【書評】『関東大震災「朝鮮人虐殺」の真実』・・・「朝鮮人の襲撃から家族や町内を守るのは正義」

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1日出づる処の名無し
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http://sankei.jp.msn.com/culture/books/091220/bks0912200834001-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/culture/books/091220/bks0912200834001-n2.htm

関東大震災の時に流言蜚語(ひご)に惑わされた日本人自警団が何の罪もない多数
の朝鮮人を虐殺した−。多くの日本人はこの事件にある種の後ろめたさを感じ、
きちんと検証してみようとしなかった。

大震災から86年、工藤さんが初めてこの困難な作業に挑んだ。
まず、当時の日韓関係の中で朝鮮人のテロ、日本人襲撃が決して根拠のない流言蜚語
ではなかったことを多くの資料・新聞記事から立証。
工藤さんは〈朝鮮人による襲撃があったから、殺傷事件が起きた〉〈テロリストの襲撃から
家族や町内を守るのは正義といっていい〉と断定している。
当初は朝鮮人による襲撃事件を報じていた新聞がなぜ途中から事実を隠蔽(いんぺい)する
ようになったのか。それが、この本の大きなテーマに繋(つな)がっていく。まるで良質の
ミステリーを読むような面白さだ。

圧巻は虐殺された朝鮮人の数を検証する部分。当時、吉野作造は2613人と書き、上海に
亡命した大韓民国臨時政府の機関紙「独立新聞」は6419人と書いた。
今回の取材中、工藤さんはロンドンのナショナル・アーカイブスで朝鮮独立運動派が諸外国の
外交官にばら撒(ま)いた謀略宣伝用小冊子を発見した。
そこに書かれた数字はなんと2万3059人。
それでは当時東京に何人の朝鮮人がいたのか。政府統計によると東京に約9千人。近県に
約3千人なのである(全国で約8万人)。そして、警察署などに保護された朝鮮人は6797人。
この数字だけからでも虐殺されたとされる朝鮮人の数がいかに根拠のないものかわかろう。
先に挙げた謀略宣伝用小冊子は虐殺の模様をこんなふうに書いている。〈彼ら(日本人自警団や
民衆)は朝鮮人を電柱に縛りつけ、眼球をくり貫(ママ)いて鼻をそぎ、腹を切り裂いて腸が飛び
出るままにした(以下略)〉
どこかで読んだような記述ではないか。

ぼくが今年読んだノンフィクションのベスト1だ。(産経新聞出版・1890円) 評・花田紀凱(かずよし)(『WiLL』編集長)