もう一つの注文は、今回の選挙の性格からくるものである。金権政治や55年
体制と決別し、ポスト冷戦の新時代に即応できる政治システム構築を目的に新しい
選挙制度が導入されて今度で5回目の選挙。ようやくその本来の狙いである
2大政党による政権交代が行われるか、というところまできた。麻生自民には、
歴史の必然ともいえるこの事態にあわてることなく、大局からの対応を望みたい。
ここでオバマ現象に立ち戻る。なぜ米国民は初の黒人大統領を選んだのか。
それは、イラク戦争の失敗と金融資本主義の行きすぎによる建国以来の危機を
乗り切るためだ。対話・統合能力に圧倒的に優れたオバマ氏に対し、民主主義の
手続きに基づいて権限と信認を注入、解決のパワーを与えた。一人一人では
対応不能のことを、選挙を通じてオバマ氏に委ねたのだ。
これがどこまで成功するかは別である。米国の抱える問題の深刻さはオバマ氏
本人が最も痛感しているだろう。ただ、我々はここから、民主主義の最も基本である
選挙という手段に我々が自らを救うカギがある、という教訓を引き出すべきでは
ないか。
そこで、小沢民主党にもお願いしたいのだ。選挙が4月以降だとすれば、
それまでの時間を大事にして、マニフェストの絶え間ない点検、進化、露出を
心がけると共に、早々に政権移行チームを発表、人と政策をセットにして国民の
吟味を受けてもらいたい。
というのも、民意の強力な後ろ支えがなければ解決できない課題を、日本もまた
抱えこんでいるからだ。ここでは3点に絞る。第一に、不況対策第2弾として、
ワークシェアを軸にした雇用確保策と、グリーンニューディール構想を中心にした
内需拡大策の制度設計を求める。次に、消費税を特定財源化した持続可能な
社会保障制度の確立、三つ目に、米国への過剰依存体質を是正し、アジア、
国連まで幅広く見渡した外交・安保政策の立案である。
いずれもオバマ流でなければ実現できない。ただ、その懸命な努力が形を取れば
国民は応えるだろう。「Yes We Can」(そうだ、やれるのだ)と。
ttp://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20090108k0000m070144000c.html