■日本のアニメ文化は世界中で大人気よのさ【十一】

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181日出づる処の名無し
産経新聞 平成 14年 (2002年) 12月 25日 水曜日
「かっこよい」日本
景気後退ゆえに文化的超大国

日本経済は低迷し、北朝鮮の日本人拉致事件、核開発、バリ島テロ、イラク核査察…
と内外で物騒な事件も続いたが、今年最後の本欄はややアングルを変えた日本考を−。
十二月十七日付の全米各紙は、宮崎駿監督のアニメ「千と千尋の神隠し」が米
ニューヨーク映画批評家協会の最優秀アニメ賞に選ばれたことを一斉に報じた。
「千と千尋…」は二月、ベルリン国際映画祭でも金熊賞(最優秀作品賞)を受賞した
(本欄二月二十六日付)。日本アニメの魅力を世界に印象づけた「千と千尋…」は、
くしくも年初と年末にニュース・メーカーとなった。
米シカゴ・トリビューン紙十二月三日付は、いまや全米で日本アニメへの興味がブームと
なっており、高校の課外活動で日本のアニメやマンガを研究するポケモン世代の登場に
ついて報じている。
記事でフィラデルフィア近郊の大学の日本学の助教授は、「いま起きていることは
凄いことだ。もはやサブカルチャーとはいえない。アニメは世界的現象になりつつある」
と熱っぽく語っている。
また宮崎監督の「もののけ姫」を三年前に見て以来、アニメの虜(とりこ)となり、
現在はアニメのファンクラブを主宰、交換留学で訪日も果たした十七歳の少年は、
「一本のフィルムから、いまは日本との仕事も考えている」と言う。
米シアトル・タイムズ紙三日付は、『少年ジャンプ』誌の米進出を報じた。
興味深いのが日米マンガの比較だ。九歳か十歳の時から日本のマンガを収集している
二十六歳の女性ファンによれば、「日本のマンガは少女にとても訴えかける。ところが
米国のコミックは女性や少女のために描かれたものは非常に少なく、十代向きは皆無。
米国では女性はセックス・シンボル、男たちのために描かれている」と不満げだ。
《事実、米国では、米国製マンガの読者の95%は男性、一方、日本製は30%が女性である》と同紙は続ける。
これら報道から言えることは、日本製アニメやマンガはもはや日本人の独占物では
なくなったということだろう。
182日出づる処の名無し:03/01/15 02:38 ID:WE2rp9j1
そして「サブカルチャーから世界的現象へ」はいまやアニメに限らないことを
掘り下げた論文が、日本でも話題となった「ジャパンズ・グロス・ナショナル・クール」
(『フォーリン・ポリシー』誌五・六月号所収)である。
題名は国民総生産(グロス・ナショナル・プロダクト=GNP)をもじったもので、
確かに日本はデフレ経済にあえぎ、GNPは縮む一途だが、同論文によれば《日本は再び
超大国となりつつある。大々的に報じられてきた政治的経済的不幸の下で崩壊する代わりに、
グローバルな文化的影響力は静かに増しつつある。ポップ音楽から消費者用電子機器、建築からファッション、
アニメから料理まで日本は八〇年代に経済的超大国だったときよりも、もっと文化的超大国のようである》。
いわば日本の“文化力”に注目、それをGNCと名付けたわけで、クールはここは、かっこよさだろう。
《ナショナル・クールを測定するのは不可能だ。それは一種の“ソフト・パワー”(米ハーバード大学長の
ナイ氏の造語)》である。
《文化的超大国は健全な経済的基盤は必要だが、健全な経済は必ずしも必要としない。
逆に景気後退がジャパンズ・ナショナル・クールを押し上げたのかもしれない》との指摘は、
成長神話の終わった日本の今後を考える上で実に示唆的だ。
《ポケモンは六十五カ国、三十以上の言語に翻訳され、ハロー・キティ商品は一万二千点から
一万五千点に上り、香港、ソウル、バンコクの何百万人もの十代が最新の東京ファッションを欲しがる》