
「…な、」
疑問符で頭がパンクしそうになったが、それらの全ては次の瞬間に吹き飛んでいた。
「ぐあ!」
銃声と共に、太股に激痛が走った。たまらず地面に膝をつく。
殺される…?
かさついた唇を舐めて、福留は顔を上げた。
眼前には、ギャラードがただ悠然と立っている。
【残り17人】
ムヒョー!ギャラード劇場最高潮!
630 :
書き手A:02/08/15 23:44 ID:fJyC7U0R
私は星野編パート3までのファンだったので
もうdat落ちだけはさせまいと必死でパート4に書きはじめ…それからこのスレに粘着しています。
しかしケコーン率が高いのは反省すべきポイントですな。
今日もリロードしたらずいぶん進んでいて慌てました(笑)。
何だ何だ
part3dat落ちしてからドラゴンズ関連ググったか何かで知りまつた(当時は野球板にはあえて立ち寄っていなかった)
スレ立て&過去の職人誘導のはずが。
始めたものは完結させるべしと粘着していたのにpart4が途中でdat落ちしたときはポカーンでした。たまにはageたほうがいいんでしょうか。
>>626 最悪だ、ギャラ(笑)ホンモノも久慈をいじめたりしていたな…
632 :
622:02/08/16 00:20 ID:IHk9TY0R
ああっ、なんだか大告白大会に(w
私は気狂い井端が見逃せなかったのと、前作で可哀想だった久慈をなんとかしたかったので足突っ込みました(w
久慈&関川を書き終えることが出来たので嬉しかったですm(_ _)m
あとは井端…(汗
タスケテー
633 :
161:02/08/16 00:50 ID:hJFNl8O2
128 急転
防弾チョッキを着ているとは言え、さすがに45口径を食らうとそのショック
は大きい。一本くらいは肋骨が折れたかも知れない。だが彼、エディ・ギャ
ラードはそんな痛みも感じない程昂っていた。
こいつを殺って、その後絶望に歪んだ顔のアラキを殺る。その表情さえ瞼
に浮かぶ。畜生、俺やっぱりイッちまいそうだよ。
ゆっくりと腕を上げ、福留に照準を合わせる。何かを覚悟したように、胸に
銃を抱いて目を瞑る福留に。時間はたっぷりある。まずは両手両足から、
ゆっくりといたぶってやる。
-突然、福留の体がビクン跳ね飛び、血沫が弾けた。瞬間、銃声が轟く。
スローモーションのようにゆっくりと倒れ伏せる福留。
「!」
別の誰かが、福留を撃った。そう理解するのに大した時間はかからなかっ
た。
ギャラードの顔が驚愕と、そして怒りに歪む。
獲物を奪われた、肉食獣の怒り。
銃声のした方向に顔を向ける。200mは離れているだろうか、ビルの二階
に何か動く影が見える。
誰だ、俺の獲物を、最高の見せ場を、そして最大の楽しみを横取りした奴
は。殺してやる。まずおまえから殺してやる。
怒りに我を忘れ、両手の銃を乱射しながらその標的に向かって駆け出し
た。
楽に死ねると思うな。この世に生まれてきた事を後悔させてやる。
ある程度まで来た所で、胸に着弾の衝撃が走った。先ほどのよりも、よ
ほど強い。それだけで吹き飛ばされそうになり、なんとか踏みとどまる。
馬鹿め。俺が防弾チョッキを着ている事に気付いて無い・・え?・・血?!
胸を見下ろすと、、ぽっかりと穴が開き、血が噴出している。何故?
二発目、三発目を胸に受け、ようやくギャラードは崩れ落ちた。
ゴルァ!!ショクニンドモ!!
今中たんはどうなりましたか?
>>632 なんかもう職人さん大集合ですね(w
ひょっとして書き手は10人以上いたりするのかな?
っていうか、福留大丈夫か?!
一読者としては、1001、山Q、谷繁らも気になるし…。
イ`福留。一応主役の意地見せてくれ。゚・(ノД`)・゚・。
>>618 禿ドゥーっす
ほんと、職人さんって一体何人いてるんでしょうね(w
漏れには文章力がないので、書けるってだけで尊敬です。
がんがってくださいね。
福留は生きてるような・・・銃弾どこに当たったんだろか?
638 :
161:02/08/16 01:38 ID:hJFNl8O2
ちっ、バレてら(w
129 待て
現在、今中の隣には中村が座っている。
「W解説」として番組スタッフが急遽その席を用意したのだ。
古田はどこかへ出払ってしまっており、アナウンサーの退屈なお喋りだけが
空しくスタジオに響き渡っている。
いや、実際には古田の姿も一瞬だけスタジオ前面のモニターに映ったのだが…
どうもそれに関しては触れないよう指示が出ていたようだったので、
今中は何も言わなかった。
指示など出なくても、もとより口を開くつもりはないが。
こうなれば最後の抵抗だ、出来うる限り黙り通してやる。
できれば暴れるチャンスが来るまでずっと。
きっとこのプログラムは中断されるだろう。
あの山田といい、ここにいる自分たちといい、
ドーム内には反プログラムの人間も忍び込んでいる。
あとはチャンスさえ来れば、何とかなるかもしれない。
ただ今はまだ早すぎる。待たなければ。
「では、ここで10分間ニュースです」
アナウンサーの言葉と共に、スタジオに再び休憩がやってきた。
「今中」
中村が身動きもせずに言った。
「何ですか」
「焦るなよ」
「…わかってます」
肝に銘じていることだ。
「それならいい。昔みたいに簡単に挑発に乗らないでくれよ。
ほらお前、ムキになってストレートばっかり投げようとしたよな、よく」
ふ、と中村が笑った。
「そりゃあ、俺も年取りましたからね。多少は血の気も減りましたよ」
今中も少しだけ笑顔を作った。所詮は作り物の笑顔だったが。
もうあの頃のように、激しく怒ったり、泣いたり、笑ったり、
そういった素直な感情の表現はできない。
それがいい事なのか悪い事なのかはわからないが、
少なくとも今はプラスに影響しているはずだ。
それだけでも良しとしよう。
640 :
161:02/08/16 02:26 ID:hJFNl8O2
130 ショーの終わり、あるいはカーテンコール
標的が崩れ落ちるのをスコープ越しに確認して、ようやく井上一樹は銃
をおろした。
「二人、いや標的ふたつか・・・。」
チームメイトだと思えば、人だと思えばこんなことは出来ない。あくまで
標的、ただの標的にすぎないのだ。そう自分に言い聞かせ、煙草に火を
つける。
エディ・ギャラートを襲った不運、それは小銃と拳銃の間にあるふたつの
差による物だった。
ひとつ目は、命中を期待できる有効射程の差。せいぜい2〜30m程度の
拳銃に対して、小銃は約400m。彼の撃った弾はすべて届かないかあら
ぬ咆哮に着弾するかだった。
そしてふたつ目は、貫徹力の差。拳銃弾を受け止める防弾チョッキ、し
かし弱装弾とは言え小銃弾を食い止める事はできない。小銃弾を受け
止めるだけの強度を持たせた場合、ひどく厚く重くなったそれは常人の
体力ではまともな戦闘行動を阻害しすぎるほどの重量になるからだ。
「まだあとひとつ、標的があったはずだが・・」
この位置からでは、瓦礫の陰に隠れて見えない。近付いて始末するか?
・・・危険だ。不用意に近付けばまた思わぬ逆襲を受けかねない。彼のア
ドバンテージは射程と火力だが、それをむざむざ殺す事になる。そして生
身の体にはナイフだろうが拳銃だろうが致命傷を与えうるものだと言う事
を、この右手の痛みが教えてくれている。
「・・・ここは一旦撤退するか。」
641 :
161:02/08/16 02:28 ID:hJFNl8O2
アドレナリンのおかげかようやく痛みにも僅かに慣れた荒木だったが、そ
の目がそこに倒れ伏す井端の姿を認めた時、その痛みすらも忘れて絶
叫した。
「孝介ぇェェェェェっ!」
必死に這いずり、福留の元に急ぐ。
「孝介よぉ、孝介ぇ・・なんで・・なんで・・」涙声はもはや、言葉にならない。
この動かない右足が、うらめしい。
もはや自分は俊足外野手としてプレーするのは無理だろう。だがそんな
事は今更どうでも良かった。相棒さえ、相棒さえ助けることが出来るなら。
その想いが、天に通じたか--
荒木の声に反応するかのように突然、福留の意識が戻った。
「うっ・・・ん・・・はっ!あ、荒木!大丈夫かっ!?」飛び起きた彼は、こち
らに這いずって来る荒木の元に駆け寄った。
唖然とする荒木。涙まみれの顔が何とも言えない間抜けな表情を作っ
ている。
「孝介・・お・・お前、生きてる・・・の・・か?」
「ああ・・何か良くわからんが・・助かったみたいだ。」井端はそう答えな
がら手元の銃にに目をやった。醜く壊れ、ひしゃげている。
ギャラードに追い詰められ、反射的に銃を抱いたまま身を丸めた井端。
それが幸運を呼んだ。
胸に吸い込まれるはずだった井上の弾は、彼の銃に当たってしまった
のだ。身を丸めた為にひどく浅い角度で着弾してしまった小銃弾はそ
の障害物を手ひどく破壊した代償に、跳弾となって彼の腕をかすめて
行ったのだ。腕からの派手な出血だけを残して。
だが、その衝撃で意識を失った彼にはそんな事はわからない。
「とにかく手当てだ・・止血だけでもしなきゃな。」
腰から外したベルトで荒木の腿をきつく縛った彼は、あらためてその傷
の惨状に顔をしかめた。
「お前・・足・・」言いかけて何も言えなくなる。
だがこうしていても何も解決はしない。決断は早かった。
「・・・・とにかく病院だ。」
足手まといだ、自分はここに置いて行けと喚く相棒を殴りつけ、無理や
り背負う事にする。
【残り16人】
>>641 お、おちけつ
ドメと井端がぐちゃぐちゃだぞ
131 疑惑の3文字
病院に向かおうと歩き出した瞬間だった。
ブォーーーンという音が遠くから聞こえた。
一時は全く聞こえなくなっていたが、今ははっきりと小さな音でも聞こえるようになってきた。
その音はだんだんと大きくなっていく。
その音の元を確かめるため1度荒木をおろし、音の方向を見る。
「あれは・・・」
黒いつぶのようなものがこちらへ向かってくる。
もの凄いスピードでやってくるそれは黒いバイクだった。
誰が乗っているのかはまだ確認できない。
エンジン音の大きさに座り込んでいる荒木は耳をふさぐ。
バイクが2人のほうへ向かってくる。
やばい、また誰かが狙っているのか?
そのバイクは時速100q以上出しているにもかかわらず一瞬にして2人の右2メートルくらいにあるギャラードの死体を持ち上げ、担ぎ一瞬にして2人の目の前を通り過ぎ、去っていった。
2人はその一瞬の出来事に唖然としていた。
そして2人が我に返る頃にはバイク姿はもうどこにも見えなかった。
「何だったんだ・・今の」
福留は驚きを隠せない。
「孝介、さっきの人って・・・」
バイクに乗っていた人物、あまりにも速すぎて顔を確認することはできなかったが背番号の部分ははっきりとわかった。
「谷繁さんだ」
背番号7の谷繁だったのだ。
しかし今は乗り物は一切禁止のはず。エディにしても谷繁さんにしても一体どうして??
「孝介、あれは?」
そこには折りたたんである紙と四角い物体があった。
先ほど谷繁がギャラードを担いだ時にギャラードのコートのポケットから落ちてしまったものらしい。
福留が取りに行き、見てみると、その四角い物体は何かスイッチであるかのようなボタンがついていた。
何か嫌な予感がしつつも荒木に促されボタンを押してみると、ドカーンともの凄い音をたててまわりの建物が次々と壊されていく。
気づけば2人のまわりは瓦礫の山になっていた。
そのスイッチは中区の全ての建物に仕掛けられていた爆弾のスイッチで本部からギャラードに渡されたものだった。
「エディはこんな物を持っていたのか・・・」
もしかしたら自分たちが建物に逃げていたらこれを使われていたのかもしれない。それを考えるとゾッとする。
「ゲホッゲホッ・・・」
埃が一面を覆い、2人は無意識のうちに大量の埃を吸っていた。
「大丈夫か?」
せきの止まらない荒木を心配したが、荒木は大丈夫だとうなづいた。
そして福留は折りたたんである紙を広げてみた。
一番上に「MISSION」と英語で大きく書かれていた。その後も延々と英語で書かれている。
福留も荒木も英語を読めないので、読めそうな所だけを選んでみる。
「TARGET・・・・・FUKUDOME,ARAKI・・・」
荒木がその部分を口に出し読み終えると、2人は顔を見合わせた。
自分たちは狙われていたのだ。MISSIONと書かれた紙をギャラードに渡した人物に。
その他紙にはヘリの隠し場所や2人がいた別院の地図など書かれていた。
一番下にはFURUTAの文字。本部からだったのだ。
エディと谷繁さんは本部と繋がっていたということか?
