>>4の続き
その場合の支援とは、単に資源開発のための支援に留まるものではなく、万が一、中国が開発を妨害した
場合どう対処するかという企業の安全を含めた支援である。中国は「中間線」を認めていないのだから、日本
側大陸棚で同じ三次元探査を実施し、続いて試掘に着手する事態も考えておく必要がある。
だが、これまでこの問題を論じる際に見落とされてきた一つの重要な問題がある。それは中国側がよりどこ
ろとしている「大陸棚自然延長論」と日本が主張する「中間線論」のどちらが正しいのか、すなわち東シナ海の
大陸棚は「沖縄トラフ」で終わっているのか、それともわが国の南西諸島を超えて太平洋にまで延びているの
かについての地質構造上の検証である。
幸いなことに、この問題について琉球大学海洋学部の木村政昭教授の調査がある。海洋地質学の専門家
である同教授は、これまで潜水艇で「沖縄トラフ」に10回ばかり潜航してトラフの地質構造を観察し、鉱物の
標本を採取して研究を続けてこられた。
その結果、「沖縄トラフ」の地質構造は中国大陸から延びてきている大陸棚、およびわが国の南西諸島と同
じ地質構造であること、それ故、東シナ海の大陸棚は「沖縄トラフ」で終わっているのではなく、南西諸島を超
えて、その東側の太平洋海域まで続いていること、すなわち日本政府の主張する「中間線論」の正しいことが
実証された。
≪≪≪中国にあって日本になし≫≫≫
「沖縄トラフ」は東シナ海大陸棚の大きな凹み・水溜りに過ぎない。木村教授は、沖縄トラフの最低5箇所で
ボーリングを実施すれば、その研究が完全に裏付けられると言明しておられる。ただ、それには多額の資金
が必要で、文科省の科学研究費ではとても実施できない。
木村教授は、これは国家のやる仕事であるとして、きちんとした調査研究の早期実施を希望しておられる。
筆者はこのことを96年に、ある雑誌に掲載した論文の中で紹介し、翌97年に出版した『続中国の海洋戦略』
に収録したが、政府側からは何の反応も無かった。
>>5の続き
20数年来、中国の海洋戦略を研究していて痛感することは、中国は明確な国家目標を掲げ、それを実現
する国家戦略を策定し、それを実現するために国家の総力を投入することができる国だということである。
それに対して、わが国は国家目標もなければ、国家戦略もないから、自らが直面している事態が理解できず、
何か重大な事態に遭遇しても対症療法でしか対応できない。今度もこれの繰り返しにならないことを望む。
(ひらまつ しげお)
産経新聞 2004年7月24日付け紙面より
太平洋側の調査に関しては予算も計上されて、2009年だっけかの期限までに調査完了出来るようにやって
るようだけど、沖縄トラフの調査も早く実施すべきだなぁ。
中国の大陸棚自然延長論を崩すためにも。