シベール出版部が漫画家・吾妻ひでおとそのアシスタントの集まりだった
ことは有名だが(内山亜紀も参加)、吾妻は同時期にのちにSFファン、
つまり元祖おたく族から絶大な支持を集める作品「不条理日記」の連載を
『劇画アリス』(アリス出版。吾妻の連載は1979年6月発行の17号から)で
開始したことから察するに、メジャー誌での活動とは別に、マイナー誌等を
舞台にある種実験的な試みを考えていたのではないだろうか。その一つが
同人活動だったのだと思う。なにはともあれ氏が描く少女は可愛くてエッチ
だった。その吾妻がロリコン漫画を出したのだから、売れる。80年5月の
「コミケット14」までは、この『シベール』と先の『ロリータ』、そして機動戦士
ガンダムのエロパロ同人誌『AMA』(東京アニメニア・アーミー/79年12月
創刊、81年12月の4号で終刊)がエロを求める男性ファンの需要に応えて
いた。
別の動きが出始めたのは80年9月「コミケット15」からである。後述する
劇場アニメ『カリオストロの城』のヒロインを題材にした『クラリスマガジン』
(クラリスマガジン編集室)や、早坂未紀が参加しているイラスト中心の
『FRITHA』(トラブル・メーカー)の登場である。つまりロリコン同人誌の
流れに、必ずしもエロを必要としないアニメヒロインのファンジンと、美少女
イラスト集という新たなジャンルが加わった。エロより「少女」に注目したと
いう意味ではむしろ正しいロリコン同人誌であると言える。他にも『愛栗鼠』と
同じ蛭児神健によるロリコン文芸誌『幼女嗜好』(変質社)が出ている。