そして本部の奴らがギャラードに指令を下し、自分たちを殺そうとした・・・ということがわかった・・・でもしかし・・・
「孝介!これ・・・」
荒木の指差した所を読んでみると、「SPY・・・?」
SPY・・・スパイ?どういう意味だ?
そこにはnever kill SPY と書いてあった。
2人にはよくわからなかった。
とりあえず前の文章と一緒に何となくだが和訳してみると、「福留と荒木に会う以前に誰かに出くわしたら構わず殺せ。しかしスパイは絶対に殺すな」という意味になった。
「俺たちの中にスパイがいるっていうのか?」
谷繁以外の生き残っている奴の中に本部と通じている奴がいる・・・。
【残り16人】
バイクライダーの谷繁カコ(・∀・)イイ!
古田の動いてる理由が切ない…ガンガレ(⊃Д`゚)゚・*。
646 :
161:02/08/16 11:57 ID:7rPDO55S
し、しまったぁ(TT)
思いっきり混乱してやんの(涙)
つーことで訂正です。
アドレナリンのおかげかようやく痛みにも僅かに慣れた荒木だったが、そ
の目がそこに倒れ伏す福留の姿を認めた時、その痛みすらも忘れて絶
叫した。
「孝介ぇェェェェェっ!」
必死に這いずり、福留の元に急ぐ。
「孝介よぉ、孝介ぇ・・なんで・・なんで・・」涙声はもはや、言葉にならない。
この動かない右足が、うらめしい。
もはや自分は俊足外野手としてプレーするのは無理だろう。だがそんな
事は今更どうでも良かった。相棒さえ、相棒さえ助けることが出来るなら。
その想いが、天に通じたか--
荒木の声に反応するかのように突然、福留の意識が戻った。
「うっ・・・ん・・・はっ!あ、荒木!大丈夫かっ!?」飛び起きた彼は、こち
らに這いずって来る荒木の元に駆け寄った。
唖然とする荒木。涙まみれの顔が何とも言えない間抜けな表情を作っ
ている。
「孝介・・お・・お前、生きてる・・・の・・か?」
「ああ・・何か良くわからんが・・助かったみたいだ。」福留はそう答えな
がら手元の銃に目をやった。醜く壊れ、ひしゃげている。
ギャラードに追い詰められ、反射的に銃を抱いたまま身を丸めた福留。
それが幸運を呼んだ。
胸に吸い込まれるはずだった井上の弾は、彼の銃に当たってしまった
のだ。身を丸めた為にひどく浅い角度で着弾してしまった小銃弾はそ
の障害物を手ひどく破壊した代償に、跳弾となって彼の腕をかすめて
行ったのだ。腕からの派手な出血だけを残して。
だが、その衝撃で意識を失った彼にはそんな事はわからない。
「とにかく手当てだ・・止血だけでもしなきゃな。」
腰から外したベルトで荒木の腿をきつく縛った彼は、あらためてその傷
の惨状に顔をしかめた。
「お前・・足・・」言いかけて何も言えなくなる。
だがこうしていても何も解決はしない。決断は早かった。
「・・・・とにかく病院だ。」
足手まといだ、自分はここに置いて行けと喚く相棒を殴りつけ、無理や
り背負う事にする。
【残り16人】
648 :
161:02/08/16 12:09 ID:7rPDO55S
うーん・・調子に乗って量産しちゃいましたがあらためて読み直
してみるとどんどん文章が荒れてきてます自分(TT)
やっぱ基本的な文章力みたいな物に欠けているようです。
一日一本程度にしてじっくり直し入れながらにすべきと反省(涙)
こうして見ると他の書き手さんたちはすごいなーと改めて関心す
ますた。
>>642 ご指摘感謝。じぇんじぇん気付いてませんでした。
>161樣
私もです。
upしてから読み返すと、修正したい箇所ばかり…
ではナゴドでG戦見てきます
>>649 イイナー
G戦だからTVで見る…
*************************
132 疑心暗鬼
「ショーゴー!ショーゴー!!!」
瓦礫の下から自分自身の身体を引き出すと、筒井はすぐに相棒の名前を呼んだ。
突然のことだった。
ぐらぐらとした鈍い振動を足下に感じ、地震かと思った瞬間、一気に衝撃が突き上げてきたのだ。
爆風で派手に吹き飛ばされて、植え込みに落下したのが幸いだった。木の枝が腕をえぐったが、手も足もなんとか普通に動くらしい。
立ち上がって見渡せば、天守閣の欠けた名古屋城だけでなく、周囲の高層ビルも、見事に崩れ去っている。
これも誰かの仕業か?無茶苦茶だよ。
そこらじゅうボコボコ爆発出来る奴を相手に、刀や毒で太刀打ちできるかっつーの。
「ショーゴー!ショーゴー!ショー…」
筒井の落下した植え込みのほど近くに山となった屋根瓦の中に、白い何かを見つけた。
多分、ユニホームだ。
「ショーゴー!しっかりしろ!!」
死ぬなよ、まだ死ぬなよ。
ちくしょう、やっぱ駄目だ。これしきの物をどかすだけなのに、痛くて全然進まねえよ。
身体がようやく現れる。
ところどころ破れたユニホーム。右腕を引き出すと、小さい呻き声が中から聞こえてきた。
「はあ、はあ……ふぅ」
ショーゴーの顔が露出するまでの時間が、筒井には何時間にも感じられた。
「待ってろ、今、助けてやるからな」
筒井はショーゴーの両肩に手を掛けて一気に下半身を引き抜こうとした…が。
「ギャアッ!!」
ショーゴーの突然の悲鳴に、思わず手を放した。
「腕…腕が……」
埋もれている部分の瓦礫を注意深くどけてゆく。
あらかた片づけたところで、筒井はようやく先ほどの声の訳を知った。
ショーゴーの左腕は、見事に−−−いささか不謹慎だが、見事なまでに骨折していた。まるで肘が二カ所にあるように。怪我とは隣り合わせの商売をしていても、このような状態の腕は見たことがなかった。
「もう…駄目です、俺……」
「馬鹿!!骨折ったくらいで駄目なことあるか!!」
泣き出した後輩の上に、依然積み上がった瓦を少しずつ片づけてゆく。
「大丈夫か!!」
背後から声と、足音が耳に入った。
びくりと体を震わせて振り向いた先には、砂利道を走って近づいてくる藤立の姿があった。
「近くを歩いてたんだが、凄い音が聞こえて…酷いな、顔中血だらけじゃないか」
こくりと無言で頷いた筒井の背後に横たわるもう一人の姿を見つけると、藤立はすぐさま駆け寄って瓦礫を動かし始めた。
この人、最近来たばっかでよく知らないんだよな…。
オリックスをクビになって山田監督が連れてきたんだっけ。
山田さんの息がかかってる人…
なんか、そういう人って信用ならないんだよな……。
やっとのことで全身を現した後輩の腕を壊れ物のように支えて起こしている男の姿を、筒井は黙って見つめていた。
652 :
代打名無し:02/08/16 19:16 ID:lcoBqccj
133 見えない恐怖
「くそっ、さっきから何なんだよ!」
遠藤は救急車を使って国立名古屋病院から移動している。
禁止エリアが停止している今なら、少しくらい車を使っても差し支えないはずだ。
「さっきの爆発、あのままあそこに居続けてたら今頃……。」
中区の方から立ち上る煙をバックミラーで見ながら戦慄を感じた。
遠藤が病院からの移動を決意したのは他でもない、その立地条件のせいだった。
国立名古屋病院のある中区はあの男、井上一樹と遭遇した地だったからだ。
ひょっとしてまだあの人は俺達の近くを徘徊してるんじゃ?
大西の血痕をたどって俺達を殺しにくるんじゃ?
中区に漂う井上の見えない陰は遠藤に車を使って移動するという多少の危険を
犯させるに足る動機だった。
もし井上と一対一で戦う事になったら、たとえこちらが不意打ちをしたとしても
勝てる自信はなかった。
ベレッタと井上の持っていた重火器とではいくらなんでも馬力が違い過ぎる。
とにかく、後ろで眠っている大西が目覚めるまでは死ぬ訳にはいかないんだ。
……この責任は俺にあるんだから。
(大西を、頼む。)
それが藤立さんが出て行く時の最後の言葉だった。
(しっかりせんかい!遠藤!)
藤立さん……。
「やるしか、俺がやるしかないんだよな……。」
遠藤は藤立の言葉を何度も何度も噛み締めていた。
「少し郊外の病院でも探すか…。」
体の震えと必死に戦いながら、遠藤はアクセルを踏み付けた。
【残り16人】
134 発想
ナゴヤドーム駐車場には数え切れないほどの車が止められていた。
これほど大規模なイベント?の運営をしているのだから、
相当な人数が動員されているのだろう。
その中の一台、白い大きめのワゴンの陰に隠れた紀藤はゆっくりと、右の二の腕に目をやった。
想像通り、複数の銃弾にえぐられて見る影もない。
これでは、二度とボールを投げることはできないだろう。
古田も派手に撃ってきたものだ。
まあいい。生き残るべきは自分ではない。
「こら紀藤、出てこんかい。俺が直々に引導渡したる」
凄みを含んだ古田の声が近い。
腕の痛みを堪えて手榴弾を握り締めた。
投げられないのならば、突っ込むしかない。特攻だ。
来い、古田。もっと近くまで来い。
古田の足音に全ての神経を集中させた。あと少し…あと少しだ。
「隠れても無駄やで。そこにおるんはわかっとんのや」
何とでも言え。避けられない距離まで誘い込めばこちらのものだ。
左手で手榴弾のピンに手をかけた。
ここから飛び出したら、すかさずこれを引き抜いて飛び付けばいい。
こつっ。
足音が、ちょうど車体の反対側あたりまで来た。
──今だ。
紀藤は一気に車の陰から飛び出した。そして息を呑んだ。
目の前に立っていたのはサブマシンガンを構えた古田ではなく、どう見ても一般人の男だったのだ。
銃を持ってはいるが、明らかに怯えている。
──ハメられた。
畜生、こっちは囮だったのか。
まさか二人がかりで来ていたとは思わなかった。
どうする。…一般人を殺すわけにはいかない。
紀藤は慌てて体を反転させようとした。しかし、それより早く連続した銃声が耳に届いた。
「おお、残念やったなァ!死ねや!」
同時に、背中に熱い痛みが走る。
「ぅ…」
しくじったな、せめて手榴弾のピンを抜いておけば。紀藤はくずおれながら思った。
「まあ、ええセン行っとったけど読みが甘かったわ。
俺みたいな悪人の発想にお前が勝てるわけないやろが。
──ああ、兄ちゃんもう帰ってええよ。銃は置いていってな」
ばたばたと足音がした。さっき囮にされた男が逃げ出したのだろう。
確かにお前は悪人だよ、古田。いくら番組のスタッフか何かでも、あれは一般人だ。
そんな人間を盾代わり役に巻き込むなんて、俺には考え付かないもんな。
ああ、力が入らない。
せめて一矢、と思ったが、どうやらこれまでか。
「あれ、ところでお前一人なんか?
