広島家の人々2.5

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1ヨシキ君
なんとビクーリ 板移動につき、もう一度立ち直し。
ウヒョスレで話題になった元旦の中国新聞記事
五人の誓いhttp://da1567.hoops.ne.jp/gonin.htmから生まれた物語
「広島家の人々」を中心とした広島ネタスレPart2.5です(汗


【前スレ】
2001年後半型ビッグレッドマシン
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/995963952/
広島家の人々2
http://kaba.2ch.net/base/kako/1005/10051/1005146706.html
【関連スレ】
カープ内に派閥はあるか? (カープバトロワ)
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/base/1002715486/
【過去ログ】
http://da1567.hoops.ne.jp/
2登場人物その1:01/11/27 10:48 ID:baoSMRMU
()内は初登場回 (広島家の人々20で誰だかわかったら(20)という感じ)です。
もちろん名前が出る前に登場している人物はたくさんいますよ。 背番号順。

00:子犬のシマ(29)
0:鯉城駅駅員木村(24)
1:広島家用心棒前田(74)
2:輝裕(1)
3:父浩二の友人、鉄人祥雄(1)
4:輝裕の親友兵動(3)
5:漁師の町田(12)
6:漁師の浅井(12)
7:陸軍将校野村(153)
8:父・浩二(1)
9:刑事の緒方(80)
10:知憲住職(2)
11:竜士の一番弟子の子分・横松(49)
12:河豚(7)
13:キムチ(133)
14:博樹の親友澤崎(110)
15:博樹(1)
16:備前亭泰山(49)、UFO仮面(49)
17:名古屋コーチン鶴田(番外)
18:佐々岡の爺(1)
19:小料理屋長谷川の若旦那(133)
3登場人物その2:01/11/27 10:49 ID:baoSMRMU
21:エンドウ豆(2)
22:母犬ケン(24)、甲斐の父(52)   
23:竜士(2)
24:貴哉(1)
25:貴浩(2)
27:小料理屋長谷川奉公人・木村(160)
29:小林青年(49)
30:マスター玉木(76)
31:小料理屋長谷川奉公人・小畑(160)
32:西山堂(6)
33:鶏のロペ(7)
34:UFO仮面の中の登場人物ヨシキ君(77)
35:新米臨時教師松本(103)
36:駐在所警官佐竹(156)
37:バイオリン弾き岡上(120)
38:前田の子分・朝山(74)
40:小料理屋長谷川奉公人・倉(133)
41:絵師森笠(125)
42:手品師ラドウィック(番外)
43:手品師ヤング(番外)
44:郵便配達員福地(13)
45:金本寺の仏像(番外)
46:教師の山崎(3)
47:小作農島崎(11)
48:小作農サトヤス(11)  
4登場人物その3:01/11/27 10:50 ID:baoSMRMU
49:ピエロのエディ(14)
50:竜士の子分・栗原(55)
51:前田の子分・末永(74?)
52:ベチの弟分・健太(56)
53:車掌の林(144)
54:テキ屋の兄ちゃん・ベチ(54)
55:日雇い人夫福良(116)
57:建の息子甲斐(52)
58:竜士の子分・長崎(50)
59:小作農サトヒロ(11)
60:級長の田村(3)
61:日雇い人夫伊与田(116)
63:小料理屋長谷川奉公人・鈴衛(160)
64:竜士の子分・井生(70)
65:知憲住職の酒の番人・石橋(154)
66:お地蔵矢野(番外)
67:浅井の息子大輔(番外)
68:広池(64)
その他
鬼大下(大下教頭)(3)
松原(47)
元広島家使用人・江藤(57)
工事監督官・西田(116)
中盆の男・清原(123)
刑事達川(129)
大野(番外)
町医者福永(番外)(95)
安仁屋婆(番外)

前回達ちゃんを数えるのを忘れてやした(汗 現在登場人物は73人。
後、残り5人は26:廣瀬、28:瀬戸、39:小山田、56:田村(彰)、70:ブリトーです。
5いけませんねぇ・・・(^^;:01/11/27 10:56 ID:baoSMRMU
昨日もちゃんと続き書けよといわれたようなもんだ。
まさか板移動があるとは思わなかった。ははははは・・・
166から再録しなおしますだ。
あと今日の午後9時まで過去ログサイトもメンテナンスで
見ることができません。ご了承ください・・・。フンダリケッタリだにゃ、もう。
6いつも読んでる奴inGバトロワスレ:01/11/27 10:59 ID:B7m8asR5
>1-5
お疲れさまです。こっちも、カープバトロワも見てる奴なんですけど
ところで私もやらかしちゃったんですが
ひょっとしたらこのスレも、もうちょっと経ったら復活ってありえませんか?
いえ、Gのバトロワスレも、最初に自分でブクマしてるところにいったら倉庫行きになってて
慌てて臨時にと思って新スレ立てたら
ほぼ入れ違いに復活してたんです(泣
どないでしょ?
7どうも!:01/11/27 11:10 ID:baoSMRMU
>>6
こちらもいつもGバトロワ楽しく読ませてもらっていやす。
そうっすね。倉庫逝き→復帰の可能性もありえるかもと考えてみたんすが
Gバトロワは最終カキコが19:56、広島家は8:02なんで多分無理なんじゃ
ないかと・・・(泣 と思って覚悟決めて新スレ作りやした。
でも、出来たら板移動は予告して欲しいっすよ。お互いちと参りやしたね・・・
8 :01/11/27 11:13 ID:Blb3zUQL
>1-5 オツです。今朝マカー用。開いたら
いつもと様子が違う‥‥落ちちゃったー?てな感じで
ビクーリしましたよ。

>6 たまにそういう現象ありますよね。
邦楽板で板移動に紛れてスレがなくなったけど
いつの間にかまたあったってことがありました。
でも、ちょっとの間でもスレがないと不安(w
なんでねぇ‥‥。
9広島家の人々166(再録):01/11/27 11:23 ID:baoSMRMU
男はゆっくりとした足取りで緋鯉村の中心の通りを歩き、感慨深げに周りの気色を見回した。
「やっと、これで肩の荷を下ろせるところまで来たんだのぅ・・・。」
遠くから男の名前を呼ぶ声がした。男は声のする方へ振り向いた。
「・・・川さん!達川さ〜ん!」
「ゴラァ!まだ大声でワシの名前を呼べるところまでいっとらんわ!」
息せき切って駆け込んでくる青年・・・森笠に、すかさず達川はカウンターパンチをくらわした。
「イテッ!」
反動で森笠は軽くふっとばされた。
「ったくなぁ。で、どうじゃった?緋鯉村に入って、少しはわかったんか?」
「ああ、それそれ!」
頬をおさえて、ひぃひぃ泣く真似をしていた森笠は、パッと飛び起きると興奮した声で達川に
飛びついた。
「もうバッチリ!邪毘屋の狙いがはっきりわかったっすよ!いやぁ、やらしい〜やらしい〜!
噂には聞いていたけど、本当に何でも欲しがる邪毘ちゃんなんだなぁと。こんな貧乏な村の
始祖伝説まで普通手をのばすっかっての。まあ、その強欲なところが、こうやって足のつく
結果を生んだんかもしれないっすけどね。」
そういうと、森笠はまた例のごとくケラケラ笑って、達川の背中をポンポンと叩いた。
「で、達川さんのところは?俺は緋鯉村の仕組みをもう広島家の次男、三男坊に話してしまった
んすよ。でも、これを広島家の人間が知ることを一番邪毘屋は嫌がってたんじゃなかったっすか?
なんつったって、その秘密を受け取る権利は広島家が持っている。邪毘屋としては、緋鯉村を
乗っ取ってから、ゆうゆうと自分たちで秘密を解いて、お宝を独り占めするつもりだった。
じゃないと、こんな遠回りな方法で広島家を追いつめないっすよね。でも、このままだと広島家の
次男坊が長男に緋鯉村の仕組みを話すのも時間の問題なんすよ。俺がそう仕向けたから。
どうしよう・・・。後は達川さんの方が早く決着してくれないと、俺、みすみす広島家の兄弟を
邪毘屋の攻撃にさらしてしまうことになる・・・。」
わざとおおげさにショボンと気を落としてみせる森笠に、達川は苦笑してニヤリと笑った。
「その辺はもう大丈夫じゃ。もう証拠は充分に揃った。後はこれを軍に渡して、軍と警察の双方
での手続きを終えれば、邪毘屋はもうお縄も同然の状態じゃよ。」
「本当!じゃあこれで晴れて緒方さんも本署に戻れるということで・・・!」
「ああ、お前もこれで完全に無罪放免じゃ。捜査に協力した礼として、今までのスリ罪の経歴も
全部消してやるわぃ。」
「やったぁーー!!」
大声をあげて森笠は万歳三唱をした。
「ん、ちと黙っておれ!」
通りの向こうから、一人の陸軍将校がこちらにやってくる。
「そうそう、ワシはあいつを待っておったんよ!」
達川はニコニコ笑って、向こうからやってくる野村に声をかけると、ポケットから警察手帳
を取り出した。
「これは邪毘屋の徴兵詐欺の資料で・・・。」
野村は達川の一言でそれが何を意味するかすぐにわかった。そして、達川が差し出した
大きな封筒の書類を受け取ると力強くうなずいて、すぐに鯉城駅に向かってカツカツと早足で
去っていった。後ろで森笠が声にならない歓声をあげて、何度も笑顔で万歳を繰り返していた。
10広島家の人々167(再録):01/11/27 11:24 ID:baoSMRMU
「で、これからあの壺振りの建さんのことはどうするんすか?こうして事件が無事に解決したのも、
担保になった建さんを邪毘屋の中に忍びこませて汚れ役をやらせたからっしょ?
後もう一人、広島家の長男博樹さんを担保に陥れて無防備な囮として利用したことも。
あの2人がいなければ、俺がこまこま動いても、こうもうまく解決はしなかったすよ。」
「・・・そうじゃのう。」
「とうとう今日なんて、建さんの息子が金本寺にやってきましたよ。あともう少しで事件が完全に
解決するっていうのに、ああも動かれちゃあ、かえって自分の親父さんをムショに入れる手助け
をしちゃってる。かといって、あんな真面目そうな子を広島家の次男のように強引にムショに隔離
するわけにもいかんでしょ。達川さん、これから一体どうするんすか?」
「・・・そういうところは、ホンマ良く似た親子じゃのぅ。あやつらは」
達川は苦笑いを浮かべた。
「達川さん!」
森笠は半分いらだったような声をあげた。
「いやなぁ、似たようなことをあの建さんも二度もやろうとしよったんじゃ。あやつの性格じゃ、
事件の捜査のために邪毘屋の中にもぐりこんでくれといって、シラフでばれぬようやれるような
玉じゃあない。じゃけん、ワシに脅されてこういう羽目に陥ったように見せかけたんじゃが・・・。」
「達川さんがやると、しゃれがしゃれにならなくなるからなぁ。」
「敵をあざむくには味方からと思うてやったら、本気であやつがおびえて、広島家の長男に
担保の話を持ちかけた時、担保はやめた方がいいとこっそり長男の博樹にぬかしにいきよった。」
「ぶははははははは・・・。」
「あのときゃあ、どれほどこの役をお前に切り替えようかと思ったか・・・。じゃが、お前じゃと
いかにもな奴で邪毘屋が手の内を見せてくれんじゃろう。ホンマ博樹が別の人物から金の
手はずをつけた時はこれでおしまいかと思うたが、あそこで濁流に全部金を落とした広島家の
三男坊、あいつがこの事件解決の殊勲賞じゃ。」
「ひゃはははは・・・、ひでぇ殊勲賞。」
「で、次が博樹をなんとか徴兵の対象に持ち込むところまできたとこじゃ。ワシがうまく騙して
邪毘屋に借金の担保で博樹が徴兵の対象として可能であることを持ちかけた。ここでコロッと
引っかかったところに、欲にくらんで爪が甘うなった邪毘屋の業の深さが出てきおったのぅ。
後はここで下手に余計な茶々を入れて、事が複雑化して博樹を見殺しにせんように、少々頭に
血が昇っておった次男の竜士をムショに隔離した。そして残るは邪毘屋に気づかれぬよう浮浪者に
襲われる形で博樹に怪我を負わせることじゃ。ここでまたあの建が邪魔をしようとしよった。」
「・・・・・・。」
「『これ以上、人をもてあそぶのもいい加減にしてください!』とぬかしてな。じゃがここで
この形で博樹に怪我を負わせぬと、囮のための召集令状が本当の出征に変わってしまう。
まだあの時は、この時点で事件が解決するとは思うておらなんだからなぁ、じゃけん、
これ以上邪魔せんように、あやつは別の場所に閉じ込めておいたわ。事件が完全に
解決するまで、あやつも邪毘屋の手下の一人の扱いとなるけぇのぅ。事情を説明して、
お前のように捜査取引で罪を完全にチャラにするまで、あやつの性格じゃ危のうて
おいおい安心して表に出すことも出来んわい。」
11広島家の人々168(再録):01/11/27 11:25 ID:baoSMRMU
「でも、じゃああの甲斐って子はどうするんすか?このままじゃ、もうあの子はとまらないっしょ。
せっかく事件が解決しても、最後の最後で犠牲者が生まれてしまうかもしれないじゃないっすか。」
「じゃけん、あの子にはさっき鯉城駅の前でご朱印帳を渡したわ。」
「ご朱印帳?」
「無事に父親が帰ってくるよう毎日寺に願掛けに通う孝行息子。なんつぅうるわしい光景じゃ・・・。」
「はぁ・・・・・。」
「そうでもせんと、もうあの子も黙って待ってられんじゃろうて。これで自分の飼い犬が殺された
ことも知った。捜査の秘密を守るためとはいえ、あれだけはちとかわいそうなことをしたのぅ。」
「なるほど・・・。」
「金本寺にはお前もおるけぇ、あまり心配はしとらんがな。それより、お前はこれからどうするんじゃ?」
「えっ、俺?」
森笠は自分の顔を指差して、それからクスクスとしのび笑いをもらした。
「むふふふふふ・・・俺はこのまま緋鯉村に永久就職!」
「はぁ、緋鯉村になんぞ職でもあったか?」
「ぁあああ、ひでぇな達川さん!仕事は当然、俺の絵の腕一本に決まっているじゃないっすか!」
「それでまた金に困って、元のスリに戻るのがいつものオチじゃろう。」
「んふふふ・・・それが違うんだなぁ、達川さん。そうそう、広島家の博樹さんには当然、
捜査の功労として、俺と同じように何か見返りは用意してあるんだよな。」
「ああワシから借りた借金はすべてチャラ。日雇い労働で稼いだ金もすべて本人に
返すつもりじゃ。」
「ということは、建さんの功労金も今までの借金のチャラ。ふぅん・・・これでどれだけ
広島家の金に余裕が生まれるかなぁ。それで・・・ぐふふふふふふ・・・。」
「おいおい、黙ってとらんでさっさというたらんかぃ。お前がそこまで確信するっちゅうこっちゃ、
それは緋鯉村の秘密・・・」
「そうそう、多分あそこには俺が永久就職できるお宝が。だってあそこは・・・」
森笠はバシバシ興奮しながら達川の肩を叩いて、緋鯉村の秘密を語りはじめた。

「あっ、また来た!」
横松はキョトンと目を大きくして、金本寺の石段を上がってきた甲斐と岡上を見つめた。
さっきとは別人のように、とくに甲斐は暗く思いつめた表情をしてやってくる。広島家で
何かよくないことでも知らされたのだろうか。横松は顔を曇らせて、甲斐に声をかけた。
「住職は帰ってきてますか?」
「えっ、住職?」
そうだった。知憲住職を訪ねて二人は金本寺にやってきたのだった。
「待ってて。もう住職はこっちに帰ってきているから。」
すぐにバタバタと駆け足で横松は知憲住職を呼びにいった。
12広島家の人々169(再録):01/11/27 11:26 ID:baoSMRMU
「なんじゃあ、ワシを訪ねての客人?」
知憲住職は頭をポリポリ掻きながら、本堂の廊下に現れた。
「住職は壺振りの建さんのことを知らない?」
「壺振りの建さん・・・・・・はて・・・ワシは知らん。」
横松の質問に、知憲住職は困ったように首をかしげた。
「いえ、もうそのことはいいんです!」
甲斐は二人の会話をさえぎって、ご朱印帳を住職に差し出した。
「ほぉ、キミたちはありがた〜い参拝客か。」
知憲住職はニッコリ笑って、真剣な表情でご朱印帳を差し出す甲斐から、それを受け取った。
「そこにご朱印をお願いいたします!」
甲斐は深々と頭を下げた。不思議そうに住職はご朱印帳と甲斐を見比べた。
「なんじゃ、えらく薄いご朱印帳じゃのぅ・・・。」
「あっ、それは・・・。」
隣にいた岡上が、事情があってそのご朱印帳がいっぱいになるまで金本寺に願掛けをしなくては
ならなくなったことを住職に説明した。横松があっと小さな声をあげて、心配そうに頭を下げた
ままの甲斐の姿を見る。
「ほぉ・・・。横松がどうやらその事情を知っておるようじゃのぅ。よっしゃあ、
じゃあそのご朱印は横松が書くといい。」
「ぇええ!俺、ご朱印の書き方なんてわからないっすよ。」
「ふん、いつもやってるお習字とまったく同じことじゃ!」
岡上は目を点にして、住職の姿をマジマジと見た。雨を降らすこともできる霊験あらかたな
お坊さんと甲斐の話から想像していたが、これじゃあ単なる破戒坊主ではないか。
あわてて奥の部屋から手箱を持ってきた横松に、知憲住職は一つ一つ説明して、ご朱印帳の
最初の頁に手習いの習字の言葉を入れさせた。
「それで次は朱肉で印を押して・・・。」
横松は手箱の中から丸い形の判を取り出して、文字の上に押した。デカデカと紙面の中心に
筋肉モリモリの腕の形のハンコが押される。
(こ、これがご朱印ご朱印ご朱印ご朱印・・・・・・。)
真面目な顔でご朱印帳を見つめる甲斐の手前、言葉に出せなかったが、だんだん岡上は
頭が痛くなってきた。

「博樹兄ちゃん!」
広島家の荒れ果てた庭の惨状に、竜士はサッと冷や汗を流して、あわてて家の中に駆け込んだ。
「よっ、竜士おかえり!」
外とは裏腹に、博樹は茶の間で前田と一緒にお茶を飲んでくつろいでいる。
「へっ?」
「竜士、佐々岡の爺の居所がわかったぞ。今は前田さんのところで静養しているそうだ。」
博樹は満面の笑みで竜士に佐々岡の爺の近況を告げた。
13広島家の人々170(再録):01/11/27 11:27 ID:baoSMRMU
さざ波の音が、海辺の掘っ立て小屋の中に心地よく流れてくる。
「今日はここが寝床だね、ベチの兄貴。」
弟分の健太は早速小屋の中に散らかっている漁道具を片付けて、簡単な寝床の用意をした。
ベチは入り口の戸を開けたまま、じっと海を見ている。
「本当に来るの、ウチさん・・・?」
「ああ、多分な・・・。」
「でも、あの手紙の内容で?あれには俺たちの出稼ぎに行く予定の場所しか書かなかった
のに・・・。」
「それでも、多分来るとして、この2,3日の間には必ずあいつはやって来る。」
「・・・・・・。だから海のそばの小屋が寝床・・・か。」
ここは本土から少し離れた島々の一つ。ベチと健太は夏祭りの日からしばらくして、島と島を
渡り歩きながら、夜店や大道芸などでその日暮らしの金を稼いでいた。
今日も今日とて、通り沿いでの余興で3日分程度の食べ物を買うお金を稼ぐことができたが、
ベチが突然、寝るなら海のそばの空き小屋がいいと、まったく別の方向へ歩き出していって
しまう。そこは緋鯉村からの定期船が来る港の方向だった。2日ほど前に、ベチは貴哉から
頼まれたガラクタの景品を売った売上金を自分の居場所を告げる手紙と一緒に、緋鯉村の
貴哉宛てに封筒で送っていた。健太はあの夏祭りの時以外、貴哉とは一度も会ったことが
ないのでさっぱりわからないが、ベチには何やら確信できることがあるのだろう。こうして居場所
を定めてからというもの、じっと海を見つめ、あてどもない友人が来るのをずっと待っていた。
「ベチの兄貴。じゃあ俺、何か食べ物を探してきます。」
「ああ・・・。」
掘っ立て小屋の入り口は砂浜に下りるようになっている。一足踏むごとに砂浜の中に食い込む
感触に少し顔をしかめて、健太は堤防を越えた海沿いの街道に向かって歩き始めた。
しばらく歩いて、やっと堤防を越えるところまで来た時だった。
「あ・・・・・・。」
健太は目を疑った。ベチのいう通り、本当にあの貴哉が、さざ波ぎりぎりの砂浜を足をとられて
つまづきながらもこっちにやってくる。
「ベチの兄貴!」
あわてて、何度も転びながら健太はベチのところに舞い戻った。
「やっぱり、来たか・・・。」
笑顔でベチが貴哉を出迎える。
河豚を小脇に抱えた貴哉は、ボーッとした表情でベチと健太の姿を確認した。
14 :01/11/27 14:21 ID:JW7zRl8i
昨夜なくなってたからビクーリしました・・・2.5って(w
15_:01/11/27 19:02 ID:IM45W1Yr
おお、復活2.5おめ!
今朝dat行きして暗〜い気持ちで仕事行ったYO!
帰ってきてホッとしやした。
続きがんがってください。
16広島家の人々171:01/11/27 21:57 ID:IhLRZwsr
「なんだよ、めちゃくちゃいい話じゃないか、その養子っていうのさ・・・!」
「・・・・・・。」
「それともあれか、自分自身に納得がいかないとか・・・。」
ハッと貴哉はベチの顔を見て、それから「うん」と小さく言ってうなずいた。
暗くなった砂浜で、三人が囲む焚き火の周りだけ、ぼんやりと球体が浮かび上がるように
空間が広がる。健太は、貴哉が持参してきた河豚の入った桶を不思議そうに眺めた。
「ウチさん、これは食べるためにここに持ってきたの?」
「あっ、それはダメっ・・・!」
あわてて貴哉は桶の上に身体を覆って、健太から河豚の身を守った。
「ウチさん?」
健太は、真剣そうな顔で河豚の様子を見やる貴哉の行動の意味がわからず、
困ったように貴哉、そしてベチの顔を見た。
「ウチ、その河豚に何か意味でもあるのか?」
「意味・・・・・・。」
あらためて面と向かって尋ねられて、貴哉はかがんだままマジマジと河豚を見つめた。
「・・・これを食べるのは、ボクが一人前になった証の時なんだ。でも、この河豚は大きく
太らないと食べられないって町田さんや浅井さんが・・・。だから・・・。」
「なぁんだ、ここに来たのと根っこは一緒か。」
ベチは軽くいなして、健太に明日貴哉が着こなせるようなドサまわりの古着を用意する
ようにいった。
「うらやましかったんだろ、俺が?じゃあ試してみろよ、それがどんなことか。」
しばらくの間河豚を見つめたまま、貴哉は何の反応もかえさなかった。貴哉に構わず、
焚き火の薪をくべていたベチの耳に、忘れた頃に「うん」と承諾する貴哉の返事が聞こえた。

「つんつるてん・・・。」
「だってこのくらいの大きさの服しか見つからなかった。ウチさんぐらいの身長で古着の
洋服なんてなかなか見つからないっすよ〜。」
うらめしそうに健太は、デクの棒のようにボーッと立ったままの貴哉を軽く睨んだ。
貴哉がやってきた時の着物の恰好では、いかにもまともな家に育った真面目な少年という
イメージそのままで、自分たちとは違和感がありすぎる。そのため、少しは流れ者の
チンピラっぽく見えるようによれよれのシャツとズボンに着替えさせてみたが、これは
これで失笑を誘うヘンテコリンな恰好になってしまった。
「まあ、いいか。他でいい服が見つかったら、その時にまた着替えりゃ・・・。」
ひぃひぃ笑いをこらえながら、ベチは次の稼ぎ場所へ貴哉と健太を誘導していった。
17代打名無し@ス:01/11/27 22:14 ID:IhLRZwsr
限界まで肩こりを悪化させてしもうて、昨日は続きを書くのを休んだら
まあ、こういうことが起こりやした。はあ、いろいろと難しいのぅ・・・。
今日はもう少し続き書いて、ある程度貴哉編のメドつけたいな(希望

前スレ>193
ここはもうベチの登場しかないだろうと。ここのエピソードは随分はじめの
頃から設定でできておりやした。
寺社巡り−ご朱印集め、おらも趣味でして今、ご朱印帳も4冊目っす。
広島では厳島神社の他に千畳閣でも。そうだ、あそこでカーサ絵師の設定を決めたんだ。

>194
襲われてください(w っていっちゃマズいか・・・^^;

