カープ内に派閥はあるか?

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1カープファン
前田グループ、金本グループがあるらしい。
詳しい人いませんか?
2ヤイコ ◆Yaiko4HQ :01/10/10 21:05 ID:p.5fPFhU
をわり
3 :01/10/10 21:05 ID:rRCdRUH2
何気に福地派もあるぞ
4 :01/10/10 21:15 ID:i/jzGCZE
広島人は派閥が好きですか?
5  :01/10/10 21:29 ID:InX4OMes
ノムケングループはないの?
6_:01/10/10 21:35 ID:dRnHpevY
>>5
ノムケソは全選手にも愛されてます。
瀬戸は全選手にソッポ向かれてます。ボール取るときソッポ向くから。
7_:01/10/10 21:35 ID:dRnHpevY
>>1
緒方はどっちよ?
8_:01/10/10 21:36 ID:dRnHpevY
>>4
広島県北部=江藤亀井派
広島県中西部=堀内派
広島県東部=部落解放同盟
9 :01/10/10 21:37 ID:dwgk8oc6
新井は金本派っぽい気が
よくいじめられてるし(w
10:01/10/10 21:38 ID:DbODJ4ZM
金本派
佐々岡
西山
新井森笠
11福地くれ:01/10/10 21:40 ID:CElWzrJ6
前田グループ入りたくないな。。
12長澤百代:01/10/10 21:42 ID:4OL7Fwq6
>>29
ヤクルトの顔がボールのヤツ。
の本名は?
確かバットに跨ってたような・・・?
13 :01/10/10 21:47 ID:InX4OMes
>12
ジャイアンツ?
14どうせ:01/10/10 21:48 ID:oTs3M9bo
部落とチョンのつばせりあい
15 :01/10/10 21:52 ID:IPzZ/0d.
横山は何派ですか?
黒田は?
長谷川は?

ディアスは?!
16 :01/10/10 21:57 ID:3nbmgBBg
浅井、町田仲良さそうだけど。
また、緒方と浅井一緒に自主トレしてた。
17:01/10/10 22:00 ID:DbODJ4ZM
キムタクと浅井は仲良い
浅井と前田、金本と前田は仲悪い
18 :01/10/10 22:03 ID:c.SefhXI
横山ってすんげぇエロか、すんげぇホモかって感じしない?
19-:01/10/10 22:07 ID:ONzQWFq.
すんげえエロに一票。
20yuu:01/10/10 22:08 ID:l56.9p7Q
浅井と金本は?
浅井と前田エピソードあるの
浅井ってどんな人サインボール持ってるけど
21 :01/10/10 22:08 ID:d.R4gJxE
オパーイ☆人横竜
22 :01/10/10 22:12 ID:HrYPgh.c
金本って他球団の選手ともかなり仲が良いよなあ・・・しゃべりまくってない?試合中でも。
ベース上で筋トレ話でもしてるんかな
23 :01/10/10 22:14 ID:IlVy71po
横竜はガキ(w

>>17
金本と前田仲悪いの?
去年の開幕戦で前田の特大ホームランで巨人に勝って
ゲームセットの時、
思いっきり笑顔で2人でがっちり握手してたよ。
24前田一派 :01/10/10 22:14 ID:6k/E7x2U
朝山、澤崎、キムタク、森笠。
25 :01/10/10 22:19 ID:SN5Ql1.I
ハードエロage
26推測:01/10/10 22:42 ID:kEwUtck6
黒田は、西山や佐々岡と仲が良いみたいだから、
金本派かなっと。
27A:01/10/10 22:47 ID:NQgokIA2
前田選手って、コーチ陣とうまくやってんの?
28 :01/10/10 22:50 ID:6k/E7x2U
>>27
試合の無い日にやる市民球場での練習を見てみ(もうシーズン終了で見れんけど)。
腋愛々とやっとるよ。
29 :01/10/10 22:51 ID:6k/E7x2U
長内にべったり。<前田
30ぴぴ:01/10/10 22:52 ID:lYylT49U
山内、小山田、菊池原、東出は、ポルポト派。
31 :01/10/10 22:54 ID:RJNQud9Y
>>30
東出はリアルだから撤回してくれ
32 :01/10/10 22:55 ID:6k/E7x2U
>>3
ああ、確かにあるね。
「メガホン応援隊」ね。
廣瀬、嶋、兵動、岡上・・・といったエスカレーター選手ね。
33 :01/10/10 23:23 ID:GPFVH4wE
ササや西山は、金本派じゃ無くて、野村派だろ。
それに今は前田と浅井は仲エエよ!
34 :01/10/10 23:42 ID:VLNOm/Ec
前田は福地と仲いいっぽい。
35_:01/10/10 23:47 ID:dRnHpevY
東出は野村にも前田にも緒方にも金本にも西山にもそれなりにかわいがってもらっているようだ。
試合後に新井らと西山邸で飯喰ってたり、前田にマウンテンバイクもらったり。
世渡り上手。
36ディアスヲタ(にわか):01/10/10 23:49 ID:b0qjCZhI
ディアスは何派なんでしょうか。
37 :01/10/10 23:51 ID:IlVy71po
>>17
38 :01/10/10 23:53 ID:6Mdo/BVE
>>34
前田と緒方はいっぱいいっぱい

ケガで・・・
39:01/10/10 23:53 ID:DbODJ4ZM
>37
ホントですよ。。。
瀬戸はエトンと仲良かったねそういや
40 :01/10/10 23:55 ID:IlVy71po
>>39
マジ?>>23は俺が書いたんだけど
あれ見た限りでは仲が悪いとは思えないんだが・;・
41 :01/10/10 23:55 ID:yHbN5cJM
金本カコイイ。
42 :01/10/10 23:55 ID:a20UNHys
佐々岡は年下の金本の傘下なんかい!
43 :01/10/10 23:57 ID:KXmU6GTE
>>35

いや、前田は結局東出にマウンテンバイクあげてない。
東出はいつも寮専用自転車で買い出しに行く。
44:01/10/11 00:08 ID:Yywl3qiY
緒方は浮きまくってるな
45_:01/10/11 00:09 ID:YC5EIgao
瀬戸も我が道を行ってるぞ。
瀬戸はちょっとディアスと仲良いみたい。
46 :01/10/11 00:18 ID:j8m7qKn2
ちょっとかい!
47 :01/10/11 00:20 ID:wWjWhBr6
>>43
あげてないのかよ!!(w2つも持ってるんならやれよなぁ
子供が欲しがってるんだから
48代打名無し:01/10/11 00:23 ID:slI8uM3.
ロペスは?ロペ爺と仲のいい日本人選手はいないの?
49 :01/10/11 00:24 ID:segExKJk
>>48
野村。
50 :01/10/11 00:26 ID:H8uDOhk.
ペレス 町田と野村が仲いい
51sage:01/10/11 00:28 ID:Z89oiwL2
広島って結構絆あるかんじ。
うちの親戚が広島に在籍してタンだけど(期待されてたけどいまいち活躍せず)
引退した後しばらくして死んでしまったんだけど葬式の時山本さんはじめたくさん来たよ。
52 :01/10/11 00:51 ID:wWjWhBr6
苦楽を共にしてるからかな?

大体仲いいと思う・・・瀬戸は知らぬが(w
キムカズとチビッコは仲いいぞ
53 :01/10/11 01:35 ID:0VJcrT0c
町田とノムケンのアンダーストッキング面積競争。
ノムケン、ディアスのノックの時の変な掛け声。
むちゃくちゃバカバカしいことで盛り上がったり、変なチーム
54 :01/10/11 01:36 ID:P3U2/266
出身校ライン(上宮、法政、専修、駒沢など)の要に居るのが、
ノムケンと西山
55 :01/10/11 02:03 ID:wL.50OtM
チームが連敗中でも
町田と新井が金髪のズラかぶってみたり、プロレスしてみたり・・・
56なまえ:01/10/11 09:01 ID:.tjsSMKg
変なチームだなオイ!(w
57 :01/10/11 10:42 ID:IdfTIShU
>54
西山ってえらいね 南海ホークスからのトレード選手で外様なのに
ついでにいうと巨人・桑田と同じ中学だったらしい。(桑田は
途中で転校)   永遠のライバルといったところか?
58***:01/10/11 19:53 ID:t9t57tZI
瀬戸選手と緒方選手浮いてるんですか。
59 :01/10/11 20:01 ID:dbAm27Vc
瀬戸は浮いてる(断言
60 :01/10/11 20:02 ID:WN37nIG.
広陵閥・広商閥があると聞きましたが
61向かって走る:01/10/11 22:16 ID:Cix6XeMg
>60

最近は広島出身の選手少ないし、ないんじゃないの?
62 :01/10/11 22:27 ID:9QA1MPC6
緒方は浮いてるっていうか一目置かれてるって感じだろう。
寡黙な求道者タイプだし。
一般的に前田の方が「寡黙な求道者」タイプに思われてるけど
キャンプとか練習とか見に行くといろんな人を捕まえてベラベラ喋ってるよ。
(最初見たときはイメージとのギャップにビックリした)
63 :01/10/11 22:33 ID:uY1.ARZ.
前田は一匹狼のイメージが・・・
64 :01/10/11 22:39 ID:kfgDkNFE
>>62
ソウタネ。緒方と前田はイメージと実際が逆かもシレナイタネ
65 :01/10/11 23:12 ID:C9OestR2
≫62
確かに。 オフのゴルフ番組なんか見てると、ベラベラとあの微妙に甲高い声で喋ってる。
何年か前の秋季キャンプで「野々垣ハゲの歌」(もちろん自分で作詞作曲)を楽しそうに歌ってたって話も聞いたけど。
66 :01/10/11 23:17 ID:kBjzOL8I
>>65
ま、前田タン・・・(w
67 :01/10/11 23:18 ID:kTp/87Ko
>>64
タ、タネタネ!?
68 :01/10/11 23:26 ID:XIiEg33A
横山がゴルフ大会ん時「そして高く〜♪」と訳の分からないデタラメな歌唄ってたら(多分)まっちーから「うるさい!」といわれてたの思い出した。
69 :01/10/11 23:38 ID:CDqkz08o
カープって一体…(w
70 :01/10/11 23:40 ID:dbAm27Vc
新井さんはペットボトルロケットに携帯をくくりつけられて
発射された>金本に(w
(ゴルフ大会の罰ゲームにて)
まぁ偽者だったんだけどね
71_:01/10/11 23:52 ID:Aj04KkSI
>>70 ワロタ
新井とか周りの反応はどうだったの?
どういう罰ゲームだよ(w
72 :01/10/11 23:59 ID:9/KBY5XA
横山といえば今年の正月の特番で寝起きにフォークの構えをさせるとかいう変な企画で
町田か佐々岡かが「フォークフォーク」って言ってるのに寝ボケて「ポーク?」って
真面目に聞き返してたのが妙にうけた。聞いてるほうが意味もなく必死だったからかもしれんが。
73カープって:01/10/12 00:01 ID:NsrxoEwg
内弁慶なチームだね。
74 :01/10/12 00:03 ID:rYosKrv2
おもしろい〜
75  :01/10/12 00:25 ID:vokNGbBs
>>71
確か金本と新井と東出が一緒に回ってて、・・・での罰ゲームだった気がする
新井さんかなり焦ってたよ(w
あと正月の番組で釣りしてたんだけど東出が船の上で眠り込んだのにはワラタな(w
76代打名無し:01/10/12 00:34 ID:juZnBUdE
>>75
東出、子供かよ!!(w
77 :01/10/12 00:36 ID:YC9BtUgU
やや変人の集団カプマンセー
78 :01/10/12 01:29 ID:67t0.D1U
>>75
あーそれ(w
その後勝負に負けた罰ゲームで辛い鍋を町田・新井・東出が食べたんだよな
んで、東出が側にあった水飲んだんだけど顔しかめたのさ。
新井が「水に手を出すなっていったろうが!悔しくないんか!」といったら
東出が「これ酒ですよ」と突っ込んだ。「エ?酒?」
で町田が飲んでおもいっきしむせた・・・変なチームやね・・・
ツーか派閥じゃなくなってるし(w
79 :01/10/12 01:34 ID:XHMELv8c
その番組みたい
どなかたうぷしてくださらんか
80 :01/10/12 03:13 ID:BxuDTiPc
>>78
投手チームと野手チームに分かれたんだっけ
投手チームに山内が入ってたのがいまだに謎(w
今年は333ということで金本がひっぱりだこでこの番組も
勿論金本に出演依頼を出したが「釣りは趣味ではない」って
断ったという話を聞いた

>>79
ビデオはあるがそれをうぷできるものがない。スマソ
81  :01/10/12 03:49 ID:McIoSk.A
不思議球団・広島東洋カープ
82_:01/10/12 08:07 ID:At6lHQdk
>>78 悔しくないんか!
新井カコイー(w
「カープの正月番組を語るスレ」になってるし。
関東じゃ絶対見れないからうらやましい。
83baibai:01/10/12 11:16 ID:CuYiCEr.
前田が中日に行くというのはほんとうですか?
84  :01/10/12 11:27 ID:sxET9bUU
その前の年は野村と町田が同じチームだったね
町田が釣り氏根性を発揮(w大物釣ってたな
野村があんなにはしゃぐとは知らなかったよ
85 :01/10/12 14:08 ID:nVnkLLAA
広島に住みたい、あー住みたい
86:01/10/12 18:17 ID:E9DwKzWQ
>85
広島より都会に住んでるひとならやめておいたほうがいい
娯楽なし、交通不便でいいとこなし
87 :01/10/12 20:32 ID:A6pRFAvE
瀬戸ってキモない?
88 :01/10/12 21:13 ID:VYPzyiag
>>86
食っちゃ寝の生活ならええかもね
89_:01/10/12 21:24 ID:RYvx87EI
広島はかーぷの番組がいっぱいあってウラヤマシイYO!
東京からも全国ネットやってくれぇぇぇ
90AZAZ:01/10/12 21:33 ID:8SJ6MnG6
浅井、もっと出してやれよ。
1打席だけじゃ誰でも結果出すの大変よ。
91公示さんへ:01/10/12 23:19 ID:HB4m.g0M
最終試合
今日の起用法、どうかな?
先発マスクなんで西山?
ロペスあたってないのに先発
2番手、横山?
勝ち体気持ちが伝わらん!
92 :01/10/12 23:19 ID:7hzCR3p6
結論
かぷに派閥はない
93 :01/10/13 00:24 ID:MnIdOvvM
かぷだけタイトル取れなかったけど、どうなのよ?
94 :01/10/13 00:26 ID:tpgFG7VI
ベストテン入りは結構いるけどね
95(;´Д`)y-~~ :01/10/13 00:29 ID:Ury/.1x6
チビ&キムタクの最多3塁打、爺の最多併殺、金本兄貴の最多四球
チビの最多失策、黒田の最多完投&最多被安打、建の最多失点&自責点
キムチの最多登板とタイトルとりまくりですが何か?

・・・鬱だ。ぁぁぁ。
96代打名無し:01/10/13 00:37 ID:mSWjVTg2
前田が出てるゴルフ番組見たいよお(;_;)
メチャ陽気バージョンの前田。
それを見るためだけに正月休みを広島で過ごそうかとさえ考えたことも。
97 :01/10/13 00:40 ID:tpgFG7VI
町田は今年寝違えて首にカイロくっつけてやってましたが
98代打名無し:01/10/13 00:41 ID:7gXMbPdc
>>96
見てみりゃわかるが、そんなたいしたものじゃねーぞ・・・
99 :01/10/13 00:48 ID:6K2Tm/Z2
かぷ愛してる
100 :01/10/13 01:00 ID:Kyv628Dw
>>98に同意
そこまでして見る価値があるとも思えないが…。

一昨年のカープ新春ゴルフ。カードに書かれた質問に
ショットを打ちながら答えないといけないというコーナーで
「今一番ほしいものは?」という問いに紀藤が「土地!!」と
答えた時は何となく複雑な気分になった。
101 :01/10/13 01:28 ID:O/cZwq0U
>>98
見られないからこそ、ますます見たいと思うんだよ
そうなんだ、俺はハングリーなんだ。
でも実際広島住んで見たら、そう思うかモナー
102 :01/10/13 02:41 ID:5Pu0bfAc
ビデオ取ってる
キャプチャーも持ってる
けど容量を小さくすることができないのでダウンロードする人は大変だろうと思うとなあ。
ストリーミングも今の環境では難しいことか分かったし。
103 :01/10/13 08:10 ID:KS3ydUlk
うぷ期待あげ
104  :01/10/13 08:51 ID:Nyrx8XRE
ええなぁ。特番最高。
広島、わが憧れの土地(w
始めの話に戻すと、菊地原・小山田は練習中いつも組んでいる気がする。
高橋建と長谷川、高橋建とロペスも仲良さそう。
>>102さん、ダビングさせてくれー(無理だー)
105 :01/10/13 09:29 ID:9YcVzE.I
菊地原と新井も仲良いはず
ピーコと松原はできている
106 :01/10/13 10:44 ID:sbDEfN..
春頃だったかピーコは「前田がかわいくてたまらんのよ」とか逝ってなかった?
107  :01/10/13 10:59 ID:rPqWRtZo
>104
11日神宮でのキャッチボール練習はじめに
菊地原(と、小山田?)がお願いしま〜すって感じに
帽子取って軽く頭を下げあってたよ。(・∀・)イイ!
108AZAZ:01/10/13 21:47 ID:EFdYByiE
最近、田村 恵てどうなんですか?
105.106さんピーコていうのは誰ですか?
109 :01/10/13 21:47 ID:7MwEYoWs
>>108
8ばん
110 :01/10/14 02:31 ID:ujW0MmaQ
≫105
ピーコと前田の方ができてそう。 かわいがり方が尋常じゃない。
111AZAZ:01/10/14 04:13 ID:wUgVLE.U
109さん解りました。有り難う御座います。
112 :01/10/15 19:22 ID:lK+lE/u0
保全
113 :01/10/16 07:56 ID:xKSH4rlp
114 :01/10/16 19:16 ID:E+cw4yZC
115 :01/10/16 21:23 ID:E+cw4yZC
age
116ちょいと:01/10/16 21:46 ID:wiwNcV5n
トピずれかもしんないけど

えとちゃんと智徳さんって仲良かったの?

すんごい楽しそうに笑ってる写真を見たものだから。大昔のだけど。
どうなんだろ・・・
117 :01/10/16 21:48 ID:W1+jd7Mv
>>116
その写真、アスリートのやつ?
118 :01/10/16 22:21 ID:y6p8AMEA
>116
大昔、江藤の車で二人で一緒に球場入りしてたらしいけど。
あと、広島のローカル番組に江藤が出てたときに、前田がFAX送ってたことあった。
119 :01/10/16 22:22 ID:UdPeUijg
アスリートの99年開幕特別号にある写真だよね(他にも載ってるカモ)?
でも2年前に江藤がカープ出た時に、前田が何か毒舌で言っていた記憶がある。
120 :01/10/16 22:24 ID:aUhrpQmw
前田はなんかコメント残してたっけ?

ノムケンはガッカリです的なコメント

緒方、佐々岡は頑張れよ的
121  :01/10/16 22:34 ID:I8YkC1oy
長富が日ハムにトレードされたのは球団幹部の覚えが悪かったからとの
インタビュー記事がだいぶ前の週間ベースボールに出ていたけど、新人王獲得して、
中心ピッチャーまでなったのにこの仕打ちはなんだろうか。
 慶彦をロッテに追い出したのはオーナーに逆らったからなんだけど。
122  :01/10/17 03:25 ID:dXPB1s7q
>>121
うおー、広島オーナー怖え。
123 :01/10/17 03:36 ID:2zz4LZVk
ちゃうちゃう、オーナー代行よ。
124代打名無し:01/10/17 03:38 ID:t3bpqEE6
ていうか、長冨の場合、実際成績の方もジリ貧状態で、出されてもやむなしの
状態だったけどな。
125代走・今井:01/10/17 03:44 ID:fc07ns2Q
江藤と前田は駆け出しの頃は仲が良かったがその後×。
長富は天狗だった鼻が新人王とってますます天狗に・・・。
その後伸び悩んだのはバッテリーを組んでた達川や当時のコーチ陣のアドバイスに
全く耳を貸さなかったらしいのが原因とか。
慶彦は正田やノムケンに対して理不尽な嫌がらせをしていたよ。それでトレードが
決定的になったって!!
126  :01/10/17 03:46 ID:dXPB1s7q
>>125
>慶彦は正田やノムケンに対して理不尽な嫌がらせをしていたよ。それでトレードが
>決定的になったって!!

何故嫌がらせしてたの?
127代走・今井:01/10/17 03:54 ID:fc07ns2Q
自分のポジションがヤバイからに決まってんじゃん。
球団の野村に対する期待の大きさに一番プレッシャーを感じてたのが
慶彦ちゃんなんだよ。
正田には「ブサイク!」とか「サル!」とか冗談で言ってたみたいだ
けどあまりにもしつこくて正田本人がブチ切れたら慶彦が逆ギレして
2塁ベースを挟んで睨み合いになったのは有名な話です。(ちなみに
試合中にもやったことあるよ!)
128126  :01/10/17 05:15 ID:dXPB1s7q
>>127
す、すげえな・・・
129代打名無し :01/10/17 05:47 ID:0KwwLlMN
 他のチームの派閥って、どんな感じですか。
 そこから類推していけば、カープの派閥についても見当がつくように思う。
 でも、結局、巨人や阪神レベルの派閥ってなさそうですな。
 巨人はオーナーが派閥好きだよね……。
130116:01/10/17 16:37 ID:xQxvqv8V
色々と教えてくれて有り難う。
2人は昔は仲良かったのね。

ちなみに私が見た写真というのは「カープ新世紀記念写真集」というやつだった。
アスリートが出してるのかな・・・。
131:01/10/17 16:37 ID:I45fWIqi
>>1
つまらないスレ立てないでくれるかな?
132カープファン:01/10/17 19:49 ID:lANuqDK2
131さんでもこれだけ意見が出てますよ。
133 :01/10/17 23:29 ID:fVxti6k5
たしかに慶彦と正田は性格合わなさそうだね
134CARPというIDを出すまで頑張る。:01/10/17 23:31 ID:FfQegej6
かぷは特番やったり親睦会したりするので
仲良さ度がUPするのでは?

新井がTVに出てたときでーさんがFAX送ってきた事あった。
あの二人はでーさんが新井にからんで「やーめーろーよー。」的関係。
135 :01/10/17 23:41 ID:drlpRN+m
>134
でーさんて誰?ウヒョスレでも見たことない呼び方だがヲタの方ですか?
136 :01/10/17 23:41 ID:0cJA3LEc
東でーさん?
137134:01/10/17 23:44 ID:tNvocRbS
いや、ただの野次隊なのだが
みなで「でー!」と叫びまくってる。
136が正解。
138 :01/10/17 23:47 ID:uNLMIWDn
>137 確かに東出は長くて呼びにくい 瀬戸は短すぎる 同じ4文字でも金本は呼びやすい
139 :01/10/17 23:50 ID:uNLMIWDn
でもかねもとさんは呼びにくい かねもっさんになる
140:01/10/17 23:51 ID:sy947w9b
もっさんでええやん
141.:01/10/17 23:53 ID:lOq1Dcj3
鶴丸師匠でいいだろw
142 :01/10/18 00:29 ID:UMq/aphB
お前ら人の名前崩しすぎだろ!!(w

粗いは菊地原と小山田が出たときにFAXしてた。
143代打名無し:01/10/18 00:48 ID:Lp+qSKtP
黒田と横山が番組に出たとき、金本と西山と東出からファックスが来てたよね。
新井は、その面々に夜の街に消えて行方不明である事をファックスでばらされてた。(w
144男・前田:01/10/18 01:10 ID:bM/dXfBY
こないだ横山と新井を新天地公園の近くで見たよ!
145 :01/10/18 01:14 ID:Jkdo8rI5
>>143
ああ、そういえば(w
『新井くん、連絡ください』だっけ?西山家から送ったんだろうなぁ
146代打名無し:01/10/18 02:06 ID:B86qDbiu
>>145
薫子夫人を前にやに下がっている兄貴と東出を想像してみる(多分間違いではない)
147建タン、男前:01/10/19 01:55 ID:5C2RPXd1
>>146
たぶんどころかまるきり間違いでない。むしろ大正解。
けど兄貴は新婚さんだからあんまりあからさまには……とも思うね。

今日は由布院の様子が見れたよ。ササも建タンも兄貴もが温泉でのんびり。
アレ見るとほのぼのしてると思うわ。
148代打名無し:01/10/19 19:41 ID:OpPNNnKB
>>147
(θοθ)「で、今年はどの子の写真がもらえるのかしら〜♥
149:01/10/19 21:04 ID:w9jT6rrk
>147
今年はカネモトの半ケツはナシですか?
150 :01/10/19 21:19 ID:QlGbqQX8
>>149
兄貴の半ケツ、チラッと映ったよ。
意外とやわらかそうなケツだったよ。(w

>>148
姉貴は他球団メムバーまでつまみ食いしないでください。
151:01/10/19 21:44 ID:w9jT6rrk
>150
ありがと
・・・しかし毎年恒例になりつつあるな>半ケツ
152慶彦と正田:01/10/20 13:57 ID:8GxUUbQr
慶彦がトレードに出されたときのNumberの記事によると。

カープ内には(当時?)派閥があった。
広島弁を話す選手とそうではない選手と。要は外様に冷たい、ということ。
外様のボスは衣笠で、慶彦は衣笠を尊敬していた。
衣笠の持論は「痛いというなら試合に出るな、試合に出るなら痛いというな」だった。
ある時、正田が「ほんとはつらいのに試合に出ている」というようなことを
番記者にうち明けた。で、お涙頂戴話として記事になった。
慶彦は前出の衣笠のことばを引いて、戒めた。
正田は「なんでがんばってるボクが非難されなきゃいけないんだ」と憤慨。
それから険悪に。
その後も慶彦曰く「こづいただけ」=正田曰く「殴られた」など行き違いが続く。
「地味ながんばりやさん」が好きなオーナー代行をはじめ、
現監督(=当時も監督)などが正田派に。慶彦孤立。
1500試合出場の日にスタメンをはずされる等の仕打ち。
そしてロッテへ。
153 :01/10/20 14:01 ID:tymgkyYO
今日の六時半からTSSでサタスポ。
カープの選手達が銭湯に行ってくつろぐみたいよ。あとゴルフも。
これで仲の良さそうな選手チェック。広島に住んでる人は見れ!
154 :01/10/20 19:43 ID:07Y9WYGj
>>153 見たかったヨ・・他県なもんで・・・
155 :01/10/20 20:52 ID:Opv/7JDq
あー、元気丸見たい〜。
(半年前まで広島人)
156 :01/10/21 16:48 ID:Jr5sSoEF
カープ・・
157 :01/10/21 19:44 ID:YKhovbKc
かぷあげ
158 :01/10/22 00:41 ID:uYomxZGw
ネタも無いのにあげな。
159 :01/10/22 00:42 ID:uYomxZGw
>>152

外出。
ご苦労。
160代打名無し:01/10/23 08:07 ID:W7FPMfUE
山梨学院大付属派閥が誕生しようなヨカーン
161 :01/10/24 00:52 ID:tuNGEYRf
サタスポで、選手が、温泉入ってるところが出てた。
キムタク、浅井、黒田、金本、あと誰か?
162 :01/10/24 01:04 ID:xhZdeQ0Z
風呂の場面元気○で見たけど、(丶`_ゝ´) が半尻で入った先には
キムタク、浅井、町田、瀬戸とあと1人いた。
佐々岡、鶴田、玉木が湯に打たれてたのも確認。
監督とアンパンも映ってた(元気丸じゃないかも)。
163 :01/10/26 00:09 ID:h88p4Hbs
あげ
164  :01/10/26 00:42 ID:tmYlJseT
>>162
可能性としては建タンあたりかも。
カープっ娘で風呂あがりにインタビュー受けてたよ。
165 :01/10/27 18:03 ID:Th2bQOLy
166代打名無し:01/10/27 23:13 ID:dYp54NoR
age
167 :01/10/30 01:54 ID:PowhEy4k
とりあえずリサイクル候補を保存しとく
168 :01/10/31 02:36 ID:IT4LzElh
a
169 :01/10/31 23:27 ID:aQ5y521P
 
170  :01/11/01 01:26 ID:XlNFnQez
広島商業閥あげ
171brmスレ64:01/11/01 01:46 ID:FBSFbZ1K
11月1日とキリがいいので今日からぼちぼち書いていきます。
【いきさつ】
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/995963952/775
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/995963952/787
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/1001689521/613
(↑カープバトロワを書いてるのを発表するきっかけになったレス)

というわけで、いつまで続くかわかりませんがマターリお楽しみください。
172広島東洋カープバトルロワイアル chapter1:01/11/01 01:52 ID:FBSFbZ1K
それは秋季キャンプも、ファン感謝デーも終わったある冬の日だった。新井貴浩(背番号25)は
突然球団から呼び出しを受けた。ユニフォーム持参だという。
―――このお寒い中練習かよ!怪我してもしらんぞ。
と思ったが、契約更改を控える身としては無駄に印象を悪くして給料を減らされることになったら困る。
その日の全ての約束を断り、新井は大野練習場へ急いだ。
室内練習場について新井は驚いた。若手のみならず、自由契約になった選手と帰国している
外国人選手を除いた全ての選手が呼び出されていた。その割には山本監督(背番号8)の姿はない。
いるのは松原ヘッド兼打撃コーチ(背番号71)1人である。
「今日の練習はすぐ終わるんだが、その後報告することがある。
 多少時間がかかるから、どうせオフになって怠けてるんだろうし、
 ランニングでもしてもらおうと思ってな。まあここでめいめいに
 練習していてくれ。準備が出来たら呼ぶから」
そう言って松原コーチは出て行ってしまった。投手も野手も、若手もベテランも一同に集まっている。
これでドラフトで指名された新人がいれば新年の合同自主トレと何ら変わらない、そんな雰囲気である。
オフに入ってトレーニング施設で見たやつもいれば久しぶりに会う選手もいる。選手たちは近くにいた
チームメイトと話に花を咲かせ始めた。
10分程たった頃だろうか、新井は体が妙にけだるいのに気付いた。
新井だけではない。周りの選手たちが自分の体を支えきれないといった感じで壁にもたれたり、
あるいは膝をつき倒れこんでいる。倒れる選手が時間を追うに連れだんだんと増えていく。新井も
やがて自分の体を支えきれなくなり近くのパイプ椅子に座り込んだ。そしてものすごい眠気に襲われる。
それを振り払おうとするがどうにもこうにもできない。
ガラス窓をひっかくような音がして新井は重い頭を何とかそちらに向けた。前田智徳(背番号1)が
上半身を壁でおこし、右手で窓を開けようとしている。しかし、窓は開かない。鍵でもかかっているのか?
前田は思い通りにいかない窓にいらだちをぶつけるかの如く、右の拳を窓に叩きつけた。2度目を
叩きつけようかとしたその時に、前田の体自体がガクリと地面に落ちた。
―――前田さん、何をやってるんで…
心の中の問いが終わらないうちに、新井も意識を失った。
173brmスレ64:01/11/01 01:53 ID:FBSFbZ1K
今日はさわりの部分だけで(w
続きを書かないとうぷに追いつかれたら大変なんだからネ!
174 :01/11/01 02:21 ID:qpMpb+zM
おっ、レス一番乗り?おつですー>64さん
広島家と共に楽しみにしてますんで頑張って下さい。

カープバトロワ楽しむためにも原作読み返さねば...
175 :01/11/01 04:31 ID:QmYoqiY3
カープバトロワ始まり始まり?
誰がどの役になるか楽しみにしてます。
64さん頑張って!
176 :01/11/01 07:51 ID:yp/iD9Hk
うわーワクワクしてきたぞ。
自分は映画しか見てないんだけど
原作読んだ方が更に楽しめるかねぇ?
( ̄粗 ̄)さん主役ですかい?
177_:01/11/01 08:27 ID:SbEOnUNL
>64さん
お、始まりましたか!がんがって下さい。
七原→粗いさんですね。じゃあ粗いさんモテモテ?
男ばっかりだからそれはないか(w
広島家同様楽しみッス。
178 :01/11/01 16:08 ID:Cfyaa+gs
>64さん
粗いさんできましたか。かなり(・∀・)イイ!!
個人的には川田はもう七原粗いさんから言ってあの人かな〜
とか典子は○○ウ○かな〜と想像してます。予想が外れるのもまたよし。
楽しみっす。がんがってください。
179chapter2―厳島神社:01/11/01 23:38 ID:iYmIZFNF
波の音が聞こえる。海の匂いだ。子供の頃飽きるまで来た、瀬戸内海の匂い。
でももっと暖かい時期に遊びに来たはずだ。なんでこう、突き刺すように冷たい
海風が吹いてるんだ?違うだろう、焼けるような日差しと青い海―――。
新井は目を覚ました。視界にははるか遠くに輝く無数の星が散らばっている。
それが夜空だというのはすぐに理解は出来た。新井は体を起こす。起こして
新井は驚いた。自分のいるその場所は見慣れた厳島神社の、本殿から海に
突き出した平舞台である。今は暗くて見えないが、きっとこの舞台の先には
あの有名な鳥居があるのだろう。広い闇の向こうには対岸の明かりが見えた。
平舞台には自分だけでなく、練習場に集まっていたはずの選手全員がそこにいた。
なぜか、ご丁寧にも毛布がかぶせられていたのだが。それにしても毛布があっても
一時的な寒さしのぎにしかならないくらい寒かった。
―――なぜ、自分は…いや、自分たちは宮島なんかにいるんだ?あの練習場の
光景はなんだったんだ?
平舞台で寝ていた選手たちもだんだんと起き出した。そして新井同様自分がなぜ
ここにいるのかわからない、といった様子であたりを見回している。ほとんどの選手が
起きた頃に、隣の選手も起きた。森笠繁(背番号41)である。同期の大卒野手は
森笠しかいなかったので、新井と森笠はプライベートでもよく飲みに出かけたりする仲だった。
「…新井?…どこ、ここ?」
「宮島っぽい」
「は?宮島?」
その時である。セットされていたのだろう照明が一斉にともった。あまりのまぶしさに目がくらむ。
「はいはいはーい、おきましたかぁー?」
どこかで聞いたことのあるクセのある広島弁―――明かりの中から出てきたのは、
前監督・達川光男(背番号74)だった。
180chapter3―呼び出された意味:01/11/01 23:40 ID:iYmIZFNF
「はいはいはーい、おきましたかぁー?みんなねぼけとらんかー?
 わしが誰だかわかっとるかー?」
去年までベンチで見ていた74番のユニフォームに身を包んだ達川が拡声器を
通した陽気な声を発する。袖には懐かしい50周年のワッペンもされたままだ。
そこにいる選手は皆何が起こったかわかっていない様子だ。
「わかっとるけど、これはなんなんですか?」
選手の視線が声のしたほうに注目した。佐々岡真司(背番号18)である。
眉間にしわをよせて言葉を続けた。
「わしら球団に呼び出されて大野に集まったはずです。なんでこんな所に連れてこられてるんですか?」
佐々岡の問いに選手たちが一斉にざわめきだした。
「そういや球団に呼び出されたんじゃ」「今何時だ?」「なんなんだ、これ?」
「はいはいはーい、静かにせんか」
達川が拡声器のボリュームを上げて叫んだ。あまりの音に選手のさわめきが止む。
「わかった。説明しちゃるけんのう。今年はよう頑張った。わしが監督やったら
 ここまでの成績は残せんかったじゃろう。しかし、結果は4位じゃ。またAクラスを逃した。
 あとひとふんばりが足らん。闘志が足らんのんじゃ。しかし人間誰しも内に秘めた力を
 持っとるはずでのう、今回それを見せてもらおうと思うとる。
 そこで、みんなにはこれからちょっと殺し合いをしてもらいまーす」
皆一様に耳を疑った。今達川は何と言った?コロシアイ―――?
「達川さん…冗談はやめてくださいよ」
さっきから立ちっ放しの佐々岡が信じられないといったように言った。それはここにいる
選手全員の思いだったかもしれない。しかし。
「冗談じゃと思うか、佐々岡。ほんならなんでここまで連れてこられたんじゃ?」
佐々岡は言葉を失った。答えが見つからない。まさか、そんな。
「なんじゃ、お前ら、信じられんのか。ほいじゃこれを見りゃわかるじゃろう」
181chapter4―山本浩二:01/11/01 23:43 ID:iYmIZFNF
達川が「お願いします」と言った。本殿の方からユニフォームを着た男2人が
担架みたいな物を運んでくる。その男は―――なんと松原コーチ(背番号71)と
北別府投手コーチ(背番号73)である。担架からはダラリと…右腕が垂れ下がっている。
新井は言いようのない嫌な感じに襲われた。
「松原さんもペーもこの計画にはすぐ頷いてくれたんだけどねー、山本監督だけは
 反対してたんだよー。ほいでねー、話つけるのもたいぎかったけぇ、こうなっちゃいましたー」
達川が一際明るい声で説明し、担架にかけられていた布がとられた。一番前にいた
矢野修平(背番号66)や林昌樹(背番号53)が人間の声ともつかない声で叫んだ。
それを見て他の選手も身を乗り出す―――が、同様の反応しか起こらない。新井も
前へ出ると悲鳴の対象を見た。そこにはミスター赤ヘルと呼ばれた山本浩二監督が、いた。
いや、いたではなく、それらしい「物体があった」。
真っ白なユニフォームは血にまみれている。シーズン中ずっとかけていた黄色の眼鏡
(それがもとで選手の間では「ピーコ」と呼ばれていたのだが)は左半分しかなかった。
そりゃそうだ、頭半分しかないのだから。思わず新井は吐き気を催し、舞台の端へ
駆け出すと海に向かってそれをもどした。
「はいはいはーい、大の男だろー?静かにしろ!!」
達川はベルトから拳銃を抜いた。空に向かって威嚇射撃でもするのかと思ったが、
銃口は監督に向けられ、そのまま2発、もう動くことのない監督の腹に打ち込まれた。
その体は交通教室で轢かれる人形のように波打ち、しかしそれだけだった。
達川が視線を上げた時には、選手の悲鳴はやんでいた。
「それでいいんでーす。さーて、これからゲームの説明でもしようかのう」
達川が笑みを浮かべ言った、その時であった。新井の後ろから罵声が響いた。
18264:01/11/01 23:49 ID:iYmIZFNF
今書いている場面がどうしても辛くてこんな早い時間にうぷしてもうた。
いっきに3章もうぷすると続きが怖いが、あまり最初の部分を続けるのも
つまらんかなと思ったんでうぷしました。

>>176
原作読んで楽しみが増えるかはどうなんじゃろ?逆に話がわかるから
面白うなくなったりせんかな、と危惧しておるんですが…。
でも原作もおもしろいんで、時間があれば是非読んでみて下さい。

>>177
( ̄粗 ̄) は別の意味で愛されとる(w もっと鍛えられてほしいがのう。

>>178
○○ウ○?わからん…。UFOか河内しか思い浮かばん(w
183 :01/11/02 03:44 ID:G5fmLPi+
ピ、ピーコ……合掌(-人-)

オフの楽しみは広島家とバトロワで。
続き楽しみにしとります。
184 :01/11/02 07:29 ID:hakzMk2L
バトロワおもしろい!
ところで広島家ってなんですか?
教えてちゃんでスマソ
185 :01/11/02 07:30 ID:zSqtxTMu
ウヒョー!早速ピーコが殺された!
しかし達ちゃんハマり過ぎ(w
あの軽い感じがいいですなぁ。
広島家の人々とカープバトロワ
楽しみが2つになった。嬉々。
186 :01/11/02 07:31 ID:zSqtxTMu
>>184 ビックレッドマシンでスレッドを検索してみて
あちらも楽しいYO!
187 :01/11/02 07:31 ID:zSqtxTMu
あ、ビッグレッドマシンだった‥‥
グね、グ
188 :01/11/02 07:52 ID:hakzMk2L
>>186
ありがとうございました!見てきまーす
189178:01/11/02 10:48 ID:IYDNGP4z
>64さん
はじまりましたね〜まさか最初からピーコとは…
○○ウ○は広島家兄弟で河豚好きの奴です(w 彼は何となく守られとるイメージがあるのですよ。
次のあぷも楽しみにしとりますです。
190代打名無し:01/11/02 17:13 ID:p/spp5rA
>○○ウ○
良太かと思ってた(ワラ
191_:01/11/02 19:17 ID:KIzPymOQ
>○○ウ○
無理やりゥをあてはめてましたが、何か?

宮島が舞台なんですね、さすが広島だ。
そしてさようなら、ピーコ・・・。
原作読むと先がわかっちゃうからなぁ。
誰がどの役?っていう楽しみもあるけど。
むずかしいっすねぇ。
192chapter5:01/11/03 00:03 ID:fqBfjKJk
「冗談じゃない!!」
選手が一斉に顔を向けた。そこには嶋重宣(背番号00)が立っていた。
「僕らは野球をしにカープに入ったんです!なんですか、殺し合いって?
 そんなことをするために埼玉からきたんじゃない!!それに自分には家族もいる。
 こんな所で死んで家族が納得すると思うか!?」
「嶋クンねー、気持ちはわかるんじゃけど、カープに入った以上は
 球団の方針に従ってくれんかのう。それにのう…そういうデカい口を
 叩くのは一人前になってからにしてくれんか。
 期待するとすぐ怪我や不調で2軍落ちしよって」
達川が意地悪く笑った。嶋の表情がみるみるゆがむ。
「このやろっ…!」
「やめろ、嶋!!」
嶋の隣にいた横山竜士(背番号23)の静止を振り切り(嶋と横山も仲がよかった。
それとともに、同期入団で昔投手だった嶋を横山はライバル視していた)、
嶋は達川の方へかけだしていった。
「殺すんならまずあんたからだ!」
そう言って嶋は猛然と達川の方に駆け寄る。しかし、達川がそれをあざ笑うかのように
右手をすっと出すと、その先に握られていた拳銃が1発、2発と火を噴いた。それに
呼応するかのように嶋の体が2度揺れると、そのまま後ろへどさっと倒れこんだ。
倒れこんだ嶋の顔を見た田中由基(背番号34)が「ひっ」と声を漏らした。
二つ穴のあいた胸元から血がみるみる滲み出していた。
―――嶋!!
新井は思わず嶋のもとにかけよろうとした。入団した年が違ったとはいえ新井と嶋は同学年だ。
森笠同様飲みにいったりもしたし、新婚の嶋のところへおしかけ奥さんの手料理を頂いたこともあった。
その嶋が、あっさりと殺されてしまったのである。しかも、去年まで頼りにしていた前監督に。
「やめとけよ、新井!!」
かけよろうとしたその足に横山がしがみついた。しかしその横を、新井よりも早く
嶋のもとに駆け寄った選手がいた。森笠だった。銃声が響く。森笠の左足が
不自然に右へはらわれるような格好になり、はずみで前のめりに倒れた。
左足のふくらはぎ横が擦り切れた感じで破け、赤いものがつたわり始めた。
「だーかーらー、静かにしろと言ったじゃろうが!!」
今まで見たことのない厳しい表情の達川がそこにいた。一通り繰り広げられた
光景で選手たちはやっと悟った。―――これは、現実だ。
達川が新井に視線を向けていった。
「新井、わしにつっかかる元気があるんじゃったら、森笠をそっちへ連れて行け」
193chapter6―エリート:01/11/03 00:07 ID:fqBfjKJk
「さて、いい加減みんなには殺し合いをしてもらうけぇのう」
気がつくと東の空がうっすらと明けてきている。一体自分たちはどのくらい
気を失っていたのか、そして今までの悪夢はどのくらいの時間行われていたのか。
森笠を横山とともに自分の横に運び、側にあった荷物の中から取り出したタオルで
森笠のふくらはぎを縛ってやりながら、新井は何度も何度も考えた。
「舞台はこの宮島。勿論住人の方には出て行ってもろうとる。素手で殺しあえとはいわん。
 出発の際にデイパックを一人一つずつ渡すが、その中に武器が入っとるけぇ、
 それで殺りおうてくれ。武器にも当たり外れあるから、外れた場合は日頃の行いが
 悪かった思うてあきらめい。なんか質問はあるか?」
沈黙をやぶってどもった声が響いた。
「お、俺はドラフト1位で入ってきた。エエエリートなんだ。なんか、と、特典はないのか?」
捕手の瀬戸輝信(背番号28)である。こんな時になっても自分の身の保全しか考えてないのか、
この人は?
「あのねぇ、瀬戸君は平等って言葉しってるよね。いいですかぁ、人間は生まれながらに
 平等なんですよー。ドラフトで何位であっても、結局選手としてスタートラインを切るのは
 同じ瞬間じゃろう?ドラフト云々で、その後の君たちの選手としての価値が決まるわけじゃない。
 選手の価値は活躍に応じてファンが声援で表してくれとる。瀬戸君にそれが聞こえとらん
 はずはないと思うがな。だから瀬戸君も自分だけが特別なんてそんな勘違いを―――
 するんじゃない!」
いきなり一喝されて瀬戸はペタンと腰をおろした。達川はしばらく瀬戸を睨んでいたが
すぐに笑顔に戻った。
「このことはご家族の皆さんにはちゃんと報告しとるからなー。
 家族のことは心配するんじゃないぞ。
 新婚の金本や2人目が生まれたばかりのキムタクには申し訳ないがなー」
自分の名前が出され金本知憲(背番号10)も木村拓也(背番号0)も表情がこわばった。
「この殺し合いから脱出して向こうに帰れるのは、たった1人。
 いいかぁ、チームメイトを殺しあわないと帰れないぞー」
思考回路が停止した。おそらくこの場にいる皆そうだっただろう。今まで仲間として
ともに戦ってきたチームメイトが敵?この人たちが消えないと帰れない?守るべき
家族のある選手は勿論、そうでない新井のような選手でも両親や兄弟、友人、
さらには将来妻になるであろう女性にさえもう会えない?理解しがたい言葉が
次々と選手を襲っていった。
194chapter7―スタート:01/11/03 00:12 ID:fqBfjKJk
「そうそう、忘れとったわ。みんなの首には首輪がついてまーす。こら!
 無理に外そうとするなー。外そうとすると…」
達川が一瞬言葉を切ったことで選手の手が首にのびる途中で止まる。
「…爆発するぞ」
またもや選手の動きがとまった。バクハツ?コロシアイ?ブキ?そんな言葉が
頭の中を渦巻いている。
「その首輪でみんなの動きをわしらがチェックしとる。とりあえず同じ場所に
 隠れとらんように、どんどん立ち入り禁止エリアを設けるけぇ。禁止エリアに
 入ってもその首輪がドカン、じゃ。地図はバッグの中に入っとる。
 宮島も意外と広いけえ、最初からある程度の所で有刺鉄線をはって
 島の向こう側に行けんようにしとります。えーとなー、フェリー乗り場の向こうに
 自然公園があって、そっから―――あの後ろの山は弥山(みせん)言うんじゃが、
 その頂上を経由して一番奥の登山道に沿うようにはったはずやったのう。
 ま、確認すりゃわかるが、いいか、そっから向こうには入るなよー。
 禁止エリアと同じじゃど。あとな、皆隠ればっかりで、ずっと死人が増えんようやと
 わしらも広島に帰れんけぇ、24時間死亡者が一人もでなかったらこれまた
 爆発するようになっとる。そん時は、優勝者は、なしよ、っつうことじゃ」
あまりに人ごとのように言う達川に怒りを覚えないわけがなかったが、視界には
倒れたままの嶋がいる。自分がああなってもいいのか、と新井は自分に言い聞かせた。
「そうじゃ、お前ら携帯を持っとろうが、使うなよー。電波もこっちがチェックしとるからなー。
 あと、この厳島神社はみんなが出て行って二十分後に禁止エリアになります。
 命が惜しけりゃとっとと離れろよー。誰が死んだとかどこが禁止エリアになるとかは
 毎日午前午後の零時と六時に放送を流すからよく聞くように。建物は自由に入っていいけど、
 ロープウェーはとめとるからなぁ、その鍛えた足腰で山登りでもしてくれや」
山登りだと?笑わせる。いや、笑い事ではない。わかっているようで、これは夢なのかもという
思いも心のどこかにある。
「じゃあ背番号順に出て行ってもらうから、呼ばれたら返事して出て来いや。
 そうそう、出口は厳島神社の入り口のほうな。逆走せぇよ。
 自分の荷物は勝手にもっていってええからのう」
達川の後ろにはたくさんのデイパックを持った松原コーチと北別府コーチがいる。ああ、
これは夢ではないのだ―――。
「嶋…はわしが殺してしもうたんじゃったのう。じゃあ0番木村拓也ー」
木村から三分ほどおきに次々と選手が出て行く。そして、新井の番がやってきた。
本殿のほうに駆け出す瞬間、嶋の横を通る。
―――嶋、何もしてやれなくてすまん。カタキは必ずとってやるから!
そう心の中で叫ぶと新井は、デイパックを受け取り入り口のほうへただ走った。
19564:01/11/03 00:20 ID:fqBfjKJk
chapter5のタイトル忘れたけど、もうええわ。
明日から戦闘シーンに入ります。最後まで書けるんかのう。
嶋、( ̄粗 ̄) 、横山の学年は個性があって扱いやすいわい。
宮島は片手で足りるほどしか行った事ないですが、随所に名所が
出てくる予定。

>○○ウ○
横山か遠藤かあ、と納得してたところだったが、河内で当たってたんすね(w
イメージ的にはいい役割なんじゃないかと思います>河内
196 :01/11/03 05:33 ID:/AAvbReI
お、典子の予想が当たった(w
あの学年は個性的ですよね、俺もみんな好き。
……なだけに嶋〜(泣)
巨人バトロワと違って、こっちは一人死ぬたびに号泣してしまいそう。
やっぱり広島の選手みんな好きだからなぁ。
64さん最後までよろしくです!
197 :01/11/03 12:20 ID:3HMT5fGz
誰が光子役なのかなー。
そこんとこわくわく。
198横竜ヲタ:01/11/03 16:27 ID:LQU51NBx
冷静な横竜、新鮮で(・∀・)イイ!(w
そんな自分は個性的76年組とタメ年だ。
>64さん 続きがんがって下さい。
199chapter8―ゲームは始まった:01/11/03 21:16 ID:ELQjTcbk
入り口を出てとりあえず新井はあたりを見回した。新井は多少期待していた。
誰かいてほしい。しかし誰もいなかった。いや、いるにはいたのだが―――
それは胸から20cm程度の棒―――その先には戦闘機の尾翼みたいなのが
4枚ついていたのだが―――を生やして仰向けになった遠藤竜志(背番号21)の
死体だった。
「は…はは…」
無意識のうちに乾いた笑いが漏れた。これは何かの冗談だろ?よく出来た
蝋人形だな?おい遠藤さん、起きてくださいよ…遠藤さん?
遠藤に近づこうとしたその時、ヒュンと鋭い音がして、新井の眼前を銀色の
ものがかすめた。新井は思わず内角を突かれた時のように体をのけぞらせる。
その銀色の…遠藤に生えてるものと全く同じ矢は後一歩のところで新井を
とらえることなく新井の足もとに突き刺さった。新井は瞬間的に地面に突き
刺さった矢を抜くと眼前に広がる雑木林を見やった。何かが動く。
―――そこか!
獲物を捕らえた新井の動きは素早かった。立浪のライトオーバーのヒットを
素早く捕球しアウトにした時に投げたボールと同じくらい(もっともあの時は
ディアスのナイスカバーもあったが)美しい軌跡を描いた矢はその獲物を襲った。
矢を受けた“それ”は「うっ」と短い呻き声をあげるとバランスを崩し、そのまま
地面に落ちてきた。空はさっきよりさらに幾分明け、近づけば人の見分けくらいは
つくようになっていた。
落ちてきた影を見て新井は驚いた。それは河野昌人(背番号12)であった。
河野の体の先に武器と思われるボウガンが転がっていて、さらに足もとに
落ちているディパックには無数の矢が残っている。
新井は血の気が引くのを感じた。間違いない、この糞みたいなゲームは既に
始まっているのだ!少なくとも河野はこのゲームに乗り、遠藤を殺したのだ。
やばい。逃げよう。河野のほかにこのゲームにのった人間がいたとすれば…
と考えて新井の頭の中にある人物が浮かんだ。
―――森笠が危ない!あの足ではロクに逃げられない!!
しかし新井と森笠の背番号=出発の順番は大分離れている。危険を承知しながらも
負傷した友を見捨てることができず、新井は雑木林の中に身を隠した。
200chapter9―山へ:01/11/03 21:20 ID:ELQjTcbk
新井は待っていた。森笠を、ただ待っていた。
待っている間、厳島神社の入り口からは背番号順に次々と選手が飛び出していった。
勿論遠藤の死体はそのままだったので、皆一瞬その場で立ちどまり、このゲームが
始まってるのを悟ったのか四方に逃げていった。新井にとって不幸中の幸いだったのが、
その中で誰も雑木林のほうに逃げ込んできた選手がいなかった、ということだった。
小山田保裕(背番号39)が出発した。同期入団の小山田とも新井は仲がよかった。
佐々岡の負傷からとはいえ、彼が昨年の開幕戦の巨人戦以来のセーブを甲子園で
あげたときは自分のことのように喜んだほどだ。そんな友人と戦うなどしたくはない。
しかし、遠藤の死体を、河野の行動を見た後でそんな言葉を純粋に吐き出すことは、
不可能に近かった。
倉義和(背番号40)も出発した。長谷川昌幸(背番号19)とのコンビで一時期名をはせた
倉さん。そういえば倉さんも去年結婚したばかりだったなあ、と思い出した。
本当に、本当にたった1人しか、すぐ近くに見えているあの広島に戻ることは出来ないのか?
海の向こうを見ながらほんの昨日までの思い出に浸ってると入り口からまた1人選手が出てきた。
―――森笠!
森笠は他の選手と同じく遠藤の死体に気付くと立ちどまった。顔面蒼白という言葉がピッタリである。
遠藤の死体を避けるように動くと、そのままタオルをまいた左足を引きずるようにして走り出した。
「おい、待て森笠!!」
不意に呼び止められて森笠は振り返った。雑木林から新井が降りてくる。
「そんな足でどこいくんだよ!」
「あ…」
森笠はさっきの遠藤の死体がよほどショックだったのか声さえ出せないようだ。
「ったく、一緒に逃げるぞ!」
そんな森笠の腕をつかむと、新井は弥山のほうに向かって走り出した。
201chapter10―正当防衛:01/11/03 21:24 ID:ELQjTcbk
しばらくして河野は意識を取り戻した。頭を打っていて、意識を取り戻した当初は
ただただ「頭が痛い」としか思わなかった。いや、「頭が痛いんじゃ!」という感じだった。
自分ではどうしようもできない不快な気分。シーズン始まって調子が上がらなかった
自分を「体重がしぼれてないから」と批判したマスコミに対して、「肘が痛いんじゃ!」と
発言した時のような、そんな気分だった。
倒れているせいで視界には薄く白んでいる空ばかりが映るが、その右のほうに
雑木林が映っているのに気がついて、自分が何をやっていたかを思い出した。
達川、山本監督の死体、出発、とりあえず身を隠した雑木林、デイパックの中のボウガン、
倒れる遠藤、日頃世話になっていた高橋建(背番号22)を見送り、しかし矢をつがえる間に
横山竜士(背番号23)を取り逃がし、さらには河内貴哉(背番号24)にさえも、オフシーズンの
ランニング番組でMVPをもぎとった彼自慢の足で逃げられてしまったこと。そして―――。
河野は慌てて身を起こした。楽に殺せると思った新井に逆にやられてしまった。
ちっ、やつはどこだ。俺は妻と子供のために帰るんじゃ。シドニー代表の実力をあなどるな!
そのためにはボウガンを―――と目をやった先に、福地寿樹(背番号44)がいた。
「おおおおおおい、だだだ大丈夫か?これ、お前のか?」
そう聞く福地の右手には河野のボウガンが握られている。
「ああああああああああああ」
河野はその武器を取り返そうと妙な叫び声を上げて福地に襲い掛かった。
「わああ」
あまりに突然のことに福地は驚き、そして、河野に向かってそのボウガンの
引き金をひいてしまった。
矢は河野めがけて一直線に突き刺さり、河野は、そう、漫画なんかで見る、
攻撃をくらった主人公みたいに体を九の字にすると、そのまま倒れこんで、
しかしそれらの主人公とは違って二度と起き上がることはなかった。
福地は混乱した。俺が殺した?殺し?違う、これは正当防衛だ。河野の方が
先に襲ってきたんだ。河野を殺ってしまったのは仕方がないんだよ。
盗塁を試みた時にボールを送球する相手のキャッチャーと同じさ。やらなければ
自分がピンチに陥るんだよ。そうだ、そうだよ。
そう考えると、痺れたようになっていた頭の一部にようやく感覚が戻ってきたような
感じがした。福地はあたりを見回し、ボウガンと、河野の足もとに転がっていた
彼のデイパックを奪うと、その自慢の足で走り始めた。
20264:01/11/03 21:37 ID:ELQjTcbk
ペースを考えるとchapter9でとめたかったけど、次の場面を考えて10まで
出してしまった。だんだんストックがなくなっていく…。
お鏡タン、せっかくいい役につけてんのにキャンプで怪我しないでくれ…。
さっきウヒョスレ見てまじでショックだった。
76年組は扱いやすい分、すぐ話に使われて殺されるかもしれない諸刃の剣(w
光子はもう少し先です。お楽しみに。
20364:01/11/03 22:15 ID:ELQjTcbk
間違いハケーン。申し訳ない。
>>201
九の字→くの字
204 :01/11/03 23:03 ID:Z7xutBEg
kawano…
205合掌:01/11/04 03:46 ID:5JDrn3Ad
ェンドゥ……。ホントにエンドになっちゃった(゜дÅ)

