564 :
名無しさん┃】【┃Dolby:
プラズマでやっと人並みの生活を送れると夢見ていた引篭りのA。その夢も無残に砕かれ
た。パネルに例の画素不良が見つかったのだ。一番目につく中央付近に前歯の欠けた顔の
ような黒い穴。それ以来引篭りのAは重い鬱状態が続き、食事も喉を通らない。死ぬこと
ばかりが頭を過る。
しかし突如怪しい考えが浮かんだ。ヒドイ焼き付けを作り、新品に交換させるのだ。Aは
その計画を何十回となく頭の中で反芻し、店員との白熱の交渉の場を想像した。しまいに
はセリフも全部暗記してしまう始末だった。このような紛争的状況に直面するのは生まれ
て初めてであった。Aの精神は異様に高揚していた。「オレも負け組の人生から足を洗う
のだ。オレのパフォーマンスに感嘆した女店員を誘い出して…。」
数日後、見るも無残に焼き付きのついた42インチのプラズマを背負って石○電気の扉を開
けるひ弱なAの姿が見られた。店内では一体何が起っているのだろう? 噂の強面社員が
応対しているのだろうか? 故意にヒドイ焼き付きを生じさせたということでAは詐欺未
遂罪に問われるのだろうか? 30分経ったがAは出てこない。
565 :
名無しさん┃】【┃Dolby:03/03/18 09:20 ID:VEsODAL7
そして1時間後…。石○電気の扉が再び開き、Aがそのやつれきった姿を現した。背には
来た時と同じ42インチのプラズマを背負って…。向かいの喫茶店でAの奇妙な挙動を見て
いた私は好奇心を抑えきれず、近寄って話しかけた。「君、顔色が悪いけど、どうかした
の?」「い、いえ、いいんです」とA。「そうか。ならいいけど。プラズマだろ、それ
?」「い、いえ、いいんです」「プラズマって、トラブル多いんだってね?」「い、いえ、
いいんです。ほっといてください。」私はAを無理やり喫茶店に連れ込み、コーヒー一杯
と引き代えにAのこれまでの人生を聞き出したのであった。それは数分で語り尽くされる
ほど、内容に乏しかった。しかし好奇心を満足させられた私は、女と会う約束を思い出し、
Aをその場に残して立ち去ったのだった…。
翌朝、朝刊を広げた私の目は、社会面の片隅に釘付けとなった。そこには次のような事件
が報じられていたのである。「昨日午後、○×市の無職Aさん(○×歳)が死んでいるの
を家人が発見、通報した。警察の調べではAさんは日頃から友人もなく、家族ともほとん
ど顔を合わせず孤独な生活を送っていたといい、最近アルバイトの金を貯めて購入した42
インチの小型プラズマ・テレビに引き篭もり生活から抜け出す希望を託していた。しかし
パネルに画素不良が見つかり、意気消沈していたという。最近とみに増加しているプラズ
マ自殺の新たな犠牲者と見られる。」