>195
兄貴ばかりとは限らないっすよ。ここで緋鯉村の秘密のヒントがまた一つでます。
河豚もいよいよカウントダウンになってきたな・・・

>>8 >>14-15
なんだかまだ板移動の可能性もあるみたいっすね(^^;
今度万が一dat逝きになったら、2.75で作ろうかと思ってみたり・・・
18 :01/11/27 22:19 ID:wcEgqlqb
つんつるてんの服を着たウチ、想像したらカワイイ!!
19広島家の人々172:01/11/27 23:30 ID:IhLRZwsr
それから数日が経った。最初はギコチなくベチのやることなすことの足手まといになって
いた貴哉も、やっと一人前の動きを取れるようになり、ベチの片腕的存在にまでのしあがる
ようになっていた。
その変化を一番驚きの目で見ていたのが健太だった。明るくなっていく。何か吹っ切れた
ように貴哉が饒舌になり、行動的になっていくのである。ベチはにやにや笑って、黙って
そんな貴哉の変化を見ていた。
「ふぅ〜ん・・・。」
なんだかよくわからないが、このあたりは勝手に二人のやらせたいようにやらせとけ。
健太は貴哉から預かった河豚の餌をポケットから取り出して、いつものように餌を与えようと
桶の中をのぞいた。
「お前、急に太ってきてないか・・・?」
この島の海水と相性がいいのだろうか。たった数日で嘘みたいに桶の中の河豚はブクブク
太ってきている。健太は、快活に笑ってベチと一緒に荷造りをしている貴哉を見た。
「飼い主と比例する河豚・・・。まさかね・・・。」
何度も貴哉と河豚を見比べて、健太はヘラヘラと空笑いでごまかした。
「おーい、健太!早く来いよ!」
今ではこんな掛け声も、すすんで貴哉がするようになっている。
「どぉ〜して、ああなるんだろうか・・・。」
首をかしげかしげ、「はぁーい!」と大きな声をあげて、健太は二人のもとに駆けつけた。

甲斐はあれから一日もあかさずに金本寺にやってきた。横松は手箱を用意して、甲斐が
やってくるのを本堂の廊下でずっと待っていた。
「ほぉ、ご朱印帳での願掛けねぇ。なぁ、ご朱印もいいが、願掛けの絵馬もどうだ。今なら
格安で俺が作成するぜ!」
「森笠さん!」
面白そうに甲斐のご朱印帳を覗き込むのはまだいいが、自分の営業活動まで抜かりなく
行われるのはたまらない。横松はキッと軽く睨んで、シッシッと手で森笠を追い払った。
「おお、コワっ!」
おおげさに森笠はのけぞって、横松の行動を茶化した。
「で、文字を書いたら次はハンコを押して・・・。あっ、筋肉モリモリハンコのほかにも、
いっぱいあるよ。どうせ8枚全部違うハンコを押してみようっ!」
横松は“あのよろし”の文字の上に、両手を上げて走る人間のハンコを押した。
「ここに小さく“グリコ”って書いてある・・・。」
甲斐も奇っ怪なハンコの絵柄に、さすがに当惑気味だった。
20 :01/11/27 23:31 ID:GKiJwzgX
駄スレ立てんな
ヒロシマヲタ氏ね
21オタフクソース:01/11/27 23:36 ID:0HW/SSiu
オタクセー
その手間で球場逝け
22 :01/11/27 23:41 ID:XBwjQRuU
GKiJwzgX
彼は優しくていい人だ。
だって「死ね」と書くところを
やんわりと「氏ね」と書き換える心くばりをしてくれるんだよ。
23 :01/11/27 23:50 ID:GKiJwzgX
>>22
分かったから氏ね
24 :01/11/28 00:43 ID:S65UHrkB
ぐ、グリコ・・・・腹いてぇ・・・・
しかも「あのよろ○」とわ・・・
25広島家の人々173:01/11/28 02:03 ID:eyA3EyQJ
ご朱印をもらった後、すぐに今度は玉木の店での仕事がある。甲斐はあっという間に
とんぼ帰りで鯉城駅に向かって石段を駆け下りていった。
「早く無事に壺振りの建さんと会えるといいね・・・。」
ポツリと呟いて、横松は甲斐の後姿を見送った。金本寺にはもう一人なんとかしなければ
ならない人物がいる。今日こそ横松は、貴浩のことで知憲住職にきっちり抗議するつもりだった。
「お、おい、横松?」
横松の不審な態度に、森笠は一抹の不安を感じて、あわてて本堂の中に駆け上がった。だが
「住職!」
横松は手箱を片付けると、あっという間にその足でスタスタと住職の自室に駆け込んでしまった。
「うわぁ、なんじゃあ!」
いつもの通り、愚痴をこぼしながらこっそり西山堂のドラ焼を食いまくろうとしていた知憲住職は
不意の客人に重箱を隠すタイミングを外し、思いっきり畳の上にドラ焼を全部落としてしまった。
「むぅ・・・。どうも貴浩と違って、お前が相手だとちとやりにくいのぅ・・・。」
「その貴浩さんのことでいいたいことがあるんだよ!」
「お、おい、落ち着けって横松!」
「うるせぇ!森笠さんは黙ってろ!」
横松の言動をとめるため、後ろから押さえつけようとする森笠に思いっきり肘鉄を食らわして、
とうとう横松は、腹にためにためていた言葉を住職に吐き出した。
「住職は、この作務衣を着ていた貴浩さんを、どうしてあんな奥の院なんてところに
閉じ込めるんだよ!住職は緋鯉村の秘密を知っているんだろ!だったら何故、
あんな遠まわしな方法で貴浩さんや広島家の兄弟を危険な目にあわすんだよ!」
「あちゃぁ・・・・・。」
森笠は右手を顔にあてて、ため息をついた。しかし、それ以上に知憲住職が目を点にキョトンと
した表情で横松と森笠を交互に見た。
「ワシャ、お前の言っている意味がさーっぱりわからんが・・・。なんじゃあ、その緋鯉村の
秘密ってのは・・・?」
「ぇぇぇええええええええ!」
今度は森笠がすっとんきょうな大声をあげて、知憲住職につめよった。
「ほ、本当に住職は何も知らないのか?」
「ああ、ワシには何がなにやら・・・。なんじゃ、そんなご大層なものが緋鯉村にはあったのか。」
「う、うそだろ・・・。」
森笠は放心状態でガクッと膝をつく。
「じゃ、じゃあ何故、住職は貴浩さんを奥の院に閉じ込めたの?」
「そりゃあ、貴浩のような甘えた根性の奴は、あのくらいの場所に閉じ込めんと根性がなおらんと
思うたから・・・。ちっ、あやつ、お前に泣き言でもぬかしたんか?あれほど一言もしゃべるなと
いいつけておったに・・・。」
知憲住職は、怒りもあらわにバシッと拳を強く叩いた。
26代打名無し@ス:01/11/28 02:12 ID:eyA3EyQJ
これで貴浩、貴哉の復帰エピソードを同じ土俵上にのせられた。
あとはただひたすら解決のみ。思ったより早く貴哉が広島家に戻って
くれそうなんで、輝裕再登場にもすぐ話がもっていけそうだよ。
ヨカタヨカタ・・・。

>>18
つんつるてんの服が別の意味で似合いそうな気もして、つい・・・(w

>>24
あと6バージョン何が出るか、お楽しみに〜(汗
27 :01/11/28 07:52 ID:19KX+95d
次はグリコかいっっ!
住職&貴浩コンビもいいけど
住職&横松コンビもおもろい。
28_:01/11/28 17:56 ID:7Qgo06JC
保守age
29 :01/11/28 17:59 ID:xw8KZ+1G
>>28
上げんなカス
30 :01/11/28 23:56 ID:oF75mjUl
他球団ファソですがこっそり見てます。
横松のキャラがおもしろすぎて名鑑でチェックしてしまったYO!
31 :01/11/29 00:17 ID:0ge+MVHY
おいらも毎日たのしみっす。
桶の中で成長する河豚ってステキヤン
32(・ ε ・):01/11/29 18:21 ID:Cj96OiXc
あげとこっと
33駅長さんキムタク:01/11/29 19:27 ID:QMRmyVvd
>>32
お前どこに消えたんだYO!!
34広島家の人々174:01/11/29 23:24 ID:TWNROFlm
「・・・じゃが森笠。本当にその緋鯉村の秘密というのは何なんじゃ?」
知憲住職はからかうように急にニンマリと笑った。だが、まだ森笠はショックの状態から抜け出せず、
呆然と座り込んだままである。
「森笠さんの話によると、あの奥の院に緋鯉村のお宝が隠されているかもしれないんだって・・・。」
チラチラッと森笠の様子を心配そうに横目で見ながら、横松が説明した。
「緋鯉村のお宝・・・。う〜ん、それは初耳じゃなぁ・・・。」
うわ〜んと大声をあげて、森笠は突っ伏して泣いた。
「じゃあ、どうして邪毘屋が広島家を緋鯉村を狙ってきたの?そのお宝があるから、緋鯉村は邪毘屋
にひどい目にあわされてきたんじゃなかったの?」
横松もだんだん訳がわからなくなってきた。知憲住職は腕を組んで、何度も首をかしげるばかりである。
「・・・・・・ああ、そういうことか。それでその緋鯉村のお宝を捜させるためにワシが貴浩を奥の院に
閉じ込めた・・・そう思うたんじゃな!」
「う、うん・・・。」
本当に知憲住職は何にも知らないようであった。
「邪毘屋も狙っているお宝に、緋鯉村のお宝をありかを知っているワシが、広島家の兄弟を危険に
あわせてまで何も教えず捜させようとしているか。横松、お前が怒った理由はそういうことじゃな?」
「住職は本当に何にも知らないの?」
「ああ、ワシはなーんも知らんわい。じゃがのぅ・・・。」
知憲住職は横松、森笠とゆっくり見回してうなずいた。
「それが本当に邪毘屋の狙いじゃとしたら、確かに今までのことはつじつまがあっていくのぅ。それに
貴浩にお宝を捜させるか・・・。ええ話じゃないか。よぉし、ワシはその話にノッた!思う存分貴浩を
コキ使って、お宝を捜させるとよい。」
「・・・・・・それって、これからは貴浩さんとは堂々と会っていいってこと?」
「ああ。」
「竜士の親分も連れてって、一緒にお宝捜しを手伝ってもいいってこと?」
「なんじゃ、もう竜士の奴釈放されたんか。ああ、構わんよ。貴浩を手伝って、それで広島家の絆が元に、
強くなるキッカケが生まれるなら万々歳じゃないか。」
「住職!」
つい、うれしさのあまり横松は飛びつくように知憲住職に抱きついた。
グチャッ
またもや不意の攻撃で住職はうまく受けとめることができずに倒れ、住職の法衣の下でいくつもの
西山堂のドラ焼がつぶれた。
35代打名無し@ス:01/11/29 23:45 ID:TWNROFlm
一日ご無沙汰しやした。今日はなんとか貴哉が広島家に帰るところまで
書けたら・・・目標。

>>27
貴浩とは違った形になってきやしたね。住職&横松コンビ。
ドラフトで決まった頃、横松の顔が金本に似ているとウヒョスレで
いわれていたのをネタに、貴浩の後釜にこんな感じで組ませてみやしたが
まさか、こんな形になっていくとは・・・(^^;

>>30
ちょと今「広島家」の中で独走中かもしれないっすね、横松(汗
ここまでおいしい役になるとは思わんかったよ。コスモスリーグで見た限り
まだ野球選手というより普通の初々しい大学1年生っぽい雰囲気が漂っていた
横松親分でしたが(それは甲斐たんも一緒)、来年からどう変わっていくか、
早く1軍でプレイを見れるぐらい成長してくれたら・・・と楽しみにしていやす。

>>31
ありがとう。なにげに河豚もいい役どころだったかもしれんすね(^^;

>>32-33
再登場まであともう少し待ってけれ。
36  :01/11/29 23:55 ID:GK3H23CL
乙カレーでございます。

西山のどら焼き・・・フカヨミしてしまったよ
37広島家の人々175:01/11/30 03:54 ID:P2GaEdqw
「どうだ、コツは完全につかんだか?」
木の幹に向かって、貴哉がコントロールを確認するように何本もナイフを投げつけている。
後ろで様子を見ていたベチは、頃を見計らって明るく声をかけた。
「うん、これならもう全然イケるよ。」
貴哉はスッキリした笑顔でクルッとベチの方へ振り向いた。
「左利きでやってのける奴はなかなかいないからな。重宝してるよ。」
ベチはニヤッと笑ってポケットから巾着袋を取り出すと、ポンと貴哉に投げつけた。
「ほらよっ、これは昨日のウチの稼ぎ分!」
「ありがとう。」
貴哉は片手で受け取ると、当たり前に無造作にそれをポケットに入れた。
ふふんと鼻で笑いながら、ベチは貴哉のその仕草を見ている。
「ナイフの技もだけど、お前も変わったな。ここに来て答えが見つかったか?全然顔つきが違う。」
一瞬えっと驚いた表情を貴哉は見せたが、すぐにはにかんだ笑顔に変わった。
「うん。なんとなく・・・。」
「そうか。」
ベチはニコッと笑った。
「でもさぁ、本当はこんなん俺じゃなくて、お前の兄ちゃんたちがやってやることだぜ。といっても
広島家がそんな状態じゃなかったことは、うすうす俺も知っていけどさぁ。」
「うん・・・。兄さんたちもみんないっぱいいっぱいの状態だったから・・・。」
「っていって、ウチが全部ためこんでしまう。それに兄弟たちが無意識に甘えてしまう。それが
昔っからの広島家の兄弟の構図さ。久しぶりにあの夏祭りで再会した時も全然変わっていない。
それどころかもっとひどい状態になって、俺に会ったときのウチなんてもう態度で悲鳴あげてんの。
助けてくれ〜、助けてくれ〜ってさぁ。」
そういうと、ベチはその時の貴哉の真似をしてクスクスと笑った。貴哉はちょっと顔を赤らめて、
ぷいっと横を向いたが、すぐにうつむいて、またはにかむように笑った。
「ここに来てから、はじめてじっくりと考えたことがあるんだ。」
「へぇ、何を?」
「兄弟のこと。一体、兄弟って何なんだろうって・・・。」
「自分の居場所がそこにあるのか、自分は兄弟の中で役に立っているのか、それに汲々する
ばかりで肝心の自分自身を殺していた・・・それが今までのボクだった。それが当たり前だと
思っていた。だけど、それに我慢できなくなっていた自分がいたことを指摘したのが、広池さんの
言葉だった。」
「・・・・・・。ウチがなぜ広池さんに惹かれていったのか、理由がわかっただろう・・・。」
「うん。あの時の自分の本音はもう兄弟たちから逃げたかったんだって。そして広池さんの姿に
自分の求めていた道が示されていると思ったんだ。だからずっと広池さんを追い求めていた・・・。」
貴哉は一句一句確認するように言葉を選んで、自分の気持ちをつづっていった。
38代打名無し@ス:01/11/30 04:01 ID:P2GaEdqw
ま〜た滅茶苦茶やらしいところでタイムオーバー(鬱
スンマソン、金曜の夜は用事であぷはまず無理そうでして、早くて続きは
土曜午後になってしまうかと思いやす。12月突入か・・・ググゥ(泣

>>36
いや、単なるギャグシーンなのでございやす(汗 西山本人も
最終回あたりで何とか登場させたいですがね。例の台詞とともに(w
39 :01/11/30 08:00 ID:VyAVFXZi
なーんか、ベチ大人っすね。
カコ(・∀・)イイ!
これは女性ファンが多いはずだ(w
40  :01/11/30 13:59 ID:CeiWkDGr
本物のベチは結構天然じゃあなかろうか・・・と疑ってますが(w
41・):01/12/01 02:46 ID:KhpqgRy3
心配なので上げ
42代打名無し:01/12/01 10:02 ID:+QaWhSUu
>>41
まだ隠れてんのかYO!
メール欄の微妙なあげ方にワラタ
43代打名無し:01/12/02 04:12 ID:INLGXGZU
age
44代打名無し@ス:01/12/02 22:58 ID:zh4aWscr
ちょと今、体調を崩してまして今日も続きを書く気力体力まで
残っておらず(鬱
早くて再開は明日になりそうっす。スマンソン、も少し待ってください・・・。
45 ε ;):01/12/03 01:20 ID:ilVcyx6v
無理せんといてぇ〜広島家の行く末より助さんの行く末が心配っすよ
46代打名無し:01/12/03 06:18 ID:q1fRnSeY
>>44
今日は本スレにへんなのが来てたから丁度良かったかも
47代打名無し:01/12/03 12:38 ID:9KCuNxx4
>助清さん
無理せず休んでください〜。
こちらはマターリ待ってますので。
48代打名無し:01/12/03 16:57 ID:cMZJLzYq
|`_ゝ´| 河豚でも食べて元気出して・・・>助サン
49代打名無し:01/12/04 00:05 ID:g/yfM1ne
(♥ ε ♥)「さるべーじだよ」
50代打名無し:01/12/04 07:29 ID:YuclqjOh
age
51代打名無し:01/12/04 14:58 ID:9itS8Ifz
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
現在ロゴ議論の投票が行われています。
後々になって「知らなかった」「きいてないぞ」「俺の意見もききいれろ」
など、もめないためにも、野球板の方はふるって御参加下さい。
投票したい案が無い場合、ちゃんと自分で案を追加することもできます。

http://isweb32.infoseek.co.jp/sports/yakyu2ch/cgi-bin/tvote/tvote.cgi?event=yakyu&show=10

議論スレ
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/base/1007046399/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★                
52代打名無し:01/12/04 23:56 ID:lnjdkGio
ドキドキしながらage
53代打名無し:01/12/05 17:16 ID:1hzc3VQN
おし、じゃあそろそろあげ
54広島家の人々176:01/12/05 23:33 ID:NoJfE0Qj
「でも、いざ広池さんから養子の話を持ちかけられた時、気づいたんだ。それじゃあ同じこと
なんだって。結局何も変わらないんだって。相手がボクの兄弟から広池さんに変わっただけで、
ボク自身はそのまんま・・・。だから・・・今のままの自分じゃ広池さんのところへは行けなかった。
そしてもう、兄弟を待つこともできなかった・・・。」
「・・・・・・。」
「・・・ベチ、ありがとう。ベチのいう通り、やっと自分の欲しかった答えが見つかったような気がする。
今なら、自信を持って広島家に帰れそうな気がする。」
「・・・出たな、その言葉。」
ベチは満面の笑みで貴哉の肩をポンと叩いた。
「ウチが求めていたのは、それだよ。それを確かめる機会がなくて、兄弟たちの中にどんどん
埋もれていった。自分で自分がわからなくなっていった。だろう?自信っていう自立のチャンス。」
コクッとうなずいてから、貴哉はニッコリと笑った。
「だと思う。何か自分がやったって手ごたえが欲しかった。だからベチのことがうらやましかったんだ。
あの夏祭りのとき、何もできない自分が歯がゆくてしょうがなかったんだ。」
「で、どうするんだよ、これから。広島家に帰るか?それとも広池さんのところへ・・・。」
貴哉の表情から笑顔が消えた。そしてベチから顔をそらすようにして身体の向きを変える。
そこからは青い海が見渡すかぎり遠くまで広がって目にうつった。
「・・・・・広島家に帰るよ。ボクの帰るところはやっぱり広島家なんだって、兄弟たちみんなが
いて、ボクがいる。そう実感できるようになったから。広池さんのことは・・・。」
「広池さんのことは?」
「帰ってから、また考える!」
海を見つめながら、あっけらかんと答える貴哉に、ベチは半分力が抜けた。
「ウチ・・・。それって随分と広池さんって人に甘えていないか?」
「大丈夫だよ。広池さんはやさしいから、きっとわかってくれるよ!」
自信をつけさせすぎたかもしれない。よくもまぁこれだけずうずうしい言葉をいえるもんだ。
ベチは呆れ顔で、天真爛漫に笑ってまたナイフ投げの練習に戻ろうとする貴哉を見ていた。
しかし、あともう一歩成長するための扉を開ける手助けをしただけで、こうも貴哉は変わった。
そしていつでも見守ってくれる兄弟家族がいる。広池のような存在の人も現れる。
「俺の方が、お前のことがうらやましいけどな・・・。」
少しさびしそうな表情で、ベチはポツリと呟いた。
「ま、弟分ができただけ俺も随分とマシになったけどなぁ。」
そういえば、その弟分の健太の姿がさっきからまったく見えない。食料を探しに出かけたとしても
少し帰りが遅すぎる。
「まさか・・・。この島の元締めに・・・!」
その嫌な予感があたったらしい。泣きそうな声でベチを呼ぶ健太の声が、つんざくようにしてベチと
貴哉の耳に入ってきた。
55代打名無し@ス:01/12/05 23:41 ID:NoJfE0Qj
体調不良でしばらくご無沙汰しました。やっと身体の方もなおってきたんで
今日から続きをば再開を。
ぁあ、でもやりにくいところで中断してしもたわぃ。よりによって貴哉の
心理描写のところからか。ふぇ〜ん、緋鯉村の謎の部分のが書きやすかったよ。

>>39
ベチはですね、この話の設定で思ったより大人びた奴にしているんすよ。実際は
>>40のいう通り、結構天然入っているような気がする。で、欲求不満になった
ところを「ベッチレラ」で解消していたんすが(w

>(・ ε ・)
もう少しで再登場するからね。(・ ε ・)もある意味、[・ ε ・]と同じように
行き着くところまで行ってしまうかもしれやせんが・・・。

>>45-48
ありがとうございやす。お言葉に甘えて休ませてもらいやした。
河豚が・・・いいなぁ。山口行きたい病が再発しそうだ(w
56代打名無し:01/12/06 00:22 ID:qmk4HXBj
>>55
ああ〜〜!!ご無事で!!(感涙
無理せんでくださいね。

元締め誰だ。ツーかうち・・・開き直りすぎだよ(w
57広島家の人々177:01/12/06 02:10 ID:sz8BVmDR
「あちゃあ・・・。とうとうやっちゃったか・・・。」
ベチは顔をしかめて、元締めの男に後ろ手に縛られて捕まっている健太の姿を見つめた。
相手の男は愛玩物のように健太の髪を引っ張ったり、肌をつねったりして反応を楽しみながら
ベチと貴哉を威圧するように目を細めて笑う。
「ベチ、あんな奴早く倒して、健太を取り戻そう!」
「いや、そういいたいところなんだが、今回ばかりはあちらさんが正論で・・・。」
「えっ?」
「ほぅ、それがわかっているなら何故最初からそうしなかった。」
男はニヤリと笑いながら、軽く舌なめずりをする。その度、ぬいぐるみのようにあちこちを
つねられたり、叩かれたりする健太から小さな悲鳴があがった。
「そりゃ、金がなかったからです。キヨさん、今回ばかりは見逃してもらえないっすか。
二度とこの島には来ない。キヨさんのシマは荒らしませんから。」
「ベチ!」
土下座して許しを請うベチに貴哉は訳がわからず、いらだち半分にベチの肩をゆすった。
「ウチはまだ何もしらないんだよ。流れで商売するにしてもな、必ず最初にその土地の元締めに
ショバ代を払わなくてはいけない。俺と健太、それをやってないんだ。」
「・・・・・・ベチ。」
呆然とベチを見下ろしていた貴哉は、キッと相手の清原を睨みつけた。
「なんや。まだ一人、つんつるてんの奴だけ納得がいってないようやな。
お前、名前はなんていうんや。」
「広島貴哉です。」
「ちょ・・・ちょちょちょちょい待ちぃ、ウチ!」
あわててベチは貴哉の暴走をとめようとした。どこかうじうじしていて突破口をつかめない
貴哉の手助けはした。だが無鉄砲な暴走人間にまで変えさせるつもりはなかった。
ここに生来のお坊ちゃん気質まで加わると、どこまで無謀になってしまうのか、ベチは
背筋がぞぉーっと寒くなっていった。健太も目を点にして二人の様子を見ている。
「ふ〜む、広島貴哉・・・。広島・・・広島・・・お前、緋鯉村の広島家の人間か?」
ベチや健太の不安は杞憂に終わったらしい。清原が広島家のことを知っていた。
貴哉は無言でうなずく。
「なんや、最近やけにその広島家ってところに縁があるなぁ。ついこの間も邪毘屋の賭場で
広島竜士って奴と喧嘩をやらかしたところや。」
「竜士兄さんが?」
「ああ。それであいつはサツにしょっぴかれていったで。あれはお前の兄ちゃんか?まぁ、
兄といい弟といい、ええ度胸しとるやないか。」
清原は貴哉のつんつるてんの服装を下から上へ見まわし、腹を抱えてケラケラと笑った。
58代打名無し@ス:01/12/06 02:13 ID:sz8BVmDR
久しぶりに書くんで、まだ感覚が戻っていない。
貴哉編は179で終わる予定。その後、緋鯉村の謎解き、
おおっぴらに貴浩登場、ご朱印の続きをやりながら、
輝裕再登場が入るかもです。
それと森笠と竜士の立場が、この辺でそろそろ逆転しやす(w
59代打名無し@ス:01/12/06 02:16 ID:sz8BVmDR
>>56
いえいえ、そんな大したことではないですから。
早くストーリーの方も調子を取り戻して、ラストまで
持っていけるよう、身体を壊さない程度にがんがりやす!
60代打名無し:01/12/06 02:18 ID:ldF/xFHy
た・・・タイムリーが少なめ
か・・・空振りが多め
は・・・ハイボールヒッター
し・・・しょうもない時に打つ
61代打名無し:01/12/06 12:48 ID:XGA/EXuc
おぉ、話が進んでるぞ、嬉しい!
貴哉突っ走ってるな。キヨに向かっていくとは。
頼りなさげな貴哉の変身、ハラハラしつつ見守ってます。現実とかぶるなぁ。 >>60
ワラタ
関係ないが放置できんかった。
62代打名無し:01/12/07 00:09 ID:Rz3h8BnC
一旦あげとくっすよ。もうそろそろ178書けそうっすが(;´Д`)
はぁ、ここで苦しむたぁ思わんかった。設定をあいまいにしたツケがもろ・・・(涙