センサーには複数の反応があったんやけどなぁ…まあええか。
さて。なんか言い残すことあるか?特別に聞いたるわ」
アスファルトに頬を押し付けながら、紀藤はふーっと長く息を吐いた。
何とか声は出せそうだ。
「うちの新人に…前田章宏ってのがいる…
あいつに、とうさんはずっと…一緒だ、と伝えてくれ…」
「なんや親子ごっこか」
古田が鼻を鳴らした。
「お前にわかってたまるか…」
他の誰にも理解はできないだろう。ただ、息子にだけ伝わればいい。
いずれ自分の死を知っても、嘆くことなく前に進んでほしい。
そして二度とこんな悪夢を繰り返さないよう、戦ってほしい。と。
ごめんな章宏。とうさんができなかった事をお前に背負わせてしまう。
狂った大人たちを止められなかったとうさんを許してくれ。
「…それだけやな」
「それだけだ」
紀藤の死体から手榴弾を回収し、古田はもう一度鼻を鳴らした。
まったく…馬鹿な男だ。
「ところで、助っ人ってのはどうなったんやろ…もう来とんのか?」
それから気になることがもう一つ。
ドームに向かってきたのは一人だけではないようだが、進入などされていないだろうか。
「あーくそ、忙しすぎんで…」
囮用のスタッフが置いていった銃も回収すると、古田は頭を掻きながらドーム内へと戻っていった。
【残り15人】
職人様方新作うp乙でつ。
ああ・・まこちん・・゚・(ノД`)・゚・。
久しぶりに来てみたら、えらい事になっとる。
職人様、新作うp乙です。
にしても、状況を整理しないとついて行けない…。
まこタン逝っちゃったし。
今さらながら。
自分が書いたのは、星野監督とタネタネを出したかったから。
序盤は書きやすかったですね。
話が進むにつれて、制約が厳しくなってきますた。
657 :
書き手A:02/08/16 23:35 ID:64ET7xnn
すみません。654の6行目を訂正します。
×さっき囮にされた男が〜
○囮にされた男が〜
です。
いいキャラ殺すのは勇気が要りますね。
そういう意味でも話が進めば進むほど難しいと思います。
658 :
某書き手:02/08/17 00:09 ID:URra0aER
>>656 ちょっと状況を整理してみました。
かっこ内は最新の現在位置
【生存者】
福留&荒木(中区)
井端&川上&朝倉&中里(東山公園付近)
落合&正津(名大病院)
遠藤&大西(救急車で移動中)
ショーゴー&筒井&藤立(名古屋城跡)
井上(中区?)
谷繁(バイクで移動中)
【その他の登場人物】
星野仙一(?)
山田久志(?)
古田敦也(名古屋ドーム)
リナレス&バルガス(名古屋ドーム?)
今中&中村(名古屋ドーム内スタジオ)
【禁止エリア(現在は停止中?)】
東区、南区、西区
前田章宏(昇竜館)を忘れてた…。鬱
あと、元ドラゴンズのメンバーも何人か出てましたね。
660 :
代打名無し:02/08/17 20:33 ID:UGpMbk6m
保守age
タニシゲ=チキン
地の文では森(ショーゴー)の名前表記はどちらかに統一してホスィ
663 :
代打名無し:02/08/18 18:55 ID:jequq2Nc
age
135 多くの不安
荒木を背負った福留は中村区に入っていた。
ここまで来れば、すぐに大きな病院があるはずだ。
もう時刻は三時あたりだろうか、春の日は傾き始めていた。
福留は一旦立ち止まり、焦燥感を鎮めるようにゆっくりと深呼吸をした。
ギャラードに撃たれた太股は痛みの割に軽傷だったし、
腕からの出血も止まってはいたが、
早く処置しなければ何があるかわからない。
背の荒木に至っては、はた言うべきにあらず、だ。
「おい荒木、死んでないか?」
「お前こそ…脚と腕、平気なのか」
「別に。見た目ほど派手な怪我じゃないからな」
それにしても、この状態で敵意のある人間に出会ってしまったらどうしようもない。
ガバメントは壊れてしまったし、日本刀とデザートイーグルは
携帯のしようがないのでバッグの中だ。
自動車を使うことも考えたが、首輪のシステムがどの程度破壊され、
復旧しているかわからない。
迂闊に手を出して死んだら、それほどつまらない死に方もあるまい。
ともかく今は、ゆっくりでもいいから病院に行くことだ。
「…山北はもういないんだよな」
荒木が静かに言った。
名大病院で荒木の脇腹を治療してくれた山北はもう死んでしまった。
「心配すんなって。俺が何とかする」
明るく言ってはみたが、あまり自信はない。
膝に食い込んだ銃弾をどうするべきかさえわからなかった。
取り出すことができれば一番だが、素人の自分が手術の真似事などしたら…
「あ…見えてきたな」
荒木の声に顔を上げると、
建物の合間から名古屋第一赤十字病院がその姿を現し始めていた。
そこに誰もいないことだけを祈って、福留はまた一歩歩を進めた。
【残り15人】
保守
667 :
代打名無し:02/08/19 16:27 ID:AkNmQ/Fs
どーでもいいけど、山北初勝利〜
まだやってんの?(呆)
136 プログラムの狂気
井端は長い沈黙の後、ふと顔を上げた。
「おい、あいつらはどうした?」
井端の声に川上も顔を上げて辺りを見回した。さっき座らせたベンチにも、公園の中の別の場所にも朝倉と中里の姿はなかった。
「あいつらどこに行ったんだ。まったくちょっと目を離すと勝手に動きやがって」
川上は立ち上がる。
「仕方がないな。ちょっと探しに・・・」
川上がそう言ったときだった。銃声が響いた。
「!」
川上と井端はハッとして顔を見合わせた。そして井端も立ち上がると公園を出た。
キョロキョロと見渡すと少し離れた小学校の前あたりに中里が立っているのを見つけた。
「中里!」
2人は駆け寄ろうとしてその中里の足元に、朝倉が倒れているのに気付いた。
中里の手にある銃はまだ朝倉に向いていた。
井端は慌てて足を止め、川上もその腕を掴んで止めた。
「中里、お前が朝倉を殺ったのか!?」
井端が問いかけると中里は頷いた。
「何があったんだ。お前達はずっと一緒に行動してたんだろう」
目の前に起こっていることを理解したくなくて川上は叫んだ。
中里は激しく首を振った。
「どうせもう何も出来やしないんだ。何やったって結局は本部のやつらの手の中なんだ。だったら」
中里は川上と井端の方へ銃を向けた。
「みんな殺して、生き残るんだ!」
「やめろ、中里!」
川上は井端の腕を振り切って中里に向かって突進した。
2発の銃声がした。しかし照準を合わせずに発射された弾はことごとく川上を逸れた。
「うわあぁぁぁっ」
至近距離に迫られて中里はもう1発撃った。それは川上の足をかすめた。
川上はバランスを崩してうずくまる。
中里は肩で息をしながら今度は川上に照準を定めた。
「中里!」
井端に名を呼ばれて振り返った中里は、井端の銃口がピタリと自分に向けられているのを知った。
「そのまま銃をしまって立ち去れ。そうしたら今は見逃してやる」
中里は少し井端と銃を見比べて、静かに銃を下ろした。
「今後またどこかで会って、お前が俺達に銃を向けたらその時は容赦しないからな」
井端の言葉を背に中里は走り去った。
それを見送って井端は憲伸に駆け寄った。
「憲伸、大丈夫か?」
「ああ・・・かすっただけだと思う」
しかし破れたズボンの周りにはじわじわと血がにじみだしていた。
「中里を止めないと。あのままじゃあいつは・・・」
立ち上がりかけた川上は、痛みに顔をしかめて再び跪いた。
かすめただけと思ったが、傷は意外に深いらしい。
「とりあえずお前の手当てが先だ。おとなしくしてろよ」
そう言って井端は川上を歩道に座り直させると、すぐ傍の小学校に治療に使えそうなものを求めて入っていった。
川上はその姿を見送って目を閉じた。
中里が朝倉を殺した。
そして俺達にも銃を向けた。
プログラムの狂気をまざまざと見せ付けられて、川上は改めてその苦しさを感じた。
じっとりと脂汗がにじんだ。
「憲伸」
保健室にあった救急箱やらタオルやらを抱えて井端が戻ってきた。
「応急処置しか出来ないが、しないよりマシだろ」
そう言って井端が消毒薬とガーゼを取り出す。
「・・・なあ、なんで中里を逃がしたんだ? あのままじゃあいつはこれからも出会ったやつを殺してしまうぞ」
止血のためにきつく巻かれたタオルに顔をしかめながら川上が問いかける。
「ああなったら説得は無理だ。そこまでは俺じゃ面倒はみきれない。・・・しみるか?」
消毒液を含ませたガーゼで血を拭き取りながら井端が答えた。
「お前の前で殺さなかっただけ良かったと思ってくれ」
井端は川上の足に包帯を巻いていく。
川上はそんな井端の手元を見ながら苦しげに息を吐き出した。
【残り14人】
IDが一文字置きに大文字 カコ(・∀・)イイ!!
( ‘ 里‘)y=ー( ゚・・゚)・∵. ターン
ぁさくらタン…
>>659 亀レスですが、元ドラゴンズで出てきたのは
YB 中村
YB 種田
L 清水
M 吉鶴
M 椎木
M 酒井
M 山本保
C 鶴田
H 鳥越
以上だったかと。
個人的には紀藤を心配するかぷナインの話が好きなのれす。
あああ 健太…
137 発芽
中里は走った。ひたすらに走っていた。
スポーツバッグとワルサーP38を片手に、人が集まっていそうな場所を目指して。
まだ生き残りはたくさんいるはずだ。朝の定時放送を聞いた時点で19人。
朝倉はこの手で殺したが、自分を含めて最大18人の生き残りがいることになる。
井端さえいなければ川上も殺せたものを。これだから群れる人間は嫌いだ。
夕方の放送まで、あと二時間弱ある。いくらなんでも18人という事はないだろうが、
あまり人数が減っている期待はしない方がいいだろう。
十数人という人数に対してこの名古屋は広すぎる。
ああ、くそ。
こんな事なら初めからハッキングなどしなければ良かったのだ。
禁止エリアも首輪のタイマーも全て順調に動いていれば、
今頃多くの影に怯えることもなかったのだ。
結局のところ、自分の考えは甘すぎた。
冷静に考えてみれば、敵うはずのない敵だった。
自分はいつでも握り潰せる掌の上にいたのだから。
そう、それなら、むしろそいつに追従した方が生き残る確率は高まるんじゃないか。
戦意のない、能天気な連中だってまだまだいるだろう。
まずはそういった人間を始末していくのがいい。
ちょうど朝倉を殺した時のように、あっさりと邪魔者を一人消せるだろう。
それに…
中里は知ってしまった。
自分より年上の人間を恐怖させる事への喜びを。
このプログラム参加者の中では最年少の自分が、居並ぶ「先輩」たちを恐怖させることができるのだ。
この右手に持った金属の塊を、朝倉に突きつけた時の高揚感が忘れられない。
――お前は、俺に、勝てないんだよ。
中里は笑った。
今に見ていろ。ただ早く生まれたというだけで威張っている奴らの脳天に、
鉛玉をぶち込んでやる。
俺は若くて、賢くて、強力な武器を持っている。誰も俺に勝てはしないはずだ。
生き残ってやるよ。無能な先輩どもを押しのけて。
その方が、中日の未来の為にもいいだろう?
【残り14人】
中里タンの目覚め(・∀・)イイ!
677 :
代打名無し:02/08/20 18:01 ID:SZlfS0KS
>>677 そのイタイ社員に蹴落とされないようになw
A G E
保全
保全sage
職人さん達、続き期待してます
そろそろ山Qの近況が知りたい…
682 :
代打名無し:02/08/21 17:43 ID:lg/Lyu3a
ageage
138 標的、まずは・・・
中里は大きい交差点に差し掛かって足を止めた。
どっちに行こうか。人がいそうな所はどこだろう。
ふと頭が冷えかけて中里の中にさっき自分に銃を向けた井端の残像が浮かび上がった。
・・・なんで俺がこんな風に走らなきゃならないんだよ。
あんなドラフトも5位指名で、守備くらいなら使える程度の評価で入ってきたようなヤツに銃を向けられたくらいで。
しかも何だ。情けなんかかけやがって偉そうに。
やっと1軍定着とか言われてるような、どこにでもいる程度の野手のクセに。
チッ、マジでムカついてきた。やっぱりさっさと殺すべきだよな。
どうせ川上は怪我してるんだ。そんなに動けるもんじゃない。まだあの辺にいるんだろう。
いや、でもただ殺したんじゃ面白くないな。
そうだ、荒木だ。荒木をあいつの前に連れてって嬲り殺してやったらどうだろう。
1,2番コンビだか、二遊間コンビだか、セット扱いでちょっと一緒に試合に出たくらいで「大切な相手」とか勘違いしてやがるんだ。
バカじゃないか。
それで「俺には荒木は殺せない」だぁ? カッコつけるのもいい加減にしろよ。
ははは、いいなぁ。あいつの目の前で荒木を殺してやろう。
どんな顔すっかなぁ。はは、ゾクゾクしてきた。
えーと、荒木に会ったのはもうちょい向こうだったよなぁ。ああ、確か福留も一緒だったっけ。
まあ、あんなヘタクソ野郎なんかパンパーンと殺しちまって。誰も惜しまないよなぁ、あんなヤツ。
荒木はどうやって連れて行こうか。
まあ、いいや。あいつも勘違いして井端の後ろを犬っころみたいに追っかけてるようなヤツだ。
井端のことでもちょっと脅してやれば素直についてくるだろ。気ぃ弱そうだしな。
進む方向は決まった。
中里はこれから自分が行う殺戮ショーを思い描いてニヤリと笑った。
【残り14人】
中里しゃん、怖い〜!!性格悪い〜!!
