ちなみに、長寿命の放射性核種を、陽子や中性子、光子などのビームを
あてて核反応を起こし、短寿命核種に変換してさっさと崩壊消滅させる、
というアイディアは昔からあって、研究もたくさん行なわれています。
このうち一番効率的なのは、熱中性子捕獲反応を使う方法で、これは
放射性廃棄物を原子炉の炉心のそばに置いておけば勝手に変換されていくので
わりと簡単です。
ところが、そうすると最後にヨウ素129ができて、これは半減期が
1600万年もあり、しかも熱中性子捕獲率が小さすぎて変換できないので、
最後 ヨウ素129ばっかりできて残ってしまうのです。
ヨウ素129を片付けるには、陽子か光子を使うしかないのですが、
光子では十分速く変換できるほど強いビームを発生する技術がまだないので、
残るは陽子しかありません。
それで、そのための開発研究をやろうという話があって、J-PARCに
そのための機能をつけようという計画もあったのですが、開発予算もかかりすぎるし、
開発に成功したとしても実用化の際にさらに莫大なお金がかかるので、
結局 放射性廃棄物については地層処分が国策になってしまい、陽子を
使った方法の開発は終わりになりました。
もし陽子を使うとすると、原発1基につき J-PARCが1個ずつ必要で、
J-PARCは 1500億円ですから、たくさん作って量産効果が出たとしても
やっぱり 1000億円ぐらいはかかります。原発そのものの建設費は
1基あたり 3000億円ぐらいなので、電力会社はとてもやる気にはならないわけです。