>>61
来年こそ脱皮してもらいたいんよ、河内には!という願望もこめての
ストーリーだったが、ホンマ変わってくれるんだろか。不安もイパーイだよ。
63広島家の人々178:01/12/07 01:08 ID:Rz3h8BnC
「よっしゃ、広島家の兄弟の勇気に免じて今回だけはチャラにしたるわ。ただし・・・」
清原は、ひょいっと前で小さく丸まっていた健太を肩に担ぎ上げた。
「こいつは詫び代としてもらってくで!」
「ぇええ!」
あわててベチは立ち上がって、清原のもとに駆け寄った。健太はバタバタ暴れてなんとか
清原の腕から逃れようとするが、相手にまったく通じない。
目の前で繰り広げられているドタバタの中で、貴哉は急にあるデジャブーに襲われた。
「・・・・・・これって、どっかで見たことがある・・・。」
そうだ、知憲住職が貴浩を広島家から寺へ連れ去っていこうとした時が、ちょうどこんな
感じだった。よく見れば、この清原も知憲住職と同じタイプの人間だ。じゃあ清原の
目論見は・・・!
「おい、広島家のつんつるてんは、こいつがどうなっても別にええんか?」
からかうような声で清原が貴哉に声をかけた。やっぱり目的は広島家の人間である
自分だ。もうベチのことやショバ代にはこだわっていない。自分が広島家の人間であると
知って、ガラリと清原は態度を変えた。竜士と何があったか知らないが、邪毘屋の賭場
でといったあたりから邪毘屋つながりか、それとも・・・。
「どうしたら健太を返してもらえますか?」
清原はニンマリと笑った。
「お前の力で取り返したらええやないか。そうやな、その左手で持っているナイフで、
こいつを助けるっつうのはどうや。」
ベチにも、だいたい事情がわかってきたようだ。貴哉のもとにササッと駆け戻ると、
邪毘屋がらみか?とヒソヒソ声で語りかけた。
「ううん。最初はそうかなと思ったけど、邪毘屋が絡むならもっと手っ取り早い方法が
あるはず。あれはボクを試そうとしている。竜士兄さんと何があったか知らないけど、
目的は広島家の人間であるボク。そして裏でつながっているのは、もしかして・・・」
「・・・知憲住職!」
「ベチもそう思ったなら、まずそれで間違いないと思う。じゃないと、あの人の態度は
さっぱりわからないよ。」
清原は健太を抱えたまま、道沿いの畑にはいってボケ気味のスイカを引っこ抜くと
広場のすみの大木まで悠然と歩いて、幹に背中をつけて健太を立たせ、頭にスイカを
のせた。
「ウィリアムテルちゃんのように、りんごっつうわけにはいかんかったが、まあええわ!
スイカもなかなか味があるで〜。」
ペシペシ健太の頭の上のスイカを叩いてご満悦の清原に、脱力感とともに怒りもまじって、
ベチは大きなため息をついた。
「どっか狂っている・・・。」
64広島家の人々179:01/12/07 02:46 ID:Rz3h8BnC
だが、いつも知憲住職の茶目っ気たっぷりのおふざけに慣れている貴哉は、
かえって冷静になり、的であるスイカに意識を集中できるようになった。
「これでスイカにナイフが当たれば、健太は解放してくれるっていうことですよね。」
「そうや。ただし1回こっきりの勝負や。一度でも的から外したら、こいつはワイが
もらっていく。どや、お前の兄ちゃんと同じ一世一代の博打の大勝負や!」
そうしてケラケラと清原は笑った。貴哉は何度もナイフを持つ手の握りを確認した。
すっかり覚悟を決めて、貴哉は勝負をする気でいる。
これが本当に知憲住職つながりでの出来事だとしたら、なんて無茶なことをさせる
のだろう。自分が貴哉の自立のためにやったこととは天と地ほどの違いである。
衰退していく緋鯉村のためか?そして緋鯉村での広島家の立場を考えたとき、
おのずと本来の貴哉の役割は決まってくる。ベチは今になってハッと気がついた。
貴哉が広池のところに行く選択肢はもともとなかった。
「・・・そういうことか。」
自分や健太まで巻き込んで、知憲住職は広島家の兄弟のために何かたくらんで
いる。そのキーワードはただ一つ。
「ウチ、いつも通りにやれば何の問題もないから。ただ的に当てることだけ考えれば
ちゃんと成功する!」
貴哉はコクンとうなずいていった。
「健太はちゃんとベチのところへ返すから。それと・・・」
「ん?」
「的にナイフが当たったと同時にボクが健太を連れ出すから、ベチは荷物を持って
海岸に逃げてって。」
「海岸・・・海岸ってあそこか?」
「うん・・・。」
貴哉はナイフを構えた。ベチはじりじりと後ろに下がっていった。健太は青ざめた
表情でじっと貴哉を見つめる。その時、ナイフが弧を描いてスイカに突き刺さった。
と思った瞬間だった。貴哉がダッシュで健太のもとに駆けより、健太の腕を掴んで
海岸の方へ駆け出していった。それより前にすでにベチは荷物を持って、先に
海岸に向かっている。
「あっ、待って!河豚が!!」
その場に置いてかれそうになった桶の河豚をあわてて健太は両手で掴み、激しく
飛び散る水しぶきにも一切構わず、海岸に向かって懸命に走っていった。
貴哉は一回だけ後ろを振り向いた。清原は腕組みをしてニヤリと悠然と笑っていた。
65広島家の人々180:01/12/07 03:34 ID:Rz3h8BnC
海岸に向かう途中の空き地で、ベチは荷物をおろして貴哉と健太を待っていた。
「あっ、ベチの兄貴!」
桶を持った健太がベチの姿に気づき、その後ろを走っていた貴哉に目で合図を送った。
「ふうっ、これで一旦は危険が去ったな・・・。」
2人の無事な姿を確かめて、ホッとベチはひと息ついた。
「ところでウチ、さっきのキヨさんのあれはやっぱり知憲住職に関係があると考えて
いいのか?」
「・・・・多分。俺たちが逃げていった時も笑って見ていたよ。」
「・・・・そうか。じゃあ俺や健太というより、やっぱり目的は広島家のお前だったと
いうことか。」
「・・・・・うん。」
貴哉は下にうつむいた。さっきの清原の笑顔が気になる。結局あれは単なる茶番劇
だったのではないか。自分たちはあの場でいいようにからかわれ、弄ばされただけ
ではないだろうか。
貴哉の表情からベチがすぐに事情を察して、声をかけようと貴哉に手を伸ばした。
その時
「うわぁぁ、河豚がぁ〜!」
びっくり仰天した健太の声が、その場の空気をあっという間に壊した。反射的に貴哉は
桶の河豚のもとに駆け寄った。
「ほらぁ、ウチさん。河豚がこんなに大きく太っているよ。これならもう食べられる
大きさにまでなっているよ!」
健太は笑顔で桶ごと河豚を貴哉に差し出した。貴哉は河豚をつまみ上げた。河豚は
重そうな身体をけだるそうにビチビチッと揺らした。
「・・・・・・。」
「良かったじゃないか。河豚がお前を一人前と認めたんだってさ。」
ベチが明るく貴哉の背中を叩いた。
「・・・・・・。」
「これで自信もって広島家に帰れるね、ウチさん。」
貴哉はまだ、なんといえばいいか良い言葉が見つからなかった。
「さっきは健太を助けてくれて本当にありがとう。どんな形であれ、お前がああして
くれなかったら、健太はここにいなかったよ。」
河豚を持つ貴哉の身体がだんだんと震えていった。
「・・・・・本当にいいのかな、これで・・・。」
「いいんだよ、これで。最初から完璧を求める必要もないだろう?」
ベチの言葉に、貴哉は噛みしめるようにコクリとうなずいた。
66広島家の人々181:01/12/07 04:02 ID:Rz3h8BnC
島の港で一人、貴哉は緋鯉村に向かう船を待っている。
ベチたちと別れ、桶の河豚と一緒になつかしい広島家に帰ろうとしている。
穏やかな目で貴哉は桶の中をゆっくりと泳ぐ河豚をいとおしそうに見た。
「これで・・・いいんだよね。」
河豚を見ているだけで貴哉は幸せな気分になれた。
船はいつまで経ってもやってこない。港の岸壁に座って半日ほど経っただろうか。
さすがに貴哉もこの状態が不安になってきた。今日は定期便が来る予定はまったく
ないのだろうか。
「お客さん、どこへ行くつもりなんですか?」
顔に特徴的なほくろをもった一人の船頭が、小船を操り、港の貴哉のもとに近づいてきた。
「本土の緋鯉村までです。」
「本土の緋鯉村・・・。ああ、あそこですか。ならば私の船でも充分いけますよ。
もしお急ぎならば、乗っていきませんか?」
たまにぎこちない船頭の櫂の操り方に若干不安を覚えたが、こうなったら一刻も早く
広島家に帰りたい。貴哉は二つ返事で船頭の船に乗り込んだ。
船はあっという間に島を離れ、沖に出た。少し波も荒くなっている。貴哉は河豚が桶から
こぼれ落ちないように大切に抱え込んでいた。
「お客さん、それは河豚ですか?」
興味しんしんに船頭が桶の中の河豚をのぞきこもうとする。
「船頭さん、それよりも櫂をしっかり見てください!」
あわてて貴哉は、櫂を持つ手がおろそかになった船頭を注意する。だが遅かった。
「うわぁ!」
ポロッと船頭は櫂を落とした。あっという間に海の下へと櫂が沈んでいく。
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
他に船を誘導するものは何もなかった。貴哉と船頭を乗せた小船は、そのままポツンと
瀬戸内の沖の上に漂っていた。
67代打名無し@ス:01/12/07 04:06 ID:Rz3h8BnC
貴哉編終了。思った以上に長くなってしまった・・・(鬱
ちょとダラダラしているような気もするんで、過去ログに入れるときは
もう少しコンパクトにカットする部分がでるかもしれません。
これで200超えが確実になった訳だ(泣
次回から緋鯉村の謎(貴浩)編っす。
68代打名無し:01/12/07 10:13 ID:y3PCqGWS
ってスイカ?!!頭に乗るのか(w

そして誰だーこの船頭!!
69代打名無し:01/12/07 16:37 ID:qlZ2aTlC
流石は名パスボーラー(ですよね?)
ウチはどうなってしまうんダー
70代打名無し:01/12/07 17:37 ID:1+ciFyy7
すごいな「顔に特徴的なほくろのある船頭」は!
お約束にハゲシクワラタ
貴哉も何かつかみかけてきたみたいだし、緋鯉村の秘密も判明!?
うむ、エンディング近しですな。
助清さんがんがってください。
71代打名無し:01/12/07 21:26 ID:as8dVuH+
ヽ(‘。。’)ノ ageまーす
72ヽ(‘。。’)ノ  :01/12/07 21:28 ID:as8dVuH+
ごめんなさい誤爆でした・・・しかもageてないし。ほんとすみません。
謝りつつ、チュニチファソですがこのスレ好きです。ご朱印萌え〜住職萌え〜!
作者さんがんばってください!
73代打名無し:01/12/08 00:03 ID:NLgHpg2h
(・ ε ・)「あげ」
74代打名無し:01/12/08 01:19 ID:qgNb5n8o
>73
てもらってたな、微妙に〈w
75代打名無し:01/12/08 18:15 ID:K03vIfld
age
76代打名無し:01/12/08 18:20 ID:ZES2jsXn
今やっているのは江夏の例の21球の日本シリーズ?
77代打名無し@ス:01/12/09 02:32 ID:VmNhv/zu
ダメだ。がんがって見たけど今日も規定の量まで書けそうにない(泣
1001ショックがここまで尾を引くとは・・・。まだ気分が元チュニチファソを
引きずって、なかなかかぷ一筋に戻れないよ・・・。チュニチファソ時代は3年
くらいであとはずーっとかぷファソ。身も心もかぷファソだと思っていたのに
まさかこうなるとは。与田引退よりショックを受けてる。
1001がおらをプロ野球にはまらせたキッカケの人だからのぅ。チュニチだったら
平気でバカアホなんつー不甲斐ない戦い方しとんのや!っていえるけど、阪神って・・・。
阪神も好きだからすごく複雑な気分です。賭けに出てませんか?阪神。
これで失敗したら1001だけでなく、阪神の球団イメージ最悪になるよ。
仰木さんの方が無難なような気もするんですが・・・(涙

あぅ、これで起きたら開き直って続き書けるようにしますだ。立ち直ったと
思ってもまだショックを受けてる。今日はスンマセン。レスのみということで・・・。

>>68
露地で栽培しているスイカを見ると大きいのもあれば小さいのもあるんすよ(w
「小ぶりの」スイカと書くべきだったすね。

>>69
その通りでございやす(w
瀬戸の役柄は随分はじめの頃に決まっていやした。これだけの役で(w

>>70
緋鯉村の秘密は非常にささいなところから判明しやす。もっというならば
もうとっくにネタバレしているんすよ。

>>72
チュニチも大変ですな。がんがってください。
( ´昌`) ( ・w・) ъ( ゚ー´ ) 応援スレも
ヽ[^_^]人[ー。ー]人[…ε…]ノ応援スレも
どっちもファソです(w

>>73-74
来年こそ大幅あぷを勝ち取れるような成績を残してくれ〜

>>76
スカパー入りてぇ。江夏の21球のはNHK特集のビデオ持っていやす。
迫力が違うっすよ、もう!
78代打名無し:01/12/09 19:21 ID:irslZv01
>>77
ガンバレー。
79代打名無し:01/12/09 22:38 ID:amDHI+SJ
落ち着き戻りましたかい?>助清さん
ずっとカプファソの自分でもかなり衝撃だったから
そりゃあ気になってしまうでしょう…。
1001氏の決断を見守ろう。
80広島家の人々182:01/12/10 00:46 ID:HuCJ3/sb
「徴兵詐欺の疑いで、邪毘屋に家宅捜査・・・。徴兵詐欺、徴兵詐欺、ん、徴兵詐欺?
ちょっ、ちょと小山田さん!徴兵詐欺っていったらこれ、かなりのスクープじゃないっすか!」
某新聞社の編集室のソファ。新人記者の広瀬は、ライバル新聞社の一面記事の内容に
ガタンと勢いよく立ち上がって奇声をあげた。少し離れた机の上では、広瀬の先輩にあたる
小山田があぐらをかいて、苦虫をつぶした顔でタバコを灰皿に叩きつぶす。
「くそっ、またウチは乗り遅れたか・・・。ちっ、上層部がいつまでたってもチンタラやっているから、
まーたやられたわ。もうやってらんねぇよ。これでまた向こうに大きく購買部数に差をつけられて
バカにされるんだからな。」
「んなこといって、小山田さんが突撃取材を強行してわき腹痛めて帰ってきたのは、ついこの間
のことじゃないっすか。」
「そういうお前だって、久しぶりのわが社の大型新人だと期待して呼びいれてみれば、
半年も経たず大怪我をして、2ヶ月の休暇を余儀なくされたのはいつだった。」
「・・・・・・はい。」
広瀬はガタイのいい身体をしゅんと小さく縮こませた。
「ま、どうせウチは二流、三流のしがない零細新聞社ですよ。すずめの涙の給料、ボロボロの
社屋、給料アップ目指してガムシャラに取材にいそしめば、少ない取材費のあおりで怪我っつー
お荷物を熨斗をつけて送りかえされる。」
自嘲気味に小山田はぼやいた。
「ウチが倒産か合併吸収されるのも時間の問題ですかね・・・。」
「そういわれてもう何年も、結局は続いているけどな。」
小山田とて、今のジリ貧の状態を改善できるなら何とかしたい。ため息をついて、タバコに
もう一度マッチをつける手にも、そんな焦りが垣間見えた。広瀬はソファの上に置かれた
ライバル社の新聞に改めて目を通した。
「・・・・・・小山田さん!」
「ん?」
「見方を変えてみましょうよ。ネタはありますよ。ここに・・・。とんでもないものが・・・!」
だんだん広瀬の声は興奮して、編集室に響き渡るほどドでかくなっていった。

すっかりこれは午前中のお約束になってしまったかもしれない。朝の勤行を終えて、奥の院の
貴浩に食事を持っていってから、横松はすぐに手箱を取りに行き、本堂の廊下の階段に座って
甲斐がやって来るのをじっと待っていた。
今日でご朱印も4日目である。昨日は鯉のハンコに“酒は飲んでも飲まれるなっ!”と書き込んだ。
「何か教訓みたいでいいね。」
その日は甲斐も納得した表情でご朱印を書く横松の手を見ていた。
「早くお父さんと会えるように昇り鯉〜!」
わざと鯉のハンコを押す方向を横松は変えた。甲斐はクスクス笑っていた。そして今日である。
「まだどんなハンコが残っているかな?」
横松は手箱を開けて中身を確認した。
81広島家の人々183:01/12/10 01:44 ID:HuCJ3/sb
まだ森笠は落ち込んでいた。あれほど自信を持って自分や竜士に語った緋鯉村の地形の謎は
単なるハッタリだったのだろうか。でも緋鯉村の謎に森笠が自分の将来を賭けていたのは確か
である。それと緋鯉村の謎を話すと広島家の兄弟に危険がせまる。これも緋鯉村の謎がハッタ
リだったら、意味がなくなるのだろうか。森笠も邪毘屋も実体のないものに狂奔していただけと
いうことか。
「竜士の親分、あれから一度も金本寺に来てくれない・・・。」
兄の博樹に話してなんの問題も起きずに済んだのか。貴浩に何か励ましの言葉をかけたくても
こうも事情がわからなければどうしようもない。甲斐のご朱印が済んだら、広島家に訪ねにいこう
横松はそう決心した。

「そりゃ、いいだしっぺは自分だが・・・。」
灼然としないものが残りながらも、広瀬は鯉城駅行きの切符を買った。切符代は全部自腹である。
今月の生活費どうしよう・・・。広瀬は暗澹たる気持ちに襲われた。後ろにいた少年が続いて切符
を買う。
「鯉城駅まで切符をください!」
天のめぐみだ・・・!広瀬はそれを聞き逃さなかった。
「キミっ、これから緋鯉村に出かけるのかい?」
ガバッとすがるように両腕を掴んで、興奮した声で質問してきた広瀬に、甲斐は呆然と目を丸くして
広瀬の顔を見た。

「うわぁ、なんだあの人!!」
あわてて横松は階段を駆け上がって、廊下の欄干から恐る恐る甲斐と一緒にやってきた男を見た。
ガタイのいい体格と、見事としかいいようのないもみあげ。
「なんだか怖いよ、あの人・・・。」
知憲住職とさんざん渡り合っていても、ああいうタイプは今まで見たことがない。甲斐が横松の姿に
気がついて手をあげた。横松はまだ少しビクビク震えていた。
「広瀬さんが緋鯉村の謎について聞きたいことがあるんだってよ!」
緋鯉村の謎!横松の耳がピクッと上がった。

「森笠さん、森笠さん、森笠さ〜〜〜ん!」
バタバタと大きな音を立てて、横松は客間にすべり込んだ。
「はぁ?」
気のない返事で、森笠はボーッと客間の畳の上に座り込んだままだった。
「緋鯉村の謎について、どっかの新聞社の人が取材に来ているんだよ。あれは森笠さんじゃないと
うまく説明できないよ!」
「はぁ・・・。」
しかし森笠は力なくため息のような声を出して、下にうつむくだけである。横松はイライラしてくる気持ち
を抑えきれず、思いっきり飛び蹴りして森笠をはっ倒すと、そのまま本堂の廊下まで引きずっていった。
「広瀬さ〜ん、緋鯉村の謎をよく知っている人はこの人だよ〜!」
横松が声をかけた広瀬の後方に、竜士の姿がうつった。竜士は不敵な笑いを浮かべて、横松たちを
見ている。
「竜士の親分!」
はぁ・・・。ぼんやりと森笠も顔をあげた。
82広島家の人々184:01/12/10 02:47 ID:HuCJ3/sb
「なんだ森笠、えらく意気消沈しているじゃねぇか。お前でもそんなことがあるんだな。」
フンと森笠は顔を横にそむけた。竜士の横では子犬のシマが元気よくじゃれている。
「竜士の親分、知憲住職がこれからは堂々と貴浩さんと会ってもいいって。それで一緒に緋鯉村の謎
を解明すればいいっていっていたよ。」
「ホントか?それはよかった。じゃあ早速これを食わせられるな。」
竜士は片手で持っていた風呂敷の包みを横松の前に差し出して、厨はどこかと尋ねた。森笠は元の
ようにまた元気なくうなだれる。さすがに竜士は気になって足をとめた。
「一体どうしたってんだよ。お前らしくもない。」
「ふん。落ち込むってもんだよ。緋鯉村の謎の手がかりがまったく消えてなくなっちまったんだからな。」
「は?」
一瞬竜士は目が点になり、それから大声でケラケラと笑った。ムカッと森笠は立ち上がって、竜士に
つっかかろうとした。だがなんなく竜士にかわされる。
「どうして手がかりがなくなったなんてことになるんだ。手がかりは大ありにあるぜ。間違いない!
間違いなく貴浩が閉じこまれているあそこに緋鯉村の何かが埋まっている!」
「んなこといったって、この寺の知憲住職が何も知らないっていってるんだぜ。それをどうやって・・・
あ・・・ぁぁああああああああ!!」
森笠は竜士の襟首を掴んでガクガク揺らした。
「お前たち、広島家の兄弟で緋鯉村の謎が解けたってことか!そうか?そうだろう!あともう一つ
緋鯉村を知る手がかりといえば、お前たち広島家しか考えられない!」
竜士はニヤニヤ笑って、うなずいた。森笠の表情が感動のあまりパカッと笑顔で口が開いたまま
固まっている。
「広島家の用心棒の前田さんのところに代々広島家に伝わる古文書があってな。虫食いで読み
にくい文書を佐々岡の爺が必死に修復して解読してくれたよ。」
「やったぁあああああああ!」
飛び上がって森笠は金本寺の境内を駈けずりまわった。
「あの・・・。じゃあやっぱり邪毘屋の狙いはその緋鯉村に埋められた何かと考えていいんですか?」
こちらも感動しながら竜士と森笠の会話をメモしていた広瀬が、一気に結論を尋ねてきた。
「あ、この人はどっか知らない新聞社の記者だよ、竜士の親分。」
知らない新聞社といわれて広瀬は少し落ち込んだが、おまんまの手当てのためだとすぐに頭を切り
替えた。
「どうして新聞社の人がそれを?」
だが唐突な広瀬の存在に竜士はとまどいを隠せない。広瀬もやっと合点がいった。
「もしかして、まだこの村には徴兵詐欺で邪毘屋が警察に捕まったことが伝わっていない・・・とか。」
絶句して固まった竜士と横松の態度で答えはすぐにわかった。
「あはは・・・。そういうことですか。はい、それで何故邪毘屋が執拗に緋鯉村を狙ってきたのか
不思議に思って、取材に来てみた訳です。お願いします。この取材にウチの新聞社の社運がかかって
いるんです。貧乏新聞社を助けると思って協力してもらえないでしょうか。もう二度と“赤貧新聞”と
からかわれたくないんですよ。」
そして広瀬は礼儀正しく深々と頭を下げた。
83代打名無し@ス:01/12/10 02:56 ID:HuCJ3/sb
どうして書いてもこのテンポなのか。登場人物がかぷ選手全員のところに
原因があるように思えてきた。増えた人物をそれなりに描写を加えようと
するから、こうなるのだな・・・(;´Д`)
今、金本寺にいるだけでも竜士、森笠、横松、シマ、甲斐、広瀬と6人(?)。
多いわ、やっぱ・・・(涙
次回貴浩登場。その後、一旦輝裕を登場させやしょう。その後緋鯉村の謎解決と。

>>78-79
なんとか開き直れるとこまできやした(^^; もうやるだけやってくださいですよ。
来年のペナントレースが面白いものになるように祈るばかりっす。
84代打名無し:01/12/10 07:13 ID:VtnB44cX
乙カレーです

広瀬に小山田・・・そうきやしたか・・・・(w
それにしても(・ ε ・)がいなくなって1ヶ月ぐらい経ってないか
85はだしのゲン:01/12/10 16:45 ID:YuCgg25v
原爆スレは逝け
86代打名無し:01/12/10 17:28 ID:R2wQ1Wyc
確かに金本寺がむさくるしい状態に!
実際寺に彼らが集ったら引く(w
カーサが竜士以上にハジけて見えるのが(・∀・)イイ!
87 :01/12/10 22:36 ID:n26y68PR
新婚で浮かれてんじゃないの(W>カーサ
88代打名無し:01/12/11 12:44 ID:/KBb3q71
せ、瀬戸のほくろが!
船頭さんのチャームポインツがなくなってしまった〜。

