1)まず、親子関係による心理的理由です。異性の親から心理的自立が不十分な場合、その子
どもには、親以外の異性に自己を奪われる恐怖心が生じるとされます。そのような恐怖心が原
因となり、性的指向が異性から同性に移ると考えられます。
また、心理学では、同性の親がライバルとなることが、子どもが成長する前提とされています。
しかし、幼年期、児童期に同性の親がライバルとなり得ないケースもありえます。その代償を性
愛の対象として同性に求めるのだとの見解もあります。
さらに、同性の親からの拒絶やあざけりなどが原因となるという指摘もあります。これも、同性
の親からの受容と愛情を、同性に代償として求めるのだと解釈できます。
2)次に不幸な性体験が後天的な要因として挙げられます。幼少期に性的虐待等の不幸な性
体験を受けた場合、その子どもには異性に対する潜在的恐怖心が形成されます。その結果、性
的指向が本来のあり方から逸脱して、同性へと向うと考えられています。ファミリー・オン・ザ・フォ
ーカス誌によれば、女性の同性愛者は、過去において不幸な性体験を持つ確率が高いという
統計があります。
3)さらに性的未成熟による可能性があります。思春期において過渡的に同性愛的傾向
が現われるのは一般的な現象です。通常は性的にも人格的にも成熟し、それはやがて異
性愛に解消されます。しかし、何らかの原因で未成熟な段階で停止して、同性愛的傾向
に留まると考えられます。ただし、この立場は同性愛者を性的あるいは人格的未成熟者
と評価する事につながります。天才や専門家に同性愛者が多いのは、専門分野に対する
過度の集中が生み出す性意識の成長障害に由来するという見解もあります。
4)特殊な要因としては、生活環境、特に同性ばかりの環境、禁欲的環境があります。
例としては軍隊、刑務所、学校の寮、宗教施設などです。同性ばかりの環境の中で本来
は異性に向くべき性意識が代償として同性へ向かうと解釈されます。アメリカでの軍隊、
刑務所へのエイズ予防目的でのコンドーム支給は問題になりました。