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今月8日、横浜市内で医療者と救急関係者を集めて開かれたシンポジウムでは、昨年8月に妊娠30週で切迫早産になった30歳代の妊婦が、
健診を受けていないことを理由に11病院から搬送を断られたケースが紹介された。最終的に12病院目での受け入れが決まるまで、
1時間15分を要したという。
救急救命士は「何とか受け入れてもらいたいと、病院に電話しても、『そんな無責任な妊婦を連れて来るな』と怒られることもある」。
医師側からは「妊娠何週目かや合併症の有無などを基に(自分の病院で)受け入れ可能かどうかを判断しており、母体と胎児の状態が
全く分からない妊婦を安易に引き受けることは出来ない」との意見が出された。
病院側の負担は深刻だ。神奈川県内の大学病院など8基幹病院で扱った飛び込み出産は、03年の20件から年々増え、06年は44件。
今年は4月までに既に35件で、100件を超える勢いだ。横浜市大の平原史樹教授(産婦人科)は「飛び込み出産の急増で
救急病院の負担が大きくなり、本来の業務に支障をきたしている」と困惑を隠さない。
出産を取り扱う医療機関の減少で、出産出来る病院を見つけられずに飛び込み出産になるケースもあるという。だが、
同大付属市民総合医療センターの小川幸医師は、多くは〈1〉妊娠への対応が分からなかった若い未婚女性
〈2〉低所得の(すでにお産を経験した)経産婦〈3〉不法滞在の外国人――の3パターンだと分析する。
合併症やアレルギーを持つ妊婦も多い上、早産や未熟児の生まれる割合が高いなどリスクは高く、生まれた三つ子が
全員死亡したケースもあるという。
平原教授は「健診は母体と胎児の状態を把握する大切なもので、受診しなければ出産のリスクは一気に高まる。
受診を促す体制整備も必要だ」と話した。