一波乱起こるか?ワクワク
うわ〜まさしく「厨」という文字がふさわしい!
中里萌え!
139 反旗の兆し
「おとうさん、今何をやってるんだろう…。」
前田章宏は地下鉄浄心駅の改札口で休憩を取っていた。
前田は紀藤と別れた後自転車に乗って移動を始めたはいいが、今一歩西区から出る
踏ん切りがつかなかった。
禁止エリアを自由に移動できるのは首輪のついてない自分の特権だ。
西区にいる限り安全が保障されている。
中区で起こった爆発も前田の恐怖を拍車された。
白煙がもうもうと立ちこめる中区に近付くのは新人の前田には酷だったのかもしれない。
それにもう1つ、前田が動くことをためらう理由があった。
この事態をまだ現実だと信じたくなかったからだ。
前田の実家は名古屋球場の近所にある。
球場の歓声を聞いて育った前田は自然と中日ファンになった。
親には試合観戦にも何度も連れて行ってもらった。
あの名古屋球場での中日選手の輝きは今でも鮮やかに脳裏に蘇ってくる。
今中さん、山本さんの2大エース。
ホームラン王を競った山崎さん、大豊さん。
みんな憧れの存在だった。
中日に入団が決まった時はまるで夢を見ているみたいだった。
それがこんなことになるなんて…。
「おとうさんにはかっこつけて「全部この目で確かめたい」なんて言ったけど
こんな様なのかよ。
僕なんて口だけのガキじゃないか!」
前田は自省の意味を込めてそう1人言を言った。
その時、突然構内に誰かの足音が響き渡った。
どういう事なんだ?
禁止エリアの西区にわざわざ入ってくる人がいるなんて…。
「誰だ!!」
前田は足音の方向に向かって叫んだ。
「ファームから消えたって情報があったけど、こんな所にいたんか。
上に自転車が置いてあったんで分かったわ。」
「あ、あなたは……。」
「俺に力を貸してくれないか?
この状況をなんとかしたい。」
その男は静かに、だが熱く前田に語りかけた。
【残り14人】
140 見知らぬチームメイト
川上はやっと落ち着いてきて井端を見た。
「・・・これからどうするんだ?」
「中里を待つ」
「え?」
間髪入れずに答えた井端の意外な言葉に、川上はいぶかしげな顔をした。
「どういうことだよ。あいつは行っちまったじゃないか」
「中里は自分以外を皆殺しにしてこのゲームに勝つつもりだ。でも考えてみろ。
この広い名古屋にあと一体何人残っていて、しかもそいつらがどこにいるか解らない状態だ。
それを探すのは困難なことだ。だったらもう一度ここに戻ってきて、まず俺達を殺したほうがいい」
井端は少し先の地面に転がる石を見つめたまま答えた。
「だから中里はまたここに来る」
「でも中里が来たとしてどうするんだ? あいつは俺達を殺しに来るんだぞ。今度は確実に」
川上の声が少し震えた。
さっきは銃を向けられても中里を止めたい一心で無我夢中だったが、今更ながら銃を向けられ発砲された恐怖を感じた。
「もちろん黙って殺られるつもりはない。さっきも中里に言ってある。今度は容赦しない」
川上はビクッと震えた。
「中里を・・・殺すのか?」
「ああ、今度は、な」
頷いた井端に川上は全身から血の気が引いていくのを感じた。
もう誰も彼もが自分の知っているチームメイトではない気がした。
井端にしろ、中里にしろ、「チームメイトを殺す」などといともアッサリ言うような男だったろうか。
「憲伸、お前まさかまだこれが夢だったらいいなんて思ってるんじゃないだろうな」
井端の言葉が怖い。
なぜこんなに怖い言い方をするんだ。
このプログラムが始まってから川上は「井端と出会えれば何とかなる」と思っていた。
具体的な解決策を考えていたわけじゃない。ただ漠然と救われるような気がしていた。
2人でいればきっと安心だと思っていた。
しかし今目の前にいる井端は・・・。
井端が怖い。
【残り14人】
>>685 ワロタ
厨に武器…もしかしたら最強かもしれん(笑)
┌┬┬┬┐
―――┴┴┴┴┴―――――、
/.  ̄ ̄ ̄//. ̄ ̄| || ̄ ̄ ̄||| ̄ ||
/(´ω`) // | || ||| ||
[/(__)_ //[ ]. |||___||| ||
||_. * _|_| ̄ ̄ ∪|.|. |ヽ. _||
lO|o―o|O゜.|二二 二|.|名古屋病院 ||
| ∈口∋ ̄_l__l⌒l_|_____|_l⌒l_||
 ̄ ̄`ー' ̄ `ー' `ー' `ー'
141 闇への恐怖
次第に闇の濃くなっていく外を狭い病室内から眺めながら、福留は一つ欠伸をした。
幸いにしてこの病院内には誰もおらず、福留はゆっくり荒木と自分の治療に当たることができた。
もちろん治療と言ってもごく簡単なもので、傷を消毒し、包帯を巻きつけ、
気休めに痛み止めも飲んだ、ただそれだけの事だが。
それでも、ありったけの知識と辺りの資料を総動員したのだ。
疲れた…
もう、心も体も限界が近い。
三日間まともに食事も睡眠もとらずに死の恐怖と戦い続けるなど、
普通の人間にできることではない。
ゆっくり眠りたい。腹いっぱい好きな物を食べたい。風呂に入りたい。
実際には食料だけはここで何とか調達できたのだが、
胃に食べ物を流し込んでも満足感はかけらもなかった。
「荒木」
ベッドに寝かせた荒木はまだ起きているらしく、呼びかけにああ、と返事をした。
大部屋の一番窓際のベッドは、一応清潔そうではあった。薄く埃は被っていたが。
ベッド脇の椅子もあまりいい座り心地ではないが贅沢は言えない。
「怪我人なんだから、寝れるんなら寝た方がいいぞ」
「…孝介、お前も疲れてるんじゃないか」
「いいから」
どうせ今の荒木では見張りにもならない。外敵に備える為には自分が起きているしかないのだ。
「ごめんな。俺が怪我さえしてなければ、お前も休めるんだよな」
「バカ、気味悪いこと言ってねえで寝ろよ」
話している間にも、だんだんと室内は薄暗くなっていく。直に五時だ。
六時半頃にはすっかり暗闇になってしまうだろう。
電気の止められた名古屋に夜が来る。
街灯も、室内の蛍光灯も光らない。頼りになるのは懐中電灯と蝋燭くらいのものだ。
福留は正直、それが恐ろしかった。
暗闇に怯えるなど何年ぶりだろうか。
子供の頃はいつも闇を恐れていた気がする。
夜になると、押入れや便所から得体の知れぬもの…妖怪、幽霊などの類…が、
這い出てくるような錯覚に良く陥ったものだ。
しかし今は、闇の向こう側に息づく生身の人間が何より恐ろしい。
病院備え付けの懐中電灯は手元にあるが、非常時にこれをずっと持っているわけにはいかない。
暗闇の中、複数の人間に襲われたら、もう駄目かもしれない。
福留の頭からは、今や「チームメイトを信用する」という発想が完全に抜け落ちていた。
多くの死体や戦いを見てきたショックに極度の疲労が重なり、
もはや信頼できるのは荒木と自分だけだとさえ、福留は考え始めていた。
もし、この病室に入ってくる人間がいたら…容赦なく撃つ。
それしかない。それしか生き残る手段はない。
あれほど忌み嫌っていた拳銃を、福留は気が付くと膝の上に乗せていた。
【残り14人】
692 :
書き手A:02/08/22 01:53 ID:h+CdOLHI
前作でヒーローだった川上が、今作では何かとチキンに…イイ!
と言うか今回、みんなどこか情けないですねー。
そこが好きなんですけど(笑)
保全
694 :
代打名無し:02/08/22 14:35 ID:biNXa5iB
age
696 :
代打名無し:02/08/22 18:42 ID:uORuHPzn
142 勝負球
「いないと思ったらこんな事してたんですね〜、古田さん!」
「いや〜、死ぬかと思いましたわ。」
今中は無言のまま古田とアナウンサーのトークを聞いている。
テレビ画面には紀藤vs古田の映像が何度もリプレイされる。
「それにしても作戦勝ちって感じですね。
まさか、紀藤選手も古田さんがおとりを使ってくるなんて思いもよらなかった
でしょうね。
まさにIDの申し子!」
「いやいや、IDなんて。
野村監督の事を思い出させないでくださいよ〜。」
さっき放送された藤立達の銃撃戦といい、このスタジオのほんの近くで戦いが
繰り広げられたなんて…。
彼らの事を思うと今中の魂は激しく揺さぶられた。
「今中さんはどう思いましたか?」
アナウンサーが今中に話を振ってきた。
「………。」
「今中さん?」
「さっき中区の街が爆破されてましたけどあれっていいんですか?
これが終わった後、名古屋の人が困るんじゃないですか?」
ささやかな抵抗として、なんの脈絡のない話を振って話の流れをさえぎって
やった。
栄の街は試合の後に幾度となくチームメイトと飲みに行った思い出深い街なんだ。
勝手に壊されてはたまったもんじゃない。
これで視聴者から苦情が殺到でもしたらしめたもんだ。
「あ、そのことですか?今中さん。
あれは名古屋市長からの依頼でやったことなんですよ。
栄の街もだいぶ老朽化が進んでましたからね。
これを機に再開発を進めるということです。
テレビの前の名古屋から避難しているみなさん、御心配なく。」
「……。」
697 :
代打名無し:02/08/22 18:42 ID:uORuHPzn
俺は、俺はこのままじっと待ち続けるしかないのか?
もう生存者も残り少なくなってきているんだ。
俺は…。
…いけない、焦っちゃだめだ。
落ち着いてチャンスを待つって決めたじゃないか。
でも、それで、それでいいのか……?
「今中どうした?
すごい汗だぞ……。」
画面が外からの中継に切り替わると中村が小声で話しかけた。
「……中村さん、すいません。
俺やっぱ最後は、決め球はストレートがいいんです…。」
「今中?」
昌さん、俺はどうしたらいいんですか?
どうしたらみんなを……。
教えてくださいよ……、昌さん。
【残り14人】
保全sage
699 :
代打名無し:02/08/23 19:16 ID:up9SCTKC
│
この後衝撃の展開が! (
残った選手達は (
どうなってしまうのか!! ( 从/
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒∨⌒⌒⌒⌒⌒⌒
∧_∧ ∧_∧
( `ε´) (・∀・;)
( ヽ 曰 ( \
───────∪───┃───∪──⊂_ヽ─────
 ̄ ̄\_ ̄ ̄\ ┻
\ \ __∧_________
 ̄ ̄ ̄ ̄≡≡≡≡ /
=======================│ ガチンコかよ!
sageとく
701 :
代打名無し:02/08/23 21:47 ID:XguFV2FB
ホームページの方のその16がどっかいっちゃてるんですが・・・
dat落ちしても知らんぞ!
703 :
代打名無し:02/08/24 12:29 ID:+WTjuZnN
保守age
143 掌の上で
薄闇の中、ギャラードの死体から無線機などを回収しながら、谷繁は焦り始めていた。
今し方入った定期放送によると、生き残りは自分を含めてまだ十四人もいるという。
これは好ましい事ではない。明らかにペースが落ちてきている。
藤立、筒井、森、遠藤、大西の五人はバルガスに任せるという形になったが、
それを引いてもターゲットは八人も居るということになるではないか。
ギャラードとゴメスは死んでしまったし、このままでは終われない。
役に立たないと判断されたら終わりだ。始末されてしまう。
この首に嵌められた爆弾は、いつでも自分の命を終わらせる事ができるのだから。
『谷繁』
無線機から古田の声が入った。相変わらず人を舐めたような甘ったるい声だ。
「何だよ…」
『今、お前中区やろ。そっちに中里が向かっとる』
「中里。あのクソ生意気な奴か」
ちょっと周りから天才だの何だのと騒がれて、すっかり勘違いしている様は
見ていて気持ちのいいものではなかった。
『次のターゲットは、あいつや。できるやろ』
いいだろう。あのガキに現実ってものを教えてやる。
「わかった、中里だな」
『位置はこっちからナビゲーションしたるから。
…ヘマして殺されんようにな』
「俺があんなペーペーに殺されるかよ」
ギャラードが持っていたトカレフとブローニングハイパワー、
そしてその弾薬を自分のバッグに詰め込み、谷繁は自然と口元を綻ばせていた。
結局俺は、人を傷つけるのが嫌いじゃないらしいな。
『それから…お前、ちゃんとスイッチとメモを落としてきたやろな』
「ああ。あれなら、指定された通りに福留と荒木の目の前に落としてきた。ちゃんと爆発もしたしな」
『そんならええわ。じゃあな』
古田もずいぶん回りくどいことをするものだ。
あの二人を猜疑心の塊にする為、わざわざあんな小細工を弄するとは。
まあ、中区のこの有様を見れば、効果はあったと思うべきだろう。
福留と荒木は勿論、その他の生き残りの不安を煽るにも十分だったはずだ。
これで殺し合いが活性化すれば楽になるのだが。
「さて。ぼつぼつ行くか…」
再びバイクにまたがり、谷繁は走り出した。
まずは、あの舞い上がった若造からだ。
【残り14人】
保全しまっさ
職人様方、頑張ってください
保全
708 :
:02/08/25 17:35 ID:oqbJ04c4
中日優勝したら、栄のオアシスの水の中に飛び込む人でるかな?
