代理母Part2

このエントリーをはてなブックマークに追加
2名無しの心子知らず
59 名前:知らない人のために 1 投稿日:2001/05/19(土) 22:30
2001年5月19日(土) 18時30分

<代理母>法整備置き去りに 医師「患者の希望で」(毎日新聞)

 長野県内の産婦人科医が実施した国内初の「代理母」による出産。
不妊に悩む夫婦が子供を得る最後の手段といえるが、厚生労働省は
法律で禁止する方針を打ち出している。実施した医師は「患者の希望を
かなえる」という大義名分を掲げるが、社会的な合意や法整備などを
置き去りにした医療現場の先行は、生殖をめぐる技術に一切の歯止めが
かからなくなる危険性をはらんでいる。

 厚生省(当時)の生殖補助医療技術に関する専門委員会は昨年12月、
代理母を罰則付きの法律で禁じるべきだと報告した。
厚労働省はこれに沿い、03年をめどに法律制定の準備を進めている。

 専門委が代理母を禁じた理由は
(1)出産する女性を生殖の手段として扱う
(2)妊娠・出産に伴う危険を代理母に負わせる
(3)代理母が、生まれた子供に愛着を持つと、依頼した夫婦と
   トラブルになる可能性ある

――などだ。生まれた子供は遺伝的には出産を依頼した夫婦の子だが、
現行法では「産んだ女性が母親」と規定される。子供の法的地位が
不安定になったり、将来、成長した子供に事実をどう伝えるかなどの
問題が出てくる。

 米国ニュージャージー州では86年に、代理母と、出産を依頼した
夫婦が子供の親権などを巡り裁判で争う「ベビーM事件」が起きた。
同州最高裁は「親権は生みの親である代理母にあり、代理母契約は両親と
共に生きる子供の権利を強奪するもので違法」との判決を出した。

 今回の根津医師の行為は「子供をほしがる夫婦の願いを、国が規制して
よいのか」という問いかけだろう。

 しかし不妊治療の影響は、夫婦と医師にとどまらない。生まれてくる
子供の生活を左右し、親子関係を変えるなど社会全体を揺るがす。
生まれる子供の幸福を守り、社会の混乱を防ぐためにも一定の社会制度や
法整備は不可欠だ。

 根津医師は「患者の希望」を優先している。しかし、規制のすき間を
抜けるような手法で既成事実が積み重ねられれば、不妊治療の社会的な
規制が有名無実なものになる。 【高木昭午】
3名無しの心子知らず:2001/06/03(日) 22:00
61 名前:知らない人のために 2 投稿日:2001/05/19(土) 22:33
 借り腹問題も未解決

 日本産科婦人科学会会長の荒木勤・日本医科大教授の話 学会が
代理出産を認めないのは、生まれてくる子供の将来を考えるからだ。
現在の日本では、こうしたケースの親子関係についての法律も未整備で、
子供の将来の不安を最小限にするための取り組みがなされていない。
子供が欲しいというお母さんの気持ちは分かるが、倫理的に何をしても
いいわけではない。代理出産した女性などに対するカウンセリング制度も
なく、つわりや妊娠中毒症など「借り腹」のリスクの問題も未解決だ。
学会では今年8月、会員の医師ら50〜60人を対象に「生殖遺伝カウン
セラー」養成のための講習会を開く予定だが、現実が先行し、整備が
追いつかない状況だ。

 同情するが間違い

 旧厚生省の生殖医療に関する専門委員会委員長を務めた中谷瑾子
(きんこ)慶応大名誉教授(刑法)の話 今回のケースは専門委の
最終報告でも禁じられたもので、基本的に間違っている。子宮を
摘出された女性には同情するが、他人を出産の道具にすることは
許されず、一定の限界を設けることが必要だ。出生した子供の出自を
知る権利の保障なども問題となろう。その意味で担当医とは独立した
カウンセラーの関与が必要で、公平公正な第三者による公的機関が
個別に審査し、実施状況を公表すべきだ。ただ、今回はいったん
妹夫妻の子供として届け出た後で養子縁組をするという手続きを踏んで
おり、その点は評価できる。

 国は厳重処分を

 体外受精などの不妊治療に取り組むセントマザー産婦人科医院の
田中温(あつし)院長の話 この問題は旧厚生省の専門委員会で
2年間29回も討議を繰り返し、全員一致で禁止を決めた。
代理出産を求める声も十分検討した。もう医師が個人的見解を述べる
段階ではない。根津氏は事情を知ったうえでルールを破っており、
国は厳重に処分するなど早急に対応すべきだ。

 もう歯止めかからず

 JT生命誌研究館の中村桂子副館長 人間の誕生の技術は、一度実施
されると反対できない特殊性がある。誕生した人間の存在を否定でき
ないからだ。体外受精を認めた段階でルビコン川を渡っており、代理出産が
「生命倫理に反する」という言い方は意味がない。限られた中で生きる
ことを大切にする価値観の社会でなければ、こうした医療に歯止めはかか
らず、間もなくクローン人間も誕生するだろう。問われるのは医師の行為
ではなく、金で何でも手に入り、競争に勝つことが大事だとする、今の
社会の有り様だ。


[毎日新聞5月19日] ( 2001-05-19-14:51 )