>>304つづき
◇
日本の作物輸入量は年間およそ3000万トン。大手商社などの調べによると、このうちトウモロコシが1600万トン、大豆が400万トンなどとなっている。
内訳をみると、遺伝子組み換えではない通常の作物(非GM作物)がトウモロコシ350万トン、大豆100万トン。
残りがGM作物の含まれる可能性が高い「不分別」と呼ばれる作物だ。GM作物の商業生産に乗り出していない日本だが、国内における浸透度の高さがうかがえる。
農業専門家の推計では、トウモロコシの場合、1600万トン(このうち1200万トンが飼料用)全量が米国産と仮定した場合、米国における作付けのGM比率(73%)から推計してGM作物は飼料用だけで870万トン程度になる。
大豆では、非GMを除く300万トンについて今年の作付けのGM比率(91%)から試算した場合、GM分が270万トンにのぼるとみられる。
トウモロコシと大豆の2つのGM作物だけでも、飼料用を中心に合計で1100万トンが輸入されている計算だ。
もっとも、代表的な食品原料の小麦と大麦(700万トン輸入)はGM作物ではない。いまのところ、食料用に輸入される作物での「GM化」はまだ限定的ともいえる。
◇
人口増による需要増に加えて、世界の食糧生産は石油の代替エネルギーとして期待の高いバイオエタノール生産向けのトウモロコシ消費などで増産を迫られている。
害虫や除草剤への耐性を持ち、収量の多いGM作物への転換が急ピッチで進んでいるのが実情だ。
一方、ここにきて中国のGM作物研究では、少ない水量でも育つ米といった新たな品種改良が進められている。
また、国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の調査によると、世界のGM作物の2006年の作付面積は前年比で13%増の1億200万ヘクタール。生産国も22カ国まで増えている。
GM作物の急増について宮城大学食産業学部の三石誠司教授は「世界の食物需給、GM作物の開発状況などをよく見極めなければいけない。
そのうえで、日本として(GM作物の商業生産に関する)国家戦略を描くことが必要だ」と指摘している。