貴哉が広い毛に会ったみたく輝裕もソクーリなあの方に遭遇して欲しいです!無理すか?
89代打名無し:01/12/11 21:06 ID:2uKdVJtd
すんごく下がってたのであげ
90代打名無し:01/12/11 21:08 ID:bXDsrD/O
そんな事より1よ、ちょいと聞いてくれよ。スレとあんま関係ないけどさ。
このあいだ、近所の吉野家行ったんです。吉野家。
そしたらなんかパパがめちゃくちゃいっぱいで座れないんです。
で、よく見たらなんか垂れ幕下がってて、よーし特盛頼んじゃうぞー、とか書いてあるんです。
もうね、アホかと。馬鹿かと。
お前らな、特盛如きで普段来てない吉野家に来てんじゃねーよ、ボケが。
特盛だよ、特盛。
なんか女子供とかもいるし。得意げな顔で吉野家か。おめでてーな。
隣の奴、ねぎだくギョク頼んじゃうぞー、
とか言ってるの。もう見てらんない。
お前らな、垂れ幕やるからその席空けろと。
女子供ってのはな、もっと殺伐としてるべきなんだよ。
よーし特盛頼んじゃうぞー、とか言ってるパパといつ喧嘩が始まってもおかしくない、
刺すか刺されるか、そんな雰囲気がいいんじゃねーか。Uの字テーブルの向かいに座った奴は、すっこんでろ。
で、やっと座れたかと思ったら、隣の奴が、諸刃の剣。とか言ってるんです。
そこでまたぶち切れですよ。
あのな、諸刃の剣なんてきょうび流行んねーんだよ。ボケが。
得意げな顔して何が、諸刃の剣、だ。
お前は本当に諸刃の剣を食いたいのかと問いたい。問い詰めたい。小1時間問い詰めたい。
お前、諸刃の剣って言いたいだけちゃうんかと。
吉野家通の俺から言わせてもらえば今、吉野家通の間での最新流行はやっぱり、
Uの字テーブルの向かいに座った奴が大盛つゆだく、これだね。
Uの字テーブルの向かいに座った奴が大盛つゆだくギョク。これが通の頼み方。
Uの字テーブルの向かいに座った奴ってのは得意げな顔が多めに入ってる。そん代わり諸刃の剣が少なめ。これ。
で、それに大盛りギョク(玉子)。これ最強。
しかしこれを頼むと次からパパにマークされるという危険も伴う、ボケが。
女子供にはお薦め出来ない。
まあお前、1は、牛鮭定食でも食ってなさいってこった。
91代打名無し:01/12/11 21:08 ID:CYGn80Qw
ヒロシマはこんなのばっかでオタ臭いので下げ
92遅れがちですんまへん:01/12/12 01:17 ID:c+gK3ut2
どーしてもダラダラした展開に見えるのが気になって、過去ログ収録分の
文章推敲していたら、続きを書く時間がなくなった(鬱
そんでも174まで、なんとか「今は」納得できる形まで持ってこれやした。
過去ログ倉庫でお確かめください。そんでは、今から続きを・・・(汗

>>84
・・・(涙 早く再登場できるようがんがりやす。
>>86
ま〜だ金本寺に人間が集まるのだ。ラスト近いもんなぁ。仕方ないけど泣きたい。
>>87
あの写真まで大爆笑したのは、おらだけだろうか(w
>>88
(‘ ε ’)のことっすね。もちろんっすよ。
今までのオラのネタを考えても(w
93 ε ・):01/12/12 23:26 ID:sLnkui3N
きちゃった。
94 :01/12/12 23:35 ID:m1fcdZ1W
>>93
(・∀・)カエレ!
95代打名無し:01/12/13 01:41 ID:95YYwDHI
マターリ気の向くままにやってください。いつになろうと待ってますんで!!
いつもながら合間合間の小ネタに笑わせてもらってます(w
96広島家の人々185:01/12/13 02:58 ID:ZdLhMAU1
竜士は半分冷めた視線で広瀬を見下ろした。
「そりゃ協力してあげたいのはヤマヤマですがね、よそ者に掟をやぶってまで緋鯉村の秘密を
教えるつもりはないですよ。」
「掟・・・。」
頭を下げたまま広瀬の動きが止まった。
竜士はシマを連れて厨に向かった。後を追いかけていった森笠が、「ご朱印!」といきなりビシッと
横松を指さす。
「あっ・・・!」
その場の空気に飲まれて、すっかり横松も甲斐もご朱印のことを忘れていた。あわてて甲斐は
カバンからご朱印帳を取り出した。
「ふぅ・・・。そう簡単に教えてくれる訳がないか。」
二人の姿が消えてなくなった後、大きな息を吐いて広瀬が顔をあげた。
本堂の階段では、横松が手習い帳からご朱印帳に“自作自演”という言葉を書き込んでいる。
「面白いご朱印帳だねぇ。」
プッと吹きだして、広瀬は甲斐のご朱印帳を覗きこんだ。
「さぁてと、それで今日のハンコは・・・!」
横松は手箱の中からまた使っていないハンコをガチャガチャ引っ掻き回して探した。
「うん、これはまだ使っていない!」
押されたハンコの形に、広瀬はほぉっと歓声をあげた。甲斐と横松は不思議そうにハンコの絵柄を見る。
「これは何の意味があるんだろう?」
「やけにいっぱい線があってわかりにくいよぉ・・・。」
「う〜ん、これは打出の小槌じゃないか?」
広瀬の言葉にびっくりして、二人はあらためてマジマジと打出の小槌らしきハンコの絵を見た。
「打出の小槌っていったら・・・。」
「大判小判がザックザク・・・。」
エッと二人は顔を見合わせた。

「ふーん、『掟』かぁ。いよいよ確信に触れてきたって感じだなぁ。」
厨の入り口に肘をかけて、露骨にうれしさを隠さず、森笠は貴浩のために食事を作っている
竜士の手つきを見ていた。
「一つ確認するが、お前の望みは緋鯉村に永住することだったな。」
「ああ。俺、このムラが気に入っちゃったから。」
「じゃあ、これから話すことは絶対に他人に口外しないことを約束できるか。いや、お前の力を
借りないと、貴浩一人じゃ緋鯉村のお宝を捜しだせないかもしれないんだ。」
「ああ、おやすい御用だぜ!」
森笠は揉み手すりをしながら、何度もうなずく。
竜士は料理を風呂敷に包んで、奥の院に行く道に向かった。森笠がなんなく入り口の鍵を開ける。
シマを連れて、二人は白壁の続く階段を昇っていった。
97広島家の人々186:01/12/13 22:43 ID:17juHiO3
そもそも、こうも話がこじれた理由は、やはり父・浩二の突然の出征から始まっていた。
緋鯉村の秘密の存在を知るものは代々広島家の当主のみ。だが浩二が出征を余儀なくされた時、
長男の博樹はまだ高等学校に在学中の身で、次男の竜士は小料理屋長谷川に奉公に行っていた。
「お前らは、何故佐々岡の爺だけが広島家に使用人で残っていたか、知っとってたか?」
重々しく発する前田の言葉に、博樹も竜士も首を縦に振ることができなかった。
「ふっ・・・。それが竜士がいおうとしていた緋鯉村の秘密とつながっとるんじゃ。」
前田はニヤリと笑った。
「まあ、さっきの博樹の態度を見てワシも安心したわ。これでワシからも話を進められる。」
「そ、それって、今まで前田さんも爺も俺たちに緋鯉村の秘密を隠していたってことか?」
竜士は眉をひそめた。
「うんにゃ、違う。これは平時であればそうそう表にだすものではない。ワシらとて、それが一体
どんなものなのか実体は知らんのじゃ。なかったものとして代々隠すだけ隠してきた。
じゃがのぅ、どこを嗅ぎつけてきたか邪毘屋が執拗に緋鯉村と広島家を狙うようになってきた。
次から次へと広島家の使用人を引っこ抜いたり、村人を貧困で離散まで追い込ませたりしてな。
そして、親父さんに出征命令が届いた。親父さんから、ワシと爺に緋鯉村の秘密の存在を
打ち明けられたのはその時じゃ。親父さんに万が一のことがあった時、そして緋鯉村や広島家が
存亡の危機をむかえた時、跡を継いだ者にこれを伝えるように・・・。」
博樹は目を伏せた。
「でも、俺に緋鯉村の秘密の存在を教えた森笠って奴は、緋鯉村の地形だけで半分
わかっちゃったみたいだぜ。」
「じゃが、すべては解明できてないじゃろ。」
前田はふところから封書を取り出した。
「多分そいつが感づいたのは、金本寺の奥の院に宝が隠されているかもしれない、ということ
だけじゃろう。じゃが緋鯉村の宝は、3つの事を知らないと謎が解けない仕組みになっておる。
一つは緋鯉村の地形。もう一つは広島家に代々隠されていた古文書。最後の一つは金本寺
奥の院の境内図じゃ。」

竜士は胸のポケットから数枚の便箋を取り出し、風呂敷の中に入れた。
「その奥の院の境内図ってのに、俺の力が必要ってことか。」
「ああ。」
小躍りしかねない雰囲気で森笠が奥の院の門の小窓を開けている時、竜士は風呂敷を
子犬のシマの首にしっかりと括りつけた。
「で、今風呂敷の中に入れた便箋が古文書の内容だってことだな。」
シマはすぐ小窓をくぐって、奥の院の貴浩を探しに駆け去っていった。
「ああ、貴浩にもわかるように子供向けの物語のように博樹兄ちゃんが書き直したものだ。」
「はぁ?」
「古文書の内容は、緋鯉村の草創に関わる説話だったんだ。」
98代打名無し:01/12/14 00:21 ID:qpK89Qeq
子供向けにワラタ(w
99広島家の人々187:01/12/14 02:11 ID:Hb2Me9dM
森笠はポンと手を叩いた。
「ああ!だから赤裸山に金本寺、そんで緋鯉村って名前かぁ!なるほど〜♪」
「森笠。お前、この説話を読まなくてもわかるのか?」
「この寺の名前でだいたい見当がつくって。隠す隠すっていいながら、要所要所はしっかりと
痕跡を残しているんだな。多分その話は、何も持ってない、貧乏どん底の状態からムラを
作り上げた広島家のご先祖さまが、ムラの永遠の存続のために血のにじむような思いで
金を集め、奥の院に埋めた。そんなところだろ。赤は“はだか”“むきだし”の意味がある。
そして次の文字がそのものの裸。丸裸、何にもないところに金の本の寺だ。どうだ、
ドンピシャじゃないかっ?」

「今が緋鯉村の宝を必要とする時。前田さんも爺もそう思ったから、俺のところに古文書を
持ってきたということですね。」
「ああ。そして広島家の当主としての覚悟も完全に身についたことがわかったからな。
広島家の当主である限り、いつでも命を狙われる危険がある。それがわかったじゃろう。」
「はい・・・。」
竜士はあわてて身をのりだした。
「それは邪毘屋だけじゃないってことですか、前田さん。」
「隠そう隠そうとすればするほど、見てみたいと思うのが人間の摂理じゃろう。それでも隠し
とおすのが広島家の当主のつとめじゃ。」
「でも、これからお宝を見つける時に、森笠のような奴の力も借りなくちゃならない。当主の
博樹兄ちゃん以外に俺たちだって知ってしまった。それをどうやってまた隠すつもりですか。」
「それはこれからの出方次第じゃ。ただし、隠すことが緋鯉村存続のための一番の掟。掟を
破り、ムラを出ていった者がどんな運命になるか、そのためにワシのような者が用意されて
おるということじゃな・・・。」

こんなに一人で勝手にわかってしまって、森笠の身は大丈夫なんだろうか。竜士は森笠に
気づかれないように小声で南無阿弥陀仏と呟いた。
「じゃあ、俺は早速奥の院の境内図を探しに寺に戻るわ!」
何も知らず、森笠はホクホク顔で階段を駆け下りていった。シーンと静まり返った奥の院の
門で、竜士はシマが戻ってくるのを待っていた。
「・・・・・・。」
あまりにいろんなことがありすぎた。いいようもしれない気持ちに襲われて、竜士は門に
背中をつけて、ズルズルと座り込んだ。
100アイコ☆ ◆czq1J3PY :01/12/14 02:13 ID:AH7mWUcu
100ゲット終了!
101代打名無し@ス:01/12/14 02:22 ID:Hb2Me9dM
スローテンポだねぇ、ホンマ・・・(鬱
最初のプロットだと登場人物が多すぎで、ますます輪郭がぼやける危険が
あったので、少し話の前後を変える作業に手間がかかりやした。
これで集団化の心配はなくなりやしたが、貴浩の出番は188まで延びた。
スンマソン。今日は188まで書いておきやす。アキヒロ? ・・・・・・(涙

>>95
ありがとうございやす。でも早く何とかしたいですわ。うぅ・・・。

>>98
古めかしい文章じゃ、( ̄粗 ̄)にゃ読めんと思うて(w
102広島家の人々188:01/12/14 04:34 ID:Hb2Me9dM
見渡す限り、あるのは苔むした大きな墓石と、剣の山のように大量に突き刺さった卒塔婆だけ。
この光景の中に投げ込まれて、もう何週間経ったのだろうか。湿った地面に足を取られない
ように、恐る恐る忍び足で毎日周辺を歩き回り、貴浩の頭の中にも、やっと奥の院の概容が
うっすらと見えてきた。
しかし、お腹が空いた。最初の頃こそ博樹への罪悪から、知憲住職にここに閉じ込められても
何の反応もせず、朦朧とした状態で座り込んだままだったが、そのうち現実がやってきた。
このままじゃ行けないと思っても、意識が食欲にしか向かない。今まで悩んでいたことが
強引に消されていってしまうのである。もはや動物と同じだった。毎朝、門の小窓から
与えられる食事だけを目当てに、泥だらけの身体をはいつくばって、貴浩は入り口の門に
向かってフラフラと歩いていった。森笠から緋鯉村の宝を聞かなければ、何もかも忘れ、
ただ食べ物だけを求めて徘徊する浮浪者になっていたかもしれない。知憲住職の意図は
違うところにあったはずである。
「俺って、やっぱ相当バカなんだなぁ・・・。」
自分で自分が相当嫌になって、貴浩は地面に転がって泣いた。鬱蒼と繁る木々の間から、
雲ひとつない、透き通るほど澄みわたった青い空が垣間見える。
「・・・・・・。」
何をするでもない。貴浩は両手を広げてボーッと湿った地面の上に転がっていた。
それから数日。それでも宝の手がかりはないかと、墓石に目印を入れながら貴浩が歩き回った
結果は・・・・・何もなかった。昔から、ここは山の神様が帰るところといわれた。そしてお墓。
キーワードは昔にあることは何となくわかる。だが、そこから先がまったく想像がつかない。
「腹減った・・・。」
また貴浩の口から、この言葉が洩れた。もうダメかもしれない。力なく貴浩は地面に座り込んだ。
「えっ・・・?」
この場にいるはずのない犬の鳴き声がする。
「まさか・・・シマ!」
貴浩の声にすぐ反応して、シマは全速力で泥だらけの貴浩に飛びついた。貴浩はガシッと
シマを抱きしめたまま、しばらく動かなかった。シマは自分の背中がポタポタッと濡れる感触に、
くぅんくぅんと身体をこすりつけて、思いきり貴浩に甘えた。
「ごめんな・・・ごめんな・・・。」
誰にいっているかわからず、貴浩はうわごとのように呟いて泣いた。やっとシマの首に
つけられた風呂敷の存在に気づいたのは、それからどれだけ時間が過ぎてからか。
竜士が作った料理を見た途端、箸が備え付けられているにも関わらず、貴浩は手づかみで
ムシャクシャと口の中に詰め込んでいった。量の割に精がつくものを竜士は作ってくれたらしい。
ここに来て、はじめて頭に神経がまわっていった。すぐに貴浩はそばに置いてあった便箋に
気がついた。
「博樹兄ちゃん!」
なつかしい、そして恐れていた博樹の文字である。貴浩は食いつくように便箋に書かれた
内容を読み始めた。
103代打名無し@ス:01/12/14 04:36 ID:Hb2Me9dM
輝裕再登場のメドがたった〜。190で再登場の予定っす・・・(涙
104代打名無し:01/12/14 17:31 ID:VVj28Amr
おぉ、核心に近付いてきましたね!
またイイトコで続きか…気になる。
がんがって下さい>助清さん
コソーリナムアミダブツの竜士萌え〜
105代打名無し:01/12/15 00:46 ID:DnyMOOE4
age
106代打名無し:01/12/15 02:31 ID:DFlVgKT9
(・∀・)ガンバーレ
107代打名無し:01/12/16 08:59 ID:Y4FTwolh
kitai
age
108代打名無し@ス:01/12/17 04:23 ID:7PMG2V8O
続きがまた遅れてスンマヘン・・・。
過去ログを185まで収録しやした。貴哉編結構スリム化したと思いやす。
これでテンポがよくなったかな。そうや貴哉編といえば↓だぁ!
http://www.chugoku-np.co.jp/Carp/Cw01121602.html
現実が後で追っかけてくれただよ〜♪ 話の収拾の関係上、あの辺だけは
どうしても元ネタがなく、ううっ・・・だったんでもう・・・感動しやした(涙
さて、また薬の関係で一日以上寝てしもたんで、今身体が元気になっとる。
これからドドーンと輝裕再登場まで書いておきやすわ。

>>104
ラスト近し、ラスト近し・・・だと思う。もうごちゃごちゃせず、
貴浩がある程度謎を解いてくれるでしょう〜。貴浩が宝を発見
した時、兄弟が一人、広島家のもとに戻りやす。
それと、そうそう「核心」・・・^^; 
109広島家の人々189:01/12/17 06:18 ID:7PMG2V8O
シマは、おすわりの格好で貴浩の様子を見ている。
「あははっ・・・。あははははははははは・・・・・・。」
便箋を読む貴浩から、笑い声がこぼれ始めた。
「シマ、俺やるよ!やれるよ!」
突然、シマは貴浩に抱きつかれた。
「馬鹿でもいいんだ。俺は俺でしかないもんな。変えようたって変えられるもんじゃない。
俺で出来ることをすればいいんだ。そうだよ。俺やれるよ!」
さすがのシマも、貴浩の唐突の行為にあっけにとられて身動きすることができなかった。
だが、貴浩はまったく意に介さない。今度は乾いた石の上に便箋を置くと、料理の残り汁を
指につけて、裏地に“ふで”と書いた。便箋が乾くと、今度はそれを小さくたたんで風呂敷に入れ、
シマの首に縛りつける。
「明日も来いよ。お前と一緒だったら、お宝が見つかるかもしれない。」
何か手がかりを見つけたのか。貴浩の顔は自信に溢れたものへと変わっていた。
シマはワンと一声鳴くと、元の入り口へ一直線に駆け戻っていった。


「相も変わらず、殺風景な場所じゃ・・・。」
知憲住職は、竹林の奥にあるかやぶき屋根の庵に足を踏み入れた。森笠や横松がいっていた
金本寺奥の院にあるという緋鯉村の宝。住職である自分はまったく存在を知らない。
だが、緋鯉村には自分以外に緋鯉村の裏の隠された部分を知る長老的存在の人物が、あと3人
いた。一人は広島家の爺である佐々岡。もう一人は陸軍将校の野村。佐々岡は、町医者の福永の
元を抜け出してから行方が知れない。野村は緋鯉村を離れ、今は大陸に出征する直前の身の上で
ある。そして最後の一人が広島家の用心棒前田だった。
「しかし、子分たちの姿を見当たらんのか・・・。」
いつも必ずどこかから聞こえる剣を交える音も、今日はまったく耳に入ってこない。仕方なく、
知憲住職は建前上、軒下の小さな鐘を鳴らしてから、入り口の扉に手をかけようとした。
だが、その前に扉がすっと開いた。
「佐々岡!」
佐々岡の爺も、扉の向こうの知憲住職の存在に目を丸くした。
「なんで佐々岡がここにおるんじゃ!お前、広島家のことはどうしたんじゃ!」
つい我を忘れて詰問する知憲住職に佐々岡は目を伏せる。
「あ・・・・。」
知憲住職は思い出した。広島家の庭で西山堂のお菓子を食べながらみんなで線香花火をやった、
あの日。佐々岡は、いざというときは・・・といった。これが、いざというときの意味なのだろうか。
「佐々岡。お前は金本寺の奥の院にある緋鯉村の宝のことは知っているか?」
佐々岡ははっきりと答えた。
「ええ。知っています。」
110  :01/12/17 06:35 ID:bmlCtaoi
俺は>>1の記事を知らなかった中国新聞購読者
111広島家の人々190:01/12/17 07:10 ID:7PMG2V8O
「・・・・・・。」
「緋鯉村の宝は、代々広島家の当主一人が隠し続けてきたもので、それを知る古文書はここに。
といっても、私も前田もその存在を知ったのは、旦那さまが出兵する直前でしたが・・・。」
「で、お前がここにいるのは・・・。」
「今こそそれが必要なときも思って、最初はここに来ました。古文書は私が解読し、前田が今、
それを広島家に持っていっています。ですが今は・・・。」
後ろの部屋から別の人間の声が聞こえた。知憲住職は眉をひそめた。
「前田や子分たち以外に、ここに人間がいるのか。」
佐々岡がとめようとする手を払いのけて、知憲住職は庵の中に入り込み、乱暴にふすまを開けた。
「!」
大きく口を開けたまま、ガクッと知憲住職は膝をついた。あわてて佐々岡が奥の部屋の人間の
介護にまわる。
「なんつー、ワシは失敗をしてしもたんじゃ!」
「えっ?」
佐々岡は顔をあげた。
「野村じゃ!こんなことなら野村をさっさと緋鯉村から帰すべきじゃなかったわ!」
「野村が・・・来ていたんですか!緋鯉村に・・・!」
佐々岡も病人の前で思わず大声をあげてしまった。しかし相手は何の反応も示さない。
佐々岡も知憲住職も、力なく肩を落とした。



輝裕はうつろな目で汽車の窓に肘をつけて、外の風景を見ていた。次から次へと変わっていく。
まるで最初から何もなかったかのように・・・。このまま自分の記憶もすべて消えてしまったら、
どれだけ気が楽だろう。座席のすぐ横には木村が必死に渡してくれた巾着袋が置いてあった。
今の輝裕には、それすらわずらわしいものに感じる。何もかも、何もかも捨てたかった。
忘れたかった。
「あっ、お客さん。お客さんの行き先はどちらに?」
鯉城駅でさきほど、困った表情で自分を見ていた車掌だった。プイッと輝裕は窓の方にもう一度
顔を戻した。
「・・・そこにあるお金で行けるところなら、どこでもいいです。」
ふ〜む。車掌の林は明るくため息を洩らした。
「よっぽど何かイヤなことでもあったんですね。ならば心が癒せる場所として有名な公園に行って
みられたらどうでしょうか?あそこならそれほど運賃もかからずに行けますから。」
そして林は最寄りの駅の切符を切ると、座席の上に置いた。
112代打名無し:01/12/17 07:43 ID:045U6MIc
はぁ〜(・ ε ・)〜ほかのみんなが立ち直っただけに
かなり暗いよ〜
がんばれ
113広島家の人々191:01/12/17 09:48 ID:7PMG2V8O
「・・・・・・。」
林が次の車両に消えてしばらくしてから初めて、輝裕は座席の上の切符を見た。車両には
輝裕以外誰も客がいない。
「・・・逃げよう。」
ポツリと輝裕は呟いた。誰にも自分の行き先は知られたくない。車掌のいうがままの駅に
降りれば、そこで足がついたも同じである。
汽車のスピードがだんだんとのろくなっていく。次の駅に近づいているらしい。反射的に輝裕は
デッキに飛び出した。目の前に見える情景が静止画に近づいていく。今なら、ここから飛び降りれる。
「あれ?」
輝裕に目的の駅に近づいたことを知らせにいった林は、誰もいない座席ボックスに首をかしげた。
切符は運賃をちゃんと上に載せて、座席の上にそのまま置いてある。
「お客さ〜ん!」
林はあわてて、別の車両へ輝裕を探しにいった。

思ったより衝撃を受けずに地面に降りれたらしい。輝裕は身体中についた草の種を叩き落とした。
「ここはどこ・・・?」
緋鯉村とはまた違った侘しさの漂う街である。輝裕はフラフラと人気のない空虚の街の中に
入っていった。どこかから、もの悲しいラッパとクラリネットの音色が聞こえてくる。
「あっ!」
あの時赤い風船をもらったピエロのエディだった。理由はわからない。我を忘れて輝裕はエディの
もとに駆け寄っていった。
「坊や、あなたにも風船をアゲマース。」
あの時と同じ笑顔でエディは輝裕に赤い風船を差し出す。まるで時間がそこまで逆戻りした
ようだった。震える手で輝裕は赤い風船を受け取った。エディは笑顔で軽く会釈すると、また
おどけながら、団員と共に遠くへ去っていく。あの時と一緒だ。そしてあの時から自分は・・・
「待って、エディ!」
輝裕は大きな声で叫んだ。ピタッと音楽がとまる。輝裕は振り向いた。エディら団員は
不思議そうに輝裕を見た。輝裕の手から風船が離れる。
「エディ、ボクをサーカスで働かせてください・・・。」

エディのサーカスは、一般に巷でいわれるサーカスとは一味も二味も違っていた。主役は
人間ではなく牛なのである。ピエロや綱渡りなど大道芸はあくまでも飾り物。ようは牛の
数で勝負する、一番近いもので闘牛士のような世界だった。
一人の少年が、下働きでほとんど全部の牛の世話をしていた。
「普通、自分から進んでサーカスに入りたいなんていう人間はいないけどな。」
少年は輝裕と同じ“アキヒロ”という名前だった。
114代打名無し:01/12/17 21:52 ID:w4DSPgUG
え、え、え??(・ ε ・)が二人??
115代打名無し@ス:01/12/18 01:48 ID:+UBJfEn0
どこまで続きを書けるかわかりやせんが、一度あげておきやす。
いよいよラスト輝裕編突入。輝裕を中心に話が進みながら、今まで
謎だった部分、解決していなかった部分が、合間にはさむ形で
一つずつハッピーエンドを迎えます。で、最後は(・ ε ・)だなと。
最悪210までには完結するでしょう。