64さん、面白いっす。これからもがんがってつかあさい。
新井の今後が楽しみすぎる。
206 :01/11/04 07:25 ID:3UhjSRtL
遠藤‥‥せっかく今日の中国新聞に取り上げられたばかりなのに‥‥
ハッ、これも中国新聞の呪い?!
207 :01/11/04 11:16 ID:C93XbkMQ
久々に2chに来てみたら、かぷのバトロワが!
すげー面白い。
続きを禿げしくきぼん。
208 :01/11/04 15:40 ID:3UhjSRtL
んじゃ、勝手ながら他のバトロワスレに倣って‥‥

死者
嶋重宣(00)…スタート前に達川が銃殺
遠藤竜志(21)…河野がボウガンで射殺
河野昌人(12)…福地がボウガンで射殺


ショック状態のカーサ萌〜
209_:01/11/04 16:29 ID:CNH+89Oi
このスレ面白いっス!(・∀・)ィィッ!!
選手もコーチも、総出演してくだされ〜
210chapter11―投げられたコイン(1):01/11/04 21:32 ID:UTvixlCW
長崎元(背番号58)は厳島神社の出口側に海に突き出した形で存在する
西松原の林の中を慎重に歩いていた。支給のデイパックと自分のバッグを
肩からかけ、右手には支給された武器である小型のオートマティックピストルを
握りしめていた。なぜ日本の1つの(しかも貧乏な)プロ野球チームである
カープが(あるいはこのゲームの首謀者であろう達川が)このような武器を
渡すことができるのか、それは長崎の知る範囲ではなかった。
高校を出て一,二年目しかたってない野手の何人かが平舞台上で固まって
座っていたことが幸いしていた。達川の目の届かないところで、長崎らは
小声で話しあった。西松原の一番端で落ち合おう、と。
出発の順番は話し合った仲間内の中では後ろから二番目であった。だから
西の砂浜へ着けば誰かがいる。それだけを信じて長崎は目的地へ向かった。
そして、それはもう目の前にあった。
しばらく歩き、林を抜ける寸前で人影を確認することが出来た。朝日が海面に
乱反射してそれが誰だか見分けることが出来ないが、岩場に座って人を
待っているようである。長崎は駆け出してしまったのだ。喜びの余り。
長崎は無防備に人影に近づいていき、大分近づいたところで、それが約束を
かわした仲間でないことがわかった。そこにいるのは尊敬すべき主力選手、
金本知憲(背番号10)であった。
211chapter11―投げられたコイン(2):01/11/04 21:37 ID:UTvixlCW
長崎は自分の探していた人間ではないとわかって足を止めたが、金本の
気さくな一面をテレビを通して見ていたので、警戒心をもたなかった。むしろ、
この人が一緒だったら、あの頭のおかしい達川や松原コーチを倒して皆で
広島に帰れるのではないか、とも思った。長崎の姿を確認して「長崎」と
控えめな笑みを浮かべた金本を見て、長崎のその思いは一層強くなった。
「金本さん、僕、人を探してるんですけど…」
と言いかけて長崎は気付いた。金本の座る岩場の影に何かが打ち上げられて
いるのを。それが何かを認めて長崎の表情が凍りついた。
「か、か、金本さん、そ、そ、そ、そこにあるのは」
震えが全身を襲いうまく喋ることが出来ない。金本は事も無げに長崎の質問に答えた。
「これかい?―――俺を殺そうとしたんだよ。末永も、田村も、そして甲斐も。
 だから、俺が…殺ったんだ」
―――ああやっぱり!そこには長崎と約束を交わしたはずの末永真史(背番号51)、
田村彰啓(背番号56)、甲斐雅人(背番号57)が既に冷たい人形となって波とたわむれていた。
一瞬にして頭が真っ白になる。足がガクガクと震える。
「聞いてくれるかな」
落ち着いた表情で金本が口を開いた。
「俺は、どっちでもいいと思ってたんだ」
「どどどどどどっちでもいい、って」
口の中の渇きを感じているのだが、長崎にはそれをどうすることもできない。
「たまに何が正しいのかわからなくなる時がある。今回だってそう。
 帰れなかったら今まで自分のやってきたことは全て水の泡だ。
 何のための野球だったんだ?何のための練習だったんだ?
 ―――お前らが小声で話し合っていたのを俺は見ていた。
 それでとりあえずここに来てみた。そしたら、案の定末永がやってきた。
 逃げようとした末永をつかまえて、俺はポケットにあったコインを投げた。
 表が出たらお前らと組んで達川さんを殺りに行く。裏が出たら―――」
金本の言葉が終わらないうちに、ようやく長崎は気付いていた。長崎は全神経を
集中させて拳銃の引き金を引いた。潮風が舞い、三人から作られた血だまりから
立ち上る匂いがそれに入り混じった。いや、その三人に、さらに一人加わっていた。
長崎が引き金を引く前に、金本の持つイングラムM10サブマシンガンからは
パララッと小気味よい音が響いていた。
長崎はしばらくたったままだったが、潮風に押されてどっと倒れた。その体には
四つの指が入るくらいの穴が開いていた。
「―――お前らを殺して、このゲームにのる」
そう呟くと金本は長崎の動かない右手から拳銃を奪った。そしてしばらくの間
もう一人くるであろう彼らの仲間を待ったが、障害物のない砂浜に長居するほど
無駄なことはないとでも思ったのか―――腰を上げ林の中へと消えていった。
21264:01/11/04 21:49 ID:UTvixlCW
桐山役登場。ウヒョスレに多い末永ヲタ甲斐ヲタの皆さん申し訳ない(w
ああ、【残り47人】を入れるのを忘れていた。11終了時点で47人です。

>>208
サンクス。たしかにまとめがないとわかりにくい部分がある。
自分も昨日書き溜めした場面で誰が死んだんだが混乱した(w
作成上書いた分と名簿などはWebページでまとめてあるんで、
見たい方がおれば番外編をうぷしてるURLにのせます。

>>209
選手は外人さん以外総出演予定。コーチはまだどうなるか謎。
続き次第ということになりますなあ…。
213  :01/11/04 21:56 ID:EJJXAUIY
64さん、待ってましたー!
個人的には「みんな―聞いて―!!」の2人組が楽しみです。
214末永ヲタ:01/11/04 23:26 ID:3UhjSRtL
早いー早いー!末永たん早すぎだよぅぅ(涙
しょ‥‥しょーがないか。
甲斐たんも‥‥長崎も‥‥田村(彰)も‥‥
4人とも好きなんだがな‥‥アヒャ
桐山=兄貴でしたか!
いつもの兄貴を考えると
合わない気も(失礼)しましたが
上手くハマってますよ!!!( ̄粗 ̄)とのシーンが、わくわく。

あと是非名簿など公開して下さいな。
>208は自分なのですが上手くまとめれなくて
ガカーリしてるんす。
215 :01/11/05 11:09 ID:SwXtw12i
(丶`_ゝ´) 「やってやるage」
216_:01/11/05 12:51 ID:X2pkdQDw
>>215
アニキカコ(・∀・)イイ!
217chapter12―先輩後輩(1):01/11/05 22:25 ID:JPT7H5P3
宮島で一、二といわれる高級旅館の屋上で苫米地鉄人(背番号54)と
玉山健太(背番号52)はおちあった。山梨学院大附属高校の野球部の
先輩後輩でもあった二人は、今年はほぼファームでの生活になった
わけだが、練習中も声を掛け合ったり一緒にランニングや打撃練習を
したりと、その姿は先輩後輩というよりかはただの仲良しといっても
おかしくないほどのものだった。
「まさかこんなことになるとはなあ…」
苫米地がポツリと呟いた。玉山は今にも泣き出しそうな表情でうつむいて
いる。その気持ちは察するに余りあった。誰が殺し合いなどをしにプロの
世界に足を運ぶなどと考えるだろう。一軍で活躍して、綺麗な奥さんを
もらって、引退後は解説でもして暮らそうかなどという青写真が彼らの
心の中には少なからずあったはずである。しかし、それを叶えられる
人間は、少なくともこの島にいる選手の中には一人しかいないのだ
(まあ、実力のない選手なんかが生き残ってしまえば、その夢を叶える
前にクビになってしまうだろう。その前にチームが組めないからどっかに
移籍か。それも大変だな)。後の選手は皆、まわりの人間に会うことなく
ここで命を落とさねばならなかった。入り口の前にあった遠藤の、そして
そこから林のほうにしばらく行った所にあった河野の死体は、彼らにその
事実を十分に認識させた。
218chapter12―先輩後輩(2):01/11/05 22:28 ID:JPT7H5P3
「先輩は生きてください。あんなにファンもいたし、先輩がいなかったら
 悲しむ人は絶対多いですよ」
涙をうかべて玉山が言った。
「俺はほかの人間を殺してまで生きようとは思ってないよ。
 野球に未練はあるけど、正直なところ人気ばかりが一人歩きして、
 それが俺にはつらかったし」
「そんな…」
「それより生き残るべきなのはお前のほうだ。
 俺より若いし、まだ未来はあるよ」
苫米地が笑いながら言った。
「嫌ですよ!…なんで、なんでこんなことになっちゃったんだろう…」
ほぼ泣き声で玉山が声を漏らした。怖いのだ。隣に信頼できる苫米地と
いう先輩がいても怖いのだ。玉山は達川が監督だった頃のカープを
知らない。しかしドラフトで指名され、正月に苫米地と自主トレをしている
時にいろいろと話は聞いていた。達川さんは面白いよ。それが苫米地の
達川評だったはずだ。
―――面白い?どこが?去年まで一緒にいた選手を顔色一つ変えずに
殺した。監督だってあの人に殺された。そして自分たちに殺し合いを要求
しているあの男が面白いだなんて、それこそ面白い冗談だ。
「とにかく誰かを殺すくらいだったら俺は自分から死ぬ」
ポツリと苫米地が言った。端整な顔立ちをした彼のその横顔には、どことなく
諦めのようなものさえ見えた。
「お前は、逃げろ。俺の分まで戦って来い」
「嫌ですそんな!先輩が死ぬんなら俺も死ぬ。殺し合いなんて殺し合いなんて…」
玉山はあふれる涙をこらえきれなかった。緊張の糸はギリギリにまで
張り詰めていた。気が狂いそうだった。
219chapter12―先輩後輩(3):01/11/05 22:29 ID:JPT7H5P3
「落ち着け健太」
苫米地が玉山の顔を見て諭すように言った。よく見ると苫米地も涙目に
なっている。あのいつも強気だった先輩が―――それを見て、あれほど
騒がしかった心が急速に落ち着くのが自分でも分かった。
「お前、ここで死んだらもう誰にも会えないんだぞ?わかってんのか?
 それを承知で言ってるのか?」
「はい」
「…もう一度聞く。冷静になれ。本当にいいんだな」
「はい」
迷いはなかった。島の向こうに広がる土地―――東へ行けば家族も友人
もいる―――その場所に未練がないわけはなかった。けれどもそれ以上に、
今まで仲間だと思っていたチームメイトを殺すなどできない、世話になった
先輩たちを手にかけることなどできない、その思いのほうが強かった。
「わかった。…お前のバッグの中の武器を見せろ」
苫米地の指示に従い、玉山はデイパックをあさった。しかし出てきたのは
わずかばかりの食料と備品、それと、鍋の蓋。それを取り出したとき、
苫米地はプッと吹き出した。
「よりにもよって鍋の蓋かよ」
その笑い声につられて玉山も笑った。ああ、笑うってなんて素晴らしいこと
なんだろう。しかし、勿論その笑い声は長くは続かなかった。笑いながら
また涙が落ちてきた。こればかりは止められなかった。
「それは使えないな。俺の武器なら大丈夫だ。それでいいか?」
苫米地が取り出したのは、生まれて初めて見る拳銃(357マグナムリボルバー)だった。
「はい」
「オーケー。…お前、俺を撃って自分も撃つ覚悟はあるか?」
突然の問いに玉山はちぎれんばかりに首を左右に振った。
「なら、俺がお前を殺す。その後必ず自分も死ぬ。それでいいか?」
今度はまたちぎれんばかりに首を上下に振った。とまらない涙は首の動きに
あわせて四方八方に飛び散った。苫米地はその玉山の頭を自分の胸に
抱きかかえた。そして銃口を玉山のこめかみにあてた。
「最後に言う事は?」
つとめて冷静に苫米地は、おそらく最後になるであろう質問を玉山に投げかけた。
「…今までありがとうございました。先輩と一緒にいた野球生活、忘れません」
最後のほうは泣き声で言葉になっていなかったが、苫米地はそれをしっかりと
聞き届けると、引き金を―――引いた。その瞬間、玉山は、というか玉山だった
それは、苫米地によりかかってきた。まだ温かいその死体を抱いて苫米地は
震えていた。後輩には決して見せなかった顔がそこにはあった。涙と鼻水で
グシャグシャになっていた。声を上げて泣きたかった。でもぐずぐずしたくはない。
玉山との約束をすぐにでも実行しなければ。
自分の右手を今度は自分自身のこめかみに向けた。
「健太、ありがとう」
そう呟いて、さっきと同じように苫米地は引き金を引いた。
22064:01/11/05 22:38 ID:JPT7H5P3
また【残り45人】を入れるのを忘れた。何やってるんだ、自分…。
原作で男女のからみになってる場面はアレンジが正直難しいっす。

>>213
あの場面は20の前半くらいに登場します。そこも難しかった…。
人選はまあ普通かな、と思うんですが。でも組み合わせは意外か?

>>214
新井ときたら川田=(丶`_ゝ´) の予想が多かったと思いますが、あいにく
自分はそんなに素直じゃないんで敵にしてしまった(w
とりあえず人に見せようと作った物ではないんでみにくいかもしれないけど
名簿などうぷしときました。http://k-server.org/hcbr_chapter/index.htm
でも>>208も全然いいじゃないっすか!気が向いたらまたやっちゃってください。
221_:01/11/05 22:55 ID:/bRipx7o
ベチと玉山タンが…。
悲しいのぅ。
何度も読み返したよ。
原作より美しいかもしれない。いや、マジで。
222 :01/11/05 23:09 ID:Fz0+WpUr
べち〜・・・マジで泣けたよ。
というか、自分の予想では「みんなー聞いてくださーい」の二人が
苫米地と河内かなって思ってたのに(w
外れたー!
223 :01/11/05 23:21 ID:7kmmI+Es
>>222
俺も思ってた。
仲良し二人組みって言うと、うっちーべっちーを思い浮かべたから。
となると、あの二人は誰になるんだろう・・・・。
224:01/11/05 23:27 ID:BoUsS1/r
今年の6月位にある女の子と飮んだんじゃけど、その子が去年カープ選手にナンパされて付き合う事になった(彼女はそう思っていた)そのあと当然その選手に何回もやられた後に「今年が勝負の年だから」と言われ一方的にふられたらしい
225 :01/11/05 23:36 ID:L3S+u9fd
>>223
ディアスとロペ爺
22664:01/11/05 23:55 ID:JPT7H5P3
次のシーンもうぷしよかどうか迷ってる最中に>>224でちょとワロタんで休息。

>>225
2人は出す予定はないんだけど、出したほうがええんすかね?(w
外人選手はみんな母国に帰ってるからな…。

そっか、うっちーべっちーコンビ忘れてた。あそこの場面はそういう
仲良しコンビじゃない選手ががんがってくれます。
ひねくれモンなんで、予想を外すと意外にうれしい(w
227 :01/11/06 00:10 ID:MQgSI/Nm
続き楽しみにしてまーす。
228chapter13―恐怖心(1):01/11/06 06:05 ID:GVqbhozu
藪の中をジグザグと走り、追跡者がいないことを確認し、勿論周囲に人の気配が
ないことも察知すると新井は足を止めた。山に着くまでそこそこの距離があり、
スポーツ選手とはいえ休みなく走ったためにさすがに息があがった。そして森笠の
怪我を考えると、ここらへんが限界だろうと思った。
「足、大丈夫か?」
「心配するんならむやみに走らせるな」
森笠が苦笑して答え、足に巻いていたタオルを取った。傷口から流れ出る血は
まだ止まっていなかった。
「タオルじゃ限界があるな」
新井は自分の荷物から私服を探し、そのポケットにあったハンカチを取り出すと、
帯状に畳み包帯代わりにきつく巻き始めた。当面の止血だけならこれで何とか
なるだろう。ハンカチを巻きつけながら新井は「ちくしょう」と呟いていた。
「―――嶋のことか」
「嶋のことも河野のことも、このゲームもみんなだ。なんなんだ、これは…」
「河野?…まさか遠藤さんのやつは河野が?」
「ああ。俺も狙われたよ。出口のところに隠れていて、俺が矢を投げたら落ちてきた」
新井はそこまで口にして、そしてようやく河野をそのまま放置してきたことに思い当たった。
気絶して当分起きないと、さっきはほとんど無意識にそう思ったのだが、自分たちが
逃げている間に意識を取り戻しているだろう。そしてまたあのボウガンで人殺しを
続けているのかもしれなかった。
「まさか選手の中からこんなゲームにのる人が出てくるなんて思わなかった。
 たしかにルールはルールだけど、本当に人を殺すなんて」
「たしかにな」
森笠は呟いて、そしてしばらく何かを考えて再び口を開いた。
「けど監督や嶋の死体を見ただろ。あれは冗談なんかじゃない。現実だ。
 ―――怖いよ。恐怖心でいっぱいだ。誰だってそうなんじゃないか?
 次に殺されるのは自分かもしれない、って疑心暗鬼になるだろ。
 河野もそうだったんだよ、きっと」
森笠の言う通り、新井も怖かった。実際、殺されかけたのだ。
「でも、今まで一緒に野球やってきた人間を有無を言わさず殺すってのも酷いけどな」
吐き出すようにいった森笠の一言に新井は言葉を返すことが出来なかった。
「…しかし、お前が声をかけてくれてよかったよ。遠藤さんの死体を見たときは
 頭真っ白になってたからな」
新井の表情に影が差したのを見て、森笠がつとめて明るく言った。
「本当か?」
「ここで嘘ついてどうするんだ?ま、俺の足手まといにはなるなよ」
森笠の憎まれ口に、新井もようやく笑った。
「ならねーよ、バカ。お前もうちょっと歩けるか?」
「ああ」
「じゃ、もう少し移動しよう。落ち着ける場所を探そうや」
22964:01/11/06 06:09 ID:GVqbhozu
chapter14が長いのと、13はつなぎ的な文章なんで、今日の夜に
13だけうぷしてもきっと面白うないので今のうちに出しときます。
また夜に14はうぷします。>>197さんお楽しみに。
230_:01/11/06 08:12 ID:PFGXE86N
広島家見てからコッチに来ると、カーサに慣れないよ(w
みんな同じヤツを光子役と予想してると見たが。
そろそろ登場か。答えが判明するね。楽しみだ〜!
231 :01/11/06 08:19 ID:aJriB/VT
光子役はヤツしかいない。俺の中では(w
みんなも同じかね。たぶん。
232 :01/11/06 09:36 ID:DNqU+KEj
>230
兄貴=川田の予想が見事に外れたため、光子もどうか?
と思ってます。でも自分の中でもヤツしか居ない(w
233代打名無し:01/11/06 09:56 ID:xspmz440
ああ。
光子役はヤツしかいないね・・・・(w
でも、作者さんはワザと外すかも?
234 :01/11/06 19:41 ID:u7nchtbB
age
235 :01/11/06 19:46 ID:QLyuW1Bz
広島ファンってまだいるの?(嘲笑)
早く卒業しろよ
236 :01/11/06 19:51 ID:J9+3es2r
桐山や光子は意外な奴の方がおもろい気もする
桐山=ペーさん、光子=瀬戸まで逝くとアレだが(w
ヤパーリ川田が兄貴だと思ってたス
スゲー楽しみな役が2人おってまだ登場しそうもないが一体誰なんじゃろ・・・。
237  :01/11/06 19:55 ID:LM32O2iO
なぜペーさん(w
238 :01/11/06 20:02 ID:2/qGWY2z
しばらく見ない間にすっかりヲタスレになってる・・・
239 :01/11/06 20:13 ID:6JWon6EN
>>236
光子はやはりチビなんだYO!常識なんだからネ!

私も川田=兄貴と思ってたけど、広島家の知憲和尚で
十分いい役もらってるしね。
それに「兄貴・粗い」だと 原作の「川田・七原」より
仲良すぎになってしまうし。
240_:01/11/06 20:18 ID:kgiiYX6K
スレ当初のノリで…

田村恵 捕手は浮いてるらしい
二軍の練習を見に行ったファンの話では
ランニングで最後尾をチンタラ走り
練習の合間にタバコを吸ってたり…とにかく不真面目
入団当時は真面目な印象があったのに……
241 :01/11/06 20:21 ID:5LVhg/+V
|  光子役似合う?
 \______  __/   lヽ +
            ∨ ∧_∧ l 」 キラッ
             (・ ε ・)‖
             (    つ
             | | |
              (__)_)
242 :01/11/06 20:24 ID:LMlRn7iD
川田が兄貴じゃないとなると、もうあの人しか思いつかねっす(w
自分は千草、杉村、琴弾が気になるところ。
243 :01/11/06 21:53 ID:5AHuVrZo
千草は気になるね。
カコ(・∀・)イイの期待してます。
やっぱり光子はみんなチビ予想?自分も
なんだけどね。
川田はあのお方?あーでもどうかな?
自分の中では2人候補がいます。
244 :01/11/06 22:14 ID:1UonC6Wi
>>243
過去ウヒョスレで貴子役の千明たんと東出ソクーリさん説があったのを思い出したので貴子に一票(w
245 :01/11/06 22:22 ID:1UonC6Wi
今手元に原作ないから違うかもしれんが前田タン=国信?
246chapter14―つながらない電話(1):01/11/06 22:32 ID:Wd6nm2UM
兵動秀治(背番号4)は、おそらく昨日まで普通に使われていたのであろうソフトクリーム屋の
機械の陰に隠れていた。その空間にこびりついたかのようなソフトクリームの甘ったるい匂いが
兵動の神経をますますかき乱した。時計は9時少し過ぎたばかりである。0時と6時にあると
言っていたはずの放送は、このときはまだなかった。兵動はここに2時間ほど隠れていた。
出発した直後、兵動は自分がどちらに走っているのかさえわからない状況だったが、
気がつくとこの店に紛れ込んでいた。入り口と窓の鍵を閉め篭城してしまえば、少なくとも、
例の禁止エリアとやらの件で動かざるを得なくなるまでは安全でいられる。首輪の存在は
重苦しかったが、そんなことはどうでもよかった。殺し合いなんて、とてもできない。けれど
もし、この場所が最後まで禁止エリアにならないのならば、自分は生き残れるかもしれなかった。
支給されたデイパックのほかに自分のバッグがあったのを思い出して、兵動は自分のバッグを
あさった。ユニフォームに着替える前の私服やグローブ、そしてその次に手に触れたもの。
携帯電話。
達川は携帯など使うなと言っていたが、この状況になって誰がそのようないいつけを守ろうか。
兵動は震える手で電話のフリップを引き開けた。自動的に着信待機状態から発信待機状態に
切り替わり、小さな液晶のパネルとダイアルボタンに明かりが灯った。
―――よっしゃ!
兵動はもどかしくダイアルボタンを押した。誰がいる、と考えて、なぜかとっさに頭に浮かんだ
同期の遠藤に電話をかけた。0、9、0、―――。
一瞬の沈黙の後、呼び出し音が鳴った。兵動は心の中で叫んだ。早く、遠藤さん!
ぷつっと音がして「もしもし」という声が聞こえてきた。
「え、遠藤さん。俺です、兵動です。今どこにいるんですか?遠藤さん?」
ほとんど錯乱状態で電話に向かって喚き続けた兵動だったが、相手が何も言わないので
ふと我に返った。何かが、おかしい。何か?遠藤さん?違うのか?
ようやくその電話が言った。
「遠藤じゃないよ、達川だよ。電話使ったらいかん言うたじゃないか、兵動」
兵動はひっとうめいて慌てて通話終了のボタンを押した。心臓が脈打つのがよくわかった。
しかし、その心臓は、もう一段階ジャンプさせられることになった。
すぐ近くで、かしゃん、とガラスの割れる音がしたので。
兵動は窓のほうを向いた。いかにも身軽そうな人間が窓から侵入してきたのだ。
東出輝裕(背番号2)だった。
247chapter14―つながらない電話(2):01/11/06 22:32 ID:Wd6nm2UM
東出はあたりを見回すと誰もいないと思ったのか店舗につながっている住居の
方に向かおうとした。高鳴る鼓動を必死に静めようとしながら兵動は考えた。
東出が住居の方に行ったらここから逃げよう、と。東出は用心深くあたりを
見回しながら住居へ入ろうとする、その時だった。手にもっていた携帯電話が
鳴り出した。―――なんでこんな時に!
兵動はとりあえずその発信音を消そうとやっきになったが、思考回路がショート
しかけていて反射的にフリップを開いてしまった。声が流れ出す。
「えーと達川じゃけど、電話の電源は切っとけよ。あ、それと遠藤な、出発して
 すぐ死んじゃったんだよ。もう遠藤には電話―――」
兵動の指が通話停止ボタンを探り当て、達川の声はぷっつり消えた。息苦しい
沈黙がしばし続き、そして、
「誰かいるんですか?」
という東出の声がした。ここまでヘマを犯して隠れとおせるわけがない。兵動は機械の
陰から姿を現した。デイパックに入っていたナイフをズボンの後ろに隠して。いくら年下の
選手でも油断は出来ない。ましてや東出である。こいつは前々から何を考えているか
わからない節があった。東出が襲ってこようものならナイフを出してやりあおう。
そう兵動は思っていたのだが。
しかし、兵動のその考えは予想もしなかった展開に唐突に中断した。持っていた
デイパックをゴトッと落とし、東出がペタンと床に腰を落とした。そして東出は泣き出したではないか。
「よかった…誰もいなくて怖かったんです。銃声があちこちで聞こえるし、とても怖かった」
東出は嗚咽を漏らす。その手には武器など何も握られていない。
「兵動さん、兵動さんはこんな糞ゲームに参加しようなんて思ってないですよね。
 みんなで一緒に帰りましょう。達川さんはおかしい。僕らまた帰って野球をやりましょう」
兵動は一瞬、茫然としていた。あの東出が泣いている。自分に助けを求めている。
「あ、ああ。こんなバカみたいなゲームにのるわけないじゃないか。そうだよな、東出の
 言う通りだよな…みんなで広島に帰ろう」
すっかり安堵して兵動は東出に歩み寄ると、立ち上がるようにと手を差しのべた。
東出が立ち上がったその時、何かが兵動の横を飛んでいった。そして兵動は耳にした。
何か切れ味のいい包丁でレモンか何かを切ったようなザクッという音を。
何が起こったのか兵動は理解に苦しんだ。兵動には東出の右手が見えていた。自分の
顎の下あたり、左側だ。そしてそこからは、何かバナナのようにゆるやかにカーブした
刃物がのびていた。カマだ、稲刈りにでも使うような。その先端が自分の喉に入っている―――。
東出は右手をさらに一、二度押し込めた。その度にザクッ、ザクッといい音が響き、兵動は
自分の喉が猛然と熱くなるのを感じた。そして、兵動はそれが何を意味するかを理解する
間もなく事切れた。自分に向かって倒れてくる兵動の死体を東出はヒョイとよけた。その
死体の首にささっていた鎌をなにを思う事もなく引き抜くと、東出はうっとおしい涙を拭い
(こんなもんでひっかかるなんて、なんてバカなやつなんだろう、こいつは)鎌をひゅっと
振って血を拭って、その視線に入ったナイフを奪い取った。長居は無用、姿を消そうと
視線をあげて、固まった。
自分と兵動しかいないはずのこの空間に、岡上和典(背番号37)がいた。
248chapter15―ショートストップ:01/11/06 22:36 ID:Wd6nm2UM
「見てたんですか?」
少々驚いたものの、悪びれる様子もなく東出は聞いた。返答の態度次第で東出は
どう出るか決めようと思ったのだ。
「まあ、ね」
岡上も死体を目の当たりにしている割には落ち着き払った風に、しかもうっすらと
笑みをたたえて答えた。その笑みで東出は一瞬にして理解した。
―――こいつは、俺と同じ人種だ!
そう東出が考えたのと同時に、岡上が右手をつきだした。その手には拳銃(苫米地が
握っていたものと同じ357マグナムリボルバーだった。というか、むしろ岡上の右手に
あるそれは、数十分前には苫米地の右手に握られていた。銃声を聞き苫米地と玉山の
死体を発見した岡上は冷静に苫米地の右手からこの銃だけを奪い取ってきたのだった)
が握られている。東出は身の危険を感じ取り、踵を返して住居に入って行った。銃声と
ともに耳のすぐ横を何か熱いものが通過したようだったが、構っている暇などない。
構おうものならあいつに殺される!
「待て!」
岡上は一発撃った後にすぐ東出を追いかけた。―――あいつも速いだろうが俺だって
これが売りでこの世界に入ってきたんだ。そう、この走力とお前より堅実であろう守備を
売り物にしてな。膝?そんなもんちょっとしたハンデだ。東出、お前がいなけりゃ俺が
カープのショートストップに間違いないだろう?ほらほら待て、逃げるんじゃない。お前を
我慢して使っていた監督ももういないんだ。サシで勝負しようぜ、東出―――。
東出も必死で逃げた。さっき何か熱いものが近くを通ったと感じた自分の右耳が湿っている。
チクショウ、弾が耳たぶにでもかすったか?まあいい、頭じゃなかっただけ幸運だったと思おう。
階段を上がり二階の奥の部屋まで走ってきたが逃げ場がない。あるのは、窓!窓から入って
きたんだ、お帰りも窓からどうぞ、ってか?そりゃまた用意がよすぎるよな。
東出は窓に駆け寄るとそれを開け、下を確認する。下にはちょっとした庭がある。落ち方に
よっては足を痛めるかもしれないが、コンクリートではなく土なのでその可能性は幾分低いだろう。
岡上の足音は近づいてきている。東出はサッシに足をかけると下へ飛び降りた。そして建物の
表の方へ逃げた。逃げる時に左足に痛みが走った。ちっ、あてが外れた。また古傷が再発か。
あれは一安打で勝った試合だった。セカンドゴロの間にホームベースに滑り込み痛めた足だ。
そのプレーがきいてあの試合は勝ったのだが、もう野球なんて東出にはどうでもよかった。
とりあえずこの場から逃げる。―――俺は生き延びる!
岡上は二階の部屋を全て(といっても二つしかなかったわけだが)覗き、そのうち一つの部屋の
窓が開いていて、さらには東出の姿が見えなくなったのに気付くといまいましく舌打ちをした。
殺しそこなったか。まあ、いい。あいつもこのゲームにのった事は確認できた。そしてあいつには
刃物しか武器がないことも。岡上はまたも笑みを浮かべた。
―――待ってろよ、東出。お前は必ず俺が殺すからな。
24964:01/11/06 22:44 ID:Wd6nm2UM
異様にレスがのびてると思ったら光子大予想大会っすか(w
光子役は一番に決まりました。(・ ε ・)しかいないっす。
そして次に決まったのは光子に殺される江藤役。ゥしかいねえ(w

この話では原作の登場人物にはない人物が12人出てきます。
えー、大半が殺され役なんですが、そんな中オリジナル光子役が
お鏡タン。お鏡の話書くのが楽しくてしょうがないほどキレとります。
(・ ε ・)とお鏡、最終的に残るのはどっちになるのやら。

>>236
なぜペーなんだ(w ペーもいいポジションにつかせたいんだが、
それ以上に目立ってるコーチが一人いるからなあ。

>>245
国信=嶋っすよ。もういない(;´д`)
前田は相変らずの様子で出てくると思います。

意外に興味をもたれてるんすね、千草役(もう書いてしまった)。
自分としては納得の人選だったんだが、反応が怖いっす(w
25064:01/11/06 22:54 ID:Wd6nm2UM
なんか表現がおかしい。

>この話では原作の登場人物にはない人物が12人出てきます。
選手で原作の名簿に入れられなかったのが12人ってことです。
その人たちは原作にはない行動をしてくれるわけで、話がちょっとずつ変わってきます。
ほかにもっと色々出てきますんで…。
251隠れゥオタ:01/11/06 23:04 ID:9a3rPWVM
なんで携帯使っちまったんだよ〜・・・くっそぉ。
でもチビに殺されるような予感はしてた(ワラ

>64さん
おもしろいです。続き楽しみ。お鏡タンが新鮮で(・∀・)イイ!! 
252ダーティお鏡ヲタ:01/11/06 23:37 ID:be433ZjQ
お鏡……。何故かは知らねどその様子が目に浮かぶ。

64さん、
お鏡を「すげぇイカス」ダーティヒーローにしてやってください!
アキヒロなんかメじゃないぜ!(w

建タンは兄貴を追っかけるオカマ(名前忘れちまった)になるのかなあ?
253 :01/11/07 00:29 ID:0MLiQ8uM
お鏡、カッコイイ!!

>建タンは兄貴を追っかけるオカマ(名前忘れちまった)になるのかなあ
激ワラタ。似合うかも(w
254 :01/11/07 00:43 ID:tJVw973e
W光子(・∀・)イイ!!
どっちが残ってもおもしろそう。
255 :01/11/07 06:33 ID:dwekuBNU
お、、またあぷされてる
楽しみにしてるんでがんがってつかーさい

今後の展開が気になって、ネタ元のバトロワ買ってきてしまった
256_:01/11/07 07:15 ID:s1mNnrK8
ヤパーリ光子=チビか。
色仕掛けとか使って欲しいぞ<チビ(w
お鏡タン登場、ウヒョーて感じです。
原作にないからどんな動きなのか想像つかん。ゾクゾクするよ。

PC修理中の為こんな早くから出勤してここに来ている自分。トホホ。
カプバトロワ中毒か。
257 :01/11/07 07:22 ID:y89Y8HpC
おおお、W光子!
すっごい恐くなりそうだ。
プルプル
でも(・ ε ・)光子いいっす。
258_:01/11/07 07:55 ID:aFuNwF+o
ゥが地味にお亡くなりに…合掌。
259 :01/11/07 18:45 ID:ZerRXLdR

|       ageだ
 \______  __/   lヽ +
            ∨ ∧_∧ l 」 キラッ
             (丶`_ゝ´) ‖
             (    つ
             | | |
              (__)_)
260chapter16―さよならだ、かなこ(1):01/11/07 22:10 ID:r3t1VqWo
緒方孝市(背番号9)は新井たちと同じく山の中を、しかしゆっくりと歩いていた。なにせ
右膝を手術したばかりで走ることは出来なかった。このまま広島に戻る事も、この
チームで野球をすることもないのだとしたら足をかばうことに意味など何もない。しかし、
選手会長をやったこともある。FA権を行使せず(もっとも「選手の権利は尊重すべき」と
いうのが緒方の持論であったのだが)このチームにも残った。自分を育ててくれたのは
間違いなく広島東洋カープという球団なのだ。そこでもう一度自分をアピールする、
復活するんだという思いを緒方は強く持っていた。そのためには、この足の状態を
悪化させることはどうしてもできなかった。
ここ数年の自分の成績を緒方はふがいなく思っていた。たしかにニュータイプの
一番打者(巨人の仁志が目指しているらしいそれ)としてホームランを打ちまくった
事もあった。しかし、緒方はもう一度グラウンドを思い切り走りたかった。再び盗塁王を
獲りたかった。緒方が故障で戦列を離れている間に新しい投手は出てきていたし、
緒方自身その投手らに対して研究はしていた。しかし、いくら研究しても足の状態が
よくならなければ話にならない。走ることが自分の野球選手としての根本にあると
信じていた。そして、それが出来ない今の自分は、ネームバリューはどうあれ尊敬される
野球選手には到底なりえないとも思っていた。
藪の中を歩いている中で、銃声のようなものが何度か聞こえてきた。本当に銃声なのか
どうかは緒方の知るところではなかったが、もしそれが本当にそうなのだとしたら―――
と考えて、それを遮るように自分自身に問うた。何を考えてるんだ、チームメイトが殺人など
すると思ってるのか?いくら何でも非常識だぞ。
太陽は既に姿を現していたが、木々が光を遮り薄暗い中を緒方は歩いていた。
デイパックには水と食糧、方位磁針、懐中電灯、地図にペン、そして普通にゲームで
使う硬球(しかもご丁寧にもそれは球団のものであり、おまけに達川のサイン入りで
あった。何を考えてるんだ、あのおっさんは)が入っていた。達川の言っていた武器が
このボールであるならば、これでどうやって相手と殺りあえというのか(まあ殺しあう
なんて気は今のところないのだが)小一時間ほど問い詰めてやりたかった。
歩いているうちに木々の切れ目が見え、進行方向から光が差している。緒方は藪から
出た。どうやら登山道に出てきたらしい。山道というわけではなく、急な傾斜の階段に
なっている。自分はその階段の途中に出てきたらしかった。傾斜があり木々も邪魔して
いないため、島の様子が一望できた。さらには一面に海が広がり、その向こうには
昨日まで自分がいたはずの広島があった。なぜ自分はここにいるのだろう?早く帰ろう。
妻の、娘の待つあの場所へ。
再び山中へ戻ろうと振り返って緒方は驚いた。いつからそこにいたのだろう、自分の
後ろ数メートル先の藪の中に朝山東洋(背番号38)が立っていた。しかも、自分に包丁を向けて。
261chapter16―さよならだ、かなこ(2):01/11/07 22:11 ID:r3t1VqWo
「う、動かないで下さい。動くと刺しますよ」
朝山の右手が震えているのが見てとれた。きっと(というか普通それが当たり前
なのだが)包丁など人に向けるのは初めてなのだろう。
「いつからそこにいる?」
「気づかなかったんですか?後をつけてたんですよ、俺」
もう少し辺りに気をつかって移動すればよかったのか?いや、しかし他の選手に
会いたい、話し合いたいと思っていたのもたしかだ。一人じゃどうにもならないことも
二人三人集まれば何とかなるかもしれないだろう?三人寄れば文殊の知恵だったか、
そう、それだ。―――今はそんな事を言っていられる状況でもないけどな。
「お前、正気か?」
「勿論じゃないですか。現にもう死んだやつだっているんだ」
朝山のその一言に緒方は耳を疑った。
「今何と言った?…死んだやつがいる?」
語気が強まる。朝山は緒方の気迫におされそうになったが、こらえて答えた。
「僕が神社から出た時に遠藤が死体になってましたよ。もうゲームは始まってるんです」
何と言う事だろう。自分が否定してきたことは既に現実となっていたのだ。もう広島東洋カープと
いう組織は野球チームではない。殺すか殺されるかだけの、そう、殺人鬼と被害者が組織する
集合体なのだ。
―――だったら―――もう自分が野球選手としてもつ自覚など何もない。目の前にいる
昨日までのチームメイトを仲間だと思う必要もない。そして悲しいことではあったが、この
足をかばう理由も、もはやどこにもない。
そう考えるやいなや、緒方の体が動いた。パンツの後ろポケットに入れていたサイン入り
ボールをつかむと朝山の顔めがけて投げた。それをよけようと朝山が顔をそむけた時、
緒方は朝山めがけて駆け出し、危険を顧みずその足もとに飛び込んだ。とても美しい
(こんな状況で美しいという形容をされても困る。できればその言葉は試合中につかって
ほしかった)飛び込みだった。まるでそこに二塁ベースがあるかのような。不意に足を
とられた朝山はバランスを崩し倒れこみ、その拍子に持っていた包丁を落とした。
「ちっ」
朝山がとりあえず緒方から離れようと必死にもがくが、緒方はなかなか離れない。緒方も
朝山を倒した後何発か拳をふるいたかったのだが、朝山の予想以上の抵抗にそれが
できぬまま、ただ離されぬようベルトに手をかけていた。
「離せ…っ!」
離せといわれて誰が離すか?俺にもお前にももう武器はないんだ。この時点で、緒方は
さっきまでの思いを完全に否定しなくてはならなくなった。―――こうなってしまったら、
もうあの海の向こうには戻る事もない。FA権を行使しなかったことで、結局文字どおり
カープに命を捧げることになってしまったよ。それでも根っからのカープファンのお前は
許してくれるよな。かわいい娘たちを頼む。さよならだ、カナコ。
もみあううちに、ふと足に伝わる感触が異なったのを感じた。どうやら自分の一歩後ろに
あの急傾斜の階段があるらしい。障害物など全くない。緒方は朝山のベルトにかけていた
手に最後の力をこめると、朝山を投げに出た。突然の反撃を予想しなかった朝山の体は
半回転して階段に着地すると、その勢いで階段を滑り落ちた。そして、ベルトから手を離す
ことのなかった緒方も、朝山の体に引っ張られるような形で朝山と一緒に落ちていった。

【残り44人】
26264:01/11/07 22:21 ID:r3t1VqWo
マスターズリーグに夢中でうぷ遅れてしまった…しかも大幅修正の章で(;´д`)
手直しをしてしもうた分これから先の章も修正しなくちゃならなかったのと、
昨日コタツで寝込んでしもうて風邪ひいてしまって進行が遅れそうなのとで
数日中にうぷお休み日を頂くかもしれません。すんまそん。矢野地蔵が恋しい(w
>>251
ヤパーリ予感してましたか?(w ハマリ役なんで…
>>252
すげぇイカスダーティヒーローでっせ、お鏡タンは(w (・ ε ・)の存在感があまりない
>>252-253
あのオカマ、そのままがええんかなあ?建は別のトコで使こうてしもうたし…
>>254>>257
(・ ε ・)だけというのもおもろないんでね。ひねくれてますよ(w
>>255
買っちゃいましたか。パクリとか言わんでくださいね(;´д`)
>>256
(・ ε ・)の色仕掛け、って一体誰に通用するんじゃ(w
>>258
光子役予想ついでに恵役も予想してほしかったんですけどね(w
>>259
兄貴やる気っすか(;´д`)
263代打名無し:01/11/07 22:40 ID:6xw0QPmY
おがたん・・・・・゚・(ノД`)・゚・。
264代打名無し@ス:01/11/07 23:21 ID:kLnmWB+t
132を書き終えたらバトロワの感想を書くつもりが・・・(鬱

64さん、スマソ・・・m(_ _)m
2001年スレが容量オーバー直前になってしもて、新スレをどうするか
相談する容量もなくなってしまいやした。それを決めるのにここを借りても
いいでしょうか(泣 本当にスンマセン・・・。

くぅ。バトロワの返事を書くつもりが、なんでこんなカキコになって
しまうんだ・・・(自己嫌悪
26564:01/11/07 23:26 ID:r3t1VqWo
ええっすよ。わしも今ビッグレッドマシンに足運んで驚いてたところですし。
新スレだったら広島家の名前を出してもええと思いますし、リサイクルやったら
あっという間に沈んだはせがースレがありますよ(黄金時代スレは残したいなあ。
マスターズリーグ予想以上におもろいし)。
わしもしばらくは回線つないでるんで、ちょくちょく見にきます。
266代打名無し@ス:01/11/07 23:34 ID:kLnmWB+t
ハセガースレは生き返りそうな気もするんで、じゃあ覚悟決めて「広島家の人々」
スレにしてみますか。(黄金時代スレはおらも残しておきたい。もうなつかしくてのぅ♪)
これ以上、バトロワスレを中断して話し合っても申し訳ないんで即決で作りますわ。

バトロワは原作を読む時間が取れんので、なかなか光子とか桐山とかの意味がわからんかった
んすが、最近バトロワのサイトを見てや〜っと意味が(^^;ゞ
なるほど・・・!確かに光子役は(・ ε ・)しかおらんわ(w で、典子役がカーサなんね。
もっと早いうちにこのサイト見ておけば良かった。
267代打名無し:01/11/08 00:16 ID:/Olgx9tD
スレッドたてすぎでたてられない・・・(涙

すみません、どなたか

タイトル:広島家の人々2

ウヒョスレで話題になった元旦の中国新聞記事
五人の誓いhttp://da1567.hoops.ne.jp/gonin.htmから生まれた物語
「広島家の人々」を中心とした広島ネタスレPart2です。

【前スレ】
2001年後半型ビッグレッドマシン
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/995963952/
【関連スレ】
カープ内に派閥はあるか? (カープバトロワ)
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/1002715486/
【過去ログ】
http://da1567.hoops.ne.jp/

これで新スレを立ててもらえんでしょうか・・・・゚・(ノД`)・゚・。
268 :01/11/08 00:26 ID:K5EPogXG
【広島家の人々2 】
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/1005146706

>267さん
一応立ててみました。
269代打名無し@ス:01/11/08 00:28 ID:/Olgx9tD
>>268
ララ〜っ、本当にありがとうごさいましたm(_ _)m

そして64さんもありがとう〜!ラララ・・・
270:01/11/08 03:06 ID:UWFgDZwJ
あげ
271:01/11/08 03:08 ID:XHrJUdsa
age
272:01/11/08 03:15 ID:QXd9kyLD
やめろ
273  :01/11/08 11:30 ID:E0eWo9BZ
バトロワをちょっと読んだ。光子の子悪魔っぷりはちびっこ優利かも(w
お鏡は野生児だし(w
274_:01/11/08 17:09 ID:QyjPVAiC
オガタン…題名だけで泣けたーよ。
オガタンにピターリハマッてて悲しさ倍増。
>64さん
コタツ!?出すのまだ早くないか(w
復活をマターリ待ってますのでお大事に…。
275 :01/11/08 17:52 ID:hmUC84B/
最初バトロワ読んだ時面白かったけど、これ面白いって言ったら非道か…と悩んだYO

>64さん
緒方んはハマリすぎじゃよ(ノД`)この先も悲しいのイパーイだね(ノД`)
お鏡タン VS (・ ε ・) (・∀・)イイ!!
お鏡タンはすんげえ雰囲気に合ってるし(・ ε ・) の存在感のなさはさすがは忍者やねw
カゼお大事にですです。
276代打名無し:01/11/08 20:23 ID:4WmZUf4L
>>64
「兄弟ネタスレッド」から来ました。
バトロワははまった(3回映画館に足を運んだし)ので、楽しみ
にしています。
一番気になるキャラは榊祐子です。榊はおとなしい性格の
人が適役かな?
277chapter17―読み上げられた名前(1):01/11/08 23:23 ID:dDw64hH4
『みんな元気でやっとるかー』
達川の声だった。拡声器がどこにあるのかわからないが、こんな有名な島だ。どこにあっても
不思議ではない。ただそれらをどうやって達川らがいる厳島神社から操作しているのかは
わからなかった。
『正午になったなー。みんな腹減ってないかー?スポーツ選手は体が資本じゃけーのー。
 荷物の中の食べ物はきちんと食べるんだぞー』
新井は顔を歪める以前に、その達川の明るい口調に唖然とした。
『ほいじゃあ、これまでに死んだチームメイトの名前を言うけぇのう。00番嶋重宣。4番兵動秀治。
12番河野昌人。21番遠藤竜志。51番末永真史。52番玉山健太。54番苫米地鉄人。
56番田村彰啓。57番甲斐雅人。58番長崎元。』
河野の名前を聞いて新井の頬がぐっとこわばった。河野はあの時、まだ死んではいなかったと思う。
すると、あの後また誰かを殺そうとし、逆に誰かにやられたのだろうか?それとも何か別の理由が?
新井が河野を気絶させている以上、それは気分のいい話ではなかったし、それ以上に昨日まで同じ
チームにいたはずの選手の名前の羅列で眩暈を起こしそうだった。名前を読み上げられたチーム
メイトの顔が、頭の中に浮かんでは消えた。みんな…みんな死んでしまったのだ、そして勿論同じ
数の殺人者がいるはずだった。それこそ、名前を呼ばれた者たちが自殺したのでもない限り。
『―――いいペースだぞー。監督をしとったモンとしてはうれしい限りじゃ。ほんじゃ次に禁止エリアに
 ついてでーす。今からエリアと時間を言うから地図出してチェックしろよー』
死者の多さにショックも受けていたし、達川の口調にむかつきもしたが、新井も森笠もとりあえず
地図をとりだし達川の言ったエリアに印をつけた。達川の告げた禁止エリアは、当座新井と森笠の
いるところとは関係がなかった。しかし、次は新井たちのいるここかもしれない。
『じゃー、昼間でみんな元気じゃろうから、がんばろうなー』
最後にそれだけ言って、達川の放送はぶつっときれた。
地図の裏に印刷されていたメンバー表を見る。悪趣味だが、情報は確認しておかなければならない。
今放送された名前の横に小さくチェックを入れた。大きな番号の選手が多い。皆若く、ほんの数年の
うちにカープに入ってきた選手ばかりだ。この選手たちが一体何をやったというのだ?どこに殺され
なければならない理由があったのいうのだ?
そんな自問が、ガサガサという音で中断された。森笠も一気に緊張するのがわかった。新井は名簿と
ペンをさっとポケットに入れた。その音はゆっくりではありながらも、だんだんと近づいている。
278chapter17―読み上げられた名前(2):01/11/08 23:23 ID:dDw64hH4
新井はデイパックを手にとった。いつでも動けるようにしておかなければならないと考えて、荷物はもう、
そのデイパック一つにまとめてあった。いくらかの衣類などは自分のバッグに残していたが、こっちは
捨ててもいい。森笠も同様に荷造りしてあった。
新井は支給のナイフを抜き出し、右手に逆手に持った。だが、思った。果たしてグラブもろくに使えない
ような自分にこんなものをうまく使えるのか?
しかし、余裕はない。ガサガサという音はすでに数メートルぐらいに迫っている感じだ。またしても、あの
神社の入り口で感じたのと同じ焦燥感が新井の頭を占めた。しかし、そんな時に何も出来ずただその場に
立ち尽くしてしまうのもまた新井だった。音はますます大きくなる。ああ、もうダメだ!新井は目をつぶった。
そして―――
近づいてきた音が目の前でしなくなって、目を開けた。そこにいたのは一匹の猫だった。森笠も拍子抜けした
表情で猫を見ていた。とりあえずそれを猫だと認識した二人は無意識にしゃがみこんだ。二人ともさっきまでの
恐怖とのあまりのギャップに言葉も出なかった。そのうちに、むやみに焦ったことが馬鹿馬鹿しくなり、苦笑した。
「こえーーーーーーー」
ふと大きな声を出した。猫は二人をじっと見ていたが、その声に反応して新井のほうにトタタタとよってまとわり
ついてきた。新井はナイフを鞘にしまい、猫を抱き上げる。
「いやに慣れてるけど、飼い猫かな?」
「さあ」
と答えたが、たぶん飼い猫だろう。思えばこの糞ゲームのために島の住人は全て追い出されたのだから。
この近くに人家はなかったはずだが、この猫はずっと山の中をさまよっていたのだろうか?
自分の胸の中で気持ちよさそうに体をなめる猫を見てそんなことを考えながら、新井は立ち上がって、
顔を上げて―――ぎょっとした。
向こうのほんの十メートル、あたかも地面に固着したかのようにユニフォーム姿が立っていた。新井より
やや低いもののそのがっしりした体、日焼けした浅黒い肌、刈り込んでもみあげだけのばした髪は、
廣瀬純(背番号26)だった。

【残り44人】
27964:01/11/08 23:35 ID:dDw64hH4
さあ、また一人出てきました。続きいこうかと思ったけど、この後を考えて
出し渋りました。またもこたつで寝ててうぷ忘れるところだった(w
風邪はそのへんにある薬飲んだら何ともなさそうで、昨日矢野地蔵とともに
続きも進んだんでこのままいけそうかと思うとります。
>>273
いや、お鏡タンもインタビューとかみてると変なところあるからねえ。
>>274
こたつ萌え〜。最近寒くなったように思えるんだが…。
>>275
面白いと言うだけで非道なら、殺人シーンを嬉々として書く自分はもっと非道だ(w
>>276
榊役!またしぶい所をついてくる。
280代打名無し:01/11/09 02:56 ID:rgHIUxBD
廣瀬=川田!?
正直予想外だった、(・∀・)イイ!
281 :01/11/09 03:21 ID:3XnFk5Zm
>280
廣瀬=大木立道じゃない?
chapter1見る限り、川田=○○だと思うんだけど
282_:01/11/09 07:55 ID:+ow2NMoA
>グラブもろくに使えないような自分
ワロタ
笑う話ではないのかもしれぬが。
283 :01/11/09 08:50 ID:thI32btT
川田=○○○だと予想。
284 :01/11/09 09:09 ID:WMJb4/V6
死んだ選手に緒方んと東洋は無いけど
生きてるの?!

