復活!中日ドラゴンズバトルロワイアル その4

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258161:02/06/06 00:12 ID:RXZ7mblU
階段に伏せた二人を轟音が襲う。
パラパラと建材の欠片が落ちて来る。気にも留めず山本は飛び出した。
「行くぞ!今だ!」
あわてて続く中村。レーザー発振器は健在だがこの爆発で鋭敏なセン
サーはオーバーロードして機能停止している。

ドアにあと数歩と言う所で、老人の狡猾な罠が作動した。
遠隔操作で壁から飛び出た巨大な刃が、胸の高さをなぎ払う!

「!」

鍛えぬいた反射神経のおかげで、致命傷になる事だけは避けた山本
だったが、胸に深々と裂傷を負い、倒れ落ちる。

刃は瞬時に後続の中村に襲い掛かった。
「うおおおぉぉっっっっっっ!」
アウトステップしてかわすと、姿勢をかがめて刃をかいくぐり部屋に転が
りこんだ!
259161:02/06/06 00:23 ID:RXZ7mblU

「頼むぞ・・タケシ。」
苦しげにうめきながら、山本は独り呟いた。

後ろから彦野が這いずりながらやって来る。自らも深手を受けながら、
それでも不思議そうに山本に聞いた。
「うっ・・な、なぁ、昌よ、あいつって・・・あんなにフットワーク良かっ
たか?」
彦野の方に顔を向け、苦しげに脂汗を浮かべながらも山本はニヤリと
して見せた。

