ソニー蝕(むしば)む”ウイルス”
(熊本日日新聞 12/4 kumanichi forum /ジャーナリスト 阿部重夫)
http://www.imgup.org/file/iup128463.jpg 建築物の構造計算が偽造され、震度5強で倒壊する欠陥マンショ
ンやホテルがノーチェックで建っていた事件で、建築を請け負って
いた八代市の木村建設が自己破産を申し立てた。背筋が寒くなった
のは、当たり前の品質すら省みないクラフトマンシップ(職人魂)
の退廃と不遜である。
大理石の玄関、広々としたフロアリングの床と見てくれはいい
が、見えない壁のなかでは鉄骨鉄筋を減らし、コンクリートも水で
薄める「手抜き」は、彼らだけなのだろうか。誰もがそう自問した
に違いない。
町工場から世界に雄飛したソニーも、危機の根は同じではないか。
薄型テレビなどの出遅れで九月中間決算も減収減益となったが、そ
の病の重さが十一月十九日に大々的に売り出したウォークマンAシ
リーズで浮き彫りになった。
ハードディスク内蔵型MP3方式で世界を席巻、日本でも携帯オ
ーディオの六割のシェアを奪った米アップルの「iPod」シリー
ズに対抗する自信作のはずが、発売早々から操作性、記憶容量など
を見比べると「iPodより劣る」と評判がよくないのだ。
ソニーが運営するブラウザのブログに発売四日前から「メカ音痴
の女の子のウォークマン体験日記」が始まったが、画面に添えた
写真などからネット掲示板で「ソニーの自作自演」と嘲笑を浴び、
一週間もたたずにサイトは閉鎖されてしまう。ソニーによると、ソ
ニーマーケティングが企画した「ブログ形式のモニター体験リポ
ート」で、ヤラセではなかったというが、アップル製のパソコンを
貶めるような表現が誤解を招いたのは事実である。