>>110
正月の特別版に収録してあったよ。来年はどんな写真が載るのかな。
楽しみだ(w

>>112
今のところ、輝裕だけ時間がさかのぼって話が展開しておりやすからねぇ、
もうしばらくしたら、明るくなっていきやすで。

>>114
もう一人のアキヒロは田村(彰)でごさいやす。
へへへっ、これで登場人物は食材ブリだけじゃ。ヤター!
116広島家の人々192:01/12/18 04:43 ID:+UBJfEn0
エディのサーカスは、一般に巷でいわれるサーカスとは一味も二味も違っていた。主役は
人間ではなく牛なのである。ピエロや綱渡りなど大道芸はあくまでも飾り物。ようは牛の数で
勝負する、闘牛士のような世界だった。
一人の少年が、下働きでほとんど全部の牛の世話をしていた。
「普通、自分から進んでサーカスに入りたいなんていう人間はいないけどな。」
少年は輝裕と同じ“アキヒロ”という名前だった。
「・・・・・・。」
輝裕は牛の餌である草束を持って、少年の後をついていった。
見た目以上に重労働な作業である。少年は文句一ついわず、黙々と仕事をこなしていった。
「他に手伝う人はいないのか?」
輝裕の質問に、少年はクスッと笑った。
「たまに売られてここにやってくる者がいるが、たいがいは我慢できずに逃げ出してしまう。
だから結局は俺一人だけ・・・。」
「それって仕事がキツくてつらいから?」
「んー、それもあるかもしれないけど・・・。」
突然、少年はクルッと振り向いて、ナイフを輝裕の首近くに突き出した。
「夢とうつつの境界に、精神が耐えられなくなるから。」
少年はニヤリと笑った。
「どうして、ここに来たんだろうね。あいまいな気持ちじゃ、完全にあんたのすべてが崩壊するよ。」
「・・・・・・!」
少年のナイフの先が、輝裕の皮膚をゆっくりと突き破っていった。ナイフと皮膚の境目から、
音もなくスーッと血が下に流れ落ちていく。
「なぁ、今ここにいる自分は現実だとお前は自覚できるか?その傷の痛みは、実際に起きた
出来事だと、お前は確実に実感することができるか?」
「な、なにを・・・!」
かすれた声で輝裕は少年を睨みつけた。
下手に身体を動かせば、ますます身体にナイフが食い込む。少年を睨みつけながらも、
輝裕はまったく身動き一つ取れない。スッとナイフが抜き取られた。
「エディが呼んでる。ここはもうキリがついたから、早くエディのところへ行った方がいいよ。」
ニッコリと少年は笑った。
クッと顔をしかめて、逃げるように輝裕は傷口を押さえ、その場を立ち去った。
「オー、アキヒロ!」
エディは笑顔で輝裕を迎え、大量の風船を輝裕に渡した。
「コレから一緒に街までパレードにイキマショウ〜!」
「えっ、パレードってこの恰好で?それに今、ボクは怪我をして・・・。」
「ン?どこガ怪我をしているっていうんデスカ?」
「えっ?だって」
首筋が・・・といおうと傷口を押さえていた左手を、輝裕は目の前に差し出した。
「・・・・・・!」
血がまったくついていない。あわてて輝裕は傷口を手で触って確認した。
「・・・・・ない。」
動揺して、輝裕は少年が働いていた牛小屋の方を振り返った。少年は黙々と一人で
牛の世話をしている。最初から輝裕の存在などまったく知らないというように。
「サア、一緒にイキマショウ!」
エディは呆然と立ち尽くしたままの輝裕に、やさしく声をかけた。
117広島家の人々193:01/12/18 07:14 ID:+UBJfEn0
たくさんの風船を持ってトボトボと、ピエロのエディや楽器を持っておどける団員の後を、
輝裕はついていく。
「夢とうつつの境界に、精神が耐えられなくなるから・・・。」
夢?夢ってなんだろう。そして現実の世界って・・・。輝裕はなにげなく首筋の傷口があった
であろう場所をもう一度さわった。やっぱりない・・・。あれが夢?夢だっていうのか。
・・・なぁ、今ここにいる自分は現実だとお前は自覚できるか?その傷の痛みは、実際に
起きた出来事だと、お前は確実に実感することができるか?・・・
輝裕は目を伏せた。自信がない。今いる自分も現実の存在なのか、いや、何もかも
すべてが幻なのかもしれない。なんだか身体が火照ってきた。熱が出たのかもしれない。
うっすらと目を開けた視界がぼやけている。
いつしか、どこからか子供たちの笑い声が聞こえてきた。その中の2人連れの子供らが、
輝裕にまとわりつくようにして風船を欲しがる。
「はい。」
輝裕は風船の一つを取り出して、無邪気に手を伸ばす子供の一人にそれを渡した。
「ありがとう、お兄ちゃん!」
少しほころびかけた服を着た男の子はニッコリと笑った。
「あっ・・・・・・。」
輝裕の手が震えた。その男の子は・・・・・・幼い頃の自分だった。
「ぁああ!またお前一人調子こいて!」
隣の少年が口を尖らせ、ムスッとぶっきらぼうな表情で輝裕に両手を差し出した。
「兵動・・・・。」
恐る恐る輝裕が差し出した風船を受け取ると、兵動はニコッと笑った。
「なぁ輝裕、お前はぜーったい中学校に行くよな!」
風船をもらった兵動は、突然隣の幼い輝裕に命令口調で質問した。
「うん!絶対に行くよ!」
「本当だな!絶対に本当だな!」
兵動はチラッと幼い輝裕の服装を見て、何度も確認した。
「うん!絶対に!」
幼い輝裕は目を輝かせて答える。
これが夢、夢だというのか・・・!
輝裕はすがるように、前にいるピエロのエディのもとに駆け寄った。
「エディーッ!」
だが、エディの服を掴もうとする輝裕の手がサッとすり抜けた。
「えっ・・・!」
エディの姿が跡形もなく消えていく。そればかりでなく、他のサーカスの団員や
周りの光景も皆、すべてが消えていく。
「あ、ああ・・・・・・。ぁぁぁあああああああああああああああ!」
気がつけば、輝裕は赤く染まった夕焼けの教室の中に一人立ち尽くしていた。
廊下から軽快な足どりの音がこちらに近づいてくる。
両手に本の束を抱えた兵動だった。兵動は輝裕の姿に気づかず、いたずらっ子の
ような目で教室の中に入ると、輝裕の机に座り、持ってきた本を机の中に入れていく。
「兵動・・・。」
震える声で、輝裕は兵動を呼んだ。
118代打名無し:01/12/18 07:54 ID:sNoXRgts
う、うひょー
119代打名無し:01/12/18 08:33 ID:kT6Y9Jwb
ピエロのエディが容易に想像できるのが恐い。
そしてサンタのエディも容易に想像できてしまう自分がいる。
(時期的にナー)
120代打名無し:01/12/18 20:31 ID:eaJ+U48g
(・ ε ・)ようやく登場っすね。
しかしダークだな。どこまで堕ちるのさ。
ゥとのくだりはまだ続きがあるだろうが…泣けたyo!
ゥと(・ ε ・)、ここでは違う道を進んでるようだけど、
現実では一緒にプレーして欲しいッス。
がんがれゥ!とエールを送っておこう。
121代打名無し:01/12/18 21:57 ID:DqC8tJ2v
エール送っても「ゥ」・・・(w
122 ・):01/12/19 15:47 ID:ESQC6bNY
あぶなそうなのであげちゃう
123代打名無し:01/12/19 23:26 ID:9un886JF
保全あげ
124代打名無し:01/12/20 08:39 ID:xc332AL0
保全さげ
125(・ ε ・):01/12/20 17:47 ID:YCfHMo2h
なんとなくageてみる
126代打名無し:01/12/21 15:41 ID:rxXPcN32
 \_________
   |   | 原爆     |\
   |__|______.|/
  /   ヽ(゜д゜).ノ ファック ユー !
        (  へ)
        く
.                        \_________     ∧_∧
              ≡三       |   | 原爆      |\    ( ゜∀゜)
              三≡       |__|_______|/   (    )
                       /                   | | |
        (゜д゜)ファック ユー !                        (__)_)
      ( ヽ ヽ)                                   ↑
       /  >                                  >>1
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    ____\\
         /   _____|_
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   ___________/    /  |    /|   ./|  オ


    /                        )
   (⌒                                )
  (                            )
  (                            )
 (                             )
  (                             )
  (                            ))
   \ ,,         ,       ,   ,  ノ
        .__________|        |___
        /   ____|        |____. `)
      |   (______|_____________|______)   )
       人______________.ノ
             .,ノ ノ,,ノ !!、\_
127広島家の人々194:01/12/21 17:03 ID:M7OTNZSR
気がつけば、輝裕は赤く染まった夕焼けの教室の中に一人立ち尽くしていた。
廊下から軽快な足どりの音がこちらに近づいてくる。
両手に本の束を抱えた兵動だった。兵動は輝裕の姿に気づかず、いたずらっ子のような目で
教室の中に入ると、輝裕の机に座り、持ってきた本を机の中に入れていく。
「兵動・・・。」
震える声で、輝裕は兵動を呼んだ。
兵動はまったく気づかない。輝裕の机のフタを閉めて、メモ用紙に矢印を書いて入れると、
今度は自分の机に移って、また机の中に持ってきた本を入れていった。
「兵動!」
輝裕は悲鳴のような声で叫んだ。兵動の動きがとまった。
「輝裕・・・・・。」
兵動は目を丸くして、震えてこちらを見ている輝裕を見つめた。
「なぁんだ、見つかっちまったんか。ちっ、残念!」
大仰におどけて、兵動は自分の机のフタをバタンと閉めた。
「・・・・・・どうして・・・。」
輝裕は、自分の立っていた教壇の上からズルズルと足を引きずるようにして兵動に
近づいていった。ずっと兵動に言いたかったことがある。聞きたかったことがある。
「どうして、学校をやめてしまったんだよ・・・。どうして・・・どうして・・・!」
兵動は何もいわない。そのまま黙って輝裕をじっと見ている。
「一緒に高等学校に行こうって何度も約束したじゃないか!それを一人で勝手に・・・。」
輝裕は両手で強く兵動の机の上を叩いた。そして、こらえきれなくなり、両手をついたまま
うつむいて泣き始める。兵動はそんな輝裕をただ無言で見下ろしていた。
「・・・・・・それで?」
輝裕は耳を疑った。
「そ、それでって、兵動・・・?」
目を大きく見開いて、輝裕は顔をあげた。
「それで輝裕はどうしたいんだ?」
兵動は無表情で輝裕の顔を見るだけである。
「兵動・・・。」
呆然とした表情で、輝裕は兵動を見た。
「ボ、ボクは・・・・・・。」
輝裕は返事をかえそうとして、とまった。ない・・・。「自分」がそこにはない・・・。
「あっ・・・・。」
輝裕はあとずさった。自分は何をしたかったんだろう。兵動のことは言い訳だ。ただ兵動に
甘えていただけだ。兵動がいなくなったら、自分は・・・? じゃあ何のために勉強してきたん
だろう。いや違う、何がしたくて勉強をしてきたんだろう。博樹兄ちゃんの代わり?いや、
それも言い訳だ。結局は理由がない。いや、「自分」が存在していない。
ペタンと輝裕は床に座り込んだ。
「・・・・・そういうことか。そういうことだったんだ・・・。」
与えられることに慣れて、それをこなすことに精一杯でいるうちに、いつしかなくしていた物。
・・・なぁ、今ここにいる自分は現実だとお前は自覚できるか?・・・
輝裕は弱々しく首をふった。すべて幻だ。この光景も、目の前にいる兵動も、そして今ここに
いる自分も。何一つ実感できるものが自分には存在しない。
「・・・・・そういうことだったんだ・・・。」
輝裕は放心状態で涙を流していた。
128代打名無し@ス:01/12/21 17:19 ID:M7OTNZSR
また中途半端なところですんまへん。これから所用があって、続きを書けるのは
夜遅くになってしまうかと思うのですが、サーカス絡みの話までは最低でもその時に
書きあげたいと思うとりやす。もうちっと待ってくんさい。
でもウェットな話は書きづらい(涙 単なるギャグの方がいいっす。こういうシーンは
一挙に書き上げた方がいいのに、またやってしまったとよ(鬱

>>118
はははは・・・。

>>119
エディのサンタ、マジで似合いすぎるところが怖い(^^;

>>120-121
ここが一番(・ ε ・)のズンドコ状態か。それとも次回195か。
長男より堕ちるところまで堕ちるかも。(見方によっちゃあ)
ゥは予定より随分といい役になりやしたねぇ(^^;。
あと195は(‘ ε ’)が初登場っす。
129代打名無し:01/12/21 18:16 ID:+qXeFeKQ
(・ ε ・)悩める少年だな。
自分が厨房の頃はこんな色々考えてなかったぞ。
悩んで大きくなるのだ。ゥもね。
(‘ ε ’)←出してくれと言い出したのは自分です(w
どんな登場の仕方するんだ。やらかすのか?
続きがんがってください。
130代打名無し:01/12/21 18:55 ID:3prF7ttS
「自分が無い」
現代人の大きな問題やね〜
131代打名無し:01/12/21 21:09 ID:quUIrIwK
あー、なんかジーンと来たよ。
思春期独特の悩みみたいな。

無意味に悩んでいた時代を思い出すな‥‥‥。
そんな時代もあったっけ‥‥‥ウツ‥‥。
132代打名無し:01/12/22 14:50 ID:GTgxk93k
age
133広島家の人々195:01/12/23 00:04 ID:8kwEgdQV
夕日が山あいの嶺に消えかかろうとしている。教室に差し込む影が、いっそう長く伸びて、
色濃く室内に陰翳をかもしだしている。
クスッと兵動が笑った。そして、しょうがないなぁという表情で輝裕に近づいてくる。
本物かどうかもわからない兵動。輝裕は、なすすべもなく、あるがまま目の前の出来事を
受け入れていた。兵動は輝裕の目線に合わせて、しゃがんだ。そして輝裕にハンカチを
差し出す。
「俺と同じ落とし穴にはまるなよ・・・。」
輝裕は目を大きくした。兵動ははにかむような笑顔で笑って、コクンとうなずく。
輝裕は恐る恐る手を伸ばした。これも夢なのか。今、こうして手を伸ばして兵動にふれようと
して、エディと同じくすり抜けていってしまうのではないか。震える手で輝裕は兵動の差し
出す手に近づけていった。
「がんばれよ。」
ハンカチの感触にふれた。それと同時に輝裕の目から光が消えていく。廊下から担任の
山崎の声がした。
「あっ、山崎先生!」
兵動はスクッと立ち上がって、廊下に駆け出していった。


「・・・・・・さん、広島さん、広島さん!」
左手にハンカチの感触を残したまま、もう一度目を開けた輝裕の視界の先には、あの少年が
いた。四方を鏡に囲まれた倉庫部屋で、輝裕は布団に横になっていた。
「良かった、やっと気づいた!広島さん、もうずっと意識を失ってここで眠っていたんですよ。」
少年はホッと胸をなでおろして、早くエディにも知らせなくちゃとテントの幕を上げて走り去って
いった。
輝裕の目に光はなかった。うつろな目でただ天井を見上げている。
「・・・・・・許してください。」
か細い声で輝裕は呟いた。誰にいっているのか。輝裕は何度も同じ言葉を呟いた。
また涙がもりあがり、とめどなく下に流れていく。少年がまた輝裕の元に帰ってきた。
テントの幕を開け、中に入ろうとした時に、外から「アキヒロ」と呼ぶ声がした。少年は答えた。
「あっ、兄ちゃん!」
反射的に輝裕はとび起きた。顔面真っ青で首を振りながら少年の声がする方向から後ずさる。
「・・・ぁぁあああああああ!」
悲鳴をあげて、輝裕は反対方向からテントを飛び出した。
「あっ、広島さん!」
少年のとめる声も輝裕の耳には届かなかった。輝裕の姿はあっという間に霧の中に消えていった。

雨が降っていた。薄暗くたちこめた空とあいまって、大通りの光景も少し陰気な雰囲気が強く
たれこんでいた。人々も早く家に帰るため、無機物な表情で慌しく通りを過ぎていく。
石造の建物の壁沿いにムシロにくるまれて、ぼろぼろの“モノ”がそこにいた。誰もそれに
気づこうとする者がいない。最初ガタガタ震えていたそれは、だんだんと力を失っていった。
「・・・・・・モナ?」
ムシロの上に降り注がれていた雨がとまった。傘がさしだされている。輝裕はうつろな目のまま
傘を差し出した人間のもとに手を伸ばした。輝裕はニッコリと笑った。
「今度はちゃんとわかるよ・・・。」
輝裕はうれしそうに相手の足元に抱きついた。

「今岡さん、それ何ですか?」
真っ黒な異臭の漂う物体をおぶって帰ってきた今岡を見て、赤星は思わず眉をひそめた。
今岡は黙って物体を地面におろした。輝裕はそのまま小さく丸まる。
「もしかして・・・、人間!」
やっと赤星にも事情がわかったらしい。何事かと思って店の玄関にやってきた浜中に、お湯を
沸かすよう指示すると、自分は店の主人に知らせに奥の間に小走りで向かった。
134コソーリ・・・:01/12/23 02:04 ID:OWv3gIui
TRIAL \10,000,000

        .  ∧_∧____   / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
    ___  (´∀` ,)| <  広島家の兄弟があまりにも似ていないのはなぜ?
    <──<\⊂ へ ∩)//|||   \__________________
    \.  \,>'(_)i'''i~~,,,,/
──┐  ̄|| ̄(_) ̄~||~ ̄
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
━━<  広島家の兄弟があまりにも似ていないのはなぜ?                       >━━
    \___________________________________/
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
━━<  A:母親が違う                     B:大きな卵から生まれた      >━━
     \________________/  \________________/
    / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\  / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄\
━━<  C:川から流れてきた                 D:ピーコの脂肪が分裂した     >━━
    \________________/  \________________/


はは〜ん・・・暇だったんで
135広島家の人々196:01/12/23 04:26 ID:8kwEgdQV
弦の調節も何度も確認した。これなら今度こそ失敗はない。
「今日こそやる・・・!」
岡上は力強くうなずいた。店の入り口の扉が突然、勢いよく開けられた。緋鯉村から帰ってきた
ばかりの甲斐だった。
「岡上さん、それ?」
テーブルの上に置かれたバイオリンを見て、すぐに甲斐は理解した。
「ボクも手伝うよ!」
「えっ、手伝うといっても・・・。」
甲斐はスタスタと奥の部屋にある包み袋からハーモニカを取り出した。
「ピアノがなくても、これがあるよ。」
笑顔でうなずく甲斐に、岡上も笑ってこたえた。
「ところで、あれからご朱印はどうなったんだ。明日だろ、お父さんと再会できる日は・・・。」
「うん。」
甲斐はカバンの中からご朱印帳を取り出して、岡上に渡した。
「・・・“うひょ”“あのよろし”“酒は飲んでも飲まれるなっ!”“自作自演”“帳尻”“大人のリード”
“合言葉はゥ”・・・。なんじゃこりゃ・・・。」
初日のご朱印でわかっていた。だが、こうして続けて見せられるとまた・・・。何とか噴き出さない
よう必死にこらえていた岡上も、最後には声をあげて爆笑していた。
「こんなに笑えるご朱印ははじめてだったよ。」
つられて甲斐も笑う。
「ご朱印を書いた横松って子に救われたな。でも、これじゃあご朱印というより単なる習字の練習帳だ。」
「そうだ!ご朱印っていったら、ここの頁の・・・。」
甲斐は自作自演と書かれた頁を開いて、岡上に見せた。
「このハンコだけ、何が描かれているかよくわからないんだ。一緒に金本寺に行った新聞記者は
打ち出の小槌じゃないかといっていたけど、岡上さんは何に見える?」
「えっ?」
甲斐に指摘されて、岡上は初めてマジマジとそのご朱印を見た。
「俺は、これは樽に見えるかな。」
「樽・・・。」
「それが一体何か?」
「うん・・・。それがもしかして緋鯉村の秘密に関わるものじゃないかなと思ったんだけど・・・。
でも、樽ならまだ打出の小槌の方が可能性があるかな。」
「ふーん、もう何でもありだな、あの村は。」
岡上は苦笑して、ご朱印帳を甲斐に返した。
「おや、岡上くん。とうとう覚悟を決めてやるんだね。」
カランカランという音ともに扉が開き、マスターの玉木が買い物が帰ってきた。
「はい、マスター。今日の店の休みを利用して行ってきます。」
いつの間にか、岡上に店に働きはじめた頃のおどおどさが消えていた。玉木はニッコリ笑ってうなずいた。
136広島家の人々197:01/12/23 06:22 ID:8kwEgdQV
橋のたもとに楽器を置いて、バイオリンのケースを自分たちの前に置く。岡上はゴクッと息を
飲み込んでバイオリンを手に取った。横にいる甲斐は黙ってその様子を見ている。岡上は
クラシックの曲を一曲奏で始めた。甲斐はそれにあわせてハーモニカを吹いた。
橋の欄干を通りゆく人々が次々と足をとめていく。二曲目、三曲目・・・。どんなに曲を重ねても
岡上は堂々とした態度で一度も失敗することなく流暢に音楽を奏でていく。通りをふさぐほどに
膨れ上がった聴衆から何度も割れんばかりの拍手が起こった。何曲か披露して、やっと我に
かえった岡上は、晴れやかな笑顔で頭を下げた。
「なぁ、そんなごたいそうな曲ばかりじゃのうて、もっと俺らがわかるような歌を弾いてくれんかのぅ。
ほれ、最近の流行歌とか・・・。」
流行歌とのリクエストに岡上と甲斐は思わず顔を見合わせたが、どちらともなくニッと笑ってうなずいた。
さっきとはまるで違った軽快な音楽が流れる。観衆はわぁっと盛り上がって一緒になって歌い始めた。
「はぁ〜、踊りお〜どるな〜ら、ちょいと東京〜おん〜ど、ヨイヨイ♪花のみや〜こ〜の〜
花のみやこのまんなかで〜♪・・・」
その観衆の中に、一緒に手拍子を打ちながら笑顔で歌う輝裕の姿があった。
曲が終わり、大きな歓声が岡上たちを包み込む。
「アキヒロ、そろそろ行くモナ。」
岡上と甲斐はハッとアキヒロと呼ばれた少年に目を向けた。
「うん、兄ちゃん!」
少年はクルッと振り向いて、名前を呼んだ青年のもとに駆け寄る。二人は小さくため息をついた。
少年にりんご飴を渡す青年と瓜二つの顔立ち。それを無邪気な笑顔で受け取る少年。どう見ても
少年は二人が探している広島輝裕とは別人のようだった。
「このままずっと見つからないままなんだろうか。」
広島家の末っ子を案じる緋鯉村の人々の表情が次から次へと頭の中に浮かぶ。あっという間に
小さくなっていった兄弟の姿を見送りながら、甲斐はポツリと呟いた。


「なぁ、明日は一緒に金本寺に行こう。博樹兄ちゃんも一緒に来れば、貴浩ももっと元気が出るって。」
だが、博樹はまだどこかためらいがちに、ちゃぶ台から一歩も動こうとしなかった。
「まだ背中の怪我がなおりきってないのか?」
茶の間に手をついて、竜士は尋ねた。
「いや、怪我はもうほとんど身体を動かすのに支障はなくなった。」
「だったら何故?田んぼや畑は前田さんの子分の朝山や末永が代わりにやってくれている。
邪毘屋もつかまった。もう博樹にいちゃんが心配することは何もなくなったんだぜ。それともあれか。
まだあのことにこだわっているのか?」
「・・・・・・。」
竜士はふうっとため息をついた。
「あ〜あ、やってらんねぇ。」
その時、突然シマとロペがあわただしく叫びまわる音が二人の耳に聞こえてきた。そして
「広島さんはおるかのぅ・・・。」
ガラッと玄関の扉が開き、ひょうひょうとした笑顔で達川が土間に入ってくる。
「ぁぁあああああああ!」
竜士はわなわな震えた手で、達川と玄関に隠れるようにして立っている男性を指さした。
「建さん・・・。」
博樹の言葉に、ハッと視線があい、建は丁寧に頭をさげた。
137代打名無し@ス:01/12/23 07:10 ID:8kwEgdQV
あぅ〜、五人兄弟の時系列がやっと一緒になっただよ。
ここまできたら、後は五人の誓いのシーンだけっすよ。
ああ、長かった・・・(涙 もう貴浩が緋鯉村の宝を見つけるのも
貴哉が兄弟の元に戻るのも時間の問題です。そして建たん親子の再会も。
後は(‘ ε ’)のいる質屋の猛虎屋。ここっすね、最後の鍵は。
それと佐々岡が看病している病人。これももう想像がついたでしょ(^^;
これで完全に今年中にケリがつくメドが立ちやした。できることなら、
後3日でケリつけたい。最後のラストスパート、がんがりやす。

>>129
考えなくてもいい環境から考えなくちゃいけない環境に追いつめられた。
「広島家」の輝裕の設定はかなり最初からこんな感じでした。いつ、これを
ストレートに表現できる時が来るか。ゥ再登場は結局、必然でしたっすね。
語れる相手がゥしかいない、とはじめから何度も輝裕がいっていたんすから(^^;
(また、それに気づいたのもかなり最近だったという・・・(汗 )

