ホンダ・宗一郎長男逮捕への意外な反応
「創業家の道楽息子がやっと消えた」とホンダ関係者
レース用エンジン製造会社「無限」の脱税事件で、ホンダ創業者・本田宗一郎
氏の長男、本田博俊社長が法人税法違反で逮捕された。ある国内自動車
メーカー幹部は「ホンダはこれまで宗一郎氏の名前をうまく商売に利用して
きた。今回の事件は、『あの宗一郎氏の息子が…』と盛んに報じられており、
ホンダのイメージダウンは避けられない」と言う。しかし、ホンダ社内は
意外にも冷静だ。「すでに昨年の秋には一部で報じられており、来るものが
来たというだけ」(ホンダ関係者)とサバサバしている。「むしろ、これで
本田家との縁がやっと切れる。宗一郎氏の薫陶を直接受けた最後の世代の吉野
浩行前社長が退任した直後だけに、一つの時代が終わった象徴となる事件」と
まで言うのだ。ここまで博俊社長がホンダ内部から突き放されるのはズバリ、
「カネ食い虫」と疎んじられていたからだ。無限はホンダがF1から撤退して
いた92年から2000年にかけてエンジン供給で参戦し、通算4勝。「勝利
は博俊社長の手柄のように報じられているが、実は無限のエンジンのほとんど
がホンダ製といっていい。相当のカネとマンパワーをつぎ込んだのです。
さらに、93年にはF1で抱えることになった無限の多額の負債を穴埋めする
ため、ホンダ本体が経営危機に瀕していたにもかかわらず、出資をした。道楽
息子のために、どれほど巨額のカネを使ったことか。こんなことならトヨタの
ように創業家を社員で雇っておいた方がよほど安上がりだった」(前出の関係
者)ホンダは宗一郎氏と、その片腕となった藤沢武夫元副社長が「会社の
ために、お互いの子供はホンダに入れないようにしよう」と約束し、博俊社長
は独立の道を選んだ。しかし、ホンダとの縁は切れなかった。あるホンダOB
はこう指摘する。「ホンダは創業家との関係を、切るなら切る、抱え込むなら
抱え込むで、ハッキリさせておけばよかった。建前ではオーナー色を排し
ながら、こっそり支えようとしたから、今回のような事件に発展したのだろう」
事件の背景には、世間的には“斬新”、実は旧態依然のドメスティック企業・
ホンダの「建前主義」があったようだ。