自分は川田候補2人居るんだけど
みんなはどっち予想かな?
chap1読む限りあっちかなぁ〜。
285chapter18―新井vs廣瀬(1):01/11/09 21:57 ID:TuDvXQvL
森笠が新井の視線を追って振り返った。その顔がみるみるこわばるのがわかった。
そう、果たして廣瀬はどうなのか?敵なのか、そうではないのか?
廣瀬は、ただじっとこちらを見ていた。新井は、緊張感に視覚が半ば硬直していくのを
感じながらも、そのひと隅、廣瀬の右手に大振りなナタが握られているのを認めた。
それで新井は、ベルトに差し込んだナイフへとほとんど無意識に手をのばした。
それが引き金になった。ナタを握った廣瀬の手がぴくっと動き―――次の瞬間、
まっすぐ突っ込んできた。新井はとっさに手にしたデイパックを上げ、そのナタを受けた。
デイパックがざっくり割れ、中身が地面に撒き散らされた。水のボトルに当たったせいで、
ばしゃっとしぶきが跳ねた。刀身は新井の腕まで達し、ちりっと皮膚の表面が熱を感じた。
ちぎれたデイパックを捨て、後ろへ飛びすさって距離を取った。今や廣瀬の顔は引き攣り、
黒目のまわりにぐるりと白い部分が見えた。
新井は信じられない思いだった。それは、確かにこの状況だ、一瞬自分も疑いもした。
しかしなぜだ?なんであの見かけの割には誰にも優しくて、練習熱心でもあった廣瀬が
こんなことをするんだ?
廣瀬はちらっと視線を横に飛ばし、木陰からこちらを見ている森笠を見やった。新井も
その視線を追って森笠を見た。廣瀬の視線を受けた森笠の顔、口元が引き攣った。
―――いきなり廣瀬は新井の方に顔を戻し、同時にナタが横なぎにふるわれた。新井は
ベルトから逆手に抜き出したナイフでそれを受けた。間の悪いことに革の鞘に収まった
ままだったが、とにかく、がちっと音がしてそのナタの襲撃はブレーキをかけ、止まった。
新井の右の頬の辺り、五センチ手前で。新井にはナタの表面、焼入れした時に生じたの
だろう、青い波紋のような模様がはっきり見えた。
廣瀬がまた振りかぶろうとする前に、新井はナイフを捨て、その廣瀬のナタを持った右手に
組みついた。にもかかわらず、廣瀬はもう一度強引にナタを振って、それはやや緩慢ながら
新井の右側頭部に当たった。新井の耳たぶにざっくり割れ目が入る感触が伝わった。あまり
痛くないんだな。なんならついでだからピアスでもしてみるかな。広島東洋カープ初の
ピアスをつけたプレーヤー。長谷川さんのガムみたいにコーチにとめられるだろうけど、
などと場違いにのんきなことが頭をよぎった。
廣瀬がナタを持った右手に左手を添えもう一度振りかぶろうとする前に、新井は左足を
廣瀬の左足に内側から飛ばしていた。廣瀬の足がぐらっと崩れた。よし、倒れろ!
286chapter18―新井vs廣瀬(2):01/11/09 21:58 ID:TuDvXQvL
ところが廣瀬は倒れず、よろけて半回転し新井の方に体重を預けてきた。新井は退がった。
森笠のいる方とは反対の茂みに背中が突っ込んだ。周りでばきばきと枝が折れた。
さらに新井は退がった。廣瀬のめちゃくちゃな力に押し込まれ(新井が相当な力の持ち主
だったにもかかわらず、だ)足はそのまま、ほとんど後ろ向きに走っていた。森笠は遠ざかる。
ほとんど現実味のない状況で、新井はまたまた場違いに試合前の練習を思い出した。
新井貴浩、背面競争チャンピオン。イエー。
ふいに、足元の感じが変わった。新井の足の先は窪みになっていたのだが、深い茂みの
せいで新井も廣瀬も気付かなかったのだ。
―――落ちる!
二人はもつれたまま、その灌木に覆われた傾斜を転げ落ちた。新井の視覚の中、真昼の
青空と冬を迎え少しくすんだ葉を施した木々がぐるぐる回った。ただその間も、廣瀬の
手首を握った手は離さなかった。
ものすごい距離を落ちたような気がしたが、実際にはほんの十メートル程度だったかも
しれない。どん、と全身に衝撃がきて体の動きが止まった。周囲に光が満ちていた。
窪みの先には、登山道と、さらにはその横を流れる川が待っていた。
新井は廣瀬の下敷きになっていた。立ち上がらなければならない、廣瀬よりも先に!
ところが、新井は一瞬妙な感じにとらわれた。圧搾機みたいな圧力で自分に向かって
いた廣瀬の腕の力が、ふいに消失していたのだ。それはただ、ぐたっと動かなかった。
新井の顔は廣瀬の胸の下辺りになっていたのだが、新井は視線を上げ、そのわけを悟った。
すぐ眼前で、廣瀬の顔面にナタが食い込んでいた。ナタの刃のかっきり半分が廣瀬の
顔から突き出していた。額の上から入り、開いた口の中でナタの刃が薄青く光を撥ね
返している。そしてそのナタはというと、もちろん廣瀬が握っているのだけれど、その
手首は新井が握っていた。廣瀬の顔面から新井の手首へ、何かとても気味の悪い
感覚が光の速度で走り抜けた。その感覚を追うようにナタの表面を滑って、ゆるゆると
廣瀬の血が流れ出し、廣瀬の手首を握る新井の手にまで伝わってきた。新井は低く
うめくとその手を離し、廣瀬の体の下から出た。廣瀬の体がごろんと仰向けになり、
その凄惨な死に顔が真昼の日光に晒された。
287chapter18―新井vs廣瀬(2):01/11/09 21:58 ID:TuDvXQvL
ぜえぜえと肩で息をしている新井の胸の奥から鋭い吐き気が波のように突き上げてきた。
その廣瀬の顔、これ以上ないだろう凄惨さは確かに些末な事情とは言えなかったが、
それにもまして新井にとっては自分のことの方が問題だった。そう、自分は人を殺したのだ。
それも、昨日まで仲間だったチームメイトを。事故だと思おうとしても、だめだった。
何せ―――転がり落ちる最中、自分は必死でナタの刃が自分に向かないように、
つまり廣瀬の方に向くように、廣瀬の手首を思い切りねじ上げていたのだから。
とにかくすごい吐き気だった。厳島神社で山本監督の死体を見た時と同じくらいの。
しかし、あの時のように呑気に吐いてもいられない。吐き気をぐっと飲み込んで
こらえると、首を持ち上げ自分が転げ落ちてきた斜面を見上げた。灌木に覆われ、
上は見えなかった。廣瀬との揉み合いに夢中になって足が完全でない森笠を
一人置いてきてしまった。それが気がかりだった。
新井は立ち上がり、廣瀬の顔とナタをしばらく見つめた。それで、ちょっと躊躇したが、
しかし、唇を結ぶと廣瀬の顔を割っているナタの柄から廣瀬の手を引き剥がした。
いくらなんでも廣瀬をこのまま放ってはおけなかった。埋葬なんてとてもできないが
―――少なくとも、ナタが刺さったままの廣瀬の顔は酷すぎた。生理的に耐えられ
なかった。新井はナタの柄をつかみ抜き取ろうとした。廣瀬の顔がナタにくっついて
持ち上がった。あまりにも深く食い込んでいて抜けないのだ。しかし、やはりこのままで
この場を去ることはできない。歯を食いしばると再び廣瀬の頭の横に膝をつき、
幾分震えている左手をその額にかけた。右手でナタを引くと、一瞬いやな音がして
ナタは抜けた。血がしぶいた。また吐き気がしたが再び立ち上がると踵を返した。
しかし、新井は再び目を見開くことになったのだった。
なぜなら―――眼前十五メートル、登山道の向こうにユニフォームの男が―――
瀬戸輝信(背番号28)、あの厳島神社で「エリート」発言をかました男が立っていたので。
そして、瀬戸は拳銃を握っていた。

【残り43人】
28864:01/11/09 22:03 ID:TuDvXQvL
間違えた・・・>>287は新井vs廣瀬(3)っす。
疲れてるせいか注意力がなくなっとるらしい。
続きがちょっと書ければ深夜に19をうぷするかもしれません。
川田役の予想が始まっとるし(まあ見る限り予想集中ですな)。
>>282
わろうてください。( ̄粗 ̄) はネタ要員っすから・・・
>>284
>緒方んと東洋
そのへんは後でぼちぼちと。
289 :01/11/09 22:10 ID:NE4dPxi6
ぎゃー廣瀬タン・・・1番痛そうですよね<ナタ
なるほど〜エリート瀬戸があいつなんですね。
そろそろ光子に次ぐ大注目の彼が登場っすね!楽しみだ〜

おつかれさまです。無理はされぬ様に。
290_:01/11/09 22:27 ID:mgSu7w/+
>64さん
あまり無理しないでね〜。
といいつつ、きっと夜中にも来てしまうであろう自分。
ピロセタンが!もみあげも左右非対照に!?
291280:01/11/10 01:37 ID:4fEvLrV7
>>281
あ〜、大木忘れてた!!
となると個人的に川田は○○○○希望してたんだけど、>>284-285の言う通り
あの人かなあ

三村は誰になるんだろ…、投手陣が恵まれてないからあの人かな?
292280:01/11/10 01:37 ID:4fEvLrV7
間違い、>>283-284
293 :01/11/10 12:24 ID:KKqBOPRr
阪神版や日ハム版などみてみたい。
294代打名無し:01/11/10 17:22 ID:/Xat7YjM
西武版も見てみたい。
295chapter19―大歓声を背負う人(1):01/11/10 23:52 ID:+GWD7d4e
瀬戸の細い目と新井の視線がかちあった。細いがそれなりに見開かれ、血走った目。
廣瀬と全く同じ目だった。顔色はあの平舞台で見た時と同様極度に青ざめており、
人間の顔色というよりはもはやお化け屋敷なんかで見る蝋人形に近かった。
その拳銃の銃口が動く気配に、新井は身をひねりざま仰向けになり身を低くした。
瞬間、ぱん、という破裂音がして拳銃が小さな火炎に包まれるのが見えた。自分の
頭のすぐ上を何か熱いものがかすめた。もっともこれは、気のせいかもしれない。
とにかく、弾は当たっていなかった。
新井は何を考える余裕もなく、ただ仰向けの姿勢のまま後退しようとした。足もとに
転がる砂利が音を立てた。―――到底間に合わなかった。逃げられるわけがない。
瀬戸は、もはや新井の眼前三、四メートルにまで近づき、新井の胸の辺りに狙いを
定めていた。新井の顔の筋肉が、石膏彫刻にでもなったように固く固くこわばった。
体の中に、今度こそ本物の恐怖が膨れ上がった。あの銃口が次に吐き出す小さな
小さな鉛玉が俺を殺すのだ。俺を―――殺すのだ!
「やめんか!」という別の声がした。瀬戸がびくっと顔を斜め後ろへ振り向けた。
新井もぼんやりその視線を追う。声の主の姿を確認した瞬間、新井の耳の中で、
彼が登場する時にまるで決まり事のようにあがるあの大歓声が聞こえたような気がした。
いつもどの選手にも負けない大声援を背負っていた孤高の選手、前田智徳(背番号1)が
そこには立っていた。手にポンプ式ショットガンを持って。
いきなり瀬戸がその前田に向けて撃った。新井は前田がすっと腰を落とすのを見た。
前田が膝立ちの姿勢で保持したショットガンが吠えたと思うと、火炎放射器みたいな
火花が銃口から伸び、次の瞬間、瀬戸の右手が消失していた。血の霧がぽう、と
空を流れ、瀬戸が唐突にそこに目の前に出現したアンダーシャツの袖をまとった腕を
一瞬不思議そうに見つめていた。まだまだ左手は残ってるからお得意のパスボールを
するのには不自由はないけど、ボールはどうやってピッチャーに返そうか?あまり
盗塁は刺さないけど(それでも強肩って言われてるんだ)どうやって二塁三塁へ
ボールを送球しようか?何より打席には、左手1本でバットを持って立つのかい?
―――そこに落ちたのは、なんだい?
296chapter19―大歓声を背負う人(2):01/11/10 23:53 ID:+GWD7d4e
「ああああああああああああああああ」
瀬戸が思い出したように動物のような叫び声を上げたので、新井は瀬戸が
そのままそこに膝をつくのだと思った。前田は何事もなかったかのように次の
弾を装着し終えていた。しかし、瀬戸は新井の予想通りには動かなかった。
瀬戸はまず目の前の自分の腕から左手で銃をもぎ取った。バトンリレーじゃ
ないんだから。―――何を考えてるんだ、俺は。ちくしょう、最悪のバトンリレーだ。
「やめろと言っとうじゃろうが」
前田が叫んだが、瀬戸はやめなかった。銃を前田に向けて構えた。打つ気さえ
おこらない棒球が投げられた時に見せるいまいましそうな表情をちょっとだけ
浮かべて、前田がもう一度撃った。瀬戸は体の真ん中からくの字に折れ曲がって、
走り幅跳びの選手のような姿勢で、ただし、後ろに吹っ飛んだ。ぶらりと伸びた
つま先から接地して、次の瞬間こま落としのようにがくんと仰向けに倒れていた。
それきり動かなかった。
新井は慌てて身を起こした。瀬戸の死体に目をむけたくはなかったが、それでも
視線が自然とそちらへ向かう。前田はその死体にはほとんど目をとめず、ショット
ガンを構えたまますぐに新井に近づいてきた。新井は目の前で立て続けに起こった
事態、それに廣瀬と瀬戸の凄惨な死に様にまだ圧倒されていた。
「動くな。持ってるモンを捨てろ」
その声に、新井はようやく自分がナタを持ったままだったことに気付いた。新井は
言う通りに血に染まったナタを足元に捨てた。そのとき、森笠が落とし穴のような
斜面になっていた窪みの上に現れた。さっきの銃声を聞いて顔は既に青ざめていたが、
登山道に無造作に倒れている廣瀬と瀬戸の死体、向きあった新井と前田を見て
息をのむのが分かった。前田も森笠に気付き、さっとそちらにショットガンを向けた。
「前田さん、やめてください!俺と森笠、一緒に隠れてたんです」
それを聞いて、前田はその視線を面倒そうに新井の方に戻した。相変らずの
仏頂面だった。新井は森笠にも叫んだ。
「森笠!前田さんが助けてくれたんだ!前田さんは敵じゃない!!」
297chapter19―大歓声を背負う人(3):01/11/10 23:54 ID:+GWD7d4e
もう一度森笠をちらっと見て、前田は銃口を下げた。そしてボソボソと呟くように言った。
「先に言い訳しとくけど、これを撃ったのは仕方なかった。それはわかるな?」
新井はそれでもう一回瀬戸の死体のほうに目をやり、それから前田の言葉も
突き合わせて、ようやく、もしかしたらと思った。もしかしたら、瀬戸さんは混乱して
いただけなのかもしれない。そう、自分が廣瀬を倒したのを見て何か勘違いしたの
かもしれなかった。誤解しても無理はない。だが、前田の言う通り、いずれにしても
前田の行為はとがめられなかった。前田さんは撃たなければ瀬戸さんにやられて
いたに違いない。自分だって、廣瀬を倒したのだ。新井は前田に顔を戻した。
「わかります。助けていただいてありがとうございます」
前田は少し肩をすくめた。
「瀬戸を止めただけなんじゃが、そういうことになるわな。
 まあ、お前みたいなやつがおってよかったわ」
新井は実際、かなり意外な気がしていた。あの平舞台で自分はこう考えたのだ。
前田だけは…恩師の山本監督も殺され、自棄になってこのゲームに“乗る”かも
しれない、と。しかし、その前田が自分を助けてくれたのだ(いつも小言を言う割には
面倒を見てくれていた金本あたりがこういう役割を果たすだろう、とも思っていたのに)。
前田は何か考え事をするように窪みの上でこちらを見る森笠をしばらく見た後、
「お前ら、一緒にいたんか?」
と聞いた。
「はい」
新井の返事を受けて苦笑いでもするように言った。
「今時の若者はええのう。わしらの頃は殴り合いなんかしょっちゅうだったのに」
そういえば入団当時の前田と浅井は仲が悪かった、と聞いたことがあった。
殴り合いの喧嘩はさすがの新井にも経験はなかった。
「まあええわ。とりあえず森笠の所に戻ろう。わざわざ無防備につったっとくか?」

【残り42人】
298chapter20―戦闘の横で(1):01/11/10 23:59 ID:+GWD7d4e
小林幹英(背番号29)は茂みの中をざざざ、と小走りに走っていた。手術から約1ヶ月
たって、練習再開できるかできないかという頃に巻き込まれたこのゲームだった。
足にはまだ不安もあった。しかし、とにかく今は逃げなくてはならなかった。小林の
頭の中で、さっき見たばかりの映像がフラッシュバックした。茂みの中から見たそれ。
新井貴浩は廣瀬純を殺してのけた。実にサスペンス的なやり方で、しかも完璧に。
新井が廣瀬の頭からナタを抜き出すまで小林は魅入られたようにそのシーンから
目を離せなかったのだが、そのナタについた赤い色を見てようやく恐怖の感情が
小林を打ちのめしたのだった。デイパックをひっつかみ、放っておくと自分の意志とは
関係なく声をあげかける自分の口を抑えて逃げ出した。目に涙がにじんでいた。
背後で銃声がしたが、小林はもちろんそれもほとんど認識できなかった。
299chapter20―戦闘の横で(2):01/11/11 00:00 ID:ZaqRQzdi
一方、銃撃戦まで川の向こうでしっかりと目に焼き付けたものもいた。チームリーダー、
野村謙二郎(背番号7)だった。新井と廣瀬が斜面を落ちてくる音で顔をあげ、瀬戸の
登場、前田の登場、そして前田と新井が消えるまで一部始終を、ただただ音も
たてずに見つめていた。
もうこの世にいないメンバーの名前が達川によって読み上げられた時、長年の
自分の夢がかなうことはなくなったと悟ったはずだったが、さすがに目の前で
二番手捕手と言われた(もうずっといわれているような気もするが)瀬戸や、期待の
若手(特に打撃が使えるようになれば、その守備やファンにも受けのよい性格と
あわせてカープの顔になれる選手だと思っていた)の廣瀬が殺されて、自分の
夢が完全に消えたことをやっと理解したのであった。
思えば今年は代打から始まったシーズンだったが、いつしかサードのポジションを
新井から奪っていた。毎年(今年の開幕直後さえも)悩まされていた大きな怪我も
せず(だいたい1年通して野球をやればどこかに痛いところはでてくる。我慢できる
まではグラウンドを離れたくはないというのは野村の一貫した思いだった)、終盤には
木村拓也の怪我のあって久しぶりに一番という打順に座る事もできた。思い返すと、
ここ数年ではもっとも体が動いていたかもしれない。そしてチームも惜しくもAクラスは
逃したものの、若手が成長した。中堅・ベテランもポジションに見合う働きが出来ていた。
助っ人選手も結果を残した(特に弟分と強い親しみを抱いているディアスの活躍ぶりは
自分にとっても相当うれしかった)。来年こそは自分の、チームの夢がかなうと真剣に
思っていた。しかし、この悪夢のようなゲームでその夢に必要な人材がどんどん
消えている。そして生き残った選手たちも当たり前のように殺し合いをしている。
カープというチームが、もう“チーム”ではなくなっていた。茂みにかくれたままで
野村は空を仰いだ。落ちてきそうになる涙を必死でこらえていた。
―――来年こそは、来年こそは優勝できると信じていたのに。

【残り42人】
30064:01/11/11 00:06 ID:GLYdnGew
ちょっと長かったが、20は戦闘シーンではないんでうぷしました。
川田役は予想通りっす。(丶`_ゝ´) と最後まで迷ったんすけど。
>>291さんが誰を希望してたのか気になる。4文字…ササオカ?

>>293-294
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/1001689521/615
たしかに阪神あたりはおもろいと思うが。ちゅにちはまだdat落ちしとるし。
30164:01/11/11 00:08 ID:GLYdnGew
>>298-300まで回線切ってないのにIDがかわっとる…。
日がかわったから1回変わるのはわかるが、なぜに2回も?
やってるのは同じ人間す。
302sage:01/11/11 00:10 ID:UmBjF5bR
わかったから糞スレあげるな
303280==291:01/11/11 01:12 ID:4d5jEdk5
>>300
本人がまだ出て来て無いんで言わんときます
64さんの構想を左右してもどうかと思うし、出て来たら改めて
ヒントは映画版をレンタルで見た直後、とだけ

しかしどのチームも桐山役だけはさっと思い浮かぶのは何故だろう?
阪神=中込
日公=下柳
西武…ココだけは適当なのがいないなあ、松坂か危険あたり?
304 :01/11/11 01:14 ID:u7XMBh0i
おおおお・・・!
ヤパーリ川田は前田だったか。
305ビバ!! 64氏!!:01/11/11 01:20 ID:Oyfje/6N
ノムケン最高だよ、オトコダヨ……(゜дÅ)

けどノムケンも居なく成っちゃうんだよな、このまま逝くと。
凄まじく複雑な気分だ。

前田はもうバッチリです。完璧です。

>打つ気さえおこらない棒球が投げられた時に見せる
>いまいましそうな表情をちょっとだけ浮かべて

この辺がすげえヒット(個人的に)。
306 :01/11/11 02:09 ID:H0xMhmO6
川田前田タンカコイイ!!
ノムケンのノムケンっぷりに感激しました・・・。
307 :01/11/11 02:55 ID:SZx29pCp
最初、川田=兄貴、桐山=前田だと思ってたけど見事に逆。
してやられました、64さん。お見事です。

W光子の今後も楽しみ。
最初、光子=(偽)涙=涙=建タンの発想から
光子=建タンというむちゃくちゃな配役を考えてみたりしてました(w
でも、建タンに泣き落としされたら嘘だと解ってても堕ちるなぁ。
308306:01/11/11 03:33 ID:TUpD9UMM
>>306
自己レスになるけど、感激ってなんかおかしい。感動だろ!
309 :01/11/11 07:46 ID:tZb4xz6C
ヤパーリ川田=前田でしたか。
前田かノムケンのどちらかを
予想していたのですが。
しかしノムケンはどこまで行っても
チームリーダーだ。
310 :01/11/11 09:24 ID:IdKqlhO7
>>293
日公だったら、川田=小笠原って感じがする。
311 :01/11/11 10:48 ID:lIMbQx3p
>>307
映画ではイメージが違ったけど、原作の光子は「虫も殺さないような可愛らしい」容貌だったからね。
パッと見、殺人のイメージから一番遠い建タンもある意味ハマり役だったかも。
312 :01/11/11 12:19 ID:win1S/VQ
「苫米地・・・・・・。」
河内は高級旅館の屋上で凄惨な光景を見た。
河内が見たものとは、ふたつの死体だった。両方ともこめかみに穴が開いていた。その穴からは、
河内との思い出もすべて抜けてしまっていた。
「そんな、そんな・・・・・・。」
河内は泣くしかなかった。ついこのあいだまで、いっしょにファームで汗を流していた、
それも特によく話していた苫米地が、目の前で変わり果てた姿になっていた。8月、河内に再び1軍昇格のお呼びがかかり、
他の若手投手から白い目で見送られる中、ただ一人笑顔で、
「頑張ってこいよ。」
といってくれた苫米地とは、もう会話ができないのだ。
「だれが・・・・・・誰がこんなひどいことを・・・・・・・」
苫米地の右手に銃が握られているのを、混乱した河内は気がつくはずもなかった。
313312:01/11/11 12:52 ID:win1S/VQ
>>186
ビッグレッドマシンってどこにあんですか?
31464:01/11/11 14:24 ID:ieKzRuRw
>>313
もう「広島家の人々2」になってますよ
http://kaba.2ch.net/test/read.cgi/base/1005146706/
書いてもらうのは非常にうれしいんですが、結構続き書いてるもんで
河内の部分書き直しになってしもうたんですが…(;´д`)

ということで、すぐ後を書き換えないといけないのと、私用とで
今日はうぷできんかもしれません。スマソ…

前田と監督の評価が上々でよかった。何回も書き直したかいがあった…。
>けどノムケンも居なく成っちゃうんだよな、このまま逝くと。
監督にはこれから働いてもらう予定なのでまだまだがんがってもらいますよ(w
光子は容貌だけなら末永を考えたんだが…あまりに話がまとまりそうになかった。
315代打名無し:01/11/11 18:54 ID:SIsQOD6r
>>298
榊祐子=小林幹英ですか。
あとは灯台グループですね。予想は難しそう。
316@:01/11/11 18:56 ID:fMYJ6jGN
ピカドン派
水クレ〜派
317 :01/11/11 21:28 ID:tZb4xz6C
へぇ〜原作は、そんなに「可愛らしい光子」なんだ。
それなら(’。’)でも合いそうだね。
(・ ε ・)は(・ ε ・)でハマってるけど。
末永たんの光子!!ああ、それもヨカッタ(末永ヲタ)
でも、キャラがまだ立ってない分難しそう。

鶴たん・アンパソ辺りの配役が
楽しみだ。
318chapter21―頭脳派捕手(1):01/11/12 06:35 ID:QMAskx4j
田村恵(背番号60)は厳島神社を挟んで港とは逆の方向にある大願寺の境内にいた。
与えられた武器はバールだった。人を殴るには十分だろうが、ゲームが開始されて
数回銃声を聞いている。もし相手が銃を持っていたら、とてもじゃないが太刀打ち
できそうにはなかった。しかし田村はバールを手にして、いざ敵がやってきたら
どう戦うか、そればかり頭の中でシミュレーションを繰り返していた。
―――飛び道具だろうが何だろうが、何とかするのが頭脳派捕手の腕の見せ所だろう?
それにしても田村はこのゲームに参加させられたことに納得いかなかった。そもそも
オーナーの鶴の一声でこの世界に入った。「だめならフロント入りさせればいい」―――
その一言で自分の将来は約束されたといってもいいであろう。むしろ適当にレギュラー
はって引退後に仕事がなく苦労するよりも(だいたい広島みたいな所に野球解説者が
ごろごろ転がっていても仕方ないだろう?解説者・評論家の席を奪えなかったら
どうやって生活しろというんだ)、適当に野球をやって、適当に見切りをつけて、適当に
球団幹部になればいい。給料なんかどうせ今とたいしてかわりはしないだろう…1軍で
ばりばりレギュラーやってるやつらならともかくな。
勿論1軍の試合でそれなりに活躍していた頃は、ちょっとだけあの高校時代のフィーバー
ぶりを思い出さなくもなかったが、それはあくまで活躍している頃だけの話である。むしろ
その後継続的に活躍できないのなら、あのバカみたいな騒がれようは経験すべきではない。
自分が思い出でしか語られない、とても惨めで辛い存在に思えてくる―――そう田村は
思っていた。
319chapter21―頭脳派捕手(2):01/11/12 06:35 ID:QMAskx4j
一昨年のシーズン終盤、横山らとバッテリーを組み活躍したおかげでマスコミにも注目
されたが、翌年怪我などもあり1軍では活躍出来ずじまい。前年のマスコミでの扱われ方
など、まるで他人のそれだったかのようだった。
それは今年も同じだった。倉義和(背番号40)や木村一喜(背番号27)の台頭で、自分の
存在などまるでなかったかのようだった。特に木村一などは2軍で首位打者を狙える
好成績を挙げていたので、自分の出場機会は本当に少なくなってしまっていた。一応今現在
野球をやっている、そして同じポジションである以上は多少恨むべき存在として木村一は
認識されていた。
そしてシーズン終了―――ドラフトでの補強ポイントは捕手だと言われ、自分もとうとう
フロントに入るのかなと思っていたが、それはなかった。あと1年野球選手を続けることに
もうくたびれてはいたのだけれど、それでも心のどこかにもう一度という思いもあった。
「ヒーロー」を経験してしまったものの淡い願いである。しかし、実際は選手生命が1年のびた
おかげでこんな残酷なゲームに参加させられてしまっていた。
―――なんでだよ!フロントに入れたいんだったらこんなゲームの前に入れてくれれば
よかったんじゃないか!
320chapter21―頭脳派捕手(3):01/11/12 06:36 ID:QMAskx4j
今年解雇された選手の顔が脳裏に浮かんだ。とてもうらやましかった。お前ら、実はもの
すごい強運の持ち主なんじゃないの?
「キキキキキ」という鳥の鳴き声に田村ははっと我に返った。何を考えてるんだ俺は。
そんなくだらんことを考えてる暇があったら、誰か来た時の対処法を考えるんだ。頭に
思い浮かべるんだ。誰かが現れる。その時、俺はどう対処する?いきなり襲うか、それとも
馴れ馴れしく近づいていくか。相手にもよるな、若手の2軍選手だったら―――
ふいに、パンをいう音がしたかと思うと、頭に振動を感じた。いや、もしかしたらそれさえ
感じていないかもしれない。たった1発の銃弾で田村のシミュレーションは幕を下ろした。
田村の背後五メートル程度の所に無防備に金本知憲(背番号10)がたっていた。右手には
長崎の武器であった小型ピストルが構えられていた。金本はそれをポケットにつっこみ
田村が息をしていないのを確認すると、倒れた弾みに転がったバールを持ち二、三度
素振りをしてみせた。―――バットのかわりぐらいには、なるかな。
そうしてバールをデイパックにいれると田村のほうに一度も視線を向けることなく、その場を
立ち去った。

【残り41人】
32164:01/11/12 06:48 ID:QMAskx4j
ううう、まさかうぷがあんなに時間がかかるとは…。おかげでこちらは進まずじまい。
書き直しの余裕もなさそうなんですが、番外編で組み込んでおいてもいいっすか?>>312さん
河内は結構重要なポストにつけてしもうたんで、書き直すとちょっと大変なんですわ。
岡上の話もうぷしてる分、あっちとの兼ね合いもつけられなかったし(これだと岡上と
河内が旅館屋上もしくは周辺ではちあわせ)。
なにやってるんだ、わし(;´д`)
>>315
灯台グループっすか。残りの選手の中で、あるキーワードでくくるとまとまる一団が
でてきます。それで予想してみてください。この連中が好きなウヒョスレ住人も多いと
思うんですが(今年は特によくがんがった)。
>>317
末永に限らず2軍の若手は話が書きづらいと思います。巨人の方では原ががんがって
ますが…。そういえばあの役もまだ出てきてないのか。ああ、大丈夫かかぷバトロワ。
鶴田んはちょっとだけ書きましたが、想像つきにくい人物かもしれん。(`)ε(´)はまだ
書いてないっす。役当てはめはしてるんですがね…。
322代打名無し:01/11/12 10:08 ID:yh/ZU8sT
タムケイ…現実とシンクロしているような気がしたよ…

光子役や典子役を男で考えると無理が出てくるのはしゃーない。
映画でも光子=柴咲コウかよ!イメージ違う・・・でも萌え(wじゃった
323_:01/11/12 12:26 ID:AcAV6qZl
がんがれ64さん!
河内ヲタとしては、何度も出てくるのは嬉しい(w
しかも重要な役?
死なないでウッチー!
読み手側も臨機応変にいきますので気にせずうぷして下さい。
楽しみにしてます。
324 :01/11/12 12:31 ID:AQ9/HoX3
灯台グループ・・・苗字に共通点あり?
325代打名無し@ス:01/11/12 13:57 ID:/Ish/uya
>>321
ある程度選手が出揃うまで、役の当てはめというか人物設定は苦しめられる。
ああ、これで全員登場させられるんだろうかとか、狂言回しとしてちゃんと
動いてくれるんだろうかとか。なんか「広島家」前半部分を書いていた時を
思い出しました(^^; あいつだって、あいつだって重要な役どころなのに
まだ全然出てくる気配がない。ひぃー、まだ話の種まきの段階かよっ・゚・(ノД`)・゚・。 て(w
とくにかぷバトロワは現在の状態で設定しているから、2軍・・・キツいっすよね。
(おらは絶対現在で設定したものは書けないわ。)
がんがってください、64さん。話の全体の第3コーナーを過ぎたら、勝手に登場
人物がラストに向かって模索してくれて、急にラクになってきますからヽ( ´ー`)ノ
第4コーナーまで届いて、今しみじみ感じてる感覚っす(^^;
(動いてくれるか兄弟の中で一番苦労した竜士が、今じゃ主役に躍りでてラスト
までの牽引役になってくれてるし・・・。)
まだかぷバトロワを書いていて何が起こるかわからないっすよ(w
その段階を楽しんでみるのも、また♪ お互い身体だけは気をつけましょ(^^;
まさか一緒に徹夜してしまっていたとは知らなかったっすよ(w
ああ、最近用事が全部午後以降にあることをいいことに、また夜型生活に
逆戻りか・・・。
326 :01/11/12 19:39 ID:wY7Ndwve
灯台グループピッチャーってこと?
327 :01/11/12 21:32 ID:cz1rcYPJ
あれ?鶴たん出て来てたっけ?
ダメだ‥‥記憶が‥‥もう1回読みなおします(反省)
灯台グループ‥‥千草‥‥
この辺気になりまくり。
あるキーワード‥‥。特にがんがった‥‥。
‥‥ピッ(以下自粛)

64さんも助さんも無理せずがんがって下さい。
両方とも楽しみですじゃ。
読み手はいつも無責任‥‥ほんとすんません。
328_:01/11/12 21:35 ID:z1MccL14
沈度250保全age
329chapter22―乗りかかった船(1):01/11/12 22:44 ID:5JT4Nq4C
響いた銃声に前田は体を起こした。周囲に気を遣い逃げ回る(あるいは息を潜めて
隠れたり、積極的に攻撃を仕掛けていく)このゲームは、選手の体力を確実に消耗
させていた。特に殺し合いを経験してしまった選手はなおさらである。新井と森笠と
いう、仲間というよりは気の合う子分をつけた前田は、森笠のもとへ着いた後、
「少し横にさせてくれ」と言ってすぐに寝息を立ててしまったのであった。いかにも
前田らしかった。
「今のは銃か?」
確認するように前田は聞く。
「そうみたいです」
「近かったな」
「ですね」
言われてみれば今まで聞いた中で一番大きく聞こえた銃声であった。そうすると、
このゲームにのっている選手が確実に近くにいるという事だ。今の新井には、その
人物が尊敬する兄貴分である金本であるとは勿論知る由もない。
「今何時だ?」
前田の短い質問に今度は森笠が答えた。
「4時です」
「…長いな」
返ってきた答えにあきれたように前田が言った。昨日までの時間の流れと今日
までの時間の流れがあきらかに違う。ただのんびりと過ごしていたはずの日々が
一変していた。仲間と殺しあうくらいなら時間切れになって爆死したほうがいいと
思っていたが、時間は自分たちをしっかりと捕らえたまま離してくれそうにない。
こうしている間にもまた誰かが誰かを殺しているのかもしれなかった。
「なんか考え事しとるやろ、新井」
ふいに前田が声をかけてきたので新井は少々戸惑った。
330chapter22―乗りかかった船(2):01/11/12 22:45 ID:5JT4Nq4C
「いえ…」
「どうせ廣瀬か瀬戸のことじゃろうが。廣瀬と何があったかしらんが、瀬戸については
 ああするしかなかった」
「それはわかってますけど」
「なんで廣瀬とやりおうた?正気じゃなかったかもしれんかったとはいえ、なんか
 挑発するようなことでもしたんか?」
「そんなことは…」
新井は言いかけ、思い出した。廣瀬と向かい合った時自分はナイフに無意識に
触れた、確か。新井自身も怖かったのだ、廣瀬のことが。
「何か思い当たるか?」
「ナイフに―――触りました。けど、それくらいで」
前田は軽く首を振った。
「アホ、理由としちゃ十分やろ。廣瀬は考えたのかもしれん、とにかく目の前で武器を
 手にしているお前を倒さんといかん、と。このゲームじゃみんな導火線がかなり短く
 なっとる」
それから締めくくるようにいった。
「しかし、やっぱり廣瀬はやる気になってた、というのが一番わかりやすい説明
 だろうな。いいか、わかる必要なんかない。とにかく、相手が自分に武器を
 向けたら容赦するな。そうじゃなきゃお前らが死ぬぞ。相手のことをつらつら
 考えるよりは、まず疑っとけ。このゲームじゃむやみに人を信用せんほうが
 いい。たとえそれが友達であろうと何であろうとな」
一通りまくしたてた前田だったが、ふと森笠と目があって、さらに続けた。
「だからといって新井に森笠を信用するなと言ってるわけじゃないし、森笠に新井を
 信用するなと言うわけでもない。お前らは俺の話からすれば例外なんじゃろ」
「どうして」
不意に森笠が口を開いた。
「どうして前田さんは僕らと一緒にいるんですか?そんな風に思ってるのに」
「別に…乗りかかった船、だ。―――安心しろ。有望な未来のある若手を殺そうとは
 これっぽっちも思っとらんから」
まるで答えたくないインタビューに答えているかのような表情で前田は答えた。

【残り41人】
33164:01/11/12 22:59 ID:5JT4Nq4C
今日うぷの場面があったのをすっかり忘れていた。明日の場面は原作の中でも
人気のある(はずの)場面なんで、期待してくだされ。
>>322
映画の光子は自分も萌えじゃった(w
>>323
河内は何度も出てくる…はず。
>>327
スマソ、自分の書き方がまずかった。まだうぷしてないんですが、もう書いてある分を
ためてありまして(何かあった時のために)、その中に鶴田んの話があるんです。
登場はまだ1週間くらい先になるんじゃないかと。
>灯台グループ
これも出てくるのはまだまだ先ですので、いろんな予想をたててみてくだされ。
原作にない人たちをどう動かすかで、メンバーもこれからかわってきそうな予感が。
>>325=助清さん
広島家よりかは幾分楽やと思います。ある程度話は原作からとれるんで。
しかし向こうも浮上気味でよかったよかった。こちらはこれから泥沼ですが(w
向こうのうぷはこたえた(;´д`)
332_:01/11/13 20:22 ID:5J1buCCf
前田カコイイ!前田萌え〜。
粗いさんがまともに見えるのは、ここだけだ(w
333chapter23―やるべきこと(1):01/11/13 23:45 ID:KnZmS3Cn
表面が少しザラッとしている不透明な窓ガラスに映る陽の光が徐々に強く、赤みを
帯び始めていた。さすがにこの時期になると夕方が来るのが早い。ガラスの上端に
ちかっと直射日光が差し込むと、高橋建(背番号22)は壁に背を預けたまま少し目を
細めた。傍らには毛布にくるまり、同じように壁に背を預けている横山竜士(背番号
23)がいた。横山は、やはりぼんやり目を開いて、光に覆われ始めた床を見つめて
いた。二人はもみじ谷公園の奥にあるロープウェー乗り場(紅葉谷駅)の一室に身を
潜めていた。入り口近くにはスコップや杭などが所狭しと置いてあって、その奥に
事務机と椅子、それにあちこちサビのわいた書類ケースが一つずつあって、机の
上には電話が乗っている(受話器を上げてみたが、勿論何の音も伝えてこなかった)。
書類ケースからは、あまりぱっとしない印象の観光チラシが二、三枚その端を
のぞかせていた。
高橋と横山は同じ年のドラフトでカープに入団した。それぞれ四位と五位だ。
社会人と高校卒という違いはあったが、いまや先発投手の一員として同じ立場に
ある。違うところといえば―――横山には高橋が経験したことのない大きな怪我
(ルーズショルダー)がつきものであったし、高橋は横山と正反対のその気の
弱さが批判の対象になっていた(横山もあの気の強さに苦言を呈されることは
あったのだが)。歳の割にやんちゃな横山は、高橋にとってみれば家で自分の
帰りを待つ子供とほとんどかわりなかった。単純でわがまま。それを言って
しまうと横山には失礼だが。
334chapter23―やるべきこと(2):01/11/13 23:45 ID:KnZmS3Cn
幸運だったのは二人の背番号が連続していたことで、出発がわずかな感覚で
並んでいたこと。さらには、同じ方向へ逃げたことだった。二人とも死んだばかりの
遠藤の姿を見ていた。高橋はすぐさま右へ走ったのだが、ちょっと行った所で
走るのをやめた。ここで慌てても仕方がないと、その先の身の振り方を考えながら
歩いていた。そこへ猛烈な勢いで走って逃げる横山がやってきたのだった。
横山の顔色は青ざめていて、その割に興奮状態だった。高橋は横山と一緒に
逃げ(だから彼らはその後遠藤を殺した河野が新井の攻撃を受けたのも、
さらには河野が死んだのも放送があるまで知らなかった)、集落と離れて少し
高台にあるこの駅を見つけると、鍵をかけて閉じこもった。
―――それから、もう9時間以上がたっている。二人が何をすることもなく、
ただ時間だけが過ぎていた。高橋はぼんやりしながらも、ずっと考えていた。
一体自分は今、何をするべきなのだろう?正午の達川の放送は建物の中に
いても聞こえてきた。嶋と遠藤を別にしても、既に八人が死んでいる。その
全員が自殺したとは思えなかった。誰かが別の誰かを殺しているのだ。今、
この瞬間にもまた誰かが死んでいるのかもしれない。そういえば正午の放送の
すぐ後にも、そしてついさっきはそれより近いところから銃声のようなものが
聞こえてきた。いったい、チームメイトを殺すなんてことができるんだろうか、と
考えては遠藤の死体が脳裏をかすめた。しかし高橋はあれは何らかの事故
なんだと思いたかった。そう思わないとやっていけない。なにせこんな馬鹿げた
ルールに乗る人間がいるという事が、どうにも信じられなかった。
335chapter23―やるべきこと(3):01/11/13 23:46 ID:KnZmS3Cn
高橋は部屋の隅、道具が置かれているところにあるメガホン型のハンドマイクに
目をやった。ちょうど平舞台で達川が使っていたものと同型のようだ。あれは、
使えるんだろうか?もし使えるなら―――やれることはあるんじゃないのか?
ただ、自分はそれが怖いだけだ。それをするのが。というのも、このゲームに
乗る人間がいるとはとても信じられないその一方で、やはり、一抹の不安が
拭いきれないからだ。だからこそ横山と二人、とにかくここまで逃げてきた。
もし、もしそんな選手がいたら?
「建さん」
横山が呼びかけたので、高橋は考えを中断し横山に向き直った。
「パン食べましょう。なにか食べないと、いい考えも出ませんよ」
横山が穏やかに笑いかけていた。ちょっと無理に笑った感じもあるけれども、
それでもいつもの、あのやんちゃ坊主っぽい横山の笑顔だった。
「…そうしようか」
二人はそれぞれのデイパックからパンと水を取り出した。高橋はそのデイパックの
中、二個の丸い缶詰みたいなものに一瞬目を止めた。初めて見るが、手榴弾、と
いうやつなのだと思う(横山の方はどういう冗談なのかダーツセットで、ありがたい
ことに木製の丸い的までついていた。これでコントロールでもつけろというので
あろうか。そうだったら2人に適した武器かもしれないが)。パンを半分ほどかじり、
水を一口飲んでから高橋は言った。
336chapter23―やるべきこと(4):01/11/13 23:46 ID:KnZmS3Cn
「少し落ち着いたか?」
横山はパンを噛みながら、その質問の唐突さに目をいささか丸くした。
「ずっと震えてたから」
「ああ…はい、大丈夫です。建さんが一緒にいるし」
高橋は微笑んで、頷いた。それで、食事をしながらでも“やるべきこと”について
横山に相談しようかと逡巡したが、口を閉じた。やっぱりまだ自分の考えに確信が
持てなかった。自分の考えていることは、ある意味ではとても危険なことなのだ。
それをやるということは、自分だけでなく横山をも危険に晒すことになる。しかし
一方では、危険だと思っていることこそが、自分たちをデッドラインに追い込んで
いくことになるのかもしれない。どっちが正しいのか、まだ高橋には確信が持て
なかった。
しばらく二人とも黙っていた。それから、横山がふいに言った。
「建さん…こんな時にバカな事言ってると思われるかもしれないけど」
「何?」
「建さん、試合中とかに他の選手が信じられなくなることってありましたか?」
今度は高橋は目を丸くした。その質問の意図はわからないけれど、きっとこの
ゲームの中、横山は恐れ出していたのだろう―――誰かが、自分を殺さないか、と
(たぶんその「誰か」の中には自分も含まれているはずだ)。それを自分の中で
否定したくて、ふいに言葉に出したんじゃないだろうか。高橋自身も同じだった。
どこかでみんなを信じきれなくて、自分の中の計画を口にすることが出来ないで
いるのだ。
337chapter23―やるべきこと(5):01/11/13 23:47 ID:KnZmS3Cn
「うーん、どうだろう」
横山に余計な心配を与えないよう、高橋は少し苦笑して答えて、それから同じ
質問を横山にぶつけることにした。自分の考えを横山に伝えるかどうか、それで
決めようと思ったのだ。
「横山は?試合中なんか不貞腐れてるけど」
「そんな。不貞腐れてるなんて人聞き悪いっすよ」
「いや、エラーされた時とか思いっきり怒ってるぞ、顔が」
「そりゃ…マウンドにいる時は熱くなってるから、自分でもよくわかってないんすよね。
 どういう表情してるかとか。でも結局自分が打たれなきゃいいんですよね、エラー
 されたくないんなら。だから打たれた自分も悪い。野手を恨むことはないですよ。
 今一番信用できないのは自分自身ですし。建さんがうらやましかったですよ、
 今年は。どうしたら左でスピードボールが投げられるんですか?いいなあ、
 右がダメだったら、俺、左投手に転向しようかな」
スピードガンと喧嘩していると揶揄された横山も、今年はスピードボールが
投げられなくなっていた。ファンも首脳陣も失望しただろうが、一番失望したのは
自分自身だっただろう。そんな雰囲気が、笑いながらも一気にまくし立てた
横山から感じ取れた。
「なんだ、自分のことが一番信用できないんじゃないか」
「そういうことになるんすかね。…なんか変な質問してしまってすいません」
横山が恐縮したように頭を下げた。それを見て、最後にもう一度だけ逡巡し―――
しかし結局言ってみることに決めた。今の横山なら大丈夫だろう。とにかく
相談してみることだ。
338chapter23―やるべきこと(6):01/11/13 23:48 ID:KnZmS3Cn
「ちょっと、いいか?」
横山は不思議そうに首をかしげた。
「何すか?」
「誰かを殺したいと思ってる選手がいると思うか?このチームの中に」
「それは、だって、事実死んで―――」
“死んで”を発音する時、横山の声が震えた。
「―――ますよ、みんな。昼に放送もあったし。もう、ここに連れて来られてから
 十人も。みんながみんな自殺したとは思えないし、それにさっきだって鉄砲の
 音みたいなのが聞こえたじゃないですか」
「たしかにな。…でも、僕らはここでこうやって怖がってる。それで多分、ほかの
 みんなも同じなんじゃないかと僕は思うんだ。きっとみんなも怖がってる。
 そう思わないか?」
横山は少し考え込んだ様子だったが、しばらくして言った。
「そうかもしれない。俺、自分が怖いってことばっかりで、そんなことよく考えて
 なかったけど」
「で、僕らは一緒にいられたからまだそうでもないけど、一人だったら、きっと
 ものすごく怖いと思うんだ。で、そうやって怖がってる所に、もし誰かと
 出くわしたら、横山はどうする?」
「たぶん…逃げる。相手にもよるけど」
「もし向こうが武器を持ってて、逃げる余裕がなかったら?」
「…戦う、かもしれない。何か持ってたら投げつけるだろうし、うん、もしかしたら、
 鉄砲みたいなの持ってたら、もしかしたら撃つかもしれない。勿論、話はする。
 けど、とっさのことで、どうしようもなかったなら」
「だろう?それで僕は、本当は誰かを殺したいと思ってる人なんていないんじゃ
 ないかと思うんだ。怖いから、相手が自分を殺そうとしてると思い込むから、
 戦おうとするんじゃないかと思う。そうやって思い込んだら、相手が向かって
 こなくても自分の方から向かっていくことだってあるかもしれない。
 ―――みんな、怖がってるだけなんじゃないかな、きっと」
339chapter23―やるべきこと(7):01/11/13 23:49 ID:KnZmS3Cn
横山は唇を噛み、ややあって視線をためらいがちに落とした。高橋は言葉を続けた。
「このままでいたら、僕らは死ぬ。二十四時間誰も死ななくてもルールで殺される。
 それで自分たちに何かできるとしたら、全員で協力して、なんとか脱出する方法を
 考えることだけじゃないか?きちんと話しかけたら、みんな戦うのをやめてくれる。
 そしたら、みんなで話し合える。とにかく、それが自分の意見。だけど、横山が
 反対するんなら、この話はなしだ」
横山はしばらく視線を落としたまま考え込んでいた。そしてたっぷり二分ばかり
たってから、ぽつりと口を開いた。
「僕は、建さんの言う事はとても正しいと思います。これは、僕の意見です」
高橋は笑みを返した。そうだ。やっぱり、やるべきなんだ。何も努力しないで
死んでいくなんて、そんなのはごめんだ。可能性があるなら試してみよう。
一緒にプレーしてきた仲間を信じたい。試して、みよう。
「でも、どうやってやるんですか?みんなに呼びかけるなんて」
高橋は道具の中にあるハンドマイクを指差した。
「あれが使えるかどうかだと思う」
横山は何度か小さく頷き、それから天井を見上げると、しばらくしてぽつりと言った。
「うまくいったら、みんなに会えますかねえ」
高橋は、頷いた。これは、いささか心から。
「うん。きっと会える」

【残り41人】
34064:01/11/13 23:56 ID:KnZmS3Cn
今日の箇所は長すぎる。原作がそうだから仕方ないが。
そういうわけで、北野と日下役登場。雰囲気が違うでしょうが
そこは大目に見てやってくだされ。
どうもまた忙しくなりそうで、今週末あたりうぷできそうにないっす。
今週どこまでいけるのやら。
>>332
( ̄粗 ̄) はもうちょっと馬鹿にしたいんだが、原作にひっぱられて
こんなにいい役になってもうて(;´д`)
前田はカコヨクいてもらわないと、後の2人だけじゃすぐ殺されそうだ。
341 :01/11/14 00:13 ID:qStI12QC
(・ ε ・)「僕も死んでしまうのね」
342うひょ:01/11/14 03:22 ID:dSmr2nOt
>>340
がんがってつかあさい。まさか建タンがよこりゅーと合流しとるとは、
しかもあの役とは思わんかった。

この先すげえ楽しみっす。
343 :01/11/14 07:40 ID:mzBzpxnt
建と横リュって意外な組み合わせだ!
でもヨイ!(・∀・)イイ意味で
裏切られまくり(w

ん?ってことはこの2人はもうすぐ‥‥あぼーん??
344 :01/11/14 07:51 ID:4gNM2VC1
横竜はやる気まんまんの役じゃないかなーって思ってたから意外だったYO!
345 :01/11/14 09:55 ID:G7BYmfjY
原作知ってるだけにもうこの段階で涙ウルウル。建タン……。
ヨコと建タンのコンビ好きなんで、この二人一緒だったりしないかなぁ
と思ってたんですが……実現してビクーリ。

原作三村ファソとしては三村が誰になるのか気になるところ……。
346_:01/11/14 14:50 ID:UANBPctD
>>344
自分もそうオモタYO!
横竜ビクーリ。←この反応は64さん予想済み?
しかしカプ選手あぼーんは話と言えどもツライ。
建タン&横竜…続き楽しみです。
347:01/11/14 14:51 ID:c59NKFpk
達川と良し日子は殴り合いの県下ばかりしていた
348 :01/11/14 19:13 ID:6+oUM9Nh
黒田は誰なんだろう・・・・・・・・・・
349 :01/11/14 21:15 ID:d3zQQReh
自分は原作読んでないんで、ドキドキしながら読んでる。
350代打名無し:01/11/14 21:27 ID:KtIho/LJ
漏れも原作読んでないんだけど、
読んどいたほうが楽しめるのか、読まないほうが楽しめるのか
葛藤が・・・あああ、気になる

まぁ、読んでおいても読まなくても別の楽しさがあるから
どっちともいえない、という結論が見え見えですが
351代打名無し:01/11/14 21:53 ID:nMCZP3in
建タンは平和主義者っぽいから、この役はナトークだけど、横竜は意外。
でもなんとなくナトークのような気もする。
64さん、話作るのうまいね。
352chapter24―信用(1):01/11/15 00:09 ID:HWpKjCfq
「森笠、足大丈夫か?」
再びしばらくの沈黙を破って新井が口を開いた。ふいの質問に森笠は、忘れてた、と
いった様子で傷をおった左足を見た。その声に前田も反応して森笠を見た。
「ああ、血も止まったみたいだし大丈夫そうだ。忘れてたよ」
「あの時のか?」
「はい」
返事を聞いてちょっと考え、しかし前田は自分の荷物をあさると、白く小さい紙袋から
1錠ずつ梱包してある薬のようなものを取り出して、それを半分ずつに分けると、
片方を森笠に投げた。
「わしのもらっとる鎮痛剤。何かあったときのために持っとけ」
森笠は目をぱちくりした。それでも、受け取った。
「前田さん」
新井は残りの薬をバッグにおさめている前田に声をかけた。
「前田さん、練習場の窓を開けようとしてましたよね。何か異変に気付いてたんですか?」
前田が肩をすくめた。
「見てたんか。なら手伝え」
「もう体が動きませんでしたよ。何か…知ってるんですか?」
「何も…」
と言いかけて、前田がどこか遠くを眺め、何を思ったのであろう、再び言葉を続けた。
「いや、キャンプの雰囲気がどこか違ったな。それだけだ、何かあるんじゃないかと
 思ったのは…その何かがこれだとは予想もつかなかったが」
雰囲気?いつものキャンプと何ら変わらないような普通のキャンプだと今の今まで
思っていたが、前田には何か違和感があったのだろうか?一体どこにそんな雰囲気が
あったのか、新井にも森笠にも全くわからなかった。
353chapter24―信用(2):01/11/15 00:09 ID:HWpKjCfq
「お前ら、これからどうしようとか考えとることあるか?」
これから―――新井は隠れていることに精一杯で、正直な話何も考えていなかった。
ただその場しのぎで時間をつぶそうと思っていた。
「もしできるんなら、信用できる人たちを集めて、何か一緒に考えられませんか?
 大勢で考えたら、いい知恵が浮かぶかもしれない」
そう言ったのは森笠だった。そうだ、と新井も納得した。前田が左側の眉だけ持ち上げた。
「信用できる人ってのは、この場合誰の事だ?」
この一言で森笠と新井は顔を見合わせ、考えて今度は新井が答えた。
「同期だったら広池さんとかはパソコンとかめちゃくちゃ使えるからすごく役に
 立ちそうだし、東出とか…何考えてるかわかんないけど、それなりに役に立つと
 思います」
前田はそれで新井の顔を見ながら、自分の顎にしばらく手を這わせた。それから言った。
「広池なら、見たな」
「どこでですか!?」
「まだ朝のうちだ。ちょっと整備された公園からこの山に向かってくるあたりで。
 銃も持ってた。わしに気付いてるようやったがの」
「声はかけなかったんですか?」
「どうして?信用する理由は何もない。銃を見てむざむざ声をかけるか?瀬戸と
 会った場面と同じじゃろ」
そう返されて新井も森笠も言葉はなかった。
354chapter24―信用(3):01/11/15 00:10 ID:HWpKjCfq
「そうお通夜みたいな表情すんなや。広池のことはよう知らん。さっき言ったように
 このゲームじゃ人を疑うのが原則だ。特に頭の切れそうなやつは用心せんといかん。
 声をかけたところで広池が確実にうんと言うとは限らん」
「じゃあ前田さんが広池さんを見たところまで行きましょう。広池さんは絶対信用できます。
 きっと広池さんなら何か思いついてくれるはず―――」
前田が首を振っているのに気付いて、新井は途中で言葉を切った。
「広池がお前の言う通りの切れ者ならな、新井。あいつがわしに姿を見られた所に
 ずっととどまってると思うか?」
その通りだった。新井はため息をついた。深い深いため息だった。
「あの…今からでも、ほかのみんなに連絡をとる方法ってないんですか?」
森笠が聞いた。前田はまた首を振った。
「お前らの脳味噌は筋肉で出来とんのか?不特定多数を集めるならともかく、
 特定の個人に連絡をとるのはほぼ不可能やろう。携帯を使えれば何とかなったが、
 神社で言われたじゃろう?電波もチェックしとんのやぞ。携帯なんか使ったら
 たぶん…想像だが、この首輪が爆発くらいするだろうな」
「誰だっていいじゃないですか!もっと仲間がいれば…」
「アホ。やってきたヤツが今銃をぶっ放してるヤツだったらどうするんだ?わざわざ
 死にに行くのか」
沈黙が落ちた。結局助かる方法はないのか…そう思った、その時だった。とても遠く、
それでも少し電気的に歪んでいるのが分かる『みんなーっ』という声が聞こえてきた。

