>>52つづき
大都市圏での“成功”もあって、禁煙の動きは全国に拡大。389社(約3万4000台)が加盟する東京乗用旅客自動車協会も今月、来年1月からの実施を決めた。
鉄道や飛行機など他の公共交通機関に比べ対策が遅れていたタクシー業界が、一気に動いた背景には利用者の強い要望が後押ししている。
喫煙率全国1位の北海道で1月、北海道管区行政評価局が約330人を対象に行った調査で、タクシーの受動喫煙について約70パーセントが「不快」と回答。
約63パーセントが禁煙タクシーを「もっと導入してほしい」と答えた。
「高齢者や子供連れの母親、通院中の人から『たばこのにおいをなんとかして』という要望があり、禁煙は大歓迎を受けている」と名古屋タクシー協会の永山明光専務理事。
全国に先駆けて禁煙化に取り組んだ大分県タクシー協会の漢二美会長も「タクシーは個室だから他の交通機関とは違うという考えもあったが、クリーンな車内は時代の流れ」と断言。
事実、たばこのにおいを敬遠して他の交通機関を使っていた乗客が戻ってきたという。
◆◇◆
大勢が利用する公共の場所での受動喫煙防止を定めた健康増進法が施行されたのは平成15年。窓を閉め切ったタクシーでたばこを1本吸うと、車内の粉塵濃度が国の法定基準の12倍になるという調査もあり、
乗客と乗務員の健康を守る禁煙は当然の措置ともいえる。
それでも、ルールが現場に浸透するには時間がかかりそう。
横浜駅前で客待ちしていた喫煙歴45年の乗務員(64)は「職場でも電車でもがまんしてタクシーの中の一服が楽しみという深夜帰宅のお客さんに吸うなとは言えない」と本音を漏らす。
売り上げ減少やトラブル懸念から、まだまだ禁煙に二の足を踏む事業者も多いが、日本禁煙学会理事長で杏林大学医学部の作田学客員教授は「たばこの煙は単に不快というだけでなく確実に健康被害を起こす。
そのにおいは命が脅かされるサインであることを認識して」と話している。