「忘れたんですか?あいつは昔から・・・外側低めにかわすのだけは得意
なんですよ。」
260代打名無し:02/06/06 01:13 ID:4EZz4coj
>259(161氏)
最後の昌のセリフ、にやりとしてしまいました。
皆さん頑張って下さいsage
261 ◆xYQkNOZE :02/06/06 13:04 ID:dNjN8jR6
仰々しいドアは中村の体当たりでいとも簡単に開いた。
体勢を立て直そうとしたが、激しい痛みが全身に走り再び倒れた。
「騒がしいな」
見上げると、そこにはやはり想像どおりの老人の姿があった。
「せっかくテレビを楽しんでおるのだ、静かにせんか」
ガウンを羽織った老人が手にした漆黒の鞭を振るう。中村の身体はは三度床を転げた。
「中村と言ったかな…お前も見てみるがよい」
老人の指さすテレビ画面の向こうには、ああ、あろうことか中村の見慣れた風景が広がっていた。
そう、彼も山本も慣れ親しんだナゴヤドーム。そして、マウンド上には川上憲伸の姿。
ただ、ただ明らかにおかしかったのは、そこには大昔のドラゴンズのユニホームを着た星野仙一が、エースナンバー20を背負った男が、川上へ向かって拳銃を構えていることであった。
「これだから野球は退屈せんわ。田舎球団が、ホームグラウンドのど真ん中で、その名物監督の手によってその歴史に幕を閉じようとしている。
 長生きはしてみるもんじゃわい、こんなに面白いもの見せてもらうとはな!はっはっは!!!」
中村の耳には老人の高笑いなど入っていかなった。
ただ、画面の向こうの川上の真剣な表情だけも見つめていた。
…よかったよ、憲伸。
お前が星野さんのところへたどり着いて。
これで、俺もこのじいさん道連れに死ぬ決心がついたよ。
どうか、もう過去の人間になろうとしている俺達を乗り越えて新生ドラゴンズを−−−−−−−−−
262代打名無し:02/06/07 11:05 ID:zOghgDlu
期待age
263代打名無し:02/06/07 16:48 ID:nS0N7i2l
憲伸期待hage!!!
264代打名無し:02/06/07 23:30 ID:cc83kyGw
期待あげ
265代打名無し:02/06/08 02:16 ID:A75tCOsh
ここは静かだ。
外から雨音と、時折雷鳴が聞こえてくる他は何の物音もしない。
少し前までの戦いが嘘のようだ。
「野口さん」
呼びかけると、蛍光灯に照らされた野口の顔がぴくりと表情を変えた。
「喋るなよ…怪我人」
こちらを見もしない。よほど参っているのだろう。
「いや、どうしても聴きたいことがあるんです。一つだけ教えて下さい」
「何だ」
「さっき、「山本さんや中村さんも」…って言いましたよね。
あの二人は生きているんですか?
生きているなら…今、どこで何をしているんですか」
野口の顔がようやく荒木の方を見た。
大分目の腫れは引いて、不思議なほど静かな表情になっている。
「そうか。話してなかったもんな」
「…何かあったんですね」
野口は黙って頷いた。
「簡単に言うと、あの二人は、「黒幕」を倒しに行ったんだ。
星野監督よりも、もっと大きな「黒幕」をな」
「「黒幕」ですか」
何だか少年漫画めいた名詞が出てきたな、と荒木は思った。
生まれてこのかた、「黒幕」なんて存在にお目にかかったことはない。
けれど、今はただでさえ非現実的な事態に巻き込まれているのだ。
もう怪獣が出てこようが驚くまい。
「ああ。多分…「黒幕」は読売のオーナー、だと思う。
倒せば、この馬鹿げたプログラムは無くなるらしい」
266代打名無し:02/06/08 02:18 ID:A75tCOsh
「プログラムが、無くなる…」
一瞬、野口の言葉の意味が理解できなかった。
プログラムが無くなる日のことなど、想像もしていなかったのだ。
この国に生まれた以上、逃れることのできない宿命だと
ずっと諦めていた。
「そう、無くなるんだ」
「あの、それじゃ、井端さん達が監督に殺されそうになっても、
その前に山本さん達がそっちを倒せば…」
「このプログラムは中止になるだろうな」
「す、すごい…」
想像も付かなかった。
荒木にとって、それは全てを解決してくれる万能の策であるように思えた。
「でも、な。荒木。俺はあの人たちは帰ってこないと思うんだ」
「えっ」
「何故だか、嫌な予感がする…相手は、あの読売なんだ。
たとえ「黒幕」に勝っても、山本さんも、中村さんも助からないような…
ともかく、嫌な予感がするんだ」
野口はそれきりまた口を噤むと、下を向いてしまった。
荒木は安易に喜んだ自分を恥じた。考えてみれば野口の言うとおりだ。
ああ。
早く、何もかもが終わればいいのに。
また平穏に野球の出来る日々が戻ってくればいいのに。
いよいよ外は暗く冷え始めていた。背の傷が痛む。
267代打名無し:02/06/09 00:45 ID:Wb8NC3RI
アラキンガンガレ
268代打名無し:02/06/09 01:28 ID:4fkHf7Zw
保守あげ
269石田忠:02/06/09 01:51 ID:nWS/zS/A
“敵地大阪で、日頃迫害されている関西の巨人ファンよ!立ち上がれ!!
270代打名無し:02/06/09 03:53 ID:Eld+taX2
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「荒木ーー」
鼻を霞める香ばしい薫りと、一番親しい人の声で目が覚める。
「飯出来あがったぞ。寝てたのか?人にばっかり作らさせやがって」
そう言って目の前の男―井端弘和がわずかに微笑む。
「荒木、お前は毎日井端に世話焼かせてるのか?
 全くご飯作ってくれる彼女くらい探せよ」
少し冷たいフローリングの床の上で、少しずつ意識を覚醒させる。
「…コースケ、お前だって人の事言えないだろ!俺だって本気になれば彼女くらい――
「ナニ二人ともそんな向きになってるんだよ、早く食わないと覚めちまうぞ」
井端が間に割って入る。
福留は反応を見て複雑な表情を浮かべていた。
図星をつかれたことが頭に引っかかったようだ。口を尖らせながら自分の席につく。
床にずっと横になっていたから?それとも無理な態勢で長い時間居たから?
なぜか凄く背中が痛い。
271代打名無し:02/06/09 03:53 ID:Eld+taX2
晩ご飯のチャーハン(先輩の料理では定番なんだよな、かなり美味い)を頬張りながら福留が口を開く。
「井端は彼女いないのか?」
井端はいきなり変な質問をされて驚いた顔をしている。
「…ッ!バカ何聞いてるんだよ!それに口に物入れながら喋るなって」
井端より驚いたのは荒木だった。
「なんでお前が焦ってるんだ?」
「ハハハ、荒木はこの手の話題にはかなり疎いンだよな。前にもあったっけこんな―
「い・言わないでください…」
以前ロッカールームでチームメイトたちの話を聞いていて顔を真っ赤にしていたことがあったのだ。
もう少しでコースケにもあの事件がばれるところだった。
もしばれたら…
そう考えると、荒木は少しひやっとした。
きっと明日からずっとそのことでからかわれるだろう。
そんなどうでもいい(荒木にとっては大問題だが)事を考えていた。
気付くともう皿の上には何も無かった。
「ごちそーさん、井端って料理上手いよなー」
「毎日やってるからな、それこそ彼女が居たらいいのに」
そう言って皿を洗いながら苦笑いを浮かべる井端。
「あ、スミマセン。俺も手伝います」
荒木は急いで台所へと向かった。
「俺もなんか手伝うか?」
「孝介はいいよ、待ってて。―あ、やっぱりそっちにある皿全部持ってきて。」
福留は、おう、と短く返事をしてリビングへ向かった。
「先輩ってホント、料理上手いですよね!男っていうのが勿体無いくらいですよ」
「きっついこと言うなー!でも、男に生まれたからこうしてプロ野球選手になれたわけだし、
 もし違ってたら二人と出会う事も無かったんだよな、運命って不思議だよな…」
「そうですよね、俺は先輩や福留に会えて良かったと思ってます。
 多分きっとずっと変わらない仲間なんだなって。」

