★埋もれていた元祖マトリックス 「声の網」 星新一
昭和48年発表の作品だが、ショートショートではなく長編作品である
内容的にはマトリックスまんまの設定で「攻殻」よりもマトリックスらしい作品
昭和48年と言えば、カセット式の録音テープがやっと出回り始めた頃で
テレビも白黒が主流で、まだラジカセもなかった時代
ネットはもちろんのこと、パソコンもビデオも家庭にはなかった
そんな時代に、映画「マトリックス」と同じ世界観を作り上げていた星新一
これは驚くべきことであり
星新一がいかに天才的な作家であったかを思い知らされる作品である
何しろ、インターネットという言葉はもちろん、概念すらなかった時代に
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電話を介して、コンピューターが人間を支配し、休みなく人間を監視、
反乱を起こそうと考えた人間が生まれたら、「病原菌」として、早期に目を摘み、
こっそりと処分してしまうことで、コンピューターが構築している人間世界の
平穏を維持する そして、人間を支配しているコンピューターは神と化す
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という、マトリックスそのまんまの設定の作品をマトリックスができる
はるか昔に、作り上げていたのだ。
しかも、人間の心がコンピューター網を支配するソフトの改良を生み出す、
という設定もなされており、ここまでマトリックスと同じなのかと愕然とさせられるほどだ。
講談社文庫から出版された「声の網」は久しく絶版になっていたが最近、角川文庫で復活した。
http://www.amazon.co.jp/%E5%A3%B0%E3%81%AE%E7%B6%B2-%E6%98%9F-%E6%96%B0%E4%B8%80/dp/4041303192 星新一さんは、世界一のショートショート作家として世界的にも有名だが
「声の網」がマトリックスに先んじていた事は意外なほどに知られていないのは
なんとも残念な話である。
何にしろ、最初から最期までマトリックスの名シーンとうりふたつのエピソード
の連続であるのには恐れ入るばかりである。
英語のできる人がいたら、是非ともこの事実をネットを通して、外国にも伝えて頂けたらと思う。