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星野監督が辞任のインタビューで一番つらかったこととして、奥さんが亡くなった日が名古屋ドーム開きの日だったので、無理に明るく振る舞わなければならなかったことをあげてました。
この話は、中日ドラゴンズの佐藤社長がたまたま東京新聞の幹部社員研修会でKさんという方が話された内容に感動して、中日ドラゴンズの公式サイトの連載シリ−ズ「キャッチボール」の第33回に掲載されたもので、原文のまま以下再掲させて頂きます。
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『お客さん、もしお耳障りでなかったら、聞いていただけませんか。』運転手はこう言って、話し出した。
◆(以下はタクシーの運転手さんの話である)
私は生まれた時からジャイアンツの洗礼を受けて育った者です。両親も弟も親戚もみんな、野球はジャイアンツでした。
私の弟は名古屋で葬儀社の運転手をしておりまして、偶然星野監督の奥さんの葬儀の霊柩車の運転をさせて頂きました。
出棺の際、監督は大勢の弔問客に涙をこらえながら『妻はナゴヤドームでお父さんの胴上げを見たいね。それまで生きていたい、と言い続けていました』と挨拶しました。
いよいよ火葬場へ出発の段になって、星野さんは後続の運転手に何事か話し、霊柩車には自分一人にしてくれと言って、出発しました。星野さんは弟に『運転手さん、ナゴヤドームヘ行って下さい』。
前例のないことに、弟は『ナゴヤドームですか?』と驚いて聞き返した。霊柩車はそぼ降る小雨の中、ドームを一周し、雨よけのひさしのある所に止めた。
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:01/12/07 16:34 ID:PWZhKFND
監督は『運転手さん、家内の棺を出したいので、手伝って下さい。全部下ろさなくてもいいですから、下ろせる所まで下ろしたいのです』。弟は何事が起きるかと恐れながらも、それに従った。
棺は頭の方を車にかけ、斜めに下ろされた。
すると監督は『運転手さん、5分間だけ泣かせて下さい』と言って、棺にすがりついて号泣した。
『なぜ死んだんだ。ドームでパパの胴上げを見たいね、それまで頑張ると約束したではないか。かあさん、なぜ死んだんだ!』
弟は感動に打ち震えながら、監督に負けないくらい泣いたとのことである。
監督は『必ず優勝して見せる。かあさん、見守っててくれ』と言って、火葬場へ向かった。
弟はその年の暮れ、正月前に休暇で帰った際、親戚が集まった席でこの出来事を涙ながらに語った。弟はこの日のことは一生忘れないと言ったが、私たちだって星野ドラゴンズを決して忘れない』
◆この話を聞いたKさんも、それを話す運転手さんも泣いた。
『お客さん、この話は初めて人に話すことなんです。誰かに伝えたいと、いつも思っていました。今日、やっと弟の感動をお客さんに話すことが出来ました…』
Kさんはタクシーの運転手の話を通して『男・星野』を熱く語った。会合の出席者は涙にうるんだ瞳に、星野監督のドームでの情景を思い描き、改めて優勝を誓った闘将星野と、それを実現させた選手諸君の執念に感激を覚えた。