でも飛び込んだら、底が抜けて墜落する?
709 :
探してみリークだよ:02/08/25 17:36 ID:8yDdor3/
保 全
144 逃走
「逃げろ!逃げるんや!」
藤立の声が、煙幕の作り出した煙の中に轟く。
筒井はただ唖然とするのみで、体は金縛りにあったかのように硬直していた。
何者だ?あいつは。39という番号が入った中日のユニフォームを着てはいるが、
あんな選手は見たことがない。
「こいつは俺たちを殺す…ぐぅっ!」
瓦礫の中に銃声が響き渡る。
藤立の苦しげな呻きがそれに続いた。
姿は見えずとも、何が起こったかは容易に想像が出来る。
「筒井さん、何してるんですか!戦わなきゃ…」
森が折れていない右手で筒井の肩を叩いた。
「ショーゴー…馬鹿言うなよ、相手は銃を持ってるんだぞ」
「でも、このままじゃ藤立さんが死んじゃいますよ!」
何を言っているんだ。勝手に死ねばいいじゃないか。
あんな人、俺は親しくもないし、信用も出来ない。助ける義理なんてないんだ。
「何をぐずぐず話しとるんや!はよ逃げんかい!」
煙の向こう側から再度藤立が怒鳴った。
「藤立さん、俺も戦います!」
「おい、待てよ」
筒井はほとんど無意識に森を止めようとした。
しかし、森は一瞬早く筒井の脇をすり抜け、煙の中に駆け込んでいた。
「すみません、筒井さんだけでも逃げて下さいっ!」
「ば、馬鹿野郎っ…ショーゴー!」
筒井は瓦礫に埋もれた地面に膝をついた。
容赦のない銃撃の音に、悲鳴と怒号と叫びが混じって聞こえてくる。
何ということを。本当に馬鹿だ。
武器も持たず、何が戦いだ。嬲り殺しにあうだけではないか。
どうする、助けに行くか?…いや。武器が無いのは自分も同じ。
いまさら自分が助けに行っても、戦況は何も変わらないはずだ。
そうだ、逃げてもいいんだ、俺は。二人とも逃げろと言ったじゃないか。
ガクガクと震える足に力を込め、筒井は立ち上がり…
それから、森とは反対の方向に駆け出した。
悪く思うなよ。俺は死にたくないだけなんだ。
【残り14人】
保全sage
sage
145 煙の中で
「くそっ、こんな時にっ!」
遠藤は救急車のエンジンを覗いていた。
国立名古屋病院を出て結局第一日赤に向かう事に決めたのだがその道中で
エンジンの調子がおかしくなってしまったのだ。
「なんでこんなについてないんだよ。」
遠藤は苛ついて救急車のボディを蹴り上げ天を仰いだ。
……?
空には何か白い煙のような物が流れていた。
「瓦礫の煙か?いや、違う。
あれは…、藤立さんの!?」
そうだ、ドームで見た藤立さんの煙幕だ。
「……大西、待ってろ。
今藤立さんを連れて来るから!」
そう眠っている大西に呼び掛け、遠藤は煙が立ち上る方向へ走り始めた。
藤立さんとまた一緒に行動できるならどれだけ心強いか。
それにしてもこんなに速く再会できるなんて…。
でも、煙幕を使うなんて藤立さんに何かが…?
ベレッタを握りしめながら走り続けて、しだいに煙の発生元が近づいて来た。
「あそこか!」
煙の向こうにかすかに人陰が見える。
あれは…、藤立さんだ!
「藤立さん!」
藤立はゆっくりと振り向いた。
「なんや、遠藤か。
まだ生きとったんか?
……まずい所見られたな。」
遠藤は藤立の言葉に妙な違和感を憶えた。
それに、何か様子がおかしい。
向こうで倒れているのは…、ショーゴー?!
それに藤立さんの横にいるのは……。
遠藤の背筋から一気に血の気が引いた。
あ、あいつは、ドームの……。
「ふ、藤立さん!逃げてください!!
殺されますよ!」
遠藤はとっさにベレッタ構える。
「逃げる必要なんてないやろ。
殺されるのはお前なんやから。」
【残り14人】
146 真意
「な、何を言ってるんですか。
そいつは、ドームにいた奴じゃないですか!」
「だから逃げる必要がないんや。
俺は狙われてないからな。
そもそも遠藤、お前何で病院に居続けなかったんや。
そしたら今頃生き埋めだったのになぁ。」
藤立の顔から笑いがこぼれる。
「ふ、藤立さん急にどうしちゃったんですか?!
何かおかしいですよ!!」
「おかしい?
俺はどこもおかしくないで。
お前にこんな所見られたから演技を止めて正直に話してるだけや。」
「………?」
「意味が分かってないようやな。
ふん、じゃあ冥土の土産に教えたるわ。
俺は元々主催者側のスパイなんや。」
「…スパイ?」
「最初、荷物を開いた時は驚いたわ。
なんせ入っていたのは煙幕とNHKの携帯無線なんやから。
で、試合をテレビ用に盛り上げろって指示が来てな。
俺はNHKの内部情報を提供されながら行動してきたってわけや。」
「そんな……。
じょ、冗談ですよね、藤立さん!
最初から大西とずっと一緒に行動してたんでしょ?
スパイなら1人で行動しているはずですよ!」
「大西と組んだのはレーダーを利用させてもらっただけや。
序盤は内部情報だけじゃ誰が何所かつかみにくかったんでな。」
「…嘘だ!
だって、ドームにだって命懸けで乗り込んだじゃないですかっ!!!」
「命懸け?
俺は命なんてかけたつもりはないで。
仁村さんから頼まれてやっただけや。
禁止エリアが停止してたことも、警備が俺を撃ってこない事も
最初から知ってたんやからなぁ。」
また笑いながら藤立は言った。
716 :
代打名無し:02/08/26 17:12 ID:Lfc8vhrS
「遠藤知ってるか?
俺達がドームに侵入した場面、瞬間最高視聴率とったらしいで。
『遠藤達を守る藤立さんかっこいい!』って視聴者の反応が目に
見えるようや。
…俺、気づいてしまったんや。
この試合を利用すれば俺は日本のヒーローになれるかもしれへんって。
もう、高校野球にも負けるようなガラガラのスタンドでプレーするのは
御免なんや!
もし、俺が最後まで残って、井上あたりをチームメイトの仇とか言うて倒せば
俺は一躍野球界の英雄や!
もう、神戸の無名選手なんかやない!!
天下の巨人、阪神でプレーするのも夢やないんや!!」
「う そ だ……。」
「ちょっとしゃべりすぎたな。
遠藤、死んでもらうで。」
そういうと藤立は拳銃を遠藤に向けた。
「ん?」
「筒井さん逃げて……。」
地面に倒れていた森が藤立の足にしがみつきながら煙の向こうに呼びかけた。
「ちっ、死に損ないがっ!」
1発、2発、藤立が森の体に銃弾を打ち込む。
しだいに森の体から力が抜けていき、藤立は森を振り払った。
「ん、遠藤はどこいった?
……逃げられたか。
まあいいか。あんな奴すぐ死ぬやろうからな。
バルガス、行くで。
煙が晴れてこんな所カメラに撮られたらたまらんからな。」
そう言うと、藤立達は煙の中に消えていった。
【残り13人】
まじかよ次郎…
エーンエーン
じーろーうー。゚(゚´Д`゚)゚。ウワァァァァァン
何故だー!!何故なんだ次郎!!
嘘といってくれ
てっきりヽ(‘。。’)ノに声をかけたのは藤立だと思い込んでたので
この展開には・・ウワァァン゚・(ノД`)・゚・
次郎…マジですか…・゚・(ノД`)・゚・
藤立・・・
紀藤亡き後応援してたのに。
となると前田に声かけたのは一体誰だ?
>>722 実はタネタネとか期待したり
山Qかもしれない
職人さんに期待
次郎の良心回路は (
不完全だった・・・ (
( 从/
⌒⌒⌒⌒⌒⌒⌒∨⌒⌒⌒⌒⌒⌒
∧_∧ ∧_∧
( `ε´) (・∀・;)
( ヽ 曰 ( \
───────∪───┃───∪──⊂_ヽ─────
 ̄ ̄\_ ̄ ̄\ ┻
\ \ __∧_________
 ̄ ̄ ̄ ̄≡≡≡≡ /
=======================│ キカイダーやないか!
147 パ・リーグの男
藤立は廃虚となった中区の街まで引き返して来て一息ついていた。
バルガスとは煙幕を抜けてすぐに別れた。
仁村さんが連れて来たあいつはあいつなりに勝手に動くのだろう。
「ショーゴーの奴、生き残ってればいい野手になってたんかな。」
藤立は自ら手をかけた森の事を漠然と考えていた。
「感情が高ぶって撃ってもうたけど、今思うとかわいそうな事をしたかなぁ。」
あかん、そんな事考えたらだめや。
この試合中、俺はとことん冷酷になるって決めたやないか。
罪もない遠藤や大西も落としいれて来たんや。
さっき遠藤にあんな風に宣言したんやし、もう後戻りはできへん。
……パ・リーグの人気回復のために、俺はヒーローにならなきゃいけないんや。
今まで近鉄、オリックスと渡ってきたけど今のパ・リーグは絶望的に人気が下がって来ている。
ひと昔前は『実力のパ・リーグ、人気のセ・リーグ』と言われたもんやったけど、
今じゃ人気も実力もセ・リーグの独壇場。
このままじゃナベツネの言う1リーグ制も時間の問題かもしれへん。
1リーグ制になってチーム削減なんて事になったら俺のいた近鉄やオリックスは……。
そんな事絶対あってはならない。
パ・リーグはプロ野球選手としての藤立次郎を育て上げてくれた故郷なんやから。
そのパ・リーグの人気回復のためにはスターが必要なんや。
そう、荷物に無線が入ってるのを見た時俺は思いついてしまったんや、完璧なシナリオを。
有利な条件を利用してこの試合に生き残った俺は巨人か阪神に移籍後活躍して実力を証明し、
全国区の人気を揺るぎないものにする。
そしてパ・リーグに凱旋や。
そうなったら俺の人気はかつてのイチローなんか目やない。
俺1人いればファンはまた球場に戻ってきてくれるはず。
客寄せパンダでもなんでもいい、パ・リーグのために俺はきっとやってやるで。
そのためには最後の最後まで英雄藤立を演じ続けんとな。
とにかく、俺には戦う理由がある。
この千載一遇のチャンスを絶対逃がす訳にはいかないんや。
【残り13人】
動機を正当化したいんだろうけど正直、弱いと思われ
徹底ヒール路線きぼん
>>727 でも、徹底ヒール路線だと谷繁、中里、井上、バルガスあたりと
かぶっちゃわない?
729 :
代打名無し:02/08/27 15:15 ID:zYV3H4qk
井上はヒール路線とは違うような気が・・・・・・
731 :
代打名無し:02/08/27 20:17 ID:9sUoweYW
俺が一番すばらしいと思ったキャラ=ピアノゴリ
>>603でドメに声をかけた
幽霊邪魔さん(・∀・)イイ!
148 キューバ、主砲、英雄、50万円
「なん…で…」
筒井は今度こそ失禁しそうになっていた。
中区から飛び出さんばかりの勢いで走り続け、
やっと謎の男から逃れられたと思ったら、行く手にまたも見知らぬ外人が立ち塞がったのだ。
見慣れたユニフォームに縫い付けられた背番号は44。
今年そんな番号で登録された選手はいないはずだ。
それに首輪をしていないではないか。非公式に参加しているとでもいうのか。
いったい、このプログラムはどうなっているんだ。
もう嫌だ。限界だ。帰りたい。帰してくれ。
誰かいないのか。俺を助けてくれないのか。森は…
ああ、森は死んだだろうか。藤立は?