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
272代打名無し:02/06/09 03:57 ID:Eld+taX2

「荒木?背中、大丈夫か?」
目を開くとそこは真っ暗で冷たいコンクリートの上だった。
まだ夢見心地ではあったが徐々に意識を現実に引き戻していく。
―先輩は?コースケは?―――ああ、思い出した…―
井端とは離れ離れ、福留は―もう二度と会えない―。
いつかあった現実はもう夢の中での出来事だった。

―運命―
―ずっと変わらない仲間―

あの時はさほど大した事のない言葉ではあったが、
今の彼にとっては途方も無く重い言葉だった。
こんな自分を見たら井端と福留はきっと自分を笑うだろう。
―強くならなければ。何も出来ないけれど―
ぎゅっ、と拳に力が込められた。
273代打名無し:02/06/09 04:26 ID:iejyQdfA
>>270-272
細かいことで申し訳ないが年齢
井端>>荒木=ドメのはずなので
ドメ→井端は敬語のがいいかも
274270-272:02/06/09 11:52 ID:hlgCps6z
わわわ、すみませんw
ご指摘有難う御座います。
[…ε…]ってことで大目に見て下さいw
275 ◆xYQkNOZE :02/06/09 12:25 ID:zzj6Nvbw
>>271
「あの事件」が気になるage
現実の荒木がいよいよ心配になってきた…荒木井端の1・2番がいつのまにか井端ブレットに…
276代打名無し:02/06/10 01:21 ID:1x/U258W
age
277代打名無し:02/06/11 03:45 ID:uU/qL0ir
完結期待age
278 ◆xYQkNOZE :02/06/11 16:11 ID:1zTrNDKL
一歩一歩、銃口を向けた星野が迫りくる。
「どうした、反撃せんのか」
川上は唇を噛みしめながら小笠原の手にしていたマシンガンを奪い取り、星野に向ける。

