【1939】 スパイ・ゾルゲ 【2003】

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94ワヤ ◆3gf69duuf.
読売新聞にあったので引用してみます。

6月15日 読売新聞朝刊13面【編集委員が読む】「スターリンのスパイ」

(前略)
それどころか、「平和の闘士」とされた従来のゾルゲ像は、社会主義神話
と同様、意図的に作られた虚像だったのではないかとの見方が、ロシア国
内でさえ少なくないのだ。
(中略)
 クレムリンによる対独攻撃計画を克明に裏付けたことで知られる新進歴
史学者、ミハイル・メリチュホフ氏(ロシア史研究所)は、スターリンが
41年6月までに、すでに全軍兵力の「81.5%」を「極秘のうちに」欧州
戦域に集中させていたことを明らかにしている。細かい時期や部隊の内訳
などは不明とはいえ、少なくとも西送は、南進についてのゾルゲ報告より
前に開始されていた可能性が高いのだ。

 日露の戦史・軍事史をめぐっては、従来、日本側の「壊滅的な敗北」と
されてきた39年のノモンハン事件についても、戦闘を仕掛けたのは実は
ソ連側で、将兵の損失もソ連側の方が多かったとする実証研究が登場して
いる。

 メリチュホフ氏は、ソ連時代を扱う歴史家は「まずソ連が平和愛好勢力
であるという全くばかげた観念と決別する必要がある」としたうえで、ゾ
ルゲ報告は「不正確かつ矛盾した情報が多く、図らずもドイツによる偽情
報の伝達ルートにもなっていた」と厳しい見方をする。

 ゾルゲ神話を生む背景となった「ばかげた観念」は、ロシア側ばかりで
なく、日本側にもある。神話や虚像を突き崩すためには、我々も、ゾルゲ
の暗躍した戦前の日本をやみくもに暗黒時代と決め付けるような、紋切り
型の歴史観を克服しなければならないだろう。