くそ、もうすぐ夜になっちまう。
死にたくない。死にたくないよ、俺は。
筒井は自分が狂ってしまったかと思った。それほど混乱していた。
「…あ…あんた…何者なんだ…」
背番号44は答えなかった。おそらく言葉が通じないのだろう。
サングラスに隠されたその表情は窺うことが出来ない。
ただ、筒井にぴたりと向けられた銃口がその意思を明確に表していた。
足から力が抜けそうになるのを堪えるだけでも辛い。
「俺を殺すんだな…」
やはり返答はない。男は無表情に唇を引き結んだままだ。
しかし、ふと筒井は、男の顔が見覚えのある顔だということに気付いた。
何だ?こいつの顔はテレビか新聞で見た事があるような…
「なあ、あんた…俺、どっかであんたの顔…」
唐突に銃声が響いた。
腹に衝撃と痛みが走る。筒井の足はついに負け、体は瓦礫の上に倒れた。
ああ、そうか、こいつ俺の言ってることわかんないんだもんな。
だからって、もう少しで思い出せるってとこで殺さなくてもいいのに。
筒井は何とか体を起こそうとしたが、痛みが酷くてとても力が入らない。
その激痛で筒井は思い出した。
「リナレス…!」
サングラスをしているとはいえ、間違いない。
キューバで英雄と称えられる野球選手、リナレスだ。しかし、何故?何故そのリナレスがここに?
無論、その疑問の答えが筒井に与えられることはなかった。
一殺50万円の約束でこの名古屋に降り立った世界の主砲リナレスは、
筒井の体が動かなくなるまでモーゼルHScを撃つ手を休めようとさえしなかったのだ。
【残り12人】
保全
「今から三日、72時間以内に一人も殺せんかった情けな〜い方の中から抽選で一名の首輪を…爆破しまぁす!」
72時間って長いな・・・
>>735 まあ、タイマーが正常に動いてても四日目の朝になる計算だし。
それまでに何人になってるのかな・・・
737 :
代打名無し:02/08/28 22:06 ID:aFN5vo/I
age
738 :
:02/08/28 22:52 ID:UTeDtr5Q
正津婦人のショーツはどーしてるの?
まだケガ治らないの?
保全さげ
sage
保全します
149 夜の部・開演 〜中里side〜
中里は不意に足元を襲った銃弾に、つんのめるようにして地面に倒れた。
しかしすぐさま体勢を立て直して、銃を胸の前に構えた。
「誰だ!?」
返答はない。弾が飛んできたと思われる方を凝視したが、暮れ始めの薄もやがけぶるような視界では誰も見えなかった。
中里が逆方向へと視線をめぐらせた瞬間、今度は腕の近くをかすめて少し先に着弾した。
「くっ」
熱い様な痛みに、中里は腕を押さえた。
体を反転させる間に再び足元に着弾した。
中里は近くのビルの陰に飛び込んだ。そして見えない相手を探ろうと少しだけ顔を覗かせると、今度はそのすぐ上の壁に銃弾が当たった。
中里は慌てて首をすくめた。
相手はわざと自分を外して撃ってくるのだと理解して、中里はチッと舌打ちした。
(なめたマネしやがって・・・)
荒木をなかなか見つけられない苛立ちに加えて、更に中里の心を煽ってくる。
中里が荒木と福留に会った場所まで戻った時には、荒木たちと分かれてから数時間経過していた。
当然そこにはもう荒木も福留もおらず、ただ戦闘の跡があった。
しかしそこから点々と続く血の跡、それから中里は何かを嗅ぎ取ったのか、それを追っていたところだった。
そこを不意に襲われたのだ。
ちくしょう、俺をなめやがって。こんなふざけたマネしやがったことを後悔させてやる!
お前が誰だか知らないが、俺に銃を向けたことを後悔させてやる!
勝つのは俺だ。この天才・中里だ!
中里はギリッと歯軋りをすると相手の気配に神経を尖らせた。
【残り12人】
150 夜の部・開演 〜谷繁side〜
谷繁は予備の弾薬を手で探りながら中里の動向を覗っていた。
「1発で殺すな。なるべくゆっくりやれ。そして顔は最後まで傷つけるな」それが古田からの指令だった。
中里は中日という球団にしては珍しく美少年系の可愛い顔立ちをした去年のドラ1投手だ。
1軍経験はほとんどないが、その顔立ちで女性ファンはなかなか多いらしい。
だからジワジワと攻めて、その顔が怒りや恐怖によって千変万化するのをじっくり放送したいのだと、そうすることによって女性の視聴率を上げようというのだ。
古田からの指示で谷繁は徒歩で中里に近付いた。
そして荒木を探すことにだけ神経を集中していた中里は、近付く谷繁にはまったく気付くことはなかった。
そして・・・。
いい絵は録れているだろうか。
怒りに満ちた顔で振り返った時は、なるほど可愛いかもしれないと思った。これなら女性にも受けはいいだろう。
しかし、自分にとってはただの小生意気なガキだ。
そろそろ周りじゃなく腕でも足でもちゃんと撃ってやろうか。痛みにゆがむ顔ってのも見ものだろう。
それからジワジワと・・・最後はあの顔を、あのこまっしゃくれた顔をズタズタに引き裂いてやろう。
視聴率は一気に跳ね上がるに違いない。
グロテスクすぎて逆に引かれるか? いや、この春の薄闇がいい具合にソフトフォーカスを掛けてくれる。
だいたいホラーやスプラッタ好きは女の方が多いんじゃないか?
お化け屋敷に入りたがるのも女だしな。
最高視聴率をたたき出してやる。
それがこっちの命も繋がるってことだ。
谷繁はここからの演出を考えながら、中里の隠れるビルの壁をジッと見つめた。
【残り12人】
>>735 それを書いた張本人です。
正直、もう少し時間が早く経つかと思ってました。
まだ誰も殺してないのは誰がいたっけ…。
最近忙しくて、ゆっくり読む時間すらない…
745 :
735:02/08/30 02:30 ID:6nqqHCnM
まだ誰も殺してないのは
荒木 川上 遠藤 正津 落合 大西の6人です。
あの〜、首輪って復旧したんですか?
定時放送で死亡者の発表が出来るってことは、生死が把握出来てるってことですよね?
さげ
748 :
代打名無し:02/08/31 02:06 ID:u7VHWy4k
あげます
>746
選手がよほど気を使わない限り監視カメラには写ってしまうようなので、
その辺で一つ納得してくだされ。
展開が気になる
751 :
代打名無し:02/08/31 23:56 ID:0hd5XFdN
age
保全
753 :
代打名無し:02/09/01 17:36 ID:BSJK8ZDJ
うわあああ!どうなる!?中里age
754 :
代打名無し:02/09/02 00:10 ID:LpfxQcfu
巨人バトロワdat落ちしちゃったねー
dat落ち防止sage
保全します
age
保全sage
職人さんは忙しいのかな
かといって気の利いた文も書けない漏れ
760 :
代打名無し:02/09/03 02:00 ID:qFogyQ3u
151 失踪
何で、何でなんだよ、藤立さん。
俺、あなたに励まされたからここまで頑張ってこれたんだ。
それなのに。
……そうだ、そうだよ、さっきのはきっと何かの間違いだ。
たぶん藤立さんはあの外国人に脅されて……。
遠藤は必死に走りながらそんな事を考えていた。
自分の目に焼き付いた映像をなんとか否定しようとしたが、考えれば考える程
心に虚しさが漂うのも事実だった。
「…とにかく大西を連れてどこかに避難しないと。」
さっきから何度も振り返っているが誰かが追ってきている気配はなかった。
とりあえず自分の身の安全は確保されたみたいだけど、救急車に置いたままにしてきた
大西の方は大丈夫だろうか?
何か嫌な予感がする。
とにかく急がなきゃ。
見えた、あの角を曲がれば救急車の場所までもうすぐだ!
「大西、とにかく逃げるぞ!」
遠藤はそう叫んで後部車両に飛び乗った。
「なっ…?!」
そこに大西の姿はなかった。
さっきまで大西の腕にささっていた点滴が転がっていて、大西の荷物も
なくなっていた。
「…何なんだよ!
どこ行ったんだよ、大西。
俺がいない間に目覚めたのか?
どれだけタイミングが悪いんだ、くそっ!
レーダーを持ってるっていっても、まだあの体じゃ……。」
周囲を見渡してみる。
もう姿も形もないが、まだそんなには遠くにいっていないはず。
「………。
仕方ないよ、俺がやるしかないんだ。
俺がやるしか…!」
遠藤は震える己の体にそう言い聞かせた。
そして身を翻して、再び走り始めた。
【残り12人】
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
職人様乙です。
遠藤がカコイイよw・・がんがれ。
762 :
代打名無し:02/09/03 12:06 ID:v79NFY9+
保全
保全さげ
職人様方、頑張ってくださいね〜
764 :
代打名無し:02/09/04 07:08 ID:oZtW+hID
イバタン、またお休みsage
遠藤が現実でもがんがったsage
152 選手交代
中里はいまや目の前に立って自分を見下ろしている谷繁を、荒く息を繰り返しながら睨みつけていた。
さっきからヘリコプターのホバリングの音がうるさい。
機上から撮影スタッフがライトを地上に向けていた。
辺りはもう暮れて暗いのに、2人の周りは煌々と照らし出されている。
その眩しさも中里を苛立たせた。
既に使い物にならなくなった中里の右腕と左足からは血が溢れ出し、血溜まりは既に赤黒く変色している。
使い物にならなくなったのは谷繁に撃たれた腕と足だけではない。
左手で握り締めているワルサーP38も既に弾切れになっている。
(俺はこのままこいつに殺られるのか。こんなメジャーに行きそびれて中日に流れて来たようなヤツに。俺の栄光の未来が閉ざされるのか)
そんな中里を見下ろして谷繁は笑っていた。
中里がもう反撃出来そうもないと見切って、手にしている武器も銃からサバイバルナイフに持ち替えている。
「エエ顔が撮れてますよー。視聴率もさっきから上がりっぱなしですわ。ほな、そろそろ次の一撃行きましょか」
古田のいやらしい声が指示を出してくる。
(うるせぇよ)
そうは思っても谷繁は素直に古田に従った。自分から死に急ぐことはない。
谷繁はナイフを握りしめ振りかぶった。
(なんだ、アレ・・・)
中里は古田の耳元に繋がるコードを見つけた。どうやらイヤホンを着けているらしい。
こんな時に何を聞いているのか。妨害電波の影響でラジオなんか使えるはずが無い。
じゃあアレは・・・あの相手は・・・。
中里は自分にかぶさるように向かってきた谷繁を、残っている右足で思い切り蹴り上げた。
「ぐふぅ・・・っ」
谷繁のみぞおちに綺麗に中里の足が入った。谷繁の体が落ちてくるのを何とか避けると、中里はグイッと谷繁のイヤホンのコードを引っ張った。
「・・・中里くんやったなぁ? 古田ですー。君、人気あるんやねぇ。女の子からぎょーさん応援メール来てますわー」
中里がイヤホンを装着すると、想像通りに古田の声が聞こえてきた。
イヤホンを見たときに一瞬で中里は解った。谷繁は本部と繋がっている、と。
「さっきからエエ顔が撮れてますわー。この調子で頑張ってくださいねー」
白々しい言葉だ。そうやってさっきまで谷繁に自分を殺すように指示してたんだろうに・・・。中里は舌打ちした。
中継画面を先ほどまでの谷繁が中里を追い詰めていくところのVTRに切り替えて、古田は中里に話しかけ続けた。
谷繁だろうが、中里だろうが、プログラムを面白くしてくれればいい。
「谷繁はそのまま殺っちゃってええですよー。谷繁をうまいこと殺してくれたら、スタッフが君を連れ帰ってちゃんと手当てしてあげますからねー」
モニターの向こうで中里が谷繁を見た。谷繁はまだ起き上がることが出来ないでいる。
「それだけじゃありませんよー。君がみんなを殺して回るんをサポートしてあげましょ。名古屋はまぁ広いんでねー。偶然会えるんを待ってるんじゃー効率も悪いですからねー」
画面の中の中里がピクリと肩を震わせた。
(サポートする、だと?)