ズダダダダダダダダダダダダ

星野のユニホームからは白い煙が上がるばかりで、当の本人はびくともしなかった。
点線になって空いた穴の向こうにはカーキ色の防弾チョッキ。
想像はしていたが、やはり手応えのひとつもない。
「俺はお前を、こんな間抜けに育てた覚えはないぞ。それとも少々殴りすぎて頭が弱くなったか…?」
気が付けば星野はわずか1m足らずの距離にまでやってきていた。
「ちくしょう…」
弾切れのマシンガンは用済みだ。動いたらやられる。動かなくてもやられる。身動きの取れない小笠原を担いで逃げてもたかが知れてる。
なすすべを無くした川上に今、出来ることは、にやついた星野の目を、ありったけの力で睨み返すことだけだった。
「先発エースも、これで終わりだな…」
星野が次の一歩を進めた、そのとき。
「憲伸!」
井端が叫んだ。星野にはじかれた拳銃を思い切り蹴りあげる。
その隙に小笠原は最後の力で星野に全体重で体当たりをする。
星野がバランスを崩した瞬間、川上は井端の拳銃を手にした。
「狙え!監督の弱点は首だ!」
二人がかりでのしかかり、川上は星野の首に銃口を押しつける。
「監督失礼します……!」
川上は両の目をぎゅっと強く閉じていた。
279代打名無し:02/06/11 16:12 ID:XKAtu54f
完結期待&保守sage
書き手さんガンガッテ
280 ◆xYQkNOZE :02/06/11 16:14 ID:1zTrNDKL
「何か…、強い光がありましたね」
音は、いつしかさまよえる落合の魂に導かれながら命を落とした選手達の弔いを続けていた。
折り重なるようにして倒れた鈴木郁、清水両捕手の遺体に線香の束を備える。
「ドームの方角で光りましたよね、あちらですから」
音はしばし遠くを見やる。
「落合……、これで全てが終わるのでしょうか」
落合は答えない。ただ、ぼんやりと哀しい色の光をたたえているだけだった。
「……行きましょうか」
281161:02/06/11 22:43 ID:WvdkZbxd
鞭を自在に操りはしても、相手はただの老人。
満身創痍であっても、こっちは鍛え抜かれたプロスポーツ選手。

その気になれば、瞬時に撲殺できるはずだ。
なのになんだ?この老人の自信と余裕は?

