此処ではない平行空間の何処か、
今ではない平行時間の何時か、
そんな平行宇宙でのお話。
「珍しいな、お前からゲームに誘うなんて。」港町のコーヒーショップの支店で
口調だけはさも本当に意外であったかのように装いながらアメリカ人は席についた。
「ゲーム前に飲み物でも注文しよう。今日は誘った奴の奢りだ。
なにせここんとこ荒稼ぎして懐が暖かいようだしな。ギャルソン!バーボン、ブッカースをダブルでだ。」
「そろそろ何か言ってくる頃合だと思っていたよ。」
ロシア人はそんなアメリカ人の小芝居を完全に無視しながら席につく。
「ただ酒は遠慮しないことにしているんでね。アルマニャックを。こちらもダブルで。」
「最近、君がアフリカでなにか動き回っていることに関連しているんだろうね。」
フランス人が、まだゲームも始まっていないのに余計な事を口にしつつ席につく。
「私はカルバドスだ。」
「いや、すまない。少し遅れてしまったね。」
イギリス人が一人の女性をエスコートしながらテーブルに近づいてくる。
「いつものドイツ人は彼の所要で欠席だ。彼女が代理だよ。」イギリス人に席を案内されて、ドイツ人の女性が席に着く。
「はじめまして。お手柔らかに・・・・、とは言いません。」
「さて、ゲーム開始には間に合ったと思いますが。」イギリス人が席につき、様子を眺めて微笑んだ。
「どうやら勝負の前に1杯やるようだね。私もつきあおう。
グランファークラスをダブルで。ソーダ割り、氷はいらない。」
「私は・・・・、キールロワイヤルを。」
ドイツ女性がグラスを受け取り、私もウォッカマティーニのグラスを受け取ってこれでメンバー全員が席についた。
(つづく)