中里は目を見開いて虚空を見つめた。
確かに今のままでは効率が悪い。しかし古田が散らばる選手達の場所を教えてくれるなら・・・。
中里はコックリと頷いた。
「ほな契約成立っちゅーことで。頑張ってくださいねー。中継再開しますわ」
古田が言うと中里はイヤホンを投げ捨てた。そして倒れている谷繁の頭に握り締めたままのワルサーのグリップを叩き付けた。
「ぐあ・・・っ」
頭骨の割れる手ごたえが中里に伝わった。
中里は谷繁の手から零れたナイフを拾い上げた。そしてためらうことなく谷繁の心臓めがけて突き刺した。
負傷した体ではあまり力が入りきらないが、それでもナイフはズブズブと谷繁の体にもぐっていった。
「・・・・・・」
もう谷繁は声もあげなかった。
中里はナイフを引き抜いた。そして何度も何度も繰り返し突き刺した。噴出す谷繁の血が中里を濡らしていく。
中里の顔に笑みが、壮絶な笑みが広がった。
「勝つのは、俺だー!」
血まみれの中里をカメラはしばらく映し続けていた。
やがてヘリコプターが地上に降りた。
どうやらここからの中継は終わったらしい。
スタッフは中里を抱えるようにしてヘリコプターに乗せ、再び上空に上がり、かなたへと飛び去っていった。
【残り11人】
>>768 の6行目と7行目の間、1行空けるつもりだったのに・・・鬱
シゲシゲ殺してごめんよ
とりあえずこんな展開でいいのかと、自分に向かって小一時間(略
おつかれー。全然いいよ!
あのまま中里が死んだんじゃ面白くないし、
シゲシゲよりも狂った中里が暴れた方が楽しい!
DQN中里に期待します。
お疲れ様です。ちょっと見つけてしまったのですが、
>767の19行目「中里は古田の耳元に繋がるコードを」のところは
谷繁の耳元ではないですか?
細かいことをごめんなさい。
いつも楽しませてもらっています。
これからも楽しみに読ませていただきます。
がんがってください!
773 :
代打名無し:02/09/05 08:25 ID:DofUqFdX
職人さん乙〜。
ドキュソ対決は中里の勝ちですか。
さらなるドキュソっぷりを発揮しそうでこれからが楽しみです。
153 命
辺りを、墨を流したような闇が包み込んでいる。
夕刻の定期放送からどれほどの時間が経っただろうか。
福留は懐中電灯を油断無く握りしめつつ、ひたすらに睡魔と闘っていた。
眠い。ただ、眠い。
そもそも人間は夜になれば眠たくなるようにできている。
ましてやこの疲労困憊した体だ。気を抜いているとまばたきからでも眠りの中に落ち込んでしまえそうだった。
眠ってはいけない。今ここで自分が眠ってしまったら一巻の終わりだ。
歩くことさえできない荒木に、外敵と戦うことは不可能なのだから。
外敵、か。
谷繁の持っていたメモのことが思い出された。
スタッフと通じている人間がいる…恐らく一人や二人ではあるまい。
もしかしたら、今もこの病院に向かっている敵があるかもしれない。
撮影スタッフの助けがあれば、誰がどこにいるかを把握することなど容易いだろう。
ああ、と福留はため息をついた。
それにしても、こう暗いのではどうしても眠たくなる。
しかし、こんな窓際で懐中電灯のスイッチを入れれば外に明かりが漏れてしまう。
荒木から離れることはできないし、荒木を移動させる体力ももうない。
こういうのをジレンマというのだろうか。初めからどこにも逃げ道は無かったが、
もう三日目も終わりに近づいている今、いよいよ身動きが取れなくなってきている。
荒木と組んだことを後悔はしていないけれども。
そろそろと右手を伸ばして、シーツ越しに荒木の腹に触れてみた。
静かな寝息に合わせて規則正しく上下している。
それで、福留は少しだけ体の緊張を解いた。
大丈夫だ。荒木は生きている。それを感じ取るだけの余裕が自分には残っている。
ともかく、命に関わる怪我でなくて良かった。本当に。
福留はもう充分に知ってしまっていたのだ。人がいとも簡単に死んでしまうということを。
この三日間、名古屋の街で同僚たちの命は紙も同然の軽さで散っていった。
命が地球より重いとか、そういった類の奇麗事は、狂気と凶器の前に何の効力も持たない。
せめて首輪さえなければ、ふと思って福留は苦く笑った。
首輪一つでこうも他人の言いなりになる自分たちが滑稽でならない。
人間とはかくも弱いものであるわけだ。
馴れ合いすぎだと揶揄さえされたこの球団の有名選手たちは、
罵りあい殺しあい、既に四分の一まで減っている。
競争主義が原則のプロ選手ならば、それが自然な姿なのかもしれない。
それでも福留は荒木を手にかけるくらいなら死んだほうがましだと、シーツの上で拳を握った。
人殺しの自分がプライドを語ることが許されるのなら、人間からけだものに落ちる最後のラインだけは超えたくない。
勿論、それで罪が消えるわけではないが。
福留は荒木の体の上から手を引き、銃を握り直した。右手にデザートイーグル、左手に懐中電灯。
椅子の傍らには日本刀が立てかけてあるはずだ。
どうしても睡魔に負けそうになったら、あれで腕でも軽く切ってみればいい。
しばらくは痛みのせいで睡眠どころではなくなるだろう。
それでも死ぬよりはずっとましだろうから。
【残り11人】
>>772 あ、ほんとだ。間違えてますね〜。
ご指摘ありがとうです。
>>775 ドメ…切ないな。
頑張ってアラキを守ってやって。
職人様方、だんだん方向付けが大変になってきましたが、頑張りましょうね。
私も皆さんの足引っ張らないようにしますんで…
ではでは。
777 :
代打名無し:02/09/05 19:22 ID:DofUqFdX
>>774-775 これからこの2人がどんな関係になっていくのが楽しみです。
だいぶ心境面に変化がでてきたような…
778 :
代打名無し:02/09/06 14:15 ID:aOKUX/F/
保全
試合中止(泣)さげ
保全さげ
番外編7 血の十字架
「お前が出なければ、小松を出す」
その一言で、彼は戦場へ駆り出された。
人が人としては存在出来ない、狂気のあの場所へ。
24時間リアルタイムでの中継が続けられているテレビ画面を見ながら、牛島和彦は自らの過去を振り返っていた。
もう何年前になるのか。あの年のオフ。
やはり今と同じようなことがあった。
エース一人は免除。それが球団の方針だった。そして、球団が選んだのは、牛島ではなく、小松だった。
だが、それを「はいそうですか」と言って大人しく引き下がる牛島ではない。
元来その計画は直前まで選手たちには伏せられているものなのだが、牛島の鋭敏な嗅覚は事前にそのこと嗅ぎ取った。
そして、何とかそれを阻止しようとした。決してチームメイトの為、というわけではなかった。正直に言うなら。自分がそんなクソゲームに乗せられるのが、自分の意志ではなく踊らされるのが我慢ならなかっただけだ。
だが、いかに牛島と言えど、一人で立ち向かうには、組織は大きすぎた。
ある夜、唐突に星野仙一が彼の許を訪れた。
そして、言ったのだ。
「お前が出なければ、小松を出す」
と。
エースとして、小松は残す。バトルからは免除する。球団の中ではそう決まっていた。だが、ここで牛島がゴネれば、お前の代わりに小松を参加させるぞ、と。そう星野は言ったのだ。
それ以上の脅し文句があろうか?
あんな人、バトルなんかに参加したら1時間もしないで死んでまうわ。
星野はそれ以上何も言わず、苦渋の表情のまま、牛島の許を去った。
その一言に牛島が逆らえることなどないと、わかっているかのように。
そして、それは事実だった。
牛島に小松を見捨てることは出来なかった。
結局牛島は、ゲームに「乗った」。
先発のエースと、リリーフエースと。
球団が選んだのは、先発完投型のエース。所謂「エース」。
自分は何処までも2番目だった。
そう、そういうことやったんや。
なら、こんなクソゲームでも生き残ってやる。最後の一人になって、「一番」になるんや。
それから、無理矢理こんなもんに参加させたお前らにも、一泡吹かせてやる。
そして、事実牛島は最後の一人となった。
その痩身がしなやかに返り血にまみれ、次々とチームメイトを葬って行ったのだ。
まるで生きる世界を間違えた美しき殺人鬼のように。
そうまでして手に入れたかったものなど、水泡よりも更に儚いものだったのに。
牛島の参加したバトルは記録的な短さで終了した。
そのあまりの手際の良さに恐れをなした球団幹部は、バトルの翌年、牛島を放出することを決めた。
世紀のトレードと呼ばれる、あのトレードである。
仲間を屠り、その血で手を染め、汚れてまでして残ったドラゴンズ。だが、こうもあっさりと切り捨てられ、それに抗うことも出来ないとは。
しかし、野球を辞めることは、出来なかった。決して、出来なかった。
自分の背中には、野球をやりたくても出来ない、彼が葬った全ての選手がいるのだから。
悔しさなのか、悲しさなのか、自分でも良くわからないままに、牛島は泣いた。記者の前で、泣いた。あの会見を、今でも誰か覚えているだろうか?
こんなバトルで勝ち残っても、得るものなどない。
ただ自分たち以外の意思で踊らされるだけだ。酷く滑稽なダンスを。
そして、段々と「ひと」ではなくなっていく自分を感じるのだ。
「一番になる」代償に、彼が一生背負って生きなければならないものは、あまりにも重すぎる。
それでも。
牛島はテレビ画面をじっと見つめる。
生き延びろ。乗り越えろ。打破しろ。
その手で切り開いて行け。
そうしてチームメイトの骸を背負え。そうすれば、一生、いい加減に野球をすることなど許されなくなるのだから。
牛島はゆっくりと瞳を閉じ、誰に言うともなしに呟いた。
「マサ…お前の気持ちは、わかる気がするんや…」
彼の背負った大きく重い十字架が消えることは、ない。
786 :
782:02/09/07 15:35 ID:a+5QktZL
YGBRではちょこちょこと書かせて戴きましたが、ここでは初参加です。
番外編なのに長くなっちゃってごめんなさい。
「お前が出なければ」の下りは、本当はあのトレードの時の1001さんの言葉なんですけどね…。
787 :
代打名無し:02/09/07 23:07 ID:3jCAKm/v
うまい締めだ
ゾクッとした
番外編(゚д゚)ウマー
154 拒絶
川上は闇を透かして周囲を見回した。すでに目は暗さに慣れている。
どうやら近付いてくる人影は無いらしい。
空には満月に近い太った月が昇っていて、これの光は随分と川上の視界を広げてくれた。
街灯が無い街では、普段気にも留めぬ月光さえ心強い。
…もう、隣には誰もいないのだから尚更だ。
思わずため息をついて、それから慌てて飲み込んだ。敵に聞き取られるかもしれない。
川上と井端は、日が完全に落ちる前に別れていた。
別れたと言うよりも、川上が一方的に井端を追い払おうとした、
と言った方が正しいかもしれない。
もう自分は駄目だ、川上は思い始めていた。
我ながら生き残りたいという欲はあまり強くないと思う。それなのに、人が怖い。
支離滅裂だ。
ともかく中里に撃たれたのが強烈過ぎて、隣に武器を持った誰かがいるというプレッシャーに耐えられなかった。
たとえそれが井端であっても関係はなかったのだ。
井端が自分を救ってくれたのだとか、傷を治療してくれたのだとか、そんな考えはすべて吹き飛んだ。
その時の川上の中では、井端は「井端」ではなく「自分以外の人間」であったのだから。
もう誰も信じられない。中里が牙をむき、朝倉は血に塗れ、井端とて平然と人を殺す話をした。
誰も俺に構うな。近付くな。一人にしてくれ。安堵をくれ。
「もう、勘弁してくれ…」
井端は去り際、何も言わなかった。少しだけ眉を顰めたきり、振り返りもせず公園を去った。
「誰か助けてくれよ…」
心にも無い言葉が勝手に漏れては消えていく。
本当は、死ぬ事よりも、襲われる事が恐ろしい。誰も信じられない。
足の傷がじくじくと痛むのも川上を強く苛んでいた。
もう、俺は駄目だ。
井端には解っていた。よく解っていた。
川上が落ち込んだ不信感は、自分を狂気に走らせたものと同質だということを。
自分がゲイラカイトの糸を周囲に張り巡らしたのと同じで、
川上の周りにも見えない糸が縦横無尽に張ってあった。
少なくとも井端はそう感じた。心の壁と言ってもいい。
そこまで解っていながら、何もしてはやれず、結局はその場を立ち去るしかなかった。
自分は久慈にはなれなかったのだ。
近付くな、一人にしてくれと絶望に染まった瞳で川上は言った。
その絶望からは救ってやりたかったが、見えない糸を断ち切る方策など自分の知識の中には無かった。
ただ、それだけの事だ。去ってやらねば川上は錯乱していたかも知れない。
月の冷たい光が、血に染まった街並みを無機質に浮かび上がらせている。
どこへ行く宛てもないながらも、井端は南に向かっていた。
正直な所、死に場を求めているような心持ちだった。
【残り11人】
792 :
書き手A:02/09/08 16:02 ID:jVySqzU7
790の25行目は
× 本当は、死ぬ事よりも、襲われる事が恐ろしい。誰も信じられない。
○ 本当は、死ぬ事よりも、襲われる事の方が恐ろしい。何よりチームメイト達が怖い。信じられない。
に訂正…というか書き直し。
ちょっと勢いだけで書いてしまった。
それにしても番外編の牛島さんいいなぁ…ぐっと来ますね。
イバチンもケンチンも切ないなあ…。
くうう。
>>書き手A氏&元YGBRの書き手氏
(;∀;)イイ!せつねぇよぅ・・・。゚・(つД`゚)・゚・。クゥ
795 :
782:02/09/08 21:36 ID:5pznWOsl
番外編のくせに長くなり過ぎてちとひやひやしてたんですが…。
ありがとうでございます。
物語を完結させるのはとても大変だと思うけど、書き手のみなさま頑張って下さい。
ジクーリマターリ待っております。
最近毎日読み返してるよう…。
796 :
代打名無し:02/09/08 22:07 ID:EdswfaPm
保全
理論派牛島sage
石井一久の件で牛島氏がコメントしてたね、sage
皆どんどん追い込まれてせつないでつ(つД`)
作者さん方がんがってください
下がりすぎので一旦age
ホシュホシュ!
