>>258 つづき
米財務省は今年九月、香港金融界の大物が所有する「バンコ・デルタ・アジア」
銀行が北朝鮮の政府機関や関連企業と違法活動を行っているとして、「マネーロン
ダリングの主要懸念先」に指定、米銀との取引を禁止した。同行は容疑を否認し、
北朝鮮との取引停止を発表した。
北朝鮮は十一月の六カ国協議で、この制裁措置解除に関する米朝協議を要求。金
桂寛外務次官が今月初め訪米の予定だったが、米国が「説明はするが交渉はしない
」としたため、金次官は訪米中止を米側に伝えていた。
マカオは北朝鮮にとって海外重要拠点だ。また金正日総書記の私生活にかかる資
金調達企業とされる「朝光貿易」もマカオにある。韓国の金大中前大統領の北朝鮮
への秘密送金もマカオの銀行口座が使われた。
とくにニセ米ドル「スーパーK」の流通拠点として知られ、今回米国が制裁措置
を取った「バンコ・デルタ・アジア」は北朝鮮と二十年以上の取引があり、北朝鮮
製の偽造紙幣の受け入れや流通にかかわった疑いがもたれている。また、マカオの
華僑資本は北朝鮮にカジノも持っており、米国は九〇年代からマカオを北朝鮮資金
のマネーロンダリング先としてブラックリストに載せてきた。
北朝鮮にとっては、マカオへの“圧力”は死活問題にかかわる。金正日総書記の
資金調達に関係が深いだけに、事実上の「対北経済制裁」としての効果も高い。「
米国の挑発的な制裁のもとでは六カ国協議は再開できない」(「労働新聞」)とし
たのも、こうした背景からだ。米国は十月には大量破壊兵器拡散に関与したとして
北朝鮮八企業の米国内資産の凍結措置を取っており、当面、北朝鮮への圧力を弱め
ることはなさそうだ。