―でもシャープはブラウン管のカラーテレビを売ってましたよね。
「簡単な話や。よそから玉を買うとった」
―玉ってなんですか?
「ブラウン管のことや。よそから裸の玉を買うてきて、テレビに組み立てて、シャープのブランドで売るわけや」
―アウトソーシングってやつですね。
「そんな格好ええもんとちゃう。よそは原価よりかなり高い値段でシャープに玉を売るから
シャープのテレビの原価はよそより高い。ところが、売り場へいったら、うちはブランド力が
ないよって、よそのテレビより安く売られる。もうかるわけないやろ。せやけど、王様のテレビを
やらんわけにはいかん。つらい仕事やった」
―でも、今は違いますね。
「そうや。亀山で自前の玉をなんぼでも作れる。今は板やけどな。うちが開発したぴかぴかの板を
よそが売ってくれと頼みに来る。シャープは王様の中の王様になった。それがうれしいんや」
目指し続けた“坂の上の雲”をようやくその手につかんだ。そんな喜びが伝わってきた。
その頃、シャープの旗艦工場だった亀山では、液晶パネルの生産効率を高めるための設備更新が進んでいた。
厳戒態勢の中で最新鋭の生産装置が運び込まれる。工場内部の取材はシャットアウト。
装置を工場に搬入する通路は物々しくブルーシートで覆われた。(
>>2-10につづく)
http://www.nikkei.com/tech/trend/article/g=96958A88889DE1EBE5E3E5E1E0E2E3EBE2E1E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;p=9694E0E2E2E6E0E2E3E3E3EBE7E6