hoshu
age
保全さげ
さげ
保守
807 :
age:02/09/13 19:17 ID:XSaXdHfJ
さがりすぎあげ
808 :
代打名無し:02/09/13 23:02 ID:x/c864mt
ドベ
保守
番外編8・監督
練習場から帰ってから、鶴田泰は自室のソファに寝ころんでいた。
傍らのテレビの電源は入れられていたが、鶴田はそちらを見ようともしない。
かつてのチームメイト達が疑心暗鬼に駆られ、殺し合う様など見たくはない。しかし、テレビを消してしまうことも何故か躊躇われた。
突然、呼び鈴が鳴った。鶴田ははじかれたように起きあがった。
(こんな時間に、一体誰だ?)訝りながらドアを開ける。
「ツル、いきなりですまんが、少し話があるんだ。いいか?」
「佐々岡さん…!」
玄関口に立っていたのは、カープのエース、佐々岡だった。
佐々岡と鶴田は、ソファに向かい合って座った。テレビには、スタジオでなにやら話す古田の姿が映っている。
「紀藤さんが死んだのは、知ってるか?」
「…はい」
自分とのトレードでドラゴンズに行き、そして死んだ紀藤。実際に手を下したのは今もテレビに映っている古田で、ゲームの実施を決めたのはフロントだ。そう思おうとしたが、どこか割り切れない気持ちがあった。
「そんな顔せんでええ、ツルのせいじゃない」
鶴田の気持ちが分かったのか、佐々岡はそういった。それで気が晴れるわけではないが、鶴田はとりあえず頷いた。佐々岡が続ける。
「紀藤さんが死んだことで、若い血の気の多い連中が、もう我慢できない、名古屋へ行って紀藤さんの仇をとるんだ、と言いだしたんだ」
「!」
鶴田は息を呑んだ。紀藤や山本昌を無慈悲に殺害した者達に抗するのはあまりに危険だ。
「それは危険です。佐々岡さん、何とかやめさせて下さい」
「判ってる。今は皆、落ち着いてるよ」
佐々岡は、一息ついてテレビを眺めた。鶴田も、つられてテレビに目をやった。画面には「これまでのハイライト」と称して選手達の死ぬシーンが次々に映し出されていく。
「…監督が言った。『このくだらないゲームを止めるのは、俺の戦友の役目だ』って」
佐々岡が呟くように言った。鶴田は佐々岡を見た。佐々岡はテレビを凝視したまま、続ける。
「俺は、あいつらを説得するのに『星野さんを信じろ』って言った。『星野さんがこんなゲームを終わらせてくれる』って。だけど」
テレビの画面は、紀藤が撃たれ崩れ落ちるシーンに切り替わった。佐々岡はそれを全て見届けて、声を絞り出した。
「だけど、本当は俺が一番、星野さんを信じてないんだ。ゲームは続いてるし、中日の選手も死に続けてる。紀藤さんも。…俺は、自分で信じていないことをあいつらに言った。言わなきゃならなかった」
ああ、と鶴田は思う。本当は、佐々岡自身が一番名古屋に乗り込みたかったのだ。佐々岡は一番長く、紀藤と先発ローテーションを守ってきたのだから。しかし『チーム最年長投手で、エース』という立場上、意に反して皆をなだめる側に回らざるを得なかったのだ。
昌さんといい、佐々岡さんといい、エースっていうのはなんて因果な立場なんだろう。鶴田はふっとそんなことを考えていた。
佐々岡は、視線をテレビから外し、鶴田をひたと見つめた。
「なあツル、お前は星野さんを俺より知ってる。星野さんは、信用できる人か?俺は星野さんを信じていいのか?」
鶴田の脳裏に、星野仙一の姿が浮かんだ。星野監督、あなたが俺に何を頼みたかったのかは判らない。だけど。
「星野さん…監督は、一度言ったことは必ず実現させる人です。だから、監督が『このゲームを終わらせる』と言ったのなら、絶対そうなります」
絶対の自信があったわけではない。だが、鶴田は力強くそう言った。佐々岡は暫く鶴田を見つめていたが、やがて少し笑った。
「ツルがそう言うんなら、大丈夫なんだろうな。星野さんを信じるよ。…悪かったな、変なこと言って」
そういってソファから立ち上がりかけた佐々岡の目がテレビに向けられ、すぐに大きく見開かれる。
「ツル、テレビ見ろ!あれ、もしかして…」
鶴田も慌ててテレビを見た。テレビには、名古屋の街で佇むユニフォーム姿の二人が映し出されている。
一人はこちらを向いているが、自転車を押していて番号が見えず、誰だか判らない。もう一人は背中を向けていて…
映像はすぐに切り替わってしまったが、二人はしっかりと見た。
「77 HOSHINO」と書かれたユニフォームを。
「見たか、今の。星野さんだった。星野さん、名古屋にいたんだ。ゲームを止めてくれるんだ」
興奮気味に言う佐々岡に、鶴田はさっきと同じ言葉を、しかし確信を持って繰り返した。
「監督は、一度言ったことは必ず実現させる人です。このゲームは、監督が終わらせます。だから、監督を信じて下さい」
ここで文章書くのは初めてです。
前、紀藤がらみで出てきた広島の選手達をまとめてみたくて書きました。
文章駄目ぽだなぁ(汗
814 :
代打名無し:02/09/14 21:47 ID:nA1Lx+TW
久々にキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
番外編イイッ!!
なんだか泣けた!!
新作うp乙です
鶴田と佐々岡・・じーんとしますた(つД`)
星野監督名古屋に到着か・・そして一緒にいるのはもしや(ry
817 :
代打名無し:02/09/15 10:58 ID:RWuRVGfZ
/ ̄ ̄ ̄ ̄\
>/_______/|
|\ __・\_ _____________
| ..| ・ /.・` ) ./
| | /フ ̄| | /
( ∂ @_/ ̄ / / < お前ら全員、馬鹿だな。
\⊥ \ m/ / \
\ ヽ─ ⌒ / \
ヽ────-  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
かぷ番外編(・∀・)イイ!なぁ
>>813さん乙です
819 :
age:02/09/16 02:12 ID:jKIo4XCm
したすぎあげ
中日の選手が殆ど出てこないんでちと心配してたのですが、好評なようで嬉しいっす。
しかし、こんなかっこいい鶴田書いた翌日に打ち崩されて炎上するとは…しかも相手は中日(W
とりあえず保守
155 治療中
つい先ほどまで食料にさえ困っていたのが嘘のようだ、と中里は思った。
今、長椅子に横たわる自分の周りには白衣を着た人間たちが多数配され、
実に甲斐甲斐しく――少なくとも中里はそう感じた――働いている。
どうしてもっと早くにこうする事を思い付かなかったのだろう。
確実に生き残ることができる上、スタッフからは特別待遇とは、こんないい身分はない。
麻酔でも注射されたのだろうか、怪我も殆ど痛まないから、
本当は今すぐにでも外に飛び出したい気分だ。
勿論それは許されないのだが。
「で、あとどれくらい寝てればいいんですか?」
試しに質問をすると、スタッフの一人が振り向きもせずに答えた。
「…ともかく治療が終わるまではじっとしていて下さい」
やれやれ、だ。中里は思わず嘆息した。
先刻からこればかり、何度聴いても同じ答えしか返ってこない。
早く自由になりたい、そしてこの権限を振りかざしたいのに。
右腕はしばらく動かすことも叶わないらしいが、
どうせ一度肩の外れてしまった腕だ。当てにはしていない。
銃など撃ちたければトリガーを引けばいいだけだ。
ボールを投げるのと違って複雑な指先の動きを要求されるわけではないから、
左腕でも十分役目は果たせるだろう。
…それより問題なのは左足の負傷だ。足が動かないではお話にならない。
当面の獲物は俊足の荒木。息を潜めて接近しても、逃げを打たれたら追い縋ることもできないではないか。
「あの、足はどれくらいの怪我なんですか」
「思ったより浅いですね。骨や神経に異常は無いようです。
ですが、動かさないに越した事はないですよ。出血もかなりありましたから」
「ああ、じゃあ、動かそうとすれば動かないって事はないんですね」
もの言いたげな視線が中里の顔に集まったが、敢えてそれは無視した。
【残り11人】
824 :
書き手A:02/09/17 03:27 ID:uvudHcG8
しばらくまともな文を書いていなかったせいか、
一段とへたれな文章になってしまった…
保全してくださる皆さんには申し訳ない。
それにしても、年内に終わるといいなぁ(;´Д`)
凶悪中里sage
凶悪中里sage
新作キタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━ !!!!!
スレ数400になったのでまめに保守sage
保全さげ
829 :
:02/09/18 14:07 ID:Ya2KR15m
保全ageっ
保全sage
494KBになったので
>>835に新スレを立ててもらいたいんだけど
|Д`) コソーリ
新スレ用にテンプレ作ってみますた。
スレ立てる方は使って下さい。また何か間違いあればツッコミよろです。
==========
2002年。
日韓共催によるワールドカップ開催の為
プロ野球ペナントレースは大幅な日程変更を余儀なくされていた。
それでなくても人気低下に悩む球界にとって
この事実は打撃である以前に屈辱であった。
――野球がサッカーに劣るというのか。
若い世代ならば、野球とサッカーを
比べるなどという愚挙に出ることはないだろう。
それらは全く質の違うスポーツであったから。
しかし、「野球は日本で最も愛されるスポーツでなくてはならぬ」
と信じる古い人間たちは
この現実を受け入れる事が出来なかったのだ。
そして2002年3月某日、遂に或るプログラムの「開催」が決定される。
「プロ野球再生プロジェクト其の壱」。
それはプロ野球選手達に殺し合いをさせ、
さらにその様子を全国に放送するというものだった。
その対象に選ばれたのは、
程良い人気と選手層を持つ古豪球団「中日ドラゴンズ」であった…
過去スレや進行状況は
>>2-5辺り。
これまでの人物動向を整理。
【生存者】
福留&荒木(名古屋第一赤十字病院)
井端(東山公園付近から移動中)
川上(東山公園付近)
落合&正津(名大病院)
遠藤(中区?)
大西?(救急車で移動中に行方不明)
井上(中区?)
藤立(中区)
中里(ナゴヤドーム)
【その他の登場人物】
山田久志(?)
星野仙一(名古屋市内)
古田敦也(ナゴヤドーム)
リナレス&バルガス
今中&中村(ナゴヤドーム内スタジオ)
前田章宏(地下鉄浄心駅構内)
【禁止エリア(現在は停電で停止中)】
東区、南区、西区
自分で踏んでもうたのでやってみましたが
エラー出てしまいますた・・どなたか代打おながいします
837 :
書き手A:02/09/19 21:52 ID:3PT9kJnj
838 :
833:02/09/20 01:21 ID:3odlyXdr