いや、考えている暇は無い。今この瞬間にも、チームメイト
達が・・

中村はゆっくりと立ち上がった。
282代打名無し:02/06/11 23:00 ID:yxwesJ/Z
キタ−−−−−(゚∀゚)−−−−−!!
283代打名無し:02/06/11 23:15 ID:Rhg3s99E
(;´Д`)ハアハア
284代打名無し:02/06/12 04:14 ID:zEh63CLb
全身が痛んで、身動きが取れない。
山本は目を閉じた。
もう、瞼を開けていることさえ苦しい。
死ぬまで負けるなよ、武志。俺がついてるからな。
死んだみんなも、きっとお前を守ってくれる。
声は出ない。代わりに心の中で呼びかけた。
左手を握り締めてみたが、
命の次に大切な左腕も、もうボロボロだとわかっただけだった。
そうか。彦野さんも、お前も、俺も…死ぬんだな。今更実感したよ。
だってこんなに苦しいんだよ。
腹も胸も脚も腕も滅茶苦茶に壊れてる。
でもまだ死なないからな。
細く息を吐き出した。生きている。
まだ死ぬわけにはいかない。
この悲劇の終末を、全身で確かに感じ取るまでは。
それに、いっしょに死ぬって言ったもんな。
山本は唇を歪めて笑った。
さっさと死なせてくれよ。もう苦しいのに。
お前、本当にノロマだよな。
ああ…そろそろ耳も聞こえないみたいだ。参ったな。
視覚も聴覚もだんだんと失っていきながら、
それでも山本の旺盛な生命力は、まだ尽きてはいなかった。
285 ◆xYQkNOZE :02/06/12 15:33 ID:AOLhtXBU
「見ろ、憲伸」
井端が手にとってまじまじと眺めていたのは、星野の手から落ちた拳銃だった。
放り投げられてそれを受け取った川上は、暴発を恐れながらこわごわと覗き込む。
「なに…?!」
「そう。その銃には実弾が入っていない」
小笠原も痛めた足を引きずりながら近寄る。
「俺を撃った一発しかなかったということですか?」
「そのようだな…しかしなぜ…」
川上は静かに横たわる星野の顔と拳銃とを見比べる。
「監督…何故ですか?俺達に、何を言おうとしていたんですか?」
物言わぬ星野の顔に飛んだ血しぶきを、川上はそっと拭った。
ゲーム終了のサイレンは、不思議とまだ聞こえてこない。
286代打名無し:02/06/12 19:41 ID:IDyJT5SR
中村の握り締めた掌に汗が滲んだ。
この余裕はおかしい。
何かが仕掛けてあるのだ。間違いない。
「どうしてそんなに堂々としていられるんです。
確かに俺は怪我人だし、丸腰ですけど、
あなたを殴り殺すくらいの余力は残っていますよ」
いちかばちか、脅しをかけてみたが、眼前の老人に全くたじろぐ様子はない。
「それがどうかしたのかね?
君にはわからないだろうな。所詮は田舎球団の選手か…
力で押すことばかり考える」
この世で一番力押しが好きなのはあんただろう、
と言いたくなったが中村は敢えて黙っていた。
ともかく、まずはこの老人が何を考えているのか探らなくては。
「備え有れば憂い無し、とよく言うだろう。
この部屋にも無論のこと「備え」は用意してある…
わしは暴力は好まん。最後に身を助けるのは財力だよ。
金の力は素晴らしい。この部屋もな…随分金をかけたが」
じいい…という機械音が聞こえたのはその時だった。
「つまり、そういうことだ」
部屋の片隅に設置された巨大なテレビから、その音は聞こえてくるのだった。
銃だ、と直感した。
ブラウン管の中央が割れ、中から黒々と銃口が覗いたのを
横目で確認するまでもなく、中村は身を翻していた。
銃声と共に足下の絨毯が撥ねる。
「かわしたか。意外に素早いではないか?ん?」
…遊んでやがる。この部屋には他にもきっといくつもの仕掛けがあるのだ…
中村は戦慄した。
どうやら、やはり相打ちに持ち込むことだけを考えなくてはならないようだ。
287代打名無し:02/06/13 01:01 ID:kbs9w8BW
武志がんがってage
288チェキラ松井さま ◆b7PeLp8M :02/06/13 01:45 ID:MlZ7cjCE
みんなで大エースの上原応援しよ☆
みんなのミラクルパワーを上原さまに集めよう!
日本で最強のピッチャー^^
僕も上層部のファンとしてベテランの ジョウベ・前田とかよりも
若手の上原とかヒサノリに頑張って欲しいYO♪
あとFAで番長三浦ゲッチュ トレードで 井川ゲッチュして
世界最強ピッチャー陣になってほしいYO
ショートは元木よりも福井とか斎藤とか若手を使ってほしいYO
289代打名無し:02/06/13 17:33 ID:4Hqi0ji2
>>288はアンチジャイファソの某球団ファソか?
290代打名無し:02/06/13 23:49 ID:EcUTJpBl
保守age
291代打名無し:02/06/14 11:50 ID:ilAWsFFF
>>288氏ね
292 ◆xYQkNOZE :02/06/14 18:07 ID:pzNG8zBe
「なぜ…、そこまで『金』にこだわるのですか?」
中村は息があがるのも構わずに老人へ言葉を投げかけた。あからさまな時間稼ぎではあったが、下手に動けば命を落とすのは明らかだ。こいつを道連れにしない限り、死んでも死にきれない。
「たとえば広島のような…、市民の力と信頼関係で成り立つチームも、またひとつのありかたではないのでしょうか」
老人は口に含んだブランデーを中村へいまいましげに吹きかけた。無数の傷口に染み、中村は小さくうめく。