>>130
今、とくにこの不景気でこれに苦しんでいる人が多いような気がしやす。
自分をしっかり持っていないと、就職戦線も勝ち残れなくなってますからねぇ。

>>131
これで、実際は逆である四男と末っ子の年齢差別化をはかりやした。
なんだかんだいって「広島家」の四男は「自分」を持っている。だからそれを
外に表現する手段を教えれば問題解決。傷も浅いわけなんすが、末っ子は「自分」
を持っていない。その分遠回りもするし、傷も深い。でも実際の(・ ε ・)の悩み
もなんだかこれに近いところにあるんじゃないかと思うんすよ。10代が順調だった
人間が初めてぶちあたる壁みたいなもんすから、これ。

>>134
エセさんかな(w
よりによって(‘ ε ’)登場のあたりでこの話題がでるとは・・・(w
Dにはワラタよ。でも長男と末っ子の顔立ちは似ていると思うで〜。
138代打名無し:01/12/23 11:26 ID:AAQDXeEG
すいませんすいません!!!
気がつかずにあんなヴァカなもんを〜(ノД`)・゚・わ、忘れてください(w

しかし(‘ ε ’)と共にいたのはどっち・・・?
139代打名無し:01/12/23 12:05 ID:N3gQFo1I
(‘ ε ’)「実はモナが主役だったモナ。モナが緋鯉村の鍵を
      握るモナ‥‥‥‥‥‥‥スマンモナ‥‥」
140代打名無し@ス:01/12/24 02:15 ID:cS+Eu0LB
ちと続きに時間がかかりそうなんで、ageついでに先に。

>>138
いえいえ(w オモロかったよ♪

(‘ ε ’)と一緒にいたのは当然(・ ε ・)だよ。ちょとわかりづらかったかな(反省
田村(彰)はサーカスのエピソードまで。「輝裕」は(・ ε ・)だけっす。
甲斐と岡上は、まだ輝裕と面と向かって会ったことがないから顔を知らんわけですよ(^^;
後、あれほど「兄ちゃん」に拒否反応を示していた輝裕が、モナにそう呼べるようになったか
ここが最後のストーリーに関わるかと思いやすが、もう一つ、ムシロでモナに拾われた時と
東京音頭のシーンでは随分と時間が経っていやす。輝裕が乞食同然でムシロにくるまっていた
時に、雨が降っていた。もう一人兄弟で雨の中でズンドコを味わった人がいるかと思いやす。
これが同日に起きた出来事として書いたつもりっすが、わかりづらかったっすね・・。

>>139
いっそのこと、それも楽しいかな(爆
141代打名無し@ス:01/12/24 02:18 ID:cS+Eu0LB
輝裕が乞食同然でムシロにくるまっていた時に、雨が降っていた。
その時もう一人兄弟で雨の中でズンドコを味わった人がいるかと思いやす。

↑が抜けていやした(鬱
142代打名無し:01/12/24 12:05 ID:XOvtagOp
(‘ ε ’)/\(・ ε ・)hey♥

(‘ ε ’)のもとで元気だった(・ ε ・)がなぜにフ抜けた状態で
前田のところにいるのか・・・なぞだ〜
143広島家の人々198:01/12/24 13:18 ID:7w3I76bY
建の恰好は、あの時の壺振りの建さんとはまるで違った地味なYシャツとズボン姿だった。
達川は胸のポケットから警察手帳を取り出す。
「!」
博樹と竜士は、それで今まで起きた出来事のからくりを瞬時に知った。
「つまり、建さんのことも借金の担保も事件も、みーんなおっさんの仕掛けだった・・・。」
「キミらのおかげで懸案だった邪毘屋の徴兵詐欺事件も無事に解決できた。今日は
その礼にと思うてのぅ・・・。」
そして達川はカバンからお札の入った封筒を取り出し、ちゃぶ台の上に置いた。
「博樹さん。これは博樹さんが隣町で働いた日雇い労働の賃金。それと・・・」
達川はもう一つカバンから取り出した博樹の証文を目の前で破いた。
「捜査協力の礼金として、借金は全部チャラにしましょ。」
博樹はあっけに取られて、ちゃぶ台の上で紙くずになった借金の証文を見つめた。
「いやなに、確実に邪毘屋のしっぽを掴むには、どーしても囮として博樹さんの存在が
必要だったんよ。すまんかったのぅ、怪我をさせてしまうわ、危ない橋を渡らせたりさせて
しもうて。」
達川は頭をかきながら笑った。
「じゃあさぁ、おっさん。俺がサツにしょっぴかれていったのも、賭場でいつも建さんと
ブチ当たったんも、みんなヤラセ。」
憤懣やるかたないという態度で竜士は達川に質問した。
「ああ、そうじゃ。」
「じゃあ、あの駐在所にいた緒方って刑事や森笠もみ〜んなグル!」
「ああ、そうじゃ。」
「きぃぃぃーーっ、やられた〜〜!」
拳を何度も畳の上に叩いて、竜士はくやしがった。
「でも刑事さん、それは俺が刑事さんから借金を借りなければ話にならなかった。刑事さんに
最初話を持ちかけられた時、俺はそれを断ろうとした。この建さんから担保のことをいろいろ
聞いて・・・。それは一体どういう意味が?」
「ああ。あの時はこれで一から作戦を練り直しじゃとワシも頭を抱えたんじゃよ。じゃが、
あんたらの弟が起死回生のポカをしでかしてくれたじゃろ。」
「えっ・・・?」
「ボッチャ〜〜ン。」
「貴浩・・・!」
「あの時、あの弟が泥流に札を落とさんかったら、今こうして邪毘屋が捕まることもなかったし、
緋鯉村は邪毘屋につぶされていたかもしれんよ。そういう意味では、今度の事件での一番の
功労者はその弟かもしれんのぅ・・・。」
「・・・・・・。」
「博樹兄ちゃん。」
言葉もなく、うつむいたままの博樹に竜士はやさしく声をかけた。
「これでためらうことは何もなくなっただろ。今からでも一緒に貴浩のところに行ってやろうぜ。」
144代打名無し:01/12/24 20:38 ID:ErQRBjxl
本スレにはヴァカが来てますんでね〜あげるときは気をつけてくらはい
145代打名無し:01/12/24 21:52 ID:kg1Pz7fK
たっちゃんによるタネ明かし開始!
兄弟が再びまとまりつつありますね。
今んとこ下2人が行方不明だけど。
ラスト近し。読み手は楽しみでもあるけど寂しさもあり…。
助清さん、ラストまでがんがって下さい。
146代打名無し:01/12/25 01:50 ID:L5bSa4UL
漂流中のウチが気になる
そして特徴的なホクロを取ってしまった船頭も(藁
147広島家の人々199:01/12/25 02:05 ID:HgboyuJn
「・・・・・・。」
博樹は小さくうなずいた。
建は消え入りそうな笑顔でそんな二人を見ていた。
「建さん・・・。」
博樹は建に顔を向けた。
「息子さんが建さんのことを探しにうちに来ましたよ。今も建さんと再会できることを祈って、
毎日金本寺にご朱印に通って。きっと明日も必ず金本寺にやってきます。」
「ええ・・・。」
じわぁと涙ぐみながら、建はニッコリ笑った。
「建さんにもいろいろ大変な思いをさせたからのぅ。じゃが、これでもう過去のことは完全に
すっきり清算じゃ。明日がご朱印の結願の日。もう何の遠慮もせず、思う存分息子さんと
会うがええ。」
あたたかく達川が声をかける。
「ありがとうございます・・・!」
涙声で建は両手をついて深々と頭を下げた。

「なぁ、博樹兄ちゃん。なんかさ、こうパーッと空や周りの気色が急に明るくなったような気が
しねえか。」
「ん?」
金本寺へ向かう道。貴浩の弁当が入った風呂敷包みをブンブン振り回しながら、おどけ気味に
竜士はつぶやいた。博樹はまぶしそうに緋鯉村の景色を見回した。
「・・・そうだな。」
「いいねぇ、借金がないってのがこんなに気持ちをホッとさせてくれるなんざ、こやって経験する
まで思ってもみなかったぜ。」
晴れやかな笑顔で竜士は目を細めた。
「ところでさぁ、博樹兄ちゃんは緋鯉村の宝、あれには何が埋まっていると思っている?」
「竜士は何が埋まっていると思うんだ。」
「えっ、俺?俺は森笠のいうとおり金が埋まってるんじゃないかと・・・。いいじゃんか。今まで
借金に苦しんでいた俺らが、今度は一挙に大金持ち!くぅーっ、たまらないねぇ!」
「くっ・・・・・馬鹿・・。」
博樹は苦笑して金本寺をあがる階段を登っていった。
「あれっ、あの新聞記者、まだここにいたのか。」
境内の隅の石垣に、広瀬が少しヘコみ気味でうなだれて座っていた。
「新聞記者?」
「うん、緋鯉村の秘密を記事にしたいって4日ほど前にここにやってきたんだけど、んな無茶
だって・・・。」
「・・・・・・。」
そこへ本堂の廊下から、うひょー!という騒がしい声と共に、転げ落ちるように森笠が一枚の
絵図を持って、外に飛び出してきた。森笠は、竜士の姿を見つけると絵図を頭上に掲げて
何度も興奮してグルグルまわす。
「あった、あった〜!単なるクソ坊主の監督不届行で絵図が見つからなかっただけだったぜ〜!」
あわてて次に廊下から飛び出した横松が、森笠の言動をとめようと森笠のところに駆け寄っていく。
だが、その前に・・・
「だ〜れが、クソ坊主じゃ〜〜っ!!」
猪突猛進で本堂から駆け下りた知憲住職に、思いっきり後ろから森笠は延髄切りをくらっていた。
148代打名無し@ス:01/12/25 03:38 ID:HgboyuJn
最後の最後で、一スレ分書きあげる時間がえらくかかっている(鬱
もうゴールは目前だっつーのに、なして・・・(泣
続きはまた起きてから書きやす。うぅ、早よ完結させてぇ・・・。

>>142
おっと、前田のところにいるのが(・ ε ・)だと思いやしたか。
いや、(・ ε ・)は(‘ ε ’)のところにいるよ。じゃあ誰でしょか。
これも今日にでも判るでしょ(w

>>145
輝裕がいつ兄弟たちのもとに帰るかですね。これがラストシーンみたいなもんすよ。
かんどゥ的ラスト(?)になるかと思いやす。しっかし、これ書くために何ヶ月
かかっているのやら。アヒャヒャヒャヒャヒャ・・・

>>146
貴哉が兄弟たちのもとに戻るには、最近登場していないある人たちの力が必要に
なりやす。でも貴哉も今日には兄弟たちのもとに帰れるんじゃないかと。
トレードマークがなくなった船頭さん、さぁ〜(w
149代打名無し:01/12/25 05:09 ID:Ha+XoXOI
助清さんいつも楽しませてくれてありがとうございます。
大団円に向かって一直線って感じですな。
一時のどん底の時から比べると読むのも楽しい楽しい。
ラストまでもうちょいですか?頑張って下さい!

しかし兄貴に延髄切り喰らったカーサ……生きてるか?(笑)
150代打名無し:01/12/25 10:20 ID:/QXrsw9H
おおう!じゃあ前田ンとこにいえるのは・・・あのひとか?!
151代打名無し:01/12/25 19:01 ID:spejXEcS
建が甲斐タソと再会したら、どれだけ涙を流すのか期待(w
竜士とカーサは和むなぁ。
風呂敷包みを振り回す竜士、目に浮かぶようだ。
かなり萌え〜。

クリスマスだってのに大風邪で寝たきりです(鬱
助清さん、みなさん気をつけられたし。
152代打名無し:01/12/25 19:47 ID:UzKSJcLh
age
153広島家の人々200(・∀・):01/12/25 20:19 ID:lW0KW1tF
「森笠!」
森笠は顔面から地面に倒れて、ピクピク痙攣していた。
「住職!みんながみんな貴浩じゃないんだぜ。もう少し手加減ってもんが・・・。」
だが、竜士の非難の声にも一切耳をかさず、面白半分に知憲住職はつま先で森笠の身体を
つついて反応を楽しんでいる。
「はぁ・・・。」
竜士と横松はため息を洩らした。博樹は森笠の手から奥の院の境内図を抜きとった。
「どうじゃ、博樹。それで緋鯉村の宝のありかがわかるか?」
知憲住職が明るく博樹に声をかけた。
「いえ・・・。」
博樹は力なく首を横に振った。横から竜士と横松が絵図を覗く。
「あっ・・・!」
横松が本堂に向かって駆け出していった。
「ほぉ、横松が何かわかったのか。」
すぐに横松は一枚の小さな紙を持って戻ってきた。
「これを一緒に貴浩さんに渡して!」
博樹と竜士は思わず大きな声をあげた。
「絵図の中のこれと同じマークだ。」
「じゃあ、これが奥の院に埋まっている緋鯉村のお宝・・・?」
「何だよ、これじゃ単なる樽じゃないか・・・。」
イテテテテッと頭をさすりながら、森笠が起き上がって絵図を覗く。
「そうそう、その樽の中に金が詰まっているって、そこにくずし字で書いてあるんだよ。この坊主、
この程度のくずし字も読めないんだから、それでよく坊主なんかつとまっていたよ・・」
間髪おかず住職に張り倒され、もう一度森笠は気絶した。
「・・・・・・。」
両手をパンパンと叩いてご満悦そうに笑う住職に、博樹たちはタラリと冷や汗が流れた。
「さあ、後はこれでその絵図を貴浩に届けて、お宝の件はほぼ解決じゃな。」
住職はおどけるような態度で声をかける。竜士は首をかしげた。
「住職はこれで一件落着だと?」
「ああ。後は貴浩にすべてまかせても、あいつの力でも無事解決できるじゃろ。それよりお前ら。
お前らは前田のところに佐々岡の爺がいることは知っとってたか?」
「はい、前田さんから爺が今静養していることは教えてもらいました。」
「じゃあ、佐々岡の他にお前らの家族があそこにいることは、前田に教えてもらったか?」
博樹と竜士は固まったまま、呆然と知憲住職の顔を見た。住職はククッと吹きだした。
「早くお宝を見つけて、貴浩と3人で前田の庵へ行くことだな。家族の顔を見るのが病人にとって
一番の薬じゃろうて。」
「住職・・・。それって貴哉か輝裕が・・・!」
絵図をギュッと握りしめて、博樹が奥の院に向かって駆け出していった。
「待てよ、博樹兄ちゃん。俺も一緒に行くってば!」
あわてて竜士は後を追いかけていく。どちらともなく、走りながら二人は力強くうなずいた。
「こうなったら、さっさと三人でお宝を見つけて、前田さんのところへ行こうぜ!」
横松はホッと胸を撫でおろして、少し涙ぐむ。小気味よい笑みで浮かべて、知憲住職も
二人の後ろ姿を目を細めて見送っていた。

スマソ・・・。まだ文章が変な気がするんだけど、これ以上遅れても悪いんでこんなもんをうぷしやす・・・(鬱
154広島家の人々201:01/12/26 02:17 ID:LkoOCw/u
とうとうこの日が来た。甲斐は次から次へと湧き起こる胸の高鳴りを懸命におさえながら、
震える足で鯉城駅に降りた。改札口では鋏を持った駅員の木村が笑顔でやさしく甲斐を
出迎える。
「よく頑張ったね。お父さんはもう緋鯉村に到着しているよ。」
甲斐の目元が涙でじわぁとあやしくなった。
「・・・ありがとうございます。」
木村に丁寧に頭を下げると、甲斐は全速力で金本寺に向かって駆け出していった。
「あっ、来た来た!」
金本寺の本堂の階段には、いつものように横松が手箱を横に置いて甲斐がやってくるのを
待っている。息が切れるのも構わず、甲斐はそのまま休まず横松のもとへと駆け寄った。
「お疲れさま。」
甲斐から渡されたご朱印帳を横松は名残惜しげに見つめ、ゆっくりと中を開いた。
と、その時、スッと音もなく後ろからご朱印帳を奪い去ってしまう人間がいる。
「今までよく頑張ったな。よし、ご褒美として最後はワシの直筆のご朱印じゃ!」
横松が我にかえる前に、知憲住職はご朱印帳の最後の頁に“天晴”と書き、グリコの
ハンコを押した。
「ぁぁぁぁぁぁ・・・・・。」
うらめしそうな声を横松があげた。
「なんじゃ、何か文句でもあるのか?」
しれっとした態度で住職は横松の反論を封じ込めた。ショボンと横松はうなだれた。
知憲住職はご朱印帳を甲斐にかえした。万感の思いで甲斐はご朱印帳を抱きしめる。
「よくやった、よくやった。」
知憲住職はニッコリと甲斐の頭をやさしく何度も撫でた。
「おお、もう来とったんか、甲斐くん。」
いつの間にか、寺の入り口に達川が来ていた。ハッと振りかえって甲斐は達川のもとに
駆け寄っていった。
「ほぉ、上出来上出来。」
甲斐から差し出されたご朱印帳を達川は満足そうに眺めた。
「それで、父は・・・?」
達川はニヤッと笑った。
「お父さんは甲斐くんがまっさきに思い浮かぶ場所におるよ。」
パッと甲斐の顔が輝いた。とるものもとりあえず、飛びつかんばかりに階段を下りていく。
「ヤターーーーーーーーーーッ!!」
突然、奥の院の階段からけたたましい歓声が聞こえ、泥だらけの貴浩が樽を頭上に掲げて
ドタドタと境内に駆け下りてきた。続いてお祭り状態の森笠、シマ、そして竜士が。
「まるで今日は盆と正月が一挙に来たみたいな騒ぎだね。」
樽を叩き割って、大判小判をばら撒く狂奔状態の貴浩たちを、半分苦笑して横松、博樹ら
周りの人間は見ていた。
155代打名無し:01/12/26 02:26 ID:dM9Kd36B
兄貴たちよ、残りの兄弟忘れてないか?(w
156代打名無し@ス:01/12/26 02:37 ID:LkoOCw/u
頭がパニクッて、どこからオチをつけたらいいのやらわからなくなってしまう
今日この頃(鬱 昨日中にケリつけるつもりだった貴哉の再登場までいきやせん
でしたね・・・。はぁ。広瀬のオチを入れるタイミングも外した気がするし、
どうするべ。ったく・・・。(’。’)エーンエーン
202が建たん親子の再会シーン+貴哉が緋鯉村に帰ってくる話になると思いやす。
で、203後半から(・ ε ・)が主人公で(‘ ε ’)との関係から兄弟のもとに
戻るエピソード。貴哉が広島家に戻ったら、書くスピードもあがると思うんやが(泣

>>149
ズンドコシーンはつらかったかいね。ラストまでのメリハリを出すために入れた設定
やったが、ラストで苦しんでるし。一直線になっていたらうれしいよぅ(泣
もう何やってんだか・・・。

>>150
さて、当たっていますでしょか(w

>>151
あ・・・(;´Д`)泣く・・・ですか。そこまで描写しないかも・・・なんですわ(汗
建たん親子のラストシーン。
157代打名無し:01/12/26 02:47 ID:TQ2Ok6T2
>>156
149です。
ズンドコシーンは読んでて辛いというか・・・登場人物にシンクロしちゃいまして。
特に博樹・・・大変だったもんなぁ。
ラストまで行ったら今までのみんなの苦労を思って絶対泣いちゃいますよ、自分(w
158代打名無し:01/12/27 06:22 ID:6mee9UMt
age
159代打名無し:01/12/27 19:42 ID:HbwhZxI0
age
160広島家の人々202:01/12/28 15:52 ID:TbKIYdJr
あともう少し・・・、あともう少し・・・!
甲斐は一直線にある場所に向かって駆けていく。視界に何度も祈りをこめて眺めたあの
鳥居が見えてくる。ここにいる。父は絶対この神社で自分を待っている。甲斐はまったく
足をとめず、鳥居をくぐり抜けていった。一段上がった本殿まで延々と石畳の参道が続く。
夜店があったところ。人々がにこやかに談笑していたところ。甲斐は右に左に振り向いて、
建の姿を探した。
本殿にあがる石段が目の前に見えてきた。甲斐はためらいもなく石段を上っていった。
だんだん本殿を囲む光景が甲斐の視界にあらわになっていく。そして・・・
「父さん!」
建は、直立で本殿に向かって手を合わせていた。そして甲斐の声に、雷に打たれたように
後ろに振り向く。甲斐の笑顔が輝かんばかりに満面の笑みに変わった。
神社の周りを覆う杉の木立から心地よい風が二人をつつみこむ。
飛びつくように甲斐は建に抱きついていた。

「あれがお宝なのか・・・!」
一人蚊帳の外にいた新聞記者の広瀬は、興奮して遠くから乱チキ騒ぎの貴浩らを見つめた。
このまま手ブラで帰る訳にもいかず、何か記事になるものはないかと金本寺で今日まで
頑張って粘っていたが、待っていた甲斐があったではないか。目の前に手招きするように
お宝というスクープが転がっている。だが、
「問題は掟か・・・。」
広島家の人間が取材を許可するとは、とてもじゃないが思えなかった。
博樹が、広瀬の姿に気がついてこちらに近づいていく。
「よろしかったら、あなた方の新聞の取材に協力しましょうか。」
ヘ・・・?広瀬は目が点になった。博樹はニッコリ笑ってうなずく。
「ただし、一つだけ条件があるのですが・・・。」
「ああ、もう取材に協力してもらえるなら、何でも条件は飲みますっ!!」
広瀬は感激して両手で博樹の手を掴んで、何度も上下に揺らした。その時、寺の入り口に
また新しい人間が息せき切ってやってくる。
「あっ、いたいた!博樹さん、竜士さ〜ん!!見つかった!見つかったんですよ、貴哉くんがっ!!」
ハッと博樹ら兄弟たちは、貴哉のことを伝えた配達員の福地に視線を向けた。
「早く港に行ってあげてくださいよ。町田さんと浅井さんが沖に浮遊していた貴哉くんを発見して
助けてあげたんですって。」
笑顔で伝える福地の言葉を兄弟たちは最後まで聞いていなかった。
「あ、あの条件とは具体的に・・・。」
広瀬はまた次のタイミングを失った。気づいた時は博樹ら兄弟は港に向かって金本寺から全員
姿が消えていた。
161代打名無し@ス:01/12/28 16:04 ID:TbKIYdJr
体調とスランプでなかなかパソコンの前に座れず、遅くなりやした(鬱
建たん親子出番終了。金本寺も終了。悩みに悩んだシーンも終わったことだし、
これで少しはテンポがつくかと。意地でも今年中に終わらせるでよ(泣

