憲法研究 井上孚麿 神社新報社 昭和34.6.20発行 昭和46.3.20第15刷発行 1500円
現状篇
第三節 確認の性質
第1 確認とは
確認とはある法律事実又は関係の存否につき争ひまたは疑ひがある場合に、国家が公の権威を以て、その存否
を認定し、これを確定する行為である。それは既存の事実をあるがままに公の権威を以て確定するだけのことであ
つて、新に法律関係の形成変更消滅を生ぜしめるやうな効果意思の決定を内容とするものではない。新事態を形
成せしめる効果意思の表示ならぬ点に於ては、公証・認証と同様であるけれども、公証は既存の事実の「認識」の
表示なるに反し、確認は「認定」の表示である。
既存の事実につき疑ひや争ひがない場合には、確認といふことは起らぬのであつて、疑義の存在を前提し、これ
を落着せしめ、人心の帰裔を一ならしめ、一旦確認がなされた後は、何人もこれについて争ふを得ざらしめること
を目的として、確認はなされるのである。
従つて、確認の主体は、国の公の機関たるを要し、就中、一切の当事者を超越する立場に在るものたを要する。
また確認の内容が、真実に合するものたるを要するは勿論のこと、その時期手続方法等も、悉くこの目的に合故す
るやうなものたることを要する。然らざれば、確認は確認の用を為さぬこととなるからである。
ここにいふ「確認」は、現行法上では、時として「決定」「裁定」「査定」「認定」等と混用せられてをる。「宣言」「指定」
も「確認」の結果を、外に対して表示する場合に用ひられることもある。就中、政治的の場合には、前者が用ひられ
るのであらう。