【残り41人】
35564:01/11/15 00:25 ID:HWpKjCfq
ほんまは今日25までうぷ→明日27までうぷにすると非常に都合がええんですが、
最近私事のせいで話が進んどらんので、続きを書きつつちょっと考えさせてもらいます。
続きにメドがつけばふらりとうぷしとります(そうでないときは…モゴモゴ)。

>横山
これは奇をてらわなかったんすけど、意外でしたか。それが意外でした(w
根はよさそうなやつなんで。それをいうと(丶`_ゝ´) らには失礼か。
ほかにも2人でくくれる選手は多いんですが、それはそれで別に使いたかったんでね。

>>349-350
原作読んでない人にも読んでる人にも(・∀・)イイ!!と思われる話目指してがんがります。
読んでない人には「これは○○役」とかいう話はちょいと邪魔になりますかね?
この先どうなるか書いてる方もわからんのですが、今は原作に沿ってる分が多いんで
そこらへんの話が出るのはアリだとは思うとるんですが…。
気になったら言ってもらえれば(・∀・)アリガタイ!!っす。
356544:01/11/15 00:25 ID:J+2WnQLc
35764:01/11/15 00:27 ID:HWpKjCfq
>>356
いきなり誤爆かい?
358280==291:01/11/15 01:55 ID:Pj+/pEzm
>>64
アプ御苦労様デス
建と横山ももうすぐ…(涙

今回の話で広池があの役だというのはほぼ確定的となったようですが、
同行してるのは誰だろう?
是非個人的川田役イチオシだった○○○○にあの言葉を言わせて欲しい

「すごいな!・・・・・・・・」
359 :01/11/15 07:28 ID:9WdlNuxF
>358 その川田も見てみたかった(w
銃を構える姿が様にならない川田だ。
360_:01/11/15 21:10 ID:9zmyrhe+
来た、来た!
>「みんなー」て、あぁイカンよ・・・。
だめだよ建タンよこりゅ。
よこりゅヲタなのでツライかも。

先の展開は言わない方がいいのかな。
原作読んでなくて、楽しみにしてる方もいらっしゃるようですし。
気をつけますスマソ。
361chapter25―説得(1):01/11/16 00:57 ID:Adi0B1cr
声は続いていた。『みんな聞けー』という声。
「横山の声だ」
森笠が言った。とりあえず下が見えるところを探そうと新井が動く。それに前田も森笠も
ついてきた。比較的近くに木々の切れ目から下の公園が見渡せる場所を発見した。
しかし、声を発していると思われる横山の姿は見えない。陽が落ち薄暗くなっていたし、
公園自体木々に囲まれていた。その木々が時期がくると見事な紅葉を見せることで、
その公園は観光名所の一つになっていた。
『みんなここまで来てくれ。みんなで話し合おーぅ』
ハンドマイクか何かを通しての呼びかけだろうか。横山がハンドマイクを持っている姿を
想像して、新井は滑稽に思わなくもなかったが、あれならかなりの部分まで声が届く
だろうと感心し、そしてタイミングのよさにちょっと驚いていた。
『みんないるなら出てきてくれーっ』
今度は違う声が響いた。ちょっと間を置いてまたも森笠がその声の主を理解した。
「建さんだ」
「二人ともあんなことしとったら殺される。たぶん無防備に叫んどるんじゃろ」
何してるんだと言わんばかりに舌打ちをして、前田が言った。それで新井は唇を噛んだ。
要するに、建さんと横山は“説得”を試みようとしているのだ。戦うのはやめろと。
二人とも、そう、誰も“やる気”なんかないはずだ、と考えているに違いない。
『みんな戦いたくなんかないだろーっ!?ここまで来い!!』
声は再び横山のものに戻っていた。きっと二人でいることをわからせたかったんだろう。
新井は少し逡巡した。状況を整理する必要があった。新井の頭ではそれをするだけでも
ちょっとした時間を要した。そしてそれが終わったのか、前田に言った。
362chapter25―説得(2):01/11/16 00:58 ID:Adi0B1cr
「前田さん、僕、あそこまで行ってきます」
前田が眉根を寄せた。
「ばかか、おまえは?」
「だって二人とも、やっぱり危険でしょう?あの二人はやる気なんかない。だったら
 仲間になれますよ。前田さんも、あれが危ないっていうのはわかってるじゃないっすか」
「そんなことを言っとるんじゃない。今ここでむやみに動いたらお前の方が危険じゃろ。
 だいたい、あそこまでどれだけ距離があると思っとる?途中に誰がいるかわからんのやぞ」
「わかってますよ!」
新井は言い返した。
「いや、お前はわかっとらん。この辺に隠れとるやつらはもうあの二人に気付いとる。
 あの二人を狙ってるやつがいるとしたら、きっとそいつはお前みたいに何も考えんで
 のこのこ出てくるやつをも待っとるぞ。標的が増える、そしたら」
前田がいった内容より、その静かな声色にむしろ新井はぞっとした。しかし、こうしている
間にも二人の“説得”は続いている。
「やっぱ…行きます」
「よせと言うとるやろうが」
「なんでですか!見殺しにしろとでも言うんですか?」
「そうは言っとらん」
前田は新井から手を離すと、ショットガンを上空に向けて構えた。
「ちょっとだけ俺たちの生存確率を下げる。…ちょっとだけだ」
前田はそう言うなりそのショットガンを撃った。間近で撃発したその火薬の音は物凄く、
一瞬鼓膜が吹っ飛んだかと思ったほどだった。その音が、山の斜面に反響した。
363chapter25―説得(3):01/11/16 00:59 ID:Adi0B1cr
さらにはものすごい勢いで、寝床に帰っていたと思われる鳥たちが一斉に飛び出した。
こんなにいたのかと思うほど多かった。なるほど、この銃声で建さんと横山が脅えて
呼びかけるのをやめ、隠れるのを狙っての行動か。新井は少々感心したが―――
「前田さん、もっと撃たないんですか?」
「あほ。今のだけでも俺たちがいる所に気付いたやつがおるかもしれんやろ。
 これ以上は危険だ」
新井は少し考え、森笠の武器であるスミスアンドウエスンを頭上に向けて構えようとした。
前田がその腕を押さえた。
「よせ!何度言わせる?」
「けど…」
「もう俺たちには、あの二人が早く隠れるよう願うしかない。それとも、あいつらと同じ目に―――」
ぱらららららら、という一種タイプライターに似た感じの音が聞こえてきたことで、前田の
言葉が途中で切れた。その音に続き、高橋の『うっ』といううめき声が聞こえてきた。
もちろん、その声というのもハンドマイクが意味もなく拾って増幅したわけだ。
一呼吸置いて『建さん!』という横山の叫び声が続いた。しかしすぐに『がっ』という
雑音がし、ハンドマイクが地面に落ちたことが分かった。また、ぱららら、という音が
聞こえたが、今度はかなり音が小さかった。それで新井は、その音もまたハンドマイクが
拾い上げて増幅していたのだと悟った。ハンドマイクが壊れてしまったから音が小さく
なったのだ。そしてそれ以来、高橋の声も横山の声も宮島に響くことはなかった。
新井も森笠も、蒼白になっていた。

【残り41人】
36464:01/11/16 01:06 ID:Adi0B1cr
>>358
まさかあの選手を川田役に予想していたとは思わんかったっす。
鈍そうな川田役だ(w

ここまででだいたい1日が終わったという感じになるんかな。
時間ができたら流れをまとめてまた>>220の場所にうぷしときます。
365 :01/11/16 02:33 ID:38SNHUix
やっぱり自分の好きな球団だと、選手への思い入れも全然違うから
余計に泣ける!
建タン&横竜の組み合わせも意外で(・∀・)イイ!感じだ(った)し。
この二人撃ったのって・・・と考えるとなんか切ない。
366 :01/11/16 02:46 ID:Hs650TQs
原作知ってるのに……展開も解ってるのに……
本気で泣けてしまいました。建タン……横リュ……
64さん、マジ良いです。原作より好きかも。

所で>>220の名簿サイト行けないんですけど……あぼーんされた?
367 :01/11/16 03:27 ID:DDndfv/7
>366
同じくパソコンの前でマジ泣きしてしまったよ...

ああー建タン!横竜ー!
...64さん、涙をこらえながら見守るんで頑張って下さい。
しかし粗いさんヲタなのが唯一の救いだ...
36864:01/11/16 04:02 ID:Adi0B1cr
スマソ。>>220のURL間違えてるのに今気づきました。
http://k-server.org/brm64/hcbr_chapter/index.htm

>>366さんありがとうございました。ささ、続き書きに戻ります。
369代打名無し:01/11/16 12:25 ID:BE5P4gdh
>>368
64さん、はるかは矢沢ではなくて谷沢です。
370 :01/11/16 12:36 ID:PT1JH88t
兄貴ヲタとしては複雑なんだが、それでも淡々とマシンガンをぶっぱなしてる
姿を想像すると萌える(w
371_:01/11/16 12:57 ID:s1+sWimX
建タン…よこりゅ…だからイカンって言ったのに〜。
2人の悲しい場面てまだ続きますよね。
しかも原作どおりにはできないはず…。
64さんがどうアレンジするのか楽しみです。
372 :01/11/16 17:00 ID:6WODdYQP
>>370
同意(w でもこれからどんどんツライ展開になってくるねぇ・・・
373 :01/11/16 17:39 ID:fyUJEb8A
建たん、横リュがあぼーん‥‥。
小説とは言え、辛いのぅ。
374 :01/11/16 17:59 ID:ODIIYPGf
原作での、この二人のいまわの際のやり取りが好きなんだけど
建、ヨコバージョンでもあるのかな?
375_:01/11/16 20:40 ID:MzbU0nUI
まとめHP、「登場人物コメント」ワラタ。
ィォゥがかわいそうだ(w
376chapter26―説得の後(1):01/11/16 23:16 ID:gPFpCQYp
横山竜士は枯葉舞う地面を這いずって、高橋建の方へ進んだ。腹部が何かとても熱く
全身の力が抜けたようになっていたが、それでもまだ這うことくらいはできた。横山が
這った所に落ちていた黄色や茶色の落ち葉が赤く色を変えていた。
「建さん!」
横山は叫んだ。そうしたおかげで腹部が引きちぎられるように痛んだが、そんな事は
気にならなかった。一緒に帰ろうと約束した高橋が倒れて動かない。そのことだけが
重要だった。
高橋はうつぶせに倒れ、横山の方に顔を向けていたが、その目は閉じられていた。
高橋の体の下にとろっとした感じの赤い池が広がり始めた。
横山は高橋の体までたどり着くと、力を振り絞って自分の上半身を起こした。それから、
高橋の肩をつかんで揺すった。
「建さん!建さん!」
叫ぶ側から高橋の顔に赤い霧が降りかかったが、横山はそれが自分の口から出ている
ものなのだとは気づきもしなかった。
高橋がゆっくり目を開いた。苦しそうに「横山…」と呟いた。
「建さん!しっかりしてください!」
高橋が顔をゆがめた。しかし、何とか持ちこたえると、「ごめん、横山」と言った。
「僕がばかだった―――早く、逃げろ」
「だめです!」横山が泣きながら首を振った。
「建さんも一緒に!」
それから横山は慌てて辺りを見回した。自分たちを撃ったものの影は見えない。きっと、
かなり距離のあるところから狙撃したのだ。
377chapter26―説得の後(2):01/11/16 23:16 ID:gPFpCQYp
「早く!」
高橋の体を起こそうとしたが、それはとても無理だった。すぐに、自分の体を支えているのも
つらいことが分かった。腹部にそれまでに倍する痛みがはしり、横山はうめくと自分も
再び前のめりに倒れた。ただ、顔だけは高橋の方に向けて。
「横山、動けないのか?」
高橋がいつもよりもっと弱々しい声で聞いた。横山は無理矢理顔の筋肉を動かして、
笑って見せた。
「そうみたいっす」
「すまん」と高橋がまた小声で言った。もう声を出すのもつらそうだった。
「いえ、俺たち、やるべきことをやったでしょ、建、さん?」
それで高橋が泣きそうな顔をするのが分かった。比較的軽傷だと思った横山自身も
意識が急速に薄れかけていた。まぶたが重い。それでも、言いたいことを言わなければ。
「建、さん。俺、建さんと、同じ、チームに、はいれて―――」
ほんとうによかった、と続けようとした目の前で、ぱん、という音とともに高橋の頭が揺れた。
高橋の右のこめかみの上に赤い穴が開いていて―――高橋はもう、うつろな目を横山に
向けているだけだった。
恐怖と驚愕に口を大きく開いた横山の耳に、もう一度ぱん、という音が届き、同時に頭を
ガンと殴られたような衝撃がきた。それが横山の、最後の知覚になった。
金本知憲(背番号10)は、建物の影から見えないよう低くした姿勢のまま、長崎元の
ものだったワルサーPPKをすっと下ろすと、二人のデイパックを拾い上げた。

【残り39人】
378chapter27―移動(1):01/11/16 23:21 ID:gPFpCQYp
単発の銃声が二度続いた後、新井も森笠もしばらく動けなかった。いつの間に帰って
きたのだろう、上空を舞うとびが、ういーひょろ、と鳴いていた。しばらく辺りを見回していた
前田が踵を返し、
「終わったか。戻ろう」
と二人を促した。それを聞いて、新井の唇がわなわなと震えた。
「―――終わった、だなんて、いくらなんでも酷いですよ。ほかに言いようがあるでしょう?」
「気を悪くしたか。悪いな、わしはそんなにご立派なボキャブラリーを持っとるわけじゃない。
―――しかし、これではっきりわかったろう。選手の中にやる気になっとるやつがおる。
達川さんらがわしらをはめようとしてやった可能性もあるが、あの人らだって命がおしいんじゃけ、
神社から出てくることはないやろ。選手の動きがわかっとるなら、なおさらな」
新井はまだ何か言いたい気分だったが、何とか自分を抑え前田の後をついていった。
森笠は遠藤の死体を見たときと同じように、ショックで言葉が出ないようだった。
元の場所まで戻ると、前田が荷物をまとめ始めた。
「お前らも準備しろ。念のため、ちょっとばかり動く」
「今からですか?もう暗いし、動かないほうが―――」
「今の見たやろ?誰かはわからんが、容赦のないやり方だったな。しかも武器はマシンガンか
なんかだ。きっとわしらの場所にも気づいとる。あんなんに位置を知られたんなら、今からでも
動いた方がマシだ。…心配するな、少しだけだ」
379chapter27―移動(2):01/11/16 23:21 ID:gPFpCQYp
同じ頃、新井たちよりやや麓に位置する茂みの中で、小林幹英(背番号29)が落ち着きなく
斜面を登っていた。勿論、一連の出来事をその耳で聞いてのことだった。
―――いったいどうなってるんだよ!新井が廣瀬を殺したり、建さんと横山が誰かに
撃たれたり!狂ってる!狂ってる!狂ってる!
狂いかけているのは小林の方だった。殺戮の連続で彼の頭の中は引き出しの中身を
ひっくり返したかのように、どこから整理に手をつけていいか分からないほどめちゃくちゃに
なっていた。気をつけないと無意識に嗚咽がこぼれそうだったし、気をつけていても
彼の目から涙がぼろぼろとあふれてくる状態はずっと続いていた。
ふいに、木の枝が折れる音にまじって、何かが聞こえてきた。
「…エイ、幹英!」
―――人の声!どっからだ!誰だ!!俺は連れて行かれないぞ、迎えにきたって
いったってそうはいかないぞ、死神の野郎め!!
「どこだ!殺せるもんなら殺してみろ!!」
小林は荷物をぎゅっと抱きしめると、あたりに向かってわめきちらした。
しかし、何も聞こえてこなかった。なんだ?俺の気の迷いか?小林が少々の落ち着きを
取り戻しかけたその時、ふいに懐かしいメロディーが電子音となって流れた。その音で、
まだ平和だったあの頃の記憶が走馬灯のようによみがえってきた。
―――それ、その着メロは…。
わらにもすがる思いで小林は必死に音のするほうを探し、そして発見した。
「……あ!!」

【残り39人】
38064:01/11/16 23:27 ID:gPFpCQYp
非常に眠い。続きが書けん…。すんませんが明日はうぷパスしときます。
この調子なら1日眠れそうだ(;´д`)

>>369
ウヒョー!スマソ。次まとめる時になおしときます。

>(丶`_ゝ´) とマシンガン
兄貴に限らずベテランになると酷いシーンがやけに様になってる気がすることがある(w

>>371>>374
上手くないアレンジでスマソ…。というか、原作とほぼかわってないんだからネ!

>>375
いや、まじでイオウどうしよう(w
381建タンの魂に安らぎあれ:01/11/16 23:58 ID:TjIZxvUg
うひょー。今回も最高でしたよ。
よこりゅーと建タンに合掌(゜дÅ)

官営はどうなんのか楽しみっす。
382 :01/11/17 03:53 ID:YsGrnfro
>64さん
366です。まとめサイト見られました。
登場人物コメントで、何人かは配役解ったかも……。楽しみにしてます。

建タン〜!横竜〜!(号泣)
建タンヲタの自分はどうすれば……(:_;)
はあ、これからはカーサヲタとして生きていくか……(苦笑)
383 :01/11/17 17:34 ID:mXK5xMNm
agemasu
384 :01/11/18 12:14 ID:/WQnHgBG
age
385-:01/11/18 13:09 ID:ah59zRik
建タン、よこりゅ・・・。合掌。
よこりゅヲタはどうしよう。

関係ないが、会社の先輩(女)にカプファソをカミングアウトしたとき、彼女が
「え、広島…誰がいた?東出…小林!?」
と言ったのでワロタ。
いや、別にいいけどなんで2番目にカンエイ?
普通、アニキとかじゃないのか?
というわけで、長生きして欲しい>カンエイ
386カプ命:01/11/18 17:02 ID:N0dmm8m0
うーん。このスレのタイトルからして金本派と前田派の2組に分かれて戦うのかと
思ったら原作と一緒だった…。
387 :01/11/18 17:05 ID:rHyvWe/D
>>386
前田=川田、金本=桐山だから
ある意味では前田派・金本派とも言えると思われ。
388 :01/11/18 17:34 ID:JYJ7UqEO
>>386のたてた糞スレが上にあるのでage
389 :01/11/18 18:38 ID:GzzwtzzL
なんか類似スレが上行ってるのでage
390 :01/11/18 23:00 ID:FyVqQtjm
新しいバトロワスレが出来てるね。
続かなそうだが‥‥

>>386 あ、スレ立てた人?
39164:01/11/19 00:30 ID:ysxoK8S/
何ともいえない荒れ様。昨日からの流れ見てて荒らされるかなとは思ってはいたが。
けど、お願いだから他スレにまで迷惑をかけるのはやめてほしい。
巨人バトロワを開いた時が一番きつかった。どうみたってあそこの保存屋助手さんじゃ
ないっていうのはわかるよ。ID見ればなおさら。
続き云々という気はおこりそうにないんで今日も避難所でマターリさせてください。
(・ ε ・)じゃないけど、自分の技術不足は自分が一番よくわかっとるつもりなんじゃけどね(w

>>385
カンエイは知名度高いほうだと思うよ。その小林が敦司(今の漢字知らん)を
指してたらまた話は別だけど(w
392代打名無し@ス:01/11/19 00:43 ID:sIVz51/Q
良かった。64さんからのレスがあったよ。ヨカタヨカタ・・
うん。他スレに迷惑をかけるだけは書いていて一番キツい・・。
64さん、まだまだ長丁場の作品だし、気長にがんがりましょう。
続き楽しみにしておりやすで!
393ななし:01/11/19 01:05 ID:vhNl8cm0
こちらの方が面白いね。あまりに面白いので
今日DVD借りてみちゃったよ。64さん楽しみにしています。
394プロレス板住人:01/11/19 03:01 ID:DnwYWGu7
巨人版にも書き込みしたプロレス板の者です。
荒らしにいい気分はしないでしょうが「2ちゃんに荒らしは付き物」と割り切って頑張って下さい。
続きを楽しみにしております。
395代打名無し:01/11/19 09:42 ID:LBp8g6HR
>>391
渥司に改名。でも、ロッテを戦力外に。
396 :01/11/20 00:15 ID:hsJS+HS5
ageee
397chapter28―お兄ちゃんと弟(1):01/11/20 01:03 ID:6DNl/9UT
ここにも一人、必死になって斜面を登る選手がいた。灌木に身を隠すために身を低くして
いたので、ほとんど這っていると言った方が正しいかもしれない。落ち葉や枝や舞い上がる
土煙で、その身を包んでいる真っ白なユニフォームはほとんどすすけていた。その
大きいとはいえない目をしっかりと見開き、いつもポカンと開けている口をしっかり結んで、
河内貴哉(背番号24)は恐怖と戦っていた。
河内が神社を出発した後、ついさっきまで隠れていたのは、高橋建と横山竜士がハンド
マイクで呼びかけを行ったあの公園内にある、小さな川にかかった橋げたの下だった。
河内にはやや斜めの方向だったけれども、地面に頭を出せば二人の姿がはっきり見える
位置にいた。迷いに迷い、挙句呼びかけに応じて出ていこうとした時、遠く銃声が響いて、
二人がそちらを見ていた。そして、河内がなお少し様子を見たほうがいいのだろうか…
などと考えるうち、ほんの十秒か二十秒も経たないうちに今度はタイプライターみたいな
銃声がして、ハンドマイクで増幅されたうめき声とともに高橋建が倒れるのが見えた。
続いて、横山竜士も撃ち倒された。
その時点では、二人はまだ生きていたに違いない。しかし河内は、二人を助けに行くことが
どうしてもできなかった。自分の武器では出て行ったところでどうしようもない―――
河内に支給されたその武器とは、一本のフォーク、スパゲティを食べる時に使うような
何の変哲もないフォークだった。そして、さらにそれから二度銃声が響いた。襲撃した
誰かが高橋と横山にとどめをさしたのだ、とわかった。
分かった途端、荷物をかき集めてその襲撃者に見つからないよう身を低くして、土手を
二人がいた方向とは逆に向かって思い切り走り始めた。そして二人が出てきた建物が
見えなくなると、そこから岩を組んで作られていた堤防をよじ登り、そのまま山のほうへ
向かい、茂みに入ると右手にフォークを持ち(利き手はもちろん左手だったが、枝を
はらったりするのに左手の自由は確保していた)、そして一目散に斜面を登っていたのだった。
どのくらい登ったのだろう、ふと我に返って河内はようやく動きを止めた。そうっと後ろを
振り返った。木々が生い茂り、そこから島の様子を伺う事は不可能だったし、何より陽が
落ち暗闇があたりを包み込もうとしていた。耳を澄ましたが、何の物音もしない。安心して
息をつこうとしたその瞬間、腕に何かが食い込んだ。河内の頭が再度混乱し、口から
「ヒイッ」と声が漏れた。
「バカ!」
誰かがささやいて、腕に加わっていた力が消え、代わりに河内の口を生暖かい手が塞いだ。
しかし混乱した河内の耳にその声は入らず、ただ襲撃者をやっつけようと思い、その恐慌の
うちに右手のフォークを振った。がちっと音がして、すぐにそのフォークが止まった。河内は
覚悟したが、そのまま何事も起こらないのでおそるおそる目を開いた。
目の前にいる影は身をそらすようにして顔の前に掲げた大型の自動拳銃(ベレッタ92F)で
フォークを受け止めていた。男は拳銃を左手で握っていた。二人の位置関係と、男が
左利きでなかったら、河内のフォークは少なからず男を切り裂いていたかもしれない。
しかし、男は左利きだった。
「危ないじゃないか、河内」
自分に似た表情が河内の目に入った。
398chapter28―お兄ちゃんと弟(2):01/11/20 01:03 ID:6DNl/9UT
「お兄ちゃん!」
それが広池浩司(背番号68)だとわかると、河内は叫び声を上げた。あまりの喜びに、
つい無意識のうちにいつもの呼び方が出てしまっていた。
「ばか!静かに…ついてこい」
小声で河内を一喝すると、広池は先に立って比較的低い茂みの間を進みだした。河内は
前を進む広池の背中に目をやり、しかしふいに恐ろしい仮定が彼の心を風のように通り
抜けて、一瞬足をすくませた。
―――建さんと横山さんを殺したのはもしかしたら広池さん?もしかして僕があそこに
いたのを知ってて先回りしていたのでは?…いや、それならなんで俺を殺さないんだ?
広池さんは兄貴みたいな存在だし、それを広池さんも知ってるわけだから、二人で協力
すれば生存確率はグンとあがる。最後二人になったら?広池さんは俺を殺す?それって
効率いいな!…って俺は何を考えてるんだ!
「どうした、河内?早く来い」
河内はまだぼんやりした頭のまま、広池を追った。二、三十メートル程進んだだろうか、
少し深い茂みの中にたどり着くと広池は足を止めた。
「座ろう」
その声に、河内は広池と向かい合って腰を下ろした。まだフォークを握っていたのに
気づいてそれを地面に置いたが、同時に左手に鋭い痛みが戻ってきた。むやみに枝を
はらっていたせいで手のひらに無数の切り傷ができていた。広池はそれを見て銃を置くと、
近くの茂みから自分のものらしいデイパックを引っ張り出し、タオルに水を少し含ませると、
「左手見せろ、河内」
と言った。河内が素直に左手を出すと、広池は力をかけすぎないよう丁寧に傷を拭って、
それから今度はタオルの濡れていない部分を細かく裂き、包帯代わりに巻きつけた。
「ここに…隠れていたんですか?」
「ああ。なんかバキバキと変な音がするから、ここから顔を出してみたら貴哉が見えたんでね。
自分と似てるから暗くても見間違わない自信はあったよ。それで声をかけた。…攻撃されたけどな」
「すいません」
「けど、むやみに動いたら逆にあぶないぞ」
「はい」
河内は自分が泣きそうになっているのが分かった。
「ありがとうございます」
「まあまあ」
広池は笑ってみせた。
「けど、河内に会えてよかったよ。お前の顔見てると何となく他人とは思えないからな。
 それこそ、弟みたいだよ」
今度は河内の目に実際に涙が浮かんだ。河内はぐっとそれをこらえ、話題をきりかえた。
「さっき、建さんと横山さんのすぐ近くにいたんです。俺―――俺、あの二人を助けられなかった」
「わかった。だから自分を追い詰めるな。僕だって、二人の呼びかけに応じてやれなかったんだ」
河内は頷いた。高橋建と横山竜士が倒れるシーンがまた頭の中に生々しくよみがえってきて、
少し体が震えた。

【残り39人】
39964:01/11/20 01:11 ID:6DNl/9UT
>>392=助清さん
ご心配おかけしとります。広島家は先が見えてきましたな。うらやまし(・∀・)イイ!!。

>>393
映画は展開が早いのが…。貴子は好きだったが(w

>>394
向こうも見ました。お心遣い大変感謝いたします。
正直プロレス板バトロワは見てないんですが、機会があればのぞいてみます。

>>395
あーそれだ!渥司は結局どうなったんだっけ?
400代打名無し:01/11/20 13:17 ID:LelHuoDF
>399
やっぱり左腕でしたか。

移籍先を探していると思います。
この前どこかの球団のテストを受けて不合格でしたし。
トライアウトは?
401400=395:01/11/20 13:18 ID:LelHuoDF
>>400の後半は>>395に対するレスへのレス。
402-:01/11/20 19:09 ID:ZJZNqHm8
三村編、始まりましたね!
三村すごい好きなんで楽しみです。
うっちー=豊か。「守られる」といえば豊だもんなぁ。
豊は(あえて名前で表記)確か笑いの才能に長けてるんだよね?
うっちーオモロイのか?オモロイ事言ってくれるのか??
そうは見えないぞ(失礼)
403代打名無し@公演中:01/11/20 22:22 ID:cH8LhHXB
うちは演劇板にもたまーに行く人なんですが
(今は某朝ドラスレ常駐です)
久々に野球板に来たら
四季板以外にもあったんですね<バトロワスレ
四季板の方は途中でストップしてしまいましたが。

続き楽しみにしてますんで頑張ってください〜<64さん
404 :01/11/21 01:22 ID:Rx9buTji
自分も三村好きだから楽しみです。
ついでに広池オタなのでさらにハァハァ・・・。
405chapter29―本殿・1日目午後6時(1):01/11/21 02:09 ID:J8dj5WBL
「―――禁止エリアは以上でーす。いいかー、殺すペースをあげんといつまでたっても
 広島に戻れんけえのー。それと暗くなったけえ、鹿や猿と人間を撃ち間違うなよー」
そう言うと達川光男(元監督)は放送機器のスイッチを切った。たった今、午後六時の
放送が終わったところだ。正午から現在までの死者数は、正午までのそれと比べて半分に
なっていた。このまま殺し合いがペースダウンしてしまったら、広島へ帰るのがますます
遅くなってしまう。達川はじめコーチ陣はもっとペースを上げたかったのだが、自分たちは
ここでゲームの進行を見守るしかなかった。―――己の身を守るためにも。
本殿の中には照明やコンピュータ、諸々の機材を動かす大型の発電機などが持ち込まれて
いた。半分は海に囲まれているという事で、特にしきりなども設けず、入り口と出口に
それぞれコーチが武器を持って見張りをしている程度であった。このすぐ近くで殺し合いが
繰り広げられているとは思えないほどのんびりとした雰囲気が漂っていた。
ブーッ、ブーッと達川の携帯電話が机の上で振動した。ディスプレイにうつされた番号を
見て慌てて達川は通話ボタンを押した。
「はいはいはい、達川です。はい。はい、ああ、まあ―――順調ですね」
なにやら笑顔で電話の向こうの人物と談笑する。
「前田ですか。わし?わしゃ金本にしたんですよ。いや、ええ、前田も捨てがたかったん
 ですけどねえ、もうこりゃ見た目ですね。はい、はは。あー、データは球団事務所に
 送っとるんですが―――見てない?はいはいはい、まだ生きてますよ。状況?はい、
 ちょっと待ってくださいね」
達川は受話器を耳から離し、しかめっ面でパソコンの画面に見入る松原誠(チーフ
兼打撃コーチ)に話しかけた。
「松原さん、前田はまだあの二人とおりますかねー?」
「います」
パソコンのモニタには、選手につけた首輪からの電波をもとに生徒たちの居場所が
地図上でプロットされていた。
406chapter29―本殿・1日目午後6時(2):01/11/21 02:09 ID:J8dj5WBL
「はいはい、お待たせしました。えーとですね、前田は今、ほかの二人と一緒に行動
 しとります。えーと、新井と森笠なんですが…はいはい。前田が何か知っとるみたい
 なんですが、盗聴の記録、聞きます?え?いや、そこまで話しとらんみたいですが。
 大丈夫でしょう。わしもキャンプに行きましたけど、特に問題は。はい、はい」
いつもの達川節で会話は続いていたが、受話器の向こうの声に幾分眉を持ち上げた。
「えー、話すんですか。また事が大きくならなきゃいいですけど。あいつは選手時代から
 真面目で。ええ、もう。コーチになっても。見ておられたでしょう。はいはい、そうそう。
 まあ、東京で何かあったらまた連絡ください。いや、長期戦になりそうですからね。
 はい、はい。ほんじゃ、また連絡お待ちしてます、阿南さん」
そう言って達川は電話を切った。そこでひとつため息をついて、視線を動かした。
「ペー…は、と」
「さっきトイレに」
松原がモニタから顔をあげて答えた。
「GMもベタな所に賭けたんですね」
「あー、あん人は昔から冒険はせんですけぇ。松原さんは誰にしたんですか?」
「若さをかって東出にしましたよ。あの性格だったら早々殺されないでしょうし、足もある」
「あー、そうきましたか。わしゃ安易に行き過ぎたんかのう」
「いいじゃないですか。しかしすごいですな、金本は!さすが4番だ。こんな所でも
 率先して行動するとはねえ」
そこで達川と松原はそろって笑い声を立てた。

【残り39人】
40764:01/11/21 02:18 ID:J8dj5WBL
ドラフト再放送見てたらうぷ忘れるところだった…。しかもドラフト、阿南もおる(w
30以降手直しが増えるんでうぷできん日もあるかと思いますが、気にせんでくだされ。

>>400
トライアウトはもう1回どっかでありますよね。そこでどっか拾うてくれんかの。

>>402>>404
この2人は途中からどうなるかわからんなあ(w。原作通りかそうでなくなるのか。

>>403
いろんな所にバトロワあるんすね。途中ストップせぬようがんがります。
408代打名無し:01/11/21 12:39 ID:SAny8JOA
>すごいですな、金本は!
ワラタ 丁寧語バージョン?
409_:01/11/21 22:44 ID:kogdcoDM
age
410カープファン:01/11/21 23:06 ID:Th1C/Ows
最近、長い文章がはいっていますが、どういう意味なんですか?
411chapter30―油断大敵(1):01/11/22 06:09 ID:dCfHugFC
しーんと静まり返った水族館の中のガラス窓に、わずかではあるが人工的な光が反射
しているのが見受けられる。くそ、この中にも誰かいたか。そいつに自分の存在を悟られ
ないようにしなければ。そう思い、足音を立てずに一番近くの支柱の影に隠れたのは
鈴衛佑規(背番号63)であった。
彼はちょうど田村恵が殺された時、大願寺の近くの道路を歩いていた。その銃声を聞いて
自分のすぐ近くに殺人者がいると認識した途端、とてつもない恐怖が自分の中をかけ
めぐった。無意識のうちにそこから西へ逃げ、一度水族館を通り過ぎた。そのまま行ける
ところまで行こうとしたのだが、すぐに山のほうから海岸にのびている有刺鉄線の柵に
行く手を阻まれた。日も暮れ山に入るのも非常に怖く思われたので、引き返してとりあえず
水族館の中に入ってみたのだった。近くに旅館のような建物もあったが(実際は国民宿舎
なのだが、そんな詳しいことまではさすがにこの暗闇の中わかるわけがなかった)、そんな
布団も食べ物も十分にありそうな所だったらみんな入っていきそうなもんじゃないか。
今はもう誰も信用できない。実際、銃を自分の間近でぶっぱなしたやつがいるんだから。
それよりかは水族館のほうがよっぽど何もなくて他の人間もいないに違いない。そう判断して
こちらを選んだのだが、どうやら選択ミスだったようだ。もっとも、旅館のほうを選んでも
同じ目にあっていたのかもしれないが。
鈴衛の右手には一本の木製の棒が握られていた。擂粉木というよりかはむしろ和太鼓の
バチといった方が適切かもしれない。手にしっくりと伝わるその重みが鈴衛に幾分の安心感と
勇気を与えていた。殴るくらいしか使い道はないように思われたが、それでも使えるだけ
まだいい。うまく頭部を殴れればかなりのダメージを与えられることは想像に固くなかった。
光は相変らず動く事もなく同じように反射している。そこにいる誰かの、どこかへ移動するような
気配は微塵も感じられない。このまま相手の様子を伺い続けるのはあまりにじれったい。
ならば自分から出向いてやるか。
鈴衛は支柱の影から体を見せると、先ほどと同じように足音を立てずに進み始めた。
しばらく行って、その光が鈴衛の予想通り、支給された懐中電灯のものであるのがわかり、
その光で人の影も確認できた。懐中電灯は光る面を下に向いて置かれており、最小限に
光の漏れがとどめられていた。自分から見れば後ろ向きに座っているその誰かの背番号までは
確認できないが、姿かたちは自分とそんなにかわらない。浅井や金本など、チームでも
突出した身体(というか筋肉だな。あれは反則だろう)の持ち主だったらどうしようかと一抹の
不安はあったが、ちょっと希望はでてきたようだ。
―――不意打ちなら絶対勝てる!
いつの間にか、自分の知らないうちに鈴衛はこのゲームに乗っていた。銃声が聞こえた
その瞬間から、「殺らなければ殺られる」と思っていたのかもしれない。その思いは知らない
うちに体を蝕む一種の病気のように鈴衛の心全体に繁殖し、そして今に至っていた。
もう彼の中には、目の前の人間を殺す―――それだけしかなかった。
近づくにつれ早まる鼓動が相手に聞こえやしないかと鈴衛には不安でしょうがなかったが、
もちろんそんなことなどあるはずがない。とにかく興奮と不安で震える足に全神経を集中
させて、音を立てないようゆっくりながらも必死で近づいた。相手は座って寝ているので
あろうか、鈴衛に気づくどころか動こうともしない。そして、鈴衛はその選手の五メートルほど
後ろまできた。相変らず明るさが不足して背番号は見えないが、この際誰だっていい。
その目の前にある後頭部を殴るんだ。
412chapter30―油断大敵(2):01/11/22 06:09 ID:dCfHugFC
―――用意はできたか、佑規?
すうっと息を吸うと、勢いつけてその選手めがけ駆け寄り、棒を上から振り落とした。
がつっという音が響いた。突然の攻撃に相手は頭をかかえてうずくまる。よし、そのまま
倒れろ!!鈴衛の口元が自然に緩んだ。
しかし。その相手は倒れなかった。頭をかかえうずくまったと思っていた目の前の選手は
突然後ろを振り返った。振り返った瞬間その選手の顔が薄く照らされ、やっと鈴衛はその
選手が誰だか把握したのだが、そんなことはどうでもよかった。鈴衛はもう一度棒をふり
かざしたが、その手を振り下ろす前に相手の両手が勢いよく鈴衛の首をつかんだ。その
勢いのまま鈴衛は全身を後ろの壁と窓にぶつけた。両手につかまれた首がぎりぎりと
しめられていく。首から上が急激に熱くなるのを鈴衛は感じていた。言葉を出そうにも
空気が入っていかないし、出てこない。何かを考えようとしても、自分の頭は痺れを
きらしたような感覚を強めていく。とにかくその手をふりほどこうと必死で自分の手を
出したが、既に遅かった。何せ相手に十分なポジションをとられているのだ。クァッ、
カアッと声にならないうめき声を出したが、それが長く続くことはなかった。
突然の襲来者の意識がなくなったのが両手を伝ってわかると、井生崇光(背番号64)は
鈴衛の首から両手をはなした。自分の息が経験したことのないくらいあがっているのを
感じたが、もしまだこの襲来者が生きていて、いつ自分を襲うかわからない―――
そう思ったときには鈴衛の身体を外の水槽まで引きずっていた。水槽にはなみなみの
水が入っていたが、いつの間にか移動させられたのだろう、動物の姿はない。鈴衛の
身体をかついで水槽の淵に立つと、井生はそれをまるで米俵を投げるかのように思い切り
水槽へ投げ込んだ。鈴衛の身体は抵抗する事もなく、静かに水の中へ消えていった。
井生の頭には、あのおなじみの赤ヘルがかぶられていた。自分に合わせたかのような
右打席用のそれには、「油断大敵、合言葉は『気』!!」という、わけのわからない
「松原コーチのアリガタイお言葉」が殴り書きのような汚い字でほどこされていた。
このヘルメットとピコピコハンマー(もっとも後者は何の役にも立ちそうになかったが)が
井生に支給された武器であった。松原の言葉に感化されたわけではないが(だいたい
シーズン中はたいてい二軍にいるもんだから、松原のアドバイスなど井生にとっては
非常になじみの薄いものだった)、用心のため一応かぶっていたヘルメットが役に立つとは
井生自身思っていなかった。
「油断大敵、か…」
そう呟くと、井生は再び建物の中へ入って行った。

【残り38人】
413chapter30―油断大敵(2):01/11/22 06:22 ID:dCfHugFC
想像に固くなかった→想像に難くなかった、です。スマソ。
保存のほうも手直しと一緒に30までおさめておきます。
最近ageるのがきついんでヒソーリしときます。

>すごいですな、金本は!
(`)ε(´)がなかなか出てこないから、せめて言葉だけでも出してやろうと(w
41464:01/11/22 06:23 ID:dCfHugFC
名前そのままだ…どうしようもねー(鬱
415 :01/11/22 20:59 ID:GEBw2yFD
hozenage
416chapter31―友情と裏切りと(1):01/11/23 07:37 ID:AyyHYMg2
矢野修平(背番号66)は時計が午後9時を指すのを待って、隠れていた民家の裏口から
そっと顔を出した。フェリー乗り場より北東に進み、小中学校を通り過ぎしばらくいった所に
ある集落にいた(近くにバス停があるのを見て、矢野は初めて宮島にバスが通っているのを
知ったのであった)。
午後六時の放送で告げられた禁止エリアの中に、矢野の隠れていた民家は存在していた。
午後十時になればその民家を含めたこのエリアにいる選手の首輪はすべて爆発する。
コンピュータが相手らしい。どうしようもなかった。
裏口は、家と家の間の細い路地に面していた。正面の家の壁まで一メートルもないかも
しれない。矢野はごつい自動拳銃(コルト・ガバメントモデル四五口径)を握りなおすと
両手で保持して、右手の親指でスプリングの重い撃鉄を起こした。辺りを素早く見回したが、
路地の左右に人の気配はない。人一人いないというのに等間隔で光る街灯は、いささか
不気味なものを矢野に感じさせた。
幸いにしてこの集落は多くの戦闘があった弥山周辺とは離れていたため、矢野が直接
銃撃戦を見たり、あるいはその音を聞くことはなかった。しかし、あの入り口に転がっていた
遠藤の、河野の死体。そして今までに達川が読み上げた選手の名前。間違いなく殺し合いは
続いていたし、誰もが矢野のようにだた隠れているわけではないのだ。チームメイトを
平気で殺そうとするものがいる。そして、どこからその誰かが現れるかはわからなかった。
足を踏み出し、隠れていた家の壁沿いにそろそろと右へ進んだ。角まできて南のほうへ
顔を向けると、そこは暗闇が支配している。きっと田畑が広がっているか、林になっているかで
電灯がないのだろう。そこからゆっくりと山が広がっているのは日が落ちる前に見ていた。
とにかく、その山の中まで入ってしまえば当面は安全なはずだ。
417chapter31―友情と裏切りと(2):01/11/23 07:38 ID:AyyHYMg2
矢野はデイパックを肩にかけ直すと、もう一度辺りに視線を飛ばし、それから一気に
駆け出して目に入った茂みへ分け入った。銃を両手で構えて左右に向けたが、誰もいない。
そのほんの少しの移動で、矢野はもう肩で息をしていた。この暗闇の中周囲に気を遣うのは
予想以上に神経をつかう。しかし、まだ油断はできない。まだ禁止エリアから抜けては
いないのだ。いや、抜けているかもしれなかったが、地面に白線が引いてあるわけじゃ
ないし、引いてあってもこんな夜じゃ見えないに決まってる。とにかく、少し余裕を持って
離れておかなければ不気味で仕方なかった。矢野は泣き出したくて仕方がなかった。
せめて誰かいてくれたら。矢野の頭に数人の顔が思い浮かんだ。その面々がこのゲームに
乗っていないという保証はなかったが、それでも会いたいと思った。みんなは今、この
島のどこにいるんだろう。それとも―――それとも、もう―――。
矢野の胸がきゅっと痛くなった。目に涙がにじんだ。アンダーシャツの袖でぐいっと目を
拭うと、茂みの中を端まで進んだ。あともう少しは動かなくちゃならない。また拳銃を
握り締め、次の遮蔽物を探した。この暗さにも目がだんだんとなれてきた。今度は右手の
方に背の高い木が何本かまとまっていた。それへ向かってまた一気に走った。小枝で
顔を引っ掻かれながら茂みの端へ滑り込み、それからそっと身を起こして辺りに目を
配った。茂みの中を全て見通すことはできなかったが、どうやら人の気配はなかった。
矢野は身を低くしたまま、またそろそろと茂みの中を進んだ。大丈夫、ここには誰もいない。
そして再び茂みの端へたどり着いた。今度はもう山の影が目前に見えている。少し
薄気味悪かったが、身を隠せるのならそのくらいは我慢できた。田舎育ちの本領発揮だ。
ふいに、背後でさっという音がして、矢野の心臓が垂直飛びを敢行した。矢野はさっと
姿勢を低くし、コルト・ガバメントを両手で保持すると、背後へ向けてそっと振り返った。
ほんの十メートルばかり向こうの木々の間を、ちらっと見慣れたユニフォームが動くのが
見えた。矢野の目が恐怖に見開かれた。誰かがいる、誰かが!
418chapter31―友情と裏切りと(2):01/11/23 07:39 ID:AyyHYMg2
矢野は歯を食いしばってその恐怖を抑え込むと、頭を低く下げた。心臓がドキドキと
そのリズムを速めた。
再び、がさがさという音が耳に届いた。さっきまでこの茂みには誰もいなかったはずだ。
あの誰かは、矢野の後ろからこの茂みに入ってきたのだ。―――どうして?自分を
見かけて追ってきたんだろうか?
いや、そうとは限らない。単に自分と同じように移動中というだけのことかもしれない。
そうだ、自分に気づいてたらまっすぐこっちへ進んでくるはずだ。自分は、気づかれては
いない。それならこのままやりすごせばいい。動かないでじっとしていよう。
またがさっと音がして、その誰かが移動する気配がした。頭を低くした矢野の目に、
折り重なった下生えの葉の間から、その影がすっと木の幹の間を動くのが見えた。
横顔を見せて、矢野の位置からは右から左へ向けて動いた。ああよかった、こっちへ
向かってきてるんじゃない―――。ほっと息をつきかけた矢野は、しかし、がばっと顔を
もう一度上げていた。もう、その影は木々の間に隠れて見えなかった。がさがさという
音も徐々に遠ざかっていく。
見間違えるはずはない、と矢野は思った。その思いに動かされるようにすっと腰を上げると、
音がする方へそのまま中腰で進んだ。数メートル進んで、もう一度生い茂った葉の陰から
音のする方を確かめた。狭い視野にユニフォームの影が現れた。そのユニフォームの
背番号を確認して、自分が見た人物のそれと一致しているのがわかると、立ち上がって
思わず声をかけた。
「大輔!」
419chapter31―友情と裏切りと(4):01/11/23 07:39 ID:AyyHYMg2
その声に、酒井大輔(背番号67)は一瞬びくっと体を震わせたように見えたが、ややあって
ゆっくりと体を振り向かせた。酒井の目が見開かれ、ほんの一瞬酒井の顔に暗い影が
落ちたような気がしたが、それは勿論矢野の錯覚だったに違いない。すぐに、その顔に
笑みが広がった。
「修平―――」
「大輔!」
矢野はデイパックを担ぎ、ガバメントを右手に提げたまま、酒井に走り寄った。自分の
顔がくしゃくしゃになり、目に涙がにじむのがわかった。
「無事だったんだな、心配してた」
酒井が笑みを浮かべたまま言った。
「俺もだよ、本当によかった」
「なんか、すごい偶然だな」
「うん。ほんと。もう二度と会えないと思ってた。こんな―――こんな酷いことになって」
でかい体をして子供のように泣きじゃくる矢野を見て、困ったように酒井は矢野の背中を軽く叩いた。
「ほら、もう大丈夫だから。いつも泣いてるじゃないか、お前は。これから一緒に行動しよう」
酒井の言葉は力強く、矢野はますます涙があふれ出るのを感じた。今まで抱いていた
恐怖心がうそのように消えていた。
420chapter31―友情と裏切りと(5):01/11/23 07:43 ID:AyyHYMg2
「今まで…今までどこにおったと?」
「あそこの家。でもなんか禁止エリアなんだろ、もうすぐ」
無論の事酒井は深刻な表情だったが、矢野はおかしくなった。すぐ近くにいたのだ、ゲームの
スタートから今までどこにいるのかと思っていた仲間がほんの目と鼻の先にいたなんて。
「俺も家の中に隠れてたよ。すごい近くにいたのかもしれんね、俺たち」
それで、二人はちょっと笑った。気がつけばこのゲームが始まって以来笑ったことなど
なかった。昨日までは気づかなかった、笑えることの幸せを、矢野はささやかながらも
感じていた。
ふと酒井の視線が矢野の右手に落ち、それで矢野は自分がまだ拳銃を握っていたことに
気づいて苦笑いした。
「はは、忘れてた」
「いい武器じゃんか。俺なんか、これだからな」
そう言って酒井は手にしたものをみせた。矢野はそんなものに全然気づかなかったの
だけど、よく見ると何だか古道具屋で売ってそうな短刀だった。握りに巻かれた糸は擦り切れ、
小判型のつばには緑青が浮いている。酒井が刃を少し抜き出してみせると、刀身にも
点々とさびが広がっていた。酒井は刃を収め、ベルトにそれを差し込んだ。
「それ、ちょっと見せてくれ」
酒井が言い、矢野は拳銃の銃口を横へ向けて、酒井の方へ持ち上げた。
「大輔、それもっとく?俺だとなんかうまく使えそうにないんだよな」
酒井は頷き、コルト・ガバメントを受け取った。グリップを握り、安全装置を確かめる。
撃鉄はまだ起きたままになっていた。
「弾、あるか、これの?」
もちろん銃の弾倉はもう装弾数いっぱいに弾が込めてあったけれど、矢野は頷いて
デイパックを探り、弾の入った紙箱を酒井に差し出した。酒井は片手でそれを受け取ると
親指で蓋を弾いて中を確かめ、それから自分の学生服のポケットに押し込んだ。
421chapter31―友情と裏切りと(6):01/11/23 07:43 ID:AyyHYMg2
次の瞬間、矢野はわが目を疑った。一体それがなんであるのかそもそも理解できず、
ただ、あたかも何か不思議な手品でも見るように、酒井の手元をじっと見ていた。
酒井が自分に向けて、そのコルト・ガバメントをすっと構えていたのだ。
「……大輔―――?」
それでもまだそこにぼっと突っ立っていた矢野から、酒井の方が後ろへ二、三歩さがった。
「大輔?」
もう一度言った矢野の頭に、ようやく、酒井の顔がいつもと違うという自体が認識された。
太い眉、自分よりかはぱっちりとした目、分厚い唇。パーツは同じだけれど、歪めた口元に
歯がのぞいたその顔は、矢野が見たこともない顔だった。その歪んだ口元から言葉が流れ出した。
「行けよ。さっさとどっかへ消えちまえ」
矢野は一瞬、酒井が何を言ったのか分からなかった。苛立ったように、酒井が続ける。
「早くどっかへ行っちまえって言ってんだ!」
「……どうして?」
また泣きそうな顔をして呟く矢野に、酒井の苛立ちが強まる。
「お前みたいなとろいやつと一緒にいられるかってんだよ!早くいけよ、ちくしょう!」
最初はゆっくりと、しかし次第に加速するように、何かががらがらと矢野の中で崩れ落ち始めた。
「どうして…俺、俺なんか悪いことでもしたか?」
酒井は銃を矢野に向けて構えたまま、顔を傾けて地面に唾をぺっと吐いた。
「笑わせるな。お前はいっつもそうだよな。なんかあったら泣けばいいとでも思ってるのか?
 練習中とか影でうじうじ腐った女みたいに泣いてるの、はっきり言ってかなりうざかったんだよ!
 お前みたいなやつと一緒にいたら俺の足を引っ張られちまう。こんな糞みたいな騙しにさえ
 ひっかかるんだから、お前、やっぱり、とろい」
矢野は口をぽかんと開けて酒井の顔を見ていたが、やっぱり無意識のうちに涙がこぼれ出た。
「そんな、そんな…」
「だからそういうのがうざいって言ってんだよ。いい加減にしろよ!」
何かに衝き動かされて、矢野はだっと酒井の方へ走った。もう酒井の言葉を聞きたく
なかったからかもしれないし、酒井が自分に銃を向けているという事実が受け入れ
がたかったからかもしれない。
422chapter31―友情と裏切りと(6):01/11/23 07:43 ID:AyyHYMg2
「やめて!お願いだからやめてくれ!!」
矢野はそう泣き叫びながら、酒井の手にしている銃をつかもうとした。酒井はすっと体を
躱し、矢野を突き飛ばした。デイパックが肩を離れて左手の方に落ち、矢野は背中から
草の上に倒れこんだ。すぐに、酒井がその矢野の上にのしかかった。
「何しやがるんだ、ちくしょう!俺を殺すつもりなんだな!だったらここで殺してやる!」
酒井が銃を矢野に向けて構え、矢野は必死になってその酒井の右手首を両手でつかんだ。
すぐに、酒井が銃を握っている自分の右手に左手を添えた。ぎりぎりと酒井の手が下がって
くる。自分の額へ!矢野はざあざあと自分の血がひく音を聞いた。矢野は両手をつっぱり、
必死で叫んだ。
「大輔!やめろ!冗談はよせ!」
酒井は何も答えなかった。矢野を見下ろす目が血走っていた。機械のように単調な力と
動きで、その腕が下がってくる。その様が矢野にはスローモーションのように見えた。
矢野の、哀しみと恐怖に引き裂かれた心の隙間に、ふっと思考が入り込んだ。
何もかも分かった。分かりたくはなかったけれど、自分にとって友人だと思っていた酒井は
幻だったのだ。でも―――でも、それは素敵な幻だった。酒井と一緒にいて、練習して、
遊んで、飲んで、二人でカープを引っ張っていける投手になれると思った。その幻を
与えてくれたのは、どうあれ酒井だったのだ。酒井がいなかったら自分はその夢を
見られなかった。ああ、あの自分が一軍で初めてのマウンドを踏んだ日の、市民球場の
シャワールームで酒井がいった、“来年は開幕から一緒に1軍にいような”という言葉は
うそじゃなかったと思う。
―――信じていた。
矢野は、ふっと力を抜いた。酒井がちゃっと矢野の額に向けて銃を構えた。その指は、
すぐにも引き金をひくだろう。矢野は酒井を見つめて、静かに言った。
「ありがとう、大輔。俺、大輔と野球できて、幸せだった」
酒井の目が何か大事なことにようやく気づいたというように丸くなり、その動きが凍りついた。
「いいから、撃て」
矢野はにこっと微笑んだ。酒井の手が、矢野に銃をむけたままぶるぶる震え始めた。
「修平―――」
かすれた声で酒井が呟く。酒井の目が後悔と自責の色合いをうっすら帯びてきたような
気がした。―――ああ、わかってくれたか?大輔、本当に?
423chapter31―友情と裏切りと(8):01/11/23 07:44 ID:AyyHYMg2