>>155
結構いい性格してるかもしれませぬ、兄貴たち・・・(汗w

>>157
博樹兄ちゃん、そんなにズンドコでしたか(^^;(随分泣かせたしなぁ。)
長男ってキャラがなおさら不幸を増幅したっつーか。「広島家」のラストは
博樹の台詞で終わりやす。泣いてけれ(w これを言わせたくてズンドコ不幸
一直線にしてしまったところもあるかもしれんす。
162広島家の人々203:01/12/28 22:12 ID:wYF3XY9E
「ここは・・・?」
貴哉は無意識に天上に手を伸ばした。だんだんうっすらと視界がハッキリしていく。どこか見覚えの
あるこの光景は・・・。
「あ、あれ!?」
あわてて貴哉は布団から飛び起きた。と同時に、頭におもりのような鈍痛がガンガン響く。
「ほら、いきなり派手に動くのは、まだ無理だって。」
横で貴哉の看病をしていた貴浩に、強引に貴哉は布団に戻された。まだ事情がわからず、貴哉は
ボーッとした表情でまわりをグルッと見回した。確かにここは自分の家だ。だが、自分は櫂を落とした
あのほくろの船頭の小船の中で海に流浪していたのではなかったか。
「脱水症状で小船の上でぐったりしていたお前と船頭を、漁の帰りの町田さんと浅井さんが見つけて
くれたんだよ。」
博樹が冷たい水の入ったコップと水差しを持ってきて、貴哉に説明した。
「良かった、すぐに町田さんたちが応急処置を施してくれたおかげでこの程度に済んで。後でちゃんと
町田さんたちのところへ礼に行かなきゃな。」
頭痛がとまるまで飲み続けろと、否をいわせぬ態度で博樹は貴哉にコップを渡すと、貴浩の隣に腰を
おろした。貴哉は信じられないものでも見るように、その後普通に会話を交わす博樹と貴浩を見つめた。
自分が家出している間に、二人の兄の関係が元に戻っていた。知らないうちに貴哉の目がうるんでいた。
兄たちに隠すように、黙って貴哉は水差しから何度も水を汲んで飲んでいた。
そういえば、もう一つ大事なものがあったはずである。アレは一体どこに行ってしまったのだろうか。
「おっ、気がついたか、貴哉!」
貴哉の身体がビクッと固まった。アレが入った桶を持った竜士が土間から笑顔で貴哉に声をかける。
次には頭痛をものともせず、貴哉は桶を持った竜士に猛ダッシュで飛びかかっていた。あわてて博樹
と貴浩が、身体をはって後ろから貴哉の動きを封じ込める。
「そ、それだけはダメッ!絶対にダメだぁ!」
「お、おい、俺は何もやってないって。」
二人の兄たちに身体の動きを封じこめられても、掴みかからんばかりに必死に竜士に懇願する貴哉に、
半分恐れをなして竜士は持っていた河豚の桶を貴哉に見せた。
「あ・・・・・。」
安心から貴哉の力がガクッと抜ける。
「これは輝裕が戻ってきた時、兄弟が5人揃った時にみんなで食べよう。それならいいだろ、貴哉?」
竜士の言葉に、貴哉は目を見開いてジーッと桶の中の河豚を見つめ、それからコクンとうなずいた。
「しかし、貴哉がこうして帰ってきたとなると、住職がいっていた前田さんの庵で養生している俺たちの
家族っていうのは輝裕のことか・・・。」
「爺が介護してくれているっていうのが一安心だがな。」
「貴哉の身体の具合が落ち着いたら、明日にでも4人で前田さんの庵に行ってみるか。」
四人はお互いに顔を見合わせて、うなずいた。
163広島家の人々204:01/12/29 02:47 ID:tSkvnM8e
夕日が大通りの先に影を落とすように沈んでいく。
今日の仕事を終えた輝裕は、猛虎屋の主人からもらったお小遣いを握り締めて、大喜びで大通りに
飛び出した。その後をぼんやりとした表情で今岡がゆっくりと歩いていく。
「もうトロいんだから、兄ちゃんは・・・!」
輝裕は今岡のところまで駆け戻り、せかすようにして腕を引っ張っていった。
「輝裕がせっかちだモナ。」
今岡はボーッと、輝裕に引っ張られるまま、ドタドタ後をついていった。
輝裕が猛虎屋の世話になって数週間が過ぎた。最初は無気力なボロボロの乞食同然の恰好で
猛虎屋に連れてこられた輝裕も、今では手代の今岡の片腕として、なくてはならない存在にまで
成長していた。何より短期間で輝裕の自信を取り戻したのは、学校で習ったことが猛虎屋の仕事の
至るところで役に立ったことだった。輝裕もはじめは客人の扱いで客間で寝たきりの状態だったが、
たまに食事を持ってきてくれたり、看病をしてくれる今岡がやらかすヘマの数々が気になって仕方がない。
とうとう一度布団を抜け出して、今岡の仕事を手伝いに店の軒先に顔を出したのが、猛虎屋に奉公
するようになったきっかけだったが、どうしてこんな失敗をしでかすのか。今岡の想像つかない
最悪なチョンボのオンパレードに、はじめはアッケに取られていた輝裕もだんだんそのヘマを楽しむ
余裕が生まれてきた。今岡の顔が自分とよく似ていたことも、気持ちにゆとりを持てるようになった
理由かもしれない。猛虎屋の主人“とら”も、奉公人である赤星や濱中たちも決して自分の素性を
くわしく詮索することはしなかった。輝裕は広島姓を名乗らず、ただの輝裕として、猛虎屋の温かい
雰囲気の中で傷ついた心を癒していった。そのうち手代まで出世しながらヘマを繰り返す今岡と、
商売の世界にまだ完全に慣れてない輝裕、二人でやっと一人前のような関係に、赤星たちが
今岡を兄、輝裕を弟に例えて「兄弟」と呼ぶようになる。不思議だった。あれほど強烈に「兄」という
言葉、「兄弟」という言葉に拒絶していた自分が、それほど嫌悪感をなく、その言葉を受け入れている。
いつしか輝裕自身が今岡のことを「兄ちゃん」と読んで、ぶしつけなくらい甘えられるまでになっていた。
だが自分の素性を明かすところまでは、まだ輝裕の心の中に見えない恐れが残っていた。
二人は、夜店が続く縁日通りに足を踏み入れていった。
「輝裕、輪投げがあるモナ。」
この時だけ今岡はうれしそうな表情をあらわにして、ある夜店の中に入っていく。
「兄ちゃん、また景品の蟹缶目当てなの?」
輝裕はあきれた声をあげながらも、面白がって後をついていった。
「はぃれぇーーー!!!」
今岡の大きな声が店内に響く。
「お客さ〜ん、今日も大当たり〜〜っ!!」
夜店の主人が派手派手しく鐘を鳴らした。今岡は山のように念願の蟹缶を手にする。
プププッと笑いをこらえながら、輝裕は先に店を出た。と、同時にピタッと凍りつくように身体の動きがとまる。
「前田さん、どうして・・・。」
本来そこにいるはずのない前田が、人ごみの中にまぎれて反対方向に向かって歩いていた。
164広島家の人々205:01/12/29 04:47 ID:tSkvnM8e
「輝裕、どうしたモナ?」
蟹缶を両手に満足そうに夜店を出た今岡を見つけると、輝裕はすぐ前田から姿を隠すように後ろに回り込み、ガタガタ震えた。前田は輝裕の姿に気づかず、どんどんと遠ざかっていく。
「モナ?」
今岡は不思議そうに後ろで震えている輝裕を見つめた。

「ああ、もう一体どこに行っていたんですか。」
病人を載せてあてどもなく車椅子を引いていた佐々岡は、やっと自分のところに戻ってきた前田に、
つい不満そうな声をあげた。さすがの前田も佐々岡の前では黙って頭を下げるばかりだった。
「で、車椅子の調子はどうだ。」
「ええ。なかなかの使い心地で、これなら村での移動も天気のいい日ならそれほど支障なく動けます。
質屋の猛虎屋の商品といったら、ピンからキリまでの差が激しくて有名な店なのに、よくこんな
掘り出し物が見つかったもんですよ。」
「これで親父さんにようけ景色を見せて刺激を与えたら、少しは元に戻ってくれるんじゃろうか。」
「そう思いたいのですが・・・。」
前田に車椅子の取っ手を代わってもらい、佐々岡はボーッと前を見たままの車椅子の浩二の膝元に
もう一度毛布をかけなおした。
「後な、爺。広島家から二つ吉報がきてな、行方知れずだった貴哉が広島家に帰ってきたこと。
それととうとう貴浩が緋鯉村のお宝を見つけたらしいわ。」
「えっ、貴浩坊ちゃんと貴哉坊ちゃんが!」
佐々岡の顔がパッと輝いた。
「それまで、今広島家の兄弟は4人まで家に戻ってきたんですね。」
「ああ。それで親父さんのことを住職に聞きつけたらしく、親父さんに会いたいと朝山たちに連絡を
寄越したらしい。ワシらはしばらくこの街に滞在する予定じゃ。どうせならお前らがこっちに来いと
朝山に伝えておいたがのぅ。」
「じゃあ・・・!」
佐々岡は浩二の手を包み込むように両手で強く握った。が、そのうちだんだん悲しそうな表情で下に
うつむいていく。
「これで、輝裕坊ちゃんがいらっしゃったら・・・。」
前田も無言でうなずいた。

輝裕はまだ胸の動揺がおさまらなかった。もう自分の中では克服したものだと思っていた。このまま
広島家のこと緋鯉村のこと何もかも忘れ、猛虎屋で新しく生きていこう・・・と思っていた自分の気持ち
は結局単なる思い込みだったのか。過去は断ち切れない。前田の姿を見た時、逃げようとした自分
以外に、飛びつかんばかりに駆け寄ろうとした自分がいたことも事実だった。一体、自分の本音は
どっちだったのか。いきなり表面に現れたもう一つの感情に輝裕はとまどいを隠せなかった。
165広島家の人々206:01/12/29 06:41 ID:tSkvnM8e
元気のない輝裕を、今岡は見世物の覗きからくりに誘ってくれた。お金を払って覗き箱にいくつも
備えつけられた遠眼鏡の穴を覗き込む。中では遠近感の激しい空間の中で一つの物語が始まろうと
していた。

これはこの世のことならず 死出の山路の裾野なる さいの河原の物語・・・・・

物語は地蔵和讃だった。覗き箱の中で泣きながら河原で小石を積む子供たちの姿が浮かび立つ。

─── 十にも足らぬおさなごが 父恋し母恋し 恋し恋しと泣く声は この世の声とは事変わり
  悲しさ骨身を通すなり・・・・・・

「恋し恋しと泣く声は・・・。」

─── 一重組んでは父のため 二重組んでは母のため 三重組んではふるさとの
  兄弟我身と回向して・・・・・・

「兄弟我身と回向して・・・。」

リズムあるお囃子にあわせて語られる物語の節を、輝裕は何かに取り憑かれたように小声で
呟いていた。河原で淋しく泣きながら小石を積む子供たち。しかし何度も何度も小石を積んでも、
地獄の鬼にすべて壊されてしまう。絶望からうつろな目で呆然と壊れた小石の山を見つめる
子供に地蔵が救いの手をのべる。忘れていた安らぎにふれた子供はうれしそうに地蔵に求める
のだ。親や兄弟を・・・。
遠眼鏡から目を離した輝裕は、いたたまれずその場からすぐ駆け足で立ち去った。あわてて
今岡が後を追いかけていく。
「輝裕・・・?」
突然、うつむいたまま輝裕がピタッと立ち止まる。
「兄ちゃん・・・。家族とか兄弟ってなんだろうね。」
輝裕は自分の気持ちをもてあましていた。もてあまして泣きそうな表情になっていた。
「今日はもう店に帰ろうモナ。」
「・・・・・うん。」
輝裕は、はにかむように小さくうなずいた。
頃は逢魔の刻だった。帰り道、輝裕はもう一人、この世にいるはずのない人間の遠い影を見た。
「父さん!」
何かにはねつけられたかのように、輝裕は影に向かって駆け出していく。そして途中でハッと
我にかえった。その時にはもう、車椅子に乗った父の姿は消えていた。
「父さん・・・。嘘じゃないよね。あれは本当に父さんだよね・・・!」
しかし、輝裕の心は急速な勢いで、ある方向への道が固まりはじめていた。
166代打名無し:01/12/29 08:15 ID:jSSszrFj
終わりが見えてきましたね。
楽しみな反面寂しいなぁ。
こんなシリアスな中に(‘ ε ’)‥‥。
蟹缶に大笑いしちまいました(w
167代打名無し@ス:01/12/29 09:55 ID:P2bZg8hO
やってしまった・・・(泣 203から文章になっていない(大泣
203で出さなきゃいけなかったブリの出番も忘れているし、やっぱ
夜、勢いで書いたものをそのままうぷしちゃいけんかった。
(166さんも読みづらかったでしょう(鬱 )
ホンマにどうしようもない文章をうぷしてスンマヘンでしたm(_ _)m

これだけはもう絶対やりたくなかったんすが、ラストのラストで
文章になってない代物そのまんまの状態でほっとくのはもっと許せないので
203からブリも登場した改訂版をもう一度うぷしやす。

あと、今日で「広島家の人々」は完結しやす。長い間どうもお世話になりやした!
168広島家の人々203(改訂版):01/12/29 09:56 ID:P2bZg8hO
「ここは・・・?」
貴哉は無意識に天上に手を伸ばした。だんだんうっすらと視界がハッキリしていく。どこか見覚えの
あるこの光景は・・・。
「あ、あれ!?」
あわてて貴哉は布団から飛び起きた。と同時に、頭におもりのような鈍痛がガンガン響く。
「ほら、いきなり派手に動くのは、まだ無理だって。」
横で貴哉の看病をしていた貴浩に、強引に貴哉は布団に戻された。まだ事情がわからず、貴哉は
ボーッとした表情でまわりをグルッと見回した。確かにここは自分の家だ。だが、自分は櫂を落とした
あのほくろの船頭の小船の中で海に流浪していたのではなかったか。
「脱水症状で小船の上でぐったりしていたお前と船頭を、漁の帰りの町田さんと浅井さんが見つけて
くれたんだよ。」
博樹が冷たい水の入ったコップと水差しを持ってきて、貴哉に説明した。
「良かった。すぐに町田さんたちが応急処置を施してくれたおかげでこの程度に済んで。後でちゃんと
町田さんたちのところへ礼に行かなきゃな。」
頭痛が止まるまで飲み続けろと、否をいわせぬ態度で博樹は貴哉にコップを渡すと、貴浩の隣に腰を
おろした。貴哉は信じられないものでも見るように、その後普通に会話を交わす博樹と貴浩を見つめた。
自分が家出している間に、二人の兄の関係が元に戻っている。知らないうちに貴哉の目がうるんでいた。
「・・・・・・。」
兄たちに隠すように、貴哉は何度も水差しから水を汲んでは黙って飲み続けていた。
そうだ。そういえば、もう一つ大事なものがあったはずである。アレは一体どこに行ってしまったのだろうか。
「おっ、気がついたか、貴哉!」
貴哉の身体がビクッと固まった。河豚が入った桶を持った竜士が土間から笑顔で貴哉に声をかける。
「ぁああっ!」
頭痛をものともせず、瞬間的に貴哉は桶を持った竜士に猛ダッシュで飛びかかっていた。あわてて博樹
と貴浩が、身体をはって後ろから貴哉の動きを封じ込める。
「そ、それだけはダメッ!絶対にダメだぁ!」
「お、おい、俺はまだ何もやってないって。」
二人の兄たちに身体の動きを封じこめられても、掴みかからんばかりに必死で竜士に懇願する貴哉に、
半分恐れをなして竜士は持っていた河豚の桶を貴哉に見せた。
「あ・・・・・。」
安心から貴哉の力がガクッと抜ける。
「今日の夕飯は、町田さんたちが持ってきてくれたブリの照り焼きだよ。これは輝裕が戻ってきた時、
兄弟が5人揃った時にみんなで食べよう。な、それならいいだろ、貴哉?」
竜士の言葉に、貴哉は目を見開いてジーッと桶の中の河豚を見つめる。
「うん。」
やっと納得したように、貴哉は返事をした。
「しかし、貴哉がこうして帰ってきたとなると、住職がいっていた前田さんの庵で養生している
俺たちの家族っていうのは輝裕のことか・・・。」
「爺が介護してくれているっていうのが一安心だがな。」
「貴哉の身体の具合が落ち着いたら、明日にでも4人で前田さんの庵に行ってみるか。」
四人はお互いに顔を見合わせて、うなずいた。
169広島家の人々204(改訂版):01/12/29 09:58 ID:P2bZg8hO
夕日が大通りの先に影を落とすように沈んでいく。
今日の仕事を終えた輝裕は、猛虎屋の主人からもらったお小遣いを握り締めて、大喜びで大通りに
飛び出した。その後をぼんやりとした表情で今岡がゆっくりと歩いていく。
「もうトロいんだから、兄ちゃんは・・・!」
輝裕は今岡のところまで駆け戻り、せかすようにして腕を引っ張っていった。
「輝裕がせっかちだモナ。」
今岡はボーッと、輝裕に引っ張られるまま、ドタドタ後をついていった。
輝裕が猛虎屋の世話になって数週間が過ぎた。最初は無気力なボロボロの乞食同然の恰好で
猛虎屋に連れてこられた輝裕も、今では手代の今岡の片腕として、なくてはならない存在にまで
成長していた。何より短期間で輝裕の自信を取り戻したのは、今まで学校で習ったことが猛虎屋の
仕事の至るところで役に立ったことからだった。もちろん、輝裕もはじめは客人の扱いで客間で寝た
きりの状態だった。だが、たまに食事を持ってきてくれたり、看病をしてくれる今岡のやらかすヘマ
の数々が気になって、おちおち寝てもいられない。しまいには、とうとう布団を抜け出して今岡の
仕事を手伝いをしに店先に顔を出す羽目にまで、自発的に輝裕は追い込まれてしまっていた。
結局、これが住みこみで猛虎屋に奉公するようになったきっかけになった訳だが、しかしどこを
どうやったらこんな失敗をしでかすのか。今岡の想像つかない最悪なチョンボのオンパレードに、
はじめはアッケに取られていた輝裕も、だんだんそのヘマを楽しむ余裕が生まれてきていた。
今岡の顔が自分とよく似ていたことも、気持ちにゆとりを持てるようになった理由かもしれない。
それに猛虎屋の主人“とら”も、奉公人である赤星や濱中たちも、自分の素性をくわしく詮索する
ようなことは決してしなかった。輝裕は広島姓を名乗らず、ただの輝裕として、猛虎屋の温かい
雰囲気の中で傷ついた心を癒していった。そのうち手代まで出世しながらヘマを繰り返す今岡と、
商売の世界にまだ完全に慣れてない輝裕、二人でやっと一人前のような関係に、赤星たちが
今岡を兄、輝裕を弟に例えて「兄弟」と呼ぶようになっていく。不思議だった。あれほど強烈に
「兄」という言葉、「兄弟」という言葉に拒絶していた自分が、それほど嫌悪感もなく、その言葉を
受け入れるようになっている。それどころか、いつしか輝裕自身が今岡のことを「兄ちゃん」と呼んで、
ぶしつけなくらい今岡に甘えられるまでになっていた。だが・・・。
自分の素性を明かすところまでは、まだ輝裕の心の中に見えない恐れが残っていた。
二人は、夜店が続く縁日通りに足を踏み入れていった。
「輝裕、輪投げがあるモナ。」
この時だけ今岡はうれしそうな表情をあらわにして、ある夜店の中に入っていく。
「兄ちゃん、また景品の蟹缶目当てなの?」
輝裕はあきれた声をあげながらも、面白がって後をついていった。
「はぃれぇーーー!!!」
今岡の大きな声が店内に響く。
「お客さ〜ん、今日も大当たり〜〜っ!!」
夜店の主人が派手派手しく鐘を鳴らした。今岡は山のように念願の蟹缶を手にする。
プププッと笑いをこらえながら、輝裕は先に店を出た。と、同時にピタッと凍りつくように身体の
動きがとまった。
「前田さん、どうして・・・。」
そこにいるはずのない前田が、人ごみの中にまぎれて反対方向に向かって歩いていた。
170広島家の人々205(改訂版):01/12/29 10:25 ID:P2bZg8hO
「輝裕、どうしたモナ?」
蟹缶を両手に満足そうに夜店を出た今岡を見つけると、輝裕はすぐ前田から姿を隠すように
後ろに回り込み、ガタガタ震えた。前田は輝裕の姿に気づかず、どんどんと遠ざかっていく。
「モナ?」
今岡は不思議そうに後ろで震えている輝裕を見つめた。

「ああ、もう一体どこに行っていたんですか。」
病人を乗せてあてどもなく車椅子を引いていた佐々岡は、やっと自分のところに戻ってきた前田に、
不満そうな声をあげた。さすがの前田も佐々岡の前では黙って頭を下げるばかりだった。
「で、車椅子の調子はどうだ。」
「ええ。なかなかの使い心地で、これなら村での移動も天気のいい日なら、それほど支障なく
動けますね。でも、質屋の猛虎屋の商品といったら、ピンからキリまでの差が激しくて有名な
店なのに、よくこんな掘り出し物が見つかったもんですよ。」
「これで親父さんにようけ景色を見せて刺激を与えたら、少しは元に戻ってくれるんじゃろうか。」
「そう思いたいのですが・・・。」
前田に車椅子の取っ手を代わってもらい、佐々岡はボーッと前を見たままの車椅子の浩二の膝元に
もう一度毛布をかけなおした。
「それとな、爺。広島家から二つ吉報がきてな、行方知れずだった貴哉が広島家に帰ってきたこと。
それと、とうとう貴浩が緋鯉村のお宝を見つけたらしいわ。」
「えっ、貴浩坊ちゃんと貴哉坊ちゃんが!」
佐々岡の顔がパッと輝いた。
「それでは今、広島家の兄弟は4人まで家に戻ってこられたんですね。」
「ああ。それで親父さんのことを住職に聞きつけたらしく、親父さんに会いたいと朝山たちに連絡を
寄越したらしい。ワシらはしばらくこの街に滞在する予定じゃ。どうせならお前らがこっちに来いと
朝山に伝えておいたがのぅ。」
「じゃあ・・・!」
佐々岡は浩二の手を包み込むように両手で強く握った。が、そのうちだんだん悲しそうな表情で
下にうつむいていく。
「これで、輝裕坊ちゃんがいらっしゃったら・・・。」
「・・・・・・。」
前田も無言で浩二を見つめた。

輝裕はまだ胸の動悸がとまらなかった。もう自分の中では克服したものだと思っていた。このまま
広島家のこと緋鯉村のこと何もかも忘れ、猛虎屋で新しく生きていこう・・・そう思っていた自分の気持ち
は結局単なる思い込みだったのか。過去は断ち切れない。前田の姿を見た時、逃げようとした自分の
他に、飛びつかんばかりに駆け寄ろうとした自分がいたことも事実だった。一体、自分の本音は
どっちなのか。いきなり表面に現れたもう一つの感情に輝裕はとまどいを隠せなかった。
171広島家の人々206(改訂版):01/12/29 10:38 ID:P2bZg8hO
元気のない輝裕を、今岡は見世物の覗きからくりに誘ってくれた。お金を払って覗き箱にいくつも
備えつけられた遠眼鏡の穴を覗き込むと、遠近感の激しい空間のそこで、一つの物語が始まろうと
していた。

これはこの世のことならず 死出の山路の裾野なる さいの河原の物語・・・・・

物語は地蔵和讃だった。覗き箱の中で泣きながら河原で小石を積む子供たちの姿が浮かび立つ。

─── 十にも足らぬおさなごが 父恋し母恋し 恋し恋しと泣く声は この世の声とは事変わり
  悲しさ骨身を通すなり・・・・・・

「恋し恋しと泣く声は・・・。」

─── 一重組んでは父のため 二重組んでは母のため 三重組んではふるさとの
  兄弟我身と回向して・・・・・・

「兄弟我身と回向して・・・。」

リズムあるお囃子にあわせて語られる物語の節を、輝裕は何かに取り憑かれたように小声で
呟いていた。河原で淋しく泣きながら小石を積む子供たち。しかし何度も何度も小石を積んでも、
地獄の鬼にすべて壊されてしまう。絶望からうつろな目で、呆然と壊れた小石の山を見つめる
子供に地蔵が救いの手をのべる。忘れていた安らぎにふれた子供はうれしそうに地蔵に求める
のだ。親や兄弟を・・・。
遠眼鏡から目を離した輝裕は、いたたまれずその場からすぐ駆け足で立ち去った。あわてて
今岡が後を追いかけていく。
「輝裕・・・?」
突然、うつむいたまま輝裕がピタッと立ち止まる。
「兄ちゃん・・・。家族とか兄弟ってなんだろうね。」
輝裕は自分の気持ちをもてあましていた。もてあまして泣きそうな表情になっていた。
「今日はもう店に帰ろうモナ。」
「・・・・・うん。」
輝裕は、はにかむように小さくうなずいた。
頃は逢魔の刻だった。帰り道、輝裕はもう一人、この世にいるはずのない人間の遠い影を見た。
「父さん!」
何かにはねつけられたかのように、輝裕は影に向かって駆け出していく。途中でハッと輝裕は
我にかえった。その時にはもう、車椅子に乗った父の姿は消えていた。
「父さん・・・。嘘じゃないよね。あれは本当に父さんだよね・・・!」
輝裕の心は急速な勢いで、ある方向へ固まりはじめていた。
172広島家の人々207:01/12/29 12:44 ID:P2bZg8hO
葛藤と戦いながら、はじめて輝裕は真正面から自分の気持ちと向き合った。
そもそも輝裕がここまで苦しむことになったきっかけは、高等学校の進学問題からだった。
自分が何故勉強するのか、理由をあいまいにしたまま広島家の借金問題が絡んで、輝裕は
出口の見えない迷路に迷いこんだ。でも、今の自分ならわかる。猛虎屋のみんなが教えて
くれた。何故勉強するのか、したいのか。自分の本音は高等学校進学を希望していた。
厳しい貧乏の中でも、貧乏だからこそ出来る限りたくさんの知識を吸収して、苦しんでいる周り
の人々の力になりたかった。兄弟たちや大下教頭が無理してまで輝裕の進学に力を注いで
くれた理由は、つまりそういうことだったのだ。博樹の言葉がよみがえる。
─── 輝裕には可能性がある。せめてあいつだけでも俺は進学させてやりたいんだ。
自分は、兄の真意を汲み取ることができなかった。
─── お前一人が良ければそれでいいのか。随分といいご身分になったもんだなぁ!
今なら大下の辛辣な言葉の意味がよくわかる。自分はいかに気ままで自己満足な考え方を
していたのだろう。そして自分はそんな環境に耐えられず、勝手に広島家から逃げ出した。
こんな我儘な弟を、兄たちは許してくれるのだろうか。もう一度受け入れてくれるのだろうか。
「なんや風邪ひくで、輝裕くん。」
夜遅く、冷たい廊下の柱に寄りかかって物思いにふけっている輝裕に、店の主人のとらが
心配して毛布を持ってきてくれた。
「なんだか眠れなくって・・・。」
軽く会釈しながら、輝裕は寂しく笑った。
自分の本当の答えはもう決まっていた。だが、それは今まで姿として現さなかった恐れと
同じものだった。今はまだこうして猛虎屋のやさしさにふれていたかった。輝裕は最後の
一歩を踏み出すことができなかった。

