車の世界は狂っている。現在ではスモールカーの方が、大きな車よりも安全になっている。
というのも、出来立てのスモールカーを中古のミドルクラス車と比較すると、
スモールカーの方が剛性が強く、抑止システム(ベルト) が益々効率的になっているからだ。
にもかかわらず自動車メーカーは(神経)過敏になっている。ヨーロッパでは絶えず、
全クラスのクラッシュテストが行われ、本誌と TUV ラインランドが共同してスモールカーの
クラッシュテストを行うという報も気になるからだ。というのも、本誌テストでは
スモールカーに荷物が積まれ、後部座席にもダミーが乗る。こうしなければ、後部座席乗員の
延命チャンスが計算できるという考慮からである。
それゆえ、本誌のスモールカー・クラッシュテストに対しメーカーが非常に消極的で
あったのも当然である。だがトヨタは別であった。二人の日本人エンジニアが本誌テスト前に
自信をもって同社のテスト結果を本誌に提出した。「AutoBild のクラッシュテストは全く
不要だ。(自分たちの) ビデオがそれを証拠だてている」が同社のメッセージであった。
(ビデオの) 第一印象は素晴らしかった。トヨタは Yaris のために宿題をうまくやりとげた。
ボディーは模範的に折れ曲がり、エアバックも適時に点火した。ベルト・システムは完璧に
稼働し、身体への負荷も僅かで、ドライバー側のドアも簡単に開けられた... 。
だが、TUV ラインランドのクラッシュ・コースで明らかになった現実は違っていた。
トヨタ Yaris
誰も想像しなかったことだ。最新の開発モデルが旧態依然たる結果となった。衝突により乗員室が完全に
崩壊し、このスモールカーは 51.5cm 縮小した。 A-ピラーが大きく後ろに移動し、その際サイドシルを
下側に曲げ、フロント・ガラス領域で A-ピラーが何度も折れ曲がった。
ダミーを車から救出するのに、重工具でドアをこじ開けなければならなかった。
インパネが剥がれ、ステアリングコラムが室内に移動し、シートが前方に倒れたが、ドライバーの
延命スペースはまだ残っていた。だがドライバーは点火キーに膝を激しくぶつけている。
脚の保護の方がうまく行われてた。衝突時にペダル類が少し後方にずれ、そのため負傷リスクが
低減されたためだ。その代わり後部座席乗員の頭部、首に大きな負荷がかかった。衝突時に上半身が
ずっと前方に沈み、最後には頭部が膝に激しくぶつかった。
その後ダミーは非常に強力に揺れ戻り、首が非常に危険な状態で後方に伸びた。後頭部が天井に
ぶつかるほどの激しさである。こうなると、後部座席背もたれが荷物の荷重に耐えたのも、小さな
慰めでしかない。
トヨタのコメント
Yaris がこのクラスの安全性でトップレベルに達成していることを確信しているのでテスト結果に
驚いている。特に、ボディーの若干の変形箇所及び個々のダミー数値が自社テスト結果と食い違っている。
万一、設計変更が必要であることが分かった場合には、なるべく早期に量産に組み入れる。
・・・フランスでは早々にカイゼンを施す必要を出してしまった。
日本はその後長らく放置されていた