かつっ!という小気味よい、しかしどこか湿った、無気味な音が響いた。濡れた床にかかとを
打ちつけるような音だった。そしてそれとほとんど同時に、酒井の右手指が引き金をひいた。
もっともそれは彼の意志ではなく、単に痙攣だったのだけど。ばん、という爆竹のような
撃発音に矢野は思わずひっと声を上げたが、銃口は既に矢野から外れており、弾丸は
矢野の頭の上、草の生えた地面に突き刺さった。
力を失った酒井の上半身が、ゆっくりと矢野の体の上に折り重なった。酒井はそれきり、
ぴくりとも動かなかった。
慌てて酒井の体の下からでようとした矢野の目に、その酒井のユニフォームの肩口の
向こう、笑顔が見えた。同期入団、同い年の東出輝裕(背番号2)がそこにいた。矢野には
何が何だかわからなかった。ただ、東出の懐中電灯の光で照らされた彼の口元に浮かんだ
笑みが、感情を示さない冷たい視線とアンバランスで、矢野は心の底からぞっとした。
とにかく、その東出が「大丈夫か?」と言って矢野の手を握り、矢野を酒井の体から引っ張り出した。
生い茂った植物の中、矢野はよろけながらも立ち上がり、そして見た。酒井の後頭部、
酷く鋭利なカマ(カマ!将来農業で生計を立てたいと真剣に考えていた矢野がカマを
知っているのは至極当たり前の事だった)が深々と埋まっているのを。
東出はそのカマをとりあえずうっちゃって、酒井の右手の中のコルト・ガバメントを奪いに
かかっていた。筋肉が引き攣り、ひどくこわばったその指を一本一本引きはがし、ようやく
それを手中に収めると、にやっと笑った。
矢野はただ、酒井のその今は魂の入っていない体を見下ろして、がくがくと震えていた。
がくがく、がくがくと。震えながらも矢野の視界に入ってきた光景は、とてもこの世のものとは
思えない光景―――東出が酒井の後頭部に刺さったカマに手をかけ、それを抜き取ろうと
両手で柄を握って、ぎりぎりと揺すっていたのであった。酒井の頭がそれにあわせて
揺れていた。
424chapter31―友情と裏切りと(9):01/11/23 07:44 ID:AyyHYMg2

「うわああああああっ!」
声を上げ、矢野は東出を突き飛ばしていた。東出は草の間にどん、としりもちをついた。
矢野は東出にお構いなしに酒井の体に覆い被さった。頭からカマが生えている、その体に。
矢野の目からぼろぼろ涙がこぼれ落ちた。そのカマはこう告げていた。揺さぶったって
生き返らないぜ。揺するなよ。カマが刺さってんだぜ、痛むじゃんか。
矢野の胸の奥から感情の大波が何度も押し寄せる。涙にあふれた目で、矢野は傍らに
いた東出をきっと睨みつけた。睨み殺してやるつもりだった。今自分がどんなゲームに
参加していて、誰が敵なのだとか味方なのだとか、そんなことはもう矢野の頭から吹き
飛んでいた。そうだ。憎むべき敵がいるのだとしたら、それは自分の仲間を、友人を
目の前で平気で殺した東出輝裕だった。
「何で殺したんだ!何でだ!何で殺さなきゃいけなかったんだ!」
東出は不満そうに唇を歪めた。
「お前。殺されかけてたんだぞ。助けてやったんじゃないか」
「うるせえ!大輔はわかってくれた!俺の事をわかってくれた!殺してやる!俺が、
 お前を殺す!大輔は俺の事をわかってくれたんだ!」
東出は首を振って肩をすくめると、すっとガバメントを矢野に向けた。矢野の目が見開かれた。
それで、矢野はもう一度、乾いた爆発音を聞くことになった。額の上に激しい衝撃が伝わり、
それだけだった。矢野はかつての仲間である酒井の方にどさっと倒れ込み、もう動かなかった。
四五口径の鉛弾で頭の後ろ側が半分なくなっていた。それでも口は残っていて、何か
叫ぼうとするように開いており、その端から血がゆるゆると流れ出した。酒井のユニフォームの
上に流れ、赤い染みを広げた。
東出はまだ銃口から煙を噴いているコルト・ガバメントを下ろすと、もう一度肩をすくめた。
矢野ならちょっと鈍いところはあるが、それでもしばらくの弾除けくらいにはなると思ったのだが。
それから、言った。
「そう、わかってくれたんだろうね」
上半身を屈め、半分欠けた矢野の頭、耳元に口を近づけた。笑みが浮かんでいたのに、
東出本人は気づいていたのだろうか。
「お前を殺すのをやめそうになってたから、俺が殺したんだ」
東出はそれだけ言って立ち上がると、再び酒井の頭からカマを抜き出しにかかった。

【残り36人】
42564:01/11/23 07:48 ID:AyyHYMg2
広島家のほうに書き込んだ後すぐにうぷするはずやったのに、気がついたら6時(;´д`)
(2)と(6)が2つずつあるのはご愛嬌と言う事で、ひとつ。
426 :01/11/23 08:11 ID:hngdpm6e
泣けたよ‥‥。
矢野たん酒井たん‥‥2人の友情は
真実だよな‥‥と臭いことを思ってしまったよ。
427_:01/11/23 08:19 ID:JKi5KbMu
64さん、徹夜?ごくろう様です。
矢野タソの地蔵のような笑顔をアスリートでみたばかしだったのに…。
このシーンは本当にツライですね。
希望と絶望が交互にやってくる感じで。
さ、酒井タソひどい!とマジで思ってしまった。
あー(・ ε ・)が銃を入手だ。こわいこわい。
428 :01/11/23 08:49 ID:05Ms+ucg
な、なんだか東出が最悪な性格に・・・(ノД`)・゚・チョイヲタとしてはツラー
429代打名無し:01/11/23 13:28 ID:BP7bYcEW
>64さん
矢作好美はグロい死に方をしているので怖かったです。
ト○○○グのところはさすがにカットされていましたね。
430 :01/11/23 22:11 ID:svKQR4hK
泣いちゃったYO!
やっぱ知ってても泣ける。これは64さんの手腕による所が
大きいんだろうね。それに本人達生で見てきたばっかだし。
酒井タン、確かにとろいとか酷いなぁ(w
431_:01/11/24 07:49 ID:iOiemoTb
age
432 :01/11/24 08:20 ID:KmLUsUAQ
ウザッ
433 :01/11/25 04:19 ID:P4byAx+r
      
434代打名無し:01/11/25 08:45 ID:92phOm4F
age
435_:01/11/25 09:57 ID:45KeHWjN
64さん帰ってきて〜
436 :01/11/25 12:44 ID:ZLzvYYx6
修平たん・・・
437chapter32―希望は捨てない(1):01/11/25 17:55 ID:5G9JMQHZ

真っ暗闇の中、一筋の懐中電灯の光が動いている。ゆっくりとしたスピードながら、それは
確実に山を降りていた。光があるといっても、それはほんの少しの範囲しか照らすことが
出来ない。すぐ近くの木からドングリの実が落ちる、そのほんのわずかの音でさえ、この
状況では心臓がフライングしそうな程の衝撃を心に与えていた。
ふいにその光を藪の切れ目にある何かが撥ね返した。誰かの懐中電灯の光かと思って
少々焦ったが、そうではなく、それが動くものではないとわかるとゆっくり近づき、その正体を
確認した。―――どこの家にもありそうな包丁であった。普通山の中にこんなものが落ちて
いるはずはない。誰かが落としたのか?…いや、大事な武器を落とすわけはないだろう。
となると、ここで何かが起こって、この包丁の持ち主が消え、武器だけが取り残された。
そういうことになるだろう。
その包丁を手に取り、野村謙二郎(背番号7)は自分のデイパックの中に入れた。あまり
いい話ではないが、なにかあった時のために武器は一つでも多いほうがよかった。辺りに
持ち主も転がっているかと思い、持っている懐中電灯の光を動かしてみたが、それらしい
ものは見当たらなかった。この持ち主を殺った誰かが、死体だけ移動させたのかもしれない。
武器には気づくことなく。
とりあえず同じ場所に長時間いることもない、そう思って野村は再び山を降り始めた。
自分が移動している場所は簡単な階段になっている。やや急ではあるが、茂みの中に
比べれば歩くのにはとても楽だった。もっとも、障害物がないために誰かに見つかったら
ひとたまりもなかったが。
438chapter32―希望は捨てない(2):01/11/25 17:56 ID:5G9JMQHZ

夜の移動は危ないような気がしたが、野村はあえてそれを選択した。夜の移動の危険性を
考えるなら動かないのがセオリーだ。なら他の選手も同様に動くことはないだろう。だったら
多少危険でも今動いたほうが、他の選手には会わないで…戦わないですむのではない
だろうか―――そう思って野村は今、動いているのであった。実際、叫び声や銃弾などの
怪しい物音を聞くことはなかった。昼は目の前で銃撃戦が繰り広げられたというのに。
それにしても思った以上に山を登っていたらしい、行けども行けども平坦な土地にたどり
着くことができなかった。自分が立てているはずのざっざっという足音が耳の中で増幅し、
まるで誰かが後をつけているような気がした。何度も何度も後ろを振り返ったが、人の
気配はない。それでもその足音が消えることはなかった。暗闇が作り出す恐怖が知らず
知らずのうちに野村を蝕みつつあった。
ふと、しかしまたも懐中電灯の光が何かをとらえた。―――倒木?いや、違う。白地に
赤い線が一本走っている。これは、ユニフォームじゃないか!?
誰かが倒れているのだ。野村はおそるおそる懐中電灯の光を今あてている足から体の
方へ動かした。その光が暗闇の中から背中の背番号を読み取らせた。OGATA、9―――。
「緒方、緒方」
それが緒方孝市(背番号9)だとわかると慌てて駆け寄り、小声で呼びかけながら倒れて
いる緒方の体を揺すった。ひととおり緒方を見るが、顔と手に擦り傷はあるものの、たいした
傷ではなさそうだ。何より体は温かかった。緒方はまだ、生きている。
439chapter32―希望は捨てない(3):01/11/25 17:56 ID:5G9JMQHZ

しばらく体を揺らすが緒方からは何の反応もなかった。何か方法は―――そう考えて、
野村は緒方を仰向けにすると、デイパックから水の入ったボトルを取り出し、その中身を
緒方の顔に勢いよくこぼした。少々荒っぽい方法ではあったが、とにかく何でもよかった
のである。緒方が意識を取り戻しさえすれば。
すぐに緒方の表情が動いたかと思うと、勢いよく咳き込んだ。懐中電灯の光が眩しかったのか、
はたまた水を飲んでしまったのか、表情が歪んでいた。
「気がついたか?」
懐中電灯で緒方の顔の辺りを照らす。緒方は一瞬、自分の置かれた状況を理解できない
ようだったが、すぐにその懐中電灯を持つ選手を認めると、心の底から安心したような
笑みを浮かべた。
「野村さんじゃないっすか…」
「大丈夫か?こんな所でお昼寝か?」
冗談をいう場面ではないが、野村が意地悪い質問をぶつけてみた。
「そんなわけないでしょう―――これって夢じゃないですよね?朝山は?」
「朝山?」
不思議に思った野村が周囲を懐中電灯で照らすと、さらに一人、数メートル下に倒れている
人影を発見した。それを見て何となくではあるが事を察した野村が、今度は真顔で緒方に聞いた。
440chapter32―希望は捨てない(4):01/11/25 17:57 ID:5G9JMQHZ

「…朝山となんかあったのか?」
「取っ組み合いになって、ここを転がったまでは覚えてるんですけど」
「―――なら、そこで二人とも気を失ったってわけだな。どっちからだ?」
「朝山が包丁を構えてて」
「包丁?」
自分がここまで来る途中に拾ったあれは、朝山の包丁か。なら辻褄があう。しかし、
朝山までもこのゲームに乗ってしまっていた。―――待て、もしかしたら緒方も?
「お前、このゲームに乗ったんか?」
緒方は、まさか、というような顔を野村の方に向けた。
「そんなわけないじゃないですか!―――そりゃ、朝山と向きあった時はそれに乗りました。
 だけど、好きで乗ったわけじゃない」
あまり緒方は嘘をつくのは上手ではない。自分の気持ちが必ず表情や態度に表れる
やつだ。長年一緒にプレーしてる野村もそれはよく知っていた。ここまでムキになるなら、
こいつはまだ大丈夫そうだ。
「わかった。まだいたんだな、俺みたいなやつも」
「まだ、って―――そんなにみんな殺しあってるんですか?嘘でしょう?」
「お前、朝山とやりあったくせに本当にそう思ってるのか?」
きつい口調で放たれた野村の一言への緒方からの返事は返ってこなかった。殺しあう
なんて、という理想と、殺されかけた現実。自分の身を守ろうとしたその時に“殺しあう”と
いうこのゲームのルールをきちんと飲み込んだはずだったのに、いざ自分が死ななかった
となると、やはりそのルールから目を背けたいという気持ちが強く動いていたのだった。
441chapter32―希望は捨てない(5):01/11/25 17:57 ID:5G9JMQHZ

「とりあえずこれからどうする?」
「これから…」
野村の問いにまたも答えは出てこなかった。それは当たり前かもしれなかった。なにせ
あの時、自分の死を確信していたのだから(よく考えれば余程打ち所が悪くない限り
転がるだけで死ぬことはないんだろうけれども)。
緒方の複雑な表情を読み取って、野村は言葉を続けた。
「俺は―――できるだけみんなを集めて広島に戻りたいと思ってる。この目で何人か、
 死ぬ瞬間を見てきたけど…でも、まだ残ってるやつだけでも集めて何とかしたいと思ってる」
「そんな…そんなことできるんですか?」
「やらないであきらめるよりまず行動することが大切なんだ。たしかに、行動してもそれが
 成功するとは限らない。―――お前は知らんと思うが、建と横山がみんなを説得しようと
 して、誰かに殺された」
野村の言葉に緒方の表情がこわばった。
「建と横山が?」
「ああ。ハンドマイクか何かで呼びかけをやってな。たぶん、この山に隠れてる人間なら
 全て知ってるはずだ。そのくらい派手に呼びかけていたんだが―――あいつらの悲鳴が
 聞こえて以来、二人からの音沙汰はなくなった。そして六時の放送で名前が呼ばれた」
「―――そんな」
「でも、あいつらも結局はみんなで広島に帰ることを願っての行動だったんだ。俺もそう
 だったが、それに答えようとしたやつもきっといる。だから―――俺は希望を捨てない。
 建のためにも、横山のためにも」
野村のその思いが痛いほど分かるような気がして、緒方も胸が熱くなった。こんな時でも
人に影響を与える一言をつむぎだせる。野村がチームリーダーとして慕われ、尊敬される
所以だろう。
「緒方、お前も協力してくれないか」
その呼びかけには、全く躊躇することはなかった。
「勿論です。一緒に…一緒に頑張りましょう」

【残り36人】
44264(ジプシー中) ◆CARP8KOI :01/11/25 18:11 ID:5G9JMQHZ
ジプシーもマターリしてるんで、今のうちにうぷしときます。ジプシーで手に入れた
トリップも活用(向こうに誤爆してしまったが)。
1日にこれをはじめた当初は30章あった貯蓄が、20きってしまいました。
やばい。番外編と違ってつながりを考えて作らないと大変なことになるんで(;´д`)
今週は仕事が押し寄せそうですが、暇を見つけて書ければと思うております。

そういえば(・ ε ・)はここで銃を所持したのか。アレンジを含めもっと
悪役にしていくつもりなんで、>>428さんは覚悟を決めていただければ(w
実は98年ドラフト組で初の死者なんすよ>矢野と酒井。このドラフトで
はいったメンバーも変なのが多いんで(・∀・)トテモイイ!!

>>435
広島家でお会いした人かな?たまに帰ってきてるんですけど、続きを書けるほど
向こうはマターリしてないんで(今はしてるけど)、両立が難しい…。
さあ、戻ります。なぜかSM板でマターリ(w
443435:01/11/25 20:33 ID:26sOBvmV
お帰りなさい64さん。そう、広島家で64さん放浪を知ったので。
98年ドラフト組、じゃあメットのぃぉぅは…
何でこんなにぃぉぅに固執するのか自分でもサパーリわからんのだが(w

監督とおがたん合流っすか!
オリジナルは予測つかなくて楽しみです。
それにこの2人、前田+粗い+カーサより強そうな気がする(w
444 :01/11/25 20:56 ID:wvxOiC6z
緒方んとノムケンコンビか。(・∀・)イイ!です。
しかも、ノムケンの言葉に胸が熱くなってしもうたよ。
希望は捨てない‥‥ジーン‥‥

緒方ん生きてたのね。東洋もなのか?
ますます楽しみになってきた、がんがれ64さん!
445代打名無し@公演中:01/11/25 22:25 ID:KGEaFAsa
ジプシーおっつーです<64さん

もし東洋が生きてたら
(何らかの形で)前田チームと合流きぼーん。
あと(丶`_ゝ´)と(・ ε ・)って対決するんですっけ?
原作読んでないんでどうなんかなと思いまして。
でなかったらオリジナルシナリオで見てみたいっす(爆)

>>443(=435)さん
>前田+粗い+カーサより強そうな気がする(w
激同っす(藁)
44664(ジプシー中) ◆CARP8KOI :01/11/25 23:12 ID:Z8y+FuQl
ただいま通信技術板で相変らずマターリ(w

>>445さんのを見て思ったんだけど、まだ出てきていない選手に関しては
希望をもらえたら対戦等希望にこたえられるかもしれません。自分の中で
考えてない話とかをたてられるかもしれない。ジプシー中にそういうスレを
見て「(・∀・)イイ!!」と思った記憶がかすかにあるような…(「この選手から
野球を取ったら…」スレも読者参加型っぽいし)。

東洋は実はあぼーんさせようとしてたんですが(w、書き直し該当章だったんで
本筋で期待に応えられるようやってみます。できんかったら番外編で…。
ほかに何かありましたらどなたでもご意見をおよせください。ここに書くのに
気が引けたら保存サイトの全体のindexに捨てメアドがあるのでそちらにどうぞ。

向こうが盛り上がってきたので、またもどります。
447代打名無し:01/11/26 13:48 ID:sFFU9J+O
>445
桐山VS光子は原作、映画版ともあります。
448 :01/11/27 03:46 ID:ST4t6r/k
lヽ   ageとくよ  
l 」 ∧_∧        
‖( ・ε・)
⊂     つ      
 人  Y         
 し(_)         
449 :01/11/27 08:03 ID:bBtcjLds
広島家のスレがないYO〜!!
450445:01/11/27 09:10 ID:2MWb0NK3
過去ログ逝きになってます(泣)<広島家2
451広島家スレ作り直しやした:01/11/27 10:59 ID:baoSMRMU
>>449-450
広島家の人々2.5
http://sports.2ch.net/test/read.cgi/base/1006825663/

64さん、またお世話かけもうしやした(;´Д`)ヤレヤレ・・・
452chapter33―序章(1):01/11/27 21:37 ID:cHsqFl61

登山道の途中、弥山の頂上から歩いて五分くらい行った所に、霊火堂というお堂がある。
弘法大師ゆかりの「不消の火(きえずのひ)」(その名の通りこの聖火は千年以上燃え続けて
いるらしい)を安置しているお堂であるが、その霊火堂の中に隠れている選手がいた。
松本奉文(背番号35)である。
松本はここに到着した時、まず真っ先に中に人がいないのを確認すると、その扉を閉め
中にずっとこもっていた。その間にも銃声や定時放送、さらには誰かの(何かを通して
話していたようだが、さすがに距離があったのか、それとも外部との空間を扉で遮断したのが
まずかったのか、それが誰の声で、何を話しているのかを聞き取るのはさすがに無理が
あった)声など様々な雑音が耳に入ってきていた。
松本には殺し合いなどもうどうでもよかった。とにかくここに閉じこもっておくつもりだった。
誰も死ぬことがないせいで首輪が爆発するんならそれでよかったし、―――不謹慎では
あったが、みんな殺しあって自分ひとり生き残ってしまっても仕方がないと思っていた。
とにかく外に出る気はなかった。ここなら不消の火のおかげで多少ではあるが明かりを
確保することはできたし、暖をとることもできた。しかもご丁寧に、その燃える火の上には
大茶釜までかけてあった。さすがに餓死するのは寂しい気がしたので、食料がなくなったら、
そこらへんの草でもむしって、その茶釜で何か作ろうと思っていた。その辺アイディア次第である。
ただ、松本には一つ気になる事もあった。ここに閉じこもるのはいいが、もし、他の誰かが
ここに入ってきたらどうするのか。ここが禁止エリアにならない限りその可能性は少なからず
あった(ちなみにここが禁止エリアに指定されたとしても、松本は外に出る気はさらさら
なかった)。攻撃されるのは構わない。その覚悟は出来ている。しかし、一緒に行動しよう
などと言われてしまったらどうしようか。二人で(あるいは複数で)ここに隠れるのか?
ここを出るのか?勿論その時になってみなければどういう結論を出すかはわからなかった
けれど、少なくとも、他の誰かを殺すことだけはしたくなかった。―――いろんな理由をつけて
ここに閉じこもっているが、実際は他人を殺したくないだけでここにいるのかもしれない。
平和主義?気が小さい?…まあ、中にはそういうやつがいたっていいんじゃないの?
それにしても、と松本は心の中で呟いた。―――それにしても、宮島でこんなことやって
いいのかな?厳島神社なんか世界遺産になったのに、ただの野球チームが宮島を貸し
きってこんなことするなんて。後から弁償させられたりとかしないのかな。うわ、貧乏球団
なのに払う金があるのかよ。あ、でも、ここで選手は一人だけになるんだからその分の
給料が浮くのか。なら別にいいか。…やめとこう。そんなこと考えるだけで気が滅入るよ。
453chapter33―序章(2):01/11/27 21:38 ID:cHsqFl61

松本はごろんと床に寝転がった。広島出身の松本にとって、宮島は遠足などで気軽に
訪れた馴染みの場所だった。その頃の思い出が走馬灯のようによみがえってきて、少し
しんみりした気分になっていた。あの頃野球に出会わなかったら、今ごろ自分は何を
していたんだろう。野球と同じで、人生に「たら」「れば」を使うなど妄想の類に過ぎない
けれど、こういう状況に陥れられると、ついそんなことを考えずにいられない精神状態に
なってしまうのかもしれなかった。
ごとっという音がして、松本は慌てて身を起こした。間髪いれずに、ぎいっと扉が開き、
光の帯があちらこちらを照らしている。あまり起こってほしくないことが現実になって
しまったようだ。―――誰かが来たんだ。
さまよっていた光の帯がふいに松本をかすめた。光の主はそれに気づいて、松本に光を
当てる。あまりの眩しさに、松本は目がくらみ手でその光を遮った。
「松本さん?」
光の主が声をかけた。
「松本さんですよね。俺です、岡上です」
そう言って、自分の顔に懐中電灯の光を当てる。それはまぎれもなく岡上和典(背番号37)で
あったのだが。
「わっ、お前、その当て方やめろ、こえぇよ」
岡上は無邪気な笑いを浮かべ、懐中電灯の光を自分の顎の下から当てていたのだった。
ぬぼっと現れた岡上の顔はあまりに不気味だったので、松本も思わず吹き出して岡上に
注意した。
「すいません。でもよかった、松本さんなら安心だ」
肩をすくめるしぐさを見せて、岡上が堂の中に入ってきた。特に武器みたいなものも持って
いないようだった。とりあえずは、松本もその来訪者を歓迎した。
「ここまでこの暗い中歩いてきたんか?」
「そうですよ、めちゃくちゃ怖かったですよ」
「そりゃお疲れだったな。…ところでさ、お前、もらった武器なんだった?」
「ああ、ピストルだったんですけど使う勇気がなくて。別に使う必要もないと思ってるん
 ですけどね。松本さんは?」
「俺?俺のはあそこに置いてある。火炎瓶なんだけど、そんなもんもらってもなあ」
「そうですよね」
二人は苦笑した。苦笑しながら、松本の指差した先にあった火炎瓶を見た岡上の視線が
一瞬獲物を捕らえた獣のように鋭くなったのに、松本が気づくはずはなかった。
「松本さん、ここにずっといたんですか?」
「まあね。どうも人を殺すとかそういうのは…」
454chapter33―序章(3):01/11/27 21:38 ID:cHsqFl61

言葉を続けようとした松本が、ふとある可能性に気づいた。今生存している選手なら誰しも
その可能性があるわけだが―――岡上はそのようなことができる人間だろうか?
「どうしたんですか?」
変に言葉を区切った松本に、岡上が声をかけてきた。
「いや。…変なこと聞くようですまないが、お前これまでに誰かを殺したか?」
唐突な質問に岡上が目を丸くした。
「何言い出すんですか?んなことするわけないじゃないですか。松本さん、疑ってるんですか、俺を」
「そういうわけじゃないよ。すまん、気を悪くするようなことを言って」
「…いや、いいです。いきなりこんなことになってしまって、誰でも疑いたくなりますよ。松本さんは
 ―――そんなことしてないですよね」
「さっきのお前の台詞、そっくりそのまま返してやる。んなこたぁない」
そういって松本は笑った。他の選手に会うことに一番気が引けていたはずなのに、こうやって
実際会ってみると、嘘のように自分の中に安堵感が広がっていく。
「なんかお前が来たすぐで悪いんだけど、安心してすごい眠たくなってきた」
「あ、そうですか?なんなら交代で見張りしてお互い睡眠とっときません?俺もここまで
 歩いてきて相当疲れましたよ」
「そうだな、そうするか。今何時かわかるか?」
岡上が腕時計に懐中電灯を当てる。
「もう十一時ですね。いい加減寝たほうがいいかもしれないです。…松本さん、先に寝ます?」
「お、いいんか?」
「そのかわり六時を起床時間としたら…二時半に起きてもらいますよ。僕も寝たいですから」
「二時半か。わかった、お前きちんと起こせよ」
「わかってますって」
一通りのやり取りの後、松本は平舞台で支給された毛布をかぶると、余程疲れていたので
あろう、すぐに寝息を立ててしまった。岡上はじっと座っていた。視線の先には、松本の
武器である火炎瓶がある。何を思うこともなく、岡上はあるものをただじっと待っていた。
ちょうど一時間たった頃、岡上の待っていた“それ”はやってきた。
『みなさーん、こんばんはー。夜中にすまんのー。けどこれがわしの仕事じゃけぇ、
 きちんと聞くようにー』
455chapter33―序章(4):01/11/27 21:39 ID:cHsqFl61

夜中でも、相変らず達川の声は明るかった。やっときたか、と半ばうんざりした表情を
岡上は浮かべた。定時放送はあちらこちらに器材が仕組まれていたのか、どこにいても
かなりの大音量で響いていた。普通の目覚まし時計以上の騒がしさだろう。しかし―――
松本は相変らず寝息を立てていた。これならちょっとやそっとの騒ぎでは起きることはないはずだ。
今回の定時放送では鈴衛、矢野、酒井が死んだことを知らせ、殺し合いのペースをあげるよう
注意を促しただけであった。岡上は定時放送の間も全く変化を示さなかった松本を見届けると
すっと立ち上がり、自分と松本のデイパックを担いだ。そして、無造作に置いてある火炎瓶を
手にとった。
「二時半までじゃなくてもいいですよ。永久に寝ててください。その方が、松本さんも幸せだ」
岡上は火炎瓶の傍らで寝ていた松本にそう吐き残すように言い残すと堂を出た。ただし、
扉はあけたままで。
ある程度堂から離れて岡上は荷物を下ろした。そしてその場から堂の入り口めがけて
火炎瓶を投げた。火炎瓶は素晴らしい軌道を描いてその扉の中へ吸い込まれると、
そのままものすごい勢いで発火した。みるみるうちに霊火堂は火の手に包まれていった。
飛んでくる火の粉に注意もはらわず、岡上はその様子をただ見守っていた。
松本の質問に対する答えに嘘はなかった。あの時点では、俺はまだ殺してはいなかった。
ただ―――殺し損ねたのだ。あの小賢しいチビを。あいつはこれからもうまく動いていくだろう。
だが、そうはさせない。あいつの餌は極力減らしてやる。そのためには、全てを消し去る
しかない。そしてあいつを追い詰めて俺が殺るんだ。
燃え盛る霊火堂を見ながら、岡上は確認するように自分に言い聞かせた。
―――これは序章に過ぎない。東出輝裕を殺すための序章に。

【残り35人】
45664(ジプシー中) ◆CARP8KOI :01/11/27 21:43 ID:cHsqFl61
書き直してたらとりとめつかない駄文章になってしもうた。正直、スマソ。
移転で大変だったみたいで。お疲れさまでした。ageてくれた>>448に感謝。
元気丸見てたらバトロワの番外編も書きたくなったが、本編が進んでないのに
どうしようもない。鬱なんで毒男板でマターリしてこよ。
457 :01/11/27 21:45 ID:97lCkyHa
広島の派閥なんてどうでもいいよ
458 :01/11/27 22:16 ID:wEOwNePN
お、岡上コワーーーー
459 :01/11/27 22:20 ID:99YRZoZr
うーわーお鏡タンひでぇ!
焼き殺すなんて1番残虐だ・・・でもそんな所が(・∀・)イイ!
松本タン、最近ファソになってきたのにあっさり逝ってしまわれた。
ま、粗いさんいるからいっか(w
乙です!
460 :01/11/27 22:23 ID:Blb3zUQL
お‥‥お鏡たん恐し‥‥
(・ ε ・)vsお鏡たん。
ある意味洒落にならねぇ。
461 :01/11/27 22:24 ID:wcEgqlqb
お鏡タンすげー!!!
462_:01/11/28 12:32 ID:SN5RGgRi
age
463_:01/11/28 18:04 ID:T5m5/0V5
駄文なんてとんでもない。お鏡コワー。
なぜお鏡はそんなに(・ ε ・)に殺意を抱くの?
いつか対決するだろう2人が楽しみだ。
64さん、マターリしつつもがんがって下さい。
464 :01/11/28 20:15 ID:wkKLUBKa
こっちは荒らされないねぇ
ええことよ
465番外編―消えない記憶(1):01/11/28 22:10 ID:8Jtlqxio

新しい出会い。この年もその季節はやってきていた。テーブルの上にはそれなりの食事と、
書類の束。いつも目にしていた光景だった。ただこの年だけは―――前途ある若者の
未来を保証するはずのこの書類が、この年だけはただの紙切れ同然になってしまっていた
ことを、少なくとも私だけは知っていた。もちろん、知っていてもそのようなことを口走ることは
なかった。例年のようにここで自分に与えられた仕事は、目の前の少年と契約を結ぶこと、
ただそれだけだった。
「どうした?もっと食わんのか?」
そう言葉をかけられた少年は照れくさそうに「いただきます」と言うと、テーブルの上の
寿司に手をのばした。それを見る自分の笑みが、いつもと違った哀しみを帯びていることに
誰も気づくことはない。
「ところで」
穏やかな笑みを浮かべたまま再び話を切り出した。
「高校生といえども、順位でおわかりいただけるように、我々は大いなる期待をよせています。
 即戦力とまでは言いませんが、うちの東出や河内のようにルーキーイヤーでも一軍での
 活躍は可能だと思うとります」
その一言に驚いたのか、少年は寿司をのどに詰まらせ咳き込んだ。差し出されたお茶を
慌てて流し込む。
「落ち着いたか?」
「はい、すいません」
真っ赤な顔に苦笑いを浮かべて少年はぼそぼそと言葉を返した。―――この子は黒田や
矢野に似てるな。マウンド上の姿と普段の姿がまるきり違う。
466番外編―消えない記憶(1):01/11/28 22:11 ID:8Jtlqxio

「それでだ、球団側もそれを形に表したいということでな、君の背番号に『17』を用意したんだが、
 受け取ってくれるかな?」
「そんないい背番号、もったいないっす」
「そうかのう?長年この仕事に携わっているが、この背番号をつけるのに十分な力を
 お前さんは備えてる。わしが保証しちゃるわい」
その言葉に少年は頭をかいた。横で父親が「そこまで言われてるんだから」と促す。
「…17番が重荷にならないように、一生懸命頑張ります。よろしくお願いします」
「そうか、そうか」
その言葉で、まるで孫の晴れ姿を見る祖父のような表情をうかべてみせた。
この年、背番号17は中日からトレードで移籍してきた鶴田泰がつけていた。彼も背番号を
変更するような悪いシーズンではなかったはずだ。それをルーキーに渡してしまうのは、
もちろんこのルーキーに対する期待感の表れも含まれていたが、もっと簡単な理由が
ほかにあったのだ。
『10番台の背番号をあげるなら、一番ファンに不審がられない番号じゃないか、17は』
そう、別に17じゃなくてもよかったのだ。この年エースとよばれるようになった黒田博樹の
15でも、この少年があこがれていた佐々岡真司の18でも、突然ぽっと出で九勝を上げた
長谷川昌幸の19でも、どれでもよかったのだ。―――背番号を背負う選手たちが巻き
込まれる恐ろしいゲームの存在を、この時点で自分は既に知っていたのだから。
467番外編―消えない記憶(1):01/11/28 22:12 ID:8Jtlqxio

球団側が『17』という背番号を用意したのは紛れもない事実であった。それを告げられると
同時に、そのゲームのことを知らされたのである。
「なんですか、これは。悪い冗談でしょう?」
そう質問した時の阿南準郎(球団取締役)の顔を忘れることはない―――たぶん、死ぬまで。
口元に浮かんだ歪んだ笑みとは対照的な、鋭い眼光。
「…それはもう決定事項だ。二週間後、決行される」
「馬鹿を言わんでください!!」
両手で叩いたデスクが大きな音を響かせた。そしてそれ以上に大きかった、自然に出た
自分の叫び声。
「そこに選手を殺す理由があるんか?潰したけりゃ、チームだけ潰せばいい。それに
 今年入ってくるやつらはどうするんじゃ?」
「どうしようかのう。ドミニカにでも留学させるか」
笑いとともに出されたその一言に、感情がかき乱される。机の上の両手には拳が握られている。
「そう怒るな。それに関しては話はついとる。とりあえず君らがやることは、いつもと同じだ。
 今はそれを言う場面ではないが」
「しかし…」
言いかけた言葉が、あるものを目にしてとまった。すっとあげられた阿南の手元には銀色の
小型拳銃が握られており、その銃口はしっかりと自分に向けられている。
「とにかく、この計画に逆らったものは消えてもらう。―――なあに、球界再編の手助けが
 できるんだ。素晴らしいことだと思わにゃいかんだろう?」
この状況で言葉など発することが出来ようか。額を流れる汗の存在を感じながら、ただ
突っ立っているしかできなかった。しばらくその様子を伺った後で、阿南は拳銃をおろして
言葉を続けた。
「長年スカウトをやってきたあんたが辛いのはよくわかる。しかし、このゲームを実行
 するのはうちだけじゃない。それだけは頭に入れておいてほしい」
阿南の言葉が一瞬理解できずに震える声で聞き返した。
「うち以外にもこのゲームを実行してるのか?どこがだ?どのチームが?」
今度は「ふふ」と笑い声を立てて阿南はこたえた。
「一番こんなことをしそうにないチームだよ。あの人気選手ばかりのドル箱球団がねえ」
468番外編―消えない記憶(4):01/11/28 22:12 ID:8Jtlqxio

「…さん、備前さん?」
自分の名を呼ばれてはっと我に返った。
「どうしました?」
「いやいや、ちょっと考え事を。困りますなあ、年を取るとつい意識がとんでしまう」
場を取り繕うその一言で、皆いっせいに笑った。これから己の身に降りかかる出来事を
知ることもなく、この時は目の前の少年―――大竹寛(01年ドラフト1位)も笑っていたのだ。

あの頃のことは忘れたくても忘れられないだろう。私にも責任がないわけじゃない。こんな
ヤクザな世界に、私はたくさんの選手を連れてきてしまった。連れてこられなければ、
彼らはきっと幸せな人生を送っていたはずだ。消えることのない罪悪感が、私にその時の
記憶を忘れさせてくれないのだ―――。
46964 ◆CARP8KOI :01/11/28 22:17 ID:8Jtlqxio
考え事をしながらうぷしてたら番号そのままだった(;´д`)
わかるとは思いますが、>>466は(2)で>>467は(3)です。スマソ…。
結局番外編にはしってもうた。本編のことは聞かんでください(w
お鏡の評判がよくて(?、とりあえずは一安心か。

マターリ進んでることは本当にありがたいです。ええことよ、ええことよ。
470今更言っても遅いけど:01/11/28 22:52 ID:6EBX9YSv
ホント駄文だな
つまんねーよ勘弁してくれ
今度からは自分でスレ立ててやってくれよな
471 :01/11/28 23:03 ID:19KX+95d
でも、読んでんじゃん‥‥って
乗っちゃいけないんすよね。

巨人バトロワもちいとリンクしてるんすね。
あっちの情報もこっちの話に
入ってきたら楽しいかも。
472 :01/11/28 23:30 ID:6EBX9YSv
全部読んでるわけねーだろばか
473 :01/11/28 23:32 ID:6EBX9YSv
あげちまったじゃねーか(泣
474 :01/11/28 23:37 ID:19KX+95d
>473 カワ(・∀・)イイ!
475 :01/11/29 22:48 ID:ROGHjVq7
あげ
476_:01/11/30 23:14 ID:BJpGKiCz
age
477発情娘:01/12/01 01:54 ID:6BVWfTbc
最初にナイフ眉間に投げられて死ぬやつがいなかったけど……
原作じゃいないんですか?(映画しか観てない)
ちなみにそんなおっちょこちょいはカープで言えば誰だろう?
アウトカウント間違えたやつ?……主役じゃん(笑)

>作者の方、不謹慎ですが面白かったです。続き期待しています。
478 :01/12/01 02:03 ID:/VrGG/b/
うむ
479代打名無し:01/12/01 15:31 ID:95x5KIDs
>477
「藤吉文世」ですね。
私もなんで藤吉役がいなかったのか気になっていました。
480 :01/12/01 23:51 ID:HyrzKHSK
作者さんはどこに
481代打名無し:01/12/01 23:55 ID:G7idzn68
きっとどこかでじぷすぃ中
482chapter34―丑三つ時の探索(1):01/12/02 02:52 ID:XyUPNsx5

橙色にかすむ弥山の頂上を見て、佐々岡真司(背番号18)は何かが起こったことを確信した。
あんな場所に照明なんかないだろう。とすれば、火か?火災が起こったのか、火災を
起こしたのか。この状況ならきっと後者の確率が高いだろう。それにしても乾燥した冬の
空気だ、その明るさからも激しく燃えているだろう事が容易に想像できた。
ちょっとした不安が佐々岡の中に走った。―――まさか、あれで死んではいないよな。
佐々岡は慌てて首を振った。今はそんなことを考えるな。そう自分に言い聞かせると、
手にしていた小さな機械の、さらに小さな液晶スクリーンを見つめた。その中には“C”の
マークが一つ、ほのかな薄赤い光を発していた。
佐々岡が手に持つその機械が果たして武器かというと、そうは呼べなかったに違いない。
しかし、現在の状況、使いようによっては、銃よりもっと有効なものだっただろう。もっとも
彼が今やっていることが、正しい使い方なのかどうかはわからない。とにかく―――佐々岡は
もう一方の手に握った棒(これは支給された武器でなく、ただ拾ったものであった)を構え
なおすと、背中をつけていた民家の板壁から離れ、百八十センチを超える大柄な体を俊敏に
移動させると、斜め向かいのちょっとした店舗がついている家の壁にまた張りついた。
スクリーンを覗くと、Cのマークが中央にある相似形のマークに近づいていた。スクリーンの
表示方法についてもう一度説明書にかかれていたことを反芻し、佐々岡は首を振り向けた。
家だ。この―――中だ。
実際首を振り向けたすぐそこにある窓が割られていた。佐々岡はポケットに機械を押し込んだ。
機械が説明書通りのしろものなら、誰かがここにいる。マークが動かなかったのを見ると、
その誰かはじっとしているか、あるいは―――。
そっと窓のサッシを横へひいた。ありがたいことに音はしなかった。佐々岡は棒を持って
いない方の手を窓枠にかけ、猫のような動きですっとそこへ乗ると、中へ入った。
部屋には大きな機械があり、その横に奥に通じる通路があった。佐々岡は音を立てないように
その通路へ足を運んだが、その時ある匂いが、部屋を充満させている甘い匂いに混じって
いるのに気づいた。場の匂いとは明らかに違う、錆びた鉄に鼻を近づけた時のような匂いだ。
それで、佐々岡はやや急いで通路を進んだ。匂いが強くなったその時、わずかではあったが
ぴちゃっという音がした。何か液体がそこに落ちているのだ。
483chapter34―丑三つ時の探索(1):01/12/02 02:52 ID:XyUPNsx5

佐々岡はデイパックから懐中電灯を取り出すと、自分の足元を照らした。照らされたスパイクの
先に赤黒い液体が付着している。そのちょっと先、ほとんど乾きかけたその液体がこぼれた
中に見えたのは誰かの足、ふくらはぎの辺りまで。佐々岡は目を見開いた。思わずその足の
正体を確認しようと光を当てたその背番号で、この倒れている選手の正体が分かった。
「兵動…」
佐々岡は棒とデイパックを傍らに置き、ゆっくりその死体のそばに膝をつくと、震える手を
兵動の肩にのばした。一瞬逡巡した後、その死体を裏返した。血を吸い込んだユニフォームの
前面はもう赤黒く染まっていて、CARPの文字さえわからなかった。
死体は酷い有様だった。例の首輪(それが佐々岡をここに導いたのだけれど)の上、その喉が
ざくっと裂けていた。もはや血は流れ切ってしまったのか、傷口はただぽっかり穴のように
開いているだけで、一瞬、自分の子供が生まれたばかりの頃の、まだ歯の生えていない
口のようにも見えた。流血の跡はその傷口から下へ流れて銀色の首輪の表面を汚し、
それから真っ赤なユニフォームへと続いていた。それに、これは倒れた後の事なのだろうか、
血の池に漬かっていた口元と鼻の頭、それに左側の頬にもべっとり血がついていた。
どよんと虚空を見ている目の周り、睫毛の先にも細かな血玉ができて、それも既に固まっていた。
―――違った、か。
佐々岡はその死体の凄惨さに気圧されこそしたものの、ちょっと安堵してふうっと息をついた。
それから、安堵したことを申し訳なく思って、兵動の死体をそっと引き起こすと、血の池を
避けて、ちょうど兵動が倒れたところから上がった所にあるリビングに仰向けに横たえた。
すでに兵動の体は固くなっていて、なんだか人形を扱っているような具合だったが、とにかく
そうしてからそっと目を伏せさせた。ちょっと考えた末、兵動の両手を胸の前で合わせようと
したが、兵動の体が固いせいでうまくいかず、あきらめた。
棒とデイパックを再び取って立ち上がり、もうほんのしばらくだけその兵動の死体を見下ろした後、
佐々岡は踵を返すと、入ってきた窓のほうへ向かった。そこでさらにもう一つの戦いがあった
ことには、もちろん気づかずに。
丑三つ時は、もう、とうに過ぎていた。

【残り35人】
48464 ◆CARP8KOI :01/12/02 02:57 ID:XyUPNsx5
ちょっとこれに時間が取れなくてしばらくうぷできないでいました。
ジプシーもしてないですよ(w
次がまた長くなりそうなので、うぷまでに時間をあけるかもしれませんが
(続きとの兼ね合いもあるんで)できるだけ日をあけないようやってみます。

>藤吉役
そういえば書いてないっすね。あまり深い理由はないです。何となく書かなかったのか。
485 :01/12/03 00:11 ID:6Umq6fYX
つまらない
486代打名無し:01/12/03 07:31 ID:+yI6u/Wi
ササの探す相手‥‥アン‥‥?
487 :01/12/03 22:10 ID:NVoWMh6O
番外編もいいね。
488代打名無し:01/12/03 22:17 ID:w7XoU7dw
age
489 :01/12/04 00:38 ID:CM3nfSAl
もしかしてもう放置気味?
490 :01/12/04 01:24 ID:6XGJiGB/
佐々岡さんが探しているのはやっぱり鯉女房?
49164 ◆CARP8KOI :01/12/04 01:43 ID:LUm4gjwv
放置はしてませんが、色々とありまして…放置と受け止められても仕方がないですかね。すいません。
492代打名無し:01/12/04 02:27 ID:TB416Pqn
いつも楽しみにしております。
スローペースでも全然構いませんので頑張ってくださいね。
煽りの言葉キツイと思いますけど…(;´Д`)
493 :01/12/04 08:16 ID:Lt6Fvg+e
黒田の出番がたのしみ〜
494代打名無し:01/12/04 11:27 ID:oBTHy0FX
>>493
禿同。アサーリ殺すのも淋しい。
>64さん
そりゃあ毎日毎日うぷするのは厳しいでしょう。
放置だとは思ってないですよ、自分は。
楽しみだ、がんがってくれ、としか言えない読み手でスマソって感じっす。
495 :01/12/04 12:56 ID:WKK2Pe7Z
lヽ   チビには負けない
l 」 ∧_∧       
‖( ・鏡・)
⊂     つ     
 人  Y        
 し(_)        
496代打名無し:01/12/05 04:29 ID:6NeLlI09
lヽ   粗い待て〜      深度400なので一旦age
l 」 ∧_∧       ∧_∧             
‖(丶`_ゝ´)       ( ̄粗 ̄;)
⊂     つ     ⊂     つ    
 人  Y         人  Y      
 し(_)        し(_)        
497代打名無し:01/12/05 22:33 ID:l7mHISde
a
g
e
498 :01/12/05 22:42 ID:FE+UIn/d
兄貴モナーはキモカワイイ
499 :01/12/06 00:17 ID:V2ij8YVm
作者さんがんがって
500(・ ε ・):01/12/06 04:48 ID:a9/jQO2N
あげとくよ!!
501chapter35―鯉の滝登り(1):01/12/07 01:09 ID:Fso+CUJI

黒い空がその色にだんだんと明るさを帯びてきた。出発した時以来の夜明けを迎える
ところだ。木々の合間から空の様子が変わる様を木村拓也(背番号0)は見ていた。心の
中のもやを払拭することができず、一睡もできなかった。最大の心配事は、やはり自分の
家族の事だった。
かわいい嫁と、かわいい子供。ほしかった女の子も授かった直後の、このゲームだった。
家を出てくるときに子供が「バイバイ」と手を振っていた。それにつられて自分も手を振り
返した。まさか、それが“最期”のバイバイになるかもしれないなんて。由美子は今ごろ
心配してくれているのだろうか。自分はこんなに心配でいるのに、あいつが今頃、何事も
ないように眠ってたりしたら、腹は立つけど笑って許してあげるだろう。それくらい、自分は
由美子を、そして子供たちを愛している。そして、その愛する家族のもとへどうしても
帰りたかった。
だから、夕方に聞こえた高橋建と横山竜士の呼びかけには素直に出て行こうと、荷物を
まとめて腰を上げたのに、直後に聞こえてきた銃声と叫び声―――それがあっという間に
木村の希望を打ち砕いていた。木村はその場に腰を落とすと、どうしようもないといった
感じでゴロリと体を倒しそのまま寝ようとしたのだが、結局眠れずに今に至っていたのだった。
空は少しずつではあるが、だんだんと白んでいく。木村は体を起こしてデイパックを持つと、
木々の間を歩き始めた。辺り一面木で密集しているというわけではなく、木村のいた
場所には結構な数の岩が転がっていた。最初は不思議に思っていた木村だったが、
まだ明るかった時間にこの辺を歩いていて、その理由をすぐに見出していた。
木村の耳に、さあさあと水の落ちる音がする。木村はその音を頼りに進んでいき、やがて
木々の切れ目から滝が見えた。そう、木村のいた場所のすぐ近くに川があったのだ。
滝の周辺は川幅よりちょっと広くなっていて、池のようになっていた。顔でも洗おう、
とりあえず気分転換しよう。空を見るうちに何となく心にそう浮かんで、木村はここまで
歩いてきたのだった。
水が静かに打ち寄せる所まで寄ると、木村はその澄んだ水を両手ですくって何度も
顔を洗った。その冷たさが心地良くて、何度も何度も水をかけた。気がすんだのか、
ふうっと一つ息を吐くと、自分のバッグからタオルを取り出して顔を拭いた。そのタオルを
首からかけ、木村は立ち上がって滝を見上げた。「鯉の滝登り」という言葉が頭をかすめて、
ちょっとだけ苦笑いした。―――なんだか自分のことみたいだな。
502chapter35―鯉の滝登り(2):01/12/07 01:09 ID:Fso+CUJI

思えば長い長い下積み生活だった。この世界には期待されて入ってきたわけではない。
むしろふとした偶然から始まった。たまたま別の選手を見にきていた日本ハムのスカウトが、
同じグラウンドで練習していた自分の足と肩に注目して、ドラフト外で入団させてくれた。
二年程度で捕手はクビになったが、外野手としては守備固め程度には試合に出させて
もらっていたし、内野の練習も面白かった。突然の広島へのトレード。外様には厳しいと
聞いていて内心気の進まないトレードではあったが、九州出身の選手の多かったことが
幸いしてすぐに打ち込めることができた(もともと社交的だったけれど)。その練習に最初は
圧倒されたが、逆に刺激も受けた。スイッチヒッターの練習を始めたのも広島に来てからだ。
それがだんだんと様になってきて、ユーティリティープレイヤーとして一軍のベンチに
長く置いてもらえるようになった。さらにふとしたことで歯車がかみ合いだす。江藤さんの
FAによる内野のポジション争い。ふとしたきっかけで手に入れた開幕スタメン。結果を
出して、それ以来スタメンで使われるようになり、活躍した。今年は故障もあって成績は
ちょっと見劣りする感じになってしまったけれど、それでも下積みの時代には考えられない
ような成績をここ二年、残していた。ただ、だからといって油断するつもりはなかったけれど―――。
突然、ぱん、という乾いた音がして、右の下腹部に激しい痛みが走った。何が何だか
わからなくて、その痛みの走ったところに手を当てた。その手がなにかぬるっとした
湿りを感じて、木村は視線を落とした。「なんじゃこりゃあ!」と叫ぶ松田優作の気持ちを
一瞬にして理解したような気がした。ともかく、その視線にうつったのは右手をそめた真っ赤な
血液だったのだ。
それを見た途端、足のがくがくと震えて体を支えきれなくなった。両膝が打ち寄せる水に
落ち、ばしゃっと跳ねた。体も前のめりに倒れそうになって、慌てて左手でそれを阻止して、
無意識にそうしたのだが、右わき腹が上を向くよう背中を地面につけた。
すぐ近くから誰かの走り去る音がした。誰かが、木陰から自分を撃ったのだろうか―――
それしか考えられなかった。このゲームも試合と何ら変わらないのに。気をつけておかないと
自分の存在がなくなるかもしれないのに―――油断してしまったな。
血はとめどなく流れているらしく、押さえているユニフォームはしぼれば血があふれて
きそうなくらいぐちゃぐちゃになっている、そんな感じを手のひらで感じ取っていた。このまま
意識がなくなるのかとも思ったが、わき腹に走る痛みと苦しい呼吸が木村にそれを許さなかった。

【残り35人】
50364 ◆CARP8KOI :01/12/07 01:16 ID:Fso+CUJI
遅くなってすんません。年末は忙しいし、気は立つしでなかなか落ち着いてこれを
進めることもできなくなってしまってます。モナーさえ和みの対象になるなんて…。

>黒田
もうどうするかケテーイしてるんすけど、あれじゃ期待を裏切ることになるんかなあ。

>(・ ε ・)
500getのさいには↓をはってやるつもりだったのにとられた(w 幸楽萌え〜(スレ違いスマソ)

│今500座布団ゲットォォ!!

  ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄
     ,一---、
    |l ▲ ▲ヽ ≡≡
    (・-∪・-ρ≡≡≡   (´⌒(´⌒;;
   ≡ \Д ノ ≡≡≡≡≡≡≡(´⌒(´⌒;;
 ≡  /|Y/\  ≡≡(´⌒´;;≡(´⌒(´⌒;;
   │ |,/  \    (´⌒(´
  ≡ヾ======< ≡≡≡(´⌒(´⌒;;
  ┌(_____,\.≡≡≡(´⌒;;; (´⌒(´⌒;;≡
  └───────┘(´⌒(´⌒;;≡≡(´⌒(´⌒(´⌒;;≡≡
       ズザザザザーーーーーーーッ
504代打名無し:01/12/07 02:02 ID:r/3qY1BU
拓也がすぃんだー・・・奥さん・・・
あはれ。なむなむ

>503
マターリとやってください。保存あげはしときますんで〈w
そ、そして幸楽萌え〜〈w
505アキヒロより:01/12/07 12:38 ID:F4u7TwsZ
(・ ε ・)つ☆
64さんにおすそわけ。
カルシュームタプーリ、アキヒロ印の飴玉だYO!
イライラした時に食べてね。
僕は大きくなる為に食べてるんだけど…早く効果が出ないかなぁ。
ところでタクヤさんを殺ったのは誰?
かわいそうなタクヤさん…。
僕も死なないようがんがるからね!!
506280:01/12/07 20:52 ID:e946lY68
多忙で久し振りにまとめて読ませて頂きました

ところでキムタクまだ死んでないんじゃ?
残り○人の数字も減って無いし
しかし誰が撃ったんだろ?すぐに逃亡したトコ見ると
チビ・御鏡やアニキ辺りの積極派じゃ無さそうだしなあ

しかし遅レスですが○○○○の川田予想意外かなあ
映画版レンタルして観た直後だと結構しっくり来るんですが(w

まあ川田説が崩れた後は黒田と上宮コンビ組んで三村・飯島って
予想してましたがこれもkojihiroike登場で×
うーむこうなると黒田はおそらく少林寺拳法使いそうだなー
507 :01/12/07 23:53 ID:VOdR5qjC
 
508代打名無し:01/12/08 07:16 ID:P+loPOrh
age
509代打名無し:01/12/08 17:27 ID:Dx0tbsz9
age
510chapter36―木村拓也の最期(1):01/12/09 01:39 ID:7UJtOuLF

ほんのすぐ近くで聞こえた一発の銃声に新井と森笠は顔を見合わせた。新井は前田の
ショットガン、森笠は自分の武器であるスミスアンドウエスンを右手に持った。
移動してきた茂みの中で、三人は時間を決めて交互に睡眠をとっていた。二時間ごとに
新井、森笠が睡眠をとり、そして現在は前田が二人に背を向けて眠っている。一人が
寝ている間、残り二人は見張りをするという形をとっていた。その最中に聞こえた銃声だった。
ほんのちょっとの間があいて、誰かが慌てて走っているのだろう、ざっざっという急いだ
足音が二人のすぐ脇を通り過ぎていった。慌てて二人とも茂みの中に身を潜めたが、
その足音の主は気づくことなく通り過ぎたらしく、やがて聞こえなくなった。
「誰かが撃たれた?」
森笠が聞いてきた。聞かなくてもその可能性しか残されていなかったのだが。こんな
早朝から殺し合いである。気分のいい話ではない。
「だろうな」
そう吐き捨てるように答えたが、撃たれたのが誰だったのか、そいつは死んでしまったのか
まだ生きているのか非常に気になった。―――死にかけの困った人を見かけたら助けて
あげましょう!って精神かい?前田さんに言わせればそんなもの甘ったれた感情でしか
ないのだろうけど。ああ、野次馬根性丸出しとも言われるな。―――でも、それでも。
「俺、見てくるわ」
「バカ。前田さんがうろちょろするなって言ってただろ!あぶないよ」
「けど」
それだけ言って新井は音のした方向に顔を向け、やっぱり、と言いたげに顔をもどした。
「危ないって。今逃げたのが撃ったやつとは限らない。まだ犯人がいたらどうするんだ?」
森笠が再度新井に促した。新井は腰を下ろし、下を向いて黙り込んだ。森笠が、やれやれ、と
ため息をついて視線を外したその時―――新井は練習中にも見せないようなダッシュで
音のした方に駆け出していった。
「あっ、ばか」
森笠が気づいたときにはもう遅い。取り残された森笠は、どうしようといった表情を浮かべて、
新井の走っていった方向と寝ている前田の背中を二、三度交互に見やった。
511chapter36―木村拓也の最期(2):01/12/09 01:40 ID:7UJtOuLF

たぶん一分も走らなかっただろう。目の前が急に開け、池みたいな所に出た。水の音は
していたが、こんな所に滝が―――と滝に視線を移動させようとして、水辺に倒れている
選手がうつった。ショットガンを肩にかけ、倒れている選手のもとへ駆け寄った。
「拓也さん!」
倒れていたのは木村拓也(背番号0)だった。何も考えずに木村の体を抱きかかえた時、
新井の右手にぬるりとしたものが触った。水かと思ったが、水にしてはいやに温かい。
見ると、木村の右わき腹からあふれ出た血が新井の右手をも真っ赤に染めていた。流れ
出る血は、さらに打ち寄せる水と混じりあって、木村の周囲は文字通りの本当に血の池に
なっていた。
「…新井か?」
苦しそうに木村が言った。真っ青を通り越し白くさえ見える顔が木村の状態を表していた。
「喋ったらだめです。血が、血が…」
言葉にならなかった。死にそうになっている選手に遭遇したのは初めてである。さっきまで
何を考えていたのかもわからない。ただただ頭が真っ白になって、なんと声をかけていいかも
わからなかった。
「泣くな、ばか」
苦しいのは新井にも手にとるように分かるのに、それなのに木村は泣きそうになっている
新井の顔を見て笑った。顔の筋肉を動かすのさえきつそうなのに。言葉のかわりに涙が
出てきた。視線の先の木村の顔が歪んで見えた。
「新井!」
自分の名前を呼ばれて振り返ると、新井の斜め後ろの茂みから前田と森笠が顔をのぞかせて
いた。真っ赤になった新井の右手と、それに支えられて新井の膝の上で横たわる木村に
気づいたのだろう、前田が血相を変えて飛び出してきた。森笠も後をついてきた。
512chapter36―木村拓也の最期(3):01/12/09 01:41 ID:7UJtOuLF

「タク!タク!」
前田がめずらしく必死になって声をかけている。体を揺すろうとしたが出血の多さにためらって、
その手が止まった。
「前田、さん。森笠?これは、夢?」
「違いますよ!しっかりしてください」
―――はは、新井にしっかりしろなどと言われるなんて。そう木村は思って笑みを作ろうと
したのだが、もう笑うのも無理だった。口元が、途切れ途切れに喋る程度にしか動かなかった。
「前田、さん」
どうにか視線を前田に移した。前田は何も言えず、はりつめた表情で木村を見つめる。
「来年、優勝、しましょ…俺、前田、さんの、話聞い、た時、から、夢、でした」
げほっ、げほっと木村が咳き込んだ。もう呼吸さえままならないようだった。前田は傷口を
おさえることも出来ずただだらりと下がっている木村の右手を握ると、ようやく一言だけ言った。
「わかっとう、わかっとるけえ、喋るな」
「も…りかさ」
「はい」
自分の名前が呼ばれると思っていなかったのか、慌てて森笠が返事をした。
「その、41ば…ん、大切に、してくれ、よ。長い、間、俺の―――相棒だ、ったん、だから」
「はい、はい」
感極まって森笠も涙が目に浮かんだ。森笠が来る前の年まで、41番は木村の背番号だった。
下積み時代をともに過ごしてきた背番号を、有名になった0番の選手はずっと気にかけて
いたのである。
513chapter36―木村拓也の最期(4):01/12/09 01:42 ID:7UJtOuLF

「新井」
もう一度視線を新井に戻した。焦点は、ほとんど合っていないように見えた。
「フライ、くらい、ちゃん、と、取れ」
とても笑える状況ではなかった。けれど、新井は笑みを作って、左手で涙を拭いて、
精一杯の返事を返した。
「はい」
「おし。お前、なら―――できる」
声にならない声でそう言った木村の目の焦点は、もう完全にあっていなかった。それどころか、
まぶたをあげる力さえなくなってきていた。新井の顔を通り過ぎて、どこかはるか遠くを
眺めているようだった。もしかしたら、幻影を見ていたのかもしれなかった。愛する妻と、
愛する二人の子供の。十年間宮崎から見守ってくれていた両親の。一緒に野球をやった
たくさんの仲間の。自分のユニフォームを着た、たくさんのファンの。急激に遠のく意識の
中で、木村にはそれら全員が見えているのかもしれなかった。まぶたが完全に木村の目を
覆い、しかし、喋るのさえ精一杯だった木村の口元がふいに緩んだ。
「由美…」
愛する妻の名を最後まで呼ぶことはできなかった。前田の握っていた木村の手の指が、
最後の力を失った。
「タク!」
「拓也さん!」
「拓也さん!」
三人が叫んだのはほぼ同時だった。それに木村が答えることは、二度となかった。とても
―――穏やかな表情を浮かべていた。
前田はきっと唇を噛むと、木村の手を握る自分の手に、より一層の力をこめた。

【残り34人】
514chapter37―心変わり(1):01/12/09 01:45 ID:7UJtOuLF

しばらく静かに―――午前六時の定時放送があった以外は―――時間が流れていた。
目の前の滝も変わらぬ様子で流れている。三人はさっきと同じ場所に座っていた。
木村拓也(背番号0)の遺体は前田の横に寝かせてあった。毛布がかぶせられ、本当に
ただ寝ているかのようだった。毛布の上には、真っ赤に染めた血を前田が池で洗い流した
木村のユニフォームと、―――これは前田が提案してそうしたのだが、森笠の着ていた
背番号41のユニフォームが重ねておいてあった。木村の足もとに小鳥が飛んできて、
ほんのわずか前の出来事などまるで知らないかのように、チチチと鳴いた。
木村のデイパックの中には、備品と拳銃(トカレフTT−30)、さらに私服や時計なんかも
入っていて、その奥のほうから家族四人で写っている写真が出てきた。生まれたばかりの
子供を抱いて写真におさまっている木村の笑顔を見ると、なんだかいたたまれない思いが
した。その写真は今、前田の手元にある。
「誰が殺ったのか、聞かなかったな」
前田がぽつりと言った。新井も森笠も足音だけは聞いていたが、その人物を確認する
ことはしなかった。
「いつの場合もそうだが、善人がいい目にあうかって言うとそうじゃない。むしろ逆が多いかも
 しれんな。こいつの武器はしっかりバッグに入っていただろう?たぶん―――わしの
 推測でしかないが、戦う気はなかったんだろう。チームメイトを信じようとした。高橋建や
 横山と同じタイプだな。この辺にいればあいつらが殺された事も知ってただろう。なのに
 それでも信じようとしてた、そのことは褒めてやりたい。わしには、今もそれができないんだから」
前田の言葉が心にしみこむ。新井も森笠も、ただ黙って聞くしかなかった。
515chapter37―心変わり(2):01/12/09 01:46 ID:7UJtOuLF

「近くにいたのに、そんなこいつを助けてやれなかった。本当に、いいやつだったのに」
「前田さん、やめましょう。そこまで自分を追い詰めなくても」
「目の前で森笠が殺されて、それを助けてやれなかったら、お前はそう思わないか、新井?
 あそこで嶋が殺された時、そうは思わんかったんか?」
「それは―――」
言葉は出なかった。きっと前田と同じ事を思うだろうし、実際嶋が死んだ時、何もできなかった
ことを後悔していたのだから。
「他人のためにこのゲームに乗るなんて決してしないと思っとったが、やめた」
表情一つ変えずにそう吐き捨てると、前田は立ち上がった。
「そろそろ皆動き始めるじゃろう。また身を隠すぞ」
その言葉と雰囲気に促されて、新井も森笠も素直に立ち上がった。前田は足元の木村を
見下ろして、言った。
「写真、お前の形見でもらっていくから」
そして新井と森笠の方を振り向いて、言った。
「タクを殺したやつが現れたら、俺が殺る。―――手出しは、するな」

【残り34人】
51664 ◆CARP8KOI :01/12/09 01:55 ID:7UJtOuLF
キムタクはまだ前うぷ時点では死んでなかったんすよ(>>506さんの仰せのとおり)。
今日の分と一気にうぷした方が絶対わかりやすかったんだろうけど、あまりの進み具合の
悪さに、そこまでする余裕はありませんでした。

>>506
>チビ・御鏡やアニキ辺りの積極派じゃ無さそうだしなあ
この一言にちょっと先の活路を見出しました。ありがたや、ありがたや。
拳法使い。さて、どうでしょう。

>アキヒロ

│今だ飴ゲットォォ!!

  ̄ ̄ ̄|/ ̄ ̄ ̄ ̄
     ,一---、
    |l ▲ ▲ヽ ≡≡
    (・-∪・-ρ≡≡≡   (´⌒(´⌒;;
   ≡ \Д ノ ≡≡≡≡≡≡≡(´⌒(´⌒;;
 ≡  /|Y/\  ≡≡(´⌒´;;≡(´⌒(´⌒;;
   │ |,/  \    (´⌒(´
  ≡ヾ======< ≡≡≡(´⌒(´⌒;;
  ┌(_____,\.≡≡≡(´⌒;;; (´⌒(´⌒;;≡
  └───────┘(´⌒(´⌒;;≡≡(´⌒(´⌒(´⌒;;≡≡
       ズザザザザーーーーーーーッ

というわけで、ありがたくいただきました。カルシウム足りてないっす(;´д`)
>>504さん、明日は笑点を是非(w
517Σ(・ ε ・;):01/12/09 02:13 ID:13a5ZN3b
へ、変な人が突っ込んできたぁぁぁ!!
518代打名無し:01/12/09 08:16 ID:/vJRvjll
あーもう、泣きそうですよ。
キムタクとの会話反則っすよー
えぐえぐ(泣き声)
涙で前が見えない。
519 :01/12/10 00:57 ID:fy32zVDR
ageyou
520サヨナラ、拓也:01/12/10 01:23 ID:ID31uPFs
うわあん。なんて切ないんだ。


けど新井に対しての突っ込みにはちょっとワラタよ。
521代打名無し:01/12/11 12:37 ID:/KBb3q71
あげ
522代打名無し:01/12/12 00:30 ID:tvKJDedj
age
523こっとん100%:01/12/12 00:47 ID:wvHslIn4
昔広島そごうで大野と瀬戸がサイン会やってたんだけど。
みんな大野のほうばかり並んで、瀬戸のほうは可哀相な
くらい人がいなかった。で、もち大野にサインもらった。
524代打名無し:01/12/12 20:18 ID:VymD5O3k
>>523
泣けた。あえて瀬戸のをもらって欲しかった。
525代打名無し:01/12/13 00:40 ID:sVXGpF/v
ホクロ除去したオレはひと味違うぜ by輝信
526代打名無し:01/12/13 00:55 ID:KA6FZSt8
いや、かわんねー
527代打名無し:01/12/13 02:03 ID:q9bxuLGM
>>523
普通こういう場合は一枚の色紙に二人のサインを入れるものでは。
好きに並ばせたらそりゃみんな大野の方に行くだろう(もちろん俺も…)
528代打名無し:01/12/13 08:12 ID:qC+AYAQ3
瀬戸さんの方にも行ってあげて!!
52964 ◆CARP8KOI :01/12/13 22:47 ID:Wb6XpYnC
次の38章を書き直しているんですが、今週に入ってまた調子が悪くなったため
実生活に支障ないようしばらく手直しを控えてます。
今日はまだちょっと無理ですが明日明後日にはうぷしますんで。ラララ…。

>>523
大野と瀬戸の組み合わせに疑問を感じる(w
530代打名無し:01/12/14 07:23 ID:WwofzgLL
64さんがんがれー
無理しないように!
531代打名無し:01/12/14 23:47 ID:QfGQxaeF
>>528
激しく同意!瀬戸さんマンセーマンセー
532代打名無し:01/12/15 00:45 ID:DnyMOOE4
下がりすぎ。
533chapter38―狂いかけの栗原(1):01/12/15 06:11 ID:FNT9yJfq

栗原健太(背番号50)は、わき目もふらず一目散に走っていた。目的地などなかったが、
とにかく今はその場から逃げ出したかった。とにかく、何としてもだ。
実はついさっきまで栗原はこのゲームを芝居か何かだと思っていた。デイパックの中に
入っていた拳銃も水鉄砲か何かだろうとしか思わなかったし(一見してデイパックに
しまいこんだままなのだが)、何度か聞こえてきた銃声も爆竹かクラッカーの類だろうと
思っていた。放送なんて達川さんが適当に選んだ名前を読んでるだけだろうと聞き流して
いたし、挙句、夕方くらいに聞こえた高橋建(背番号22)と横山竜士(背番号23)の呼びかけ
など、「雰囲気を盛り上げるためのエキストラ」程度にしか考えていなかったのだ。
とにかく、殺し合いなんてあるわけないじゃないか、と思っていたのである。
この島での始めての夜は山の中で過ごした。茂みの中で寝ていた栗原は誰かの移動する
足音で目を覚ました。ちょうど夜も明け始めた頃で、栗原は身を起こすと、ちょっとした
出来心からその足音をつけてみることにした。何かかくれんぼの鬼になってみんなを
探す時のようなわくわくする気分で。
たどり着いたのは小さな池のような場所だった。栗原は昼間水を汲みに一度ここを訪れて
いた。水辺にいる選手は顔を洗っている。洗い終えて顔をあげて、その選手が木村拓也
(背番号0)だということがわかった。あまり面と向かって離したことはないけれども、
木村にはどこかしら親しみやすい雰囲気があった。どこにでもいそうな近所のお兄さんと
いう雰囲気である。
栗原は木村に挨拶することにした。正直なところ、一人での行動に飽きはじめていた。
誰かと一緒にいれば、少なくとも今よりかは退屈しなくてすむだろう。しかし、このまま
真っ正直に出て行くのもなんだか面白くない気がした。栗原は顔は怖くても、根は
ひょうきんな人間だったのだ。それがここでは裏目に出てしまうのだが―――。
ふとデイパックに入っていた拳銃の存在を思い出した。これを構えながら出て行ったら
驚いてくれるかもしれない。デイパックの奥底に沈んでいた拳銃を取り出すと、栗原は
もう一度その拳銃を見直してみた。―――本物もこういう風にできているのかなあ。
刑事ドラマだと「手を挙げろ!」なんて言って、犯人に拳銃を構えてバーンと…。
534chapter38―狂いかけの栗原(1):01/12/15 06:11 ID:FNT9yJfq

引き金にかけた指を動かした瞬間、クラッカーを鳴らしたような「ぱん」という音と同時に
激しい衝撃が栗原を襲った。その時初めて、彼はこのゲームが冗談ではないことを
知ったのである。そして、いくら偶然とはいえ栗原は撃ってしまった。銃口の先、犯人に
見立てた木村を。
その木村がゆっくりと崩れ落ちていく様を栗原はただ茫然と見ていたが、はっと我に
返ると慌てて逃げ出した。まだ薄く煙が出ていた拳銃を右手に持ったまま。
逃げている間も脳裏には木村が崩れ落ちる姿がよみがえっていた。自分は何もしないで
そのまま逃げ出してきてしまった。もしかして、あのまま木村さんは死ぬのか?
そこまで考えて、ぞくっと冷たいものが栗原の背筋を走った。死ぬ?木村さんが?
死んだ?名前を呼ばれたみんなは?そして、これから、死ぬのか?俺は?死ぬのか?
そう意識しただけで、ただでさえ走っていて心拍数が増えている心臓がますます高鳴った。
ほとんど心不全を起こしそうなほどに。
死ぬのか?死ぬのか?耳鳴りのように、あるいは出来の悪いCDプレイヤー、盤面の
キズをそれが無視できずに何度も繰り返すときのように、その言葉が頭の奥に聞こえ
始めた。死ぬのか?
どこかで飼っているのか、鶏の鳴き声が聞こえてきた。あまりに場違いなその鳴き声が
故郷山形を思い出させて、ぼろっと栗原の目から涙がこぼれた。
どうしてこんなことになってしまったのだろう。無性に母親に会いたくなった。弟の泰志にも
会いたかった。泥だらけのユニフォーム姿で家まで帰り、シャワーを浴びて、母親の
経営する焼肉屋で腹いっぱい米沢牛を食べたかった(贅沢なと怒られるかもしれないけど、
たまの贅沢ぐらい見逃してほしいものだ)。腹いっぱいになったところで雪下ろしの手伝いも
せずに、居間のコタツに寝そべりながら本棚いっぱいの野球本(まあ、マンガもたくさん
含んでいるけど)をじっくり選んでゆっくりと見たかった。
535chapter38―狂いかけの栗原(1):01/12/15 06:11 ID:FNT9yJfq

「山形に…帰りたい…気が…狂いそうだ」
走りながらもそう呟いてしまったのが耳に聞こえた途端、栗原は本当に自分が狂いそうに
なっているような気がして、ぞっとした。吐き気が胸の奥から突き上げた。涙がますます
ひどくなった。
すぐ横でざっという音がして、驚くと同時に足が止まった。涙に濡れた目のまま、音の
したほうを見た。茂みの中から、ユニフォームの影がこちらを見ていた。背格好と背番号で
朝山東洋(背番号38)だとわかった。見られていたのだ!知らない間に!
恐怖に駆られて、栗原はほとんど何も考えないまま両手で銃を持ち上げ、引き金を引いた。
またも「ぱん」という音とともに、強い衝撃が走った。朝山の影は、その前にすっと茂みの
奥に消えていた。ざざざ、という音が続き、それもすぐに消えた。
栗原はしばらく銃を構えた姿のまま、がたがた震えていた。それからまたすぐに走り出した。
走りながら混乱した頭で考えた。朝山東洋は自分を殺そうとしていたのだ。間違いない。
そうでなかったら―――どうして茂みの中から自分を覗き見る必要があったというのか?
きっと朝山は銃を持っていなかったのだ。俺が銃を持っていることがわかって、慌てて
逃げたのだ。俺が気づかなかったら、そして急いで撃たなかったら―――朝山はナイフか
何かをざっくり俺の胸に突き刺していたに違いない。ナイフ!油断しちゃダメだ。誰かに
出くわしたら、容赦なく撃たなければ、自分がやられて!しまうのだ。―――やられる!
ああ―――こんなことはもうごめんだ。うちに帰りたい。焼肉。泥だらけのユニフォーム。
マンガ!雪下ろし。米沢牛。泰志。容赦なく。撃つ。撃つ!コタツ。焼肉。泥だらけの!
ユニフォーム!容赦なく。米沢牛。
栗原の目から涙がぼろぼろこぼれていた。しかしその右手にはしっかりと銃が握られていた。
容赦なく!木村さん。殺される!撃つ。おふくろ。泰志!撃つ!撃つ!野球狂の詩!
栗原は狂いかけていた。

【残り34人】
53664 ◆CARP8KOI :01/12/15 06:16 ID:FNT9yJfq
睡眠時間。続き。師走。年俸更改。容赦なく!忘年会。薬!初雪。不眠!
一睡もせず忘年会に参加しなければならないようです。睡眠薬(゚Д゚)ホシー。
53764 ◆CARP8KOI :01/12/15 06:17 ID:FNT9yJfq
また( )内の数字書き換え忘れた。睡眠薬多量服用で逝ってきます。
538代打名無し:01/12/15 06:17 ID:QuAwQd0a
本スレでやれよ地味球団。
539代打名無し:01/12/15 08:21 ID:oHrhBi2P
ウヒョー!栗原が、こんな大役を!
キムタクを殺った奴は栗原たんだったノカー。
栗原ってウヒョスレじゃ人気あるヨナー。
そういう点では(・∀・)イイ役かも。

64さん、なんかヤバ気なんですけど
無理せずのんびりと続けて下され。
540代打名無し:01/12/15 12:33 ID:MST90vds
俺の…(以下略
541代打名無し:01/12/15 16:25 ID:bFdq79Rt
ちょうど山形は雪だらけですわー。
栗原が撃ったとは思いもしませんでした。
64さんまったりがんがって。
542代打名無し:01/12/16 02:14 ID:SFWYoHCY
米沢牛……牛肉……狂牛病……狂いかけ、なーる。
543栗原抑え:01/12/17 08:25 ID:dqenjcqc
栗原タン・・・
544代打名無し:01/12/17 19:47 ID:KdLzkY9T
age
545代打名無し :01/12/19 00:00 ID:XFFNBer2
age
546代打名無し :01/12/19 00:02 ID:XFFNBer2
age
547代打名無し:01/12/19 03:08 ID:c0L7ZrFd
64さん、生活に支障無い程度にがんがってくださいね!
キムタクと、栗原の話に涙が・・・
548代打名無し:01/12/19 06:12 ID:ZlQdF2xA
気長にまってますあげ
549代打名無し:01/12/20 06:07 ID:mwxYnohU
気長にまってますあげ
550代打名無し:01/12/20 18:45 ID:p3gPBAvL
age

午前六時の定時放送で目を覚ました河内貴哉(背番号24)は広池浩司(背番号68)と
ともに朝食をとっていた。広池が民家からとってきたというマーマレードジャムが、支給
された味のないパンにアクセントを添えた。
「広池さん」という河内の声が聞こえ、広池は河内を見た。河内は立木に背を預け、
左手に持ったパンに視線を落としていた。
「俺、あの入り口の前で広池さんを待ってればよかったんですよね、考えてみたら。
そしたら、最初から一緒にいられた」
顔を上げて広池を見た。
「けど、俺、怖かったから…」
「そりゃそうだよ、遠藤と河野の死体が転がっていれば」
「河野さんも?―――俺、遠藤さんしか見てない」
「そうか。なら河野は新井以降の誰かが殺したんだな」
沈黙が二人を包んだ。正体の見えない誰かが仲間を殺しつづけている。その誰かは
一人かもしれないし、複数かもしれなかったが、その誰かのせいでこの島にいる選手は
だんだんと減ってきていた。
「ここに移動するまで、誰かを見たか?」
広池の質問に、河内は首を振った。
「そっか。下の公園の近くに神社があったろ」
「はい」
「あそこに誰かいた。しかも複数だ」
「―――そうなんですか?」
「うん。多分―――誰かを待っていたんだと思う。もっとも出てきたのは僕が最後
 だったんだけど。とにかく、僕には気づいていなかったみたいだ。複数だからたちまち
 敵になる人たちってわけじゃなかったんだろうけど、自分から仲間にしてほしいと
 出向く理由もなかったし、すぐにその場は離れたんだけど。それに―――
 そのほかにも二人、僕は見てる」

「本当ですか?」
「ああ。一人は、あまりがっしりしてない選手だった。ぼさっとしたくせ毛みたいな髪の毛
 だったから、たぶん鶴田さんだったと思う。僕がこの山の裾野のほうを動いてる時、
 茂みの向こうを移動していくのが見えた」
「声、かけなかったんですか?」
広池は肩をすくめた。
「ちょっと、ね。偏見かもしれないけど、こっちに来てまだ一年だし、それなら鶴田さんが
 僕らに情をかける理由もないだろ?」
ちょっと考えて、河内が頷いた。
「それと、あの前田さんを見た」
「前田さんかあ。こんな状況だからかもしれないけど、何となく怖いですよね」
「そうなんだよな、だから僕も声をかけるのは遠慮したんだけど」
広池はちょっと視線を空の方に上げた。すぐに河内の顔へ戻した。
「向こうも僕に気づいてたようだった。僕はちょうど公園に入ったところだったんだけど、
 前田さんが自分のすぐ先にいたんだ。ショットガンみたいなのを持ってた。僕は木の
 陰に隠れたんだけど―――前田さんはしばらく僕のほうを見てたはずだ。すぐどこかへ
 行っちゃったけど。攻撃してきたりはしなかった」
河内が「ふーん」と言った。
「しゃあ少なくとも、敵じゃないって事ですよね、前田さんは」
広池は首を振った。
「それはわからない。僕も銃を持ってることに気づいて、大事をとって攻撃するのは
 やめたのかもしれない。どっちにしても、僕はやめといた、前田さんを追いかけるのは」

「そうですか…」
河内は頷き、それから何か思いついたように顔を上げた。
「あの、俺、誰も見てないんですけど、建さんと横山さんが撃たれる前に、別の銃声が
 しませんでしたか?」
広池は頷いた。
「した」
「あれ、あのマシンガンとは別ですよね。あれも、建さんたちを狙ったんですかね?」
「いや、そうじゃないと思う。恐らく、高橋さんたちをやめさせるつもりだったんだ、あの銃声は。
 あんなことしてたら危ないことは分かり切ってるんだから。銃声に驚いて、高橋さんたちが
 隠れてくれないかと、撃った人は思ったんだと思う」
河内がちょっと興奮したように身を乗り出した。
「じゃあ、少なくともその人は敵じゃないって事ですね」
「そうだと思う。けど、合流する手だてがない。どの辺から撃ったか見当はつくけど―――
 だけど、もうその選手も動いてるよ。あのマシンガンの選手にも位置を知られたことになるから」
河内がいささか残念そうに体をひいた。
「まあ、そう残念そうにするな」
そう言うと、広池がデイパックを担いだ。
「何するんですか?」
「ゆっくり移動する。―――昨日、いいもんを見つけたんだ」

【残り34人】
55464 ◆CARP8KOI :01/12/21 00:26 ID:tUw9QrKH
続きが遅くなって申し訳ないです。実はここも前倒しでのうぷなんすけど…。

>>540>>543
ウヒョー、ここに来て貰えるとは思ってなかった!
迂闊な扱いをしたら怒られそうだけど(w
555403:01/12/21 10:57 ID:v34amz+y
おかえりなさい〜<64さん
556代打名無し:01/12/21 19:45 ID:+qXeFeKQ
age
557540@先発:01/12/21 21:59 ID:BFAF7Av4
来てますYO!
@抑えさんも来てたのにはワラタ。
忙しそうですが続きがんがってください。

アーンドどうぞごひいきに(w
558代打名無し:01/12/21 22:17 ID:quUIrIwK
あったなー栗原争奪(w
55964 ◆CARP8KOI :01/12/21 23:09 ID:Tenyzjw2
えー、こんな早い時間に来るのは珍しいんですが、ひとまず業務連絡?を。
39章までhttp://k-server.org/brm64/hcbr_chapter/index.htmにまとめました
登場人物コメント集も書き直しによって多少変更した選手がいます。
あと、2chのいろんな板にあるバトロワのリンクを作りました。
野球(巨人・中日)、アンチ球団、プロレス、競馬、モナー、就職、三国志・戦国時代、
少年漫画、エヴァンゲリオン、邦楽、葉鍵、ギャルゲー、Jr、宝塚・四季、創作文芸で
確認しましたが、もしそれ以外の板でバトロワスレがあったら教えてください。
とりあえずバトロワ形式のテキストがあるスレが対象です。ご協力よろしくです。

栗原争奪は結論にワロタなー。んでも、こういうのがあるから自分はウヒョスレが好きなんだが。
さて、続きがんがります。40・41が白紙(;´д`)。42からはまたちょっと蓄えがあるけど。
560代打名無し:01/12/22 14:54 ID:GTgxk93k
ageruzurayo
561代打名無し :01/12/22 17:52 ID:iO0Ge0aF
なんか金本にもろ洗脳されている新井のサポート役が前田ってのもなぁ…
新井と金本が撃ち合う姿なんて想像できん。
あとは黒田と野村がどうなるのか。コンビにしても面白いかも。
ってか金本に対抗できるのはこのコンビか新井組、佐々岡、緒方ぐらいだろう。
黒田には主役級の扱いを期待。ベテランもがんばれ!
562chapter40―上陸(1):01/12/24 00:57 ID:gMma38Vf
朝日を受けてきらきらと光る瀬戸内海を、一隻の船が呉から宮島にむかって進んでいた。
その船内には、船を操縦する男と、さらにもう一人、さも怒っているかの表情を浮かべている
初老の男が乗っていた。
「杉ノ浦でええんかのう」
操縦する男が、もう一人の男に聞いた。
「そっちにしてくれ。なるだけ、向こうの桟橋から見えんようにの」

その連絡を受けた時、初老の男は、まあ仕方ないことか、としか思わなかった。プロ野球界も
いまや不況の煽りをくっている。それへの対策を講じられるのは至極当然なことだと思ったが
―――そのやり方を聞いて愕然とした。まさか、選手同士を殺し合わせるなんて。しかも、
それを賭けの対象にしているなんて。
「誰にされますか?」
なんだかファミレスで「どちらになさいますか?」と聞かれる時と同じような口調に、受話器を
握る手が震えた。もちろん返事をしないとあやしまれると思い、適当に野村謙二郎の名前を
挙げた。
「ほうですか、さすがの人選ですねえ。あ、パソコン使われますかねー。とりあえず情報を
 逐一お伝えしますけど―――あ、使わない。それでしたら、野村に何かあったらまた
 連絡します。ほんで島の様子が気になるようでしたら、球団事務所に行って下さい。
 ええ、こっちから随時情報を送っとりますんで、はい。これも仕方ないんですよねー。
 あんなに視聴率取れないんじゃあ―――まあ、仕事は回すらしいですから、それは
 また連絡待っといてください。わしも仕事がなくなるか思うてびくびくしとりましたよ」
陽気な笑い声の後、一言二言世間話をして、電話を切った。―――この腐れ外道が!
思わず出てきた叫び声に、台所で夕飯の準備をしていた妻が驚いて振り返った。
「いや、なんでもない」
妻に声をかけると、ちょっと考えて、それからすぐにまた受話器を取った。長年親しく
している友人に電話をかけた。無理を言って船を出してもらったのだ。
「わしゃええけど、ニュースで異常潮流がどうこう言っとったじゃろう。宮島のフェリーも
 しばらく欠航らしいんじゃが―――小さい船じゃけえ、船が沈没する覚悟はしときんさいや」
友人はそう言うと豪快に笑った。一緒に笑いたかったが、気が動転していてとてもそれ
どころではなかった。電話を切るとすぐに必要そうな荷物をバッグに詰め込んだ。
563chapter40―上陸(2):01/12/24 00:58 ID:gMma38Vf
夕食を食べながら、妻に「明日古い友人と会うけえ、帰らん」とだけ言った。布団に
入っても眠ることは出来なかった。この間にも選手たちは殺し合いをしとるんじゃろうか。
―――そんなはずはないじゃないか!わしが手塩にかけて鍛えたあいつらが、そんな
バカなことをしとるはずがなかろうが。しかし―――自分の頭の中で、殺しあう選手の姿と、
それを打ち消す思いが一晩中かけ巡った。朝早く、まだ朝食も準備されていない時間に、
家を出た。途中、球団事務所に行き(まだ信号さえ点滅している時間帯なのに、そこには
数人の人間がいた。楽しそうに話すそいつらの顔を見るだけで虫唾が走った)、この
ゲームに関する資料を貰った。武器とか、首輪とか、禁止エリアとかぱっと見だけでは
理解不能な内容がそこには書かれてあった。さらにパソコンからプリントアウトした
選手名簿もありがたく頂戴した。名前の横に赤字で「死亡」と書かれている選手が
半分近くいて、その事実にはただ驚くしかなかった。もちろん、そのそぶりを見せることなく、
そこを出たのだけれど。再び車を走らせると、念には念を入れ呉まで遠回りをして、
そして船に乗った。

「そろそろ着くぞ」
気がつくと、すぐ目の前に宮島があった。進行方向にコンクリートの防波堤が見える。
それから二分ほど船を走らせただろうか、船はその防波堤に横付けされた。
「本当にすまんが、次に電話を入れたらまた迎えにきてもらえんか?」
「お安いご用じゃ。ま、ほどほどの時間に頼むで」
「おう」
男との会話が終わると、船はまた瀬戸内海を進みだした。それが見えなくなるまで眺め、
そして、島へと足を運んだ。
―――何があっても残りの選手は救ってやる。達川の阿呆に一泡ふかせてやるわい。
これから知る惨状を予想するはずもなく、大下剛史(99年ヘッドコーチ)は宮島に上陸した。

【残り34人】
56464 ◆CARP8KOI :01/12/24 01:02 ID:gMma38Vf
結局>>559から何も書けずにまた前倒しでうぷ…計画性のない自分にはあきれるしかない。
この調子だと今年は黒田でシメかなあ。次まで行きたいんだが…。

>>561
監督はもうコンビ組んでるんですけど…ラララ。

黒田は結構期待が大きいみたいなんすけど、たぶんそれを裏切ります。お先にスマソ。
565代打名無し:01/12/24 01:07 ID:6csY1wj/
ヤパーリ大下じいちゃんか(w
でもよ〜手塩にかけた某ちびっこがすすんで殺してるんすけどね・・・
566代打名無し@ス:01/12/24 01:38 ID:cS+Eu0LB
黒田・・・楽しみにしていたんだけど・・ラララ…。
でも待っています。(一体どんな死に方をするのか)
計画性のないのは自分も一緒だよ(鬱
まだ64さんの道のりは長いけど、がんがれ!
567代打名無し:01/12/24 02:12 ID:wfcStai6
宮島(厳島=生きつ島)は汚穢を許さぬ禁忌の島……
でも私はこっちの方が楽しいです、頑張ってくださいね!
568代打名無し:01/12/24 02:15 ID:EEUJNLs+
おぉ〜スゴイ!サスガやっぱりおもしろいっす。
これから鬼軍曹がどうからんでくのかな〜?
まさかちびに殺されたりとか・・・?(w
569代打名無し:01/12/24 21:40 ID:z5ETh5iV
age
570代打名無し:01/12/25 16:10 ID:8VM1CFT4
あげ
571オレ流:01/12/25 16:14 ID:ye/bghyT
572先輩、後輩 :01/12/26 21:40 ID:a7xWiCBK
黒田博樹(背番号15)は明るくなり始めた弥山登山道を登っていた。
温厚な彼には自分がチームメイトを殺すことなど考えられないことだったし、それに
チームメイトが自分を殺すなどということもないだろうと考えていた。しかし定時
放送によって既に屍となったチームメイトたちの名前が読み上げられるにつれて、彼
は自分の考えの甘さを知り、ただ一人の人物に対して以外は信用が持てなくなっていた。
「西山さん…俺は…どうしたらいいんでしょうか…」
彼がこの情況において唯一信頼を置いていた人物、高校の先輩西山秀二(背番号27)の名
前はまだ読み上げられてはいない。彼にとってはそれだけが希望であった。
「西山さんに会いさえすれば、どうにかなるはずだ。」
そうつぶやくと彼は自分の手に握られたショットガンを見つめ、その禍禍しい物体から目
をそむけた。一応弾は詰めてあったが、安全装置はかけたままにしてある。
彼にとっては、それは一刻も早く手放したいものであった。が、今はそれに頼らなければ
ならない。
「俺は…まだ死ぬわけにはいかない。」
彼は手にしたショットガンの安全装置を外し、再び登山道を登り始めた。
573代打名無し:01/12/26 21:42 ID:a7xWiCBK
>>572
西山の背番号は32だろうが!
クソ厨房は書くな!!!
57464 ◆CARP8KOI :01/12/26 23:11 ID:1gv2grF6
あいたたた…次がちょうど黒田だったのに間が悪いというか何というか…。
>>572さんには悪いけど無視させてもらっていいでしょうか?
昨日うぷしときゃよかったな。続きを考えて1日空きを置かないほうがよかった。
この先のこと(今日のうぷ分も含めて)を早食い見ながら考えます。
575代打名無し:01/12/27 11:46 ID:E/ijWx9V
>>64
別に無視しなくても良いんじゃないですか?漏れも黒田と西山の話は見たいと思ってたし
それにまだ黒田が何かしたってわけでもないんだし、64さんなら続き書けるでしょう。
しかしエース黒田には長生きして欲しいなあ…。
自分が書くなら
黒田が金本に襲われるが、何とか逃げ延びる→同時刻、佐々岡と西山が出会い、行動をともにする→
傷ついて気絶した黒田を佐々岡西山か緒方野村のベテラン組どちらかが救うが、そこに金本来襲→
ベテラン二人が命を賭けて黒田を逃がす(そのときもう一方のベテラン組を探すように言い残す)→
生き残った黒田は金本に復讐を誓い、残る一方のベテラン組を探し始める。
こんなストーリーにすると思う(少し安直すぎるか?)。
64さん、漏れの黒田に対する期待を裏切らないでくれェェェ―――――!!!
576代打名無し:01/12/27 11:49 ID:E/ijWx9V
黒田もいいけどハセガーにも期待。次代を担う重要な人物だから。
577代打名無し:01/12/27 11:51 ID:E/ijWx9V
玉木、鶴田には渋い役で出てもらいたい。
玉木菊地原の中継ぎコンビもありか??
578代打名無し:01/12/27 13:15 ID:cAOquHY1
64さんのストーリでいいと思うがね。
変に意見出してたら収拾つかなくなるよ?
579代打名無し:01/12/27 13:54 ID:G3aOLKjO
>>578
64さんのストーリーってどんなの?
58064 ◆CARP8KOI :01/12/27 14:28 ID:Lzo1uFwF
昨日は全然気づかなかったけど>>572-573って同一IDかよ。そんでもって>>575-577
一人で、この2つがやけに文章仕様が似ている、と。
>>561も似てるけど同じ?黒田を主役に、はせがーを準主役で書けとかいうスレが昔
できたことがあるけど、あの時と同じ人物?何が何だかだんだんわけがわからなくなってきた。
一つだけいうなら、
>それにまだ黒田が何かしたってわけでもないんだし、64さんなら続き書けるでしょう。
続きをかけないくらい自分のものとはかけ離れてるから扱いに困ってる。番外編みたいな
その場限りのものだったらどうにでもなるかもしれない(実際試合を見た直後のひらめき
だけで書いた勢いだけの番外編もあった)けど、これは原作との登場人物を全部当てはめて
その上で書き出した話なのでおいそれと変えるとその後出てくる人物の設定や物語に
相当な影響が出てくる。意見は意見として参考にしたいけど、全てに考慮してたら準備
してたものの意味がなくなってしまう。>>578さんのいうように収拾つかなくなる。そこらへんは
考えてほしい。先のことを考えて(毎日続きが書けるわけじゃないから)書いた話を出し惜しみ
してる自分にも非があるのは認めますが。

こういう時間帯に何やってるんだろうね、自分は。
581578:01/12/27 14:32 ID:cAOquHY1
自分も579にレスしようとして
「あ、あげてるし、その前も同じIDじゃん」って気がついて
やめました。
64さん、きらーくにやってくださいませね。

ってじぶんもこんな時間からさ〜・・・
582代打名無し?:01/12/27 14:35 ID:G3aOLKjO
ということは572〜573は自作自演劇場で575〜577は同一人物か。64さん、無視すればいいのに。
583代打名無し:01/12/27 14:38 ID:G3aOLKjO
なんかよく同じID出るなァ
584代打名無し:01/12/27 14:40 ID:G3aOLKjO
あ、579・582・583は同一人物です。あしからず。
585代打名無し:01/12/27 14:48 ID:G3aOLKjO
あげ
586代打名無し:01/12/27 14:49 ID:G3aOLKjO
5連レス逝きまーす
587代打名無し:01/12/27 15:29 ID:HKzMt9FZ
913 名前:代打名無し 投稿日:01/12/27 14:13 ID:G3aOLKjO
>>607
実績から言えばそうだけど黒田は年々成長してきてるからありうるんじゃない?
527のようなことは無いと思うけど15勝、最多勝はいけるんじゃないの?
ああ黒田欲しいなァ…近鉄に。
遅レスでスマソ

G3aOLKjO=E/ijWx9V (・∀・) ジサクジエーン! ヘタクソ!
588chapter41(1):01/12/28 04:30 ID:s9+Bv2wn

黒田博樹(背番号15)は、木の幹の陰からそっと頭を出した。山の中腹近く、山頂からは
東よりの辺りにいるはずだ。周囲は低木、高木が入り混じった雑木林だったが、今黒田が
顔を向けている頂上へ向けて、徐々に木の背は低くなっているようだった。
黒田は支給の武器のアイスピックを持ち直すと、低い姿勢から一度、後方を振り返った。
木々に覆われて、最初隠れていた民家のある商店街はもう見えなかった。どれくらい
進んだのだろう?プロと呼ばれるスポーツ選手なのだから、そういう距離には言わば
身体感覚みたいなものができあがっていたのだが、山肌の起伏と昨日からの緊張感で
その感覚自体にもいささかの狂いが生じてきていた。
支給されたまずいパンと水で食事を済ませ、黒田が意を決してそこを出たのは、腕時計が
午前八時をさす直前だった。ゲーム開始以来、何度も銃声らしきものは聞こえていた。
黒田はずっと民家の隅に身を潜めていたのだけれど、結局、隠れていても事態は
好転しないと判断したのだ。誰か―――少なくとも自分の信用できる選手を探し出し、
一緒に行動しようと思っていた。もちろん、自分にとって信用できそうな選手が、自分を
やはり信用してくれるとは限らないのだが。
しかし、自分が会いたいと思っていた選手の名前は、何人かではあったが、達川が
読み上げていた。今年一緒に二ケタ勝利を挙げた高橋建。オフのゴルフの時なんかは
よく同じ組で回っていた(というか、回らされていた)横山竜士。同期入団の河野昌人
(黒田の年のドラフトは四人しか指名されなかった。今年福良が解雇されて三人に
なってしまったけれど)。
でも、まだ生き残っている選手は多い。誰か探さなければ。左手のアイスピック(しかし、
こんなものが役に立つのだろうか?)をぎゅっと握りしめると、ポケットに入れておいた
小石を右手でつかみ出し、前方左右の茂みに向かって投げた。がさっ、がさっと石が
茂みの中に落ちた。
589chapter41(2):01/12/28 04:30 ID:s9+Bv2wn

しばらく待った。反応はない。黒田は茂みの間に開いた上り斜面に向けて足を踏み出し
かけた。その時、黒田の前面の茂みから何かがひゅっと飛んできて、ちょうど黒田の横に
生えてきた木の、顔の高さのあたりに刺さった。―――攻撃だ!黒田は矢の飛んできた
方向に目を向けた。そういうこともあるだろうと予想したはずの事態だったのに、やはり
体のどこかが震えていた。
黒田の視線が止まった。自分に右手に弓のついたライフルのようなものを向けている
選手は、福地寿樹(背番号44)だった。ちくしょう、なんでよりにもよってこんな好戦的な
やつに―――。
黒田は思ったが、問題はとにかく、自分が全身を福地にさらしていることだった。とにかく
それは危険だった。くるっと踵を返すと、もと来た方向にだっと走り出した。
「待て!」
背後から福地の声がした。ざざっと茂みをかきわけ、追ってくる音がした。
「待てと言ってるだろ!」今度は大声だった。
―――あほ、大声出すなよ。
黒田は数瞬のうちに逡巡し、しかし結局、足を止めた。振り返った。福地が銃か何かを
持っていて撃つつもりなら既に撃っているはずだし、何より、その大声はまずいと思った
からだ。福地だけでなく自分も見つかってしまう。それで、辺りに素早く目を配ったが、
先ほど自分が確かめた通り、どうやらほかに誰かいる気配はなかった。速度を緩めながら、
福地が緩やかな斜面を下ってきた。手に持っている武器は今は黒田に向けられて
いなかったが、もし再び向けられた時、あれを躱して再度逃走できるだろうか?立ち
どまったのは間違いだったのか?
590chapter41―黒田vs福地(3):01/12/28 04:31 ID:s9+Bv2wn

―――いや。心の中、黒田は思った。福地は足のスペシャリストだ。いくら黒田が普通の
人間より運動能力に秀でているといっても、いずれ追いつかれたことだろう。どちらにしても、
もう遅かった。
福地が黒田と四、五メートルの距離を隔てて止まった。顔に浮かぶあいまいな笑みを
見ながら黒田は考えた。―――いったいこいつは、どういうつもりなんだろう?矢を
はなってきたという事は、仲間として見るのはちょっと無理があるかもしれない。黒田は
慎重に口を開いた。とにかく、早々にこいつの前から姿を消したほうがいい。それが基本ラインだ。
「大声出すなよ」
「悪かったな」福地が答えた。「けど、お前が逃げるからだ」
「悪いが」と黒田は即座に言葉を返した。常に簡潔、単刀直入。俺のモットーだ。
「お前と一緒には、いたくないな。俺はこのゲームの、平和的解決をのぞんでるからな」
黒田は言って、もう一度踵を返しかけた。ちょっとその足が震える感じで、おぼつかないのが
わかった。しかし、止めた。視線の端、福地が右手に持ったものを黒田に向けるのが見えたので。
それで、黒田はゆっくり、もう一度福地に相対した。福地の右手のボウガンに、引き金に
かけられたその指に注意しながら。
「なんの真似だ?」
「こんなことしたくねえよ」
福地が言った。まさに、その口調は黒田が大嫌いなそれだった。なんだ、こんな状況で
言い訳か?自分のやったことをよく顧みとるんか?
591chapter41―黒田vs福地(4):01/12/28 04:31 ID:s9+Bv2wn

「俺と一緒に組まんか?」
「ふざけんな。そんなもん突きつけられて、一緒に組めるか。とにかく、それを下げろ」
「逃げないんだな」
「聞こえんのか?」
黒田が強い口調で言うと、福地は不承不承それを下げた。
「そう怒るなよ。一緒に行動しよう」
黒田は肩をすくめた。怒りのせいで、ぎこちなさを感じなかった。
「さっき言っただろ、ごめんやって。じゃあな」
黒田はそう言い捨てると、福地の方を見ながらあとずさりしかけた。即座に、福地が手に
したボウガンを持ち上げた。その顔が歪んでいる。自分の思い通りにならない歯がゆさに。
「いい加減にしろ」
「じゃあ―――ここにいろ」
福地が吐き捨てるように言った。同時に首を傾けたその仕草は、幾分神経の高ぶりを
抑えるような感じに見えた。
「俺は嫌だと言ってる」
福地はボウガンを下げなかった。しばらく二人でにらみあって、焦れた挙句、黒田が言った。
「お前、何考えとる?はっきり言えや。俺をすぐ殺すわけでもない、俺が一緒に
 いたくないと言ってるのに一緒にいろと言う。どういうことや?」
「俺が―――」福地は、そのどこかねばついた視線を黒田の方に据えたまま言った。
「お前を守ってやろうって言ってんだよ、エース様。二人でいた方が、安全だろ?」
592chapter41―黒田vs福地(5):01/12/28 04:32 ID:s9+Bv2wn

「冗談じゃねえ」
黒田の声に今度は怒りが混じった。
「そんなもん突きつけといて、守ってやるも糞もあるか、ドアホ。俺はお前を信用できん。
 わかったか?もういいだろ?じゃあ、行くからな」
福地が「動くと撃つぞ」と鋭く言った。手にしたボウガンが、まっすぐ黒田の胸の辺りを
狙っていた。そうして言葉に出して黒田を脅したことで、福地をともかくも常識のラインに
(それにしても酷い常識だが)とどめていた最後のタガが外れたのかもしれない。福地は
その姿勢のまま、「たかだか今年いい成績残しただけで図に乗るなよ」と言った。
「投手なんて野手に助けられてなんぼのもんだろ」
そこまででもう、黒田は完全に頭にきていた。しかし、福地はさらに言ったのだ。
「夏にへたれててエース扱いされるとはご立派な身分だな」
福地が何を考えているのかはわからない。もうまともな思考力を失っているとさえ思えた。
しかし、だからといって自分がここまで言われる筋合いは毛頭なかった。お前だって
永遠の代走屋のくせして何をほざいている?噴火寸前の怒りは唇の歪みとなって表れた。
前々から黒田自身気づいていたが、最高に頭にきたとき、自分はいつもにやっと笑って
しまうのだ。その笑みを福地に向けて、言った。
「―――だから何なんだ?好きでそういう扱いを受けてるわけでもないんだけどな。
 こんな時に変なことで僻むなよ」
一瞬福地の右眉があがり、そして黒田と同じようにちょっと歪んだ微笑を浮かべた。
「こんな所で僻んでどうする?どうせ俺たちこの島で死ぬんだぜ。けど、のたれ死ぬ
 くらいなら協力して少しでも長く生き延びたほうがお得だといってるんだ。
 そのエースとかいうくだらないプライドを捨ててな」
593chapter41―黒田vs福地(6):01/12/28 04:32 ID:s9+Bv2wn

―――お前の言う“くだらないプライド”にこだわってるのはどっちだ?少しでも長く生き
延びたいのにそうやって人の気持ちを逆なでするように武器をむけるか。おめでてーな。
結局自分がかわいいだけだろう?
ついに、黒田の口から低い笑いが漏れた。
「いいか、これが最後だ。俺はお前と一緒になんかいたくない。素直にそれを下げて、
 俺をほっとけ。じゃねーと俺は、お前がただ俺を殺したがってるだけだとみなす。
 なんなら相手してやる。長く生き延びたいんだろ?死ぬかもしれんぞ」
それでも福地はボウガンを下げなかった。それどころか、肩の高さにまでそれを上げ、
黒田を威嚇してみせた。
「こっちこそ最後だ。俺の言う事を聞け」
このままでいけば話は平行線をたどるだろう。もはや、どうなろうと自分には責任が持てない。
そこで黒田は、いずれにしてもこのクソみたいな男とのやりとりをさっさと終わらせるために、
一歩を進めた。福地はちょっとびびったように身を固めたが、すぐに叫んだ。
「無駄なことはするなよ。俺は今すぐにでも、お前を殺す事だって出来るんだからな!」
黒田は胸がむかむかしていた。ついさっき、福地が「殺したりしないって」と猫なで声で
言ったばかりだという事を思い出したのだ。
福地がちょっと間を置き、それから、幾分自慢気ですらある口調で続けた。
「俺はもう、河野を殺したんだぜ」
594chapter41―黒田vs福地(7):01/12/28 04:32 ID:s9+Bv2wn

黒田はちょっとどきっとしたが、眉を持ち上げ、「へえ」と言った。それが本当だとしても
―――こんな山の中で隠れていた以上、偶然出くわした河野を殺してしまったというのが
正直なところだろう。そしてそのあと、誰か自分より強い選手がやってくるのを恐れて、
この山に逃げ込んだに違いない。だがこいつのこと、逃げ回って生き延びた挙句、もし最後に
残った相手が自分より弱い相手だったら、“仕方ないじゃないか”とか何とか言いながら、
平気で殺してのけるかもしれない。
「考えたんだけどな」
福地が続け、その黒田の推論を自ら裏書きした。
「試合だと思うことにしたんだ、俺は、これを。だから、俺は遠慮しない」
黒田は相変らず、静かに福地の顔を見据えていた。かすかに笑みをたたえて。しかし、
嫌悪感と怒りで背筋がむずむずしていた。
「試合か」福地の言葉を繰り返し、そして黒田はにやっと唇を歪めた。
「けど試合なら、チームの戦力はどうあれ、同じモン持って戦うだろうが。道具だけで
 優位にたって戦うなんて、恥ずかしくないんか?」
それで一瞬、福地がうちのめされたような表情を見せたが、すぐにこわばった感じに戻った。
冷たい目が光っていた。
「死にたいのかよ」
黒田が即答した。
「撃ってみろよ」
一瞬だけ、福地が躊躇した。その隙を逃さず、黒田はポケットからそっとつかみ出しておいた
小石をその顔に向かって投げつけた。福地が顔を覆ってそれを防ぐ間に、くるっと体を
回転させ、デイパックは捨てアイスピックだけを握ったまま、もと来た方へと駆け出していた。

【残り34人】
59564 ◆CARP8KOI :01/12/28 04:46 ID:s9+Bv2wn
ラワーン、下手糞な(・∀・)ジサクジエン!にひっかかってしまった。冬休みだねえ。
というわけで、a7xWiCBK、E/ijWx9Vは放置と。>>578さんご迷惑おかけしました。
大下爺さんは色々事態をひっかきまわしてくれる予定です。達川ともヒトモメして
もらいたいし。正月の暇を利用してマターリ考えていきます。

年末のうぷの予定は29〜31は確実。28は忘年会の付き合い次第で(w
明日の夜は仕事納めの出来上がったリーマンが街中にあふれてそうだ。
きりのいい終わり方をするのならば明日もうぷしたほうがいいんでがんがってみます。
596代打名無し:01/12/28 05:43 ID:xW3XiUpk
乙カレーです>64さん
おおー、いっぱいうぷされてるよー!
黒田はこの役なのね。ということは (・ ε ・)と...?
続きが気になりますな。年末も退屈しないですみそうです。
冬厨は放置でマターリ行きましょう。64さんがんがって下さい。
597代打名無し:01/12/28 09:14 ID:GbBJq8cf
黒田=千草?でいいんですよね?
カコイイなぁ、黒田。
夏にへたれたエースやら、永遠の代走屋やら
なんか厳しおもろしです。
598代打名無し:01/12/28 09:37 ID:JHTtcf3J
>64
おっつ〜!!
黒田が千草だったとは。
となると、もう一人のエースがでてきますな。
千草の最後は、ウルウルだから凄い楽しみ!!!
599代打名無し:01/12/29 01:18 ID:L7vOmfaX
つーことは佐々岡が探しているもう一人、琴吹?は誰なんでしょ?
一応、予想はしてますが書いちゃうと興ざめなので。
600代打名無し:01/12/29 02:16 ID:bwN6Gyu1
>>599
琴吹じゃなくて琴弾(ことひき)ですよ。
そろそろこの名前が出てきてもおかしくないはず。名前だけですけど。
601chapter42―続・黒田vs福地(1):01/12/29 02:50 ID:siFg/ZZO

背後で福地が舌打ちするのが聞こえたような気がした。いつも練習でやっているスタート
ダッシュで十五メートルたっぷりは離れたと思ったとき、右脚に衝撃が跳ね、黒田は
前のめりに倒れていた。頬が湿った土から顔を出した木の根にこすられ切れるのが
分かった。続いて襲ってきた脚の痛みよりも、黒田はその、顔に傷がついたという感覚に
激怒した。毎週きまって人前で投げる、このローテーションピッチャーの俺の顔に傷を
つけやがった、あのクソ野郎!
黒田は体をぐっとひねって土の上に座り込んだ。右脚太腿の後ろ側に、ユニフォームごしに
銀色の矢が付き刺さっていた。傷の下側、よく発達した筋肉の上を血が伝い降りていくのが
わかった。
福地が追いついてきた。黒田が座り込んでいるのを見てとって、ボウガンをがちゃっと
地面に落とすと、代わりにベルトから短い鎖で結ばれた二本の木の棒のようなもの―――
ヌンチャクを抜き出し、右手に構えた。その鎖がちゃらっと揺れた。
黒田は地面に落ちたボウガンをちらっと見て思った。お前、後悔するで、それを捨てたことをな。
「お前が悪いんだ」やや息を弾ませた福地が口を開いた。「俺を怒らせるからだ」
黒田は地面に座り込んだ姿勢のまま、福地を睨み上げた。この男、まだ言い訳を探している。
全く、よくもまあこんな男と長い間、一緒に野球をやっていたもんだ。
「ちょっと待てや」
黒田はいい、福地が眉根をひそめる間に膝立ちに立ち上がると、背中側に右手を回し、
歯を食いしばって一気に矢を抜いた。肉が裂ける感覚が伝わり、それでまた、どっと
血が流れ出すのがわかった。矢を放り出すと、福地を睨みつけながら立ち上がった。
大丈夫。痛みはひどいが、立つのに障害はない。アイスピックを右手に移した。
602chapter42―続・黒田vs福地(2):01/12/29 02:50 ID:siFg/ZZO

