乗り心地が硬いとの声もあるようだが、ヴィッツのそれは、減衰の効いた
硬さであり操縦安定性に欠かせぬ「乗り味」である。したがって、衝撃を身体
に突き上げるような辛い硬さではなく、「しっかりしている」という意味の
硬さである。これを軟らかくしてしまったら、ヴィッツの優れた走行性能は
失われてしまうだろう。
とはいえ、新型ヴィッツの良さは単にシャシー性能のみにとどまらない。
まず、シートのサイズが大きくゆったりしており、また、クッションの硬さも
しっかりとして、その形状は身体の線にピッタリ合うようになっている。試乗
会の場で何台もグレードの乗り換えを行っても、腰に鈍痛を覚えることは
なかった。
また、初代ヴィッツに比べやや高めの視線となる前方視界も、フロント
ピラーやドアミラーの配置に文句なく、斜め前方の安全確認を瞬時に必要と
する右左折を安心して行える。室内では、インテリア各部の隙間がコンマミリ
単位と思われる狭さに詰められており、その精緻な作りこみはコンパクトカー
というより高級車の域に達していると思う。新型ヴィッツのインテリアを見て
しまうと、他のコンパクトカーの作りが雑に思えてしょうがない。それほど、
精巧さに大きな差がついた。初代ヴィッツは、いまだに価値あるクルマだと
思っている私だが、新型ヴィッツに触れて、その進化の度合いに度肝を抜かれ
たのであった。
Automotive Technology-御堀直嗣のテクニカル・インプレッション
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN_LEAF/20050329/103149/