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名無しさん┃】【┃Dolby:
そして1時間後…。石○電気の扉が再び開き、Aがそのやつれきった姿を現した。背には
来た時と同じ42インチのプラズマを背負って…。向かいの喫茶店でAの奇妙な挙動を見て
いた私は好奇心を抑えきれず、近寄って話しかけた。「君、顔色が悪いけど、どうかした
の?」「い、いえ、いいんです」とA。「そうか。ならいいけど。プラズマだろ、それ
?」「い、いえ、いいんです」「プラズマって、トラブル多いんだってね?」「い、いえ、
いいんです。ほっといてください。」私はAを無理やり喫茶店に連れ込み、コーヒー一杯
と引き代えにAのこれまでの人生を聞き出したのであった。それは数分で語り尽くされる
ほど、内容に乏しかった。しかし好奇心を満足させられた私は、女と会う約束を思い出し、
Aをその場に残して立ち去ったのだった…。
翌朝、朝刊を広げた私の目は、社会面の片隅に釘付けとなった。そこには次のような事件
が報じられていたのである。「昨日午後、○×市の無職Aさん(○×歳)が死んでいるの
を家人が発見、通報した。警察の調べではAさんは日頃から友人もなく、家族ともほとん
ど顔を合わせず孤独な生活を送っていたといい、最近アルバイトの金を貯めて購入した42
インチの小型プラズマ・テレビに引き篭もり生活から抜け出す希望を託していた。しかし
パネルに画素不良が見つかり、意気消沈していたという。最近とみに増加しているプラズ
マ自殺の新たな犠牲者と見られる。」