>>123 「FDAは、プロトピック(タクロリムス)の使用に伴う発ガンの潜在的リスクについて
医療従事者と患者に周知するため、保健勧告書を公表した。
この注意勧告は、動物を用いた試験の結果、少数の(人間の患者の)事例報告、
および同じ種類の薬剤(つまりタクロリムス系の免疫抑制剤)が作用するメカニズム
に関して得られている情報に基づいて作られたものである。
プロトピックを人間に使用した場合に本当に発ガンと関係があるかどうかは、10年
あるいはそれ以上の期間にわたる長期的な研究が必要であろう。
現在のところ、プロトピックの使用による発ガンのリスクは不明である。
そこでFDAとしては、プロトピックは他の治療法ではうまくいかなかった患者に対して
添付文書どおりに使用することを勧告する。」
「勧告
患者にプロトピックを使用させているか、あるいは患者への処方を検討している医師は、
以下の件に留意してください。
・他の治療法が奏功しない、あるいは他の治療法に耐えられないアトピー性皮膚炎患者
に対して短期的、間欠的治療の目的で次善の方法としてのみ用いること。
・2歳未満の子供には使用しないこと。乳幼児の、成長過程の途上にある免疫系に対する
プロトピックの影響はまだわかっていない。
・短期でのみ用い、連続使用は避けること。長期使用の場合の安全性は未確認である。
・免疫系の機能が減弱している子供や大人は使用しないこと。
・症状のコントロールに必要な最小限の量の使用にとどめること。動物実験では、
投与量を増加するとガンの発生率も上昇することがわかっている。
」
残りです。
「データ総括
タクロリムスは遺伝子毒性を持たず、DNAに直接作用するものではないが、
免疫機能を局所的に損なう潜在的作用を持っているかもしれない。
マウスを使ったタクロリムスの局所的使用による発ガン性の調査では、
リンパ腫の発生率がタクロリムスの使用量に伴って増大する傾向が見出されている。
また、タクロリムスの全身投与を受けている腎移植、肝移植の患者において、
リンパ腫、悪性皮膚腫瘍の発現率、増殖率の増加が見られる。
2004年12月現在、FDAはプロトピック発売後、ガンが関連した不具合事例の
報告を19件受けている。そのうち3件は16歳以下の子供に生じた事例であり、
残りの16件は患者が大人の場合であった。大人の事例のうち2件はガンを併発しており、
死亡例である。
8件は入院加療を要する事例であり、そのうち2件は小児科の患者であった。
(続く)
(続き)
この19件中にはリンパ腫9例、皮膚腫瘍10例が含まれ、さらに後者のうちの7例
はプロトピックを投与した箇所で症状が発生したものであった。またその19件には、
鱗状細胞腫、皮膚肉腫、悪性黒色腫、その他の種類の腫瘍も含まれている。
それらの19件における、プロトピック使用開始から腫瘍等の発生が検知されるまでの
期間は、21日から790日まで分布しており、中央値は150日であった。
また、19件のうち6例では、免疫芽球性リンパ腺腫も報告されている。
使用開始前から容態が重篤な例が2例あった。また使用開始前から存在した悪性腫瘍が
再発または悪化した例が4例あった。
その他、環境要因や、使用開始前からあった悪性化に至る前段階の要因など、
プロトピックの使用以外の要因による可能性が排除できない例が3例あった。
タクロリムスの全身投与用のもの(商品名プログラフ)は、ガンに対する人体の
正常な免疫防御性を抑制し、皮膚ガンとリンパ腫を引き起こすことが知られている。
ガンの発生リスクはプログラフの使用量や使用期間が増加するに従って増加する。
塗布薬であるプロトピックは、通常きわめて微量ではあるが、皮膚の内部にまで
吸収される場合がある。プロトピックを使用している子供の血中タクロリムス濃度が
(全身投与薬である)プログラフの使用患者と同レベルまで上昇する例もごく稀に
存在する。プロトピックの潜在的な全身免疫抑制作用はまだ不明である。また、
上記の19件の事例報告のそれぞれにおいて、プロトピックがガン症状の進行に
どのように関わったかも不明である。
」