「わしはな、ああいうしみったれなお涙頂戴が一番嫌いなんだよ!」
カタカタと老人の寄りかかるテーブルが震えているのがわかった。動揺している。チャンスだ、と中村は思った。
「どこの球団も、小さくまとまりおって…、プロとしての自覚はないのか!
 金を稼ぎ、人気を集めるためにはどんな手段も惜しまない。それがプロ野球ではないのか?
 地元にへばりついて内輪のようなファンばかり集めているなら高校野球と変わらんではないか。」
「だからあなたは、広島の野球に真っ向から攻撃を仕掛けたんですね」
老人はニヤリと笑った。
「ああ、そうだ。二岡に逆指名させたのは、はした金で『世話をした』と恩着せがましいあの貧乏球団を地獄へ突き落とすためだ」
全部そうだ。こいつは手段を選ばない男なのだ。
主砲の松井に契約更改でド派手なパフォーマンスをさせるのも権力を示すため。
ドラフトで清原を取らなかったのは、そのときとそののちの話題づくりのため。
「金と頭は使いようなのだよ。そして強いものが勝つ…、社会の常識ではないか?」
何度人前で披露したであろう自慢話にひとり悦に入る老人の頭上で豪奢なシャンデリアが揺れているのを、中村の目は見逃さなかった。
293代打名無し:02/06/15 07:41 ID:n+RF87na
かなり下だったからちょっとage
クライマックスですねぇ。ドキドキです。
書いてる皆様、頑張ってください!
294代打名無し:02/06/16 04:15 ID:0640O6Js
age
295sage:02/06/16 04:23 ID:lkL90u0m
nagoya
296代打名無し:02/06/16 04:40 ID:/R/8dzZf
保守sage
297代打名無し:02/06/17 01:07 ID:WYau67Ra
荒木はどうなるのかな。イバタソにあえるかな。それとも・・・
298代打名無し:02/06/17 01:29 ID:B+5T/l06
age
299 ◆xYQkNOZE :02/06/18 16:27 ID:DEOUotKo
身動きを取れずにしゃがみ込んでいた中村が突如、『あるもの』を投げた。
「があっ!」
激しい音と老人の悲鳴。そして淀んだ空気の室内がきらきらと光る。
宙を舞ったスパイクがシャンデリアに激突し、ガラスの雨を降らせた。
「なんだこれは!ああっ!」
刺すような痛みに老人が腕に降った破片を払う。腕と手のひらが赤く染まる。
「血じゃ、血じゃあ!このワシの血じゃあっ!!」
中村は恐怖におののく老人の姿を眺めていた。
あれほど自信に満ちた男が、読売巨人軍のオーナーが、今、中村の目の前で、致命傷にもなりはしないほどの出血で、ただの小男に成り下がっている。
…哀れだな。
そう心の中でつぶやいた中村が再び老人に目をやると、その表情はいつしか薄ら笑いへと変わっていた。
300代打名無し:02/06/18 20:32 ID:P6TjIz30
がんがってくださいage
301 :02/06/18 22:16 ID:mL6Hqp6j
面白い、頑張ってください。age
302代打名無し:02/06/19 14:31 ID:5NZHlOG2
afe
303代打名無し:02/06/20 00:25 ID:3RZXYYjH
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/base/1024496516/
とうとう始まった模様。ガンガレドラBR!
304代打名無し:02/06/20 03:31 ID:aKy37gYj
山田さん、サイレンを鳴らさないんですか」
仁村は、極力静かに言った。
星野の死に動揺しなかったと言えば嘘になる。
しかし今は、職務を果たさなければ…
感傷に浸るのは後だ。
「…もう少し待て」
山田はモニターから視線を動かす事なく言った。
まるで、テレビにかじりつく小学生だ。
「しかし、規則では星野監督が死んだらゲーム終了と…」
「ゲームどころか。今日は記念日だぞ、仁村」
なおも視線はモニターに注いだまま、山田は薄く笑って見せた。
「はあ…?」
仁村は混乱するばかりだった。
山田の言動が理解できない。
「この球界の呪縛が解かれる日だよ。
その時まで、サイレンはもう少し待て」
球界の呪縛…
ようやく仁村ははた、と思い付いた。
山田が見つめているモニターの一点には
中村と山本の現在状況が表示されていた。
それに拠れば、中村は軽症、山本が重態。
二人はツインタワー最上階にいる。
二人(彦野もだが)が読売オーナーを暗殺しようとしているのは
盗聴のログなどから大分前に知っていたが、
てっきり止めに行くものだとばかり思っていた。
「まさか山田さん、中村と山本のしている事を見過ごす気ですか…
本来なら、サイレンを鳴らしてすぐに現場に行って
あの二人を取り押さえるべきなんですよ」
「プログラム内での殺人は合法だ」
背筋を何か冷たいものが登った。山田は本気だ。
「俺はな、仁村。もう二度とこんなプログラムに立ち会うのはごめんだ。
それに、いずれオリックスの監督になれたとしても
プログラムに巻き込まれたら意味が無いだろう。
多少サイレンの時間をずらしたって、進行上問題が無ければ上は何も言わんよ」
305書き手A:02/06/20 03:53 ID:aKy37gYj
304の一行目、「が抜けてる…ハズカシ。
保存屋さん方、すみませんが訂正お願いします。

