>>501 ミッションケースといっても、機能は多岐にわたります。
冷却潤滑のオイル・ラインが良くなければ、オーバーヒートして焼きつきを起こします。
さらに超高速運動をする部品が入りますから、剛性強度があって精度が良くないと
滑らかに回転しない。精度は数ミクロンのレベルです。
また、エンジンブロックとミッションを強大なトルクで締め付けるので、
これも剛性強度がないと歪んでしまう
ケースのなかに精密に形成する軸や軸受けは運動で熱を受け、冷却しているとはいえ変形しやすい。
さらに締めつけることでも変形しやすい。
すこしでも変形すれば運動が滑らかにいかない。
開発のむずかしいところは、丈夫につくらなければならないが、重くなってはいけないことだ。
力のかからない部分だからといって薄くすると振動騒音の発生源になってしまうこともある。
単純なケースではない。インプット、減速伝達、アウトプット、冷却、潤滑といった
様々な要求を満足させるために複合的な技術を結集して開発しなければならない。
「開発にはシミュレーション等も行ないますが自動車技術は経験工学の部分もあって、
ミッションケースがそのいい例でしょう。だからこそSUBARUの技術蓄積がものを言うのです」
これがSUBARUの自信のみなもとなのだ。
ケースという言葉から感じる単純さは、ひとつもないのだ。このように複合的技術が結集したケースを、
どうやって開発するのだろう。
「各部のスペシャリストが集まって設計開発するのですが、最後は現物をつくってみて
徹底した試験を繰り返す。これがいちばん大切です」
鋳造工場へ出向いて、自分の手で型を削ることもあると言う。
技術者が自分の手を油で汚しながら技術を追求していく。これがSUBARU技術本部の伝統であり、
はかりしれない底力の秘密なのである。