【次世代車日欧対決】ハイブリッドvsディーゼル 3
Nicht nur sauber, jetzt auch rein (「クリーン」を超越して、今では「純正」)
ディーゼルがブームになっている。微粒子フィルター付ディーゼルには環境適性すらある。
本誌は種々のフィルターシステムをテストし、今年購入可能なクリーンモデルを紹介する。
長年にわたる微粒子フィルター導入に関する論議をひとまず置いて、時間を2003 年9月の
IAA に戻してみよう。プジョーに次いで、他の自動車メーカーも自社製微粒子フィルターの
プレゼンテーションを行った。メーカー側のメッセージは明瞭で、「このテーマに真剣に取り組む」と
いうことだった。但し、6 カ月後の現在になっても現実のオファーはまだ乏しい。
新たなフィルターシステムの能力はどうなのか?まだデメリットもあるのか?ADAC は今年年初に
入手出来た様々なコンセプトを、排気エミション、走行性能、維持費についてテストした。その場合、
同じモデルを2 台使い、一台はフィルター付、もう一台にはフィルターを付けずにテストした。
テストしたモデルは以下の通り:
● メルセデスE220 CDI オートマティック:38164 ユーロ(フィルター追加価格:580 ユーロ)
● トヨタAvensis D-4D:23400(+800)ユーロ
● VW パサートTDI 1.9L:25275ユーロ+ 925ユーロ(2.0L)
● プジョー307 HDi FAP:20750ユーロ(フィルター付。EURO4規制対応)
この他に以下の後付けフィルター二つもテストした。
● HJS-フィルター:
VW パサート1.9 TDI にプロトタイプとして装備。このシステム(約1000 ユーロ)の
販売は免税措置いかんというのがメーカー側のコメント。
● Twin-Tec-微粒子フィルター:VW ゴルフIV Variant1.9 TDI に装備(630ユーロ。A.T.U)
テストしたシステムは基本的に同様の原理に基づき、カーボン微粒子をきめの細かい孔のある
セラミックフィルターに集め、500 〜1000km 毎に焼却している。違いは焼却過程導入のやり方で、
VW、プジョー、HJS では添加剤を使っている。添加剤はエンジンルーム内の容器に収納され、
12万km(HJS:5 万km)毎にワークショップで充填をしてもらう。メルセデス、トヨタは添加剤を使わず、
(簡単の言うと)ディーゼル・インジェクション頻度を増大して微粒子焼却に必要な温度を達成する。
ドライバーにとり添加剤の有無は実際走行上、関係ない。
(ワークショップで標準装備触媒と交換してもらう)ノーメインテナンスTwin-Tec-フィルターも
添加剤ないしエンジン介入措置を全く使わないわけではない。このシステムのメリットは、ほぼ
すべてのディーゼルエンジンに後付け出来ること。デメリットはカーボン微粒子の一部しか
捕捉出来ないことである。
それぞれのシステムの効率は、新車の型式認定テストと同様、《NEFZ》走行モードを使い、
エミション・テストベンチでテストした。
●メーカー装備の微粒子フィルターはすべてユーロ4 規制値(0.025 g/km)を大きく
下回っていたのみならず、0.001g/km とほとんど測定不可能な数値であった。
●後付けシステムでは技術的に他のシステムより贅沢なHJS-プロトタイプがメーカー装備フィルター
同様に良い成績をあげていた。比較的シンプルなTwin-Tec-フィルター( 0.015 g/km)でも 50%以上の
低減(Twin-Tec 社は40%の低減と発表)が出来、ゴルフIVはユーロ4 規制を大きく下回っている。
微粒子フィルターにはもう一つのメリットがある。いわば裏芸のような形でNOx が低減出来ることで、
NOx は大抵のディーゼルにとりユーロ4 規制を越えられぬ「つまずきの石」となっていた。その理由は
NOx を低減するには、酸素を少なくし、温度を下げて濃い燃焼を行わねばならず、この措置により
微粒子が急激に上昇したためだ。だが、フィルターを使うと、この面でも改善が可能となり、このため
本誌の測定したメーカー装備フィルターのNox 数値はユーロ4 規制値(0.25 g/km)を下回った。
これに反し後付けシステムはエンジン制御に介入しないので、NOx も減少していない。
トヨタはAvensis にDeNOx触媒を追加装備し、このためベースモデルD-4D の既に良好な数値を更に
半減出来た。
「濃い燃焼」をすれば燃費も悪くなるので、本誌が《NEFZ》モードで測定を行ったイニシャル
装備モデルの燃費が(5〜9%)悪化したのも当然である。だが、少なくとも走る楽しさは損なわれず、
フィルターを装備したどのモデルでも走行性能、静粛性、室内騒音の悪化が数字に現れると
いうことはなかった。コスト面では、燃費が悪くなり、新車価格も高くなるので、カーボン
微粒子フィルター車は月額6 ユーロ(メルセデス)から16 ユーロ(パサート、トヨタ)高くつく。
こうしたコストはユーザーだけに負担させるべきではない。今、必要とされているのは
カーボン微粒子吐出量の規制値を守っているモデルには(新車及び中古車への触媒導入時に
適用したような)税制上の優遇措置を迅速に実施することである。またニューディーゼルモデルに
対しては、微粒子規制値を厳しく設定し、同時にユーロ4 規制の遵守を規定すべきである。
微粒子の新たな上限は 0.005g/km が適切と思われる。これはADAC のEco Test で最も環境適性の
良い車を評価した時に検証された数値である。後付けフィルターの助成規模は効果に応じて
行うべきである。規制値が守られていれば最高額。最低40%低減している場合には部分的に
助成する。2005 年にはユーロ4規制による助成がなくなるので、いずれにせよ財政的余裕が
生じるはずである。
ADAC の要求:
クリーンなディーゼルに対し迅速に税法上優遇措置をとる。
□ ユーロ4 規制及び厳しくしたカーボン微粒子規制値を満たしている車。
□ 後付けの場合には効果を基準に助成。規制値を満たせば最高額、最低40%以上の効果が
認められればその一部。
□ 全体としてドライバーに今まで以上の負担が生じないこと。
矛盾した推移:
ドイツで新規登録されている車の約40%がディーゼルカーだが、それに比して
微粒子フィルター装備の車のオファーは期待外れである。目下、すべてのモデル・
ラインにわたり微粒子フィルター付エンジンをオファーしているのはPSAと
メルセデスだけである。恥ずかしいのは、VW が量販モデルであるゴルフ、Touran の
将来に関して報道管制を敷いていることで、競合アストラの出方を見守っている。
しかもフィルターはオプション装備となるだろう。