「やめとけよ」福地が言った。「無駄だ」
黒田はアイスピックを水平に倒して福地の胸を指した。予告ホームランでもやってる
みたいだな、ホームランなんて全く縁がなかったけどな、と全く関係ないことを思って、
言葉を発した。
「試合って言ったな。―――相手になってやる。てめえみたいなやつには絶対負けんわ。
 俺の全存在をかけて、お前を否定してやる。わかったか?理解したか?走るしか
 能のないやつにはわからないか?」
福地が顔を歪め、ヌンチャクを顔の高さに上げた。黒田もアイスピックを握りしめた。
福地との間に、ぎりっと緊張が張り詰めた。体つきはそんなにかわらない。福地には
俊敏さは負けるだろうが、タフさなら負けない(そりゃそうだ、俺は全球団見てもナンバー
ワンの完投能力の持ち主なのだから)。しかし、かなりの深手をおった右脚の傷が気に
なった。―――まあいい、こいつには負けない。絶対にだ。
いきなり、福地の方が動いた。前へ出ながら、ヌンチャクを斜め上から振り下ろしてきた!
黒田はそれを左手で受けた。二の腕にじいんと痺れが走って、脳の中心まで一気に
突き抜けた。その痺れを感じながらも、右手のアイスピックを振り上げた。福地が顔を
歪め、跳び退ってそれをよけた。再び、二メートルの距離。黒田の左手はじんじんしていた。
しかし大丈夫、骨は折れてない。
第二撃が来た。今度はテニスのバックハンドの要領ですくいあげるようにヌンチャクを
振り回してきた。黒田は頭を下げて体を傾かせ、それをよけた。そしてすかさず、その
福地の右手首へ向けてアイスピックをふるった。ざっという軽い手応えが伝わり、福地が
かすかにうめいて後ろへ退がった。
603chapter42―続・黒田vs福地(3):01/12/29 02:51 ID:siFg/ZZO

また距離ができた。ヌンチャクを構えた福地の手首に、赤い色が見えた。しかし、ダメージは
大したことないようだ。一方、黒田の右脚の傷は、どくどくと脈打っていた。傷から下の
ユニフォームがほとんど真っ赤に染まっているのがわかった。多分、そう長くはもちこたえ
られないだろう。ぜえぜえという音にも気づいた。自分の唇から漏れている音だと、これもわかった。
福地が再び、ヌンチャクを振り回してきた。黒田から見て、頭の左上から、肩口の辺りを狙って。
黒田は前へ出ていた。練習中に暇そうな若手を見つけては技をかけている(新井がいれば
たとえ誰がいてもそっちに走っていったが)金本がいつか教えてくれたことをこの時なぜか
思い出したのだ。“間合いを外したらダメージはぐんと下がる。恐れることなく前へ出るってのも
時には大事だ”。
肩にヌンチャクが当たったが、その通り、それは鎖の辺りでたいした衝撃ではなかった。
黒田は福地の胸元へ飛び込んでいた。驚愕に目を見開いた福地の顔が眼前にあった。
アイスピックを振り上げた。しかし、福地が空いた左手で黒田を思い切り突き飛ばした。
黒田は傷ついた右脚からバランスを失って仰向けに倒れこんだ。
福地が危うく刺されそうになった胸の辺りを左手で撫でながら、黒田を見下ろしていた。
「なんて野郎だ」
そう言うと、ゆっくり体を持ち上げた黒田に、福地はすかさずまたヌンチャクを振り下ろしてきた。
今度は顔をめがけて!
黒田はアイスピックを持ち上げ、それを受けた。きいんという高い金属音とともにアイス
ピックが消え、すぐ近くの土の上に転がった。黒田の手のひらに重い痛みだけが残った。
黒田は唇を噛んだ。福地を睨みつけたまま、後ずさった。福地が口元を笑みの形に歪めて、
一歩、二歩と前へ出た。くそ、こいつはまぎれもない異常性格者だ。目の前の人間を
殺すことに何の禁忌も持っていない。むしろ、楽しんですらいる!
604chapter42―続・黒田vs福地(4):01/12/29 02:51 ID:siFg/ZZO

福地がもう一度ヌンチャクをふるった。すっと上半身を引いて躱し―――しかし、ヌンチャクは
その黒田の体を追ってきた。多少その扱いに慣れたという事なのか、福地がなめらかな
動きでその腕を伸ばしたのだ。
がん、と左の側頭部に衝撃がきて、黒田の体がぐらっと傾いた。左の鼻腔から、つっと
温かい液体が流れ出したようだった。黒田の体が沈みかけていた。福地は、しとめた、と
いう表情をしていたのかもしれない。しかし、そのぐらっときた姿勢のまま、黒田の切れ長の
目がすっとすぼまった。体を倒しざま、その脚を伸ばして福地の左膝を外側から思い切り
蹴っていた。ごっ、と福地がのどの奥からうめき声を漏らし、左膝をついた。体が泳ぎ、
その左膝を軸に体が半回転した。背中が半分見えた。
ここでアイスピックを拾い上げることに執着していたら、黒田は敗れていたかもしれない。
だが、彼はそうしなかった。福地の背中に飛びついていた。おぶさるように、その頭を
抱え込んだ。体重がかかった勢いで、福地が前のめりに倒れた。
黒田は福地に半ば馬乗りになった姿勢で福地の短い髪の毛をつかんで、その頭をぐいと
引き上げた。位置は、もちろんこんなことしたことはなかったが、見当がついた。福地が
黒田の意図を理解したのか、反射的に目をつむるのがわかった。
無意味だった。フォークボールを時の投げる時のようにかまえられた黒田の右手人差し指と
中指は、しっかり閉じられた福地のまぶたを割って、福地の眼窩にもぐりこんでいた。
「ああああああああああああああああ」
福地が絶叫した。腕をつき、膝をついた姿勢のままで体を起こし、ヌンチャクからも手を
離して黒田の手をかきむしった。体をめちゃくちゃに動かし、黒田を払い落とそうとした。
なんなんだ、俺はロデオをやってるわけじゃないんだ、そんなに暴れるなよ。
605chapter42―続・黒田vs福地(5):01/12/29 02:52 ID:siFg/ZZO

黒田はしっかり福地に組みついて離れなかった。さらに指を押し込んだ。人差し指も中指も、
第二関節までずぶっと福地の目に沈んだ。途中黒田の手にちょっとした衝撃が伝わり、
眼球が割れたのだとわかった。思ったより眼窩って小さいんだな、そんなことを考えた。
しかし容赦なく、黒田はその指を内側に曲げた。みたことのない液体が、血と混じって
変種の涙のように流れ出した。
「うがああああああああ」
福地が声を上げ、体を起こしてめちゃくちゃに手を振り回した。よし、次だ―――黒田は
さっと福地から離れると、アイスピックを探した。すぐに見つかり、拾い上げた。福地は
喚いて、見えない敵と戦うように(その通りなのだが)腕を振り回している。黒田は右脚を
引きずりながらその福地に歩み寄ると、その傷ついた右脚を持ち上げ、福地のがら空きの
股間を蹴り上げた。福地が「ぎゃっ」っとうめいて、今度は股間を押さえ、横向きになって
胎児のように体を丸めた。
黒田は今度は左足でそののどを踏みつけた。体重をかけた。自分のはいているスパイクが、
試合用のものではなく普通の練習時に使ういたってプレーンなものだったのがひどく
おしまれた。くそ、刃があれば刺さってただろうに。福地が両腕を伸ばしてその脚をどけようと
もがき、力なく殴りつけかきむしった。
「たすけ…」
ハァ?おいおい、さっきまでの威勢はどこいったよ?黒田は思った。自分の唇が笑いの形に
歪んでいるのがわかった。今度は怒ってるんじゃないな、と思った。楽しんでるんだ、
間違いない。ひどい?人でなし?山本監督もよく言ってたじゃないか。まあ、ええことよ。
606chapter42―続・黒田vs福地(6):01/12/29 02:52 ID:siFg/ZZO

黒田は膝を折りざま、その福地の口の中に両手で保持したアイスピックを突き立てた。
黒田の脚をもぎ離そうともがいていた福地の両腕が、びくっとその動きを止めた。黒田は
アイスピックを押した。あまり抵抗なく、それはずぶずぶと福地ののどに沈んだ。福地の
体が、胸からつま先まで、背泳ぎのバサロスタートみたいな感じでびくびくと痙攣した。
やがて止まった。
右足の痛みが急にぐんと跳ね上がり、黒田は福地の横に倒れ込み、しりもちをついた。
自分の口から漏れる呼吸が、短いダッシュを繰り返した後のようにかすれているのがわかった。
勝った。あっけない気もした。実際に格闘したのはほんの数十秒だったかもしれない。
しかしもちろん、長くかかっていたら絶対に勝てなかっただろう。とにかく、勝った。
何にせよ、とにかく。
黒田は血に染まった右脚を抱え込みながら、見世物小屋の芸人のようにアイスピックを
のどから吐き出そうとしている福地の死体を、あらためて見下ろした。なんの感情も抱かず、
とりあえず休息をとろうと、ふうとため息をつこうした、その時だった。

【残り33人】
60764 ◆CARP8KOI :01/12/29 02:58 ID:siFg/ZZO
年末にこのような悲惨なシーンをうぷして申し訳ない。個人的には好きな場面なんですが。
皆さんが話題にしてるシーンまではさすがに書いていないのでどうなるんでしょうかね(w
その前に誰がどう動くかを考えないとなあ。まあ、ええことよ。
60864 ◆CARP8KOI :01/12/29 03:30 ID:siFg/ZZO
(4)に間違いがあったので訂正。いらんもんがついとった。

(誤)フォークボールを時の投げる時のようにかまえられた
   ↓
(正)フォークボールを投げる時のようにかまえられた
609代打名無し:01/12/29 08:18 ID:jSSszrFj
>俺の全存在をかけて、お前を否定してやる。
カコイー!この台詞大好きなんで、黒田の口から
聞けて(?)嬉しい。
でも、千草=黒田ってことは
黒田はもうすぐ‥‥‥。
610代打名無し:01/12/29 11:00 ID:LPMJNdE7
>609
あのお方がやってきます・・・。
611代打名無し:01/12/29 11:19 ID:GB3+WLJo
64さん乙カレー!!
>610
あのお方が来ますな。
広島家を見てるから、なんか想像できないヨ!
兄弟対決かぁ
612代打名無し:01/12/29 14:48 ID:EN4IuuPB
でもあの方は二人いるからね。どっちが生き残って
黒田と・・・・
613代打名無し:01/12/29 20:54 ID:sRjNL5eI
アイヤー悲惨じゃあ。
痛い、痛い。
ふくちんこ悪じゃのぅ。
614代打名無し:01/12/30 00:59 ID:1urAFBSV
なんか自分も目のあたりが痛い・・・(w
きっつーい場面だけど、わくわくしてる自分がいる。
615chapter43―理想のピッチャー(1):01/12/30 03:45 ID:YrWfVIMs

「黒田さん」
唐突に背後から声がかかり、黒田は座ったままばっと振り返った。同時に手を伸ばして
福地の口からアイスピックを抜き取り、構えた。東出輝裕(背番号2)が黒田を見下ろしていた。
黒田は東出の右手に視線を飛ばした。大型の自動拳銃がその手の中にあった。東出が
どんなつもりでいるのかはわからない。しかし、もし福地と同じようにやる気になっているのだと
したら、勝ち目がない。拳銃が相手では、勝ち目がない。逃げなければ。逃げた方がいい。
黒田は再び、痛む右脚を引き寄せ立ち上がろうとした。
「大丈夫ですか?」
東出が聞いた。ひどく優しい声だった。銃を黒田に向けることはしなかった。しかし、安心
すべきではない。黒田は後ずさり、手近な木の幹につかまって何とか立ち上がった。右脚が
急速に重くなりかけていた。
「ああ」
黒田が一言答えた。東出は福地の死体をまじまじと見つめた。それから、黒田が手に
しているアイスピックを見た。
「そんなものだけでやっつけたんですか?すごいですね。なんか、やっぱ違うっていうか」
本当に、心から感心した、という口調だった。それどころかうきうきしているような感じすら
あった。チームメイトに囲まれるとまだあどけなく見える顔(そのつくりはどことなく自分に
似ていたのだが)の中、目がきらきら輝いていた。それを見ながら、右脚からの大量の
出血のせいなのか、体がぐらぐらしているような感じを受けていた。
「そうだ」
東出が言った。
「僕が高校時代に投手やらされてたこと、黒田さん知ってますよね?一応、甲子園でも
 投げたんですけど」
黒田は東出の意図が読めないまま、その顔を見つめていた(似たような顔が二つ見つめ
あっているわけだ。知らない人が見たら、ご兄弟ですか?なんて声をかけてくるかもしれない)。
616chapter43―理想のピッチャー(2):01/12/30 03:45 ID:YrWfVIMs

「僕、ちょっとうらやましかったんですよね」
東出が続けていた。
「黒田さん、全球団見渡してもなかなかいないってくらいのピッチャーでしたもんね。ほんと、
 今まですごいなって思った投手は桑田さんと大輔―――それと、黒田さんくらいだったから」
黒田は黙って聞いていた。何かおかしかった。すぐに気づいた。なんで東出は、過去形で、喋っているのか?
「僕」東出の目がいたずらっぽく笑んだ。
「さっき“やらされてた”って言ったけど、嫌いじゃなかったんですよ、ピッチャー。それで、
 普通だったら無理ですけど、こんな状態でカープも選手がいなくなってきてるじゃないですか。
 だから、もしかしたら投げさせてもらえるかもしれない。もしそうなったら、黒田さんみたいな
 ピッチャーになりたいと思うんです。自分じゃわかってないのかもしれないけど、後ろから
 みててもマウンド捌きとかすごく格好よかったんですよ。で、もしそうなったら黒田さんと
 一緒に投げられる。こんな大投手と一緒にローテーションが組めるなんて、なんて
 素晴らしいんだろうと思ってたんですけど…その右足じゃとてもじゃないけどもう無理
 ですよね、昔みたいなボールを投げようだなんて。だからとても―――」
黒田は目を見開いた。ぱっと体を翻すと、走り出していた。右脚は引きずっていたが、
それでも、さっきと負けず劣らず素晴らしいダッシュだった。
「だからとても―――」
東出はコルト・ガバメントをすいと持ち上げた。三度続けて、引き金を絞った。木立の中、
ゆるい下り勾配をもう二十メートルばかり向こうまで離れ、なおぐんぐん遠ざかりつつ
あった黒田のユニフォームの背中、「15」の数字に正確に三つ穴が開き、黒田はヘッド
スライディングするように前のめりに倒れた。俯せになったままずずっ、と地面を滑り、
左が白、右が赤と鮮やかな対照をなした形のいい脚が宙に跳ね上がった。すぐに地面に
落ちた。
東出が銃を下ろし、言った。
「とても残念」

【残り33人】
617chapter44―ザクの戦い(1):01/12/30 03:50 ID:YrWfVIMs

澤崎俊和(背番号14)は、茂みの中からそっと顔を出した。どのくらいその異様な光景を
眺めていたのだろう、額には不快な汗がふきだし、そのせいで短い前髪が額に張り付いていた。
視界のすぐ先に黒田を撃ち終わったばかりのユニフォーム姿があった。野球選手としては
小柄なその体、背中にはやや不釣合いな大きな「2」の数字―――東出輝裕だった。
東出は銃を持つ手を下ろし、黒田が飛んでいった(あの状態では走って逃げたというより
走って飛んだという方が適切だった。そのくらいの勢いだった)ほうを眺めている。
澤崎は息を整えた。寒かったし、その光景に多少同様もしたが、特に気にはならなかった。
何しろ、澤崎にとって最大の使命を果たす時がきたのだから。
―――ジオン公国の一員として。
覚悟はいいか、シャア専用澤ザクよ。頭の中、自分をコントロールしてくれる最高のパイロット、
シャア・アズナブルが聞いた。その声ははるか海を渡った広島の自室に飾ってある自分の
分身(妻から「ただのプラモデルじゃないの」と揶揄されるそれ)から届いてくるようだった。
もちろんです。澤崎は答えた。私はあの悪魔が、酒井大輔と矢野修平を殺して現場から
立ち去るのをこの目で見ていたのです。そのあと見失いはしましたが、ついさっき、再び
発見しました。そして、野球において自分の最大のライバルであった黒田博樹までもを
殺すのを見ました。あの男こそ、倒すべき敵なのです。そのために、ここまであの男を
追ってきたのです。
―――よろしい。お前は、自分の使命をわかっていたのだな。
618chapter44―ザクの戦い(2):01/12/30 03:51 ID:YrWfVIMs

もちろんです。右ひじの手術を受けている最中、そう、あの手術室の幾重ものライトの中、
麻酔に身をゆだねながらも私はあなたからのメッセージを受け取りました。私が、いずれ
ジオン公国の独立のために地球にはこびる悪と戦うことになる人間だと。その時はよく
意味がわかりませんでした。でも、でも今ははっきりとわかります。
―――よろしい。怖くはないか?
いいえ。あなたの導きに従い、私には何も恐れるものがありません。
―――よろしい。お前は私のために創られた選ばれたモビルスーツなのです。勝利の
光があなたを包むでしょう。―――ん?何か?
いえ。いえ。ただ、シャア様。私と同じ使命を持っていたはずのランバ・ラル・ヒロキは
死んでしまいました(かつての黒田は、澤崎が「お前はランバ・ラルだな。『ザクとは
違うのだよ』とか影で言っていないだろうな」と問い詰めるたびにあくびを隠していたのだが、
まあとにかく)。彼は―――
―――彼は最後まで戦いましたよ、ザク。
ああ。ああ。やっぱり。けれど、けれど彼は敗れたのですね、悪に。
―――まあ、そういうことだ。しかし、お前には彼の叫びは聞こえなかったのかい?
『見ておくがよい…戦いに敗れるということを。こういうことだー!!』という最期の叫びが。
そしてその思いを受け取らなかったのかい?細かいことは気にするな。何より、彼のために
戦うんだ。そして、勝つのだ、ザクよ。あの悪に若さ故の過ちとやらを知らしめてやるのだ!
619chapter44―ザクの戦い(3):01/12/30 03:51 ID:YrWfVIMs

澤崎の中に光が満ちた。温かい、すべてを包み込む大宇宙の力を。澤崎は安息の中で
もう一度頷いた。はい。はい。はい。
それから、両刃のナイフを鞘から抜き出した。顔の前に両手で構えた。その青い刃に
白い光が満ち、澤崎はその光ごしに東出を見た。
東出の背中が見えていた。がら空きだった。
―――今だ!今こそ、あの敵を打ち倒すのだ!!
はい!
澤崎は音を立てないように茂みを躱し、だっ、と東出の方へ走った。わずか十五センチの
ナイフの周りに光が噴き上がり、それは長さ数メートルの剣へと変わった。光の剣は
自分たちに立ち向かう地球連邦軍のモビルスーツを真っ二つに破壊するだろう。
東出輝裕は何事もなかったかのようにくるっと後ろを振り返ると、その右手のコルト・
ガバメントをもう一度持ち上げ、二度、引き金を絞った。
一発目が澤崎の胸に当たってその動きを止め、二発目が正確にその頭を撃ち抜いた。
緩やかにカーブした赤い線をその傷口から空に曳きながら、澤崎はどっと後ろに倒れた。
「シャア…私を導いてくれ」と思ったかどうかは定かではないが、ともかく、澤崎は光の
国へと旅立っていった。
東出輝裕はあっけなく力尽きた澤崎から視線を外すとその死体に背を向け、その場を
走り去っていった。

【残り32人】
62064 ◆CARP8KOI :01/12/30 03:56 ID:YrWfVIMs
うーん、もうちょっと早くうぷできると思ってたら澤崎の話をすっかり忘れてて、ガンダムに
ついて調べてたら非常に時間をくってしまいました。まあ、いつもうぷしたい時間帯は
本スレでアホが暴れてるからちょっと遅いほうがいいのかもしれないけど。
ガンダムについて自分もあまり詳しくなくていろんな所を調べました。参考にしたHPは
またまとめの方で紹介しようと思います。

ファン感謝デーの番組みたかぎりじゃ(・ ε ・)ピッチャーはないだろうけどね(w
痛いのは我慢して読んでくだされ。書いてる方もたまに顔をしかめてますので…。
621代打名無し:01/12/30 04:41 ID:KDFFjY6A
出た、プリーシア・ディキアン・サワザキ!
でも出る場所がなんか違うな〜。
622代打名無し:01/12/30 11:55 ID:sMY3Z357
>621
そうそう。
あとまでとっておきたかったなぁ。
まあ、第2のサワザキに期待していますよ。
623代打名無し:01/12/30 15:21 ID:Z0shnu8B
>>622
なんか勘違いしてない?そんなに原作に近いものを期待してるなら
原作だけ読んでおけばいいのに何をそんなに文句つけたいの?
最後の1行とか書いてもらって当たり前って思ってるのがみえみえでちょっと…。
本当のバトロワを読んでない人もいるってこと考えてないみたいだしね。
624代打名無し:01/12/30 20:25 ID:rMQmWXrV
く、黒田…。
千草編は続きを含めて好きなので(確かに痛いが)
黒田で良かったかも。
澤ザクそうきたか!怖いぞ!
>>623
まぁ、マターリ。気持ちは同じだが。
前と同じ人じゃないか?なんとなくだけど。

64さんのペースでやって下さkい。
625代打名無し:01/12/31 00:55 ID:Nft6iVgb
>>621ー623
意味がわかりません。
64さんの意見を聞けばいいことじゃないですか?
626代打名無し:01/12/31 02:10 ID:Mu+UX+UN
621ですけど、文句じゃなくて率直な感想ですよ(^^;
私はこの話、文句のつけようが無く大好きです。
(そもそも原作読んだことないし)
627chapter45―ハッキング(1):01/12/31 03:33 ID:cBG+IS+w

遠く五発の銃声がして、河内貴哉(背番号24)も広池浩司(背番号68)も窓の外を見やった。
「あれ―――」
広池は頷いた。
「また銃声だな」
しかし、すぐ作業に戻った。言い方は悪いが、ほかの選手の事を気にしている場合では
なかった。
二人は集落にある、とある家の中にいた。二階の子供部屋と思われる部屋の机で、広池は
ノートパソコン(河内はパソコンのことはよく知らなかったけれど、普通のものとはちょっと
違う形のそれについているリンゴのマークくらいは見たことがあった)と向かい合い、河内は
広池が何をしているのかわからず、ベッドに腰を下ろして広池の方を見ていたのだった。
その手には広池のベレッタがある。もちろん、ほかの侵入者がやってきたときのためだ。
「広池さん、そろそろ何してるか教えてくださいよ」
じれったげにそう言った。そう、パソコンと携帯電話をケーブルでつないで広池が忙しく
パソコンのキーを叩き始めたものの、河内には何の説明もしていなかったのだ。
「ちょっと待っといて―――もうちょっとだから」
広池はさらにキーボードを叩いた。モノクロ画面のほぼ中央、ウインドウの中に“%”だの
“#”だのが混じった英文が流れ、広池もそれに応えて打ち返した。
「よし」
最後にデータのダウンロードを指示し、広池は手を止めた。基本操作は当然ユニックスだが、
ここばかりはマックに合わせて自分が設計した通り、ダウンロードの進行状況を示す
グラフィックが別のウインドウで現れた。広池は腕を上に伸ばし、伸びをした。あとは
ダウンロードを待つだけだ(もっとも、終わったらログを書き換えて証拠を消さなきゃ
ならない)。そのあとは、データをもとに作戦を練ることになる。単にデータを書き換えて
しまうか、それとも独自のプログラムを組んでより巧妙に相手を騙すか。後者の場合
ちょっと手間だが、それでも半日もあれば十分だろう。
628chapter45―ハッキング(2):01/12/31 03:33 ID:cBG+IS+w

「広池さん、説明してくださいよ」
河内がもう一度言い、広池は笑むと、自分もパソコンから体を離して椅子の背もたれに
体を預けた。我ながらいささか興奮しているなと思ったので、気を落ち着かせるために
一つ息をついた。無理もなし、さっきこの家に着いた時はまだはっきりしなかったのだが、
今となってはもう―――勝ったも同然だった。ゆっくり、口を開いた。
「とにかく僕は、ここから逃げることを考えたんだ」
河内が頷いた。
「それで」
広池は自分の首を指差した。鏡を通してでないと見ることはできないが、そこには河内の
首にあるのと同じ、銀色の首輪がしっかりとあった。
「本当は、これを何とか外したかった。これのせいで僕らの位置は達川さんたちに
 ばれてるわけだ。つまり、今こうやって、二人一緒にいることも。このおかげで僕たちは
 逃げようとしても簡単に捕捉されるし、あるいは、中の爆弾に電波を送られたら一発で
 殺されてしまう。なんとか外したかった」
広池はそこで手を大きく開いた。肩をすくめてみせた。
「けど、あきらめた。内部構造がわからない以上、いじりようがない。取ろうとしたら
 爆発するって達川さんが言ってたけど、あながちうそでもないだろう。多分、起爆用の
 コードが外装の内側に張り巡らしてあるんだ。それを切ったりしたらどかんといく、
 そういう感じだと思う」
河内がまた頷いた。
629chapter45―ハッキング(3):01/12/31 03:34 ID:cBG+IS+w

「そこで考えた。ならいっそ、僕たちの捕捉とその爆破用の電波を管理してるあの神社の
 コンピュータに一働きしてもらおうって。本殿の奥にいろいろ置かれてたの、見てただろ?」
またまた河内は頷いた。というか、頷くしかできなかった。
「で、僕はパソコンを探したんだ。当たり前だけど携帯も持ってる。自分のパソコンがあれば
 一番よかったんだけど、さすがに練習に持ってこようなんて思わないし。まあ、とにかく
 これが見つかったからいいんだけど」
広池が続けるうち、河内はそのパソコンと携帯電話が一体何をしているのかようやくおぼろげに
理解し始めたらしかったが、しかし、急に何か思いついたように口を挟んだ。
「けど、電話は使えないって達川さん言ってたじゃないですか。携帯電話は使えてるんですか?」
広池は首を振った。
「いや、だめだった。一回適当に117って押したんだ。そしたら何が流れたと思う?
 “宮島さんの神主が〜”ってやつだったよ。すぐ切ったけど。この調子じゃ携帯電話の
 一番近い中継局をおさえてる。多分その電話会社のやつもだめだ」
「じゃあ」
広池は左手の指を一本立てて河内を制した。
「でも考えたんだ。達川さんたちだって外と連絡を取らないわけじゃない。それに、
 コンピュータだってここだけじゃなくて、きっと他のコンピュータにもつながってるはずだ。
 コーチが関わってるとなれば、球団も関わってる可能性が大きい。そしたらたぶん、
 いろんなデータを広島の方に送ると思うんだ。そしたら、それはどうやって送ってる?
 ―――こんな大それたことができるなんて思わなかったけど、たぶん特定のナンバーだけ
 選択的に通してるように細工をしたと思う」
630chapter45―ハッキング(4):01/12/31 03:34 ID:cBG+IS+w

話が大きくなりすぎて、本当にそんなことが可能なのか河内は疑いたくなった。
「もちろん問題が起こらないとは限らない。―――何事も完璧ってのはないからね。
 そしたら、もしものために電話会社の人間が回線をいじれるようなことはしているんじゃ
 ないかって思ったんだ。そこで、こいつだ」
広池は携帯電話を手に取った。
「貴哉と違って、僕は野球エリートじゃなかったから、ここまでくるのに遠回りをしたんだ。
 僕がドミニカに行ってたっていうのは、知ってるよね」
河内は頷く。
「どの国にも裏ってもんがあってね。ドミニカでは僕もそっちの方々にずいぶん世話に
 なったよ。その時に、日本の裏事情も色々と教わってきた」
広池が笑みを浮かべた。自分とはどこかかけ離れた、ワールドワイドな話だな、と河内は
のんびり思った。
「その時の悪知恵の一つがこれに使われててな、これには電話番号と暗証番号のロムを
 二種類積んでる。外から見たってわからないけど、ここのネジを九十度回したら切り
 替えられる。そしてそのもう一つの番号ってのが、ま、もともとインターネット用にタダ電話が
 かけられれば、って作ったもんなんだけど」
電話から手を離した。
「電話会社の技術職員が使う回線テスト用の携帯電話の番号なのさ」
「ってことは…」
631chapter45―ハッキング(5):01/12/31 03:34 ID:cBG+IS+w

「理解したか?そっからはたいした話じゃない。この持ち主が使ってるケーブルもうまく
 つながったし、簡単に電話回線に入れた。それから一旦、自分のコンピュータにアクセスして、
 こういうのは特殊なツールがいるんだけど、それを取り寄せた。そんでここのプログラムを
 探すのに球団のサーバに侵入していろいろいじってみたら、普通こんなバカげたこと
 しないんだが、作業用のバックアップファイルを残してたんだ。まあ細かいことは
 ややこしいから説明しないけど、その中に一つ意味ありげな暗号文字があった。
 その解析は昨日のうちにやった。それが、これだ」
広池はパワーブックに手を伸ばし、通信状態はそのまま、別のメモファイルで開いて、
ばかでかい表示で河内に見せた。
“tachukawa−michuo”
「タチュカワ?」
「そう。わざわざ子音の入れ替えで複雑にしてあるんだけど、とにかくこれがルートの
 パスワードってわけ。これがわかれば後はやり放題。それで今、神社の中にあった
 コンピュータの中のデータをまるごと頂戴してるところなんだ。僕はそれをいじって再度
 あそこのコンピュータに入り、まずはこの首輪を使えなくしてやろうと思ってる。そしたら
 禁止エリアも何も関係がなくなるから、あとはみんなを探して逃げればいい。なかなかだろ?」
もはや、河内は放心したような表情をしていた。
「すごい」
広池はその反応に満足してにこっと笑った。何にせよ、自分の能力を誰かに褒めてもらうと
いうのはうれしいことだ。
「広池さん、なんで、広池さんみたいな人が野球選手やってるんですか?」
河内が放心したような顔のまま、広池に聞いた。
「ははは、くだらないこと聞くなよ」
笑顔で河内を見つめると、言葉を続けた。
632chapter45―ハッキング(6):01/12/31 03:35 ID:cBG+IS+w

「野球が好きだから、野球選手になりたかったから、なったんじゃないか。お前だって
 そうだろ?そりゃ、貴哉は高校時代から注目されてた人間だから、その辺の苦労は
 なかったのかもしれないけどさ。野球がなかったら僕だってこんな知識持ってないかも
 しれないし、その辺は偶然の積み重ねでこんなことになっちゃってるけど、どんな知識を
 持ってたって、僕も貴哉も同じ野球選手に変わりないよ」
わかったか、と言おうとしたその時―――ぶん、という音がした。広池は眉根を寄せ、
いささか急いでパワーブックに視線を戻した。なぜならその音は、マッキントッシュ標準の
警告音だったからだ。そしてその画面を見て、目を見張った。そこに出ているメッセージは、
電話回線が切断され、ダウンロードが中断した旨を告げていた。
「―――何でだ」
広池の口から漏れた声は、うめきに近いものだったかもしれない。慌てて、キーボードを
操作した。しかし、回復はできなかった。一旦ユニックス用の通信ソフトを終了し、別の
通信ソフトでモデムから電話をかけるための操作を行った。
“回線がダウンしています”のメッセージが出た。何度やっても同じだった。モデムと電話の
接続がおかしくなった様子もない。それで、今度は逆にモデムと携帯電話の接続を無効に
しておいて、直接携帯電話のプッシュボタンを押してみた。とりあえず再び117を。しかし
―――携帯電話はもはや、何の発信音も伝えてこなかった。ばかな。広池は携帯電話を
握りしめたまま、今はただ停止しているパワーブックの画面を茫然と見つめていた。
ハッキングを気づかれたわけではない。そもそも気づかれないようにやるのがハッキング
なのだ。そして、広池には十分その技術があった。
「広池さん?どうしたんですか?」
河内が声をかけていたが、広池は答えることができなかった。

【残り32人】
63364 ◆CARP8KOI :01/12/31 03:50 ID:cBG+IS+w
ああ、ここまでちょっと殺伐とした雰囲気が。冬休みだとどこもこうなるのかな?
推測するに(しなくてもいいか)>>621さんの感想を>>622さんが原作のことを
言ってるんだと思って付加的な意見を書いちゃって、それに>>623さんが
「ぶちぎれですよ」って所でしょうか?
(原作を知らない方に説明すると、澤崎の役は原作では終盤で出てくるんですが、
 構成上それを自分が故意に前へずらしたんです。しかしそれがまずかったっぽい…)
原作をもとに書いてるけど、原作とは異なる動きも当然出てくるわけで(原作にいない
人物もいたりするもんだから)、原作を知っている人はそのへんはあまりつっこまないで
ほしいかな、というのが書いてる本人の思う所です。
まあ、それは自分が上手いものを書けばいいというだけの話なのであまり大きな声では
いえませんね。

45までいったので、明日余裕があればまとめのほうをうぷしておきます。
たぶん次回うぷは新しい年になっていると思うので、皆様よい年越しを。
634代打名無し:01/12/31 13:16 ID:2YRJLZaw
>>622―623

>構成上それを自分が故意に前へずらしたんです。

そういうことですのでもう議論はやめて下さい。
作者さんが決めることですし。
635chapter46―黒田博樹の最期(1):02/01/01 02:17 ID:UP6LIlCb

背中から三発の弾丸を撃ち込まれた後三十分以上経っていたにもかかわらず、また、
その傷及び福地寿樹にボウガンを撃ち込まれた脚の傷から大量に失血していたにも
かかわらず、黒田博樹はまだ生きていた。東出輝裕はとっくに立ち去っていたが、
いずれにしてもしれは黒田の知るところではなかった。
黒田は半ばまどろみ、夢を見ていた。家族が―――父親と母親、それに六つ年上の
兄が、シャッターの閉まった実家のスポーツ用品店の前から黒田に手を振っていた。
今日は阪神ファンにシャッター壊されてないな、とまず思った。ふと見ると、兄の英彦が
涙を流しているのがわかった。「さよなら、博樹、さよなら」と言っていた。元プロ野球選手で
80近い歳なのに大柄な父親と、黒田がその顔の大方の特徴を受け継いだ母親は、
ただ哀しそうな顔をして黙っていた。
あほやなあ、と黒田は夢の中で思った。ろくでもないな。俺、まだ二十六年しか
生きとらんのやで。兄貴、親父とお袋の事、頼むな。自分の家族ばかりにうつつ
抜かしとったらあかんで。
あーあ、ほんまろくでもない。まだめぼしいタイトルも何もとってないのになあ。
それで、場面が変わって市民球場のマウンドの上に立っていた。ああ、これは幻想じゃない。
実際にあった場面だ。これは―――
野手陣が集まっていた。1回表の相手チームのスコアボードには「5」の数字が入っている。
二、三年前のマウンドだな。いつの試合かわからない程、初回大量失点を当たり前の
ようにくり返していた。ベンチからコーチがやってくる。あれは大野さんだ。ということは、
これは一昨年か。笘篠さんがまだ00番のユニフォームを着ていた。そうだ、笘篠さんは
セカンドを守ってたんだ。ああ、赤い33番のユニフォームを着た江藤さんもいる。外野から
金本さん、緒方さん、前田さんがあきれたようにこっちを見ている。この三人が揃ってるのも
なんだか久しぶりに見た。でも、やっぱりいい外野陣だな。
636chapter46―黒田博樹の最期(2):02/01/01 02:17 ID:UP6LIlCb

場面がまたまた変わった。これは、まだ試合前の練習中だ。
「黒田、俺がいなくなるんだから、お前が投げる試合は全部勝てよ」
声をかけてきたのは佐々岡さんだ。そうだ、佐々岡さん、抑えに回るんだっけ。それじゃ、
これは今年の風景だ。
「そんなプレッシャーかけないでくださいよ。なんで抑えなんか引き受けるんですか」
「俺だって先発やりたいよ。けど自分の都合よりチームの事を考えるとな、やっぱり
 断れないだろう?」
そうだよなあ。いくら自分の希望があっても、それがチームの望む方向にないのなら
俺だってチームの方針に従うもしれない。変なこと言っちゃったなあ、佐々岡さんに。
自分を心配する佐々岡の顔が浮かんだ。泣いていた。
「黒田、死ぬな」
何なんですか、いきなり。泣かないで下さいよ。建さんじゃないんですから。いっそ俺まで
泣きじゃくって、チームの三本柱を泣き虫で結成しましょうか。相手チームに(特に紳士球団
巨人のお行儀のいいミナサマに)散々野次られそうですけどね。
神のいたずらというやつなのか、黒田はもう一度だけ覚醒した。ぼんやり目を開けた。
朝のやわらかい光の中で、佐々岡真司(背番号18)が自分を見下ろしていた。最初に
思ったのは、佐々岡が泣いていないという事だった。疑問はその後でやってきた。
「どうして…」
自分の唇から漏れる声が、錆びついたドアを無理矢理こじあけるような感じだった。
それで、ああ、もう長くは生きられない、と確信した。
637chapter46―黒田博樹の最期(3):02/01/01 02:18 ID:UP6LIlCb

「…ここにいるんですか?」
佐々岡は、「ちょっとな」とだけ言った。佐々岡は黒田のそばに膝をついて、黒田の頭だけを
そっと支え起こしてくれているようだった。自分は俯せに倒れたはずだが、仰向けになっている。
近くの茂みに佐々岡が運んでくれたのか、右てのひらに下草の感覚があった(左手は
―――いや、左半身全体が痺れていて、何も感じなかった。福地寿樹に側頭部を
ぶんなぐられた、その後遺症かもしれない)。
佐々岡はそれから、静かに「誰にやられた?」と聞いた。そうだ。それは、重要な情報だった。
「東出」と黒田は答えた。福地の事は、もうどうでもよかった。「気をつけて」の言葉に、
佐々岡が頷いた。それから、「すまんな」と言った。黒田は何のことかわからず、じっと
佐々岡の顔を見つめた。
「俺、今日の朝、お前が走ってるのを商店街ぬけたところで見たんだ。けど、あのとき、
 銃声が聞こえて、一瞬だけ気をとられてしまった。それで―――お前、全速力で走って
 いっただろ。見失ったんだ。お前の消えた方へ走って呼んだんだけど―――もう、
 遠くへ行った後だったんだろうな」
黒田は、ああ、と思った。確かに、隠れている家を出て走り出してしばらくしたときに、
何かかすかに声が聞こえた気はしたのだ。でも、銃声でなかば混乱していて空耳かと
思ったし、そのまま全速力で走りぬけたのだ。
ああ。佐々岡は自分を呼んでくれたのだ。危険を冒して、あんな誰が隠れているか
わからないようなところで、自分を呼んでくれたのだ。それで多分―――さっき佐々岡は
“ちょっとな”と言ったけれど、自分の事をずっと探していてくれたのかもしれない。
そう思うと、黒田は泣きそうになった。しかし、かわりに顔の筋肉を何とか動かして、
笑みをつくった。
638chapter46―黒田博樹の最期(4):02/01/01 02:18 ID:UP6LIlCb

「そう―――だったんですか」と言った。「ありがとうございます」
黒田は、もうあまり言葉を喋れないのがわかっていたし、何を喋るべきか選ぼうといくつか
考えていたのだけれど、全然どうでもいいことが頭に浮かんで、それを口に出してしまった。
「佐々岡さん、俺―――エースになれますか?」
佐々岡は静かに眉間にしわを寄せて、「そうだなあ」と少し考えるように言った。
「年間通して勝つことはできないし、四球は多いし、一発病だし、何回も打球を足に当てて
 コーチやトレーナーを心配させすぎるし、まだまだだなあ」
「そうっすか…」
中には佐々岡に当てはまるようなものもあったが、それはあえて言わず、黒田は一つ、
大きく息をした。奇妙にとても冷たく、そしてなぜか同時にとても熱く感じられる体の中に、
じわっと毒が腫れ上がるような感じがした。
「もしよかったら、もうちょっとこのままでいてもらえますか?すぐ…終わるんで」
それで、佐々岡が唇を引き結ぶと、黒田の上半身を起こして、自分の右腕を黒田の背中に
回してその体を自分の肩に預けるようにおいた。黒田の首がぐったり後ろに倒れそうに
なったが、それも佐々岡が支えてくれた。まだ―――まだひとこと言えそうだった。
「佐々岡さん、来年はずっと先発ローテにいてください」
―――もう一言いけるかな。黒田は佐々岡の顔を覗き込んで、にっと笑った。
「最後には、佐々岡さんを追い抜いて、俺がカープのエースになりますから」
「わかった」と佐々岡が言った。「けど、そんなに簡単にその称号は渡さんからな」
黒田はふっと笑み、わかってます、と言いたかったのだけど、もうのどから十分な息が
出なかった。ただ、佐々岡の顔をずっと見つめていた。感謝していた。少なくとも、俺は
ひとり寂しく死ぬわけじゃない。最後に一緒にいてくれる誰かが、佐々岡さんでよかった。
本当によかった。
その姿勢のまま、黒田博樹は、約二分後に死んだ。目は最後まで開いたままだった。
佐々岡真司は、生命を失ってぐたりと全身を自分の肩に委ねている黒田の体を支えたまま、
しばらく、泣いた。

【残り31人】
63964 ◆CARP8KOI :02/01/01 02:27 ID:UP6LIlCb
あけましておめでとうございます。今年も誤字脱字の多い駄作を苦労しつつ
読んでいただくことになるかと思いますが、何卒よろしくお願いいたします。

結局まとめる時間がなくてまとめうぷはやってません。休み中になんとかします。
続きのほうは、ストックが底をつきそうなので三が日で書きまくってメドがたったら
次章をうぷさせていただきます。

今日続き書く予定だったのに紅白実況スレ@ニュー速にいってて書けなかったぞゴルァ…
640代打名無し:02/01/01 09:06 ID:T4eevBYZ
あけましておめでとうございます。
さっそく続き読ませていただきました。
新年早々、黒田が!!
>建さんじゃないんですから
って(w

64さん、がんがってくださいね。
重荷にならぬ程度に。
住人のみなさん、ことしもよろしゅう。
641代打名無し:02/01/02 08:15 ID:YKsQ9+bo
あげおめ
642代打名無し:02/01/02 23:50 ID:6jBJ8RTH
くろひろぉ……
643代打名無し:02/01/02 23:57 ID:6jBJ8RTH
644代打名無し:02/01/04 07:52 ID:W2pdNtmx
やばそうなんで一旦age
645代打名無し:02/01/04 23:20 ID:IoFmKWZb
64さん、あけましておめでとうございます。
新年そうそう黒田の死で初泣きさしてもらいました。
今年もがんがってください!

人気のない道路の真ん中でなぜかテニスのラケットを振っている選手がいた。林昌樹
(背番号53)である。毎日欠かすことのない朝のトレーニングをここでもやっていた。
デイパックを受け取った林は住宅地に一目散に逃げ込んだ。一晩寒空の下布団一枚だけで
寝かされていた事もあって、数日前からひいていた風邪が悪化したのである。もう寒い中
外で過ごすのはごめんだった。適当な民家に飛び込んで中から全ての鍵を閉めると、
物色して探し出した風邪薬を飲み、一日ぐっすりと寝たのであった。おかげで体調も大分
回復し、その家の子供部屋と思われる部屋から見つけてきたラケットでいつものトレーニングを
していたのであった。こんな早い時間だったら大丈夫だろうと外へ出て。
テニスのラケットを振っていると林は無心になれた。これのおかげで自分は今年一軍に
上がることが出来たのだ。二軍に落ちた後もラケットを振ることだけはやめなかった。
やり続けることでもう一度一軍にあがれるという希望を持ちつづけることが出来たからだ。
それはきっと来季も同じであろう。もっとも、ここから無事に広島に戻れればの話だが。
どれだけラケットを振っただろうか。ふとその手を止めた。ひんやりとした朝の風が顔を
流れる汗に触れて心地良かった。これが宮島でなかったら、いつもの朝とかわらない。
ふいに自分の後ろで何かが落ちる音がして、林は慌てて振り返った。
「…いた」
林の視線の先にいた男はただ一言呟いた。一瞬西山秀二(背番号32)かと思ったが、
すぐにそれが間違いだと言う事に気づいた。
「カズさん?」
足元に自分のデイパックを落としたまま、木村一喜(背番号27)が立っていた。とりあえず
武器を持っていないか確認したが、それらしきものは見当たらなかった。もちろん、林にも
攻撃する気などなかった。ただ、立ち尽くしている木村に対してどう反応してよいのかわからず、
黙って木村を見やるよりほかなかった。まるでそこだけ時が止まったかのように、しばらくの間
お互いただ立ったままだった。その沈黙を破ったのは木村だった。

「トレーニングか。もう無駄かもしれないのに」
「そうかもしれないけど」
「なら何で」
「何でと言われても…頭では無駄だとわかってるつもりです。だけど、もしかしたらこの
 ゲームが突然終わるんじゃないかとも思えるんです。このまま広島に戻れて、無事に
 来年のシーズンも戦えるなら…」
言っていることが滅茶苦茶なのは林自身理解していた。銃声も聞こえる。決まった時間に
放送も入る。チームメイトはだんだんと少なくなっている(その放送を信じるならば、だ)。
このゲームが突然終わりを迎えるなんてまずないだろう。それでも、それでも―――。
「そうだな―――帰れるかもしれない」
木村の口から漏れた一言に林は妙な違和感を感じた。―――なぜ同意したんだ?
てっきり楽観視しすぎだとでも言われると思ったのに。それともカズさんは帰るための
方法を知っているとでも?
「キャッチボール、せんか?」
さっきまでの話題とは全く関係のないその言葉の意味さえ理解することができず、
いぶかしげな表情を浮かべた林は木村に視線を戻した。
「いや―――やらせてください、だな」
何か思うところでもあるのだろうかと自然に思えるくらい、その言葉はずっしりと重たく
響いた。木村が何を目的としているのかは林にはわからない。でも、その呼びかけに
のらない理由もなかった。

「ちょっと待っといてください。グラブとってくるんで」
林はそう言うと一旦家屋の中へ戻った。荷物の中からグラブを引っ張り出して、念のために
支給されたスタンガンをポケットの中へ突っ込み、再び外へ出た。木村もキャッチャーミットを
左手にはめ準備は出来ていた。
「やるか」
木村のその一言でキャッチボールは始まった。グラブから聞こえる「バシッ」という音と、
右手でつかみなおしたボールの感触がやけに心地良い。
「なんか懐かしい感じですね」
林はそう木村に声をかけたが、返事は返ってこなかった。どことなく神妙な顔つきでボールを
受けて、投げる。普通ならそんな辛気臭い顔をしないでくださいと叫んでいるかもしれなかったが、
こんな状況だから何があったとしてもおかしくはない。それを聞こうなんて野暮なことを
する気も林には全くなかったので、木村に合わせて黙々とボールのやり取りをすることにした。
二人とも無言のまま、しばらくそのキャッチボールは続いた。
木村から返ってくるボールとグラブのぶつかる音がだんだんと響きのあるものにかわって
きている。―――自分に向かって投げられるボールの勢いが増している?
「林」
ボールを受け取った木村が林を呼んだ。
「座って構えてもらっていいか?思い切り振りかぶって投げたいから」
それは普通ピッチャーがキャッチャーに頼むことでしょう、と心の中では問い返した林だったが、
「わかりました」とだけ返事をしていつも木村がやるみたいにグラブを(キャッチャーミットでは
ないが大丈夫だろう)ど真ん中に構えてみせた。それを見届けて木村は何も言わず
セットからオーバーハンドのフォームでボールを投げた。

重いストレートが林のグラブにおさまった。そのボールを受けた林は、ただ自分の左手に
電流のように走った痺れを感じるだけだった。そしてやや間があって、それからふと
我に返って言った。
「ストライクです。―――木村さん、ピッチャーでもやれるんじゃないですか?」
その言葉を聞いて木村はほんの少しばかりの微笑を見せ「ありがとう」とだけ言った。
そして、左手のミットを外した。
「俺、そろそろ行くわ」
「え、行くって、どこへ?」
その質問には答えずに木村はミットをしまうと、デイパックを担いだ。
「会えたのが林でよかった」
またも即座に理解できない一言をかけられて、林には返す言葉がなかった。
「林と最後のキャッチボールが出来て、よかった」
木村はそう言うと林に深く一礼をして、逆方向へ歩き出した。“最後”という言葉とあいまった
木村の後姿を見ていると、そのまま木村が帰ってこないような気がして、不安になって
無意識のうちに林は叫んだ。
「待ってるんで」
その言葉に木村の足が止まる。
「何するかしらないですけど、ここで待ってるから帰ってきてください」
木村は少しばかり立ちどまっていたが、その言葉を断ち切るかのように走り出し、やがて
見えなくなった。木村が投げたボールを握りしめたまま、林はその姿を見送った。
わけもなくあふれる涙で目に映る風景が歪んでいた。

【残り31人】
65064 ◆CARP8KOI :02/01/06 04:25 ID:0NcLIqGA
しばらく間があいてしまいましたが、やっと林とキムカズを出せた。よかった…。
まとめの方も45までうぷしました。大分未登場人物も減ってきたみたいです。
49でまた初登場人物が数名出てきます。

>>642-643
いや、中国新聞はられても(w。ウヒョスレでも随分顔文字論議があったのを思い出した。
自分は顔文字は平気だけどどうも「クン」付けや「くろひろ」的表現が苦手な人間なんでね。
そういうのもありだと思わないといけないけど、どうも拒否反応が出てしまう。エロも平気なんだが。
(容認できるのとそうでないよび方の線引きも難しい。ウヒョスレで使用されてる略称なんか
全く平気だ。キムタク、アソパソ、ゥ…)

>>640 >>645
新年早々大変な場面でしたが、受け入れられて何とか…。間があき過ぎないようにがんがります。
651代打名無し:02/01/07 14:33 ID:x+4GlFqa
age
652代打名無し:02/01/08 22:31 ID:MgefJBum
保全
653代打名無し:02/01/08 22:53 ID:AzHRv73s
age
654chapter48―老兵達の嘆き(1):02/01/10 04:22 ID:S1Xec9If

「何じゃ?誰もおらんじゃないか」
ぶつぶつと不機嫌そうに独り言を呟き、大下剛史は歩いていた。この宮島に選手たちが
集められているという話が嘘だと思えるほど、周囲は静まり返っている。もちろん、人の
気配がないというのは普通の街並みとしてもおかしい光景ではあるのだが。
実は大下が歩いている道に面して存在する住宅地は、あの矢野修平(背番号66)や
酒井大輔(背番号67)が隠れていたそれであって、彼らの死体は意外と近くにあった
はずなのだが、それを大下が知る由もない。球団事務所で受け取った書類は彼らの
死を伝えていたが、二人を殺めたのが他でもない東出輝裕(背番号2)であることさえ、
この時点では大下は想像することもできないのだから。
「しかし―――」
大下の右手にそびえたつ学校の校舎にちらりと目をやった。
「―――誰もおらんじゃないか」
655chapter48―老兵達の嘆き(2):02/01/10 04:23 ID:S1Xec9If

「名古屋に行くのが憂鬱じゃのう」
昨日のユニフォーム姿とは一変し、ラフな服装になった達川光男(前監督)はゲーム
進行のためのミーティングが終了してから、幾度となくそう呟いていた。
「仕方ないだろう?片岡なんかはともかく、大野は解説もこなしてるし現場復帰も絶対
 ありえる人材なんだから、知らせないほうがおかしい」
「そりゃそうじゃけど詰め寄られたりしたらかなわんけえ。よりにもよって次の試合は
 確実にバッテリー組むことになっとるし」
「その辺は阿南さんがうまくやってくれるはずだから。三村さんや外木場さんもいるんだし、
 そう一人で抱え込むな」
「ならええんじゃけど、わしがこのゲームの指揮をしとることを阿南さんが伝えてしもうたら、
 あの正義感の塊が何を言い出すかわからんけえねえ。ああ、マスターズリーグなんて
 参加するんじゃなかったわい」
これからゲームの存在を知ることになる大野との再開に脅えきった達川を見て、北別府学
(投手コーチ・背番号73)はやれやれといった感じで一瞥すると、松原誠(チーフ兼打撃
コーチ・背番号71)のもとへ足を運んだ。
「―――黒田が赤字になってますね」
「ついさっき首輪の電波が途絶えてな。私から見ても惜しい選手だったと思うが」
たしかに、まだ細かい改善点はあったが、それでも黒田は広島のエースになったと言っても
よかった。しかしとうとう、そのエースも消えたか。
北別府の心にはそれだけしか浮かばなかった。何の感情もわかない自分にやや驚きは
したが―――しかし、競争なんてこんなものだ。
「なんだこれは」
松原の一言に北別府は再びモニターに目を移した。
656chapter48―老兵達の嘆き(2):02/01/10 04:24 ID:S1Xec9If

「それを降ろせ、木村」
「山崎さんこそ、その構えてるやつを降ろさないと巻き添えにしますよ?」
普通は猟銃とでも呼ばれているだろうその銃を構えつつも、山崎隆造(一軍守備走塁コーチ・
背番号76)は焦っていた。―――なんで俺が見張りをしてるときに来るんだ、この馬鹿は。
ちくしょう、俺はまだ人殺しになんかなりたくないぞ!だけど、ここで始末しなかったら
俺たちが死んじまうじゃないか!どうすりゃいいんだ。
“この馬鹿”というのは山崎の目の前で右手にライター、左手にダイナマイトを持って
構えている木村一喜(背番号27)のことだった。ゲームを動かす機械と、このゲームを
進行させている達川をふきとばすから入り口を通せと言うのである。通せといわれて
「はい、そうですか」と通す見張りなんているはずもなく、それを阻止するため山崎は
見張りの当番がきたコーチに渡される猟銃を木村に向けて構えていた。
657chapter48―老兵達の嘆き(4):02/01/10 04:25 ID:S1Xec9If
二人は極度に張り詰めた空気の中お互いを見つめあっていたのだが、その中で山崎は
焦りと、そして迷いを感じていた。―――こいつが来たら俺は撃つべきなのか?通すべき
なのか?このゲームは結局なんなんだ?
「うわあああああああああ」という声にその思考がフリーズした。突撃してきたのだ、木村が。
引き金にかかった指に汗を感じる。―――どうする、どうすればいい、俺は?
「撃て!!」
突然後ろからかけられた声に山崎は思わず引き金を引いた。自分の意志ではなく、
反射的にではあったのだが、瞬間、予想以上の衝撃が山崎を襲い、ドンともちをついた。
上半身を支えきれずに、軽くではあったが後頭部も地面に打ち付けた。それで自分の
したことに気がついて慌てて起き上がったのだが、自分とは違い、木村が起き上がる
ことはなかった。山崎の放った銃弾はちょうど木村の左頬のあたりから斜め上に向けて
頭を貫通して、それと一緒に木村の脳や眼球、その他もろもろが吹き飛んでいた。
間違いなく、即死だった。
「今時特攻隊もどきをやるやつがおるとは考えんかったな」
再び後ろからした声で気がついたことだったが、後ろには松原が立っていた。―――
ああ、あの「撃て」の声はこの人だったのか。命令する方は何とも思ってないだろうが、
俺はとうとう人を殺してしまった。どうしてくれるよ、松原さん?
松原に対していい思いはしなかったが、「あれは他に始末させるから、少し休んだほうが
よかろう?」との松原からの促しには体が素直に反応した。何を考えるにしても、とにかく
この場からは離れたかった。
本殿に向かう時に松原は一言だけ吐き捨てた。
「木村は多少、“気”の出過ぎだったな」

【残り30人】
658代打名無し:02/01/10 16:56 ID:NVEc831x
まだやってる。いい加減終われウザイ
もう誰も読んでネーヨ
659_:02/01/10 17:06 ID:SHarUYmX
他球団ファンですけど毎日見に来てます。
64さん、これからも頑張ってください!
660代打名無し:02/01/10 18:10 ID:eeMcxo4Q
>>658にちょっと同意。
でも、読んでいる人はいると思うけど。
661代打名無し:02/01/11 00:03 ID:jSEYokx7
>>660
うん、読んでる
662代打名無しさん:02/01/11 00:50 ID:yKyXRFSd
>>660
うちも他板者だけど読んでます。

>658
だったらsageで書くor書くな.
663chapter49―長谷川、山へ(1):02/01/11 04:02 ID:fMS1E1rG

長谷川昌幸(背番号19)はいつも持ち歩いていたガム(いたってシンプルなミント味の
それ)を噛みながら川沿いを茂みに隠れて移動していた。長谷川も一晩を商店街に程近い
民家で過ごした。ちょっと不自然かな、とも思ったが雨戸を閉め、それから六畳ほどの居間で
テレビを見た。音が漏れるといけないので消音にしないとしょうがなかったが(イヤホンを
探したけれどもその類いのものは見当たらなかった。―――そこまでことがうまく運ぶわけも
ないか。テレビが見られるだけでもありがたく思わないと)、ニュースなどはそのテロップで
だいたいの内容を知ることができた。
地方版のニュースで「広島湾異常潮流続く フェリーも欠航」というテロップが出た時に、
長谷川は驚いた。そんなニュース、俺らが広島にいる時には全くなかったじゃないか。
だいたい船も出せないほどだったら、俺たちはどのようにしてここまで連れてこられたんだ?
宮島に住んでる人間はどうやって消えたんだ?―――もしかして、このゲームはカープ
だけの問題じゃなく、広島すべてを動かしてる?
長谷川には答えを見出せなかった。見出したくもなかった。その答えには長谷川には
想像もつかない何か大きなものが隠されているような気がして、鳥肌がたった。冷や汗が
出てきた。即効性の毒が体に回るように、言い表せない不安が自分の体を包み込むようだった。
深夜番組を見ていて(本当に見るだけだったが)ふと水が飲みたくなった。台所へ行くと、
シンクの上のすりガラスの窓の外、何か空全体が光っている。しばし考え、窓を開けた。
小さな窓だったので全てを理解するのはちょっと難しかったが、どうも山頂付近から何か
火の手が上がっているような感じだった。山火事?それとも山頂にある建物でも燃えて
いるのだろうか?
長谷川には何の関係もない出来事だったが、気になった。何が起こったのか見に行きたい。
もちろん危険であることはわかっているけれども、みんながみんな殺し合いをやっている
わけじゃないだろう。自分が下手に出ていれば、攻撃されることもないだろう。そう思って
朝食のあとにそこを出たのだった。
664chapter49―長谷川、山へ(2):02/01/11 04:03 ID:fMS1E1rG

山は意外に高いのか、結構歩いてるのにと思うのだけれど、山頂に着いたような気配は
なかった。途中で川を発見し、それにそって歩いているから、もしかしたらちょっと遠回りに
なっているのかもしれない。
長谷川は足を止めた。噛んでいたガムを吐き捨てると、デイパックの中からペットボトルを
出し、水を口に含んだ。―――うまい!そこまで疲れてはいなかったけれども、それでも
全身がリフレッシュするような冷たさと美味しさがあった。
水の音はかわらずさあさあと耳に心地良かった。なんなら顔の汗でも流そうか。そう思って
茂みの中から川へ出たのだが、流れる水を見てぎょっとした。無色透明のはずの水の中に、
一本、少し太めの赤い水の帯があった。これは―――その正体を本能的に感じ取って
長谷川は視線をあげた。ほんの数メートル先、岩に誰かの上半身が倒れこんでいるのが
見える。我を忘れて長谷川は川の中を駆け登った。ばしゃばしゃとはねる水のことなど
気にもならなかった。
岩まで駆け寄ってその倒れこんでいる選手を見て驚いた。
「倉さん!」
そう、そこにいたのは今年途中までバッテリーを組んでいた倉義和(背番号40)だった。
そのユニフォームの後ろ側には二個の穴が開いていて、それとは逆、胸のほうから
流れ出る血が、綺麗な川に赤い帯を流していたのであった。長谷川は倉の体を揺らしたが、
まだ温かさは残っていたものの、倉が反応を返すことはなかった。
長谷川は茫然とした。―――なんで?どうして死んでるんですか、倉さん?
長谷川の意識が一発の銃声で戻ってきた。一瞬の事で長谷川は立ち尽くしたままだったが、
その弾は長谷川をかすめて倉の首の付け根辺りに命中した。びくっと体を震わせ、
おそるおそるその弾の出所と思われる方向を見た。
長谷川のほぼ右斜め前、茂みの中に一人の選手が立っていた。長谷川と似た体型に
ぼさぼさの髪。今年広島にトレードでやってきた鶴田泰(背番号17)が拳銃を構えて立っていた。

【残り29人】
665 ◆CARP8KOI :02/01/11 04:07 ID:fMS1E1rG
話が長くなったのはたしかにそうなんだけど続けていくなら終わりはまだ見えてこない。
終わらせるならこの辺を引き際とするしかないんじゃないかな、と。考えときます。
666代打名無し:02/01/11 10:34 ID:E4rzif4i
ついにバトロワDVD買っちゃったよ。
原作よりコミックより映画の方が良くできているのは
深作監督の技術か、たけしの演技力か?
667_:02/01/11 12:04 ID:GcM4grtg
やめないでー
668代打名無し:02/01/11 18:07 ID:0s35Gc5f
>64
64さん乙カレー!!
まさか鶴田が殺したとは、ハセガーと鶴田の対決だすな。
ワクワク!ドキドキ!