「まさか、ここに輝裕がいるとは・・・。」
博樹は呆然と馴染みのあるプラットホームに降り立った。その後をもの珍しそうに竜士ら3人の
弟が次々に汽車から降りていく。
「へぇ、やっぱ都会は町並みからして全然違うなぁ。」
貴浩が興奮気味に駅の周りをキョロキョロと見回した。ここは、博樹がしばらくの間通っていた
高等学校のある街。そして玉木のコーヒー店のある街だった。
「で、爺と前田さんはどこにいるんだ。」
改札口を出て、竜士は雑然と通り過ぎていく人ごみの中から二人の姿を探した。
「あ・・・!」
貴哉が大声をあげて、ある場所を指差して固まる。残り3人も貴哉が指さした場所に振り向いて、
身体の動きがとまった。
「そんな・・・馬鹿な・・・!」
「お、おい、冗談だろ・・・。」
「でも、あれは間違いなく・・・。」
「父さんだよ・・・!」
腕組みをした前田が力強くうなずく。車椅子の取っ手を握った佐々岡の爺が笑顔で会釈する。
4人は人ごみの波をくぐり抜けて、我先に車椅子の父のもとに駆け寄っていった。
173代打名無し:01/12/29 20:13 ID:P6TDFHKu
割り込みスマソ。
モナの「はいれぇーーー」に腹抱えてワラタ。
そこで使うのか!いいなぁ、オイシイ。
そしてピーコ父さんは骨になたんじゃなかったのか。あぁ、続きが気になるモナ。
本当にラスト近し。
次は最後まで読んでからレスするよう我慢します。
がんがって下さい。
174広島家の人々208:01/12/29 20:52 ID:axAhiObl
代わる代わるに車椅子の取っ手を握って、観光がてら息子たち4人は大通りの町並みを歩いていく。
「これで輝裕が見つかったら、家族全員が揃うんだな。」
貴浩がうれしそうに車椅子を押す手に手加減を知らず勢いをつけた。反動で浩二は車椅子から
転げ落ちそうになった。あわてて爺と貴哉が浩二の身体を椅子に抑えて、軽く貴浩を睨む。
貴浩は笑ってごまかそうとしたが、その後シュンと小さく縮こまった。
「ここで、親父の『まあ、ええことよ』があると、いつもの我が家なんだけどな・・・。」
竜士は浩二を見て寂しく呟いた。
「あっ、すまん。俺はちょっとここで用事が・・・。」
突然、博樹が車椅子を囲む集団の輪から離れていった。
「博樹兄ちゃん、用事って一体・・・。」
博樹はマスターの玉木さんのところと答えた。
「今度の事件でマスターには随分世話になってしまったからな。早目に一度ちゃんとお礼を
いいに行かないと。」
竜士はすぐに納得してうなずいた。
「じゃあ俺たちはここで待っているから、早くマスターのところへ行ってこいよ。」
父の浩二は悲しそうに目を細めて下にうつむいた。
「坊ちゃんたちとお会いになってから、それでも感情の起伏が、だいぶ表に出られるように
なったんですよ。」
佐々岡の爺はやさしく浩二の膝元にかかっていた毛布をもう一度かけなおす。
「やっぱり、早く親父に輝裕を会わせてあげてぇな。」
「でも手がかりがないのに、どうやって・・・。」
「う〜ん、達川さんや緒方さんの力を借りて、大がかりに捜索をお願いしてもらうとか。」
ふと大通りの人波に目を向けた貴哉が、ポンポンと貴浩の肩を叩いて、ある人物を指さした。
「馬鹿いえ。輝裕ならもっとちっこいって!」
視線を向けた貴浩は右手を何度も下に押して、ジェスチャーで輝裕の身長はもっと低いことを
強調した。
突然、通りのある場所から大声で“輝裕”という単語が含まれた会話が耳に入ってきて、
黒と黄色のハッピを着た届け物帰りの今岡は驚いて、ボーッと会話を交わす車椅子を囲んだ
集団に目を向けた。その中でとくにバカでかい青年は、何度も輝裕といってはジェスチャーで
右手を下に押す。
─── 兄ちゃん・・・。家族とか兄弟ってなんだろうね。
「モナたちは、輝裕の何なモナ?」
輝裕によく似た例の青年に声をかけられて、兄弟たちはびっくり仰天した。しかも青年は輝裕
という名前を知っている。
「輝裕なら、モナの店で一緒に働いているモナ。」
猛虎屋のハッピを着た青年の言葉に、佐々岡の爺は目を丸くした。
「でも、私が猛虎屋にこの車椅子を買いに行った時は、輝裕坊ちゃんはいらっしゃらなかった・・・。」
「ぁああ!」
貴浩がせっかちに癇癪を起こした。
「ったく、ここでゴチャゴチャいっていても仕方がないじゃんか。まず俺が猛虎屋に輝裕がいるかどうか
確かめてくればいいんだよ!」
そして今岡に猛虎屋に案内するように詰め寄る。
「ついて来るモナ。」
今岡は無表情に近い表情で、猛虎屋に向かってゆっくりと歩いていった。

>>173
気にせんでもよかよ(w 感想ありがとう。本当にあともう少しになったなぁ。多分212で完結する予定っす。
175代打名無し:01/12/29 21:10 ID:wna8kDoc
モナ〜!!お前そんな簡単に教えるなよ!!(w
モナとのお別れシーンが気になるなぁ・・・
176広島家の人々209:01/12/30 00:35 ID:bg+3W+BM
輝裕は身体を震わせ、店の奥に逃げ出した。いくら自分の本当の気持ちに気がついたところで、
まだ輝裕は完全にふっきれた訳ではなかった。だが、昨日の今日で不意うちで家族が
自分の目の前に現れる。貴浩を連れてきた今岡を、輝裕は恨めしそうに睨んだ。
だが、やっと探していた弟が見つかった貴浩の気持ちはまったく別である。輝裕!と
大声で叫んで、店内を逃げ回る輝裕を右に左に馬鹿でかい身体で追いかけていく。
「あの・・・、これじゃあ仕事にならないんですが・・・。」
赤星は困惑してポツリと呟いた。
「まあまあ、このまま様子を見てみようやないか。」
店の主人とらは、おおらかに構えて口にくわえていたタバコに火をともした。
「どうして逃げるんだよ、輝裕!俺たちずっと、お前のことを探していたんだぜ!
博樹兄ちゃんだって竜士兄ちゃんだって、貴哉や佐々岡の爺だって!」
だんだん泣きそうな顔になって、貴浩は必死になって輝裕を説得する。ビクッと輝裕は
反応した。だが、外からは頑なに殻に閉じこもって、貴浩を完全に拒絶していた。
「・・・わかったよ。」
貴浩は急に追いかけるをやめて、ダラリと腕を下におろした。輝裕は店の奥の板の間に
正座で上がりこんで、貴浩に背を向ける形でうつぶせで耳をふさいでいた。
「今すぐに他の兄弟を連れてくるからな!」
貴浩が全速力で店先から消えてからはじめて、そのままの格好で輝裕は声をあげて号泣した。
「・・・・・あれが実のお兄さんだったというわけやな。」
主人はタバコを吸いながら、淡々と輝裕に声をかけた。
「兄ちゃん、ひどい・・・ひどすぎるよ!」
ガバッと顔をあげて、輝裕は涙で濡れた顔でキッと今岡を睨みつけた。
「これこれ、モナを責めるのは筋違いやで。輝裕くん。」
今岡も目をそらさず、ボーッとした表情で輝裕にある言葉を告げる。
「輝裕は昨日、唄をうたっていたモナ・・・。」
ハッと輝裕は目を大きくして、呆然と床に視線を戻していった。
「輝裕くんの気持ちはもう決まっていたんやろ。」
やさしく主人は輝裕の頭を撫でた。
ドタバタ騒がしい音がして、次から次へと広島家の兄弟が店の中に入ってきた。兄弟たちは
奥の板の間に座り込んで涙目で自分たちをみつめる輝裕に、口々に一緒に緋鯉村に帰ろうと
声をかける。輝裕の身体の震えがとまらなかった。涙で視界がどんどんぼやけていく。
かすれた声で輝裕は呟いた。
「いいの・・・?本当に・・・ボクが広島家に帰っても・・・いいの?」
「当たり前じゃないか!俺たち兄弟だろう?家族だろう?」
すぐに博樹が力強く叫んだ。他の兄たちも博樹の言葉にうなずく。輝裕の涙が止まらなかった。
そして、
「輝裕坊ちゃん・・・。」
車椅子を押して佐々岡の爺が店の前に現れた。
「どうするんや、輝裕くん?」
もう一度やさしく店の主人が輝裕に声をかけた。輝裕はゆっくりと主人の顔を見上げた。
そして今岡に顔を向ける。ニッコリと輝裕は笑った。そしてクルッと振り向くと、晴れやかな笑顔で
泣きながら家族に飛びついていった。

もしかして211でケリつくかも。それか時間オーバーで30日帰省先で最終回を書く羽目になるか。
177代打名無し:01/12/30 00:56 ID:mSj9ttMM
おおおおおおー!感動的シーンじゃ〜!輝裕、良く戻ったのぅ。
一人じゃ輝裕説得できなかった貴浩萌え(w
あ、あと3話っすか?楽しみだけど寂しいっ。
最後までがんがって下さい!!
178代打名無し@ス:01/12/30 01:18 ID:bg+3W+BM
うにゃ、このテンポはやぱーり間に合いそうにもない(涙
ちょうど209でキリのいいシーンですで、続きの最終回は30日の夜、
帰省先でうぷしやす。ああ、ちとくやしかね!

続きの内容の予定っすが、
210:猛虎屋でのモナとの別れ+5人の誓い
211:後日談(最終回)
これが文章量が増えたら、212までずれ込むかも・・・そんな感じです。
でも輝裕も広島家に戻ったシーンを書き終えたら、ホッとして一挙に
疲れがドドッと出てきたよ(w はぁ、長かった・・・ゼエゼエ
179代打名無し:01/12/30 03:37 ID:No/vTUOT
お疲れサマーです(w

んでひとつ疑問が・・・
西山って「西山堂の饅頭」
以外に本人が登場しましたっけ?(汗
180代打名無し:01/12/30 08:10 ID:uEoQXbHm
感動じゃー。
追いかけっこする2人に萌え、そしてワラタ。
(追いかけっこじゃないけどナー)

>179 禿同。ずっと気になってた(w
是非番外編「愛の貧乏脱出大作戦」でも
読みたい(w
181代打名無し:01/12/30 15:30 ID:VG22hZZp
「モナ」って便利な言葉だなあ(w
182代打名無し:01/12/30 20:16 ID:rMQmWXrV
輝裕はいい人達に囲まれていて良かったのぅ。
183代打名無し:01/12/30 22:12 ID:FpztBe0y
もう寝る予定でリアルタイムで見れないので
明日を楽しみにしてます。

ちょっとはやいけど、お疲れ様でした!
184代打名無し:01/12/31 00:29 ID:Y1KEsKLE
輝裕と兄弟とのかけあいに感動。
ついにラストですな。
185代打名無し@ス:01/12/31 05:44 ID:FfH1Li1y
実家のパソの修理に追われて、遅くなりやした(鬱
今から続きを書きやす。ちっ、とうとう大晦日かよ〜(涙
明日は中国新聞が『5人の誓い』に続く新しい写真をうぷするぜ。

あと西山ですが、ご本人は最終回で一言だけ台詞いって登場しやす(w
それと最終回で朝山、末永で神楽のシーンがさらりとですが書けそうっす。
何人登場するでしょか、最終回。
186広島家の人々210:01/12/31 09:02 ID:FfH1Li1y
無事に家族全員が再会できた広島家の人々をその後、猛虎屋の主人のとらは店の客間に
案内した。
「良かったなぁ、輝裕くん。ホンマによかった。」
ホロリと主人のとらは目にハンカチをあてた。
今岡が大きな包み箱を持って、客間に入ってきた。
「これは店の商品の一つやったが、広島家の兄弟にワシらからのちょっとした餞別や。
ちょうど5着だけ同じものがあってな。」
それはおそろいのスーツだった。今岡は一人一人にそれを配っていった。最後の一着を
輝裕に配ろうとして、今岡の手がとまる。
「兄ちゃん・・・。」
「また遊びに来るモナ。」
輝裕はじっと今岡を見つめた。
「うん!」
笑顔で輝裕はコクンとうなずいた。
広島家の兄弟は何度も口々にお礼をのべて、猛虎屋を後にした。
「あれっ?」
店を出る直前に、貴哉はふと目に入った商品棚を見て小さな声をあげた。あれは確か
自分がベチに頼んだガラクタ同然の夜店の景品・・・。
(気、気のせいだよ・・・。)
何も見なかったことにして、貴哉は少し先で自分が来るのを待っている兄弟たちのところへ
笑顔で走っていった。
「でも、せっかくおそろいのスーツをもらってもさ、みんなで着る機会なんてないよなぁ。」
竜士は不織布でくるまれたスーツを残念そうに両手で掲げて見つめた。
「だったら、それを着て親父の養生も兼ねて家族みんなでどっかの温泉にでも行くか。」
博樹はふところから日雇い労働で稼いだ給料袋を取り出した。貴哉と輝裕が、パッと
顔を輝かせてベチのところで稼いだ金と猛虎屋の給金を兄弟たちの前に差し出す。
「あ・・・。」
竜士は冷や汗を流して、笑いながらごまかした。
「お、俺は出世払いということでな。な、な。」
貴浩がギクッと後ろに後ずさった。
「お前は緋鯉村のお宝を見つけた功労金があるじゃないか。」
「そう、そうだよな、博樹兄ちゃん。」
ニヤッと笑う博樹に、ホッとしたように貴浩は大声で笑った。

緋鯉村に帰ってしばらくしてから、広島家の兄弟は父の浩二を連れて海沿いの温泉に
最初で最後の家族旅行に出かけた。竜士以外スーツに着慣れていない、とくに小柄な
輝裕は完全にスーツに着せられているといった恰好で、兄弟たちから笑いを誘っていた。
温泉で一息ついた後、兄弟たちは車椅子を引いて海岸沿いの道に散歩に出かけた。
浩二は車椅子の中でニコニコ笑っていた。感慨深げに父と兄弟を一人一人見ていった
貴浩は、突然砂浜に駆け降りて、ビシッと右手をななめ下にさしだした。貴浩の意図が
すぐにわかって、貴哉、輝裕、竜士は次々に砂浜に飛び降りて、貴浩の手の上に自分の
手を重ねていく。博樹は浩二を乗せた車椅子を砂浜に下ろして、ゆっくりと4人の弟たち
の手の上に自分の手を重ねた。
「いいか、これからだ。これからまた新しい広島家を兄弟たちみんなで築き上げるんだ。」
兄弟たちはみんな力強くうなずいて、そして互いに笑った。
父の浩二はニコニコと穏やかな笑顔で、5人の息子たちの誓いを見つめていた。
「まあ、ええことよ。」
兄弟たちは耳を疑った。
「お、おい。今、親父がしゃべったぜ・・・!」
飛び上がらんばかりに喜び合う兄弟たちに、浩二は鷹揚に笑顔でうなずいた。
187広島家の人々211:01/12/31 18:31 ID:FfH1Li1y
それから、半年近くの月日が流れた。
輝裕は無事に高等学校に合格し、猛虎屋やマスターの玉木の世話になりながら、毎日
充実した学生生活を送っている。
貴哉は手に職を身につけるため、広池の斡旋で、ある技術学校に通うことが決まり、
東京に上京していった。
竜士は長谷川からまかされ独立した新しい店が順調に軌道に乗り、今度金本寺にいた
元子分の横松を自分の店に呼び寄せることになっている。
そして貴浩は相変わらず金本寺で知憲住職とドツキ漫才をしながら、修行に明け暮れていた。
広島家の兄弟と画策して作りあげた広瀬の新聞記事は、ただでさえ閉鎖的なムラのイメージの
強い緋鯉村を、邪毘屋のように下手にふれたらすべてを失う祟りの村として人々に強烈な
恐怖を与えた。その後調子に乗って第2弾、第3弾と続けたウソ八百の緋鯉村特集は、昨今の
伝奇ブームにのり、新聞はおかげで爆発的に売れるようになったが、誰もが命を惜しんで
迂闊に緋鯉村にちょっかいを出す者はいなくなっていった。
博樹は最低限必要な分の黄金を樽から取り出すと、後は新しい樽にもう一度詰めなおし、
金本寺奥の院の門をキッチリと閉めて、一人で新しい場所に埋めた。莫大な黄金が詰まった
緋鯉村の宝のありかを知る者は今は博樹しかいない。新しい伝説の始まりだった。
一連の騒動がおさまった収穫の秋、緋鯉村の神社ではムラの存続を祝う盛大な秋祭りが
行われた。境内の中心にある広い空間に臨時にしつられた舞台で、勝利を祝う前田と朝山、
末永の神楽の舞が披露される。ムラの人々はみな神社に集って、今までムラを苦しめてきた
鬼を壮絶に退治した武者たちの物語を感慨深く見つめた。そこにはムラの人々ばかりでなく、
建と甲斐親子、マスターの玉木や澤崎や岡上、刑事の達川や緒方、小料理屋長谷川の若旦那と
奉公人、猛虎屋の主人と今岡、赤星ら手代の姿もある。みな笑顔で祭りの余韻を楽しんでいた。
参道の夜店の通りでは、ベチと健太が道行く客に次々に威勢良く声をかけて、自分たちの店に
招き入れている。反対側の夜店では、これが起死回生のチャンスと、満を持して西山堂の主人が
作った、新作の大黒さまのようなふくよかな顔立ちの人形焼が飛ぶように売れていた。そこへ・・・
パパパパ、パーーーン!
盛大な音とともに天上に大きな花火の華が咲いた。
「好評につき、夏に続いて第2弾!」
本殿の後ろの小高い山に、夏祭りの時と同じように知憲住職が豪快に仁王立ちで笑っている。
後ろでは貴浩、輝裕と横松、そして客間の襖絵を描き終えたばかりの森笠が住職に無理矢理
借り出され、次の花火の玉を入れる作業を行っていた。
「俺、これからの進路間違えたかもしれないわ・・・。」
森笠は調子にのった笑い続ける知憲住職の後ろ姿をチラッと見て、小さくため息をついた。
「すごいな、緋鯉村は・・・!」
西山堂の主人は夜店から飛び出して、次から次にあがる大きな花火に目を丸くして感動の
大声をあげた。

土間から種蒔き用のエンドウ豆が入ったザルと鍬をかついだ博樹がスクッと立ち上がる。
「爺、じゃあそろそろ行こうか。」
茶の間では、のんびりくつろいでお茶を飲んでいる気楽な隠居状態の父の浩二が、
「気をつけて行きんさい。」と大らかに声をかける。博樹は笑顔でうなずいた。
ぽかぽかうららかな春の日差しに目を細めて、博樹はゆっくりと畑に向かって歩いていった。
途中、通り沿いの畑で作業する小作農たちから声をかけられ、博樹はニッコリ笑って挨拶を
交わす。畑に到着して、博樹は器用に鍬をさばいて手際よくエンドウ豆を畑に蒔いていった。
佐々岡の爺は安心して、博樹の手さばきをニコニコ笑顔で見ていた。佐々岡の爺の視線を
感じて博樹は振り返り、フフンと笑った。
「どうだ爺、俺の鍬の手さばきもまんざらなもんになっただろう?」

                                            ── 終わり ──
188代打名無し@ス:01/12/31 18:33 ID:FfH1Li1y
終わった・・・。終わりやした・・・!ああ長かった(涙 本当は遅くとも10月でケリつけるつもりの話
だったのに、今日は大晦日。完結するまでほぼ5ヶ月。頭で企画するのと実際それを文章で書くのとでは、
どれほど違いが生じるか、何度も思い知らされた5ヶ月間でした(泣 今まで書いていたギャグネタと
毛色の違う、ちとウェット系の話。からっとしたギャグの方が絶対書きやすいっす。書いてみてよくよく
わかりやした。今は211なんてどーしようもなく長くなった話を無事に完結できたことにホッと胸をなでおろし
たいっす。もうこんな長編二度とやりません(w ホントにこりました。それ以前に書く時間がもうないんです
けどね(^^; (今年だけまだ時間があったから書けたようなもんで)
それでも「広島家」でだいぶ私事でやらなきゃいけないことが後回しになってしまったんで、来年から勉強に
専念したいと思ってやす。でも「広島家」番外編や「ホクロ男の怪人」、「ベッチレラ」の続編、これだけは前に
書くと約束しやしたし、時間に余裕があるときにたまにチョコチョコとうぷできるようにしやすね。
あと登場人物の設定裏事情等は、これからちらほらとうぷしていきやすので、1月下旬頃にでも過去ログ
サイトをのぞいてみてくんさい。最初にリクエストしてもらった設定をなるべく生かしてみやしたが、こんな
もんで良かったでしょか(^^; (ハセガー+捕手陣の出番の少なさはホントにごめんなさい。この穴埋めは
「ほくろ男の怪人」でつぐないますんで(汗 )

最後に、本当に長い間ここまでお付き合いいただき、ホントにどうもありがとうございやした!
これで久しぶりにただのウヒョスレ住人に戻りやす(w
189代打名無し:01/12/31 18:49 ID:71Pc9338
>64
64さん乙カレー!!
すてきなハッピーエンドですな!!
大変なことも沢山あっただろうけど見事です。
2度になっちゃうけどホント乙カレ〜!!
19064 ◆CARP8KOI :01/12/31 19:53 ID:l7CF214y
>>189
いや、助清さんと自分と勘違いしたらあかんやろ。おそれおおいぞ(w
思いっきり酒でむせたじゃないか…。

助清さんお疲れ様でした。色々大変だったでしょうが、これからはゆっくりと
なさってください。
わしのもぱっぱと進ませないとドツボにはまりそうな予感(;´д`)。
191189:01/12/31 20:07 ID:4+6I7akB
>64
うぎゃぁ!!ご指摘ありがとうっス!
自分はなんて大変なまちがいを・・・
助さんゴメンナサイ!!
改めて、助さんお疲れ様!!
良い新年を迎えてください!!
64さんもかぷバトロアがんがれ〜!
192代打名無し:01/12/31 21:46 ID:AQrAsBoW
助清さん、乙カレーでした。
今年のうちに終わって良かったですね。
楽しく読んでましたよ〜、ありがとうございました。
広島家〜が始まってからは続きが気になって気になって、
毎日のように2ちゃんに来てました。
うぷのない日は他を巡ったりして、
兄弟の成長とともに自分も立派な2ちゃんねらーへと成長してもうたワケですが…(w

兄弟の未来はこれから自分たちでつくって行くよう感じました。
またそれができる5人っすよね!?
来年の飛躍を期待したいですね。がんがれ!
ではみなさま、良いお年を!!!
193代打名無し:01/12/31 22:34 ID:3A3OHVgy
助さん、お疲れー。
今年中に完結してよかったですな(w
でも、ちょっと寂しいっす。
番外編も楽しみにしとりやす。

この言葉を最後に送ります(w
「すごいな、助さんは!」
194149=157:02/01/01 01:54 ID:/NKsunJL
あけましておめでとうございます

広島家完結おめでとうございます!
29日からの分を今一気に読みました。素晴らしいお年玉でしたよ。
輝裕が兄弟の元に帰るところ、やっぱり泣いてしましました。よかったねぇ・・・。
助清さん本当にお疲れさまでした。番外編も楽しみにしてます〜。
195 :02/01/01 12:09 ID:CyWYbeXM

乙カレーです。
面白かったです!

「ほくろ男の怪人」・・・楽しみだ。
196代打名無し:02/01/04 00:32 ID:+hK3l4h0
200以降を一気に読みました。ひたすら堪能させていただきましたよ〜。
助さん、本当にお疲れ様でした!
「ほくろ男」も楽しみにしてます。
197代打名無し:02/01/04 23:23 ID:IoFmKWZb
助さん、遅くなったけど完結おっつー&あけおめです。
輝裕の家族との再会シーンは感動しました。
ラストの五人の誓いもすっごい良かったです!
勉強がんがってくださいね、番外編とかも楽しみにしてます。
198代打名無し@ス:02/01/08 00:01 ID:r1Vq4f6J
遅れまして、あけおめです。
そんで、たくさんの感想レスどうもありがとうございやした(涙
ちょと現在諸々のことに追われて、ウヒョスレ共々なかなかお邪魔
できない状況なんすが、一息ついたら過去ログ等更新も一挙にやりたい
と思うておりますで、もう少し待ってくらさい。
「ほくろ男」の元ネタ資料も実家からたくさん持ってきやした(汗
次回作は多分「ほくろ男」かな。
「広島家番外編」は、まずは97年をベースに、本編より6年前という
設定で博樹兄ちゃんと澤崎がライバル関係になった中学時代を書いて
みようかと。本編でも輝裕とゥの関係と対になるようにわざと書いて
いた部分がたくさんありやして、これを書いて本編であいまいだった
エピソードの意味がわかってくるかと。弟たちも、竜士=第二次反抗期
まっさかり、貴浩=住職に連れさらわれる。貴哉=中学進学断念、
輝裕=尋常小学校に通っている(エディの風船を渡すシーンで登場する
幼い輝裕とゥよりまだ1年さかのぼる。)貧乏という落とし穴にはまり
始めた広島家の物語です。(三村を出したい欲求もあり)
他にも「広島家番外編」は2、3本ネタがありやすが、つーか誰でも主人公
に書けるように設定しやしたんで、また時間が取れたら、えっと思うような
登場人物で何か書いてしまうかもしれやせん。さて誰が登場するか…さすがに
船頭の物語は作れやせんが(w
199代打名無し:02/01/09 03:48 ID:M432FVQT
助さん、遅くなりましたがお疲れ様でした。
「ほくろ男」楽しみにしてます。

只今深度561
やばそうなのでageときます。
200代打名無し:02/01/12 00:54 ID:07Tl4kw0
age
201代打名無し
長い間お疲れ様でした。緋鯉村に幸あれ!