>>329 いい機会だからGAISF加盟問題についてのコラム張っとく。
▼剣道日本11月号 特集◎日本から世界へ
和久貴洋(国立スポーツ科学センタースポーツ情報研究部先任研究員)
(中略) こうしたオリンピック参入への逆風の中でも例外はある。
1988年ソウルオリンピック、1992年バルセロナオリンピックにおいて公開競技とされ、
2000年シドニーオリンピックより正式種目となったテコンドーである。
これにはIOC(国際オリンピック委員会)の幹部役員に韓国のテコンドー関係者がいて、
その政治力が強く働いていたといわれている。
国際的な場面における韓国の政治力、発言力の強さには日本は到底及ばない。
しかもそれがテコンドー関係者ということが、日本の剣道界にとって大いなる危機では
ないかと和久氏は警鐘を鳴らす。
というのも、2001年に韓国に発足した、世界”剣道連盟という組織の中心的役割を
担っているのが、そのテコンドー関係者だからである。
周知の通り、世界の剣道連盟を統括しているのは、日本に本部のあるIKF(国際”剣道連盟)だ。
2003年7月現在、44の国と地域を代表する団体が加盟、先に行われた世界剣道選手権大会の
開催はもちろん、各国に剣士を派遣して講習会を開くなど、剣道の国際的普及・振興の
リーダーシップを取っており、剣道はここから世界に発信されている。
韓国においても、剣道関連で唯一政府機関から承認を受けた大韓剣道会が国際剣道連盟に
加盟している一方、世界剣道連盟は韓国の雑誌『剣道世界』のよると韓国剣道連盟という団体が
母体に作られたもので、テコンドーに習い、オリンピック参入と国際化するために結束したという。
しかも電子防具を着用、判定を電子化したり、蹴り技も点数になるなどと記事中にはあり、
本来の剣道とはかけ離れたものであるらしい。
しかしである。IKFが伝えている日本の剣道と世界剣道連盟が行う剣道のどちらが本当か、
剣道を見たことも、経験したこともない世界各国の人々にわかるだろうか?
(続く)
(和久氏の特集記事の続き)
しかしである。IKFが伝えている日本の剣道と世界剣道連盟が行う剣道のどちらが本当か、
剣道を見たことも、経験したこともない世界各国の人々に分かるだろうか?
和久氏が危惧している点はまさにここにある。テコンドーをオリンピックに参入させた
その手腕で、「世界剣道連盟が押し進める剣道」をオリンピック競技にしてしまったとしたら------。
これは根拠のない恐れではない。実際の世界剣道連盟の動向は、
先にオリンピック競技となったテコンドーの手法を真似ているようである。
テコンドーの関係者は、テコンドーをオリンピック競技にするために、
各国にテコンドー道場を開き、世界に広まっているという既成事実を作った。
世界剣道連盟も同様に、世界に道場を広める動きがある。
また、GAISFという、FIFA(国際サッカー連盟)やFIBA(国際バスケットボール連盟)など
さまざまな競技団体が入っている国際連合会の会長は、世界テコンドー連盟の会長であり、
IOC副会長でもある金雲龍氏である。
つまりスポーツ界に張り巡らされたテコンドーのネットワークによって、
日本の剣道がはじき出される可能性があるのだ。
和久氏は言う。
「IOCは今のところ、世界剣道連盟とのヒューマンネットワークがあるわけです。
しかも、IOC委員の数が韓国が3に対して日本が2。数の上でも負けています。
ですから、正式なルートでの参入が難しくても、政治的な圧力がかかれば世界剣道連盟の
剣道がオリンピック種目となる可能性はある。オリンピック種目になればそれが剣道である、
と理解される危険性があるのです。
では、そうなったら日本はどうするのでしょうか。
(続く)
(和久氏の特集記事の続き2)
では、そうなったら日本はどうするのでしょうか。
まずは出場しないと考えられます。
では、私たちのしている剣道がオリンピック種目になったらどうでしょうか。
あと一歩で世界一になる韓国などは、強化費がたくさん投入されるでしょう。
そしておそらく日本は負けます。
だから私は、剣道はオリンピックで戦ったら日本はいずれにしても負けるだろう、と考えます。
世界剣道連盟が提唱する剣道がオリンピック種目になれば、
今度は日本でもそちらを遊ぶ子供が出てくるでしょう。
やはり世界最高の舞台につながっているわけですからやりたいと思っても仕方がない。
剣道にしても結局『世界のオリンピック』の流れの中で動いている一つの材料に過ぎないのです」
今、剣道は厳しい局面にある。
(以下略)
もうひとつ。
▼剣道日本11月号 特集◎日本から世界へ
阿部哲史(ハンガリー剣道連盟技術局長、ナショナルチーム監督)
(中略) 次に国際的なスポーツとの関連の中で、ヨーロッパの剣道が
どのような問題と対峙しているかを考えてみたいと思います。
7月に行われたグラスコーの世界大会総会において、国際剣道連盟において
極めて重要なテーマが議題となりました。GAISFという国際スポーツ組織への加盟問題です。
(略) このたび、ヨーロッパ剣道連盟がGAISF加盟を提案した理由の第一は、
ヨーロッパ剣道連盟に所属するいくつかの国において、国際剣道連盟に加盟することによって
国内のスポーツ省でのステイタスが上がり、それに伴って支援が受けられるようになるためでした。
例えば、私の暮らすハンガリーでもその対象国です。
もう少し具体的に説明します。ハンガリーでは、スポーツ省に公認された国内スポーツ連盟は、
