>>565 エコノMIX異論正論 池田信夫
チェルノブイリ原発事故で最大の被害をもたらしたのは放射能ではない
http://www.newsweekjapan.jp/column/ikeda/2012/01/post-437.php 事故で死亡したのは、原子炉の消火にあたって急性放射線障害になった作業員134人のうち28人。
さらに22人が、2010年末までに死亡した。これをすべて含めても直接の死者は50人であり、これ以外に急性被曝による
死者は確認されていない。
ただ放射能に汚染された牛乳を飲んだ子供が5000人にのぼり、そのうち9人が死亡した。
国連科学委員会(UNSCEAR)の調査の行なった被災者53万人の疫学調査でも、小児甲状腺癌以外の癌は増えていない。
つまりチェルノブイリ事故の放射能による死者は、59人しか確認されていないのだ。
ところが事故後、ロシアの平均寿命は1994年には事故前と比べて7歳も下がり、特に高齢者の死亡率が上がった。
一部の人々はこれを放射能の影響だと主張するが、死亡率の上昇は原発からの距離に関係なく、むしろ現地の
ウクライナより遠いロシアのほうが上昇率が大きい。また放射線の影響は癌以外には出ないが、事故後に増えたのは
心疾患などのストレス性の病気だった。こうした結果をロシア政府は次のように分析している。
チェルノブイリで退去命令が出たのは年間5ミリシーベルト以上で、これは日本の計画避難区域よりきびしい値である。
当時のソ連は社会主義の崩壊直前で経済は疲弊していたため、移住を強いられた人々のほとんどは失業し、
政府の援助も受けられなかった。結果的に20万人が家を失い、1250人がストレスで自殺し、10万人以上が妊娠中絶した
と推定される。ロシア政府の報告書は次のように結論している。
事故に続く25年の状況分析によって、放射能という要因と比較した場合、精神的ストレス、慣れ親しんだ生活様式の
破壊、経済活動の制限、事故に関連した物質的損失といったチェルノブイリ事故による社会的・経済的影響のほうが
はるかに大きな被害をもたらしていることが明らかになった。
ロシア政府は「チェルノブイリ事故の主な教訓の一つは、社会的・精神的要因の重要性が十分に評価されなかったこと
である」と指摘し、「この教訓は福島第一発電所の事故にとっても今日的なものだ」と述べている。