PS、64さんやめないでくれ〜!
   自分はカプバトロアを見るのがものすごく楽しみだから・・・
   でも、無理はしないで、身体に気を付けて・・・

   
669代打名無し:02/01/12 00:41 ID:cS51QWhM
はげましのおたよりを出したいくらいです。
やめたら、いやんです。
>666 たっちゃんだったらもっとよかったり?
670代打名無し:02/01/12 01:07 ID:OoF1WWAV
鶴たん冷静で、何を考えてるんかわからんっつーイメージあるからな。
ちょっと怖い存在か。
いつも地味なキムピンがなかなかカコイイ死に方で良かったYO!
自分も続き楽しみにしています。
671代打名無し:02/01/12 03:14 ID:NFJb2FL3
鶴タン対ハセガー・・・どーなんるんだ?ワクワク

自分も、64さんカプバトロワファソです。
いっつも楽しみにしてるんで、止めて欲しくないです!
これからもがんがってください。
672名無しさん@公演中:02/01/13 10:58 ID:sZjCumLM
保全書きこ
673代打名無し:02/01/13 21:51 ID:TSggz3Pi
age
674代打名無し:02/01/15 01:00 ID:PSQ+R5/H
たけし「あんな小市民の悪口真に受けちゃってどうするの?」
675chapter50―ゲームの理由(1):02/01/15 04:54 ID:IcG1Qzl9

滝のほとりから場所を移し、三十メートル程下った辺りの茂みの中に新井ら三人は隠れていた。
木村のトカレフを合わせ、一人一つずつ銃を持っていた。移動してきた後、まだ木村の死が
頭を離れないのか、誰も口を開かず沈黙だけがその場を包んでいた。
「なんでこんなゲームなんかやらされてるんだろう、俺たち」
ふいに森笠が口を開いた。
「そりゃ理由は達川さんが言ったけれど、でもどうしても納得いかない。
 俺たちを試したいんだったら、他にいくらでもやり方はあるはずなのに…」
「そうだな」
前田の言葉に二人が反応した。
「オフをなくすとか、ゴルフをさせないとか、無休キャンプをやるとか、
 うちのチームならなんでもやりそうだ」
冗談なのかそうでないのかいまいち判断しにくい台詞にどう反応していいか、新井にも
森笠にもわからなかった。
「けどな、それじゃ駄目なんだ。新井、このまま選手が死んでいったらどうなる?」
「え?―――数が、減ります」
「あほ、それは誰でもわかる。減ったらうちのチームはどうなる?」
「…いや、チームっていうか、チームにならないじゃないですか」
前田はただ押し黙ったまま、新井を見つめている。その横から突拍子な声がした。
「あ」
「わかったか、森笠」
「けど、別にこんなゲームで選手の存在まで消し去らなくても、
 他のチームに引き取ってもらうとかあるじゃないですか」
「まあ二十年くらい前の年俸だったら、どこも余裕はあるじゃろう。けど、いまじゃ年俸なんか
 億単位が当たり前になってきとる。正直言ってどこの球団もいっぱいいっぱいだ。
 まあ、それでも、いいプレーヤーはほしがられるが」
676chapter50―ゲームの理由(2):02/01/15 04:54 ID:IcG1Qzl9

「じゃあ」
「―――今のプロ野球界何でもありだ。特に金を持ってる球団が裏でいろいろやってくる。
 金本や緒方なんかツバつけられそうなもんだ。そう思ったんだが、
 みんなこのゲームに参加させられてる」
森笠はだいたいのことがわかったようだが、新井にはいまいちピンと来ない。
「まさかとは思ったんだが―――その裏工作の得意なあそこも、うちと同じ目にあってたら?」
「それはないでしょう。かりにも球団の盟主なんですよ」
「そりゃそうだ。しかし、前にあそこのおっさんは1リーグ10球団にしろと吠えたことがある。
 今年はオーナーを降りるとも言っとったな。そりゃ結構なことだが、あのおっさんが
 他人色に染まったチームを見たいと思うか?わしは無理だと思うがな」
苦笑して、前田は言葉を続ける。
「だとしたら、オーナー降りるついでに球団ごとなくしてしまえばいい。
 いまやあのおっさんの戯言には誰も逆らえん」
森笠の顔がこわばった。そんな夢物語みたいな話、あるわけがない。そう思いたかったが、
人物が人物だ。もしかしたら―――
「けど、僕たちの立場は?」
「そんなもんどうだっていい。クジでも何でも、決めようと思えば決めれるし、うちはあそこには
 何度か潰されかけた事もあったらしいけえ、その影響もあるかもしれん」
森笠の思いつめたような顔にちらっと視線を向け、前田は最後に一言、言った。
「そう思い込むな。あくまで、想像だ。今のわしらには現実を知ることはできん」
677chapter50―ゲームの理由(2):02/01/15 04:54 ID:IcG1Qzl9

「あの―――」
新井が横から口を挟んだ。
「―――今、何の話してるんですか?」
その瞬間森笠は開いた口がふさがらなくなり(まさに言葉どおり!素晴らしいポカン口だ)、
前田はこりゃダメだと言わんばかりに頭を両手で抱え込んだ。しかしすぐに顔を上げると、
いつもの眼光で新井をきっと睨んだ。
「…このド阿呆がっ!だから選手がいなくなるってことはな―――」
説明の言葉を続けようとしたその時だった。銃声が連続した。二発、三発。先に鳴った銃声の
方が、わずかに音の響きが大きいような気がした。また一発響いた。今度は小さいほうの音だ。
「銃撃戦だな」軽い舌打ちの後、前田が言った。「元気な連中だ」
当座自分たちに危険がないとわかりほっとした新井だったが、しかし、知らず知らずのうちにも
唇を噛んでいた。また誰かと誰かが殺しあっている。しかも、すぐそこでだ。そして、自分は
ここで息を潜めてそれが終わるのを待っている。
「止めに行こうなんて思ってないだろうな、新井」
前田が新井の思いを見透かして(何を考えているか本当に簡単にわかるな、こいつは)言った。
新井はごくっと唾を飲み込み、やや口ごもるように「いや…」と言った。けど―――
また銃声がした。そして再び沈黙。新井はぐっと奥歯を噛み締めた。右手にはスミスアンドウエスン。
「あ、こら」
前田が言うのが聞こえたが、新井はもう駆け出していた。

【残り29人】
67864 ◆CARP8KOI :02/01/15 04:58 ID:IcG1Qzl9
トンズラしようかとも考えたんですが、細々とやっていこうと思います。
>>667-671のみなさん、ありがとうございました。
679名無しさん@公演中(672):02/01/15 12:17 ID:2gCj8Q8s
うぷお疲れさまですー<64さん
マイペースでいいんでがんがって書いてくださいー
680代打名無し:02/01/15 18:16 ID:ESFTuOwt
64さん乙カレー!!
これから、まだ寒いだろうけど、風邪にお気お付けて!!
681代打名無し:02/01/16 03:38 ID:4SfH8wgq
64さんお疲れさまです。新年一発目のメイン3人ですね。
( ̄粗 ̄)さん…やっぱアホや…(w
いつも楽しみにしてますんで身体にお気をつけて頑張って下さい!
682代打名無し:02/01/16 23:34 ID:sMAKGuRm
age
683代打名無し:02/01/17 02:33 ID:wMfZ2gYJ
ヨカタ・・・続けてくださるんですね!
今年初カプバトロワに粗いさん登場で早速笑ってしまった(緊迫した場面だけど)

ホントに嫌になったときとか無理にやらないでイイですからね。
64さんも自分らファソも楽しくやりたいですから。
684chapter51―無能な保安官(1):02/01/17 04:15 ID:6AEfwcIx

反射的に駆け出した後、新井は四方に目を配りながら斜面を上がった。目の前は深い
藪に覆われていたが、それをかきわけ進んだ。そうしているうちにも銃声は交錯していた。
上り勾配の斜面が急に行き止まりを迎えて、その先を見た。斜面の下には川が流れていて、
その向こうの藪に隠れるように、鶴田泰(背番号17)が姿勢を低くしていた。そしてその
鶴田がうかがっているのは、川を挟んだ先の茂み(つまりは新井と地続きなのだが)、
華奢なユニフォーム姿が見え、それが長谷川昌幸(背番号19)だとわかった。もちろん、
二人とも銃を手にしていた。二人の距離は、川を挟んで十メートルもないだろうか。
どういう状況で撃ち合いになったのかはわからなかった。しかし、この光景をただ指を
くわえて見ているわけにはいけなかった。少なくとも、これをやめさせなければ。
そうして状況を見て取っているうちにも、長谷川が鶴田に向けて一発撃った。何だか、
子供が水鉄砲で遊んでいるような手つきだったが、それが水鉄砲ではない証拠に
銃発音が響き、真鍮の小さな薬莢が空に舞った。鶴田が二発続けて撃ち返した。
こちらの方は随分堂にいった撃ち方で、薬莢は飛ばなかった。一発が長谷川の近くに
あった木に当たり、乾いた木皮がくずとなって上がった。長谷川が慌てて頭を引っ込めた。
新井の位置から鶴田のほぼ全身が見えており、鶴田がリボルバーのシリンダーを開き、
空薬莢を排出するのが見えた。それで、鶴田の左手が真っ赤に染まっているのがわかった。
腕のどこかを長谷川に撃たれたのかもしれない。その手で、しかし、かなり素早い動作で
新しい弾を詰め直した。また長谷川の方へ身構えた。
685chapter51―無能な保安官(2):02/01/17 04:15 ID:6AEfwcIx

それもこれもわずか数瞬の事だったが、新井は行動を起こす前に、悪夢を見ているような
感覚に襲われた。長谷川は今年やっと花開いたピッチャーで(阪神戦には強いな、と
北別府コーチから半ばからかいともとれる言葉ももらっていたが)今年は九勝をあげていた。
一方の鶴田は紀藤真琴とのトレードでカープにやってきて、途中怪我はあったものの
要所要所の試合でナイスピッチを見せていた。二人とも来年も先発ローテを期待されていた
投手なのだ。その二人が撃ち合っている。真剣に、それも実弾でだ。当たり前だが。
―――そんなことを悠長に考えている場合じゃない。
新井は脚に力をこめて立ち上がると、空に向けてスミスアンドウエスンを一発撃った。
なんだが西部劇に出てくる保安官みたいだな、とちらっと思い、しかし間髪いれずに叫んだ。
「やめてください!」
鶴田と長谷川がぎくっと凝固し、同じタイミングで新井の方を振り返った。新井はその
二人の顔を見ながら続けた。
「撃ち合いなんかしないでください!俺は前田さんと森笠と一緒にいるんです!
信用してください!!」
なんと陳腐な台詞だろう。しかし今の新井にはそこまで考えている余裕はなかった。
すぐに新井から視線をはずし動かしたのは鶴田の方だった。再び、相対する長谷川へと。
そして―――長谷川はぼんやり突っ立って、新井の方を見ていた。新井はその一瞬に
気づいた。長谷川の体は半分茂みから露出し、がら空きだった。
完全にノーガードになった長谷川に向けて、鶴田が銃を構え、撃った。二発続けて。
686chapter51―無能な保安官(3):02/01/17 04:15 ID:6AEfwcIx

一発目が長谷川の右の肩口に当たり、長谷川の体がくるっと右に半回転した。二発目が
半回転したことによって鶴田のほうを向いたその左胸をとらえた。新井は見た、長谷川の
その胸から噴水かなにかのごとく赤い血が勢いよく噴き出るのを。長谷川は茂みの中へ
どっと崩れ落ちた。鶴田はちらっと新井を見やり、すぐに身を翻すと川とは反対の方へ
走り出した。茂みに飛び込み、新井の視界から消えた。
「―――くそ!」
新井はのどの奥からうめき、迷った後、長谷川の倒れた茂みへと走った。
長谷川は茂みの中仰向けに倒れていた。自分の手で左手の傷口をおさえていたが、
血は止まることなく流れ、長谷川の左手も赤ペンキの缶につっこんだように赤い液体に
まみれていた。新井はかけよったが、もう虫の息だった。
半開きの目で新井の姿を確認した長谷川が「倉…さんが…」と呟いた。聞き取ることが
出来ないようなか細い声で。
「倉さんがどうした?」
新井は必死に長谷川に問いかけたが、長谷川からの答えは返ってこなかった。ふうっと
一つ息を吐いて、そのまま息絶えた。
新井はぶるぶる震えていた。真っ白になった頭の中で何度も反芻していた。もう長谷川は
起き上がることはないのだ。あのマウンドにのぼる事もできないのだ。俺がもう少しうまい
やり方をしていたら、長谷川は死なずにすんだんじゃないのか?
新井の後のついて様子を見にきたのか、茂みの中から前田と森笠が顔を出していた。
新井の膝元で死んでいる長谷川を見て「だから言っただろ」と言いたそうな表情を前田は
見せたが、しかし、何も言わなかった。ただ、冷静にも長谷川の銃とデイパックを拾い上げ、
それから思いついたように腰を屈めて右手の小指側で長谷川のまぶたを伏せさせると、
「行くぞ。早くしろ」とだけ告げた。
687chapter51―無能な保安官(4):02/01/17 04:16 ID:6AEfwcIx

新井はその場を動くことが出来なかったが、長谷川の最期の言葉を繰り返すように、
「倉さんが」と呟いた。
「倉さんがどうかしたんか?」
「長谷川さんが最期に言った。倉さんが、って」
森笠と新井のやり取りを聞いていた前田がまた一つ舌打ちをすると、デイパックをその場に
放り出し辺りを見回し始めた。茂みに一通り目を通した後で、川へ出てすぐ「森笠」と呼んだ。
森笠が慌てて前田のもとへ行くと、前田が川下を見るようあごで促した。視線をやると川下の
岩の上に誰かが倒れこんでいる。間違いない、背番号でわかった。倉だ。
「あれ、とってこい」
「僕がですか?」
「わしゃ脚が痛いんじゃ」
睨まれながらそう言われて、誰が断ることが出来ようか。川を駆け下り倉の死体を抱き
かかえると、また駆け上った。重力に逆らうことのないその死体は思ったより重かった。
前田の横を通り過ぎるとき、横で声がした。
「長谷川と一緒においといてやれ」
倉の死体を抱えた森笠を見て、ようやく新井は長谷川の言わんとすることを理解した。
長谷川の横に寝かされた倉の胸の部分は背中側よりも大きな穴が開いていた。二人の
死体を目前にしてからも新井は言葉が出なかった。―――長谷川さんはこの目で見たから
ともかく、倉さんまでも鶴田さんは殺めてしまったのか?
「行こう。いい加減危ない」
前田が再び長谷川のデイパックを手に取った。

【残り28人】
68864 ◆CARP8KOI :02/01/17 04:24 ID:6AEfwcIx
そうっすよね、皆でマターリが一番だ。そんな空気が読めなくて正直、すまんかった、ということで。
ぼちぼちペースアップしていこうと思うとります。キャンプが始まっちまう。
689代打名無し:02/01/17 22:36 ID:BrxlxmTo
あ、粗い…。
七原@原作の場合は、正義感とか仲間意識もありって感じがしたけど、
粗い@カプバトロワはその要素プラス「あらら、やっちゃったよ…」感がどうしても消えない(w
ごめんよ、粗い。
690代打名無し:02/01/17 22:45 ID:BrxlxmTo
ついでにあげときやす。
691代打名無し:02/01/19 03:20 ID:MYEbiMPw
ユニフォーム変更は
このゲームで血を流しすぎて
ユニフォームが足りなくなったからですか?
692 :02/01/20 18:36 ID:KatYhZQ2
Age
693代打名無し:02/01/21 15:57 ID:1RimQzgF
揚げ
694chapter52―大下さん(1):02/01/22 03:40 ID:V4xpU0Mp

「玉木さん、ちょっと」
自分の名を呼ばれて、玉木重雄(背番号30)は顔を上げた。
「こっち来てもらえます?あれなんですけど」
菊地原毅(背番号13)に呼ばれるままに窓によって、その指差すほうを眺めた。
「んん?」
目を細めて校庭の先にある道路を見やった。一人の男がバッグを抱え歩いている。
ふと、その男が自分達の方に顔を向けた。
「うわっ!!」
慌てて玉木と菊地原が窓の下にしゃがんだ。
「見ました?あれ」
「見た。大下さんじゃんか…」
「ですよね。あの人もこれに参加してるんですか?」
「知らないよ。―――けど、達川さんとすごく仲悪かったのによくここに来たな、大下さん」
「でしょう?松原さんもいるし、まさかいるとは思わなかったんですけど」
「にしても、なんでこんな所をうろついてるんだ、あの人は?」
「さあ―――遅れてやってきたとか」
「そうかなあ。あの人ならまず真っ先に陣頭指揮をとりそうなものだけど」
「もしかして呼ばれてないけど勝手にきたとか」
「そこまでするかあ?もしそうだとしても、何しに来るんだ?」
「いや、僕らを助けに」
菊地原の一言に玉木が吹き出した。
695chapter52―大下さん(2):02/01/22 03:41 ID:V4xpU0Mp

「そりゃいくらなんでもないよ。だってあの大下さんだよ」
「ですかねえ。あの人って結局は愛情の裏返しでああなってると思うんですけどねえ」
「うーん、それにしては厳しすぎるよ。あの時のキャンプ覚えてるだろ?
 野村さんなんか素手でノック受けてたんだぞ」
「あれはさすがに酷かったですけど、達川さんがとめなかったっていうのもあったし」
「達川さん云々の話じゃないよ。たぶん坊主が流行ったのもあの年じゃなかったっけ?」
「坊主、いいじゃないっすか!楽なんすよ、これ」
菊地原が自分の坊主頭をなでながらいうので、玉木はちょっとだけ呆れた顔を見せた。
―――坊主ねえ?ファッションとしてならまだしも、うちのチームの連中が集団でやると
「根性」とか「忍耐」とか、そういう感じなんだよなあ。
そう、玉木は坊主頭を見てもあまりいい気分はしなかった。なにせ彼はハイスクールまで
ブラジルで過ごしてきた男だった。サッカー同様、野球は楽しくやるものだと思っていたので、
来日当初は言葉よりも野球観の違いに戸惑ってしまった程だった。
「…もういいよ。やめとこう、大下さんの話は。どうせ見回りか何かだろう」
それだけ言って玉木は再び頭を出した。大下の姿はもうなかった。
「玉木さーん」
扉の向こうでまた自分を呼ぶ声がした。玉木は腰を上げた。
「とにかく、大下さんがいるっていったらみんな驚くかもしれないから、
 これは僕とキクだけの秘密な」
それだけ言い残して、玉木は部屋を出て行った。それを見届けてから、菊地原も再度
窓の外を見やった。
「大下さん、いい人だと思うんだけどなあ…」

【残り28人】
69664 ◆CARP8KOI :02/01/22 03:45 ID:V4xpU0Mp
ペースアップはどこへやら。時間軸で見ると52は48の大下編とかぶってます。

>>689
まさにそういう感じを出そうとしてるんでうれしいです。
>>691
書き始めたときはまさかユニ変更があるとは思わんかったよ。
697代打名無し:02/01/24 00:55 ID:NemPOu9j
この二人って「  」グループのメンバーでいいんですよね?
698名無しさん@公演中:02/01/25 12:34 ID:pxosS0Q/
保全
699代打名無し:02/01/26 12:04 ID:cfHMvyQp
素直なキムチとクールなたまきゅんに萌え〜。
>>697
ということは灯台?
残酷だけど好きなんだよなぁ、あのシーン。
700代打名無し:02/01/26 19:42 ID:iLRbUILO
保全age
701代打名無し:02/01/27 23:30 ID:qqZgCzMK
ついにこのスレも終わりかな?
70264 ◆CARP8KOI :02/01/28 03:19 ID:oa5up1sA
>>701
そういえば1週間たってるね。最近はとある祭りから目がはなせないもので(w

それはさておきこのスレもレス700を越えました。来週からはキャンプも始まるので
板自体も動きが活発になってくるだろうし、まあいろいろ考えたわけです。
そりゃ続きは書くんですが。書くけど、新スレですよ。
今は、たてる気がないです。保存庫でマターリいくのもええことよ、と。
けど適当に作ってあるんで足を運ぶのも大変だと思うとります、同時に。
その辺どうですかね?こんなとこで聞くのもどうかと思いますが。

祭り一段落しそうなところで53うぷしときます。
703chapter53―がら空きの背中(1):02/01/28 04:22 ID:oa5up1sA

弥山の西の中腹、高木低木生い茂った斜面の一角に腰を下ろしたその男は、ずっと
その視界にいる男だけを追い続けていた。何せ目の前で自分の友人を殺されてしまったの
だから、そいつに。せっかく狙っていた自分の友人たちを。―――ま、貴方がかわりに
なってくれるんなら別にいいですけど。
彼が広島東洋カープに入って一年近くがたとうとしていたが、彼の秘密を知るものはまだ
いなかった。野球選手に似合わず極端に身だしなみに気を遣う様は半ばからかいの対象に
なっていたが、しかし、その正確な理由は誰にも知られていなかった。仲間の中でも一際
愛嬌のある顔をした男―――石橋尚登(背番号65)はとにかく――――
オカマだったのだ。
位置関係を言うならそこは、木村拓也が岡上に銃殺されたあの滝から西に百メートル程の
所にあった。ここまでに彼は否応なしに田村恵の死体、そして高橋建や横山竜士の死体も
見せつけられていた。金本が殺したわけではないが、行きずりで黒田博樹の死体まで見た。
そう、結局はかれこれ八体もの死体を見せられていた。オカマと言えども立派な男性、
死体を見たところで恐怖など全く感じなかった。―――黒田さんと高橋さんはイイ男だった
から、ちょっと惜しかったかしら。
石橋が今見下ろしている茂みの中には、ゲーム開始以来既に七人を片付けた、あの金本
知憲(背番号10)がいた。もう一時間以上、そこから動いていなかった。
か・ね・も・と・さ・ん。ね・ちゃ・っ・た・の?
石橋は薄い唇を歪めてにっと笑った。―――不用心じゃないの?まあ、さすがの貴方も
アタシみたいな下っ端がここで貴方を見張ってるなんて思わないでしょうけどね。
そう、石橋はデイパックを受け取り厳島神社を出た後まっすぐ約束の場所へ向かった。
林を抜ける直前、長崎元と誰かが話しているのをみて、駆け出そうとしたその時に、その
“誰か”の銃が火を噴いたのである。長崎の倒れた近くには他の選手の死体も見えた。
きっと約束を交わしていた四人は皆殺されたのだろう。
704chapter53―がら空きの背中(2):02/01/28 04:23 ID:oa5up1sA

その後、その場を離れて歩き出した金本の後をつけ始めるまでに(多少それまで時間が
あったから、もしかしたら金本さんはアタシを待っていたのかもしれない。あのね、アタシは
そんなに馬鹿じゃないわよ)既に石橋は今度の行動方針を決定していた。
このゲームで最後まで生き残る選手を選べといわれたら、石橋はまず真っ先に金本を
挙げたであろう(勿論他にも候補はいたが、何より皆、致命的な怪我持ちであるという
ところが減点対象だった)。そしてその思いは、金本がこのゲームに乗ったのを確認した
ことで、ますます強くなった。おまけに、少なくともマシンガン(これは一体、金本の武器
だったのか、それとも、長崎以外の三人のうちの誰かの武器だったのか?)と、長崎の
持っていた拳銃を手にしていた。恐らく、正面からぶつかっては誰も金本に勝てないだろう、
と思えた。
石橋は、顔に似合わず(というのは失礼な表現だが)俊敏な男だった。足も速くてそれが
村上スカウトの目にもとまったのだが、その他にもどこかに忍び入ったり、万引きしたり
(若気の至りよ)、果ては尾行まで(好みの男の子を見つけるとストーカーしまくった)できた。
加えて、石橋のデイパックの中から出てきた武器は、ハイスタンダードの二二口径二連発
デリンジャーだった。カードリッジはマグナムだから恐らく至近距離なら致命傷を与えることは
出来るが、撃ち合いに向く銃ではない。そこで石橋は考えた。たとえ金本がこのまま最後まで
生き残るとしても、その過程のうちには必ずや誰か匹敵する相手―――多分、あの前田智徳
とか(あんなオーラを持つ人が普通の女と結婚しちゃうなんてとても残念だったわ)、あるいは
ずる賢そうな印象でいけば東出輝裕(そうね、あのクールさが好みなのよ)とか―――と
やり合い、多少の手傷を負うに違いない、と。そして、その戦闘の疲労も蓄積されるに違いない、と。
だったら―――アタシは最後まで金本さんを追っていって、最後の最後に金本さんを後ろから
撃ってやればいいんじゃない?金本さんが最後の誰かをやっつけて気を抜いたまさにその
瞬間に、このデリンジャーで。まさか金本さんだって、自分自身が追われてることとは思いも
しないでしょ?コトに最初の集合に来なかったこのアタシが追っているなんて?
705chapter53―がら空きの背中(3):02/01/28 04:23 ID:oa5up1sA

同時にそれは、チームメイトを次々に殺さねばならないというこのゲームで、自分が手を
汚さずに済む方法でもあった。この点、石橋の倫理観が強かったというわけではなく、ただ、
面倒なだけだったのだ。―――だって、誰かを殺してる隙をつかれて別の誰かに殺されたら
ただのあほじゃない。誰かを殺すのは金本さん、アタシはただ金本さんの後を追っていくだけ。
ま、最後は言わば正当防衛で金本さんを殺すんだけど。だって、金本さんを殺さないと
アタシが殺されちゃうんだもの―――といった具合に。
また、金本を尾けていくことには別のメリットもあった。例の“禁止エリア”とやらの問題
だった。金本も当然それは考えに入れているだろうし、多少距離をとってくっついていけば、
エリアにかかる恐れはないと判断した。もし不安でも、止まったところで地図をチェックして
エリアに入っていないことを確認すればいい。
そして、事態は石橋の考えたとおりに進んでいた。金本は西松原を離れると、南の道路に
沿って移動し始めた。途中、その道沿いの民家二、三件に入り(きっと何か必要なものを
手に入れたのね。結構マメなんだから)、途中の寺で田村恵の姿を発見した。後ろから
あっさり田村を殺してしまうと、また南へむかい山に入った。日も落ちようとする頃に、高橋
建と横山竜士がすぐ近くの公園からマイクで呼びかけを始めると即座に動き出し、結局
誰もその呼びかけに答えないのを確かめた後(そういえばあの時、別の銃声がした。
あれはどうも、高橋と横山に呼びかけを停止し隠れるよう促したのだと思えた。あら、すごい、
こんな中でも人道的な選手がいるんだわ、と石橋は感動した。感動しただけだったが)、
二人を撃ち殺した。そしてそのあと再び山へ入った。それからは寝てしまったのか移動する
事もなく一夜を明かした(ここで寝首を掻いてもよかったが、一度決めた予定を変更するのも
馬鹿馬鹿しかったので、石橋も大人しくしておいた)。明け方に一発の銃声が響いて、
金本も反応を示したがそれは見送った。それで、これはつい先ほど、それ程遠くはないと
思われる距離で銃声が聞こえると、今度は動き出した。しかし銃声を追った金本が見たのは
(従って石橋が見たのは)、木を背もたれにして座っているように死んでいる黒田博樹だった
(黒田を殺した選手か、あるいは第三者がそうしたのだろう。なにせ背中に銃弾を受けていたの
だから)。金本は黒田の荷物を探していたのだろうか、しばらくあたりを見回していたが、
どうやら荷物は誰かに持ち去られた後のようだった。そしてそのあとまた少し動いて―――
今、ここ、自分のすぐ下の茂みの中に金本はいるのである。
706chapter53―がら空きの背中(4):02/01/28 04:24 ID:oa5up1sA

金本の作戦は単純なようだった、少なくとも今のところ。誰かの所在がわかったら、駆けつけて
弾をばらまく。高橋建と横山竜士を殺した容赦のないやり口にはいささかあきれもしたが
(全く金本さんって武闘派というか肉体馬鹿というか、やることが無茶苦茶なんだから。
アタシみたいに頭を使わないと、脳味噌まで筋肉になっちゃうわよ)、しかし、そんなことに
ケチをつけてもはじまらない。とにかく今は、金本が自分の存在に全く気づいていないと
いう事に満足すべきなんだろう。金本の行動に逐一注意しないといけないせいで、石橋は
一睡も出来なかったが、二、三日の徹夜くらいどうってことなかった。金本と比べても十は
若いし、男よりオンナの方が基礎体力があるらしいので。ものの本によるとだが、まあとにかく。
ふと視界の端、眼下の茂みがちらっと揺れた。石橋は慌ててデリンジャーをつかみ出し、
デイパックを左手にとった。茂みの端から、金本の頭が現れた。ゆっくりと左右に視線を
走らせ、それから、東の方角―――ちょうど石橋の左手、斜面の上―――に目を向けた。
銃声がしたわけではない。物音がしたわけでもない。金本が見ているほうに、一体何が
あるのだろう?石橋も同じ方向に視線を飛ばしたが、特にそこに動きがあるわけでもなかった。
金本はすっと茂みから全身を出した。左肩にデイパックをひっかけ、右肩にはマシンガンを
吊って、そのグリップを握っている。木々の間を縫うように、斜面を登り始めた。すぐに石橋の
いる高さまで至り、さらに上へ向かった。それで、石橋は自分も身を起こすと、後を追い始めた。
石橋の動きは、百七十六センチの体に似合わず猫のようにしなやかだった。木々の間に
ちらちらとのぞける金本のユニフォームから、ぴったりに二十メートルの距離を保っていた。
この点、確かに石橋にはそれなりの運動能力があったのだと見てとっていいだろう。そして、
前を行く金本の動きもまた、正確で迅速だった。時々木の陰に立ちどまっては前方を伺い、
深い茂みのあるところでは、地面に膝をついてその下を確かめてから進んでいた。ただし―――
背中ががらだわ、金本さん。
707chapter53―がら空きの背中(5):02/01/28 04:24 ID:oa5up1sA

そのまま百メートルばかり進んだだろうか。ふと、金本が足を止めた。金本の前方で木々の
列が途切れ、未舗装の細い道が横切っていた。―――これは、登山道。さっきも横切ったわ、
黒田さんの死体を見る前に。
そして、今金本が目を向けている右手の方、そこはちょうど山頂までの道のりの休憩所と
いうようなことなのか、ちょっとした広場になっており、一脚のベンチとともにベージュ色の
プレハブトイレが備え付けてあった。金本は辺りを見回し、さらに石橋のいる背後にも目を
向けたが、石橋はもちろん、既に茂みの陰に身を隠していた。それで、金本はすっと道の
方に出ると、そのトイレに駆け寄った。ちょうど石橋の方を向いている扉を開くと、そこに
入った。また辺りを確かめ、静かにドアを閉じた。何かあった時にすぐ逃げられるようにと
いう事なのか、完全には閉め切らず、わずかに隙間を空けていた。
それを見ているうちに石橋は何だかおかしくなって、相変らず身を低くしたままではあったが、
笑いを噛み殺さなくてはならなかった。確かに、石橋がずっと金本を追っていたその間中、
金本が用をたした場面はなかった。あるいは、高橋と横山を殺す前に入った家でトイレを
借りたのかという推測も立ったが、まあ、どっちにしてもまるまる一日我慢できるようなもの
じゃない。多分、じっと茂みの中に身を潜めている間に済ませているのだろうと思っていた
(石橋はそうした。音を立てないのに苦労したが)。しかし、そうではなかったのだ。―――
わざわざ用を足すのにきちんとしたトイレを探すなんて、とても金本さんらしくないですね、
湯布院キャンプでは毎年半ケツを出しているのに。
すぐに、水が便器を叩いているのだろう、ぱらぱらという音が石橋の耳に届いてきた。
それで石橋は、また笑いを噛み殺さずにはいられなかった。―――ねえ、雅人。貴方を
殺したのはこんなに面白い人だったのよ。
708chapter53―がら空きの背中(6):02/01/28 04:25 ID:oa5up1sA

石橋の脳裏には、金本に殺された仲間の姿がよみがえっていた。特に同い年の甲斐雅人
(背番号57)―――飯を食うのも、練習するのも、寮の部屋でゲームしたりマンガを読んだり、
何をするのも一緒だった彼はもうこの世にはいない。そのことは石橋を悲しみのどん底に
突き落とすのに十分だった。なぜならば、甲斐こそが石橋の人生の伴侶(どちらがどちらで
あるかはこの際放っておくとして)だと、石橋本人は確信していたのだ。―――ああ、こんな
ことになるって分かってたんだったら、アタシも雅人もプロには入らなかったわよね。
なんだか「どっちが先に一軍に上がるか」なんて話してたのが馬鹿みたいだわ。初めて
出会った九州大会に戻りたい。
石橋と甲斐は去年秋の九州大会で対戦していた。二人が顔を合わせたのは九州大会の
二回戦だった。先制は高鍋、初回の甲斐のツーラン。しかし波佐見もその裏に逆転、
その後はシーソーゲームになった。試合を決めたのは石橋自身のスリーラン、投手は
三回からマウンドに上がっていた甲斐だった。結構大きなホームランでそれ自体の思い出も
あったが、何より打たれた甲斐のうなだれる姿が石橋にはとても華麗で素敵に見えたので
ある。その姿を忘れることはなく、ドラフトで甲斐と同じチームに入団できると知った時には
どれほど喜んだことか。入団して多少打ち解けた頃に(石橋のオトメゴコロでは話しかける
のも精一杯なのであった)九州大会の話をしたら「打たせてやったんだよ」なんてとぼけてた
けど(センバツをかけた試合でそんなことするわけないじゃない)。そんな幸せな日々が
二度と帰ってこないと思うだけで石橋の胸は潰れそうになるのだった。
709chapter53―がら空きの背中(7):02/01/28 04:26 ID:oa5up1sA

ぱらぱらという音はまだ続いていた。石橋はまた小さく笑みを浮かべた。―――随分我慢
してたのね、金本さん。長く続くその音を聞いていて、石橋の心がちょっとだけ揺れた。
―――もしかしたら、金本さんはアタシが尾けていたのに気づいてた?用を足しながらも、
もしかしたらあの中でこれからのことを考えてるの?いいえ、まさか。これだけ長いのは
ずっと我慢してたからでしょ。だいたいアタシに気づいてたら、あんなに背中をがら空きに
して移動したりなんかしないわよ。
「ねえ、背中がら空きだよ」
―――そうそう、背中がら空きなんかでね。
と納得しかけて、一気に血の気が引いた。その声の主を知ろうと石橋は慌てて振り返ったの
だが、その視線の先には銃口があった。目の前でいきなり何かが爆発して、石橋の顔は
ちょうど目の間のあたりから破裂した。銃弾の勢いで後ろに弧を描きながら、いろんなものが
飛び散った。もちろん、即死だった。
「金本さんが逃げたの、見てなかったの?」
顔が形をなしていない目の前の死体に向けて、東出輝裕(背番号2)は冷たく言い放った。
その死体をまたいで、トイレのドアを開けた。そのトイレの中、天井から水の入ったボトルが
ひもで吊り下げられていて、吹き込んだ風によってゆらゆらと揺れた。恐らくナイフか
何かで穴をあけたものだったのだろう、そのボトルから細い水の線が落ち、ボトルの動きに
合わせて、ぱたぱたっ、ぱたぱたっ、と音がしていた。
―――金本さんは要注意だな、意外に考えて行動してるし。
銃声をあげてしまったのでは、誰かがやってくるかもしれない。東出はそれだけを確認すると、
再び藪の中へ入って行った。  

【残り27人】
710代打名無し:02/01/28 06:00 ID:K75ESMMk
(1)
>木村拓也が岡上に銃殺されたあの滝
×岡上→○栗原 だった気がするんですが。
ツッコミスマソ
71164 ◆CARP8KOI :02/01/28 06:07 ID:oBTi+uzy
見直したつもりが…ご指摘の通りです。祭りどころじゃなかった(;´д`)
712代打名無し:02/01/28 16:08 ID:B+0tIF4j
オカマや……オカマが出てきた……(笑)
にしても、月岡=石橋かい!
713代打名無し:02/01/29 02:06 ID:VDmgm84c
甲斐タン狙いだったのか、石橋……(w

個人的に、町田と浅井がどうなるのか非常に気になってます。
原作の誰か?それともオリキャラ?でてくるのが楽しみだ。
714代打名無し:02/01/29 02:36 ID:z8tIm60M
オオ!!続きだ!乙です。
つい最近大野で会ったばっかだから余計におかしい(w<オカマ石橋

715代打名無し:02/01/29 10:48 ID:aKGEhWk3
ダーク東出(w
716お前らやおいオタ女以下:02/01/30 00:34 ID:JtTgocEM
709 :名無しさん@どーでもいいことだが。 :02/01/29 20:59 ID:E/7TdNoA
同人もさることながら矢級板の場トロ和スレなんか実はかなりやばいのではと不安。
場トロ和のほうがある意味801よりまずいような・・・


717反転石:02/01/31 02:49 ID:f4hsBWaw
原爆被災者救済上げ
718代打名無し:02/01/31 20:23 ID:1fRZjAr5
どの選手でもいいから武器にH&K MP-5サブマシンガンとMGLグレネードランチャーを頼みます。
719代打名無し:02/02/02 01:54 ID:xzaLTfdm
保全
720代打名無し:02/02/02 04:45 ID:YnDT6nwW
このあとは確か……(メール)
72164 ◆CARP8KOI :02/02/03 01:19 ID:+V9/JxF6
>>720のメール欄じゃないけど発熱中。続き遅くなりますスマソ
>>718 わかりました。
722名無しさん@公演中(698):02/02/03 23:30 ID:ohhp5PMt
>64さん
お身体お気をつけて、早くなおしてくださいね〜。
723代打名無し:02/02/04 00:32 ID:sV5keKHS
今年、修平は活躍するかな?
724代打名無し:02/02/04 00:34 ID:VRTvViwW
>723
オプム戦の開幕投手らしいね。去年はハセガーだった。期待の現れ。
725代打名無し:02/02/04 09:10 ID:lHAo6BEf
MP-5は虚人バトロワに出てきたな。毎分800発、30発装填。セミオート、3点バースト、単射の切り替え。
大体大きさは50cmぐらいだったと思うが。
MGLは携行式のグレネードランチャーで連射が利く。結構重いが、火力はすごい。何せ着弾したら爆発だからね。
726代打名無し:02/02/04 20:58 ID:B25sz9Vf
MP-5はセミではなくフルオート。
727代打名無し:02/02/07 01:03 ID:jaGVxK1y
>>713 町田と浅井、コンビで出てくるだろうから、きっと……。
72864 ◆CARP8KOI :02/02/07 04:06 ID:nK2WkTB/
うぷしようと続き作ってたんですが、さすがに眠いんで挫折。明日あたりうぷします。
周囲でもインフルエンザが流行ってますんで皆さん注意してくだされ。

>>727 ありがとうございます。今年のは長引くんですかね?
>>725-726 説明ありがとうございます。未知の分野なんで助かります。
>>727 その二人も出すタイミングを計ってる状況なんですが…。
72964 ◆CARP8KOI :02/02/07 04:07 ID:nK2WkTB/
一番最初のレスは>>727じゃなくて>>723ですスマソ。
730代打名無し:02/02/07 15:42 ID:unpFMMRB
そういやロペスやディアスは出てこないんですな。
一言もしゃべらん冷徹な殺人鬼として出してみても良いかと。
731chapter54―二丁拳銃(1):02/02/07 22:19 ID:6StvwkCf

『…ーい、正午になりました。いつもの定時放送だぞー。』
島中にうるさいくらいに鳴り響いているはずの達川の声がどこか遠くから聞こえるようだ。
―――おかしいな、苦情でも出て音量をさげたのだろうか?はは、そんなはずはないよなあ。
だってここには俺達以外いないはずだ。そうそう、ここで俺たちは…
闇の淵からゆっくりと意識が覚醒してきてそろそろと見開かれる空間から光が差し込んで
―――はっきり目を見開くと同時に栗原健太(背番号50)は思い切り体を起こした。瞬間、
頭に鈍い痛みが走ったが、たいしたことはない。上下左右を見回して、自分がいつの間にか
草むらの中に倒れこんで意識を失っていたという事を飲み込み、同時にあの朝の悪夢、
半狂乱で走っていたこと、そしてその途中で足を踏み外し数メートルの丘を転がりながら
滑り落ちたことが走馬灯のように脳裏によみがえった。つまりは、転がり落ちた先がこの
草むらなのである。太陽は青空の中にある。もし意識の中で響いていた放送が現実の
ものだったのなら、今は正午という事になる。意識を失って数時間しかたっていない。
そして、まだ、ゲームに参加させられたままなのだ。
「起ーきーたー?」
上から降ってきたややのんきとも受け取れる声に目をはっきり見開き振り返った。自分が
落ちてきた丘の上、足を投げ出して薄い笑みを浮かべ栗原を観察していたのは岡上和典
(背番号37)だった。
「こんな所で呑気に昼寝か?」
まさかそんなはずないでしょう。そう栗原は言ってやりたかったが、言えなかった。なぜなら
岡上の口調は純粋に質問するようなものではなく、むしろ全てを知っていて栗原を
からかうかのようにあえて聞いているようなそれだったからだ。不快だった。丘から
落ちた拍子に頭をうったせいもあったのかもしれなかったが(さっきの鈍い頭痛で栗原
自身はそう判断していた。うっていなかったとしたら、何らかの不調の合図なのかも
しれない)、それ以上に岡上の言葉、口調、笑み、態度、とにかく全てが何か不快だった。
732chapter54―二丁拳銃(2):02/02/07 22:20 ID:6StvwkCf

「まあね、一心不乱に走ってたら眠たくなるのも無理ないかな」
そういって岡上はくすくす笑った。―――やっぱり岡上さんは俺の事情を知ってるんじゃん。
そう思うとその低い笑い声さえひどく癇に障った。
「あと、つけてきたんですか?」
投げやりに言葉をぶつけた。すぐに岡上の笑いが消えた。いや、表情にはまだ残っていたが、
それはあくまで口元に浮かんでいるだけで、栗原を見つめるその目はとてもじゃないが
笑いとは対極にあるような感情しかもっていないように見えた。
「そりゃ、こんなゲームの真っ最中だからねえ。殺さないと帰れないんだぞ?わかってる?」
“殺さないと帰れない”―――この言葉でまた木村拓也がスローモーションで倒れ込む
情景が浮かんできて軽い頭痛がした。ああ、この頭痛は木村さんの恨みか?
「寝てるうちに殺してもよかったんだけど、それじゃあんまりでしょ?」
その言葉にぎょっとして再び岡上に視線を戻して、栗原は再びぎょっとした。なぜなら
彼の左手、今まで見えていなかったその左手に握られた357マグナムリボルバーが自分を
標的としているかのようにしっかりと向いていたのだ。瞬時にやばいと判断した栗原は
手探りで周囲に自分の銃が落ちていないか探すが―――ない。銃も、デイパックも、
ない。ない。ない。
「もしかして、武器とか探してるの?嫌だな、先輩に差からう気?」
その嘲笑が混じった嫌な質の声がますます栗原に焦りを感じさせた。しかし、ない。両腕を
思い切り広げて探せるところまで探すが、草と土の感触しか返ってこない。
733chapter54―二丁拳銃(3):02/02/07 22:20 ID:6StvwkCf

「あー、そういえばね」
いかにも笑いをこらえきれない様子で上から声が降ってくる。
「こういうの、落ちてたんだけど」
もしかして、と思った栗原が三度視線を向けたそこには、栗原の拳銃があった。岡上の
右手にあった。銃口はこちらにあった。「それ…」と口にした言葉を言い切るその前に、
『それ』は炎を―――噴いた。左手にあった銃とともに炎を噴いた。栗原は倒れた。血を
ふいて倒れた。倒れて、倒れて―――起き上がることは、なかった。
「二丁拳銃!」
ヒューと口笛をふいて、満足気に栗原の死体を細い煙が出ている両手の銃を交互に眺めた。
久しぶりの拳銃の感触だったが、岡上にはとても心地良く感じていた。このゲームが
岡上の感覚をどこか狂わせてから久しかった。
「…さ、て」
拳銃をポケットとデイパックにそれぞれしまいこみ、立ち上がって尻についた土をはらった。
左膝の痛みは相変らずだったが、どれほどこのゲームが続くか分からない。限りある薬が
ゲームのジ・エンドの前できれるようなことがあってはどうしようもない。この程度の痛みなら
我慢するしか他なかった。そんな心配を振り払うためにも、自分にできることはただ一つ。
殺して、殺して、ただ殺すだけだ。それなら―――
「どっちを先に追おうかな」
丘を挟んで草むらと正反対を眺めた岡上のその視線の先、そこにはほんの数十分前に
激しい銃撃戦が繰り広げられた、あの小川が静かに流れていた。

【残り26人】
73464 ◆CARP8KOI :02/02/07 22:24 ID:6StvwkCf
あまり腰を落ち着けて書くことができなかったので倉庫に入れる時は多少
手を加えているかもしれない。なんか薄っぺらくなったなあ。

>>730 最初に(1章だったかな?)新人と外国人以外と書いたんで。でも
     どこかに登場させる気ではいます。ゲームに参加、は今のところ
     考えてはいないけど。
735代打名無し:02/02/07 22:30 ID:NLStqZOT
>>718
後残っているのでこんな強力武器をもたせる資格があるのは町田浅井の両代打職人しかいないぞ。
736代打名無し:02/02/08 18:28 ID:/lpZDM4i
お鏡コワー。
膝のことがあるのに、弱みを感じさせないな。
あの整ったマユゲと坊主頭で殺しまくるのね。
コワー。
次は誰と会うのだろう。
ウヒョスレで大人気の栗原タソ、合掌。

737_:02/02/08 21:09 ID:m9edCXHb
栗原タンは兄弟スレでも大人気だYO!哀しいYO!
最後まで標準語だったのはちょっと残念
738代打名無し:02/02/10 13:22 ID:kV7OKsvk
玉木とキムチの武器は何なんだろ。
739代打名無し:02/02/11 01:12 ID:hJs9U75U
ハリセンとピコハンだろう
740代打名無し:02/02/13 02:08 ID:ZVmQgv7d
亀の子だわしとお米券に変更
741代打名無し:02/02/14 05:27 ID:bGxPhqEf
続き期待age
742代打名無し:02/02/14 05:28 ID:yeww1tNX
続き期待age
743代打名無し:02/02/15 03:04 ID:GipksRF9

 糸冬
744反転石:02/02/15 03:26 ID:zF2yQKwx
原爆落下期待age
745代打名無し:02/02/16 06:30 ID:a7Lmvh/o
一週間も経っちゃったよ。
746代打名無し:02/02/16 16:35 ID:VowDO6/M
期待age
64さん無理せず、ガンガレ!!
747代打名無し:02/02/19 02:33 ID:qe5AO07r
いつまでも待ってます!
748代打名無し:02/02/19 07:24 ID:NEXYXmEK
新スレに移動したんだろうか?
749代打名無しさん@キャンプ中:02/02/21 13:11 ID:u/cGJffU
そういや広島編で武器がスリッパって選手っていましたっけ?
750代打名無し:02/02/21 20:26 ID:ppjouodJ
野村はリーダー気取りなんだろうな。若手はしらけているのに。
そのうさんクサイ路線を引き継ぐのが広瀬なんだろうな。
75164 ◆CARP8KOI :02/02/21 22:05 ID:yBFqoiZi
ごぶさたしてます。まだこのスレがあってほっとしてます。
ここにこれなかった理由を並べてもしょうがないんですが、
今しばらくうぷできない状況が続きます。
久しぶりに2chもこれて涙出そうだ(w
752代打名無し:02/02/21 22:55 ID:TU5R8tpj
>>751
マターリ待ってるんで無理せんといてね〜
753代打名無し:02/02/22 20:54 ID:K2G07zmh
>>64
自分はずっと待ってますぞ〜!!
お忙しい時もあると思いますが、
ガンガレ〜!!
754代打名無し:02/02/23 01:04 ID:/HFYJQXZ
>>64さん
定期ageはしときますんで、いつでも時間あるときでいいっすよー
755代打名無し:02/02/23 02:06 ID:bcZnmQ/E
>>751
64さん無理しないでね〜。
保全しつつマターリ待ってます。
756代打名無し:02/02/26 23:35 ID:2ArwAZ/1
保全
757代打名無し:02/02/27 22:37 ID:8wWnyjjl
気になるsage
758代打名無し:02/02/27 23:52 ID:alSWpwGN
age
759代打名無し:02/03/01 00:27 ID:gJSJ5mm9
俺はもう待つのを諦めた。

あんたとはもうやっとられんわ
760代打名無し:02/03/03 17:52 ID:Eti+y+Ib
age
761代打名無し:02/03/03 18:03 ID:YtXQ5L1d
そういや昨年前田と仲いい高が、飲み屋で友人の親父に前田FA,監督もそのつもり
で使わないって言ったらしい。
かなりビビッテまった。
762代打名無し:02/03/03 18:08 ID:aa2VFDtK
なんでチョコと高が仲良いんだ?
763代打名無し:02/03/03 18:13 ID:YtXQ5L1d
前田はもともとかなり高を選手として尊敬してたらしい。
ピンとこないけど、堕ち合いもセンスはほめてた。
ソース昔の前田板。
764代打名無し:02/03/04 20:50 ID:iBtocBEu
もう終了でいいでしょ?
やるんならHPを作ってやってよ。
765代打名無し:02/03/06 13:52 ID:heLtvsVo
保全
766代打名無し:02/03/06 17:55 ID:3rJ96IuG
767代打名無し:02/03/07 02:20 ID:TKbB230n
ageんなバカ!
放置でいいだろ?
768代打名無し:02/03/07 10:31 ID:1udIyK+p
オマエモナー
769代打名無し:02/03/10 14:19 ID:kcYtQ51K
ほしゅ
770代打名無し:02/03/12 03:35 ID:4Tc8SQ+o
保守
771代打名無し:02/03/14 04:02 ID:dqMbEiDM
hosyu
772代打名無し:02/03/15 22:10 ID:LPs7J0HC
保存サイト見たけど、もうこのスレでやる気はないみたいだね
773(゚Д゚):02/03/16 15:42 ID:AnJPR4Oh
^^
774代打名無し:02/03/16 17:57 ID:T0WQtJMH
775代打名無し:02/03/22 17:54 ID:620X89Ux
保守
776代打名無し:02/04/01 05:41 ID:Z06qGxKH
up
777代打名無し
777