すべてスポーツ法規で定められた基準に従ってランク付けが去れています。
Aランク : オリンピック種目になっているスポーツ種目の連盟
Bランク : 国際連盟がGAISFに加盟しているスポーツ種目の連盟
Cランク : それ以外のスポーツの連盟
つまり、剣道はCランクに入ります。ヨーロッパでは、多少の違いこそあれ、
国策でスポーツを方向付けるのがあたりまえです。そのため、一つの種目の国際連盟が、
国際的なスポーツ界の中でどのようなステイタスを有しているかは、直接自分たちの死活問題に関わるのです。
ましてや、旧社会主義国の国々では、スポーツ連盟は財政的に独立できる体制にはなっていません。
続く)
(阿部氏の記事の続き)
さて、ここまでの話だけを聞きますと、GAISF加盟を希望する国々は、
剣道連盟に国家からの支援を落とすことだけが目的のように思われてしまいます。
しかし、ヨーロッパ側の狙いはもう少し深いところにあります。
例えば、このような仮想ができます。
”現在の国際剣道連盟ではない、国際組織を自称する別の剣道組織が、
世界の剣道会でイニシアチブを取るためにGAISFに正式加盟を果たしたとします。
「そんなことができるはずない」と思われる方がいるかもしれませんが、GAISFには未だ
剣道という種目は加盟していません。したがって、加盟基準さえクリアーすることができれば、
国際剣道連盟以外の組織でも正式加盟を果たすことは十分可能です。
では、その結果何が起こるかといいますと、加盟を果たした組織が世界で唯一、
GAISFに認められた剣道の国際連盟と認知されることになります。
仮に、現在の国際剣道連盟のほうがより多くの加盟国を有し、より高い技術レベルを誇っていようともです。
もしこのような事態が起こりますと、各国では、GAISFに加盟した組織の下部団体としてスポーツ省に
国家支援申請をすることさえできれば、合法的に国家からの援助を受けることができるようになります。
容易に想像することができると思われますが、どの国の剣道連盟も、これまで社会的に低いステイタスに
甘んじてきた経緯があります。また、剣道を愛好する多くの会員を抱える責任もあります。
したがって、心情的には現在の国際剣道連盟をどんなに支持していようとも、
やむをえない判断を下さなければならないことは目に見えています。
話を元に戻します。ヨーロッパの剣道連盟がグラスゴーの総会でGAISFへの加盟を提案したのは、
このような危機感を持っているためです。私も5年程前からこの問題を真剣に考えていますが、
決して仮想で終わるようなレベルにないことは、すでに多くの人が感じていると思います。
(続く)
(阿部氏の記事の続き2)
もしこのような事態が起こりますと、各国では、GAISFに加盟した組織の下部団体としてスポーツ省に
国家支援申請をすることさえできれば、合法的に国家からの援助を受けることができるようになります。
容易に想像することができると思われますが、どの国の剣道連盟も、これまで社会的に低いステイタスに
甘んじてきた経緯があります。また、剣道を愛好する多くの会員を抱える責任もあります。
したがって、心情的には現在の国際剣道連盟をどんなに支持していようとも、
やむをえない判断を下さなければならないことは目に見えています。
話を元に戻します。ヨーロッパの剣道連盟がグラスゴーの総会でGAISFへの加盟を提案したのは、
このような危機感を持っているためです。私も5年程前からこの問題を真剣に考えていますが、
決して仮想で終わるようなレベルにないことは、すでに多くの人が感じていると思います。
(略)
今回のケースで言えば、他の組織にGAISF加盟を先越され、現在の剣道が国際スポーツ界の中での
地位を確保できなくなるよりも、むしろ危険を冒してでも先手をうってGAISFに加盟し、
国際的なスポーツ界の中でイニシアチブを取ろうと提案しているのです。
これに対し、GAISFへの加盟によって剣道がオリンピックへ歩みだす契機になるという
懸念が関係者のあいだから叫ばれているようです。どちらも熟考を要する意見です。
国際剣道連盟がどのような判断を下すのか、非常に注目されるところです。
(以下略)
(阿部氏の記事の続き2)
(略)
今回のケースで言えば、他の組織にGAISF加盟を先越され、現在の剣道が国際スポーツ界の中での
地位を確保できなくなるよりも、むしろ危険を冒してでも先手をうってGAISFに加盟し、
国際的なスポーツ界の中でイニシアチブを取ろうと提案しているのです。
これに対し、GAISFへの加盟によって剣道がオリンピックへ歩みだす契機になるという
懸念が関係者のあいだから叫ばれているようです。どちらも熟考を要する意見です。
国際剣道連盟がどのような判断を下すのか、非常に注目されるところです。
(以下略)
▼剣道日本11月号 残心(編集後記)より、
安藤氏の文を引用
特集の和久氏の発言をただの異端と取るのは危険である。
47頁のように、韓国の別団体に「剣道」という名称を悪く言えば乗っ取られる。
大韓剣道会は、「だから剣道は五輪に参加すべき」と主張。これはこれで明快。
日本も早くから対策をとる必要があるはずなのに、オリンピックの「オ」の字が
出た時点でアレルギー反応を起こす人がいるらしい……。
さらに49頁に関連するが、ボクシングでも近年、中学時代に剣道をしていた人が
高校で全国総体王者になった例が2件ある。
「一意専心」は素晴らしいことだが、これに固執しなくても剣道発展につながる手はある。
(安藤)