↓ここから本文

仁村はもう何も言えなかった。
所詮、自分はしがない二軍監督。
監督代理の山田にこれ以上楯突いても意味がない。
それに、プログラムなど無い方がいいのだ。考えてみれば。
「…わかりました。ところで、スタッフでもないのにプログラム区域に侵入した
音、彦野の両名への処罰はどうしますか」
「彦野はいい。どうせ直に死ぬだろう」
「では、音は」
「そうだな、色々考えてみたんだが」
山田はそこまで言うと、椅子の上に組んでいた足を組みなおした。
「とりあえず情状酌量ということにしておいてやるつもりだ。
ただし、監視は付ける。上に示しが付かないからな」
「は、監視…ですか?」
「これは飽くまでも、俺がこのまま中日の監督になったら、の話だが、
音は二軍の守備走塁コーチ辺りに使おうと思う。
組織の中に組み込んでしまうのが手っ取り早いからな。実績もある」
なかなか周到な人だ、と仁村は素直に感心した。
「なるほど。ところで山田さん、監督になった暁には…」
「お前をヘッドに昇格させろって言うんだろう。わかってるさ」
「どうも、恐れ入ります」
「星野・島野の天下も終わりだな」
プログラムに動きがなくなった為だろう、
本部の空気はだんだんと落ち着き始めていた。
306 ◆xYQkNOZE :02/06/20 17:57 ID:iZWG+jw0
チャリン。
鈴のような物音がかすかに上方から聞こえ、しばしの休息を取っていた三人は再度戦闘の構えを取って見上げた。
一塁側二階席通路に、光る錫杖を携えた僧侶の姿があった。音重鎮は、ついにナゴヤドームへたどり着いたのであった。
その、もの悲しい表情から、彼を敵だと思う者など一人もいなかった。
音は最前列まで降りると、軽い身のこなしでフェンスを飛び越えグランドへと降り立つ。
そしてすぐさまバッターボックスへ向かうと、小さくうめく長谷部の面を外し、きつく噛まされた猿ぐつわを解いた。
「ウ…ウウ…ウ」
自由の身となった長谷部捕手はそのままゆっくりとホームベースの上へ崩れ去る。
ゆっくりと、音は川上らのもとへと近づいた。
「…なぜ、ここに?」
口を開いたのは最も冷静沈着な井端だった。
音は答えるかわりに、手にした杖を川上の目の前に差し出した。
「…同じポジションのあなたなら、わかるでしょう」
「これは…、落合さん、ですね?」
杖は一段と光を増して点滅した。
「彼が、私をここへ導いたのです」
そしてその光は、ゆっくりと杖を離れ、上空へ浮かぶとそのまままっすぐ外野の方向へ向かい、ライブビジョンの前で、鮮やかに弾けた。
「うわぁ…」
まばゆいその光に誰もが目をしかめる。そしてその光がゆっくりと消えると、ビジョンにはある男の顔が映されていた。
血にまみれ、痣にまみれた、中村武志、その人であった。
307代打名無し
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