541 :
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わしは死ぬはずだったんよ、けど何の因果か死にそこなって、挙句の果てにガキこさえてな
そしてお前ら孫まで出来たんよな。
わしは飛ぶはずだったんよ、けど戦争も終わってしまった。
わしの上にわしが兄さんとよんで慕ってた人がいたんよ。
皆、神風の事を頭が馬鹿な人が飛んで天皇万歳と言って死んでいったと思っちょる
けどなそんな奴は一部の馬鹿以外はようおらんかった。その兄さんもな皆よか男やった。
そん人がな飛ぶ前に子供の写真を見せてくれよった。嫁さんに指差して『えらいこいつに似とるやろ?
こいつはよか女になっとたい』そういっていつも笑っとったよ。
そこでわしが『子供残して飛ぶのは嫌じゃなかとですか?』って聞いたんよ、あの時代馬鹿な事聞いたかもしれんがな。
そしたらにかっとわらってこう言いよった。
「○○・・結婚しとらんかったよな?」
わしは結婚しとらんかったけど、婚約者?ちゅうかそげんおったけどな
「婚約者はおります。」と一言な。まあ、もう会えんと思っとったけどな。
そしたら
「子供のな、手、ちっちゃいんよ、えらい」わしは「はぁー」としか言えんかった
ちっちゃいってのは何となく知っとったけどな。
「こいつのな手を軽くきゅっと握るんよ、凄い小さかとよ、そげん握ったらもう何も言えんのよ
ただ、こいつを守りたい、この小さい手を守りたい、この写真のように優しく子供を抱いとる嫁を守りたい
そう考えたらおいの命なんていくらでも投げ出せる、そいだけの価値がある。」
542 :
日出づる処の名無し:03/02/20 13:16 ID:WAcbbdfE
なんも言えんかった、空を見つめる兄さんの顔見とったらなんも言えんかった
そして兄さんは死によった、わしの死による前に。そして戦争が終わりよった。
それから故郷へ帰って祝言挙げたんよ。
○○(長男)おるやろ?今の。こいつが出来た時に兄さんの言っとった意味がわかった。本当にな、ちっちゃいんよ
そして○○(次男)・○○(三男)・○○(長女)・○○(次女)が出来た、皆、良か出来た奴らよな
けどな一昨日まで一つだけ判らんかった、なんで兄さんはあんな風に死ぬ間際にあんな表情が出来たんやろ?ってな
一昨日わかったんよ、よか出来た息子と孫共に囲まれてな。
同じように空見とってなそんなこと考えてたらな、今日みたいな日は死ぬにはいい日やなーって思ったんよ。
たぶん兄さんもそげん近かんごた考えとったんじゃなかとな。馬鹿げた事考えとるって思うかもしれんがの。
変やろ?わしはやっと兄さんに追いついたんよwこの年になってな。大層な男やったんな・・兄さんって思ったんよ。
多分今のお前じゃわからんやろな・・・。今のわかもんには古臭いかもしれんけどな、古いわしが言う分にはええんよ。
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