何一つとしていい兆候などない。何を試しても効かない。ステロイドですら塗ったら痒くなる。
痒みを忘れる事ができるのはゲームに熱中してるときぐらい。
それなのに別居してる親が毎日のように電話で病状を聞いてきて、せっかく忘れることができた痒みをぶり返させる。
毎日毎日、何一つとしていい兆候はないどころか悪化しつつあるという事実を改めて確認させられ、報告させられるのがどれほど気を滅入らせるか。
なのに親は何度言ってもそれを理解してくれない。心配してるのはわかる。でもそれが悪化させる原因なのに。
いい兆候があったらそのときはこっちから言うから、それがないときはそっとしておいて欲しい。何度そう言っても病状を尋ねるのをやめてくれない。
しまいには俺が苦痛だと言ってるのに「そんなことないよぉ」と、それをおかしい事であるかのように言い放った。
遂にキレて
いい兆候などない。せっかく忘れることができたのにアンタに電話で聞かれたことで忘れてた痒みがぶり返した。
痒い。痒い! 痒い!! か! ゆ! い! かぁ! ゆぅ! いぃ!
どんな掻き毟っても痒みが収まらない。いい加減にしろ、ここはなんともないんだ! 痒みの信号とめろ!
自分の皮膚にそう怒鳴りつける毎日だ!
痒みはひかない。でも掻かずにはいられない、止まらない。あー! ほら、血が出てきた。でも止まらない。
せっかく張ってきた皮膚も引っ剥がしちまった。でも痒い!
痒い、痒い、痒い、痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い痒い!!
どうだ、これがアンタが聞きたかった病状だ。これからも毎日伝えてやるよ、これで満足なんだろ、俺の病状知ることができて安心できるんだろ!?
と、病状を実況中継して電話切ってやった。
それからも、アトピーの単語を出したら実況中継するようにしたら電話しなくなってきた。
近々兄が結婚する。あの親は義姉さんに子供はまだかと毎日のように聞いて追い詰めるんだろうなー。